条件反射
古典的条件付け(レスポンデント条件付け)とオペラント条件付け
古典的条件付け(レスポンデント条件付け)
とは古典的条件付けとは、中性刺激と無条件刺激を繰り返し対呈示することで、中性的な刺激によって生理的反射を引き起こすようにすることです。
生理的反射(無条件反射):生き物が本来持っている反応
生理的刺激:生理的反射を引き起こす刺激
中性刺激:無条件反射を引き起こさない刺激
英語では、「Classical conditioning」もしくは「Pavlovian conditioning」と表記し、パブロフ型条件付けやレスポンデント条件付けと訳されることもあります。
古典的条件付けの具体例(「パブロフの犬」)
古典的条件付けの具体例としては、「パブロフの犬」という実験が有名です。
「パブロフの犬」実験は、ソビエト連邦(現ロシア)の生物学者イワン・パブロフが行った実験です。
実験内容は、次のとおりです。
犬は生まれつき「唾液を分泌する」という生理的反射を持っている前提で、内容を確認してください。
犬に特定の音(中性刺激)を聞かせる(メトロノームだと言われている)
犬に餌を与える(生理的刺激)
1.〜2.を繰り返す
犬は、特定の音を聞いただけで唾液を出すようになる
1.〜2.の過程が条件付けです。
条件付けが完成後は、犬の唾液を引き起こす特定の音を「条件刺激」、唾液を閔妃つすることを「条件反応」と呼びます。
つばの分泌が無意識的に調節されている点において、通常の学習とは異なっています。
オペラント条件付けとは
オペラント条件付けとは、特定の自発的な行動をした時に、報酬(正の強化刺激)や罰(負の強化刺激)を与えることで、その行動を強化もしくは弱化させることです。
オペラントとは、オペラント条件付けを体系的に研究したアメリカの心理学者バラク・フレデリック・スキナーが、自発的に行動するという意味の「operate」をもじって造った言葉です。
正の強化刺激:オペラント行動(自発的な行動)の出現頻度を高める刺激
負の強化刺激:オペラント行動の出現頻度を低める刺激
強化:オペラント行動の出現頻度が高まること
弱化:オペラント行動の出現頻度が低まること
英語では、「operant conditioning」もしくは「instrumental conditioning」と表記されます。
オペラント条件付けは、心理学の領域にとどまらず、運転などのスキルトレーニング、アルコールや薬物などの治療、発達障害の子どもの療育、リハビリといった分野で現在も応用されています。
オペラント条件付けの具体例(「スキナー箱」)
オペラント条件付けの具体例としては、「スキナー箱」という実験が有名です。
「スキナー箱」実験は、オペラントの名付け親であるスキナーが行った実験で、内容は次のとおりです。
スキナー箱(レバーを押すと餌が出てくる仕組みが設けられた箱)を準備する
スキナー箱に、食事を与えていないネズミを入れる
ブザーが鳴った時にレバーを押すと餌を与えるようにする
ネズミは、ブザーの音を聞くとレバーを押すようになる
スキナー箱は、オペラント行動の出現頻度を高める正の強化の例です。
古典的条件付けとオペラント条件付けの違い
古典的条件付けとオペラント条件付けの基本を確認したので、次は2つの条件付けの違いについて見ていきましょう。
受動か能動か
古典的条件付けは、パブロフの犬実験に代表されるように「受動的な」条件付けです。
パブロフの犬以外では、梅干しの例が有名です。
最初は、梅干しを見ただけでは唾液は分泌されず、梅干を食べた時に唾液が分泌されますが、食べ続けるうちに梅干を見ただけで唾液が出るようになります。
一方のオペラント条件付けは、「能動的な」条件付けです。
スキナー箱の実験では、ネズミの自発的な行動に対して報酬を与えることで、その行動の出現頻度を上げていました。
他にも、子供がテストで良い点数を取ったらご褒美をあげることで、子どもの勉強する頻度を高めるというのもオペラント条件付けです。
このように、オペラント条件付けは、報酬や罰によって、人や動物の能動的な行動の出現頻度を高めたり低めたりします。
随意か不随意か
古典的条件付けによる行動は、元々は生き物が本来的に持っている反射によって引き起こされる、不随意(自分の意思ではコントロールできない)反応です。
例えば、パブロフの犬実験において犬が唾液を分泌するのは、不随意反応です。
一方で、オペラント条件付けによる行動は、元々持っている反射とは関係なく、生き物が自発的に行う随意反応です。
スキナー箱実験において、ネズミはレバーを押すのは随意反応です。
オペラント条件付けと学校教育(オペラント教育)
オペラント教育とは、子どもの自主的・自発的な行動を尊重しながら、オペラント条件付けの理論や方法を活用して、子どもの良い行動を伸ばし、悪い行動を減らしていく教育です。
オペラント条件付けを活用した教育をまとめてオペラント教育と呼ぶことがあるのです(まだ、一般的に浸透した呼び方とまでは言えません。)。
例えば、生徒がテストで良い点を取ったり、困っているクラスメイトを助けたりしたらたくさん褒め、より勉強したり、クラスメイトに優しく接したりするよう促します。
一方で、クラスメイトを叩いたり、教室内の物を壊したりしたら見逃さずに指導し、暴力を止め、落ち着いて行動することを覚えさせます。
オペラント条件付けを活用した教育は、家庭においても手軽に実践できるもので、実際に家庭向けの教育プログラムも開発されています。
オペラント条件付けを活用した教育プログラム(治療プログラム)
シェイピング法:一定の行動を獲得させるために、行程をスモールステップに分けて成功体験を積ませながら、最終的に目標とする行動を獲得させるプログラム
トークンエコノミー法:子どもが特定の良い行動をした時に、ご褒美を与えて強化するプログラム
ペアレントトレーニング:発達障害の子どもを持つパパママを対象とした、子どみの好ましい行動を増やし、好ましくない行動を減らすためのテクニックを、パパママが身につけるためのプログラム
まとめ
古典的条件付けやオペラント条件付けの考え方が示されたのは数十年前ですが、心理学の世界や教育現場では、今でも基礎的な知識として学ばれています。
また、条件付けに基づいた治療プログラムや教育プログラムも次々に開発されており、子どもの知育や教育を考える上で知っておきたい知識の一つです。
特に近年、オペラント条件付けを活用した、発達障害の子どもに対する教育プログラムや、発達障害の子どものパパママに対するペアレントトレーニングが注目を浴びるようになっているので、発達障害の子どもを育てるパパママには、ぜひ知っておいてもらいたいところです。
マシュー・ホワイト・リドレー(英: Matthew White Ridley, 5th Viscount Ridley、1958年7月2日 - )ことマット・リドレー(英: Matt Ridley)は、イギリスの科学ジャーナリスト。『ゲノムが語る23の物語』『やわらかな遺伝子』をはじめとする科学啓蒙書を多数発表している。
2013年には世襲貴族から保守党所属の貴族院議員に選出された。
主な著書
The Red Queen: Sex and the Evolution of Human Nature, 1993.
長谷川真理子訳『赤の女王―性とヒトの進化』翔泳社,1995
The Origins of Virtue: Human Instincts and the Evolution of Cooperation, 1996.
岸由二・古川 奈々子訳 『徳の起源―他人をおもいやる遺伝子』翔泳社,2000
Genome: The Autobiography of a Species in 23 Chapters, 1999.
中村桂子・斉藤隆央訳『ゲノムが語る23の物語』紀伊國屋書店, 2000
Nature via Nurture: Genes, Experience, & What Makes Us Human, 2003.
中村桂子・斉藤隆央訳『やわらかな遺伝子』紀伊國屋書店, 2004
The Rational Optimist: How Prosperity Evolves, 2010.
大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之訳『繁栄―明日を切り拓くための人類10万年史』早川書房, 2010
受賞歴
Evolution is everything 進化は万能である
バラス・フレデリック・スキナー(Burrhus Frederic Skinner, 1904年3月20日 - 1990年8月18日)は、アメリカ合衆国の心理学者で行動分析学の創始者。B.F. SkinnerまたはBF Skinnerと表記されることが多い。20世紀において非常に影響力の大きかった心理学者の一人で、自らの立場を徹底的行動主義(radical behaviorism)と称した[2] 。スキナーは系統的に行動主義心理学の一員で、他にトールマン、ハル、ガスリーなどがいる。
スキナーは自由意志とは幻想であり、ヒトの行動は過去の行動結果に依存すると考えていた。もし過去の行動結果が悪いものであったなら、その行動は繰り返されない確率が高く、良い結果であれば、何度も繰り返し行いえるとの立場に立っていた[3]。これをスキナーは「強化理論(Principles of Reinforcement)」と呼んだ[4]。
スキナーは、行動強化のために強化理論を用いることをオペラント条件づけと呼び、その強化度を測定する尺度として最も適切なものは応答速度だとした。彼はオペラント条件付けの研究のために「オペラント条件付け箱」を発明し、これはスキナー箱として知られている[5]。さらに応答速度測定のため速度累積レコーダーを発明し、これらを用いて心理学者チャールズ・ファースターと共に様々な業績を残している[6][7]。
またもともとは小説家志望であったことを反映してか、小説の執筆など作家活動も行っている。代表作は、ソローの「ウォールデン:森の生活」を下敷きに心理学的ユートピアを描いた「ウォールデン2」。
来歴
ペンシルベニア州 Susquehanna Depot 生まれ。ハーバード大学卒業。
ミネソタ大学、インディアナ大学の教職を経て、1958年からハーバード大学心理学科 Edgar Pierce Professor を務めた。
1968年に、ジョンソン大統領よりアメリカ国家科学賞(生物科学部門)を授与されている。
1990年に白血病で死去。
業績
ヒトを含む動物の行動をレスポンデントとオペラントに分類し、パブロフの条件反射をレスポンデント条件づけとして、またソーンダイクの試行錯誤学習をオペラント条件づけとして再定式化し、行動分析学を体系化した。彼の方法は帰納的で、徹底的行動主義の立場に立つ。外側から観察可能な行動に限らず,人間が行っているすべての行動を研究対象として、反応強化子随伴性、三項強化随伴性の枠組みから、オペラントと環境との関わりによって行動が形成・維持・抑制する過程を分析した。ワトソンの古典的行動主義、や、ハル、トールマン、ガスリーらの新行動主義と共通しているような誤解を受けることが多いが、行動をこころの科学的な研究ができるまでの暫定的な研究対象と考える前者の立場とも、認知などの内的過程を推測して媒介変数を積極的に取り入れる後者とも大きく異なっている。また、認知や感情の存在を否定したと誤解されるが、こうした媒介変数を行動の原因とすることを否定しただけであり、随伴性の結果として生じる状態であると考えていた。
また、直線走路を用いて研究が行われていた時代に、レバーを押すと自動的に餌が出てくる仕掛けを施したネズミ(ラット)用の箱型実験装置スキナー箱(Skinner Box)や、反応の記録装置として累積記録器を考案。スキナー箱はその後、さまざまな実験動物用に改変され、薬理学や遺伝学の研究にも活用されている。
その後、理論化したオペラント条件づけの教育的応用としてのプログラム学習と、これを具現化したティーチング・マシンを開発。のちのコンピュータ支援教育(CAI)やCBT、WBTといった個別学習方式に少なからぬ影響を与えた。さらに米海軍と共同でプロジェクト鳩を行い、動物を機器の制御装置として用いる研究を行った。
現在、スキナーの業績に基づいた実践理論は応用行動分析(ABA)として発展し、会社組織での人材育成や学校での学習教育のほか、発達障害児の支援教育、カウンセリング場面(臨床行動分析と呼ばれることが多い)やイルカ・猛禽・犬などのペット動物の訓練技術として幅広く応用されている。
受賞
1968年 - アメリカ国立科学財団(NSF) - アメリカ国家科学賞
1985年 - ニューヨーク科学アカデミー フレジデント賞
1990年 - アメリカ心理学協会(APS) 功労賞
1990年 - アメリカ心理学会(APA) ウィリアム・ジェームズフェロー賞
著作
The Behavior of Organisms: An Experimental Analysis, 1938. ISBN 1-58390-007-1, ISBN 0-87411-487-X.
Walden Two, 1948. ISBN 0-87220-779-X (revised 1976 edition).
宇津木保、うつきただし訳『心理学的ユートピア』誠信書房、1969年
Science and Human Behavior, 1953. ISBN 0-02-929040-6. A free copy of this book (in a 1.6 MB .pdf file) may be downloaded at the B. F. Skinner Foundation web site BFSkinner.org.
河合伊六ほか訳『科学と人間行動』二瓶社、2003年
Schedules of Reinforcement, with C. B. Ferster, 1957. ISBN 0-13-792309-0.
Verbal Behavior, 1957. ISBN 1-58390-021-7.
The Analysis of Behavior: A Program for Self Instruction, with James G. Holland, 1961. ISBN 0-07-029565-4.
The Technology of Teaching, 1968. New York: Appleton-Century-Crofts Library of Congress Card Number 68-12340 E 81290 ISBN 0-13-902163-9.
村井実、沼野一男監訳、慶応義塾大学学習科学研究センター訳『教授工学』東洋館出版社、1969年
Contingencies of Reinforcement: A Theoretical Analysis, 1969. ISBN 0-390-81280-3.
玉城政光監訳『行動工学の基礎理論――伝統的心理学への批判』佑学社、1976年
Beyond Freedom and Dignity, 1971. ISBN 0-394-42555-3.
波多野進、加藤秀俊訳『自由への挑戦―行動工学入門』番町書房、1972年
山形浩生訳『自由と尊厳を超えて』春風社、2013年
About Behaviorism, 1974. ISBN 0-394-49201-3, ISBN 0-394-71618-3.
犬田充訳『行動工学とはなにか―スキナー心理学入門』佑学社、1975年
Particulars of My Life: Part One of an Autobiography, 1976. ISBN 0-394-40071-2.
Reflections on Behaviorism and Society, 1978. ISBN 0-13-770057-1.
The Shaping of a Behaviorist: Part Two of an Autobiography, 1979. ISBN 0-394-50581-6.
Notebooks, edited by Robert Epstein, 1980. ISBN 0-13-624106-9.
Skinner for the Classroom, edited by R. Epstein, 1982. ISBN 0-87822-261-8.
Enjoy Old Age: A Program of Self-Management, with M. E. Vaughan, 1983. ISBN 0-393-01805-9.
M.E.ヴォーン共著、本明寛訳『楽しく見事に年齢をとる法―いまから準備する自己充実プログラム』ダイヤモンド社、1984年
M.E.ヴォーン共著、大江聡子訳『初めて老人になるあなたへ――ハーバード流知的な老い方入門』成甲書房、2012年
A Matter of Consequences: Part Three of an Autobiography, 1983. ISBN 0-394-53226-0, ISBN 0-8147-7845-3.
Upon Further Reflection, 1987. ISBN 0-13-938986-5.
岩本隆茂、長野幸治、佐藤香監訳『人間と社会の省察―行動分析学の視点から』勁草書房、1996年
Recent Issues in the Analysis of Behavior, 1989. ISBN 0-675-20674-X.
Cumulative Record: A Selection of Papers, 1959, 1961, 1972 and 1999 as Cumulative Record: Definitive Edition. This book includes a reprint of Skinner's October 1945 Ladies' Home Journal article, "Baby in a Box", Skinner's original, personal account of the much-misrepresented "Baby in a box" device. ISBN 0-87411-969-3 (paperback)