聖僧Assajiは、自分がブッダのもとで出家をしたこと、その人が師であること、その人の教えに従っていることを伝えました。その教えについて説明してくださるようにとSāriputtaが懇願すると、Assajiはこう答えました。「私はまだ出家したばかりです。この教えと規律に出会ったばかりです。ですからこの教えについて詳細に語ることはできません。教えの意味するところを手短にお伝えすることしかできません」

この聖僧は実際のところは至高のゴールに到達していたので、教えの全体を理解していたはずです。しかし謙虚さゆえに、自分はほんのわずかのことしか知らないと口にしたわけです。Sāriputtaは、後にはブッダの教えを説明する者の筆頭となったのですが、この時の彼はAssajiに対してこう言いました。「多くの説明は結構です。ほんのわずかでかまいませんので、ブッダのお説きになっている教えをお聞かせください」 Assajiはこの願いに応じました。彼が伝えたのは、教えのほんの概略のみでした。その説明はどれほど短かったのか？それは実に短くて、一節にさえ満たないものでした。

Ye dhammā hetuppabhavā Tesaṃ hetum tathāgato āha
Tesañca yo nirodho Evamvādī mahāsamano

すべての現象は原因により生じます。如来はその原因を説かれました。
またその原因が滅することも。これが大沙門の教えです。

この短い説明を受けたSāriputtaは、「私にはこれで十分であります」と言いました。なぜなら、ごくわずかな説明を聴いたSāriputtaの内には、ダンマの全体に対する一点の曇りもない完全無欠な理解が生じたからです。

つまり、教えは短いものにすぎませんが、Sāriputtaの理解はわずかどころではなかったというわけです。彼は教えの全体を理解しました。ですから弟子よ、あなたもわずかながら理解しているのですね？よろしい、もしも少しでも理解しており、そして「祝福された方」の指導に従うならば、あなたの得るものは非常に大きなものとなるでしょう。

はじめての仏教徒は商人タプッサとバッルカTapassu　Bhalluka

涅槃が「存在する」のは、人が到達できるから。しかし、この31界の世界には存在しません。

Anguttara NikāyaのUdānaには、涅槃を説明する 4 つの経典(Udāna 8.1 から 8.4)。

abhiññāの力を持つ人は、abhiññāの力を使用しながら通常の作業を行うことができる。

Chullapanthaka尊者は、abhiññāの力で自分自身のコピーを数千体も作成し、いかに寺院の敷地を一斉に掃除するかを示しました。

Mahākaccānabhaddekarattasutta Majjhima Nikāya 133

「マハーカッチャーナ吉祥一夜経」（『中部』133）

　♪まさに今日、熱勤がなされるべきである。誰が明日の死を知ろうか。

品詞	語基	性	数	格	意味
‘‘Ajja		不変	‐	‐	‐	‐	今日、今
eva		不変	‐	‐	‐	‐	まさに、のみ、じつに
kiccam	kṛ	未分	a	中	単	主	なされるべき
ātappaṃ,	ā-tap	名	a	中	単	主	熱勤、熱心、勇猛
ko		代	代的	男	単	主	何、誰
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
jaññā	jñā	動	願	能	単	三	知る
語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
maraṇaṃ	mṛ	名	a	中	単	対	死
suve;		不変	‐	‐	‐	‐	明日

ヴィパッサナー瞑想

The Art of Living　　　生きる技で引用されている経蔵

The art of living 第一章

「今も昔も、私は苦しみと苦しみの撲滅について教えます。」と言いました。

出典　1. S. XLIV. x. 2, Anurādha Sutta.　　　　　　　「アヌラーダ経」（『相応部』22-86）

彼は苦しみからの解放につながらないものについては議論することを一切拒否しました。

「単に言われたこと、過去の世代から伝わったこと、一般の意見、または経典が言うことを信じてはなりません。真実であると直接に知るとき、『これらの原則は不健全で非難されるものであり、採用して実行すると害と苦しみにつながる』と自分で確認するとき、それを放棄すべきです。そして、『これらの原則は健全で非難されず、賢者によって称賛されるものであり、採用して実行すると幸福と幸福につながる』と自分で直接に知るとき、それを受け入れて実践すべきです。」出典　2. A. III. vii. 65, Kesamutti Sutta (Kālāma Sutta), iii, ix.

「ケーサムッタ経」（『増支部』3-65）

「腐敗の対象となるこの体を見て得るものは何ですか？法を見る者は私を見る；私を見る者は法を見る」と言いました。

出典　5. S. XXII. 87 (5), Vakkali Sutta.　　　「ヴァッカリ経」（『相応部』22-87）

この内なる暗闇を晴らすためには、真実を理解する必要があります。真実の本性を知るためには、自分自身の本性に洞察を得なければなりません。したがって、仏陀が示した道は内省の道、自己観察の道です。「認識するマインドがあるこの体の内で、私は宇宙、その起源、その終焉、そしてその終焉に至る道を明らかにします。」

出典　7. A. IV. v. 5 (45), Rohitassa Sutta. 　 「ローヒタッサ経」（『増支部』4-45）　またはS. II. iii. 6.

この道はまた浄化の道でもあります。自分についての真実を知るために、単なる好奇心ではなく、具体的な目的を持って自分自身を探求します。自分自身を観察することで、初めて、心の視界を曇らせ、現実を隠し、苦しみを生み出す偏見を認識することができます。私たちを不安定で不幸に保つ蓄積された内部の緊張を認識します。徐々に、それらを溶かす方法を学び、私たちの心は純粋で平和で幸福になります。

最も重要なのは、実践されるべき教えです。そうでなければ、それは無意味な演習です。自分を仏教徒と呼ぶ必要はありません。仏陀やその教えに対する信仰だけでは私たちを苦しみから解放するのに役立ちません。また、経路の単なる知識も同様です。これらは教えを実践するようにインスパイアする場合にのみ価値があります。仏陀が言ったように、「誰かが多くの経典を暗唱しても、それを実践しなければ、その無神経な人は他人の牛の数を数えるだけの放牧者のようなものです。真実の探求者の生活の報酬を楽しむことはありません。経典から数語しか暗唱できない人が、Dhammaの生活を実践し、その始まりからゴールまでの道を歩むと、それによって真実の探求者の生活の報酬を楽しむことができます。」

出典　8. Dhammapada, I. 19 & 20. 法句1.19

真実を求め、解放を求め、それに向かって努力することが重要です。これが仏教の真の本質です。それは生活の実際の経験であり、自己観察と内省に基づいています。

第3章　

「すべての存在は行為（カンマ）を所有しており、その行為を引き継ぎ、その行為から始まり、行為に結びついています。その行為が避難所になります。その行為が卑劣か高貴であるかのように、人生も同様です。」

出典　1. M. 135, Cūḷa Kamma Vibhaṅga Sutta.　　　「小業分別経」（『中部』135）

私たちが人生で遭遇するすべてのものは、私たちの行為の結果です。

私たちはそれぞれ自分の行為の主人になることによって、自分の運命の主人になることができます。私たち一人ひとりには、苦しみを引き起こす行為に対して責任があります。私たち一人ひとりは、自分の行為によって苦しみを終わらせる手段を持っています。ブッダはこう言いました、「あなたは自分の主人であり、自分の未来は自分で作るのです。」出典　2. Dhammapada, XXV. 21 (380).　　 ｢比丘品｣（『法句』25）

言葉や行為、あるいはその外的影響は、単なる心的行為（メンタル）の結果にすぎません。それらは、表現に与えられた意図の性質に応じて適切に判断されます。本当のカルマは心的な（メンタル）行為であり、将来結果をもたらす原因です。

この真実を理解した仏陀は、「心はすべての現象に先立ち、心が最も重要であり、すべては心が作り出したものです。もし不純な心で話し行動すると、車輪がロバの足を追うように、苦しみがあなたについてきます。純粋な心で話し行動すれば、幸福は決して離れることのない影としてあなたを追ってきます。」

出典　3. Dhammapada, I. 1 & 2.　　 ｢双品」（『法句』1）

三蘊（受・想・識蘊）の仕事は、入ってくる情報を受動的に処理することだけです。しかし心が反応し始めると、受動性は魅力されるか反発するか、好きか嫌いに取って代わられます。

この反応により、新たな一連の出来事が始まります。連鎖の始まりは反応、すなわちサンカーラです。

「どんな苦しみが生じても、その原因として反応（サンカーラ）がある。すべての反応がなくなれば、苦しみはなくなる」と仏陀が言った理由です。

出典　4. Sutta Nipāta, III. 12, Dvayatānupassanā Sutta. 　「二種随観経」（『経集』38）

苦しみの本当の原因は心の反応、すなわちカンマです。好きか嫌いかの一時的な反応はそれほど強くなく、大きな結果をもたらさないかもしれませんが、累積的な影響を与える可能性があります。この反応は刻一刻と繰り返され、繰り返すたびに強まり、渇望や嫌悪に発展します。これは、仏陀が最初の説教の中でタンハー（文字通り「渇き」パーリ語源はtan場所+hā付着「付着する場所」）と呼んだものです。

出典　5. S. LVI (XII). ii. 1, Dhamma-cakkappavattana Sutta.　　「転法輪経」（『相応部』56-11）

つまり、ないものに対する飽くなき憧れの心的（メンタル）習慣であり、あるものに対しても同じ救いようのない不満を意味します。そして、切望や不満が強ければ強いほど、私たちの思考、発言、行動に与える影響はさらに大きくなり、より多くの苦しみを引き起こすことになります。

出典　5. S. LVI (XII). ii. 1, Dhamma-cakkappavattana Sutta.　　「転法輪経」（『相応部』56-11）

つまり、ないものに対する飽くなき憧れ、メンタルの習慣であり、あるものに対しては救いようのない不満を意味します。そして、切望や不満が強ければ強いほど、私たちの思考、発言、行動に与える影響はさらに大きくなり、より多くの苦しみを引き起こすことになります。

ブッダは、一部の反応は水たまりの表面に描かれた線のようなものであると言い、線を引くとすぐに消えてしまいます。砂浜になぞった線のようなものもあります。朝描いても、夜には潮や風で消えてしまいます。ノミとハンマーで岩に深く刻まれた線のようなものもあります。それらも岩の浸食とともに消滅しますが、消えるまでには長い時間がかかります。出典　6.　 A. III. xiii. 130, Lekha Sutta.　　「刻文経」（『増支部』3-132）

　Pāsāṇalekhūpamo puggalo, pathavilekhūpamo puggalo, udakalekhūpamo puggalo.

岩への刻文に喩えられる人、大地への刻文に喩えられる人、水への刻文に喩えられる人です。

第4章　　問題の根源

「苦しみの真実は、最後まで探究されなければならない」と仏陀は言いました。

将来の仏陀となるシッダールタは、知性の限られた説明では満足しませんでした。彼は苦しみの本当の性質を体験するために自分の内側を探求し続け、「五つの集合体（五蘊）への執着が苦しみである」ことを発見しました。

出典　1. S. LVI (XII). ii. 1, Dhamma-cakkappavattana Sutta.　　「転法輪経」（『相応部』56-11）

苦しみから抜け出す方法

苦しみとその起源を理解した後、将来の仏陀は次の質問に直面しました。どうすれば苦しみを終わらせることができるのか？カンマの法則、つまり原因と結果を思い出すことによって、「それが生まれることから生まれます。これが存在しない場合、それは発生しません。それはこれが止まることによって止まります。」出典　4. M. 38, Mahā-taṇhāsaṅkhaya Sutta. 　「大愛尽経」（『中部』38）

原因がなければ何も起こりません。原因を取り除けば効果はありません。このようにして、苦しみが生じるプロセスを逆転させることができます。

こうして、この苦しみ全体が消滅するのです。もし私たちが無知に終止符を打てれば、あらゆる種類の苦しみを引き起こす盲目的な反応はなくなるでしょう。そして、苦しみがなくなったら、私たちは真の平安、真の幸福を経験することになるでしょう。苦しみの輪は解放の輪に変わることができます。

「自分が間違ったことをすることによって、自分自身を汚すことになる。自分が悪いことをしないことで、自分自身が浄化される」と言いました。

出典　6. Dhammapada, XII. 9 (165).　　　　｢我品｣（『法句』12）

私たちはそれぞれ、苦しみを引き起こす反応に対して責任があります。自分の責任を受け入れることで、苦しみを取り除く方法を学ぶことができます。

サンサーラとは、転生を繰り返すことで固定的なアイデンティティを維持する魂や自己の輪廻という一般的な考えではありません。ブッダは、まさにそれが起こらないことだと言いました。彼は、人生から人生に受け継がれる不変のアイデンティティなど存在しないと主張しました。「それはちょうど牛乳からカード、カードから清澄バター、清澄バターからクリーミーなスキムとなります。牛乳からできているからといってカード、フレッシュバター、清澄バター、スキムは牛乳とはみなされません。同様に、いつでも現在の存在状態だけが現実であるとみなされ、過去や未来の状態では考えられません。」出典　7. D. 9, Poṭṭhapāda Suttanta.　 「ポッタパーダ経」（『長部』9）

仏陀は固定した自我原理が次々の人生で生まれ変わるのではなく、過去や未来の存在も存在しないとみなしました。その代わりに、私たちの行動がそのプロセスに推進力を与える限り、ある存在から別の存在へと成るプロセスだけが継続することを理解して、教えました。

たとえ現在以外の存在を信じていないとしても、「条件によって生じる輪」には関連性があります。私たちが自分自身の盲目的な反応に気づいていない瞬間ごとに、私たちは「いま・ここ」で経験する苦しみを生み出します。

「たとえあの世がなく、将来善行に対する報酬や悪行に対する罰がないと信じていたとしても、今生においても、憎しみや悪意、不安から自由になれば、人は幸せに生きることができる。」　出典8.　 A. III. vii. 65, Kesamutti Sutta (Kālāma Sutta), xvi.　　 「ケーサムッタ経」（『増支部』3-65）

過去や未来の存在を信じるか信じないかに関係なく、私たちは依然として現世の問題、つまり自分自身の盲目的な反応によって引き起こされる問題に直面します。私たちにとって最も重要なことは、これらの問題を今すぐ解決し、反応する習慣をやめて苦しみを終わらせるための一歩を踏み出し、解放の幸福を今すぐ経験することです。

小石とギー　

自然法則を理解し、法則に従って生き始めるのが早ければ早いほど、私たちは悲惨な状況から早く抜け出すことができます。

9. Based on S. XLII. viii. 6, Asibandhakaputta Sutta.　　 「アシバンダカプッタ経」（『相応部』42-6）

第5章　　道徳的行為の訓練

「あらゆる不健全な行為を避け、健全な行為を行い、心を清めなさい。」これが悟りを開いた人の教えです。

出典1. 　　Dhammapada, XIV. 5 (183).　　　 「仏陀品」（『法句』14）

これは非常に明確な説明であり、誰もが受け入れられると思われます。有害な行為を避け、有益な行為を行うべきであるということに誰もが同意します。しかし、何が有益か有害か、何が健全か不健全かをどのように定義するのでしょうか? これを行おうとするとき、私たちは自分の見解、伝統的な信念、好みや偏見に依ることになり、その結果、一部の人には受け入れられるが、他の人には受け入れられない、狭い宗派的な定義を生み出してしまいます。仏陀はそのような狭い解釈の代わりに、健全と不健全、敬虔と罪の普遍的な定義を提示しました。他者を傷つけ、他者の平和と調和を乱す行為はすべて罪深い行為であり、不健全な行為です。他者を助け、他者の平和と調和に貢献するあらゆる行為は敬虔な行為であり、健全な行為です。さらに、宗教的な儀式や知的な修行を行うことではなく、自分自身の現実を直接体験し、苦しみを生み出す条件付けを取り除くために体系的に取り組むことによって心は真に浄化されます。

「現世も燃え、来世も燃え、悪を行う者は二重に苦しみます...現世も幸せ、来世も幸せ、徳のある人は二重に喜びます。」出典2. 　Dhammapada, I. 17 & 18.　　｢双品」（『法句』1）

私たちは天国と地獄を経験するのに死後まで待つ必要はありません。私たちはこの人生の中で、自分自身の中でそれらを経験することができます。不健全な行為をすると、私たちは渇望と嫌悪の地獄の火を経験します。健全な行動を行うとき、私たちは心の平和の天国を経験します。したがって、私たちが不健全な言動を控えることは、他人の利益のためだけでなく、自分自身の利益のためでもあり、自分自身への危害を避けるためでもあります。

正しいスピーチを実践する人は、真実を語り、真実を貫き、信頼でき、頼りになり、他人に対して率直であると説明しました。彼は口論を和解させ、団結を奨励します。彼は調和を楽しみ、調和を求め、調和を喜び、言葉によって調和を生み出します。彼の話し方は穏やかで、耳に心地よく、優しく、心温まり、礼儀正しく、心地よく、多くの人にとって楽しいものです。彼は、ダンマと行動規範に従って、事実に従って、何が役立つかに従って、適切なタイミングで話します。彼の言葉は記憶に値し、タイムリーで、論理的で、適切に選択されており、建設的です。

出典3.　　 M. 27, Cūḷa-hatthi-padopama Sutta.　　　「小象跡喩経」（『中部』27）

「棒や剣を脇に置き、誰にも害を及ぼさないように注意し、優しさに満ち、すべての生き物の利益を求めます。彼自身も秘密から解放され、純粋な存在のように生きています。」

出典4. 　 M. 27, Cūḷa-hatthi-padopama Sutta.　　　「小象跡喩経」（『中部』27）

第6章　集中力のトレーニング

ブッダは 4 つのタイプの正しい努力について説明しました。

• 邪悪で不健全な状態の発生を防ぐ。

• 万一起きた場合には放棄すること。

• まだ存在しない健全な状態を生成する。

• それらを滞りなく維持し、それを発展させ、完全な成長と完成に到達させること。

出典　1.　　 A. IV. ii. 3 (13), Padhāna Sutta.　　　「勤経」（『増支部』4-13）

呼吸を意識する練習をすることで、4つの正しい努力をすべて実践することができます。座って、何も考えずに呼吸に注意を集中します。そうすることで、自己認識の健全な状態を開始し、維持します。気が散ったり、ぼんやりしたり、現実を見失ったりするのを防ぎます。何か考えが浮かんできても、それを追求するのではなく、もう一度呼吸に注意を戻します。このようにして、単一の対象に集中し続けることと、気が散ることに抵抗する心の能力、つまり集中力に不可欠な 2 つの性質を発達させます。

第7章　智慧の訓練

「根が手つかずでしっかりと地面に残っていれば、伐採された木はまだ新しい芽を出します。根底にある渇望と嫌悪の習慣が根こそぎにされなければ、苦しみは何度も繰り返し発生する。」

出典1. 　　　Dhammapada, XXIV. 5 (338).　　 ｢渇愛品｣（『法句』24）

条件付けが無意識の心に残っている限り、それは最初の機会に新しい芽を出し、苦しみを引き起こします。このため、集中の実践によって到達可能な最高の状態に達した後でも、将来の仏陀となるシッダールタは「解放」を達成したことに満足しませんでした。

自分の性質に対する洞察力の育成、つまり苦しみの原因を認識し除去するための洞察力です。これがブッダの発見であり、ブッダが自らの解放のために実践したこと、そして生涯を通じて他の人に教えたことでした。

これは彼の教えのユニークな要素で、彼はそれを最も重要視しました。「道徳に支えられれば、集中力は非常に実り、非常に有益です。集中力に支えられれば、智慧は非常に実り、非常に有益です。智慧に支えられれば、心はあらゆる煩悩から解放されます。」と彼は繰り返し説きました。

出典2.　　　 D. 16, Mahā-Parinibbāna Suttanta.　　　「大般涅槃経」（『長部』16）

「自分の仕事は自分でやらなければなりません。目標に到達した人は道を示すだけです。」出典3. 　　Dhammapada. XX. 4 (276).　　 ｢道品」（『法句』20）

真実は自分自身の中でのみ生きることができ、直接体験することができます。外にあるものは常に私たちから遠く離れたところにあります。私たちはその内部でのみ、実際の、直接の、生きた現実体験をすることができます。 3 種類の智慧のうち、最初の 2 つは仏陀の教えに特有のものではありません。どちらも彼以前からインドに存在しており、彼の時代にも、仏陀が教えたことは何でも私の教えだと主張する人たちがいました。

出典　4. See　　　 S. XLVI (II). vi. 2, Pariyāya Sutta.　　　 「理趣経」（『相応部』46-52）

仏陀の世界に対するユニークな貢献は、個人的に真実を認識し、経験的な智慧であるバーヴァナー・マーヤー・パンニャを発展させる方法でした。真実の直接の実現を達成するこの方法が、ヴィパッサナーバーヴァナーのテクニックです。

ヴィパッサナー・バーヴァーナー、またはヴィパッサナー瞑想は、洞察力の閃き、真実の突然の直観としてよく説明されます。この説明は正しいのですが、実際には、瞑想者がそのような直観ができるレベルまで進歩するために使用できる段階的な方法があります。この方法はヴィパッサナー・バーヴァナー、洞察力の開発であり、一般にヴィパッサナー瞑想と呼ばれています。

passanāという語句は「見る」ことを意味し、私たちが目を開けて見る通常の種類の視覚を意味します。Vipassanāとは、特別な種類のビジョン、つまり自分自身の中にある現実を観察することを意味します。これは、自分自身の身体的感覚を注意の対象とすることによって達成されます。このテクニックは、自分自身の中にある感覚を体系的かつ冷静に観察することです。この観察は、心と体の現実全体を明らかにします。

何かが 6 つの感覚基盤に接触すると、必ず感覚が生じます。仏陀はそのプロセスを次のように説明しました。「2本の棒を手に取り、一方をもう一方にこすり付けると、摩擦熱が発生し、火花が発生します。同様に、快いと経験される接触の結果、快い感覚が生じます。不快として経験される接触の結果、不快な感覚が生じます。ニュートラルと経験される接触の結果、ニュートラルな感覚が生じます。」出典5.　　 S. XII. vii. 62 (2), Dutiya Assutavā Sutta;　　　「無聞経」（『相応部』12-61）

also 　　　　　S. XXXVI (II). i. 10, Phassa Mūlaka Sutta.　　　　 「触根本経」（『相応部』36-10）

対象と心や身体との接触は、感覚の火花を生み出します。したがって、感覚は、私たちが物理的および心的すべての現象世界を経験するためのリンクです。経験的な叡智を育むためには、私たちが実際に経験していることに気づく必要があります。つまり、感覚の認識（気づき）を成長させなければなりません。

「体の枠内のあらゆる場所、体内の生命のある場所ではどこでも、人は感覚を経験します。」出典7.　　 S. XXXVI (II). i. 7, Paṭhama Gelañña Sutta.　　 「第一の疾病経」（『相応部』36-7）

注意をある部分から別の部分へ、ある感覚から別の感覚へとランダムに移動させると、当然のことながら、より強い感覚がある箇所に常に引き寄せられます。これは体の特定の部分を無視することになり、その部分のより微細な感覚を観察することができなくなります。あなたの観察は部分的で、不完全で、表面的なものにとどまります。したがって、常に注意を順番に動かすことが重要です。

第8章

認識（感知・気づき）と平静

無常とは本当に条件づけられたものであり、

生まれては去っていく性質を持ちます。

それらが生じて消滅することで、

根絶となり、真の幸福をもたらします。

出典1.　　 D. 16, Mahā-Parinibbāna Suttanta.　　　「大般涅槃経」（『長部』16）

この節は釈迦の入滅後、神々の王であるサッカによって語られている。 他の場所では少し異なる形で表示されている。 例えば、S. I. ii. 1, Nandana Sutta やS. IX. 6, Anuruddha Sutta. を参照。

たとえ彼が最大の慈善活動を行ったとしても、受け入れる心で悟りを開いた人、ダンマ、そしてすべての聖なる人々に避難（こころ落ち着く場所、帰依）したほうが、さらに実り多かったでしょう。そして、受け入れる心で五つの戒めを守ることがさらに実り豊かだったでしょう。そして、すべての人に対する善意を育むことが牛の乳を搾るのにかかる時間だけであっても、さらに実り豊かだったでしょう。

そして、もし彼がこれらすべてを実行していれば、無常の認識を養うことが指を鳴らすのにかかる時間だけであっても彼にとってさらに有益だったでしょう。

出典2.　 A. IX. ii. 10 (20), Velāma Sutta.　　「ヴェーラーマ経」（『増支部』9-20）

ある種の心的（メンタル）条件付けはポジティブなものではないでしょうか? なぜそれらを根絶しようとするのでしょうか？

ポジティブな条件付けは、苦しみからの解放に向けて努力する動機を与えます。しかし、その目標が達成されると、ポジティブなものもネガティブなものも含め、すべての条件付けが後に残されます。それはちょうどいかだを使って川を渡るのと同じです。川を渡ると、いかだを頭に乗せて旅を続けません。いかだはその目的を果たしました。今はもういかだを使う必要はなくなり、いかだを川岸に置いておきます。

出典　3. 有名な筏の喩えは　M. 22, Alagaddūpama Sutta　「蛇喩経」（『中部』22）　　からの引用

同様に、完全に解放された人には条件付けをする必要はありません。人はポジティブな条件付けによって解放されるのではなく、心の純粋さによって解放されます。

「あなたの見ているものは、見ているものだけのはずです。あなたの聴いているものは、聴いているものに他なりません。あなたの匂い、味わい、触覚は、匂い、味わい、触覚以外の何ものでもありません。あなたの認識においては、認識することに他なりません。」

感覚経験の 6 つの基盤のいずれかを介して接触が発生する場合、評価や条件付けされた認識があってはなりません。ひとたび知覚があらゆる経験を良いか悪いかで評価し始めると、人は昔からの盲目的な反応のせいで世界が歪んで見えてしまいます。心をあらゆる条件付けから解放するためには、過去の反応に基づいて評価することをやめ、評価せず、反応せずに気づくことを学ばなければなりません。

この世捨て人はとても純粋な心の持ち主だったので、この二言三言の導きで十分でした。彼は道端に座り、自分の中にある現実に注意を集中しました。評価も反応もありません。彼はただ自分自身の変化の過程を観察しただけです。そして、彼に残された数分以内で、彼は最終目標を達成し、完全に解放されました。

出典　4. Based on　 Udāna, I. x, story of Bāhiya Dārucīriya. 　　 ｢バーヒヤ経」（『感興語』10）

Also found in Dhammapada Commentary, VIII. 2 (verse 101).

第９章　　目標

「発生する性質を持つものは何であれ、休止する性質もあります。」

出典1. S. LVI (XII). ii. 1, Dhamma-cakkappavattana Sutta.　　「転法輪経」（『相応部』56-11）

最初の弟子たちが初めてダンマを悟った際に得た洞察を説明しました。

この現実の経験が仏陀の教えの本質です。心と体は、絶えず生まれては消えていくプロセスの束にすぎません。私たちの苦しみはそのプロセス、実際には一時的で実体のないものに執着するときに生じます。これらのプロセスの無常な性質を直接認識できれば、それらに対する執着は消え去ります。これは瞑想者が引き受ける仕事です。内なる絶えず変化する感覚を観察することによって、自分自身の一時的な性質を理解することです。感覚が生じるたびに、彼らは反応せず、それが生じては消えるのを放置します。そうすることによって、心の古い条件付けが表面に出てきて消え去ることができます。条件付けと執着がなくなると、苦しみがなくなり、私たちは解放を経験します。これは継続的な適用を必要とする長い作業です。メリットは途中のあらゆる段階で現れますが、それを達成するには繰り返しの努力が必要です。忍耐強く、粘り強く、継続的に取り組むことによってのみ、瞑想者は目標に向かって前進することができます。

身体のさまざまな部分で統合されたさまざまな感覚を観察することから、身体構造全体で絶えず生じては消える、一様な性質のより微細な感覚の認識へと進みます。感覚が現れたり消えたりする速度が非常に速いため、感覚は振動の流れ、つまり身体を流れる電流として経験される場合があります。物理的構造のどこに注意を向けても、発生と消滅以外に何も認識しません。心に思考が現れるたびに、それに伴って生じたり消えたりする身体的感覚に気づきます。体と心の見かけの固さは溶解し、物質、心、メンタル的要因（cetasika）の究極の現実を体験します。それは発振し、振幅し、非常に急速に生じては消えることだけです。この真実を体験した人はこう言いました、「全世界が燃え上がり、煙の中で全世界が上昇する。全世界が燃え、全世界が振動している。」

出典2. 　　S. v. 7, Upacālā Sutta.　 「ウパチャーラー経」（『相応部』5-7）　 アラハンの尼ウパチャーラー

バンガーの経験は、実際に起こると、確かにとても快いものです。すべてのうずきと痛みは溶解し、感覚のない領域はすべて消えます。そして、平和、幸福、至福を感じます。仏陀はそれを次のように説明しました。

「心と体がつながるプロセスの発生と消滅を経験するたびに、至福と喜びを享受します。賢者によって実現されるように、これを知り得た人々は死から自由になります。」

出典3. 　Dhammapada, XXV. 15 (374).　　　 ｢比丘品｣（『法句』25）

道を進むにつれて、心と体の見かけの固さが解けたとき、必ず至福が生じます。楽しい状況に喜び、これが最終目標だと思うかもしれません。しかし、それは単なる通過駅です。この時点から、私たちはさらに心と物質を超えた究極の真実を体験し、苦しみからの完全な自由を獲得します。

目に見える現実から微細な現実までを洞察し、体全体が振動する流れを楽しみ始めます。すると突然、流れがなくなります。ある部分では再び強烈で不快な感覚を経験し、他の部分ではおそらく感覚がありません。また、心の中では激しい感情を再び経験します。この新しい状況に対して嫌悪感を抱き、振動の流れが戻ることを切望し始めるならば、ヴィパッサナーを理解していないことになります。楽しい経験を達成し、不快な経験を回避もしくは克服することを目標とするゲームに変えてしまっているからです。これは、これまでの人生を通じてプレーしてきたものと同じゲームです。押しては引いて、惹かれては反発するという終わりのないラウンドであり、それは悲惨以外の何ものに導きません。

しかし、たとえこの溶解（bhaṅga）を経験した後であっても、粗悪な感覚が再発することは退行ではなく、むしろ進歩を示していることが智慧が増すにつれてわかります。私たちがヴィパッサナーを実践するのは、特定の種類の感覚を体験することが目的ではなく、心をあらゆる条件付け（経験によって特定の条件反射や条件反応を起こすようになった回路）から解放するためです。何らかの感覚に反応すると、苦しみが増大します。私たちがバランスを保っていれば、条件付けの一部が消えることを許容し、その感覚が私たちを苦しみから解放する手段となります。

不快な感覚に反応せずに観察することで、嫌悪感を根絶します。反応せずに快感を観察することで、渇望を根絶します。反応せずに中立的な感覚を観察することで、無知を根絶します。

したがって、どんな感覚もどんな経験も、本質的に良いか悪いかということはありません。心のバランスが保たれていれば良いのです。静穏さを失うことが悪いことです。

この理解に基づいて、私たちは条件付けを根絶するためのツールとしてあらゆる感覚を使用します。これはsaṅkhāra-upekkhāとして知られる段階であり、すべての条件付けに対する静穏さであり、解脱の究極の真理である涅槃に一歩ずつ導きます。

解放の経験

解放は可能です。人はあらゆる条件づけ、あらゆる苦しみから自由を獲得することができます。ブッダは次のように説明しました。「物質の領域全体、心の領域全体を超えた経験の領域があり、それはこの世でも異世界でもその両方でもなく、月でも太陽でもない。これを私は生じることも消えることもないと呼んでいる。」

出典4. Udāna, VIII. 1. Paṭhamanibbānapaṭisaṁyuttasutta　　「第一の涅槃関連経」（『感興語』8.1）

彼はまた、「生まれることのないもの、なることのないもの、創造されないもの、条件のないものがあります。生まれることのないもの、なることのないもの、創造されないもの、条件のないものがないことで、生まれるもの、なるもの、創造されるもの、条件づけられたものから解放されることはありません。

しかし、生まれることのないもの、なることのないもの、創造されないもの、条件のないものがあることで、生まれるもの、なるもの、創造されるもの、条件づけられたものからの解放が知られています。」とも言いました。出典5. 　　Udāna, VIII. 3. Tatiyanibbānapaṭisaṁyuttasutta　「第三の涅槃関連経」（『感興語』8.3）

涅槃とは、単に人が死後に行く状態ではなく、それは「いま・ここ」で自分の中で経験されるものです。それが否定的な言葉で説明されるのは、それが否定的な経験だからではなく、それを説明する他に方法がないからです。どの言語にも、あらゆる範囲の身体的および心的現象を扱うための言葉がありますが、心や物質を超えたものを説明する言葉や概念はありません。

それはすべてのカテゴリー、すべての区別を無視します。私たちは、それが何ではないかを言うことによってのみそれを説明できます。実際、涅槃を説明しようとすることは無意味です。どんな説明も、涅槃について説明したり議論したりするのではなく、大切なのはそれを体験することです。「苦しみの停止に関するこの崇高な真理は、自分自身で悟らなければなりません」と仏陀は言いました。

出典6. 　 S. LVI (XII). ii. 1, Dhamma-cakkappavattana Sutta.　　「転法輪経」（『相応部』56-11）

涅槃nibbānaを体験する時、それだけが現実です。それに関するすべての議論は無意味になります。

解放の究極の真実を体験するには、まず見かけの現実を洞察してその奥へ進み、体と心が溶解するのを体験する必要があります。人は見かけの現実を超えて深く侵入するほど、渇望や嫌悪、執着から遠ざかり、究極の真実に近づきます。段階的に取り組んでいくと、自然に、次のステップが涅槃の体験となる段階に到達します。

それを切望することに意味はなく、それが実現することを疑う理由もありません。それはダンマを正しく実践するすべての人に訪れるはずです。それがいつ来るかは誰にもわかりません。これは、部分的には各人の中にある条件付けの蓄積に依拠し、部分的にはそれを根絶するために費やす努力の量に依拠します。目標を達成するためにできること、しなければならないことは、反応せずにそれぞれの感覚を観察し続けることだけです。

私たちは、いつ涅槃の究極の真理を体験するかを決めることはできませんが、それに向かって確実に前進し続けることはできます。私たちは現在の心の状態をコントロールすることができます。私たちの外側や内側で何が起こっても、この瞬間に静穏を保つことで解放を達成します。究極の目標を達成した人は、「渇望の消滅、嫌悪の消滅、無知の消滅、これを涅槃と呼ぶ」と言いました。出典7. 　S. XXXVIII (IV). 1, Nibbāna Pañhā Sutta. 「涅槃問経」（『相応部』38-1）　　この発言者は Sāriputta舎利弗.

心がこれらから解放されるところで、人は解脱を経験します。

ヴィパッサナーを適切に実践するあらゆる瞬間に、私たちはこの解放を経験することができます。結局のところ、ダンマは定義上、将来だけでなく、「いま・ここ」で結果を与えなければなりません。私たちはその過程のあらゆる段階でその利点を体験しなければならず、すべての段階が目標に直接つながっていなければなりません。この瞬間に条件付けから自由になっている心は、静穏（平和）な心です。そのような瞬間ごとに、私たちは完全な解放に近づきます。

涅槃は発展しないので、私たちは涅槃を発展させようと努力することはできません。単純にそういうことです。しかし、私たちは涅槃に導く特質、つまり静穏さの特質を育成するよう努力することはできます。私たちが反応せずに現実を観察するあらゆる瞬間に、私たちは究極の真実に向かって突き進んでいきます。心の最高の質は、現実の完全な認識に基づく静穏さです。

本当の幸せ

かつて仏陀は本当の幸福について説明するよう求められました。彼は、真の祝福である幸福を生み出すさまざまな健全な行動を列挙しました。これらすべての祝福は 2 つのカテゴリーに分類されます。1 つは家族や社会に対する責任を果たすことで他者の福利に貢献する行為を行うこと、もう 1 つは心を清める行為を行うことです。自分自身の利益は他人の利益と切り離せません。そして最後に彼はこう言いました、

「人生のあらゆる浮き沈みに直面しても、心が動揺せず、嘆かず、煩悩を生じさせず、いつも安心している、これが最大の幸福である。」出典8. 　　Sutta Nipāta, II. 4, Mahā-Maṅgala Sutta.　　 「吉祥経」（『経集』16）

自分の心と身体の小宇宙の中で、あるいは外の世界で、何が起こっても、緊張したり、渇望や嫌悪をほとんど抑圧することなく、完全に楽に、心の奥底からの笑顔でそれに直面することができます。

快いときも不快なときも、望んでいるときも望ましくないときも、どんな状況においても、人は不安を感じず、完全に安心し、無常を理解している安心感を感じます。これは最大の祝福です。

自分が自分の主人であること、自分を圧倒するものは何もないこと、何であれ人生において提供されるものは笑顔で受け入れられることを知ること、これが心の完璧なバランスであり、真の解放です。

これが、ヴィパッサナー瞑想の実践を通じて、「いま・ここ」で達成できることです。

この本当の静穏さは、単に否定的または消極的なよそよそしさではありません。それは、人生の問題から逃れようとする人、砂の中に頭を隠そうとする人の盲目的な黙認や無関心ではありません。

むしろ、真の心のバランスは、問題の完全な気づきに基づいています。つまり現実のあらゆるレベルを気づいている（認識している）、ということです。

ブッダは、心を浄化し、「人は完全に完成された智慧を得ることで、喜び、至福の静けさ、気づき、完全な理解、真の幸福」を経験すると説きました。出典9. D. 9, Poṭṭhapāda Suttanta.　 「ポッタパーダ経」（『長部』9）

バランスのとれた心があれば、私たちは人生をもっと楽しむことができます。快い状況が起こったとき、充実して動転しないで、この瞬間の気づきを持って、それを完全に味わうことができます。しかし、その経験が過ぎ去っても、心配したりしません。

快い状況が必ず変化することを理解しながら、笑顔を続けます。同様に、不快な状況が起こっても動揺しません。むしろ、変化を理解しているので、おそらくその状況を変える方法を見つけます。それが私たちの力の及ばないとしても、この経験が永続的ではなく、必ず過ぎ去ってしまうことを十分に承知しているので、依然として平和を保っています。このようにして、心を緊張から解放することで、より楽しく生産的な人生を送ることができます。

第10章　　生きる技

「100年間存在し続けるよりも、現実の発生と消滅を直視する人生の一日のほうが良い。」

出典1. 　　　Dhammapada, VIII. 14 (113).　　 「千品」（『法句』8）

仏陀は無常の意識を、畑を耕すときにすべての根を切り裂く農夫のすきの刃に喩えました。

「屋根の一番上の尾根を支えるすべての梁よりも高い。家臣の君主たちを支配する強力な支配者。星を暗くする月の明るさ。空からすべての暗闇を追い払う昇る太陽。」

出典2. 　　　　S. XXII. 102 (10), Anicca-sañña Sutta.　　 「無常想経」（『相応部』22-102）

仏陀が人生の終わりに語った最後の言葉は、「すべてのサンカーラ、つまりすべての創造物は朽ちる。この真実を理解するために熱心に実践（余分なものを区分け）してください。」

出典3. 　 D. 16, Mahā-Parinibbāna Suttanta.　　　「大般涅槃経」（『長部』16）

aniccaの真実は、単に知的に受け入れられるべきものではありません。感情や信仰だけでそれを受け入れてはいけません。一人一人が自分自身の中で無常の現実を経験しなければなりません。無常を直接理解するとそれに伴う自我の幻想的な性質と苦しみを理解し、解放につながる真の洞察を引き起こします。これが正しい理解です。瞑想者は、シーラ、サマーディ、パンニャの実践の集大成として、この解放的な智慧を体験します。3 つの訓練に取り組まない限り、道に沿って一歩一歩を踏み出さない限り、真の洞察と苦しみからの解放に到達することはできません。しかし、実践を始める前でさえ、ある程度の智慧を持っていなければなりません、苦しみの真実についての知的認識だけがおそらく必要です。このような理解がなければ、たとえどんなに表面的であっても、苦しみから解放されるために努力をするという考えは心に浮かんできません。　

「正しい理解が第一である」とブッダは言いました。

出典4. 　　M. 117, Mahā-cattārīsaka Sutta.　　 「大四十経」（『中部』117）

したがって、聖なる八正道の最初のステップは、実際には正しい理解と正しい思考です。

私たちは問題を見て、それに対処することを決定しなければなりません。そうして初めて、ダンマの実際の実践を行うことが可能になります。私たちは、自分の行動を規制する戒律に従い、道徳の訓練を受けてこの道を実践し始めます。集中力の訓練とともに、私たちは心と向き合い始め、呼吸を意識することでサマーディを育成します。そして、体全体の感覚を観察することによって、心を条件付けから解放する経験的な智慧を育成します。

3つのトレーニングがそれぞれ三脚の 3 本の脚のようにサポートします

脚は3本で、同じ長さでなければ、三脚を立てることができません。同様に、瞑想者は、道のすべての側面を同様に発展させるために、シーラ、サマーディ、パンニャを一緒に育成する必要があります。

仏陀はこう言いました。

「正しい理解から正しい思考が生まれ、正しい思考から正しい言葉が生まれ、正しい言葉から正しい行動が生まれ、正しい行動から正しい生活が生まれ、正しい生活から正しい努力が生まれ、正しい努力から正しい認識が生まれ、正しい認識から正しい集中が生まれ、正しい集中から正しい智慧が生まれ、正しい智慧から正しい解放が生まれます。」出典5. 　 M. 117, Mahā-cattārīsaka Sutta.　　 「大四十経」（『中部』117）

34.1Tatra, bhikkhave, sammādiṭṭhi pubbaṅgamā hoti. 34.2Kathañca, bhikkhave, sammādiṭṭhi pubbaṅgamā hoti? 34.3Sammādiṭṭhissa, bhikkhave, sammāsaṅkappo pahoti, sammāsaṅkappassa sammāvācā pahoti, sammāvācassa sammākammanto pahoti, sammākammantassa sammāājīvo pahoti, sammāājīvassa sammāvāyāmo pahoti, sammāvāyāmassa sammāsati pahoti, sammāsatissa sammāsamādhi pahoti, sammāsamādhissa sammāñāṇaṁ pahoti, sammāñāṇassa sammāvimutti pahoti.

１）正見しょうけん（正しい見解）、sammādiṭṭhi

２）正思しょうし（正しい思惟しゆい）、sammāsaṅkappo

３）正語しょうご（正しい言葉）、sammāvācā

４）正業しょうごう（正しい行い）、sammākammanto

５）正命しょうみょう（正しい生活）、sammāājīvo

６）正精進しょうしょうじん（正しい努力）、sammāvāyāmo

７）正念しょうねん（正しい思念）、sammāsati

８）正定しょうじょう（正しい精神統一）sammāsamādhi

sammāñāṇaṁ　　智慧paññā

付録 A　　仏陀の教えにおけるvedanāの重要性

自分自身についての真実を観察しようとすると、「自分」と呼ばれるものには、肉体と心、体physicalと心psychicという 2 つの側面があることがすぐに明らかになります。

ギリシャ語physikI自然に関する学問、　Psyche原義は「呼吸」，訳は「魂」

私たちは両方を観察することを学ばなければなりません。しかし、他人の説明を鵜呑みにしたり、単なる知識に頼るだけでは不十分です。どちらも私たちを自己探求の作業に導くかもしれませんが、私たち一人一人が自分自身の中で現実を直接探求し、経験する必要があります。

私たちは、身体の中で生じる物理的感覚を通じて、身体を感じることによって、身体の現実を経験します。目を閉じていると、手や体の他の部分があることがわかります。それは感じることができるためです。本に外部の形式と内部の内容があるのと同じように、物理的構造には外部の客観的な現実、つまり身体 (kāya) と、内部の主観的な感覚(vedanā)の現実があります。私たちは、その中にあるすべての言葉を読んで本を理解します。同様に、私たちは感覚を感じることによって身体を経験します。感覚の認識がなければ、物理的構造を直接知ることはできません。この 2 つは切り離せないものです。

同様に、心的（psychic）構造は、形（意識や「自分」との関わりを探求）と内容、つまり心 (citta) と心に生じるもの (dhamma)、つまりあらゆる思考、感情、記憶、希望、恐怖に分析できます。

身体と感覚を別々に経験することができないのと同じように、心の内容を切り離して心を観察することはできません。心と物質は密接に関係しています。一方で起こったことはすべて、もう一方に反映されます。ブッダが表現したように、「心に生じるものはすべて感覚を伴う」のです。

出典1. 　　　A VIII. ix. 3 (83), Mūlaka Sutta. 　　 「根本経」（『増支部』10-58）

See also 　　A. IX. ii. 4 (14), Samiddhi Sutta.　　　　 「サミッディ経」（『増支部』9-14）

したがって、感覚の観察は、身体的および心的存在の全体性を調べる手段を提供します。　

これらの現実の 4 つの側面、つまり身体、感覚、心、心的内容はすべての人間に共通しており、Satipaṭṭthāna Suttaの 4 つの区分、気づきを確立するための 4 つの道、人間の現象を観察するための 4 つの見晴らしの良い視点を提供します。探求を完了するには、あらゆる側面を経験する必要がありますが、vedanāを観察することで 4 つすべてを経験することができます。この理由から、仏陀はvedanāの気づきの重要性を特に強調しました。

彼の最も重要な説教の一つである『Brahmajāla Sutta』の中で、彼は次のように述べています。

「解脱した者は実際に感覚が生じて消え去るのを味わい、危うさを感じ手放すことで、愛着から解放されて自由になります。」

出典2. 　　D. 1. Brahmajāla Sutta　「梵網経」（『長部』1）

vedanāの気づきは四つの聖なる真理を理解するための前提条件であると彼は説きました。

「感覚を経験する人に、私は苦しみとは何か、その起源、その停止、そしてその停止に至る道を理解する方法を示します。」

出典3. 　　A. III. vii. 61 (ix), Titthāyatana Sutta.　　 「サンガーラヴァ経」（『増支部』3-61）

vedanāとは一体何でしょうか？ブッダは心を構成する 4 つのプロセスの中のvedanāを含め、さまざまな方法でそれを説明しました (第 2 章を参照)。しかし、より正確に定義すると、ブッダはvedanāについて心的側面と肉体的側面の両方を持つものとして話しました。

出典4. 　　S. XXXVI (II). iii. 22 (2), Aṭṭhasata Sutta.　　　 「百八経」（『相応部』36-22）

心が存在しなければ、物質だけでは何も感じることができません。たとえば、死体には感覚がありません。感じるのは心ですが、それが感じるものには切り離せない物理的な要素があります。この物理的要素は、仏陀の教えを実践する上で中心となる重要性があります。この訓練の目的は、人生のあらゆる浮き沈みにバランスの取れた方法で対処できる能力を育成することです。

瞑想の中で、自分の中で何が起こってもそれを平静に観察することを学びます。この平静さがあれば、盲目的に反応する習慣を断ち切ることができ、代わりに、どのような状況でも最も有益な行動方針を選択することができます。

人生で経験するものはすべて、身体の五感と心という 6 つの知覚の門を通って遭遇します。

縁起説によれば、これら 6 つのゲートのいずれかで肉体的または心的な現象に接触が起こるとすぐに、感覚が生成されます。体の中で何が起こっているか注意を払わないと、（表層）意識レベルではその感覚に気づかないままになります。無知の暗闇の中で、その感覚に対して瞬間的に好きか嫌いになり、それが渇望や嫌悪に発展する無意識の反応プロセスが始まります。この反応は、表層意識に影響を与える前に、数え切れないほど繰り返されて強化されていきます。もし瞑想者が意識の中で起こっていることだけに焦点を当てると、次のことに気づきます。反応が起こった後に瞑想者を圧倒するのに十分な危険な力を蓄積するプロセスです。

その力を消そうとする前に、感覚の火花が激しい火に点火するのを許し、不必要に自分自身に困難をもたらします。

しかし、体内の感覚を客観的に観察することを学べば、火花が大火になることなく、燃え尽きさせることができます。身体的な側面を重視することで、vedanāが生じたらすぐにそれに気づくことで、あらゆる反応が起こるのを防ぎます。

vedanāの物質的な側面は、私たちの中にある無常の現実を生き生きと具体的に体験できるので、特に重要です。変化は私たちの中であらゆる瞬間に起こり、感覚の動きとなって現れます。無常を体験しなければならないのはこのレベルです。常に変化する感覚を観察することで、自分自身の儚さを実感することができます。現れてはすぐに消え去る、取るに足らないものが、自分が追い求めているものであることがわかり、そんなことのために生きている自分のしてきた、そしてするであろう虚しさに呆然とするのです。

この認識は、あまりにも一時的なものに執着することの無益さを明らかにします。したがって、aniccaを直接経験すると、自動的に無執着が生じ、それによって人は渇望や嫌悪という新たな反応を回避できるだけでなく、反応する習慣自体を除去することもできます。このようにして、徐々に心を苦しみから解放していきます。物理的な側面が含まれていない限り、vedanāの認識は部分的で不完全なままです。したがって、仏陀は身体感覚を通じて無常を体験することの重要性を繰り返し強調しました。

「意識を身体に向けようと絶えず努力する人、不健全な行為を避け、なすべきことを行うよう努力する人、そのような人は、完全に理解し、認識していれば、汚れから解放される。」と彼は言いました。

出典5. 　　Dhammapada, XXI. 4 (293).　　　　　「雑品」（『法句』21）

苦しみの原因はtaṇhā、渇望、嫌悪（付着する場所　taṇ場所hā付着　attachment）です。通常、私たちは身体的感覚や心を通じて遭遇するさまざまな対象に対して、渇望と嫌悪の反応を引き起こすように見えます。しかし、ブッダは、物体と反応の間にミッシングリンクであるvedanāが存在することを発見しました。

私たちは外側の現実ではなく、自分の内側の感覚に反応しています。渇望や嫌悪に反応せずに感覚を観察することを学ぶと、苦しみの原因は生じず、苦しみはなくなります。したがって、ブッダの教えを実践するには、vedanāを観察することが不可欠です。そして、vedanāの気づきが完全であるためには、観察は身体感覚のレベルでなければなりません。

身体感覚の気づきを使って、問題の根本にアプローチして取り除いていきます。自分の本質を深く観察することで苦しみから自分を解放することができます。仏陀の教えの「感覚の観察」を理解するとSatipaṭṭthāna Suttaの新たな洞察を得ることができます。

出典6. The Satipaṭṭhāna Sutta appears twice in the Sutta Piṭaka, at D. 22 and at M. 10.

D.では、dhammānupassanāについて説明するセクションが M. よりも長くなります。 したがって、D.は Mahā-Satipaṭṭthāna Suttanta、「より偉大な」と呼ばれます。 それ以外の箇所は同一です。

説教はsatipaṭṭthāna 、つまり気づきの確立の目的を説明することから始まります。

「生命体の浄化、悲しみと嘆きの超越、身体的および心的苦痛の消滅、真理の道の実践、つまり究極の現実、涅槃を直接体験することです。」出典7. Satip. D. 22 Mahā-Satipaṭṭthāna Suttanta

次に、これらの目標を達成する方法を簡単に説明します。

「ここで瞑想者は、徹底的な理解と気づきをもって熱心に生活し、身体の中で身体を観察し、感覚の中で感覚を観察し、心の中で心を観察し、心の内容の中で心の内容を観察し、世界に対する渇望と嫌悪を放棄したのです。」出典8. Satip. D. 22 Mahā-Satipaṭṭthāna Suttanta

「身体を身体で観察し、感覚を感覚で観察する」とはどういう意味でしょうか？

ヴィパッサナー瞑想者にとって、この表現はその明晰さにおいて輝かしいものです。身体、感覚、心、心的内容は人間の 4 つの側面です。この人間の現象を正しく理解するには、私たち一人ひとりが自分自身の現実を直接体験する必要があります。この直接的な体験を達成するには、瞑想者は気づき (サティ) と完全な理解 (サンパジャーニャ) という 2 つの資質を養わなければなりません。この説教は「気づきの確立」と呼ばれていますが、人の本質の深さ、人が「私」と呼ぶこの現象の無常性に対する理解と洞察がなければ、認識は不完全です。

satipaṭṭhānaの実践は、瞑想者に自分たちの本質的な儚い性質を理解するよう導きます。この個人的な認識を持ったとき、気づきはしっかりと確立され、正しい気づき（認識）が解放につながります。すると自動的に、渇望と嫌悪は、外の世界に対してだけでなく、内なる世界に対しても消えていきます。内なる世界では、渇望と嫌悪が最も深く根付いていて、ほとんどの場合、見落とされがちですが、それは、自分の体と心への無意識で本能的な執着の中にあります。この根本的な執着が残っている限り、人は苦しみから解放されることはできません。

「気づきの確立の説教」では、まず身体の観察について説明されています。これは心と肉体の構造の最も明白な側面であり、したがって、自己観察の作業を開始する適切な出発点です。ここから観察は、感覚、心、そして心的内容にも自然に成長していきます。

この説教は身体の観察を始めるためのいくつかの方法が説明されています。まず最も一般的なのは、呼吸を意識することです。もう一つの始め方は、体の動きに注意を向けることです。しかし、どのように始めたとしても、最終目標に至るまでには通過しなければならない特定の段階があります。

これらは、説教の中で非常に重要な段落で説明されています。

「このようにして、身体の内部で、または外部で、あるいは内部と外部の両方で身体を観察し続けます。身体の中で生じる現象を観察し続けます。身体の中で消滅する現象を観察し続けます。身体の中で生じては消えていく現象を観察し続けます。今、意識が現れます、「これが身体です」。この気づきは理解と観察だけが残るほどに発達し、彼は世界の何にも執着せずに離れ続けます。」出典9. Satip. D. 22 Mahā-Satipaṭṭthāna Suttanta

したがって、この一節では、瞑想者は身体の内部、または外部すなわち身体の表面、あるいはその両方で生じる感覚を観察することから始めると説明しています。つまり、ある箇所の感覚を気づき、他の箇所の感覚を気づかない状態から、徐々に身体全体の感覚を感じる能力が発達していきます。実践を始めると、実践者は最初に強い性質、すなわち感覚が起こり、しばらく続くようなをしばしば経験するかもしれません。しかし、瞑想者は感覚が生じ、しばらくしてから感覚が消えていくことに気づくようになります。この段階では、彼らはまだ体と心の見かけの現実、つまり体と心は統合されて堅固で永続する性質を経験しています。しかし、実践を続けていくと、その固さが自然に溶けて、心と体が振動の塊として、刻一刻と生まれては消えていく、その本質を体験する段階に達します。この経験により、彼らはついに、身体、感覚、心、心的内容が実際には何であるか、つまり非個人的で絶えず変化する現象の流動であることを理解します。

この一節の非常に重要な点は、それが身体の観察に関する説明の各セクションの終わりだけでなく、感覚、心、心的内容の観察にも繰り返されることです。（後の 3 つの区分では、「身体」という言葉は、それぞれ「感覚」、「心」、「心的内容」に置き換えられます。）

この一節は、satipaṭṭthāna の実践における共通基盤を説明しています。その解釈は大きく異なりますが、この一節が感覚の気づきについて言及しているものとして理解されると、その困難は解消されます。

satipaṭṭthānaを実践する際、瞑想者は自分自身の性質についての包括的な洞察を達成します。この鋭い洞察への手段は、人間の現象の他の 3 つの側面の観察と同様に、感覚の観察です。したがって、最初のステップは異なるかもしれませんが、ある時点を超えると、実践には感覚の気づきが含まれます。

心と物質の究極の現実を直接理解することで、人の幻想、誤解、先入観が徐々に打ち砕かれます。これまで信仰や知的演繹によってのみ受け入れられてきた正しい概念でさえ、流動の経験をすることで新たな意味深さを獲得します。徐々に、内なる現実を観察することによって、認識を歪めるすべての条件付けが取り除かれます。純粋な認識（気づき）と智慧だけが残ります。

無知が消えると、渇望や嫌悪の傾向が根こそぎにされ、瞑想者はあらゆる執着から解放されます。

最も深い執着は自分の体と心の内なる世界に対するものです。この執着がなくなると苦しみは消え、人は解放されます。

仏陀はよく「感じられるものはすべて苦しみに関係している」と説きました。

出典10. S. XII. iv. 32 (2), Kaḷāra Sutta. 「カラーラ経」（『相応部』12-32）

したがって、vedanāは苦しみの真実を探求する理想的な手段です。不快な感覚は明らかに苦痛ですが、最も心地よい感覚でさえ、非常に微細な動揺の一種です。あらゆる感覚は永続的ではありません。快い感覚に執着していると、それが過ぎ去ると苦しみが残ります。したがって、あらゆる感覚には苦しみの種が含まれています。このため、仏陀は苦しみの終焉に至る道について語ったのと同時に、vedanāの発生に至る道とその終焉に至る道についても語られました。

出典11. S. XXXVI (II). iii. 23 (3), Aññatara Bhikkhu Sutta. 「或比丘経」（『相応部』36-23）

人が心と物質の条件付けされた領域内に留まる限り、感覚と苦しみは持続します。人がその領域を超えて涅槃の究極の現実を体験したときにのみ、それらは止まります。

仏陀はこう言いました。

「ダンマについてよく話すからといって、その人が実際にダンマを人生に適用しているとは限りません。対して、ダンマについてほとんど聞いたことがなくても自分の体を通して自然法則を理解するなら、その人は本当にダンマに基づいて生きており、ダンマを忘れることはありません。」

出典12. Dhammapada, XIX. 4 (259). 　「法住品」（『法句』19）

私たち自身の体が真実を証言しています。瞑想者が体の中に真実を発見するとき、それは彼らにとって現実となり、彼らはそれに従って生きます。各自が自分自身の内側の感覚を観察することを学ぶことで、その真実に気づくことができます。そしてそうすることで、苦しみからの解放を得ることができます。

心と物質の究極の現実を直接理解することで、人の幻想、誤解、先入観が徐々に打ち砕かれます。これまで信仰や知的演繹によってのみ受け入れられてきた正しい概念でさえ、経験することで新たな意味深さを獲得します。徐々に、内なる現実を観察することによって、認識を歪めるすべての条件付けが取り除かれます。純粋な認識（気づき）と智慧だけが残ります。

無知が消えると、根底にある渇望や嫌悪の傾向が消え、瞑想者はあらゆる執着から解放されます。

最も深い執着は自分の体と心の内なる世界に対するものです。この執着がなくなると苦しみは消え、人は解放されます。

仏陀はよく「感じられるものはすべて苦しみに関係している」と説きました。

出典10. S. XII. iv. 32 (2), Kaḷāra Sutta. 「カラーラ経」（『相応部』12-32）

したがって、vedanāは苦しみの真実を探求する理想的な手段です。不快な感覚は明らかに苦痛ですが、最も心地よい感覚でさえ、非常に微細な動揺の一種です。あらゆる感覚は永続的ではありません。快い感覚に執着していると、それが過ぎ去ると苦しみが残ります。したがって、あらゆる感覚には悲惨の種が含まれています。このため、仏陀は苦しみの終焉に至る道について語ったと同時に、vedanāの発生に至る道とその終焉に至る道についても語られました。

出典11. S. XXXVI (II). iii. 23 (3), Aññatara Bhikkhu Sutta. 「或比丘経」（『相応部』36-23）

仏陀はこう言いました。

「人は、ダンマについてよく話すからといって、実際に人生にダンマを適用しているわけではありません。しかし、それについてほとんど聞いたことがない人もいるかもしれませんが、もし彼が自分の体を通して自然法則を理解するなら、その人は本当にダンマに基づいて生きており、ダンマを忘れることはありません。」

出典12. Dhammapada, XIX. 4 (259). 　「法住品」（『法句』19）

私たち自身の体が真実を証言しています。瞑想者が真実を発見するとき心の中で、それは彼らにとって現実となり、彼らはそれに従って生きます。私たちはそれぞれ、自分自身の内側の感覚を観察することを学ぶことで、その真実に気づくことができます。そしてそうすることで、苦しみからの解放を得ることができます。

Samādhi Sutta (AN 10.6)の中の“etaṃ santaṃ etaṃ paṇītaṃ yadidaṃ sabbasaṅkhārasamatho sabbūpadhipaṭinissaggo taṇhākkhayo virāgo nirodho nibbānan’ti”

というフレーズを使用しています。

英語に翻訳すると　「それは平和であり、穏やかであり、すべてのsaṅkhāraが追放され、結び目は壊され、貪欲と憎しみが取り除かれます。つまりNibbānaです。」すなわち、「これは平和であり、素晴らしいことです。それはすべてのsaṅkhāraを静め、転生につながるすべての絆を断ち切り、すべての執着を断ち、輪廻の旅を止め、すべての原因を断つことによって達成されます。それがNibbānaです。」

重要なのは実際の言葉ではなく、マインドの中で理解することです。パーリ語の詩を暗唱し、意味を思い出しながら唱えるのが最善です。

釈迦は五上分結の証知、遍知、遍尽、断捨のため、七覚支を修習すべきと説いている.

パーリ仏典, 相応部 46.覚支相応 暴流品

Imesaṃ kho bhikkhave, pañcannaṃ uddhambhāgiyānaṃ saṃyojanānaṃ abhiññāya satta bojjhaṅge bhāvetabbo katamo satta bojjhaṅge:
idha bhikkhave, bhikkhu satisambojjhaṅgaṃ bhāveti vivekanissitaṃ virāganissitaṃ nirodhanissitaṃ vossaggapariṇāmiṃ. Dhammavicayasambojjhaṅgaṃ bhāveti vivekanissitaṃ virāganissitaṃ nirodhanissitaṃ vossaggapariṇāmiṃ. Viriyasambojjhaṅgaṃ bhāveti vivekanissitaṃ virāganissitaṃ nirodhanissitaṃ vossaggapariṇāmiṃ. Pītisambojjhaṅgaṃ bhāveti vivekanissitaṃ virāganissitaṃ nirodhanissitaṃ vossaggapariṇāmiṃ. Passaddhisambojjhaṅgaṃ bhāveti vivekanissitaṃ virāganissitaṃ nirodhanissitaṃ vossaggapariṇāmiṃ. Samādhisambojjhaṅgaṃ bhāveti vivekanissitaṃ virāganissitaṃ nirodhanissitaṃ vossaggapariṇāmiṃ. Upekhāsambojjhaṅgaṃ bhāveti vivekanissitaṃ virāganissitaṃ nirodhanissitaṃ vossaggapariṇāmiṃ.
Imesaṃ kho bhikkhave pañcannaṃ uddhambhāgiyānaṃ saṃyojanānaṃ abhiññāya ayaṃ satta bojjhaṅge bhāvetabboti.

比丘たちよ、これら五つの上分結の証知・遍知・遍尽・捨断のため、七覚支が修習されるべきである。いかなる七の成熟か？
比丘たちよ、ある比丘は離(viveka)を拠りどころとし、離貪(virāga)を拠りどころとし、滅尽(nirodha)を拠りどころとし、棄捨する念覚支を修習する。
離を拠りどころとし ...(中略)...棄捨する択法覚支を修習する。
離を拠りどころとし ...(中略)...棄捨する精進覚支を修習する。
離を拠りどころとし ...(中略)...棄捨する喜覚支を修習する。
離を拠りどころとし ...(中略)...棄捨する軽安覚支を修習する。
離を拠りどころとし ...(中略)...棄捨する定覚支を修習する。
離を拠りどころとし ...(中略)...棄捨する捨覚支を修習する。
比丘たちよ、これら五つの上分結の証知・遍知・遍尽・捨断のため、七覚支が修習されるべきである。

パーリ仏典相応部「火経」において釈迦は、心が怠惰・無気力（līnaṃ）を経験しているとき、喜・択法・精進の修習（バーヴァナー）を行う適時であり、一方で落ち着きのなさや心配（uddhataṃ）を経験しているとき、軽安・定覚・捨の修習を行う適時であると説いている^[5]。

Yasmiṃ ca kho bhikkhave, samaye līnaṃ cittaṃ hoti kālo tasmiṃ samaye dhammavicayasambojjhaṅgassa bhāvanāya. Kālo viriyasambojjhaṅgassa bhāvanāya. Kālo pītisambojjhaṅgassa bhāvanāya.
Yasmiṃ bhikkhave, samaye uddhataṃ cittaṃ hoti akālo tasmiṃ samaye dhammavicayasambojjhaṅgassa bhāvanāya. Akālo viriyasambojjhaṅgassa bhāvanāya.

比丘たちよ、心が沈滞（līnaṃ）しているとき、そのときは択法覚支の修習（bhāvanāya）に適している。精進覚支の修習に適している。喜覚支の修習に適している。
比丘たちよ、心が掉挙（uddhataṃ）しているとき、そのときは軽安覚支の修習に適している。定覚支の修習に適している。捨覚支の修習に適している。

—パーリ仏典, パーリ仏典相応部覚支相応 53.火経 Aggisuttaṃ,

最後に、マインドの中に「死が来る前に急いで道を開拓する必要がある」というmaranānussatiも確立されますが、そのタイミングは不明です。

Paṭhamamaraṇassati Sutta (AN 6.19)を読めば、ブッダが比丘たちに対し、死がいつでも来る可能性があることを痛感し、遅滞なく道を修めるようアドバイスし、maranānussatiが特別のkammaṭṭhānaではないことは明らかです。

この経典の別の英語訳はMindfulness of Deathです。

kāma dhātuとkāma bhavaの違い

1. ブッダはこの違いを『Sanidāna Sutta (SN 14.12)』で次のように説明しました。

“Kāmadhātuṁ, bhikkhave, paṭicca uppajjati kāmasaññā, kāmasaññaṁ paṭicca uppajjati kāmasaṅkappo, kāmasaṅkappaṁ paṭicca uppajjati kāmacchando, kāmacchandaṁ paṭicca uppajjati kāmapariḷāho, kāmapariḷāhaṁ paṭicca uppajjati kāmapariyesanā.”

「kāma dhātuへの執著はkāma saññāにつながり、kāma saññāへの執著はkāma saṅkappaにつながり、kāma saṅkappa への執著はkāmacchanda。そしてkāma pariyesanāにつながります。」

この聖句は、なぜアラハンAnagmis にもkāma saññāがあるのかを説明しています。このステップには、「rāga、dosa、moha」、すなわち「san」（「sañ」または「saṅ」とも表記されます）は含まれません。

ここでの「kāma」は、「assada」（すなわち「官能的な楽しみに価値を置く」）を指すのではなく、「kāma loka」と関連付けられているだけです。これについては以下で説明します。

しかし、アラハンのマインドは、その聖句の残りのステップ、つまりkāma saṅkappa, kāmacchanda, kāmapariḷāha, kāmapariyesanāに至りません。これらのステップでカルマエネルギーは生成されるのです。

ただし、アラハン/Anāgāmiの段階より下の人のマインドは執著して、自動的にkāma saṅkappaを生成する可能性があります。それが「upaya」ステップです。

Kāma Dhātu から Kāma Bhava = nimittaからārammaṇa

6. nimitta (感覚入力) は、各自のマインドに関連付けられたanusaya/saṁyojanaの種類に応じて、マインドの中でrāga, dosa, mohaを引き起こす可能性があります。そのnimittaが掴まれ（抱きしめられ）ると、それは「nimittaggāhī hoti」となり、それがārammaṇaです。

アラハンの心はnimitta を掴みません(na　nimittaggāhī hoti)。アラハンの段階以下の人は、nimittaとその人の残りのanusaya/saṁyojanaに応じて、nimittaを把握する場合と把握しない場合があります。

「汚れたnimittaをつかむ」ことをやめる鍵は、感覚入力に執着する傾向を徐々に和らげることです。それは道徳的規律、つまり「indriya saṁvara」を養うことです。Saṁvara Sutta (AN 4.14)を参照してください。

upayaはKāma, Rupa, Arūpa bhavaの「誕生」を意味する

11. この世界の31領域は、3 つの「bhava」すなわちkāma bhava、rupa bhava、arupa bhavaの存在に分けられます。

kāma bhavaで生まれた人のマインドは、一般的にkāma dhātuの感覚入力によって「引き起こされ」ます。したがって、アラハンのマインドでさえ、(穢れのない)kāma dhātu 段階から始まります。「穢れたsaññā」と共に感覚入力に執着した後にのみ、マインドは「kāma bhava」の段階に至ります。　

別の例では、rupāvacara Brahma のマインドは「rupa dhātu」の段階から始まります。「穢れたrupa saññā」に執着して初めて「rupa bhava 」に至ります。

同様に、arupāvacara Brahma のマインドは「arūpa dhātu」の段階から始まります。「穢れたarupa saññā」に執着して初めて「arupa bhava 」に至ります。

それはPaṭhamabhava Sutta (AN 3.76)に明確に述べられています。

釈尊がこれらの4つのフレーズを修行者のBahiya Daruciriyaに話した時、彼はそれらについて熟慮し、アラハンを達成しました。彼は、アラハンに到達するのに最も時間をかけなかった人と考えられています。

釈尊はまた“suté suta mattan bhavissati”, “muté muta mattan bhavissati”, “viññāté viññāta mattan bhavissati”と言いました。

Sutaはリスニング、mutaは味覚、匂い、感触を表す語句、「viññāta」はviññānaを意味します。私たちのすべての感覚入力と意識は、流れる感覚のごくわずかな痕跡であり、マインドはそれを継続的で安定した体験として作り上げます

仏陀はTipiṭakaのサンスクリット語への翻訳を禁止した

9.仏陀はこれを予見し、Tipiṭakaをサンスクリット語に翻訳しないように特に警告しました。Vedaのテキストの専門家であるYameḷaとKekuṭaという名前の2人のバラモンがいました。彼らは比丘になり、仏陀にパーリ語の経をサンスクリット語に翻訳すべきかどうか尋ねました。

仏陀は、サンスクリット語は高潔なバラモンによって開発された音楽的な倍音を持つ言語であると彼らに警告しました。したがって、サンスクリット語でマガヒー語（パーリ語）の本当の意味を伝えることはできませんでした。Chulavagga 5.33を参照してください。仏陀は彼らに仏陀の教えをサンスクリット語に翻訳しないように忠告しました。

3.次の重要な質問は「呼吸瞑想は、それだけでアラハンの境地に至りますか？」

これは、Ānāpānassatiが呼吸瞑想を意味すると信じる人々によって熟考される必要がある重要な質問です。

Nibbāna とは、欲、憎しみ、無知を取り除くことです。

“rāgakkhayō dōsakkhayō mōhakkhayō idaṃ vuccati nibbānanti“.　　　　至る？除去？

これは Nibbāna pañhā Sutta (SN 38.1)含め、いくつかのsuttaに出てくるフレーズです。

Ānāpānasnasatiが呼吸瞑想を意味する場合、どうすればマインドを自分の呼吸に留めることができるのでしょうか？マインドからrāga, dōsa, mōhaを除去できるのでしょうか？

4.今日の多くのテキストでの従来の（そして誤った）教えは、はじめに Ānāpānassati でsamādhiに到達する必要があり、次にmagga phala（アラハンに至る４段階の道）を達成するためにVipassanāまたは洞察瞑想を行う必要があるということです。

しかし、上記で議論したsuttaから、Ānāpānassati自体がアラハンの境地にさえ導けることは非常に明確です！

もちろん、「呼吸瞑想とは仏教のĀnāpāna bhāvanāのことである」という誤った解釈は、現在の実践者が思いついたものではありません。Buddhaghosaの清浄道論にまでさかのぼることができます。Buddhaghosa’s Visuddhimagga – A Focused Analysis

2Ānāpānassati Sutta (MN 118)によれば　 “..Ānāpānassati, bhikkhave, bhāvitā bahulīkatā cattāro satipaṭṭhāne paripūreti. Cattāro satipaṭṭhānā bhāvitā bahulīkatā satta bojjhaṅge paripūrenti. Satta bojjhaṅgā bhāvitā bahulīkatā vijjāvimuttiṃ paripūrenti.

翻訳すると「..Ānāpānassati」を使用（bhāvitā）（枠内にエネルギーを充満させる）すると、そして頻繁に（bahulīkatā使用）すると、4種類のSatipatthānaが完成（paripūreti）します。 Cattāro satipaṭṭhānaは使用、および頻繁に使用すると、Sapta Bojjangaが完成させます。 Sapta Bojjangaは、使用および頻繁に使用すると、完全な離脱（Nibbānaすなわちアラハンの境地）を完了します。　

Ananda Sutta (SN 54.13)でもまったく同じ声明がされています。実際、Ānāpāna Saṃyutta (SN 54)のsuttāのほとんどには、“Ānāpānassati, bhikkhave, bhāvitā bahulīkatā mahapphalā hoti mahānisaṃsā“というフレーズがあります。

ここで、「mahappalā」（「mahā」+「pala」）は、Sotapanna, Sakadagami, Anagami, Arahantの4つの高貴な段階を意味します。

したがって、ānāpānassatiが単独でアラハンの境地に至ることは明らかです。したがって、一部の人が示唆するように、「ānāpānassatiでサマタを得た時には、別個であるヴィパッサナー（洞察）瞑想」をする必要はありません。

anāpāna satiまたはSatipatthāna bhāvanāを孤立した場所で座って行われる正式なセッションに制限すべきではありません。

釈尊が上記の＃2で「..Ānāpānasnasati、bhikkhave、bhāvitābahulīkatā..」と言ったとき、彼は可能な限りどこでもそれをすることを意味しました。つまり、基本的には常にです！自分の行動、言論、思考に留意し、悪いものを止め、良いものを養います。

Dhammāが輪廻の見えない原因である Mahākhandhaka Vinaya Mahāvagga　　　英訳The long chapter

「Ye dhammā hetuppabhavā、

Tesaṁ hētuṁ tathāgato āha;

Tesañca yo nirōdō,

Evaṃvādī mahāsamaṇō」

すべてものには原因があってそのため生起して

すべてのものには原因があってそのため消滅す

世尊はその因解き明かす

"Whatever from a cause proceeds, thereof

The Tathâgata has explained the cause,

Its cessation too he has explained.

This is the teaching of the Supreme Sage."

Assaji師が発したこの詩をUpatissa (後のSariputta尊師)は聞いただけでSotāpannaになりました。

それが釈尊 Dhammaの基本的な概念であり、Paṭicca Samuppādaで詳細に説明されています。

正しい訳は以下です。

輪廻転生のプロセスを生じさせるDhammā（kamma bīja）が何であれ、Dhammāが生じる原因である、と釈尊は宣言されました。釈尊はまた、これらの原因が発生するのをどのように止めれるのかについても説明しました（したがって、転生プロセスは終了できます）

Sotāpannaと一般者との違い

15. しかし、重要なポイントは「vēdanā paccayā taṇhā」、「taṇhā paccayā upādāna」の段階で発生します。死の瞬間に現れるnirayaでの転生のnimittaを得たとしても、Sotāpannaの段階に達していれば、それを捕まえて自分のものにすることはありません。

Sotāpannaのマインドは「aniccaの性質」の真実を把握しており、より高いレベルのpaññā (智慧) を持っているため、そのnimittaを捕まえることはありません。そのため、1000人近くを殺した後でも、Angulimālaは阿羅漢性を達成することができました。すなわち、その過去のkamma bījaは発芽しませんでした。

したがって、X がその間に Sōtapanna になった場合、その nimitta は無効になり、別の (良いまたは悪い) 次のnimittaが表示されます。このプロセスは、適切な新しいbhavaが「upādāna paccaya bhava」のステップで把握されるまで続きます。

これが、Sotāpannaがapāyagāmi kamma bīja（下位4領域に転生するカルマの種）が自分の vipākaにもたらされるのを避ける方法です。

もちろん、XがSōtapannaの段階に達していなければ、彼はnirayaで生まれていたでしょう.

cittaの汚染のプロセスについて書かれている、Pabhassara Sutta (AN 1.51)の最初の文は、

「比丘よ、citta（最初の段階）はpabhassaraである、すなわち転生プロセスに寄与するものではない」

次の文は、それがどのように汚されるかを示しています。「āgantuka」は「導入」を意味します。導入されているのは、「upakilēsa」すなわち汚染（gati、anusaya、āsāvas）です。

次の文は、「これを理解していないassutavā puthujjano（三相を理解していない普通の人）は現実（yathābhūta）を理解できない」とあります。

最後の文は、「だから、三相を理解していない人にはcitta bhavana を勧めない」と言っています。

汚れた意識

Digha Nikaya（経蔵長部）のKevaṭṭa Sutta (DN 11)のもう一つの有名な句は、

“Viññāṇaṃ anidassanaṃ anantaṃ sabbatō pabhaṃ..”です。

「Viññānaは目に見えず、無限であり、すべての生命体の転生プロセスにつながる」

anidassanaṃ」は「見えない」という意味です。Viññānaは単なるnāma dhammā（メンタルの現象）ではなく

「kammaエネルギー」持っています。しかし、それは「目に見えるrūpa」よりも微細です。Kamma Viññāna – Link Between Mind and Matter“を参照。

「ananta」の意味は無限なのでviññāna dhatuは無限ということです。

「sabbatō」は「あらゆる意味で/すべてのため」を意味します。

「pabha」は「繰り返されるbhava」を意味します（Viññānaによってpabhamが起こります）。

強調するのはviññānaは汚されたcittaであり、私たちは皆、純粋なcittaではなく、viññānaを経験していることです。

さらに正確にいうと、このviññānaの集合体であるviññānakkhandhaが発生します。

ただ独り歩め　　　　Suttanipāta68　　　　大パリニッパーナ経

BakaBrahmāが普遍世界と勘違いしていた色界 Brahmanimantanika Sutta (MN 49)

釈尊と彼の弟子たちが色界を訪れ、Bakaを諭した。

nāma gottaとは何か？　 Najirati Sutta (SN 1.76)

「Rūpaṃ jīrati maccānaṃ、nāmagottaṃ na jīrati」

「物質エネルギーは崩壊し、消滅しますが、nāma gottaは崩壊することはありません。

「欲には陥らず堕落することはないが、苦行ではサマーディには達しない」と釈尊は説く。

エッセイ　サマタ瞑想　出典？の確認

「仏教の修行は戦争に行って闘うほど厳しいものである」と釈尊は説く。出典？「ヴィパッサナー瞑想」

ブッダの説法を聞いて、大勢の人がその場で預流果に達したと経典に記述。出典？ヴィパッサナー瞑想

瞑想実践しなくても預流果の覚りに達することができるようである。　　出典？「ヴィパッサナー瞑想」

釈尊は亡くなる前に

「（他の宗教の人々でも）この方法で心を清らかにすれば覚れます」

「付け加えると、今は、八聖道の教えは仏教にしかないので、sotāpatti,sakadāgmi、anāgāmi, arahattaも、世の中で仏教にしかない。」と言った。出典？

サムユッタニカーヤ　　11.2.10

ぶつかり合う人の中でぶつからず

“Saddhamma Sutta (AN 10.191) AND Saddhamma Sutta (AN 10.147)” in the post: “Dasa Akusala/Dasa Kusala – Basis of Buddha Dhamma“.

One of the requirements for Sotapanna phala is “listening to saddhamma” by an Ariya or a Noble person.

saṅkhataの3段階

この世界のあらゆるものは、生きていても生きていないもの（不活性）でも、無常の性質を持っています。saṅkhataは誕生しては (uppāda)、消え去っていきます。(vaya)。その中間で、saṅkhataは存在しますが、予期せぬ変化にさらされます (ṭhitassa aññatattaṁ)。これらがsaṅkhataの 3 つの段階です。たとえば、Ānanda Sutta (SN 22.37)を参照してください。

The ‘visuddhimagga' (XX,96) explains about the arising and falling away of nāma and rūpa:

There is no heap or store of unarisen nāma rūpa (existing) prior to its arising. When it arises it does not come from any heap or store; and when it ceases it does not go in any direction. There is nowhere any depositor in the way of a heap or store or hoard of what has ceased. But just as there is no store, prior to its arising, of the sound that arises when a lute is played, nor does it come from any store when it arises, nor does it go in any direction when it ceased, nor does it persist as a store when it has ceased, (''Kindred Sayings'' IV, 197), but on the contrary, not having been, it is brought into being owing to the lute, the lute's neck, and the man's appropriate effort, and having been, it vanishes - - so too all material and immaterial states (rūpa and nāma), not having been, are brought into being, having been, they vanish.

We read in the Kindred Sayings (I, Sagāthā-vagga, the Māra-suttas, chapter II, par. 3, The Splinter):

Thus have I heard: The Exalted One was once staying at Rājagaha, in the Maddakucchi, at the Deer-preserve. Now at that time his foot was injured by a splinter. Sorely indeed did the Exalted One feel it, grievous the pains he suffered in the body, keen and sharp, acute, distressing and unwelcome. He truly bore them, mindful and deliberate, nor was he cast down...

貪瞋痴の対語とスキル（アートの技術）

The Longer Discourse With Vacchagotta

Mahāvacchasutta　　MN 73　　　中部73経

“Lobho kho, vaccha, akusalaṁ, alobho kusalaṁ; doso kho, vaccha, akusalaṁ, adoso kusalaṁ; moho kho, vaccha, akusalaṁ, amoho kusalaṁ. Iti kho, vaccha, ime tayo dhammā akusalā, tayo dhammā kusalā.

Greed is unskillful, contentment is skillful. Hate is unskillful, love is skillful. Delusion is unskillful, understanding is skillful. So there are these three unskillful things and three that are skillful.

意訳「貪欲は未熟、満足は円熟、憎しみは未熟、愛は円熟。妄想は未熟、理解は円熟。ですから、これらの 3 つの未熟なものと 3 つの円熟なものがあります。

正しい訳は満足ではなく貪欲ではないものですが、貪欲ではないとはどのようなことなのかを考えるきっかけにするために敢えて意訳しています。

72. Discourse to Vacchagotta on Fire

Aggivacchasutta　　Majjhima Nikāya 72　火ヴァッチャ経

“Kiṁ nu kho, bho gotama, ‘taṁ jīvaṁ taṁ sarīraṁ, idameva saccaṁ moghamaññan’ti—evaṁdiṭṭhi bhavaṁ gotamo”ti?

“Na kho ahaṁ, vaccha, evaṁdiṭṭhi: ‘taṁ jīvaṁ taṁ sarīraṁ, idameva saccaṁ moghamaññan’”ti.

“Kiṁ pana, bho gotama, ‘aññaṁ jīvaṁ aññaṁ sarīraṁ, idameva saccaṁ moghamaññan’ti—evaṁdiṭṭhi bhavaṁ gotamo”ti?

“Na kho ahaṁ, vaccha, evaṁdiṭṭhi: ‘aññaṁ jīvaṁ aññaṁ sarīraṁ, idameva saccaṁ moghamaññan’”ti.

‘Kiṁ nu kho, bho gotama, taṁ jīvaṁ taṁ sarīraṁ, idameva saccaṁ moghamaññanti—evaṁdiṭṭhi bhavaṁ gotamo’ti iti puṭṭho samāno ‘na kho ahaṁ, vaccha, evaṁdiṭṭhi—taṁ jīvaṁ taṁ sarīraṁ, idameva saccaṁ moghamaññan’ti vadesi. ‘Kiṁ pana, bho gotama, aññaṁ jīvaṁ aññaṁ sarīraṁ, idameva saccaṁ moghamaññanti—evaṁdiṭṭhi bhavaṁ gotamo’ti iti puṭṭho samāno ‘na kho ahaṁ, vaccha, evaṁdiṭṭhi—aññaṁ jīvaṁ aññaṁ sarīraṁ, idameva saccaṁ moghamaññan’ti vadesi. ‘Kiṁ nu kho, bho gotama, hoti tathāgato paraṁ maraṇā, idameva saccaṁ moghamaññanti

Vaccha, to think that ‘the life-principle and the body are the same’, this is going to a (speculative) view, holding a view, the wilds of views, the wriggling of views, the scuffling of views, the fetter of views; it is accompanied by anguish, distress, misery, fever; it does not conduce to turning away from, nor to dispassion, stopping, calming, super-knowledge, awakening, nor to nibbāna.

Vaccha, to think that ‘the life-prineiple is one thing, the body another’, this is going to a (speculative) view, holding a view, the wilds of views, the wriggling of views, the scuffling of views, the fetter of views; it is accompanied by anguish, distress, misery, fever; it does not conduce to turning away from, nor to dispassion, stopping, calming, super-knowledge, awakening, nor to nibbāna.

ヴァッチャ、「生命原理と身体は同じである」と考えると、これは（投機的な）見解、見解の保持、見解の荒々しさ、見解のうねり、見解の乱れ、足枷に向かうことになる見解です。それらは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、停止したり、落ち着いたり、超知識を得たり、目覚めたり、涅槃につながるものではありません。

ヴァッチャ、「生命原理は一つであり、身体は別のものである」と考えると、これは（投機的な）見解、見解の保持、見解の荒々しさ、見解のうごめき、見解の乱れ、足枷に向かうことになる見解です。それは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、停止したり、落ち着いたり、超知識を得たり、目覚めたり、涅槃につながるものではありません。

Vacchagottaが「自己」と「非我」のどちらがあるのかと釈尊に尋ねたケースでは釈尊は黙ったままでした。

Vacchagottaが去った後、「魂がない」または「魂がある（常に変化し続ける生命の流れがあるだけのため）」と言うのは正しくないという概念を釈尊が説明しなかった理由を釈尊の付き添いのAnanda師は尋ねました。

釈尊はAnanda師に、Vacchagottaがその時点ではその概念をメンタル・レベルで理解できるとは思わず、彼を

混乱させたくないと語りました。

To Vacchagotta on the Three Knowledges

Tevijjavacchasutta Majjhima Nikāya 71

Tevijjavacchasutta

Evaṁ me sutaṁ—ekaṁ samayaṁ bhagavā vesāliyaṁ viharati mahāvane kūṭāgārasālāyaṁ.

Tena kho pana samayena vacchagotto paribbājako ekapuṇḍarīke paribbājakārāme paṭivasati.

Atha kho bhagavā pubbaṇhasamayaṁ nivāsetvā pattacīvaramādāya vesāliṁ piṇḍāya pāvisi. Atha kho bhagavato etadahosi: “atippago kho tāva vesāliyaṁ piṇḍāya carituṁ; yannūnāhaṁ yena ekapuṇḍarīko paribbājakārāmo yena vacchagotto paribbājako tenupasaṅkameyyan”ti. Atha kho bhagavā yena ekapuṇḍarīko paribbājakārāmo yena vacchagotto paribbājako tenupasaṅkami.

Addasā kho vacchagotto paribbājako bhagavantaṁ dūratova āgacchantaṁ. Disvāna bhagavantaṁ etadavoca: “Etu kho, bhante, bhagavā. Svāgataṁ, bhante, bhagavato. Cirassaṁ kho, bhante, bhagavā imaṁ pariyāyamakāsi yadidaṁ idhāgamanāya. Nisīdatu, bhante, bhagavā idamāsanaṁ paññattan”ti.

Nisīdi bhagavā paññatte āsane. Vacchagottopi kho paribbājako aññataraṁ nīcaṁ āsanaṁ gahetvā ekamantaṁ nisīdi. Ekamantaṁ nisinno kho vacchagotto paribbājako bhagavantaṁ etadavoca:

“sutaṁ metaṁ, bhante: ‘samaṇo gotamo sabbaññū sabbadassāvī, aparisesaṁ ñāṇadassanaṁ paṭijānāti, carato ca me tiṭṭhato ca suttassa ca jāgarassa ca satataṁ samitaṁ ñāṇadassanaṁ paccupaṭṭhitan’ti. Ye te, bhante, evamāhaṁsu: ‘samaṇo gotamo sabbaññū sabbadassāvī, aparisesaṁ ñāṇadassanaṁ paṭijānāti, carato ca me tiṭṭhato ca suttassa ca jāgarassa ca satataṁ samitaṁ ñāṇadassanaṁ paccupaṭṭhitan’ti, kacci te, bhante, bhagavato vuttavādino, na ca bhagavantaṁ abhūtena abbhācikkhanti, dhammassa cānudhammaṁ byākaronti, na ca koci sahadhammiko vādānuvādo gārayhaṁ ṭhānaṁ āgacchatī”ti?

“Ye te, vaccha, evamāhaṁsu: ‘samaṇo gotamo sabbaññū sabbadassāvī, aparisesaṁ ñāṇadassanaṁ paṭijānāti, carato ca me tiṭṭhato ca suttassa ca jāgarassa ca satataṁ samitaṁ ñāṇadassanaṁ paccupaṭṭhitan’ti, na me te vuttavādino, abbhācikkhanti ca pana maṁ asatā abhūtenā”ti.

“Kathaṁ byākaramānā pana mayaṁ, bhante, vuttavādino ceva bhagavato assāma, na ca bhagavantaṁ abhūtena abbhācikkheyyāma, dhammassa cānudhammaṁ byākareyyāma, na ca koci sahadhammiko vādānuvādo gārayhaṁ ṭhānaṁ āgaccheyyā”ti?

“‘Tevijjo samaṇo gotamo’ti kho, vaccha, byākaramāno vuttavādī ceva me assa, na ca maṁ abhūtena abbhācikkheyya, dhammassa cānudhammaṁ byākareyya, na ca koci sahadhammiko vādānuvādo gārayhaṁ ṭhānaṁ āgaccheyya.

Ahañhi, vaccha, yāvadeva ākaṅkhāmi anekavihitaṁ pubbenivāsaṁ anussarāmi, seyyathidaṁ—ekampi jātiṁ dvepi jātiyo …pe… iti sākāraṁ sauddesaṁ anekavihitaṁ pubbenivāsaṁ anussarāmi.

Ahañhi, vaccha, yāvadeva ākaṅkhāmi dibbena cakkhunā visuddhena atikkantamānusakena satte passāmi cavamāne upapajjamāne hīne paṇīte suvaṇṇe dubbaṇṇe sugate duggate …pe… yathākammūpage satte pajānāmi.

Ahañhi, vaccha, āsavānaṁ khayā anāsavaṁ cetovimuttiṁ paññāvimuttiṁ diṭṭheva dhamme sayaṁ abhiññā sacchikatvā upasampajja viharāmi.

‘Tevijjo samaṇo gotamo’ti kho, vaccha, byākaramāno vuttavādī ceva me assa, na ca maṁ abhūtena abbhācikkheyya, dhammassa cānudhammaṁ byākareyya, na ca koci sahadhammiko vādānuvādo gārayhaṁ ṭhānaṁ āgaccheyyā”ti.

Evaṁ vutte, vacchagotto paribbājako bhagavantaṁ etadavoca: “atthi nu kho, bho gotama, koci gihī gihisaṁyojanaṁ appahāya kāyassa bhedā dukkhassantakaro”ti?

“Natthi kho, vaccha, koci gihī gihisaṁyojanaṁ appahāya kāyassa bhedā dukkhassantakaro”ti.

“Atthi pana, bho gotama, koci gihī gihisaṁyojanaṁ appahāya kāyassa bhedā saggūpago”ti?

“Na kho, vaccha, ekaṁyeva sataṁ na dve satāni na tīṇi satāni na cattāri satāni na pañca satāni, atha kho bhiyyova ye gihī gihisaṁyojanaṁ appahāya kāyassa bhedā saggūpagā”ti. Variant: atha kho → atthi kho

“Atthi nu kho, bho gotama, koci ājīvako kāyassa bhedā dukkhassantakaro”ti? Variant: ājīvako → ājīviko (mr)

“Natthi kho, vaccha, koci ājīvako kāyassa bhedā dukkhassantakaro”ti.

“Atthi pana, bho gotama, koci ājīvako kāyassa bhedā saggūpago”ti?

“Ito kho so, vaccha, ekanavuto kappo yamahaṁ anussarāmi, nābhijānāmi kañci ājīvakaṁ saggūpagaṁ aññatra ekena; Variant: kho so, vaccha, ekanavuto kappo → ito kho vaccha ekanavute kappe (mr)sopāsi kammavādī kiriyavādī”ti.

“Evaṁ sante, bho gotama, suññaṁ aduṁ titthāyatanaṁ antamaso saggūpagenapī”ti?

“Evaṁ, vaccha, suññaṁ aduṁ titthāyatanaṁ antamaso saggūpagenapī”ti.

Idamavoca bhagavā. Attamano vacchagotto paribbājako bhagavato bhāsitaṁ abhinandīti.

“‘The ascetic Gotama has the three knowledges.’ Answering like this you would repeat what I have said, and not misrepresent me with an untruth. You would explain in line with my teaching, and there would be no legitimate grounds for rebuke and criticism.

For, Vaccha, whenever I want, I recollect my many kinds of past lives. That is: one, two, three, four, five, ten, twenty, thirty, forty, fifty, a hundred, a thousand, a hundred thousand rebirths; many eons of the world contracting, many eons of the world expanding, many eons of the world contracting and expanding. I remember: ‘There, I was named this, my clan was that, I looked like this, and that was my food. This was how I felt pleasure and pain, and that was how my life ended. When I passed away from that place I was reborn somewhere else. There, too, I was named this, my clan was that, I looked like this, and that was my food. This was how I felt pleasure and pain, and that was how my life ended. When I passed away from that place I was reborn here.’ And so I recollect my many kinds of past lives, with features and details.

And whenever I want, with clairvoyance that is purified and superhuman, I see sentient beings passing away and being reborn—inferior and superior, beautiful and ugly, in a good place or a bad place. I understand how sentient beings are reborn according to their deeds.

And I have realized the undefiled freedom of heart and freedom by wisdom in this very life. I live having realized it with my own insight due to the ending of defilements.

「『修行僧のGotamaは三つの知識を持っている』と答えると、あなたは私の言ったことを繰り返しますが、虚偽で私を誤解することはありません。あなたは私の教えに沿って説明し、叱責や批判の正当な理由はありません.

ヴァッチャ、私はいつでも好きなときに、さまざまな種類の過去生を思い出します。つまり、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、100、1000、10 万回の再生です。世界の多くの時代は縮小し、世界の多くの時代は拡大し、世界の多くの時代は縮小と拡大を続けています。私は覚えています。これが私が喜びと苦痛を感じた方法であり、それが私の人生が終わった方法でした.その場所を離れて、別の場所に生まれ変わった。そこでも、私はこう名付けられ、私の氏族はあれであり、私はこのように見え、それが私の食べ物でした。これが私が喜びと苦痛を感じた方法であり、それが私の人生が終わった方法でした.あの場所で亡くなった時、ここに生まれ変わったのです』そして、私は自分のさまざまな過去生を特徴と詳細とともに思い出します。

そしていつでも、浄化された超人的な千里眼で、衆生が死んで生まれ変わるのを見ることができます。衆生が自分の行いに応じてどのように生まれ変わるかを理解しています。

そして私は、心の汚れのない自由と知恵による自由を、まさにこの人生で実現しました。煩悩の終焉により、自分の洞察力で悟りながら生きています。

それで聞いたことがあります。ある時、ブッダはヴェサーリーの近く、グレートウッドのとがった屋根のあるホールに滞在していました。

その時、放浪者のヴァッチャゴッタは、放浪者のロータス修道院に住んでいました。

ブッダは朝に衣を着て、鉢と衣を持って、施しをするためにヴェサーリーに入りました。それから彼は、「ヴェサーリーで施しをするのはまだ早い。放浪者ヴァッチャゴッタに会いに行きませんか？」

ヴァチャゴッタは仏陀を見て、彼に言った。ようこそ、祝福された者よ！あなたがここに来る機会を得てから長い時間が経ちました。どうぞお座りください、こちらに席をご用意しております。」

釈迦は横に広げた座に座り、ヴァッチャゴッタは低い座に座り、片側に座った。それからヴァチャゴッタはブッダに言った：

「先生、聞いたことがあります。『修行者のGotamaは、すべてを知っていて、すべてを見ていると主張している。知識とビジョンは、歩いているときも立っているときも、常に私に存在していると』。

このように言う人は、ブッダが言ったことを繰り返しており、虚偽を伝えていないのではないかと私は信じています。

彼らの説明は教えに沿っていますか？叱責や批判に正当な理由はありますか？」

「ヴァッチャ、これを言う者は私の言ったことを繰り返していない。彼らは虚偽と真実ではないことを伝えています。」

「では、誤解させないようにするには、どのように答えるべきでしょうか。叱責や批判の正当な理由もなく、ブッダの教えに沿うにはどのように説明すべきでしょうか?」

「『修行僧のGotamaは三つの知識を持っている』と答えると、あなたは私の言ったことを繰り返しますが、虚偽で私を誤解することはありません。あなたは私の教えに沿って説明しているので、叱責や批判の正当な理由はありません.

ヴァッチャ、私はいつでも好きなときに、さまざまな種類の過去生を思い出します。つまり、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、100、1000、10 万回の再生です。世界の多くの時代は縮小し、世界の多くの時代は拡大し、世界の多くの時代は縮小と拡大を続けています。私は覚えています。これで私が喜びと苦痛を感じ、それで私の人生が終わりました。

ある場所を離れて、別の場所に生まれ変わった。そこでも、私は名付けられ、私は氏族であり、私は見解があって、それらが私（メンタル体）の食べ物でした。これで私が喜びと苦痛を感じ、それで私の人生が終わりました。.あの場所で亡くなった時、ここに生まれ変わったのです』そして、私は自分のさまざまな過去生を特徴と詳細とともに思い出します。

「修行僧のGotamaには三つの知識があります。」このように答えると、あなたは私が言ったことを繰り返すことになるでしょう。私の教えに沿って説明すれば、非難や批判の正当な理由はありません。」

放浪者のヴァッチャゴッタは、仏陀にこう言いました。

「いいえ、ヴァッチャ」

「しかし、肉体が壊れたときに、俗世の束縛をあきらめずに天国に行く信徒はいますか？」

「100 人の一般信徒、ヴァッチャ、または 2、3、4、500 人だけでなく、一般人の束縛をあきらめることなく、体が壊れたときに天国に行く人はさらに多くいます。」

「Gotama様、体が壊れた時に苦しみを終わらせるアージーヴァカ修行者はいますか？」

「いいえ、ヴァッチャ」

「でも、体が壊れたら天国に行くアージーヴァカ修行者はいますか？」

「ヴァッチャ、私が過去の九十一劫を思い出すとき、天国に行ったアジーヴァカの修行者は一人を除いて誰も見つけることができません。そして彼は行為と行動の有効性を教えました。」

「そうなると、Gotama様、宗派の教義は天国に行くチャンスすらありません。」

「はい、ヴァッチャ、宗派の教義には天国に行くチャンスさえありません。」

仏陀はそうおっしゃいました。放浪者のヴァッチャゴッタはブッダの言葉に満足した。

このように私は聞いたことがあります：かつて主はアナルタピイカの修道院のジェタグローブのサヴァッタの近くに滞在していました。その後、ワンダラーのヴァイクチャゴッタが主に近づきました。近づいて、彼は主と挨拶を交わした。友好的で礼儀正しい方法で会話して、彼は敬意を表して座った。彼が敬意を払って座っていたとき、放浪者のヴァイハゴッタはこうして主に語りました。

[1]「さて、よきGotama、この見解の尊敬されるGotamaは、「世界は永遠であり、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？」「私は、ヴァキュチャ、「世界は永遠であり、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」」

[2]「それからよきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「世界は永遠ではなく、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？」「私、ヴァキュチャ、「世界は永遠ではなく、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」」

[3]「さて、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「世界は終わりのようなものであり、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？」「私は、ヴァキュチャ、「世界は終わりのようなものであり、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」」

[4]「それから、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「世界は終わりのようなものではなく、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？」「私は、ヴァキュチャ、「世界は結末なものではなく、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽である」という見解ではありません。」

[5]「さて、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「人生の原則と体は同じです、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？「私は、ヴァキュチャ、「人生の原則と体は同じです。これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」」

[6]「それから、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「人生の原則は一つのこと、体は別のもの、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？」「私は、ヴァキュチャ、「人生の原則は一つのことであり、身体は別のものであり、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」」

[7]「さて、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「タタガタは死んだ後、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？」「私は、ヴァキュチャ、「タタガタは死んだ後、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」」

[8]「それから、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「タタガタは死んだ後ではなく、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？」「私は、ヴァキュチャ、「タタガタは死んだ後ではなく、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」」

[9]「さて、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「タタガタは死んだ後のものではなく、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です」？」「私、ヴァキュチャ、この見解ではありません。「タタガタは両方とも死んだ後ではありません。これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です。」」

[10]「それから、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「タタガタは死後もそうでもない、これは実に真実であり、他のすべてが虚偽である」？」「私、ヴァキュチャ、この見解ではありません。「タタガタは死後もそうでもありません。これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」」

「さて、尊敬されているGotama、グッド・Gotamaは、「今、グッド・Gotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「世界は永遠であり、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？」「私、ヴァキュチャ、「世界は永遠であり、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」

「尋ねられると、「それからよきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「世界は永遠ではなく、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？」「私、ヴァキュチャ、「世界は永遠ではなく、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」

「尋ねられると、「さて、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「世界は終わりのようなものであり、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？」「私、ヴァキュチャ、「世界は結末なものであり、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」

「尋ねられると、「それなら、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「世界は終わりのようなものではありません。これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」？」「私、ヴァキュチャ、「世界は結末なものではなく、これは確かに真実であり、他のすべてが虚偽です。」

「尋ねられると、「さて、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは、「人生の原則と体は同じです、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です」「私、ヴァキュチャ、この見解ではありません：「人生の原則と体は同じです、これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です。」」

「尋ねられると、「それから、よきGotama、この見解の尊敬されているGotamaは次のとおりです。「人生の原則は一つのこと、体は別のものです。「私、ヴァキュチャ、この見解ではありません。「人生の原則は一つのこと、体は別のものです。

「尋ねられると：「今、よきGotamaは、この見解の尊敬されているGotamaです。「タタガタは死んだ後、これは確かに真実です

、他のすべては虚偽です」？「私、ヴァッチャは、この見解ではありません。『如来は死んだ後です。これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です。』」

「では、Gotamaよ、『如来は死んだ後ではなく、これは真実であり、他のすべては虚偽である』という見解の尊敬されているGotamaですか？」「私、ヴァッチャは、この見解を持っていません。『如来は死んだ後ではありません。これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です。』」

「さて、Gotamaよ、この見解の崇敬されたGotamaは? 「私、ヴァッチャは、このような見解を持っていません。『如来は死後も死後でもない。これは確かに真実であり、他のすべては虚偽です。』」

「では、Gotamaよ、『如来は死んだ後でもなく、死後でもない。これは真実であり、他のすべては虚偽である』という見解の尊敬されているGotamaですか？」「私、ヴァッチャは、この見解を持っていません。『如来は死んだ後でもなく、死後でもない。これは確かに真実であり、他のすべては虚偽である。』」

尊敬されているGotamaが、このようにこれらの（推測的な）見解のいずれにも近づかないことで、どのような危険が見られるのでしょうか?」「ヴァッチャよ、『世界は永遠である』と考えることは、（投機的な）見解に向かうことであり、見解を保持することであり、見解の荒々しさ、見解のうごめき、見解の乱れ、見解の束縛である。それは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、停止したり、落ち着いたり、超知識を得たり、目覚めたり、涅槃につながるものではありません。

ヴァッチャ、「世界は永遠ではない」と考えると、これは（投機的な）見解に行き、見解、見解の荒々しさ、見解のうごめき、見解の乱れ、見解の足枷を保持することになる。それは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、停止したり、落ち着いたり、超知識を得たり、目覚めたり、涅槃につながるものではありません。

ヴァッチャよ、「世界は終わりを告げるものである」と考えると、これは（投機的な）見解に行き着き、見解、見解の荒々しさ、見解のうごめき、見解の乱れ、見解の足枷を保持することになる。それは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、停止したり、落ち着いたり、超知識を得たり、目覚めたり、涅槃につながるものではありません。

ヴァッチャ、「世界は終わりのものではない」と考えると、これは（投機的な）見解に行き、見解、見解の荒々しさ、見解のうごめき、見解の乱れ、見解の足枷を保持することになります。それは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、停止したり、落ち着いたり、超知識を得たり、目覚めたり、涅槃につながるものではありません。

ヴァッチャ、「生命原理と身体は同じである」と考えると、これは（投機的な）見解、見解の保持、見解の荒々しさ、見解のうねり、見解の乱れ、足枷に向かうことになるビュー;それは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、停止したり、落ち着いたり、超知識を得たり、目覚めたり、涅槃につながるものではありません。

ヴァッチャ、「生命原理は一つであり、身体は別のものである」と考えると、これは（投機的な）見解、見解の保持、見解の荒々しさ、見解のうごめき、見解の乱れ、足枷に向かうことになるビューの;それは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、停止したり、落ち着いたり、超知識を得たり、目覚めたり、涅槃につながるものではありません。

ヴァッチャよ、「如来は死んだ後だ」と考えることは、（思弁的な）見解に向かうことであり、見解、見解の荒々しさ、見解のうごめき、見解の乱れ、見解の足枷を保持することである。それは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、停止したり、落ち着いたり、超知識を得たり、目覚めたり、涅槃につながるものではありません。

ヴァッチャよ、「如来は死後ではない」と考えることは、（思弁的な）見解に向かうことであり、見解、見解の荒々しさ、見解のうごめき、見解の乱れ、見解の足枷を保持することである。それは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、停止したり、落ち着いたり、超知識を得たり、目覚めたり、涅槃につながるものではありません。

ヴァッチャ、「如来は死後あり、死後なし」と考えると、これは（投機的な）見解、見解の保持、見解の荒々しさ、見解のうごめき、見解の乱れ、見解の束縛に向かう;それは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、停止したり、落ち着いたり、超知識を得たり、目覚めたり、涅槃につながるものではありません。

ヴァッチャ、「如来は死んだ後でもなく、そうでもない」と考えるために、これは（投機的な）見解に行き、見解を保持し、見解の野生、見解のうねり、見解の乱れ、見解の足かせ;それは苦悩、苦痛、惨めさ、熱を伴います。それは、背を向けたり、冷静になったり、立ち止まったり、落ち着いたり、超知識に目覚めたり、

涅槃にも。

私、ヴァッチャは、これが危険であると見て、これらの（推測的な）見解のいずれにも近づかない.」「しかし、善良なGotamaは（投機的な）見解を持っていますか？」「ヴァッチャ、『思弁』に行くと、これは如来によって取り除かれました。しかし、ヴァッチャよ、如来はこれを見た。

[1] 「これが物質の形であり、物質の形が発生し、物質の形が下降することである。

[2] これが感情であり、これが感情の発生であり、その感情の下降である。

[3] これが知覚であり、これが知覚の発生であり、そのような知覚の下降である。

[4] これが習慣的傾向であり、習慣的傾向の発生であり、習慣的傾向の下降である。

[5] それが意識であり、意識の発生であり、意識の下降である。

したがって、破壊、冷静、停止、あきらめ、すべての想像、すべての仮定、すべての潜在的なプライドから「私は実行者であり、私の実行者は実行者である」という潜在的なプライドを捨てることによって、如来は固執することなく解放されると私は言います。

[1] 「しかし、Gotamaよ、このように心が解放された僧侶はどこに現れるのですか？」「起きなさい」、ヴァッチャは当てはまりません。

[2]「さてGotamaさん、起きませんか？」「『起きない』、ヴァッチャは当てはまりません。」

[3]「ではGotama様、彼は起きているのか起きていないのか？」「『起こることと起こらないことの両方』、Vaccha は当てはまりません。」

[4]「ではGotamaさん、起きても起きなくてもいいですか？」「『起こることも起こらないこともない』、Vaccha は当てはまりません。」

「しかし、Gotamaよ、尋ねられたとき、「しかし、Gotamaよ、このように心が解放された僧侶はどこに現れるのですか？」あなたが言う：「起きなさい」、ヴァッチャ、適用されません。「しかし、Gotamaよ、尋ねられたとき、「それでは、Gotamaよ、彼は起きませんか？」あなたは言う：「『起こらない』、ヴァッチャ、当てはまらない」。「しかし、Gotamaよ、尋ねられたら、Gotamaよ、彼は起立するかしないか？」あなたは言う：「『起こることと起こらないことの両方』、ヴァッチャは当てはまらない」。「しかし、Gotamaよ、尋ねられたら、Gotamaよ、彼は起きないのか起きないのか？」あなたはこう言います：「『起こることも起こらないこともありません』、ヴァッチャは当てはまりません。」私はこの点で途方に暮れています、よきGotama、私は当惑しています、そして私はよきGotamaとの以前の会話から得たその程度の満足感でさえ、私は今失っています.

「あなたは途方に暮れるはずです、ヴァッチャ、当惑するべきです。ヴァッチャよ、このダンマは深く、見るのが難しく、理解するのが難しく、平和で、優れており、弁証法を超えており、微妙で、賢者には理解できる。しかし、別の見解、別の忠誠、別の目的、別の遵守、別の教師の下にいるあなたにとっては難しいことです。それでは、ヴァッチャ、代わりに質問させていただきます。好きなように答えてください。

これについてどう思いますか、ヴァッチャ？目の前で火が燃えているとしたら、『この火は私の目の前で燃えている』とわかるでしょうか？」「Gotamaよ、目の前で火が燃えているなら、『この火は私の前で燃えている』とわかるだろう」この火が燃えている理由は何ですか？」と問われたら、ヴァッチャは何と答えるでしょうか？「Gotamaよ、誰かが私にこう質問したとしたら、『あなたの目の前で燃えているこの火、この火が燃えている理由は何ですか？目の前で燃えているこの火、この火が燃えているのは、草と棒が供給されているからです。」「ヴァッチャ、あなたの目の前にあった火が消えたとしたら、『私の前にあったこの火は消えた』とわかるでしょうか？」「Gotamaよ、目の前の火が消えたら、『目の前の火は消えた』とわかるだろう」

「しかし、誰かがあなたにこう質問したとしたら、ヴァッチャ、『あなたの前にあったその火は消されました。その火はここから東、西、北、または南のどの方向に行きましたか?』このように問われたら、ヴァッチャ、あなたは何と答えますか？」「当てはまりませんよGotama。Gotamaよ、あの火は草と棒の供給のために燃えたが、これを完全に消費し、他の燃料が不足しているため、燃料がなければ消えたと考えられている.

[1]「それでも、ヴァッチャよ、如来を認める者が彼を認めるであろう物質的な形、その物質的な形は如来によって取り除かれ、根を切り落とされ、やしの木の切り株のように作られ、出てくることができる」もはや存在せず、将来再び発生する可能性はありません。物質的な形による表示から解放されたのは如来、ヴァッチャであり、彼は大海のように深く、計り知れず、計り知れない。「発生する」は適用されず、「発生しない」は適用されず、「発生し、発生しない」は適用されず、「発生も発生もしない」は適用されません。

[2] 「如来を認める者が彼を認めるであろうその感情、その感情は如来によって取り除かれ、根本から断ち切られ、

これ以上存在できず、将来再び発生する可能性がないヤシの木の切り株のように作られています。感覚による表象から解放されたのは如来、ヴァッチャであり、彼は大海のように深く、計り知れず、計り知れない。「発生する」は適用されず、「発生しない」は適用されず、「発生し、発生しない」は適用されず、「発生も発生もしない」は適用されません。

[3] 「如来を認識する人が彼を認識することができるその認識、その認識は如来によって取り除かれ、根が切り落とされ、やしの木の切り株のように作られ、それ以上存在することはできず、存在しません。今後再発する恐れがあります。知覚による表象から解放されたのは如来、ヴァッチャであり、彼は大海のように深く、計り知れず、計り知れない。「発生する」は適用されず、「発生しない」は適用されず、「発生し、発生しない」は適用されず、「発生も発生もしない」は適用されません。

[4] 「如来を認識する人が彼を認識することができる習慣的な傾向、それらの習慣的な傾向は如来によって取り除かれ、根が切り落とされ、ヤシの木の切り株のように作られ、もはや存在しなくなり、今後再発する可能性はありません。常習的な傾向による表象から解放されたのは如来、ヴァッチャであり、彼は大海のように深く、計り知れず、計り知れない。「発生する」は適用されず、「発生しない」は適用されず、「発生し、発生しない」は適用されず、「発生も発生もしない」は適用されません。

[5] 「如来を認める人が彼を認めることができるその意識、その意識は如来によって取り除かれ、根を切り落とされ、ヤシの木の切り株のように作られ、それ以上存在することはできず、存在しません。今後再発する恐れがあります。意識による表象から解放されたのは如来、ヴァッチャであり、彼は大海のように深く、計り知れず、計り知れない。「発生する」は適用されず、「発生しない」は適用されず、「発生し、発生しない」は適用されず、「発生も発生もしない」は適用されません。

これが言われたとき、放浪者のヴァチャゴッタは主にこう言いました。若い芽が溶け、その針葉樹が溶けて、しばらくすると枝や葉がなくなり、樹皮や若い芽がなくなり、針葉樹がなくなり、それらがなくなり、髄に定着します。エクセレント、グッドGotama、エクセレント、Gotamaです。Gotamaよ、ひっくり返ったものを立て直すか、覆われていたものを明らかにするか、道に迷った人に道を指摘するか、暗闇の中に石油ランプを持ってくるかのようです。視覚で物質的な形を見ることができるかもしれませんが、よきGotamaによって多くの図でダンマが明確にされています。私は敬虔なGotamaに避難し、ダンマと僧団に行きます。敬愛するGotama様が、今日から命の限り、私を信徒として受け入れてくださいますように。」

72. Discourse to Vacchagotta on Fire

Thus have I heard: at one time the Lord was staying near Sāvatthī in the Jeta Grove in Anāthapiṇḍika's monastery. Then the wanderer Vacchagotta approached the Lord; having approached, he exchanged greetings with the Lord; having conversed in a friendly and courteous way, he sat down at a respectful distance. As he was sitting down at a respectful distance, the wanderer Vaeehagotta spoke thus to the Lord:

[1] “Now, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The world is eternal, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” “I, Vaccha, am not of this view: ‘The world is eternal, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

[2] “Then good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The world is not eternal, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” “I, Vaccha, am not of this view: ‘The world is not eternal, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

[3] “Now, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The world is an ending thing, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” “I, Vaccha, am not of this view: ‘The world is an ending thing, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

[4] “Then, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The world is not an ending thing, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” “I, Vaccha, am not of this view: ‘The world is not an ending thing, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

[5] “Now, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The life-principle and the body are the same, this is indeed the truth, all else is falsehood’? “I, Vaccha, am not of this view: ‘The life-principle and the body are the same, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

[6] “Then, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The life-principle is one thing, the body another, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” “I, Vaccha, am not of this view: ‘The life-principle is one thing, the body another, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

[7] “Now, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The Tathāgata is after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” “I, Vaccha, am not of this view: ‘The Tathāgata is after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

[8] “Then, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The Tathāgata is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” “I, Vaccha, am not of this view: ‘The Tathāgata is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

[9] “Now, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The Tathāgata both is and is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” “I, Vaccha, am not of this view: ‘The Tathāgata both is and is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

[10] “Then, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The Tathāgata neither is, nor is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” “I, Vaccha, am not of this view: ‘The Tathagata neither is nor is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

“Now, good Gotama, the revered Gotama, on being asked: “Now, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The world is eternal, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” says: “I, Vaccha, am not of this view: ‘The world is eternal, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

“On being asked: “Then good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The world is not eternal, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” says: “I, Vaccha, am not of this view: ‘The world is not eternal, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

“On being asked: “Now, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The world is an ending thing, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” says: “I, Vaccha, am not of this view: ‘The world is an ending thing, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

“On being asked: “Then, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The world is not an ending thing, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” says: “I, Vaccha, am not of this view: ‘The world is not an ending thing, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

“On being asked: “Now, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The life-principle and the body are the same, this is indeed the truth, all else is falsehood’? says: “I, Vaccha, am not of this view: ‘The life-principle and the body are the same, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

“On being asked: “Then, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The life-principle is one thing, the body another, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” says: “I, Vaccha, am not of this view: ‘The life-principle is one thing, the body another, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

“On being asked: “Now, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The Tathāgata is after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” says: “I, Vaccha, am not of this view: ‘The Tathāgata is after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

“On being asked: “Then, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The Tathāgata is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” says: “I, Vaccha, am not of this view: ‘The Tathāgata is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

“On being asked: “Now, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The Tathāgata both is and is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” says: “I, Vaccha, am not of this view: ‘The Tathāgata both is and is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

“On being asked: “Then, good Gotama, is the revered Gotama of this view: ‘The Tathāgata neither is nor is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood’?” says: “I, Vaccha, am not of this view: ‘The Tathagata neither is nor is not after dying, this is indeed the truth, all else is falsehood.’”

What is the peril the revered Gotama beholds that he thus does not approach any of these (speculative) views?” “Vaccha, to think that ‘the world is eternal’, this is going to a (speculative) view, holding a view, the wilds of views, the wriggling of views, the scuffling of views, the fetter of views; it is accompanied by anguish, distress, misery, fever; it does not conduce to turning away from, nor to dispassion, stopping, calming, super-knowledge, awakening, nor to nibbāna.

Vaccha, to think that ‘the world is not eternal’, this is going to a (speculative) view, holding a view, the wilds of views, the wriggling of views, the scuffling of views, the fetter of views; it is accompanied by anguish, distress, misery, fever; it does not conduce to turning away from, nor to dispassion, stopping, calming, super-knowledge, awakening, nor to nibbāna.

Vaccha, to think that ‘the world is an ending thing’, this is going to a (speculative) view, holding a view, the wilds of views, the wriggling of views, the scuffling of views, the fetter of views; it is accompanied by anguish, distress, misery, fever; it does not conduce to turning away from, nor to dispassion, stopping, calming, super-knowledge, awakening, nor to nibbāna.

Vaccha, to think that ‘the world is not an ending thing’, this is going to a (speculative) view, holding a view, the wilds of views, the wriggling of views, the scuffling of views, the fetter of views; it is accompanied by anguish, distress, misery, fever; it does not conduce to turning away from, nor to dispassion, stopping, calming, super-knowledge, awakening, nor to nibbāna.

Vaccha, to think that ‘the Tathāgata is after dying’, this is going to a (speculative) view, holding a view, the wilds of views, the wriggling of views, the scuffling of views, the fetter of views; it is accompanied by anguish, distress, misery, fever; it does not conduce to turning away from, nor to dispassion, stopping, calming, super-knowledge, awakening, nor to nibbāna.

Vaccha, to think that ‘the Tathāgata is not after dying’, this is going to a (speculative) view, holding a view, the wilds of views, the wriggling of views, the scuffling of views, the fetter of views; it is accompanied by anguish, distress, misery, fever; it does not conduce to turning away from, nor to dispassion, stopping, calming, super-knowledge, awakening, nor to nibbāna.

Vaccha, to think that ‘the Tathāgata both is and is not after dying’, this is going to a (speculative) view, holding a view, the wilds of views, the wriggling of views, the scuffling of views, the fetter of views; it is accompanied by anguish, distress, misery, fever; it does not conduce to turning away from, nor to dispassion, stopping, calming, super-knowledge, awakening, nor to nibbāna.

Vaccha, to think that ‘the Tathāgata neither is nor is not after dying’, this is going to a (speculative) view, holding a view, the wilds of views, the wriggling of views, the scuffling of views, the fetter of views; it is accompanied by anguish, distress, misery, fever; it does not conduce to turning away from, nor to dispassion, stopping, calming, super-knowledge, awakening, nor to nibbāna.

I, Vaccha, beholding that this is a peril, thus do not approach any of these (speculative) views.” “But does the good Gotama have any (speculative) view?” “Vaccha, going to ‘speculative view’, this has been got rid of by the Tathāgata. But this, Vaccha, has been seen by the Tathāgata:

[1] ‘Such is material shape, such is the arising of material shape, such the going down of material shape;

[2] such is feeling, such is the arising of feeling, such the going down of feeling;

[3] such is perception, such is the arising of perception, such the going down of perception;

[4] such are the habitual tendencies, such is the arising of the habitual tendencies, such the going down of the habitual tendencies;

[5] such is consciousness, such is the arising of consciousness, such the going down of consciousness.’

Therefore I say that by the destruction, dispassion, stopping, giving up, casting out of all imaginings, all supposings, all latent pride that ‘I am the doer, mine is the doer,’ a Tathāgata is freed without clinging.”

[1] “But, good Gotama, where does a monk arise whose mind is freed thus?” ‘Arise,’ Vaccha, does not apply.”

[2] “Well then, good Gotama, does he not arise?” “‘Does not arise,’ Vaccha, does not apply.”

[3] “Well then, good Gotama, does he both arise and not arise?” “‘Both arises and does not arise,’ Vaccha, does not apply.”

[4] “Well then, good Gotama, does he neither arise nor not arise?” “‘Neither arises nor does not arise,’ Vaccha, does not apply.”

“But, good Gotama, on being asked: “But, good Gotama, where does a monk arise whose mind is freed thus?” you say: ‘Arise,’ Vaccha, does not apply.” “But, good Gotama, on being asked: “Well then, good Gotama, does he not arise?” you say: “‘Does not arise,’ Vaccha, does not apply.” “But, good Gotama, on being asked: “Well then, good Gotama, does he both arise and not arise?” you say: “‘Both arises and does not arise,’ Vaccha, does not apply.” “But, good Gotama, on being asked: “Well then, good Gotama, does he neither arise nor not arise?” you say: “‘Neither arises nor does not arise,’ Vaccha, does not apply.” I am at a loss on this point, good Gotama, I am bewildered, and that measure of satisfaction I had from former conversation with the good Gotama, even that have I now lost.”

“You ought to be at a loss, Vaccha, you ought to be bewildered. For, Vaccha, this Dhamma is deep, difficult to see, difficult to understand, peaceful, excellent, beyond dialectic, subtle, intelligible to the wise; but it is hard for you who are of another view, another allegiance, another objective, of a different observance, and under a different teacher. Well then, Vaccha, I will now question you in return. Answer as it pleases you.

What do you think about this, Vaccha? If a fire were blazing in front of you would you know: ‘This fire is blazing in front of me’?” “Good Gotama, if a fire were blazing in front of me I would know: ‘This fire is blazing in front of me.’” “But if, Vaccha, someone were to question you thus: ‘This fire that is blazing in front of you, what is the reason that this fire is blazing?’, what would you, Vaccha, reply when questioned thus?” “If, good Gotama, someone were to question me thus: ‘This fire that is blazing in front of you, what is the reason that this fire is blazing?’, I, good Gotama, on being questioned thus would reply thus: ‘This fire that is blazing in front of me, this fire is blazing because of a supply of grass and sticks.” “If that fire that was in front of you, Vaccha, were to be quenched, would you know: ‘This fire that was in front of me has been quenched’?” “If, good Gotama, that fire that was in front of me were to be quenched, I would know: ‘This fire that was in front of me has been quenched.’”

“But if someone were to question you thus, Vaccha: ‘That fire that was in front of you and that has been quenched, to which direction has that fire gone from here, to the east, or west, or north, or south? On being questioned thus, what would you, Vaccha, reply?” “It does not apply, good Gotama. For, good Gotama, that fire blazed because of a supply of grass and sticks, yet from having totally consumed this and from the lack of other fuel, being without fuel it is reckoned to be quenched.”

[1] “Even so, Vaccha, that material shape by which one recognising the Tathāgata might recognise him, that material shape has been got rid of by the Tathāgata, cut off at the root, made like a palm-tree stump that can come to no further existence and is not liable to arise again in the future. Freed from denotation by material shape is the Tathāgata, Vaccha, he is deep, immeasurable, unfathomable as is the great ocean. ‘Arises’ does not apply, ‘does not arise’ does not apply, ‘both arises and does not arise’ does not apply, ‘neither arises nor does not arise’ does not apply.

[2] “That feeling by which one recognising the Tathāgata might recognise him, that feeling has been got rid of by the Tathāgata, cut off at the root, made like a palm-tree stump that can come to no further existence and is not liable to arise again in the future. Freed from denotation by feeling is the Tathāgata, Vaccha, he is deep, immeasurable, unfathomable as is the great ocean. ‘Arises’ does not apply, ‘does not arise’ does not apply, ‘both arises and does not arise’ does not apply, ‘neither arises nor does not arise’ does not apply.

[3] “That perception by which one recognising the Tathāgata might recognise him, that perception has been got rid of by the Tathāgata, cut off at the root, made like a palm-tree stump that can come to no further existence and is not liable to arise again in the future. Freed from denotation by perception is the Tathāgata, Vaccha, he is deep, immeasurable, unfathomable as is the great ocean. ‘Arises’ does not apply, ‘does not arise’ does not apply, ‘both arises and does not arise’ does not apply, ‘neither arises nor does not arise’ does not apply.

[4] “Those habitual tendencies by which one recognising the Tathāgata might recognise him, those habitual tendencies have been got rid of by the Tathāgata, cut off at the root, made like a palm-tree stump that can come to no further existence and is not liable to arise again in the future. Freed from denotation by habitual tendencies is the Tathāgata, Vaccha, he is deep, immeasurable, unfathomable as is the great ocean. ‘Arises’ does not apply, ‘does not arise’ does not apply, ‘both arises and does not arise’ does not apply, ‘neither arises nor does not arise’ does not apply.

[5] “That consciousness by which one recognising the Tathāgata might recognise him, that consciousness has been got rid of by the Tathāgata, cut off at the root, made like a palm-tree stump that can come to no further existence and is not liable to arise again in the future. Freed from denotation by consciousness is the Tathāgata, Vaccha, he is deep, immeasurable, unfathomable as is the great ocean. ‘Arises’ does not apply, ‘does not arise’ does not apply, ‘both arises and does not arise’ does not apply, ‘neither arises nor does not arise’ does not apply.

When this had been said, the wanderer Vacchagotta spoke thus to the Lord: “Good Gotama, it is like a great sāl-tree not far from a village or market town whose branches and foliage might be dissolved because of their impermanence, whose bark and young shoots might be dissolved, whose softwood might be dissolved, so that after a time the branches and foliage gone, the bark and young shoots gone, the softwood gone, clear of them it would be established on the pith. It is excellent, good Gotama, excellent, good Gotama. It is as if, good Gotama, one might set upright what had been upset, or might disclose what was covered, or point out the way to one who had gone astray, or might bring an oil-lamp into the darkness, so that those with vision might see material shapes, even so is Dhamma made clear in many a figure by the good Gotama. I am going to the revered Gotama for refuge, and to Dhamma and to the Order of monks. May the revered Gotama accept me as a lay-follower, one gone for refuge from today forth for as long as life lasts.”

ヴァッカゴッタ・オン・ファイア

それで聞いたことがあります。あるときブッダは、アナタピニカの僧院であるジータの森にあるサーヴァティーの近くに滞在していました。

それから放浪者のヴァチャゴッタはブッダのところに行き、ブッダと挨拶を交わしました。挨拶と丁寧な会話が終わると、彼は片側に座り、ブッダにこう言いました。

「ゴータマ様、これがあなたの見解ですか、宇宙は永遠です。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

「それは私の見解ではありません、ヴァッチャ。」

「それでは、これがあなたの見解ですか。『宇宙は永遠ではありません。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

「それは私の見解ではありません、ヴァッチャ。」

「では、これがあなたの見解ですか。『世界は有限です。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

「それは私の見解ではありません、ヴァッチャ。」

「では、これがあなたの見解ですか。『世界は無限です。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

「それは私の見解ではありません、ヴァッチャ。」

「それでは、あなたの見解は次のとおりです。『魂と体は同じものです。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

「それは私の見解ではありません、ヴァッチャ。」

「それでは、あなたの見解は次のとおりです。『魂と体は別のものです。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

「それは私の見解ではありません、ヴァッチャ。」

「それでは、これがあなたの見解です：『リアライズド・ワンは死後も存在します。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

「それは私の見解ではありません、ヴァッチャ。」

「それでは、これがあなたの見解です。『実現した人は死後は存在しません。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

「それは私の見解ではありません、ヴァッチャ。」

「それでは、これがあなたの見解ですか：『実現した人は、死後に存在することも存在しないこともある.これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

「それは私の見解ではありません、ヴァッチャ。」

「それでは、これがあなたの見解ですか：『実現した人は、死後に存在することも存在しないこともありません。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

「それは私の見解ではありません、ヴァッチャ。」

「マスター・ゴータマ、これらの 10 の質問をされたとき、あなたはこうおっしゃいました。『それは私の見解ではありません。』

「これらの 10 の信念のそれぞれは、見解の茂み、見解の砂漠、見解の欺瞞、見解の回避性、見解の束縛である。彼らは苦悩、苦痛、熱に悩まされています。それらは、幻滅、冷静、停止、平和、洞察、目覚め、消滅にはつながりません。この欠点を見て、私はこれらすべての信念を避けています。」

「でも、マスター・ゴータマに何か信念はあるの？」

「リアライズド・ワンは信念を廃止しました。リアライズド・ワンは、「これが形であり、形の起源であり、形の終わりである。これが感情、これが感情の始まり、これが感情の終わりです。これが知覚であり、これが知覚の起源であり、これが知覚の終わりである。これが選択であり、これが選択の起源であり、これが選択の終わりです。それが意識であり、意識の起源であり、意識の終わりである。自我、所有欲、またはうぬぼれの根底にある傾向だと私は言います。

「でもマスター・ゴータマ、托鉢者の心がこのように解放されたとき、彼らはどこに生まれ変わるのですか？」

「『生まれ変わった』は当てはまりません、ヴァッチャ」

「じゃあ、生まれ変わったんじゃないの？」

「『生まれ変わっていない』は当てはまりません、ヴァッチャ」

「では、どちらも生まれ変わるのですか、生まれないのですか？」

「『生まれ変わっても生まれなくても』は当てはまりません、ヴァッチャ」

「では、彼らは生まれ変わったのではなく生まれ変わったのでしょうか？」

「『生まれ変わっても生まれなくても』は当てはまりません、ヴァッチャ」

「マスター・ゴータマ、これらすべての質問をされたとき、あなたは『それは当てはまらない』と言いました。マスター・ゴータマ、私はこの点を理解できません。私は混乱に陥った。マスター・ゴータマとの以前の会話から得た明晰さの程度さえも失ってしまいました。」

「あなたが理解していないのも不思議ではありません、ヴァッチャ、あなたが混乱しているのも不思議ではありません。この原則は深く、理解しにくく、平和で崇高であり、論理の範囲を超えており、微妙であり、鋭い人には理解できるからです。考え方も、信条も、好みも、習わしも、伝統も違うから、理解に苦しむ。

では、ヴァッチャ、これについてはお返しに聞くから、好きなように答えてくれ。

どう思いますか、ヴァッチャ？目の前で火が燃えているとします。『この火は私の目の前で燃えている』って知ってる？」

「はい、そうしますよ、ゴータマ様」

「でもヴァッチャ、もし彼らがあなたに尋ねたとしたら、『あなたの目の前で燃えているこの火は、何に依存していますか?』あなたはどう答えますか?」

「私は次のように答えます。『私の目の前で燃えているこの火は、燃料としての草と丸太に依存して燃えています。』」

「目の前で燃えている火が消えたとしよう。『目の前のこの火は消えた』って知ってる？」

「はい、そうしますよ、ゴータマ様」

「しかし、ヴァッチャ、彼らがあなたに尋ねたとしたら、『あなたの目の前にあるこの火は消えました。それは東、南、西、北のどの方向に進んだのですか?』あなたはどう答えますか?」

「当てはまりません、マスター・ゴータマ。火は草や丸太を燃料にしていました。それが尽きて燃料がなくなったら

加えて、火は燃料不足のために鎮火したと考えられています。」

「同じように、ヴァッチャ、リアライズド・ワンを説明するあらゆる形態は、根元で切り落とされ、ヤシの切り株のように作られ、抹消され、将来発生することができません.実現した人は、形の点で数えることから解放されます。それらは海のように深く、計り知れず、理解するのが難しいです。「彼らは生まれ変わった」、「彼らは生まれ変わっていない」、「彼らは生まれ変わっていて生まれ変わっていない」、「彼らは生まれ変わっても生まれていない」 - これらのどれも当てはまりません。

リアライズド・ワンを説明するあらゆる感情、知覚、選択、意識は、根元から切り離され、ヤシの切り株のように作られ、消滅し、将来発生することができなくなりました。実現した人は、意識の観点から数えることから解放されます。それらは海のように深く、計り知れず、理解するのが難しいです。「彼らは生まれ変わった」、「生まれ変わっていない」、「生まれ変わって生まれ変わっていない」、「生まれ変わっても生まれていない」、これらのどれにも当てはまらない。

彼がこれを言ったとき、放浪者のヴァチャゴッタは仏陀に言った：

「ゴータマ様、町や村の近くに大きなサルの木があったとします。そして、無常なので、枝や葉、樹皮や新芽、針葉樹が落ちてしまいます。しばらくすると、枝や葉、樹皮や新芽、針葉樹が取り除かれ、純粋に心材になります。同様に、マスターゴータマの調剤は、純粋に心材からなる枝と葉、樹皮と新芽、針葉樹を取り除きます。

さすがゴータマ様！ ……今日から、ゴータマ様が私を、命がけの帰依者として覚えてくださいますように。」

宇宙は永遠です。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

宇宙は永遠ではありません。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

世界は有限です。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

世界は無限です。これが唯一の真実であり、他のアイデアはばかげていますか?」

「でも、マスター・ゴータマに何か信念はあるの？」

「リアライズド・ワンは信念を廃止しました。

リアライズド・ワンは、「これが形であり、形の起源であり、形の終わりである。これが感情、これが感情の始まり、これが感情の終わりです。これが知覚であり、これが知覚の起源であり、これが知覚の終わりである。これが選択であり、これが選択の起源であり、これが選択の終わりです。それが意識であり、意識の起源であり、意識の終わりである。自我、所有欲、またはうぬぼれの根底にある傾向だと私は言います。

「でもマスター・ゴータマ、托鉢者の心がこのように解放されたとき、彼らはどこに生まれ変わるのですか？」

「『生まれ変わった』は当てはまりません、ヴァッチャ」

「じゃあ、生まれ変わったんじゃないの？」

「『生まれ変わっていない』は当てはまりません、ヴァッチャ」

「では、どちらも生まれ変わるのですか、生まれないのですか？」are they both reborn and not reborn?

「『生まれ変わっても生まれなくても』は当てはまりません、ヴァッチャ」

「では、彼らは生まれ変わったのではなく生まれ変わったのでしょうか？」are they neither reborn nor not reborn?

「『生まれ変わっても生まれなくても』は当てはまりません、ヴァッチャ」

「あなたが理解していないのも不思議ではありません、ヴァッチャ、あなたが混乱しているのも不思議ではありません。

この原則は深く、理解しにくく、平和で崇高であり、論理の範囲を超えており、微妙であり、鋭い人には理解できるからです。考え方も、信条も、好みも、習わしも、伝統も違うから、理解に苦しむ。

では、ヴァッチャ、これについてはお返しに聞くから、好きなように答えてくれ。

どう思いますか、ヴァッチャ？目の前で火が燃えているとします。『この火は私の目の前で燃えている』って知ってる？」

「はい、そうしますよ、ゴータマ様」

「『あなたの目の前で燃えているこの火は、何に依存していますか?』あなたはどう答えますか?」

『私の目の前で燃えているこの火は、燃料としての草と丸太に依存して燃えています。』

「目の前で燃えている火が消えたとしよう。『目の前のこの火は消えた』って知ってる？」

「はい」

「しかし、ヴァッチャ、『あなたの目の前にあるこの火は消えました。それは東、南、西、北のどの方向に進んだのですか?』あなたはどう答えますか?」

「当てはまりません、火は草や丸太を燃料にしていました。それが尽きて燃料がなくなったら、

加えて、火は燃料不足のために鎮火したと考えられています。」

「同じように、ヴァッチャ、リアライズド・ワンを説明するあらゆる形態は、根元で切り落とされ、ヤシの切り株のように作られ、抹消され、将来発生することができません。

実現した人は、形の点で数えることから解放されます。それらは海のように深く、計り知れず、理解するのが難しいです。

「彼らは生まれ変わった」、「彼らは生まれ変わっていない」、「彼らは生まれ変わっていて生まれ変わっていない」、「彼らは生まれ変わっても生まれていない」。

これらのどれも当てはまりません。

リアライズド・ワンを説明するあらゆる感情、知覚、選択、意識は、根元から切り離され、ヤシの切り株のように作られ、消滅し、将来発生することができなくなりました。

実現した人は、意識の観点から数えることから解放されます。

それらは海のように深く、計り知れず、理解するのが難しいです。

「彼らは生まれ変わった」、「生まれ変わっていない」、「生まれ変わって生まれ変わっていない」、「生まれ変わっても生まれていない」、これらのどれにも当てはまらない。

彼がこれを言ったとき、放浪者のヴァチャゴッタは仏陀に言った：

「ゴータマ様、町や村の近くに大きなサルの木があったとします。

そして、無常なので、枝や葉、樹皮や新芽、針葉樹が落ちてしまいます。しばらくすると、枝や葉、樹皮や新芽、針葉樹が取り除かれ、純粋に心材になります。

同様に、マスターゴータマの調剤は、純粋に心材からなる枝と葉、樹皮と新芽、針葉樹を取り除きます。

さすがゴータマ様！ ……今日から、ゴータマ様が私を、命がけの帰依者として覚えてくださいますように。」

長部14経　８万年の寿命　　Vipassī仏（28の22番目）

Mahāpadānasutta Dīgha Nikāya 14　大本経　　　英訳The Great Discourse on the Harvest of Deeds

100年の寿命

Paṭhamavagga 　Saṁyutta Nikāya 4.1　　　英訳Austere Practice

生まれたものが死なないということはあり得ない。たとい永く生きたとしても、百歳か、あるいはそれよりも少し長いだけである。

釈尊がいなくても変わらない摂理

Paccayasutta　　Saṁyutta Nikāya 12.20　　英訳Conditios

12.20.3「・・・如来が出現しても、如来が出現しなくても、この宇宙は確立しており、宇宙はdhammaとして確立し、dhammaとして決定したものであり、これを『これに縁ること』という」

一切知者

Pāsarāsisutta　　Majjhima Nikāya 26　　英訳 The Noble Search

　「わたしは一切に打ち勝てる者、一切を知る者である。

　　すべてのものに汚染されず、

　　一切を断つ者となり、渇愛が滅したとき解脱したのである。

　　自ら知ったのであるから、誰を師とあげようか。

　　わたしには師はいない。わたしのような者は存在しない。

　　神をふくめた世界において、わたしと肩を並べる者はいない。

　　わたしは世間で尊敬されるべき者であり、

　　わたしはこの上ない師である。

　　わたしは唯一の正しく目覚めたものであり、清涼であり、

　　安らいでいる。

　　法の輪を転ずるためにカーシー（＝バーナーラシー)の都に行く。

　　無知の闇にしずむ世界で不死の太鼓を打ち鳴らすであろう。」

一切とは、宇宙の原理原則、論理、道理のこと。

知るとは、どんなことでも理法に従って説明できるということ。

議論を楽しむ人の条件

Kathāvatthusutta　7. Mahāvagga 　Aṅguttara Nikāya 3.67　論事経　　英訳Topics for Discussion

光明寺の翻訳では「論事経」は（『増支部』3-68）とあるが、これは3－67の間違い

この前後の間違いが

「サラバ経」（『増支部』3-65）　　　　　　　Sarabhasutta　3.64

「ケーサムッタ経」（『増支部』3-66）　　　　Kesamuttisutta　　3.65

「サーラ経」（『増支部』3-67）　　　　　　　Sāḷhasutta　3.66

「廻諍論」で論理の限界を示して、論争終結を宣言したが、これが逆に相手を苛立たせることになった。

論理を倫理であるかのように語ってしまったからである。

龍樹の失敗は表の倫理を透かして裏の論理を見たからなのであって、

はっきりと紙をひっくり返して、論理は論理的に語るしかない。

龍樹の戦術

仏教の思想を自分の説であるように説くバラモン教系統の医学書などに少しだけ手を入れる再編集を行い、善悪という倫理を題材にして、論理学に仕立てた。

医学書「チャカラ・サンヒター」の論証方法や論証規則を龍樹は批判のターゲットにした。

龍樹の方便心論の論理学を解明して、それに反撃したのがアクシャパーダの「ニヤーヤ・スートラ」

これがニヤーヤ学派の始まりとなる。

釈尊がいなくても変わらない摂理

Paccayasutta　　Saṁyutta Nikāya 12.20　　英訳Conditios

『これに縁ること』とは、対象の領域を物質レベルだけではなく、普遍エネルギーのdhammaレベルまで拡げた枠組の中での因果関係のことを指す。

１つのエネルギー形態は条件が揃うと、他のエネルギー形態に転換する。

その関係性を「縁起説」として説いた。

dhammaとは、宇宙に遍き、重力を持たないダークエネルギーのことであり、これが凝縮して重力を持った意識エネルギーのことであり、それがさらに凝縮して概念となり、言語化された宇宙法則、すなわち摂理のことである。

一切知者

Pāsarāsisutta　　Majjhima Nikāya 26　　英訳 The Noble Search

　「わたしは一切に打ち勝てる者、一切を知る者である。

　　すべてのものに汚染されず、

　　一切を断つ者となり、渇愛が滅したとき解脱したのである。

　　自ら知ったのであるから、誰を師とあげようか。

　　わたしには師はいない。わたしのような者は存在しない。

　　神をふくめた世界において、わたしと肩を並べる者はいない。

　　わたしは世間で尊敬されるべき者であり、

　　わたしはこの上ない師である。

　　わたしは唯一の正しく目覚めたものであり、清涼であり、

　　安らいでいる。

　　法の輪を転ずるためにカーシー（＝バーナーラシー)の都に行く。

　　無知の闇にしずむ世界で不死の太鼓を打ち鳴らすであろう。」

一切とは、宇宙の原理原則、論理、道理のこと。

知るとは、どんなことでも理法に従って説明できるということ。

嘘をつかない釈尊　　　

Sāmaññaphalasutta　　Dīgha Nikāya 2　　英訳The Fruits of Recluseship

2.44「偽りを語ることを捨て、偽りを語ることから離れており、沙門ゴータマは真実を語る者であり、真実に従い、正直で、信頼に値し、世間を欺むくことがない」　　　　不妄語の戒律を守る者

行住坐臥　　　語る順序が重要である

偽りを語ることを捨てる　　　決心

偽りを語ることから離れる　　人や場所から離れる

真実を語る　　　　　　　　　自己から他者へ　　　　　　精進

誠実な態度を貫く　　　　　　言動の実践

生じる性質のものは滅する性質のものである

Dhammacakkappavattanasutta Saṁyutta Nikāya 56.11　　転法輪経　　　英訳Setting in Motion the Wheel of the Dhamma

56.11.15「生じる性質のものは滅する性質のものである」

コーンダンニャに貪りと汚れを離れたdhammaを見る眼が生じた

滅する性質のものは、諸々の事象

Mahāparinibbānasutta　　Dīgha Nikāya 16　　大般涅槃経　　　英訳　The Great Discourse on the Buddha’s Extinguishment

16.6.7「滅する性質のものは、諸々の事象なのである。怠ることなく修行しなさい」

3時制（過去／現在／未来）を語れ

Kathāvatthusutta　　Aṅguttara Nikāya 3.67　　　　　　英訳　Topics of Discussion

3.67.1「過去については、過去の時に、このようであったと、未来については、未来の時にはこのようであろうと、現在については、今このようである、と語らねばならない

因果と縁起の基本　此縁性

Ariyasāvakasutta　Saṁyutta Nikāya 12.49　　　　聖者弟子経　　　英訳　The Noble Disciple (1)

12.49.6と19

１これがあるときにかれがある　　　　　When this exists, that comes to be

２これが生じるからかれが生じる　　　　with the arising of this, that arises

３これがないときかれがない　　　　　　When this does not exist, that does not come to be

４これが滅するからかれが滅する　　　　 with the cessation of this, that ceases.

49-6. ｚimasmiṃ sati idaṃ hoti, imassuppādā idaṃ uppajjati.

『これがあるときこれがある。これの生起からこれが生ずる。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
‘imasmiṃ		代	代的	中	単	処絶	これ
sati idaṃ hoti, imassuppādā idaṃ uppajjati. (49-3.)
idaṃ		代	代的	中	単	主	これ
imassa		代	代的	中	単	属	これ

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
‘kiṃ		代	代的	中	単	副対	何、なぜ、いかに
nu		不変	‐	‐	‐	‐	いったい、たぶん、～かどうか、～ではないか
kho		不変	‐	‐	‐	‐	じつに、たしかに
kismiṃ		代	代的	中	単	処絶	何、誰
sati	as	現分	ant	中	単	処絶	ある、なる
kiṃ		代	代的	中	単	主	何、なぜ、いかに
hoti,	bhū	動	現	能	単	三	ある、なる、存在する
kissa		代	代的	中	単	属	何、誰
uppādā	ud-pad	名	a	男	単	奪	生起
kiṃ		代	代的	中	単	主	何、なぜ、いかに
uppajjati?	ud-pad	動	現	能	単	三	起こる、生ずる、発生する

49-19. 　‘kiṃ nu kho kismiṃ asati kiṃ na hoti, kissa nirodhā kiṃ nirujjhati?

　『いったい、何がないとき何がないのか。何の滅尽から何が滅するのか。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
‘kiṃ nu kho kismiṃ asati kiṃ na hoti, kissa nirodhā kiṃ (49-3.)
a		不変	‐	‐	‐	‐	（否定の接頭辞）
na		不変	‐	‐	‐	‐	ない
nirodhā	ni-rudh　受	名	a	男	単	奪	滅、滅尽
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
nirujjhati?	ni-rudh　受	動	現	能	単	三	滅する、滅ぶ

imasmiṁ sati idaṁ hoti,

imassuppādā idaṁ uppajjati.

kismiṁ asati kiṁ na hoti,

kissa nirodhā kiṁ nirujjhati

imasmiṁ　これを

sati　　　　気づき続けている　maindfullness　　

idaṁ　　　　あれ

hoti：[hū + a] to be； exists.　　　 hoti：= bhavati　　 bhavati：[bhu + a] becomes; to be; exists

imassuppādā　　これがカタチになる時　

uppāda：[m．] rising； coming into existence　飛び出る

Uppajjati，[ud + pajjati of pad] to come out，to arise　　

kiṃ：[rel．or inter．pron．] what?

kissa：[kiṃ の sg．gen．] 何の，何で

nirodha：[m．] cessation； the final truth

Nirujjhati，[Pass．of nirundhati （nirodhati） ni+rundhati] to be broken up，to be dissolved，to be destroyed，to cease

これに気づき続けていると、それは物質エネルギーになる

それが形に飛び出ると、それは物質として現れる

何にも気づき続けていないと、物質エネルギーは生まれない

何もかも中断すると　物質は崩壊する

指示代名詞の用法

「これ」はその場限りに有効なので、見逃すと「これ」が何だかわからなくなる。

「これ」は生滅するので、認識対象と性質と同じなので、対象を指すのに適切な語句となる。

生まれることによって老死がある

Mahāpadānasutta　Dīgha Nikāya 14　　大譬喩経　　英訳　The Great Discourse on the Harvest of Deeds

生まれることがなければ、老いることも死ぬこともない。

生まれることが滅すれば、老いることも死ぬことも滅する。

生まれることによって、老死がある。

jāti nāma, yatra hi nāma jātassa jarā paññāyissati, byādhi paññāyissati, maraṇaṃ paññāyissatī’ti.

生まれた者には〔必ず〕老いが存在し、病が存在し、死が存在するというのだから。

釈尊の因果関係

１これがあるときにかれがある　　　　　　結果のかれを決めて、原因のあるを導く　　　　　　　　　　　　　因果関係の発見のため

３これがないときかれがない　　　　　　　１の原因と結果を３に代入にして成り立つかどうか確かめる　　　　因果関係の確定のため

縁起説は因果関係ではなく、相依相関関係を意味しているのか？

釈尊の教説の論理は明解ではないから、このような解釈も生まれてくるのか？

釈尊がhotiを使う意味は、「意識エネルギーが物質エネルギーに変換される」ということである。

一切に言及する釈尊の弁証法　　　どのように一切を語るのか

徹底的に分析して弁証法にまとめ上げる

１　断定的に答えるべき問いには断定的に答える　　　一向論

２　分けて答えるべき問いには分けて答える　　　　　分別論

３　反問して答えるべき問いには反問して答える　　　　詰論

４　捨て置くべき問いには捨て置く　　　　　　　　　　止論

順序が重要

一向論の主張を出してきたときには、それを分けて分別論で答える。

たとえば、一切の存在は実有（実際に存在している）であるという主張に対して、一切には意識を持つものと、意識を持たないものがある、と分別して反論する。

意識を持つものには原因があり、意識を持たないものには特有な原因が考えられるので、原因が２種類あるので、「一切は実有１つである」と矛盾するので、一向論を否定することができる。

分別論を出してきたときには、詰論を用いて答える。

四聖諦や12因縁が実有の存在と同じであるとか、異なっているとか説いてくるならば、どちらも正しくない。その理由は、現世の法と同じであれば、苦の極端に陥るであろうし、異なっているとするならば楽の極端に陥ることになろう。「方便心論」

「もしそうだとすれば」と仮定して反論（詰論）することで、無常なものは苦であり、実有でないとすれば涅槃の領域にあることになるので「楽」という極端に陥ることになる。

四聖諦、12因縁は2つの極端を離れた中道であると説くのが仏教であるから、同異を主張するのは矛盾である。

龍樹の限界

龍樹は「方便心論」の中で、具足（完備したもの）という名前で１つの論証を造った。

これは一向論を説く相手に対して分別論＋詰論＋止論を説く手法である。

現代論理学でいうならば、ディレンマを含む帰謬論証の形式である。

しかし、論敵のアートマン論者のアクシャパーダは、この論証を論詰論法（ヴィタンダー）と呼んで、論証の項目から排除した。

相手の主張を帰謬法によって否定するだけの論証は、論証とはいえないと言って切り捨てた。

龍樹は相手の説を使って否定したので、論敵は腹を立て、高慢な龍樹を嫌った。

具体的には「ニヤーヤ・スートラ1.1.31」の註釈「ニヤーヤ・バーシャ」では

「自分の知性が優れていることを知らしめようとして、他人の知性を軽蔑するために、用いるのである」と書かれている。

感受作用は自己ではない

Mahānidānasutta Dīgha Nikāya 15　　　大縁経　　　　英訳　The Great Discourse on Causation

感受作用は3種類あり、1つがあるときには後の2つは感じられないので、感受作用は生滅の性質を持つので、感受作用が自己というのは誤謬である。

釈迦はアーナンダに、まず十二縁起（十二因縁）を、続いてその構成要素に関する個別論として、三有、四取、六愛、六受、六触、名色の二元論、九有情居（欲界～非想非非想処）、八解脱等を述べる。

因果関係を語れる人は、この世がどのようであるかあるがままに示すことができるので、聴いた人は納得せざるを得ない。

Vedanaṃ vā hi, ānanda, attānaṃ samanupassamāno samanupassati

アーナンダよ、じつに、誤認者は、あるいは感受を我と誤認します。

傾聴してもいいのは喩えて言える話　　　釈尊の演繹論理学

Kathāvatthusutta　　Aṅguttara Nikāya 3.67　　　　　　英訳　Topics for Discussion

3.67.6　喩えて言える人であるならば、ただひとつのdhammaを自ら知りabhijānāti：[abhi + ñā + nā] 体験による自証、ただひとつのdhammaをあまねく知りparijānāti：[pari + ñā + nā]（完全な認知）、ただひとつのdhammaを捨て去りPajahati [pa+jahati]（放棄）、ただひとつのdhammaを実現sacchikaroti[sacchi明瞭に + karする + o]する。

dhammaを自ら知り　　　　　　唯一の結論が導かれる　　　　　　　　　　私説では、体感でdhammaは意識エネルギーであることを覚り、

dhammaをあまねく知り　　　分別論と組み合わされた推論の結論　　　　私説では、完全な認識でdhammaは普遍エネルギーであることを覚り

dhammaを捨て去り　　　　　詰論を用いた推論である。　　　　　　　私説では、dhammaに依拠してきたことを捨ててエネルギーが０の領域に至る

dhammaを実現する　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　私説では、dhammaエネルギーが０の領域に至る

唯一の結論が「涅槃に苦も楽もないのは、涅槃には意識が存在しないからである。『方便心論』より」だというならば、龍樹の意識という言葉の定義を知りたい。

自ら知るとは、前提の中に結論が含意されることを意味すると著者は解釈するが、自ら知るabhijānātiとは強い智慧（suta-mayā paññāやcintā-mayā paññāに比べて強い智慧であるbhāvanā-mayā paññāのこと）、すなわち体験による自証のことだとすると、前提から必然的に結論が出てくるものではなく、自証には修行が必要である。

涅槃は「煩悩の炎を吹き消した寂静の境地」と「心が動かなくなる」ことは結びつくと想うが、

「涅槃には意識が存在しない」とが論理的に結びつかないと私は想う。

理由は意識には多層の段階があるからである。

涅槃に至った瞬間は表層意識を使うこともなく、意識が存在しないように見えるかもしれないが、深層意識はあるので、意識が存在しない、ということはできないのではないか？

阿羅漢が涅槃に至たり、表層意識を基準にせずに深層意識を基準にして、状況により表層意識を使って死ぬまで生きると想うが、涅槃に至ると心路citta vithiの javana citta速行心に至らなくなるがそれ以前の８cittaはあるので、意識が存在しないということはできない、と想う。

「方便心論」でいう涅槃にない意識とは７段階の「速行心」のことを指すのではないか？

３種類の感受作用のタグ

Mahānidānasutta Dīgha Nikāya 15　　　大縁経　　　　英訳　The Great Discourse on Causation

にあるように感受作用は3種類あり、「苦でも楽でもない」の感受作用（データにつけるタグ）があるので、意識をもっていても、苦楽がないことはあるので、「何であれ存在が意識をもっているなら、その時に限って、苦楽がある」というのは無理な命題ではないか？

‘tisso kho imā, āvuso, vedanā sukhā vedanā dukkhā vedanā adukkhamasukhā vedanā.

友よ、じつにこれら三つの感受があります。楽なる感受、苦なる感受、不苦不楽なる感受。

私説では、著者が「釈尊は論理学を理解したものは解脱できると述べている」と言うのは早とちりである。

解脱するためには、まずは五蘊の感覚や感情や思考などの習慣のパターンを掃除することから始める必要がある。

またdhammaを体感して、それを捨て去ることも必要である。

論理的にわかったからといって満足して心が穏やかになっても、回路を除去できるのは実践である。

dhammaをあまねく知り　　　分別論と組み合わされた推論の結論　　　　

私説では、完全な認識でdhammaは普遍エネルギーであることを覚り、このdhammaによって道に導かれ、最終段階の解脱では、そこからも離脱することで、輪廻転生から離れる。

身体機能が働かないことが楽

Dvayatānupassanāsutta　Sutta Nipāta 3.12　　英訳　Contemplating Pairs

761　自己の身体を断滅することが楽である。

私訳　寝ている時のように6感覚を機能させないのが楽であることを理解する

Sukhanti diṭṭhamariyehi,　　　　　楽と理解する

Sakkāyassuparodhanaṁ; 　　　　　Sakkāya[sat-kāya]存在する体、性格　ssupa　supati：[sup + a]睡眠　　rodhanaṁ障碍

身体を働かせない（睡眠しているように機能しない）

759、760では五感や意思感覚の悦びが楽であり、それらが滅するのが苦であると人間界と天界では思われている、とあるので、

それに反して、身体の6感覚機能が働かないのが楽である、と解釈する。

釈尊が説かないダンマ　　無記　　　寂静に至るものを説き、至らぬものは説かない

Poṭṭhapādasutta Dīgha Nikāya 9 　ポッタパーダ経 英訳　To Poṭṭhapāda　

9.25“Abyākataṁ kho etaṁ, poṭṭhapāda, mayā: ‘sassato loko, idameva saccaṁ moghamaññan’”ti.

poṭṭhapādaよ、私が無記にしているものは、『この幻想の真実とも言える「永遠なる世界」』である。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
Abyākataṃ	a-vi-ā-kṛ	過分	a	中	単	主	解答されざる、（男性名詞として）無記
kho		不変	‐	‐	‐	‐	じつに、たしかに
etaṃ,		代	代的	中	単	主	これ
poṭṭhapāda,		名	a	男	単	呼	人名、ポッタパーダ
mayā –		代	代的	‐	単	具	私
‘kiṃ		不変	‐	‐	‐	‐	（疑問詞）
pana,		不変	‐	‐	‐	‐	また、しかし、しからば、しかも、しかるに、さて
bhante,	bhū	名現分	ant（特）	男	単	呼	尊者よ、大徳よ
sassato		形	a	男	単	主	常の、恒常の、常住の
loko,		名	a	男	単	主	世間、世界
idam		代	代的	中	単	主	これ
eva		不変	‐	‐	‐	‐	まさに、のみ、じつに
saccaṃ		名	a	中	単	主	真実
mogham		形	a	中	単	主	空虚、無用、愚鈍
añña’n		形	代的	中	単	主	別
ti?		不変	‐	‐	‐	‐	と、といって、かく、このように、ゆえに

Abyākata　無記

mayā　　　私

sassato loko　　永遠の世界

idaṁ　　　　　　これ

sacca　　　　　　真実

mogha　　　　　　空虚

maññanā　　　　　幻想、想像

無記とは釈尊が言及を避けた事柄。回答内容を経典に記せないので、漢語で「無記」と表現される。

『主として形而上学的な、「世界の存続期間や有限性」「生命と身体の関係」「修行完成者（如来）の死後のあり方」といった仏道修行に直接関わらない・役に立たない関心についての問いに対して、このような態度が採られた。』

と日本仏教界では解釈されるが、釈尊が言及しない理由は、修行者が釈尊の言葉を誤謬して解釈するからである。

「永遠なる世界」はあるとも、ないともいえる。

あるというのは、涅槃、永遠なる400億年の宇宙周期、31領域の輪廻。

ないというのは、変わらぬ魂、実体のある自己。

永遠なる世界は宇宙法則であるが、釈尊が説くと誤解される可能性が高いので自分から説かないダンマである。

何故ならば釈尊は「道」を歩む修行者に語る師であるので、あるといえば常住論者（sassatavādā）に同ずることになり、ないと答えれば断滅論者（ucchedavādā）に同ずると修行者は思い、修行の障碍になるからである。

釈尊は形而上学的見解に黙して語らないのではない、修行のための基礎にもならず、厭離・離欲・滅尽・寂静・智通・正覚・涅槃に役立たないものを語らないのである。

上記のように釈尊が説かないのは、修行者自身が答えを見つけることが修行の目的である、と考えているためなのだろうか？

無記の意味　　　　涅槃を知るため、倫理の枠をつくる

存在の外側の０が必要な理由

自分の眼球を自分で見ることはできない。

自分の心を自分で知ることはできない。

存在の中では存在を知ることができない。

存在を知るためには、存在の外側に出ることではじめて知ることができる。

「ある」ことを知るためには、「ない」地点に立つ必要がある。

これには修行が必要である。

すべての原因であるカルマを認識することで、倫理の枠を作る

夢想やその原因となるカルマの種を認識できる釈尊は、夢であろうと妄想であろうと、認識されたものは何でも因果関係を語りうるので、

どの哲学に対してもそのように論理づけるメカニズムを本人の経験と共にあらゆるモノを認識して語ることができる。

しかし釈尊は修行の基礎となるモノ（たとえば四聖諦）しか語らないという基準を宣言して、倫理の枠を決めた。

毒矢のたとえと無記

Cūḷamālukyasutta　Majjhima Nikāya 63　　小マールキャ経　英訳　The Shorter Discourse to Mālunkyāputta

「毒矢のたとえ」と「十無記」について記述されている。

釈迦が舎衛城の祇園精舎に滞在している際に、マールキヤプッタに、

世界は永遠であるのか

世界は有限であるのか

生命と身体は同一か

修行完成者（如来）は死後存在するのか

といった疑問が生じたたので、これらの疑問に釈迦が答えてくれるなら修行を続けるが、答えてくれなければ修行を放棄しようと考えつつ、釈迦にこれらについて問う。

それに対して釈迦は、「私の下で修行すればそれらについて説くと私は話したか、またマールキヤプッタはそのような期待でこの修行を始めたのか」と問い返す。マールキヤプッタ尊者はどちらも違うと否定する。

釈迦は「もし私にそうした疑問について説いてもらえない限り、私の下で修行しないと言う人がいたとすれば、その人は私にそれについて説いてもらう前に、寿命を迎えてしまうことになるだろう」

「例えば、毒矢に射抜かれた人がいて、その友人同僚・血縁者たちが内科医・外科医にその手当てをさせようとしているところで、その当人が答えを知るまで手当をしないというならば、その人はその答えを得る前に死んでしまうのと同じように」

「それらがどうであろうと、生・老・死、悲しみ・嘆き・苦しみ・憂い・悩みはあるし、現実にそれらを制圧する（すなわち、「毒矢の手当てをする」）ことを私は教えるのである」

「故に、私は説かないことは説かないし、説くことは説く」

「先の疑問の内容は、目的にかなわず、修行のための基礎にもならず、厭離・離欲・滅尽・寂静・智通・正覚・涅槃に役立たないので、説かない」

「逆に役に立つ、四聖諦は説く」

「この説かないものと、説くものとの違いを、了解せよ」と諭される。

未曾有の宇宙原理

Gotamasutta　 Saṁyutta Nikāya 12.10　ゴータマ経　　英訳　Gotama

12,10.15　　pubbe ananussutesu dhammesu　　以前に　知られていない　ダンマ

未曾有の宇宙の原理とは無明によって起こる12縁起説のことです。

‘Samudayo, samudayo’ti kho me, bhikkhave, pubbe ananussutesu dhammesu cakkhuṃ udapādi, ñāṇaṃ udapādi, paññā udapādi, vijjā udapādi, āloko udapādi.

比丘たちよ、『生起』『生起』と、私に、未だ聞いた事のない法に関する眼が生じ、智が生じ、慧が生じ、明智が生じ、光明が生じました。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
‘Samudayo,	saṃ-ud-i	名	a	男	単	主	集、生起、原因
samudayo’	saṃ-ud-i	名	a	男	単	主	集、生起、原因
ti		不変	‐	‐	‐	‐	と、といって、かく、このように、ゆえに
kho,		不変	‐	‐	‐	‐	じつに、たしかに
bhikkhave,	bhikṣ	名	u	男	複	呼	比丘
pubbe		不変	‐	‐	‐	‐	前に、以前に
ananussutesu	an-anu-śru	過分	a	男中	複	処	未聞の
dhammesu	dhṛ	名	a	男中	複	処	法
cakkhuṃ		名	us	中	単	主	眼
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
udapādi,	ud-pad	動	ア	能	単	三	生じる、発生する
語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
ñāṇaṃ	jñā	名	a	中	単	主	智、智慧
udapādi,	同上
paññā	pra-jñā	名	ā	女	単	主	智慧、般若
udapādi,	同上
vijjā	vid	名	ā	女	単	主	明智
udapādi,	同上
āloko		名	a	男	単	主	光明
udapādi.	同上

行sankhāraとは何か？

12縁起の行sankhāraは潜在的形成力、カルマの種、無色界にあるgati

五蘊の行sankhāraは色界にある自動反応アプリケーション

諸行無常の行sankhāraは上の２つを合わせたもの

大智度論　　　行sankhāraとは業kamma（行為）　　潜在的形成力

龍樹による、『摩訶般若波羅蜜経』（大品般若経、二万五千頌般若経、梵: Mahā-prajñāpāramitā Sūtra）に対する、百巻に及ぶ注釈書である。初期の仏教からインド中期仏教までの術語を詳説する形式になっているので、仏教百科事典的に扱われることが多い。漢訳は鳩摩羅什

12縁起説

Paṭiccasamuppādasutta 　Saṁyutta Nikāya 12　　　　　英訳　Dependent Origination

nāmarūpaとは、意識エネルギーのこと　　　　普遍エネルギーが意識エネルギーに転換したプロセス

近代以降は『対象という「在るモノ」を主体が認識する』と考えてきた。

12縁起説は、「普遍エネルギーが意識エネルギーの各形態に転換するプロセス」を認識と呼ぶ。

そして認識が決まった回路を多用することで、アウトプットにエネルギーが堆積し、それが物質エネルギーとなり、ついには物質へとエネルギー転換していく、と説く。

12.2.16順観と逆観

「在るもの」を基準にして生きていると、エネルギー０に向かうことを恐れる。

エネルギー０が虚無だと勘違いして、逆観は虚無に吸い込まれると想うからである。

虚無はヒトの頭の中でしか存在しない。

エネルギー０の世界は6感覚機能に拘束されることがない。

最後の弟子Subhaddaスバッダ

Mahāparinibbānasutta　　Dīgha Nikāya 16　　大般涅槃経　　　英訳　The Great Discourse on the Buddha’s Extinguishment

16.5.27

Ekūnatiṁso vayasā subhadda,

Yaṁ pabbajiṁ kiṅkusalānuesī;

Vassāni paññāsa samādhikāni,

Yato ahaṁ pabbajito subhadda;

Ñāyassa dhammassa padesavattī,

Ito bahiddhā samaṇopi natthi.

ñāya：m．[Sk．nyāya] 理趣，正理，真理、正しい方法、システム、

ñānaとの関連性

正しいやり方とダンマの中で活動してきた。

At twenty-nine years, Subhadda,

I went forth a seeker of what is good,

More than fifty years ago,

Wherefore I am truly gone forth, Subhadda.

Existing in the realm of the right Teaching

Outside of this there is no true ascetic,

自己attā より愛しい者　　　コーサラ王のパセーナディ王とマッカリカー妃

Mallikāsutta　　Saṁyutta Nikāya 3.8　マッリカー経　　英訳　　With Queen Mallikā

“Sabbā disā anuparigamma cetasā,　　　　心がすべての方向に探索に出ても

Nevajjhagā piyataramattanā kvaci;　　　　自己より愛しいものをどこにも見つけることはない

Evaṁ piyo puthu attā paresaṁ,　　　　　同じように各自が自己を愛しんでいる

Tasmā na hiṁse paramattakāmo”ti.　　　よって、自己を愛する者は他を害してはいけない

piyatara：[adj．] more dear

attanā、attā：'self，ego，personality

kvaci：Somewhere

piyo：Dear，beloved

puthu：[ind．] separated； individual　

tasmā：[ind．] therefore．

parama：[adj．] superior； best； excellent

attakāma：[m．] love of self

Hiṁsati， [hiṁs，Vedic hinasti & hiṁsanti] 1．to hurt，injure

“Having explored every quarter with the mind,

one finds no-one dearer than oneself.

Likewise for others, each holds themselves dear;

so one who loves themselves would harm no other.”

意識が輪廻すると誤謬したサーティ

Mahātaṇhāsaṅkhayasutta　　Majjhima Nikāya 38　　大愛尽経

英訳　The Greater Discourse on the Complete Elimination of Craving

意識viññānaが変わらず、輪廻転生するという見解をする漁師の息子のサーティに釈尊がその誤謬を説く

意識のエネルギー転換の法則　　　流転門と還滅門

Pāsarāsisutta　　Majjhima Nikāya 26　罠聚経　　　　　別名Ariyapariyesana Sutta聖求経

英訳　The Noble Search　　　　

ブッダが聖なるものを求めて出家をする経

ブッダが出家を決意、ニルバーナ（涅槃）の考察、アーラーラ仙人、梵天勧請のエピソード

成道後、ブッダはウパカに初めて説法するがうまくいかず

初転法輪、ブッダが五人の比丘の元へ行き、法輪をまわす

マーラ悪魔との対話

Ālayarāmā kho panāyaṃ pajā ālayaratā ālayasammuditā.

Ālayarāmāya kho pana pajāya ālayaratāya ālayasammuditāya duddasaṃ idaṃ ṭhānaṃ yadidaṃ idappaccayatā paṭiccasamuppādo

（世間の）人々は、執着に歓喜し、執着を愛し、執着を好ましく思っている。そのような執着に歓喜し、執着を愛し、執着を好ましく思っている人にとって、此縁性（意識を向け続けていると物質エネルギー転換する）、縁起の法（条件が揃うとエネルギー転換して、天から地が誕生する性質）という理論は受け入れがたいものである。

idappaccayatā 　　　意識を向け続けていると物質エネルギー転換する

paṭiccasamuppādo　　普遍エネルギーが物質エネルギーへ転換する法則

Idampi kho ṭhānaṁ duddasaṁ yadidaṁ—sabbasaṅkhārasamatho sabbūpadhipaṭinissaggo taṇhākkhayo virāgo nirodho nibbānaṁ.

すべての行sankhāraの止息であり、すべての再生の拠り所を捨てるものであり、渇愛の滅尽であり、離欲であり、止滅であり、涅槃である、このような道理も見がたい。

現代文明の都市生活者　　「有」の立場に立つ実在論の哲学　　　学問

科学を発達させ、現代論理学で善悪を判断し、自己を語る人たち

いつも自我がないと落ち着かない人たち

英語を話す人たち　　　口を開くたびにIやWeを言葉にする人たち

自己を主張する人たち

愛着に悦楽を覚える人たち

自分の本心を隠して語ることができ、自分の本心に気づかないことができる人たち

「われわれは敵を倒して自由を与える」

平和ではなく自由にするのが狡賢い。

わたしの本心を隠すためにわれわれという言葉を使うのが狡賢い

本心は他者から見ることができないので、他者から非難されることはない。

大義名分という言い訳があれば、隠れた欲望を語ることなく、他者を踏みつけることができる。

強力な自我意識が「われわれ」で始まる文体を作り出し、他者たちと自分たちを分割することで、理念のために他者たちを犠牲にできるのだ。

ミャンマーや昔の日本では、自我意識は執着のことであり捨てるべきものである。

現代文明生活者には「そのまま変わらないもの」がある。

魂、理性、知性、自己である。

不変、同一性、普遍的、一般性があるもの、

すなわち、変わらす、同じで、どこにでも、永遠に、ある表層意識のことだ。

考える私が妄想の根本　　我思う故に我ありを破壊せよ

Tuvaṭakasutta　　Sutta Nipāta 4.14　　スッタニパータ　14迅速　　　　英訳　The Quick Way

915 太陽の親族、聖なる者に、＜厭い離れること＞と＜寂静の境地＞について尋ねます。どのように観察することで、修行僧は涅槃に至るのですか、世間において、何ものにも執着することなく。

916 （釈尊が答えた）＜考える私が存在する＞という、＜迷いを生む妄想の根本＞のすべてを破壊せよ。内部にある、いかなる渇愛の思いをも取り除くために、常に心して、道を学ぶことにつとめなさい。

「われは人間的思考の運動（ある⇔ない）によって考え、無常の世であるのに「有る」という迷わせる不当な思惟の根本による運動をすべて制止せよ。内に在するいかなる妄執をもよく導くために、この無常を知り、執することなく常に心して学べ。

Mantā asmīti sabbamuparundhe;

Yā kāci taṇhā ajjhattaṁ,

Tāsaṁ vinayā sadā sato sikkhe.

mantā：Wisdom

sabbamuparundhe　　　完全にuparundheブロックする

ajjhatta：a. [adhi-atta，Sk. adhyātman] 自の，内の

Yā　　whatever

kāci some

Tāsaṁ 三人称

vinayā 　　discipline； the code of monastic discipline　　　律

sadā 　　　　 ever； always．　　　　　　　　　　　　　　　　常に

sato 　　　　 Recollecting，mindful，attentive，thoughtful，conscious　　覚知

sikkhe　　　　 sikkhati：[sikkh + a] learns； trains oneself； practises

One should completely extract

The root of proliferation増殖 and reckoning思考—

The notion, “I am the thinker”.

One should train to dispel whatever craving

There is inside, ever mindful.

我思うの「我」は表層意識のことであり、この「我」が執着を持つことで自我となり、対象を持つことで、主体となり、認識の基軸となり、ここから不変の自己や意識という勘違いが始まる。

そしてこのような主体が虚妄の思想を生み出していく。

因果律を持つ者と盲信する者

都市文明人にとっては、自我意識が勝者の象徴であり、この主体によって自他や優劣を区別する

自由気ままに自己を語り、嘘はバレず、欲望のままに生きていける。

それらを縛るものが良識や理性、そしてその先にある「神」である。

自己を説く者は、自らの中に唯一絶対の神を持つ者である。

その神が良心を維持しているが、目に見えるものではないので、効果は類推するしかない。

類似性を使って既知の因果関係を、良心や神の因果関係に当てはめて、推察するのである。

しかし、本当に類似性があるのかは分からない。

一番具体的な推察は知りたいことを試してみて、その結果をみることである。

たとえば理念を掲げた起こした言動の結果を精査することで、理念が現実化するものかどうかを推察できる。

因果律は自己を語らない人のための理法であり、

神は因果律をもたない人のための絶対律である。

自己を語らず因果の理法に従うか、自己を語りながら「苦しみを減らすための善悪」の判断を身につけるか

つまり、因果を説く者は自己を説いてはいけない

ここから「自己を説いてはいけない」にスポットライトを当てて、仏教は自己はないと無我説を主張する、という考えが生まれてきた。

また自己という言葉を述べてはいけない、と解釈して、部派仏教の犢子部は輪廻の主体をアートマンではなく、Pudgala（Sk）だとした。

無我説と科学の共通点

自己や主体を記述しないで表現するので、魂は存在しないと主張した。

しかし、自己や心や主観や主体は自身で知覚できないことと、脳も脳自身を知覚できないことを根拠に、脳が自己であると解釈した。

「心と身体の哲学」S.プリースト

因果の理法は自己を語らない　　　　４つの食べ物　　　語る内容により、文体を変化させろ

Moḷiyaphaggunasutta 　SN 12.12　　モーリヤ・パッグナ経　　　　　　英訳　The Discourse to Moḷiyaphagguna

４つの食べ物とは、物質の食物、接触、意思manosañcetanā、識viññānaである。

cf.　 manosañcetanāとは、manoはメンタル界、sañcetanā は「san」 (lobha、dosa、moha)がある意思cetanā、

「誰が識viññānaを食べるのか」とは言わない。

「何のために識viññānaという食べ物があるのか」と言う。

「誰が識viññānaを食べるのか」とは言わない。

「何のために識viññānaという食べ物があるのか」と言う。

もしくは「識viññānaを食べたら何があるのか」と言う

肉体、幽体、意識体、霊魂体に対応する

manoはメンタルの、sañcetanā は、「san」 (lobha、dosa、moha)がある意思、

領域	論・対話・会話	具体例	構文	目的と自己
無色界	存在論　哲学	「～がある」「～がない」	There are A there are not A	構成要素を決める自己はない
色界	認識論　討論・問答	「～は・・・である」	S+V+C S＝C	２つの関係をつなげる相手の言う自己はある
欲界	日常会話	「～が・・・する」	S＋V＋O	主語が目的を行う

12.12.2-3

“Cattārome, bhikkhave, āhārā bhūtānaṁ vā sattānaṁ ṭhitiyā sambhavesīnaṁ vā anuggahāya. Katame cattāro? Kabaḷīkāro āhāro oḷāriko vā sukhumo vā, phasso dutiyo, manosañcetanā tatiyā, viññāṇaṁ catutthaṁ. Ime kho, bhikkhave, cattāro āhārā bhūtānaṁ vā sattānaṁ ṭhitiyā sambhavesīnaṁ vā anuggahāyā”ti.

Evaṁ vutte, āyasmā moḷiyaphagguno bhagavantaṁ etadavoca: Variant: moḷiyaphagguno → moḷiyaphagguṇo (bj); moliyaphagguno (sya-all, pts1ed, pts2ed)“ko nu kho, bhante, viññāṇāhāraṁ āhāretī”ti?

“No kallo pañho”ti bhagavā avoca:

“‘āhāretī’ti ahaṁ na vadāmi. ‘Āhāretī’ti cāhaṁ vadeyyaṁ, tatrassa kallo pañho: ‘ko nu kho, bhante, āhāretī’ti? Evañcāhaṁ na vadāmi. Evaṁ maṁ avadantaṁ yo evaṁ puccheyya: ‘kissa nu kho, bhante, viññāṇāhāro’ti, esa kallo pañho. Tatra kallaṁ veyyākaraṇaṁ: ‘viññāṇāhāro āyatiṁ punabbhavābhinibbattiyā paccayo, tasmiṁ bhūte sati saḷāyatanaṁ, saḷāyatanapaccayā phasso’”ti.

“Monks, these are the four kinds of food1, which maintain beings that have come into existence and support those who are seeking existence. What four? Edible food, whether coarse or subtle; sense-contact is the second; mental volition is the third; consciousness is the fourth. Monks, these are the four kinds of food which maintain beings that have come into existence and support those who are seeking existence.”

When this was said, Venerable Moḷiyaphagguna said to the Blessed One, “Bhante, who feeds on consciousness-food?”

“That is not a valid question,” the Blessed One said. “I do not say ‘One feeds.’ If I said, ‘One feeds,’ then this would be a valid question: ‘Bhante, who feeds on consciousness-food?’ But I do not say that. Since I do not say that, if someone asked, ‘Bhante, what is consciousness food for?’ then that would be a valid question. And the proper explanation would be, ‘Consciousness is the food based on which there is the production of further existence in the future; and when that has come to be, then there are the six senses; and based on the six senses there is sense-contact.’”

無我と非我

自己　attan　　　無我　anattan

anattanの２つの意味

１　自己はない　　無我

２　自己ではない　非我

釈尊の自己を求めよ、との整合性

パーリ経典の３つの文の形式

１　哲学説を述べる文の形式　　　存在論　　縁起説　四聖諦　　　　　「何がある、何がない」　　「生じる性質のものは滅する性質のものである」

２　討論や問答の文の形式　　　　認識論　　　　　　　　　　　　　　　「～は・・・である」

３　日常会話の文の形式　　　　　日常の意思伝達　　　　　　主体を使う　　「～が・・・する」

自己はあるのかないのか、と問うことができるであれば、自己は生じ滅する存在であるが、釈尊にとって自己は生じ滅するものではない。

自己はないとは語らないし、自己はあるとも語りえなかった。

釈尊は自己がなくても生きていけることを体感していたし、自己を持って生きていたことも体感していた。

因果律に従って生きていくだけで、自己に執着する人が理想とする、自己を確立して強い意志を保つ自由人のような生き方ができるのを知っている釈尊は、なぜ自己を持ったり、説く必要があるのであろうか。

自己に関しては語り得ぬものとして沈黙を守る。語っているように見えるのは相手に合わせて話を勧めているためである。

体、感覚、概念、パターン、認識は「わたし」ではない

Cūḷasaccakasutta　Majjhima Nikāya 35　小サッチャカ経　　　英訳　The Lesser Discourse to Saccaka

コーサラ国なので懲罰を受ける時などの例を上げて、

「体はわたし自身だとう言うが、体はこのようであれ、もしくはこのようであるな、というようにコントロールすることができるのか？

自分の自由にならない体は自己attāではない」、と釈尊がサッチャカを諭す。

“Taṁ kiṁ maññasi, aggivessana, yaṁ tvaṁ evaṁ vadesi: ‘rūpaṁ me attā’ti, vattati te tasmiṁ rūpe vaso—evaṁ me rūpaṁ hotu, evaṁ me rūpaṁ mā ahosī”ti? Evaṁ vutte, saccako nigaṇṭhaputto tuṇhī ahosi. Dutiyampi kho bhagavā saccakaṁ nigaṇṭhaputtaṁ etadavoca: “taṁ kiṁ maññasi, aggivessana, yaṁ tvaṁ evaṁ vadesi: ‘rūpaṁ me attā’ti, vattati te tasmiṁ rūpe vaso—evaṁ me rūpaṁ hotu, evaṁ me rūpaṁ mā ahosī”ti?

“What do you think, Aggivessana? You say ‘The body is my self.’ Do you exercise control in that body, determining ‘May my body be like this, may my body not be like that’?” When this was said, Saccaka was silent. A second time the Blessed One said to Saccaka, “What do you think, Aggivessana? You say ‘The body is my self.’ Do you exercise control in that body, determining ‘May my body be like this, may my body not be like that’?”

筏の喩え　　涅槃に渡った後は、dhammaも捨て去る？

Alagaddūpamasutta MN 22 蛇喩経　筏喩経　阿梨吒経 英訳　The Simile of the Viper　

蛇の喩えは、蛇を捕まえる時に首以外の部分をつかむと噛まれて苦しむが、蛇のの首を掴むように釈尊の教えや持戒の重要性を素直に学ぼうとするだけで苦しみを止めて安らぎのこころになることを意味する。

筏の喩え

旅しているとき、周りは危険であるが、川の向こう岸は安全だとします。

しかし、渡船も橋も他の横断手段もありません。

そこで、草や木、枝や葉を集めて筏を作り、その筏を頼りに向こう岸まで安全に渡ろうとします。

無事に渡れた後にも、この筏を担いで、旅を続けるだろうか？

筏は危険な状態から離脱するために必要なものでした。

この筏とはdhammaのこともあります。

これを理解している人は、dhammaのままに任せるのは言うまでもなく、世界の変化に適応してdhammaさえも手放すべき時もありうることさえもあります。

Kullūpamaṁ vo, bhikkhave, dhammaṁ desessāmi nittharaṇatthāya, no gahaṇatthāya. Taṁ suṇātha, sādhukaṁ manasikarotha, bhāsissāmī”ti.

Kullūpama　　　　　筏

desessāmi

nittharaṇatthāya

gahaṇatthāya

suṇātha

sādhukaṁ

manasikarotha

bhāsissāmī

Monks, I will teach you how the Dhamma is like a raft; it is to be used for the sake of escaping, not for the sake of grasping. Listen to this and carefully pay attention; I will speak.”

Evameva kho, bhikkhave, kullūpamo mayā dhammo desito nittharaṇatthāya, no gahaṇatthāya. Kullūpamaṁ vo, bhikkhave, dhammaṁ desitaṁ, ājānantehi dhammāpi vo pahātabbā pageva adhammā.

“In the same way, monks, I have taught you how the Dhamma is like a raft; it is for the purpose of escaping, not for the the purpose of grasping. Monks, I have taught you how the Dhamma is like a raft; those who understand this are to let go even of Dhamma, let alone non-Dhamma.

ゴール（悟り）から始める「空」の講釈

大乗仏教では、この「縁起」のことを「空（無自性）」と表現しました。

自性とは？

物それ自体の独自の本性、すなわち、もの・ことが常に同一性と固有性とを保ち続け、それ自身で存在するという本体、もしくは独立し孤立している実体を「自性sabhāva」といい、それを否定して「無自性」が説かれる。

自性は西洋哲学の実体に相応する概念である。

不二一元論の書『アヴァドゥータ・ギーター』では、自性はブラフマンであるとされている。

説一切有部では、もの・ことや心理作用の一切を、五位七十五法の法に分かち、その各々の自性を説く。

これを批判しつつ大乗仏教が興り、龍樹は、相互否定や矛盾を含む相依に基づく縁起説によって実体的な考えを覆し、自性の否定である「無自性」を鮮明にして、それを「空」に結びつけた。

「苦しみ」があるときに、「苦しみを滅する方法」があり（必要とされ）、

「苦しみ」がなくなれば、「苦しみを滅する方法」もなくなる（不必要となる）のです。

しかし彼らはそこで、その解釈を（まるで掴み損ねた蛇のように）誤ってしまったのです。

中部経典第22経　蛇喩経　　Majjhima Nikāya 22　Alagaddūpamasuttaに、

全ては無常であり、縁起するものであり、その本質は「空（無自性）」である、とあります。

だから、たとえ釈尊の教え（直説）といえども「仮設されたもの」なので、絶対視すべきではありません。

すべては無常なのであり、諸法（この場合は、諸々の「教え」という意味）もまた無我（無自性）です。

それらは、条件によって変化していくものなのだから、その時代（という新しい条件）に即した、新しい教えが必要とされます。

このような思想を背景として、釈尊の死後500年を過ぎてから、新しい経典が次々と創作されるようになりました。

「般若（空）」と「方便（仮設の活用）」が強調され過ぎて、それらは次第に「（方便として説くのならば）何でもあり」になったのです。

しかし釈尊は〈「向こう岸」へ渡ってしまえば、その役目を果たすので「必要が無く」なる〉と説いていますが、

〈「まだ「向こう岸」に渡る前に、大河を渡る前に、その筏を「捨て去って」もよい〉とは説いていません。

ましてや、その「筏」に替わるような「別もの（別の教え）」を勝手に造っても良い、などとは一言も言っていないのです。

むしろ釈尊は、経典の中で弟子たちに、その教えを「一行道（一本道）である」と宣言しています。

つまり、最後には「捨て去るべき」教えではあっても、釈尊が経典の中で説いていた諸々の教えは、

「向こう岸（苦の滅尽）」へ渡るためには、それは、絶対に無くてはならない「必要不可欠な教え」です。

そして、大乗仏教が発見した「空」という教えは、本来は、修行者が「向こう岸」へ渡ってしまって、

最後に、必要のなくなった「筏（諸々の教え）」をバラバラに解体するときに使う「道具（教え）」です。

中部経典 第２２経　　 蛇喩経

元鷹匠の修行者アリッタは、釈尊の教えを間違って理解していました。

　　わたしは世尊によって説かれた教えを、このように理解している。

　　世尊が妨げであると語ったこれらのことを行なっても、必ずしも妨げとはならない、と。

これを聞いた他の弟子達は驚いて、アリッタにその考えを改めるように忠告します。

　　友、アリッタよ、そのように言ってはいけない。

　　世尊を誹謗してはならない。世尊を誹謗するのはよくない。

　　世尊はそのように言うはずがないからである。

　　友、アリッタよ、たしかに世尊は多くの仕方で妨げとなるものごとを語った。

　　そして、それらのことを行えば、確かに妨げとなるのだ。

しかしアリッタは、頑（かたく）なにそれを拒み、自説を手放そうとしません。

そこで釈尊はアリッタを呼んで、［蛇の譬え］を示し、教えを間違って理解することの愚かさを戒めたのです。

　　蛇を捕まえるのに、その「胴体」や「尻尾」を掴むと、蛇は暴れて、その人の手や腕を噛んでしまうだろう。

　　そのために、その人は死ぬか、あるいは死ぬほどの苦痛を受けて、苦しみに苛まれることになるのだ。

　　それは何故か？──それは、蛇を正しく掴むことを知らずに、誤って掴んでしまったからである。

　　蛇も、教えも、それを正しく掴むことによってこそ、不利益を受けることがなくなるのだ。

　　それゆえに、ここで比丘たちよ、

　　何でもわたしが語ったことの意義を理解できるのであれば、

　　それをその通りに保持すべきである。

　　しかし、何でもわたしが語ったことの意義を理解できないのであれば、

　　あなたたちはそれについて、わたしに質問すべきである。

　　あるいは誰でも聡明な比丘たちに問うべきである。

そして、さらに続けて、釈尊は、［筏（いかだ）の譬え］を説きます。

この［筏の譬え］は、釈尊の「教え」の“本質”というものを、明示している教えです。

　　比丘たちよ、筏の譬えの教えをあなたたちに説こう。

　　筏は、渡るためにあるのであって、取って置くためにあるのではない、

　　ということを、これを聞いてよく考えなさい。

　　それでは話そう。

　　たとえば、比丘たちよ、長い道のりを旅してきた人が大河を見たとしよう。

　　こちらは危険で恐ろしく、向こう岸は安全で恐怖はない。

　　そして彼には、こちらから向こうへ渡る船も橋もないとしよう。

　　彼はこう考える。

　　なるほど、これは大河である。

　　こちらは危険で恐ろしく、向こう岸は安全で恐怖はない。

　　そして、こちらから向こうへ渡る船も橋もない。

　　さあ、私は草、木片、枝、葉を集めて筏を結び、

　　その筏に乗って手と足を使って努力して安全に向こう岸へ渡ろう、と。

　　そうして、比丘たちよ、この人は草、木片、枝、葉を集めて筏を結び、

　　その筏に乗って手と足を使って努力して安全に向こう岸へ渡る。

　　向こう岸に渡った彼は、こう考えるだろう。

　　この筏は、大変わたしの役に立った。

　　わたしはこの筏に乗って手と足を使って努力して安全に向こう岸に渡った。

　　さあ、わたしはこの筏を頭に乗せ、あるいは肩に担いで行きたいところに出発しよう、と。

　　比丘たちよ、あなたたちはそれをどう思うか。

　　はたして、このようにする人は、その筏について為すべきことを為す人なのだろうか。

　　尊い方よ、そうではありません。

　　比丘たちよ、それではどのようにすれば、その人はその筏について為すべきことを為す人となるのであろうか。　

　　ここで、比丘たちよ、向こう岸に渡った彼がこう考えるとしよう。

　　この筏は、大変わたしの役に立った。

　　わたしはこの筏に乗って手と足を使って努力して安全に向こう岸に渡った。　　

　　さあ、わたしはこの筏を陸地に置き捨て、あるいは水に沈めて行きたいところに出発しよう、と。

　　比丘たちよ、このようにする人は、その筏について為すべきことを為す人であろう。

　　そのように、いいかね、比丘たちよ、わたしは［筏の喩え］の教えを説く。

　　筏は、渡るためにあるのであって、取って置くためにあるのではない、ということを。

　　比丘たちよ、筏の譬えをあなたたちは理解した。

　　あなたたちは諸々の教えといえども捨て去るべきである。

　　いわんや、諸々の悪い教えについては、なおさらである。

この［筏の譬え］の教えは、理解を誤ると「蛇の譬え」でも説明されているように、とても危険なものとなります。

釈尊は、「筏」と同じように「向こう岸」へ渡るための「乗り物（手段）」として、諸々の教えを説いています。

つまり、それらの教えは、「向こう岸」へ渡ってしまえば、その役目を終えてしまうので、もう必要が無くなるのです。

「筏」と同じように、釈尊の説いたその全ての教えは、最後には「捨て去るべき」ものです。

ですから釈尊は、「教え」として、永遠不滅の「（絶対的な）真理」といったようなものを説いていたのではありません。

釈尊の教えの基本は「縁起」の法です。

「苦しみ」があるときに、「苦しみを滅する方法」があり（必要とされ）、

「苦しみ」がなくなれば、「苦しみを滅する方法」もなくなる（不必要となる）のです。

しかし釈尊は〈「向こう岸」へ渡ってしまえば、その役目を果たすので「必要が無く」なる〉と説いていますが、

〈「まだ「向こう岸」に渡る前に、大河を渡る前に、その筏を「捨て去って」もよい〉とは説いていません。

ましてや、その「筏」に替わるような「別もの（別の教え）」を勝手に造っても良い、などとは一言も言っていないのです。

むしろ釈尊は、経典の中で弟子たちに、その教えを「一行道（一本道）である」と宣言しています。

つまり、最後には「捨て去るべき」教えではあっても、釈尊が経典の中で説いていた諸々の教えは、

「向こう岸（苦の滅尽）」へ渡るためには、それは、絶対に無くてはならない「必要不可欠な教え」です。

そして、大乗仏教が発見した「空」という教えは、本来は、修行者が「向こう岸」へ渡ってしまって、

最後に、必要のなくなった「筏（諸々の教え）」をバラバラに解体するときに使う「道具（教え）」です。

これを理解しやすいがDīghanakhasutta With Dīghanakha　MN74「ディーガナカ経（世間の論説を超える道）」

遍歴行者のディーガナカは、「わたしはすべてを認めない」という見解を持っていました。

この「わたしはすべてを認めない」という見解は、ある意味、「空の教え」と、とてもよく似ています。

この遍歴行者のディーガナカと釈尊との問答は、次のようなものでした。

　　友ゴータマ（釈尊の本名）よ、

　　わたしは『わたしはすべてを認めない』と、このように主張し、このような見解を持っています。

　　アッギヴェッサナ（ディーガナカのバラモンとしての名前）よ、

　　あなたが『わたしはすべてを認めない』という見解を持っているなら、あなたはその見解自身も認めないのか？

　　友ゴータマよ、もしわたしがその見解を認めるとすると、

　　［わたしはすべてを認めないという］それもそのように［認めること］になる。

　　アッギヴェッサナよ、世間には『それもこのようになる。それもこのようになる』と言って、

　　その見解を捨てず、他の見解に執着する者は多く、さらに一層多い。　　

　　アッギヴェッサナよ、世間には『それもこのようになる。それもこのようになる』と言って、

　　その見解を捨てて、他の見解に執着しない者は少なく、さらに一層少ない。　

　　アッギヴェッサナよ、ある沙門・バラモンは『わたしはすべてを認める』と、

　　このように言い、このような見解を持っている。

　　アッギヴェッサナよ、ある沙門・バラモンは『わたしはすべてを認めない』と、

　　このように言い、このような見解を持っている。

　　アッギヴェッサナよ、ある沙門・バラモンは『わたしはあるものを認め、あるものを認めない』と、

　　このように言い、このような見解を持っている。

　　アッギヴェッサナよ、『わたしはすべてを認める』と、このように言い、

　　このような見解を持っている沙門・バラモンにとり、その見解は貪に近接しており、

　　束縛に近接しており、喜悦に近接しており、耽溺に近接しており、執着に近接している。

　　アッギヴェッサナよ、『わたしはすべてを認めない』と、このように言い、

　　このような見解を持っている沙門・バラモンにとり、その見解は貪に近接しておらず、

　　束縛に近接しておらず、喜悦に近接しておらず、耽溺に近接しておらず、執着に近接していない。

　　　このように言われたとき、遍歴行者のディーガナカは世尊に言った。

　　友ゴータマはわたしの見解を称揚し、友ゴータマはわたしの見解を賞賛します。　

簡単に説明すると、遍歴行者のディーガナカは、「わたしはすべてを認めない」という見解を持っていました。

そして、そのことを釈尊に説明すると、「それならば、その見解自身もあなたは認めないのか？」と質問されるのです。

「わたしはすべてを認めない」という、その見解そのものも「認めない」のか、どうなのか？

この質問を、「西洋的な思考法」で捉えてしまうと、ジレンマ（二律背反）に陥（おちい）ってしまうのです。

「わたしはすべてを認めない」という見解を完全に認めてしまうと、「すべてを認めなくなる」ので、もともとの主張である「わたしはすべてを認めない」という見解そのもが成立しなくなります。

しかし、そこで、遍歴行者のディーガナカが選んだ答えは、

「わたしはすべてを認めない」という、自分自身の見解そのものをも「認めない」というものでした。

（つまり彼は、「すべてを認めない」というその「信念・信条」を、とうとう最後まで貫き通したのです）

すると釈尊は、そのディーガナカの「答え」を賞賛するような話しを始めます。

そこで遍歴行者のディーガナカは、「釈尊は私の見解を賞賛している」と大いに喜びますが、

しかし、ディーガナカは、釈尊が「何故その答えを賞賛したのか」という真意を、まったく理解してはいないのです。

「西洋的な思考法」で捉えてしまうと、ジレンマ（二律背反）に陥（おちい）ってしまいますが、どうすれば「ジレンマ（二律背反）」に陥ることがなくなるのでしょうか？

それは、一度に全てを「否定する（認めない）」のではなく、順序をつけて段階を踏むことでジレンマを回避できます。

つまり、“最初に”「わたしはすべてを認めない」という見解を使って、その見解以外のすべてを否定します。

そしてそれが完了した後で、“最後に”「その見解」そのものも、それ自身を使うことによって否定する（自らを滅する）のです。

そしてこれが、「筏の譬え」の教えを「応用」した形になるのです。

ディーガナカの答えは、そこまでを自覚して答えたものではありませんでした。

むしろ、その「意地（認めないこと）」を最後まで貫き通しただけだったのだ、と言っていいでしょう。

ですから、釈尊が何故自分の答えを賞賛しているのかという、その理由も知らずに、ただ賞賛されたことを喜んだのです。

釈尊は、次のように言っています。

　　『わたしはすべてを認める』と、このように言い、このような見解を持っている人たちの、

　　その見解は貪に近接し、束縛に近接し、喜悦に近接し、耽溺に近接し、執着に近接している。

つまり、「すべてを認める」という見解を持つ人は、貪りや束縛や喜悦や耽溺や執着の「すぐ近く」にいるのだ、と言うのです。

全てを１つにまとめることで肯定する「一元論」が好きな人は、この説明には納得がいかないかもしれません。

しかし、釈尊が説いた「苦を滅するための実践」とは、“厭離・離貪”という、一種の「否定」によって解脱・悟りへと至る道筋です。

そして経典の中で、その「一本道（唯一の方法）」だけを、釈尊は弟子たちに色々な角度から、そして様々な形に表現を変えながら、

何度も何度も、繰り返し繰り返し、それを説いています。

（それらの関連性やアナロジーの類似性に気づかなければ、それらは把握できません）

ですから、この「筏の譬え」に続いて、その「否定すること」についての詳しい説明が、この経典の後半でもなされています。

釈尊が弟子たちに説いた「苦を滅尽する」ための実践に道筋は、「一本道」です。

それは、五比丘たちに説いた「初転法輪（初めての説法）」から終始一貫していて、少しのブレもありません。

例えば、初転法輪では仏教の基本となる「四聖諦」が、とても簡潔（シンプル）な形で説かれています。

１．【苦しみ】という聖なる真理は次のごとくである。

　　　私の肉体が、老いることは苦しみであり、病にかかることは苦しみであり、死ぬことは苦しみである。

　　　そして、人は生まれれば、必ず、老い、病に犯され、そして死ぬ。

　　　生まれることの中に、この三つの苦しみが必ず宿されている。

　　　私の心が、憎い人に会うことは苦しみであり、愛する人と別れることは苦しみであり、

　　　そして、欲するものを得られないことは苦しみである。

　　　総じて言うならば、この体と、心の種々の働き、つまり、五取蘊はその全てが苦しみなのである。

　　　※「五取蘊」とは、自我が取著（執着）している「五蘊」の一部です。

２．【苦しみの生起の原因】という聖なる真理は次のごとくである。

　　　渇愛（妄執）こそが、苦しみの生まれる原因である。

　　　それは再生（転生）をもたらし、喜びと貪りと共にあって、

　　　そこかしこに、歓喜を求めずにはいられない衝動である。

　　　それはすなわち、欲望への渇愛、生存への渇愛、そして虚無への渇愛である。

３．【苦しみの止滅】という聖なる真理は次のごとくである。

　　　渇愛（妄執）から完全に離れ去った止滅であり、捨て去ることであり、

　　　放棄であり、解脱であり、こだわり（愛著）のなくなることである

４．【苦しみの止滅にいたる道】という聖なる真理は次のごとくである。

　　　苦しみを、自己に正しく証知させ、遮断させ、現証させるような、

　　　正しい見解と、正しい思惟と、正しい言葉と、正しい行いと、

　　　正しい生活と、正しい努力と、正しい念いと、正しい瞑想をすること。

　　　これらが八つの正しい道である。

これらを簡単に（特に、一番目から三番目までを）説明すると、

１．「苦しみ」とは「四苦八苦」のことを指します。

　しかし、ここで多くの人たちに誤解されていることが「一つ」あります。

　それは、釈尊はここで「八種類の苦しみ」を説いているのではない、ということです。

　「生・老・病・死」の四苦と「愛別離苦・求不得苦・怨憎会苦」の七苦までが「一つのグループ」です。

　そして、それらの「七苦」を言い換えると「五取蘊に関わる苦しみ」です。

　つまり、〈　生・老・病・死、愛別離苦・求不得苦・怨憎会苦　＝　五蘊盛苦　〉という説明をしています。

釈尊は初転法輪で「四聖諦」に続いて、何故、「五蘊無我（非我）」を説いたのは、自我を構成する五蘊からの離脱を説く「五蘊無我（非我）」の教えの内容そのものが、　「五蘊盛苦（生・老・病・死・愛別離苦・求不得苦・怨憎会苦生）」を止滅（滅尽）する方法だからです。

つまり、この「五蘊無我）」を修習して完全に達成すれば、それだけで阿羅漢果を得ることが出来るのです。

そして実際に、釈尊の最初の弟子となった五比丘たちは、この教えを修習することによって阿羅漢となりました。

２．「苦しみの生起の原因」とは、渇愛（妄執）のことを指します。

　渇愛（タンハー）とは、砂漠で喉が渇いて、水を激しく求めるような「飢餓感・渇望感」に譬えられます。

　ａ．それは再生（転生）をもたらし、

　ｂ．喜びと貪りと共にあって、

　ｃ．そこかしこに、歓喜を求めずにはいられない衝動である。

　渇愛から「取著」が生起し、取著から「有 → 生 → 老 → 病 → 死」という再生（転生）に至るのです。

　そして、そこには「喜び」と「貪り」が必ず付随（同伴）しています。

　渇愛とは認識の対象に、「これは私のものである、これは私である、これは私の本質である」という歓喜（＝自我を認識して満足するという喜び）を求めずにはいられない衝動のことです。　

　釈尊はここで、三種類の渇愛を挙げています。

　　それはすなわち、欲望への渇愛、生存への渇愛、そして虚無への渇愛です。

　欲望への渇愛とは「五妙欲（色・声・香・味・触という五官の信号への欲求）」を渇望する激しい欲求を意味します。

　生存への渇愛とは「三有（欲界・色界・無色界）」色界を渇望する激しい欲求を意味します。

　虚無への渇愛とは、常見と断見という二つの見解の中の「断見（滅び去ること）」無色界への強い欲求を意味します。

　「五妙欲」とは、「外界（五官によって知覚される世界）」に対する強い欲求や欲望のことです。

　これは、下位にある「欲界（欲六界）」と強く結びついて（取著・結縛して）いる欲望・煩悩です。

　そして、ここですでに「欲界への囚われ」は表されていますから、次の「生存（有）」への渇愛とは、

　「三有（欲界・色界・無色界）」というよりも、主に「内界（色界と無色界）」への渇愛を意味しています。

　これら二つの渇愛は、「常見（永遠不滅であること）」への渇愛と言い換えることが出来ます。

　つまり、三界（欲界・色界・無色界）の中で、「永遠不滅なるもの」を追い求め、渇望し続ける心の働きです。

　ですから三つ目に、それらと対照的な（正反対の）「断見（滅び去ること・虚無）」への渇愛を説いています。

　つまり、この三種類によって「すべての渇愛」を表現しています。

３．苦しみの止滅とは、その原因（渇愛）を止滅することを指します。

　それは、三種類（＝すべての）渇愛（妄執）から、

　ａ．完全に離れ去った止滅であり、

　ｂ．捨て去ることであり、

　ｃ．放棄であり、

　ｄ．解脱であり、

　ｅ．こだわり（愛著）のなくなることです。

これが、釈尊が経典の中で、終始一貫して説いている「苦を滅尽する唯一の方法」です。

しかし何故、苦の原因が「無明」ではなく、「渇愛（妄執）」として語られているのでしょうか？

「十二縁起」で説かれている「無明」とは、正しい教えを知らないことによる「無知」を意味します。　

　　　比丘たちよ、

　　　このように悪人に親しむことを成就すると邪法を聞くことを成就し、　

　　　邪法を聞くことを成就するなら信なきことを成就し、

　　　信なきことを成就するなら非如理作意を成就し、

　　　非如理作意を成就するなら不正念不正知を成就し、

　　　不正念不正知を成就するなら六根の非防護を成就し、

　　　六根の非防護を成就するなら三悪行を成就し、

　　　三悪行を具せば五蓋を成就し、

　　　五蓋を成就するなら無明を成就する。

　増支部経典10集7双品61無明】　　Avijjāsutta　 Ignorance　AN10.61　　　無明経

（Avijjāsuttaは全部で３つある。SN 45.1、SN 56.17、AN10.61）

　その「（邪法に囚われた）無知」に影響されて、間違った「行（身・口・意の行為）」が生じてしまうのです。

　それらの「間違った行為（悪行）」は、果報として、間違った「識別・認識」を生起させます。

　その間違った識別・認識が、「名色（自己の心身のことで、五取蘊を表しています）」を生起させるのです。

　つまり「識」とは言い換えれば自我意識のことで、「名色」がその対象（あるいはそれを支える構成要素）です。

　そして、この二つ（識と名色）は、お互いを支え合っています（これは「十支縁起」などで説かれています）。

　　　比丘たちよ、我があるとき、わたしの我に属するものはあるか？

　　　あります、尊い方よ。

　　　比丘たちよ、我に属するものがあるとき、わたしの我はあるか？

　　　あります、尊い方よ。

　上記の問答は『蛇喩経』の後半に登場するものです。

そして「十二縁起」をシンプルに説明すると、

　①〈無明 → 行〉によって生起する「間違った行為」によって、

　②〈行 → 識〉が連鎖して「誤った認識」がそこに生じ、育成されてゆきます。

　③〈識 → 名色〉そしてそれは、心の中に「自我と自我の依処」というものを形成してゆくのです。

名色とは意識エネルギー、すなわち自我のこと

　ここまでが、心の中に「我と我に属するもの」が内部形成されてゆく微細な思考パターンのプロセスを示しています。

　④〈名色 → 六処 → 触 → 受 → 渇愛 → 取著 → 有 → 生 → 老死〉　

　ここから、もっと粗雑なプロセス、つまり「外界との接触」によって生じる「五感への執着（五妙欲）」、

　さらには、自我から世界へと拡大する「現象や対象への執着」や「結縛（転生の原因）」を示しています。

そして『何故、苦の原因として「渇愛」を説いているのか？』というのは、

「十二縁起」の〈一番最初の起点（出発点）〉が、「無明」ではない、からです。

Mahāpadānasutta　DN 14　　大譬喩経　偉大な過去世の物語　英訳　を見てみると

　　　さて、比丘たちよ、ヴィバッシー菩薩が住居に入り、

　　　静かに独り坐っていたとき、心にこのような考えが起こりました。　

　　　ああ、この世界は苦難に陥り、生まれたり、

　　　老いたり、死んだり、没したり、生まれ変わったりしている。

　　　しかもまた、苦の出離、老・死の出離を知らない。

　　　いったい、いつ、この苦の出離、老・死の出離は知られるのであろうか、と。

　　　そして、比丘たちよ、ヴィバッシー菩薩はこう思いました。

　　　いったい何があれば老・死が生じるのか。何を縁として老・死が生じるのか、と。

　　　そこで比丘たちよ、ヴィバッシー菩薩は、正しく思惟し、慧によって、

　　　生まれがあれば老・死が生じる。生まれを縁として老・死が生じる、と領解しました。

　　　また、比丘たちよ、ヴィバッシー菩薩はこう思いました。

　　　いったい何があれば生まれが生じるのか。何を縁として生まれが生じるのか、と。

　　　そこで比丘たちよ、ヴィバッシー菩薩は、正しく思惟し、慧によって、

　　　生存（有）があれば生まれが生じる。生存（有）を縁として生まれが生じる、と領解しました。

　　　また、比丘たちよ、ヴィバッシー菩薩はこう思いました。

　　　いったい何があれば生存（有）が生じるのか。何を縁として生存（有）が生じるのか、と。

　　　そこで比丘たちよ、ヴィバッシー菩薩は、正しく思惟し、慧によって、

　　　取著（取）があれば生存（有）が生じる。取著（取）を縁として生存（有）が生じる、と領解しました。

　　　また、比丘たちよ、ヴィバッシー菩薩はこう思いました。

　　　いったい何があれば取著（取）が生じるのか。何を縁として取著（取）が生じるのか、と。

　　　そこで比丘たちよ、ヴィバッシー菩薩は、正しく思惟し、慧によって、

　　　渇愛があれば取著（取）が生じる。渇愛を縁として取著（取）が生じる、と領解しました。

　　【長部経典第十四経「大譬喩経（偉大な過去世の物語）」】

つまり、縁起の法という「正思惟」の、一番最初の「起点」は、無明ではなくて、老死です。

　　老死 ← 生 ← 有 ← 取著 ← 渇愛　（ ← 受 ← 触 ← 六処 ← 名色 ← 識 ← 行 ← 無明）

　ですから、「老死（という苦しみ）」を消滅するための直接的な原因は「渇愛」です。

　そして、その「渇愛」を止滅することを「妨げて（障碍となって）」いる原因が「無明」です。

　つまり「渇愛」こそが「いま・ここ」でアプローチすべき、老死を生起させる直接的な原因です。

釈尊の「正しい教え（正法）」を知り（多聞）、それを理解する（正見解・正思惟）修習が、そのまま「無明〈特に、有身見・禁戒取・疑という『三結』〉」を滅する実践になっています。

つまり、教えを聞いて「渇愛」を滅する修習をすることで、無明を滅する行為はすでに含まれています。

初期の釈尊の弟子たちの中で、短期間の修行をするだけで、すぐに阿羅漢果に達した人たちが数多く現れたのは、　離欲の修習をするだけで、すぐに厭離 → 離貪 → 解脱 → 苦の滅尽、というプロセスを達成できたからです。

釈尊の教えの「本道」となる、「渇愛（執着）」を完全に離れ去った止滅、捨て去ること、放棄、解脱、

こだわり（愛著）のなくなること、が経典の随所で、様々な角度からの説明や表現を駆使して説かれています。

例えば、Devadahasutta At Devadaha　MN101　　デーヴァダハ経　　では、

　──比丘たちよ、このようにして、ニガンダ派の人たちの実践には結果がなく、精進には結果がないのです。

と、ニガンダ派（ジャイナ教）の人たちが信じていた教えを、さまざまな角度から論破して見せた後で、

釈尊は、「正しい実践と精進」とはいったい何を意味するのかについて、このように語っています。

　　では比丘たちよ、どのようにすれば実践は結果を持ち、精進は結果を持つのであろうか？

　　比丘たちよ、ここに比丘が、

　　苦に征服されていない自己を苦に征服させず、正当な楽を捨てず、しかもその楽に固執しない。

　　彼はこのように知る。

　『苦の原因に関して、精励する力を働かせているわたしに、精励する力を働かせることによって、貪欲が離れる。

　　苦の原因に関して、中庸（無頓着・無執着）となり、中庸を修習しているわたしに、貪欲が離れる』と。

　　彼は苦の原因に関して、精励する力を働かせつつ、

　　精励する力を働かせることによって、貪欲が離れるとき、そのところで精励する力を働かせる。

　　また彼は苦の原因に関して、中庸となり、

　　中庸を修習する彼に、貪欲が離れるとき、そのところで中庸を修習する。

　　こうして、苦の原因に関して、彼が精励する力を働かせつつ、精励する力を働かせることによって、貪欲が離れる。

　　このようにしても、彼のその苦は滅尽する。

　　またそれぞれの苦の原因に関して、中庸となり、中庸を修習する彼に、貪欲が離れる。

　　このようにしても、彼のその苦は滅尽する。

ここで「精励する力」と訳されている原語は、「サンスカーラ（行・形成力）」のことで、身・口・意の三行の中の「意行」の〈思（業の消滅に導く業）〉のことです。

入力に対して決まった出力をする自動反応回路のことで、スマホのアプリのようなものです。

そしてこの〈思（業の消滅に導く業）〉という「意思の力」を働かせる〈厭離する〉ことによって、貪欲が離れる。

その貪欲が離れるときに、その瞬間に、さらに集中して「意思の力〈思・チェータナー」を働かせる。

すると、そこで完全に貪欲が離れていく（苦の原因が消え去って、苦が滅尽する）のです。

これが、最もシンプルに「苦を滅尽する方法〈厭離 → 離貪 → 解脱〉」を表現している詩句です。

そして貪欲が離れる（離貪）ことを別の角度から表現すると中庸（無頓着・無執着）となります。

釈尊は、この説明に続いて、とても解りやすい次のような問答を、

Devadahasutta At Devadaha　MN101　　デーヴァダハ経の中で弟子たちとしています。

　　比丘たちよ、例えばある男性がある女性に恋着し、

　　心が縛られ、激しい欲望と激しい執着を持っているとしよう。

　　彼は、その女性が他の男性と一緒に立ち、話しをし、戯れ、笑っているのを見るとしよう。

　　比丘たちよ、あなたたちはこれをどのように考えるか。

　　その女性が他の男性と一緒に立ち、話しをし、戯れ、笑っているのを見て、

　　この男性には、悲しみと、嘆きと、苦しみと、憂いと、悩みとが生じるであろうか。

尊師よ、生じます。

　　それは、何故であるか。

　　尊師よ、その男性がその女性に恋着し、心が縛られ、激しい欲望と激しい執着を持っているからです。

　　それゆえ、その女性が他の男性と一緒に立ち、話しをし、戯れ、笑っているのを見て、

　　悲しみと、嘆きと、苦しみと、憂いと、悩みとが生じるのです。

　　比丘たちよ、その男性は次のように考えるであろう。

　『わたしはこの女性に恋着し、心が縛られ、激しい欲望と激しい執着を持っている。

　　　この女性が他の男性と一緒に立ち、話しをし、戯れ、笑っているのを見て、

　　　このわたしに悲しみと、嘆きと、苦しみと、憂いと、悩みとが生じる。

　　　この女性に対する欲愛を捨ててしまえばよいのだ』と。

　　彼は、その女性に対する欲愛を捨てるとしよう。

　　彼は他の機会に、その女性が他の男性と一緒に立ち、話しをし、戯れ、笑っているのを見るとしよう。

　　比丘たちよ、あなたたちはこれをどのように考えるか。

　　その女性が他の男性と一緒に立ち、話しをし、戯れ、笑っているのを見て、

　　この男性には、悲しみと、嘆きと、苦しみと、憂いと、悩みとが生じるであろうか。

　　尊師よ、生じません。

　　それは、何故であるか。

　　尊師よ、その男性がその女性に対して愛着を捨てているからです。

　　それゆえ、その女性が他の男性と一緒に立ち、話しをし、戯れ、笑っているのを見ても、

　　悲しみも、嘆きも、苦しみも、憂いも、悩みも生じないのです。

　　比丘たちよ、これと同じように、

　　苦に征服されていない自己を苦に征服させず、正当な楽を捨てず、しかもその楽に固執しない。

　　彼はこのように知る。

　　『苦の原因に関して、精励する力を働かせているわたしに、精励する力を働かせることによって、貪欲が離れる。苦の原因に関して、中庸となり、中庸を修習しているわたしに、貪欲が離れる』と。

　　彼は苦の原因に関して、精励する力を働かせつつ、

　　精励する力を働かせることによって、貪欲が離れるとき、そのところで精励する力を働かせる。

　　また彼は苦の原因に関して、中庸となり、

　　中庸を修習する彼に、貪欲が離れるとき、そのところで中庸を修習する。

　　こうして、苦の原因に関して、彼が精励する力を働かせつつ、精励する力を働かせることによって、貪欲が離れる。

　　このようにして、彼のその苦は滅尽する。

　　またそれぞれの苦の原因に関して、中庸となり、中庸を修習する彼に、貪欲が離れる。

　　このようにして、彼のその苦は滅尽する。

　　比丘たちよ、このようにしても、実践は結果を持ち、精進は結果を持つ。

ここでは、渇愛（執着）とその完全に離れ去った止滅、捨て去ること、放棄、こだわり（愛著）のなくなること、という初転法輪で説かれた【苦しみの生起の原因】と【苦しみの止滅】が、そのまま、ここでも説かれています。

［筏の譬え］の教えに続いて、［六つの見方の立場］という教えが説かれています。

そしてこれは、「渇愛（執着）を捨て去ること」を別の形で表した「五蘊無我（非我）」に関する説明です。

　　比丘たちよ、これらの六つの見方の立場がある。　　六つとは何か？

　　比丘たちよ、教えを聞かない凡夫（一般人）は、

　　聖者たちを見ず、聖者の教えを知らず、聖者の教えに導かれない。そして、

　　①〈身体〉を、これは私のものである、これは私である、これは私の我である、と見る。　　

　　②〈感受〉を、これは私のものである、これは私である、これは私の我である、と見る。

　　③〈知覚〉を、これは私のものである、これは私である、これは私の我である、と見る。

　　④〈もろもろの自己形成力〉を、これは私のものである、これは私である、これは私の我である、と見る。

　　⑤〈およそ何でも見られ、聞かれ、考えられ、識別され、得られ、求められ、心によって思惟されたもの〉を、これは私のものである、これは私である、これは私の我である、と見る。

　　⑥〈それは世界である、それは我である、その私は死後も常住で、堅固で、恒常で、不変なものであろう、永久にそのまま留まるであろう〉という見方の立場についても、これは私のものである、これは私である、これは私の我である、と見る。

　　しかし、比丘たちよ、教えをよく聞く勝れた弟子は、

　　聖者たちを見、聖者の教えを知り、聖者の教えに導かれる。そして、

　　①〈身体〉を、これは私のものではない、これは私ではない、これは私の我ではない、と見る。　　

　　②〈感受〉を、これは私のものではない、これは私ではない、これは私の我ではない、と見る。

　　③〈知覚〉を、これは私のものではない、これは私ではない、これは私の我ではない、と見る。

　　④〈自己形成力〉を、これは私のものではない、これは私ではない、これは私の我ではない、と見る。

　　⑥〈それは世界である、それは我である、その私は死後も常住で、堅固で、恒常で、不変なものであろう、永久にそのまま留まるであろう〉という見方の立場についても、これは私のものではない、これは私ではない、これは私の我ではない、と見る。

　　彼はこのように見るので、［何かが］存在しないことについて、恐れおののかない。

経典では「六つの見方の立場」と表現されていますが、内容的には、

「五蘊という五つの要素＋自我や世界への偏った見解〈常見〉」の「六つのカテゴリー」に対して、

それを肯定して〈これは私のものである、これは私である、これは私の我である〉と見る立場と、

反対に否定して〈これは私のものではない、これは私ではない、これは私の我ではない〉と見る立場の、

「肯定派（凡夫）」と「否定派（勝れた弟子）」という「二通りの立場」を、ここで説明しています。

そして、その説明の最後に、この教えの最も重要な「キーワード」が登場しています。

〈彼はこのように見るので、［何かが］存在しないことについて、恐れおののかない。〉

この〈［何かが］存在しないこと〉という表現は、実は「ニルヴァーナ」のことです。

　　このように言われたとき、ある比丘が世尊にこう尋ねた。

　　尊い方よ、外的に（所有物に関して）存在しないことについて、恐れおののきはあるでしょうか？

　　あるであろう、比丘よ、ここにある人がいて次のように考える。

　　それはかつて私のものであったが、今は私のものではない、それは私のものであるべきなのに、私はそれを得ていない、と。

　　彼は悲しみ、疲れ、嘆き、胸を打って悲しみ、迷妄に至る。

　　比丘よ、このように外的に存在しないことについて、恐れおののきはある。

　　それでは尊い方よ、外的に存在しないことについて、恐れおののきがないということはあるでしょうか？

　　あるであろう、比丘よ、ここにある人がいて次のように考えない。

　　それはかつて私のものであったが、今は私のものではない、それは私のものであるべきなのに、私はそれを得ていない、と。

　　彼は悲しまず、疲れず、嘆かず、胸を打って悲しまず、迷妄に至らない。

　　このように、たしかに、比丘よ、外的に存在しないことについて、恐れおののきがないということはある。

この説明は、Devadahasutta At Devadaha　MN101　　デーヴァダハ経の女性に恋する男性の執着心と類似したパターン」の説明です。

つまりこれは、〈厭離 → 離貪 → 解脱 → 苦の滅尽〉という解脱のプロセスの説明をしています。

　　尊い方よ、内的に（自己に関して）存在しないことについて、恐れおののきはあるでしょうか？

　　あるであろう、比丘よ、ここにある人が次のような［自己についての］考えを持つ。

　　それは世界である、それは我である、その私は死後も常住で、堅固で、恒常で、

　　不変なものであろう、永久にそのまま留まるであろう、と。

　　彼は如来あるいは如来の弟子が、あらゆる我見の立場、その根拠、その束縛、それへの執着の潜在を根絶させるため、

　　あらゆる自己形成力を鎮静させるため、あらゆる生存のしがらみを捨てさせるため、渇望を滅するため、

　　染着から離れるため、止滅させるため、寂滅のために教えを説くのを聞く。

　　そして彼はこう思う。

　　私はもう滅し尽くされてしまうだろう、私はもう滅ぼされてしまうだろう、私はもう存在しなくなるであろう、と。

　　彼は悲しみ、疲れ、嘆き、胸を打って悲しみ、迷妄に至る。

　　このように、いいかね、比丘よ、内的に存在しないことについて、恐れおののきはある。

　　それでは尊い方よ、内的に存在しないことについて、恐れおののきがないということはあるでしょうか？

　　あるであろう、比丘よ、ここにある人が次のような［自己についての］考えを持たない。

　　それは世界である、それは我である、その私は死後も常住で、堅固で、恒常で、

　　不変なものであろう、永久にそのまま留まるであろう、と。

　　彼は如来あるいは如来の弟子が、あらゆる我見の立場、その根拠、その束縛、それへの執着の潜在を根絶さ　せるため、

　　あらゆる自己形成力を鎮静させるため、あらゆる生存のしがらみを捨てさせるため、渇望を滅するため、

　　染着から離れるため、止滅させるため、寂滅のために教えを説くのを聞く。

　　そして彼はこう思わない。

　　私はもう滅し尽くされてしまうだろう、私はもう滅ぼされてしまうだろう、私はもう存在しなくなるであろう、と。

　　彼は悲しまず、疲れず、嘆かず、胸を打って悲しまず、迷妄に至らない。

　　このように、たしかに、比丘よ、内的に存在しないことについて、恐れおののきがないということはある。　

これで、外的に〈我に属するものとして〉存在しないことと、内的に〈我として〉存在しないことの二つについて、

「恐れおののく場合」と「恐れおののかない場合」とが説明されたことになります。

そして、執着を持つ者が「「恐れおののき」、執着を持たない者は「恐れおののかない」のです。

このように、一つ一つ丁寧（ていねい）に、釈尊は弟子たちに、説明を「積み重ねて」教えています。

説明は、さらに続きます。そして、だんだんと「佳境〈重要なポイント〉」に近づきます。

　　比丘たちよ、およそ持ち物にして、常住で、堅固で、恒常で、不変なものであろう、

　　永久にそのまま留まるであろう、そのような持ち物を、あなたたちは持つことがあるだろうか？

　　比丘たちよ、およそ持ち物にして、常住で、堅固で、恒常で、不変なものであろう、

　　永久にそのまま留まるであろう、そのような持ち物を、あなたたちは見るか、見ないか？

　　それはまったく見ません、尊い方よ。

　　よろしい。比丘たちよ、確かに私も、およそ持ち物にして、

　　常住で、堅固で、恒常で、不変なものであろう、永久にそのまま留まるであろう、そのような持ち物を見ない。

　　比丘たちよ、およそ我に関する説への執着であって、

　　それに執着する者に、愁い・悲しみ・苦しみ・憂い・悩みが生じないような、

　　そのような我に関する説への執着を、あなたたちはすることがあるだろうか？

　　それはまったく見ません、尊い方よ。

　　よろしい。比丘たちよ、確かに私も、およそ我に関する説への執着であって、

　　それに執着する者に、愁い・悲しみ・苦しみ・憂い・悩みが生じないような、そのような我に関する説への執着を見ない。

　　比丘たちよ、およそ見解という依りどころであって、それに依る者に、

　　愁い・悲しみ・苦しみ・憂い・悩みが生じないような、

　　そのような見解という依りどころに、あなたたちは依ることがあるだろうか？

　　比丘たちよ、およそ見解という依りどころであって、それに依る者に、

　　愁い・悲しみ・苦しみ・憂い・悩みが生じないような、

　　そのような見解という依りどころを、あなたたちは見るか、見ないか？

　　それはまったく見ません、尊い方よ。

　　よろしい。比丘たちよ、確かに私も、およそ見解という依りどころであって、

　　それに依る者に、愁い・悲しみ・苦しみ・憂い・悩みが生じないような、そのような見解という依りどころを見ない。

　　比丘たちよ、我があるとき、わたしの我に属するものはあるか？

　　あります、尊い方よ。

　　比丘たちよ、我に属するものがあるとき、わたしの我はあるか？

　　あります、尊い方よ。

　　我や我に属するものが真に確実に得られないときに、それは世界である、それは我である、

　　その私は死後も常住で、堅固で、恒常で、不変なものであろう、永久にそのまま留まるであろうというこの見方は、　　比丘たちよ、実にまったく愚かしいものではないか。

　　尊い方よ、どうして愚かでないことがありましょうか。

　　確かにまったく愚かしいものです。

と、ここまでが、「五蘊無我（非我）」を説くための、釈尊の「事前説明」です。

「我」と「わたしの我に属するもの」は、相互依存関係にあります。

つまり、お互いが「影響を与え合い、受け取り合う関係」にあるのです。

ですから、その一方が「不安定（変化する）」であるならば、もう一方も必ずその影響を受けてしまうのです。

そして、ここから「五蘊無我（非我）」の説明が始まります。

しかし、ここが大切なポイントですが、この教えは、別に「無我という真理」を説こうとしているのではありません。

そうではなくて、これは、「無常・苦・無我（非我）」という三つの「明らかな智慧」を使って、それを「手段」として活用して、

「五蘊盛苦（＝生・老・病・死・愛別離苦・求不得苦・怨憎会苦生）」を、止滅（滅尽）させる方法を、説明しています。

　　比丘たちよ、これをどう思うか。

　　身体は常住であるか、あるいは無常であるか？

　　無常です、尊い方よ。

　　何であれ無常であり、苦しみであり、変貌する性質のものを、

　　これは私のものである、これは私である、これは私の我である、と見ることは正しいか？

　　そうではありません、尊い方よ。

これに続いて「感受・知覚・自己形成力・認識（受・想・行・識）」にも同じ問答が繰り返されます。　　

　　それゆえに、ここで、比丘たちよ、およそ何であれ、

　　過去・未来・現在の、内的・外的の、粗大・微細の、劣った・優れた、遠くにある・近くにあるすべての身体を、これは私のものではない、これは私ではない、これは私の我ではないと如実に正しい智慧によって見るべきである。

　　およそ何であれ、すべての感受を、すべての知覚を、すべての自己形成力を、すべての認識を、

　　これは私のものではない、これは私ではない、これは私の我ではないと如実に正しい智慧によって見るべきである。

そして、ここから〈厭離 → 離貪 → 解脱 → 苦の滅尽〉というプロセスの説明に入ります。

　　比丘たちよ、このように見て、教えをよく聞く勝れた弟子は、身体について厭う。

　　感受について厭う。知覚について厭う。もろもろの自己形成力について厭う。認識について厭う。

　　厭いつつ汚れが取れる。汚れが取れるがゆえに解脱する。

　　解脱したときに解脱したという智が生じる。生は尽きた。清らかな修行は完成した。

　　為されるべきことは為された。もはやこのような状態に至ることはない、と知るのである。

　　比丘たちよ、この比丘は、障碍を取り除いた者とも、堀を埋めた者とも、柱を抜いた者とも、

　　閂（かんぬき）を外した者とも、旗をおろし荷物をおろし縛（いまし）めから解かれた聖者とも言われる。

　　①「障碍を取り除いた者」とは、「無明」が捨てられて、

　　　根が断たれて根無しにされたターラ樹のようにされ、存在しないものにされ、未来に生じないものとなる。

　　②「堀を埋めた者」とは、「再生の生死・輪廻」が捨てられて、

　　　根が断たれて根無しにされたターラ樹のようにされ、存在しないものにされ、未来に生じないものとなる。

　　③「柱を抜いた者」とは、「渇愛（執着）」が捨てられて、

　　　根が断たれて根無しにされたターラ樹のようにされ、存在しないものにされ、未来に生じないものとなる。

　　④「閂（かんぬき）を外した者」とは、「五つの下位の束縛（五下分結）」が捨てられて、

　　　根が断たれて根無しにされたターラ樹のようにされ、存在しないものにされ、未来に生じないものとなる。

　　⑤「旗をおろし荷物をおろし縛（いまし）めから解かれた聖者」とは、「我についての慢心」が捨てられて、

　　　根が断たれて根無しにされたターラ樹のようにされ、存在しないものにされ、未来に生じないものとなる。

そして、このように「心が解脱した比丘」を、インドラやブラフマーを始めとする神々たちが探し求めても、

　　『これがそのようになった人の依拠であり、意識〈たましい〉である』というもを見いだすことは出来ない。

と、釈尊は、弟子たちに宣言します。そして、それが「出来ない」理由は、

　　比丘たちよ、現世では、そのようになった人を“知ることはできない”と私は言うからである。　

つまり、そのようになった人は、現世では「不可知」となった、と釈尊は説明しています。

「現世」と訳されていますが、インドラやブラフマーを始めとする神々も“知ることはできない”ので、

この文脈での現世とは「有（欲界・色界・無色界）の世界」31領域を指し示しています。

これに続いて釈尊は「五蘊無我（非我）」に関するとても大切なことをを説いています。

比丘たちよ、このように語り説く私を、

　　　ある沙門やバラモンたちは、不正に、虚しく、不真実に、偽って誹謗する。

　　　『沙門ゴータマは虚無論者である。生けとし生けるものの断滅、消滅、破滅を教える』と。

　　　比丘たちよ、私はそうではなく、またそうは言わないのに、

　　　尊敬すべき沙門やバラモンたちは、不正に、虚しく、不真実に、偽って誹謗する。

　　　『沙門ゴータマは虚無論者である。生けとし生けるものの断滅、消滅、破滅を教える』と。

　　　比丘たちよ、私は以前も今も、苦しみと苦しみの止滅だけを教えるのである。

　　　それについて、比丘たちよ、もしも他の者たちが如来を罵り、誹（そし）り、怒らせようとしても、

　　　比丘たちよ、それに対して、如来が怒り、不機嫌になって、不満に思うことはない。

　　　それに対して、比丘たちよ、もしも他の者たちが如来を尊び、重んじ、敬い、礼拝しても、

　　　比丘たちよ、それに対して、如来が喜び、満足して、得意になることはない。

　　　比丘たちよ、それに対して、もしも他の者たちが如来を尊び、重んじ、敬い、礼拝するときは、

　　　それに対して、比丘たちよ、如来は次のように思う。

　　　これは以前によく知られたことであり、それに対して、私にそのような行為がなされているのである、と。

釈尊は、一部の人々からは「虚無論者で、生けとし生けるものの断滅、消滅、破滅を教える」と誹謗されていました。

しかし釈尊はそのことを、「私はそうではなく、またそうは言わない」と、ここで完全に否定しています。

比丘たちよ、私は以前も今も、苦しみと苦しみの止滅だけを教えるのである。

と、自らの「立場」をはっきりと明確に宣言しています。

釈尊は「虚無論者」などではなく、「生けとし生けるものの断滅」や、「消滅」、「破滅」を教えていません。

ですから、そのような誹謗をする人たちは、釈尊の説いた「五蘊無我（非我）」の教えを完全に誤解している人たちです。

何故、そのような誤解をしてしまうのでしょうか？　

それは「五蘊の集まり＝自己」であると錯覚して、その「妄執〈誤謬見解〉」にしがみついているからです。

　　　比丘よ、ここにある人が次のような［自己についての］考えを持つ。

　　　それは世界である、それは我である、その私は死後も常住で、堅固で、恒常で、

　　　不変なものであろう、永久にそのまま留まるであろう、と。

　　　彼は如来あるいは如来の弟子が、あらゆる我見の立場、その根拠、その束縛、それへの執着の潜在を根絶させるため、

　　　あらゆる自己形成力を鎮静させるため、あらゆる生存のしがらみを捨てさせるため、渇望を滅するため、

　　　染着から離れるため、止滅させるため、寂滅のために教えを説くのを聞く。

　　　そして彼はこう思う。

　　　私はもう滅し尽くされてしまうだろう、私はもう滅ぼされてしまうだろう、私はもう存在しなくなるであろう、と。

彼は悲しみ、疲れ、嘆き、胸を打って悲しみ、迷妄に至る。

このように、いいかね、比丘よ、内的に存在しないことについて、恐れおののきはある。

つまり、釈尊を「虚無論者」だと言って非難や誹謗をする人たちは、

「内的に（自己が）存在しないこと」について、「恐れおののき」を持つ人たちです。

その「恐れおののき」が、彼を〈悲しみ、疲れ、嘆き、胸を打って悲しみ、迷妄〉に至らせてしまうのです。

したがって、釈尊は、その「恐れおののき」の元凶となるものをすべて捨て去りなさいと、繰り返し教えます。

　　　それゆえに、ここで、比丘たちよ、あなたたちのものでないものは捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

　　　では、比丘たちよ、あなたたちのものでないものとは何か？

　　　比丘たちよ、身体（色）はあなたたちのものではない。それを捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

　　　比丘たちよ、感受（受）はあなたたちのものではない。それを捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

　　　比丘たちよ、知覚（想）はあなたたちのものではない。それを捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

　　　比丘たちよ、自己形成力（行）はあなたたちのものではない。それを捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

　　　比丘たちよ、認識（識）はあなたたちのものではない。それを捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

そして、ここで釈尊は「譬え話」を始めます。

　　　比丘たちよ、これをどう思うか？

　　　ある人がこのジェータ林の草や薪や枝や葉を運び出したり、焼いたり、適当に処理をするとしよう。

　　　それについても、あなたたちは次のように思うであろうか。

　　　すなわち、この人はわたしたちを運び出したり、焼いたり、適当に処理していると。

　　　尊い方よ、そうは思いません。

　　　それは何故かと申しますと、尊い方よ、それは我でなく、あるいは我に属するものではないからです。

ここでは、私という「自我」の構成要素であるはずの「五蘊〈色・受・想・行・識〉」が、

「ジェータ林の草や薪や枝や葉」と同列に扱われています。

ですから「「五蘊〈色・受・想・行・識〉」を〈我（われ）、あるいは我がもの〉だと勘違いしている人たちは釈尊を「虚無論者」や「生けとし生けるものの断滅、消滅、破滅を教える」者と想ってしまうのです。

仏教徒の中にも、このような誹謗や非難などはしなくても、無意識のうちに釈尊を虚無論者であると容認〈肯定〉している人たちがいます。

たとえば「五蘊無常」や「五蘊皆苦」や「五蘊無我」を頭（表層意識）では肯定することはできても、実際には五蘊が「自己の構成要素」だと深層意識では想ってしまっているケースです。

彼らは自己とは〈自然現象の泡のような〉無常で移ろいゆくものなのだから、自己への執着は捨てた方がいいのだ、と考えてしまっていますが、これは「断見〈消滅論・虚無論〉」に陥っています。

このどこが虚無論だというのでしょうか？

　　　まさにそのように、いいかね、比丘たちよ、何でもあなたたちのものでないものは捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

　　　では、比丘たちよ、あなたたちのものでないものとは何か？

　　　比丘たちよ、身体（色）はあなたたちのものではない。それを捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

　　　比丘たちよ、感受（受）はあなたたちのものではない。それを捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

　　　比丘たちよ、知覚（想）はあなたたちのものではない。それを捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

　　　比丘たちよ、自己形成力（行）はあなたたちのものではない。それを捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

　　　比丘たちよ、認識（識）はあなたたちのものではない。それを捨てなさい。

　　　捨てれば、それは長きにわたって、あなたたちに利益と安楽をもたらすであろう。

釈尊が説いた教えは「五蘊無我」なのでしょうか、それとも「五蘊非我」なのでしょうか？

この経典で説かれている教えの、最も重要な経句は、

　彼はこのように見るので、［何かが］存在しないことについて、恐れおののかない。

ですが、この「［何かが］存在しないこと」とは涅槃を意味しているからです。

　　　梵天よ、わたしは一切を一切として了知し、

　　　一切のもつ一切の性質として経験されないものがあれば、それを了知し、

　　　一切であると考えず、一切のなかにあるものであると考えず、一切より［生じたもの］であると考えず、

　　　一切はわたしのものであると考えず、一切を尊重しない。

　　　識（ニルヴァーナのこと）31領域の宇宙意識は眼には見えず、無限であり、あらゆる場所に輝いている。

　　　それは、地のもつ地の性質として経験されず、水のもつ水の性質として経験されず、

　　　火のもつ火の性質として経験されず、風のもつ風の性質として経験されず、

　　　生じたもののもつ生じたものの性質として経験されず、天のもつ天の性質として経験されず、

　　　創造主パジャーパティのもつ創造主パジャーパティの性質として経験されず、

　　　梵天のもつ梵天の性質として経験されず、光音天のもつ光音天の性質として経験されず、

　　　遍浄天のもつ遍浄天の性質として経験されず、広果天のもつ広果天の性質として経験されず、

　　　アビブー天のもつアビブー天の性質として経験されず、一切のもつ一切の性質として経験されない。

これが、釈尊が説いた「苦の滅尽〈ニルヴァーナ〉」です。

後世、大乗仏教が経典や論書などて説いている出典？

「輪廻世界〈サムサーラ〉と涅槃〈ニルヴァーナ〉は同一である」とは、釈尊は教えていません。

涅槃とは、

　　　前にはあったが、そのときには無かった。

前には無かったが、そのときにはあった。

前にも無かったし、のちにも無いであろう。また今も存在しない。

　　　不動の真理は見難い。

　　　見易いものの真相を洞察して、妄執の消滅を見る人にとっては、苦しみが終滅すると説かれる。

　　　Udānavarga 　26Nirvāṇavarga　　小部経典「感興の言葉」第２６章安らぎ（ニルヴァーナ）

この詩句の意味は、

①前にはあったが、そのときには無かった。　というのは、縁起の〈滅〉を示しています。

②前には無かったが、そのときにはあった。　というのは、縁起の〈生〉を示しています。

そして、これら二つの変化を知ることが「縁起を観ること」です。

そしてこれらの観察が、〈不動の真理は見難いので〉「見易いものの真相を洞察する」ということです。

そして、それらを洞察した後で、最後に、その二つの洞察から「離れる」ことがポイントです。

　　　生じたものはこれであると、尊師よ、如実に、正覚によって見る。

　　　生じたものは、これであると如実に、正覚によって見たあと、生じたものについて、厭い、離れ、滅する道に向かう。

　　　これは食べ物の発生であると、正覚によって見る。

　　　これは食べ物の発生であると、如実に、正覚によって見た後、食べ物の発生について、厭い、離れ、滅する道に向かう。

　　　この食べ物の滅から、生じたものは滅する法（性質）であると、如実に、正覚によって見る。

　　　この食べ物の滅から、生じたものは滅する法（性質）のものであると、如実に、正覚によって見たあと、

　　　滅する法（性質）について、厭い、離れ、滅する道へ向かう。

　　　このように、尊師よ、学がある。

Bhūtasutta 　What Has Come to Be　SN12.31　已生経「生じたもの」

釈尊は、「筏」と同じように「向こう岸」へ渡るための「乗り物（手段）」として、諸々の教えを説いています。

つまり、それらの教えは、「向こう岸」へ渡ってしまえば、その役目を終えてしまうので、もう必要が無くなるのです。

「筏」と同じように、釈尊の説いたその全ての教えは、最後には「捨て去るべき」ものです。

そしてそれは、「縁起の法」についても同じことが言えるのです。

③前にも無かったし、のちにも無いであろう。また今も存在しない。

この詩句を理解する以前に、了知しておくことが多くあります。

しかし、了知しなくても釈尊は、この経典で「五蘊無我」の教えを完全にマスターすれば、

①「障碍を取り除いた者」とは、「無明」が捨てられて、

②「堀を埋めた者」とは、「再生の生死・輪廻」が捨てられて、

③「柱を抜いた者」とは、「渇愛（執着）」が捨てられて、

④「閂（かんぬき）を外した者」とは、「五つの下位の束縛（五下分結）」が捨てられて、

⑤「旗をおろし荷物をおろし縛（いまし）めから解かれた聖者」とは、「我についての慢心」が捨てられて、

根が断たれて根無しにされたターラ樹のようにされ、存在しないものにされ、未来に生じないものとなる。

と断言しています。

したがって、この教えだけで本来は「阿羅漢果」を得ることができました。

だからこそ初転法輪で釈尊は「四聖諦」と「五蘊無我」の教えを説きました。

そして、この教えが、後に実践法として体系化されて、「四念住（四念処）」や「七覚支」という形で説かれるようになります。

だからこそ経典では、最後に、このような宣言（獅子吼）によって締めくくられています。

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれた。

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕〈つくろ〉ったところはない。

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれ、

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕ったところがないとき、

　　　尊敬されるべき者〈阿羅漢〉であり、煩悩が尽き、完成され、

　　　為すべきことを為し、荷物をおろし、正義に達し、生存の束縛が滅尽し、

　　　正智あり、解脱した比丘たちなら誰でも、その人たちの輪廻は認められない。

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれた。

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕〈つくろ〉ったところはない。

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれ、

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕ったところがないとき、

　　　五つの下位の束縛（五下分結）が捨てられたあらゆる比丘たちは、

　　　化生して不還者となり、そこで完全な安らぎを得て、その世界から戻ってこない。

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれた。

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕〈つくろ〉ったところはない。

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれ、

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕ったところがないとき、

　　　三つの束縛を捨て、貪り、怒り、迷いが薄くなったあらゆる比丘たちは、

　　　一来者であり、一度だけこの世に戻ってきて、苦しみを終滅させるであろう。

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれた。

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕〈つくろ〉ったところはない。

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれ、

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕ったところがないとき、

　　　三つの束縛を捨てたあらゆる比丘たちは、預流者であり、

　　　悪処におもむかず、正しい目覚めに至ることが決定している。、

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれた。

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕〈つくろ〉ったところはない。

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれ、

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕ったところがないとき、

　　　教えによく従い、信仰によく従うあらゆる比丘たちは、正しい目覚めに至る者である。

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれた。

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕〈つくろ〉ったところはない。

　　　比丘たちよ、このように私によって教えがよく説かれ、

　　　明瞭になり、開示され、知らされ、繕ったところがないとき、

　　　私に対してわずかな信仰や霊的な愛を持つだけでも、彼らはすべて天に至る。

　　　世尊は、このことを語った。

　　　比丘たちは世尊が説かれたことに満足し、大いに喜んだ。

他ではなく自己を避難所にせよ　

Mahāparinibbānasutta　Dīgha Nikāya 16　大般涅槃経　　　　　英訳　The Great Discourse on the Buddha’s Extinguishment

16.2.26

「自己を中洲とし、自己を避難所とし、他を避難所とせず、ダンマを中洲とし、ダンマを避難所とし、他を避難所とせずに住せよ」

dhammadīpā 　[dhamma+dīpa．（dhammadiva-prā）]

dīpa　　中洲、　dvīpa=dvi+ap 　of āpa water，lit．“double-watered，” between （two） waters] an island

　　　　灯火　　dīpa to Ved．dī，dīpyate； Idg．*deịā to shine

165-13

Tasmātihānanda, attadīpā viharatha attasaraṇā anaññasaraṇā, dhammadīpā dhammasaraṇā anaññasaraṇā.

訳文　　　　　　　

それゆえアーナンダよ、ここなるあなた方は、自己を洲とし、自己を帰依処とし、他のものを帰依処とせず、法を洲とし、法を帰依処とし、他のものを帰依処とせず、住しなさい。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
Tasmā		代	代的	中	単	奪	それ、彼
iha		不変	‐	‐	‐	‐	ここに、この世で、いま、さて
ānanda,	ā-nand	名	a	男	単	呼	人名、アーナンダ
atta		名	an	男	有（持）		我、自分
dīpā		名	a	男中	複	主	洲、庇護処（「灯」は男性名詞）
viharatha	vi-hṛ	動	命	能	複	二	住する
atta		名	an	男	有（持）		我、自分
saraṇā		名	a	中→男	複	主	帰依処
anañña		形	a	‐	有（持）		他ならぬ
saraṇā,		名	a	中→男	複	主	帰依処
dhamma	dhṛ	名	a	男中	有（持）		法
dīpā		名	a	男中	複	主	洲、庇護処
dhamma	dhṛ	名	a	男中	有（持）		法
saraṇā		名	a	中→男	複	主	帰依処
anañña		形	a	‐	有（持）		他ならぬ
saraṇā.		名	a	中→男	複	主	帰依処

Tasmātihānanda, attadīpā viharatha attasaraṇā anaññasaraṇā, dhammadīpā dhammasaraṇā anaññasaraṇā. Kathañcānanda, bhikkhu attadīpo viharati attasaraṇo anaññasaraṇo, dhammadīpo dhammasaraṇo anaññasaraṇo? Idhānanda, bhikkhu kāye kāyānupassī viharati atāpī sampajāno satimā, vineyya loke abhijjhādomanassaṁ. Vedanāsu …pe… citte …pe… dhammesu dhammānupassī viharati ātāpī sampajāno satimā, vineyya loke abhijjhādomanassaṁ. Evaṁ kho, ānanda, bhikkhu attadīpo viharati attasaraṇo anaññasaraṇo, dhammadīpo dhammasaraṇo anaññasaraṇo.

Ye hi keci, ānanda, etarahi vā mama vā accayena attadīpā viharissanti attasaraṇā anaññasaraṇā, dhammadīpā dhammasaraṇā anaññasaraṇā, tamatagge me te, ānanda, bhikkhū bhavissanti ye keci sikkhākāmā”ti.

So Ānanda, be your own island, your own refuge, with no other refuge. Let the teaching be your island and your refuge, with no other refuge. And how does a mendicant do this? It’s when a mendicant meditates by observing an aspect of the body—keen, aware, and mindful, rid of desire and aversion for the world. They meditate observing an aspect of feelings … mind … principles—keen, aware, and mindful, rid of desire and aversion for the world. That’s how a mendicant is their own island, their own refuge, with no other refuge. That’s how the teaching is their island and their refuge, with no other refuge.

Whether now or after I have passed, any who shall live as their own island, their own refuge, with no other refuge; with the teaching as their island and their refuge, with no other refuge—those mendicants of mine who want to train shall be among the best of the best.”

修業に入って間もない弟子たちに、他者に依拠するのではなく、自分の問題にして生きることを説き、修行を積んで釈尊の教えがわかってくると自己は避難所という通過点でしかないので、自己というものがないことに気づき、dhammaを避難所とし、最後にはそこからも離脱することを説く。

自らを灯明とうみょうとし、法を灯明としなさい。他を灯明とするのではありません。

自らを拠り所とし、法を拠り所としなさい。他を拠り所とするのではありません。

それは何故かというと、あらゆるものごとは、それぞれありのままで、真実のありようを伝えている。

だから僧侶たるもの、この身、心、感覚、そして様々な物事を、熱心かつ冷静に、また注意深く観つづけ、どう生きるかを考えねばなりません。

「自灯明法灯明じとうみょうほうとうみょう」と言われる有名な話で、釈尊の遺言ゆいごんとして伝えられています。

パーリ原典では灯明ではなく、島を意味する言葉が使われています。

暗闇の中、道を示してくれる灯火ともしび。そして、どんな流れの中でも決して揺るがない島。つまり、どちらも「拠り所」を表しています。

仏教徒にとって、釈尊はまさしく、拠り所でした。

「他を拠り所とするのではなく、自らを拠り所に、そして法を拠り所としなさい」

世の中には目を向けると、たくさん答えが用意されています。

特別な何かを拠り所としようとすると、いつもそれが自分とは関係のない遠くのことに思えました。

どんなに素晴らしい答えも、それはその人の答えであって私の答えではありません。

もちろん参考になりますが、最終的に苦しみから救うのは他ならぬ自分自身です。

だから、私自身の答えを見つけなくてはいけませんでした。

しかしそんな中で、気付いたことがありました。

私は他の何かに答えを求めようとして、肝心の苦しんでいた自分自身を置き去りにしていたということです。

苦しんでいる自分自身を見失ってしまっていては、そこからどうしたらいいのかもわかりません。

自分が今どこにいるのか知らなければ、どちらの方向に進むべきなのかもわかりません。

私はここに何か苦しみを解決する糸口を見つけた気がしました。

「では一体自分って何なんだろう……？」と改めて自分を見つめると、自分のことをわかっているつもりで、実は全然わかっていない自分がいました。

そこには、目を背けたくなる自分もいれば、無意識に見ないようにしていた自分もいました。

反対に自分でも驚くような自分もいました。

でも間違いなく、どれも紛れもない自分でした。

何も他に探しまわらなくても、誰にとっても一番身近にある自分に目を向ければ、そこにはたくさんのヒントが転がっていました。

それでは、自分が拠り所であるならば、私は他には頼ることなく生きているのか？

決してそんなことはありません。私が生きる上では、様々なものに頼って生きています。

空気が無ければ呼吸もできず、水が無ければ渇き、生物がいなければ食べる者も無く、飢え死にます。人がいなければ、私はこのように文章を書くことすらありません。

そういう事実も、自分を見つめれば必然的にくっついてきます。

この事実の下で生きている自分も、間違いなく自分ですから。

そこで重要になってくるのが法灯明です。

法というと、如何にも仰々ぎょうぎょうしく特別なものとして見られがちですが、私は自灯明も法灯明も、実はあまり違いがないと思っています。

入滅（涅槃）への禅定の順番　Mahāparinibbānasutta　Dīgha Nikāya 16　大般涅槃経　英訳

釈迦の入滅の様子が、「初禅から滅想受まで、「九次第定」を段々と上がって行き、そこから初禅まで段々と下って行き、そこから再び四禅まで上がったところで入滅した」と描写されており、第四禅定をして涅槃とする根拠とされた。

同経には釈迦が涅槃に入る前に座禅したとは説かれておらず、涅槃図は一般に右手を枕にして横になる姿勢で表わされる。

経典の伝達の未来

Āṇisutta　Saṁyutta Nikāya 20.7　楔経　英訳　The Drum-Peg

釈尊の虚空を扱っている深い意味を持つ経典を理解しようとする心をもたらしません。しかし、言葉として発せられると、人は耳を傾け、理解力があれば、これらを習得すべきものとみなすでしょう。

釈尊自身が自分の教えは将来気づかれずに失われていくと予想した、という説は誤謬である。

Ye pana te suttantā kavikatā kāveyyā cittakkharā cittabyañjanā bāhirakā sāvakabhāsitā, tesu bhaññamānesu sussūsissanti, sotaṁ odahissanti, aññā cittaṁ upaṭṭhāpessanti, te ca dhamme uggahetabbaṁ pariyāpuṇitabbaṁ maññissanti. Evametesaṁ, bhikkhave, suttantānaṁ tathāgatabhāsitānaṁ gambhīrānaṁ gambhīratthānaṁ lokuttarānaṁ suññatappaṭisaṁyuttānaṁ antaradhānaṁ bhavissati.

Those Suttantas uttered by the Tathāgata, deep, deep in meaning, not of the world, dealing with the void, to these when uttered, they will not listen, they will not lend a ready ear, they will not bring to them an understanding heart, they will not deem those doctrines that which should be learnt by heart, that which should be mastered. But those Suttantas which are made by poets, which are poetry, which are a manifold of words, a manifold of phrases, alien, the utterances of disciples, to these when uttered they will listen, they will lend a ready ear, they will bring an understanding heart, they will deem these doctrines that which should be learnt by heart, which should be mastered.

メッター瞑想 Paṭhama mettāsutta Aṅguttara Nikāya 4.125 　第一の慈経　　英訳　Love

聖人（Ariyās）によって育まれた禅定jhānāと、単に平凡な道を進んでいる人（assutavā puthujjano）の違いを明確に述べています。

平凡な道の人assutavāputhujjanoとは、色界禅定anāriya jhānaを育くんで10種類のmicchādiṭṭhi（誤謬の見解）をすでに取り除いていたとしても、

まだ、この世の性質である三相Tilakkhana（aniccā,dukkhā,anattā）を理解していない人を意味します。

同じ色界 rupavacaraの領域の禅定であっても2人の決定的な違いは、

聖人は決して欲界kāmalōkaに戻ってParinibbāna（死去の瞬間）に至ることはありませんが、

聖ならざる者anāriyās（三相を理解していない者）は欲界kāmalōkaに戻ってapāyā（31領域の下位４つの地獄・餓鬼・阿修羅・動物）界に転生する可能性があるということです。

聖人Ariyāsが渇望kāmarāga（ucceda pahāna捨断）を削除したのに対して、聖ならざる者は渇望を抑制した（vikkhambana pahāna）だけだからです。

62dvāsaṭṭhiyā種類の悪見 Brahmajālasutta DN 1 梵網経 　英訳　The Prime Net

ブッダが成道で見た「縁起の真理」　　　62種類の悪見について説く

修業の順序 Sāmaññaphalasutta　 DN 2　沙門果経　　英訳　The Fruits of the Ascetic Life

「順序だてて修業の方法」を説く

出家者が戒律を収めた後、初禅に入る前の段階として、この五蓋の除去がされることで、歓喜・喜悦、身体の軽安（きょうあん）・安楽・三昧が生じ、初禅へと入っていく準備が整うと述べられる。

議論をやめて明知と実践Ambaṭṭhasutta　DN 3　アンバッタ経　阿摩晝経（あまちゅう）英訳　With Ambaṭṭha

生まれ、氏姓、婚姻の議論をやめて、無上の明知と実践の完成を見ることが出来ると説かれる

無理に変えない　Soṇadaṇḍasutta DN4　ソーナダンダ経　種徳経（しゅとくきょう）　英訳　With Soṇadaṇḍa

智慧と戒めを聞くも法眼が開かないバラモンのソーナダンダ

ブッダは人を無理に変えようとはしていない姿勢がわかる経。

祭式で法眼が開くKūṭadantasutta　DN 5　クータダンタ経　究羅壇頭経　英訳　With Kūṭadanta

すぐれた祭式で法眼が開くお経

霊魂と身体の同異は？　俱分解脱　Mahālisutta DN 6　マハーリ経　摩訶梨経　英訳　With Mahāli

天の色、天の音声、霊魂と身体は同じものであるのか、異なるものであるのか？の回答をブッダが説く。

三結、五下分結、俱分解脱などを説く経。漢訳にはない経

慈悲喜捨の瞑想　　小中大の戒律Tevijjasutta 　DN 13　三明経　　英訳　The Three Knowledges

慈悲喜捨の瞑想についての経　　　　小中大の戒律について

実践方法　Mahāsatipaṭṭhāna sutta DN 22　大念処経　英訳The Discourse of Mindfulness

瞑想の実践方法が詳しく説かれた経。

心の汚れを布の汚れに喩える経　　Vatthasutta 　Majjhima Nikāya 7　布喩経　　英訳　Cloth

慈悲喜捨の瞑想

Mahāsaccakasutta　 Majjhima Nikāya 36　　英訳　　The Greater Discourse to Saccaka

身体の修行と心の修行、ブッダの苦行を説く

ガンタの子サッチャカがブッダを批判

Mahārāhulovādasutta Majjhima Nikāya 62　大ラーフラ教誡経 英訳　The Discourse of Advice to Rāhula

ラーフラに入出息念の修法を教える経

慈悲喜捨と不浄、無常の教えも教えている。

「四禅」の瞑想　Bhaddālisutta　 Majjhima Nikāya 65　跋陀和利経　　英訳　　To Bhaddāli

ユニークな仏弟子のエピソード　　　　　一日一回の食事の戒律

Mahāsakuludāyisutta　 Majjhima Nikāya 77　箭毛経（せんもうきょう）　英訳　reater Discourse to Sakuludāyin

七科三十七道品（しちかさんじゅうしちどうほん）について説く

Māratajjanīyasutta　 Majjhima Nikāya 50　降魔経　　　英訳　The Rebuke of Māra

モッガラーナの前世は悪魔ドゥーシン

Brahmanimantanikasutta　 Majjhima Nikāya 49　梵天招待経　　英訳　On the Invitation of Brahmā

悪魔パーピマン　　

Cūḷataṇhāsaṅkhayasutta 　Majjhima Nikāya 37　愛尽経　英訳　The Lesser Discourse on the Complete Elimination of Craving

モッガラーナの神通力　　

モッガラーナが帝釈天がいる天の宮殿に神通力で行き、帝釈天が怠惰だったので、足の親指で帝釈天自慢のヴェージャヤンタ宮殿をゆさぶり激動させるエピソード

業の浄化方法　Ambalaṭṭhikarāhulovādasutta Majjhima Nikāya 61　

アンバラッティカー・ラーフラ教誡経　　別名　羅云経（らうんきょう）英訳

ブッダが実の息子ラーフラに戒めを説く経

So I have heard. At one time the Buddha was staying near Rājagaha, in the Bamboo Grove, the squirrels’ feeding ground.

Now at that time Venerable Rāhula was staying at Ambalaṭṭhikā. Then in the late afternoon, the Buddha came out of retreat and went to Ambalaṭṭhika to see Venerable Rāhula. Rāhula saw the Buddha coming off in the distance. He spread out a seat and placed water for washing the feet. The Buddha sat on the seat spread out, and washed his feet. Rāhula bowed to the Buddha and sat down to one side.

Then the Buddha, leaving a little water in the pot, addressed Rāhula, “Rāhula, do you see this little bit of water left in the pot?”

“Yes, sir.”

“That’s how little of the ascetic’s nature is left in those who are not ashamed to tell a deliberate lie.”

Then the Buddha, tossing away what little water was left in the pot, said to Rāhula, “Do you see this little bit of water that was tossed away?”

“Yes, sir.”

“That’s how the ascetic’s nature is tossed away in those who are not ashamed to tell a deliberate lie.”

Then the Buddha, turning the pot upside down, said to Rāhula, “Do you see how this pot is turned upside down?”

“Yes, sir.”

“That’s how the ascetic’s nature is turned upside down in those who are not ashamed to tell a deliberate lie.”

Then the Buddha, turning the pot right side up, said to Rāhula, “Do you see how this pot is vacant and hollow?”

“Yes, sir.”

“That’s how vacant and hollow the ascetic’s nature is in those who are not ashamed to tell a deliberate lie.

Suppose there was a royal bull elephant with tusks like chariot-poles, able to draw a heavy load, pedigree and battle-hardened. In battle it uses its fore-feet and hind-feet, its fore-quarters and hind-quarters, its head, ears, tusks, and tail, but it still protects its trunk. So its rider thinks: ‘This royal bull elephant still protects its trunk. It has not yet given its life.’ But when that royal bull elephant … in battle uses its fore-feet and hind-feet, its fore-quarters and hind-quarters, its head, ears, tusks, and tail, and its trunk, its rider thinks: ‘This royal bull elephant … in battle uses its fore-feet and hind-feet, its fore-quarters and hind-quarters, its head, ears, tusks, and tail, and its trunk. It has given its life. Now there is nothing that royal bull elephant would not do.’

In the same way, when someone is not ashamed to tell a deliberate lie, there is no bad deed they would not do, I say. So you should train like this: ‘I will not tell a lie, even for a joke.’

What do you think, Rāhula? What is the purpose of a mirror?”

“It’s for checking your reflection, sir.”

“In the same way, deeds of body, speech, and mind should be done only after repeated checking.

When you want to act with the body, you should check on that same deed: ‘Does this act with the body that I want to do lead to hurting myself, hurting others, or hurting both? Is it unskillful, with suffering as its outcome and result?’ If, while checking in this way, you know: ‘This act with the body that I want to do leads to hurting myself, hurting others, or hurting both. It’s unskillful, with suffering as its outcome and result.’ To the best of your ability, Rāhula, you should not do such a deed. But if, while checking in this way, you know: ‘This act with the body that I want to do doesn’t lead to hurting myself, hurting others, or hurting both. It’s skillful, with happiness as its outcome and result.’ Then, Rāhula, you should do such a deed.

While you are acting with the body, you should check on that same act: ‘Does this act with the body that I am doing lead to hurting myself, hurting others, or hurting both? Is it unskillful, with suffering as its outcome and result?’ If, while checking in this way, you know: ‘This act with the body that I am doing leads to hurting myself, hurting others, or hurting both. It’s unskillful, with suffering as its outcome and result.’ Then, Rāhula, you should desist from such a deed. But if, while checking in this way, you know: ‘This act with the body that I am doing doesn’t lead to hurting myself, hurting others, or hurting both. It’s skillful, with happiness as its outcome and result.’ Then, Rāhula, you should continue doing such a deed.

After you have acted with the body, you should check on that same act: ‘Does this act with the body that I have done lead to hurting myself, hurting others, or hurting both? Is it unskillful, with suffering as its outcome and result?’ If, while checking in this way, you know: ‘This act with the body that I have done leads to hurting myself, hurting others, or hurting both. It’s unskillful, with suffering as its outcome and result.’ Then, Rāhula, you should confess, reveal, and clarify such a deed to the Teacher or a sensible spiritual companion. And having revealed it you should restrain yourself in future. But if, while checking in this way, you know: ‘This act with the body that I have done doesn’t lead to hurting myself, hurting others, or hurting both. It’s skillful, with happiness as its outcome and result.’ Then, Rāhula, you should live in rapture and joy because of this, training day and night in skillful qualities.

When you want to act with speech, you should check on that same deed: ‘Does this act of speech that I want to do lead to hurting myself, hurting others, or hurting both? …’ …

If, while checking in this way, you know: ‘This act of speech that I have done leads to hurting myself, hurting others, or hurting both. It’s unskillful, with suffering as its outcome and result.’ Then, Rāhula, you should confess, reveal, and clarify such a deed to the Teacher or a sensible spiritual companion. And having revealed it you should restrain yourself in future. But if, while checking in this way, you know: ‘This act of speech that I have done doesn’t lead to hurting myself, hurting others, or hurting both. It’s skillful, with happiness as its outcome and result.’ Then, Rāhula, you should live in rapture and joy because of this, training day and night in skillful qualities.

When you want to act with the mind, you should check on that same deed: ‘Does this act of mind that I want to do lead to hurting myself, hurting others, or hurting both? …’ …

If, while checking in this way, you know: ‘This act of mind that I have done leads to hurting myself, hurting others, or hurting both. It’s unskillful, with suffering as its outcome and result.’ Then, Rāhula, you should be horrified, repelled, and disgusted by that deed. And being repelled, you should restrain yourself in future. But if, while checking in this way, you know: ‘This act with the mind that I have done doesn’t lead to hurting myself, hurting others, or hurting both. It’s skillful, with happiness as its outcome and result.’ Then, Rāhula, you should live in rapture and joy because of this, training day and night in skillful qualities.

All the ascetics and brahmins of the past, future, and present who purify their physical, verbal, and mental actions do so after repeatedly checking. So Rāhula, you should train yourself like this: ‘I will purify my physical, verbal, and mental actions after repeatedly checking.’”

That is what the Buddha said. Satisfied, Venerable Rāhula was happy with what the Buddha said.

このように聞きました。ある時、ブッダはリスの餌場である竹林のラージャガハの近くに滞在していました。

その時、尊者ラーフラはアンバラティカーに滞在していました。それから午後遅く、ブッダは瞑想する家から出てきて、尊者ラーフラに会うためにアンバラティカに行きました。ラーフラは仏陀が遠くから向かってくるのを見ました。彼は椅子を広げ、足を洗うための水を用意しました。釈迦は座敷に座り、足を洗いました。

ラーフラはブッダに頭を下げ、片側に座りました。

それからブッダは「鍋に少量の水を残っているのがわかりますか？」とラーフラに話しかけました。

「はい、尊者」

それからブッダは、鍋に残っていたわずかな水を捨てて、ラーフラに言いました。

「故意に嘘をつくことを恥じない者には、このように修行者の本性はこのように捨てられます。」

「はい、尊者」

それからブッダは鍋をひっくり返し、ラーフラに言いました。

「故意に嘘をつくことを恥じない人は、こうして修行者の本性を壊してしまうのです」

「はい、尊者」

それからブッダは、鍋の底を上にしてラーフラに言いました。

「故意に嘘をつくことを恥じない人は、このように修行者の本性がひっくり返るのです。」

「はい、尊者」

「故意に嘘をつくことを恥じない者は、修行者の本性は、このように空虚です。

戦車の棒のような牙を持ち、重い荷物を引くことができ、血統がよく、戦いに強い王室の雄象がいたとします。戦いでは、前足と後足、前四半身と後四半身、頭、耳、牙、尾を使いますが、それでも鼻（体幹？）は守っています。

その乗り手はこう考えます。それはまだその命をかけることはしません。

しかし、その王室の雄象が戦いで前足と後足、前四半部と後四半部、頭、耳、牙、尾、および胴体を使用するとき、その乗り手は次のように考えます。

「この王室の雄象は…戦いでは、前足と後足、前四半身と後四半身、頭、耳、牙、尾、および胴体を使用します。それは命をかけています。今では、雄象がしないことは何もありません。」

「同じように、誰かが故意に嘘をつくことを恥じていない場合、彼らがしない悪い行為はない、と私は言います。

冗談でも嘘はつかないことです。」

「どう思いますか、ラーフラ？鏡の目的は何ですか？」

「それは自分の反応を確認するためです、尊者」

「同じように、身も口も心も、確認を重ねてから行うべきものです。

体を使って行動したいときは、同じ行為をチェックする必要があります。

このようにチェックしているうちに、『自分がしたい体での行為は、自分自身を傷つけたり、他人を傷つけたり、その両方を傷つけたりすることにつながるのであれば、未熟だということです。

ラーフラよ、できる限りそのような行為をすべきではありません。

しかし、このようにチェックしているうちに、「私がしたい体でのこの行為は、自分自身を傷つけたり、他の人を傷つけたり、その両方を傷つけたりすることがないのであれば、それは熟練されたもので、結果として幸福をもたらします。

体を使って行動している間、同じ行為をチェックする必要があります。その結果と結果として苦しみを伴う、それは未熟ですか?」このようにチェックしている間に、「私が行っている体でのこの行為は、自分自身を傷つけたり、他の人を傷つけたり、その両方を傷つけたりすることにつながります。それは未熟であり、その結果と結果として苦しみを伴います。

しかし、このようにチェックしているときに、「私が行っている体でのこの行為は、自分自身を傷つけたり、他の人を傷つけたり、その両方を傷つけたりすることはありません。それは巧みで結果として幸福をもたらします。

体を使って行動した後、同じ行為をチェックする必要があります。その結果と結果として苦しみを伴う、それは未熟ですか？その結果と結果として苦しみを伴う、それは未熟です、そして、それを明らかにしたので、あなたは将来自制する必要があります。しかし、このようにチェックしている間に、「私が行った体に対するこの行為は、自分自身を傷つけたり、他の人を傷つけたり、その両方を傷つけたりすることはなく、円熟されたものです。

それなら、ラーフラよ、あなたはこのために恍惚と喜びの中で生き、昼夜を問わず熟練した資質を訓練しなければなりません。

言葉を使って行動したいときは、同じ行為をチェックする必要があります。 …』 …

このようにチェックしているときに、「私が行ったこの言論行為は、自分自身を傷つけたり、他の人を傷つけたり、その両方を傷つけたりすることにつながります.その結果と結果として苦しみを伴う、それは未熟です。

そして、それを明らかにしたので、あなたは将来自制する必要があります。しかし、このようにチェックしているときに、「私が行ったこの言論行為は、自分自身を傷つけたり、他の人を傷つけたり、その両方を傷つけたりすることにはなりません.それは巧みであり、その結果と結果は幸福です。」それなら、ラーフラよ、あなたはこのために恍惚と喜びの中で生き、昼夜を問わず巧みな資質を訓練しなければなりません。

心を使って行動したいときは、同じ行為をチェックする必要があります。 …』 …

このようにチェックしているときに、「私が行ったこの心の行動は、自分自身を傷つけたり、他の人を傷つけたり、その両方を傷つけたりすることにつながります.それは未熟であり、その結果と結果として苦しみを伴います。そして反発されたら、今後は自粛するべきです。しかし、このようにチェックしているときに、「私が行ったこの心での行為は、自分自身を傷つけたり、他の人を傷つけたり、その両方を傷つけたりすることにはなりません.それは巧みであり、その結果と結果は幸福です。」それなら、ラーフラよ、あなたはこのために恍惚と喜びの中で生き、昼夜を問わず巧みな資質を訓練しなければなりません。

「過去、未来、現在のすべての修行者とバラモンは、身体的、言語的、精神的行為を繰り返し確認することで、浄化します。ですから、ラーフラよ、「身と心と精神の確認を重ねて、浄化する」と自分自身を鍛えてください」

仏陀はそうおっしゃいました。

ラーフラ尊者はブッダの言葉に幸せを覚えました。

輪廻転生から離脱する倶分解脱

そのためには

ヴィパッサナー瞑想や慈悲喜捨の瞑想で煩悩を吹き消して心解脱と

四聖諦を理解して慧解脱をする。

長部経典　第１５経「大縁方便経」

【心解脱】煩悩の汚れがない、心の解脱と

【慧解脱】智慧の解脱で無明を消滅すると

【倶分解脱】に至る

長部経典　第３３経「等誦経」の七つ一組より

無色界の瞑想によって物質的存在（色・しき）から解脱（心解脱）「こころが解き放たれた境地」

智慧によって精神的存在（名・みょう）から解脱（慧解脱）「智慧によって解き放たれた境地」

その他にも長部経典17経「大善見王経」や、

第28経「自歓喜経」などにも倶分解脱の教えはでてきます。

この倶分解脱の考え方は、のちに

「心の解脱」・・・渇愛を消滅して獲得される。

「智慧の解脱」・・・無明を消滅して得られる。

と表現と捉え方が展開されていくようになるとも解説されています。

無明（むみょう）は真理にくらく、四諦の理解がないこと。

ラーフラの解脱　Cūḷarāhulovādasutta　Majjhima Nikāya 147教羅睺羅小経

英訳The Shorter Discourse of Advice to Rāhula

Thus have I heard. On one occasion the Blessed One was living at Sāvatthī in Jeta’s Grove, Anāthapiṇḍika’s Park.

Then, while the Blessed One was alone in meditation, a thought arose in his mind thus: “The states that ripen in deliverance have ripened in Rāhula. Suppose I were to lead him on further to the destruction of the taints.”

Then, when it was morning, the Blessed One dressed, and taking his bowl and outer robe, went into Sāvatthī for alms. When he had walked for alms in Sāvatthī and had returned from his almsround, after his meal he addressed the venerable Rāhula thus:

“Take your sitting cloth with you, Rāhula; let us go to the Blind Men’s Grove to pass the day.”

“Yes, venerable sir,” the venerable Rāhula replied, and taking his sitting cloth with him, he followed close behind the Blessed One.

Now on that occasion many thousands of deities followed the Blessed One, thinking: “Today the Blessed One will lead the venerable Rāhula further to the destruction of the taints.” Then the Blessed One went into the Blind Men’s Grove and sat down at the root of a certain tree on a seat made ready. And the venerable Rāhula paid homage to the Blessed One and sat down at one side. The Blessed One then said to the venerable Rāhula:

“Rāhula, what do you think? Is the eye permanent or impermanent?” —“Impermanent, venerable sir.”—“Is what is impermanent suffering or happiness?”—“Suffering, venerable sir.”—“Is what is impermanent, suffering, and subject to change fit to be regarded thus: ‘This is mine, this I am, this is my self’?”—“No, venerable sir.”

“Rāhula, what do you think? Are forms…Is eye-consciousness … …Is eye-contact…Is anything comprised within the feeling, perception, formations, and consciousness that arise with eye-contact as condition permanent or impermanent?”—“Impermanent, venerable sir.”—“Is what is impermanent suffering or happiness?”—“Suffering, venerable sir.”—“Is what is impermanent, suffering, and subject to change fit to be regarded thus: ‘This is mine, this I am, this is my self’?”—“No, venerable sir.”

“Rāhula, what do you think? Is the ear permanent or impermanent?…Is the nose permanent or impermanent?…Is the tongue permanent or impermanent?…Is the body permanent or impermanent?…Is the mind permanent or impermanent?…Are mind-objects…Is mind-consciousness…Is mind-contact…Is anything comprised within the feeling, perception, formations, and consciousness that arise with mind-contact as condition permanent or impermanent?”—“Impermanent, venerable sir.”—“Is what is impermanent suffering or happiness?”—“Suffering, venerable sir.”—“Is what is impermanent, suffering, and subject to change fit to be regarded thus: ‘This is mine, this I am, this is my self’?”—“No, venerable sir.”

“Seeing thus, Rāhula, a well-taught noble disciple becomes disenchanted with the eye, disenchanted with forms, disenchanted with eye-consciousness, disenchanted with eye-contact, and disenchanted with anything comprised within the feeling, perception, formations, and consciousness that arise with eye-contact as condition.

“He becomes disenchanted with the ear…He becomes disenchanted with the nose…He becomes disenchanted with the tongue…He becomes disenchanted with the body…He becomes disenchanted with the mind, disenchanted with mind-objects, disenchanted with mind-consciousness, disenchanted with mind-contact, and disenchanted with anything comprised within the feeling, perception, formations, and consciousness that arise with mind-contact as condition.

“Being disenchanted, he becomes dispassionate. Through dispassion his mind is liberated. When it is liberated there comes the knowledge: ‘It is liberated.’ He understands: ‘Birth is destroyed, the holy life has been lived, what had to be done has been done, there is no more coming to any state of being.’”

That is what the Blessed One said. The venerable Rāhula was satisfied and delighted in the Blessed One’s words. Now while this discourse was being spoken, through not clinging the venerable Rāhula’s mind was liberated from the taints. And in those many thousands of deities there arose the spotless immaculate vision of the Dhamma: “All that is subject to arising is subject to cessation.”

このように私は聞ききました。ある時、釈尊はアナタピニカ公園のジータの森にあるサーヴァティーに住んでいました。

その時に釈尊が一人で瞑想している間に、彼の心に次のような考えが浮かびました。「

私がラーフラをさらに汚れの消滅へと導くとしよう。」

朝になると、釈尊は服を着て、鉢と上着を持ってサーヴァティーに施しに行きました。彼がサーヴァッティで施しを求めて歩き、施し場から戻ったとき、食事の後、彼はラーフラに次のように呼びかけました。

「ラーフラ、座布団を持って行きなさい。一日を過ごすために盲人の森に行きましょう。」

その時、何千もの神々が釈尊に従っており、「今日、釈尊はラーフラをさらに汚れの消滅へと導くだろう」と考えました。それから釈尊は盲人の森に入り、１つの木の根元に用意された椅子に座りました。そして、ラーフラは釈尊に敬意を表し、一方の側に座りました。釈尊はそれからラーフラにこう言いました：

「ラーフラ、あなたはどう思いますか？目は永続的なものですか、それとも非永続的なものですか?」

「非永続的なものです、尊師」

「非永続的なものは苦しみもしくは幸福ですか?」

「苦しみです。、尊師」

「非永続的なものであり、苦しみであり、変化しやすいものは、次のように見なすのに適していますか?

これは私のものです、これは私です、これは私の自己です」

「いいえ、尊師。」

「ラーフラ、あなたはどう思いますか？　形となっているもの、目を介する意識、目に触れることが条件となって感覚、知覚、思考回路、意識によって構成されるものは永続的ですか、それとも非永続的ですか？

「非永続的なものです、尊師」

「つかの間のものは苦しみ、それとも幸せとは何ですか?」

「苦しみです、尊師」

「はかないもの、苦しみ、変化するものを、次のように見なすのに適していますか？

これは私のものであり、これは私であり、これは私の自己である、と」

「いいえ、尊師。」

「ラーフラ、あなたはどう思いますか？耳は永続的か非永続的か?…鼻は永続的か非永続的か?…舌は永続的か非永続的か?…身体は永続的か非永続的か?…心は永続的か非永続的か?

心の対象、心の意識、マインドに触れることが条件となって生じる感覚、知覚、思考回路、意識で構成されるものは永続的もしくは非永続的ですか？

「非永続的なものです、尊師」

「では非永続的なものは苦しみですか、それとも幸福ですか？」

「苦しみです、尊師。」

「永続的ではなく、苦しみ、変化するものは、『これは私のものであり、これは私であり、これは私の自己です』と見なすのにふさわしいでしょうか？」

「いいえ、尊師。」

このように世界を見て、よく教えられた高貴な弟子であるラーフラは、目に幻滅し、形に幻滅し、目の意識に幻滅し、目に触れるものに幻滅し、目に触れることで発生する感覚、知覚、思考回路、および意識に含まれるすべてのものに幻滅しました。

ラーフラは耳に幻滅し、鼻に幻滅し、舌に幻滅し、体に幻滅し、心に幻滅し、心の対象に幻滅し、心の意識に幻滅し、心に触れるものに幻滅し、心に触れることで生じる感覚、知覚、思考回路、意識に含まれるあらゆるものに幻滅しました。

「幻滅することで寂静になります。寂静を通して、心は解放されます。解放されることで智慧が生じます。

「解放されたこと」を彼は理解します。

「誕生は破壊され、聖なる生活が生じます。なされなければならなかったことは行われました。存在のいかなる状態をもはや迎えることはありません。」

これが釈尊が説かれたことです。尊者ラーフラは釈尊の言葉に満足して喜びました。こうして、この話が説かれている時に、尊者ラーフラの心は執着がなくなり、汚れから解放されました。そして、何千もの神々の中に、染みと汚れのないdhammaのビジョンが現れました。

「すべての生じるものは消滅する」

Cātumasutta　 Majjhima Nikāya 67　舎利弗摩訶目連遊四衢経（しゃりふつもくれんゆうしくきょう）　

英訳　At Cātumā

マガダ国にあってビンビサーラ王の保護を受けた竹林精舎のビハーラにサリープッタが500人の新人を連れてきた時にあまりにうるさかったので、ガンタ・クティから出てきた釈尊が瞑想する前には沈黙が必要なことを説いた。

ブッダがサーリプッタを残念に思う珍しい経で、出家した時に起こる４つの危険性を説く。

このように聞きました。あるときブッダはミロバランの木立にあるチャートゥマーの近くに滞在していました。

その時、サーリプッタとモッガラーナが率いる約 500 人の僧侶がブッダに会うためにチャートゥマーに到着しました。そして、訪問している托鉢僧は、居住している托鉢僧と歓談を交わし、宿泊施設を準備し、ボウルとローブを片付けている間、大騒ぎをしていました。

するとブッダは尊者アーナンダに言いました。漁師が底網を引っ張っているかのようですね。

そしてアーナンダは彼に何が起こったのかを話しました。

「それでは、アーナンダ、私の名において、師が彼らを召喚したことを托鉢僧たちに伝えてください。」

「はい」とアーナンダは答えた。彼はそれらの托鉢僧たちのもとに行き、「尊者、師があなたたちを召喚しました」と言いました。

それから彼らは席から立ち上がり、釈尊のもとに行き、お辞儀をして、一方の側に座った。

ブッダは彼らにこう言いました。

「托鉢のみなさん、あの恐ろしい大騒ぎは何だったのでしょう？まるで漁師が底網を引いているようでした。」

そして托鉢僧たちは彼に何が起こったのかを話しました。

「去れ、托鉢者よ、私はあなたを解雇します。あなたは私の前に留まるべきではありません。」

「はい」と托鉢僧は答えました。彼らは席から立ち上がり、お辞儀をし、敬意を表して仏陀を一周し、仏陀を右側に保ちました。彼らは下宿を整え、茶碗とローブを持って立ち去りました。

その時、チャートゥマーのサキャ派の人々は、ある用事で集会所に集まっていました。托鉢僧たちが遠くから去っていくのを見て、彼らは彼らに近づいて言った。

「僧侶サンガはブッダによって解任されました。」

「それでは、尊者の皆様、ちょっとここに座ってください。願わくば、釈尊の気持ちを取り戻すことができますように。」

「はい、マスターよ」と僧侶たちは答えました。

それから、チャートゥマーのサーキャはブッダに近づき、お辞儀をし、片側に座り、彼に言った：

「ブッダが僧侶サンガを認めてくださいますように！

仏陀が僧侶サンガを歓迎しますように！

仏陀がかつてのように今も托鉢僧を支えてくださいますように！

ここには後輩で、最近出家して、教えと修行に来たばかりの新参の僧侶がいます。

仏に会えなければ、その決意も変わってバラバラになるかもしれません。

若い苗は水を与えられないと、バラバラになる可能性がありますように。

同じように、ここには後輩で、最近出家して、教えと修行に来たばかりの新参の托鉢僧がいます。

仏に会えなければ、その決意も変わってバラバラになるかもしれません。

若い子牛が母親に会わないと、バラバラになる可能性がありますように。

同じように、ここには後輩で、最近出家して、教えと修行に来たばかりの新参の托鉢僧がいます。

仏に会えなければ、その決意も変わってバラバラになるかもしれません。

仏陀が僧侶サンガを認めてくださいますように！仏陀が僧侶サンガを歓迎しますように！仏陀がかつてのように今も托鉢僧を支えてくださいますように！」

その時、ブラフマーのSahampatiはブッダが何を考えているかを知りました。

腕を伸ばしたり縮めたりするのと同じくらい簡単に、彼はブラフマーの領域から姿を消して、ブッダの前に再び現れました。彼は衣を片方の肩にかけ、合わせた手を仏に向かって上げて言いました。

「ブッダが僧侶サンガを認めてくださいますように！

仏陀が僧侶サンガを歓迎しますように！

仏陀がかつてのように今も托鉢僧を支えてくださいますように！

ここには後輩で、最近出家して、教えと修行に来たばかりの新参の僧侶がいます。

仏に会えなければ、その決意も変わってバラバラになるかもしれません。

若い苗は水を与えられないと、バラバラになる可能性がありますように。

同じように、ここには後輩で、最近出家して、教えと修行に来たばかりの新参の托鉢僧がいます。

仏に会えなければ、その決意も変わってバラバラになるかもしれません。

若い子牛が母親に会わないと、バラバラになる可能性がありますように。

同じように、ここには後輩で、最近出家して、教えと修行に来たばかりの新参の托鉢僧がいます。

仏に会えなければ、その決意も変わってバラバラになるかもしれません。」

Cātumā と Brahmā Sahampati のサーキャ族は、苗木と子牛の譬え話でブッダの信頼を回復することができました。

それからマハーモガラナ尊者は托鉢僧たちにこう言いました。ブッダの信頼はサキャ派のCātumāとBrahmā Sahampatiの苗木と子牛の譬え話で回復されました。」

それから托鉢僧たちは席から立ち上がり、茶碗と衣を持って仏陀のところに行き、お辞儀をして、一方の側に座りました。

仏陀はサーリプッタ尊者に言いました。

「先生、私はこう思いました：『釈尊は托鉢僧サンガを解任した。今、釈尊は受動的なままで、現在の人生で至福の瞑想に住んでいるのかと』

「サーリプッタ、ちょっと待って！もう二度とそんなこと思うではない！」

するとブッダはマハーモッガラナ尊者に言いました。

「私によってサンガが解雇されたと思いましたか？」

「先生、私はこう思いました：『ブッダは托鉢僧サンガを解任した。今、彼は受動的なままであり、現在の人生で至福の瞑想に住んでいます、その間、サーリプッタ尊者と私は托鉢僧のサンガを導きます、と』」

「よしよし、モッガラーナ！私が僧侶サンガを率いるか、サーリプッタとモッガラーナを率いるかのどちらかです。」

するとブッダは僧侶たちにこう言いました。

「托鉢者よ、水に入るときは四つの危険を予期しなければならない。どのような4つか？

波、ワニ、渦潮、ガビアルの危険性です。これらは、水に入るすべての人が予期すべき 4 つの危険です。

同じように、この教えと訓練で平凡な生活から出家する者は、4 つの危険を予測する必要があります。

波、ワニ、渦潮、ガビアルの危険性とはどのようなものでしょうか？

托鉢の皆さん、波の危険とは何ですか？それは、平凡な生活から出家したときに起こります。

悲しみ、嘆き、痛み、悲しみ、苦悩によって。私は苦しみに圧倒され、苦しみに巻き込まれています。願わくば、この苦しみの塊全体に終止符を打つことができますように。

修行を進める時の助言と指示は

『このように出ればいい、そのように入ればいい。

正面はこう見ればいいし、横はこう見ればいい。

手足をこのように収縮させ、あのように伸ばせばいい。

このように、上着をつけ、鉢を持つべきです』と托鉢僧は考えています。

そして、托鉢僧は子供や孫だと思っている信者たちに助言し、指示することができると考えてしまいます。　

そしてたとえば、修業を辞し、下界に戻ることを指示することもできると考えてしまいます。

波の危険を恐れぬ者は、修業を辞し、下界に戻る者です。

「波の危険」とは、怒りと苦痛を表す言葉です。

そして托鉢の皆さん、沼地のワニの危険性は何ですか？それは平凡な生活から出家したときです。

修行を進める時の助言と指示は

『あるものは食べたり飲んでもいいが、あるものはいけない。食べることを許されるものと許されないものがある。適切なタイミングで食べることはできるが、間違ったタイミングで食べることはできない』と托鉢僧は考えています。

かつて信徒の時には、欲する物を食べて飲み、欲しない物を取らなかった。許されるものも許されないものも適切な時も適切でない時も食べたり飲んだりしていた。

そして、誠実な一般の人は、適切ではない時間でもさまざまなおいしい食べ物を私たちに与えてくれます。

しかし、托鉢者は、自分の口を塞ぐことができると思っています。

こうして彼らは修業を辞し、日常生活に戻ります。

ワニの危険を恐れる者は、修業を辞し、下界に戻る者です。

「沼地ワニの危険」とは、大食いのことです。

そして托鉢の皆さん、渦潮の危険とは何ですか？それは平凡な生活から出家したときです。

悲しみ、嘆き、痛み、悲しみ、苦悩によって。私は苦しみに圧倒され、苦しみに巻き込まれています。願わくば、この苦しみの塊全体に終止符を打つことができますように」

托鉢僧の中には、朝、衣を着て、鉢と衣を持って、体、言葉、心を守ることなく、施しを求めて村や町に入る者がいます。マインドフルネスを確立せず、感覚能力を抑制せずに。

そこで彼らは、家の人やその子供が、5種類の官能的な刺激を与えられ、それらを楽しんでいるのを見ます。

托鉢僧は家の住人が裕福であることは事実で、彼らは富を享受し、功績を残すことができる、考えます。

渦潮の危険を恐れて修業を辞し、下界に戻る者がいます。

「うずしおの危険」とは、五感の刺激の総称です。

そして托鉢の皆さん、ガリアルの危険性は何でしょうか？それは平凡な生活から出家したときに起こります。

托鉢僧の中には、朝、衣を着て、鉢と衣を持って、体、言葉、心を守ることなく、施しを求めて村や町に入る者がいます。

マインドフルネスを確立せず、感覚能力を抑制せずに行くと、露出度の高い薄着の女性を見ることがあり、欲望が生じます。

彼らは修行をやめて、より少ない生活に戻ります。

これは、ガリアルの危険を恐れて修行を辞退し、より少ない生活に戻る者と呼ばれます。

「ガビアルの危険」とは女性のことです。

これらが、教えと修行を実践する日常生活から出家する者が予期すべき4つの危険です。」

釈尊がこう説くと、托鉢者は満足しました。

愚者を道伴れにするな　Bālavagga　Dhammapada　　法句経　愚者品　英訳　The Chapter about Fools

60 眠れない人には夜は長く、疲れた人には一里の道は遠い。正しい真理を知らない愚かな者どもには、生死の道のりは長い。

61 旅に出て、もしも自分よりもすぐれた者か、または自分にひとしい者に出会わなかったら、むしろきっぱりと独りで行け。愚かな者を道伴れにしてはならぬ。

62 「わたしには子がある。わたしには財がある」と思って愚かな者は悩む。しかしすでに自己が自分のものではない。ましてどうして子が自分のものであろうか。どうして財が自分のものであろうか。

63 もしも愚者がみずから愚であると考えれば、すなわち賢者である。愚者でありながら、しかもみずから賢者だと思う者こそ、「愚者」だと言われる。

64 愚かな者は生涯賢者につかえても、真理を知ることが無い。匙(さじ)が汁の味を知ることができないように。

他人ではなく自分の言動を見よPupphavagga　Dhammapada　法句経花品　英訳The Chapter about Flowers

50 他人の過失を見るなかれ。他人のしたこととしなかったことを見るな。ただ自分のしたこととしなかったこととだけを見よ。

51 うるわしく、あでやかに咲く花でも、香りの無いものがあるように、善く説かれたことばでも、それを実行しない人には実りがない。

52 うるわしく、あでやかに咲く花で、しかも香りあるものがあるように、善く説かれたことばも、それを実行する人には、実りがある。

53 うず高く花を集めて多くの華鬘(はなかざり)をつくるように、人として生まれまた死ぬべきであるならば、多くの善いことをなせ。

自分を整えてから他者を教えよAttavagga　Dhammapada　法句経　我品　英訳　The chapter about the self

158. Attānameva paṭhamaṃ, patirūpe nivesaye;

まず、自己をこそ相応しいところに住立させるべし。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
Attānam		名	an	男	単	対	自己、我
eva		不変	‐	‐	‐	‐	まさに、のみ、じつに
paṭhamaṃ,		形	a	中	単	副対	第一の､最初の
patirūpe		形	a	中	単	処	適当な、相応しい、像似の
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
nivesaye;	ni-viś使	動	願	能	単	三	住立させる、確立させる、入らせる

157 もしもひとが自己を愛しいものと知るならば、自己をよく守れ。賢い人は、夜の三つの区分のうちの一つだけでも、つつしんで目ざめておれ。

158 先ず自分を正しくととのえ、次いで他人を教えよ。そうすれば賢明な人は、煩わされて悩むことが無いであろう。

159 他人に教えるとおりに、自分でも行なえ──。自分をよくととのえた人こそ、他人をととのええるであろう。自己は実に制し難い。

160 自己こそ自分の主である。他人がどうして(自分の)主であろうか？　自己をよくととのえたならば、得難き主を得る。

161 自分がつくり、自分から生じ、自分から起った悪が知慧悪しき人を打ちくだく。──金剛石が宝石を打ちくだくように。

162 極めて性の悪い人は、仇敵がかれの不幸を望むとおりのことを、自分に対してなす。──蔓草が沙羅の木にまといつくように。

163 善からぬこと、己れのためにならぬことは、なし易い。ためになること、善いことは、実に極めてなし難い。

164 愚かにも、悪い見解にもとづいて、真理に従って生きる真人・聖者たちの教えを罵るならば、その人は悪い報いが熟する。──カッタカという草は果実が熟すると自分自身が滅びてしまうように。

165 みずから悪をなすならば、みずから汚れ、みずから悪をなさないならば、みずから浄まる。浄いのも浄くないのも、各自のことがらである。人は他人を浄めることができない。

166 たとい他人にとっていかに大事であろうとも、(自分ではない)他人の目的のために自分のつとめをすて去ってはならぬ。自分の目的を熟知して、自分のつとめに専念せよ。

孤独を知ると恐れなく喜びを知る

Sukhavagga Dhammapada　法句経　楽品　英訳　Happiness

197 怨みをいだいている人々のあいだにあって怨むこと無く、われらは大いに楽しく生きよう。

怨みをもっている人々のあいだにあって怨むこと無く、われらは暮らしていこう。

198 悩める人々のあいだにあって、悩み無く、大いに楽しく生きよう。悩める人々のあいだにあって、悩み無く暮そう。

199 貪っている人々のあいだにあって、患い無く、大いに楽しく生きよう。貪っている人々のあいだにあって、むさぼらないで暮らそう。

200 われわれは一物をも所有していない。大いに楽しく生きて行こう。光り輝く神々のように、喜びを食(は)む者となろう。

201 勝利からは怨みが起る。敗れた人は苦しんで臥す。勝敗をすてて、やすらぎに帰した人は、安らかに臥す。

202 愛欲にひとしい火は存在しない。ばくちに負けるとしても、増悪にひとしい不運は存在しない。

このかりそめの身にひとしい苦しみは存在しない。やすにぎにまさる楽しみは存在しない。

203 飢えは最大の病いであり、形成せられた存在(=わが身)は最もひどい苦しみである。このことわりをあるがままに知ったならば、ニルヴァーナという最上の楽しみがある。

204 健康は最高の利得であり、満足は最上の宝であり、信頼は最高の知己であり、ニルヴァーナは最上の楽しみである。

205 孤独の味、心の安らいの味をあじわったならば、恐れも無く、罪過も無くなる、──真理の味をあじわいながら。

206 もろもろの聖者に会うのは善いことである。かれらと共に住むのはつねに楽しい。愚かなる者どもに会わないならば、心はつねに楽しいであろう。

207 愚人とともに歩む人は長い道のりにわたって憂いがある。愚人と共に住むのは、つねにつらいことである。──仇敵とともに住むように。

心ある人と共に住むのは楽しい。──親族に出会うように。

208 よく気をつけていて、明らかに知慧あり、学ぶところ多く、忍耐づよく、戒めをまもる、そのような立派な聖者・善き人、英知ある人に親しめよ。──月がもろもろの星の進む道にしたがうように。

Nirayavagga　Dhammapada　法句経　地獄品　英訳　Underworld

306 いつわりを語る人、あるいは自分でしておきながら「わたしはしませんでした」と言う人、──この両者は死後にはひとしくなる、──来世では下劣な行ないの業をもった人々なのであるから。

307 袈裟を頭から纒っていても、性質が悪く、つつしみのない者が多い。かれら悪人は、悪いふるまいによって、悪いところに(地獄)に生まれる。

308 戒律をまもらず、みずから慎むことがないのに国の信徒の施しを受けるよりは、火炎のように熱した鉄丸を食らうほうがましだ。

309 放逸で他人の妻になれ近づく者は、四つの事がらに遭遇する。──すなわち、禍をまねき、臥して楽しからず、第三に非難を受け、第四に地獄に墜ちる。

310 禍をまねき、悪しきところ(地獄)に墜ち、相ともにおびえた男女の愉楽はすくなく、王は重罰を課する。それ故にひとは他人の妻になれ近づくな。

311 茅草でも、とらえ方を誤ると、手のひらを切るように、修行僧の行も、誤っておこなうと、地獄にひきずりおろす。

312 その行ないがだらしなく、身のいましめが乱れ、清らかな行ないなるものもあやしげであるならば、大きな果報はやって来ない。

313 もしも為すべきことであるならば、それを為すべきである。それを断乎として実行せよ。行ないの乱れた修行者はいっそう多く塵をまき散らす。

314 悪いことをするよりは、何もしないほうがよい。悪いことをすれば、後で悔いる。単に何かの行為をするよりは、善いことをするほうがよい。なしおわって、後で悔いがない。

315 辺境にある、城壁に囲まれた都市が内も外も守られているように、そのように自己を守れ。瞬時も空しく過ごすな。時を空しく過した人々は地獄に墜ちて、苦しみ悩む。

316 恥じなくてよいことを恥じ、恥ずべきことを恥じない人々は、邪な見解をいだいて、悪いところ(=地獄)におもむく。

317 恐れなくてもよいことに恐れをいだき、恐れねばならぬことに恐れをいだかない人々は、邪な見解をいだいて、悪いところ(=地獄)におもむく。

318 避けねばならぬことを避けなくてもよいと思い、避けてはならぬ(=必ず為さねばならぬ)ことを避けてもよいと考える人々は、邪な見解をいだいて、悪いところ(=地獄)におもむく。

319 遠ざけるべきこと(=罪)を遠ざけるべきであると知り、遠ざけてはならぬ(=必らず為さねばならぬ)ことを遠ざけてはならぬと考える人々は、正しい見解をいだいて、善いところ(=天上)におもむく。

ミリンダ王の問い　　那先比丘経　　Milindapañha 1. Ārambhakathā

スプーンでグラスを軽く叩くとどうなるか考えてみましょう。

さて、音はどこから来たのですか？グラスの中からですか？　　　　　　　　　いいえ。

スプーンの中から音はしましたか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いいえ。

スプーンがガラスにぶつかった結果、音が出ました。

スプーンがグラスに当たらない場合、音はありません。

同様に、「rūpa」すなわち肉眼を介したイメージ画像がメンタル界のcakkhupasādaに届き、hadaya vatthu（マインド）に「接触」しない限り、「見る出来事」すなわちcakkhuviññānaはありません。

ですからマインドと呼ばれる「実体」が常にあるのではありません。

微細なrūpaエネルギーとそれらの受信器官が各自のこれまでの各自の体験に従って「印象」を創作しているだけのことです。

この印象をマインドと呼んでいるにすぎないので、個々の印象は実体がある、と瞬間的には言っても良いのではないかと思いますが、

次の瞬間には実体はないと言えます。

そしてそれらを寄せ集めて、統合させたモノ（ここではマインド）に「実体がある」ことにはなりません。

ただの仮りに付けた名称です。

如来の定義　　Pāsādikasutta　Dīgha Nikāya 29清浄経　　英訳　An Impressive Discourse

如来Tathāgatoとは、真理に達した人、現代の日本語で言えば、「卒業者」という意味である。

1.　過去・現在・未来に関わる一切の物事について、時期を見計らって、意義のあるものを、人の役に立つように、またありのままに語るのです。

2.　人間・神々を含む一切の生命が知るもの・考えるもの・経験しているもの全てについて、覚っています。

3.　自分で覚って発見している真理のみを他人に語るのです。

4.　自分が解脱に達してから涅槃に入るまで説くことは必ずその通りである、変わることはあり得ない。

塵を除く、垢を除く rajo harāmi, malaṃ harāmi仏説阿弥陀経　Cūḷapanthaka　チューラパンタカ周利槃特

箒と智慧

彗ほうきで掃くことを彗掃（すいそう）と言う。

「掃き除くとはどういうことだろう……。掃き除く垢(よごれ)とは何だろう……」

「私が掃いているのは、土や埃、塵などの垢(よごれ)。除くというのは綺麗にすること」

「私自身にもまた垢(よごれ)があるのだろうか。それなら……、垢(よごれ)とは一体何だろう。どうやって除けばいいのだろう……」

「そうか……。心の彗でもって、私の垢(よごれ)を掃き除けばいいのか……。これが智慧ということか。

掃き除く垢とは、私を縛り、硬く結びつけているもの……。

智慧は私の結び目を解く。彗で垢を除くように」

彗を覚えるだけでは何にもならない。使ってこその彗である。

ほうきというと、一般的に「箒」を用いるが箒、帚、彗、篲と複数の書き方がある。

「智慧」には、「知恵」には無い意味が込められている。

一般的に用いる「知恵」は、今回の話でいう「彗」に当たる。

知識などの概念で伝えられたものは「知恵」として伝わります。頭で理解する。それが「知恵」です。

しかし、「智慧」は頭で理解するだけでなく、身になることの意味が含まれます。

チューラパンタカが手渡された彗そのものは、ただの道具にすぎません。

彗は得たからといって、そのまま持っているだけでは、実際何の役にも立ちません。

掃除という実践を通して、使うからこそ、彗は彗としての役割を全うすることができます。

知識を詰め込むだけでなく、知恵は実践を通して活かすからこそ、はじめて知恵として役立つ。

知恵という実を、実際に食べて、消化され、自ずと身になっていくことが「智慧」の意味合いが込められている。

何かを伝える時、自らの“内”から湧き出た想いを、言葉や態度、あるいは物や作品など、何らかの形にして、“外”へと表現します。

何らかの姿や形に表された“外面”、心に湧き起こる“内面”。

彗という“形”を受け取ったチューラパンタカは、少しずつ少しずつ、“心”へと落とし込めていきました。

“彗”と“心”。それが通じて「慧」になる。

釈尊からチューラパンタカに手渡されたものは漢訳では「彗」になっていますが、パーリ訳では「白い布」となっています。

白い布を手渡されたチューラパンタカは、釈尊からこのように言われます。

「この布で、私のもとへ訪れる人達の衣のほこり、足や履物の泥を払いなさい」

チューラパンタカは、釈尊の言う通りに、人々の服の埃や足の泥の汚れを除きました。そしてチューラパンタカは気づきます。

手渡された時は真っ白だった布が、黒くなっていることに。

初めは綺麗だった布が、ボロボロに汚れていることに。

そして、足を拭き、衣の埃を払った人たちが、「ありがとう」と喜んでくれることにも。

そうしてチューラパンタカは、釈尊の教えを自ずと理解していきます。

例えば、白い布が使われることによって、どんどん黒く汚れ、すり減っていく。

その様子から「無常」という事が浮かび上がってきます。

自分の修行、“自利”（自分の為）にしていたことが、他の人の笑顔にも繋がり、“利他”（他者の為）にもなっている。

無常や自利利他といったことは、教えとして知識面から学ぶことができます。

しかし、釈尊の伝えたいことは、知識面からだけでなく、私たちが“身体”を使う実践や行動からも自ずと浮かび上がってくるもの。

“身体”と“心”を通して培っていくもの。

“彗”と“心”が通じて現れてくるもの。

そうして通じる所に「智慧」は自ずと現れる。

だからこそ、「智慧」はどこにでも通じている。

「智慧」は、無常という教えとして自ずと現れ、いつまでも自分は愚かなままで変わらないと思い込んでいたチューラパンタカの頭を、硬く結び縛り付けていた心を、解きほぐしていきました。

またそうして、チューラパンタカが、釈尊の教えを解することができたのは、「智慧」がどこにでも通じているから。

愚かと言われようが、兄のマハーパンタカのように賢いと言われようが、「智慧」は“愚”と“賢”に通じる。

“彗”と“心”が通じる。

“外”と“内”が通じる。

“他”と“自”が通じる。

“知識”と“実践”が通じる。

“頭”と“体”が通じる。

“愚”と“賢”が通じる。

こうしてどこにでも通じる所に「智慧」が現れる。

釈尊の師カーラーマ、ラーマプッタ　Mahāsaccaka-suttaMN36　薩遮迦大経　英訳Discourse With Saccaka

バッカバ仙人は欲界の天人になる禅定だったのですぐに去り

アーラーラ・カーラーマからは空無辺処の禅定を

ウッダカ・ラーマプッタからは非想非非想処の禅定を即座にマスターした

『アーリヤ・パリエサーナ・スッタ』（聖求経）とパーリ仏典『マハサッチャカ・スッタ』（薩遮迦大経）

にも記述がある

中道　　ソーナSonaの琴vīṇā　「中道」とは真ん中ではない　マハーヴァッガ（大品）が出典

中道とは二つの極端な道に偏らないことです。

そして、この中道の教えは、良く勘違いされます。

「偏らなければいいのであれば、真ん中を進めばいい。つまり中道とは、なんでも真ん中をとるということでしょう？」と。

これは誤解です。中道は、真ん中をとるということではありません。

中道の道。道の真ん中ばかり進めない。

どこが真ん中かは、実際の所、わからない。

端っこになればなるほど、偏れば偏る程、はっきりと分かりやすい。

右に草が見えたら、少し左側に気持ち寄っていく。

左に草が見えたら、少し右側に気落ち寄っていく。

「例えば、ここに山があるとします。私たちが、山の麓から頂上へと登る時、その距離をどのように測るでしょうか？

山の麓から頂上までを一直線に結ぶ距離を想像してしまうのだろうと思います。

しかし、実際に登る・・・・・場合、そんな一直線な道なんてありえません。

障碍物を迂回したり、歩きやすい道を選んだり、一本道とも限りません。

中道は、決して麓から頂上にかけて、まっすぐ一直線に結ぶ線ではありません。

ましてや、そうやって無理矢理、まっすぐ、最短距離を、ど真ん中に歩む道では決してない。

頭の中だけで理解しようとすると、実際に道がどのようになっているか、わかりません。

しかし、実際にこの身で、この足で歩きだすと、道がど真ん中なんていうことはありえないことが身に沁みます。

道は、曲がりくねっています。ある時は左により、ある時は右によります。道を進む時、自分はどのように歩んでいるか。まずは、頭で考えるより、その身を振り返ってみるのもいいのかもしれません。

ソーナSonaの琴vīṇā　　　　　中道とは真ん中ではない　Cammakkhandhaka　Mahāvagga　犍度大品5　英訳The chapter on skins

中道Majjhimā-paṭipadāは、2つのものの対立を離れていること。

断・常の二見、あるいは有・無の二辺を離れた不偏にして中正なる道のこと。

漢語としての中道

中道の〈中〉は、2つのものの中間ではなく、2つのものから離れて矛盾対立を超えることを意味し、〈道〉は実践・方法を指す]。

二辺の語義

二辺は、中道を離れた両極端を指す。仏典では『中論』の巻四が〈有・無〉あるいは〈常・無常〉を、『順中論』の巻下が〈常・断〉を、『摂大乗論』世親釈の巻一が〈増益・損減〉を二辺の語義として挙げている[15]。

二辺の語義に、「二諦」と同様の"空"や"仮"の意味があるとする一部の仏教解釈がある[16][注釈 2]。総合佛教大辞典は『止観輔行』の巻三が〈空・仮〉を二辺として挙げているとする[15]。

Dhammacakkappavattanasutta SN 56.11　初転法輪　英訳Setting in Motion the Wheel of the Dhamma

比丘たちよ、これら二つの極端は、出家者によって親近されるべきではありません。

いかなる二か。

およそ劣った、野卑な、凡夫の、聖ならぬ、義を伴わない、諸欲に対する欲の享楽への従事と、およそ苦しく、聖ならぬ、義を伴わない、自らの煩苦への従事です。

比丘たちよ、それらの両極端へ近づかずして如来に現等覚された中道は、眼をなさしめ、慧をなさしめ、寂止、自証、等覚、涅槃へと導きます。

Ete kho, bhikkhave, ubho ante anupagamma majjhimā paṭipadā tathāgatena abhisambuddhā cakkhukaraṇī ñāṇakaraṇī upasamāya abhiññāya sambodhāya nibbānāya saṃvattati’’.

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
Ete		代	代的	男	複	対	これ
kho,		不変	‐	‐	‐	‐	じつに、たしかに
bhikkhave,	bhikṣ	名	u	男	複	呼	比丘
ubho		数	特	‐	両	対	両方
ante		名	a	男	複	対	終極、辺、極端
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
anupagamma	an-upa-gam	動	連	‐	‐	‐	近づかない
語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
majjhimā		形	a	女	単	主	中の
paṭipadā	prati-pad	名	ā	女	単	主	道
tathāgatena	tathā-(ā-)gam	名	a	男	単	具	如来
abhisambuddhā	abhi-saṃ-budh	過分	a	女	単	主	現等覚された
cakkhu		名	us	中	依（対）		眼
karaṇī	kṛ	形	ī	女	単	主	なすこと、なすもの
ñāṇa	jñā	名	a	中	依（対）		智慧
karaṇī	kṛ	形	ī	女	単	主	なすこと、なすもの
upasamāya	upa-śam	名	a	男	単	与	寂静、寂止、休息、止息
abhiññāya	abhi-jñā	名	ā	女	単	与	自証
sambodhāya	saṃ-budh	名	a	男	単	与	正覚、等覚
nibbānāya		名	a	男	単	与	涅槃、寂滅
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
saṃvattati’’.	saṃ-vṛt	動	現	能	単	三	転起する、作用する、導く

子を亡くした母と芥子　Kisāgotamītherīapadāna Therīapadāna22譬喩経　長老尼　　英訳　Kisāgotamī

子供をなくした母親Kisāgotamīが死者が出たことのない家から芥子をもらう話

幼子を亡くしたキサーゴータミーは、悲しみに打ちひしがれていました。自分にとっての唯一の肉親。大切に大切に育てていた我が子。

「どうして私だけこんな目に合わなければならないのか！？」

嘆き悲しむ彼女は、現実を受け止められませんでした。

そして彼女は、村中を訪ね歩きました。「どうかこの子を生き返らせる薬を下さい」と、幼子の躯を抱きながら……。

釈尊は「わかりました。その薬を作るには芥子の実が必要です。ただし、その芥子の実は今まで死者が出たことのない家からもらってくる必要があります」と。

そこで彼女は家々を訪ねました。

芥子の実ぐらいであれば、香辛料としても使われるため、どこの家にもある代物です。

しかし、彼女は問います。「今までこの家から死者はでてないですか？」と。

そんなこと言えば、両親、祖父母、そのまた前……、死者の出ていない家なんてあるはずありません。

彼女は、各家を訪ね歩くうちに気がつきました。

「死は誰にでもやってくる。自分だけが特別不幸に見舞われたわけじゃない。誰もがそのような苦しみを背負っていたんだ……」

そして、彼女は抱いていた子供の躯を弔い、自分自身の人生を再び歩み始めました。

当たり前のことに気づかせてくれた、釈尊の弟子として。

無常という当たり前のことに気づいたキサーゴータミー。

当たり前のことに気づく事で彼女が救われたことです。

キサーゴータミーの気づきが特別なことかと言えば、落ち着いて考えてみれば当たり前のことです。そしてその気づきの根本には、無常があります。

あらゆるものが変化し続けるからこそ、今生きているという状態もいつか変化する。即ち、死という事実があるわけです。

無常だからこそ、苦しみも永遠ではないことを教えてくれています。

キサーゴータミーの話は苦しみも解決できることも、示唆してくれています。

物事が興りまた消え失せることわりを見ないで百年生きるよりも、物事が興りまた消え失せることわりを見て一日生きることのほうがすぐれている。

当たり前に気づく。当たり前の所に戻る。

怒りは受け取らない　　　　Akkosasutta　SN7.2　賓耆迦経　　　英訳　The Abuser

昔々、インドの国でのお話。akkosaka bhāradvājaという人が、ある日、仏さまのお住まいへ伺い、これでもかというほど、一方的に悪口を言って怒鳴りつけました。

　仏さまはそれを黙ってお聞きになった後、「ところで、あなたが自分の家にお客様を招待してご馳走をお出ししたが、お客様たちがご馳走を召し上がらなかった場合、そのご馳走は誰のものになるでしょうか。」と尋ねられました。それに対してアッコーサカ・バーラドヴァージャは「それは当然、招待をした家の主人のものになるでしょう。」と答えました。

　そこで仏さまは、「さて、今、あなたは私に山ほど悪口を言ってこられましたが、私はその悪口を受け取りません。ですから、お客様が召し上がらなかったご馳走と同じようにあなたが言った悪口は結局あなた自身に返るのです。」と言われ、詩をうたいました。

「罵声・暴言・呵責を用い、とことん相手を言い負かす。

それで勝ったと愚者は思う。

真に勝利をつかむのはただ忍耐を知る者のみ。

怒らぬことによってのみ、真に怒りに勝つと知る。

怒りに怒りを返す者、更に悪しき事があり。

怒りに怒りを返さぬ者、実に二つの勝利あり。

他人の怒りをよく知って、己を静める熟慮者は、他にも勝ち、また己にも勝つ。

この自と他の両者を癒す者を、愚者だと勝手に決めつける。法を知らざる人々は」

忍耐とは、我慢することではありません。パーリ語でkhantīと言って、これは心が落ち着いている状態のこと。

井戸と欲　　　Udapānasutta 　Udāna 7.9　　　　英訳　the Well

どんなに井戸にフタをしようとも、湧いてくるものは湧いてきます。人の欲望もどんなに抑えようとも、湧いてくるものは仕方がありません。

水は井戸にとって無くてはならないものです。水があってこそ、井戸は井戸です。

「欲望もそんな水のようなものだ」と、井戸から次々と湧き出る水の様子と、人間の持つ欲望を並べます。

欲望は人が生きる限り、コンコンと湧き出てくるのです。お腹が空いたら、食欲という欲望は生まれます。

欲望は、人間が生きるためにも欠かせない要素です。

では、欲望が無くならないのであれば、欲望のままに「貪欲」になればいいのか……と言えば、そういうわけでもありません。

三大煩悩のうちの一つ「貪欲」は、「貪るほどの欲望」であり、好むものに対する強い執着と行き過ぎた欲望のことです。

人には水が必要不可欠です。全くなければ死んでしまいます。かといって、多すぎる水は、人を溺れさせ、苦しませます。

お腹がすくからと、食欲の思うままに任せ、食べ過ぎれば、病気や肥満などで、結果、自らを苦しめることになってしまいます。

過ぎた欲望は、自らの身を滅ぼすことにもなります。多すぎても、少なすぎてもいけないのです。まさに欲望は水のようなものです。

まるで、水に浮かぶ船のように、船を沈ませるのも水であれば、船を浮かしているのもまた水。

欲望は、人を殺すものともなれば、人を生かすものともなるわけです。

水が使いようによって、船を活かすものにもなるように、欲望も使いようによって、人を活かすものになります。

仏教を学びたいという意欲や誰かを助けたいという気持ちも、欲望の一つには違いありません。

もし水がどこにでもあるのならば、もう井戸を掘る必要がない。

貪欲は苦しみの根源だから、それを根こそき取り除いたら、さらに求めることはなく、

苦しみは無くなります。

もし水がいつでもあるなら　井戸は何の用をなそうか。

渇欲を根本から断ち切った上は、何を求めて歩もうか、と。

第2の矢のこだわりの心が苦しみ　　　　Sallasutta　SN36.6　箭経　　　　英訳　The Thorn

凡夫と仏弟子の何が違うのか。それは二つ目の矢を受けるか否かの違いです」

人間である以上、私たちは物事、出来事等から何かを感じ、受け取ります。

苦・楽を感じたり、そして喜怒哀楽などの様々な感情が生まれてきます。

中には、そういう感情が一切生まれてこない、いわゆる無関心ということもあります。そのような苦楽などを感受する作用や、そこから生まれた感情、また無関心というのも含め、『受』と呼びます。

仏法を知らない凡夫は、二種類の『受』を感じます。それは例えるなら、第一の肉体の矢に刺され、そして第二の精神の矢にも刺されるようなものです。

例えば、自分の好ましいものに対して、快い感覚を受け、嬉しいという感情が生まれます。

そして更に、それを熱望したり、執着します。それ故に、飽くことなく貪り求める『貪欲』

という煩悩に囚われてしまいます。

例えばまた、嫌悪するものに対して、不快な感覚を受け、苛立ちという感情が生まれます。

そして更に、それを憎み、憤怒し、また害そうとする心を起こします。それ故に、激しく怒り、憎しみ怨む『瞋恚』という煩悩に囚われてしまいます。

例えばまた、自ら興味を抱かないものに対して、なんら感情を持たない、いわゆる無関心となります。

そして更に仏法であるこの『受』の理(ことわり)を知らないため、自らの関心事のみに心奪われ、視野が狭まります。それ故に、道理や物事をあるがままに見て知ることができない『愚痴』という煩悩に囚われてしまいます。

一方、仏法の教えを聞ける仏弟子は、ただ一つの『受』を感じるだけです。それは例えるなら、第一の肉体の矢に刺されますが、第二の精神の矢は受けません。

例えば、凡夫と同じく、自分の好ましいものに対して、快い感覚を受け、嬉しいという感情が生まれます。

しかしその快感に酔い痴れることがありません。それ故に、『貪欲』の煩悩に染まることはありません。

例えばまた、凡夫と同じく、嫌悪するものに対して、不快な感覚を受け、苛立ちの感情が生まれます。

しかし、その不快感に振り回されることはありません。それ故に、『瞋恚』の煩悩に染まることはありません。

例えばまた、自ら興味を抱かないものに対して、なんら感情を持たない、いわゆる無関心となります。

しかし、仏法の教えであるこの『受』の理を知っているため、自らの関心事以外にも気がつき、視野が広がります。それ故に、『愚痴』の煩悩に染まることはありません。

第二の矢を受けないとは、こういうことです」

弟子たちは、各々頷き、そして喜びました。釈尊は最後に、このような詩をもって、

この話を締めくくりました。

仏弟子は苦楽において、気づきを得ないことはない。

凡夫人より、大いに気づき知ることがある。

楽を受けては、放逸をなさず。

苦を受けては、憂いを増さず。

苦楽の二辺の承認も却下も消え去り、存在しない。

道を知ることで、傷も悲しもなく、

『受』において、仏智をも悟り

正知をもって存在を超える」

福田　釈尊の耕作　Kasibhāradvājasutta　　SN7.11　耕田経　　英訳　With Bhāradvāja the Farmer

バーラドヴァージャは釈尊に言います。

「私はあなたが牛馬を引き、鍬をもって田を耕す姿を見たことがありませんよ。」

釈尊は頷き、詩を用いてこのように説きました。

信心Saddhāは種子となり、我が身のたしなみtapoは雨となる。

智慧paññāは軛と鋤である。

慚（内心への恥）Hirīは轅（軛につける棒）で、心は紐である。

気づきは鋤の刃と突き棒である。

身と言葉を調え、

食物āhāreに気をつけ、

鎌のように真実Saccaṁを使い、

柔和soraccaṁは解放pamocanaṁである。

精進Vīriyaṁは牛の軛となり、

執着から離れる境地yogakkhemaに運ぶadhivāhanaṁ;

ふりかえることなくanivattantaṁ行くGacchati

悲しみのないna socati場所yatthaにたどり着くgantvā.

このようにして荒れ地kaṭṭhāを耕しkasī、

不死の果実amatapphalāになるhoti

耕し終わった時に、凡ての苦しみから解放されるpamuccatī　　　

愛から苦しみが生まれる　　Piyajātika-sutta　MN87　　愛生経　　　英訳　Born of Affection

ある時、釈迦は、コーサラ国サーヴァッティーSāvatthī（舎衛城）のアナータピンディカ園（祇園精舎）に滞在していた。

そこには一人息子を亡くして悲しんでいる長者がいたが、釈迦が彼に「愛着が苦悩の原因」だから愛着を断つように説くと、長者は「愛着から生じるのは喜楽であって、苦悩ではない」と反発して帰ってしまう。

この話を伝え聞いたコーサラ国の王パセーナディは、妃のマッリカー、更に彼女の依頼で釈迦を訪ねた婆羅門ナーリジャンガを介して、釈迦の「愛する者を失った女」の喩えを教わり、「愛着から苦悩が生じる」縁起を理解し、三宝への帰依を誓う。

「愛から幸せが生まれる。だから愛は必須なんだ。不幸が生まれるなんてとんでもない！」

もしくはその反対に、このように考えてしまいます。

「愛から苦しみが生まれる。だから愛はやめるべきなんだ。幸せは幻にすぎないよ！」

前者は後者を否定し、後者は前者を否定します。

愛から幸せが生まれるなら、不幸は生まれるはずない。

反対に愛から不幸が生まれるなら、幸せが生まれるはずない。

幸せと不幸、相反する二つ事柄が共に成り立つことはありえない。

そのどちらもが愛から生まれるのは事実なのに、頭の中では不思議なことに一方を認めると一方が成り立たない気がしてしまいます。

そして結局私たちはどちらか一方の事実だけに囚われてしまいます。

「愛が必須」、「愛をやめよ」と言うことのどちらもが、自分が見えている事実しか、その範疇にありません。

事実の一面にしか考えが至らない。

そういう意味ではたとえ反対の意見だとしても、その視野や考え方に大した違いはありません。

現実は、自分達が見ている一方の事実のみではありません。出会いがあれば、必ず別れがあるように、常に表裏一体です。

出会いだけの人生はありません。いつか必ず別れの時が来ます。

別れだけの人生はありません。別れたものには必ず出会いがあります。

幸せと出会うと私たちは幸せですが、幸せと別れると私たちは不幸です。

不幸と出会うと私たちは不幸ですが、不幸と別れると私たちは幸せです。

表が見える時は裏が見えません。裏が見える時は表が見えません。

一方が照らされている時、一方は暗くなります。

しかしそれは見えないだけで、決して無いわけではありません。

釈尊は子を失った苦しみで目の前を覆われた父親に、「愛から苦しみが生まれる」事実を伝えようとしました。

一方の事実に囚われず、愛する子との大切な時間があった事実にも目を向けさせたかったのかもしれません。

私たちは幸せの中にいると、それが当たり前になって、ついつい蔑ろにしてしまうことがあります。

そんな時いつか必ず訪れる別れという苦しみの事実が、その大切さを再び思い出させてくれます。

目の前の事実だけでなく、見えない事実にも目を向けていく。

自分より愛しいものはない　Piyatarasutta 　Udāna 5.1　英訳　The Discourse about the King

Rājasuttaṁ 41

祇園精舎で、コーサラ国のパセーナディ王はマッリカー妃と、テラスでくつろいでいたとき、コーサラ国のパセーナディ王はマッリカー妃に、こう言ったのです。

「マッリカーよ、自分より愛しいものがあるだろうか」

「大王よ、自分より愛しいものはありません。大王よ、自分より愛しいものがありますか」

「マッリカーよ、自分より愛しいものなどありはしない」

全ての方角を自分の心で調べても

自分よりも愛しいものは見つからない

すべての生命にとって自分より愛しいものはない

究極の幸福をねがう気持ちがあれば他を害してはならない

Sabbā disā anuparigamma cetasā,

全ての方角を自分の心で調べても

Nevajjhagā piyataramattanā kvaci;

自分よりも愛しいものは見つからない

Evaṃ piyo puthu attā paresaṃ,

すべての生命にとって自分よりは愛しいものはない

Tasmā na hiṃse paramattakāmo’’ti.

究極の幸福をねがう気持ちがあれば他を害してはならない

disā　　　　　　　　方向　　どこ

anuparigamma　　　調べても、

cetasā　　　　　　　自分のこころ

puthu　　　　　　　すべての生命

attā　　　　　　　　自分自身のこと

paramattakāmo　　最高の、究極の幸福に達したいという気持ち

「最愛であるものは自分自身である」ということを確認しない。だから、人間の生き方が乱れています。

「他を愛する、他人のために」などのスローガンが沢山ありますが、たいした結果がないのは、ないことにしている「自己愛」が割り込んできて邪魔をするからです。

自己愛は自然法則です。そして自己愛は最愛であるということを確認しなくてはいけないのです。

自己愛を自覚していないと、自分に害が及ぶことも実行します。

自己愛を認めると感情を優先することは、かなり制御されます。

怒りは慈しみより、戦いは調和よりも安易です。

真理は逆説に感じるものです。

自分を愛するならば、他に害を与えません。自分を大切にするからです。

自己愛は自分が他の生命に対してどのような態度で接するのかということで決まります。

一個の生命の自己愛は、他の命の支えがあって成り立ちます。

生命と生命との関係は切れないものです。

善知識が修行の全て　Upaḍḍhasutta　SN45.2 　善知識経　英訳　Half the Holy Life

Kalyāṇa-mittatā　　

釈尊がサッカラという村にいた時のことです。弟子のアーナンダさんが釈尊にこのように言いました。

「師よ。仏法を学び、そして共に仏の道を歩む。このような善き友Kalyāṇa-mittatāがいるということは、修行の既に半ばを達成できたに等しいと私は思うのですが、いかがでしょうか？」

それを聞いて釈尊はこのように応えました。

「そうではありません。そんなことをいうものじゃありませんよ。アーナンダ」

さすがに、修行の道はそんな簡単なものではないか……とアーナンダさん頭に一瞬よぎりました。

しかし続けざまに釈尊このように言いました。

「善き友がいることは修行の半ばではなく、その全てですよ」

予想外の答えに唖然としたアーナンダさんに釈尊は更に続けてこう言いました。

「アーナンダ。それはこのことからもわかるでしょう？　皆が私を善き友とすることによって、仏の教えを学び、　そして共に仏の道を歩んでいるということからも。

ですから善き友を持ち、善き仲間がいるということは、修行の全てであると知りなさい」

アーナンダさん、そして周りで話を聞いていた弟子達も、この釈尊の言葉に感銘を受け、喜びました。

此縁性　心が形に　　Tatiyabodhisutta Udāna 1.3 英訳　The Third Discourse about the Awakening Tree

ウィキペディアでは

此縁性（しえんしょう） idappaccayatā

釈尊が悟りを開いて初めての言葉と言われる。　　出典？

此（これ）が有れば彼（かれ）が有り、此（これ）が無ければ彼（かれ）が無い。

此（これ）が生ずれば彼（かれ）が生じ、此（これ）が滅すれば彼（かれ）が滅す。

この「此」とは煩悩（あるいは、それに無自覚な無明の状態）を指しており、「彼」とは苦を指す。

したがって、上記の命題は、

「「煩悩」（無明）が有れば、「苦」が有り」

「「煩悩」（無明）が無ければ、「苦」が無い」

「「煩悩」（無明）が生じれば、「苦」が生じ」

「「煩悩」（無明）が滅すれば、「苦」が滅す」

と言い換えることができる。

と書いてある。

しかし、

原文は

Iti imasmiṁ sati idaṁ hoti, imassuppādā idaṁ uppajjati, imasmiṁ asati idaṁ na hoti, imassa nirodhā idaṁ nirujjhati; yadidaṁ

Iti 　　　　　　　　　かく、　　about to be mentioned

imasmiṁ 　　　　　　これ　指示代名詞（this / these）陽性m．單數s．處格

sati 　　　　　　　　　気づく　念じる　意識する

idaṁ 　　　　　　　　これ　　　　this、here　　　　 imasmiṁとの相違点は？

hoti　　　　　　　　　　意識エネルギーが物質エネルギーに変換する

imassuppādā 　　　　　 imassa　これ（指示代名詞）　＋　uppādā　生起　coming into existence； birth

idaṁ 　　　　　　　　

uppajjati 　　　　　　 [ud-pajjati＜pad] 起る，生ず，發生す　　ud　外に＋pajjati落ちてくる、行く

　　　　　　　　　　　　ajjhatta：a. [adhi-atta，Sk. adhyātman] 自の，内の

imasmiṁ 　　　　　　これ

asati 　　　　　　　　気づかない、念じない、意識しない

idaṁ

na 　　　　　　　　　　否定、ない

hoti

imassa 　　　　　　　　この　　指示代名詞

nirodhā 　　　　　　　滅する　　　[ni+rudha+ṇa]

idaṁ

nirujjhati　　　　　　　滅す，亡ぶ [ni-rudh の pass．] 物質界からメンタル界への変換nirodhāとの相違？

yadidaṁ　　　　　　　　このようになっている。　　　yad関係代名詞＋ idaṁ

したがって解釈は

此（これ）が有れば彼（かれ）が有り、此（これ）が無ければ彼（かれ）が無い。

此（これ）が生ずれば彼（かれ）が生じ、此（これ）が滅すれば彼（かれ）が滅す。

ではなく、

Iti imasmiṁ sati idaṁ hoti, imassuppādā idaṁ uppajjati

この概念を意識し続けることでエネルギーが充満すると、（現象界にある）この生起したものが誕生し、

imasmiṁ asati idaṁ na hoti, imassa nirodhā idaṁ nirujjhati; yadidaṁ

この概念を意識しないとエネルギーが充満せず、（現象界にある）この生起したものは滅する。

ポイントはsatiとhotiの解釈である。

satiとは「気づく」「念じる」と翻訳されるように、心の領域である意識エネルギー界に属するものである。

hotiはbhavatiの短縮形であるので、意識エネルギーがある枠組に充満することで物質エネルギーに変換されることを意味する。

つまり心の領域（構成要素はbhūta）のモノが形の領域（構成要素はdhātu）のモノになることを意味するので、

多くの哲学者や仏教者が理解するように、これを物質の領域の話であるとして、物質と物質の関わりの因果関係の説明だと解釈しているが、これは、エネルギーの領域転換のことを意味する。

Iti imasmiṁ sati idaṁ hoti, imassuppādā idaṁ uppajjati, yadidaṁ

Paṭhamabodhisutta　Udāna 1.1　英訳　The First Discourse about the Awakening Tree

不放逸　怠らないは誤訳？　　Mahāparinibbānasutta Dīgha Nikāya 16　大般涅槃経　

英訳　The Discourse about the Great Emancipation

釈尊の最後の言葉　 怠らないは誤訳？混同しないという解釈

釈尊の最後の言葉に『appamāda：不放逸（気づかない』という言葉が出てきます。

よく「怠らない」と訳されています。

Appamāda，[a + pamāda] thoughtfulness，carefulness，conscientiousness，watchfulness，vigilance，earnestness，

Pamāda，[cp．Vedic pramāda，pa+mad] carelessness，negligence，indolence，remissness

これは「今の瞬間に気づいている状態（覚醒している状態）を維持する」という意味です。

換言すると、気づきをやめると、眼の前のことを混同して一般化して怠けてしまうので、そうしないようにする、ということです。

新たな信号が入ってくるとそちらに気が奪われてしまうと、関係のない２つを混同し始めます。

長い時間にわたって強く集中するのではなく、ただ瞬間瞬間に気づいていることで、

自我が成立する時空がなくなり、対象物をまとめて混同（一般化）することが少なくなり、

次第に自我という妄想も減り、無常を体感し続けることで、結ばれていた紐が次々と解けて、

ありのままを知る（覚る）ことになります。

釈尊は最後の最後まで sati の実践に励むことを説かれていました。

同じ言葉でも瞑想者用語と日常生活用語では意味には違いがあり、瞑想者のいう「混同しない」というのは、

過去に学習した想蘊や出来上がった行蘊に依存して生活することも「混同して怠けている」ことになります。

218-2. 　　　　　　　　

‘‘handa dāni, bhikkhave, āmantayāmi vo, vayadhammā saṅkhārā appamādena sampādethā’’ti.

訳文　　　　　　　　

「さあ、比丘たちよ、私はあなたたちに告げます。諸行は衰亡の性質あるものです。不放逸にてつとめなさい」と。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
‘‘handa		不変	‐	‐	‐	‐	いざ
dāni,		不変	‐	‐	‐	‐	いま
bhikkhave,	bhikṣ	名	u	男	複	呼	比丘
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
āmantayāmi		動	ア	能	単	一	呼びかける、話す、相談する
vo,		代	代的	‐	複	与	あなたたち
vaya		名	a	男	有（属）		衰、衰亡、消亡、壊
dhammā	dhṛ	名	a	男中	複	主	法
saṅkhārā	saṃ-kṛ	名	a	男	複	主	行、為作、現象
appamādena	a-pra-mad	名	a	男	単	具	不放逸
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
sampādethā’’	saṃ-pad　使	動	願	能	複	二	得る、完遂する、現生する、つとめる
ti.		不変	‐	‐	‐	‐	と、といって、かく、このように、ゆえに

　ブッダ最後の言葉「不放逸」についてーーーアッパマーダ（appamâda）

ブッダは、悟りを開いたのち45年もの間、ブッダを慕ったもの、あるいは救いを求めて集まってきた人々に語り続ける。自己の悟りを唯一の支え（自灯明）として、他者が、あらゆる生き物が、苦しみから解き放たれてほしい（慈悲）と布教（転法輪）する。後の仏教徒は、それを「大悲」と呼ぶ。

　ブッダ最後の言葉――自らの死期を知ったブッダが涅槃の床にあって、そばで悲しむ弟子たちに言い残した最後の言葉。この句を残して、ブッダは「不動」にして「寂静」なる定に入られた。（大般涅槃だいはつねはん）

　「あらゆるものごとは無常なものだ。（それゆえに）怠ることなく努めなさい。」（パーリ伝承経句）

　「さあ、修行僧たちよ。お前たちに告げよう、『もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成なさい。』と。これが修行を続けてきたものへの最後のことばであった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（中村元訳「ブッダ最後の旅―大パリニッパーナ経」）

　「汝ら、まさに知るべし。一切の所行は、みなことごとく無常なり。わが身、これを金剛の体といえども、またまた、無常の所遷を免れず。生死の中、きわめておそるべしとなす。汝ら、宜しく、まさに勤めて精進を行い、すみやかにこの生死の火坑を離るることを求むべし。これすなはち是は、我が最後の教えなり。」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（大正蔵七番『大般涅槃経』）

　「比丘らよ、放逸を為すなかれ。我は不放逸を以っての故に、自ら正覚に到れり。無量の衆善も亦、不放逸に由りて得らる。一切万物に常在なる者なし。此れは是れ、如来末後の諸説なり。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（大正蔵一番『長阿含経』「遊行経」）

　「動物・静物のすべては滅する。それゆえ、汝らはよく注意深くあれ。（私が）涅槃すべき時がやってきた。汝ら、言うことなかれ。これが最後の言葉である。」

　　　　　　　　　　　　　　　（御牧克己　訳『ブッダチャリタ』・・・古典チベット語翻訳）

「精進こそ不死の道　放逸こそは死の道なり/　いそしみはげむ者は　死することなく/　放逸にふける者は　生命ありとも　すでに死せるなり/　明らかに　この理を知って　いそしみはげむ　賢き人らは/　精進の中に　こころよろこび/　聖者の心境に　こころたのしむ　」　（法句経ダンマパダ）

「解脱したいと欲する人々は、けっして放逸であってはならない。」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ad. 400年　　　（『倶舎論』ヴァスバンドゥ）

　それでは、「放逸」とはどうなることなのだろう。

放逸とは、悪を防ぎ善を修することに対してだらしなく、精進を怠ることである。懈怠と似ているが、放逸は、懈怠および貪・瞋・癡の三不善根の上に、悪を防がず、善を修せざる状態に対して、特に指摘されるものである。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（wiki）

不放逸とは、仏道＝appamâdaを行すること。初期仏教では、苦しみをなくす方法。苦しみはこころの汚れ（煩悩）があるから生まれる。だから、こころの汚れを断つための手段はまとめてappamâda　なのである。布施をしたり、他に親切にしたりする当たり前の行為も、戒律を守ったり道徳を重んじることも、冥想することもappamâda。悟るための努力がappamâdaである。

　　（日本テーラワーダ仏教教会）

「不放逸」はパーリ語でアッパマーダ（appamâda）という。現代シンハラ語では、「アッパラマーデするな」というのは、「遅くなるな、早くしなさい」という意味。例えば、待ち合わせで「待たせるな」というときも、「アッパラマーデ」という。一生懸命頑張るという意味解釈はないらしい。

釈尊が生きながらえることに執着すること（放逸）の無意味に気づくこと。「不放逸」は行を実践するとき（者）にのみ成り立つ言葉である。面白いのは、ブッダの直弟子の多くは、すでに出家し修行生活を送り、「もはや再び生まれ変わって、輪廻の苦しみを受けることはない」阿羅漢であった点。要するに、ブッダがいなくなっても、生身の体に執着して、ブッダの死に惑わされたり、悲しみに打ちひしがれ、不注意にも感情におぼれ、心が放逸となり、いままで続けてきた、世欲を離れて清浄な修行生活を途絶えさせてしまわないように、注意深く怠ることなく、それぞれの得た覚知を実現して、やがてはブッダと同じ涅槃に入るのだという意思を堅持して、精進し続けなさいという遺言である。

　ある神父さんのＨＰに、『聖書の中に「思い出す」という言葉が出てきます。ギリシャ語で「アナムネーシス」と言うらしい。これは、「想起する」とも訳されていて、哲学者のプラトンなども使っている。善や美のイデアを、人は忘れている。それを「想起する」のだと。聖書で、この言葉が出て来るのが、あの「最後の晩餐」の話である。十字架につけられる前の最後の夜の食事。イエスはみんなに、パンとぶどう酒を配って、こう言われた。「私を思い出す（記念する）ため、このように行いなさい。(コリント11章)　パンとぶどう酒をいただく時に、その目の前に、ありありとイエスさまがいるような気がします。私たちも最後の晩餐をイエスさまとともにいるような気持ちになります。』とあった。

　キリスト教の追体験である「アナムネーシス」ではないが、釈尊の死を前に、いま比丘たちがなさねばならないことは、嘆き悲しむことではなく、遅れることなく自分も釈尊のように完全なる涅槃に入れるように「努める」ことなのである。のちに、大乗は芽生え、涅槃への道として「慈悲」「他利」が芽生え、「如来蔵」から、密教に発展し、弘法大師空海が真言密教で唱える「山川草木悉皆成仏」、すべてのものに仏性があるという理念にいたり、やっと衆生もまた、「解脱」できるものとなり、また新たに「不放逸」の意味合いを解釈していかねばならないと考える。

我とアートマンの違い

経典の中で「我」という文字が出てきた時には、注意が必要です。

仏教の「我」は、atman（アートマン）という意味でよく使われているからです。

アートマンは、釈尊が生きていた時代である古代インドの思想です。

その思想は、当時のインドでは一般的に広まっていた常識でした。

「自分は何者か」「自分は何なのか」

現代だけに限らず、その疑問は、どの時代、どの場所でも様々な人が考えます。

そして、古代インドでは、それらの疑問に対する応えとして「自己の正体はアートマンである」ということが説かれていました。

そして、それは永遠不滅、絶対的で、自己の本質、真実の自己。

例え、全てを失っても、その真実の自己だけは永遠に残り続けると信じられていました。

たとえば、パソコンが壊れたとしても、新しくつくったパソコンにHDDを組み込めば、機能的に様々な変更点はあれど、本質的な所は、前のパソコンと何も変わっていないというわけです。

この人間のHDDを古代インドではアートマンと呼び、この思想は一般的に広まっていました。

しかし、それに異を唱えたのが、仏教の創始者である釈尊でした。

「自己はアートマン（我）ではない」と釈尊は説きました。

これが、漢字に訳されると、非我や無我という言葉になっています。

仏教の説く、非我や無我の「我」には、このような背景があることを理解しておく必要があります。

無我・非我＝自己を見つめる

当時、古代インドでの一般常識は「自己の正体はアートマン」でした。しかし、釈尊は、そんな世の中で「自己はアートマンではない」と説いたわけです。

世間一般の人たちが想像もしない話に耳を傾けてもらい、また理解してもらうためには説明も丁寧にしていかなければなりません。

その様子は経典の中からも読み取ることができます。

エピソード（雑阿含経巻第1及び第10、増一阿含経巻第14-4より総集）

ある時、釈尊は、弟子にこのような話をしました。

「あなたの目の前にあるものをごらんなさい。今、目の前にあるそれは、ずっとそこにあるわけではありません。

いつか、朽ちる。或いは、壊れる。そのようにして、今ある形では、なくなってしまいます。

あなたの目の前にあるもの、あなたの目に映るすべてのもの、人も物も、全ては変化しています。

目に映るものだけでなく、あなたの心もまた、時に悲しく、時に楽しく、心は変化します。

考える事、思う事、察する事で心は一瞬一瞬で変化しています。

いつまでも変らずにあるものなんてない。常にずっとあるものはない。これを無常と言います」

無常について話し終えた釈尊は、次に弟子にこう問いました。

「あなたの目に映る全て……。自分自身もまた例外ではありません。

自己を見つめてみてください。

あなたの目に映るあなた自身。あなたの身体は日々変わり続けています。

病気や怪我をすることもあれば、それが治癒していくこともあります。日々成長し、また老いています。細胞が生まれ、そして死んでいきます。

あなたの思うがままに応えてください。

あなた自身、その身をじっくりと見て、それらは永遠に変わらず常なるものだと観ますか。それとも、それとも常ではない、無常だと観ますか？」

その問いに弟子は応えます。

「無常と観ます。常なるものはありません」

それを聞いて釈尊は、次にこのように問いました。

「あなたは、あらゆるものは変化していると観察しました。無常を観て、あなたはどのように思いますか。それはあなたにとって、苦しいと感じますか？」

弟子はこう応えます。

「確かに、苦しいと感じます」

弟子の答えを聞き、釈尊はこう言いました。

「苦しいと感じるのであれば、それは変わっているという証拠です。

何も変わらないのであれば、常に同じ状態、常に一定の状態のはずです。

しかし、他ならぬあなた自身が苦しいと感じています。ならば自己の正体は、永遠不滅、絶対的、自己の本質、真実の自己と言われるアートマンではありません。

自己を見つめてみてください。

例えば、病気になったのなら苦しい、それは事実です。健康にある状態が変わるという事は、健康を失うということでもありますから……。それは苦しい事だと思います。

だから、病気にならないようにと願うことがあるのです。もし病気になったとしても、今度は病気を治るようにと願うわけです。そして何より、病気を治すことだってできます。

もし、何も変わらないのであれば、病気を苦しいと感じることはありません。そもそも病気になりません。病気があるとしても、治そうとは願いません。病気があるとしても、治すことはできません。

他ならぬあなた自身が苦しいと感じている事こそが、変わっているという証拠です」

釈尊の話は続きます。

「自己を見つめてみてください。

目に映るものだけでなく、あなたの心もまた、時に悲しく、時に楽しく、心は変化します。

考える事、思う事、察する事、あなたの頭の中は、その一瞬一瞬で変化しています。

私たちが心と呼ぶもの、頭の中と言っているものもまた、無常です。あなたの感じることも、考えることも、あなたの内にあるものもまたすべて、無常です。

例えば、色々な色の羽根を持ち合わせている鳥のように、自己もまた色々な色を持ち合わせています。

一色だけには見えません。実に色々な色を観ることができるでしょう。

心もまたそうです。中には、欲の色、怒りの色、無知の色、そんな悩ましい色もあります。時にはそれ一色に染まることもあるでしょう。染まれば、心悩み、苦しい。しかし清まれば、心清らかに……。

様々な色があるのにも関わらず、特定の色だけに執着すれば、あなたの心は染まります。

しかし、心は実に色々です。一色に染まることはないではありませんか。

他ならぬあなた自身に色々な色を感じている事こそが、変わっているという証拠です」

そして、釈尊は爪の上に、ほんの少しだけ土をのせました。

「たったこれっぽっちの物でも、この世に永遠に変わらないものなどありません。

もし、この爪にのせたほんの少しの土でも、永遠に変わらないものがあるとしたら、私の教える道によって、苦しみを解決することはできないでしょう。

たったこれっぽっちの物といえど、この世に、常なるものはありません。

即ち、無常だからこそ、私の教える道によって、苦しみを解決することができるということも、どうか忘れないでください」

自己はない？　　Khemakasutta SN 22.89 ケーマカ経　英訳　With Khemaka

89-25.
Imesu āyasmā khemako pañcasu upādānakkhandhesu kiñci attaṃ vā attaniyaṃ vā samanupassatī’’’ti?
	語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
	Imesu		代	代的	男	複	処	これら
	āyasmā		形	ant	男	単	主	尊者、具寿
	khemako		名	a	男	単	主	人名、ケーマカ
	pañcasu		数	特	‐	複	処	五
	upādāna	upa-ā-dā	名	a	中	依（属）		取、取着、執着
	khandhesu		名	a	男	複	処	蘊、あつまり
	kiñci		代	代的	中	単	対	何らかの、何者であれ
	attaṃ		名	an	男	単	対	自己、我
	vā		不変	‐	‐	‐	‐	あるいは
	attaniyaṃ		形	a	中	単	対	我所、我に属する
	vā		不変	‐	‐	‐	‐	あるいは
	述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
	samanupassatī’’’	saṃ-anu-paś	動	現	能	単	三	見る、見なす、考える
	語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
	ti?		不変	‐	‐	‐	‐	と、といって、かく、このように、ゆえに
訳文
尊者ケーマカはこれら五取蘊のうちいずれかを、我あるいは我所とみなすでしょうか―というように』と」

89-126. 　　　　　　　　

‘yo ca pañcasu upādānakkhandhesu anusahagato asmīti māno, asmīti chando, asmīti anusayo asamūhato.

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
‘yo		代	代的	男	単	主	（関係代名詞）
ca		不変	‐	‐	‐	‐	と、また、そして、しかし
pañcasu		数	特	‐	複	処	五
upādāna	upa-ā-dā	名	a	中	依（属）		取、取着、執着
khandhesu		名	a	男	複	処	蘊、あつまり
anu		形	u	‐	持		微小の、原始の
sahagato	gam	過分	a	男	単	主	倶行の、ともなる　→微倶行の、残余の
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
asmī	as	動	現	能	単	一	ある、なる
語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
ti		不変	‐	‐	‐	‐	と、といって、かく、このように、ゆえに
māno,	man	名	a	男	単	主	慢
asmī	同上
ti		不変	‐	‐	‐	‐	と、といって、かく、このように、ゆえに
chando,		名	a	男	単	主	欲、意欲、志欲
asmī	同上
ti		不変	‐	‐	‐	‐	と、といって、かく、このように、ゆえに
anusayo	anu-śī	名	a	男	単	主	随眠、煩悩
asamūhato.	a-saṃ-ud-han	過分	a	男	単	主	根絶されていない

訳文　　　　　　　

すなわち、五取蘊のうちに、僅かに残って根絶されていない『私がある』という慢が、『私がある』という欲が、『私がある』という随眠があるのです。

gati傾向とāsavas汚れと anusaya潜在力とkilesa煩悩の関係は

仏教用語	パーリ語	コップの中の喩え	内容	具体的
煩悩	kilesa	泥（土と水）菌類、コップすべての存在	無明普遍エネルギー	本能・欲求宇宙法則
有漏	asava	底に沈んでいる発酵体	貪瞋痴の回路	貪欲・怒り
随眠ずいめん	anusaya	底から表面に向かう水泡	渇望・嫌悪	欲望・願望
趣	gati	表面に浮かんでいるアブク	性向	傾向・習慣

「わたし」

エピソード雑阿含経巻第5-103

ヴァッサ国の首都コーサンビー。ここにはゴーシタ園という場所があり、多く釈尊の弟子達がいました。

ある時、そのゴーシタ園にいた弟子の一人であるケーマさんが病気を患ってしまいました。重い病気だった為、ケーマさんはしばらく療養することになりました。

また病状が安定しないケーマさんの為に、同じく弟子のダーサカさんが看病を担当することになりました。

看病に通っているダーサカさんには、他の弟子達からケーマさんの様子を尋ねる声が集まりました。

「ケーマさんの身体の具合はどう？」

「少しは楽になったのかい？」

「辛くはない？」

「具合悪くなったりしてません？」

「私たちのこと、ケーマさんによろしく伝えておいてください」

ケーマさんの看病に行く際、ダーサカさんは他の弟子達皆からの言葉を伝えました。

「皆がよろしくって言っていましたよ。『病気は少しはよくなりましたか』『苦しいことはありませんか』って」

ケーマさんは応えます。

「そうですか。ありがとうございます。でも、残念ながら病気の具合はあんまり変わりないですね。

容体も安定しているわけではないし、どちらかというと、痛みは増してきているし……。正直に言えば、相当苦しい。

例えるなら、屈強な男達が、私の頭を縄で締め付けるいるかのような頭痛がするし、腹痛は内蔵をえぐり取られるかのような痛みがあります。足も焼けるように熱い。

とてもじゃないですが、容体が落ち着いたとは言えないですね」

ダーサカさんは、直接看病をして、ケーマさんが苦痛に歪む顔も知っています。ケーマさんの言葉が、冗談でも何でもなく、いやそれ以上の苦痛に耐えていることをダーサカさんは知っていたのでしょう。

看病を終えたダーサカさんは、皆の所へと戻り、ケーマさんの病状を伝えました。

すると、それを聞いた弟子達がこのような話をしました。

「そうですか。彼の病気はそんなに……。かわいそうに」

「本当に辛そうですね。まぁでも、彼の病気とは言うけれど、病気は誰の身にでも起り得るし、明日は我が身かもしれないですよ」

「そうですね。自分わたくし事でもあるのですよね」

「そういえば以前、師匠釈尊が “わたし”について説かれたことがありましたね」

「自己を見つめる。自己を観察する。そのお話ですか？」

「え～っと。自己を分析して、自分の身体と自分の心についての話をしていましたよね」

「そうですね。そこで、『自己はわたしではない、わたしの所有物でない』とおっしゃっていましたよね」

「『自己はわたしではない』か。確かに私もその話を聞きましたが、どういうことなのでしょう？」

「『自己はわたしではない』ってことは、自分の身体や心以外に、本当の我がいるってことに、私には聞こえるんですけど？」

「ああ、それは違うんじゃないですかね。師匠釈尊は、そういう我ではないってことは日頃から説いていますよ」

「例えば、自己には、自己を自己たらしめる核があって、それを本当の我と考える。そういう我ではないってことですね」

「はい。付け加えると、我という核があると考えると、その核が本体で、後は付属品と考えます。付属品は壊れたり劣化したりしても、取り換えればいいけれど、その本体は取り換えようがない。それが変わってしまったら、別物になってしまう」

「ああ、だから、その本体にあたる我は壊れちゃいけないし、変わっちゃいけないのか。つまり、ずっと変わらない我。そういう話になるわけですね」

「不変の我がいる、私を自己たらしめる絶対的な我がいる、本当の我がいる。その手の話が、今の時代（古代インド時代）、世の中の常識ですものね」

「ついでにその我は自己の中にあるのか、外にあるのかみたいな話にも発展するわけですね」

「まぁ、今の時代（古代インド時代）の話はさておき、いずれにせよ、師匠釈尊は、無常常なるもの無し、あらゆるものは変化していると説いています」

「だから本当の我、不変の我、そういう『我ではない』ってことですね」

「そもそも『この自己はわたしではない・・・・・・、わたしの所有物ものでない』とおっしゃっているわけですからね」

「じゃぁ『この自己はわたしではない・・・・・・、わたしの所有物ものでない』ってどういうことなんですか？　私にはわかりません」

「私、自分、自己、我、自我……。私たちは漠然とわたしと言っていますが、わたしって何か……」

「そうですね。自己を見つめる。やはり、そこから考えるしかないんじゃないですか？」

「自己分析してみると、目があったり、耳があったりと、まず自分の身体。そして、こうして考えたり、思いついたり、気持ちが湧き上がったりする自分の心。この話につながるわけですね」

「じゃぁまず、自分の身体に注目してみましょうか。わたしって何でしょう？」

「え～っと……。例えば、ここにわたしがいますよね。自分の身体がここにあります」

「うん。ありますね」

「なら、この身体はわたしでしょう！」

「いやいや、ちょっと待って。確かにそうですけど……。ならば、心はどうなるんですか。身体がわたしなら、心が違っても、わたしですか？」

「いや、それは……、わたしとは言えないね。なら心がわたしなのか……？」

「それでも同じ理屈で、心がわたしとして、仮に、他人の身体に心が入り込んだとしても、それをわたしと呼べるでしょうか……。」

「そもそも、身体と心を入れ替えることなんてできるのですか……。そんな妄想の産物、とても、わたしとは言えないでしょう」

「身体と心は物理的に切り離せなくても、身体は物理的に切り落とせますよ。実際にやろうとは思いませんが……」

「仮にやってみたとしてもですよ。そこに、はっきりと『これがわたしだ』と言えるものがありますか？」

「例えば、自分の腕を切り落として、その腕は、わたしなのかと問われる。わたしの腕だった（？）ものだから、そこに腕にはもう、わたしはいない……のかな？」

「うーん。そうやって、切り落としていって最後に残ったのが……わたし？」

「それってさ。半分に切ったらどうなるんですか。例えばムカデとかミミズとか、半分に切っても両方動いていますけど、その場合、どっちがわたし？」

「いや、そもそも、半分に切って動いている人間なんていないでしょ。というか、それ、そもそもどっちが、わたしといえるのですか？」

「わたしとは言えませんね……。あっ、ならばどっちもわたしでは？」

「では、話を戻しますけど、自分の腕を切り落としたら、その腕はわたしですか？　足を切り落としたら、その足はわたしですか？　そもそも、わたしってどこにいるんですか？」

「……」

「心！心はどうですか？」

「そうですね。心をバラバラにってのは想像しにくいですが、例えば、心にも、何かを感じ受け取る心があって、楽しいな、苦しいなって感じる心があって、これがしたい、あれがしたいという心があります」

「他にも、行動に移す。歩く時は歩く時の、走る時は走る時の、つかむ時、放す時、それぞれ、動作する意志、心がありますね」

「意識して動くこともあれば、無意識で動くこともありますね」

「あとは、今みたいに、言葉にしたり、考えたり、思いついたりする。そういったような心もありますね」

「後は言葉にしてしまえば、喜びとか、怒りとか、悲しみとか、楽しみとか……。言ってみればきりがないですね」

「きりがないですが、そういった心をバラバラにしていったとしてですね。わたしはどこにいるんですか？」

「うーん。身体と同じ理屈かぁ……」

「あっ、でも、私たちは考えて言葉にしますよね。例えば、自己紹介の時、自分の名前を言いますよね。『あなたは何者だ？』と問われれば『わたしは○○です』ってはっきりと言えますよね」

「例えば、わたしはダーサカです。ならば、ダーサカがわたしですか？ダーサカは名前です。わたしはただの名前ですか？　名前はわたしですか？」

「……」

「ちょっと見方を変えましょうか。怒りや悲しみ、不安や恐怖など、こういった自分の心に起きることに自分達はふりまされることがあるわけじゃないですか。悩みや迷いもこうして生まれてくるわけですよね。こういうのを煩悩っていうじゃないですか」

「そういえば、私たち、今、悩んでますね。でもこうして考えて悩むの、私は嫌いじゃないですよ。確かに大変（苦しい）ですけど、楽しいです」

「でも、楽しいとは思えないものだってありますよね。私たちそれぞれ、迷いや苦しみを何とかしたくて、師匠釈尊に弟子入りしたわけですよね？」

「心って、楽しいとか、苦しいとか、その他色々、本当にいろんな色に変化しますよね」

「変化しますね。でも私が言いたいのはそこではなくて、迷いや苦しみを何とかしたいのです。さっきまでの話だと、苦しいって自分の心に生じますよね？」

「自分が自己と認識する自我が、自分を迷わせ、悩ませる。そう言いたいのですか？」

「えーっと……、つまりは、自我が迷い苦しみ、煩悩ってこと？」

「自我が煩悩ならば、自我を無くせば、煩悩も無くなる。自我を無くせば、悩みや迷いも無くなる」

「で、自我を無くす事が修行の完成ってことになると？」

「きっとそうですよ！」

「でも、自我って無くせますか？だって自己はあるじゃないですか。自分の身体も自分の心もこうしてあるじゃないですか。わたしはいるじゃないですか」

「でも、今まで話してきましたけど、『これがわたし』と間違いなく明確に言えるものってありませんでしたよ。結局の所、本来『わたしなんていない』って事なんじゃないんですか？」

「ここで師匠釈尊が言っているのは『この自己はわたしではない・・・・・・』ですよ。『わたしはない』とか、『自分が無い』とか、『自我を無くせ』とか、そんな事は言ってないですよ」

「そうですね。今までの話からだと、『わたしって何』と言わずにはいられないです。でも、『わたしなんて無い』とは断言できません」

多くの弟子達が釈尊の言葉について考える中、一人の弟子がこのように言いました。

「ケーマさんにも、聞いてみましょう。師匠釈尊のおっしゃる通りかどうか、少しでも感じる所があるかどうか。どのように見ているのでしょうか」

「ダーサカさん。今度ケーマさんに聞いておいてください」

ダーサカさんは、彼らの教え（？）を受け、次に、ケーマさんの看病の際に、皆の話を伝えました。

「ケーマさん。皆があなたに聞きたいことがあると言っていたのですが。師匠釈尊が語っていた”わたし”について、ケーマさんの意見を聞きたいのだそうです。

ケーマさんは、自己において、例えば自分の身体、自分の心において、『わたしではない』『わたしの所有物ものでない』と少しでも感じますか？」

ケーマさんは応えます。

「私は、師匠釈尊のおっしゃる通り、自分の身体や心、自己において『わたしではない』『わたしの所有物ものでない』と観察します」

そして、皆の所へと戻ったダーサカさんは、皆にケーマさんの言葉を伝えました。

「『自己において、わたしではない、わたしの所有物ものでないと観察します』とケーマさんは言ってました」

すると、何人かの弟子達がこのような話をしました。

「おお。ケーマさんは『この自己において、わたしではない、わたしの所有物ものでない』と観察できるのですね」

「じゃぁ、それってさ。悩み、迷い、苦しみなど、煩悩が尽き果てたということですか？　煩悩である自我をも尽き果て、修行の完成者になったということですか？」

「ダーサカさん。今度、是非、ケーマさんに聞いておいてください」

次に看病に訪れた際、ダーサカさんはケーマさんに伝えました。

「ケーマさん。以前『自己は、わたしではない、わたしの所有物ものでないと観察します』とお話していたじゃないですか。その事で聞いてほしいことがあると言われまして……。

そのように自己を感じると、煩悩が尽き果て、自我が無くなる。修行を完成した者となるのですか？」

ケーマさんは応えます。

「私は『自己は、わたしではない、わたしの所有物ものでない』と感じましたけど、煩悩が尽き果てたわけでもなく、自我を無くしたわけでもありませんよ。修行完成者なんてことはありませんよ」

ダーサカさんは、皆の所に戻って、言いました。

「サーマさんは『自己は、わたしではない、わたしの所有物ものでないと感じつつも、煩悩や自我を無くした修行完成者ではない』と言ってました」

すると、何人かの弟子達が言いました。

「ぇえ～っ。ちょっと、ダーサカさん。また、ケーマさんの所に戻って、言ってやってください。前後が矛盾して、間違っているって」

「矛盾しているって何が？」

「『自己は、わたしではない』のなら、わたしはいないはずだと私は思います。なら、自我を無くして、煩悩を無くした修行完成者になっていないと、矛盾しちゃうでしょう!?」

「ああ。以前話していた『自我が煩悩ならば、自我を無くせば、煩悩も無くなる。自我を無くせば、悩みや迷いも無くなる』『自我を無くす事が修行の完成』ってやつか」

「『自己は、わたしではない』＝『本来、わたしはいない』＝『煩悩である自我が無くなる』＝『修行完成者』じゃないと矛盾するってことですね」

「ダーサカさん。早速さっそく、聞いて来てください！」

そう言われて、ダーサカさんは、看病とは関係なく、ケーマさんの所へ行くこととなってしまいました。

「あの～ぉ、ケーマさん」

「おや、ダーサカさん。どうしたのですか？」

「ちょっと、皆から頼まれまして……」

「また、皆から聞きたいことがあると？」

「はい。ご病気なのに申し訳ありませんが、どうかお願いします」

未だ病状が思わしくないケーマさん。辛そうに起き上がりつつも、ダーサカさんの言葉に耳を傾けます。

「ケーマさん。あのですね。以前あなたが言っていたことが、前後が矛盾して、間違っているって言われちゃいまして」

「前後が矛盾ですか？」

「はい。『自己は、わたしではない、わたしの所有物ものでないと感じつつも、煩悩や自我ものを無くした修行完成者ではない』というのは、前後が矛盾して、間違っているって」

「えーと。私はね。この病気になって思うんです。自分が蝕むしばまれている。自分の命が脅かされている。そんな現状が、嫌でもここにあります。

誤解しないでほしいのですが、別に同情してほしいわけではないのですよ。

でも、いつもいつも襲ってくる苦痛。まるで最初からそこにいたかのように、あたりまえのように私を侵す苦しみ。『どうして私がこんな目に合うのか』なんてことも考えてしまいます。

一人で考えていると悪い方悪い方に考えてしまって。そんな自分にふと気がついて、自分に振り回される自我にうんざりして。自己嫌悪ってのはこういうことですよね。

どうしようもないんですけどね。でも、どうしようもないほどに、自分が自己に叫んでくるんです。

私にとってこの病気は、そんな自分とも向き合うということなんですよ。

そうとでも思わなければ、私は、自己を見ていられなくなる。自分を見失う。自分から逃げてしまう。そうしてきっと自分の苦しみに飲み込まれてしまうでしょう。

例えば、『私は死にたくない。死にたくない！』と、叫ぶ私がいます。自分の生にしがみつこうとします。自分にしがみく、そんな自我が確かにいます。

当然ですが、病気は人を選びません。どんなに自分にしがみつこうが、多くの人が病いの為に死んでいます。

それでも『私は大丈夫だ、私だけは大丈夫なんだ！』と思わずにはいられません。

自分にしがみつくことは、我執という事でもありますね。『私だけは大丈夫だ』なんて傲慢だと言われても、反論できません。

エゴですよ。自我エゴ。『我が傲慢』だから、我慢と言ったりもしますね。

そういえば、私は同時にこうも思います。『私は助かりたい。この病気を治したい』と、心から欲しています。

これも、我の欲望でしょう。だから、我欲がよくとも言いますね。

さっきから私、自分、自我って、わたしとばかり言ってますけど、皆、自己からわき出してきます。

そんな自分に振り回されていることもありますね。煩わしい、悩ましいと思う。それは煩悩っていいますよね。

こういうことを、私たちは、我使と言うことがありますね。

本当に色々な自分がいる。色々な自分がある。私は、これまで、このような自分がいるとは、知らなかった。

こんな自分なんていらない。そう思ってしまう自分もいるけれど、でもね。どの自分の自己もなんですよね。

もし、それらの自分がいなければ、その自分が欠けてしまったら、自己は自己たり得ません。

少なくとも、そう感じる自分がいます」

わかったようでわからないような顔をしているダーサカさんを見て、ケーマさんは言います。

「あなたも、自分にとって、他人事ではないのですよ。あなたがこうして看病に来てくれるおかげで、私は命を何とか持ちこたえさせています。

自分の命は、あなたによって支えられています。あなた無しには、今の自分はありません。あなたがいたから、自分の命が、今ここに、こうしてあります。

この命は、自分のものであって、自分のものではないのです。

自己は他己（あなた）ではないし、他己（あなた）は自己ではない。でも、他己（あなた）なしに自己はいない。そう、自己には他己（あなた）がいますよ。

私が、さっき言った、我慢や我欲や我使、自我を断ち切ったわけでもなく、自己を離れたり、自分を追い出したりしたわけではありません。私は未だにわたしを知らないのです。

『自己において、わたしではない、わたしの所有物ものでないと観察します』とは、そういうことですよ」

わかったようでわからないながらも、なんだか胸に温かいものを感じるダーサカさん。彼はケーマさんとの話を伝えるべく、皆の所へと戻りました。

「ケーマさんからのお話を聞いてきました。え～っと……『自己において、わたしではない、わたしの所有物ものでないと観察します』というのはですね。え～、なんていうか、その～……」

「ケーマさんはなんて言っていたんですか？」

「え～っと『我慢や我欲や我使、自我を断ち切ったわけでもなく、自己を離れたり、自分を追い出したりしたわけではなく、私は未だにわたしを知らない』ということなんですけど……」

すると、何人かの弟子達が言いました。

「我慢や我欲や我使というのは、普段私たちがよく使っている言葉ですね」

「そうですね。我執、つまり自分に執着してしまうあまりに、自分を高く見て他を軽視する。我が慢心すると書いて我慢」

「我欲がよくは読んで字のごとく、我の欲望。そして、そんな自分の煩悩に振り回されることを我使と言いますが……」

「我ばっかりですね……。そして断ち切ったわけでもなく、未だ知らず、離れたり、追い出したわけでもないと。」

「煩悩を無くした、自我を無くしたっていうわけじゃないんですか？むしろ、我ありってどういう事なんですか!?　ダーサカさん」

「えーーーっと、あれ？いや、確かにそう言っていたんですけど、そう言いたいんじゃなくて……」

「いやいや。あなたが『我あり』というのは、どこにあるのですか？わたしがあるというのはどこにあるのですか？」

「いやいや、ダーサカさんに言っても仕方がないじゃない」

「ならば、ケーマさんに聞いてください。あなたがわたしがあるというのはどこにあるのですか。身体がわたしだというのですか、わたしは身体とは異なるというのですか。心がわたしだというのですか。わたしが心とは異なるというのですか？」

そのように、言いながら、何人かの弟子達は、ダーサカさんをケーマさんの所へと行かせました。

ダーサカさんから、質問を伝えられたケーマさんは応えます。

「私は、身体がわたしだとか、わたしは身体ではないとか、心はわたしだとか、わたしは心ではないとか、そんなことを言っているんじゃありませんよ」

「はい。しかも『我慢や我欲や我使、自我を断ち切ったわけでもなく、自己を離れたり、自分を追い出したりしたわけではなく、私は未だにわたしを知らない』と私も伝えようとしたのですが……」

「う～ん。なんて煩わしい……。しかも、どれだけ、あなたを駆け回させるつもりなんでしょう。ダーサカさん。杖を取って来てくれませんか？」

「はい？」

「私自みずから、行きます。杖にしがみついてでも行きます」

「っえ？　大丈夫ですか？無理はなさらないほうが……」

「お願いです。杖を持って来て下さい」

強く願うケーマさんに押され、ダーサカさんは杖を持ってきました。

ケーマさんは、杖に寄りかかりながら、皆の所へ行きました。

一方、まさかケーマさんが直接くるとは思っていない皆は、あちらのほうから、ダーサカさんと共に、何とか杖に寄りかかりながらやってくる人物を目にし、慌てて席を設けました。

座っても辛くないように、腰かけを用意し、何人かはケーマさんの所へいって身体を支え、手伝いました。

席に座らせ、久しぶりの再開に、お互いを労ねぎらいます。そして本題へと入りました。何人かの弟子達が、ケーマさんに問いかけました。

「ケーマさん。あなたがいう我慢とは……。一体どこに、わたしというものを見るのでしょうか？」

「あなたがわたしがあるというのはどこにあるのですか？」

「身体がわたしがだというのですか、わたしは身体とは異なるというのですか。心がわたしだというのですか。わたしがは心とは異なるというのですか？」

ケーマさんは応えます。

「身体がわたしだとか、わたしは身体ではないとか、心はわたしだとか、わたしは心ではないとか。そうではありません。

『我慢や我欲や我使、自我を断ち切ったわけでもなく、自己を離れたり、自分を追い出したりしたわけではなく、私は未だにわたしを知らない』っいう事はですね。

う～～～ん。あなた方には何といえばいいのでしょうね……。ダーサカさんにはああやって言えましたが……。

例えば、蓮の花があるでしょう。その花の香りのようなものですよ」

「？」「？」「？」

「根っこが香りですか？」

「いいえ。根っこは香りではありません」

「では、香りは根っことは異なりますか？」

「香りは根っこではないですよね……？」

「いーや。そうとも言えないのではないですか。だって、根っこなしに、香りは生まれませんからね」

「根っこは香りではないけれでも、根っこがあるから、香りがある。何故なにゆえに香りはあるのか。その理由を探ると、根っこにもつながるというわけか」

「そうですね。根っこがあって、はじめて、花の香りがありますから、完全に『香りは根っこと異なるもの、違うもの』とは言い切れないということですね」

「香りは根っこではないというわけでもない、ということですね」

「では、莖が香りでしょうか？」

「いいえ、莖は香りではありません」

「では、香りは莖とは異なりますか？」

「これも、確かに茎は香りではないけれど、莖なしに香りは生まれない」

「香りは茎ではないというわけでもない、ってことになるね」

「では、葉は香りでしょうか？香りは葉とは異なりますか？」

「いいえ。葉は香りではないし、香りは葉ではないわけでもありません」

「では、蕊しべは香りでしょうか？香りは蕊しべとは異なりますか？」

「ちょっと待って。蕊しべって何？」

「おしべとか、めしべのことですよ。おしべで花粉をつくって、めしべで花粉を受け取る。受粉するから次の世代、つまり種が生まれるってわけです」

「そういえば、花の香りってその蕊しべから出るんじゃないんですか？蜜を吸った虫が花粉つけて受粉するんですから」

「そういう花もあるそうですね。でも多くの花の場合は、花びらが香るものが多いそうですよ。他にも部位ごとに違う香りを出しているものもあるそうです」

「それなら、花にもよるけど、香りはその蕊しべだったり、花びらだったりってことじゃないの？」

「蕊しべが香りそのものというわけではありませんよね。もちろん、香りは蕊しべから出てくるものもあるそうなので、蕊しべなしには香りは生まれませんが」

「つまり、蕊しべは香りというわけではない。そして、香りは蕊しべではないというわけでもない」

「では、先ほどの話に出た、花びらは香りでしょうか？香りは花びらとは異なりますか？」

「いいえ、花びらは香りというわけではありません。香りは花びらではないというわけではありません」

「じゃぁ、これは何の香りですか？」

「これは、花の香りでしょう」

「『わたし』もそういうことですよ」

「わたしも花の香りと同じような事。そういうことか……」

「『身体はわたしというわけではない。わたしは身体ではないわけではない。心はわたしというわけではない。わたしは心ではないというわけではない』

そうではあるけれども『自己において、わたしではない、わたしの所有物ものでないと見ます』

しかも『我慢や我欲や我使、自我を断ち切ったわけでもなく、自己を離れたり、自分を追い出したりしたわけではなく、私は未だにわたしを知らない』

もし伝わらないのであれば、この例え話で、どうか理解をしてください。

それ以外、言いようがありません。

衣服をどんなに洗って汚れを落とそうとも、臭いは残ります。その臭いも、様々な香料をつけることでやっと臭わなくなります。

『自己は、わたしではない、わたしの所有物ものでない』と感じても、自己において『我慢や我欲や我使、自我を断ち切ったわけでもなく、自己を離れたり、自分を追い出したりしたわけではなく、私は未だにわたしを知らない』

しかも、自己において、よく考えて、もっともっと考えて、生じたり滅したり、変わりゆく事を観察します。

これは身体です。

身体は何からできていますか。何が集まって、身体となっていますか。何がどうなって、その身体が生じますか。

この身体は変わりゆきます。何がどうなって、今の身体がありますか。何がどうなって今の身体ではなくなっていきますか。

これは心です。

心は何からできていますか。何が集まって、心となっていますか。何がどうなって、その心が生じますか。

この心は変わりゆきます。何がどうなって、今の心がありますか。何がどうなって今の心ではなくなっていきますか。

自己において、生じたり滅したり、このように変わりゆく事を観察したならば、我慢や我欲や我使、ではなくなっていくでしょう」

ケーマさんがこの話をした時、皆は、それぞれ、何か気づくことがあったことでしょう。

ケーマさんも、皆が自分の話を大事に思い、大事と思う皆の心に触れて、少しずつ病気が良くなっていきました。

時に、これは余談ですが、後になって、何人かの弟子達がケーマさんにこう言ったそうです。

「私たち、あなたに色々聞いたことで、伝わるものがあったし、本当に楽しかったです。

でも、これだけは何度でも言いたいのですが……。

何故あれほど質問をしたかというと、あなたの巧みな言葉使い、事細かな所まで行き届く何とも言えない素晴らしい話を聞きたかったからです。

決してあなたを困らせようとしたわけではないのですよ。

何度も言いますが、本当に、広く仏法を説くに足る人物だと思っていたからですよ」

それを聞いて、ケーマさんもダーサカさんも、そして皆も、笑っていたそうです。

まずは宇宙にある意識が

ゼロ意識　　エネルギーを少しも持たない意識

宇宙意識　　受精以前からあるエネルギーをもつ宇宙の意識

霊魂意識　　メンタル体がもつ意識

次に個にある意識が、

真我意識　　受精瞬間に生じる個の根源となる意識　　

真空意識　　受精瞬間の意識　　　定まるカタチではないが「いのち」そのものとなる意識

全体性意識　受精直後の意識　　　カタチはあるが、境界線がまだ確定されていない意識

分別意識　　細胞分裂後の意識　　外部（母体や自分の身体）の信号を体感する胎児

枠組意識　　自分の意識とその外側に違いがあることを内胚葉の蠕動で認識しはじめる胎児の意識　

直観意識　　眼耳鼻舌身の感覚器官からではなく、微細な波動を直截に認識する胎児の意識

共通意識　　中胚葉（循環器系器官の波動）で同調することで対象と共通性を感知する胎児の意識　

行動意識　　自分の微細体と肉体がつながっていることがわかり、肉体を意識的に動かす胎児の意識

統合意識　　内胚葉/中胚葉/外胚葉が器官となり、信号の差異を把握して、それらをまとめて統合する新生児の意識

型式意識　　パターン認識　　インプット信号に対応する自動反応回路で世界を認識する乳児の意識

概念意識　　シンボリズム認識　　外界の信号をシンボルとして認識する幼児の意識

自我意識　　「自分」という主体を基準にして、感覚器官を通じて外界からの信号を認識する幼児の意識　　

自己意識　　他者を含めた「自分」を主体として、感覚器官を通じて外界からの信号を認識する子供の意識

自己に帰依するMahāparinibbānasutta　　DN16　20. Ānandayācanakathā　大般涅槃経　　　英訳　

kataṃ me saraṇa attano

「釈尊も『われは自己への帰依をなした』と説いたと伝えられている。」

中村元『中村元選集　第15巻』「第二編　人間存在の反省、第五章自己の探求–無我説」538頁

「それ故に、この世で自らを島とし、自らをたよりとして、他人をたよりとせず、法を島とし、法をよりどころとして、他のものをよりどころとせずにあれ。」

大パリニッバーナ経の原文

tasmātihānanda, attadīpā viharatha attasaraṇā anaññasaraṇā, dhammadīpā dhammasaraṇā anaññasaraṇā.

tasmāt（それゆえに） iha（ここにおいて） ānanda（アーナンダよ）

attan（自ら、自己[Sk. ātman]）dīpa（洲、島） viharatha（あなた方は〜でありなさい）

saraṇa（避難所） anañña（他ならぬもの、そのもの）dhamma（法、ダンマ [Sk. dharma]）

ディーパは洲や島と訳されていますが、語源を遡るとヴェーダ語でdvīp、dvi+ap に分解され、dvi は二つ、ap は水で、水に挟まれた土地を示します。

スッタニパータの中村元訳では洲という訳語が使われています。

河川の洪水と、洪水でも沈まない中洲をイメージしていたのですが、スリランカも dīpa ですし、須弥山を囲うようにしている四つの巨大な島（南贍部洲、東勝身洲、西牛貨洲、北倶盧洲）も dīpa と呼ばれています。

日本の河川のイメージだと洪水で沈水しない中洲はイメージしにくいので小山のようなものでしょうか？

いずれにせよこの世の苦難を大洪水（ogha、暴流）に喩え、その激流から逃れるために頼りにすべき沈まぬ土地がディーパと呼ばれています。

自己こそ自分の主である　Bhikkhuvagg　Dhammapada160　KN 　ダンマパダ　　英訳　monastics

『自己こそ自己の主［あるじ］である。他人がどうして〔自分の〕主であろうか。自己をよくととのえたならば、得がたき主を得る。』（Dhp, 160）

『みずから悪をなすならば、みずから汚れ、みずから悪をなさないならば、みずから浄まる。浄いのも浄くないのも、各自のことがらである。人は他人を浄めることができない。』(Dhp. 165)

『実に自己は自分の主である。自己は自分の帰趨である。故に自分をととのえよ。──商人が良い馬を調教するように。』(Dhp. 380)

したがって自己は自己にたよらなければならぬ。このような理想的自己は大海のなかの島のようなものである。

『たとえば大海の波のように、生と老いとが、そなたを圧倒する。だからそなたは自己のよき島（よりどころ）をつくれ。けだしそなたには、他のよりどころがないからである。』(Therag. 412)

ー中略ー

真実の修行者は『自己を島（よりどころ）として世間を歩み、無一物で、あらゆることに関して解脱している。』[Sn. 501]と説かれている。」

マスターベーション　Sukkavissaṭṭhisikkhāpada　 saṅghādisesa　律蔵　英訳　emission of semen

セックス　　　　　　Paṭhamapārājikasikkhāpada　pārājika　律蔵　　　　英訳　rule on expulsion

如実知見　あるがままに知る　Samudayadhammasutta　SN 22.126　生起法経　英訳Liable To Originate　

yathābhūtaṃ pajānāti　　　サンスクリット語ではyathābhūtaṃ paśyati

yathābhūtaṃ　　真実、あるがまま、ただしく、

厭離の順序　Sammāsambuddhasutta SN22.58 　正等覚経　英訳The Perfectly Enlightened One

samādhi →yathābhūtañāṇadassana [yathābhūtañāṇa+dassana内観]

厭離nibbidā → 離貧（離欲）virāga → 解脱vimutti

これは私の〈我〉ではない　Yadaniccasutta SN22.15　凡無常経　　英訳What is Impermanent

15-5. yadanattā taṃ ‘netaṃ mama, nesohamasmi, na meso attā’ti evametaṃ yathābhūtaṃ sammappaññāya daṭṭhabbaṃ.

およそ非我であるもの、それは、『これは私のものではない。これは私ではない。これは私の〈我〉ではない』と、そのように如実に正智をもって見られるべきものです。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
yad		代	代的	中	単	主	（関係代名詞）
anattā		名	an	男	単	主	無我、非我
taṃ		代	代的	中	単	主	それ
‘na		不変	‐	‐	‐	‐	ない
etaṃ		代	代的	中	単	主	これ
mama,		代	代的	‐	単	属	私
na		不変	‐	‐	‐	‐	ない
eso		代	代的	男	単	主	これ
aham		代	代的	‐	単	主	私
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
asmi,	as	動	現	能	単	一	ある、なる
語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
na		不変	‐	‐	‐	‐	ない
me		代	代的	‐	単	属	私
eso		代	代的	男	単	主	これ
attā’		名	an	男	単	主	我、自己
ti		不変	‐	‐	‐	‐	と、といって、かく、このように、ゆえに
evam		不変	‐	‐	‐	‐	このように、かくの如き
etaṃ		代	代的	中	単	主	これ
yathābhūtaṃ		形	a	中	単	副対	如実に
sammappaññāya	pra-jñā	名	ā	女	単	具	正智、正慧
daṭṭhabbaṃ.	dṛś	未分	a	中	単	主	見られるべき

神通を嫌悪する釈尊　Kevaṭṭasutta　DN11　ケーヴァッタ経　　　英訳With Kevaddha　　

苦患ādīnava

Imaṃ kho ahaṃ, kevaṭṭa, iddhipāṭihāriye ādīnavaṃ sampassamāno iddhipāṭihāriyena aṭṭīyāmi harāyāmi jigucchāmi’’.

ケーヴァッタよ、じつに私は、神通の奇跡によるこのわずらいを見て、神通の奇跡に関し、戸惑い、恥じ、避けるのです。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
‘‘Imaṃ		代	代的	男	単	対	これ
kho		不変	‐	‐	‐	‐	じつに、たしかに
ahaṃ,		代	代的	‐	単	主	私
kevaṭṭa,		名	a	男	単	呼	人名、ケーヴァッタ
iddhi		名	i	女	依（属）		神通、神変
pāṭihāriye	prati-hṛ	名形	a	中	単	処	神通、神変、示導、奇跡
ādīnavaṃ		名	a	男	単	対	過患、患難、過失、危難
sampassamāno	saṃ-paś	現分	a	男	単	主	見る、正観する
iddhi		名	i	女	依（属）		神通、神変
pāṭihāriyena	prati-hṛ	名形	a	中	単	具	神通、神変、示導、奇跡
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
aṭṭīyāmi		動	現	能	単	一	悩む、困惑する
harāyāmi		動	現	能	単	一	慚愧する、心にはじる、悩む、いらいらする
jigucchāmi’’.	gup　意	動	現	能	単	一	厭う、避ける、厭嫌する.

今、なすべきことをする　Bhaddekarattasutta　MN 131　吉祥一夜経　英訳One Fine Night

過去をどう見るかは解釈に過ぎない。

「今」の言動で、過去の意味は変わる。あの過去があったから、現在こうなった。

過ぎ去れるを追うことなかれ。　　　いまだ来らざるを念（おも）うことなかれ。

過去、そはすでに捨てられたり。　　未来、そはいまだ到らざるなり。

されば、ただ現在するところのものを、そのところにおいてよく観察すべし。

揺らぐことなく、動ずることなく、そを見きわめ、そを実践すべし。

ただ今日まさに作（な）すべきことを熱心になせ

Atītaṃ nānvāgameyya, nappaṭikaṅkhe anāgataṃ;

過去を追い求めるべからず。未来を希求するべからず。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
‘‘Atītaṃ	ati-i	名過分	a	中	単	対	過去、過ぎ去った
na		不変	‐	‐	‐	‐	ない
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
anvāgameyya,	anu-ā-gam	動	願	能	単	三	随行する、戻る、追求する
語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
na		不変	‐	‐	‐	‐	ない
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
paṭikaṅkhe	prati-kāṅkṣ	動	願	能	単	三	期待する、希求する
語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
anāgataṃ;	an-ā-gam	過分	a	中	単	対	未来の

Yadatītaṃ pahīnaṃ taṃ, appattañca anāgataṃ.

およそその過去は捨断されており、未来は到達していない。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
Yad		代	代的	中	単	主	（関係代名詞）
atītaṃ	ati-i	名過分	a	中	単	主	過去、過ぎ去った
pahīnaṃ	pra-hā	過分	a	中	単	主	捨てられた
taṃ,		代	代的	中	単	主	それ
appattañ	a-pra-āp	過分	a	中	単	主	未到達の
ca		不変	‐	‐	‐	‐	と、また、そして、しかし
anāgataṃ.	an-ā-gam	過分	a	中	単	主	未来の

Paccuppannañca yo [yaṃ (nettipāḷi)] dhammaṃ, tattha tattha vipassati;

およそ現在の法をそこかしこで観察する者。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
‘‘Paccuppannañ	prati-ud-pad	名過分	a	男	単	対	現在
ca		不変	‐	‐	‐	‐	と、また、そして、しかし
yo		代	代的	男	単	主	（関係代名詞）
dhammaṃ,	dhṛ	名	a	男中	単	対	法
tattha		不変	‐	‐	‐	‐	そこで、そこに、そのとき、そのなかで
tattha		不変	‐	‐	‐	‐	そこで、そこに、そのとき、そのなかで
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
vipassati;	vi-paś	動	現	能	単	三	観察する、観法をなす

Asaṃhīraṃ [asaṃhiraṃ (syā. kaṃ. ka.)] asaṃkuppaṃ, taṃ vidvā manubrūhaye.

〔その〕智者は、支配されず、堅固に、その〔法〕を増修すべし。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
Asaṃhīraṃ	a-saṃ-hṛ　受	未分	a	男中	単	副対	除去すべきでない、不動の、支配されない
asaṃkuppaṃ,	a-saṃ-kup	形	a	男中	単	副対	不動揺の、堅固な
taṃ		代	代的	男中	単	対	それ
vidvā	vid	形	ant	男	単	主	智者
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
anubrūhaye.	bṛh　使	動	願	能	単	三	増大させる、増修する、修習する

Ajjeva kiccamātappaṃ [kiccaṃ ātappaṃ (sī. ka.)], ko jaññā maraṇaṃ suve;

まさに今日、熱勤がなされるべきである。誰が明日の死を知ろうか。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
‘‘Ajja		不変	‐	‐	‐	‐	今日、今
eva		不変	‐	‐	‐	‐	まさに、のみ、じつに
kiccam	kṛ	未分	a	中	単	主	なされるべき
ātappaṃ,	ā-tap	名	a	中	単	主	熱勤、熱心、勇猛
ko		代	代的	男	単	主	何、誰
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
jaññā	jñā	動	願	能	単	三	知る
語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
maraṇaṃ	mṛ	名	a	中	単	対	死
suve;		不変	‐	‐	‐	‐	明日

前後際断

「前際（過去）と後際（未来）は断ち切れている」

一瞬一瞬が絶対的な存在であり、「過去―現在―未来」は続いているものではなく、それぞれ独立しているもの。

したがって、「過去はどうあがいても変えられず、未来がどうなるか恐れてもしかたがない。

とにかく“今”に最善を尽くすしかない。

正法眼蔵　現成公案　　道元

たき木、はひとなる、さらにかへりてたき木となるべきにあらず。しかあるを、灰はのち、薪はさきと見取すべからず。しるべし、薪は薪の法位に住して、さきありのちあり。前後ありといへども、前後際斷せり。灰は灰の法位にありて、のちありさきあり。かのたき木、はひとなりぬるのち、さらに薪とならざるがごとく、人のしぬるのち、さらに生とならず。しかあるを、生の死になるといはざるは、佛法のさだまれるならひなり。このゆゑに不生といふ。死の生にならざる、法輪のさだまれる佛轉なり。このゆゑに不滅といふ。生も一時のくらゐなり、死も一時のくらゐなり。たとへば、冬と春のごとし。冬の春となるとおもはず、春の夏となるといはぬなり。

生まれを尋ねてはいけない、行いを尋ねよ　Sundarikasutta　SN 7.9　スンダリカ経　英訳

Mā jātiṃ puccha caraṇañca puccha,

生まれを問うな、行いを問え。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
‘‘Mā		不変	‐	‐	‐	‐	なかれ
jātiṃ	jan	名	i	女	単	対	生、誕生、生まれ、種類
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
puccha	prach	動	命	能	単	二	問う
語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
caraṇañ	car	名	a	中	単	対	行、実践、徳行
ca		不変	‐	‐	‐	‐	と、また、そして、しかし

怨恨は、怨恨なきことによって静まる　Yamakavagga　法句経　双品　英訳the Pairs

「この世の怨みは怨みをもって　静まることはありえない　怨みを捨

ててこそ静まる　これは永遠の法である」

Averena ca sammanti, esa dhammo sanantano.

怨恨は、怨恨なきことによって静まる。これは万古不易の法である。

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
Averena		形	a	中	単	具	怨なき、無怨の
ca		不変	‐	‐	‐	‐	と、また、そして、しかし
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
sammanti,	śam	動	現	能	単	三	静まる、寂止する
語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
esa		代	代的	男	単	主	これ
dhammo	dhṛ	名	a	男中	単	主	法
sanantano.		形	a	男	単	主	昔からの、永遠の

18界の意味　　Bahudhātuka-sutta　MN115　多界経　　　　英訳Many Elements

18界とは外界の信号が6感覚器官を介して、意識界につながるシステムを表している。

物質から物質エネルギー、そして意識エネルギーがつながっていることを理解する重要性を意味している。

Imā kho, ānanda, aṭṭhārasa dhātuyo yato jānāti passati –

ettāvatāpi kho, ānanda, ‘dhātukusalo bhikkhū’ti alaṃ vacanāyā’’ti.

アーナンダよ、これら十八界を知り、見るならば、アーナンダよ、これだけをもって、『界に通じた比丘なり』という言葉にふさわしくなるのです」

語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
Imā		代	代的	女	複	対	これら
kho,		不変	‐	‐	‐	‐	じつに、たしかに
ānanda,	ā-nand	名	a	男	単	呼	人名、アーナンダ
aṭṭhārasa		数	特	‐	複	対	十八
dhātuyo		名	u	女	複	対	界、要素
yato		不変	‐	‐	‐	‐	そこから、～なるが故に、何となれば（yaの奪格）
述語	語根	品詞	活用	態	数	人称	意味
jānāti	jñā	動	現	能	単	三	知る
passati –	paś	動	現	能	単	三	見る
語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味

ジェンダー平等　　　生物学的な種による差異と名称による差異　　　Vāseṭṭhasutta 　SP 3.9　英訳

スッタニパータ

608 髪についても、頭についても、耳についても、眼についても、口についても、鼻についても、唇についても、眉についても、

609 首についても、肩についても、腹についても、背についても、臀についても、胸についても、隠所についても、交合についても、

610 手についても、足についても、指についても、脛につていも、腿についても、容色についても、音声についても、他の生類の中にあるような、生まれにもとづく特徴（の区別）は（人類のうちには）決して存在しない。

611 身をうけた生きものの間ではそれぞれ区別があるが、人間の間ではこの区別は存在しない。人間のあいだで区別表示が説かれるのは、ただ名称によるのみ。

人間の在り方として人間同士には男女の性差に差異はなくジェンダー平等である。

男女差にこだわると魔が生じる　　Somāsutta 　SN 5.2　　ソーマー経　英訳Soma

Ñāṇamhi vattamānamhi, sammā dhammaṃ vipassato. 　

♪智慧が転起しているとき、正法を見る者にとって。

Ñāṇamhi智、智慧　

vattamānamhi　転ずる、起こる、存在する　

vipassato　　 vi-paś 現分 ant 男単属観察する　

‘Yassa nūna siyā evaṃ, itthāhaṃ purisoti vā; 　

♪その者に『私は女である』と、あるいは『男である』と、そのような〔考えが〕あるような者、　

itthi 　女、女性　

ahaṃ 　私　

puriso 　人、男　

Kiñci vā pana aññasmi [asmīti (syā. kaṃ. pī.)], taṃ māro vattumarahatī’’ti. 　

♪あるいはまた別に『私は何々である』〔という考えがあるような者〕、魔は、その者に語りかけるのが相応しい」と。

māro 魔、死魔　

vattum 言うこと、言うため　

arahatī’値する　

女性であれ、男性であれ、その人は実にこの乗り物によってまさにニルヴァーナのそばにいる

SAMYUTTA NIKAYA Ⅰ.5.6 　第Ⅰ篇「神々についての集成」第五章「燃えている」第六節「天女」

出典？

初めての女性の僧　　尼

伝承では、最初の比丘尼は釈迦の養母の摩訶波闍波提（まかはじゃはだい、mahāprajāpatī）と500人の釈迦族の女性たちであった。

釈迦ははじめ女性の出家を許さなかったが、彼女たちの熱意と阿難(あなん、アーナンダ)のとりなしによって、比丘を敬い、罵謗したりしないなど8つの事項を守ることを条件に、女性の出家を認めたという。これにより釈迦の元妻である耶輸陀羅（やしょたら、ヤソーダラー）、大迦葉(だいかしょう、マハー・カッサパ)のかつての妻である妙賢（バッダー・カピラーニー）、ビンビサーラ王の妃であった差摩（さま、ケーマー）、蓮華色比丘尼（ウッパラヴァンナー）など次々と出家し尼僧集団が形成された。

女性は阿羅漢になれる　Sundarītherīgāthā 　Therīgāthā 13.4　英訳Verses of the Elder Sundarī

Passa sundarimāyantiṁ,

vippamuttaṁ nirūpadhiṁ;

Vītarāgaṁ visaṁyuttaṁ,

katakiccamanāsavaṁ.

vippamutta [vi+pamutta]　離脱

See Sundarī coming,

released, free from acquisitions,

free from passion, unbound,

one who has done what was to be done, free from influences.”

法華経にある龍女の成仏

在家のアノーパマーが不還果に至り、後に阿羅漢になる。

女性は阿羅漢になれない　

『〈女性が阿羅漢である正自覚者になるであろうということは道理でなく、機

会のないものである。この道理は存在しない〉と知ります。また、〈男性が阿羅漢

である正自覚者になるであろうということは道理である。この道理は存在する〉

と知ります。』

ここで言う阿羅漢とはブッダ(=正自覚者)のことです。

ここで言っている事は女性が仏陀になることは道理ではなく有り得ない、という事で

あって他の仏典から見ても女性が阿羅漢になれないとは考えられません。

出典？

Bahudhātuka-sutta　MN115　多界経　　　　英訳Many Elements

には見当たらない。

実際、釈尊在世中に尼僧の僧団が出来た後、何人もの女性が阿羅漢となっている。

「アーナンダよ、女性が出家しなかったならば、梵行（性欲を断つ修行）は永遠に遵守されて行くだろう。正法（正しい教え）は千年の間、世間に流布するだろう。だが、じつのところ、アーナンダよ、いま女性の出家を認めてしまったからには、正法は半分の五百年ぐらいしか世間に流布しないだろう」

出典？

男性の修行者にとって女性は修行の妨げになることから、釈尊が語ったという設定で後代の仏教徒が言い出したと考えられる（田上太秀『仏教と女性』/東京書籍）そうで、最初期の仏教では、最高の智慧の完成において男女の区別はなく、女性を軽視する考えは全く見られない（植木雅俊、Gender Equality in Buddhism）のだそうです。

ギリシャ人のメガステネース（紀元前300年ごろ）がインド旅行記を

残していますが、そこには、

「インドには驚くべきことがある。そこには女性の哲学者たちがいて、男性の哲学者たちに伍して、難解なことを堂々と論議している」とあります。

仏教の教団に女性差別というものが出てくるのは、異論もあるでしょうが、大体紀元前2～1世紀頃（五障説の成立）のことだと思われます。

女人五障説は仏教教団の分裂後に現れたと考えられているようです。

ところが釈尊の滅後、バラモン教的女性観の侵入が余儀なくされる。それは仏教教団の小乗化（保守化、権威主義化）によって促進された。釈尊は神格化され、程遠い存在とされた。それと並行して、女性は、①梵天王②帝釈③魔王④転輪聖王⑤仏身──の五つのものになれないとする「五障」説、あるいは、「三従」説などの差別思想が仏教にも導入された。釈尊という理解者を失って尼僧教団の立場はますます低下したのだ。

その結果、「女人は地獄の使なり能く仏種子を断ず」「一度女人を見る者はよく眼の功徳を失ふ設ひ大蛇をば見るとも女人を見るべからず」「一切の江河必ず回曲有り一切の女人必ず諂曲有り」「あらゆる三千界の男子の諸の煩悩を合わせ集めて一人の女人の業障となす」などの言葉が経典に登場するようになる。これらの言葉は、不幸なことに釈尊が語ったという設定で仏典に記されている。

日蓮がこうした言葉を見て、「法華経より外の一切経を見候には、女人とはなりたくも候はず」と嘆いたのもうなずけよう。この部分だけを見て、仏教全般が女性差別の宗教だと論ずるのは早とちりの謗りを免れない。

ブラックホール　　化城喩品

「中間幽冥の処、日月の威光も照らすこと能わざる所」

大通智勝仏がこの上ない無上の悟りを得られたとき、十方の各々の五百億の諸仏の世界は六種に震動し、

その国の中間の光が弱く暗い所、暗くて太陽や月の光も照らし出す事が出来ない様な処までみな明らかになり、

その中の生命のあるものすべては互いに見る事が出来る様になってこのように言った。

妙法蓮華経巻第七

妙法蓮華経。常不軽菩薩品。第二十

爾時仏告。得大勢菩薩摩訶薩。汝今当知。若

比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷。持法華経者。若

有悪口。罵詈誹謗。獲大罪報。如前所説。其所

得功徳。如向所説。眼耳鼻舌身意清浄。得大

勢。乃往古昔。過無量無辺。不可思議。阿僧祇

劫。有仏名威音王。如来。応供。正遍知。明行足。

善逝。世間解。無上士。調御丈夫。天人師。仏。世

尊。劫名離衰。国名大成。其威音王仏。於彼世

中。為天人阿脩羅説法。為求声聞者。説応四

諦法。度生老病死。究竟涅槃。為求辟支仏者。

説応十二因縁法。為諸菩薩。因阿耨多羅三

藐三菩提。説応六波羅蜜法。究竟仏慧得大

勢。是威音王仏。寿四十万億那由佗。恒河沙

劫。正法住世劫数。如一閻浮提微塵。像法住

世劫数。如四天下微塵。其仏饒益衆生已。然

後滅度。正法。像法。滅尽之後。於此国土。復有

仏出。亦号威音王。如来。応供。正遍知。明行足。

善逝。世間解。無上士。調御丈夫。天人師。仏。世

尊。如是次第。有二万億仏。皆同一号。最初威

音王如来。既已滅度。正法滅後。於像法中。増

上慢比丘。有大勢力。爾時有一菩薩比丘。名

常不軽。得大勢。以何因縁。名常不軽。是比丘

凡有所見。若比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷。皆

悉礼拜讃歎。而作是言。我深敬汝等。不敢軽

慢。所以者何。汝等皆行菩薩道。当得作仏。而

是比丘。不専読誦経典。但行礼拜。乃至遠見

四衆。亦復故往。礼拜讃歎。而作是言。我不敢

軽於汝等。汝等皆当作仏故。四衆之中。有生

瞋恚。心不浄者。悪口罵詈言。是無智比丘。従

何所来。自言我不軽汝。而与我等授記。当得

作仏。我等不用。如是虚妄授記。如此経歴多

年。常被罵詈。不生瞋恚。常作是言。汝当作仏。

説是語時。衆人或以。杖木瓦石。而打擲之。避

走遠住。猶高声唱言。我不敢軽於汝等。汝等

皆当作仏。以其常作是語故。増上慢比丘。比

丘尼。優婆塞。優婆夷。号之為常不軽。是比丘。

臨欲終時。於虚空中。具聞威音王仏。先所説

法華経。二十千万億偈。悉能受持。即得如上。

眼根清浄。耳鼻舌身意根清浄。得是六根清

浄已。更増寿命。二百万億。那由佗歳。広為人

説。是法華経。於時増上慢四衆。比丘。比丘尼。

優婆塞。優婆夷。軽賎是人。為作不軽名者。見

其得大神通力。楽説弁力。大善寂力。聞其所

説。皆信伏随従。是菩薩。復化千万億衆。令住

阿耨多羅三藐三菩提。命終之後。得値二千

億仏。皆号日月燈明。於其法中。説是法華経。

以是因縁。復値二千億仏。同号雲自在燈王。

於此諸仏法中。受持読誦。為諸四衆。説此経

典故。得是常眼清浄。耳鼻舌身意。諸根清浄。

於四衆中説法。心無所畏。得大勢。是常不軽

菩薩摩訶薩。供養如是。若干諸仏。恭敬尊重

讃歎。種諸善根。於後復値。千万億仏。亦於諸

仏法中。説是経典。功徳成就。当得作仏。得大

勢。於意云何。爾時常不軽菩薩。豈異人乎。則

我身是。若我於宿世。不受持読誦此経。為佗

人説者。不能疾得。阿耨多羅三藐三菩提。我

於先仏所。受持読誦此経。為人説故。疾得阿

耨多羅三藐三菩提。得大勢。彼時四衆。比丘。

比丘尼。優婆塞。優婆夷。以瞋恚意。軽賎我故。

二百億劫。常不値仏。不聞法。不見僧。千劫於

阿鼻地獄。受大苦悩。畢是罪已。復遇常不軽

菩薩。教化阿耨多羅三藐三菩提。得大勢。於

汝意云何。爾時四衆。常軽是菩薩者。豈異人

乎。今此会中。跋陀婆羅等。五百菩薩。師子月

等。五百比丘。尼思仏等。五百優婆塞。皆於阿

耨多羅三藐三菩提。不退転者是。得大勢。当

知是法華経。大饒益。諸菩薩摩訶薩。能令至

於。阿耨多羅三藐三菩提。是故諸菩薩摩訶

薩。於如来滅後。常応受持。読誦。解説。書写是

経。爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言

　過去有仏　号威音王　神智無量　将導一切

　天人龍神　所共供養　是仏滅後　法欲尽時

　有一菩薩　名常不軽　時諸四衆　計著於法

　不軽菩薩　往到其所　而語之言　我不軽汝

　汝等行道　皆当作仏　諸人聞已　軽毀罵詈

　不軽菩薩　能忍受之　其罪畢已　臨命終時

　得聞此経　六根清浄　神通力故　増益寿命

　復為諸人　広説是経　諸著法衆　皆蒙菩薩

　教化成就　令住仏道　不軽命終　値無数仏

　説是経故　得無量福　漸具功徳　疾成仏道

　彼時不軽　則我身是　時四部衆　著法之者

　聞不軽言　汝当作仏　以是因縁　値無数仏

　此会菩薩　五百之衆　并及四部　清信士女

　今於我前　聴法者是　我於前世　勧是諸人

　聴受斯経　第一之法　開示教人　令住涅槃

　世世受持　如是経典　億億万劫　至不可議

　時乃得聞　是法華経　億億万劫　至不可議

　諸仏世尊　時説是経　是故行者　於仏滅後

　聞如是経　勿生疑惑　応当一心　広説此経

　世世値仏　疾成仏道

妙法蓮華経。如来神力品。第二十一

爾時千世界。微塵等。菩薩摩訶薩。従地涌出

者。皆於仏前。一心合掌。瞻仰尊顔。而白仏言。

世尊。我等於仏滅後。世尊分身。所在国土。滅

度之処。当広説此経。所以者何。我等亦自。欲

得是真浄大法。受持。読。誦。解説。書写。而供養

之。爾時世尊。於文殊師利等。無量百千万億。

旧住娑婆世界。菩薩摩訶薩。及諸比丘。比丘

尼。優婆塞。優婆夷。天。龍。夜叉。乾闥婆。阿脩羅。

迦楼羅。緊那羅。摩?羅伽。人非人等。一切衆

前。現大神力。出広長舌。上至梵世。一切毛孔。

放於無量。無数色光。皆悉遍照。十方世界。衆

宝樹下。師子座上諸仏。亦復如是。出広長舌。

放無量光。釈迦牟尼仏。及宝樹下諸仏。現神

力時。満百千歳。然後還摂舌相。一時謦?。倶

共弾指。是二音声。遍至十方。諸仏世界。地皆

六種震動。其中衆生。天。龍。夜叉。乾闥婆。阿脩

羅。迦楼羅。緊那羅。摩?羅伽。人非人等。以仏

神力故。皆見此娑婆世界。無量無辺。百千万

億。衆宝樹下。師子座上諸仏。及見釈迦牟尼

仏。共多宝如来。在宝塔中。坐師子座。又見無

量無辺。百千万億。菩薩摩訶薩。及諸四衆。恭

敬囲繞。釈迦牟尼仏。既見是已。皆大歓喜。得

未曾有。即時諸天。於虚空中。高声唱言。過此

無量無辺。百千万億。阿僧祇世界。有国名娑

婆。是中有仏。名釈迦牟尼。今為諸菩薩摩訶

薩。説大乗経。名妙法蓮華。教菩薩法。仏所護

念。汝等当深心随喜。亦当礼拜供養。釈迦牟

尼仏。彼諸衆生。聞虚空中声已。合掌向娑婆

世界。作如是言。南無釈迦牟尼仏。南無釈迦

牟尼仏。以種種華香。瓔珞旛蓋。及諸厳身之

具。珍宝妙物。皆共遥散。娑婆世界。所散諸物。

従十方来。譬如雲集。変成宝帳。遍覆此間。諸

仏之上。于時十方世界。通達無礙。如一仏土。

爾時仏告。上行等菩薩大衆。諸仏神力。如是

無量無辺。不可思議。若我以是神力。於無量

無辺。百千万億。阿僧祇劫。為属累故。説此経

功徳。猶不能尽。以要言之。如来一切所有之

法。如来一切自在神力。如来一切秘要之蔵。

如来一切甚深之事。皆於此経。宣示顕説。是

故汝等。於如来滅後。応当一心。受持読誦。解

説。書写。如説修行。所在国土。若有受持読誦。

解説書写。如説修行。若経巻所住之処。若於

園中。若於林中。若於樹下。若於僧坊。若白衣

舎。若在殿堂。若山谷曠野。是中皆応。起塔供

養。所以者何。当知是処。即是道場。諸仏於此。

得阿耨多羅三藐三菩提。諸仏於此。転於法

輪。諸仏於此。而般涅槃。爾時世尊。欲重宣此

義。而説偈言

　諸仏救世者　住於大神通　為悦衆生故　現無量神力

　舌相至梵天　身放無数光　為求仏道者　現此希有事

　諸仏謦?声　及弾指之声　周聞十方国　地皆六種動

　以仏滅度後　能持是経故　諸仏皆歓喜　現無量神力

　属累是経故　讃美受持者　於無量劫中　猶故不能尽

　是人之功徳　無辺無有窮　如十方虚空　不可得辺際

　能持是経者　則為已見我　亦見多宝仏　及諸分身者

　又見我今日　教化諸菩薩　能持是経者　令我及分身

　滅度多宝仏　一切皆歓喜　十方現在仏　并過去未来

　亦見亦供養　亦令得歓喜　諸仏坐道場　所得秘要法

　能持是経者　不久亦当得　能持是経者　於諸法之義

　名字及言辞　楽説無窮尽　如風於空中　一切無障礙

　於如来滅後　知仏所説経　因縁及次第　随義如実説

　如日月光明　能除諸幽冥　斯人行世間　能滅衆生闇

　教無量菩薩　畢竟住一乗　是故有智者　聞此功徳利

　於我滅度後　応受持斯経　是人於仏道　決定無有疑

ドグマを持たない　Māgaṇḍiyasutta 　Sutta Nipāta 4.9　英訳Māgandiya Learns the Muni’s Life

自分の教えにも執着しない

837 師が答えた、

「マーガンディヤよ。『わたくしはこのことを説く』、ということがわたくしにはない。

諸々の事物に対する執著を執著であると確かに知って、諸々の偏見における(過誤を)見て、固執することなく、省察しつつ内心の安らぎをわたくしは見た。」

“Idaṁ vadāmīti na tassa hoti,

(māgaṇḍiyāti bhagavā)

Dhammesu niccheyya samuggahītaṁ;

Passañca diṭṭhīsu anuggahāya,

Ajjhattasantiṁ pacinaṁ adassaṁ”.

「わたし」とダンマ　Vakkalisuttavakka　SN22.87　ヴァッカリ経　英訳Vakkali

「もう十分だよ、ヴァッカリよ、お前が、この腐敗した身体を見ても、何になるだろうか。ヴァッカリよ、法を見る者は、わたしを見るのだよ。わたしを見る者は、法を見るのだ。」

縁起がわかるとdhammaがわかる　Mahāhatthipadopama-sutta　MN28　象跡喩大経　英訳

『縁起を見る者は、法を見る。法を見る者は、縁起を見る。』

エネルギーの変換の因果関係を把握すると、その構成要素である普遍エネルギー（ダンマ）を知ることができ、

普遍エネルギーを把握すると、その変換の法則を知ることができる。

ここでいう【法】は四諦の法、【縁起】は十二縁起。

四諦の集諦は十二縁起の順観、滅諦は十二縁起の逆観で、十二縁起は四諦の法を理解する鍵なので、

『十二縁起を理解するものは四諦の法を理解する』

呼吸瞑想　　　Ekadhammasutta　SN 54.1　一法経　英訳One Thing

武器から生まれる恐怖　Attadaṇḍasutta　Sutta Nipāta4.15　日本語訳　　英訳　Assuming Forcefulness　

935 殺そうと争闘する人々を見よ。武器を執って打とうとしたことから恐怖が生じたのである。

わたくしがぞっとしてそれを厭い離れたその衝撃を宣べよう。

936 水の少ないところにいる魚のように、人々が慄えているのを見て、また人々が相互に抗争しているのを見て、わたくしに恐怖が起った。

937 世界はどこでも堅実ではない。どの方角でもすべて動揺している。

わたくしは自分のよるべき住所を求めたのであるが、すでに(死や苦しみなどに)とりつかれていないところを見つけなかった。

938 (生きとし生けるものは)終極においては違逆に会うのを見て、わたくしは不快になった。またわたくしはその(生けるものどもの)心の中に見がたき煩悩の矢が潜んでいるのを見た。

939 この(煩悩の)矢に貫かれた者は、あらゆる方角をかけめぐる。この矢を抜いたならば、(あちこちを)駆けめぐることもなく、沈むこともない。

940 そこで次に実践のしかたが順次に述べられる。──世間における諸々の束縛の絆にほだされてはならない。諸々の欲望を究めつくして、自己の安らぎを学べ。

941 聖者は誠実であれ。傲慢でなく、詐りなく、悪口を言わず、怒ることなく、邪まな貪りと慳みとを超えよ。

942 安らぎを心がける人は、眠りとものぐさとふさぎこむ心とにうち勝て。怠惰を宿らせてはならぬ。高慢な態度をとるな。

943 虚言をつくように誘き込まれるな。美しいすがたに愛著を起すな。また慢心を知りつくしてなくすようにせよ。粗暴になることなく、ふるまえ。

944 古いものを喜んではならない。また新しいものに魅惑されてはならない。滅びゆくものを悲しんではならない。牽引する者(妄執)にとらわれてはならない。

945 わたくしは、(牽引する者のことを)貪欲、ものすごい激流と呼び、吸い込む欲求と呼び、はからい、捕捉と呼びね超えがたい欲望の汚泥であるともいう。

946 バラモンである聖者は、真実から離れることなく、陸地(安らぎ)に立っている。かれは一切を捨て去って、「安らぎになった人」と呼ばれる。

947 かれは智者であり、ヴェーダの達人である。かれは理法を知りおわって、依りかかることがない。かれは世間において正しくふるまい、世の中で何びとをも羨むことがない。

948 世間における諸々の欲望を超え、また克服しがたい執著を超えた人は、流されず、束縛さけず、悲しむことなく、思いこがれることもない。

949 過去にあったもの(煩悩)を涸渇せしめよ。未来には汝に何ものも有らぬようにせよ。中間においても汝が何ものをも執しないならば、汝は「安らかな人」としてふるまうことであろう。

950 名称と形態について、＜わがものという思い＞の全く存在しない人、また(何ものかが)ないからといって悲しむことのない人、──かれは実に世の中にあっても老いることがない。

951 「これはわがものである」また「これは他人のものである」というような思いが何も存在しない人、

──かれは(このような)＜わがものという観念＞が存しないから、「われになし」といって悲しむことがない。

952 苛酷なることなく、貪欲なることなく、動揺して煩悩に悩まされることなく、万物に対して平等である。

──動じない人について問う人があれば、その美点をわたくしは説くであろう。

953 動揺して煩悩に悩まされることなく、叡智ある人にとっては、いかなる作為も存在しない。かれはあくせくした営みから離れて、至るところに安穏を見る。

954 聖者は自分が等しい者どものうちにいるとも言わないし、劣った者のうちにいるとも、勝れた者のうちにいるとも言わない。かれは安らいに帰し、取ることもなく、捨てることもない。

──と師は説かれた。

敵意を抱き合う時に恐怖が生まれた　Attadaṇḍasutta Sutta Nipāta4.15 意経

英訳“Assuming Forcefulness” and so on　(Sn 936)

Phandamānaṃ pajaṃ disvā macche appodake yathā

aññamaññehi vyāruddhe disvā maṃ bhayam

āvisi. (Sn 936)

水の少ないところにいる魚のように、慄えている生

き物を見て、［そして］お互いに敵意を抱き合うの

を見た、その時、わたしには、恐怖がうまれた。

Phandamānaṃ pajaṃ disvā macche appodake yathāaññamaññehi vyāruddhe disvā maṃ bhayamāvisi.

水の少ないところにいる魚のように、慄えている生き物を見て、［そして］お互いに敵意を抱き合うのを見た、その時、わたしには、恐怖がうまれた。

釈尊の境地

あらゆる所に心が静まり、愛着して取り込まず嫌悪して廃棄することもない

滅尽定第9禅定　Abhidhammatha Sangaha　摂阿毘達磨義論

ニローダサマパティnirodha-samāpatti 　nirodha'extinction'滅　不還と阿羅漢のみが意識がない境地に至る

滅尽定　心のはたらきがすべて尽きてしまった瞑想。心のはたらきが消滅した状態にある精神集中。聖者が寂静の境地を楽しもうとして修する第9禅定

Abhidhammatha Sangaha　第８章42節

摂阿毘達磨義論は、仏教の南伝上座部大寺派に属する僧侶アヌルッダ（Anuruddha）によって11世紀頃に書かれた、仏教綱要書。題名は、「論（アビダンマ）の意味の集成」といった意味。

上座部仏教圏では、入門的テキストとして用いられている。

Having proceeded, thus, up to the base of nothingness, one then attends to the preliminary準備 duties such as the resolution決意, etc., and enters the base of neither-perception- nor-nonperception. After two occasions of javana in absorption, the continuum of consciousness is suspended. Then, one is said to have attained cessation (nirodha- samāpatti).　　

Beyond the dimension of neither perception nor non-perception lies a state called nirodha samāpatti, the "cessation of perception, feelings and consciousness". Only in commentarial and scholarly literature, this is sometimes called the "ninth jhāna".

呼吸瞑想による解脱　Ānāpānassati Sutta (MN 118)　 出入息念経

“..Ānāpānassati, bhikkhave, bhāvitā bahulīkatā cattāro satipaṭṭhāne paripūreti. Cattāro satipaṭṭhānā bhāvitā bahulīkatā satta bojjhaṅge paripūrenti. Satta bojjhaṅgā bhāvitā bahulīkatā vijjāvimuttiṃ paripūrenti.

「比丘よ、Ānāpānasatiを実践すると、頻繁に多くの実を結び、多くの恩恵につながります。比丘よ、Ānāpānasatiを枠内にエネルギーを充満させて（bhāvitā）、そして頻繁に使用（bahulīkatā）して育み極めていくと、4つのSatipaṭṭhānasを完成（paripūreti）させます。 4つのSatipaṭṭhānasは、育み極めていくと7つのbojjangasを完成させます。7つのbojjangasは、育み極めた時にvijjā（avijjāの反義語）とvimutti（すなわちNibbāna完全な離脱すなわちアラハンの境地）を完成させます。」

ここで、「mahappalā」（「mahā」+「pala」果）は、Sotapanna預流果, Sakadagami, Anagami, Arahantの4つの高貴な段階を意味します。

したがって、ānāpānassatiが単独でアラハンの境地に至ることは明らかである。

欲、憎しみ、無知を取り除くとニヴァーナ　 Nibbāna pañhā Sutta (SN 38.1)　 涅槃問経　A Question About Extinguishment

“rāgakkhayō dōsakkhayō mōhakkhayō idaṃ vuccati nibbānanti“.　　　　

ニヴァーナとは、欲、憎しみ、無知を取り除くことです。

khayo：diminution，loss，decay； end，destruction

idaṃ：Here，now，even

vuccati：[vac + ya] to be said or called

間違っていることに気づいているかどうか　Dhammapada Bālavagga　 The Chapter about Fools

もしも愚者がみずから愚であると考えれば、すなわち賢者である。愚者でありながら、しかもみずから賢者だと思う者こそ、「愚者」だと言われる。

２つの違いは、自分が間違っていることに気づいているかどうか。

自分は間違っているという本当の状態に気づいたら、そこに智慧が生まれる。

Gaṇṭhibhedakacoravatthu

Yo bālo maññati bālyaṁ,paṇḍito vāpi tena so;Bālo ca paṇḍitamānī,sa ve “bālo”ti vuccati.

消え去るのが自然の摂理　Mahāparinibbānasutta　DN16　大般涅槃経　英訳
変わり続けるものこそがサンカーラだ。

顕れては消え去る自然の摂理だ。

顕れ出たモノはなんであれ消え去る。

だからこそ、貪瞋痴から離れることで、本当の幸せに至る。

Anicca vata sankhara,

uppadavaya-dhammino.

Uppajjitva nirujjhanti,

tesam vupasamo sukho.

自分を避難場所にせよMahāparinibbānasutta　DN16　大般涅槃経　英訳　　

自分の島を作り、

自分を避難場所にせよ。

他の避難所はない。

真実を自分の島に、

真実を自分の避難所に。

他には一つの避難所もない。

Atta-dipa viharatha,

atta-sarana

ananna-sarana.

Dhamma-dipa viharatha,

Dhamma-sarana,

ananna-sarana.

人生の浮き沈みに安らかでいられることが幸せ　Maha-Mangala Sutta　　Sutta Nipata, II. 4.

人生における浮き沈みに面した時に

心が微動だもせず、

悲しまず、錆びつかず、安らかでいられること

これが最も偉大な幸せである。

Phutthassa loka-dhammehi,

cittam yassa na kampati,

asokam, virajam, khemam,

etam mangalamuttamam

私自身が私の主人である　Dhammapada, XXV. 21 (380)　

自分の主人とはあなた自身である。

未来はあなた自身が作るものだ。

だからあなた自身を鍛錬したまえ。

サラブレッドを調教するように

Atta hi attano natho,

atta hi attano gati.

Tasma sannamay'attanam

assam bhadram va vanijo.

見られるのは、見られるものだけ　Bāhiyasutta　Udāna 1.10　　自説経　 The Discourse to Bāhiya

Suppāraka（ボンベイの近く？）からサーバティSāvatthiまできた修行者のBāhiyaに釈尊が説く。

見られるのは、見られるものだけであろう。

聞かれのは、聞かれたものだけであろう。

匂われ、味われ、触られるのは、

匂われ、味われ、触られるものだけであろう。

認識されるのは、認識されたものだけでしかない。推測や思考が捏造だという意味か？

Ditthe ditthamattam bhavissati,

sute suttamattam bhavissati,

mute muttamattam bhavissati,

vinnate vinnatamattam bhavissati.

色界の微細感覚器官を基準にしている人に対して、５感覚器官の信号である欲界に引き戻すための言葉か？

それによってヴィパッサナー瞑想が可能になる。

頭（思考）や心（感情）のレベルでの認識を基準にしていた修行者を身体感覚を基準にするレベルに引き戻し、vedanaができる瞬間にアニッチャを体感することで、タグをnirāmisaに上書きすることができるので、タンハーが作成できなくなる修行法を教えた。

「ただ、見るだけ」にして、それ以上の意識の発展を停止するとサンニャ（概念）は作成されず、したがってサンカーラ経由のviññāṇaヴィンニャーナも作成されない。

阿羅漢が認識するのは心の9段階の認識（citta、manō、mānasam、hadayaṃ、paṇḍaraṃ、manōmanāyatanam、mānaindriyam、viññāna、viññākkhandō）の内の3段階目のmānasamまでであり、それから先の段階で認識することはないので認識にフィルターが重なることを阻止できる。

「水、土、火、風がつかめないところ、

星が輝かず、太陽の煌めきがないところ、

月が光らず、闇が見つからないところ、

これを個人の体験とすることで、賢者すなわち真の知恵の聖人になり、

そして、形、形がないもの、快楽、そして苦痛から解放される。」

これは大乗仏教の「空」の認識、すなわち上座部仏教の不還の段階であって、全体像を把握するmanō全体性意識を越えた根本の空意識であり、サーンキヤ学派のprakritのことで、大乗仏教の目指す境地である。

大乗仏教の小乗仏教への批判は、釈尊の死後500年経った頃には小乗はサーンキヤ学派のbuddhiに相当する分別意識に対するこだわりから全体意識に達していないことであった。

それに対する上座部仏教（小乗仏教）の大乗仏教への返答は、しっかりとmānasam分別意識を鍛えておかないと、全体性意識に達した後にそこにとどまっていしまい、そこから離脱する解脱に達することができないからである。

すなわち、釈尊の教えは大乗仏教の主張する根本空意識をも離れて、絶対温度とエネルギーが０になるこの宇宙から離脱する方法なので、そのためには徹底的な分別が必要と考えた。

当時にもし阿羅漢が少なかったのだとすれば、大乗仏教の上座部仏教の僧に対する批判はもっともであるが、五蘊の批判は、釈尊の発見した受vedanāのタグの張り替えを見逃してしまうことになり、解脱の可能性に蓋をすることになる。

もし大乗仏教の修行で阿羅漢、すなわち涅槃に至れるのであれば、それは人類史における大発見であり、釈尊に並ぶ栄誉を与えるべきだと想う。

また、仏教の中にあっても勿論いいが、菩薩教という新たな宗教としても成り立つかつて誰も知らなかった解脱方法である。

上座部仏教	内容	説明	サーンキヤ派	意識

citta	知る機能	機能だけを持つ白いキャンバス凡てがあるのにカタチのない状態	prakrit 根本空	根本意識真空意識
manō	全体像を把握	全体性機能　智慧paññā	chitta心素	全体性意識
mānasam	分割して「知る」根源状態	阿羅漢はこの段階までしか認識せず後のプロセスを続けない	buddhi 理智	分別意識

自分の仕事は自分でしなければならない　Dhammapada, XX. 4(276)Maggavagga　 about the Path

自分の仕事は自分でしなければならない。

真理を知った者は道を指し示すことはできるが、

閉じた輪から解放できるのは瞑想を実践する自身でしかない

Tumhe hi kiccam atappam,

akkhataro tathagata.

Patipanna pamokkhanti

jhayino mara-bandhana

消え去るサンカーラを内観すると苦悩から離脱　Dhammapada, XX. 5(277) 　about the Path

すべてのサンカーラとは変わりゆくもの。

これを内観すると、苦悩から離脱することになる。

これが清浄の道である。

Sabbe sankhara anicca'ti;

yada pannaya passati,

atha nibbindati dukkhe--

esa maggo visuddhiya.

全世界は震えている　Upacala Sutta　SN５. 7　　ウパチャーラー経　　　With Upacālā

Sabbo adipito loko,　

sabbo loko padhupito;

sabbo pajjalito loko,

sabbo loko pakampito.

全世界は炎に包まれ、

全世界は煙を出し、

全世界は燃え、

全世界は震えている。

Akampitam apajjalitam,

aputhujjana-sevitam,

agati yatha marassa,

tatha me nirato mano.

しかし、実際には震えも火事もない、

崇高な人たちによって経験されている

このような死の入り口はない

その点で私の心は喜ぶ。

これは素粒子の世界を意味しているのか？

マインドがすべての現象を先行する　Dhammapada, I. 1 & 2

Mano-pubbangama dhamma,

mano-settha, mano-maya.

Manasa ce padutthena

bhasati va karoti va,

tato nam dukkhamanveti

cakkam'va vahato padam.

マインドがすべての現象を先行する。

マインドが最高位であり、

すべてのものがマインドによって作られた

もし純粋ではないマインドで

行動や言語活動や身体活動を実行すれば

苦しみがそれらを追う。

動物の足跡を荷車の車輪が追っていくように。

創造主は私の家を再び建てることはないDhammapada Verses 153 and 154

Aneka-jati samsaram

sandhavissam anibbisam,

gahakarakam gavesanto

dukkha-jati-punappunam.

閉じられた輪の中で数え切れない誕生に出会い、

この家の建設者を探して虚無の中を走ってきた。

その度々に新生の苦悩に面しながら。

Gahakaraka! Ditthosi,

puna geham na kahasi.

Sabba te phasuka bhagga,

gahakutam visankhitam.

Visankhara-gatam cittam,

tanhanam khayamajjhaga.

ああ、創造主よ！今、あなたは見られている。

あなたは私のために家を再び建てることはもうない。

すべての梁（桁）は壊れている、

家の棟木（梁）は粉砕されている。

条件付けの輪からマインドは解放された。

ついに渇望の終わりに達した。

ランプの炎を消し去るRatana Sutta,Sutta Nipata２. 1

閉じた輪から解放されると、

もう新たなものをつくらなくなる。

マインドは未来の誕生を探す必要がなくなる。

種も使われ、渇望も生じない。

このような智慧を持った者がランプの炎を消し去る。

Khinam puranam navam natthi sambhavam,

viratta citta ayatike bhavasmim.

Te khina-bija avirulhi chanda.

Nibbanti dhira yathayam padipo.

心はすべてに感覚をもっている　　　Mūlaka Sutta　AN10.58　根本経　Rooted

マインドで起きるすべてのことに感覚が伴っている。

Vedana samosarana sabbe dhamma.

Everything that arises in the mind is accompanied by sensation.

色界と無色界のブラフマンにも感覚は起こる。

しかし問題は、過去の５感覚器官の信号（dhātu）レベル学習によるバーバ・サンカーラを除去するためには

同じ身体感覚を再現しても、その時に作った回路のアウトプットのように反応せず、代わりにインプットの信号自体は生じては消え去る。すなわち執着しようにももう２度と現れることのない消えてしまうものだと認識すること（Anicca vijjā ñāna）で、タグは近・遠・中立からサンカーラを作ることのできない執着しようのないnirāmisaの近・遠・中立のタグに上書きされることによってはじめてサンカーラは消滅する。

したがって、色界と無色界のブラフマンが過去に作ったバーバ・サンカーラはdhātuレベルの入力信号が必要なのだが、無色界のブラフマンはdhātuレベルの入力信号を受信する感覚器官がないので、釈尊の発見した方法を実践することができない。

色界のブラフマンは粗いdhātuを受信する感覚器官を持たないので、味覚と嗅覚と触覚を感知できないが、

視覚と聴覚の信号はより微細なので、ブラフマンの微細感覚器官によって感知することができる。

すなわち視覚と聴覚に関わるサンカーラは消滅させることが可能である。

私の今の所の理解では味覚と嗅覚と触覚に関わるサンカーラはブラフマンは消滅できないと考えている。

四諦を知らないことが無明　　Vibhaṅgasutta SN12.2　 分別経　英訳 Analysis

比丘たちよ、無明とは何であろうか？

比丘たちよ、苦について知らないこと、苦の集起について知らないこと、苦の滅尽について知らないこと、苦の滅尽に導く実践について知らないことである。比丘たちよ、これを無明と言うのである。

悪霊を取り出す預流果の力　　　　　　 Ratanasutta Sutta Nipāta 2.1　宝経　　英訳

預流果の聖なる力で、苦しみを取り除き、心を清らかにし、悪い霊を取り出す預流果の徳を讃えている。

心の速さは目に止まらない　Paṇihitaacchavagga　AN1.48　置澄品　　　 The Chapter on a Spike

釈尊は５？10？億分の１秒だという。出典を捜索中。

目にもとまらぬ速さで６種の認識がさまざまに入れ替わることとなる。

身体感覚は粗いdhātuとの接触が原因　Cha Chakka Sutta (MN 148)　 六六法経　 The Six Sets of Six

ghānañca paṭicca gandhē ca uppajjati ghānaviññāṇaṃ

jivhañca paṭicca rasē ca uppajjati jivhāviññāṇaṃ

kāyañca paṭicca phōṭṭhabbē ca uppajjati kāyaviññāṇaṃ

kāya viññānaは最も粗いpottabbaすなわちdhātuとの接触に起因する。

身体の接触（感触）、味、匂いは粗い接触です。

それらは直接の接触（pottabba）を伴い、

それらは固体粒子（味と匂い）を伴います。

マインドのエネルギーの単位は？

manañca paṭicca dhammē ca uppajjati manōviññāṇaṃ

dhammāとmana indriyaの接触がmanō viññāna

マインドで経験するrūpaがdhammaと大念処経にはあるが、dhammaはあらゆるエネルギーの根源なので、正確に言うと、bhūtaではないのか？

anidassan appatighan dhammāyatana pariyā

pannarūpan

anidassanaは「見えない」ことを意味し、

appatighaは「最高の器官でさえ感知できない」

dhammāyatanaはmana indriyaのこと

Pariyā [pari+yā] winding round，転回

pannarūpanはrupaとの唯一の接触を意味する。

縁起は対象を求める気持ちから始まるCha Chakka Sutta (MN 148)　 六六法経　 The Six Sets of Six

Paṭicca Samuppāda サイクルは「avijjā paccayā saṅkhāra」ではなく、「salāyatana paccayā phassa」で始まります。これがChacakka Sutta (MN 148) について議論するのに多くの時間を費やした理由です。

関心を引くのに十分なほど強力なārammana意識対象がなければなりません。たとえば、魅力的/不快な人物を見る、おいしい/苦いものを味わう、甘美な/大きな音を聞くなど。

Chacakka Suttaによると、そのようなvipāka viññānaは「mānañca paṭicca dhamme ca uppajjāti manoviññāṇaṁ」を介して、「cakkhuñca paṭicca rūpe ca uppajjāti cakkhuviñāṇaṃ」を経て生じます。

これらのステップは、Paṭicca Samuppāda の「salāyatana paccayā phassō、phassa paccayā vēdanā、vēdanā paccayā taṇhā」の手順に相当します。

新しいārammanaの最初の感覚イベントで“vedanā paccayā taṇhā”に達した後、Paṭicca Samuppāda サイクルの次のステップが始まります。次のステップは「taṇhā paccayā upādāna」です。それは、私たちがavijjāで行動し始めるので、kamma viññānaが生じる時です。

vedanaに付加する3つのタグ　Samādhisutta　SN36.1 三昧経 英訳Concentration SN 2.4.249

感覚器官が対象を探すことが愛着の原因だと主張する者も多かった中、愛着の原因は感覚であるという発見は、人類の解放の扉を開く鍵となるブッダからの贈り物です。

これは、vedanaのレベルで、vedanaに反応して、煩悩が生じることを意味します。

愛着を根絶するためには感覚がどのように渇望と嫌悪を引き起こすか、そしてそれに対処する知恵が必要です。

Samahito sampajano, sato Buddhassa savako;
vedana ca pajanati, vedanananca sambhavam.
Yattha ceta nirujjhanti, magganca khayagaminam;
vedananam khaya bhikkhu, nicchatonicchato parinibbuto'ti.

感覚の全範囲、すなわち感覚のない領域までを経験すると、瞑想者は、渇望から離れ、完全に解放されます。

感覚は身体によって感じられます。

Vedana は cetasikacetasika (マインドの付随物) でもあります。

「sabbe dhamma vedana samosaranasabbe dhamma vedana samosarana」

とは、すべての心的付随物の経験がvedanāを含み、それと切り離すことができないことを意味します。

したがって、身体や感情だけではなく、心や魂でで起きているプロセスを観察する

と（anupassati：[anu + dis + a] observes； contemplates）、感覚がそれらを形成しているのがわかります。

そこで、瞑想者は常に感覚を意識し続けます。

それは感覚の非永続的な性質を理解してその意識を維持することにより、生起の現象と消滅の現象を体感することです。

したがって、瞑想者は感覚に反応する愛着が発生することを許可しません。

瞑想者は、アニチャ（無常）の理解に基づいてウペッカ（平静）を維持することで、心地よい感覚への愛着にも反応しません。

パターンの奴隷は感覚を利用してタグを根絶　　Pahānasutta SN36.3　捨断経 英訳Abandonment

無知の闇の中で行動パターンが形成され、その行動パターンの奴隷になり、最も深いレベル（煩悩kilesa）で感覚に反応し続けます。

"Sukhaya, bhikkhave, vedanaya raganusayo pahatabbo, dukkhaya vedanaya patighanusayo pahatabbo, adukkhamasukhaya vedanaya avijjanusayo pahatabbo."

これが、自分の感覚に対する盲目的な行動パターンです。

感覚が変化する性質であることを理解することで、快感を穏やかに観察して、その快感を使って渇望のタグを根絶し、不快な感覚を使用して嫌悪のタグを根絶し、中立的な感覚を使用して無知のタグを根絶します。

痛みとは体の接触による身体的不快　Mahāsatipaṭṭhāna sutta DN 22　大念処経　英訳The Discourse of Mindfulness

"Katamanca, bhikkhave, dukkham? Yam kho, bhikkhave, kayikam dukkham kayikam asatam kayasamphassajam dukkham asatam vedayitam, idam vuccati, bhikkhave, dukkham."

"What now, O monks, is pain? If there is, O monks, any kind of bodily pain, any kind of bodily unpleasantness or any kind of painful or unpleasant feeling as a result of bodily contact-this, O monks, is called pain."

この解放の道に幻想や妄想、想像力、盲目的な信念などはない。

dukkhaとは身体的感覚　Mahāsatipaṭṭhāna sutta DN 22　大念処経　英訳The Discourse of Mindfulness

Digha Nikaya 2.394=22

釈尊がdukkhaの感覚について説く時は、それは身体的感覚の「痛み」を意味し、domanassとadomanassa には心的感覚の「悲嘆」を意味しています。

"Katamanca, bhikkhave, domanassam? Yam kho, bhikkhave, cetasikam dukkham cetasikam asatam manosamphassajam dukkham asatam vedayitam, idam vuccati, bhikkhave, domanassam."

3つの執着（本能？）Mahāsatipaṭṭhāna sutta DN 22　大念処経　英訳The Discourse of Mindfulness

Kama taṇhā　　　欲愛　　肉体は常に物質エネルギーレベルの刺激に執着するのが特徴

Bhava taṇhā 　　　存在欲　心は常に刺激に執着するのが特徴

Vibhava taṇhā 　　破壊欲　肉体の依存の無い所に永遠があると思い、肉体を超越しようとする怒りの感情

Sampajannaとはaniccaの深い理解を中断させないこと Satisutta SN47.35　念経　　英訳Mindful

Samyutta Nikaya 3.5.401

Sampajannaとは、肉体と心（特に感覚vedanā）が変化し続ける性質であることを理解し、その明確な理解を継続することです。

感覚vedanaは体で感じられますが、それはマインドの一部であり、感覚の観察とはマインドと物質現象の観察のことです。

感覚は物質と物質が接触した時と、物質とマインドが接触したときに起こります。

たとえば、腕にボールが当たった時、たとえば、ボールが当たったところが泥で白い服が汚れたのを見た時です。

またvedanaとは身体の感覚であると釈尊は指摘しています。

Kathanca, bhikkhave, bhikkhu sampajano hoti? Idha, bhikkhave, bhikkhuno vidita vedana uppajjanti, vidita upatthahanti, vidita abbhattham gacchanti. Vidita vitakka uppajjanti, vidita upatthahanti, vidita abbhattham gacchanti. Vidita sanna uppajjanti, vidita upatthahanti, vidita abbhattham gacchanti. Evam kho, bhikkhave, bhikkhu sampajano hoti. Sato, bhikkhave, bhikkhu vihareyya sampajano. Ayam vo amhakam anusasani'ti.5

a monk knows sensations arising in him, knows their persisting, and knows their passing away; he knows each initial application of the mind on an object arising in him, knows its persisting and knows its passing away; he knows perceptions arising in him, knows their persisting, and knows their passing away. This, meditators, is how a meditator understands thoroughly. A monk should abide mindful and composed.

東西南北の風のような感覚　　Paṭhamaākāsasutta　SN36.12　第一の虚空経　　英訳　The Sky　

Samyutta Nikaya 2.4.260

vedanaとは身体の感覚であると釈尊は指摘しています。

感覚とは空の風のようです。

さまざまな方向から、ほこりを含んだ風、暑い風、穏やかなそよ風など、多くの風が吹きます。同じように、この身体では快・不快・中立の感覚が生じます。比丘が熱心に練習し、完全な理解力を怠らないとき、すべての感覚を完全に理解すると、彼はすべての不純物から解放されます。

Yathapi vata akase, vayanti vividha puthu;
puratthima pacchima capi, uttara atha dakkhina.
Saraja araja capi, sita unha ca ekada;
adhimatta paritta ca, puthu vayanti maluta.
Tathevimasmim kayasmim, samuppajjanti vedana;
sukhadukkhasamuppatti, adukkhamasukha ca ya.
Yato ca bhikkhu atapi, sampajannam na rincati;
tato so vedana sabba, parijanati pandito.
So vedana parinnaya, ditthe dhamme anasavo;
kayassa bheda dhammattho, sankhyam nopeti vedagu'ti.

感覚はいろいろな人が滞在する公共宿のよう　Agārasutta　SN36.14　屋舎経　英訳The Guest House

Samyutta Nikaya 2.4.262

Seyyathapi, bhikkhave, agantukagaram, tattha puratthimayapi disaya... pacchimayapi disaya... uttarayapi disaya... dakkhinayapi disaya agantva vasam kappenti. Khattiyapi... brahmanapi... vessapi... suddapi agantva vasam kappenti. Evameva kho, bhikkhave, imasmim kayasmim vividha vedana uppajjanti. Sukhapi... dukkhapi... adukkhamasukhapi vedana uppajjati. Samisapi sukha... samisapi dukkha... samisapi adukkhamasukha vedana uppajjati. Niramisapi sukha... niramisapi dukkha... niramisapi adukkhamasukha vedana uppajjati'ti.

公共のゲストハウスには東西南北から人が集まり、クシャトリヤ、バラモン、ヴァイシャ、シュードラの人々がやって来てそこに住んでいます。

瞑想者も同じように、この体にはさまざまな感覚が生じ、快感、不快感、中立感覚が生じます。

執着のある快感、執着のある不快な感覚、執着のある中立的な感覚が生じます。

同様に、執着のない快、不快、中立的な感覚が生じます。

感覚を利用することで涅槃にいける　Patthana 1.1.423　　『発趣論』論蔵の第7論

身体感覚（kayikam sukhamとkayikam dukkham）が涅槃の達成に最も強く依存する関係であるというブッダからの明確なガイダンスです。

心地よい身体感覚は、身体の快感、身体の不快感、および強い依存状態に関連する結実（涅槃）の発生の原因です。

不快な身体感覚は、身体の快感、身体の不快感、および強い依存状態に関する結実（涅槃）の発生の原因です。

Pakatupanissayo-kayikam sukham kayikassa sukhassa, kayikassa dukkhassa, phalasamapattiya upanissayapaccayena paccayo. Kayikam dukkham kayikassa sukhassa, kayikassa dukkhassa, phalasamapattiya upanissayapaccayena paccayo.

心地よい身体感覚に依存すると、ヴィパッサナーが現れ、道が現れ、知識が現れ、涅槃が現れる。

Pakatupanissayo-kayikam sukham upanissaya... vipassanam uppadeti, maggam uppadeti, abhinnam uppadeti, samapattim uppadeti.
ブッダの教えでは身体感覚が重要で、論蔵では、解放の道において身体感覚が最も重要であるという議論の余地のない証拠が記述されています。

心の楽がSomanassa、体の楽がSukha 　Sukhasutta SN 36.2 楽経 英訳Pleasure

Samyutta Nikaya 2.4.250

Somanassa と domanassa は、楽しい精神的感情と不快な精神的感情です。

Sukhaとdukkhaは、幸福と不幸という広い意味で使われますが、Somanassa と domanassaと並べられる時には、身体的な快楽と不快な感覚という特定の意味で使用されます。

Tisso ima, bhikkhave, vedana. Katama tisso? Sukha vedana, dukkha vedana, adukkhamasukha vedana. Ima kho, bhikkhave, tisso vedana.

感情よりも身体の感覚の優位性　Aṭṭhasatasutta SN36.22　百八経　英訳The Theme of the 108

11. Samyutta Nikaya 2.4.270

vedanaには5種類のタグがありますが、釈尊が3つのタイプを列挙するのは、彼の教においてマインドの感情よりも身体の感覚の優位性を示しています。

Katama ca, bhikkhave, tisso vedana? Sukha vedana, dukkha vedana, adukkhamasukha vedana-ima vuccanti, bhikkhave, tisso vedana. Katama ca, bhikkhave, panca vedana? Sukhindriyam, dukkhindriyam, somanassindriyam, domanassindriyam, upekkhindriyam-ima vuccanti, bhikkhave, panca vedana.

The Buddha has qualified vedana by sukha vedana and dukkha vedana when he talks about the satipatthanas but never somanassa vedana or domanassa vedana in the context of sampajanna or satipatthanas.

ティピタカ全体で、vedanaがsomanassaと一緒に使われているところは十数か所しかありませんが、特にサティパタナの瞑想の文脈で、sukha または dukkha vedanaが使用される場所は何百もあります。

このように、ブッダが苦しみを根絶するための瞑想について語ったときに、体にしっかりと根ざした心の一部としてvedanaに焦点を当ててほしいと望んでいたことは明らかです。

10の邪見と正見　　Mahācattārīsaka Sutta MN 117 大四十経　別名は聖道経 英訳The Great Forty

正見とは

われわれが身心のいっさいについて無常の事実を知り、自分の心身を厭う思を起こし、心身のうえに起こす喜や貪の心を価値のないものと斥けることが「正見」である。

「正しく眼の無常を観察すべし。かくの如く観ずるをば是を正見と名く。正しく観ずるが故に厭を生じ、厭を生ずるが故に喜を離れ、貪を離る。喜と貪とを離るるが故に、我は心が正しく解脱すと説くなり」

このように現実を厭うことは、人間の普通の世俗的感覚を否定するものに見えるが、その世俗性の否定によって、結果として、真実の認識（如実知見）に至るための必要条件が達せられるのである。

十事正見（dasavatthukā sammā-diṭṭhi）

vatthuka：[adj．] （in cpds．） having its ground in； founded on．基礎とする

1. 布施の果報はある(atthi dinnaṃ)

2. 大規模な献供に果報はある(atthi yiṭṭhaṃ)

3. 小規模な献供に果報はある(atthi hutaṃ)

4. 善悪の行為に果報がある(atthi sukatadukkaṭānaṃ kammānaṃ phalaṃ vipāko)

5. （善悪の業の対象としての）母は存在する（母を敬う行為に良い結果があるなど）(atthi mātā)

6. （善悪の業の対象としての）父は存在する（父を敬う行為に良い結果があるなど）(atthi pitā)

7. 化生によって生まれる衆生は存在する(atthi sattā opapātikā)

8. 現世は存在する(atthi ayaṃ loko)

9. 来世は存在する(atthi paro loko)

10. この世において、正しい道を歩み、正しく行じ、自らの智慧によって今世と他世を悟り、（それを他者に）説く沙門、バラモンは存在する。(atthi loke samaṇabrāhmaṇā sammaggatā sammāpaṭipannā ye imañca lokaṃ parañca lokaṃ sayaṃ abhiññā sacchikatvā pavedenti)

業自性正見（ごうじしょう）（kammassakatā sammā diṭṭhi）　業を自己とする正見。

生きとし生けるもの(衆生;巴: sattā)は、

業（だけ）を自己の所有とする（巴: kammassakā）

業（だけ）を相続する（巴: kammadāyādā）

業（だけ）を（輪廻的生存の）起原、原因とする（巴: kammayonī）

業（だけ）を親族とする（巴: kammabandhū）

業（だけ）を依り所とする（巴: kammapaṭisaraṇā）

The Manual of the Constituents of the Noble Path by Mahathera Ledi Sayadaw

二つの八正道　　Mahācattārīsaka Sutta MN 117 大四十経　英訳The Great Forty

Sammādiṭṭhiṃpahaṃ [sammādiṭṭhimahaṃ (ka.) evaṃ sammāsaṅkappaṃpahaṃkyādīsupi], bhikkhave, dvāyaṃ [dvayaṃ (sī. syā. kaṃ. pī.) ṭīkā oloketabbā] vadāmi – 　

比丘たちよ、私は正見を二つに説きます。　

atthi, bhikkhave, sammādiṭṭhi sāsavā puññabhāgiyā upadhivepakkā; 　

比丘たちよ、有漏の、福分の、生存の素因という異熟ある正見があります。　

atthi, bhikkhave, sammādiṭṭhi ariyā anāsavā lokuttarā maggaṅgā. 　

比丘たちよ、聖なる、無漏の、出世間の、道支たる正見があります。

八正道の定義　　　Vibhaṅgasutta SN 45.8　分別経　英訳　Analysis

katamo ca bhikkhave, ariyo aṭṭhaṅgiko maggo, seyyathīdaṃ: sammādiṭṭhi sammāsaṅkappo sammāvācā sammākammanto sammāājīvo sammāvāyāmo sammāsati sammāsamādhi.

比丘たちよ、聖なる八正道とは何か。
それはすなわち、正見、正思、正語、正業、正命、正精進、正念、正定である。

正思惟の定義　　　Vibhaṅgasutta SN 45.8　分別経　英訳　Analysis

Katamo ca bhikkhave, sammāsaṅkappo: yo kho bhikkhave, nekkhammasaṅkappo avyāpādasaṃkappo, avihiṃsāsaṅkappo, ayaṃ vuccati bhikkhave, sammāsaṅkappo.

比丘たちよ、正思惟とは何か。出離、無瞋、無害を正思惟とよぶ。

出離思惟(巴: nekkhamma saṅkappa) 　　nekkhamma　世俗的なものから離れること

無瞋思惟(巴: abyāpāda saṅkappa) 　　　a否定　+　byāpāda　怒り

無害思惟(巴: avihiṃsā saṅkappa)　　　 a否定　+　vihiṃsā害

財産、名誉、など俗世間で重要視されるものや、感覚器官を介する信号に快楽を求める「五欲」などを渇望するものが世俗的なものである。nekkhammaとはそれらの否定です。

邪思惟の定義　Samaṇamuṇḍikasutta　MN78　サマナムンディカー経　英訳With Uggāhamāna Samaṇamuṇḍika

Katame ca thapati, akusalasaṅkappā: kāmasaṅkappo byāpādasaṅkappo vihiṃsāsaṅkappo, ime vuccanti thapati akusalasaṅkappā

棟梁（パンチャカンガ）よ、邪思惟とは何か。欲思惟、瞋思惟、害思惟。これが邪思惟である。

欲思惟(kāmasaṅkappo) 　　　自然な範囲を超えた欲。　感覚器官からの信号に対する渇望

瞋思惟(vyāpādasaṅkappo) 　　憎しみ。自己愛憤怒。

害思惟(vihiṃsāsaṅkappo) 　　怒り。自分にとって邪魔な相手を排除したいという攻撃心。

パンチャカンガが遊行僧のウッガーハマーナに話を聞くと、「身によって悪業をなさず、悪しき言葉を話さず、悪しき思惟をなさず、悪しき生活をなさない」ことが究極の善であると述べる。

パンチャカンガが釈迦の元を訪れ、この話をすると、釈迦は、それでは生まれたばかりの赤子が究極の善人ということになってしまうと指摘する。

そして釈迦は身口意のカルマ・エネルギーとそれらを制御するための四正断、四禅、十正道などについて説く。

パンチャカンガは歓喜する。

人殺しが阿羅漢になる　　Tentang Angulimāla　MN 86 　アングリマーラ経英訳　With Aṅgulimāla　

Angulimālaはほぼ千人を殺しましたが、それはAngulimālaを困らせようとしていた彼の師の指示によるものでした。

その朝、釈尊は彼が母親を殺そうとするのを「見て」、彼の行動が起こす悪い結果をAngulimālaに納得させることができるだろうと知り、出向きました。

Angulimālaは数週間で阿羅漢になりました。

重要なポイントは「vēdanā paccayā taṇhā」、「taṇhā paccayā upādāna」の段階で発生します。死の瞬間に現れるnirayaでの転生のnimittaを得たとしても、Sotāpannaの段階に達していれば、それをそれを捕まえて自分のものにすることはありません。

Sotāpannaのマインドは「aniccaの性質」の真実を把握しており、より高いレベルのpaññā (智慧) を持っているため、そのnimittaを捕まえることはありません。

そのため、1000人近くを殺した後でも、Angulimālaは阿羅漢性を達成することができました。すなわち、その過去のkamma bījaは発芽しませんでした。

ダンマパダ173

以前には悪い行ないをした人でも、のちに善によってつぐなうならば、その人はこの世の中を照らす。──雲を離れた月のように。

「Dhp.173偈の因縁譚12）」

アングリマーラ長老について説かれたものであ

る。容姿端麗で秀才であるアヒンサカ（後のアング

リマーラ）はコーサラ国王の司祭バラモンの子とし

て生まれた。やがてタッカシラーに留学したアヒン

サカは師匠に可愛がられたが、これに嫉妬した一部

の学生たちは、師匠が彼を憎むように仕向けた。そのため師匠は、アヒンサカに「修行の完成は千人の右手の指を集めてくることである」と教えを示した。彼は修行の完成のために次々と人を殺し、その指で華鬘を作ったため、アングリマーラ（指鬘）と呼ばれた。そして1000人目となった時、釈尊に出あったが、どのようにしても釈尊に近づくことはできなかった。アングリマーラが釈尊に「止まれ」と言ったところ、釈尊は「私は止まっている。生きとし生けるものに対して命を奪うことをすでに止めている。止まっていないのはお前だ」と言われた。この言葉により、アングリマーラは自分の罪を懺悔し、釈尊のもとで出家した。やがて、アングリマーラ長老は阿羅漢果を得て、般涅槃したのである。比丘たちは、あれだけの人を殺した者が般涅槃したことを疑問に思い、釈尊に尋ねた。釈尊は「確かにアングリマーラはこの世において多くの人を殺した。しかし、後に善知識という縁を得て、怠ることなく修行に精進しました。それゆえ、彼の悪業は善によって包まれたのです」と答え、続けてこの偈を説かれた。 yassa pāpaṃ kataṃ kammaṃ, kusalena pithīyati. so imaṃ lokaṃ pabhāseti, abbhā muttova candimā. かつて犯した悪業は、善業によって包まれる。彼は雲から離れた月のように、世間を輝かす。この二人の物語に共通していることは、善知識との出遇いである。善知識とは「教えを説いて、仏道に入らしめる人。人に生まれてきたことの真の意味を教えてくれる人」である。タンバダーティカはサーリプッタに出遇うことで自身の行いを省察する清らかな心が起こり、アングリマーラは釈尊に出遇うことで自分の罪を懺悔するという省察に至ったのである。善知識に出遇うことで初めて自身の行いを振り返る省察の心が起こり、内観の自覚が芽生えてくるのである13）。悪行を為した者にとっては、省察こそが仏道に入り解脱に至る第一歩であったといえよう。

タンバダーティカという死刑執行者

タンバダーティカという盗賊の死刑執行者について説かれたものである。タンバダーティカは55年もの間、盗賊の死刑執行をすることで生活していたが、高齢になり仕事を解雇されてしまった。その日、タンバダーティカは托鉢中のサーリプッタ長老を見て、初めて清らかな心が起こり、サーリプッタに礼拝をして優婆塞となった。彼は穏やかな心でサーリプッタの説法を聞きながら、この迷いの世界から預流道に随順する信が生じた。優婆塞は家に戻るとき、牝牛に胸を打たれて殺されたが、死後、兜率天に生まれた。このことを知った比丘たちは、なぜあれほど残忍な盗賊殺しが天に生まれ変わるのかと疑い、釈尊に尋ねた。釈尊は「偉大な善知識が得られたことによって、彼はサーリプッタの法の説示を聞いて随順する智慧が生じた」と答え、続けてこの偈を説かれた。 sahassaṃ api ce vācā anatthapadasaṃhitā, ekaṃ atthapadaṃ seyyo yaṃ sutvā upasammati. たとえ千の無益な言葉があろうとも聞いて〔心が〕静まる一つの利益ある言葉〔の方〕がより勝れている。

sīlaとsamādhiとpaññāの元はNiramisa Sukha　Cetanākaraṇīyasutta AN 11.2 思作経　英訳Making a Wish

sīla (道徳的行為)がNiramisa Sukhaにつながり、Niramisa Sukhaがsamādhiにつながり、samādhiがpaññāにつながるかを釈尊が詳しく述べています。

正式名称はNa Cētanākaranīya Sutta

Dhammāが輪廻の見えない原因である　 Mahākhandhaka Vinaya Mahāvagga　　　英訳The long chapter

輪廻転生のプロセスを生じさせるDhamma（kamma bīja）が何であれ、Dhammāが生じる原因である、と釈尊は宣言されました。釈尊はまた、これらの原因が発生するのをどのように止めれるのかについても説明しました（したがって、転生プロセスは終了できます）

すべてものには原因があってそのため生起して

すべてのものには原因があってそのため消滅す

世尊はその因解き明かす

「Ye dhammā hetuppabhavā、

Tesaṁ hētuṁ tathāgato āha;

Tesañca yo nirōdō,

Evaṃvādī mahāsamaṇō」

"Whatever from a cause proceeds, thereof

The Tathâgata has explained the cause,

Its cessation too he has explained.

This is the teaching of the Supreme Sage."

別訳

“Of causally arisen things,

The Buddha has declared their cause,

As well as their ending.

This is the teaching of the Great Ascetic.”

dukkhaとdukhaの違い　痛みの除去の有無　　Pātāla Sutta (SN 36.4)　 深淵経　英訳The Abyss

「苦しみ」を表すパーリ語は「dukha」（k が 1 つ）で、dukkha（k が 2 つ）は「取り除くことができる苦しみ」（dukha + khaya）を意味します。

「dukha」を使用する経典はは多くありませんが、Pātāla Sutta (SN 36.4)　深淵経　英訳The Abyss　ではapāyās (pātāla すなわち「深淵」) の痛みの感覚を説明するためにdukhaが使用されています。

快楽（名声、恭敬、利得）に隠された苦しみ　　Baḷisa Sutta (SN 17.2)　A Hook 　釣針経

釈尊は、快楽（名声、恭敬、利得）には人間には見えない「隠れた苦しみ」があることを説明しました。

魚がエサを食べるとき、そこに隠された苦しみがあることに気づきません。地上から見ると全体像が見え、魚がエサに食い込んだらどうなるかがわかりますが、魚はその全体像を見ることができないため、隠された苦しみ (餌に隠されたフック) を見ることはできません。

同様に、31の領域の広い世界 (苦しみに満ちた下位4領域を含む)と過去にそれらの領域で想像を絶する苦しみを経験してきたことについてわからない場合、私たちは六感で簡単にアクセスできるものだけに焦点を合わせます。

涅槃の説明　　Paṭhama Nibbāna Paṭisaṃyutta Sutta(Ud 8.1) 　第一の涅槃関連経　About Extinguishment 　

涅槃を説明する 4 つの経典があります (Udāna 8.1 から 8.4)。

“Atthi, bhikkhave, tadāyatanaṃ　

「比丘たちよ、（すべてが完全である）涅槃は存在する」

appatiṭṭhaṃ, appavattaṃ, anārammaṇamevetaṃは、

「それには支持（原因）がなく、動かず、ārammaṇaアーラマナ（思考対象）がない」

Esevanto dukkhassā” tiは「苦しみの終わりです」

patavi、āpo、tējo、および vāyo がないということは、私たちの身の回りにある物質（人、動物、木、他の惑星、星など）は涅槃の中では何も作られていないことを意味します。

Parinibbānaの後には、(ジャーナを含む)私たちが経験するすべては存在しません。

ayam lokoとpara lokoとの間を行き来するgandhabbaはありません。

ANYTHING AT ALL （全く何も無い）という私たちの用語は、涅槃では適用されません。

Tatiya Nibbāna Paṭisaṃyutta Sutta (Udāna 8.3) には、次の重要な節があります。

“Atthi, bhikkhave, ajātaṃ abhūtaṃ akataṃ asaṅkhataṃ. No ce taṃ, bhikkhave, abhavissa ajātaṃ abhūtaṃ akataṃ asaṅkhataṃ, na yidha jātassa bhūtassa katassa saṅkhatassa nissaraṇaṃ paññāyetha. Yasmā ca kho, bhikkhave, atthi ajātaṃ abhūtaṃ akataṃ asaṅkhataṃ, tasmā jātassa bhūtassa katassa saṅkhatassa nissaraṇaṃ paññāyatī”ti

直訳：

「比丘たちよ、「生まれていない」、「形成されていない」、「作られていない」、「条件付けられていない」は存在する。比丘にとって、「生まれない」、「形成されない」、「作られない」、「条件づけられない」がなかったとしたら、生まれ、形成され、作られ、条件づけられることからの離脱が認識されない。しかし、比丘たちよ、「生まれない」、「形成されない」、「作られていない」、「条件付けられていない」というものがあるのだから、生まれ、形成され、作られ、条件づけられたものからの離脱は明らかである。」

「生まれない」、「形成されない」、「作られていない」、「条件付けられていない」のが涅槃です。

形成され、作られ、条件付けられたものをすべて排除することによって到達します。

言い換えれば、「この世界」が存在するのは（Paṭicca Samuppādaプロセスの）avijjāによって生成された汚れた思考（saṅkhāra）を介して構築されたbhavaとjātiのためです。avijjāを止めることでメカニズム、すなわちプロセスは停止し、それ以上は転生ができなくなります。それが涅槃に帰着することです。

涅槃を説明するもう 2 つの経典があります。さらなる洞察を得るのには十分な翻訳です。

Dutiyanibbānapaṭisaṃyutta Sutta (Ud 8.2)” と “Catutthanibbānapaṭisaṃyutta Sutta (Ud 8.4)

火のアナロジー　Vacchagottavagga　SN33 　　色無智経

審問官Vacchagottaは釈尊に、死後アラハンに何が起こるか（どこに行くのか？）を尋ねました。

釈尊は彼に燃えている火を見せて、「この火が消えたら、どこに行ったか教えてもらえますか?」と尋ねました。Vacchagottaは理解しました。火が消えたら、もうそこにはありません。言えることはそれだけです。

同様に、アラハンが死ぬと、もう生まれ変わらないため、31 の領域のどこにも「見つける」ことができません。

一方、abhiññāの力を持つ人（cutūpapāda ñānaを持つ人）は、平均的な人が死んだときにどこで生まれ変わるかを見ることができます。そのライフストリーム（輪廻する生命流動エネルギー）は 31 の領域のどこかに存在します。

ダンマは、ダンマに従って生きる者を保護する　　　Theragatha [Thag, v. 303]　

dhammo ha ve rakkhati dhamma-cāriṃ 　

ダンマは、ダンマに従って生きる者を保護する

dhammo　　　　　宇宙の法則　　　　　　　主語としての主格の dhammo

ha 　　　　　　　必ず，必ずや，　　　　An emphatic particle

ve 　　　　　　　実際に、本当に、　　　Indeed，truly，verily

rakkhati 　　　　　護る，守る　　　　　[rakkh + a] protects； guards； observes； preserves

dhamma-cāriṃ

cāriṃ　　 [cara+iaṃ]　　　見つめ、さまよいながら歩く、　　　　-ṃ は対格であることを表わす。

Theragāthāテーラとは「長老」、ガーターとは「偈頌」（げじゅ）のこと。「長老偈経」と漢訳される。

パーリ語経典経蔵小部に収録され、全21篇での構成。

ダンマとanattaの関係　　　Paṭhama Adhamma Sutta (AN 10.113) 第一の非法経 英訳　Bad Principles

釈尊は簡潔にdhamma / adhammaおよびattha / anatthaとは次のように述べています。

基本的に、「dhamma」とは、自分のためになる思考活動、言語活動、および行動のことです。それらに関わる人は、実りある/意味のあることに従事しており、自分の避難所（「attha」）につながります。これを見るとわかるように、これには八正道が含まれ、その後にsammā ñāṇaとsammā vimutti（つまりArahanthood）が続きます。

その反対、つまり「adhamma」は、多くの将来の苦しみにつながる思考、スピーチ、行動です。それらに関わる人は実りのない/不道徳なことに従事しており、それらは転生プロセスで無力（anattha）になることにつながります。

anāthaを避ける忠告　　　　Paṭhamanātha Sutta (AN 10.17) 第一の救護経　　英訳protector

Paṭhamanātha Sutta (AN 10.17) とDutiyanātha Sutta (AN 10.18)

では、釈尊はanāthaにならないようにするために、比丘たちに道徳的な生活を送るよう忠告しました。

“Sanāthā, bhikkhave, viharatha, mā anāthā.”

転生プロセスを止める（そしてpaññāを育む）ためには、3つの「悪い根本原因」だけを止めるように取り組む必要があります。

“rāgakkhayo dosakkhayo mohakkhayo—idaṁ vuccati nibbānan’ti.”

Sāmaṇḍaka Sutta – SN 39.1を参照

すべてが幸せに　　　　　Khuddakapāṭha (Khp 5),　 Sutta Nipāta (Sn 2.4)

Bhavatu sabbamangalam or Sarve bhavantu sukhinah

Bhavatu [bhū+a+tu] sabba mangalam

Mahāmangala Sutta　　　　　　Khuddakapāṭha (Khp 5),　 Sutta Nipāta (Sn 2.4)

Karaniya Metta Sutta　　　　　Suttanipāta (Sn 1.8)、Khuddakapāṭha (Khp 9)

菜食主義について　 Dharmaguptaka-vinaya　　四分律

いくつかのパーリ経典では出典？、菜食主義は精神的浄化とは無関係であると説明されている。

パーリ経典では出典？肉を食べたことが記されている。

さらに、釈迦に食事を振る舞うために、在家信者が肉を召使に買いにいかせた記述出典？もあるので、肉食は不殺生戒を破ることにならない。

ただし、肉が比丘や比丘尼のためにわざわざ殺されたことを見・聞・知した場合は、この肉を食してはならないと宣言している（三種の浄肉）。

さらに、在家には「肉・人（奴隷）・毒・武器にかかわる職業に就いてはならない」と宣言している。

ただし、いくつかの病気の治療に肉をあげる記述も存在する。出典？

一見すると矛盾するが、これは当時のジャイナ教など他宗との間接殺に解釈の相違に起因するとされている。

一方、中道を掲げ、極端な苦行を非難した仏教は、直接殺を避けるとともに、貪ることに戒め、全体的に間接殺を減らすのが第一であるとしている。

Buddhism and Vegetarianism（英語）（Urban Dharma - Buddhism in America）

四分律（しぶんりつ梵: Dharmaguptaka-vinaya）

中国・後秦の時代、法蔵部に伝承された律を仏陀耶舎［ぶっだやしゃ］が中国に伝え、竺仏念［じくぶつねん］

らと訳したもの。60巻。内容が4段に分かれていることから、このように呼ばれた。道宣らによって中国に広

められ、日本には鑑真によってもたらされた。東アジアで最も広く用いられた律。

法蔵部に伝わる律。四分律は、これら中国および日本に伝来した諸律の中では、最も影響力を持った。

中国・日本で律宗の名で総称される律研究の宗派は、ほとんどがこの四分律に依拠する。

有三種淨肉應食。若不故見不故聞不故疑應食。若不見爲我故殺。不聞爲我故殺。若不見家中有頭脚皮毛血。又彼人非是殺者。乃至持十善。彼終不爲我故斷衆生命。如是三種淨肉應食。

訳して、

殺されるところを見ていない

自分に供するために殺したと聞いていない

自分に供するために殺したと知らない　

また、僧たちは労働作業をせずに瞑想などの修行に専念していたため、この頃はまだ今のような精進料理の概念はなく、原則的に布施された食事だけを口にしていました。ただし理念上は食材制限がなかったとはいえ、貴重な肉魚が大量に寄進されることはそれほど多くなく、実際は植物性食材中心の枯淡こたんな食生活が主体だったと伝えられています。

やがて仏教教団内に、お釈迦様の教えをどう解釈するかによっていくつかの集団ができ、アジア各国に伝播しながら発展します。現在の曹洞宗の源流となった禅宗では、日常生活の全てが尊い修行だと捉え、実践主義を掲げて諸々の作業を僧たちが自ら行うようになり、そうした中で料理を大切な修行として重んじるようになったのです。

その頃の中国では、寺院や僧の数が増え、寄進物だけで食事をまかなうのが難しくなっていたこともあり、僧たちは、畑を耕し、作物を育て、僧自らが台所に立ってさまざまな工夫をするようになります。しかし、自分たちで作るにあたっては、無制限に量や美味を求めては修行が乱れ煩悩につながります。そこで禅宗独自の規範である『清規しんぎ』が整えられ、生活や行動、耕作や調理等に関する厳格な教団内基準が定められました。また、仏教思想が発展する中で、多くの人命が失われる戦乱の世を経て、より命の尊さを重視して苦悩する人々を救おうとする流れが広がり、生き物の命を奪わない教義が重んじられるようになり、さらに、中国古来の菜食主義の慣習も影響して、現在につながる精進料理の基礎ができあがったのです。

お釈迦さまの教えに立ち戻れば、どんな料理でも区別せずに、ありがたく頂く気持ちが大切です。「無分別むふんべつ」という禅語が示すとおり、禅では世間一般でいう相対的なものの見方から離れます。ですから、植物性・動物性という二元的な視点に固執せず、食材の命そのもののありがたさ、そして尊さをしっかり受け止め、食事に差を付けずに感謝して頂く姿勢が大切です。

Sabbasava Sutta には、この道を歩み始めた修行者が煩悩を取り除くための7つの方法が推奨されています。

リストの最初の項目は、「この世」、つまりbhavanaya pahathabba（領域の）を正しく見るだけで、大量の煩悩を取り除けることを説明しています。

業が生命のエネルギー　Cūḷa-kammavibhaṅga-sutta　MN135　 Shorter Analysis of Deeds　小業分別経

別名『鸚鵡経』（おうむきょう）

釈迦が、婆羅門の青年スバ（須婆）に、業に関する仏法を説く。

ある時、釈迦は、サーヴァッティー（舎衛城）のアナータピンディカ園（祇園精舎）に滞在していた。

そこに婆羅門トーデッヤの息子である青年スバが訪れ、釈迦に、人間に長命と短命、肥痩、美醜、強弱、貧富、貴卑、賢愚といった区別・優劣が生じる原因を問う。

Ko nu kho bho gotama, hetu ko paccayo, yena manussānaṃ yeva sataṃ manussabhūtānaṃ dissanti hīnappaṇītatā.

Dissanti hi bho gotama, manussā appāyukā, dissanti dīghāyukā.

Dissanti bavhābādhā, dissanti appābādhā.

Dissanti dubbaṇṇā, dissanti vaṇṇavanto.

Dissanti appesakkhā, dissanti mahesakkhā.

Dissanti appabhogā, dissanti mahābhogā, dissanti nīcakulīnā, dissanti uccākulinā. Dissanti duppaññā, dissanti paññavanto.

Ko nu kho gotama hetu ko paccayo, yena manussānaṃ yeva sataṃ manussabhūtānaṃ dissanti hinappaṇītatāni.

ゴータマよ、どのような因（hetu）、縁（paccayo）で、人々には優劣が見られるのでしょうか？

ゴータマよ、（世の中には）短命な人が見られる一方で、長命な人が見られます。

多病な人が見られ、健康な人が見られます。

醜い人が見られ、美しい人が見られます。

無力な人が見られ、影響力のある人が見られます。

貧しい人が見られ、財の多い人が見られます。

低い家系の人が見られ、高い家系の人が見られます。

愚かな人が見られ、智慧のある人が見られます。

ゴータマよ、どのような因、縁で、人々には優劣が見られるのでしょうか？

釈迦は業（行い）によってそれらが生じていく様を詳細に説いていく。

Kammasakkā māṇava, sattā kammadāyādā kammayoni kammabandhu kammapaṭisaraṇā.

Kammaṃ satte vibhajati yadidaṃ hīnappaṇītatāyāti.

青年（スバ）よ、衆生は、業を自分のものとし、業を相続し、業を胎とし、業を親族とし、業をよりどころとする。

業が衆生を分類し、優劣をつける。

業kammaとは

自分のもの（kammasakkā）- 死によって失われるものではなく、来世についてくる所有物。

相続する（kammadāyādā）- 身・口・意の三業から引き継がれる。

生まれる（kammayoni）- 生命を生み出すのは、自ら行った行為からで、すべて業より生まれる。

切り離せない（kammabandhu）- 生命は業との繋がりを切ることはできない。

よりどころとする（kammapaṭisaraṇā）- 生命のよりどころである。

優劣（hīnappaṇītatāyāti）をつける - 生命に優劣をつける要素の一つである。

スバは歓喜する。

天上界に転生した死刑執行人　Mahākammavibhaṅgasutta　MN136　The Longer Analysis of Deeds　大業分別経

大業分別経「業に関する広大な分析」　Mahā「広大な」kamma「業」vibhaṅga「分別」「分析」

天上界に転生した死刑執行人

Dhp.100偈の因縁譚

無益な語句を千たびかたるよりも、聞いて心の静まる有益な語句を一つ聞くほうがすぐれている。

死刑執行人のタンバダーティカは、若い時に人を殺して、死刑の判決を受けました。

しかし、その刑を受ける代わりに、死刑執行人になることを約束して、それ以来、王が死刑の判決を下す度に

人を殺さなければなりませんでした。

それは生涯続いて、やがて身体がボロボロになって、老いぼれた時にその仕事から、ようやく解放されました。

ある日、サーリプッタ長老に出会って、法（ダンマ）を聴く機会に恵まれました。

聴き終わって、すぐに、タンバダーティカは亡くなりました。

死後、彼はどこに生まれ変わったのが天上界、と仏典にはあります。

死刑執行人として、大勢の人を殺してきたにもかかわらず、なぜ天上界に生まれ変わったのか？　

それは、「死ぬ間際に聖者から、仏法の真理を聴き、それによって心が清らかになり、正見が生まれたからだ

と『経典』に説かれています。

『観無量寿経』に、

「極重の悪人が南無阿弥陀仏によって、心に正見が生まれて往生した」と説かれているのも、同じことです。

このように、

「大勢の人を殺した悪人でも、悟りを開いたり、天上界に生まれ変わることもある」と仏教では教えられます。

では、業のシステムは、一体、どうなっているのでしょうか？

これについて『大業分別経』にその理由が説かれています。

私たちには、人の表面的な行為だけを見て、その人の将来や過去を判断することは出来ない。

これが、ブッダが説いている「業の複雑性」です。

業は決して、AからBへの直線的な関係ではありません。

善であれ、悪であれ、行為(業)には、原因に相応する結果がある。

しかし、その結果がいつ、どこで、どのように現れるのかは分かりません。

蒔いた種は様々な形で、その人に報いて、結果は現れます。　

正自覚者であるブッダだけが、人が、どこに生まれ変わるのかを知ることが出来ると説くのが、仏法です。

善業を施したのにapāyā（悪趣〖地獄、餓鬼、畜生〗）に転生したマッリカー妃　　

Dhp.173偈の因縁譚

以前には悪い行ないをした人でも、のちに善によってつぐなうならば、その人はこの世の中を照らす。

──雲を離れた月のように。

比類なき善業を積んだ、マッリカー妃。

コーサラ国のパセーナディ王の妻マッリカー妃は、ブッダの在家弟子の中で、ブッダや僧団に対して、誰にも

真似の出来ないほどの布施をして、生涯に渡って、沢山の善い業を積んできた立派な方です。

正自覚者が、生涯に一度だけ受ける非常に豪華なお布施がありますが、そのお布施もマッリカー妃が中心に

なっておこなったのです。　

彼女は死後、どこに生まれ変わったのか？　

地獄に生まれ変わったのです。

ブッダや弟子たちに想像を絶するほどの、お布施をしてきた方でさえ、地獄に堕ちるならば、私たちは一体、

どうなるのでしょうか？

実際、彼女が地獄にいたのは、7 日間だけだといわれています。

しかし、なぜあのような善い方が地獄に堕ちたのでしょうか？　

それは、死の瞬間に正見を失ったからです。わずかになした悪い行為を思い出して、その瞬間に心が暗くなり、

それで地獄に堕ちてしまったのです。　

一方、愛する妻を亡くしたパセーナディ王は、マッリカー妃がどこに生まれ変わったのかが気になって、

それを知るために、ブッダが滞在している僧院を訪れました。

しかし、ブッダは7 日間、その質問に答えませんでした。

というよりも、その質問をさせないように、パセーナディ王に別のことを話されたのです。　

8 日後、パセーナディ王はブッダに「マッリカー妃は、どこに生まれ変わったのですか？」と尋ねました。

「今、天上界にいますよ」と答えました。

マッリカー妃は、8 日目に天上界に生まれ変わったのです。

では、なぜ8 日目に天上界に生まれ変わったのでしょうか？

それは、地獄にいる時に、自分がそれまで積んできた沢山の善い行為を思い出したからです。

その善業によって、7 日で地獄から脱け出ることが出来たのです。

もしパセーナディ王が、「マッリカー妃が死後、地獄に堕ちた」ということを聞いたなら、混乱するでしょう。

ですから、ブッダは、わざとマッリカー妃が天上界に生まれ変わるまで、その質問に答えずに待っていたのです。

あれほどの善業を積んだマッリカー妃でさえ、地獄に堕ちたなら、パセーナディ王は「自分はどうなるのか」

と怖くなって混乱するからです

元素の解説　　Dhātuvibhaṅgasutta　MN140　界分別経　英訳The Analysis of the Elements

釈尊が宿泊することになった陶工の家には、プックサーティという先客がいました。

彼は、釈尊を師と仰いで出家をしたのですが、まだ釈尊と会ったこともなく、

共に宿泊することへの同意を求めてきた出家者が、釈尊その人であることを知りませんでした。

その夜、熱心に瞑想を修行するプックサーティを見て、

釈尊は、自身の正体を明かさずに、彼に教えを説くことにしたのでした。

　　　比丘よ、人間というものは、

　　　六つの元素（六界）から成り、

　　　六つの接触の場（六触処）を持ち、

　　　十八の意の考察（十八意行）を持ち、

　　　四つのよりどころ（四住処）を持つ。

　　　その［四つのよりどころ］に安住すれば、妄想（歓喜の想い）が起こらない。

　　　妄想が起こらないとき、聖者は寂静と言われる。

　　　それゆえ人は、智慧を怠惰にするべきでない。

　　　真理を護持すべきである。

　　　捨断を修習すべきである。

　　　まさに寂静を修学すべきである。

　　　これが、『要素の解説（界分別）』の概略である。

仏教を、区別や差別のない「平等」を説いた「無分別の教え」だと思っている人たちがいるようです。

その人たちは、おそらく、大乗仏教の教え（思想）の影響を、強く受けているのでしょう。

釈尊は、当時のインドの他の修行者から「分別主義者」だと言われていました。

パーリ経典では、釈尊の教えは多岐にわたってとても精密に区別され、分別されています。

是と非とを明瞭に区別し、善と不善とを明確に分別し、様々な要素についても、細密な分析がなされています。

釈尊は、「思想」や「論理」や「倫理」を弟子たちに説いていたのではなく、

「苦を滅するためには、何を、どのようにすればいいのか」という「実践方法」を具体的に説いたからです。

何を選び、何を取り上げ、何を捨てるのか。

何を為すべきで、何を為してはいけないのか。

何故そうすべきなのか。その理由・必要性・必然性は、何処にあるのか。

何を目的とすることが正しく、それを成就させるためには何が必要で、何を修習し、何を修学すれば良いのか。

それらを明確に提示できない、曖昧な教えは役に立たないので、釈尊の教えには、そのような曖昧さが皆無です。

ただ、経典のその教えが、「何のために」それが分別されて説かれているのか、という意図（目的）や理由（根拠）、その教えが、釈尊の教法の「全体図」の何処（どの部分）に位置しているのかを理解できないと、混乱してしまいます。

　　　さて、比丘よ、『人間というものは、六つの元素（六界）から成る』と言ったが、それは何か。

　　　地の元素、水の元素、火の元素、風の元素、虚空の元素、識の元素である。

　　（註：地界・水界・火界・風界・空界・識界のこと。これらを総称して「六大」とも言う。）

　　　比丘よ、『人間というものは、六つの元素から成る』と言ったのは、これらについて言ったのである。

　　　また、比丘よ、『人間というものは、六つの接触の場（六触処）を持つ』と言ったが、それは何か。

　　　眼における接触の場（眼触処）、耳における接触の場（耳触処）、鼻における接触の場（鼻触処）、

　　　舌における接触の場（舌触処）、身体における接触の場（身触処）、意における接触の場（意触処）である。

　　　比丘よ、『人間というものは、六つの接触の場を持つ』と言ったのは、これらについて言ったのである。

　　　また、比丘よ、『人間というものは、十八の意の考察（十八意行）を持つ』と言ったが、それは何か。

　　　人は、眼によって色かたち（色）を見ると、

　　　歓喜のもととなる色かたちを考察し、憂悩のもととなる色かたちを考察し、棄捨のもととなる色かたちを考察する。

　　　また、耳によって音声（声）を聞くと、

　　　歓喜のもととなる音声を考察し、憂悩のもととなる音声を考察し、棄捨のもととなる音声を考察する。

　　　鼻によって臭い（香）を嗅ぐと、

　　　歓喜のもととなる臭いを考察し、憂悩のもととなる臭いを考察し、棄捨のもととなる臭いを考察する。

　　　舌によって味（味）を味わうと、

　　　歓喜のもととなる味を考察し、憂悩のもととなる味を考察し、棄捨のもととなる味を考察する。

　　　身体によって触れられるもの（触）に触れると、歓喜のもととなる触れられるものを考察し、

　　　憂悩のもととなる触れられるものを考察し、棄捨のもととなる触れられるものを考察する。

　　　意によってものごと（法）を知ると、

　　　歓喜のもととなるものごとを考察し、憂悩のもととなるものごとを考察し、棄捨のもととなるものごとを　考察する。

　　　このように、六つの歓喜の考察、六つの憂悩の考察、六つの棄捨の考察を持つ。

　　　比丘よ、『人間というものは、十八の意の考察を持つ』とは、これらについて言ったのである。

昔のインドでは、物質を構成する元素（要素）として「四大（地・水・火・風）」を立てていました。

これに「空」を加えると「五大」に、さらにそれらに「識」を加えると「六大（六界）」となるのです。

そして、この「六大（六界）」は何を意味しているのかというと、「五蘊」を、別の角度から表現したものです。

　　色　　　　　　　…　地・水・火・風・空　…　物質　…　色（身）

　　受・想・行・識　…　識　　　　　　　　　…　精神　…　名（心）

この「五蘊」や「六大（六界）」、あるいは「十二処・十八界」などの教えは、「一切」を別の形で表現しています。

一つの要素で表現すると「一切」となり、それは「触（接触）」を縁として感受（感知）されるのです。

二つの要素で表現すると「名・色」となります。

三つの要素で表現すると「欲界・色界・無色界」となります。

四つの要素で表現すると「身・受・心・法（四念処）」となります。

五つの要素で表現すると「色・受・想・行・識（五蘊）」となります。

六つの要素で表現すると「地界・水界・火界・風界・空界・識界（六界）」となるのです。

※さらに付け加えるならば、この六界を対象とした瞑想のプロセスが、そのまま、

　色界（四大）の瞑想と、無色界（空無辺・識無辺、無所有処）の瞑想プロセスになるのです。

　もともと「四禅定」と「四無色定」は、そのままストレートに結びついておらず、それらは別々の瞑想法です。

　釈尊が二人の仙人から「無所有処定」と「非想非非想処定」を学んだ時、そこに四禅定は含まれていませんでした。

　それぞれの瞑想に熟達した後で、初めて「四禅定」からそのまま「四無色定」へと移行することが可能になるのです。

　ですから「八解脱」の瞑想プロセスに「四禅定」は含まれていません（第一から第三までは別のプロセスです）。

つまり、釈尊の説く「一切」とは、「六処（眼・耳・鼻・舌・身・意）で認識・認知できる全ての対象」のことです。

それらは「我」についての認識であり、色（物質）に関わる領域が拡大すると、それは「世界」の認識へと変容するのです。

それら（一切）を、私たちは「触（接触）」を縁として感受（知覚）します。

そして、六処（眼・耳・鼻・舌・身・意）の各処（それぞれ）に生起した感受作用（知覚作用）に対して、

好感反応（歓喜）や、悪感反応（憂悩）、さらにその二つの反応を共に回避（棄捨）するという、三種類の考察がある、

…と、釈尊はプックサーティに教えます。そしてここまでが予備知識（事前説明）となって、いよいよ本題に入っていくのです。

　　　比丘よ、『人間というものは、四つのよりどころ（四住処）を持つ』と言ったが、それは何か。

　　　智慧というよりどころ（慧住処）、真実というよりどころ（諦住処）、捨断というよりどころ（捨住処）、

　　　寂静というよりどころ（寂静住処）である。

　　　比丘よ、『人間というものは、四つのよりどころを持つ』と言ったのは、これらについて言ったのである。

　　　そして、『それゆえ人は、智慧を怠惰にすべきでない。真実を護持すべきである。

　　　捨断を修習すべきである。まさに寂静を修学すべきである』と言ったが、それはどういうことか。詳しく説明しよう。

　　　比丘よ、まず、人が智慧を怠惰にしないとはどういうことか？

　　　六つの元素は、地の元素・水の元素・火の元素・風の元素・虚空の元素・識の元素であるが、

　　　では比丘よ、地の元素とは何か。

　　　地の元素は、内部にあるものと外部にあるものとがある。

　　　比丘よ、内部の地の元素とは何か。

　　　それは、各自の内にすでに取り入れられている粗くて堅いもの、すなわち、頭髪・身体の毛・爪・歯・

　　　皮膚・肉・筋・骨・骨髄・腎臓・心臓・肝臓・肋膜・脾臓・肺・腸・腸間膜・胃の内容物・大便である。

　　　また、これ以外でも、各自の内にすでに取り入れられている粗くて堅いものは何でも、内部の地の元素と言われる。

　　　そして、内部の地の元素であれ外部の地の元素であれ、地の元素であるものを、

　　　『これは私のものではない、これは私ではない、これは私の自我ではない』と、

　　　正しい智慧によってあるがままに見るべきである。　　

　　　そのように、地の元素を正しい智慧によってあるがままに見て、人は地の元素を厭い、地の元素への執着から心が離れる。

この「正しい智慧」とは、対象を「無常・苦・無我」と観ずる「明らかな智慧」のことです。

そして、「五蘊無我」の教えのときと同じように（五蘊＝六大＝一切なので、同じというのは当然ですが）、

『これは私のものではない、これは私ではない、これは私の自我ではない』と観て、対象を厭うことで、心が離貪するのです。

　①対象を、明らかな智慧によって「無常・苦・無我」と観ずる。

　②さらに『これは私のものではない、これは私ではない、これは私の自我ではない』と観ずる。

　③これらの観法を徹底させると、対象を厭うことで、心が（執着から）離貪する。

これが〈厭離 → 離貪 → 解脱〉というプロセスの、具体的な「実践説明」になるのです。

── ここで、「智慧」とは何かについて、少し説明します。

例えば、目の前に「半分の水」が入ってるコップがあるとします。これを、

　①「半分も水が入っている」と観ることもできます　…　歓喜（これを現世ではポジティブ思考と呼ぶのです）

　②「半分しか水が入っていない」と観ることもできます　…　憂悩

　③「水がちょうど半分入っている」とそのまま観ることもできるのです　…　棄捨

仏教では、①に傾いている心に、真逆のベクトル②を利用して修正を加え（中和させて）、③へと移行させるのです。

楽器の弦を例にすると「緩みすぎている」ならば、それを「「引き締め」て、調律が整ったところで「止める〈手放す〉」。

「苦の滅尽」を目的として、これらを正しく行う（選択する）ことが「智慧」です。

　　　では比丘よ、水の元素とは何か。

　　　水の元素は、内部にあるものと外部にあるものとがある。

　　　比丘よ、内部の水の元素とは何か。

　　　それは、各自の内にすでに取り入れられている水や水性のもの、

　　　すなわち、胆汁・たん・膿・血液・汗・脂肪・涙・脂・唾・鼻汁・関節滑液・尿である。

　　　また、これ以外でも、各自の内にすでに取り入れられている水や水性のものは何でも、内部の水の元素と言われる。

　　　そして、内部の水の元素であれ外部の水の元素であれ、水の元素であるものを、

　　　『これは私のものではない、これは私ではない、これは私の自我ではない』と、

　　　正しい智慧によってあるがままに見るべきである。　　

　　　そのように、水の元素を正しい智慧によってあるがままに見て、人は水の元素を厭い、水の元素への執着から心が離れる。

この後さらに、

ａ．「火の元素」…これは、人を熱くするもの、人を老化させるもの、人を燃焼させるもので、

　　　人が食べたり、飲んだり、噛んだり、味わったりした物を正しく消化させるものである、と説明されています。

ｂ．「風の元素」…これは、上に行く風、下に行く風、腹の中の風、

　　　内臓の中の風、手足などの各部分を流れる風、出る息、入る息であると説明されています。

ｃ．「虚空の元素」…これは、耳孔、鼻腔、口腔であり、

　　　人が食べたり、飲んだり、噛んだり、味わったりした物を正しく飲み下させるもの（食道）、

　　　人が食べたり、飲んだり、噛んだり、味わったりした物を留めるところ（胃腸）、

　　　人が食べたり、飲んだり、噛んだり、味わったりした物を下方に出させるもの（肛門）であると説明されています。

そして、内部であれ外部であれ、それらの元素であるものに対して、

　　『これは私のものではない、これは私ではない、これは私の自我ではない』と、

　　正しい智慧によってあるがままに見るべきである。　　

　　そのように、それらの元素を正しい智慧によってあるがままに見て、人はその元素を厭い、その元素への執着から心が離れる。

後半では、初転法輪で説かれている「三つの渇愛」から離れるプロセスが詳しく説かれています。

── その時、最後に残っている「意識という元素」はどうなるのでしょうか？

　　　そのとき、残っているのは意識という元素である。

　　　それは清らかで完全に浄化されている。

　　　その意識によって、人は何を知るのかというと、

　　　『楽である』とか、『苦である』とか、『苦でも楽でもない』と識別するのである。　　

地元素・水元素・火元素・風元素・虚空の元素の、それぞれに対して修習した「厭離・離貪」のプロセスによって、

最後に残っている「意識という元素」は、完全に浄化されて清らかになっている、…と、釈尊は説明をします。

例えば、色々な不純物が混ざって濁っている水の中では、視界がその濁りに遮断されて、何も識別することが出来ません。

しかし、その不純物を取り除いて水の中が次第に澄んでくると、透明度が増し、広いクリアーな視界を得ることができます。

最後に残っている「意識という元素」は、そのような、透明でクリアーな識別ができる状態になっています。

── その意識は、接触に依って生じる「三種の感受（楽・苦・不苦不楽）」の生・滅を、ありのままに了知します。

　　　比丘よ、楽という感じをもたらす接触によって、楽の感受が生じる。

　　　楽の感受を受けると、彼は『私は楽の感受を受けている』と了知する。

　　　そして、まさにその楽という感じをもたらす接触が無くなることから、

　　『その接触に応じて感じた楽の感受は、消滅し、静まる。

　　　何故ならそれは、楽という感じをもたらす接触によって生じたからである』と了知する。　

楽という感受（感覚）は、楽を与えるような接触によって生起します。

そしてその、楽を与えるような接触が無くなることによって、楽という感受（感覚）が消滅し、静まります。

そして、これらの生滅が起きたのは、それが「接触する」ことによって生じた現象だからである、と了知するのです。

── つまり、感受（感覚）というものが接触によって生じ、接触が無くなることによって滅することを了知するのです。

　　　また比丘よ、苦という感じをもたらす接触によって、苦の感受が生じる。

　　　苦の感受を受けると、彼は『私は苦の感受を受けている』と了知する。

　　　そして、まさにその苦という感じをもたらす接触が無くなることから、

　　『その接触に応じて感じた苦の感受は、消滅し、静まる。

　　　何故ならそれは、苦という感じをもたらす接触によって生じたからである』と了知する。　

　　　また比丘よ、苦でも楽でもないという感じをもたらす接触によって、苦でも楽でもない感受が生じる。

　　　苦でも楽でもない感受を受けると、彼は『私は苦でも楽でもない感受を受けている』と了知する。

　　　そして、まさにその苦でも楽でもない感じをもたらす接触が無くなることから、

　　『その接触に応じて感じた苦でも楽でもない感受は、消滅し、静まる。

　　　何故ならそれは、苦でも楽でもないという感じをもたらす接触によって生じたからである』と了知する。

これらの観察（了知すること）こそが、「苦の滅尽」を目的とした「縁起を知る」ということです。

パーリ語では？

　　　比丘よ、例えば、二つの木切れが接触したり擦れ合ったりすることにより、熱が生まれ、光が発生する。

　　　そして、同じその二つの木切れを分離したり捨てたりするところから、

　　　接触したり擦れ合ったりすることに応じて生じる熱が、消滅し、静まる。

これが、「（苦の滅尽に真に役立つ）縁起」の生・滅を、最もシンプルに表現している譬えです。

①二つの木切れが接触したり擦れ合ったりすることにより、熱が生まれ、光が発生する（縁生）。

②二つの木切れが分離したり捨てたりすることで、接触や擦れ合いによって生じていた熱が、消滅し、静まる（縁滅）。

これらを別の角度から表現すると、『スッタニパータ（第五彼岸に至る道の章 1137』で説示されている詩句の意味するもの、

「即時に効果の見られる、時を要しない法、すなわち煩悩なき〈妄執の消滅〉」の内容を、具体的に表している経句になるのです。

　　　ちょうどそのように、楽という感じをもたらす接触によって、楽の感受が生じる。　

　　　楽の感受を受けると、彼は『私は楽の感受を受けている』と了知する。

　　　そして、まさにその楽という感じをもたらす接触が無くなることから、

　　『その接触に応じて感じた楽の感受は、消滅し、静まる。

　　　何故ならそれは、楽という感じをもたらす接触によって生じたからである』と了知する。　

　　　また比丘よ、苦という感じをもたらす接触によって、苦の感受が生じる。

　　　苦の感受を受けると、彼は『私は苦の感受を受けている』と了知する。

　　　そして、まさにその苦という感じをもたらす接触が無くなることから、

　　『その接触に応じて感じた苦の感受は、消滅し、静まる。

　　　何故ならそれは、苦という感じをもたらす接触によって生じたからである』と了知する。　

　　　また比丘よ、苦でも楽でもないという感じをもたらす接触によって、苦でも楽でもない感受が生じる。

　　　苦でも楽でもない感受を受けると、彼は『私は苦でも楽でもない感受を受けている』と了知する。

　　　そして、まさにその苦でも楽でもない感じをもたらす接触が無くなることから、

　　『その接触に応じて感じた苦でも楽でもない感受は、消滅し、静まる。

　　　何故ならそれは、苦でも楽でもないという感じをもたらす接触によって生じたからである』と了知する。

「苦・楽・不苦不楽」の三つの感受を生起させる接触を離れ、消滅させ、静めると、心の平静さが残ります。

　　　さらに、残っているのは、心の平静さ（捨心）である。

　　　それは、清らかで完全に浄化され、柔軟で、適応性があり、まばゆく輝くものである。

　　　例えば、比丘よ、

　　　熟練した金細工師あるいは金細工師の弟子が、溶炉を準備し、溶炉を準備した後で、

　　　坩堝（るつぼ）に点火し、坩堝に点火した後、火箸で金をつかんで、坩堝に入れるとしよう。

　　　彼はときどき、それに風を吹き送ったり、水を振りかけたり、それを観察したりするだろう。

　　　その金は、よく吹かれ、十分に吹き溶かされて、浄らかな、汚れのない、

　　　不純物の取り除かれた、柔軟で、細工しやすい、まばゆく輝く金となる。

　　人が欲しいと思う様々な装飾品、例えば、腕輪や、イヤリング、

　　ネックレス、金の花輪など、そのどれを作ろうとしても、よくその目的に適う。

　　ちょうどそのように、比丘よ、残っている心の平静さは、

　　清らかで完全に浄化され、柔軟で、適応性があり、まばゆく輝くものである。

その「心の平静さ」は、清らかで完全に浄化され、柔軟で、適応性があり、眩く輝く「金」として喩えられます。

良く精錬された「金」は、人が欲しいと思う様々な装飾品、例えば、腕輪や、イヤリング、ネックレス、金の花輪など、

そのどれを作ろうとしても、良くその目的に適う、不純物の取り除かれた、柔軟で、細工しやすい「材料・材質」になります。

「心の平静さ」もまた、不純物が完全に取り除かれた、柔軟で、細工しやすい金のような、まばゆく輝くものになるのです。

　　　そして、彼はこのように了知する。

　　『もし、私が、そのように清らかで完全に浄化されたこの心の平静さを、

　　　空間の無限性を観ずる境地（空無辺処）に集中させ、それにしたがって心を修するならば、

　　　その境地を依り処とし、それをしっかり捉えて、この心の平静さが、非常に長い時間、私に留まるだろう。

　　　もし、私が、そのように清らかで完全に浄化されたこの心の平静さを、

　　　意識の無限性を観ずる境地（識無辺処）に集中させ、それにしたがって心を修するならば、

　　　その境地を依り処とし、それをしっかり捉えて、この心の平静さが、非常に長い時間、私に留まるだろう。

　　　もし、私が、そのように清らかで完全に浄化されたこの心の平静さを、

　　　何ものも存在しないと境地（空無辺処）に集中させ、それにしたがって心を修するならば、

　　　その境地を依り処とし、それをしっかり捉えて、この心の平静さが、非常に長い時間、私に留まるだろう。

　　　もし、私が、そのように清らかで完全に浄化されたこの心の平静さを、

　　　想いがあるのでもないのでもない境地（非想非非想処）に集中させ、それにしたがって心を修するならば、

　　　その境地を依り処とし、それをしっかり捉えて、この心の平静さが、非常に長い時間、私に留まるだろう。』と。

その「心の平静さ」を「無色界の各処」に集中させて、それにしたがって心を修するならば、

その境地を依り処として、それをしっかり捉えることで、その心の平静さが、非常に長い時間、私に留まるだろう。

── と、了知する（そのことを実修して知るのではなく、そのことをそのままストレートに推知するのです）。

　　　さらに、彼はこのように了知する。

　　『もし、私が、そのように清らかで完全に浄化されたこの心の平静さを、

　　　空間の無限性を観ずる境地（空無辺処）に集中させ、それにしたがって心を修するならば、

　　　これは作られたもの（有為）である（と了知する）。

　　　もし、私が、そのように清らかで完全に浄化されたこの心の平静さを、

　　　意識の無限性を観ずる境地（識無辺処）に集中させ、それにしたがって心を修するならば、

　　　これは作られたもの（有為）である（と了知する）。

　　　もし、私が、そのように清らかで完全に浄化されたこの心の平静さを、

　　　何ものも存在しないと境地（無所有処）に集中させ、それにしたがって心を修するならば、

　　　これは作られたもの（有為）である（と了知する）。

　　　もし、私が、そのように清らかで完全に浄化されたこの心の平静さを、

　　　想いがあるのでもないのでもない境地（非想非非想処）に集中させ、それにしたがって心を修するならば、

　　　これは作られたもの（有為）である。』と了知するのである。

── この「これは作られたもの（有為）であると了知する」ことは、とても重要なポイントです。

この「了知」を得ることが出来なければ、「四無色定」をいくら修得してみても「体験しただけ」で終わってしまうからです。

釈尊が、出家をしてから、最初に二人の師に付いて、瞑想の修行をして得た「無所有処」と「非想非非想処」の境地には、

この「清らかで完全に浄化された心の平静さ」を、厭離・離貪のプロセスによって抽出し、純化し、それを鍛錬するという過程と、

それを用いて「四無色定」の全ての境地を『これは作られたもの（有為）であると了知すること』の二つが、欠落していたのです。

　　　「これは作られたもの（有為）であると了知すること」

── これを別の角度から表現すると、「それらは全て〈想い（想起されたもの）〉であると了知する」ことです。

この「了知すること」によって、初めてそこから、その先のプロセス「想いを滅する道（想いからの解脱）」が開けるのです。

　※最後の境地である「滅尽定（想受滅）」に至るためには、途中で二つの「（視点の転換を）了知すること」が必要となります。

　その一つ目が、「無所有処」から「非想非非想処」へとジャンプする時に必要となる「（視点の転換を）了知する」ことで、

　それが、「分別〈二元〉の世界」から「無分別〈一元〉の世界」への飛躍へとつながるのです。

　「色界」と、そして「空無辺処」から「無所有処」までは、有と無によって形成される「二元世界」が続いています。

　そして「無所有処」は、その二元世界の中の究極、二つ（有無）の中の一方（無）だけに没入するという一元的な世界です。

　つまりそれは「二つの中の一つを選んでいる」という二元性が残されたままの「不完全な〈二元のままの）一元的世界」です。

　ところが、「非想非非想処」の境地は、「Ａでもなく（非Ａ）非Ａでもない（非非Ａ）」という分別のされない世界です。

　つまり、二つの中の一つだけを選ぶという究極の世界ではなく、二つに分ける「分別そのもの」を滅した究極の世界です。

　「何を」想うのか、という想いの「内容（中身）」に焦点を合わせることから離れて、「想いそのもの」を観ることへと視点を転換するのです。

　「想う」ということと「想わない」ということ、これら二つの想いこそが、直接「有」と「無」を生起させる要素（素因）であると了知するのです。

　この「二つの要素（想と非想）」を共に否定する世界（処）とは、つまり、分別のない「完全な一元性」を表す想いの世界です。

　そして二つ目が、「非想非非想処」から「滅尽定（想受滅）」へとジャンプするために必要となる「（視点の転換を）了知する」ことで、

　その「想い」そのものが執着の因であると了知して、そこから離れる、ということを、釈尊は今、この経典の中で説いています。

── それでは、「これは作られたもの（有為）であると了知する」とは、どういうことなのでしょうか？

それは、「わたし」も「わたしのもの」も「わたしでないもの」も、想いによって作られたものです。

「主観」も「客観」も、「主体」も「客体」も、「主体と客体から離れたもの」も、想いによって作られたものです。

「有るもの」と「無いもの」も、想いによって作られたものです。

そして、「有るのでも無いのでもないもの〈一元〉」もまた、想いによって作られたものです。

つまり、それらはすべて、想いと接触することに依って生起し、想いから離れることに依って消滅するものです。

　　　そして、彼は、

　　　生存すること（有）も、生存を離れること（非有）も構想せず思念しない。

　　　彼は、生存することも、生存を離れることも構想せず思念しないので、世間において何ものにも執着しない。

　　　執着しないので恐れない。

　　　恐れないので自（みずか）らまさに完全な安らぎに入る。

　　　すなわち『出生は尽きた。清らかな修行（梵行）は完成された。為すべきことは無し終えた。

　　　さらに、この世（輪廻の状態）に至ることは無い』と了知する。

この「生存すること（有）」とは、三つの渇愛の中の「生存渇愛」のことです。

そして「生存を離れること（非有）」とは「虚無への渇愛」のことです。

その渇愛も、渇愛の対象も、すべて、「想いによって作られたもの」であると（あるがままに）了知する。

了知しているので、それらの因となる「想い」そのものを〈構想せず思念しない＝想いを離れて滅する〉ことができるのです。

　①彼は、これ（想い）は作られたもの（有為）である、と了知する。

　②そして、「生存すること」も「生存を離れること」も、想いによって作られたものである、と了知する。

　③だから、生存することも、生存を離れることも、構想せず、思念しない（想いからの解脱）。

　④構想せず思念しないので、世間において何ものにも執着しない。

　⑤執着しないので恐れない。

　⑥恐れないので自（みずか）らまさに完全な安らぎに入る。

── これが、初転法輪の中で「苦の生起（原因）である」と説明されている「渇愛」を、滅尽するプロセスです。

ですから、「想いからの解脱」によって「渇愛」が完全に消滅することで、「全ての苦しみ」も、そこで滅尽することになるのです。

── ここから後は、「完全な安らぎ（ニルヴァーナ）」を得てからのことなどを説明しています。

（余計な説明はしませんので、釈尊の説明をそのままお読み下さい）

　　　そして、彼は、

　　　もし楽の感受を受けたならば、

　　『それは無常である、それは執着すべきものではない、それは歓喜すべきものではない』と了知する。

　　　もし苦の感受を受けたならば、

　　『それは無常である、それは執着すべきものではない、それは歓喜すべきものではない』と了知する。

　　　もし苦でも楽でもない感受を受けたならば、

　　『それは無常である、それは執着すべきものではない、それは歓喜すべきものではない』と了知する。

　　　そして、彼は、

　　　もし楽の感受を受ければ、束縛を離れて、その感受を受ける。

　　　もし苦の感受を受ければ、束縛を離れて、その感受を受ける。

　　　もし苦でも楽でもない感受を受ければ、束縛を離れて、その感受を受ける。

　　　そして、彼は、

　　　身体がある間だけの感受を受けると、『私は、身体がある間だけの感受を受けている』了知する。

　　　生命がある間だけの感受を受けると、『私は、生命がある間だけの感受を受けている』了知する。

　　　そして、『身体が破壊し生命が尽きたあと、私が受けた一切の感受は、

　　　その時、歓喜されず、冷たくなるだろう』と了知する。

　　　比丘よ、例えば、油と灯芯とによって灯火は燃える。

　　　その油と灯芯とが尽き、他からの供給が無いことから、燃料が無くなって、灯火は消える。

　　　比丘よ、それと同じで、

　　　身体がある間だけの感受を受けると、彼は、『私は、身体がある間だけの感受を受けている』了知する。

　　　生命がある間だけの感受を受けると、彼は、『私は、生命がある間だけの感受を受けている』了知する。

　　　そして、『身体が破壊し生命が尽きたあと、私が受けた一切の感受は、

　　　その時、歓喜されず、冷たくなるだろう』と了知する。

　　　それゆえに、そのように体得した比丘は、この最上の『智慧というよりどころ』を身に付けた者となる。

　　　というのは、比丘よ、最上の聖なる智慧とは、すなわち、一切の苦を滅尽する智慧だからである。

　　　彼のこの解脱は、真実の上に立脚し、不動である。

　　　というのは、比丘よ、虚妄なるものは虚偽であり、虚妄ならざるものニルヴァーナは、真実だからである。

　　　それゆえに、そのように体得した比丘は、この最上の『真実というよりどころ』を身に付けた者となる。

　　　というのは、比丘よ、最上の聖なる真実とは、すなわち、虚妄ならざるものニルヴァーナだからである。

　　　ところで、彼は、かつて愚かだったころ、諸々の生存の素因を得て、それらをしっかり持っていた。

　　　しかし今では、それらを捨断し、あたかも根を切られ幹を失ったターラ樹のように、

　　　存在しないもの、未来に生じないものとしてしまった。

　　　それゆえに、そのように体得した比丘は、この最上の『捨断というよりどころ』を身に付けた者となる。

　　　というのは、比丘よ、最上の聖なる捨断とは、すなわち、あらゆる生存の依り処を捨断することだからである。

　　　また、彼は、かつて愚かだったころ、貪り（貪）を持っていた。それは激しく求める欲望である。

　　　しかし今では、それらを捨断し、あたかも根を切られ幹を失ったターラ樹のように、

　　　存在しないもの、未来に生じないものとしてしまった。

　　　そして、彼は、かつて愚かだったころ、怒り（瞋）を抱いていた。それは人を害する心や悪意を持つことである。

　　　しかし今では、それらを捨断し、あたかも根を切られ幹を失ったターラ樹のように、

　　　存在しないもの、未来に生じないものとしてしまった。

　　　そして、彼は、かつて愚かだったころ、無知（癡）であった。それは物事の道理が解らず間違いを犯すことである。

　　　しかし今では、それらを捨断し、あたかも根を切られ幹を失ったターラ樹のように、

　　　存在しないもの、未来に生じないものとしてしまった。

　　　それゆえに、そのように体得した比丘は、この最上の『寂静というよりどころ』を身に付けた者となる。

　　　というのは、比丘よ、最上の聖なる寂静とは、すなわち、貪り・怒り・愚かさが寂静となることだからである。

　　　以上のことから、『人は、智慧を怠惰にするべきでない。真理を護持すべきである。捨断を修習すべきである。

　　　まさに寂静を修学すべきである』と言ったのである。

　　　さて、『その［四つのよりどころ］に安住すれば、妄想が起こらない。

　　　妄想が起こらないとき、聖者は寂静と言われる』と言ったが、これはどういうことか。

　　　比丘よ、『私はいる』というのは妄想である。

　　『これが私である』というのも妄想である。

　　　また、未来に『私はいるだろう』というのも妄想である。

　　『私はいないだろう』というのも妄想である。

　　『私は物質的な形態を持つもの（有色者）となるだろう』というのも妄想である。

　　『私は物質的な形態を持たないもの（無色者）となるだろう』というのも妄想である。

　　『私は想あるもの（有想者）となるだろう』というのも妄想である。

　　『私は想のないもの（無想者）となるだろう』というのも妄想である。

　　『私は想があるのでも想がないのでもないもの（非想非非想者）となるだろう』というのも妄想である。

　　　比丘よ、妄想は病魔であり、妄想は腫物であり、妄想は矢である。

　　　そこで比丘よ、まさに一切の妄想を超越したことから、聖者は寂静であると言われる。

　　　しかも比丘よ、寂静なる聖者は、再び生まれず、老いず、動揺せず、［生を］熱望しない。

　　　彼には生まれるべき原因となるものが無いのである。

　　　生まれないものが、どうして老いることが出来よう。

　　　老いないものが、どうして死ぬことが出来よう。

　　　死なないものが、どうして動揺するだろうか。

　　　動揺しないものが、何を熱望するだろうか。

　　　以上のことについて、『四つのよりどころに安住すれば、妄想は起こらない。

　　　妄想が起こらないとき、聖者は寂静と言われる』と言ったのである。

　　　比丘よ、わたしが簡略に説いた、この六つの元素などの解説を、あなたは記憶するがよい。

完全に知らないことによって妄想する　　Mūlapariyāyasutta　 The Root of All Things MN1 根本法門経

凡夫・有学・阿羅漢・如来の、それぞれの違いについて説明しています。

　　比丘たちよ、ここに凡夫にして、聖者の法を聞く機会を持たず、

　　諸々の聖者を見ず、聖者の法を熟知せず、聖者の法に導かれることが無く、

　　諸々の善人を見ず、善人の法を熟知せず、善人の法に導かれることが無い者がいる。

　　彼は、地を地と思い、地を地と思って地を考え、地において考え、

　　地から考え、〈　私の地である　〉と考え、地を歓〈よろこ〉ぶ。

　　それは何故か？　彼には知悉されていないからである、と私は言う。

　　彼は、水を水と思い…火を火と思い…風を風と思い…

── と、様々な要素を羅列して、それらを歓ぶのは、知悉されていないからである、と結論付けています。

完全な理解pariññaとは何か？　　　Mahādukkhakkhandhasutta Mass of Suffering MN13 大苦蘊経

pariññaṃ完全な理解　知悉（ことごとく知る）とは何か？

「知悉する」とは、具体的には、「楽味と危難と出離を知る」こと。

そこでさらに、〈楽味〉と〈危難〉と〈出離〉を詳しく調べてゆくのです。

これらは四正諦の「別な表現」です。

ある日比丘が、異教の遊行者から、質問をされます。

　　友らよ、ゴータマ沙門は「もろもろの欲の知悉」を主張していますが、

　　われわれもまた「もろもろの欲の知悉」を主張しています。

── つまり、釈尊も異教の遊行者も、同じ「知悉する」と言っているが、何処が違うのか？…というのです。

それに対して釈尊は、

　　比丘たちよ、そのように語る異教の遊行者たちには、このように言うべきです。

　　「友らよ、いったい、もろもろの欲の、楽味は何でしょうか、危難は何でしょうか、出離は何でしょうか。

　　もろもろの色の、楽味は何でしょうか、危難は何でしょうか、出離は何でしょうか。

　　もろもろの感受の楽味は何でしょうか、危難は何でしょうか、出離は何でしょうか。」と。

　　比丘たちよ、このように問われて、異教徒の遊行者たちは答えることができず、それ以上に困惑してしまうはずです。

　　それはなぜか。

　　比丘たちよ、かれらの埒外（らちがい）にあるからです。

　　比丘たちよ、如来から、あるいは如来の弟子から、あるいはここから聞く以外、

　　これらの問いに、答えて心を喜ばせることができる者を、

　　私は、神々を含む、魔を含む、梵天を含む世界において、

　　沙門・バラモンを含む、天・人を含む衆において見ることがありません。

── つまり、「知悉する」とは、具体的には、「楽味と危難と出離を知る」ことだったのです。

そこでさらに、〈楽味〉と〈危難〉と〈出離〉を詳しく調べてゆくのです。

　※ 〈楽味・危難・出離〉が、実は、四正諦の「別な表現」なのだと解れば、

　　　貴方の理解度は、かなり高いと言えるでしょう。

見ることによって絶たれる煩悩と預流果　　Sabbāsavasutta All the Defilements　MN2　　一切煩悩経

「八正道」の「正見解」と「正思惟」によって、「預流果」を得ることができる

〈　これは苦である　〉と正しく思惟する。

〈　これは苦の生起である　〉と正しく思惟する。

〈　これは苦の滅尽である　〉と正しく思惟する。

〈　これは苦の滅尽に至る道である　〉と正しく思惟する。

このように正しく見て、思惟すると、三つの結縛である有身謬見、疑心、戒禁取、が断たれる。

「楽味・危難・出離・生起と消滅を見る」

それでは比丘たちよ、何が、見ることによって断たれるべき諸々の煩悩と言えるのか？

　　ここに比丘たちよ、凡夫にして、聖者の法を聞く機会を持たず、

　　諸々の聖者を見ず、聖者の法を熟知せず、聖者の法に導かれることが無く、

　　諸々の善人を見ず、善人の法を熟知せず、善人の方に導かれることが無く、

　　思惟すべき諸々の法を知らず、思惟すべきでない諸々の法を知らない者がいる。

　　彼は、思惟すべき諸々の法を知らず、思惟すべきでない諸々の法をも知らず、

　　思惟すべきでない諸々の法を思惟し、思惟すべき諸々の法を思惟することが無い。

　　では比丘たちよ、何が思惟すべきでない諸々の法であり、彼の思惟するもの ── なのか？

　　比丘たちよ、諸々の法を思惟する彼に、

　　未だ生じていない欲の煩悩が生じるか、すでに生じいる欲の煩悩が増大する、あるいは、

　　未だ生じていない無明の煩悩が生じるか、すでに生じいる無明の煩悩が増大する、

　　── これらが、思惟すべきでない諸々の法であり、彼の思惟するものなのだ。

　　ではまた比丘たちよ、何が思惟すべき諸々の法であり、彼の思惟しないもの ── なのか？

　　比丘たちよ、諸々の法を思惟する彼に、

　　未だ生じていない欲の煩悩が生じないか、すでに生じいる欲の煩悩が断たれる、あるいは、

　　未だ生じていない無明の煩悩が生じないか、すでに生じいる無明の煩悩が断たれる、

　　── これらが、思惟すべき諸々の法であり、彼の思惟しないものなのだ。

　　彼には、思惟すべきでない諸々の法を思惟することから、

　　思惟すべき諸々の法を思惟しないことから、

　　未だ生じていない煩悩が生じるか、すでに生じいる煩悩が増大する。

ここまでは、最初に説明した「四正断」と関係のある話になっています。

そして、してはいけない事をして、すべき事をしない …… これが凡夫だと言うのです。

しかも、「何をする」と煩悩が増大し、「何をしなければ」それを断つことが出来るのかを知らない。

つまり、「聖者(釈尊)」の法や、「善人(釈尊の法を教えてくれる人)」の法を知らないのです。

── すると、次のようなことになるのです。

　　彼は、次のような邪な思惟をする。

　　〈　私は、過去に現われたのだろうか、それとも現れなかったのだろうか？

　　　　過去に何になったのだろうか、過去にどのようになったのだろうか？

　　　　私は過去に何になり、その後に何になったのだろうか？

　　　　私は、未来に現われるのだろうか、それとも現れないのだろうか？

　　　　未来に何になるのだろうか、未来にどのようになるのだろうか？

　　　　私は未来に何になり、その後に何になるのだろうか？　〉── と。

　　あるいはまた、

　　〈　今、現在に、私は存在しているのだろうか、存在していないのだろうか？

　　　　何であるのだろうか、どのようであるのだろうか？

　　　　この生ける者は、何処から来ているのだろうか、そして何処へ行く者になるのだろうか？　〉

　　── と、心の内に疑心を抱くのだ。

　　このように邪に思惟する彼には、次の六つの見のうちのいずれかの見解が生じる。

　　すなわち、〈　私には我がある　〉との見が、彼に実際に強固に生じる。

　　あるいは、〈　私には我がない　〉との見が、彼に実際に強固に生じる。

　　あるいは、〈　我によってのみ我を思う　〉との見が、彼に実際に強固に生じる。

　　あるいは、〈　我によってのみ無我を思う　〉との見が、彼に実際に強固に生じる。

　　あるいは、〈　無我によってのみ我を思う　〉との見が、彼に実際に強固に生じる。

　　あるいは、〈　私のこの我は、語るもの、感受するものであり、

　　　　　　　　　それぞれの処で諸々の善悪業の果報を受けている。

　　　　　　　　　その私の我は、常住のもの、堅固なもの、常時のも、

　　　　　　　　　不変の性質のものとなり、永久にそのまま留まるだろう。〉

　　── と、このような見が、彼に生じる。

　　比丘たちよ、これは見に趣くもの、見の密林、見の難路、見の突き刺し、見の足掻き、見の縛りと言われる。

　　比丘たちよ、見に縛られ捉えられた、聖者の法を聞く機会を持たない凡夫は、

　　生まれからも、老死からも、諸々の愁いからも、諸々の悲しみからも、

　　諸々の苦からも、諸々の憂いからも、諸々の悩みからも解放されることが無い、── と私は説く。

── これに続いて、今度は、今までとは逆の人〈聖なる弟子〉についての説明が始まります。

要は、凡夫の「逆パターン」を考えればいいわけです。

　　また、比丘たちよ、聖なる弟子にして、聖者の法を聞く機会を得て、

　　諸々の聖者を見て、聖者の法を熟知し、聖者の法によく導かれ、

　　諸々の善人を見て、善人の法を熟知し、善人の方によく導かれ、

　　思惟すべき諸々の法を知り、思惟すべきでない諸々の法を知る者がいる。

　　彼は、思惟すべき諸々の法を知り、思惟すべきでない諸々の法をも知り、

　　思惟すべきでない諸々の法を思惟せず、思惟すべき諸々の法を思惟する。

　　では比丘たちよ、何が思惟すべきでない諸々の法であり、彼の思惟しないもの ── なのか？

　　比丘たちよ、諸々の法を思惟する彼に、

　　未だ生じていない欲の煩悩が生じるか、すでに生じいる欲の煩悩が増大する、あるいは、

　　未だ生じていない無明の煩悩が生じるか、すでに生じいる無明の煩悩が増大する、

　　── これらが、思惟すべきでない諸々の法であり、彼の思惟しないものなのだ。

　　ではまた比丘たちよ、何が思惟すべき諸々の法であり、彼の思惟するもの ── なのか？

　　比丘たちよ、諸々の法を思惟する彼に、

　　未だ生じていない欲の煩悩が生じないか、すでに生じいる欲の煩悩が断たれる、あるいは、

　　未だ生じていない無明の煩悩が生じないか、すでに生じいる無明の煩悩が断たれる、

　　── これらが、思惟すべき諸々の法であり、彼の思惟するものなのだ。

　　彼には、思惟すべきでない諸々の法を思惟しないことから、

　　思惟すべき諸々の法を思惟することから、

　　未だ生じていない諸々の煩悩が生じることは無く、すでに生じている諸々の煩悩が断たれる。

そして、ここからが大切なポイントとなります。

　　そして彼は、〈　これは苦である　〉と正しく思惟する。

　　　　　　　　〈　これは苦の生起である　〉と正しく思惟する。

　　　　　　　　〈　これは苦の滅尽である　〉と正しく思惟する。

　　　　　　　　〈　これは苦の滅尽に至る道である　〉と正しく思惟する。

「楽味・危難・出離・生起と消滅を見る」

　　このように正しく思惟する彼に、三つの結縛、すなわち、有身謬見、疑心、戒禁取、が断たれる。

　　比丘たちよ、これらが、「見ることによって断たれる諸々の煩悩」と言われるのだ。

── つまり、「八正道」の「正見解」と「正思惟」によって、「預流果」を得ることができるのです。

「三結〈有身謬見・禁戒取・疑〉」は、見道と呼ばれ、

正しい見方を身に着けることによって断じることが出来るのです。

── この「三結」の中の、一番の「ポイント」は、「疑惑」です。

　　彼は、次のような邪な思惟をする。

　　〈　私は、過去に現われたのだろうか、それとも現れなかったのだろうか？

　　　　過去に何になったのだろうか、過去にどのようになったのだろうか？

　　　　私は過去に何になり、その後に何になったのだろうか？

　　　　私は、未来に現われるのだろうか、それとも現れないのだろうか？

　　　　未来に何になるのだろうか、未来にどのようになるのだろうか？

　　　　私は未来に何になり、その後に何になるのだろうか？　〉── と。

　　あるいはまた、

　　〈　今、現在に、私は存在しているのだろうか、存在していないのだろうか？

　　　　何であるのだろうか、どのようであるのだろうか？

　　　　この生ける者は、何処から来ているのだろうか、そして何処へ行く者になるのだろうか？　〉

　　── と、心の内に疑心を抱くのだ。

つまり、「私」というものの「過去・未来・現在」に囚われ、それをあれこれ考える。

── これこそが「疑念」です。

そこから、「我」についての「六種類」の憶測・分別 … 要するに「四句分別」が生まれてしまうのです。

だからこそ釈尊は、「無我〈そのような考えに囚われるな！！〉」を弟子たちに説いたのです。

★また、最後の「７．修習すること…によって断たれるべき煩悩」での「修習」とは、「七覚支の修行」を指します。

この修行法は、「四禅定」のプロセスを、一つ一つ確認してゆくものです。

①念覚支　 …　四念処の修行です。　　　　　主に、貪りと怒りにアプローチして滅します。

②択法覚支　…　善法と悪法を選別することです。　　　念覚支と精進覚支に連動します。

善法　　解脱、涅槃の役に立つ、有益な教え。

悪法　　解脱、涅槃の役に立たず、有害な教え。　　　　※社会通念の善悪とは関係ありません。

③精進覚支　… 択法覚支と連動します。つまり、善法を増大させ、悪法を減少させる努力のこと。

④喜覚支　…　①～③までの努力を続けていくと、やがて、苦受が不苦受に変化します（心の苦の滅）。

するとその人は、煩悩にのた打ち回る人から、のたうち回らない人へと変化します。

その時のサインが「喜」「軽安」（＋楽）です。

「喜」とは、心の苦しみから解放された喜びです。

⑤軽安覚支　…　ストレスから解放された心が、体に軽快さをもたらします。

そして、ここまでが初禅の入り口です。

⑥定覚支　…　四禅定の実践です。三受にアプローチして、貪り・怒り・無知を滅するのです。

貪りから生じる楽受を捨てることで不楽受（新しい楽の現出）に至る。

最後に、不苦不楽の境地に至る。　（これは、不一不二、無分別と同じ境地です）

⑦捨覚支　…　第四禅で到達した、不苦不楽をも捨てて、解脱するのです。

釈尊の「修行法」について

釈尊の教えは、「四諦八正道」だけで、その全てを語り尽くすことが出来る ── と言われています。

この「四諦」と「八正道」の関係は、面白く、お互いがお互いを「包摂(包み込む・内包する)」しています。

つまり、「四聖諦」の最後に「八正道」が置かれ、「八正道」の最初に「四聖諦」が置かれています。

四聖諦　…　

１．苦聖諦(四苦八苦)　　

２．苦集聖諦(十二縁起の順観、楽味・味著)　　

３．苦滅聖諦(出離)　　

４．苦滅道聖諦(十二縁起の逆観、危難・過患→八正道)

八正道

１．正見解(四諦)　　

２．正思惟(有尋有伺定)　　

３．正語　　

４．正行為　　

５．正生活　　

６．正精進(四正断)　　

７．正念(四念処)　　

８．正定(四禅定)

釈尊が弟子たちに教えた「修行法」は、三七菩提分法 ── または、七科三七道品と呼ばれています。

１．八正道　…　正見解・正思惟・正語・正行為・正生活・正精進・正念・正定。

２．四正断　…　律儀断・断断・随護断・修断｡

３．四念処　…　身念処・受念処・心念処・法念処。

４．五　根　…　信根・精進根・念根・定根・慧根。

５．五　力　…　信力・精進力・念力・定力・慧力。

６．七覚支　…　念覚支・択法覚支・精進覚支・喜覚支・軽安覚支・定覚支・捨覚支。

７．四神足　…　欲如意足・精進如意足・心如意足・観如意足。

「四神足」)は「四聖諦」の応用形 ( 逆バージョンとしての ) 。

これらの「修行法(七科三十七道品、但し四神足を除く)」の、相互関係

修行のメインとなる「八正道」の、理論的なバックボーン(論拠)は、「十二縁起の逆観」です。

１．無明 ( 四聖諦を知らないこと ) 　→　　正見解 (四聖諦を知ること )

２．行 (身・口・意の三行)　　　　　→　　正思惟　(正しい意の行い、有尋有伺定へと向かう)

　　　　　　　　　　　　　　　　　 →　　正語　　(正しい言葉の行い)

　　　　　　　　　　　　　　　　　 →　　正行為 (正しい身の行い)

　　　　　　　　　　　　　　　　　　 →　　正生活 (三行を正した生活 )

３．識 (六識)　　　　　　　　　　　　　　　　感官の防護

４．名色 (受・想・意思・触と四大 )　　→　　正精進と正念、つまり「四念処」の修行。

５．六処 ( 六つの感覚器官 )　　　　　　　　　有尋有伺定・無尋有伺定・無尋無伺定の修習。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　聖者における最高の感官の修習。

６．触 ( 六処+六境+六識の和合 )　　　　　　　( 五蓋の滅 → 苦受が不苦受に転変 → 喜、軽安 )

７．受 ( 三受→苦受・楽受・不苦不楽受 )　→　正定、つまり「四禅定」の修行。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三受からの離脱＝三毒(煩悩)の滅。

８．渇愛(苦の直接因、輪廻の作り手) 　　　　　　渇愛の滅尽。

９．取著(執着)

１０．有(欲界・色界・無色界へのルートが出来る)

１１．生(再生)

１２．老死(再生による苦)

── 上記は、「十二縁起」と「八正道」の関係を図式化したものです。

そしてさらに、「八正道」と他の修行法との関係についても、解りやすく「図式化」してみましょう。

１．正見解　　　　　　　　　　　　　　　不厭逆想への厭逆想、その善法・悪法の把握。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　厭逆想への不厭逆想、その善法、悪法の把握。　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　…　対消滅に至る。　→　出離。

２．正思惟　　…　　慧の修行。　　　　　楽味・危難・出離と、その生滅を知る修行。

３．正　語　　　　　　　　　　　　　　　口行を正す。

４．正行為　　　　　　　　　　　　　　　身行を正す。

５．正生活　　…　　戒の修行。　　　感官の防護。

６．正精進　　　　　　　　　　　　　　　四正断。(択法覚支をメインとする　→道智・非道智・行道智)

７．正　念　　　　　　　　　　　　　　　四念処。　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　五根。(有尋有伺定　→　厭逆想の育成と確定)

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　五力。(無尋有伺定　→　念の現前・トリガーを作る)

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無尋無伺定は、休息のため(掉挙を静める)

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　七覚支。　…　四念処から四禅定への確認プロセスを示す。

８．正　定　　…　　定の修行。　　　　　四禅定。　…　三受に潜在する「三毒」を滅する。

※　そして、この後で、「四聖諦」の「応用編」となる「四神足」の修行に進む。　→　三明六通。

五蓋を滅する正念satiの修行の仕方　　Satipaṭṭhānasutta Mindfulness Meditation　MN10　　念処経

「四念処」とは何か？

１．八正道の七番目「正念」の修行であること。

２．経典においては、次のように説明(定型)されている。

　　比丘たちよ、ここに比丘は、

　　身において身を観続け、熱心に、

　　正知を備え、念を備えて、世界における欲貪と憂いを除いて住む。

　　諸々の受において受を観続け、熱心に、

　　正知を備え、念を備えて、世界における欲貪と憂いを除いて住む。

　　心において心を観続け、熱心に、

　　正知を備え、念を備えて、世界における欲貪と憂いを除いて住む。

　　諸々の法において法を観続け、熱心に、

　　正知を備え、念を備えて、世界における欲貪と憂いを除いて住む。　

この定型文(決まり文句)では、いったい何が説かれているのでしょうか？

身・受・心・法、の各処において、

「観」の修行を実践することによって、

「正知」と「念」の、二つを備え(身に付け)るようになり、

その結果、「欲貪」と「憂い〈心の苦しみ〉」を取り除いた「安楽(現世法楽)」に住することが出来る。

　　　また、比丘たちよ、「憂い」とは何か？

　　　比丘たちよ、心の苦しみ、心の不快、

意に触れて生じる苦しい不快の感受がある。　　　

　　　比丘たちよ、これが「憂い」と言われるのだ。

　　　(長部経典22経「大念処経」)

そして、この「欲貪と憂い」を、別の角度から表現すると「五蓋」になります。

欲貪＋憂い ( 心の苦しみ＝怒り・疑い・沈鬱と眠気・浮つきと後悔 )

つまり、「四念処」の修行の主たる目的は、「五蓋を滅する」ことです。

── では、五蓋を滅すると、どのような果報を得ることが出来るのでしょうか？

１．現世において、煩悩に振り回されて「のたうち回る」ことが無くなる。(　中部14経「小苦蘊経」)

２．五蓋の滅(捨断)によって、四禅定の「第一禅」に至ることができる。　(中部43経「大有明経」)

四禅定の「第一禅」の条件として説かれている、五禅支の具わり〈尋・伺・喜・楽・一境性〉の中の「喜」は、単なる「喜び」ではありません。

　　　友よ、ここに比丘は、

　　　諸々の欲を確かに離れ、諸々の不善の法を離れ、

　　　大まかな考察のある、細かな考察のある、

　　　遠離から生じた喜びと楽のある、第一の禅に達して住みます。

　　　友よ、これが第一の禅と言われるのです。

　　　(中部経典43経「大有明経」)

〈諸々の欲〉とは、五蓋の中心となる「五妙欲〈五感によって生じる貪り)」を表わし、

〈諸々の不善の法〉が、残りの「怒り・疑い・沈鬱と眠気・浮つきと後悔」を表わしています。

そして、五蓋を離れた(捨断した)ことによる「遠離」から、「喜び」と「楽」が生じるのです。

つまりこれは、「苦受」が「不苦受」に転変した結果、得ることの出来る「喜」と「楽」です。

Sāmaññaphalasutta　 DN 2　沙門果経　　英訳　The Fruits of the Ascetic Life

を始めとする多くの経典が、この「喜び」を、「五つの喩え話」を使って表現しています。

１．負債を抱えて苦しんでいた男が、事業に成功し、負債を全て返し終えて、さらに余った利益によって妻を養えるようになる。

２．重い病気で食事もろくに出来ずに体力を失っていた男が、病気から脱して食事を取ることが出来て、体力も身についてきている。

３．牢獄につながれて苦しんでいた男が、牢獄から安全に無事に解かれ、しかも財産は何ら失われていない。

４．奴隷として他に隷属し、自由が無く欲するままに何処にも行けなかった男が、奴隷から解放されて自由となり、独立し、欲するままに何処にも行けるようになる。

５．財宝や財物を持つ男が、食べ物も無い恐ろしい荒野の道を進むが、やがて、無事に荒野を通り抜けて、恐れの無い平穏な村の辺に到着する。

これらの喩え話の後に、経典ではこのような説明が続くのです。

このように、大王よ、比丘は、

　　　まだ捨てられていないこれら五蓋を、

　　　ちょうど負債のように、病気のように、牢獄のように、

　　　奴隷状態のように、荒野の道のように、自己の中に観るのです。

　　　また、大王よ、比丘は、

　　　これら五蓋がすでに捨てられているのを、

　　　ちょうど無債のように、無病のように、出獄のように、

　　　独立のように、平穏の地のように、自己の中で観るのです。

　　　これら五蓋がすでに捨てられているのを自己の中に観る彼には、満足が生じます。

　　　満足する者には喜びが生じます。喜びの心がある者には身体が軽安になります。

　　　軽安な身体は楽を感じ、楽のある者には心の統一を得ることが出来るのです。

　　　(長部経典2経「沙門果経」)

つまり、　五蓋の滅　→　満足　→　喜び　→　軽安　→　楽　→　心の統一( ＝定の確定 )が、

「五蓋の滅」から「定の確定＝四禅定」へと至るプロセスです。

そして、四禅定の「第一禅」において修行者が証知する「喜」の禅支とは、

五蓋を滅することによってのみ体得することが出来る、特別な「喜び」です。

ですから、それを得るための必要条件として「五蓋の滅」があり、

その「五蓋の滅」を主目的とした修行こそが、八正道の「正念」、つまり「四念処」です。

そしてこの「五蓋の滅」は、「寂止の瞑想」によって心の働きを静めて得られる果報ではありません。

何故ならば、そのような「五蓋の停止状態」は、再び日常生活に戻れば、簡単に崩れ去るものだからです。

つまり、それらは、経典で説かれている「五蓋の滅」とは異なるもの（＝誤解〉になるのです。

上座部仏教や大乗仏教は、共に、その教義の基礎の多くを「アビダルマ(論書)」に置いています。

そして両方共に、「止観」という瞑想を説明する場合は、最初に「寂止」を修することで煩悩の働きを静め、

心をクリアー(水が澄んだような状態)にしてから、諸法を如実に観察する「正観」を行うことを説いています。

その結果、上座部仏教では、自然界の「真実相(無常・苦・無我)」を証得して、遠離 ・離貪・解脱・涅槃に至り、

大乗仏教では、「諸法実相(縁起＝空)」を悟ることで、諸々の煩悩を滅することが出来るとされています。

しかし、経典の説明は、その順序が、まったく「逆」です。

まず、最初に「寂止」ではなく、「四念処」という「正観(有尋有伺定・無尋有伺定)」の修行によって、

「五蓋」を滅して「有尋有伺定」の究竟(最高の状態)である「第一禅定」に到達することが説かれています。

そして、その後で、「尋と伺」が静まる(寂止する)ことで、それに依って成立してた「喜びや楽」も消えて、

それとは異なった、心の安定より生じる「喜びと楽」のある「第二禅定」へと移行することが出来るのです。

「第一禅定」では、「(尋と伺に依って生起した)遠離から生じる喜びと楽のある状態」なのに対して、

「第二禅定」では、「(尋と伺の無い)心の安定より生じる喜びと楽のある状態」へと変化するのです。

つまり、「中部10経・念処経」や「長部22経・大念処経」で説かれている「四念処」は、

「有尋有伺定」と「無尋有伺定」という二つの「正観」の修行を、具体的に解き明かした教えです。

では経典の内容を詳細に見てみます。

　１．入出息

　２．行住坐臥

　３．正知

　４．不浄観

　５．四大要素

　６．九段階の死体の推移、その①

　７．九段階の死体の推移、その②

　８．九段階の死体の推移、その③

　９．九段階の死体の推移、その④

　10．九段階の死体の推移、その⑤

　11．九段階の死体の推移、その⑥

　12．九段階の死体の推移、その⑦

　13．九段階の死体の推移、その⑧

　14．九段階の死体の推移、その⑨

　15．感受

　16．心

　17．五蓋

　18．五取蘊

　19．六内外処

　20．七覚支

　21．四聖諦

という順番で、

身念処〈1～14〉、受念処〈15〉、心念処〈16〉、法念処〈17～21〉が説かれています。

最初に、経典において、

〈身において身を観続け〉〈受において受を観続け〉〈心において心を観続け〉〈法において法を観続け〉　

とあるように、身・受・心・法の「四処」を〈観察し続ける〉修行法です。

つまり、これらの修行は、基本的に「正観」の修行であって「寂止」の修行ではありません。

勘違いされやすいのは、〈観続ける〉ことによって、心の働きが静まってくるので、

それを理由・根拠として、「寂止(サマタ瞑想)」の修行と誤解してしまうケースが多いのです。

「寂止」の瞑想の特徴は、「観察(対象を相対化して観る・感じる)」ではなくて、「跳入(そこへ飛び込む・対象と一体化する・ただ在る)」という「特相」があるのです。

例えば、下記の経典で使われている「跳入」です。

　　　ちようどこのように、アーナンダよ、

　　　比丘は村の想を思惟せず、人の想を思惟せず、

　　　森の想によって、かれの心は跳入し、清まり、確立し、確知します。

　　　(中部121経「小空性経」片山一良・訳／パーリ仏典中部・大蔵出版　)

仏典の中で、「大まかな考察」や「細かな考察」と訳される事の多い、「尋」と「伺」は、思考や言葉(語行) と深く関わる語句です。

辞書で調べてみると、

尋 [ vi-takka ] …　思い、思いはかり、思いめぐらし、思いはからい、思案、考想、尋、尋思、思索。　

伺 [ vi-cara ]　…　考察、伺察、細密な考察。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

パーリ仏教辞典」　村上真完・及川真介　／春秋社

漢訳としては、「尋求」や「伺察」がよく使われます。

【尋求】探し求める、追求する。

【伺察】ひそかに観察すること。

例えば、私たちが「考え事」をしている時に、少し注意をすれば、「言葉」を使ってあれこれ一生懸命「独り言」をつぶやいている自分(心の働き)と、その「独り言」を聞いて確認しているもう一人の自分がいることに気付くでしょう。

そして、その「独り言」に時々頷いたり、たまに、批判したりしているのが、が「尋」と「伺」の心の働きです。

経典の説明は、〈1～3〉までが無尋有伺定、〈4～14〉までが有尋有伺定、

そして、〈15～21〉までが再び、無尋有伺定の説明になっています。

ただし、中部28経「大象跡喩経」では〈5.四大要素〉の有尋有伺定の説明がされています。

また、中部62経「大ラーフラ教誡経」では、〈1.入出息〉と他の要素〈五大や四梵住など〉を組み合わせた

複合的な〈出入息の修行法〉が説明されていて、中部118経「出入息経」でも、出入息を中心とした四念処と、

四念処と七覚支の相互関係を詳しく説いた教えが述べられていて、さらに中部119経「念身経」では、身念処を中心とした、四念処　→　四禅定　→　三明六通　に至るまでのプロセスが説明されています。

つまり、これらの経典群に、相応部や増支部で説かれている教えなども加えて、その全て統合すると、

釈尊が弟子たちに教えていた、八正道の七番目の修行としての「四念処」の真の姿が見えてくるのです。

しかし、他の経典も加えて説明をしてしまうと、かなり複雑な内容になってしまうので、

ここでは、この経典で説かれている内容「のみ」の説明に限定して進めることにしますが、

実際には、これ以外にも、幾つかのバリエーションがあるのだということは、心に留めておいてください。

１．入出息、２．行住坐臥、３．正知　の三つは「無尋有伺定」であると説明しましが、

例えば、「行住坐臥」については、小部経典「如是語経」において、次のように語られています。

　　　歩いていても〈行〉立っていても〈住〉、

　　　坐っていても〈坐〉臥していても〈臥〉、

　　　思量することを止め、思量の静止を楽しむならば、

　　　その如是者なる比丘は　最上の正しい覚りに触れる。

　　　(小部経典「如是語」四集　)

思量することを止め、思量の静止を楽しむ〉

これが、「入出息」「行住坐臥」「正知」を実践するポイントです。

ただし、「入出息」の場合は、「身念処」の基本であると共に、修行が進めば、複合的な瞑想が出来る、応用の広い奥深いメソッド(技法)です。

「正知」は、「行住坐臥」をさらに細かく分類して説明しています。

行　→　前に進むにも、後ろに退くにも、行くにも、大衣と鉢・衣を携えるときも、

住　→　真直ぐ前を見るも、あちこち周囲を見るも、身体を曲げるも、身体を伸ばすも、立つにも、食べるも、飲むも、噛むも、味わうも、大便・小便をするも、語るにも、黙するにも

坐　→　坐るにも、眠るにも、

臥　→　眠るにも、目覚めるにも、

この、「正知」については、長部2経「沙門果経」などで説明されている「修行プロセス」の順序からすると、

１．小戒　　２．中戒　　３．大戒　　４．感官の防護　　５．念と正知　　６．満足(知足)

と続いて、７．五蓋の除去　　つまり「四念処」が来るのですが、この説明も、次のようになっています。

　　　彼は、この聖なる戒蘊を備え、この聖なる感官の防護を備え、

　　　この聖なる念と正知を備え、この聖なる満足備え、

　　　森、樹下、山、渓谷、洞窟、墓地、山林、露地、

　　　積んだ藁といった、人里離れた静かな臥坐所に親しみます。

　　　彼は、托鉢から戻り、食事を済ませた後で、

　　　結跏趺坐を組み、身体を真直ぐにして、面前に念を現前させて坐ります。

　　　彼は、世界に対する欲貪を捨て、欲貪の消えた心を持って生活し、欲貪から心を浄めます。

　　　瞋恚を捨て、無害の心を持ち、全ての生き物を益し、同情心を持って生活し、瞋恚から心を浄めます。

　　　沈鬱・眠気を捨て、沈鬱・眠気が消えて、光明想を備え、念と正知を備えて生活し、沈鬱・眠気から心を浄めます。

　　　浮つき・後悔を捨て、浮つき・後悔が消えて、内に平静な心を持って生活し、浮つき・後悔から心を浄めます。

　　　疑いを捨て、疑いを脱し、諸々の善法に対する疑惑を持つことなく生活し、疑いから心を浄めます。

　　　長部経典2経「沙門果経」

ここでは、「五蓋の滅」という観点からの修行法が説明されています。

「広義(総合的)」には、これら全てが「四念処」の修行だとも言えるのですが、「念処経」に沿って言うならば、

　　　彼は、世界に対する欲貪を捨て、欲貪の消えた心を持って生活し、欲貪から心を浄めます

── という「欲貪蓋」へのアプローチが、

その修行の中心〈４．不浄観～ 14．九段階の死体の推移、その⑨　〉となります。

ところｄ、三毒には、次のような関係式が成り立ちます。

　　無知　→　貪り　→　怒り　　

つまり、苦の生・滅に対する「無知」から「貪り」が生じ、その「貪り(欲求)」が、

何かによって阻害されたときに、その欲求を妨げたものに対して「怒り」が生まれる。

ですから、「貪り」を滅すれば、自動的に「怒り」も治まるので、「欲貪(貪欲蓋)」を滅する修行法に集中して、それに専念することは、結果として「怒りの滅」にも結び付きます。

「怒り・害心(瞋恚蓋)」に直接アプローチする瞑想法は、「四梵住(四無量心)」の瞑想になります。

「怒り」に対して「慈しみ」の瞑想、

「害意」に対しては「悲しみ」の瞑想、

「不満」に対しては「喜び」の瞑想、

「貪り」にに対しては「無関心」の瞑想が対応しています。

「沈鬱・眠気(昏沈睡眠蓋)」に対しては「光明想」の瞑想で、「念」と「正知」は、その補助因として働きます。

「浮つき・後悔(掉挙悪作蓋)」には「寂止」の瞑想、

「疑(疑蓋)」には「正思惟(法念処)」の瞑想が対応しています。

「四念処」の修行を実践するには、その「前行(予備行・ベース作り)」として、

１．戒行を守る　　

２．感官の防護に努める　　

３．念と正知(つまり、入出息・行住坐臥・正知という最初の三つの修行)

４．満足(知足・少欲)を心掛ける　　

という、これら四つの前段階の「条件」を満たしておく必要があるのです。

「感官の防護」とは、

　　　ではまた、大王よ、比丘はどのように、諸々の感官を防護しているのでしょうか？

　　　ここに大王よ、比丘は、眼によって色を見る時に、その外相(外形など)を捉えることも無く、

　　　またその細相(動き・働きなど)を捉えることもありません。

　　　この感官の防護をしないで生活するならば、

　　　諸々の悪しき不善の法が、欲貪として憂いとして、流れ込むことになります。

　　　そこで彼は、その制御に努め、目の感官を保護し、眼の感官を防護を達成するのです。

　　　この後、耳と声、鼻と香、舌と味、身と触、意と法についても、同じ説明が続く。

　　　(長部経典2経「沙門果経」)　　　

つまり、「外部(六境)に意識を向けて、細かく観察(分別・分析)しようとしない」と言っています。

下記の経典は、これと同じ意味のことを説明しています。

　　　すがたを見ることは、すがたをさらに吟味して見ることとは異なっている。

　　　ここに両者の異なっていることが説かれる。

　　　昼が夜と異なっているようなものである。

　　　両者が合することは有り得ない。

　　　もしもすがたをさらに吟味して見るのであるならば、単にすがたを見るということは無い。

　　　またもし単にすがたを見る見るのであるならば、すがたをさらに吟味して見るということは無い。

　　　ここの人は、単にすがたを見るだけであって、すがたをさらに吟味して見るということが無い。

　　　しかしすがたをさらに吟味して見る人は、つねにすがたを見ることがない。

　　（無明に）覆われて凡夫は、諸々のつくり出されたものを苦しみであるとは見ないのであるが、

　　　その（無明が）あるが故に、すがたをさらに吟味して見るということが起るのである。

　　　この（無明が）消失したときには、すがたをさらに吟味して見るということも消滅するのである。

　　　（Udānavarga第27章観察　中村元・訳／岩波文庫　）

Udānavarga「Udāna（釈迦が自発的に発した言葉）varga（集まり）」であり、「自説集」

説一切有部によって『ダンマパダ（法句経）』と『ウダーナ（自説経）』をベースに、『相応部』有偈篇、『スッタニパータ』『テーラガーター』の詩句を付け加えて編集されたサンスクリットの経典

ここで注目すべきことは、この「感官の防護」が、

　〈　この感官の防護をしないで生活するならば、

　　　諸々の悪しき不善の法が、欲貪として憂いとして、流れ込むことになります　〉

とあるように、その目的が「四念処」と同じくして「欲貪」と「憂い」の生起・流入を防ぐことにあります。

世界の果てには心の内側の旅で　　Rohitassasutta　SN2.26 ローヒタッサ経 英訳With Rohitassa

ロヒタッサ神はブッダに言った：

「サー、生まれることも、老いることも、死ぬことも、死ぬことも、生まれ変わることもない場所に旅することで、世界の終わりを知り、見たり、到達したりすることは可能ですか？」

むかしむかし、私はボージャ族のロヒタッサと呼ばれる隠者でした。私は超能力を持ったスカイウォーカーでした。私は光の矢と同じくらい速かった. 私の歩幅は、東の海から西の海にまたがるほどでした。

「旅で世界の果てまで行きたい」‘ahaṃ gamanena lokassa antaṃ pāpuṇissāmī’ti.という願いが叶い、そのスピードと歩幅で、百年の一生を旅してきました。食べて飲んでトイレに行って寝るだけでしたが途中で死んでしまい、世界の終わりには到達しませんでした。

世界の終わりはないので、世界の果てにたどり着けることはなく、苦しみからの解放はない。

賢人は世界を理解し、内面の旅をして、世界の果てに行った。

世界の終わりを知った平和な者は、この世も来世も切望しない。」

私は正しいという論理の欠点　　Ājīvakasutta　A Disciple of the Ājīvakas AN3.72　　アージーヴィカ経

光明寺は73にして間違っている

自分が正しいと言うと、論争に巻き込まれてしまうので、戦争が始まってしまう。

他の宗教の間違いを証明しなくてはならないので論争に巻き込まれる。

心の汚れを取り除く実践をしていれば、論争に巻き込まれことはない。

大切なのは「理論と実践と結果」である。

殺すなかれというアブラハム教徒たちは原子爆弾を作り、殺すことを認めるヒンズー教徒の多くは魚や肉を食べ

ない。

自分で判断しているのに経典に責任転嫁をして、人々は生きている。

問題は経典ではなく、本人が何をするか判断をしている。

マッカリ・ゴーサーラが唱えたアージーヴィカ教

運命決定論 (宿命論): 自己の意志による行いはなく、一切はあらかじめ決定されており、定められた期間流転

する定めである。

Sāriputtaの覚り、アッサジとの出会い　Ariyasaccappakāsanapaṭhamabhūmi KN　Khuddakapāṭha　

Ye dhammā hetuppabhavā Tesaṃ hetum tathāgato āha
Tesañca yo nirodho Evamvādī mahāsamano

すべての現象は原因により生じます。如来はその原因を説かれました。
またその原因が滅することも。これが大沙門の教えです。