アナロジーだけで理解する素粒子物理学

 

重さとは何か?

完全な美しさを追求すると質量が0の矛盾にぶつかった

南部陽一郎 完璧な美しさは崩れる運命にある  自発的対称性の破れ  対称性→非対称性   力→形

鉛筆が倒れるように その結果重さが生まれる

はじめは美しかったものが、その後に勝手に美しさを失う

 

ワインバーグ  空想の素粒子を想定する  

ヒッグス粒子があると仮定すれば、重さがあるといえる

ヒッグス粒子によって電子は行く手を阻まれ動きにくくなる。この抵抗を重さという。

あまりに都合が良すぎる仮説として学界から支持を得ることができなかった。 

美しさがないという理由で。キレイな家のトイレのようだ、ヒッグス粒子はゲージ理論の簡潔を汚す。

 

実証 ジュネーブの研究所 the European Organization for Nuclear Research  2012年 発表

 

「神の数式」を求めて   ヒッグス粒子に至るまで20130930日  

この世にもし創造主がいるとしたなら、一体どんな「設計図」に基いて宇宙を作り上げたのか?

 

この世に起こり得るあらゆる現象を寸分の狂いもなく、しかも「たった一つの数式」で説明することができるなら、それこそが創造主の設計図、つまり「神の数式」といえるのではないか?

そんな野望に取り憑かれた物理学者たち。

 

その一人、ファビオラ・ジアノッティは言う。「すべての物理学者は、いわゆる『万物の理論』を見つけることを夢見ています。自然界のありとあらゆるもの、素粒子の世界から大宇宙までを説明できる数式です」

 

「この世のすべての出来事は『数式で書けるに違いない』と信じて疑わない、ちょっと変わった人たち」

それが物理学者、なかでも素粒子物理学。彼らの頭のなかは、とにかく数式で一杯なのだという。

 

その金字塔ともいえる石碑が、CERN(ヨーロッパ原子核研究機構)の裏庭に立つ。

そこに刻まれた数式こそが、彼らのいう「神の数式」。それに最も近いと考えられる最先端の数式である。

それは、ここ100年にわたる天才たちの苦悩の結晶であった。

 

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■神の数式

その一行目、ここにはこの世を作り上げている物質の最小単位、つまり素粒子がどんな性質をもっているかが表されている(たった一行で!)。

その素粒子は4種から成る。原子の中をクルクル回る「電子」、中心の原子核を作り上げている「クォーク(2種)」、その原子核から時おり飛び出してくる「ニュートリノ」。

 

これら4種の素粒子すべての挙動は、「3つの力」によりほぼ説明される。

電子を原子核に引き寄せている「電磁気力」、2種類のクォークをまとめて原子核を作り上げている「強い核力」、ニュートリノを原子核から飛び出させる力「弱い核力」。

これら3つの力を説明する数式が、それぞれ一行ずつ。計3行。

最後の2行は近年になってようやく発見された「ヒッグス粒子」を説明する数式。

 

「神の数式」と呼ばれるものはなんと、それらたったの6行に集約されている。それが、CERN(ヨーロッパ原子核研究機構)の裏庭に立つ石碑に刻まれた数式である。

 

この数式に従えば、夜空にオーロラが輝く理由や台風の動きから、この世のすべてが説明できるとされている。

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しかし、神はあまりにも完璧すぎた。

 

完璧すぎて、尖った先端を下にした鉛筆すら決して倒れなくなってしまった。人間がどれだけ真っ直ぐ、垂直に立てようとしても必ず倒れてしまうというのに…。

それが、神を求めた物理学者たちの突き当たった壁であった。

 

尖った鉛筆を立てることが出来ないという「当たり前」の現実は、やれば子供にでもすぐに分かる。

その簡単なことが、物理学の天才たちを100年間、悩ませることになる。

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■美しさ

神の数式探しの最初の舞台となったのは、1920年代のケンブリッジ(イギリス)。

 

そこに暮らしていた若き天才物理学者「ポール・ディラック」。彼は30歳の若さで、ケンブリッジ大学で最も権威あるルーカス教授職に就くことになる大天才(この職に就いた人物は、あのニュートンや車椅子の天才ホーキング博士など)。

 

当時、ディラックが興味を抱いたのは、4種類の素粒子のうちで唯一発見されていた「電子」。すでにシュレディンガー方程式というものがその性質を説明していたが、ディラックはそれに不満であった。

なぜなら、その数式は「美しくなかった」。

 

彼の座右の銘はこうだ。「Physical law should have mathematical beauty(物理法則は数学的に美しくなければならない)」

 

美しさ?

それほど曖昧な概念もない。蓼食う虫も好き好き。何を美しいと感じるかは、人の勝手ではないのか?

いや違う。物理学という学問における「美しさ」はハッキリと定義されている。それは「対称性(symmetry)」をもつか否か。

 

たとえば、回転させても変化しない数式を「回転対称性がある」といい、物理学者はそれを美しいと感じる。

また、彼らは「シマ模様」も大好きだ。なぜなら、座標軸を平行にずらしてもその数式は変化しない。その美しさは「並進対称性がある」と呼ばれる。

 

「見る人の視点を変えても、数式が変わらないこと」

それが物理学者の愛する、対称性という美しさ。

 

「対称性とは、見る人の視点が変わっても元々の性質や形が変わらないということです。正方形は視点を90°回転してもまったく同じに見えますよね。物理の数式も、見ている人の視点が変わったとしても変化しないのです(スティーブン・ワインバーグ)」

 

つねに変わらない。何ものにも左右されない。それこそが「神の視点」であった。

 

 

■ディラック方程式

ではなぜ、ディラックは電子を説明した「シュレディンガー方程式」を美しくないと判断したのか?

それはその式に、時間を表す「t」が1つしかないのに、空間を表す「x」は2つあったからである。つまり、時間と空間が釣り合っていなかった。

 

アインシュタインの相対性理論によれば、時間と空間は本質的には同じものである(時間 = 空間)。それは「ローレンツ対称性」と呼ばれる美しさであるが、シュレディンガー方程式にはそれがなかった。

 

「見る立場が変わると変化してしまう数式は、神の数式として相応しくない」

 

ディラックの目指したのは「すべての対称性をもった美しい数式」。回転させても、平行にずらしても、時間と空間を変えても決して形を変えない数式であった。

 

神の数式を求め3ヶ月間、書斎にこもりっきりになったディラック。

外部との接触は一切断ち切り、何度もパニックに陥りながら、ついに1928年、論文『電子の量子論』を書き上げる。

 

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それを読んだ物理学者ミチオ・カクは言う。「ディラック方程式を初めて見たとき、私は涙がこぼれました。じつに美しいのです。多くの物理学者はディラック方程式を見ると涙を流します。電子の複雑で奇妙な性質が、対称性のおかげで一つの数式にヒューッとまとまっているのですから」

 

かつてシュレディンガー方程式では、なぜ電子は地球のように自転し、さらに磁石のように両極があるのかを説明しきれていなかった。それが、この式の美しさを欠いていた点だった。

 

それに対して、美しさにとことんこだわったディラック方程式は、それら電子の謎めいた性質をすべて正確に説明していた。

 

さらに、その美しさは驚くほど完璧で、この数式はその後に見つかる素粒子(クォーク2種とニュートリノ)までをも先どって説明していた。

 

ゆえに、CERN(ヨーロッパ原子核研究機構)の裏庭の石碑には、今もこの数式が第一行目に記されているのである。

ここに初めて、神の数式にふさわしい完璧な美の世界が姿を現しはじめた。

 

 

■無限大(infinite

さて、次なる課題は素粒子を結び付けたり動かしたりする「3つの力」を説明する数式。

そのうちの一つ、電子を原子核に引き寄せる力「電磁気力」。その解明への扉はロバート・オッペンハイマーによって開かれた。

 

「オッペンハイマーは本物の天才でした(シルバン・シュウェーバー)」

 

オッペンハイマーもまた「美しさ」、つまり対称性を数式に取り込むことを目指した。そして目を付けたのが「ゲージ対称性」。回転対称性と似た、より難解な対称性である。

 

そして編み出されたオッペンハイマーの数式には、回転対称性・並進対称性・ローレン対称性というディラック方程式が満たしていた美しさに加え、さらにゲージ対称性という新たな美しさをも併せ持った完璧なものだった(論文『場と物質の相互作用の理論について(1930)』)。

 

ところがどっこい。

「いろいろな計算を行ってみると、無限大(infinite)というまったく意味がわからない数値が出てきたのです(ピエール・ラモン)」

 

オッペンハイマーがその数式で示した世界は、電子の放つ光子という光の粒が電子と原子核を結びつけており、電磁気力を伝えるのもまたそうした粒のような存在だという、じつに興味深いものだった。

 

しかし、実際に数式を使って計算してみると、電子のエネルギーは無限大(infinite)という数値になってしまう。それは「あらゆる物質が存在してはならない」という奇っ怪なことを意味していた。

 

なぜ、無限大という意味不明の数値ばかりが出てくるのか?

数式が間違っているのか?

オッペンハイマーは血眼になって、その原因究明を仲間の物理学者たちとともに躍起になった。しかし、計算を何度やり直しても、無限大という答えから逃れる術はないように思われた。

そんな時、ドイツがポーランドに侵攻(19399月)。

第二次世界大戦がはじまった。

オッペンハイマーの歯車も、大きく狂いだす。

 

■原爆の父

アメリカ人であるオッペンハイマーは、ほかの多くの物理学者たちと同様、「原爆」の開発へと駆り出されることになる。

1942年、フェルミンがウランの核分裂連鎖反応に成功。

アメリカが誇る天才・オッペンハイマーは、原爆開発であるマンハッタン計画の責任者に任命され、ニューメキシコ州のロスアラモスでその頭脳をフル回転させることになる。

もはや、神の数式などそっちのけ。

彼はひたらすに原爆の開発に打ち込み、ついには広島・長崎という大成果を得て、ジャーナリストたちから「原爆の父」という称号を授かる。

以後、彼が電磁気力の研究の第一線に戻ることはなかった…。

 

なぜ、純粋な学問の世界で生きることができなかったのか?

何十万人もの命を奪った原爆に、戦後、オッペンハイマーは自戒の念に苦しめられた。

そんな時、自分が開発した原爆の被害国から、思わぬ知らせを受ける。

 

 

■深淵からの声

差出人は朝永振一郎(ともなが・しんいちろう)。オッペンハイマーは名前も知らぬ日本の物理学者。

だが、1948年に届いた手紙の内容は驚くべきものだった。朝永は戦争中、「無限大の問題を解決する方法を見つけていた」というのである。

 

「オッペンハイマーは手紙を受け取るとすぐに、日本で行われていた研究の重要さを認識しました。そして、朝永へ返事を書き、彼の研究を世界に知らしめるため、権威ある物理界誌に論文を書くように勧めたのです(シルバン・シェウェーバー)」

 

そうして朝永はオッペンハイマーの手助けを得て、世界で最も権威あるフィジカル・レビュー誌に論文を掲載されるに至る(論文『量子場理論での無限大の反作用について(1948)』)。

 

そこに記された特殊な計算方法に、世界は度肝を抜かれた。無限大の困難が見事打ち破られていた。

その数式の計算結果の精度たるや驚くべきもので、実験事実と小数点以下10ケタまでピタリと一致していた。

 

アメリカの物理学者フリーマン・ダイソンは、こう記す。

「戦争と廃墟と混乱のさなかにある日本で、国際的に完全に孤立状態にありながら、朝永はどうにかして理論物理の研究集団を維持し、ある意味では世界のどこよりも進んだ研究を行っていた。われわれには『深淵からの声』のように響いた(著書 "Disturbing the Universe")」

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以後、戦後の自由な空気の中、無限大の問題は一気に解決することになる。

 

有限(finite)を示した数式。

それが石碑の2行目に記されている。

 

 

■ゼロ

解明された電磁気力。

残るは2つの力、「強い核力」と「弱い核力」。

「強い核力」は原子核をつくるクォーク同士を結びつけている力。「弱い核力」はニュートリノを原子核から飛び出させる力。

 

1950年代、中国出身の風雲児「楊振寧(ヤン・チェンニン)」は、やはり「美しさ」を武器に、さらなる対称性を追求した。

そして辿り着いたのが「非可換ゲージ対称性」。物理学者にとっても超難解な美しさであった。

楊(ヤン)は同僚のミルスとともに1954年、研究論文『荷電スピンの保存とゲージ不変性』を発表し、その偉業を世界に知らしめた。

 

ところが、楊は「落とし穴」に落ちた。

どう計算しても、「強い核力」や「弱い核力」を使える粒子の重さが「ゼロ」になってしまうのだった。

重さがゼロでよいのは光子のみ。ほかの粒子はすべて重さを持つはずだったのに…。

 

重さのない世界は、まったく現実とかけ離れていた。

それでも、楊の数式は素晴らしく美しい。理論上は完璧な対称性を持っていた。

不幸なことに、その現実と理論の乖離は研究が深まるほどに広がっていってしまう。数式が美しさを増すほどに、現実からは遠ざかっていくのであった。

まるで、知れば知るほど神が遠方に霞んでいくかのように…。

 

 

■破れ

重さゼロの矛盾。

もし本当にすべての素粒子に重さがないのだとしたら、計算上は原子から電子が飛び出し、ありとあらゆる物質はバラバラになってしまう。

 

物理学者ミチオ・カクは、こう表現する。「すべての素粒子の重さがゼロだったとしたら、あらゆるものが飛び散ります。すべてが光の速さで飛び出すのです。安定なものはなくなり、人も犬も猫も、すべての都市もなくなります。あらゆるものが光の速さで動き、原子を構成するものがなくなってしまうからです」

光に満ちた神の世界はあまりにも眩く、人はおろか何ものをも光としてしまうのだった。

 

計算上はそうなってしまう世界。

ではなぜ、この世界は存在し得ているのか?

まさか、この世は幻なのか?

 

「倒れない鉛筆」

神の数式による計算の世界では、それが現実だった。

その鉛筆をじっと睨んでいたのは、日本の物理学者「南部陽一郎(なんぶ・よういちろう)」。

「未来が見えている」とまで言われた異質の天才である。

 

1960年代、世界が頭を抱えていた「重さの謎」に、南部陽一郎は一閃に斬り込む。

その後ノーベル賞に輝く「自発的対称性の破れ」を示すのだ(論文『超電導の類推による素粒子の動的模型(1961)』)。

それは、神の設計図には対称性があっても、実際に起こる現実には対称性がなくても良いという、誰もが予想しなかった大発見だった。

 

南部いわく、「長い間、考え考えた挙句の一つの解決策でしたが、後になって考えれば、それはもう当たり前の現象なんだと判ったわけです」

立てた鉛筆は倒れる、という当たり前の現象だった。

 

南部が示したのは「満つればすなわち欠く」、つまり「完璧な美しさは崩れる運命にある」ということだった。

美しさが崩れる結果、世界には「重さが生まれる」のであった。

神の美しさが現実によって崩されたゆえに、この世は生まれた。神の眩い光が陰るからこそ、この世は存在し得るというのであった。

 

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■トイレ

南部の理論をもってしても、解決できない問題は残っていた。

 

南部が示したのは、強い核力からクォークの重さが生まれることであって、その力を感じない電子やニュートリノなどは依然、数式上は重さがゼロになってしまうのだった。

 

この最後の問題を解決するため、スティーブン・ワインバーグは意を決して「ある禁じ手」を打った。

それは、この世に存在しない「都合の良い粒子」が存在すると仮定することだった。

 

それが「ヒッグス粒子」。

それは物理学者ヒッグスが1964年、論文『ゲージ対称性の質量と対称性の破れ』に書いた理論。その粒子は最初、空間にほとんど存在しないのにも関わらず、その後、勝手に空間を埋め尽くしてしまうのだという。

 

ワインバーグによると、空間を埋め尽くしたヒッグス粒子によって電子などはその行く手を阻まれ、その結果、動きにくくなってしまう。それが「重さの正体」になるのだという。

それは南部の考えた、「最初は完璧な美しさを保っていた世界が、その後、勝手にその美しさを失ってしまう」という理論を応用したものだった。

 

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そうした理論が書かれたワインバーグの論文『軽粒子の一つの模型(1967)』。

その評判は散々だった。ありもしないヒッグス粒子が、あまりにも都合が良すぎたのである。

 

楊は言う。「それは美しくありませんでした。本当に美しいものは、ひと目見て『これしかない』と感じさせます。ヒッグス粒子には美しさはありませんでした」

シェルドン・グラショウは言う。「ヒッグス粒子は『トイレ』のようでした。きれいな家を成り立たせるためには汚れ役が必要なように」

 

 

■ヒッグス粒子

見つかってもいないヒッグス粒子という禁じ手。

それを犯してまで、神の数式の完成に賭けたワインバーグ。

その賭けは2012年、「ビンゴ!!」の時を迎える。

 

ついに見つかったのである。

ヒッグス粒子を見つけるために作られた、人類史上最大のエネルギーを空間に一点に注ぎ込む実験装置(CERN)によって、ヒッグス粒子が叩き出したと思われるシグナルがとらえられた(20127月)。

 

We have a success today, we have discovery. We have discovered new particle boson(新しい素粒子), must be a Higgs boson(ヒッグス粒子)』.

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ワインバーグの論文から40年以上、ついにその理論が実証された。

そして完成した神の数式こと「標準理論」。

ヒッグス粒子を発見したCERN(ヨーロッパ原子核研究機構)の石碑には、それが誇らしげに刻まれた。

その最後の2行、それはこの世に重さをもたらしたヒッグス粒子を記したものである。

 

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■重力

天才物理学者たちが100年もの歳月をかけて完成した「神の数式」。

「美しさ」を求めて得られた結果は「重さ」であった。

最先端の数式に従えば、この世はこう記述される。

 

「宇宙は設計図である神の数式に従って誕生し、当初は設計図通りの『完璧な美しさ(対称性)』を保っていた。しかし、ヒッグス粒子などが引き起こす『自発的対称性の破れ』によって、素粒子に重さが生まれた。その結果、素粒子がまとまり原子が作られ、星々が輝きはじめて銀河も形成されていった」

 

神の世界ではあらゆる素粒子に重さはなく、光のごとくバラバラに飛び回っていた。ゆえに、物質は存在し得なかった。だが、その神の完璧な美しさ(対称性)が崩れることにより、世界に重さが生じ、物質が生まれるのであった。

 

神の数式「標準理論」に従えば、いまやこの世に説明できない現象はないとまで言われている。

が、しかし、物理学者らの野望は尽きない。

 

神の数式に最後のピースをはめ込んだワインバーグはなおも、こう言う。「私たちは単に、数学的に美しい議論だけでは満足しません。そこには重力が入っていないからです」

 

ワインバーグの言う通り、現在最先端の「神の数式」では重力が無視されている。

それは素粒子の世界における素粒子はあまりにも軽いため、重力を考えに入れる必要がないと考えられていたからである。

 

だが今は、「重力をも採り入れなければ、本物の神の数式には辿り着けない」という考え方が支配的になっている。

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立てた鉛筆が倒れるのと同様、重力があるのもまた「当たり前」のことのようにも思われる。

だが、その解明はまだまだ先になりそうだ…

 

 

 

素粒子とは?

「そもそも『素粒子』とは、読んで字のごとく、物質の『素』となる粒子の事です」

出典宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書): 村山 斉:

物質を構成する最小単位です。

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出典www.yonden.co.jp

 

原子は電子と原子核からなり、その原子核は陽子と中性子からなります。
ここで電子はこれ以上分解できない素粒子ですが、陽子と中性子はさらにクォークやニュートリノといったものから構成されています。

20世紀に入ってから予言され、実験で存在が確認されました。
ここ最近ではヒッグス粒子が話題になりました。

我々の身体や身の回りのものを構成する原子、その原子を構成するのが素粒子です。
素粒子の存在が確認されたのがここ100年の話なんですね。わくわくします(^^

素粒子には多くの種類があるが、すっきりした分類が可能である。

出典キッズサイエンティスト【カンタン物理辞典−素粒子】

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出典ja.wikipedia.org

素粒子は画像にある17個があります。
各粒子はそれぞれ役割が異なり、それぞれの組み合わせにより物質をつくったり、現象を引き起こします。

また、素粒子からなる『中間子』もまた、素粒子として扱います。

これまでに見つかった素粒子は17個です。

では、これらの素粒子はどうやって発見されてきたのでしょうか?

目に見えないほど小さい粒子をどうやって発見したんでしょうか(・。・;

▼素粒子の予言は数式から導き出される!

Description: 物理学科生のノートの一部

物理学科生のノートの一部

ミクロの世界を数式と模式図で示したものです。
本人の許可をいただきました。

自然の物理的法則は数式で説明することができます。

例えば電界や磁界はマクスウェル方程式、雲や川の流れはナビエ-ストークス方程式などで説明ができます。

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出典www.aobaya.jp

写真はカミナリです。

原子の運動は量子力学(りょうしりきがく)におけるシュレディンガー方程式で、
また重力は一般相対性理論におけるアインシュタイン方程式でそれぞれ説明できます。

シュレディンガーの猫で有名なシュレディンガーや、20世紀の天才であるアインシュタインの名が付いた数式をみてわかった方はもうわかりましたね?
自然の法則を数式で解明することは、数式の名として後世に語り継がれることになります。

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出典minkabe.com

1928年、ディラックは対称性を用いてディラック方程式を作りました。そしてこれにより、それまでわからなかった電子の運動がより正確にわかるようになりました。

対称性は鏡みたいなものです。鏡に映った物体は左右が反転したところで物体の運動は鏡に沿って運動します。
数式にも同様の性質(対称性)をもつように、ディラックは作ったんですね。

Description: ポール.A.M.ディラック本人の写真

出典www.aprender-mat.info

ポール.A.M.ディラック本人の写真

なんと、ディラック方程式による予言値と、実験による測定値は小数点以下11桁も一致した!

目に見えない電子の振る舞いを示すある1つの数値について、
予言値は1.001159652182
実験値は1.001159652180
だったそうです。

ミクロな電子の運動がディラック方程式で限りなく正確に示せると言える。

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出典msty-io.jp

ここから理論物理学者は本格的な数学へと関心を寄せていきます。

 

▼どうやって素粒子を"視る"のか?

陽子などの粒子同士を加速させ衝突させ、検出器で未知の粒子がないか探索します。

視れるわけではなく、間接的に存在を確認するんですね。

それには"加速器"という装置が必要。

原子や陽子、電子は電荷(電気)を持っているため、電磁場中にあると運動します。
金属は磁石に近づくと引っ張られ(運動し)ますよね。
電磁場を強くすることで粒子を光の速度に近い速さまであげます。

Description: https://rr.img.naver.jp/mig?src=http%3A%2F%2Fimgcc.naver.jp%2Fkaze%2Fmission%2FUSER%2F20141013%2F68%2F6287828%2F19%2F640x570xa94f17dff422889f64fb725f.jpg%2F300%2F600&twidth=300&theight=600&qlt=80&res_format=jpg&op=r

出典simplog.jp

国立科学博物館に展示されているサイクロトロンという加速器

▼高度な数式による予言から、高度な実験による検証へ

現代の宇宙物理学は素粒子論研究者が示した理論を巨大実験装置で証明することで発展してきた。20世紀後半、実験の核となる加速器の巨大化を日米欧が競い合い、数多くのノーベル賞を生み出してきた。

日本経済新聞 電子版巨大加速器、ノーベル賞級成果続々 国際協力も加速|日本経済新聞 電子版

日本には茨城県つくば市に高エネルギー加速器研究機構(KEK)がありますね。
またLHCには日本の技術が多く用いられています。

お気に入り詳細を見る

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出典largehadroncollider.biz

LHCの加速器のあるトンネル内の写真です

 

加速器は粒子を光速近くで衝突させ、宇宙初期の状況を作り出す。例えば2008年ノーベル物理学賞の「小林・益川理論」は高エネルギー加速器研究機構(KEK)の加速器による検証が決定打となった。

日本経済新聞 電子版巨大加速器、ノーベル賞級成果続々 国際協力も加速|日本経済新聞 電子版

KEKでは毎年一般向けに研究施設を公開しています。
興味ある方は行ってみると面白いかもしれません(^^

Description: https://rr.img.naver.jp/mig?src=http%3A%2F%2Fimgcc.naver.jp%2Fkaze%2Fmission%2FUSER%2F20141013%2F68%2F6287828%2F18%2F400x300xa93a73aceb92a9bc878f435c.jpg%2F300%2F600&twidth=300&theight=600&qlt=80&res_format=jpg&op=r

出典puipui.cocolog-nifty.com

KEK内にある施設内の写真
この機械の中心で素粒子を衝突させ検出します。

▼次世代の加速器

世界の科学者約1000人が22日、宇宙誕生の謎解明やヒッグス粒子の正体などを突き止めるための次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の建設に向けた新組織を立ち上げた。

日本経済新聞 電子版世界の科学者、次世代加速器建設へ新組織|日本経済新聞 電子版

Description: ILCの完成予想図

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ILCの完成予想図

国際リニアコライダー(ILC)の設計予想図です

▼国際リニアコライダー(ILC) 全長3050キロメートルの直線の実験装置で、地下深くにトンネルを掘り、設置する。装置の両端から電子や陽電子を放ち光の速度近くまで加速し、正面衝突させて、宇宙誕生直後の状態を再現する。

日本経済新聞 電子版国際リニアコライダー(ILC)|日本経済新聞 電子版

より詳細な性質を調べるのだそうです。

ILCは質量(重さ)の起源とされるヒッグス粒子を発見した欧州合同原子核研究機関(CERN)の加速器の次世代機にあたる。

日本経済新聞 電子版宇宙の起源探る次世代加速器、財源確保焦点に|日本経済新聞 電子版

21世紀の素粒子物理学

素粒子は17個見つかりましたが、これですべて解決したとは言えない。

まだ自然の全てを説明できていないんです。

それは原子や素粒子の構造を説明する"量子力学"と、重力の構造を説明する"一般相対性理論"が同じ自然を記述できていないから。

どちらも実験で証明されているはずなのに、この2つの理論は互いには相いれないんだそうです。

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上記の2つを融合したもの、つまり新たな理論でより詳細に素粒子は記述されるそう。
それを"超弦理論"または"超ひも理論"という。

超弦理論は、この世界が素粒子という""ではなくエネルギーでできた""または"ひも"でできているという考え方。