プランク定数の意味と求め方

 

 

エネルギーの最小単位

エネルギーに、最小の単位があるのでしょうか?

単純に考えると、エネルギーは幾らでも小さくなりそうです。それを検証してみます。

 

先に結論だけいっておくと、

光量子などの素粒子のレベルでは整数単位で変化する最小の単位はありますが、

素粒子よりも小さいレベルの研究が現在進行系で進んでおり、そこではこれまでの最小単位と思われていたプランク定数よりもミクロの構造があることが証明されつつある最中です。

 

 

プランク定数にいたった歴史

 

19世紀後半には、第二次産業革命によって、鉄鋼の生産には溶鉱炉内の温度を正確に知ることが品質を向上させるためには重要でしたが、当時は3000度から8000度ほどの高温を計測する技術がありませんでした。

 

物質を加熱すると、光を発します。これを輻射エネルギーと言います。

光の波長は高温になるに従い短くなり、振動数は多くなります。そして、輻射エネルギーの量は、光の振動数が増えるに従って多くなります。

具体的には、光は高温になるに従い、赤色1000度→橙色2000度→黄色3000度→白色5000度→水色7000度→青色9000度と変化します。

そこで熟練工は溶鉱炉の鉄の色を見て温度を推定していましたが、鉄鋼の品質が不均等なために、温度を正確に測定する方法を模索していました。

 

もしあらゆる波長の光を吸収する黒体という物質があれば、それを熱することで光を出すので、そこから温度と光の関係のデータを取ることができます。

 

しかし完全な黒体は存在しないので、外部からの電磁波を遮断して中を円球にくり抜いた物質を用意して、

 

それを熱して、小さな穴から空洞の放射を分光器を通して測定すると、温度と周波数の関係性が明らかになります。

 

  

1901年に
プランクはそのエネルギー量を調べた結果、輻射エネルギーはなめらかに連続した量ではなく、一定の量の倍数であることを発見しました。

輻射エネルギー量は、E=hv(プランク定数×光の振動数)と表わされます。

つまり、輻射エネルギーは、プランク定数と呼ばれるエネルギーの最小単位の倍数でした。

これが量子 quantum《複-ta》の発見となります。

つまりエネルギーはなめらかに変化するのではなく、整数倍のとびとびに変化することが分かりました。

 

 



 

プランクの法則

とは、黒体から輻射される電磁波の分光放射輝度である「周波数と温度を光速度との関係性」で表したものです。

 

I(ν,T)= 23÷c2 × 1÷e/kT1

 

周波数 ν

温度 T

h はプランク定数、

k はボルツマン定数、

c は光速度

を表します。

 

分光放射輝度 I(ν, T) hν = 2.82 kT の位置にピークをもち、高周波数においては指数関数的に、低周波数においては多項式的に減少する。

cf.  多項式poly­nomial)は、たとえば、3x3 − 7x2 + 2x − 23 x を不定元とする多項式

 

 

プランク定数hは、6.629069×1034Js(ジュール)です。

これを2πで割った換算プランク定数(ディラック定数)hバーがエネルギーの最小単位です。

全てのエネルギーは、この倍数となっています。
1h
バー=h/2π=(6.629069/6.283184)×1034Js =1.054571726×1034Jsです。

 

 

 

https://ne.phys.kyushu-u.ac.jp/seminar/MicroWorld/Part3/Part3.htm

空洞放射のスペクトル (振動数毎の強度分布) は,振動数νが小さいときは レーリー・ジーンズの公式 が合い, νが大きいときには ウィーンの公式に 合致します. プランクは この間をつないで νのすべての範囲で 測定値によく合う プランクの公式 を発見しました.

 

空洞内の電磁場の固有振動の数,すなわち真空中の振動の自由度の数は, 既にレーリー・ジーンズの公式を導いたとき 求めました. 振動数がνとν+dνの間の固有振動の数は,単位体積当たり

です。

これら全ての自由度に kT のエネルギーが等分配されると考えると, レーリー・ジーンズの公式が出てきます. レーリー・ジーンズの公式 とプランクの公式とを 比べると容易にわかるように, 実際には kT  だけのエネルギーが 等分配されないで, 分配されるエネルギーは

 

となっています。 つまり, 配分されるエネルギーには P (hν/kT ) という関数の 重み (ウエイト) かかって エネルギーの配給が 減らされているわけです。 この 重み関数

 

 

であり, x が小さいときには 値は 1 ですが,大きくなると 1 よりずっと小さくなって その分だけ エネルギーの配給が 減らされます.

 つまり,  hν/kT  が大きいときには エネルギー等分配の法則 は成り立たない ことを意味します.

 

 

「エネルギー量子」

このようにプランクは実験結果と良く合うプランクの公式を発見しました。

それ自体大発見に違いありませんが,プランクの偉さはそこにとどまっていなかった とです。

プランクは,プランクの公式のよってくる根本の理由を追求しました。

その結果,ついにエネルギー量子という画期的な考え方に到達しました。

 

物質を小さく分割して行くと,ついには分子や原子になります。このように物質は連続的ではなく,基本単位が 多数集まって構成されています。

この性質を物質の「原子的性質」と呼びます。

私達は電気もまた基本単位 (電気素量) があることを学びました。

つまり,物質も電気も「原子的性質」を持っています。

プランクはエネルギーにもまた基本単位があるのではないかと考え,これを「エネルギー量子」と名付けました。

つまりエネルギーの「原子的性質」です。

この考えに立脚すると,エネルギー等分配の法則が成り立たなくなり,その結果プランクの公式を見事に導き出すことができることを示しました(1900)

これは 古典論では理解できない,自然科学における革命でした。

 

 

「エネルギー量子とプランクの公式」

空洞放射はバネ (調和振動子) の集まりと同等であると言いました.

 

1つ1つの振動子の エネルギーは

の形をしています. q は振動子の 位置座標, p 運動量を表す 変数です。.

 

エネルギー E 平均値は ボルツマン分布則 を用いて

 

となります。 ただし

です。

 

エネルギーが連続的であれば,Eの平均値は kTとなって等分配則が得られます。

しかし,E が連続的にあらゆる値を取ることができないならば,pqも勝手な値をとることは きません。

いまエネルギー量子の大きさをεとすると, バネのエネルギーE はεの整数倍しか取ることができないので,

pqも次の式

 

 

を満たす値しか 取ることができません。

このことを考えると, 上記のEの平均値は積分計算ではなく,別の計算方法を用いなければなりません。

バネ (調和振動子) のエネルギー E がεの整数倍しか取ることができないとすると, その平均値は

 

となります。

 

にバネの数  (固有振動の数) 

 

をかけ,ε = hν とすると,結果はプランクの公式 になります。

I(ν,T)= 23÷c2 × 1÷e/kT1

 

 

 

 

「エネルギー量子の発見」

空洞内の振動数νを もつ固有振動のエネルギー E hν の整数倍の値

 

 

しか取ることができない という結論になります。

従来,エネルギーは連続的だと考えられてきましたが、エネルギーもまた不連続で,hνというエネルギー素量が存在する ということになりました。

このようにして自然界における 「原子的性質」が物質や電気だけではなく,エネルギーにまで拡張されるという画期的な考えが20世紀の 幕開けとともにプランクによってもたらされました。(1900)

 

「プランク定数」

 現在では プランク定数 h の精密な測定がなされて, その値は

 h = 6.6260755× 10-34 Js

です. プランク定数は [エネルギー]×[時間] = [作用] の元を持っているので,作用量子と呼ばれることもあります。

 

 

「固体の比熱」

固体を3NAの自由度を持った振動子の集まりと考え,エネルギー等分配の法則を適用すると,温度が室温以上であれば固体の比熱の実験値を見事に再現できるけれども,温度が低くなるとエネルギー等分配の法則が成り立たなくなり,実験値をうまく説明できなくなります。

1900年にプランクによってエネルギー量子の考え方が発表されるや,アインシュタインとデバイ (オランダ: 1884 - 1966) は,振動数νの固体の固有振動のエネルギーは hνを単位としてその整数倍しか許されないと仮定すると,低温の領域を含む全ての温度の領域で固体の比熱を見事に再現できることを示しました(1907, 1912)

エネルギーが粒々 (つぶつぶ) になっているという「原子的性質」は空洞放射のみならず,固体においても成り立っていることが明らかになりました。

 

 

「アインシュタインの 光量子仮説」

空洞内の放射 ()のエネルギーは、hνを単位として、その整数倍となっていることがわかりました。

これは古典論 (ニュートン力学とマクスウェルの電磁気学) ではどうにも説明することができません。

 

その理由は次の通りです:

空洞は周囲の壁 (熱溜) と時々刻々エネルギーのやり取りをしていますが、平均的には「やる」量と「とる」量とが等しく,平衡を保っています。

しかし、瞬間的には常にやったり、とったりしていますので、空洞内の放射のエネルギーは常にゆらいでいます。そのゆらぎはhνを単位として,その整数倍となっているはずです。

つまりhνというきまった単位の光が空洞の壁から瞬間的に出たり入ったりしているわけです。

このような有限のエネルギーが瞬間的に移動するということは古典論ではあり得ません

したがって, プランクの エネルギー量子の考え方は古典論では 説明できません。

1905年,アインシュタイン は,「光は粒子のようにつぶつぶになって空間内に存在している」という, 光量子仮説を提案しました.

 

 

 

「光電効果」

金属の表面に光を当てると荷電粒子が飛び出す光電効果は、電磁波の実験中にヘルツ (ドイツ: 1857-94)によって発見されました(1887)

レーナルト (ドイツ: 1862 - 1947)はこの荷電粒子の比電荷を測定し,それが電子であることを確認しました(1900)

 

光電効果を確かめる実験装置の概念図は下図です.

光電効果を確かめる実験装置

 

真空のガラス管内に2枚の電極を置き,一方の電極に紫外線を当てると,当てたほうの電極がマイナスの場合 (A) 電流が流れますが, 逆の場合 (B)電流は流れません。

 

 

「アインシュタインの 光電効果に関する理論」

光量子仮説に基づいて,アインシュタインは,1905年に,光電効果に関する次のような仮説を提唱しました。

振動数がνの光はhνのエネルギーのかたまりとなって金属内の電子に吸収され,電子がもらったエネルギー hνが金属の内側から外側に電子を運ぶのに必要なエネルギーWより大きい場合には電子は外側に放出されます。 したがって,出てくる電子 (光電子photoelectronといいます) のエネルギーの最大値は

 E = hν - W

となるはずだ というのです. (下の左図 (A) 参照)

 

W は仕事関数と呼ばれ,熱電子に関するリチャードソンの研究において既に知られていました.

 

 

「光電効果に関する ミリカンの実験」

上記のアインシュタインの考えは,1916年にミリカンによって行われた実験によって鮮やかに証明されました。

実験装置の概略は上の右図 (B)です。

 

(1) 電圧 Vを十分高くして, 光電効果により飛び出した電子 (光電子) を全て陽極に集めると,流れる電流は陰極に照射した 光の強さに比例する。

(2) どのような金属面に対しても,光電効果の起こり得る最小の振動数があり,それ以下の振動数の光ではどんなに強い光でも光電効果は起こらない

(3) 光電子のもつ最大の運動エネルギーは光の強さに無関係である。

(4) 光電子のもつ最大の運動エネルギーは光の振動数によって直線的に変化し,アインシュタインの仮説

 E = hν - W

に完全に一致している。

ミリカンはこの実験から定数hを求めたところ,h = 6.58×10-34Js となり,プランクが空洞放射から得たものに良く一致していました。

 

 

「古典論の困難」

上の光電効果に関するミリカンの実験結果を古典論で説明することは困難です。

光が金属面にあたると,光の電磁場によって金属内の電子が激しく揺さぶられてエネルギーが与えられ,金属内に留まっていられる限界を超えると,金属表面から飛び出すであろうことは古典論で容易に想像がつきます。

古典論によると,このとき電子に与えられるエネルギーは電磁場の強さの2乗に比例するはずです。

したがって,放出される光電子の最大エネルギーはあてた光の強さに依拠するはずですが,これはミリカンの実験結果とは完全に矛盾します。

上にまとめた ミリカンの実験結果のうち, (2) (3) (4) は古典論では全く説明がつきません。

 

また,光電効果の起きる時間についても説明ができません。

代表的な金属の仕事関数 Wの大きさは 2 6 eV です。 (1 eV 1.6×10 -19 J)  いま W = 2 eV 3×10 -19 J の金属による光電効果を考えましょう。

1 W (ワット) の光源から1 m 離れた点の1 cm 2 の面積を 1 s () 間に通過する光のエネルギーは約 10 -5 J/(scm 2) です。

この光を金属に照射するとき,原子の断面積はだいたい3×10 -16 cm2程度ですから,1個の原子に当たる光のエネルギーは1秒あたり約 3×10 -21 J/sです。このエネルギーを原子が全て吸収し,それが電子1個にすべて与えられ,その結果 光電効果が起きると考えましょう。

このエネルギーが上の仕事関数3×10 -19 J を越えるまで蓄積するには100 秒かかります。つまり光を当て始めて約100秒経たなければ光電子は飛び出さないことになります。ところが実際には,光電効果は光源のスイッチを入れた瞬間に起こります。

アインシュタインの仮説のように,光はhνのエネルギーのかたまりとなって金属内の電子に一瞬に吸収される と考えると, 全ては矛盾無く理解することができます。

 

 

コンプトン効果

アインシュタインは 光量子仮説を提唱し,それに基づいて光電効果を説明することに成功しました。

その結果, 光はエネルギー hνをもった「粒子」となって空間に存在することが確実になりました。

光の粒子性をさらに確実にしたのが以下で説明するコンプトン効果でした。

1923年,コンプトン (アメリカ: 1892 - 1962) 結晶によるX線の散乱の現象が光の粒子性によって見事に説明できるということを発見しました。 (現象そのものはもちろん以前からよく知られていました。)

粒子 (電子)によるX線の散乱をコンプトン散乱と呼ぶこともあります。コンプトン散乱の実験結果はX線が「粒子」となって結晶中の電子という「粒子」に衝突して散乱されると考えることによって説明できます。

ちょうど「玉突き」(ビリヤード) の球の衝突を連想してください。そのために,まず光量子 (光の粒子)の運動量 を考えなければ なりません.

 

「光量子の運動量」

光量子はhνというエネルギーをもった「粒子」は 同時に運動量を持っているのは、光は周囲の壁に圧力を与えていることが分かっているからです。

振動数がνの光で満たされている容器を考えましょう。光が周囲の壁に与える圧力をP,単位体積あたりの光のエネルギーを Uとすると,

 P = U /3

であることが実験的にわかっています。

この関係式は古典論からも導くことができ、1個の光量子の運動量 p

 p = hν/ c  = h /λ

となります。つまり,光量子の運動量はエネルギーhνを光速cで割ったものです。

この結果は,気体分子の運動と圧力などとの関係を求めた方法と同様にして導くことができます。

 

 

「光量子説によるコンプトン効果」

コンプトンは,単色の (波長が一定の) X線を黒鉛 (炭素の結晶) に照射したとき,散乱角が大きくなると散乱されたX線の波長が長くなることを見出しました。これは古典論では説明がつきません。古典論では入射したX 線が荷電粒子 (電子) を振動させ,その振動する荷電粒子が同じ振動数の電磁波 (X )を四方に放射 (散乱) する と考えられます。したがって,散乱されたX線の波長は入射した X 線の波長と等しいはずだからです。

コンプトンは,下図 のように,入射したX線が「粒子」として電子に衝突し散乱されると考えました。

入射したX線の「粒子」のエネルギーをhν,運動量をhν/ cとし,散乱角θの方向に散乱されたX線の「粒子」のエネルギーをhν',運動量をhν'/ cとします。

衝突された電子 (質量 m )も跳ね飛ばされます。その電子を反跳電子といいます。

その運動量を mvとします。

 

 

上図 (A) コンプトン散乱における エネルギーと運動量の 関係です。

上図 (B) そのときの運動量保存則 を表しています。

 

運動量保存則 (上図 (B)) から すぐわかるように,

 

となりますが, ν ν' ですから

 

 

が成り立ち, これを上式に代入すると,

 

 

となります. 一方,エネルギー保存則から

 

したがって, 角度 θ の方向に 散乱される波長 λ' 入射 X 線の波長 λ との 刄ノ

   

 

となります. したがって, 散乱角θが 大きくなるに従って 散乱 X 線の波長は 長くなることに なります。

下図 コンプトンによる散乱角θが0°,45°,90°,135°の場合の実験結果が示されています。

グラフは 散乱 X 線の強さ (縦軸) を波長 (横軸)の関数として表しています。

散乱角θが大きくなると,ピークが2つに分かれて,右側の波長の長い (λ' ) ピークがだんだんと長い波長のほうに動いていきます。

このλ'の結果は上の式にぴったり合致しています。

X線の粒子性が見事に実証されたわけです。

なお,左側のピークは波長が入射X線のそれに等しく,これは原子全体による散乱波であり,原子が重いので波長は変化しないと考えられます.

 

 以上のように, コンプトン散乱はX 線の粒子性によって見事に説明されましたが,コンプトンの実験でははじき飛ばされた反跳電子の観測はできませんでした。これは少し後にウィルソンの霧箱を使って写真に撮ることができました。

 

 

「光子」

1905年にアインシュタインが光量子仮説を提唱した後,人々は20年近くも光の粒子説に疑いを持っていました。しかしコンプトン効果の実験結果を見せつけられては,もはや光の粒子性を疑うわけには行かなくなりました。

これ以後,光の粒子 は光子 (photon)と呼ばれて,電子 (electron) や陽子(proton)などと一緒に粒子の仲間入りをすることに なりました。

 

(1)          古典論 (ニュートン力学とマクスウェルの電磁気学) から必然的に導かれるエネルギー等分配の法則 が,低温の物体の比熱や空洞放射に対しては成り立たないことが分かりました。

これは古典論の行き詰まりでした。

(2)          この困難は,エネルギーが連続ではなく「つぶつぶになっている」というプランクのエネルギー量子仮説によって解決できることが明らかになりました.

(3)          プランクのエネルギー量子の考え方をさらに発展させて,光は粒子であると考えられることが明らかになりました。この光の粒子性は古典論からは想像もつかない驚くべき 性質でした.

 

 

「光の粒子性と波動性」

光の粒子性が 明らかになったからと言って,光の波動性が否定されたわけではありません。

光が回折 や干渉を起こすことは光が粒子であると考えると理解できません。

光の干渉現象を発見して,光が波動であることを最初に確かめたヤング (イギリス: 1773 - 1829) の複スリットの実験を考えてみましょう。

ヤングの実験装置の概念図は下図の通りで。

 

ヤングの二重スリットの実験

位相のそろった 単色の光源からの光は 2つのスリット S1 S2 を通って 右の衝立上に 干渉じまを生じます.

 

ヤングの実験での干渉じま()の写真が下図に示されています。

(A) 2つのスリットの片方を閉じたときの写真であり,図(B)2つのスリットを両方とも開いたときの干渉じまです.

 

 

ヤングの実験で右方の衝立の上に干渉じまが生じる理由は,下図のように,左方から入射した光 (波動) が2つのスリットを通過した後、互いに干渉するからです。

スリットの間隔をdとすると,スリットS1とスリットS2を通過した光が衝立上の点Aに到達するまでの 光路差 ( d sinθ) 波長λの整数倍になるとき干渉しあって強め合い,その中間が弱め合い,その結果,縞模様ができるわけです.

 

 

 

二重スリット後の光路差

スリット間隔をd,光の進行方向の角度をθとすると,光路差はほぼ d sinθとなり,これが波長λの整数倍

 d sinθ=nλ (n = 012, ・・・)

のとき強めあいます。

 

光が粒子であると考えると, 1つの粒子が同時に2つのスリットを通ることは不可能であり, 上図(B) のような 干渉じまは起こり得ません。干渉じまが生じるということは,光が波動であり,光が同時に部分的に2つのスリットを通過して干渉が起きる,と考えざるを得ません。

このような結果を見ると,光は,あるときは粒子であり,あるときは波動であるようです。

それならば,光はいつ粒子で,いつ波動なのでしょう?

これは大変な難問です。光の真実の姿はどうなっているのでしょう? 

この疑問に対する答えは,1925年以降の量子力学の確立をまたなければなりませんでした。

それまでは物理学者は,ある場合は粒子説,別の場合には波動説をとり,場合々々に応じて態度を変えるという甚だ無節操に終始せざるを得ず,「午前中は光を粒子と考え,午後は波動と考える」といったり,或いは,「1週間のうち,月水金は光を波動と考え,火木土は粒子と考える」といったジョークが 飛び出すありさまでした。

 

 

光には4つのレベルがあります。

普遍エネルギー

重力エネルギー

波動エネルギー

粒子エネルギー

 

 

 

 

 

 

 

 

プランク定数を、G(重力定数)c(光速度)Lp(プランク距離)から導く

換算プランク定数hバーは、G(重力定数)c(光速度)Lp(プランク距離)から導かれます。重力による加速度gメートル毎秒毎秒(ms2)は、天体の質量Mキログラムに比例し、天体からの距離Rメートルの2乗に反比例します。従って
@g(重力加速度)=G*M/R2
と表されます。G=6.67384×1011(m3s1s2)です。これは、1sの物体から1mの距離において、物体はその重力により、毎秒6.67384×1011/秒加速されることを表しています。

 地表における重力加速度は、M(地球の質量)=5.9736×1024s、R(地球の半径)=6.37101×106mを@に代入すると、
@地表の重力加速度={6.67384×1011(m3s1s2)}×(5.9736×1024s)/ (6.37101×106)2=9.822 ms29.81 ms2(公式な数値)
となります。

 

プランク距離

 一方、距離の最小単位は、Lp(プランク距離)= 1.616199×1035mです。この宇宙は「超ひも」で構成されていると考えます。そしてLp(プランク距離)は、1本の超ひもの長さです。物質や光及び物質を動かす4つの力は、この「超ひも」の振動として表現されます。従って、宇宙ではLp(プランク距離)より小さな距離は意味を持ちません。

 また、c(光速)= 2.99792458×108/sです。この宇宙では、光速を超えて伝わるものはないと考えられています。それは、超ひもの振動が光速で伝わるからです。
 ですから、加速度も毎秒光速で加速される値がMAXです。g=c(/s2)= 2.99792458×108/s2MAXです。
 物質同士はLp(プランク距離)まで近づくと、万有引力により2.99792458×108/s2の加速度で引かれます。その時、Mの質量は幾らでしょうか。そのMが、エネルギーの最小単位となります。

 

換算プランク定数(ディラック定数)の算出

 g=2.99792458×108/s2G=6.67384×1011(m3s1s2)R= Lp(プランク距離)= 1.616199×1035mを、@の重力加速度の方程式に代入すると
@g=GM/R2
2.99792458×108/s2={6.67384×1011(m3s1s2)}×M(1.616199×1035)2
M
s=(2.99792458×108/s2)×(1.616199×1035)2÷{6.67384×1011(m3s1s2)}
M
s= 1.17336891802404×1051s
です。

 一方、質量はエネルギーに換算されます。1Js(ジュール)= 1.11265006×1017sです。従って、
M
s=(1.17336891802404×1051s)÷(1.11265006×1017s)= 1.054571387×1034Jsです。
 上記のとおり1hバー=1.054571726×1034Jsです。従って、Ms=1hバーです。

 

まとめ

つまり、物質同士がプランク距離まで近づいた時、毎秒光速で加速されるために、物質の質量は1hバー(換算プランク定数)必要です。これを超えた質量があると、加速度は毎秒光速を越えてしまいます。これ未満では、加速度は毎秒光速には達しません。
 従って、プランク距離=1本の超ひもには、1hバー(換算プランク定数)のエネルギーがあることが分かります。そして、これがエネルギーの最小単位なので、光のエネルギーはこの倍数となっているのです。

 

 

 

 

 

参考資料

 

プランク定数を基準にした質量の単位

今年5月20日、質量(重さ)の単位「キログラム(kg)」の定義が130年ぶりに変更された。これまでは「国際キログラム原器」と呼ばれる分銅の質量が定義だったのが、自然界の仕組みを特徴づける普遍的な定数「プランク定数」を使う定義に変更されたのだ。その意味を、京都大の入試問題と関連して中高生対象の塾SEGの吉田弘幸講師に解説してもらった。

「単位とは」物理定数の普遍性 SEG講師・吉田弘幸さん

 自然科学では実際に測定した数量を扱います。測定を行うためには単位(基準)が必要となります。

 ところでE=mc2という式を見たことがある人は多いのではないでしょうか。Eはエネルギー、mは質量、cは光の速さ。アインシュタインが1905年、特殊相対性理論で導いた、質量の本質がエネルギーであり、「質量mがエネルギーmc2に相当する」ことを示す関係式です。原子力発電などにも応用されている考えです。

 新しい「kg」の定義ではこの関係式が重要です。エネルギーの基準を決めることが質量の基準を決めることに結びつくのです。ではエネルギーの基準はあるでしょうか。あります。光のエネルギーについての関係式「E=hν(ニュー)」です。この「h」が問題にも登場するプランク定数です。この値を厳密に決めることで結果的に質量を決められます。それが新定義の考え方です。

 プランクはこの定数を発見したドイツの物理学者の名前です。プランクは1900年、ある実験結果を説明するため、連続的に変化すると考えられていたエネルギーが、実はとびとびになっていると仮定しました。エネルギーに粒々があるようなもので、その一つの粒のことを量子と呼びます。

 「量子仮説」と呼ばれるこの考え方は、現代物理学を支える柱の一つとなっている量子論の端緒となる革命的な発見でした。

 プランクの量子仮説は、1905年に発表されたアインシュタインの光量子仮説に引き継がれました。光量子仮説は、光に粒子性があるという考え方です。これも観測結果を説明するための仮定でしたが、現在では理論として確立し、光の粒のエネルギーは、色に対応する振動数「ν」とプランク定数の積により与えられることがわかっています。これが上述の関係式です。

 新しい定義では、プランク定数の値を正確に6.62607015×10のマイナス34乗(ジュール・秒)と定めることで質量の単位「kg」を決めています。ジュールはエネルギーの単位です。

 長さの単位「メートル(m)」もかつては「国際メートル原器」で定義されていましたが、1960年と1983年の2回の改定を経て「1秒間に真空中を光が進む距離の299792458分の1」という、光速度cに基づく定義になりました。cも問題の中に出てきます。その普遍性は特殊相対性理論により保証されています。

 プランク定数「h」も真空中の光速度「c」も、宇宙のどこでも値の変わらない普遍的な物理定数なのです。

 なお今回の改定では、「kg」のほかに、電流の単位「アンペア(A)」、温度の単位「ケルビン(K)」、物質量の単位「モル(mol)」の定義も変更されました。それぞれ、自然界に存在する電気量の最小単位「電気素量」の値、温度の正体についての関係式に現れるボルツマン定数の値、粒子の特定の集団の個数に対応するアボガドロ定数の値を定めることで定義されることになりました。いずれも物理定数の普遍性が新しい定義の正統性を保証します。(寄稿)

精度との闘い、日本もつるつるシリコン球で貢献

 1mはもともと地球の子午線の4千万分の1の長さ、1kgは水1リットルの質量だった。1秒は地球の自転から決めていた。科学技術がより精密になり、長さと時間は物理定数を使った定義に移行していった。

 しかし、質量は取り残された。今回の定義の改正は、国際キログラム原器の質量が、10万分の5gほどずれたことが背景にある。精度にすると「1億分の5」程度の変化だ。長さは光速度による定義に変わり、精度が約千倍になった。キログラム原器が130年間も使われてきたということは、裏を返すと分銅を超える精度で質量を定義できる技術がなかなか出てこなかったことを意味する。

 質量の新しい定義をめざし、真球近くまでつるつるに磨かれたシリコン球を茨城県つくば市産業技術総合研究所で見せてもらったことがある。直径約9.4cm。様々な方向からレーザーを当てて直径を高精度で測り、球体内のシリコン原子の数を数えることで、プランク定数を決める実験だ。しかし私が取材した15年ほど前の精度は「1千万分の2」。精度はキログラム原器の分銅に1けた負けていた。

 その後、「1億分の2」にまで上がって分銅の精度を超えることに成功した。電磁的な力による定義を提案していた別の国際チームとともに、日本の技術も質量の新定義に貢献することになった。(勝田敏彦)

 

 

 

プランク定数(プランクていすう、プランクじょうすう、英語Planck constant)は、光子のもつエネルギーと振動数の比例関係をあらわす比例定数のことで、量子論を特徴付ける物理定数である。

量子力学の創始者の一人であるマックス・プランクにちなんで命名された。

作用次元を持ち、作用量子とも呼ばれている。

SIにおける単位はジュール(記号: J s)である。プランク定数は20195月に定義定数となり、正確に6.62607015×10−34 J sと定義された。

概要[編集]

光子の持つエネルギー(エネルギー量子ε 振動数 ν 比例し、その比例定数がプランク定数と定義される[1]

{\displaystyle \varepsilon =h\nu }ε=ε=hν

光のエネルギー E は光子の持つエネルギーの倍数の値のみを取り得る。

{\displaystyle E=nh\nu }E=nhνE=nhν

プランク定数の値は

正確に{\displaystyle {\begin{aligned}h&=6.626\,070\,15\times 10^{-34}\,\mathrm {J\,s} \\&=4.135\,667\,696...\times 10^{-15}\,\mathrm {eV\,s} \end{aligned}}}h=6.62607015×10−34Js=4.135667696...×10−15eVsh=6.62607015×10−34Js=4.135667696...×10−15eVs

である(2018CODATA推奨値[2][3])。

また、プランク定数 h  円周率 π 2倍で割った量 h/2π もよく使われるため、「換算プランク定数」、または「ディラック定数」と呼ばれる[4]

ディラック定数の値は

{\displaystyle {\begin{aligned}\hbar &=1.054\,571\,817...\times 10^{-34}\,\mathrm {J\,s} \\&=6.582\,119\,569\times 10^{-16}\,\mathrm {eV\,s} \end{aligned}}}=1.054571817...×10−34Js=6.582119569×10−16eVs=1.054571817...×10−34Js=6.582119569×10−16eVs

である(2018CODATA推奨値[5][6])。

記号[編集]

プランク定数は、記号 h で表される。この記号はプランクの輻射公式を説明する定数としてプランク自身の論文の中で導入されている。HilfsgrößeHilfs=補助、größe=大きさ、量)の頭文字に由来する。また専用の記号として (PLANCK CONSTANT, Unicode U+210E) も用意されている。

ディラック定数の記号は、 h ストローク符号を付けた記号 ħH WITH STROKE, LATIN SMALL LETTERUnicode U+0127JIS X 0213 1-10-93)が使われる。量の記号にイタリック体を用いる約束に従って、専用の記号として (PLANCK CONSTANT OVER TWO PI, Unicode U+210F, JIS X 0213 1-3-61) も用意されている。またTEX には数式記号 {\displaystyle \hbar }\hbar)が用意されている。ħ は「エイチバー」と発音される。

記号

Unicode

JIS X 0213

文字参照

名称

U+210E

-

ℎ
ℎ

PLANCK CONSTANT

U+210F

1-3-61

ℏ
ℏ

PLANCK CONSTANT OVER TWO PI

歴史[編集]

 

1896年にヴィルヘルム・ヴィーン黒体放射におけるエネルギー分布に関するヴィーンの放射法則を提案した。この式はそれ以前の実験で得られていた高振動数領域では測定値をよく説明したが、新たに得られた低振動数の領域では合わなかった。1900年にプランクが低振動数領域でも測定値と一致するようにヴィーンの理論式を修正する形でプランクの法則を提案した[7][8][9]。プランクの理論式は、高振動数の領域ではヴィーンの理論式に移行する。レイリー卿は古典的なエネルギー等分配則から低振動数極限における近似式の形を提案し、1905年にジェームズ・ジーンズがその係数を正しく与えた。レイリー・ジーンズの法則と呼ばれるこの式は、プランクの理論式から導かれる低振動数極限の形と係数を含めて一致した。

プランクは彼の公式の理論的な説明を与える過程で、振動数 ν の光のエネルギーの受け渡しは大きさ  を単位としてのみ起こり得る、という仮定をした[ 1][ 2]。この h が後にプランク定数と呼ばれるようになった普遍定数である[10]。実験結果と彼の理論式を比較してプランクは、

h = 6.55×10−34 J s

と定めた[7]

光電効果[編集]

アルベルト・アインシュタインはプランクの理論の影響を受け、1905年、粒子のような性質を持つという光量子仮説を提唱し光電効果を説明した。光量子仮説では、プランクとは別の方法でエネルギー量子の存在を説明した[11]。アインシュタインの光電効果の考えはともかくとして彼が導いた式の正しさは、ロバート・ミリカンによって10年かけて行われた実験にて確かめられた。1916年にミリカンが報告したプランク定数の値は、

h = 6.57×10−34 J s

であり、プランクが黒体放射から得た値とよく一致した[12]

理論[編集]

プランク定数は量子論的な不確定性関係と関わる定数であり、h → 0 の極限で量子力学が古典力学に一致するなど、量子論を特徴付ける定数である。

軌道角運動量スピンは常に換算プランク定数の整数倍か半整数倍になっている。例えば、電子のスピンは ±ħ/2 である。なお、量子力学の分野では ħ = 1 とするプランク単位系原子単位系を用いる場合が多く、その場合の電子のスピンは ±1/2 となる。

プランク定数は位置運動量の積の次元を持ち、不確定性関係から位相空間での面積の最小単位であるとも考えられているが、最近では Zurek らの研究で、量子カオス系においてはプランク定数以下のミクロ構造が現れる事がわかった[13]

キログラムの定義[編集]

SI基本単位の再定義 (2019)」も参照

質量のSI単位であるキログラムは、従来の定義では国際キログラム原器IPK)が用いられていたが、プランク定数を用いた新しい定義に改定され、20195月に発効した。 新しい定義においてプランク定数はSIを定義する定義定数として位置付けられ、SI単位による値は実験的に決定される測定値ではなく、固定された定義値となった。 プランク定数(h = 6.62607015×10−34 J s)とともに値が固定された定数である光速度 c、及びセシウム133超微細遷移周波数 ΔνCs とを組み合わせることで、キログラムが導かれるという仕組みになっている。

経緯[編集]

国際度量衡委員会の下部組織である質量関連量諮問委員会による2013年の勧告では、新たな質量の定義を採用する条件として、

·    相対標準不確かさ 50×10−9 以下のプランク定数が少なくとも3つ、独立した実験(キブル天秤法とX線結晶密度法[14]を含む)により得られていること、

·    その内の少なくとも1つは、相対標準不確かさが 20×10−9 以下であること、

等が要求されていたが、20175月の 16th CCM meeting 時点までにこの条件は達成された[15]

NIST D. Haddad らは、2015年から2017年にかけて NIST-4 キブル天秤による計測を繰り返した結果として 6.626069934(89)×10−34 J s の値を得ており、相対標準不確かさでは 13×10−9 を達成している[16][17]。その他の実験結果については「モルプランク定数#実験値から定義値」を参照のこと。

201811月の第26国際度量衡総会 (CGPM) で決議され、2019520に施行された新しいSIの定義では、プランク定数は定義定数となった[18]

 

 

 

 

 

換算プランク定数(かんさんプランクていすう、reduced Planck constant)またはディラック定数(ディラックていすう、Dirac's constantħ は、プランク定数 h  2π で割った値を持つ定数である。

数値[編集]

2019520日に施行された新しいSIの定義では、プランク定数を定義値として定めることによって質量キログラム)を定義している。このためディラック定数も定義値となり、不確かさのないものとなった。

その値は

{\displaystyle {\begin{aligned}\hbar \equiv {\frac {h}{2\pi }}&=1.054\ 571\ 817...\times 10^{-34}\ {\mbox{J}}\cdot {\mbox{s}}\\&=6.582\ 119\ 569...\times 10^{-16}\ {\mbox{eV}}\cdot {\mbox{s}}\end{aligned}}}h2π=1.054 571 817...×10−34 Js=6.582 119 569...×10−16 eVs≡h2π=1.054 571 817...×10−34 Js=6.582 119 569...×10−16 eVs

である[1][2])。 ħ は「エイチ・バー」と読む。

物理的意義[編集]

物理的には、プランク定数が周波数 ν エネルギー E の間の比例定数を意味するのに対して、換算プランク定数は角周波数 ω とエネルギー E の間の比例定数を意味する。すなわち、

{\displaystyle E=h\nu ={\frac {h}{2\pi }}\cdot 2\pi \nu =\hbar \omega }E==h2π2πν=ωE=hν=h2π2πν=ω

の関係が成り立っている。また、以下のように運動量 p 角波数 k の間の比例定数と見ることもできる。

{\displaystyle p={\frac {h}{\lambda }}={\frac {h}{2\pi }}{\frac {2\pi }{\lambda }}=\hbar k}p==h2π2πλ=kp=hλ=h2π2πλ=k

ディラック定数は原子単位系における作用の単位である。

角運動量[編集]

電子軌道角運動量 L の大きさ |L|  z 成分 Lz 

{\displaystyle {\begin{aligned}&|{\boldsymbol {L}}|={\sqrt {l(l+1)}}\hbar \\&L_{z}=m\hbar \end{aligned}}}|L|=l(l+1)−−−−−−Lz=m|L|=l(l+1)Lz=m

と表され[3]:138,334[4]、ディラック定数を基本単位としていることが分かる。ここで、n 主量子数とすると、l  l = 0, 1, 2, 3, n − 1 までの値を取る方位量子数[3]:335[4][5]m  m = 0, ±1, ±2, , ±l  (2l + 1) 個の値を取る磁気量子数で[3]:138[4][6]、軌道角運動量を極座標 (rθφ) で表わした場合の部分が l動径部分が m である[4]。また、電子スピン角運動量 ±1/2ħ [7]量子力学の分野ではプランク単位系を用いることが多く、その場合の電子のスピンは ±1/2 と書き、この ±1/2 をスピン量子数と呼ぶ。

二原子分子回転運動を表す際、J 回転量子数とすると、回転の角運動量の大きさは J(J + 1)ħ、回転運動のエネルギーは BJ(J + 1) と表され、回転定数 B の中に B = ħ2/2I とディラック定数が現れる。ここで、I は分子の重心まわりの主慣性モーメントの非零成分である[3]:51

不確定性原理[編集]

量子力学によって記述されるような物理現象観測においては、不確定性原理によって位置不確かさ Δx 運動量の不確かさ Δp の積 ΔxΔp、あるいはエネルギーの不確かさ ΔE 時間の不確かさ Δt の積 ΔEΔt は、ħ/2 より小さくなることはないとして

{\displaystyle {\begin{aligned}&\Delta x\cdot \Delta p\geq {\frac {\hbar }{2}}\\&\Delta E\cdot \Delta t\geq {\frac {\hbar }{2}}\end{aligned}}}ΔxΔpEΔt2ΔxΔp≥2ΔEΔt≥2

と表される[3]:303[8]

 

記号[編集]

ディラック定数には H にバーを付した Ħ の小文字 ħ が用いられることもあるが、Unicode には専用の文字 U+210F  planck constant over two pi が用意されている。またTEXでは \hbar コマンドが用いられる。

記号

Unicode

JIS X 0213

文字参照

名称

U+210F

1-3-61

ℏ
ℏ

PLANCK CONSTANT OVER TWO PI

 

 

 

 

 

カオス理論

chaos theoryChaosforschungThéorie du chaos

力学系の一部に見られる、数的誤差により予測できないとされている複雑な様子を示す現象を扱う理論である。カオス力学ともいう[1][2]

ここで言う予測できないとは、決してランダムということではない。その振る舞いは決定論的法則に従うものの、積分法による解が得られないため、その未来(および過去)の振る舞いを知るには数値解析を用いざるを得ない。

しかし、初期値鋭敏性ゆえに、ある時点における無限の精度の情報が必要であるうえ、(コンピューターでは無限桁を扱えないため必然的に発生する)数値解析の過程での誤差によっても、得られる値と真の値とのずれが増幅される。そのため予測が事実上不可能という意味である。

カオスの定義と特性

ある初期状態が与えられればその後の全ての状態量の変化が決定される力学系と呼ぶ[3]。特に、決定論に従う力学系を扱うことを強調して決定論的力学系とも呼ばれる[4]

カオス理論において研究されるカオスと呼ばれる複雑で確率的なランダムにも見える振る舞いは、この決定論的力学系に従って生み出されるものである[5]。この点を強調するためカオス理論が取り扱うカオスを決定論的カオス(deterministic chaos)とも呼ぶ[3]。複雑で高次元の系ではなくとも、1次元離散方程式や3次元連続方程式のような非常に簡単な低次元の系からでも、確率的ランダムに相当する振る舞いが生起される点が決定論的カオスの特徴といえる[6][7]

この用語は、カオス理論以前から存在するボルツマンにより導入された分子カオスと呼び分ける意味合いもある[8]。ボルツマンによるカオスは確率論的乱雑さを表しており、カオス理論におけるカオスとは概念が異なる。

カオス理論におけるカオスの厳密な定義は研究者ごとに違い、まだ統一的な定義は得られていない[9][10]。できるだけ簡単な表現でまとめると、カオスの定義あるいはカオスと呼ばれるものの特性とは、「非線形決定論力学系から発生する、初期値鋭敏性を持つ、有界な非周期軌道」といえる[11][12][13][14]。また、このような軌道を含む力学系の性質を指してカオスとも呼ぶ[5][15][16]。軌道を指していることを明らかにする場合はカオス軌道(chaotic orbit)と呼ぶ場合もある[13][16]。以下に、もう少し詳細に説明する。

非線形性

力学系には大きく分けて線形力学系と非線形力学系が存在するが、線形力学系ではカオスは発生しない[17]。その系からカオスが生起されるためには、系が何らかの非線形性(nonlinearity)を持つ必要がある[18][14]。言い換えると、軌道を生成する系が非線形力学系であることは、その系からカオスが生起されるための必要条件である。これの十分条件は満たされず、すなわち、非線形力学系であれば必ずカオスが生起するわけではない。以下に述べる特性と違い、非線形性はカオス軌道自体の特性というよりは、カオスを生起する系の特性である。

 

初期値鋭敏性

カオスの定義あるいは特性として第一に挙げられるのが初期値鋭敏性(sensitivity to initial conditions)である[19][20][ 1]。これは、同じ系であっても初期状態に極僅かな差があれば、時間発展と共に指数関数的にその差が大きくなる性質である[5]。この性質は軌道不安定性(orbital instability)と言い換えられることもある[24][25][26]。定量的には、この初期値鋭敏性は、リアプノフ指数、コルモゴロフ-シナイエントロピーなどで評価される[25][27]

初期値鋭敏性により極めて小さな差も指数関数的に増大していくので、初期値鋭敏性を有する実在の系の将来を数値実験で予測しようとしても、初期状態(入力値)の測定誤差を無くすことはできないので、長時間後の状態の予測は近似的にも不可能となる[28][25][26]。このような性質は長期予測不能性(long-term unpredictability)[25]予測不可能性(unpredictablity)[28]などとも呼ばれる。一方で、例えカオスであっても決定論的法則から発生されるものであるため、短時間内であれば有用な予測は可能といえる[29][14]。以上のような性質は、標語的にバタフライ効果(butterfly effect)と呼ばれる。

有界性

初期値鋭敏性、すなわち指数関数的に初期状態の差が広がる軌道を有する系というだけでは、カオスには該当しない[14][30]。カオス軌道であるためには軌道がある有界な範囲に収まる必要がある[14][12][13]。このようなカオスの特性は有界性(boundedness)とも呼ばれる[25]

初期値鋭敏性のみではカオスとならない例として、{\displaystyle x_{n+1}=ax_{n}}xn+1=axnxn+1=axnという単純な等比数列形式の離散力学系の写像が考えられる[30]。これに対して初期値が異なる2つの軌道を考えると、初期値の差をδとすれば、その差は{\displaystyle a^{n}\delta }anδanδで表せる。よって、これら2つの軌道は離散時間nが増加すれば指数関数的に差が開いていくので、系は初期値鋭敏性を有するといえる。しかし、これらの軌道は{\displaystyle x_{n}=x_{0}\ a^{n}}xn=x0 anxn=x0 anで示される単純な指数関数曲線であり、有界な領域に収まらず発散してしまい、非周期的な軌道も存在しない。

非周期性[編集]

カオスの特徴は、平衡点に収束するわけでもなく、周期的軌道に漸近するわけでもなく、非周期的な軌道を取る点である[16][6][13]。カオスが認識されるようになる以前は、非周期的な運動が発生するには、発生させる系自体も複雑なものだろうと考えられていたが、非常に簡単な決定論的な法則(力学系)からでも非周期運動が発生する点がカオスの特徴である[31]。平衡点収束と周期的軌道以外にも力学系では準周期的軌道と呼ばれる軌道も存在し、非常に複雑で不規則的な軌道を取るが、初期値鋭敏性を持たないことからカオスには分類されない[5]。カオスが非周期軌道を取ることの特性は非周期性(nonperiodicity)などと呼ばれる[25]。非周期的であるかどうかは、パワースペクトルが幅のある連続的スペクトルを示すかどうかなどで評価される[25][32]

数学的定義の例[編集]

カオスの数学的定義として、しばしば引用される、位相的方法による標準的な定義であるロバート・デバニー(Robert L.Devaney)の定義がある[33][9][34]。これを例として以下に示す。

次の3つの条件を満たす写像fV → Vは、Vの上でカオス的であるといえる[35]

1.   初期条件に鋭敏に依存する。

2.   位相的に推移的である。

3.   周期点はVにおいて稠密である。

ここで、条件1は次の条件を満たすことである[36]

 

f反復合成写像fnとしたとき、あるδ > 0が存在し、任意のx  Vと、xの任意の近傍Nに対して、{\displaystyle \left|f^{n}(x)-f^{n}(y)\right\vert >\delta }|fn(x)−fn(y)|>δ|fn(x)−fn(y)|>δを満たすような、y  Nn > 0が存在する。[37]

条件2は次の条件を満たすことである[36]

任意の開集合の対UJ  Vに対して、fk(U) ∩ J ≠ を満たすような、k > 0が存在する。

条件3は次の条件を満たすことである[38]

周期点の集合Y閉包cl(Y)が、cl(Y) = Vである。

 

研究史

カオス命名以前[編集]

カオス理論誕生以前にも、カオスの性質の1つである初期値鋭敏性の存在について既に指摘されていた[20]ジェームズ・クラーク・マクスウェルが、1877年の著書「物質と運動」の冒頭中で、『「同じ原因は常に同じ結果を生み出す」という、よく引用される原則がある。もう一つの原則として、「似た原因は似た結果を生む」というものがある。多くの物理現象はこれを満たすような状態にあるが、小さな初期状態の違いがシステムの最終状態に非常に大きな変化をもたらす場合もある』と述べている[39][40]。さらにマクスウェルは、続く注記の中で『気象現象は局所的な不安定性の限りない集まりに起因するような現象かもしれず、1つの有限な法則体系に全く従わないような現象かもしれない』と述べており[40]、後にローレンツが指摘するような気象現象の不安定性を指摘している[39]

19世紀における一般的な非線形微分方程式の解法手法は、ウィリアム・ローワン・ハミルト等の成果に代表される積分法(積分、代数変換の有限回の組み合わせ)による求解と、微小なずれを補正する摂動法である。この積分法による解が得られる系を、ジョゼフ・リウヴィル可積分系と呼んだ。その条件は、保存量の数が方程式の数(自由度)と一致することであった。

カオス理論の始まりともされる系統的研究の最初のものとしては、アンリ・ポアンカレによる仕事が挙げられる[41]1880年代、ポアンカレは、三体問題の研究において、非周期的で、増加し続けないまたは固定点へ到達しない軌道があり得ることを発見した[42][43]1892年から1899年、ポアンカレは、三体問題では保存量が不足し積分法による解析解が得られないこと(ポアンカレの定理)を証明した(このような系を非可積分系と呼ぶ)。彼は、この場合に軌道が複雑となることを示唆している。ただし、この時点では、その実態は認識されていなかった。

実在の系でカオス運動を観察したと考えられる例としては、1927年のファン・デル・ポール(en:Balthasar van der Pol)とファン・デル・マークによる実験報告が挙げられる。彼らは1927年の論文において非線形電気回路の実験における周波数非増加(Frequency demultiplication)と呼ぶ現象を報告した[44]。これは彼らが構成した非線形な電気回路において、コンデンサの容量Cをパラメータ的に増加させていくと、回路の発振周波数ωω/2, ω/3, ω/4,...という風に非連続的に移り変わっていく現象である[45]。特に、ファン・デル・ポールらは、このような発振周波数の非連続的な遷移の前に不規則な雑音(irregular noise)が発生することを報告している[45]。小室元政らは、実在の系によるカオス現象の報告はこの実験が最初だろうと推測している[46]。しかし、ファン・デル・ポールらは、この現象を副次的な現象(subsidiary phenomenon)と見なして、それ以上の研究は続けなかった[47]

1940年代、アンドレイ・コルモゴロフV.B.チリコフ等により、このハミルトン力学系(例えば、多体問題といった散逸項の無いエネルギーが保存される系)のカオス研究が進められた。大自由度ハミルトニアン系カオスは、統計力学の根源に結びつくものでもあるが、その定義すら困難であり今後の研究が期待される。

 

 

カオス命名と研究の隆盛[編集]

1961年、エドワード・ローレンツにより、簡単な微分方程式から作られる天気予報の気象モデルの数値計算結果がカオス的な振る舞いをすることが発見された。1963年、この結果はテント写像により引き起こされるカオスとして発表された[48]。このタイプのカオスは、ローレンツカオス(後述するカオスの例)と呼ばれ、ローレンツ・アトラクタを持つことでも有名である。しかし、このローレンツの論文は当時はほとんど注目を集めることなく埋もれてしまった[49]

また京都大学工学部の上田v亮は、1961年に既に、非線形常微分方程式を解析する電気回路で発生したカオスを物理現象として観測し、不規則遷移現象と称してカオスの基本的性質を明らかにしていた。しかし、日本の学会ではその重要性が認識されず長い間日の目を見なかった。この上田が発見したストレンジ・アトラクタは、後の1980年にフランスの数学者ダビッド・リュエルによりジャパニーズ・アトラクタと命名され、日本海外でも知られるようになった[50]

これらの複雑な軌道の概念は1975年、ジェイムズ・A・ヨークリー・ティエンイエンによりカオスと呼ばれるようになった。また、マンデルブロ集合で有名なブノワ・マンデルブロなどにより研究が進んだ。

一方では、非線形方程式の中にはソリトン(浅水波のモデル)のように無限の保存量を持ち、安定した波形を保ち将来予測の可能な、解析的な振る舞いが明らかになっているものもあり、カオスとは対極にある存在である。しかし、ソリトンと言えども、連続無限自由度を扱うような特殊な場合で可積分系が破れることがあり、その場合カオスになることが指摘された。

カオスの一例[編集]

 

ロジスティック写像[編集]

詳細は「ロジスティック写像」を参照

二次方程式を用いた写像

{\displaystyle X_{n+1}=aX_{n}(1-X_{n}):0\leq a\leq 4,\ 0\leq X_{0}\leq 1}Xn+1=aXn(1−Xn):0≤a≤4, 0≤X0≤1Xn+1=aXn(1−Xn):0≤a≤4, 0≤X0≤1

ロジスティック写像と呼ぶ。もともとロジスティック方程式という連続時間の微分方程式として、19世紀から知られていたが、写像として時間を離散的にすることで、極めて複雑な振舞いをすることが1976ロバート・メイによって明らかにされた。

ロジスティック写像は生物の個体数が世代を重ねることでどのように変動していくのかのモデルとして説明される。ここで {\displaystyle a}aa(下図の横軸)が繁殖率、{\displaystyle X_{n}}XnXn(下図の縦軸)が{\displaystyle n}nn世代目の個体数を表している。

この様に単純な二次方程式から複雑な振る舞いが発生し、また {\displaystyle a=4}a=4a=4 付近では初期値{\displaystyle X_{0}}X0X0のわずかな違い(例えば0.10.1000001)が将来の値{\displaystyle X_{n}}XnXnに決定的な違いをもたらしている。

Description: https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/7d/LogisticMap_BifurcationDiagram.png/350px-LogisticMap_BifurcationDiagram.png

ロジステック写像 x → r x (1 ? x )

横軸は{\displaystyle a}aaを、縦軸は{\displaystyle X_{n}}XnXnの収束する値を表している。{\displaystyle a=3}a=3a=3 2値の振動へと分岐し、更に分岐を繰り返していくことが分かる。

 

実際の個体数の変動[編集]

{\displaystyle a=3}a=3a=3 の場合。2/3に収束するが、非常に収束が遅い。

Description: Chaos(a3).png

{\displaystyle a=3.9}a=3.9a=3.9 の場合。規則性のない変動となる。

Description: Chaos(a3.9).png

カオスの判定

カオスにはその必要十分条件が与えられていないことから、カオスの判定は複数の定義の共通を持って、カオス性があるという判定以外に方法が無い。このため、カオスの判定とは必要条件という性質を持つ。多くは、スペクトルの連続性、ストレンジアトラクタ、リアプノフ指数、分岐などを以ってカオスと判定している。

しかしながら、ただのランダムノイズであっても、リアプノフ指数が正になるといった事例が指摘され、こういった面よりノイズとカオスは区別はつかない。そのため、例えばリアプノフ指数や、何をもってストレンジアトラクタと見なすかの指標をそのまま信用してカオスと判定して良いかという問題が起きる。

1992年に、ノイズか決定論的システムから作成されたデータかどうかを検定する「サロゲート法」が提案された。サロゲート法は基本的には統計学における仮説検定にもとづく手法であるため、与えられたデータが検定にパスした場合でも、そのデータについて「仮定したノイズであるとは言いがたい」という主張はできるが、「カオスである」という断定をすることはできず、その意味で決定的な検定方法ではない。以下サロゲート法の概要について説明する。

 

サロゲート法[編集]

サロゲート法には様々な方法がある。代表的な「フーリエ変換型サロゲート法」について述べる。

帰無仮説: 元時系列は、(予め仮定する)ノイズである

有意水準をαとする

  1. 元時系列のパワースペクトルを計算
  2. パワースペクトルを元時系列とし、位相をランダムに設定した新スペクトルをN個作成
  3. 新スペクトルをフーリエ逆変換して、新時系列をN個作成(これらをサロゲートデータと呼ぶ)
  4. 元の時系列の統計値<N個の新時系列の統計値の下α/2を与える値 または N個の新時系列の統計値の上α/2を与える値<元の時系列の統計値帰無仮説棄却(ノイズとは言えない)

 

 

 

 

 

 

Wojciech Hubert Zurek

 (PolishŻurek; born 1951) is a theoretical physicist and a leading authority on quantum theory, especially decoherence and non-equilibrium dynamics of symmetry breaking and resulting defect generation (known as the Kibble–Zurek mechanism).

 

Education[edit]

He attended the I Liceum Ogólnokształcące im. Mikołaja Kopernika (1st Secondary High School of Mikołaj Kopernik) in Bielsko-Biała.

Zurek earned his M.Sc. in physics at AGH University of Science and TechnologyKraków, Poland in 1974 and completed his Ph.D. under advisor William C. Schieve at the University of Texas at Austin in 1979.[1] He spent two years at Caltech as a Tolman Fellow, and started at LANL as a J. Oppenheimer Fellow.

Career[edit]

He was the leader of the Theoretical Astrophysics Group at Los Alamos from 1991 until he was made a Laboratory Fellow in the Theory Division in 1996. Zurek is currently a foreign associate of the Cosmology Program at the Canadian Institute for Advanced Research. He served as a member of the external faculty of the Santa Fe Institute, and has been a visiting professor at the University of California, Santa Barbara. Zurek co-organized the programs Quantum Coherence and Decoherence and Quantum Computing and Chaos at UCSB's Institute for Theoretical Physics.

He researches decoherence, physics of quantum and classical information, non-equilibrium dynamics of defect generation, and astrophysics. He is also the co-author, along with William Wootters and Dennis Dieks, of a proof stating that a single quantum cannot be cloned (see the no cloning theorem). He also coined the terms einselection and quantum discord.

Zurek with his colleague Tom W. B. Kibble pioneered a paradigmatic framework for understanding defect generation in non-equilibrium processes, particularly, for understanding topological defects generated when a second-order phase transition point is crossed at a finite rate. The paradigm covers phenomena of enormous varieties and scales, ranging from structure formation in the early Universe to vortex generation in superfluids.[2] The key mechanism of critical defect generation is known as the Kibble–Zurek mechanism, and the resulting scaling laws known as the Kibble–Zurek scaling laws.

He pointed out the fundamental role of environment in determining a set of special basis states immune to environmental decoherence (pointer basis) which defines a classical measuring apparatus unambiguously. His work on decoherence paves a way towards the understanding of emergence of the classical world from the quantum mechanical one, getting rid of ad hoc demarcations between the two, like the one imposed by Niels Bohr in the famous Copenhagen interpretation of quantum mechanics. The underlying mechanism proposed and developed by Zurek and his collaborators is known as quantum Darwinism. His work also has a lot of potential benefit to the emerging field of quantum computing.

He is a pioneer in information physics, edited an influential book on "Complexity, Entropy and the Physics of Information",[3] and spearheaded the efforts that finally exorcised Maxwell's demon. Zurek showed that the demon can extract energy from its environment for "free" as long as it (a) is able to find structure in the environment, and (b) is able to compress this pattern (whereas the remaining code is more succinct than the brute-force description of the structure). In this way the demon can exploit thermal fluctuations. However, he showed that in thermodynamic equilibrium (the most likely state of the environment), the demon can at best break even, even if the information about the environment is compressed. As a result of his exploration, Zurek suggested redefining entropy and distinguishing between two parts: the part that we already know about the environment (measured in Kolmogorov complexity), and, conditioned on our knowledge, the remaining uncertainty (measured in Shannon entropy).

He is a staff scientist at Los Alamos National Laboratory and also a Laboratory Fellow (a prestigious distinction for a US National Laboratory scientist). Zurek was awarded the Albert Einstein Professorship Prize by the Foundation of the University of Ulm in Germany in 2010.

Honors[edit]

·                    1996 Laboratory Fellow at the Los Alamos National Laboratory

·                    2004 Phi Beta Kappa Visiting Lecturer

·                    2005 Alexander von Humboldt Prize

·                    2009 Fellow of the American Physical Society[4]

·                    2009 Marian Smoluchowski Medal, highest prize of the Polish Physical Society

·                    2010 Albert-Einstein Professorship, honorary professorship at the University of Ulm

·                    2012 Order of Polonia Restituta, the Commander's Cross - one of Poland's highest Orders

·                    2014 Los Alamos Medal, the highest honor bestowed by the Los Alamos National Laboratory[5]

Books[edit]

·                    as editor with John Wheeler: Quantum theory of measurement. Princeton University Press 1983[6] ISBN 978-06916131612014 edition

·                    as editor with A. van der Merwe, W. A. Miller: Between Quantum and Cosmos. Princeton University Press, 1988 ISBN 978-0691605548

·                    as editor: Complexity, Entropy and Physics of Information. Addison-Wesley 1990; 2018 pbk editionISBN 0-201-51506-7.

·                    as editor with J. J. Halliwell, J. Pérez-Mercader: Physical Origins of Time Asymmetry. Cambridge Univ. Press, Cambridge, 1994 ISBN 0-521-43328-2[7] 1996 pbk editionISBN 0-521-56837-4.

·                    as editor with H. Arodz and J. Dziarmaga: Patterns of Symmetry Breaking, NATO ASI series volume (Kluwer Academic, Dordrecht, 2003) ISBN 978-1-4020-1745-22012 edition. e-book ISBN 978-94-007-1029-0

 

 

 

Wojciech Hubert Zurek(ポーランド語:Żurek; 1951年生まれ)は、理論物理学者であり、量子論、特に対称性の破れとその結果生じる欠陥生成(Kibble-Zurekメカニズムとして知られる)のデコヒーレンスと非平衡ダイナミクスの第一人者です。

 

 

教育

彼はILiceumOgólnokształcąceimに出席しました。ビエルスコビャワにあるミコワジャコペルニカ(ミコワジコペルニクの第1中学校)。

 

ズレックは修士号を取得しています。 1974年にポーランドのクラクフにあるAGH科学技術大学で物理学の博士号を取得し、博士号を取得しました。 1979年にテキサス大学オースティン校のウィリアムC.シーバー顧問の下で。[1]彼はカリフォルニア工科大学でトールマンフェローとして2年間過ごし、LANLJ.オッペンハイマーフェローとしてスタートしました。

 

キャリア

彼は1991年から1996年に理論部門の研究所フェローになるまでロスアラモスの理論天体物理学グループのリーダーでした。Zurekは現在、カナダ高等研究所の宇宙論プログラムの外国人アソシエイトです。彼はサンタフェインスティテュートの外部教員のメンバーを務め、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の客員教授を務めています。 Zurekは、UCSBの理論物理学研究所で量子コヒーレンスとデコヒーレンスおよび量子コンピューティングとカオスのプログラムを共催しました。

 

彼は、デコヒーレンス、量子および古典情報の物理学、欠陥生成の非平衡ダイナミクス、および天体物理学を研究しています。彼はまた、ウィリアム・ウッターズとデニス・ディークスとともに、単一の量子を複製できないことを示す証明の共著者でもあります(複製不可能定理を参照)。彼はまた、einselectionquantumdiscordという用語を作り出しました。

 

Zurekは同僚のTomW.B. Kibbleとともに、非平衡プロセスでの欠陥生成を理解するための、特に2次相転移点が有限速度で交差するときに生成される位相欠陥を理解するためのパラダイムフレームワークを開拓しました。このパラダイムは、初期の宇宙での構造形成から超流動での渦の生成に至るまで、膨大な種類と規模の現象をカバーしています。[2]重大な欠陥生成の主要なメカニズムはKibble-Zurekメカニズムとして知られており、結果として生じるスケーリング法則はKibble-Zurekスケーリング法則として知られています。

 

彼は、古典的な測定装置を明確に定義する環境デコヒーレンス(ポインター基底)の影響を受けない一連の特別な基底状態を決定する際の環境の基本的な役割を指摘しました。デコヒーレンスに関する彼の研究は、量子力学の有名なコペンハーゲン解釈でニールス・ボーアによって課されたもののように、量子力学の世界からの古典世界の出現の理解への道を開き、2つの間のアドホックな境界を取り除きます。ズレックと彼の共同研究者によって提案され開発された根本的なメカニズムは、量子ダーウィニズムとして知られています。彼の仕事はまた、量子コンピューティングの新しい分野に多くの潜在的な利益をもたらします。

 

彼は情報物理学のパイオニアであり、「複雑さ、エントロピー、情報の物理学」[3]に関する影響力のある本を編集し、最終的にマクスウェルの悪魔を追い払う努力を主導しました。 Zurekは、(a)環境内の構造を見つけることができ、(b)このパターンを圧縮できる限り、悪魔はその環境から「無料」でエネルギーを抽出できることを示しました(残りのコードはより簡潔です)構造のブルートフォース記述)。このようにして、悪魔は熱ゆらぎを利用することができます。しかし、彼は、熱力学的平衡(環境の最も可能性の高い状態)では、環境に関する情報が圧縮されていても、悪魔はせいぜい損益分岐点に達する可能性があることを示しました。彼の調査の結果、Zurekは、エントロピーを再定義し、2つの部分を区別することを提案しました。環境についてすでに知っている部分(コルモゴロフの複雑さで測定)と、知識を条件として、残りの不確実性(シャノンエントロピーで測定)です。

 

彼はロスアラモス国立研究所のスタッフサイエンティストであり、ラボラトリーフェロー(米国国立研究所の科学者としては名誉ある人物)でもあります。 Zurekは、2010年にドイツのウルム大学の財団からアルバートアインシュタイン教授賞を受賞しました。

 

栄誉

1996年ロスアラモス国立研究所の研究所フェロー

2004年ファイベータカッパ客員講師

2005年アレクサンダーフォンフンボルト賞

2009年アメリカ物理学会フェロー[4]

2009年スモルコフスキーメダル、ポーランド物理学会最優秀賞

2010年アルバート・アインシュタイン教授、ウルム大学名誉教授

2012年ポーランド復興勲章、司令官の十字架-ポーランドで最も高い勲章の1

2014年ロスアラモスメダル、ロスアラモス国立研究所から授与された最高の栄誉[5]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熱とは何か

 

物体を熱すると 温度が高くなり, 温度の高い物体と 低い物体とを接触させておくと, 高いほうから低いほうへ 熱 が移動して 双方の温度が等しくなる ということは 誰でも知っています。

このとき移動した熱とは何でしょう。

 今ではこの 熱の伝達 が エネルギーの移動 である ということは よく知られています。

つまり 熱 は エネルギー の 1形態です。

このことは どのようにして 説明できるのでしょう。

この問題こそ ミクロの世界 と マクロの世界 を 結びつける 鍵だったのです。

 

「フロギストン説」, 「カロリック説」

19世紀の初めまで, 物体の燃焼は, 目に見えない, しかもマイナスの 質量をもつ フロギストン (燃素) というものを仮定して 説明されていました. これによると, 全ての燃える物体は フロギストン を含んでいて, 物が燃えるのは その中に含まれていた フロギストンを 失う過程であると 説明されていました。たとえば,水銀のような 物質は,燃えると重くなるので フロギストンは マイナスの質量を持つ と考えられたわけです。

 

また, 熱の伝達は, 重さがゼロの 目に見えない カロリック (熱素) という流体が 移動する現象であると 説明されていました.

 ラボワジェ (フランス: 1734 - 94) は 精密な定量的化学実験を 行って, 物が 燃焼 するのは 物質と物質とが 化合する過程である ということを確かめ, フロギストン説を 否定 しました。

また, 熱は摩擦によって 限りなく作り出すことが できるという ランフォード の実験などによって, カロリック説も 否定 されました.

 

「熱の本性」

 ジュール (イギリス: 1818 - 89) は 下の図 のような 実験装置を用いて 熱 が エネルギー と 同等であることを確かめ, 熱と力学的エネルギー との間の関係,すなわち 熱の仕事当量 を 測定しました(1845)

 現在では, 精密な測定の結果,  1 cal (カロリー) = 4.1855 J であることが わかっています.

 

 

 

               ジュールの実験装置

分銅が下がって タンクの水中の 羽根車をまわします. 分銅の位置エネルギーは 羽根車の回転の 運動エネルギーとなり, そのエネルギーを もらった水は 温められて 温度が上がります。

 

「統計力学」

 第1部で学んだように, 物質は多数の分子や原子が 集まってできていることが 明らかになりました. 最初は, これらの分子や原子は 古典論 の法則, すなわち ニュートン力学 と マクスウェルの電磁気学 に したがって運動していると 考えられました. ミクロの世界 の 分子や原子の運動を 目で見ることは できませんが, 物質を構成する 分子や原子の 個数が非常に多いので, ある種の 統計的平均値 を 求めることによって, 分子や原子の運動を 圧力 とか 温度 とかいった マクロの世界 の 物理量 に関連付ける ことが可能です.

 たとえば,気体の圧力は 気体分子が容器の 壁に衝突して 壁におよぼす力の 平均値です. また温度は多数の分子の エネルギーの 平均値です.

 このように, 個々の分子や原子の 自由度 から, マクロの世界の いろいろな法則を 説明しようとする 理論が マクスウェル (イギリス: 1831 - 79) や ボルツマン (ドイツ: 1844 - 1906) によって発展させられた 古典統計力学 です. 次のページで その考え方を 説明しましょう。

 

 

3-2: 分子の運動と比熱

 

        1 g の物質の温度を1℃ (1K) 上げるのに必要な熱量を 比熱 といいます. たとえば,水 1 g の温度を 1℃ (1K) 上げるのに必要な 熱量は1cal (カロリー) ですから, 水の比熱は 1cal /(g K)  = 4.186 J /(g K) です.

 比熱というマクロの 世界の物理量を, ミクロの世界の分子や原子の 自由度から導くことが できれば,すばらしい ことです. これを以下で説明しましょう. その準備のため エネルギー等分配の法則 について勉強しましょう.

 

       「エネルギー等分配の法則」

 第1部 第4ページで 「分子の運動」 について学んだとき,  1-4-A のページ で 気体分子の速さの推定 をしました. そのとき 上図 (A) のように 立方体の容器の中に 気体を入れ, 気体の分子が x 軸 方向に平均の速さ vx で 運動しているとして 容器の壁面に衝突して 壁面 A に加わる 圧力を計算しました. その結果,

 

という関係式が得られました. いま1 mol (モル) の 気体を考え, 気体分子1個の質量を m として, 有名な ボイル・シャルルの法則

 

と上の関係式とを比べると, (mol の気体の質量) = m N A (N A は アボガドロ定数) ですから,

  

 

が得られます. 定数 k は ボルツマン定数 と呼ばれる普遍定数です.

 上の式の左辺の mvx2/2 は分子1個の運動エネルギーです. つまり,温度 T の気体の 中の1個の分子の 平均の運動エネルギーは kT /2 であることを意味します.

 ただし,上の議論では 分子の運動は x 軸方向のみであると 考えていますが, 実際には分子は 上図の (B) のように y 軸や z 軸方向の 速度の成分も持っていますから, それらも考えなければなりません. どの方向を考えても, 同様な結果が得られます. したがって, 分子の平均の速度 の xyz 成分をそれぞれ vx vy vz とすると, 分子1個の 平均のエネルギー ε は

 

となります. この結果は, 分子の運動の x y z の3つの 自由度 が, 平等に, 等しいエネルギー kT /2 を担っている ということを 意味します. これを エネルギー等分配の法則 といいます.

 このエネルギー等分配の法則は 統計力学 の理論を 用いると,さらに一般化 され,「全ての力学的な 自由度に平等に 運動エネルギー kT /2 が分配される」 という定理が 証明されます. その説明には少し数式を 要しますので,別のページ

 

3-2-A: エネルギー等分配則の一般化

をご覧下さい. 難しいと思われる方は 読み飛ばしてください.

 

「気体の比熱 」

 1モルの理想気体 を考えましょう. 理想気体とは,その気体を 構成している分子 の間に働く力が完全に 無視できるような 気体のことです. 1モルの中には アボガドロ定数 N A だけの個数の分子 が含まれています.

 希ガスのような 1原子分子 の気体 の場合には, 1つの分子の自由度は x y z 3 です. したがって,1モルの 1原子分子気体の 全自由度 は  3N A です.

 水素や酸素などのような 通常の 2原子分子 の気体 の場合には, 下図 に 示すように, 1つの分子の自由度は 5 と考えられます. したがって,1モルの 2原子分子気体の 全自由度 は  5N A です.

               2原子分子の自由度

重心の x y z の3つの 自由度の他に, 回転の自由度 θ,φ があるので, 合計の自由度は 5 です.

 

 

        エネルギー等分配の法則 によって, これらの  3N A または  5N A 個の全自由度に kT /2 の運動エネルギーが等分配されると, 全エネルギーは

 

となります. したがって, これらの理想気体の 1モルあたりの比熱 (モル比熱)

 

となります.

 この結果を 実験値と比較したものが 下表 です. 理論値が実験値を よく再現しています. いいかえれば, エネルギー等分配則が 結構良く成り立って いるようです. なお, 一酸化炭素の分子は 構造が2原子分子に 似ているので, 比熱がほとんど同じですが, 炭酸ガスや水蒸気や メタンは分子の構造が 少し複雑になるので, 比熱が異なってくるようです.

 

 

「固体の比熱」

 固体では 分子間が割合強く 結合しているため, 気体や液体のように 分子が自由に 運動することができません. したがって気体のときと 同じように 分子の運動の 自由度 を 勘定することが できません.

           

固体はバネの集まり

図は2次元的に 描かれていますが, 本当は3次元的に 奥行きがあるものと 思ってください.

 

 

        固体では, 分子どうしが 上図 のように バネでつながっていて, 平衡な位置のまわりで 微小振動をしていると 考えましょう. つまり分子の数だけの バネの集合と同じ 運動を考えるわけです. 1つの分子には x y z 方向の 3 つの運動があるので, 1モルの中には 3N A 個のバネがあることになります.  (3-2-A) のページ で述べたように, 1つのバネには kT のエネルギーが 等分配されます. したがって,1モルの 固体の全エネルギーは

 

となるから, 固体のモル比熱 は

 

となります. この結果は, 1819年に実験的に発見された デュロン・プティの法則 に他なりません. 下表 に 実際のモル比熱の 測定値をあげておきます.

 

 

 

「比熱の問題点」

 上に述べたように, エネルギー等分配則 によって,比熱は 分子の運動から うまく説明ができるように 見えます. 確かに測定温度が高いときには 問題が無いようです. しかし温度が低くなると, ボロが出てきます. たとえば,下図に 亜鉛 のモル比熱の 実験値が示されていますが, 温度が低くなると 比熱がどんどん小さくなって, 0 K に近くなると 限りなく 0 に近づきます. どのような固体でも, みんな同様な性質を 示します. これは 古典論 ではうまく説明のつかない 問題点でした.

 

 

 

 

 

真空の比熱

まったく物質の存在しない 真空 の比熱とは 変な考え方のように思われる かもしれません. 物が存在しない真空に 温度やエネルギーが あるのでしょうか. あります. それは 放射 という エネルギーです.

 

 赤く熱せられた電気ストーブ からは,熱 (主として赤外線) が 放射され,これに当たった 人体などが温かくなります. これを 熱放射 と呼びます. 熱放射は,空気を伝わって 熱が伝導するのではなく, 間に何も無くても, 間が真空であっても 熱が伝わります. つまり真空中でも 放射,すなわち 光 や 電磁波 というかたちの エネルギーが存在するのです.

 したがって,真空と言えども エネルギーを含むことが できるので,真空の温度 さえ決めることができれば, 真空の比熱 を 測ることが可能です. それでは真空の温度は どのように考えれば よいのでしょう.

 

「空洞放射」

 温度 T の 熱溜 (熱浴ともいいます) の中に物体を入れると, 物体の温度が T より 低ければ,物体は熱溜から 熱を吸収し,高ければ 放出して, しばらく時間がたつと, 物体は熱溜と同じ温度 T になって 平衡状態 (熱的釣り合い状態) になります. 平衡状態を細かく見ると, 物体は常に熱を 放出・吸収していますが, 平均的には 放出する熱量と 吸収する熱量とが 等しく,バランスが 取れている状態です.

 熱溜の中に物体を入れる かわりに,真空 を 入れることを考えましょう. 例えば,大きな鉄のかたまり の中に,真空の 空洞 を 作れば,鉄のかたまりが 熱溜となりその中の 空洞 (真空) 内には, 放射 () という エネルギーが満ちるわけです. (下図参照). 平衡状態では 空洞 (真空) 内の 温度は 空洞の壁の温度に 等しいと考えられます. このような空洞内の放射を 空洞放射 と呼びます.

 

 

 空洞内にどのような 振動数の光があり, その強さがどの程度であるかを 知るには, 空洞の壁に 空洞内をあまり乱さない程度の 小さな孔を 明けて観測すれば よいでしょう. 現実的には,製鉄所の 溶鉱炉の内部などは 空洞放射の状態に 近いと考えられますので, 溶鉱炉の壁の小窓から 内部を観測すれば 空洞放射が 観測できるわけです.

 

       「真空の比熱の困難」

 前ページの  固体の比熱 の項で 学んだように, 固体はバネ (調和振動子) の集まりであり, それぞれのバネに kT のエネルギーが 等分配されるものとして その比熱を求めました. その結果は温度が あまり低くない限り, 実験値によく合うということが わかりました.

 マクスウェルの電磁気学 によると,真空における 電磁波 () は 電磁場 の振動であり, それは連続な 弾性体 の振動 と同等であることが わかっています. 1次元の弾性体なら ギターや琴のような 弦の振動 であり, 2次元なら太鼓のような 膜の振動 を連想できます. 光の場合は電磁場の振動 ですから3次元です. したがって, 空気が連続体であると 仮定して,空気の振動 すなわち 音波 を連想すればよいでしょう.

 これらの振動は 形の上ではバネ (調和振動子) の 集まりと同等です. したがって固体の比熱を 求めるのと全く同じ筈です. 異なるのは,そのバネの 個数,すなわち 自由度 の数です.1モルの 固体の場合のバネの個数は, 分子の数 (アボガドロ定数) の3倍 と考えることが できましたが,真空の中の 電磁場は連続な弾性体です. いま簡単のため 長さ L の 弦の振動を考えましょう. (下図参照)

 

長さ L の弦の固有振動

波長λが 2L 2L/2 2L/3 2L/4, ・・・の 固有振動が 可能です. c を弦を 伝わる音速とすれば, 振動数νは, λν= c ですから, 上図の通りです.

 

上図 のように, 長さ L の弦に 許される固有振動 の振動数νは, c/(2L) を単位にして その整数倍 (n ) です. したがって, 振動数がνとν+dν の間であるような 固有振動の数は

   

となります。

 真空 (空洞) 中の電磁場の 振動は3次元的ですから, 上の議論を3次元に しなければなりません. 少し面倒になりますので, ここでは詳しい議論は 省略しますが, 結果は

 

となります. ただし,V  は空洞の体積, c  は光速です.

 以上のように, 真空内の電磁場の 振動は,完全な連続体の 固有振動ですから, いくらでも大きな 振動数が許されます. つまり,これらの 振動数を持つ バネ (調和振動子) が無限に多数ある ことになり, 真空内の電磁場の 自由度は無限大 となってしまいます. これらのバネの各々に kT のエネルギーが 等分配されると, 空洞放射のエネルギーは 無限大になり, 真空の比熱は 無限大となって, 空洞は いくらでも大量の エネルギーを吸収する 底なし沼となります. 実際にはそのような ことはありませんから, 以上の考え方には どこかに間違いが あるにちがいありません。

 

 

プランクの公式

 

 「空洞」(真空) の比熱 の結果,ごく素朴に エネルギー等分配則 を応用すると真空の比熱は 無限大となって, 現実とは異なって しまいます。

空洞放射では エネルギー等分配の法則は 成立しないのでしょうか。

古典論 (ニュートン力学や マクスウェルの電磁気学 やそれらから導かれる 古典統計力学) に基づくかぎり, これはどうにもならない 結論です。

古典論のどこかが 間違っている のでしょうか。これこそ19世紀終盤の 物理学上の 最大の難問でした.

 

       「レーリー・ジーンズの公式」

 前ページで議論したように, 真空中の電磁場において, 振動数がνとν+dν の間の 固有振動の数 は, マクスウェルの電磁気学 を使うと,単位体積当たり

 

 

となります. エネルギー等分配の法則 にしたがって, これらの固有振動の全てに kT のエネルギーが 分配されるとすると, 単位体積当たり, νとν+dν の間の振動数を持つ 光 (放射) のエネルギー U(ν)dν は

 

となります. これが レーリー (イギリス:1842 - 1919)と ジーンズ (イギリス:1877 - 1946) によって提案された レーリー・ジーンズの公式 です.

 

 製鉄所の溶鉱炉のような 高温の中に, どのような振動数の光が どのような強さで存在するかを 測定すれば, 空洞放射の スペクトル (振動数毎の強度分布) が測定できます. 下図 に その実測値が示されています.

空洞放射のスペクトルの実測値

 

図中の実線の山の頂上の 点の横軸の位置が 最も明るい光の振動数を 示しています. この振動数が温度と共に 大きくなるということから, 温度が上がると 空洞内の光の色が 赤からだんだん白に 変化していくことを 示しています. 図中の破線 は,温度が 1646 K の場合の レーリー・ジーンズの公式 の強度分布です.

 

たとえば, 鉄のかたまりを 熱すると, 温度が低いときは 黒く,温度が 1000 ℃ くらいになると 鮮やかに赤くなり, 1500 ℃ くらいになると白く まぶしく輝きます. したがって,放射の強さや 色は温度によって異なります. この様子が 上図 に 示されているわけです.

 上図 には レーリー・ジーンズの公式 の値が 破線 で 示されています. 振動数が小さいときには レーリー・ジーンズの公式は 実測値によく合っています. 振動数が大きいときには 全くだめです. どうやら 大きい振動数に対しては エネルギー等分配の法則は 成り立たない ようです.

 

「ウィーンの公式」

 ウィーン (ドイツ: 1864 - 1928) は エネルギー等分配の法則を 使わないで,空洞放射の エネルギー分布が どのような式で 表されるかについて 大変巧妙で一般的な考え方を 展開しました(1896). ウィーンのアイデアを 詳しく説明するのは かなり面倒ですから, ここでは省略して 結果のみを紹介しましょう.

 ウィーンによれば 空洞放射の 単位体積当たりの エネルギー分布 U(ν)dν は

 

と書かれます. ウィーンの議論だけからでは 関数 F(x) の 関数形はわかりませんが, 大切なことは この関数が 振動数 νと 温度 T との 比で決まるということです. 実験結果は 確かにぴったりと この法則に合っています. これを ウィーンの法則 (或いはウィーンの変位則) と呼んでいます.

空洞内の 最も明るい光の波長を λm とすると, 上の法則から

 

という式が得られますが, この法則はしばしば ウィーンの変位則 と呼ばれます.

 また,ウィーンの法則 において  F(x) = k/x  とすれば, レーリー・ジーンズの公式 が出てきます.

 ウィーンは関数 F(x) として

 

 

と取れば, エネルギー分布 U(ν)dν は

 

 

となり,定数βを適当に きめると,高い振動数の 領域で,実験値に大変よく合う ことを示しました. これを ウィーンの公式 といいます.

 

「プランクの公式」

 空洞放射のエネルギー分布 に関する レーリー・ジーンズの公式 は 振動数の 小さい 領域 で実験値によく合い, ウィーンの公式 は 振動数の 大きい 領域 でよく合います. そこで プランク (ドイツ: 1858 - 1947) はこの2つの公式を つなぐ内挿的公式を 見つけました(1900). これこそ プランクの公式 と呼ばれる 19世紀の終末を 飾る大発見でした.

 プランクは, 上で述べたウィーンの法則 において関数 F(x) として

 

とすればよい ということを 見つけました. そうすると 空洞放射の エネルギー分布は

 

 

となります. これが有名な プランクの公式 です. 式の中の k は ボルツマン定数です. また,定数βは 実験に良く合うように 決めます. 通常 kβ = h と書き,h を プランク定数 と呼んでいます. その値は

 h = 6.626 × 10-34 Js

です. プランクの公式が実験値を いかに良く再現するか 下図 で明らかでしょう.

               空洞放射のスペクトルとプランクの公式の値

丸印は実験値. 実線はプランクの公式 の値. 横軸が振動数ではなく, 波長になっているから 注意して下さい. (波長)×(振動数) = (光速) です.

 

 

「3つの公式の比較」

 レーリー・ジーンズ の公式 は 振動数 ν が小さいときに 実験値によく合い, ウィーンの公式 は 振動数 ν が大きいときに 実験値によく 合います. 上に述べたように, プランクの公式 は 振動数 ν の全ての領域にわたって 実験値に見事に 合致しました.

 これら3つの公式を 比較したものが, 下の図 です. この図から, プランクの公式 が レーリー・ジーンズ の公式と ウィーンの公式とを つなぐ公式 (内挿公式) となっている ことがよく分かります.

               3つの公式の比較

レーリー・ジーンズの公式, ウィーンの公式, プランクの公式 の 比較.

 

 

 

 

素粒子の性質の測定方法

 

ここでは、素粒子のいろいろな性質(特性)を実験的に測定する方法について紹介する。ここでとりあげているのは、高エネルギー物理学実験などで使われているおもな方法であるが、これ以外の測定方法もありうるので注意されたい。

 

速度、運動量、エネルギー

 

これらは、素粒子や観測者の運動の状態により変化する量であり、素粒子に「固有の特性」ではないが、素粒子の特性を測定する際に必要となるのでここで説明する。

速度は、2つ以上の検出器を用いて、素粒子の通過時間を計り、それで距離を割ることにより求める。これは、飛行時間(TOF)測定と呼ばれる方法である。ほかに、物質中を進んだ時の電離量(電荷の項を参照)を用いる方法(dE/dx検出器)、チェレンコフ光の放出を利用する方法(チェレンコフカウンター)がある。

運動量は、荷電粒子の場合、一様な磁場中を進むときローレンツ力によりカーブ(円弧)を描くのであるが、この曲率半径が運動量に比例することを利用する。こういう検出器を磁気スペクトロメーターと呼ぶ。ただし、この場合、素粒子の電荷を知っていないといけない。電荷を持つ素粒子の電荷は、ほとんどの場合、電子の電荷と絶対値が等しいが、電荷の項にある方法で測定することも可能である。

エネルギーは、電子、光子、高エネルギーのハドロンの場合、粒子を十分な厚さの物質に当てると、そのほとんどすべてのエネルギーを物質中に放出する。このエネルギーを光の明るさや電流量(物質中の電離した電子の全電荷)を通じて測定する。こういう測定器をカロリメーターと呼ぶ。

直ちに崩壊する粒子の運動量(またはエネルギー)は、崩壊後の粒子すべての運動量(またはエネルギー)の和である(運動量の場合はベクトル和)。速度は、崩壊後の粒子系の重心の速度に等しい。

 

質量

 

速度と運動量から特殊相対論を用いて、質量が算出できる。崩壊した粒子の場合でも、これは同じである。この場合、質量は、崩壊後の粒子群の重心系におけるエネルギーの総和に一致する。ここで測定されるのは、慣性質量である。重力質量の測定は、重力が弱いことから、陽子などを除くと現在の技術では不可能である。

 

電荷

 

物質中を進む荷電粒子は、物質の一部を電離させるが、この電離の量は、荷電粒子の速度と電荷に依存する。速度がわかっておれば、電荷は電離量から求めることができる。ここで測定されるのは電荷の絶対値である。符号は、磁場中で進行方向が変わることからフレミングの左手の法則を用いて求める。崩壊した粒子の場合は、崩壊後の粒子の電荷の和で、これを求めることができる。

 

スピン

 

スピンを求めたい粒子を含む2体反応で、その衝突が起こる確率(散乱断面積)と、その逆反応が起こる確率との比から、スピンを求める方法がある(詳細バランスの方法)。また、反応や崩壊現象を詳しく解析し、スピンを決定できる場合もある。この場合、反応前後の粒子間の軌道角運動量を何らかの方法で知っている必要がある。角度分布や種々の対称性がこの決定に利用できる。

ボソンは、崩壊後に偶数個のフェルミオン(0も偶数であることに注意)を含み、フェルミオンは奇数個のフェルミオンを含むので、崩壊前の粒子が、ボソンであるかフェルミオンであるかは、たいていの場合すぐにわかる。

 

アイソスピン

 

強い力におけるアイソスピン対称性を利用して、それが崩壊した後の粒子のアイソスピン成分のいろいろな組み合わせの確率比から、もとの粒子のアイソスピンを決定できる。ただし、強い力で崩壊しない粒子の場合は、この方法は使えない。アイソスピン成分の異なる同種の粒子(これらは、ほぼ同じ質量を持っているが電荷が違う)を見つけることによりアイソスピンを決定する。

 

パリティ

 

これも反応や崩壊現象を用いる(スピンの項参照)。崩壊する粒子の場合は、崩壊後の粒子のパリティと軌道角運動量が決まればパリティは決定される。通常、これらの方法ではスピンとパリティの両方決定されるが、データの不足により、どちらか一方のみが決定される場合もある。

 

寿命

 

寿命が長い粒子の場合は、崩壊までの時間を測定する。崩壊までの時間が短くてそれを直接測定できない場合でも、粒子が運動しており、速さと崩壊するまでに走った距離がわかっておれば時間が計算できる。素粒子の寿命というのは平均寿命なので、多くの粒子についてこれを測定し平均する必要がある。また、寿命は、高速で走っている粒子の場合、相対論的効果で伸びるので、これの補正も必要である。

もっと寿命の短い粒子の場合は、質量の不確定性(幅)から、不確定性原理を用いて、寿命を算出する。

 

Cパリティ

 

荷電変換ともいう。粒子のCパリティは、粒子とその反粒子が同じ粒子であるときのみ定義できる。これが、Cパリティが定義されている粒子ばかりの系に崩壊するときは、崩壊後の粒子のCパリティの積として計算できる。そうでない場合は、粒子反粒子のペアを含む状態に崩壊するのであるが、このペアの間の軌道角運動量の偶奇性を求めれば、ペアのCパリティが決定できる。崩壊現象のかわりに生成現象(電子陽電子衝突や2光子衝突からの生成を見る)を用いても良い。

 

磁気双極子モーメント

 

磁石の強さに対応する量である。磁場中に粒子を入れ、スピンの向きを磁場と平行にした時と反平行(逆向きで平行)にした時のエネルギーレベルの差から測定できる。また、スピンが磁場の向きに対して平行でないときは、スピンの軸の向きが回転する「歳差運動」が起こるが、この周期からも測定できる。また、素粒子反応で、光子との反応や光子を媒介する反応の強さを精密に測定することによっても求められる。

 

磁気単極子

 

磁気単極子(モノポール)はまだ見つかっていないが、いろいろな方法で捜されている。磁場中での振る舞いを見る方法、超伝導コイルの中を通った時に起こる電流を検出する方法のほか、ディラックの予言するモノポールの場合、高速の粒子についても物質中でのエネルギー損失が大きいことや、光子との反応が強い(光子の放出確率が高い)ことを利用する方法がある。