意識のエッセイ　　　　意識に使われるな、意識は時々使うもの

このエッセイを書く動機

意識の限界を知ることで、意識では把握できない時空を自覚し、このパラドックスの心地よさをみんなで楽しんでみませんか？

第一章　文系の人へ

文字によるコミュニケーション

意識の役割　第一法則　第二法則　第三法則

意識のできること、　　意識の限界・できないこと　　なぜ？

第二章　理系の人へ

意識の外側にあるもの　　いのち　　　宇宙・素粒子

意識の限界を知ることで次の段階へ

限界を知らない意識の行く末　

意識の言い訳

全体図　　分裂意識　統合意識　　　意識の密度によって景色が変わる

全体図２　五感から八識　　　　五感の外側　磁力・電気　いのち

第三章　2つの間

パラドックスの視点から　　意識の素晴らしいところ　　

ヤングの実験　　数学・物理学・論理学

ひとつのゴールに二つの解決策　　「理性だけ」　「理性と智性」

なぜ二番目の意識（智性）が排除されてきたのか　組織に利用された我々　企業、国　　証明できない生気論

付録

意識が体を殺す時代

意識の誕生史

意識の図

幻想の自意識

文献

はじめに

文字を使わなくちゃいけないなんて、まどろっこしい。

きみが許してくれるならば、いまここで、隣に座って、（あなたの手に手を重ね、）同じリズムで一緒に息を吐いて、ただ微睡むだけでいい。

少なくても、文字など使わずに、話ができれば。

そうすれば二人を結ぶことができる喩えを一緒に探して、私たちの間に橋を架けることができるかもしれない。

でも確かに文字にもすごい力がある。

いまここで、あなたと繋がっていられるのは、この特殊なコミュニケーションである文字のおかげ。

これはとても特別で風変わりで無理やりで断片的で表層的で一面的でとても残念だ、けれど素晴らしい。

無限の現象を有限の記号にふるい分けするという荒技ですが、これがなんでも便利にする秘密兵器だからです。

友人にこのエッセイは長文なので、一言でまとめてくれ、と言われたのでやってみた。

「エッセイなんか読まずに、ボーとして体が動き出すまで待つのがやっぱりいいよね」

コラム　　文末

言葉とシンボル・文字　　分断（差異）

話し言葉⇔書き言葉１　　具体的・特殊⇔抽象的・普遍

話し言葉⇔書き言葉２　　時空　TPO　呼吸　心拍　

意識と言葉の関係　　　　氷（文字）と大気（意識）のアナロジー　　「コルディア山脈」

意識の役割

意識って何？

普段に使うときは、「起きている状態」のことで（A）、闇にスポットライトを当てて、それを強調する時（B）にも「意識的だ」と言います。

A　意識を失う　　意識にのぼる

B　意識して見る　彼を意識する　意識が高い　社会の一員としての意識　　罪の意識

辞書をみれば、この他にもあります。

仏教の唯識派の第六識のこと。

目、耳、鼻、舌、身の五識が五根を通してそれぞれとらえる色、声、香、味、触の五境を含む一切のもの（一切法）を対象（法境）として、それを認識、推理、追想する心の働き。

貞享版沙石集一・九「独散の意識とも闇味の意識とも云へり」

con·scious (kòn¹shes) adjective

1. Having an awareness of one's environment and one's own existence, sensations, and thoughts. See synonyms at aware

2. Mentally perceptive or alert; awake: The patient remained fully conscious after the local anesthetic was administered.

ラテン語conscius (con-共に＋scLre知る＋-us-OUS＝承知している）．SCIENCE, CONSCIENCE

自意識の強い,人目を気にする(self-conscious).

ラテン語源では「ベースとなる共通の認識」という意味になります。

では、この意識とはいったい何をやっているのでしょうか？

意識第三法則

力学や熱力学に習って法則で表せば、

第一法則は、スポットライトを当てて（範囲を決めてその中を）、分け続ける　そして法則を見つける

第二法則は、分けていることを忘れて、見ないようにする。　

もしくは、飽きたら（スポットライトを当てないと）分けることができない。　

第三法則は、スポットライトを当てなくても、意識外体験や推測（意識）の力を使って統合できる

ほとんどの人は第一法則しか使いません。何故ならば第二法則は無意識の世界のことですし、第三法則は非意識をちゃんと説明しようとする環境や気持ちがなければ意識自身には気がつかないことだからです。鏡がないと自分自身に気がつくのは簡単ではありません。そしてもし鏡があったとしても自分（意識）が見たい表面的なことや関心のあることしか見えないのが意識の特性ですから。

コラム　　文末

運動力学の法則　最後の魔術師ニュートン

熱力学の法則

ここでは先ず、第一法則の面白さを見てみましょう。

意識は何でもかんでも、スポットライトを当ててしまうという特性です。

すると、暗闇の中に光に当たった円形が浮かび上がり、そこが関心の中心になります。今まで暗闇で見えなかったものが、意識の光によって、形が見えるようになります。例えば、景色の好きなところだけを切り取る写真やペットのプードルの毛の切りたいところだけをトリミングするように、自分の思いのままに範囲を決めることができます。形のなかったものに形を与えるというマジックができるのが、この「意識」です。無数にあるので焦点が絞れず何もなかったように見えていたものから、「ある」ものが誕生する瞬間です。

どの生命体にとってもこの楽しさは、たまりません。どんな本能よりもこの意識のスポットライトを当てることを優先させてしまうのも当然です。まるで創造主のように、自分がこの世を見たいように世界を見たり、見せたりすることができるからです。そしてこの乱用が、お互いに争ったり苦しんでしまう原因になってしまいます。しかしこの世を自分の好きなようにできるという快楽の前では、意識をできるだけ使わないようにしようとする人は多くありません。「意識びたり」になり常時この世界に滞在したがるのも当然でしょう。

このスポットライトは色々な喩えで表現されます。例えば、マウスの⇒、関心、注目、注意（心理学）、興味（教育学）、好奇心（脳機能学）、差異（哲学）、想い（文学）、影響（経済学）、関係（科学）、探求衝動（生物学）　

interest 　　　ラテン語inter-（間に）＋-esse（ある）＋-t（人称語尾）＝間にある

concern 　　　ラテン語．con-（共に）＋cernere（ふるい）＝まじり合わせてふるいにかける

attention　　　ラテン語attendere (ad-へ＋tendere伸ばす＝の方へ伸ばす→へ行く）

different 　　ラテン語differre (dif-離れて＋ferre運ぶ＝引き離す→相違する）．DEFERと同語源

curious 　　　ラテン語cYriRsus (cYra注意＋-Rsus-OUS＝注意深い

次に、この

意識は何をするのでしょうか？

意識はまず範囲を決めてそこにスポットライトを当ててみようとします。

闇に光を当てることで、「空」から「形」を浮かび上がらせるプロセスです。

無限のものを有限の記号に強引に当て嵌めることで、「空」（無）から「有」が生まれます。

この型に嵌めるという、意識の特性である「無理矢理」がないと「形」にはなりません。

そこで、やっと「形」になるので、隣の「形」との違いに注目することができます。

次に、比較、分類、分析、マッピング、概観、統合の順番で、スポットライトが当たったものを「知っている」ことにするプロセスに入ります。

このプロセスが短いものは感覚記憶と言ってすぐに忘れられるのに比べて、短期記憶といって海馬でしばらく留保されるものや、長期記憶といって、何度も繰り返さることで大脳皮質で他の記憶と一緒にニューロンでつながれるものもあります。コンピューターで例えると、感覚記憶がキャッシュ、短期記憶がメモリー、長期記憶がハードディスクでしょうか。そして頻度の高いインプットに対しては自動タスクで対応できるアプリ化をします。

これがヒトでいう条件反射です。あの日本人ならば梅干を見たら唾液が出るやつです。ある条件の下で意識を使わなくても決まったアウトプットで対応するという方法です。

これが意識の第二法則です。

第二法則は、分け続けていることを忘れて、見ない（意識しない）ようにする、ということでしたが、理由は、意識の特性である、一度に二つのことができないことが原因です。

聖徳太子の逸話（実際のことではないと推測されますが）のように、一度に10人の話を聞くことができるには、寸時に意識のスポットライトを切換えて各自の話の一部を把握して後は推測で概要を把握しているわけです。

（もしくは重複する音声を短期記憶して、後でそれを個別に分析して内容を把握する）

これは心理学では「カクテル・パーティー現象」と言って、多重の音声が重なる騒がしいパーティー会場で「雑音」を切り捨て、「無意識の自分」が必要なものだけを整理して統一性を持ったパターンにする。そして、これを意識に差し出している。すると「自己意識」がそれを判断できるものです。

ここでも「無意識」が仕事をしています。自分にとって必要なインプット量に減らして、それを分類して統合したパターンに変換しているのです。脳には「無意識」のうちに働く、濾過装置と分類装置と統合装置があるのです。

そして、一度に複数のことをこなしているように見えることも、実際は一つ一つに対処しているので、ここがコンピューターのマルチCPUによるマルチタスクとは違うところです。

ところが実際のヒトの社会生活では一瞬で同時に複数の行動をしなければならない時が多々あります。例えば、車の運転中に、信号が変わるのを見ながら、ハンドルを握り、ブレーキを2センチほど踏みながら、クラッチを切り、ラジオのジャズを聴きながら、隣の友人と行き先について話をしたりしています。

このような無意識化は、自動車の運転だけではなく、五感から入力された刺激に対しても行われます。これが条件反射です。日本人には梅干を見るだけで唾液が出てくる人が多いと思います。見ただけなのに梅干の酸味を強くイメージしなくても、体が勝手に反応してしまうのです。梅干を食べない文化圏の人にはこのような体の反応は起こりません。これは未知が新たな既知に変わることによって、体の酵素や交感神経まで影響を与える良い例です。

こうして条件反射のパターンが新しく作られました。

いいところは意識しなくても、自動的に体が反応してくれるので、スピードが早い対応ができることです。経験をリピートすることで、意識を使わなくても、インプットした情報を運動を司る小脳に委ねて自動的にアウトプットできるようにしています。これは便利な機能です。しかし、デメリットは他の文化圏に行った時は梅は塩漬けされて酸っぱいことは少なく、多くは甘漬けなので、必要のない反応を体がしてしまうことです。この反応を止めようと意識しても、肉体化した条件反射を元に戻すのは、すぐにはできません。何度も酸っぱくない梅を食べて、体に梅が必ずしも酸っぱくないことを覚えてもらわなければなりません。もしくは臨場感のある強烈なイメージを持つことで条件反射を書き換える必要があります。

意識には学習したことを「無意識」に未来行動できるように処理しようする機能が常に働いています。意識していないのに、このようにはじめから自動的にプログラミングされてしまっています。

これも次の章で話す、「意識のできないこと」の一つです。

最後の、第三法則である、「分けて選択しなかったものも、統合する」はパラドックスの視点から（素晴らしい意識）の章で説明します。

意識にできること

意識がすることは、この世界を学習したパターンに従って次々に分けて、それに記号や名前をつけて、わかった気にさせることです。

これによって、霧を水滴に、見えないものを見えるものに、「力」を「形」にしています。

しかし、このエッセイを読んでいる人の中には、はじめから「形」あるのではないかと疑問を持つ人もいるでしょう。例えば、「数」は、意識が分けたものではない、と思う人もいると思います。はじめに形である数があって、その集まりが無限になるという捉え方です。

これらは、分ける前の「全体」をどう捉えるのかによって、数字が「分けた」世界のものなのかどうかわかると思います。

例えば、全体とはキリがなく大きくて限度のないものだとした時には、分けようがないので、はじめから分けてある単位を作り出して、それを基準にするしかありません。

また今度は砂粒など小さいものを全体としての「一」とした時には、次々にこれを半分にして細分化していくことで数字の単位が無限に広がっていきます。分け続けることによって、明確な数はあるのですが、これが無限に続きます。ここにも無限が顕れます。きりのない全体値∞・Ωと、分け続けてもきりがない極小値lim→0と両端が数値化できないので、その間は基準を決めてひとまず分けて形にしているのが数字です。

この「分ける」こと基盤にすることで、言葉を使ったり、分析したり、そこから共通項を見つけて一般化したり、記憶したり、思考したり、合理的に整理したり、その理性を信念にして理念を生み出したり、計画という未来を推測することもできるようになりました。

分けて比較して、分類し、その中にある法則を見つけることで、次に起きることを予測できるIQ指数も、学習の試行錯誤から今までに気がつかなかったものが実際にはつながっている（相関関係がある）ことを発見したり発明したりするのも、意識の分ける力が出発点になっています。

「分ける」というシンプルな行為が、私たちを意識的な生物とさせ、多くの喜びと悲しみを与えています。

意識にはできないこと

意識にもできることと、できないことがあるのです。

できないことは身体と無意識と非意識の世界を意識のやり方では把握することです。

意識にはどんなことができないか、まずは身の回りのことから見てみましょう。

普段の生活では、なんでも意識がないと生きていけないと思っている私たちですが、実際は一日の70％は意識を使わずに生きていると言われても、信用できますか？計算の仕方はいろいろあるので、数値は上にも下にも変わりますが、多くのことは無意識のうちに行動されていますので、例を見てみましょう。

時間的に長いのはなんといっても睡眠。この間は夢は見ても、意識はお休みです。実験でラットの睡眠を邪魔して、ずっと意識状態にさせていると、体温が下がり、体重が減り3〜4週後には免疫機能が低下して感染症で死亡しました。

また意識を使わな状態とは、私たちの日中でも昏睡状態のようにボーとしている時は、度々あります。また病気による昏睡状態もあります。私の親しい友人の二人が現在でも植物状態となっていますが、一人は22年間、もう一人は4年の間に意識が目覚めたことがありません。だからといっていつも寝ているわけではなく、アクビをしたり、体を伸ばしたり、食べ物をを噛んだり、目を動かしたり、手足を硬直させたり動かしたりします。見たことがない人はこれは信じられないと思うので書きづらいのですが、人によっては器具を使うことで歩くこともできるようです。

そして、生きていることに欠かせないのが、生命体の内臓運動です。これらのほとんど意識で支配していませんが、まるで自分で自律しているかのように運動しています。その中でも呼吸系器官は意識の影響を強く受ける数少ない内臓ですが、もし意識が制御しなければ、無意識のうちに息を吐いたり吸ったりしています、寝ている時のように。

また、血液の循環運動も意識がコントロールしなくても、動いています。喜びや恐怖をイメージすることで心臓の収縮と弛緩のリズムに影響を与えて脈拍は変化しますが、これも意識がなくても活動しています。

次に口から肛門までの消化活動ですが、意識ができるのは顎の咀嚼ぐらいで、胃や十二指腸や膵臓や胆嚢や小腸や大腸や意識を使わなくても収縮や蠕動運動をしています。一番の圧巻は小腸の消化運動で、消化をするために意識を使わないどころか、小腸にいる100兆個から1000兆個の腸内細菌に頼ってお任せしていることで、ヒトは生き続けています。

日本語では恒常性と訳されている、ホメオスタシスhomeo〈等しい〉stasis〈平衡状態〉です。

外界の変動にさらされても、内界の状態を一定に保つ機能のことです。

血液内の酸素，二酸化炭素，塩類，ブドウ糖，各種タンパク質などの濃度やpH，粘度，浸透圧，血圧や、体温などの変化を、電気（神経）と化学（ホルモン）によって調節し、定常状態に戻す方向の指令を発します。

そしてこの機能は個体だけではなく、グループや種の維持にも適用されるという実験結果が集まり、今では、生物系の種々の階層における安定した動的平衡状態を表すのに使われるようになりました。たとえば，生物群集における種の構成の安定性を生態的ホメオスタシス、同種の個体群における遺伝子分布の安定した平衡状態を遺伝子ホメオスタシス、発生過程で一定した表現型を発現する現象を発生的ホメオスタシスなどです。

どれも意識が関わらなくても自律的にバランスを保つように機能します。

また、意識と自律神経の間にも密接な相関関係があります。

	自律神経	血圧	心拍	グリコゲン	胃液分泌	インスリン	小腸消化
意識	交感神経	上昇	上昇	分解	低下	低下	便秘
無意識	副交感神経	下降	下降	合成	上昇	上昇	下痢

動物は系統進化した時に、大きく二つのパートに分かれ、交感神経が司る神経・筋肉の表層と副交感神経が司る消化・循環の深層が交互に補うように発達し、血液もその時の意識の状態により、意識を使うときには表層に、使わないときは深層に多く流れて活動を活性化させています。

また身体の生成のレベルでも、意識の活動していない睡眠時に、成長ホルモンや免疫細胞の生成との密接な相関関係があります。　　　　　　　　　　初心者のための睡眠の基礎と臨床　 1999年6月　井上昌次郎

話をヒトの日常生活に戻してみると、多くの行動を意識せずにやっていることに気がつくと思います。

例えば、外出する時に意識せずに靴の紐を結んだり、歩く時に右足から始めていたり、このエッセイを読みながら意識せずにコップからコーヒーを飲んでいたり、気がつかずに頭を右手で触っていたりです。

また、行動だけではなく、頭の中で起こっている脳の活動も多くは意識にかかわらずに行われています。

なにかを思い出す時に意図せずに多くのことが浮かんできたり、条件反射では意識にのぼることもなく外からの刺激に反応して行動していたりしています。

実は新しいアイディアが浮かぶ時や創造力にも、非意識が大きく関与するメカニズムによって、生み出されています。

これらのことから、生命体がサバイバルするには意識を使わないことが必要で不可欠なことがわかります。

コラム

創造性が欲しいときは意識の外側に出る

夢と創造性

創造力の功罪

芸術や科学で起こる対局性の一致

数字と物理による意識の中から聞こえてきた限界

意識のルール（時間・空間・因果律・数値化）に則って、調べてみても、その中の法則では収まらないことがある、という証明が20世紀になされた。

数学、物理学の分野での定理だったので、大きな反響はあったが、別に数学や物理学が否定されたことではない。

不完全性定理や不確定性原理は、わからないことがある、と言っているだけで、計算や実験は近似値はでるし、日常生活ではなんの不便も感じない。ただ正確に言うと意識のルールが完全ではないと証明されただけだ。

ゲーデルの不完全性定理Gödelscher Unvollständigkeitssatz

自然数論が無矛盾であれば、証明も反証もできない命題が存在する。

自然数論が、無矛盾であっても、そのこと自体も自然数論では証明できない（第二不完全性定理）。

ハイゼンベルクの量子力学における不確定性原理: Unschärferelation 　 Uncertainty principle

ある粒子の運動量と位置を同時に正確に知ることは、原理的に不可能である

「位置を正確に測ろうとすると、電子の運動が正確にわからなくなる」

→（光の波長を短くして、鋭くぶつけると、電子を弾き飛ばしてしまう）

「電子の運動を正確に測ろうとすると、電子の正確な位置がわからなくなる」

→（光の波長を長くして、優しくフワッとぶつけると、通り過ぎてしまう）

というジレンマが起きてしまい、

結局、「位置と運動量(質量×速度）を同時に正確に知ることはできない。一方を正確に知ろうとすると、一方が不確定になる」ということになってしまう。

次に意識では把握できないものについて考えてみます。

意識の特性、すなわち弱点。　何故、意識にはできないのか？ということです

意識の特性は、分けることで対象物を理解することがでした。

しかし、この方法では捉えることができないものがこの世にはいっぱいあります。

分けることにより本来のものが消え去ってしまうものです。これでは意識を使っても把握できないのは仕方がありません。

いくら目が良くても、オーケストラの和音は見えませんし、いくら耳が良くても、味噌汁のダシの香りは聞こえません。

意識の世界は、時空を分けることにより、一つだった時空間が、時間と空間になり、その結果、時間は過去から未来に流れるものとして扱われ、そこに因果関係を見い出しました。原因があっての結果である、という捉え方です。すぐにはピンと来ないかもしれませんが、分けることにより、因果関係が生まれてきたり、時間を数値化できるようになりました。因果関係で理解するのは、とても効果的な把握の仕方なので、大事な方法なのですが、この方法では理解できない事象に私たちは囲まれているという体験を毎日しています。

もっといい例を探す

ゲームに一生懸命になって時間を忘れている時

夢の中で亡くなった祖母と自分の子供が遊んでいる時

旅をしている時に、白昼夢かデジャヴのように、別の二つの空間がつながっている感覚

例えば、いのち、生命体、星の爆発と再生、宇宙、素粒子、量子の泡、無限、一、無、空、見えない力、カミなどその人が属している世界で呼び名は変わります。どれも全体像を把握する時の表現です。確かに、意識流の分割するやり方で対象物に近づくことはできます。それが意識の良いところなのですが、同時に限界です。言葉にすることでわかった気にはなれますが、それはわかった気になるだけで、対象物に溶けるように同化して一体化するような把握の仕方ではありません。理由は、繰り返しますが、意識とは、一つを分けることによって把握するものだからです。この認識の方法では、分ける前のものについては手も足も出ません。

日常の感覚で言うと、対象物の「違い」を指摘して別々になることはできますが、対象と「同じ」であることを感じて同化することができません。

私とネコは通じ合える、動物と植物は一緒だ、生物と地球は共通するものがある、とする捉え方です。

スポットライトを当ててしまうと、二つの違いにばかり気がいってしまいますが、スポットライトを当てていない薄暗闇の状態だと、私もネコも同じ動物だし、動物も植物も同じ生物だし、生物と地球にも原子・電子レベルで共通性があります。

スポットライトを当てなければ、同じだったものが、当てることによって違いになってしまうのです。

例えば、視覚のメタファーを使うと、眼のレンズである水晶体です。焦点を合わせず、ボーとしていると、網膜に明瞭な像が映らず境界線もあやふやでぼやけている全体しか感じられません。ちょうど極端に視覚が悪い人がメガネを外した状態です。ところがちゃんと焦点を合わせたりメガネをかけ直したりすると、突然と明瞭な像が浮かび上がり、違いがはっきりとわかってしまうのです。

目の前にあるものが何も変わらなくても、視る人の見方によって、その人がとらえる現実は変わってしまいます。

焦点を合わせるということは、外からの刺激である光を水晶体の屈折で「開いて」拡散していたものが「閉じて」一つにしたことです。メガネを外した状態とは、光の矢が「開いた」状態のままで像が拡散されたままです。面白いのは、焦点がぼやけていることによって看える世界があるということです。焦点があっているときには看えなかったものを体感することができます。この世界を感じるために考案されたのが、瞑想です。瞑想にはほかにもいろいろな重層的な意味があるのですが、視覚に関していうと、目は薄くとじ、半畳ほど先を見るように指導されます。目を閉じてしまうと暗闇の中でその人の妄想が踊り始めてしまうこともあるので、半目ぐらいにしてぼんやりとすることによって、「全体」と「個別」の２つの間に同時にいるという新しい向き合い方を覚えます。

参照

賢人・賢智・賢明の「賢」の字源は、目を取ることによって貴重になり賢くなる、ということです。

臣は目を表し、又は右手を表し、貝は貨や財など価値のあるものを表します。　白川静「常用字解」

錯覚という無意識の自動修正

意識に頼ってはいられない理由

日常会話で「頭」と言った場合は、その人の大脳皮質の機能をさし、悟性、理性、知性、智性を司ります。私たちはこの頭によって暮らしていますが、この頭をかなり信用しすぎてはいませんか？

この脳の感覚とはかなりいい加減なものなので、誤解と勘違いを勝手によくしてしまい、私たちはそれに気がつかず暮らしています。

論理と実験と法則で積み重ねられた客観的科学ならば大丈夫だと思うかもしれませんが、どこにスポットライトを当てるか（枠・フレーム）で、実験結果が変わるので、客観性があっても条件が変わることで、数年に一度は前のデータが全否定されたり、実験方法そのものが誘導的であったり、ニュートンの法則のようにある条件のもとでしか正しくなかったりします。

と書いても、頭に対しての信頼は揺るがないと思いますので、具体例を見てみましょう。

ではここで錯覚の問題です。　AとBではどちらの方が色が濃いと思いますか？

こう聞かれたら答えはもう想像できますよね。

視覚は目から光として入り、電気エネルギーに変換されて、後頭部に至り、それが頭の上部に向かうwhere経路とも呼ばれ、運動や物体の位置や眼の制御を行う働きと、

耳の奥にある側頭葉へと向かうwhat経路とも呼ばれ、視覚対象の認識や意識にのぼる映像や長期記憶の働きを担う二つの経路があると推定されています。

上の図を見たときに、AとBを比較しようと認識する時は、Bが周囲に比べて暗いので、意識した覚えはないのに、実は脳が勝手に自動的に明るく調整してしまっています。ところがそれに自我は気がついていないのです。

我々の脳は高性能過ぎるので、遠近感や陰影など、これまでの経験に基づいて無意識的に状況を推測してしまうのです。これは、一瞬で全体像を把握しようとする、人間の本能的な危険察知能力の一つです。

ポイントは意識をもって判断しているのではなく、無意識で判断が行われてしまっているということです。

「強い刺激が周囲にあると、同種の弱い刺激はいっそう弱く知覚される。周囲に同種の強い刺激がなければ、弱い刺激でも十分な強度で受け取られる」ということが視知覚の基本法則の一つがあります。これも無意識の学習と本能です。

格子錯視は、低輝度や低輝度コントラストがあると脳内処理時間が長くかかってしまい、不鮮明なものを鮮明に認知しようとする高度な視覚の機能のためにおきてしまう錯覚なのです。

図のような格子状の模様のことで、白の交差点の部分が灰色あるいは、やや影になったように見えます。

このような錯視は、視覚のエラーではなく、色調、コントラストの違いなどを調整してものをよく見ようとする働きです。

また、細かい模様や色を正確に認知出来ない事による錯覚もありますが、これは、細かな一つ一つにこだわるよりも全体像で捉える事の方を優先させている為です。この無意識の能力のおかげで、ラッシュ時でも、我々はその１人１人を確認はしませんが、全体の動きを推測して、人にぶつからないように歩く事が出来ます。

また、Richard Nisbettは、デパートで四組の同じナイロンのストッキングを台にのせ、通りかかった客に一番気に入ったストッキングを選ぶ実験をしました。すると、一番右側の商品が他の4倍の割合で選択されました。客に選んだ理由を聞くと、感触や質やデザインなどのクオリティの理由を上げました。実際には強い位置効果の結果であるのにかかわらずです。この実験でもわかることはヒトが内面的な過程について言語化する時に、後から理由を探して合理化し、真の理由に言及できない事が多々あることを証明しています。

これらの無意識行動を意識のもとでコントロールしているんだと信じ込みむようにするのが、脳の特徴です。そして後から無意識行動の結果に対して言い訳のような理由付けをして、自分の脳機能を納得させています。迷いや不確定さから判断ができない状態を継続させないために必要なのが「勘違い」です。

判断しているのでは頭（意識）ではなく心（無意識）

実は、頭で判断するように、ヒトの体は造られていません。

「大脳皮質には意思決定の機能はない」と言うと、首を傾げると思いますが、実はこれが脳機能学でも確認されたヒトの脳の仕組みです。どういうことかと言うと、大脳皮質は最も高度な情報処理を行う脳機能の最上位中枢であることに間違いないのですが、ここで如何に知的で論理的な判断が行われようとも、辺縁系の情動反応が危険かどうか、快かどうか、好き嫌い、やりたいやりたくないの判定を下さない限り、実際にはそれが行動に移されることはないからです。

行動とは目的を達成するために選択されるものです。思考や想像では行動選択の動機が成立しないのです。行動に必要なのは心の情動判定なのです。

なんでも意識で判断していると思っている人が多いので、具体例を挙げてみましょう。

急に大きな音がして驚いた時　　　　　　　　　　　　　　　意識して体がビクッとしましたか？

緊張してまばたきをした時　　　　　　　　　　　　　　　　意識して目を閉じる回数を決めていましたか？

思い切って走った後に立ち止まった時　　　　　　　　　　　意識して呼吸を速くしましたか？

自信なく話しながらクセで手を口の前に置く時　　　　　　　意識して手で口を隠しているのか？

布団の中で夢を見た時　　　　　　　　　　　　　　　　　　意識して夢を見ようとしましたか？

チャイムが鳴ったので玄関に行った時　　　　　　　　　　　意識して右足から動かしましたか？

曲が流れてきて、涙が流れていることに気がついた時　　　　意識して悲しくなって涙を流しましたか？

音楽を聴き運転をして、目の前の車が急に停まった時　　　　意識してブレーキを3センチほど踏みましたか？

隣の友人が大きくあくびをした時　　　　　　　　　　　　　意識してあくびをしてしまいましたか？

テレビを見ながら、机の上にある水を飲んでいる時　　　　　意識して飲みましたが？

他の例を探す

意識とは無意識の上に浮かぶ氷山の一角でしかありません。殆どのことが意識下のもとで行われています。

生物（植物・動物）がこの世にサバイバルするために大事なことは体のレベルで十分です。しかしそれでも足りない時には動物は心のレベル（条件反射）が対応します。そしてそれでも追いつかない時にはじめて頭のレベル（霊長類）が出動するわけです。言ってみれば「緊急事態」が起きた時の切り札として意識があるのです。この時は緊張状態にあるので、体にはいろいろと無理がかかってしまいます。緊急事態でない時は、意識を休めてあげるのが、ヒトをはじめとした生命体の自然体です。

閉じることが意識で、開けることが非意識であるというメタファー

後でこのの図像を書いて説明しますが、ここではメタファーを。

意識と非意識の関係はパン作りの焼く作業と発酵の作業に似ている。

非意識とは、小麦粉をねって発酵させている状態。オーブンの中に閉じ込めず、外に開いている。パン生地は生きているので外に置いておくと膨らんでいく。

意識とは、オーブンの中に入れて焼いている状態。オープンの中に閉じ込めないと、焼くことができない。しばらくすると生地の中にいた微生物は死んでしまうが、形が定まったパンができる。

発酵の働き手は微生物。彼らはパン生地の糖分を食べて、オナラCO^２をして生地を膨らませ、ションベンをしてよい（良い・酔い・醉い・好い・佳い・依い・嘉い・善い・美い・可い・快い）香りを付ける。

彼ら（微生物）からみれば、生かしてくれるのがオープンな状態の自然発酵。常温という天国（絶対温度、湿度）で大きく育っていく。

殺されてしまうのが、クローズの状態のオーブンの中。灼熱の中で死んでいく。

今度は逆にヒト（意識）からみれば、オープンな状態を使って、食べやすいように柔らかくして、好みの香りをつけて他者を利用する。しかしこのままの状態では小麦粉が生で食べられない。そこで閉じ込めて「力」を「形」に変える必要がある。するとやっとヒトは摂取することができる。閉じ込めて焼かないと、ヒトには受け入れることができない。

また、閉じ込めることが意識にとって大事であるという例としては、意識を集中させている時は、外からの情報を閉ざして、人が呼びかけても聞こえないで、意識の世界の住人になっている経験をしている人は多くいるでしょう。

ここでもう一度、意識の特性と弱点について見てみましょう。言語を使うので、視点はもちろん非意識ではなく、意識の側から見た景色です。

非意識からみると、意識が見た実体と虚像が逆にひっくり返って見えます。ヒトが構成する組織とカミの視点がちょうど逆になるように。

（例えば教会とイエスが言ってることがまるっきり反対のように　　新約聖書マタイ伝13章、19章）

	明暗	開閉	囲み	特性	運動	美学	焦点	対象
意識	光	閉鎖	内と外	差異	収縮	違い	一つ	外にある
非意識	闇	開放	額なし	統合	弛緩	同じ	ぼやける	同一化

	時空	時間	空間	形状	無限	原因と結果	秩序
意識	時間と空間	時の順流	固定した空間	樹木状	有限	因果関係	整理整頓
非意識	時空	時の順逆	ワームホール	網目状	無限	非因果	散逸

	人口密度	密度変化	地勢	地理	人工・宇宙	理・実	組織	家
意識	過密	増大	都市	平地	ヒト	理念	エリート	書斎
非意識	過疎	減少	村	凸凹・海	自然	現実	民衆	家の外

		内と外	全と部分	脳・体	大脳	左右脳	優劣
意識	固定	中心	部分性	脳	大脳皮質	左	優
非意識	流動	辺境の外	全体性	体	大脳辺縁系	右	劣

	古ギリシャ	組織宗教	科学	唯識論	イエス	ヒンズー			認識論
意識	ト・パン	有	実体	色	罪	仮の姿	歴史性	対象	認識
非意識	ト・ホロン	無	空虚	空	全体・カミ	実体	本来性	同化	一体化

意識の限界

閉じないと思考ができない　しかし事実は閉じていない。

実は意識とは、周りと遮断されないと、発動されないものだということに、注目して欲しい。

意識から生まれる思考を見ればわかるように、何かについて考えるときに、外からの情報を遮断して、自分の世界に入ることが必要である。そうしないと絶えず五感から入る刺激によって、思考を続けることができなくなる。

例えば、ゲームや本や仕事や想像で夢中になっている時に、周りの音や人の声が聞こえてこないことがある。これはまさしく「閉じて」いる状態で、意識の特徴である。

意識はそのように閉じないと発動されないのは理解できるが、目の前の現実は閉ざされておらず、常に変化する「開いいた」世界のものだ。

ものを思考するときに、閉じて「自分」を作り出す必要があるが、思考した後は、思考した内容も単なる仮のものとして扱い、絶対に正しいとして固定化したドグマとはせず、閉じた両端を開放して、また開いた世界に戻ることが必要となる。

意識で理解したものは、常に「仮り」のものだという自覚が必要だ。

有名なモンティ・ホール問題は、固定された意識は事実と異なるので、意識は常に更新され続けないと外界を把握できないことを示している。200％の確率で未来予想が外れてしまう例である。

モンティ･ホール問題

ここに、3つのドアがあります。

どれか1つには、ドアの向こうに豪華賞品があり、それ以外はハズレ（空）です。

どのドアの裏に豪華賞品があるかは、司会者のモンティは知っています。

参加者は、まず、3つのうち、どれか１つを選び、司会者のモンティに伝えます。

モンティは、それを受けて、残りの2つのドアから1つ、空のドアを開けます。

そして、あらためて参加者に、どちらかを選ぶように伝えます。

今、参加者が、ドア�@を指定しました。

モンティは、残りのドア�A と ドア�B から、ドア�Aを開けました。

参加者は、ドア�@ か ドア�B をあらためて選ぶことになります。

どちらが確率的に有利でしょうか？

１．ドアが３つあります

２．その中に　当りが１つ、ハズレが２つ　あります

３．あなたは、ドアをひとつ選べます　

４．あなたが選んでいないドアを司会者が開けます

５．開けられたドアは　必ず「ハズレ」です

６．あなたは、ドアを選びなおす権利があります

７．選びなおさない権利もあります

問い・・・あなたはドアを選びなおしますか？　　選びなおした方が、勝率が上がると思いますか？

「選びなおさない」派の気持ち

・残った　どちらのドアも　確率的には　1/2　なので、直感を信じる

・もし、選びなおして「ハズレ」ると、後悔する

「選び直す」派の気持ち

・選びなおした方が勝率が上がるから

・ドアを開けられた時点で、確率が変動するから

解説の例

豪華賞品のある確率は、各ドアとも1/3 ずつです。

つまり、参加者が選んだ以外のドアは、2/3でした。

その内の、一つが無くなったので、選んだドアが1/3、そうでないほうが2/3です。

直感的に、分かりづらいかもしれません。

その場合には、ドアの数を増やせば、納得がいきます。

ドアが1000個あった場合に、選んだドア以外から、モンティが、998個の空のドアを開けたとします。

残った２つのうち、どっちに豪華賞品がある確率が高いかは、直感的に分かりますよね。

　　　　　　　　　　

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閉じることのデメリット

まずは「閉じ」なければ「分ける」ことができない。スポットライトとは、範囲を固定させて「閉じ」ていることのメタファーです。

そして「分け続ける」過程で必ずあるもの（全体としては本質的なもの）が失われてしまうという事実を再確認することが大事な時がある。

全体は部分の総和以上であり、全体の属性は部分の属性より複雑である。それゆえ複雑な現象の分析は全体像の断片を明らかにするだけである。断片はわかっても「分ける」認識方法では全体は把握できない。

宇宙を含め有機体は、構成する要素はその性質に依存しているが、要素が結合され上位に変じてはじめて全体の性質が姿をあらわす。

ところが、断片の寄せ集めでもって「○○にすぎない」といいきり、独断することで、対象物を固く変化のしないものに押さえ込んでしまう世界観がある。これを還元主義である。基本的に多くの学問はこのような前提に立っている。還元主義を避けるためには、学問が法則を作り上げて「形」にした後に、実はこの法則はある特殊の条件のもとでしか通用しないといって、今まで作り上げた体系を全部なげすてて大声で笑うことである。

例えば、量子物理学で、素粒子を集めて原子核を形成すれば、もはや素粒子では説明できない新しいものが創造される。この核の周囲に電子を配置して原子を作り上げたり、原子を集めて分子を形成した場合等にも、同じことが繰り返される。無生物界は、単純な分子といった低レベルの編成で止まっている。

次に生物界ではもっとすごいことがおきる。分子が集まって巨大分子となり、巨大分子が細胞内小器官（ミトコンドリア、葉緑体、細胞膜、リボソーム、細胞核など）を形成し、ついにはこれらがすべて集まって、偉大な創造の神秘である、びっくりするような内部規制を備えた細胞を形成する。つぎにこの細胞が寄り集まって「高等動物」やますます複雑な個体（たとえば、あなた）を作り出す。各段階ごとに、より複雑で繊細な性質が産みだされ、最終的には、基本的な（物理学と化学）規則は不変であるが、無生物界には例を見ない特性がうまれる。

外宇宙の内在モデル、そして自己は知覚できない

ヒトは意識で知覚した外部の出来事を脳内に小宇宙のモデルとして作りあげる。しかしこのモデルの一部しか意識はとらえることができない。何故ならば、モデルは常に出来事の一歩遅れをとっているからである。宇宙のハテや、自分全体を統合している「自己」に近づいても、近づいた分だけ「全体」は遠ざかってしまう。全体は常に変化しているのだが、意識は外界からの刺激を遮断して、固定からされた情報を使って思考しなくてはならないからだ。思考結果が出た時には、全体はもう新しい変化を起こしているのである。

例えば、宇宙や自己を暗闇に喩えとすると、全体をを知ろうとしてライトを当てると、そこは可視化できて詳細について語ることができるようになるが、肝心の知りたい暗闇はもうそこにはなく、その奥に追いやられてしまっている。

だから五感や意識を使って「マクロコスモスの意識化」や「汝自身を知れ」と言ってトライしても、決してたどり着くことができない。

常に一歩先に肝心なものが追いやられてしまうので、決して知ることができないのだ。

自己意識のメタファーを鏡とするのは、鏡が自分の行動を写し出すためだが、実際は、二枚の鏡の中で永遠に映り続ける像の方が実在に近い。すると、無限に続く像に注意が行ってそちらに意識が夢中になってしまい、自己意識は発動されなくなる。この場合は、視覚で「自己」を見ることができず、無限の像がこちらの姿をじっと見つめている。

意識の言い訳

意識は常に言い訳を考えている。

言い訳の仕方は可愛い。先ずは囲って範囲を決めたら、みんな（自分も含めて）が面倒くさくなるまで分け続けて疑問者（みんなと自分）がいなくなるまで続けることによって逃げきる、という戦法しかない。

なぜこんな簡単な方法が通用するのかというと、意識中心生活者はいつも意識を主なる判断の基準にしているのだけど、意識は一度に1つのことにしかスポットライトを当てられないので、飽きやすくて興味が次のことに移るという特性でできており、（そうでないと腹がへったり、眠くなったり、危なかったりする）最後まで自分が正しい状態のままで、思考を終わらせる（次の関心に移行する）ことができるからだ。この見事なやり方を繰り返すことで、自分自身を騙すことができるのがミソである。

意識が作った理念、そして理念という幻想

理念が幻想である理由は、理念とは理性を信念にしたものを理念と呼ぶと定義しているからである。

そして、基になる理性とは、意識が「囲って分けたもの」から「正しいものを選択する」のが特性だ。

ということは、理念の生みの親は意識でしかない。そう、意識とは目の前の出来事（現象）の一部を意識が理解できるように、時間・空間・因果律に分断したものだから、リアリティの一面でしかなく、部分で見ればその通りだが、全体から見れば幻想の一部であると言える。

それでも勝手に捏造した理念を押し付けてくる組織がある。

なぜか？

理念のおしつけてで、他者を踏みにじり、自分たちだけが利を得ることができるからである。例えば理念を利用することで儲けることができるように。

そしてこの戦法が、踏みにじられる側にいる意識の高い人たち、すなわちインテリと呼ばれる人たちが簡単に騙されてくれて踏みにじる側のスパイになってくれるからだ。そして都合の良いことに本人はスパイになっていることに気づいていないので、自白剤を打ってもなにも話すことはないばかりか、善意と正義と国の利権のためだと、ますます元気に両手をあげて喜び、仲間たちであるはずの踏みにじられる側の意識の低さを憂いている。

そんなバカげたことがあるのだろうか？

例えば、植民地政策が良い例だ。16世紀のアメリカ大陸ではヨーロッパがまずは理念を語る先兵（宣教師）を派遣して、相手が驚いている隙に、軍隊を送り制圧し、征服した後には商人を送り込んで、中南米の共同体を支配下においた。

宣教師・軍人・商人と３つに分けることで専門家に仕立て、各分野の職業倫理で働かせる。専門も倫理も意識が得意の「囲って分けたもの」でしかない。彼らの正体は、同じ船に乗ってやってきたヨーロッパ人でしかない。

そして全く同じことを、今ここで、どの組織も、他者に向けて実践している。意識の力を使うことで。

優秀に誠実に一生懸命に。これらが意識の特性であるために。このままでは意識の力で自分自身の体が弱ってしまうのにもかかわらず。

たとえば、平等という理念

平等の世界にしなければならないという理念がある。

だが先ほど書いたように、理念などは幻想なのだから、平等なことなどはこの世にはないし、それがとんでもない独裁を生んだりするのだけど、意識がある限り、理念を持つことは仕方がない。

そこで意識優先主義者はないことを、あると言うための方法を開発した。

それが文頭の「先ずは囲って範囲を決めたら、みんなが面倒くさくなるまで分け続けて逃げる」というやつだ。

はじめのうちは「平等」だと言っとけば、なんとかなった。

しかし社会主義国の結果を見て、平等なんておかしいじゃないかという声が出てきた。

そこで平等を「結果の平等」と「機会の平等」に分ける言い訳を始めた。

英語で言うとイーブンとフェアである。欧米人の言い訳が、日本でも流布した。

それからやたらと「フェアな精神」という言葉を使いたがる擬似インテリが増えることになった。

	因果	個と集団	主義	具象	実現化	是正方法の例
イーブン	結果の平等	集団の互助	社会主義	具体的	大きな負担	セーフティネット
フェア	原因の平等	個の可能性	理想主義	抽象的	キレイゴト	ハンディキャップ制

例えば男女は平等であるべきだ。

「男女は平等なのだから米俵を担ぐ重さも一緒にすべきである」というのが結果の平等で英語のイーブン。

「男女は平等なのだから働く機会は均等に与えられるべきである」というのが機械の平等で英語のフェア。

結果としての平等は、社会主義や共産主義のお題目ぐらいにはなるが、結果は階級を生んだにすぎない。

そこで、今度はフェアネスである機会の平等を唱え始めることで、理念のすばらしさを保とうとした。

チャンスは平等に与えます。そのチャンスを物に出来るかどうかは、その人の努力によって決まります、というわけだ。

逆に言うと、チャンスは与えたのだから、結果はどうなっても、そちらの責任ですよ、といっていることだ。

確かに、全ての人に等しく挑戦の機会を与える意味での平等、なんて冷静に考えるとあるわけがない。

親、家系、家柄、家風、素質、特性、事件、事故、環境、地域、言語、宗教、時代などの要因が多すぎる。

そこで次にやることは、この「機会の平等」をまた二つに分けて、「現実の機会」「理念の機会」とでもして、

「現実の機会」は平等ではないが、「理念の機会」の平等を目指すことが必要だ。

そこで、要因を数値化して、その指数で「理念の機会」を向上させていくだろう。

そして次には「理念の機会」を二つに分けて「形骸化された数値の機会」「理念である数値の機会」とでもして・・・。

論争相手が疲れきるまで、永遠と同じことを繰り返し続ける。

こう断言できる理由は、これが意識中心主義者の生き様であるから。

もっと論理的に言うと、意識の特性は「囲って、分け続ける」ことなので、どこまでいっても分けるかぎりはどちらに優劣が出てしまい、平等ではなくなってしまうから、また続きをしようとする。

これと同じ作業を精神分裂病　schizo（分裂）phrenia（心）（別名は統合失調症）の患者が意識の内面でしている。

自分を自己と体に分け、次に自己をキャラ（パーソナリティ）と本当の自己に分け、次に、本当の自己を仮の自己と本来のあるべき自己に分け、次に・・・。

この分裂を続けることで、自分は徐々に希薄になり、ついに自己の隠蔽と露出の矛盾の中で生きてしまうことになる。

一度固くなってしまった理念は、意地だとか、プライドだとか、信念だとかを持ち出してきて、キレイゴトを押し進めようとしてしまう。

参照

イーブンから由来するセーフティネットにも裏と表の顔がある。表の顔は「平等」や「福祉」や「優しさ」だ。

しかし裏の顔は今のシステムを保持するために、不満者たちを飼い殺しにする政策でもある。これがなければ利権者に不満をぶつけて立ち上がるのを避けることから作られた。だって同じ人間として生まれたのに、土地の権利書を持っているものは毎月多くの金が入ってきて、ないものは常に家賃を取られ続けなければならないのは、どう見ても平等ではない、と思って権利書を保管する役所を焼き討ちにしようとする動きがあっても少しもおかしくはない。

コラム

コンピューター主義者の背景と限界

第二章　理系の人へ

意識のルールの外側にあるもの 意識に収まりきらないもの

意識の外にある体感がある、といくら言い張っても、その体感を意識の窓を通して把握することはできます。例えば、酸素や放射線や電磁波は五感ではわかりませんが、機械のセンサーを使って数値化されれば、意識は理解することができます。また数値化されていなくても、意識の持つ想像力を使って例え（メタファー、アナロジー）で理解した気分にはなれます。

ただこの把握の仕方では、ものの本質を理解することができないこともある、というお話がこの二章のテーマです。

意識の窓を通じて理解したことなのに、、意識のルール（時間・空間・因果）には反する摩訶不思議なことが一杯あるのです。

それは寝ている時の夢だけではなく、現実の世界や、電子顕微鏡や天体望遠鏡でみた世界にも意識のルールだけでは収まらないものばかりでした。

いきなり時間ってなんなの？から始めてみます。

時間の不可逆性は意識の窓を通して見ているから

時間は過去から未来に向かって一定の速さで進んでいると考えられている。理由は時間の不可逆性は主観的な見解、すなわち意識を使った枠組みの窓から見ると、そんなことはない、と言える。

主観とは囲いを閉じた時に発動するので、閉じた時に限って時間は過去から未来に流れているように表現される。これは間違っていないが、意識の窓からみることだけでは辻褄（合理性）が合わないことが一杯ある。

負の時間を理解できない神経系

新たな時間の尺度を生み出さないと、時間が逆向きに進むことを受け入れることができない。時間軸の負の流れとは原因の前に結果が起こるということである。

長さ、幅、高さ以外の空間的次元を想像することも、明日から昨日に向かって流れる時間を頭に描くこともできない。人間の神経系（大脳皮質）がそのようにプログラミングされているのではなく、神経系の構造自体がそのようにできているからである。

「井の中の蛙、大海を知らず」　　「盲者の国」　Herbert George Wells

でも本当に時間が逆に流れたり、因果関係で説明ができないものなどあるのでしょうか？

これはヒトが言葉を持った時から直面した問題でした。

意識を使っている時にはそんなことは起きませんが、そうでない時にはそんなことが起きるのです。

宇宙にはエントロピーという法則があります。秩序あるコスモスが混沌としたカオスになるルールです。

例えば、木を燃やしてしまえば熱と灰になってしまい、熱と灰を重ねても元の木には戻りません。

またコップの水に一滴のインクを垂らしたら拡がり色水になりますが、元のインク一滴と水には戻りません。

囲ってしまった時空間では、秩序あるコスモスが混沌としたカオスになる、というルールです。

難しく言うと、全てのエネルギーが気体分子の無秩序な運動へと浪費されるような最大値に向かって増大する傾向を持つ、ということです。

意識が見る世界では、なんでもこのような方向に事象が変化していくのですが、ここに例外があります。

なんでしょうか？

無形が有形に、カオスがコスモスに統合されていく世界です。

単純な要素から複雑な構造が構築に向かう能力です。

そう「いのち」です。生命体の変化です。

生命体はエントロピーとまったく逆の方向に力が働きます。

「いのち」を定義する特徴は、個体維持である成長、種族維持である生殖、万物が流転する循環です。

このコスモス、エロス、ロゴスには、意識は困ってしまいました。

意識でこの生命体を見ることはできますが、どこに向かっているのか、それが何であるのか、何のためなのか、始まりと終わりはどうなっているのか、目的はあるのか、を説明することができません。理由は前章で一緒に考えた意識の特性からです。

意識で説明はできないけれど、対象物として見たり触ったり嗅いだり聴いたり想像したりして把握することはできます。

これをどう表現するかは、古今東西でアーティスト、科学者、哲学者、詩人たちがいつもチャレンジしてきました。

漁師、百姓、庶民にとっては当たり前のことなので、これらを対象物として扱う必要もなく、黙って自分の中にある「いのち」に手を当てました。

勘違いしているインテリは頭に、庶民は胸に、漁師は、ヘソ下に。これが暗黙知です。言語化できないもの、すなわち「分けて」名前をつけることができないもの、つまり「一」であり「全体」です。

各自の言い方があります。

意識の視点では呼び名が各自によって違うので、ここではひとまず「いのち」といいます。

ここには、生命体、銀河の崩壊と再生、ビッグバン、素粒子の消滅と再現も含まれている「いのち」です。

ヤングの光の干渉実験

　　

1805年、トーマス・ヤングが、光源からの光を平行な2つのスリットを通すと衝立上に干渉縞を生じることを示した。光の波動性を示す現象である。量子における粒子と波動の二重性を示す実験

光が粒子であると同時に波動でもある、ことを実験で示した。

これはAかBのどちらであるという論理学の考え方では把握できない事象であり、今までの思考パターンでは説明がつかないが、実際に目の前には光は粒子と波動の療法として壁に模様をつけている。

中性子のベータ崩壊　

また、量子力学の世界では、中性子の崩壊を絵で表現しようとする試みがありました。ファインマン・ダイアグラムと呼ばれる図で、物理学者のRichard Phillips Feynmanがチャレンジしました。

　　　　　　　

直線はフェルミオンを表し、波線はゲージボソンを示す。ダウンクォーク d がアップクォーク u に変換されるときウィークボゾンW-を放出し、不安定なボゾンは電子e-と反ニュートリノに崩壊することを表している。

この図の場合は時間の流れを縦にとり、下が始状態(initial state)、上が終状態(final state)となっている。

ファインマンの粒子図では時間の流れが逆になる瞬間がある。ごく小さな時間間隔のなかでは、「以前」と「以後」の概念は適切に定義できない。 Heisenberg 1958 The Physicist’s Conception of Nature

物質とはエネルギーの凝縮である　　m＝c^２/E　　　E=mc^２　ｍは質量　cは加速度　Eはエネルギー

高エネルギーの粒子が互いに衝突して消滅したり、べつの粒子を生成したりしながら新たな事象の連鎖を引き起こしている。この幻想的な出来事は、シヴァ神の創造と破壊の踊りとして表現されている。

量子跳躍　　quantum leap

物理において量子跳躍とは、原子内の一つの電子がある量子状態から別の状態へ不連続的に変化することである。 その電子は、一時的に重ね合わせ状態にあった後、あるエネルギー準位から別の準位へ非常に短時間で「跳躍」する。

この跳躍に要する時間は、スペクトル線の圧力広がりと関係する。 量子跳躍は、量子化された光子と呼ばれる単位の形での光の放出も含む、電磁放射線の放出を引き起こす。

実際の物理系では、量子跳躍は大きな変化である必然性はなく、実際とても小さなものであり得る。 この一つの良い例として、水素原子のボーアモデルを挙げることができる。異なる量子状態の変化（量子跳躍）に関係する観測されたエネルギー変化は、完全な自由電子に必要なエネルギーと比べて、小さいものから大きいものまで広範囲に渡る。

この現象は、エネルギー準位は連続的であるとする古典物理の理論に反する。

視覚では捉えられないもの

素粒子の姿を想像で現出させようとしたり、視覚的にとらえようとしたりするから、素粒子を誤解してしまう。

原子は「もの」ではない。原子の殻を形成する電子は、もはや古典物理学的な意味での「もの」、つまり位置、速度、エネルギー、大きさ、といった概念で確定的に記述できるものではない。原子のレベルでは、時間と空間の中の客観的世界など、もはや存在しないのである。

Heisenberg,W 1971 Der teil und das ganze 　　The part and the whole

意識的認識の矛盾

ハイゼンベルクの不確定性原理　　　

ゲーデルの不完全性定理

視覚の限界

視覚に限界があるのは、眼の水晶体の構造にある。水晶体はカメラのレンズと同じように、焦点距離を一つに選択しなければならない。距離が違うものを同時にはっきりと見ることができないメカニズムになっている。三次元のこの世界では一つに焦点を合わせると、他はぼやけてしまうのである。

そこで、ルネッサンス絵画は人物と背景の両方に別々の焦点を与えることで、現実にはあり得ない錯覚を与えることに成功した。

これと同じ手法をニュートン力学は真似た。これが彼と後継者が発見した法則の秘密であり、限界でもある。

古典物理学では粒子は常に位置と速度を有していなければならなかったが、素粒子のレベルでは状況が一変した。

たとえば、電子の位置を正確に測定しようとすればするほど、速度は不確定になり、逆に速度を正確に測定すれば位置がぼやけてしまった。

「粒子」であり「波」である電子固有の二重性が、位置と速度の同時測定を、現実にも、理論的にも不可能なものにした。

素粒子レベルではどんな瞬間でも未決定の状態に有り、つまり「自由」である。何も確定的ではなく、ただ確率的でしかない。極致の世界では、確率の法則が因果律に取って代わった。「自然は予言できない」のである。

隠れたる変数

未来の賽の目は予測できないが、実験回数が多くなるほど、結果は予測された数値に集約されていく。

アインシュタインは「神はサイコロ遊びはしない」といって、曖昧さをベースにしている確率でこの世界を観る見方を否定して、確実性をベースにしている因果関係でこの世はできていると主張していた。

彼は素粒子レベルの下にある種の実体が存在し、それが一見不確定と思われる過程を支配していると考えた。

まだ発見されていない変数があると、「意識」は断定するしかなかった。

ところが、波動方程式を始めとする確率論で結果を予測する考え方を量子物理学者は次々と受け入れていった。

「非物質的であるが真の実在」として意識とむすばれている、そしてそれは時間と空間から独立していて、量子力学の波動関数によって物質界とつながっている。Walker E. Harris 1973 I, for the study of Consciousness

精神は電気とか重力と同じレベルの普遍的な実在または相互作用であり、E=mc2と類似した変換式が存在するはずだ。V.A.ファーソフ　Firsoff　1967 Life, Mind and Galaxies

超空間　　平行宇宙　時間の逆流　多次元時間

アインシュタインの時空は、時間とともに変化する空間の履歴でしかないので、宇宙自身が動くにはそれよりも大きな舞台が必要となる。それが超空間で、三次元でも四次元でもない「無限」の次元であり、どの点をとってもひとつの完全な三次元世界を構成しており、すぐ隣の点は、これとわずかに異なるべつの三次元を構成している。　Chase, L.B. 1972 University A Princeton Quarterly

電波望遠鏡や粒子加速器を使うとデータがニュートン力学では整合性を失い奇妙になるため、これを説明するためには理論も奇妙になってしまう。

ジオメトロダイナミクスの空間は、ゆったりとうねっている風景の一面に敷きつめられた泡の絨毯のイメージだ。

新しい泡が生まれては古い泡が消えていく。これが空間の量子的ゆらぎを象徴している。

特質は「多重結合」である。素朴な三次元ではたがいに遠く離れてみえる二点がトンネルのような「穴」を通して、一時的に直接つながることがある。この穴はwormholeと呼ばれ、現れては消え、消えては現れ、絶え間なく形態を変える。宇宙の万華鏡である。

Wheeler,J.A.　1967　Battelle rencontres

コラム

無限を理解する方法

ブラックホールとホワイトホール

なんでも吸い込むブラックホールの先は、別空間につながっている。それがホワイトホールだ。

小さなビッグバンのように、つまりスモールバンとして、なんでもそこから生まれてくる。

超空間のワームホールをとおして遠い宇宙とコンタクトができるのならば、テレパシー程度がはたして不可解であろうか？

マッハの原理

地球上の物体の慣性質量は宇宙の全物質によって決定される。説明はまだ未熟。

慣性は物体に固有なものではなく、物体が全宇宙に取り囲まれているという状況によって引きおこされる。

この公式化はほとんど望みがない。

宇宙全体が局所的な事象に影響を与え、同時にいかなる小さいものでも宇宙全体に影響を及ぼしている。

ベルの定理　トランスポーテーション？　　　アインシュタイン＝ポドルスキー＝ローゼンのパラドックス

二個の粒子が衝突して反対に飛び去ったあと、どちらかが一方の粒子に何らかの外的影響を加えると、距離がどれだけ離れていても、その影響は直ちにもう一方の粒子にもおよぶ。

量子は空間で離れていてもからみあいお互いに遠隔作用をしており、そのスピードは光速を超えている。という結果が実験で繰り返されている。

空間的に繋がっていない複数の系が互いに密にむすぼれているということ。

量子もつれ quantum entanglementともよばれ、

(1) 量子多体系において現れる、古典確率では説明できない相関やそれに関わる現象

(2) LOCC（局所量子操作及び古典通信）で増加しない多体間の相関

複合系の状態がそれを構成する個々の部分系の量子状態の積として表せないときにのみ、量子もつれは存在する（逆は必ずしも真ではない）。このときの複合系の状態をエンタングル状態という。

世界は個々に独立した部分に分解できるとする古典的な発想を否定する「不可分な全体」

アントン・ツァイリンガー（Anton Zeilinger）がカナリア諸島で行った実験で、光子の量子テレポーテーションを実現をさせた。

パウリの排他律

原子内の電子軌道は一度に一個の電子しか収容できない。これが原子が崩壊せず秩序がある理由である。

自然で起きている統合的な動きは、このパウリの原理からきている。これは対称性の原理であり、これが原子を分子に、分子を結晶に結合する力が生まれている。物質の不可分性と安定性はこの排他律によって成り立っている。しかしこの原理は力のようにふるまうが、力ではない。ただの数学的な対称性である。

シンクロニシティー同時性　非因果的な連結の原理

意味の上ではつながっているが、因果関係には繋がっていない、複数のできごとが同時に起こること。

全く無関係な二つの因果の鎖がcoincident（偶然なる必然）出来事の中で、一見偶然のように絡み合う現象。

ラテン語coincidIns (co 同時に＋in-＋cadere落ちる＋-Ins現在分詞語尾＝降りかかる→起こる）

カメラーはcoincidenceは、たんに氷山の一角であり、いたるところで見られる連続性の現象のうち、たまたま目に留まるもの、とした。

宇宙には物理的な因果律と共存しながら、多様性のなかに統一をもたらそうとする非因果的な原理が作用している。これは万有引力があらゆる物質に無差別に作用するのに対して、連続性の法則は、選択的に作用し、似た者同士を空間的、時間的に一点に集合させる。形は類似性によって結ばれ結晶となり、時間的周期を繰り返し反復運動を起こす。たえずかき混ぜられて再配列されているにもかかわらず、似た者同士を集めていく。

ユングとパウリが作ったシンクロシティの図

「空」 不滅のエネルギー　

因果性　　　　　　　　　　　　　同時性

　

　　　　　　　時空連続体

因果性ではない宇宙観　　部分は全体　全体は部分

時間的に進行していく因果的な鎖一本一本を地球の経線とすれば、同時に起こるできごとは平行した緯線の数々だ。この異なった二つの線の結びつきがヒトの人生だ。　Schopenhauer 1859 sämtliche Werke vol8 全集

進化　系統発生と形態学

自然はひとたび重要なパターンや構成部品やプロセスの特許を獲得すると、驚くほどそれに固執する。この固執が規則となり安定を担う。規則と進化はコインの裏表である。

「脊椎動物はある一貫した計画のもとに造り上げられている。その計画とは、走り、登り、泳ぎ、飛ぶために骨の形を変えることはあっても配列は変えないということだ。」1818年ジョフルワ・ド・サンティレール　生物学

この基本配列が「進化の規範」であり、水や大地や木といった環境の違いの対応が「進化の戦略」である。

エラが肺になり、一番上の穴が耳になった。

ねずみも人間も細胞内小器官は同じ標準モデルが使われている。

アメーバとピアニストの指はどちらも、収縮性タンパク質を使ったラチェット機構である。

全ての生命体はたった４つの化学分子だけで遺伝情報をコード化している。

この「規則と戦略」が、進化の理論、自由意志・決定論、ヒトの心の病と創造性といった問題を解く鍵となる。

細胞の形態　　ルールと変化

受精卵には完成品を定義するすべてのポテンシャルが存在している。この先に生まれてくる個体の「概念」であり、以後の一連の文化段階の中で明らかにされていく。

胚発生の初期の段階でいじればその周辺の全細胞の結果が変わる。

初期のイモリの胚の尾になるべき部分に脚になるべき部分を移植すると、尾にはならず脚になる。これは遺伝コードという規則の枠内で胚がとる「柔軟な戦略」の例である。

後期の分化段階で、将来の器官の原形をを形成する組織を半分切り取っても、器官は半分だけ形成するのではなく、完全な器官を形成する。

遺伝コードに定められた規則に従うが、同時に自由度も十分に有しており、環境の偶然性に左右されながら様々な発生経路を歩んでいく。

部分だが全体として生き続けた心臓

アレクシス・カレルが行った実験で、孵化前のニワトリの心臓の一片の組織を培養液の中で何年も脈を打ち続けた。

多様にして一様

ピタゴラスの「天球の音楽」

ヒポクラテスの「万物の調和」ひとつの共通の流れ・息づかいがあり、万物は調和している。

ひとつひとつは、部分的には物理的な原因によって、大部分は隠れたる親和力によって互いに結ばれている。

タオイズム、仏教、新プラトン派の中心思想　催眠的魔術、占星術、錬金術の礎

まずはじめに、物ごとには、それ自身と一体であり、それ自身で構成され、それ自身と結合している統一性がある。

つぎに、ひとつの被造物が他の被造物と結合しつつ、この世の部分一つ一つが一個の世界を構築していくという統一性がある。

宇宙のどんな部分も他と切り離すことはできない。

Pico della Mirandola 1557 Opera Omnia 　全歌劇

無秩序が秩序を生み出す秘密　　ブラックマジック

確率の理論　大数の法則　コイン投げを数多く繰り返すことによって表の出る回数が1/2に近づく

これがマジックだと言われのは、確率の理論をつかえば、多くの出来事について、薄気味わるいほど正確に結果を予測できるのに、個々の出来事は予測不可能である。全体では確定性だが、個々では不確定性である。法則性を持った全体的結果だが、この法則を生み出しているのは無秩序な出来事の集積である。これがパラドックスと言われる理由だ。因果関係が逆になっているからだ。

確率probabilityの法則（大数の法則law of large numbers）は現実に働く。　物理学、遺伝学、経営計画、保険会社、賭博場、世論調査

では、なぜなのだろうか？偶然と必然、自由と運命

実はだれもこの「なぜ」を説明できない。

この「無秩序から秩序へ」の原理はそれ以上の何かに還元できるものではなく、ただ「そこにある」だけだ。

なぜと問うことが、「なぜ宇宙があるのか？」「なぜ空間に三次元があるのか？」を問うことに相似する。

原子爆弾開発に関わったハンガリー出身のアメリカ合衆国の数学者のジョン・フォン・ノイマンはこの確率の法則をブラック・マジックと呼んだ。

放射物質の崩壊もこのマジックの一つだ。

一個一個は予測不可能な放射性原子だが、全体としては完全に予測可能なものだ。シュレディンガーは「無秩序から秩序への原理」と呼んだ。

崩壊する時間点は、その原子の過去の履歴や現在の環境に依存しないのである。温度や圧力といった化学的や物理的な要因に影響されない。環境といっさいの因果関係なくこの世に存在する。すなわち気まぐれである。

それでもなお、そこには目に見えない非因果性の関係があるので、結果を予測できる。

放射能性物質の半減期はいかなる状況下で完全に一定しているからである。

例えばトリウムCは60.5分、ウラニウムは450万年

一体何の力が、この制御と確率的結果への修正をしているのだろう。

わからないので、ここで仮の法則を用いて、この現実を合理的説明を与えるしかない。

それが「非因果的な結合力」である。これは粒子と波、機械と精神が相補性があるように、「物理的な因果性」と保管性がある。別名は「同時性」「隠れた変数」「連続性」「合流的な事象」「サイ場」だ。あの似た者同士をくっつけてしまう力だ。

この力の目的と意図は不明である。探しても見つからないというのがこの結合力の定義なので、何をどうやっても見つからない。それがポイントなのだ。見つかるようなものであればこの世は始まらないし、いまこの世も存在しない。これをヒトは神秘と呼ぶ。いのち、カミ、空、一、無、大いなるもの、量子の泡、宇宙、などその人が属している世界で呼び名は変わる。

この、進化、高次の秩序と統一、意識と直接の濃い相関関係がある法則を賢人は各自の表現を使って表している。

共通点は、混沌から調和を生み出そうとする宇宙の不可分の力だ。

ワームホールや同時性や思念コミュニケーションなどの非因果的な双方を通して作用する統合傾向だ。

意識を使った分別によってできた言葉とは逆に、分けずに統合することで体感できるものなので、意識ではとらえることができないが、このような言葉では方向性を示め指して、わびることはできる。

だからこの現象を文字という意識の世界の枠組みで立証するには十二分の莫大な統計的証拠があっても、これを認可しようとしない。再現性がないからだ。すなわち次に何が起こるか予測できないからだ。

物理的な因果関係（運動、ポテンシャル、熱、電気、核、輻射、位置などの相互に換金できる貨幣のように変換できる）とは対をなしている。

ノイズを自動的に遮断してしまう脳のメカニズム

たまに「閃き」を脳が感受する時があるが、知覚の刺激量が小さいので、それが信号となって意識に伝わるのがむずかしいのではないかと推測される。

生命体の生存にかかわる情報が最優先されるので、他の情報を拒絶もしくは無視する。

神経、とくに中枢神経と脳は、五官から入ってくる莫大な情報量を整理するために、情報を画素に分解し、フィルターをかけ、必要なものだけを次には統合化して意識の舞台にのぼらせる。そう多くは不適応なノイズとして遮断するのだ。この遮断するメカニズムのおかげで、理性は安全に守られている。逆に言うと、ノイズと判断されてしまったメッセージやイメージや直観や符号的なできごとは感知したり認識したりすることができないのだ。

しかし、そこで「閃き」の刺激は感覚刺激に交じることで電気信号化されるのではないか？それはいつもと違う信号で意識に届くので、変わった感じとして認識される。特に意識で通用する形式をもつ必要のない、意識の弱い無意識的な状態、例えば白昼夢や瞑想や夢の時に認識されやすい。

またラジオのチューニングように、近接周波数として歪んだ形で捉えることはできる。

ノイズは違う次元の周期的なメッセージの可能性がある。ここではノイズになるが、読解するコード（エンコード）を変えればそこに規則性があることが分かる時がある。

生物学者ローレンツの生得的解発　　　『鏡の背面』　鏡に映らない背面の姿とは？

「生きたシステムのプロセスとしてしか現れないものがいっぱいあるんだ」

ジャック・モノーは『偶然と必然』で、自然の客観性を記述できることが科学の使命だと考えていた。

ローレンツはその客観性こそがあやしいとみなしていた。

ローレンツが構築したい科学とは、認識する主体も認識される主体も同種の現実に帰属しているときに、これを同時に記述できる科学だった。鏡に写った現象と、その鏡を見ている者の現象とを、同時に問題にする。

主体と客体に分けるのではなく、二つの主体がぶつかりながら、同時に認め合う視点だ。

ヒトの目を単なる道具として理解するのではなく、それ以前の生物がつくりあげてきた器官性をもとにしながら、新たな環境や変化した生活にあわせて発達させてきた生きたもの、とする見方である。

「知識の対象と知識の道具は、当然ながら分離されるはずはなく、一つの全体として共にとりあげられなければならない」。

同時に見るようにする。そのためには、そのように見える「視点」をつくらなければならない。

これに比べて、カントの「先験的なもの」やカール・ポパーの「知覚装置」は主体は含まれない対象でしかないので、鏡に映りこんだ像だけで、背面には関心がない。

「生物が確率の法則に一見矛盾するかたちで、つまりありそうな事態からありそうもない事態の方向へ、単純なものから複雑なものへ、低い調和をもつシステムから高い調和をもつシステムへ発展することである」。

「時間・空間・因果関係」で説明する科学では、奇妙なことをやってのけているにもかかわらず、生命現象はこれまで発見された物理法則に反してはいないし、熱力学の第２法則も破ってはいない。すべての生命現象は、「宇宙に放出される、物理学でいういわゆる消費エネルギーの“余り”で維持される」ので、生物とは、正のフィードバックの回路においてエネルギーを獲得するシステムなのである。このようなことはジャック・モノーが唱える科学では矛盾していることになるので、取り上げないで無視をして、意識のルールが通用する事例だけを科学のまな板の上に並べてきた。

しかし矛盾したことを同時に扱うことができる視点から見ると、この生命体にはすごい特徴がある。

コピーしながら独創的であり、独創的に見えてコピーしている。

いいかえれば、規則に従いながら自律的で、自律的でありながら規則に従っている。

そしてこの生命のシステムは、「全体はその部分の総和より多い」

個体発生と系統発生の比較して、認識の仕組みを考慮していると次のような共通性があった。

１　どんな単純な生命システムにも他の生命とは自立して機能する“装置”がそなわっているということ。

２　生命現象にはすでに先行していた機能とはちがう新たな機能がたえず統合的に現れ、そのようにして現れた機能は次々にその生物の生命現象の構成要素になっていくということ。

３　ただし、そのようなシステム特性だけを取り出すのは不可能であるということ。

ローレンツは「生得的解発」という言葉でこれらを説明した。

解発とは動物が同じ仲間同士持つ特性によって、求愛、採餌、威嚇などの行動を誘発されることで、言語を使わずにコミュニケーションをとることである。条件反射が通用する世界でもある。大脳皮質が司る意識ではなく、大脳辺縁系が司る無意識や、脳幹が影響をうけいている非意識のコミュニケーションの仕方だ。

生物の現象はつねに不変性や恒常性を維持するための闘いによってつくられてきた。そして同時に、常に今までの形を破壊してきた。それは、環境の激変や遺伝子の狂いによって破壊されることもあるし、個体の選択によってでもある。

そしてこの創造と破壊には、どのような目的やルールはあるのか？

サバイバルに大切なもの（例えば毛・嗅覚・消化力）がどんどんと人類の進化において捨てられているところを見ると、そこには先験的な計画性がないことがわかる。

カミはあらかじめプログラムをインストールしてくれていないのだ。

するとどのような働きによって自律性や独創性が生まれるのか。それについてのプログラムも書かれていない。

しかし私たちは知っている。太陽や月の公転や地球の重力などの宇宙のリズムに共鳴して常につながっているものがあることを。私は非意識といい、人は「いのち」とも「宇宙」とも「カミ」とも「大いなるもの」ともいう。

時空や生死を飛び越す心霊的感覚の有無

心霊的感覚を使わなくなってしまった人類は、あたかもそれが事実ではなく、ないことを我慢して生きている人が多い。

ある人のことを強く思っていたらその人から連絡があったり、死ぬ前に枕元に立った友人の経験がある人は、単なる偶然では理解できない不思議さを体験した人もいるかもしれない。

ヒッグス機構

仮説とされていたヒッグス粒子の存在が、2012年に欧州原子核研究機構の実験によって発表された。

完璧な５つの対称性を数式化して計算すると、質量が０になってしまう、という矛盾から、「自発的対称性の破れ」とよばれる理論が生まれた。

立っている鉛筆が倒れるように、はじめは美しかったものが、その後に勝手に美しさを失う、ことをアナロジーとした。

「完璧な美しさは崩れる運命にある」を説明するために想定されたのがヒッグス粒子であった。　　

対称性→非対称性　　　力→形

理論的な美しい（対称性のある）数式では質量が０となるが、これにヒッグス機構を加えることで「重さ」が生まれる。

重さがあるということは力が形になったということでもある。

コラム

わびの世界

意識外を体感する主体は何か？

ネオ生気論　バイタリズムの復活

意識の限界を知ったらできること　　智性とは意識の限界を知ってできること

20世紀のインテリの現状は、

因果律と決定論をベースにした唯物主義的科学の教義とタブーで固くしてしまった枠組みの中で、空間・時間・物質・エネルギーを扱っている。そして、この外にあるものをオカルトとして扱ってきた。

21世紀にはいって少しの変化もあるが、社会のルールはやはり因果律だ。

意識を使ってもできないことがわかると、次にそれをどうすれば、体験ができるようになるかを考えてみる段階に移る。

意識自身では自らでは把握できなくても、他の器官に体験させるためには、どうすれば良いか、と他者の立場に立って考えることが始められる。

これが青年期から成熟期への転換となる。

意識の縛りから外れる

意識の宿命はなんでもかんでもすぐに分け続けてしまうことです。この力によって、形が作られ、イメージやシンボルや言葉が完成します。霧を水滴にし、途切れているものを一つに纏めるのが意識の仕事です。

便利なものですが、この方法では捉えることができないものもあります。

因果関係がないのに、結果がそうなってしまっている共時性の世界です。

限界を知ってチャレンジすることに労力を割くことにメリットはあるのか？

前章の「大数の論理」のように、サイコロを振るときに次に何の目が何が出るのかは六分の一の確率でしかわからないのに、1000回振った後に全体から見ると、結果の予測ができる、というマジックの世界です。

理性の世界では原因があってこそ結果が出るのですが、ここでは先に結果があって、原因は問われません。

因果関係が逆になってしまっている世界です。1000回振った結果はわかっているが、次の一回はわからない、という世界です。

メリットはここに宇宙の法則があるからです。

皮肉で言うと、だからこそ、あやしい自己啓発の本は、この宇宙の法則の羅列で、バカ高い講習料を受講者に支払いさせます。

ちょっとしたコツがわかれば、誰でも著者になれてしまうほどの内容しかないのにも関わらずです。

確かに書いてあることや講演の内容には意味があるのですが、だからといってビジネスの世界で成功者になることはありません。理由は読者の前に、実践者がいて、彼らがシェアを掴んでいるので、遅れてきた者には利権がなくカモがネギをしょってくるだけではなく、ついでに鍋までも持参しているような状態です。カモは本人、ネギは講習料、鍋は詐欺にあう投資金です。

ですから、これから突入していく、意識の限界を知るからこそできる世界には、ビジネスの成功ではなく、私たちが持つ内面の問題や生き方に効果があることなので、ビジネスなどの実務に関しては、転用ができるとは限りません。

ではどうやったら意識の外の世界に出会うことができるのでしょうか？

意識がある限りは出会えないというので、これは難しいことのように見えます。が、その時空に居続けることができれば、そこで意識のない時、例えば、昼寝、疲れてボーとしている状態、我を忘れている状況、ぼんやりしているとき、瞑想などに体験できる可能性の確率が高くなります。

そのTPOのキーワードは「矛盾」です。パラドックスとも呼ばれます。意識の世界からみると矛盾している所に、自ら進んで足を運び、そこに居続けることです。すると、そのTPOの方から、今まで自分が持っていなかった価値観の体験をすることができます。

ではどんなTPOにそんなパラドックスがあるのでしょうか？

そんなに不思議なところではなく、普通の日常生活の中にそれはあります。

例えば、サラリーマンならば中間職です。幹部と平社員の間に挟まれて、一見するとどちらの要求も同時にこなすことはできそうもありません。

守るべきものができる。家族、子供、名誉、共同体。

このようなTPOには左右上下から主張が矛盾しており、その中で自分の道を探さなければなりません。その時に理性や感覚だけでは解決できないものが立ち上ってきます。

生まれた時から自分中心に育てられてくると、反対の意味の言葉が理解できません。

両親や組織や財産や地位によって守られている人は、自然の刻々と変化する世界に対して自分が矢面に立つ体験がないので、腑に落ちない表現になってしまいます。

「生かされている」

「意識とは海の上のほんの少しだけ顔を出す氷山の一角」

とコトバにしているのはまだ体感していない証拠で体験すると、

「一緒に生きている」

「意識とは氷山の一角というよりも、干潮に顕れる砂地」

というふうに変わります。

簡単に矛盾を取り入れる方法

自分が中心だとなんでも割り切ることはできるけれど、「みんな」となるとそれぞれに中心があるので、キレイに割り切ることができず、それぞれの中心をたてると、他が立たなくなる。理性から見れば、秩序のある世界は崩れ、お互いが矛盾してしまう。それを理性は破滅や崩壊や死滅だと声高に叫んで怯えるが、実際の現実では、何事もなかったように、新たな智性の調和が立ち顕れ、世界は安定する。

あれかこれか、ではなく、あれもこれもが同時にあることを理性では納得できないが、一度は騙されてこの矛盾の状態を感じてみるのはどうだろう？

そして次には、どちらでもあって、どちらでもない矛盾の世界を自分から探してみる。自分の中に、家に、仕事場に、政治に、地球に。どこに行っても矛盾の山は峰をなして続いている。

日常生活の中で実感するのは、相反するものが一緒にいる「ことわざ」だろう。マイナスだと思っていたものが実はプラスである、ことを示す慣用語句だ。ことわざは、本来「言（こと）＋業（わざ）」で、言語の技術や言葉の活用をさし、何かの行いを実現させる力を持つ特別な言葉や、実現した行いに根拠や意味を与えるような言葉を意味していた。知恵や教訓を分かりやすく伝えることで、人の考えや行動を導くことができる言葉なんだ。

「急がば回れ」

「負けるが勝ち」

「失敗は成功のもと」

「かわいい子には旅させよ」

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」

「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」

「老いては子に従え」

「足るを知る」

「自然は芸術を模倣する」

「自然は科学を模倣する」

「より少ないことは、より豊かである」Less is more.　　　

少ないものに集中すれば、それをより生かすことができる、ということです。

これも、自分にとって大事なものに集中するところがポイントです。

また「賢明な愚者」「明るい闇」といったような、通常は互いに矛盾していると考えられる表現も撞着語法（oxymoron）と呼ばれて日常生活の中で使われている。

理性の領域である集合論・論理学的では、「Aであって、かつ、not A」であるということはありえない（矛盾律）と扱われて除外されてしまうものだ。全体を分け続けて分析して判断すると、つじつまがあわず、単なる誤謬にすぎないように見えるが、全体性をとらえるときには複雑な内容を簡潔に表現する修辞法として用いられている。

あれでもなく同時にこれでもないということは、あれでもこれでもあるということ。

「あれ」あるいは「これ」であるということ。

この世が矛盾していることを理解して受け入れる力が智性の特徴だ。

良い悪人

小さな巨人

無知の知

ラクをしたかったら、苦から逃げずに懸命に働け

健康を知るには病気になること

欲しかったら、まず与えよ。

楽をしたければ手を抜くな。

ゆっくり急げ

天職とは選ばれたことを選ぶこと。

宿命とは決められたことを決めること

realite humaine　　人間的現実とは実感する現実と実感される現実の二面性を持つことで成り立つ

図像

はじめに意識の窓から見たヒトの認識の変化

横軸が時間

縦軸が意識への依存度

　　　　　幼児期　　　　　　　青年期　　　　　　　　　成熟期　　　　　　　老年期　　

横軸が空間　　　　　　人口密度

縦軸が意識の形成化　　人類の思ったことが形になっている度合い

　　　　　　都会　　　　　　　郊外　　　　　　　　村　　　　　　　　　　山・海　

樹木状

非意識化の窓から見たヒトの４つの認識力

縦軸の上が自意識　下が非意識

横軸の左が差異　　右が同一

自意識　理性　　　　　　　　　　　　意識の限界　智性　　意図した意識

　大脳皮質　　　　　　　　　　　　　　　　　　　心肺

　　二つに分けて正の選択　　　　　　　　　　　　　負の意義を確認　　分ける無意味さと必要性

　　分析・推定・理念・理想　　　　　　　　　　　　非意識の情感・本能を全体性との関係の中で気づく

分裂　　差異　　　　　　　　　　　　　　　　　統合　　　同一・　同化・同感　　　

無意識　感性　　　　　　　　　　　　　非意識　　魂性（脱言語）　意識を持たない工夫

　脳幹　大脳辺縁系　　　　　　　　　　　　　　　　小腸・微生物

　分ける　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　分けない

　五官　情感　本能　直観 感覚　　　　　　　　　　　　魂・悟り・全てとの繋がり　瞑想観

4つの世界はそれぞれの特徴・美学・ルールがある。

感覚で捉えられる感性の世界は常に生成変化を続けている。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　プラトンが引用したヘラクレイトスの「万物は流転する」(Τα Πάντα ῥεῖ ). "everything flows" ）世界である。

非意識の窓から見れば、そもそも「変化」とは在るものが無いものになることであり、無いものが在るものになることである。

理性で考えれば「無」から「有」が生じたり、「有」が「無」になるのは矛盾である。

合理主義の祖パルメニデスは「感覚よりも理性に信を置いて、真に在るものは不変だ」と考えた。

ところがこの理性にも限界がある。「できること」と「できないこと」がある。理性はできることをして、できないことは諦めて他の手段でアプローチするのが肝腎だ。すると次には、できないことをどうすればよいのか考えることができる。これが全体を掴めるきっかけになる。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　理性にはできないということが分かると、次の段階の意識の限界（ひとまず智性の名付ける）が発動する。

理性だけでは、自家中毒を起こしてしまうのである。（自家中毒とは自分が作っているものの量が増えてしまって、逆にその物質の被害をうけてしまうこと。）

できないこと、すなわち、いったん限界がわかると、その限界そのものを方法にすることができる。限界を生かした方法で次に向かっていける。つまり限界というのは、実は、次の世界の扉を開ける鍵でもある。　

意識（理性）だけでは、自分のことを見ることができません。智性という鏡があることによって、はじめて鏡に映った姿（虚像）である理性を見ることができます。

心や体の非意識の世界を全体の中で理解しようとする智性。これは、二律背反したものを一つにして、論理学の世界では矛盾とされるものを、智性の世界では合理として捉える方法を提示する。ついに意識から非意識の世界に突入だ。意識の世界に心を取り戻すきっかけを与えてくれるのは、身体と感覚がこの智性と反応することによってである。

しかしこの智性でさえも、智性にできないことがないと信じ込んで行動すると、最後には他者を殺し、その後に気がつけばなんと自らをも殺すことにもなりかねない。智性は次の魂性に導かれるためのステップでしかないことを体験するのは大切なことだ。　　　　　　　　　　　　　　　

中世まではヨーロッパでも智性というと智慧と共に脱我状態で直接に神を知る能力も含まれていた。

観照（theōria）とは最高段階を知性の脱我的な自己直観（プロティノス)

人間は自己の内で〈神の光の照明〉のもとでイデア的な永遠の真理を直視する精神の眼（mentis oculi）が開かれる（アウグスティヌス）

霊的直観（intuitus gnosticus）J. S. エリウゲナ『自然区分論』

全能者を見る智性的な見照（visio intellectualis）（N. クザーヌス）

後は非意識に「任せて」、静かに「待つ」だけである。

知性と智性

意識や言葉だけで分かった気になっている格好をつけた知性はもう卒業しよう、ちゃんとした知性は、自らの条件反射を変えていく力があるし、本来の智性はそれ自身の限界がわかるほどに、ここにある刻々と変化する現象である「生命」と向き合っている。

これからの智性は自らの限界を自覚している賢いやつだ。また智性にもできないことがり、これは脱我状態の手前でとどまってしまうという限界を自覚している智慧である。

ヨーロッパ史では歴史的にヌースnousと呼ぶのが良いだろう。日本語では矮小化（理性の中に入れられて）されてしまった知性と混同しないように、ひとまずは「智性」と呼ぶことにしよう。

アジアの思想史の中でもっと良い語句や、的を得ている造語や新語があれば教えてください。

六識　自意識mano-vijJaana　　　　　　　　末那識Manas-vijnaana　意識の限界　智性　　

　大脳皮質　　　　　　　　　　　　　　　　　　　心肺

　　二つに分けて正の選択　　　　　　　　　　　　　負の意義を確認　　分ける必要性と無意味さ

　　分析・推定・理念・理想　　　　　　　　　　　　非意識の情感・本能を全体性との関係の中で気づく

分裂　　差異　　　　　　　　　　　　　　　　　統合　　　同一・　同化・同感　　　

前五識　　　　　　　　　　　　　　　　　　阿頼耶識ālaya-vijñāna

前意識　無意識　感性　　　　　　　　　　　　　　非意識　　魂性（脱言語）　意識を持たない工夫

　脳幹　大脳辺縁系　　　　　　　　　　　　　　　　小腸・微生物

　分ける　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　分けない

仏教　唯識Vijñapti-mātratā

個人にとってのあらゆる諸存在が、唯（ただ）、八種類の識によって成り立っているという大乗仏教の見解の一つである（瑜伽行唯識学派）

八識説

↑ ┌ 眼　識（げんしき、視覚）

｜ ｜ 耳　識（にしき、聴覚）

顕在心｜ 感覚｜ 鼻　識（びしき、嗅覚）

｜ ｜ 舌　識（ぜつしき、味覚）

｜ └ 身　識（しんしき、触覚など）

｜

↓ 思考 意　識　　　　自覚的意識

↑ 自我　　潜在意識　　自覚のない意識

潜在心｜ 執着心 末那識　（まなしき）　　潜在意識　寝ていても執着し続ける心

↓ 根本心 阿頼耶識（あらやしき）根本の識　この識が前五識・意識・末那識を生み出し、さらに身体を生み出し、他の識と相互作用して我々が「世界」であると思っているものも生み出していると考えられている。

前五識　五感　　　　波長　視覚　360-830 nm　　聴覚20Ｈｚ〜20,000Hz　波長15000m〜15m

六識　　意識　　　　電磁波　放射線

七識　末那識　　　　ブラックホール　素粒子

八識　阿頼耶識 　　　いのち

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　末那識

　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　

五感

限界を知らない意識が行き着くところ

意識の悲劇　　　

意識とはモノを分けるのが仕事で、意識があるところには区別が生まれる。意識の本質は対立の生成である。

区別と対立の世界を作るのが意識の仕業である。だから、意識の高い人は、それから逃げたいがために、やたらと差別反対、戦争反対、平等、公平、を声高に叫ぶ。

意識と無意識の間の落差や距離が大きく対立が激しいことを、コンプレックスが強いという。

理想と現実、理念とカラダが乖離している状態のことだ。

意識とカラダ、また自分とまだ気がついていない自分とのギャップでもある。

コンプレックスが強い人は、意識が望むことと全く違う別の行動をとってしまうことがある。

これが意識しないうちに、まったく違う人格として行動していたりすると、社会や精神科医から、二重人格者と烙印を押される。

この意識と無意識の大きな対立の落差から動機を得てエネルギーを生じさせている人もいる。中には不幸な過去を背負っているとか、ルサンチマンで加速力をつける技を持つ人もいる。

このエネルギーは現実の世界では弊害をもたらすこともあるが、こうして時空を時間と空間に分けた意識が、歴史を前に進ませている。

聖書の二項対立

宗教にもいろいろな捉え方がある。

宗教が「組織経営」の問題になっていることも大きいが、宗教には意識の問題が底流にある。

刻々と変化する無限の現象を、有限の固定のパターン（記号・コトバ・形・文化・教義・文字）で捉えてしまう宗教観の人たちがいる。

中には限界を知らない意識の世界（理性）だけで宗教を理解しようとする人たちがいる。

またいつもは感性や智性や魂性を含めて宗教を体感していても、ある時は話をわかりやすくするために、理性だけの観点で話を進める時がある。

例えばキリスト教の聖書でもこのように書かれる時もある。

「人から出て来るものこそ、人を汚す。中から、人間の心から、悪い思いが出て来るからである。みだらな行い、盗み、殺意、姦淫、貪欲、悪意、詐欺、好色、ねたみ、悪口、傲慢、無分別など、これらの悪はみな中から出て来て、人を汚すのである。」(マルコ7:20-24)

21節　For it is from within, from the heart, that evil intentions emerge: fornication, theft, murder,

ἔσωθεν γὰρ ἐκ τῆς καρδίας τῶν ἀνθρώπων οἱ διαλογισμοὶ οἱ κακοὶ ἐκπορεύονται, πορνεῖαι, κλοπαί, φόνοι,　　　　　kardias　心臓

ココロとは2つの異界に架け橋をつなぐことなので、いろいろな状況で使われ意味が変化する。

１大脳新皮質と大脳旧皮質を結ぶココロ　　　　　ラショナル　　理性　ラテン語ratio　分割・割合　

２大脳皮質と大脳辺縁系を結ぶココロ　　　　　　メンタル　　　知能　ラテン語mentDlis (mens心＋-AL＝心の）　知るはたらき

３大脳辺縁系と心臓を結ぶココロ　　　　　　　　ハート　　　　情緒　　心臓　　エネルギー体の波動を察知する

４大脳辺縁系と小腸（微生物）を結ぶココロ　　　ソウル　　　　字源の精神　現代でいう魂霊性・魂性・霊性・霊魂性に溶け入る

学者のマジョリティーはこれらの区別ができず、これらを混ぜて理解している。

特に

なんでも１からこの世を説明しようとする還元主義者

１と４を混同にしているのが、リベラルな理想主義者

３が欠如している原理主義者　　イスラム国　オウム真理教教徒　理念国家（共産、ナチス、フランス革命）

４が欠如している現代都市文明人

21節の解釈を、イエスは人間の中（1,2）から、人間の心臓（3）から出てくるものを評価基準の中心においてしまうことを批判しているのであって、４番めのソウルから出てくるものを価値の中心にしていないことを嘆いていると、解釈するのはどうだろうか。

現代の神学者は物理的な心臓ではなくメタファーとしての心なので、例えば存在や道徳の中心the center of our being and the capacity of moral preferenceという意味しかないと熱弁するが、聖書がわざわざkardiasという単語を使っているのだから説得力がない。（イエスはアラム語とヘブライ語を使っていたと推定されている｛マルコ第5章41節 Talitha kumマルコ第7章34節Ephphathaマタイ第27章46節　使徒言行録第21章40節｝が、当時の意味合いをギリシャ語に翻訳した単語がkardiasになる。）

ヒトは他者と話をする時には、その人の世界観（価値観）に合わせて、理解の違いは喩えを使ってお互いに理解を深めていくしかない。そこで、この21節は、イエスが弟子たちの中に「メンタル」と「ハート」を神聖視する者がいたので、ヒトが刻々と変化する現象を閉じた状態で捉える時に現れる意識（１と２）と人間の内臓であるハート（３）を中心にしてそれ以外のものを判断することは、変化し続ける現象を開いた状態でそのまま受け入れる魂（４）を汚すのだ、と解釈するのはどうだろう。これならば、不毛な心の定義で争う必要がない。心と魂や肉体と霊についてどちらが大事なのか議論する必要もなくなる。肉体も魂も、両方とも必要なのである。

智性の視点では、言葉の定義が状況によって変化することを受け入れる。

イエスがいつも意識と肉体と魂（精神）を対比させていたわけではない。しかし、後のキリスト教徒、特に文字をに囚われて意識の限界を体験しない者や、意識の外にいる者と交流しない「心臓heart　καρδίας」なき者や、現在まで続く組織宗教を信仰する者は上記の21節を見て、聖書には「悪いものは心から出てくる。」と書いてあるとして、キリスト教では肉体や心は悪いものだと考えている、としたり顔で説教する。

またそのような輩は、キリスト教徒の「良いこと」は神を信じることである、と言ったりする。

これを意識の中心にしてしまうと（理性の領域だけで認知すると）、理性とは一つのものを二つに分け、一つを選択することから、神に対しても同じような区分をして、善悪の善だけを選択して、「神は善一辺倒で悪は一切含まれない」ことになってしまう。この意識の怖さを知らない思考パターンが、悪魔を生み出し、魔女狩りも生み出した。魔女狩りとは古代や中世の話ではない、現代や未来の話だ。そして今ここのことだ。

ヨーロッパの魔女狩り

悪魔より恐ろしいのが魔女。それは人間に乗り移ることができるからである。悪魔に乗っ取られたかどうか識別しなくてはならないが証明する方法がないので、いったん嫌疑がかかるともう逃れることができない。

キリスト国教は性に悪のレッテルを貼り付けることで、信徒に罪悪感を抱かせ、それを利用して信徒を操作するという方法を用いた。これにも魔女は使われた。生物にとって性そのものは大切な次世代へのつながりである。

ところが、性を淫らでいやらしいものシンボルとして魔女を利用する組織があった。

ドイツでは人口の半分が殺されてしまった村もある。フランツ・ビュアマンFranz Byuamanという魔女摘発人は１６３１年と１５３５年にある村の人口（300人）の約半分を焼き殺した。さらに、バンベルグで1600人、ビュルツブルグで757人が焼き殺され、これには３歳から１５歳までの子供も含まれていた。

なぜこのようなことが起こったのか？

その理由の一つは「意識（理性）」が二分法を使って善悪を作り出し、正義を自分にはカミがつくことで正義となり、自分に敵対する側には無理やりに悪魔を押し付けたからだ。

この時の意識とは、感性や智性や無意識や非意識を体験していない理性のことをいう。

するとどうなるか？心理学的に言うと、

自我（自意識）が「悪」や「性」を抑圧したため、それらは自我の外側に押しやられて、その結果、抑圧されたものは無意識の中や他人の上に投影された。自我が「いい人」になった分だけ、他者は「悪い人」になった。

魔女の登場である。

そしてそこに、最悪の事態が起きてしまう。

「正しさ」が意識の中心になることで、「悪」は周辺や外側にある無意識に押されることによって、圧が高まり、対立がおこる。

先ほどの、「無理やりに押し付けた」というやつだ。押し付けたののだから、当然その反発がある。

自然の摂理だ。

そして、押さえ込まれていたものが元に戻ろうとする。無意識から意識に反する動きだ。意識の判断や行動が正しければ正しいほど、反発の力は爆発的だ。そして情や感性の慣れ（耐性）やカラダの飼い馴らしに頼る時間もなく、突然にやって来る。

意識は「正しさ」に酔い、この無茶がわかっていない。

この反動に意識はどのようなレッテルを貼り付けのか。

爆発が暴力、情に頼らずが冷酷さ、わかっていないが恐ろしさと不気味さと怪しげさ、と意識の都合の良いように翻訳して理解する。

すると、これらを外に押し出すために、また暴力・冷酷・恐怖をガソリンにして、理性の正しさというエンジンを回し始める。

良いことや正しいことをすればするほど、対立と爆発を生み出してしまうのだ。

意識の中に、自然の摂理を見ようせず、人間のサガを認めようとせず、悪を飼い馴らす練習をしないので、何度でも繰り返す。

中世の「聖アントニウス伝」のように、聖人が立派で人並み以上の力があり悪を抑圧することができればできるほど、かえって悪のイメージが大きくなってしまい、しまいにはそのイメージが形になって悪魔になっていく。聖人こそが悪魔を作り上げた張本人だ。

理性の粛清

毛沢東は文化革命で4000万人（中国共産党にとっては200万人）、スターリンは2000万人、ナチスはユダヤ人を600万人殺した。

どれもその時代の正しさだった。ナチスの名前がNationalsozialistische DeutscheArbeiterpartei国民社会主義ドイツ労働者党 であることから分かるように、初期において民主主義によって選択された民衆の正義であった。だからドイツ国民が応援した。

正しさは肉体や心からではなく理性や、ヨーロッパ人の言う精神からきた。

脳機能学でいうと本能を司る脳幹や情緒を司る大脳辺縁系ではなく、理性行動を司る大脳皮質である。

意識が押し付けるものは、補償作用として暴力的に噴出する。

当時の誠意のある共産主義者とキリスト組織教徒と平等を唱えるリベラルな理想主義者と文字や法則を信じる学者とニュースを創作することで商売になるマスコミとナチス運動の実践者と現代のネット社会の怒れる住民の根底には同じ無意識の価値観が流れている。自分を正義の側におくことが、そのまま「善」の徹底化となり、これに知行合一が結びつくと暴力を正当化して、人々が責任と罪の意識なしに暴力を最大に使えるようなるメカニズムとなる。

固くなってしまった意識　　　　　

意識にとらわれてしまい、意識の外側を体験しなくなってしまうと頭も体も固くなってしまう。

典型的な二種類の固さがある。協調性のない自律と自律性のない協調だ。

これが、ガンや精神病やいじめや虐殺とも関係性がある。

協調しない自律　

悪性腫瘍とはその周辺の器官の成長と維持に協調することなく、我が道をいく細胞の集団である。そしてその自律性が、進むと周囲や全体への攻撃になる。ストレスなどで協調性が作用しなくなると部分は全体のコントロールから逃げて自律性が優先される。

攻撃性は、個体維持のため内側に目を向け、相手と壁を作り、自己完結的な独立の存在になることから始まる。

身体では、意識が高まり、交感神経が司るアドレナリンの量が増える。

警戒心、性欲、所有欲、怒り、恐れ、どれも意識を固く閉じることによって起こる感情だ。

激怒すると交感神経が強く働き、今まで柔らかかった意識が硬直し、抑制がきかなくなる。

固くなってしまった意識は、まわりの変化に対して融通が利かなくなり、固着観念や強迫観念を生む。

一面の真理をあたかも完全な真理とみなしてしまい、執拗にそれを追求する性向が出てしまう。

これが意識が固くなってしまったことで、協調しない自律の弱点である。

次ぐにもう一つの意識が固くなっていまうパターンがある。

自律しない協調性

適切な自律性がなくなり、自己批判の能力を失い、盲目的崇拝や大義名分に身を投じる。

自分を部分として扱い、全体性に従属してしまう。

全体への協調性を第一目的とすることで、下位に新しいレベルの層を付け加えていく

大虐殺の歴史を見ればわかるように、ヒトの残忍な破壊的傾向の原因は、協調しない自律性ではなく、自立性のなくなった協調性に由来する。

ストレスや危機が生じると、教訓や道徳規範を他者や組織に押し付けて、自分自身を部分とみなして全体性の奴隷となる。

当然この状態では、本人がどのような残虐な行動をとっても、責任を感じることはない。意識を閉じることで、自律性を放棄して全体性にすべてを委ねたからである。

本人はしあわせである。外から見れば、自然や社会環境の従属的な奴隷なのだが、本人にとっては生きがいである。自己の狭い領域を超え、包括的全体（共同体、宗教的信条、自然、霊界など）の部分のパートを生きているからである。

自律性がなければ、構造のない無定形なゼリー状態、もしくは異分子のいない専制集団になってしまう。

では、これらの偏った意識から逃れるためにはどのような方法があるのだろうか？

固くなってしまった意識には柔軟な戦略、独創的適合、創造的統合が必要だ。

第三章

パラドックスの視点から　　　　二つの「間」にある時空

意識だけでは危ないことをついに意識は理解した、としよう。

しかしだからといって非意識の世界を垣間見ることはできても、これだけでは、意識のルールである切り分けられた時間・空間の中では「形」にすることができない。意識世界では、原因が先にあり結果が後にくる（因果）関係はあるが、先に結果があって後に原因があることを認めることがない。

ここにも矛盾の華が咲く。

このエッセイは、文字でパラドックスの表現を試みようとしている。意識を使って、「非意識」の世界を表し、そして「意識と非意識」と両方を扱う方法を、あなたとコミュニケーションをはかりながら探っていく。

結局は、意識から見た世界でしかないのだが、そこに非意識の世界を入れてみるチャレンジをしていこう。

暗いけれど明るいロウソクの灯火

心に強く響くピアニシモ

クラクションの雑踏の中で解き放たれるため息

物理的な形と心情の感覚とは対比しているが、それらが一つになることでできあがる世界がある。

あの、「急がば回れ」の世界だ。

意識（論理学）の世界から見れば、矛盾した世界観だと判断されて除外されてしまう。

しかし自然の摂理がこの相反するものをくっつける。

先人たちはこの世界をいろいろな表現を使って説明してきた。

「相反一致」「偶然たる必然」「知ある無知」「反対の一致」「対立の一致」両義性　二者対応（Zweiheit）

Coincidence、Coniunctio　oppositorum、coincidentia oppositorum、docta ignorantia

Holon　holos全体＋on粒子（部分）　相反するものが一つであるということを意味した造語

日本や中国やイスラム文学ではどのように呼ぶのか教えてください。

イスラムの詩人は、水と火は相容れないが、そこに一枚の鉄板を置くと、火と水が融合して、おおきな大気となったと表現しました。

矛盾しないのはどんな場所なんだろうか？

科学も芸術の進歩と同じく、安定したところでは、矛盾はなく、安定した曲線が長くある。

ギザギザしたジグザクの線は矛盾のある革命期の象徴だ。

相対的に見れば（遠くから全体像を見れば）、平和な進化の長い期間と、革命的な変化の短い期間がリズミカルに変動している。

革命的な大躍進の直後の平和な期間が唯一の連続的な累積の進歩が見られる。これが矛盾のない時空間だ。

次の革命的な大躍進のための地固めのような期間だ。躍進したものとの統合の確認、吸収、洗練、拡張の期間だ。

連続的な進歩の時には矛盾が無くなる代りに、学派や党派ができ、組織やヒエラルキーは硬化して閉鎖系になる。

そして矛盾が発生して、変動が始まる。激しい反乱と拒絶がはじまる。

そして新しい領域へ向かう。これが革命だ。この時代は楽観主義と多幸感がある。

革命が落ち着くと、変動を起こした改革者の模倣者と従者が大勢でてくる。富を求めて。名声を求めて。安定を求めて。安心を求めて。そして自意識の賛美を求めて。本人が気が付かないうちに、自己意識を満足させることを目的としてしまい、目の前の現象を自己意識が喜ぶ形に「誤読」して満足してしまう。

そして緩やかな進歩が始まると同時に、矛盾なき飽和がはじまり、徐々に欲求不満と行き詰まりがおこる。

そして革命前の危機的期間に突入する。「すべてはバラバラだ。一貫性はすべて消えてしまった。」

トーマス・クーンの「科学革命の構造」を勝手に書き換え

矛盾した表現はどんな場所にあるのだろうか？

守るものができたとき。子供の誕生、共同体の長

壁の向こう側に行かなくてならなくなったとき。　闘いの現場、

限界がわかったので、その向こう側に行く必要があるとき。

無意識の世界を探索しているとき

人間のサガの悲しさと虚しさ、そしてそれを包む喜びを感じるとき

他者の苦しさを自分の本当の痛みとして感じるとき

どれも、自分の意識ではなく他者の意識がどのようにして生まれたのかとそれらの背景を思いはかる時だ。

個人と共同体（他者）を同時に優先させることを考える時でもある。

現場には二項が対立している。

意識と非意識の特性がそこにある。

時間　　　空間

規則　　　自由

樹状図　　網状図

垂直　　　水平

外延　　　内包

分類　　　統合

自己　　　共同体

自律性 　協調性

支配　　　従属

遠心性　　向心性

競合　　　協力

利己　　　利他

物質界の二面性

慣性力、斥力　⇔　引力、結合力

ニュートン第一法則　慣性の法則　⇔　ニュートン第二法則　万有引力の法則

物質粒子としての電子（素粒子）　⇔　　形のない波動としての電子

現状指向⇔　未来指向

自己保存⇔　種保存

扇風機⇔　換気扇

過去から現在へ吹く風⇔未来から引き寄せられる風

これらの二面性は素粒子から宇宙までの物質だけではなく、生命体、組織、社会、国、地球などどの世界を見ても存在している。

そうでないものがあれば教えてください。調べてみます。

この二つにはどんな関係性があるのか？

霧が水滴になる力と水滴が霧になる力がある。

霧を「空」、水滴を「形」と呼ぶならば、

左側にあるものは、「空」から「形」に移行する特性であり、

右側にあるものは、「形」から「空」に移行する特性だ。

この世をこれらの二つの見えない力が行き交う世界だと見てみれば、新たな視点でこの世と向き合うことができる。

これをひとまず「パラドックスの視点」と呼ぼう。

智性、相反一致、ヌース、智慧、賢人の視点などをはじめ先人たちの呼び名もあろう、ご教示ください。

部分と全体

「部分」は「それだけでは自律的存在とは言えない断片的で不完全なもの」を暗示する。

「全体」は「それ自体完全でそれ以上説明を要さないもの」と考えられる。

これらの二分法による思考習慣に反し、目の前にある「いのち」に関わるものは、絶対的な「部分」や「全体」は生物の領域でも、社会組織にも、宇宙全体にも、まったく存在しない。

目の前にある「いのち」は、「部分」も自律性を持ち、「全体」も次のレベルでは完全ではなく、断片的で不完全な部分でしかない。

自己規制と自律性（自治性）を備えもち、安定した総合構造である。

細胞も神経も器官も上位に対しては「部分」となり従属しているが、同時に準自律的な「全体」としても機能している。上位に対しては大きな全体の一部として「統合」し、下位に対しては「自律」する。

上位には隷属的な部分の顔であり、下位には独立心に富んだ全体の顔だ。

この世のものはどんな要素でも、各レベルでは一連の「不変のルール」に支配されている。ここに一貫性、安定性がある。

智性の領域　　パラドックスの視点の毎日　　　二つの間で揺れる時空

海浜に浅瀬があるところがある。潮の満ち引きで浅瀬が現れたり海に隠れたりする。

浅瀬が意識、浅瀬の少し下が無意識、その下の大地の砂が実体（身体）、そして海が非意識だ。

海という非意識に浅瀬という意識が、潮の満ち引きで、現れたり、隠れたりする。

浅瀬が「形」海が「空」

海という「空」に浅瀬という「形」が、月と地球と太陽の重力によって、「形」を見せたり「空」が隠したりする。

現実の自然は一つのものに、二面性がある。

光が粒子と波動であるように、宇宙にブラックホールとホワイトホールがあるように。

それぞれの組織が都合によって、閉じたり開いたりしている。

とじてばかりいれば、収縮して消滅するし、開いてばかりいれば、形を作ることができない。

どれもが、全体の義務と部分の権利を自覚している。

どれもがヒエラルキーの自覚があるので、ヒエラルキーを否定しない

かといってヒエラルキーを肯定ばかりはぜず、「空」に戻ることを拒絶しない

では意識はどうなのか？

ただ「現実の自然」は意識側にとっては不便なもの、というよりも常に二面性で固定化さていなければ、レッテルを貼ることもできないので、これを一時的に閉じて一面的なものとして扱おうとする。

それはいい、それが終わればまた閉じた弁を開けて、元の非意識に戻せばいいのだから。

そして非意識という意識の外側にある世界を認識して、意識の世界に戻った時には、そういう世界があることをわかればいいだけの話だ。

物質の基本構成要素（電子、陽子など）は二面的な実在で、ある条件下では硬い微粒子のようにふるまうが、べつの条件下では非物質的な媒質中の波のようにふるまう。

「波」とはなにか？　波立つものによって存在する。空気、水などの媒体が周波を生む。

しかしここで「言葉」の限界にぶつかる。言葉は意識の役目である「分割して住まいと名前を名付ける」ことなので、一つのことを二つに分けてその違いにスポットライトを当てることを生業にしている。

しかし「形のないもの」に「波」と名付ける時点で、媒体の物質を含んでしまうのが言葉の宿命だ。そこで言葉にするときは仕方がないので、水という媒体のない波、とかいうような面倒くさくて難しく意味がわからない表現になってしまう。

また、「物質のない波」を定義したとしても、「物質波」というような相反する語句を並べると、分けた二つを並置すると元の一つである「全部、いつも、完全、常時」を意味してしまい、ここで表現したい二つの間を行き来するバイブレーションや影やつながりの関係にスポットライトを当てることができなくなる。

相補性とは、まったく同一の事象を二つの異なった基準の枠組みをとおして見ることが可能であるような情況を、記述しようとするもの。この二つの枠組みはたがいに排除しあうものだが、たがいに相補的でもあり、この正反対の枠組みを並置してはじめて、完全な見方がうまれてくる。

Heisenberg,W 1971 Der teil und das ganze The part and the whole

智性のモデル

現象の流れの中の共通分母を探し、多様性の中の統一を探求してみる。

普遍的に適用できるモデルを作ってみる試み。

素材は、人体、社会、動物、植物、微生物、生命体、遺伝子、水、土、空気、地球、素粒子、宇宙。

例えば、生命体のフィードバック機能はホメオスタシスと呼ばれ、自己規制の機構を持つ。

標準から常にずれる「自由」とそれを修正する「規則」

例えば、遺伝子。　終結までの全てを決められた青写真だという解釈ではなく、固定はされているが環境からのフィードバックをもとに適切な戦略を選択する余地を残すことにもスポットライトを当てる。これも規則と自律。

決められた規則に支配されているが、内外の環境からのフィードバックの刺激に左右されている世界。

思考習慣や技をとらえ直す時に持ち出す概念。

規範しながら許容する。

垂直の鎖は抽象力のヒエラルキーで水平の鎖は網状のネットワークだ。

そして線が重なる結び目は、常に弛緩と収縮を繰り返している。

コラム

智性がないと起こる怖さ

では日常ではどうすればいいのだろう？

悪の役割を探してみる　　　対応策は智性を働かせること　

例を先ほどにのキリスト教の聖人にしてみよう。砂漠や山頂で霞を食べながら暮らしている仙人たちである。

自分が悪魔だと見ているものは、本当に悪いものなのかよく観ることである。その正体を見極め、TPOが変化すれば、その悪が必要な状況があるのではないかと、考慮することである。そしてその働きの意味を見つけることができれば、「別に除外することはないな」とか「こういう特殊な条件の下でしかないが、その場合に限っては使い道があるな」とかして、その働きを自分の中で工夫を凝らして活用していくと、悪魔はいきなり力を失い、可愛いいたずら坊主に縮こまってしまう。

悪はそれだけを取り出すと悪だが、全体性の中で活かすと、それが良い働きをすることもあるのだ。

意識は白黒のどちらかを選ばなければならない世界だが、どちらも選ぶことができるのが非意識のルールである。白も黒も同時に両方と接することができるのだ。なぜならば白と黒に分ける前の世界なので、白黒の両方であるし、白黒にまだ分かれていないので、白黒のどちらでもない。

理性が受け付けないパラドックスを、智性の世界ではそれを素直に受け付けてしまう。

自然の理が、対立している両者を結びつけてしまう。いくら理性が否定しても、それ以前やそれ以後なのだからどうしようもない。

上手にもめる

揉め事を避けるのではなく、ちゃんと揉める

一生懸命に揉める、向き合って揉める。そうすると自分も相手も互いに適応して、見解に変化が起こる。そして場合により、自分を訂正せざるを得ない、そうして相手も訂正せざるを得ない。

次のラウンドからは両者は片手を握りあって、他の手で殴り合う、ことができる。

コラム

治療者と幻想

ひとつのゴールに二つの解決策　　　　「理性だけ」　「理性と智性」

目的を達成するのに二つの解決策がある。

直ぐにできる方法と時間のかかる方法の2つだ。

別の言い方をすると、

頭を使った合理的な解決法とカラダを使った異物を飼い馴らす解決法だ。

また、意識だけを使う方法と、意識と非意識の両方を使う方法、とも言える。

物質には意識だけを使う方法で用が足りる。

問題は、「いのち」に関わる目的を達成するときである。

この「いのち」はヒト、社会、生命体、素粒子、宇宙のことだから全てのものだ。だから当然とヒトの理性が作り出した自由や平和などの抽象的な概念も含まれる。

例えば、アレルギー症の治癒

意識だけを使う方法では、アレルギーになる因果関係のものを次々と遮断して排除していく。

触らないことからことから始まって、最後は部屋から外に出ない方法だ。都会文明が目指す無菌室だ。

抗原のあるものと接触しない

マスク、カバー、

うがい、手洗い

ステロイド　抗ヒスタミン剤

抗原の排除

無菌室

症状がひどい場合にはまずはこのような順番で対処する必要がある。

では、もうひとつの方法とはなんだろう。意識に非意識（いのち）の力の両方を使う方法だ。

非意識というとなんだか難しく聞こえるが、いのちの力を利用する智慧の方法だ。

意識ではできないことを「いのち」の力に任せるやり方だ。ヒトでいうとカラダを使うということだ。

具体的に言うと、免疫作用、副交感神経、腸内微生物、呼吸法、瞑想、睡眠。

先ずは問題になっているアレルギーの原因を調べてみる。人によってある種のタンパク質であったり花粉だったりする。そこでその物質が体に本当に害であるのかないのかをよく注意して調べてみる。例えば、花粉であれば、よくはないかもしれないが、そんなに悪いものではなさそうだ。ハチやチョウは花粉にまみれているし、隣人は花粉が体に良いといって毎朝食べるのを欠かさない。それに比べて砒素やコレラ菌はほんの少量でも大きな害を人体に与える。

次に原因物質のことがわかり、それが大きな害でないのに体が反応してしまっているのならば、それをほんの微量だけ体に取り入れることで、体の働き（いのち）に任せて、その物質を飼い馴らす練習を積み重ねることだ。ある物質が原因だからといって排除するのではなく、少量ずつ取り入れて、それも全体の一部とする過程である。もちろん症状が発動する危険性があるので、微量と回数などで、精緻に対応しなければ、逆に症状が悪化してしまう。

その時に意識が活性化していると、アドレナリンや酵素を放出させて、異物を排除するために炎症を起こそうとしてしまう。そこでできるだけ意識が働かないように、副交感神経が司る反応に身を置くのが良い。

これに気がついたきっかけは、同じ花粉が空気中にあるのに、気が立っている時は症状が重く、と落ち着いている時では症状が軽く感じたことからはじまり、次に起きている時と睡眠時では明らかにくしゃみや鼻水の量の違いがあったことから気がついた出来事である。

体には害を与えないものまでも異物だと判断して、それを炎症を起こして対処してしまっているので、その異物は問題がないということをゆっくりと少しの量からはじめて体に覚えさせる必要がある。「悪」を排除するのではなく、取り入れて対処する考え方だ。

これと同じことが抽象的な世界にも通用することがある。例えば、自由を得たいと思うときに、束縛しているものを排除したり、そこから逃げたりするだけではなく、束縛されていながらもその束縛の力を使って自由を得る方法を体験するやり方があるかもしれない。

束縛しているものには束縛している意味があるかもしれない。もしかしたら束縛しているからこそ、自由が成り立っているのかもしれない。いろいろな具体的なケースがあるから必ず、智性（非意識の存在を意識に取り入れる智慧）を使うことが常に正しいとは言えないが、「急がば回れ」の方法を試してみる価値はあると思う。

体の調子の悪い時は、すぐに答えが出る一直線の意識による解決法を使い、

体の調子の良い時は、答えが出るには時間がかかる曲線の意識と非意識の両方による解決策を使うのはどうだろう。

弁証法はカラダのパラドックスを解決できない

相反する二つの対立物がその対立をそのまま残した状態で同一化すること。ドイツ流の弁証法においては二つの対立物はその対立を変容させることで新しいテーゼを生みます。（テーゼ⇔アンチテーゼ →ジンテーゼのことです。）つまり対立関係が解消されて、新たなものが生まれる。

しかし、智性の認識法では、対立は解消せず、その対立が実は一体であることを実感するが働きです。たとえば天と人とは対立物ですが、ヘーゲルの弁証法のようにいくら人が天に近づこうと思っても道は遠ざかるばかりです。意識（人）が非意識（天）に近づこうとすると、外部との入口を閉じる必要があるので、ますます二つの間が明確になり違いがでてくることになります。

それに比べて対立を残しておきながら、同一性を理解すると、「我はすなわち天なり。天すなわち我なり。」となり、弁証法とは違った世界観に突入します。これは、我（自己意識）は天（非意識、すなわち外部・他者）の一部を取り囲んだものでしかなく、天（非意識）は我（自己意識）の寄せ集めプラスα（意識以外の非意識）なので同じものを目指している時には同じであると言ってい。しかし違いをみつけようとすると、我と天は明らかに同じものではない、ということを意味します。

この体験を日本人が禅をはじめ、多くの○○道、書道、歌道、華道、薫道、柔道、剣道、合気道、武道、武士道などで実施しています。

なぜ二番目の意識（智性）が排除されてきたのか　　

利用されるニセの智性

胡散臭い啓蒙書や啓発セミナーでも、この智性の考え方を先ず取り上げます。何故ならば、この智性を表面にある部分的に扱って利用することで、人や社会を操作できるからです。

例えば、CM、精神論、「空気に従う」、大衆誘導、NLP、心理学、精神分析学、メンタリスト。

パラドックスの視点の限界は、これもまた「意識の世界」の一部なので、意識の限界と同じ弱点を持っていることです。

非意識とつながってオープンの状態にしておくことが、利用されない智性には必要です。

利用されたニセの智性のわかりやすい例を日本で探すと戦中の大和魂です。国から強制されたり、操られた大和魂には智性はありません。智性は「土に還る」ために立ち顕れる力であって、合理化の中で利用されるものでは決してありません。このニセの智性を使う技術は、どの組織（国連・国・会社など）でも使う戦法で、智性のパラドックスの視点だけを組織の都合の良いように利用して、非意識の原理を切り離してしまうことから起きる出来事です。

スパイの世界のインテリジェンスや、ヒトの心の動きを読むメンタリストの技術や、NLP（NeuroLearningProgram）と呼ばれる条件反射（無意識）の書き換えや、潜在意識に直接つながる催眠術や、組織の利益の為に魂を強調する宗教も、智性のメカニズムだけを利用して、自分たちのプラス（メリット・利益・得）を増やすことに励みます。これらは利用されてしまった智性であり、正確には理性の領域に引き込まれてしまった偽の智性すなわち「知性」でしかありません。

本来の智性は非意識を「待つ」ことで向き合うものなのですが、ニセの智性である「知性」を利用する者は上澄みのシステムと非合理性と法則だけを掠め取り、「意識」に心地よいように編集して、自らが先に動き始めます。

本来の智性は、ある集団にとって利益があるものではなく、常に全体性の中での関係でしか表すことができないものです。決まった形があるのではなく、常に変化する自分や他者や環境や時間や状況に対応して形を変えていく力です。一言でいうと、「この世から静かに消えていく」技術です。

わかりやすく智性と知性を見分けるのは、その考え方を実行すると、ちゃんと消えていけるのか？そして全体（宇宙）のためになるのか？もしくはある集団だけが得になるのかを見極めることです。

あの世を自然の一部として戻っていくのが智性であるのに対して、あの世を怖がらないような条件反射の回路を作って夢を見させて、ある集団のために、と自己犠牲と洗脳に導くのが「閉じてしまった理性」である知性の世界です。閉じた意識には善意や悪意があるのに対して、この二つが一致する智性は開いた意識です。

理性の外にしかない智性を、理性の中に無理矢理に閉じ込めるのも閉じた意識の仕業です。

智性は同じもの（共通性）を焦点に、知性は差異（特殊性）にスポットライトを当てます。

この見える世界では、大事なことほど勘違いされ誤用されてしまう、という法則があります。理由は刻々と変化する無限の現象を、有限の記号を使って法則化することに起因します。そしてこの時の認識の主体である「自己意識」にとってわかりやすくて心地よいように「変換」して解釈し直すプログラムが脳内にあるからです。例えば、だまし絵、トリックアート、トロンプ・ルイユの錯視、錯覚、やモンティ・ホール問題も意識の特徴をシンボリカルに表現していあmす。

特にヒトや「いのち」に関わるものは、注意が必要です。「形」が作られる世界では、智性をあえてミスリードさせようとしてしまう力が働きます。善意や悪意に関係なく、誤読、誤用、曲解、捏造させてしまうのが、「形」の特徴です。

これに善悪はなく、これが「形」の性質であり、いいところでもあり、限界でもあるのです。

自分が「みんな」のことを考えた時に、ほのかに立ち上がってくるのが智性です。その後に非意識とのツナガリがないと理性に悪用されてしまうので、法則や見た目がパラドックスなので「これは智性である」と判断するのは早合点です。

本来の智性は時間と空間と因果律に関係のない非意識との接触から内部から湧き上がるものなので、外部の都合によって方向づけられるものではありません。

また、智性とは成熟さを意味します。まだ酸っぱい理性のリンゴではなく、熟れた味わいのあるリンゴです。「形」がちゃんと消えて「非意識」に戻るゆったりとした道程に導くのが智性の性質です。

しかし外見だけを利用する組織人は多くいます。そんな組織人と付き合う時は、彼らが組織人ではなく、単なる一人の人間としての「素」に戻る時にしましょう。組織人も一人の人間ですから。

智性が避けられる理由

戦争中には外見だけの智性、すなわち閉じた意識を悪用して利用する例が人類史の中で毎回見られます。だから戦争が終わると、この表面だけは美味しそうだが中身は自己保身しか考えないインチキな偽の智性を体験した人は、「坊主憎けりゃ袈裟（けさ）まで憎い」と、あらゆる智性を嫌って理性を基にした理念に頼るインテリが続出します。時代の流れからいって理解できることですが、この理念を推し進めることで、また次の戦争を生み出してしまうという皮肉が人類史を通して繰り返されます。

これからは智性の本質をしっかり体感し、一つの集団の全体性ではなく、本来の智性の特徴である「敵を含めたみんな」と非意識を基準とした智性を発揮することで、理性を中心にしてしまった考え方から、理性も智性も共に活用する暮らしにするのが、風が通って爽快です。

「みんな」とは本当の全体性とのことで、自分たちの集団の外にあるものも含めた「みんな」です。

参照　

智性や魂性は、「形」になった個が「非意識」に戻っていく時に使われる能力なので、これを組織が自らの保身のために利用すると、とんでもないものになる。だから世界史の中でどの戦後も、しばらくの間は智性や魂性は大衆から忌み嫌われて、代わりに理性や感性にスポットライトが当てられる傾向があります。

多層性

「あちらもこちらも一緒にやっちゃえばいいんじゃね」というやり方を、どのように呼べばいいのだろう。

きっと、もう先達がよく使っている表現があるはずです。何も新しい発想ではないし、みんながもう日常生活でも実践しているパターンですから。

例えば「いい加減」「融通無碍」に「パラドックス」「矛盾」と「智性」「シンパシーとコンパッション　語源は《同じ痛み》」を加えるようなものです。

一つモノに多重の価値観が共存している状態を再認識してTPOで各層の特徴を生かして適当にやっていればなんとかなるんじゃない？という、おバカな楽観主義です。

だってヒトが考えることなんかたいしたことないから、っていうのが根拠です。

刻々と変化する現象を有限の記号のパターンに無理矢理に当て嵌めようとするのだから、大したものではないことは明らかです。

また、外部から一見すると同じものですが、内部に入って見ると、各層で異なった価値観で世界が成り立っている、といったようなものです。

これをひとまず多層性と名づけることにしてみました。崖で見られる地層で深浅の層を同様に扱うやりかたです。

個別で見ると矛盾していますが、全体から見れば統合されていて腑に落ちる方法です。一見すると矛盾した二つことを同時にやってしまうやり方をどのように表現すればいいのか？ってことです。分割と統合、差異化と同一性、特有と共通、形と力が同時に作用している、あたりまえのこの世界です。

ところが意識を使うと、これが二者選択になったり、矛盾は受け入れられないになったり、意識の外はないとなったり、して生命体や宇宙が当たり前にしているしていることを受け入れらない時があります。

多様性をTPOに合わせて受け入れながら、きままに着替えて各レベルに固執することなく、行き来ができ、自由自在に無意識や非意識の世界で戯れることができることです。、

�@意識、�A自意識、�B無意識、�C非意識の４つのレベルの世界を多層性を使って、周りの人に上手に伝えられないかな、というのも私の関心ごとです。

そして下層の二つである�Bと�Cの世界観をどのようにすればみんなが体感できるかを考えています。

特に都会で暮らすことで過剰な意識に囲まれた人にはのんびりすることの重要さを、また人口密度の低い田舎で育ちこれから都会を目指す人には意識のメリットと恐ろしさの両面を伝えることができないかな、と思っています。

今までの私の経験でのオススメは２年以上にわたり同じ村や森で商売をして暮らすこと（1年目は経験し、2年目は一段階深い層を知り、3年目は自分で再現できる）、保存食作り、キャンプ生活、変化する環境の中で汗をかいて体を動かすこと、焚き火、ツリーハウス作り、山の整備、温泉、瞑想、農業、漁業、イノシシ狩り、キノコ・木の実採集などでした。

多様が並列で「環境と種（DNA）」の違いでお互いが個体で別物であるのに対して、多層は縦列で個々の一つ一つに幾つかの層があり互いに補っていることで存在していることに焦点を当てようとしています。

多様のバリエーションではなく、多様の一つ一つが持つ多層のバリエーションに注目しようとするものです。

ですから多様に注目することをせずとも、一つ一つの多層に注目することで、奥の深い領域（例えば、「いのち」「叡智」「カラダ」「非意識」「パラドックス」）を体感できる機会を得ることができます。

いろいろな様子の違いを別々のモノにみるのが多様性、一つのモノにいくつかの層があることをみるのが多層性でしょうか。

また多層には順序という考え方がセットで加わってしまいます。そして劣や悪の再評価という価値観が含まれてしまいます。またその時に、他者の痛みを自分の痛みとすると「同化」も加わってしまいます。

本人の状況が変ることで、層が増えたり減ったりするのです。普段は幼児期と青年期の層だけですが、落ち着いた時には成熟期と老年期の層も加わるという考え方です。

そして現代都会生活者はこの多層の下部にある�Bと�Cを実感できない暮らしをしています。このことを気がつくことは、あるグループや職種の人にとっては必要ではないかと思っています。

都会や周辺の郊外で生まれ育った人で肩書きのよい職種や公務員や大企業で働くことができなかった人には、�Bと�Cの体験が大都会でサバイバルするには必要である、とも思っています。

また上記の人はそのことを無意識で気がついているので、趣味や関心が�Bと�Cの領域のアニメやサブカルチャーや本や団体に属するのではないかと推察ています。

ただ残念なのはそれが頭で理解するだけで、実際に村や森に入ってそこで農業や林業を初めとした「地元」の仕事で汗を流さないのが、現代の特徴です。

そして村や森や山を外から見るだけで、わかった気になってしまっているのも特徴です。海外旅行に行っただけで、彼の地のよい所を日本にそのまま導入しようとする革新的な人々も同じです。日本には日本の、村には村の気候と地形と歴史と文化と必然性の流れがあるので、それに合う形にならない限り根付くことができないと思われます。そのために必要な体験が�Bと�Cだと思っています。

４つの層

どんなものにも層があると思いたがるのが多層性が好きな人の性分です。

水（H20）が大気であったり、雲であったり、雨であったり、氷であったりするように。

また、水はカラダの70%である必須成分であったり、穢れを清めるモノであったり、台風や厳冬の中では痛さであったり、生活用水であったり、ペットボトルの商品であったりするように。

同じ元素結合のパターンが状況によって、見せる顔が変わるような。

一見すると畑の野菜が同じであっても、それらは、家族と近所と八百屋とスーパー用だったりするように。

	農の目的	農の方向	人生	美学	リズム	話	コトバ	地理
１	企業・理念	安全・大量	青年期	美・術	物理	小説	書き言葉	都市
２	経済・貨幣	一村一品	幼児期	豊穣	神経	童話・民話	話し言葉	街
３	地域・交換	地産地消	成熟期	智慧	自然	伝説・昔話	記号	村
４	家族・生命	自衛	老年期	無為	宇宙	神話	ﾎﾞﾃﾞｨﾗﾝｹﾞｰｼﾞ	森・山

	優劣	善悪	カラダ	判断行動	意識
１	優を選択	善の追求	大脳皮質	合理性予測	自己意識
２	分割１→２	善悪に分化	大脳辺縁系	条件反射	意識
３	劣の再評価	悪の再評価	心臓	周期	無意識
４	未分割	善悪なし	小腸	反射	非意識

地層は、状況（時代・環境）の違いによって、積もる物質が変るので寄せ集めでしかないのに、両隣の地層と比べると、同じ地層には明らかな共通性があります。地層を混ぜることはカオスになるけれど、各層をそのままにしておいて、TPOにあわせてアクセスする階層を変えるという、いつもみんなが無意識に実践しているものです。

しかし、意識的になると、一貫性を持たそうとして、どれか一つだけとアクセスしてしまったり、全部を混ぜて一つにしたいという美学にとらわれて行動してしまいます。文字が一つの象徴です。

無数の自然の変化を有数のコトバや数字で無理やりにパターン分けして表現してしまうのですから。

でも意識を使うことでしかコトバによる伝達方法はありません。

そこで多層性を形に表すとすれば、

極端に言うと、一日を４つの6時間ごとに分けて、自己意識が必要な仕事の時間は二元論で元気よく、意識が必要な家事の時間は法則なんか気にせず目の前の大事なことを優先し、ボーとできる無意識も大事にする時間は一元論でゆったりと、非意識の睡眠の時間は考えることなんかバカらしくつまらないのでシャットダウンすることで、全体性を体感するスタイルです。

また矛盾を認めるので、環境破壊を仕事にしているサラリーマンが仕事が終わった後は、仕事内容とは反する趣味（例えば自然保護）の実践をすすめるようなものです。

実際に現実の社会では、車のメーカーが、地球に優しいなんてウソついて、植林をやったりしてますもんね。これを民間人も積極的に取り入れれば、なんでも正義を目指したり、いじめをなくしたら社会がよくなるなんて幻想が減って、少しは生き易くなる人もいるかな、と思います。

たとえばAはしてはいけない、Aをしなければならない、という2つの相反する命題を含む制度はない、と一般には思われています。しかし、実際の社会では、条件をつけることでこの矛盾は解決されます。○○の条件の時はAはしてはいけない、☓☓の条件の時はAをしなければならない、となると2つが同時に両立する制度になります。

ところがこのように条件付けをしなくても矛盾した考えた方を一つにする人たちと暮らした経験をしたことがあります。

シャーマンと禅師

私がナバホにいた頃、シャーマンのおっさんから、人はどこから来たと思うと聞かれたので、「オルドバイ渓谷らしいよ、そこに足跡が残されているから」と答えると、おっさんは「遠い昔、まだ人が獣のような形をしていた頃は、神はトウモロコシから 「最初の男」と「最初の女」を創り給うた。」といいます。

「確かに神話はそうだけど、科学的に見るとアフリカからというのが正しいよね」というと、「いや、どちらも正しい」

「どちらもってことはないでしょう。神話と事実は別物だから」

「そうともいえるし、そうでもないともいえる。ヒトはアフリカとこの足元の両方から同時に来たんだよ」

この時は、だったらこの足元を掘れば、トウモロコシとホモサピエンスの間の化石が出てくるはずじゃない、同じじゃないだろう、と思っていました。

シャーマンが提示してくれたのは、「分別」ではなく「つながり」です。

現在ではヒトと植物は分化していますが、太古の真核生物においては同じであったという、彼そして私たちの奥で眠る経験する前（ア・プリオリ）の「体験」でした。

似たようなことがペルーでもありました。アンデスのシャーマンのじいさんと一緒に暮らしている時に、湖の横でMSR（ガソリン調理器）でお湯を沸かしていたら、水面に映った満月がきれいだったので素直に、「水に浮かぶ月はいいね」と言ったら、じいちゃんは「空の月と湖の月のどっちがいい」と聞いてきたので、「どっちもいいけど、上のは本物で、下のは映ったものだから、どちらも違うテイストでいいんじゃない」と答えると、「いや、どちらも本物だよ」

「いやいやそれはないでしょう、本物は空のほうで、偽者は水の上でしょう」と重ねていうと、ただ笑っていました。

日本にも似たような禅師の話がありますが、内容は違います。

ある僧が禅師に尋ねます。｢仏法は水の中の月のようなものだといいますが、この通りでしょうか｣。つまり、「真理というものは清らかな水面に映る月のようなもので、手に掬すくえば手の中にあり、水たまりができればその一つ一つに月が映る。それと同じように、随所に見届けられれば、立処皆な全て真理なのだといいますが、これでよろしいでしょうか」。といったような意味らしいです。

禅師の答えは、｢清波、透路なし｣　「清らかな水であっても波が立てば、誰も入っていくこともできんわい｣でした。

水面に映る月の如しだからといって、月を水面に探すのであれば、それは大きな誤り。波が立てば月が揺らいでしまうのと同じように、仏法もどこかへ消えてしまう。手に掬った水があるから月が映るのではなく、月があるから手に掬った水の中にも観ることができるもの。

月を観るとは、同時に自己（月を見ている意識）を観る（分かる）ことでなければならない。

と言う解釈です。

解釈とはその人の生きてきた体験を表します。禅師でも体験が違えば解釈も変わるし、同じ禅師でも質問者の状況によって答える内容（解釈）を変えます。

このケースでは、水面に映る月は仮の姿、実像は空の月だといっているのだと思います。

しかし同じ禅師と質問者であっても、禅師は質問者の今の状態を察して、TPOによって解釈は変化します。

一般的にいって、壁や他者から守られている質問者には、中心にいるのではなく周辺に行ったり壁の外に出ることを諭します。

部屋の中にいて本やテレビや新聞で暮らす者は、自分の意識に都合のよい経験を好むので、考え方が意識中心に偏ってしまい、刻々と変る体や現象や環境とちゃんと向き合っていないことを知らせるためです。

上手く壁の外に出ると、自分の意識ではどうしようもない世界を経験し、それらを積み重ねることによって、意識の限界と、その心地よさを体験していきます。

これはそんなに大それたものではありません。

空をずーっと見上げて雲の動きから明日の天気を予測したりしなかったりしながら雲に吸い込まれるような気分になったり、アリの行列をみて自分もアリになった気分になったり、焚き火の炎を見続けてボーとしたり、庭の雑草をひたすらむしったりする、ようなことです。

刻々と変化するものを記号に変えるのをやめて、その中に頭と身を溶かすような行為です。

竹影掃堦塵不動、月穿潭底水無痕

「月は深い池にその影を落としているが、その月影が水に跡を残すということはない」月は深い淵の底まで光を届けるのに、水にはなんの跡もとどめない。ことがすめばそれを離して固執しない。

水に映る月は、わたしたちの存在と何ら変わることがない。

この世のすべての顕われは水に映る月のようなもので、何ら実体はないと仏教のある一派は考えます。実体性の欠如を、仏教では空性（くうしょう）と呼んでいるようです。

（上記の唯識論では空は色を含んでいますが、般若心経では空と色は同じレベルだと捉えているのでこの世の捉え方が異なるようです。）

「空」とは形はないけれどエネルギーの塊で、ここからうまれてくるのが形である「色」である、という解釈は一元論的で、喩えると「空」はビッグバンの起こる前の状態で「色」はその後の宇宙（物質）の状態です。

それに対して「色即是空・空即是色」はエネルギーと形が別物でありながら同じ物であるという解釈は一見すると一元論と同じですが、般若心経では力（空）と形（色）を同等と捉えるので、一元論のように「力」が収縮して「形」になる、すなわち「色」は「空」に含まれるという解釈は取りません。

私の見方によると、般若心経の世界観は２のレベルである意識でこの世を見た時の価値観であり、唯識論は４のレベルある非意識でこの世を見た時の価値観であるといえます。

どちらかが正しいのではなく、その時の状況により、相応しい解釈は変わります。

日常生活では二元論、宇宙・原子・量子・いのちを扱う時は一元論というように。

以上を前提とすると、多様性は一般的な二元論の中で成り立つ考え方で、多層性は一元論の中で成り立つ考え方です。

ですから多層性を表現するのが難しいのだと思います。

ここでは一元論をベースにして話を進めます。

次には空と色という二つの間をどのように体感するかについて考えて見ます。

唯識論　　一元論

　般若心経　二元論

　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　空

　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　

自己意識と非意識　　　「色」と「空」

		ナバホの話	アンデスの話	分離と統合	力と形	仏教　唯識派
A	自己意識	オルドバイ渓谷	空の月	分別	形	色
B	非意識	とうもろこし	水面の月	つながり	力	空

この表は縦の二つが相反して層をなしていることを示すもので、横の列に共通点を探すものではありません。ですから非意識とトウモロコシとは関係はありません。

世の中のことは意図（意識）を持てば、なんでも相反するもの（二元論）にすることができる、ってことです。

AとBを喩えで試みると、

自己意識の特徴は、意識が「観察するもの」となって発動し、闇にスポットライトを当てて、明るくなったところを分割することで認識する。

非意識の特徴は、「観察するもの」の形が柔らかくなりながら溶けていき、対象との共通点を探し、やがて対象と同化することで、「観察するもの」は消えていく過程で認識する。

はじめの禅の話では、質問者が「正しいのはAではなくBでしょう」と言うので禅師が「いや、BではなくAだよ」と偏った見方を元に戻すために、あえて偏った見方を提示した、と推察します。

「BではなくAだ」といった禅師もたぶん次の話の禅師やシャーマンと同じように、AもBも同時に同等にちゃんとある、ということを伝えたかったのではないかと推察します。

現代には二つの問題があります。

一つは幼児期の意識から自己意識を発見してAだけでモノを見ようとする人たち。　Cogito ergo sum　　コギトという自己（self）の発見で、この視点からだけで世界を見ようとするグループです。

もう一つはBを発見したことで、AよりもBが大事だという人たち。

後者の特徴は個人主義や合理性や都市などの守られた環境の中にいたので自意識過剰な幼児期を過ごしたためにAの世界にいたのが、Bの世界があることを知り、その素晴らしさを満喫している状態です。リベラル、学士・修士課程修了者、アート志向、都市ガス利用者、パワースポット旅行体験者、ニューエイジ信奉者、反体制者に多い考え方です。今回のアメリカ大統領選でいえば、トランプに投票する人が二人に一人いるということがわからない人でもあります。なぜならば町や村や森に住む人たちと腹を割って話すことがないからです。（私はトランプが好きではありませんが、トランプに投票する人たちのおちいっている状況や背景にシンパシーを感じます。）　刻々と変化しているカラダの声を聴くことができなくなった人、意識とカラダを結ぶ架け橋であるココロを一時的にせよ、亡くしてしまっている人たちです。（トランプ支持者の多くがカラダの声を聞いているわけではありません。利便性を優先させる生活には�Bと�Cの体験は少ないのはトランプ支持者にとっても同様です。しかしこれまでのように意識優先の者には任せて置けないと言う無意識が働いていると思っています。）

これだけならば素晴らしいことのように思われますが、実はこれは危険な状態で、この感覚の時に、線の向こう側で暮らしたことのない正義、相手の状態によって形を変えない善意、誤解された知行合一が加わると、一番極端な例でいうとイスラム国参加者やオウム真理教信者になってしまいます。自分たちの正義のために他者を排除してしまう行動です。

確かに真理の一つは「カミから見ればヒトはみな平等」なのですが、私たちはカミでなくヒトであり、この世は誕生の後と死去の前であり、ヒトを理解するには大脳皮質だけではなく、カラダも対のセットなので、真理を実現するには一緒にテーブルを囲んで食事をするなどして長い時間をかけるしかありません。嫌いな人たちと居続けるなんて、そんなに簡単なものではありません。

異物も自分もただ同じとするだけではなく、どちらも同じぐらいに大切だ、そして異物の痛みを自分の痛みにできる練習を積まないと、異物の抹殺という答えが簡単に選択してしまいます。

早く答えを出したい人がおちいってしまう判断です。「急がば回れ」というパラドックスの体験がまだできていない未熟な人たちでもあります。

その時の大義名分は「弱者を守る」や「錦の御旗」という、うそっぱちです。

意識から見れば「弱者を守る」のですが、カラダから見れば「弱者を守る」ふりをして、弱者を踏みつけてることで利を得る者なのです。正義感の鎧を着て、優劣のメガネをかけ、素直さで耳をふさぎ、考回路を誠実に固定化し、迷いはせず一生懸命に、カラダを考えない善意で行動を推し進めるので、こちら（カラダ）の苦しみの「痛いよ」という声を聞いてくれようとはしてくれません。

カラダが異物を飼い馴らすチャンスを、お金のかかる無菌室やワクチンや薬を使わければいけないように優しく誘導します。この優しさはメンタル（マインド）の優しさでしかなく、ハートやソウルの優しさではありません。

例えで言うと、アレルギーを治すためには、体の調子の悪い時には無菌ルームや薬に頼るのがいいのですが、体の調子の良い時は減感療法をして体と異物を慣れさせる時空が大切です。悪も異物もこの世の一部であるからです。リスク管理をしながら異物を飼い馴らす練習もたまには必要だということです。

免疫作用とはプロテスタントの宣教師や一部の医者が考えているバイキンマンを殺すものではなく、カラダがやっている免疫作用とは、ばい菌を体内に取り入れそれを飼い馴らす過程なのです。これが炎症です。ただ異物が限界を超えて大量な場合には、免疫作用では結果が出ません。菌から遠ざかるに限ります。アレルギーなどの免疫作用は長い時間と体に合わせた少量からの積み重ねという慎重なトレーニングのメニューが必要だからです。

Bの素晴らしさだけをアタマで語るだけの恐ろしさは、この世では多くの悲劇を生み出してきました。（中国の文化大革命、ソ連の粛清、ドイツの国民社会主義労働者党、ヒステリックなカルト）

これがBをたずねた質問者に禅師がAだよ、と本心はそう思っていなくてもAに押し戻した理由ではないのかと推察しています。

2つの間

禅師が提示しているのはAとBの間にいるということです。　　　

はじめは「間」といっても意味がわからないので、二つの場所の間にいてバランスをとったり、AとBを時間的にかわりばんこに適用したり、どちらにも傾かない中庸（アリストテレス・仏教）だったり、AとBを足して２つに割ってみたり、偏差値の標準を実践してみたり、AにもBにもかかわらないことを試してみたり、ある条件の下でAとBを使い分けをしたり、などのいろいろな方法を試してみます。

トライ＆エラー＆修正＆トライです。

そして、はじめは難しいかもしれないけれど、オススメはAとBを同時にするということです。

ちょうど座禅の時のように、眼を閉じるのでも開けるのでもなく、耳をふさぐのでもなく聴くのでもなく、外からの刺激を拒絶するのではなく、内部に取り入れはしているのだけどそれに囚われることなく刺激の流れをただわかっているような感覚です。

カラダとココロとアタマを緩めて、ボーとしてしばらく任せるままにしていると、私の場合は、少し寂しくなる感覚となんだか暖かいもの包まれるような感覚になり、その時にはAとBが同時にあっても矛盾を感じないばかりか逆にしっくりきて不思議な気分になります。

ここまで書いてくると、私がいう多層性は実在はするけれど、本の中にあっては通用しない概念のようにも思われます。本の世界では二元論をベースにするのがほとんどです。意識の視覚と自己意識の思考を使って認識する媒体なので仕方がありません。

闇の反対は光であり、光のないところが闇であるというニュートンの世界観（二元論）です。同時代のゲーテのように闇から光が生まれるという考え方（一元論）は二元論から見ればパラドクスを持った訳のわからないものと見られてしまいます。　

壁の外に出れば、電子やクォークや宇宙の果てや、森や霧のように、常に変化する現象が集まって形になるという現場を経験する機会があるので、それと出会う楽しい経験を共有できればと思います。

多様性が評価される二元論の世界では、多層性は２つの層しか見えないので「二層」でしかなく、「多層」ともいえずじまいです。

多層性が本領を発揮できるのは、二元論の外に出た時、すなわち「意識ではできないこと」に気がつくことが必要です。

それには、吐く息に意識をうつし（呼吸法）、体の重心（姿勢）を整え、自分の「気」を頭から臍の下（丹田）に落とし、「まかせて待つ」時に初めて感じることができる世界観なので、準備を整えなければならない条件がたしかに多すぎますね。これが多層性や一元論が理解されない理由でしょう。

ただ多層性が体感されると、「形」は「力」と並列されるのではなく、「形」は「力」に含まれているという見方（一元論）が不思議ではなくなります。

その時にはじめて、二層のものが三層、そして四層の形を顕してくれます。

そして、これが俳句や短歌や能が目指している「わび」をはじめとした美学だし、条件が多いけれども再現性がちゃんとある「科学」なんだけどなぁ。

100年前ではどこでも当たり前のことであったし、現在でも村や森や山や荒野や沙漠では普通のことなんだけどなぁ。

そして、たしかに条件が多いので面倒くさいことに感じる人もいるでしょうが、教育機関やマスコミやエリートやインテリが「多様性」を押し付けてくる社会に住まざるを得ない者が都市で子供を育て暮らしていくには、必要な世界観ではないかと感じますが、どう思われますか？

（社会的成功者や公務員やよい会社員や親の遺産がある人は多層性がなくても十分にサバイバルできますが）

意識では、できないこと

意識にはできることと、できないことがあります。

意識のできることは範囲を決めてスポットライトを当て、そこを「分ける」という作業によって隣と比較していくことです。

「同じ」と「違う」というフルイにかけていくのです。難しく言うと同一性と差異化ということです。

意識のできることは分別ごみのように、分割してカテゴリーの袋に入れていくことで、世間ではこのプロセスを「分（わ）かる」と呼んでいます。

それに比べて、意識のできないことは「一体化して同じになる」ことです。

これを意識の世界では未分化やカオスと呼ぶしかないのでしょうか。意識では捉えることはできないので、自分（自我・自意識・主体・わたし）が溶けて、対象物と同化することです。たとえば米を噛んで消化して、それが小腸で吸収されるプロセスです。実は消化プロセスで「わたし」ができるのは噛むことと内臓の血流をあげるために副交感神経を高めるために気を落ち着かせることぐらいで、実際の消化活動は小腸に棲んでもらっている微生物（他者）にお任せですからね。

これを文字の世界では、「共通点を探して、そこに同化する」と表現することになるのかな。

そして意識のできない大事なことはカラダの働きです。

例えば意識が発動していない時（自律神経の副交感神経が優勢の時）に、体内では内臓が働き免疫細胞や酵素が生成されます。

今の私がしたいことは、意識を使うときと使わないときのメリハリをつけて、昼間は日曜大工とエッセイを書き、周りの人と一緒にいるときには、焚き火を囲んで食事をしたり、一緒に温泉につかって、ボーとしていることです。

付録

意識が体を殺す時代

1992年1月22日に、死の基準が心臓から脳に変更された。これにより脳死者からの臓器移植を容認されることになった。心よりも頭を優先させることが公の場で公認される出来事であった。

この変更には臓器移植というビジネスと贅沢なエゴイズムと意識優先主義者の正義が介入した。

金で生きる資本家と上昇志向の強い起業家と誠実な医師とお花畑に住む学者とキレイゴト（例えばヒューマニズム）で誤魔化すマスコミによってである。

共通点は意識を高く持つことを目指すことが好きな者たちだ。

金を儲けることを第一とする資本家と起業家はわかりやすい。儲かることならなんでもやるから。

だが医師と学者とマスコミは正義や善意や理性で改悪をすすめるので、悪の自覚がない分だけ、素直な誠実な顔をして平気で他者の心と体を踏みにじるので、生命体としては未熟で質が一段と悪い。

意識中心主義者は他者だけではなく自分の体さえも平気で殺すことができる。

そんなことをすれば意識自身さえもなくなってしまうのに。

意識が自分の体を殺す時は、自己犠牲や他利や殉教だと言い張るのだからこれがまた質が悪い。

幼児の自己意識の成り立ち　　

自己意識はいつごろから芽生え始めるのでしょうか。

８か月のころ、自分の持っているものを渡したり、受け取る行為を繰り返すようになります。これは物と他人を区別がはっきりした証拠です。

そして、１歳ごろに鏡の前に立たせると、その鏡に映った自分自身と遊ぼうとしたり、鏡の後ろをのぞいたりします。「誰がいるの？誰？」とまだ自己がつかめていない状況です。

そして１歳半ぐらいになると、鏡に映っているのは自分だと認識をします。また、子どもは目の前にない対象（人やもの）のことも頭に思い浮かべて考えることができるようになります。

この頃に親から「危ないからダメですよ」と注意され始めると、今まで自分の要求は常に満たしてくれたのに、自分の欲求に注意を与える存在になります。子どもからしたら大きな出来事です。この結果、我々（私と母の同化意識）から自他への分化が進みます。

幼児は２歳くらいになると、「○○はね」や「○○のだよ！」など、自分と他人をちゃんと区別し始めるようになります。「○○」という認識は、自己意識の誕生の第一段階です。

自己意識の芽生え

自分の隠している考えは、自らが口に出さないかぎり他者には知られることがありません。これがわかることが子供にとっては重要なことです。秘密を隠すことや嘘をつくことができない子供は自律性と自己のアイデンティティが十分に確立されていないことになります。

はじめて自分がついた嘘が見抜かれなかった時に、喜びと同時に、孤独であることを発見します。自己意識の中を理解できるのはこの世でただ一人しかいない。これが自己意識の確立です。

ところがこれを体験しない者もいます。

真正の秘密（プライバシー）こそ、真正の関係（リレーション）の基礎であるのですが、分裂病質者と呼ばれる人々の中には、他者に自分の考えがバレてしまうと思い込むために、傷つきやすく、孤立していないと安心が得られないと感じています。嘘が他人から見抜かれてしまうと感じているからです。

だから他者から予測できないような突飛な行動や考え方をして、他者から内心がバレていないとを確認して安心するのですが、それは実際の自分自身ではなく、安心するために演じている自分でしかありません。すると他者の評価のための自己意識になってしまうことから、自分の中に空虚さを感じ、生きている実感が湧かなくなります。

デカルトの意識

意識とは第一段階で覚醒して五感に反応する状態になり、第二段階で主観や主体とも呼ばれる自己意識をもつ状態を意味します。

この幼児も持つ自己意識を世界観の中心に据えてしまったことで、消えていった世界があります。それが無意識（心臓・智性・智慧・パラドックス・２つの間）と非意識（カラダ・宇宙・他者・原子）の世界です。

これは有史以来からあることで、特に「屋内」で「文字」を扱う人たちが陥った価値観でした。

これが大衆化してマジョリティーとなったきっかけはデカルトが人間を肉体と精神に分けたことから始まります。たったこれだけのことが以前と以後と言われるほど大きな影響を与えるとは同時代の人は想像していなかったのではないかと思います。

デカルトは意識のことをコギタティオcogitatio と呼び、精神を〈考えるもの(レス･コギタンス)〉と規定しました。この時のコギトとは自己意識のことです。

以前の自己意識は幼児と同じように、自分といっても「自分」と「他者」の違いでしかありませんでした。

「自分」は天と地の間で生きる生命体という認識なので、自分とは、体も心も頭も全部で一つでした。

ところが、デカルトが自分を「肉体」と「精神」に分けたため、肉体は地の側に、精神は天の側に属するようになり、価値観やアナロジーや宇宙観や人間観が新しいものになりました。

	主客	自と他	聖俗	天地
肉体	客体	他者	俗	地	地獄	感性	現実	悪魔
精神	主体	自我	聖	天	天国	理性	理想理念	天使

	攻殻機動隊	夏目漱石				意識
肉体	機械	情緒	性	自然状態	シンボル	無意識	地球のリズム
精神	霊	理智	愛	法治国家	文字	意識	意志

この二分法を信じこんだ人は、今までは一つであった自分自身を二つに分割してしまったので、二つの異界を結ぶ架け橋がないとお互いが結びつかない人間になってしまいました。この架け橋をココロというので、橋をかける作業をしないままでいると、ココロのない人ということになってしまいます。

いままで一緒に内側にいた仲間を、意識を使うことで対象物として外側に追い出して「モノ」にしてしまったのです。よく言うと自立です。

二分割をし続け、それが当たり前になると使う言語も変わってしまいます。腸内微生物などは眼中に入らず、心臓などの器官を「機械」とみなし、自己意識を勝手にカミと結びつけて「精神」としてしまい、TPOに合わせてどちらかを選択することになってしまいました。そして世間から聖人と思われるためには、肉体（機械）を拒否して精神（自己意識）を選択することを社会から要求されました。これにはヨーロッパ史の魔女裁判と30年戦争が強く影響しています。

これが現代の私たちにも影響を与えて、科学の発展、精神分裂病者の増加、理念による植民地統治、法治国家による独裁、社会主義による粛清、民主主義による他国侵略とつながっていきます。

肉体を意識の外側に追い出すことによって、都会を見てわかるように「意識」にとって都合の良い世界を作り上げることができるようになりましたが、そのために「生きている実感」のない人も増えてしまいました。

二種類の自己意識

デカルトの自己意識に徹して生きていると、分裂症をはじめ多くの問題が社会に現れてきました。そこで精神分析学が発生します。これがフロイトの無意識の発見です。無意識を作っておいてそれを発見したと申告するのです。意識のシンボリカルな特徴です。

ヨーロッパの外から見ると、肉体と精神を分けるという無茶をした上に、精神（意識）を中心にしてしまったから、意識が認めないものをその外側に無理矢理に押しやっただけのことで、発見というよりも発明です。

もしくは自業自得の結果のドブさらいです。

弟子のユングは、同じ自己意識でも大きな違いがあることがわかりました。

ユングの「自己」selbstとは、いちばん理想的な目指すべき自分で、対立物が結合した状態をさします。

マイナスを含んだ全体性vollstandigを含んだ自己で、私のいう智性をもつ主体です。

それに比べて、ユングの「自我」das Ichとは、意識（精神）を自分の中心にして、自己意識の限界をまだ知らないデカルトのコギトです。マイナスを含まない完全性vollkommenが占めている自己で、私のいう理性しか持たない主体です。

自己意識と自意識は共に英語ではself-consciousnessといいますが、意味は、自分自身についての意識。外界や他人と区別された自我としての自分についての意識、のことです。

自己意識過剰という表現はありませんが、自意識過剰というのは日常会話でもよく使います。意識の中で、いつも自分を中心にすえて考えないわけにいかないような性向の強いこと、をさします。

ユングでいうと「自己」はマイナスを含んだ全体性の中にいるので、自意識過剰にはなりにくいですが、「自我」は常に良い人でいたいというプラスだけの部分性の中にいるので、自意識過剰におちいりやすくなります。

コラム

精神と体を分けることのデメリット

分裂症者　　意識で支配できないものに対しての恐怖

意識と非意識の境の窓を閉じると生きる実感がなくなる　　　分裂症者

露出してやっと生きている気になれた自意識　　　　天井から誰かに見られている分裂症病者

反省には記憶の統括する自己意識が必要

客観性とは何か

サルトルの存在と無　　　　　肉体と意識　　　意識と非意識

意識と認識の峻別にこだわるサルトル

意識障害 consciousness　disturbance　

自己意識の生成図

自己意識の形成過程を図にしている専門家は私が知っている限りいないのだが、意識の形の変化は何に似ているか、どんなメタファーやアナロジーがあるのかと考えてみたところ、細胞の分化と成長の図が腑に落ちた。

小学校の理科で習う細胞分化の過程で起こる、表皮の陥没は内胚葉となり消化器官に分化していくのだが、その後に外胚葉にも内胚葉と同じような陥没が起こり、それらが神経系（脊髄・脳幹・脳）に発達していく。

この過程をメタファーとして意識にも当てはめてみる。

外胚葉が分化して成長を続け、ある時点で、表面が内に落ち込んで凹みができる。この凹みが意識である。

そしてこの凹を閉じて◎にすると自己意識が発動する。

ちょうどそれは、ヒトの目ん玉のようなもので、眼窩から外を覗いているのが自己意識である。内部の身体も自分自身なのだが、凹みの自己意識から外側は見えても内側は見ることはできない。

自己意識とは穴のこと

自分は自分のことを見ることができない。

それで鏡を使ってみることにする。一面だけでは片側しか見えないので、背中の後ろにも鏡を置いて、二つの鏡で自分を見てみる。そうすると、鏡の中に鏡が写り、それが永遠に続いていく。

これが自己意識だ。

自分自身を見ることは永遠に無限に続くけれど、まあ、大体のことはわかる。

そこで今回の大体は、細胞が成長していく過程の凹みが自己意識だというお話。

意識を図像化してみた。

前例があるのか知らない。これを見て、こんなのがあるよ、ということを知っている人がいたらご教示ください。

　　

穴が意識

上部が閉じたら自己意識が発動する

円がカラダ　器官（無意識）自律神経の影響を受ける

外側が他者（非意識）

管は消化器官、この中は他者である微生物（非意識）

	意識	器官	主体の視点	他者の視点	開閉
１	自己意識	大脳皮質	観る主体	乗物のボタン	閉鎖
２	意識・無意識	大脳辺縁系・脳幹	情報機関	自動操縦機能	開閉
３	潜在意識	心臓（循環器系器官）	機械	ホメオスタシス	閉鎖
４	非意識	小腸（消化器官）	他者・微生物	中心	開閉

丸い本体の一部が徐々に陥没してできる凹みが神経系、すなわち意識である。

外部を体で包み込んだ穴が意識の本体。

外部とは空気、あなた、社会、宇宙。

全部をまとめて「他者」と呼んでも「いのち」と呼んでも「空」と呼んでも各自の背景によって呼び名が変わる。

身体を貫くのは消化器官、この中は他者（微生物・食べ物・空気・「空」「気」）

参照　コラム　リバイバルするネオ生気論

球は私自身の身体のこと。

そして身体の入口を完全に閉じる時に、穴である意識は閉鎖され、内なる球体となると自己意識が発動する。

閉じた時に、内部で熱がたまり、中にあるものを次々に分けて分析をはじめる。これが思考とよばれるものだ。

入口が大きくと開いている時は、外部の非意識と自由に交流が始まり、変性意識と呼ばれる。

生まれたばかり赤ちゃんは入口が開いているので自分と母親をわけるものがない。外部との差もない。そこでなんでも口の中に入れてしゃぶることで、意識の代用とする。

毒や害のものを口に入れようとすると母親が赤ちゃんの動きをやめさせようとする。すると口の中でする代用の意識から触覚、視覚へと範囲を広げ、ついに意識の入口を閉じることを、すこしづつ覚え始める。

これができるようになると幼児は2歳ごろに「わたし」を持つようになる。しかし普段は開けているので天使（非意識）だが、閉じている時は第一反抗期の「いやいや」状態だ。

開けたり閉じたりしているうちは、「わたし」の中心は、身体であったり、意識であったり、入口に合わせて変化させている。しかしこの状態は現代人からは、まだ自己の確立していない子供、と判断される。

入口をしっかりと閉じて固定させる技術を持ったのが、古代の知識人とデカルト以降の都会人。

そんなに強く閉じて固定させることは、デカルト以前ならば、頭の固くて融通がきかず、みんなの気持ちのわからない無粋な人と言われたが、宗教戦争と魔女裁判と植民地と人口密度の急上昇のおかげで、そんな嫌な奴にも家の中にこもったり、意識の力を利用して外でも金を稼ぐ方法を次々と作り上げていく。そして城壁の中で暮らす市民が誕生した。

この意識の入口を閉ざした市民にも二通りのタイプがいる。

はじめに閉じている状態で分析し法則やルールを見つけるのが理性の力。この理性をいまだ信用して、意識の限界をまだ知らない青年期の人たち。

次に、閉じている状態では当然のことながら外部とはズレがあるので、意識では把握することはできないことがあると経験した成熟した人たち。

外部は宇宙の流れに則って、規則ただしく活動しながらも同時に常に姿を変えて自律している。

囲まれた安全の中にいる意識では完全な予測をすることができない外部の世界。

例えば、天気、新しい彗星、太陽の黒点、常に変化する荒野や森や砂漠や山や海での暮らしでは、いくら入口を開けて外部を取り入れて分析しても、外部は常に変化するので正確な把握には遅れをとってしまう。

では、入口を閉じ続けるとどんな変化が起きたのか。

閉じることにより、外との接触がなくなるので、自分は意識と肉体、すなわちデカルトのいったコギト（精神）と肉体になってしまう。たまに開けていれば、取り込まれた外部も新鮮だが、閉じてしまうと外の変化には対応できなくなってしまう。

入口を開けた時には天と地の間にヒトが、閉じることにより、外と遮断されて閉じられたリアリティが世界の中心となる。前とは違って、逆にここから世界を推し量ることになる。ここでとんでもないことが起きたのだ。先に答えがあって、それにあった事実を後から集めて、意識が正しかったことを証明しようとする人たちの誕生だ。因果関係が逆になってしまう思考法が始まる。先に結論があって、そこに事象を当てはめていく。現代の学問もこのやり方を踏襲している分野や派閥は多い。また、わからないこと(分けられないこと)をわからないまま、しばらく置いておくということができなくなった人たちも生んでしまった。わからないことでもひとまず白黒つけておいて、状況が詳細に分析された時に修正すればよいという輩である。医学部を卒業した人たちによる病院の臨床の現場を見れば、これがマジョリティであることはすぐにわかろう。

結果は肉体と精神しかないのだから、なんでもこの二つのどちらかにカテゴライズすることになる。すると天は精神に属し、地は肉体に属することになる。精神が天の領域の問題についても関わるのはヒトには荷が大きすぎた。はじめ近代人はこの役目に恐れおののいたので、一つでも多くの法則を見つけることに心底無我夢中になった。これが科学と預定論に夢中になった時代の奥底の動機だ。利便や金などが動機になる人ばかりではない。それよりも慄きと怖れと好奇と神秘だ。今までは天に任せておけばよかったものを、ヒトが支配し操作しマネジメントしなければならない驚きが拍車をかけた。　参照　プロテスタントの免罪符

だからその法則が正確であるかどうかなどは大きな問題ではない。緞帳を上げてしまったので「宇宙の法則」の代役を演じて乗り切ればなんとかなるという切羽詰った心境だ。ニュートン力学であっても、目の前のことに対処して説明ができれば十分なのだから、科学は真理が問われるのではなく、怖れを隠すために追求された。

多くの法則を発見するにつれていろいろなことが予測できるようになってくると、恐れることを忘れるようになれた。ヒトとはこれほどナイーブでシンプルな馬鹿でステキな生き物なのである。そうでないと、恐怖で何もできなくなるほどかわいいやつなのだ。

そしてついに精神はカミになり、精神と宇宙はミクロとマクロコスモスだ、とか「かく語りき」自己催眠をかけて、理念を説き始めた。ヒトはカミの立場に立つことで、全能感と超越感の喜びでホルモンと酵素を使って体の隅々まで震わせて恍惚に浸り、意識から生まれた理性を信念にまで奉りあげる結果になった。勘違いをしただけだし、ただその立場に立つことを妄想しただけで内容などないにもかかわらずだ。でも酒よりもこちらの方が気持ちの良い人もいたのだろう。こうして、入口をふさぐことで、ヒトは合理的説明と予測的未来だけはできるようになる。単なるわかった気と予測でしかないのだけど。

では、パラドックスの視点を持つ人の意識の入口はどのようになっているのだろうか？

入口が開いているようで閉まっており、閉まっているようで空いている状態だ。

こんなことは物理的に可能なのであろうか？

言語上では矛盾しているが図にしたらどうなのだろう。

穴を覆いかぶせる入口の接点が点ではなく面になり、その面が直線ではなく、フラクタルな曲面になり、入口の隙間は限りなく細くなりますが、開いている状態です。

そして体験していることを言語化する必要性がある時には、入口を閉じて意識化します。

視覚の喩えで言うと、坐禅の時に目を薄く開けて、斜め下をぼんやりと見つめる状態です。

これには訓練がいるので、すぐにはできませんが、体験者のもとで何回か続けているとできるようになります。

訓練をしたくない人は、開けることと閉じることを交互にしておけば、パラドックスな状態は経験できます。しばらくはこれで満足するのが得策です。

ところが、これではパラドックスの経験だけで、パラドックスの意識維持ではないので、言語化することはできません。それを無理すると、人は嘘をつくことになってしまいます。

そしてせっかちな人は開いた状態を体験したことの自信から、閉じた状態の言葉で開いた体験を説明する人も出てきます。ここに誤解が生まれてしまいますが、これならばまだ問題は大したことではありません。

ところが、開いた状態の時に体験したことを閉じたままでもできると思って、実行に移すと大きな問題になります。それがカミの言葉を語り、カミの世界を邪魔するものは排除する考え方と行動につながってしまいます。

極端な例では、自分の体験の正しさを基準にして他者を踏みにじる行為と論理的説明です。

ですから個人でいる場合は、パラドックスの状態だけで十分ですが、もし相手がいる世界で生きていくならば、入口を細く大きくデコボコにする練習をはじめてみるのがオススメです。

参照　　　　　　重心の取り方、躰の聲を聞いて、呼吸法、瞑想法

非意識の体験とは、入口が開いた状態で感知した世界です。直観で認識する体験です。直観にも感性・理性・智性・魂性と４つの領域がありますが、この非意識とは魂性のレベルの体験で、躰の部位では腸（gut）が1000兆個いるといわれる腸内微生物と共に感知した直観です。

参照　　　4つの直観　　

瞑想とは入口に「間」をつくる練習のこと　　　　意識と他人の間の点を線に、線を面に、面を三次元にする　　　

意識とは引きこもること

非意識とは外部とお付き合いすること、そして一緒になって溶融して同化すること。、

意識と非意識は、自分と他者。

間とは何？　　締め切らない、だからといって開けっぱなしにしない、薄目の状態。

完全なる他者と自分の中の他者との境界線を線から面に、面を立体にする。　

線を「間」にする練習は、他者に任せるのではなく、自分にこだわるのでもなく、ズレをみつけ、そこで戯れ、　他者ではない、自分でもない、ここをゆっくりと息を吐きながら大きくしていく。

意識は穴　穴を大きくして閉じたの古代の知識人やデカルト以降の都会人。

穴のない微生物

穴の小さい動物

穴を閉じない古代人　

穴を閉じてしまった現代人

穴の外と内に風がいつも吹いている状態にするのが、いい

穴に戻ることも、入口を完全に開けることも必要ない、境界線を空間にしてそこの感覚で理解すればいい

なぜ待つことが必要なのか？

非意識の都合もあるから　私だけでは決められない

待つことができない人がいる。そして待っていると何かが流れ込んでくるので、恐くなって待つのをやめてしまう人もいる。

自分でコントロールできないのは、自らが掘った意識の穴に新たな外部が流れ込んできて、その外部は「空」のように穴という形を得ると、そこで自律して動き出すからである。自分で張ったヨットの帆であっても、風が吹けばその帆の大きさや形によって船は動くかのように。これを乗っ取られると感じてしまうのだ。

これでは、外部が侵入することを許すことができない。新たな意識の穴を自分でふさがることを喜ぶはずだったのに、突然の自律性に驚き、受け止めることをやめ、自分はそれに関わったことから逃げてしまい、何事もなかったように振舞う。あまりの流れ込みの強さに、直視することを嫌がってただ背を向けてその場から立ち去ったのだ。それでも作った穴は塞いでいないので、そこに風が入れば自律的に動いてしまう。

これを流れ降る時間の起源だ。これに反して駆け上がる時間は、逃げるのではなく、勝ち負けにこだわらずに、ただ向き合わって「形」が「力」に昇華されるのを待つ時間だ。

流れ降る時間が絶えず突き進み、その勢いに駆け上がる時間の意識がビビって吸い込まれてしまうと「恐怖」があらわる。恐れるものでもないのだが、そう思ってしまったらダメだ。思った瞬間に恐怖が存在してしまう。

単なるイメージが独り歩きして恐怖となる。

もともとは自分のために始めたのに、自覚して責任を持たなかったために、突如に逃亡の企てに変わってしまった。責任を持つという中心点を作らなかったために、視点が浮遊してしまい、向こう側に移ってしまう可能性も考えてしまい、まさに可能性を考えたことで、自分がほった穴ではなく、流入物に中心が移ってしまい、自己意識の穴は主導権が変わることがあることに驚き怯えているのだ。

これを正常化するために必要なことは、自律的なものを放っておいても大丈夫だという体験の積み重ねが一番の早道だ。自律的なものは分裂症者を襲わないとプログラムはされていないので、そういうことが起きないことを何度も実験を繰り返して害を与えないという結果をだして、これを条件反射にしていくのがいい。

また、条件を絞って理解をするという方法もある。ある条件下では外を与える可能性があるが、その条件を変えるともうその可能性もなくなる、というように、条件で結果が変わることを認識することで、症状が減ることがある。

穴を埋めたらどうなるのか？

理想の穴は私の意識が肉体の形にぴったりと合うものである。穴が私を締め付け、ぴったりと私をはめこんでくれることによって、私は充実することができる。

ということは、穴がだんだんと小さくなっていくと、私の充実を味わうことができないことであり、これは私が肉体の犠牲になることだ。

しかし、この犠牲は受難と呼ばれ、この受難を耐え忍び、受け入れることが、救済である。

イエスの最後や、宗教的修行が例である。計り知れない苦しい犠牲ではあるが、反対の全体性から見れば、これは全ての特殊性から解放されることなので、救いといえる。

穴がなくなると、満たそうとする起源から解き放たれるので、自動化されて進むことに囚われなくなる。流れ降る時間に支配されなくても存在できる方法の一つだ。

空虚な穴は密度で感じる

普通の生活は穴を何ものかによってふさぎ、埋め、空虚を満たし充実の実現に費やされる。幼児は自分の口に乳頭を咥え、ない時には自分の指を口に入れる。空虚に密度を求め、指を溶かし、口の中で密度を増やして、満たそうとする。

閉じた穴を開く快感

穴は外部を感じる大事な器官である。穴がないと感じられない。穴がないと密度による圧力が生まれない。

穴を閉じてしまうと感じれなくなってしまうので、開けることで外部とつながりを持つ。

耳、目、鼻、口、肛門、尿管、膣、どれも詰まると感じられず、切羽詰ってしまう。閉じている入口を緩ませて解放させることで、電気信号が脳に伝わり、それは快感として感知される。

参照　

触覚の刺激は大脳新皮質の第一体性感覚野（S1）に到達した後、より高次な脳領域である第二運動野（M2）に送られ、それが自動的にフィードバックされる反響回路を通じて感知される。このズレの差異により精度の高い感覚を感知することができる。（これは反響回路を遮断する実験をすればわかる。）

触覚には穴がなさそうに見える。しかし、例えば押された感覚である圧覚を感知するメルケル盤を一種の穴と読んでもいいのかは皮膚感覚器の専門家に任せることにしよう。

水たまりをメタファーとした意識　　　

水たまりも意識の象徴である。その運動、流動性、連帯性、不断の変化において。

意識は持続の性格を持つ、河のように。

そして部分的には、夏の日の水たまりのように。

朝立が降ったばかり水たまり

凹みにとりいれたばかりの水はまだ爽やかでサラサラしており均等で流動的だ。

蒸発する過程の水たまり　　　ネバネバした水　　

柔らかな粘着で各部分と連帯性があり、自己を個別化するために各々の部分の柔らかさと不断の努力をするアメーバ。粘着の原因はその水の特性による　好み、水質、歴史、条件反射、環境によって変形の形やスピードが違う。記憶という前例がルールに縛る。水の中から新たな粘着のしかたが生まれてくる。二つの葛藤がある。

蒸発した水たまり　　　　吸い込まれる水　

アメーバのような水は、熱によって乾き、個別性を失い、主体を失い、実体である大地にに吸い込まれてしまう。

穴のエンジンは凹んでいる形状、ガソリンは大地と空気の圧力差

穴があるところに、浸透圧のギャップあり。

本体の大地と凹みの空気。　

大地と空気では密度が違う

大地は空気になりたがり、空気は大地になりたがる。

穴は侵入と溶解によって自分を充実させる。

密度の違いを埋めようとするものが力となる。

ヒトは穴が呼び求めているという。

そう呼んでいるのは穴であり、それが意識。

この穴こそが生命と意識とコンプレックスの起源である。

生殖以前の細胞の成長段階で、全てがここから始まる。

すべての穴には自律と全体の二つで生きている。

ヴァギナ、アナル、口内、鼻腔、眼窩、中耳、

例えば、食べるとは、異物を砕いて我がものにすることであり、同時に、自分の口を異物である他者で塞ぐことである。

穴は内と外、自律と全体、相反するものを一つに同化するプロセスの母胎だ。

密度の風味　ポイントは加速度

温度と密度と味わいを同化する。

歯は噛み砕くことによって、密度を味あう。

チョコの風味とは、歯の抵抗、温度の溶解、顕現の時間と現れ方、味、消滅の時間、（歯ざわり、とろけぐあい、味の順番と時間、風味、後味）とのことで、これらが、チョコである。

風味は複雑な建築構造と微分的な素材を持つ。微分的とは風味の時間的変化を指す。

私たちはこれらに対して趣味を持つ。受容したり拒否をする。ここにその人の性質や過去の経験があらわれる。

これが実存的精神分析の仕事である。

意識が主導権を取ることを止めるとカミが発動する

ヒトは一生を通じて、意識から自己意識、自己意識から無意識の認識、そして非意識の体験をする。

自分の存在の根拠を求める者は、偶然ではない必然を探す。

その必然とはありのままの自分の存在を体験し、自分の一部とすること。

非意識の体験とは、意識の入り口を緩め開けることからはじまり、その結果凹の内部と外部とでは圧力差もなくなり、意識は機能を失ってしまう。すると意識では認識ができなくなるので、表皮と内臓と外部に任せて漂い、ゆったりと待つ。しばらくすると内側から暖かいものが顕れる。この不思議なありのまま(分ける前)の自分の存在を体験し、その自分も自分全体(分ける前と分けた後)の一部となる。これは精神と肉体を分ける前の状態に回帰することで、ミクロコスモスと名づけているものだ。意識の外にある非意識をマクロコスモスとに対してのミクロコスモスである。この内なるカミが創造の根拠であることを自覚することで、自己意識に頼らなくても現状を直観(観照)している。

参照　4つの直観

これが全体を体感した時の意識の宿命である。だから痛みが伴い、情熱的にならざるを得ない。だから受難passionと呼ばれる。カミが発動することで、自己意識が主導権を失うからである。

逆に言うと、宗教は有益でもある。意識を失うことによって、ヒトの体は休まることができる。

カミに祈り任せることにより、穴に頼る必要がなくなり、穴があいていることに気がつかなくなり、物理的には穴があるにもかかわらず、遠くから見るカミの視点を借りると、小さな凹みの連続は大きな平面の内側の一つになり、脳内では穴が消えている。

この体験はそれほど特別の体験ではない。多くの人が山や海や森や神社や寺や教会やふとした時に体験している。

問題はこの体験を無意識のうちに自己が特別な存在であると思いたがる「閉じた意識」の特性である。

この弱点は、カミの視点を自分の視点と勘違いして、一介の通行人が、創造主としてふるまおうとすることだ。もしそのようなことが実現すると大義名分をもった殺人集団に早変わりする。

例えば、十字軍、イスラム国、イラク侵攻、先住民の虐殺、オウム真理教、毛沢東の文化革命。

組織の幹部だけがカミがのりうつったと自分と組織を騙して意識的に殺戮を重ね、続く信者たちは自律性を放棄したふりをして殺人の快楽に溺れて責任逃れをする。

劇場は楽しいのがいい、でも立場とゴールに至る順番はつねにわきまえる必要がある。

満足できない意識のあせり

凹の入り口を閉じることで意識が発動して、囲まれた部分を固定化させて、次に分けることによって認識ができる。ということは常に変化する外部を認識しようとしても常にそれは近似値でしかないので、終わりなき更新作業が必要とされる。

意識は、充足することがない。なぜならば、主観の絶対的な中心なので、全てはそこから始まり、何よりも先に、始動しなければならないからだ。任せることができない、常に自発的なのが、意識のお仕事であるから。

五感から来る情報は無意識に、大脳皮質で行う情報は思考として。

意識が発動された限り、満足して休むことがない、なぜなら、意識を保持しておくには、常に分け続けるしかないからだ。安定の悪い自転車を漕ぐかのように。

常に問い続ける（分け続ける）ことしかできない。問うことができるのは、問う（分けた）世界の中にいる限りである。この問う（分ける）世界は非意識（分けない）世界と違いがあるからこそ、自分があるのであり、意識は意識自身と同化することはできず、対象物として分離し続ける。常に宙ぶらりんで、時空を不断の猶予の時間と2枚の鏡に挟まれる空間の二つに分けた世界にいる。

もし非意識という大きな「空」の中に意識の穴があることを認めたり、意識の穴の蓋を完全に閉じた後に穴と肉体を合致させた瞬間に、「他者・外部・客体」は同時に消失して、可能性、認識、世界も消失する。

だから意識は終わりなき不満足、もしくは意識が発動されない状態のどちらにしかいられない。

意識は焦りがあって当然なのである。それが嫌な時は昼寝をするのがイイ。

肉体という内部、意識という名の穴、非意識という外部

このメタファーをいろいろな哲学者、文学者、芸術家、科学者が独自の喩えを使って説明する。

存在主義者は、肉体を存在と名づけ、自己意識を対自と名づけ、非意識を無と名付ける。

例えば

「対自の特徴は、対自が、存在全般の無化ではなく、個別的特殊的な即時の無化であることから生じる。

一つの特殊な欠如である。対自は具体的な欠如として、自己を構成する。

対自は自律的な実体ではない。対自は即自によって存在される、無があることによって。」

形而上学　この世界を誕生せしめた諸課程についての研究　　　なぜこの世界ができたの？Why

存在論　　この世の存在するものの共通点（本質）を研究　　　世界の共通点は何？　　　What

無化　存在を根拠づけるために存在されるということ。

Whyは脳（意識）が納得するようにすれば説明することができる。しかしWhatは対象が他者ならば同化できなので言葉としてしか理解する方法がない。

もし他者であるならば、言葉（分割して名づけたもの）として客観的な記述はできるが、同化できないのであれば直観で認識することはできない。あくまでも異物である。

果たして「共通性」を自己と他者の間で同時に見つけて直観できるかどうかは、あなたの開いた意識と慣れた技術と訓練の賜に依存している。

横穴を掘るとニセ自己や多重人格が発生する。　　　　　分裂症の力を活かす生き方

分裂症の人は他人から区分けされたり定義されることを異常に嫌がります。自分とは○○である、というような区分けを避けようとします。常に把握し難く、不可解で超越的なものでなければならないかのようにです。もし定義されてしまうと、彼は隣を歩いている人によっても左右されてしまうと感じてしまうこともあります。

なぜそれほど区分けされることを嫌い、区分けされると影響を受けてしまうと思ってしまうのでしょうか？

それは簡単に言うと、彼が他者に対していつもやっている行為だからです。

他者をすぐに区分けしてレッテルを張り、その人の性格や未来を分析するという行為をしているからです。

分析するには「スポットライトを当てて分ける」ことが必要ですから、常に変化している生命体を範囲を固定することで対象物のモノとして扱うことで、自由に自分の思惑どおりに判断できる存在に貶めることができます。ですから逆に他人から理解されると、分裂症者は見透かせれていると感じてしまうのです。

そこで自分がする行為はつねに一般者の意表をつくものでなくてはならない、という考えにたどり着きます。そして、自分の行為を自己が選んだものではなく、ニセ自己にやらせようとするのです。

意識は、現実のモノと関わらない限り、なんでも夢想し万能感にひたる自由に駆け巡ることができます。しかし、この想像力は幻影を作り出す能力に過ぎません。そして、自己の二重性、真の自由の欠如、完全な無力という仮借ない観念が同時に作り出されてしまいます。

しかし、このような分裂症者の持つ空想の中のイメージを現実の諸事物と結びつけることで成功している者もいる。この力を形にする作家や芸術家たちです。

彼らの意識の穴はどうのようになっているのか？

意識の入口を閉じているのだが、本人にっては入口は閉じられておらず、外から内を見透かされると感じてしまう。そこで意識である凹の横面（垂直面）に横穴を掘ることで、外から見えないようになると思うのです。しかしなんでも現象はセットで成り立つ。メリットがあればデメリットがついてくる。横穴にも当然のごとく「囲んだ非意識」が流れ込んでくるので、その横穴も新たな二つ目の意識となってしまう。自分でコントロールできないのは、自らが掘った意識の穴に新たな外部が流れ込んできて、その外部は「空」のように穴という形を得ると、そこで自律して動き出す。旧約聖書でカミが土塊に息を吹きかけてアダムが誕生したように。本人は自分が掘った穴だから自分で操作できると思っていたのに、自分の意に反して勝手に動き出すので、乗っ取られると感じてしまう。ここで二重性の問題が起きてしまう。しかし意識は同時に二つが作動することができないので、どちらか一つだけが活動することができる。といっても本来の凹の自己意識は通行人からも内部を読まれてしまうと感じているので、人の視線を感じる時は、横穴の新たな自己（ニセ自己）を中心として生活を始める。

この横穴の数だけ新たな自己が生まれるので、多重人格者はその数だけの穴を掘って生きている。

横穴の内側で遊んで（妄想して）いるだけならば、自分が空想界の創造主となり、好きなことをすることができる。ただこのままならば、無力であるという現実に叩きのめされるが、この凹に横穴を作ったことでできる出来事や矛盾やコメディや悲劇を表現することで、どちらの自己にも他者との新たな関係（居場所）を作る可能性ができる。　

自己意識とは幻想なのか？　　　凹の形状から理解する

凹をもう一度よくみたらわかるように、いくら実体（肉体）に囲まれているからといって中身は自分ではなく、外部です。他者です。社会です。単なる宇宙です。

これを意識だというのはわかりますが、これを自分の中心だとして自己と定義づけて、ここを始まりとして考えて行動してしまうのには何かおかしく感じませんか？

外部のことを自分の中心だというのは、勘違いしていると、言う見方もあります。

入口を閉じている時に限って、自己だというのはわかりますが、それでも肉体と自己の両方が自分なのであって、肉体を切り取った精神（意識）だけを自分だと言い始めてしまうと、もう「自己とは幻想である」と断言したほうがいいのかもしれません。

凹の状態であれば、へっこんでいる部分は、外部（すなわち他）なのであるけれども、自分の肉体によって囲っているので、普遍的な外部ではありません。特殊な外部です。このことから、意識の穴は自分であって他であり、他であって自分という、パラドックスの視点で体感するのが適切な領域です。これを白黒はっきりとつける理性的な認識だけに頼ってしまうのは、部分的な把握方法で、全体性を把握するには取り逃がしてしまうとは感じませんか？

コラム

般若心経の功績と限界

エピローグ

そうか、意識とは私たちが掘ってしまった穴だったんだ、というオチでこのエッセイをしめることになりました。

この見えない穴を表の形にしたのが都会の景色とシステム。

見えない世界が形を持つ時は鏡のように反対に映るので、穴の深いものほど高層ビルになり、小さな穴は平屋や掘っ建て小屋になります。

穴を世界の中心と信じると外側の形の世界、すなわち私たちの現実である文明社会では不安定で空虚なものとして現れ、

穴をまるで夢現（ゆめうつつ）かのように気楽にちゃんと向き合うとその分だけ本体（体）の比重が高まり、現実社会では柔らかいのに確かなものになるようです。

悪いのは全てが周りの環境が原因です。親、親戚、地域、学校、会社、国、地球。

でも自分が心地よく生きていきたいと思ったのならば、全てを自分の責任にしなければ、自分に都合の良い時空にすることができません。

そこで、穴だらけになってしまっている時空で暮らす人は、まずは、自分の穴をあまり使わないことから始めてみるのはどうでしょう？

そうすれば、穴を掘ることに夢中になっている人たちに騙されないようになれます。

こうして自分の心地よさがわかってきたら、今度は穴を上手に使って、他者の都合をよくするために押し付けてくる「空気」に騙されることなく、自分の見えない力を形にしていければいいと思います。

そういうことができるようになれば、今度は「私たち」というグループや仲間が増えていくと思います。

そのためにも、まずは

意識を使うな！

使うときは限定で。

あとがき

本を書く奴にはろくなのがいない。

書くという作業を実行するためには、外の自然の中で汗をかく時間を減らして、四方を外界から遮断した部屋の中にいて、そこで穴を一杯掘らなければならないからだ。

そりゃあ、おかしくなって仕方がない。

この世から消えていく喜びと、この世で140歳まで生きいける準備とのはざまの中で、書き始めた「密度論」の準備に書いた口上が思ったよりも長くなってしまった。

それもバラバラになってしまった家族と仲間のことが出発点になっている。

いつの間にか人とちゃんと対話をすることをやめてしまった人でも、本は読む。

自意識を褒め称えられることにしか関心がない人に教育されてしまった私たち。

本は読者の誤読のためにある。

読者は自分の知りたいことを、自分の好きなように、無意識のうちに内容を変えて読んでいるから、対話を好まない人にも受け入れられるのだ。

だからいつまでも良い人でいられる。

だからいつまでも正しいことをしたい、と言える。

意識の外に出ることはしない。

だからといって意識のルールを守ることもしない。

すると手っ取り早いのが穴にいる時間を減らすのが体のためには良い。

これを友人に見てもらったら、穴から出たら食っていけないよ、出るためには穴の中での快適さと効率化も提示しないのは上から目線だ、と言われた。

現実が穴から見えるのではなく、穴から見た世界が現実だ。

「密度論」が終わったら、心地よい穴のつくり方もまとめてみることにしよう。

いつの間にか、意識の入口を遮断する時間を増やすことになりかねない。

お、これは「二つの間」のことだ。

そうだ、午後は温泉に行くことにしよう。

参考文献

「無我」とは文字通り、「自分というものはない」ということです。

「そんなこといっても、自分はここにあるよ」と当然思われるでしょう。
けれども、例えばヴィパッサナーなどの方法によって、言葉を減らしていって、実際に起こっていることを、こまかく見ていくと、「自分」だと思っているものが、ただ、言葉でラベルを貼っていただけのものに過ぎず、実は存在しないことが最終的には分かるのだと、仏教では言うわけです。

分かりやすいところからいきますと、あなたが大切にしている茶碗があって、家族がそれを割ってしまったとします。
あなたはがっかりして悲しい気持ちになったり、怒りが湧いてきたりします。
「自分の茶碗が割れてしまった!!」というわけです。

けれど一体「自分の茶碗」というのは何なのでしょうか。確かにそこに「茶碗」はありました。その「茶碗」は割れてしまいました。けれど、そこにくっつく「自分の」というラベルは、あなたがそう思い込んでいるというだけのことではないでしょうか。

毎日毎日、これは「自分の」茶碗だ、と思って使っていたから、そう思い込んでいるだけのことで、ほかの家族も知っているとか、法律上はどう、ということも含めて、すべてはあなたや、家族や、世間の、思い込みにすぎないのではないでしょうか。

「自分の」という観念がなければ、ただ「茶碗」が割れただけですから、あなたは悲しみもせず、怒りもせず、「茶碗が割れたな」と認識するだけのはずなのです。

こうした見方が、あなたのすべての物の見方において徹底したとき、「自分」は消え、「執着」も「嫌悪」も消え、心の落ち着きだけが残る、というのが仏教のもともとの考え方です。

さて、ここで、脳科学の話になりますが、スーザン・ブラックモアという作家の書くところによると、「経験の統合された流れ」としての「意識」というものは錯覚にすぎない、という立場が最近では科学的なものとしてあるのだそうです。
(例えば http://s.ameblo.jp/zhiliangzhi/entry-10748554129.html 参照)

ここで「意識」といっているものを「自分」というふうに読み替えると、仏教の見方とほとんど同じに思えます。

（「魂の次元」より）

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「意識」とは、カスタネダが言う無数にある「集合点」の一つに過ぎず、「自我」とはユングの言う「コンプレックス（感情に色づけられた複合体）」の一つと言う言い方もできると思います。でも、とし兵衛さんのご説明がとても分かりやすいように思いました。そして、何よりも（苦しんでいる）人々に向けて語りかけてくれているように思いました。

私の場合、「私の！」とか、カッとする度に何度も上記のとし兵衛さまのお言葉を読み直さねばならないでしょう。

「意識」スーザン・ブラックモア　岩波書店　２０１０年

より。

スーザン・ブラックモアは１９５１年生まれの、サイエンスライターで「意識を語る」NTT出版などの本を書かれています。

この本が最近出版されたのと、

彼には色々な脳科学者との接触があり、意識の最前線及び、彼自身の論説もあろうと思い、読んでみました。

私の個人的な了解ですが、新しい知見は得られませんでした。

でも、意識の不思議さ、多くの意識ハンターの見解、錯覚から多重人格論、夢・催眠術、著者の主張等が書かれてあり、入門書としては良書であろうと思います。

この著者の主張は、私にとって珍しいもので、「錯覚主義」という物です。

私が感じている意識、クオリアも含め全てが錯覚であるという主張でしょうか。

それでは、

「つまり、私たちは欺かれているのだ。」

「意識と呼ばれ、説明を要する何かが明らかに存在する。

しかし、私たちが経験の統合された流れだと考えているものは、本当にそのようなものだろうか。私たちは、自分の意識のなかにいま何があるかを知っていると言う考えを放棄し、自分自身の心について深刻な勘違いをしているかもしれないということを認めなければならないのではなかろうか。

私はそう思うのである。」

つまり“経験の統合された流れなどない”と言う主張です。意識の流れがないという事でしょう。

もう少し詳しくは

「たとえ自我が見つからず、深い哲学的困難に陥るとしても、

なお自我の感覚に固執して持続的な自我や魂の存在を認め続けるということも可能である。

また、自我をある種の脳内プロセスと同一視して、そもそもいったいなぜこの脳内プロセスが意識を持つのかという問題を棚上げして考えないようにすることも可能である。

あるいは、私たちの自我の感覚に対応するような持続的な存在をいっさい認めないことも可能である。」

と可能性を列挙した中で、著者は

「私は、知的な観点から言えば、この最後の道をとるべきだと考える。」

と「錯覚主義」を取るのを知的観点からと、根拠らしきものを言われます。

自我の感覚に対応するような持続的な存在をいっさい認めないのです。認めない意味は錯覚だからであると言っているのです。

しかしこの主義の問題として挙げられるのは

「問題は、個人の人生においてこの考えを受け入れるのが非常に難しいという事だ。

この考えを受け入れるならば、すべての経験について根本的に異なる見方をとらなくてはならない。

つまり、この経験を持っている誰かなどはおらず、私が存在するような気がするときはいつも、その「私」は一時的な虚構にすぎず、一瞬前、あるいは先週、もしくは去年、存在したように思われたのと同じ「私」ではないということを認めなくてはならないのだ。これは、至難の業だが、訓練すれば簡単になっていくだろうと思う。」

「私と言う自覚」が一瞬、一瞬異なっているのが本当で、連続した自我は錯覚だと言うのです。

さらに訓練すれば簡単だとのことですが、訓練したからといって自覚が変わるだけですよね。

最後に

「真実はこうである。・・・

意識は壮大な錯覚だということになる。「私はいま意識があるか」、「私は今何を意識しているか」といった問いを問うことで意識が生じてくる。問うているその瞬間に、答えがでっちあげられる。つまり一つの今、一つの意識の流れ、そしてそれを観察する一つの自我がすべて一緒にあらわれ、たちどころに消えてしまうのである。」

いう事は、自分が自問したときにしか意識は表れてこず、そのほかは意識がない、そしてその現われてくる自我も連続したものではない、この考方は訓練すれば簡単だ、という主張です。

でも、自問したときに現れる意識は錯覚であると、片付けていますが、そんなんでいいのでしょうか。

そんなものではないと思います。

以上が主な主旨ですが、納得の出来ない点が、一点あるのです。

それは

「この考え方によれば、人間と同じように意識を持つことが出来るのは、人間と同じくらい錯覚を持つことが出来る生き物のみである。」

という点ですが、他の動物には意識が存在しない、人間至上主義が見えてきます。

このことが意味するのは、人間だけが意識を持つという意味ではなく、人間と同じ意識を持てるのが人間しかいないという当たり前のことを言っているのかも知れません。そうであればいいのですが、

紛らわしいです。

人間だけが特別の意識をもっていることを主張することに、何の意義もないと考えられます。

「錯覚主義」という主張に遭遇したのは初めてです。しかし。脳の物理的活動と、この錯覚がどの様な関係になっているのかの説明は、見つけられませんでした。

私の読解力不足でしょうか。

「錯覚主義」を標榜することにより、何も変わらないと思われます。

私は意識その物が実在するか、または実在しないか、錯覚であるか、別次元の霊魂か、などは、どうでもよくて、

ただ、物理的に脳の活動から意識が創生される、メカニズムがわかればいいというだけです。

だから意識二元論でも一元論でも、随伴現象でもなんでもいいのです。

主義主張は、メカニズムをメインに展開していただきたく希望するのです。

つまり、意識現象の基本はクオリア、気付きですから、それ以外の高度な心理現象を取り上げるのは後回しでもいいと思われます。特に意識という観点からの論に対しては。