テスト勉強の仕方 記憶術

テスト勉強では、脳への入力が「学習」で、脳からの出力が「テスト」です。

入力が良くても出力が良くなければ結果は出ません。

そこで、「出力」を基準にして勉強します。結果を考えながら「入力」すると、学習した知識が有効に使えるようになります。

具体的に言うと、テスト作成者の気持ちで学習すると、点数が上がるということです。

教科書を読む時に「こんな問題が作れるな」と思いながら、自分でテストに出す問題を作るように文章を読んでいくと、テストの結果がよくなります。

 

まず、はじめに

学習する時は、未知のものに違和感を覚えますが、回路を自らが閉じてしまってはやる気が出ません。

新しいことを受け入れるためには、自分の中に新しい余地を先に作ってあげることが有効です。そこに未知のものを取り入れるためです。

そのためには、まずはゆったりと息を吐いて、自分の中にスペースを作ります。

 

勉強を始める前に、呼吸をするのが効果的です。

心を落ち着かせ、丹田を意識して、吐く息に注意を払います。

3秒息を吸って、3秒息を止めて、15秒で息をゆっくりと吐き出します。これを3回から5回くりかえします。

ポイントは息を吐くことです。呼吸の呼は吐くという意味です。吸う前に吐くことが大切です。

ゆっくりと温かく柔らかく楽しくです。

そしてその時に脳の中にスペースを作るイメージをして、これから読む本の内容をそこに整理するようにします。

たったこれだけのことで、勉強がはかどるように、ヒトの脳はできているので一度は試してみてください。

 

積極的な受け身

学習とは、未知の世界を自分の中に取り入れていく過程のことです。自分にとっては受け入れがたいものでも、未知の世界にゆっくりと自分を浸していきます。これが積極的な受け身です。

最初は未知のものは自分の中では違和感があるのですが、こちらから相手(未知なるもの)に積極的に周波数を合わせるということです。

この積極性がないと未知なものを拒否してしまうだけで、知らないものを見ないようにして自分の外に押し出してしまい、新たな情報を取り込むことができなくなります。

 

記憶のメカニズム

情報が入力されると、脳の「海馬」が活性化され、感情的に印象の強い体験は記憶に残りやすくなります。

記憶とは本来、自分の意思でどうにかできるものではありません。強い印象のものだけが勝手に記憶に残るようにヒトの脳が出来ています。

気になることならば記憶に残るし、関心のないことは記憶に残りません。

このため、意図的に記憶するためには少しテクニックがいります。

情緒と反復訓練に睡眠です。この三つで「忘れる」短期記憶が「覚えている」長期記憶に変わります。

 

三つの種類の記憶   「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」

「感覚記憶」は感覚器官の反応の残留です。保持時間は0.103秒でこれを過ぎますと二度と再生できません。

「短期記憶」は数分から数日(数ヶ月)の消える記憶

「長期記憶」は数年から生涯に渡る消えない記憶です。

新しく入力した感覚記憶を保持するのが短期記憶(ワーキング・メモリー)で、重要な情報は長期記憶に書き換える必要があります。思考が終了したならば短期記憶は消えてしまいますので。

 

記憶と情緒

楽しかった思い出、怖かった思い出、感動した思い出は忘れることがありません。理由は五感を伴った情緒に響く深い印象の記憶が定着するようにヒトの脳ができているからです。

ですから新しいことを記憶したい場合は、ただ読むだけではなく、情感に関連付けるイメージを持ちながらすることが効果的です。

例えば記憶の内容を映像のイメージにしてみたり、図像やグラフや関係図などの形にしてみたり、口に出して音感も交えてみたりしながら、リアリティの切迫感ある状態で覚えるとこれらは長期記憶に書き換えられます。

私の場合は、なぜこれを記憶しなければならないのか、というもともとの動機を思い出すことが、勉強する強いモチベーションになります。この気持ちがある限りは、どんな勉強も苦ではなく楽しく感じます。

 

記憶と反復

ヒトはすぐに忘れる生き物です。

「エビングハウスの忘却曲線」といって、時間と忘却の相関関係をグラフにしたものがあります。

普通の単純暗記であれば、1時間後には56%、24時間で70%、48時間後には80%も忘れてしまいます

そこで、一度目の記憶に反復を加えると、短期記憶が長期記憶に変換されていくのです。

脳科学的に最も効率的だと言われているのは、学習した翌日に1回目(の復習)。その1週間後に2回目。さらに2週間後に3回目。さらに1カ月後に4回目のような復習スケジュールです。

反復を4回すると記憶が定着します。

といってもテスト勉強でこれだけのことをするのは大変なので、少なくても、翌日に一回、3日後か一週間後にもう一回、そしてテストの前日にまとめたものに目を通せば十分でしょう。

 

歳をとって記憶力が悪くなるのは、脳細胞の衰退ではなく、歳をとると若いころのように【反復復習】をしなくなるだけなのだと断言するライフハッカーのような脳科学者もいます。

 

記憶と睡眠

睡眠が記憶を定着化させます。勉強を長時間行うと様々な情報が入ってくるので、多くのことを記憶出来ると思いがちです。しかし、運動を長時間すると体が疲れるように、脳も長時間活動し続けると疲れてしまいます。勉強効率が下がり、疲れで記憶も明確になりません。しっかりと睡眠を取ることで、勉強効率が上がり情報を取り入れやすくなります。

睡眠は記憶の定着を促してくれるので、長く寝るのが良いのです。

1時間30分周期のレム睡眠の時に記憶が定着しやすくなるので、最も記憶にとって良い最適な睡眠時間というのは6時間睡眠、もしくは7時間30分睡眠だと言われています。

まあ少なくても6時間、できれば8時間は寝るのがオススメです。

 

集中力と疲労、そこで休憩

暗記をしたり論理的な思考を行うのは大脳皮質です。ですが、幾ら難しいことを考えたからといって大脳皮質が疲れるということはありません。我々の脳が疲れるのはそのために集中力を維持しなければならないからであり、この機能は大脳新皮質ではなく、感情や本能を司る「旧皮質」の方にあります。

疲れるのはこちらです。我々動物にとって集中力といいますのは、いざというとき脳にストレスを掛けるためのものです。ですから、そもそも我々の脳は集中力を維持することには向いていないのです。ところが、人間の日常生活では勉強や仕事、車の運転など、長時間に渡ってそれを維持しなければなりません。このため、「精神疲労」というものが発生します。

 

集中力が低下しますと考えが纏まらなくなります。すると、脳は早く楽になろうと適当な答えを出します。何度やっても同じ間違いをするのはこのためです。では、このような場合は集中力という緊張状態から一時的に開放してやれば脳は直ちに回復します。これが「気分転換」ですね。軽い運動をするのも良し、楽しいことを考えたり美味しいものを食べたりして脳に快感や刺激を与えるのはたいへん効果があるそうです。

ところが、この気分転換や休憩を怠って作業を続けますと、当然、脳細胞も生理的な疲労状態に陥ります。神経細胞も他の細胞と同様に酸素、栄養の供給と代謝物の除去を行っています。この代謝能力が追いつかなくなれば、生理疲労となり、気分転換だけでは機能は回復しません。

 

個人的な勉強でしたら自分のペースで行えますが、試験前の追い込みや、会社の仕事だとそうにもゆきません。これが「社会性ストレスの慢性化」です。

苦手な科目をやっているとついつい息切れがしてしまうのに、大好きなマンガを読んでいるときはどうして気分転換が必要ないのでしょうか。それは、脳に快感が与えられているからです。つまり、集中力とは、得られる報酬に影響されます。だから脳が喜ぶように、自分の状況を導いてあげなければなりません。

 

休憩の取り方

まず、ここまでやったら休憩という区切りを付けることです。

何ページまで、あるいはこの問題を解いたら、と「達成報酬」を与えることで、集中力を維持するのが楽になります。そして、できれば自分のペースに合わせて事前に計画を立ててから行うのが理想的です。

 

いろいろな脳を喜ばせる方法

このテストにパスしたら、○○ができる

計画的に作業をすすめるのが快感

テストの内容がほかのことにも結びついて本当に面白い

 

超記憶術

15秒待ってから記憶する方法

読んだ文字をすぐに反復するのではなく、15秒待ってから書くことで効果的に記憶する方法です。

簡単かつ長期記憶させやすいのでオススメ。

 

何かとリンクさせて記憶していく方法

記憶したいデータと何か(場所等)をリンクさせて覚える方法です。

とても簡単かつ集中して記憶することができる方法です。

例えば起きてから家を出るまでの順路に自分の覚えたいことを貼り付けておき、思い出したい時はその順路を歩いて貼っておいた絵を見るというようなやり方です。

 

 

参考文献

記憶の書き込みの仕組み

脳内で記憶情報といいますのは「三次元マトリックスの並列情報」であり、横の繋がりを持つ「細胞集団のネットワーク」として保持されると考えられています。

視覚からこのような図形が入力されたとします。

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この並列入力を受け取った記憶細胞は以下のパターンで同時発火します。

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この細胞はそれぞれに横の繊維で繋がっています。そして、同じパターンの入力が繰り返されますと、同時に興奮状態になる細胞同士の「横の接続」が強化されるわけですが、これを「シナプス接続の長期増強」と言います。これが記憶として保持され、再現されるのは、強化されたネットワークの細胞が同じパターンで同時発火できるようになるということです。

短期記憶の場合はシナプスの長期増強は何れ終焉してしまうわけですが、これが連合野近隣の記憶細胞に移し変えられるときには細胞内に機能タンパク質の合成が促され、ネットワークを形成する細胞集団は長期記憶として物理的に固定されることになります。

このように、並列情報といいますのは細胞集団の発火パターンによって保持されるものであるため、このためには同一対象からの同時入力というのが記憶形成の条件となります。そして、この「同一対象と同時入力」という条件が満たされるならば、そこには、例えば「視覚(物)」と「聴覚(名前)」といった複数の異なるネットワーク間で連絡の強化が行われ、「連想記憶」の形成が可能となります。

 

長期記憶

脳内で記憶機能を持つ組織は他にもありますが、我々が一般に記憶と呼ぶのは主に大脳皮質で扱われる学習記憶のことであり、ここでは大脳皮質に形成される「長期記憶」に就いてご説明致します。

 

長期記憶は大脳皮質の「連合野」というところに作られると考えられています。連合野といいますのは、大脳皮質の中で感覚野や運動野といった特定の機能を持たない領域のことですが、実際には感覚連合野や前運動野といった更に高次の役割領域も含まれます。

記憶といいますのは外部から入力された情報が脳内に記録されるということです。外部からの感覚情報を受け取るのは感覚野であり、この感覚情報の認知処理を行うのが感覚連合野です。そして、感覚入力には視覚、聴覚、体性感覚などの種類ありますので、それぞれに「視覚連合野・聴覚連合野(側頭連合野)」、「体性感覚連合野(頭頂連合野)」といった機能が分かれています。

 

記憶は「大脳辺縁系の海馬」で作られると考えられていますが、ここに保持されるのはほとんどが短期記憶であり、最終的には長期記憶として大脳皮質の連合野に移されます。海馬に短気保持されるのは視覚記憶や聴覚記憶といった感覚記憶ですので、これらはそれぞれがその情報処理に適した各連合野の近隣に移し変えられるものと考えられます。そして、このような各連合野の感覚情報や記憶情報を統合して思考を行うのが「前頭連合野」であり、そのような情報はここを中心とした記憶領域に保持されると考えられます。

まだはっきりとしたことは調べられていませんが、我々の記憶といいますのはコンピューターのHDDのように、何処か一箇所に集約されているといことではないようです。このため、HDDが壊れたら一巻の終わりということはありませんが、何処に何が書き込まれているのかというのは恐らく全く分りません。

 

記憶情報といいますのは神経細胞同士の接続が強化されることによって保持されます。これを「LTP:長期増強」と言います。

LTPは神経細胞同士の信号伝達が何度も繰り返されることによって起こります。幾つかのメカニズムがありますが、取り敢えず、神経伝達物質のやり取りするシナプスにおいて受け取る側の受容体の働きや数が増えることによって細胞同士の信号伝達が一時的に強化されると考えて頂ければ良いと思いますが、これを「シナプス接続の可塑的変化」と言います。そして、この受容体の数や働きが神経細胞内で新たに合成されたタンパク質の作用によって長期に固定された状態が「L―LTP:長期記憶」であり、固定されるに至らなかった「E―LTP:短期記憶」は、ある程度の時間で元に戻ってしまいます。

 

記憶情報が固定される連合野といいますのは、感覚野や運動野とは違い、知覚処理や運動命令を出すための神経配線が決まっているわけではありません。いわば、無数の神経細胞が特定の目的を持たずにただ接続を結び合っているだけの状態と考えられます。では、ここに何らかの信号伝達が繰り返されますならば、それはLTPによって記憶回路となります。

記憶情報といいますのは「並列信号」であり、我々の脳にとって並列信号とは、それは即ち「同時入力」であります。記憶回路を形成する神経細胞の配置そのものは立体構造を持ちますが、この同時入力という条件によってそれは「二次元マトリックスの並列信号」という形態を執ります。これにより、同一の対象から同時入力された二次元配列のパターンが特定の情報に対応することになります。

この二次元パターンの同時入力を受けた神経細胞は、同時に興奮状態となり、お互いの信号のやり取りを一斉に行います。このような「神経細胞同士の横の繋がり」がLTPによって強化されたものが我々の脳内に作られる「記憶回路」です。そして、この記憶回路は同様の並列入力によって一斉興奮が再現されますので、これにより、我々は特定の記憶を思い出すことができます。