脱力の極意はすべてに通ず     島田明徳

 

 

陳驢春老師

武術とは自然の力、宇宙の法則を自分の動きの中に表現しようとすることであり、それを達成するためのシステムが正確に伝承されている。

宇宙の法則を自分の身体で表現するには、まずそれまでに自分が身に着けてしまった悪しき習慣を打破しなければならない。

それが、徹底した緩みの訓練、リラックストレーニングであり、そのような修練を経て、やがては宇宙と一体となり自由自在に動けるようになることが武術の真の目的である。

 

 

 

 

陳式太極拳

沈肩墜肘    肩を沈め、肘を墜とす

 

肩を上げると緊張します。肩の上部の筋肉である三角筋や僧帽筋が常に緊張していては、腕を十分に機能させることはできません。

本来は腕は肩関節からぶら下がっていることが必要ですが、緊張していると、腕が上方に引き上げられてしまっているからです。

 

コツは肩甲骨を拡げ、広背筋を緊張(しぼる)させる

 

含胸抜背

立身中正

虚領頂勁、

 

松腰松胯、尾閭中正、、三尖相照、平起平落、等速運動

柔術の技は、太極拳で要求される姿勢でないと、相手に技が掛からないのです。

特に、太極拳で要求される、虚領頂勁、沈肩墜肘、含胸抜背、松腰松胯、尾閭中正、立身中正の姿勢で脱力して技を掛けると、見事に技が掛かります。

南龍整体術と古流柔術と中国武術の原理は同じです。

 

 

最小物質の集合体が人体や宇宙となる。

二つの違いは波動の密度である。

この違いを創り出すには、働き(法則)があり、そのために人を人たらしめ、宇宙を宇宙たらしめている。

この働きのことを東洋では「氣」と呼んでいた。

 

生体エネルギー  物質と意識の両面に働きかける   精

物質の基     物質               気

意識エネルギー  意識               神

 

一つひとつの動作が自然の法則に適応しているかを確認すること

身体を動かすことで生じる身体内部の状況を知覚すること、       内部統覚法

 

太極拳でユックリと動く理由はこの「功」にある。

功は指導者がいなければ知ることができない。

他者から訣(コツ)を教えてもらわないと不可能である。

自分の体臭が自覚できないように、自己の内的世界を知るためには、経験者からの指摘を必要とする。

 

3つの功

気功     生体エネルギーである精を扱う

勁功     物質エネルギーである気を扱う

意功     意識エネルギーである神を扱う

 

気功の訓練

練丹行

下腹部に氣精を集めて、氣の塊である丹をつくりあげる修練です。

氣を熱気にすることは短期間で練り上げることはできますが、丹にまで固めるのは容易ではありません。

一般的な生活ではほとんど不可能です。

毎日30分から1時間行いますが、なかなか練り上がらない。

3ヶ月もすれば誰でも腹部が暖かい感じになり、続けていると熱に変わる。

武息という強い呼吸法で氣を丹田に集めるのが特徴。  腹式呼吸のこと?

粘土を腹の中でこねている感じ、続けているとこの粘土が振動して、痙攣しているような感じ。

かたまりが上下左右に動き出すように感じられてきたら、練丹は完成。

練丹を開始して6年目に丹ができた。

 

環丹行

練丹でつくった氣の塊を意識を使って動かす。

小周天と全身周天

 

小周天

氣の固まりである丹を会陰(肛門の1cm前)へ導き、尾骶骨へと回す。この時に強烈な熱気を感じる。

ハッキリとした熱の固まりを背骨に沿ってゆっくりと上昇させる。

百会(頭頂)まで上げたら、額から鼻筋を通って鼻の下から口を通す。

この時、舌を上顎につけて氣がスムーズに降りるようにする。

舌の裏側を通した氣を喉に下ろして身体の中心線を降ろして下丹田に戻す。

 

氣の経路を経絡といい、血管で喩えると大動脈にあたる督脈と大静脈にあたる任脈がある。

 

勁功の訓練     物質エネルギーである気を扱う

勁には

化勁(力を受け流す)や粘勁(ねばりつく)のような能力の意味と、  感覚能力を養成するレッスン

発勁のような筋肉とは違った別の力の意味がある。          力を抜いた力  力学的に説明可能

太極拳の推手

 

 

意功       人間の心の領域を扱う修練

意識の向け方、用い方

身体と意識の相関関係を知覚する

相手の意識の動きを察知する訓練

 

自分の内部で働く自然の法則を感じ取れるようになる。

またこの法則が宇宙すべてを創りあげている働きであることも理解されるようになる。

最終段階においては、大自然の法則を理解していくもの

 

太極拳の修練段階   型、法、功

形、技法、そして功

功のレッスン

腰の動きを徹底的に覚える   姿勢

勁道を通す          身体の重力に関わる力を感知

               

右足の踏みつけとねじりから生じる力を腿、股、腰、背中、肩、手へと伝える

腕に伝わった瞬間に腰を回転に合わせて沈めて、身体内にパワーを生じさせ、身体を震わせるようにして、一気に腕を突き出す(発勁)

 

次は気功のレッスン

氣を通す

身体中の氣と外部の氣を感知する。外部の氣は水のように抵抗を感じる

次には外部の氣の重さを感じなくなる。 内と外が交流をはじめたため

最後には内と外が繋がってくる。 身体の縁がなくなって、大気の中に溶け込んでいるような感覚が生じる。

 

気功から意功へ

内と外の氣が交流を始めると、意識の領域にも変化が生じる。

深層の身体感覚が自我意識に入り込んできて、氣と自我意識が一体化されてくる。

こうして自我意識が拡大して、神(魂、霊、法則、宇宙意識)の働きを感じ取れるようになる。

空の青さも自分、山の緑も自分、川の冷たさも自分、と外界も自分の意識として実感できる。

自分がすべてのものとつながって存在している感覚、自然の一部として自然の法則とともにあることを感じる。

 

 

 

練氣柔真法

柔真とは柔身であり柔心でもあり重心。

心と体がしなやかで、したたかで、こだわりを捨て去った時に、自分を支えている力との調和が図られ、人間に内在している大きな力を引き出すことができる。

修練は

リラックス、氣の解放を第一とし、心身を徹底的に弛緩させることを修得していく。

次に、精神の集中(呼吸、イメージ)し、心と体の動きを一致させ、重心を自由に移動させることを修得します。

二人一組の相対練習で行うのは、一人で行う気功などでは、外部から生じるストレスによる緊張を取ることが困難だからです。

 

はじめははっきりと自覚できる氣神よりも粗いエネルギーである気や氣精から扱います。

氣精(生命力)は、日常生活では大半が外部からの信号と思考脳に反応する感覚器官のために使われています。

 

肉体の統御から始めて、

呼吸の統御、

感覚の統御、

最後に、自我意識の統御を修練します。

これがマインドを浄化するためのステップです。

 

 

効率よく学ぶ2つのアプローチ

自分の身体を知的に理解する学習部分

身体技法を試みることで心と体の相関関係を体験する部分

 

 

腰椎三番

脊柱S字が腰椎の三番の部分を湾曲の頂点にしっかりといれていると、横から押されても倒れない。

 

背骨と気力の関係

この2つには相関関係があります。

他人から横から押される時に、押されないと反抗する気持ちを持った時に、背骨のS字の頂点が腰椎の三番にあるかないかで、気持ちの強さに違いがあるのを体感してみましょう。

 

重力

なぜ人間は重力に抵抗してまで日本足で立つという非合理的?で不安定な形態へと進化したのか?

不安定というのが一番進化しやすい形態だから。

 

安定感とは地球の中心に引かれる感覚

重力に適応している感覚は自分の内にある重さを感じていることからはじめます。

動いてバランスをとるというのは重力に対しての感覚である。

 

養体

自然の法則に適応した身体づくりのこと

持ち上がらない身体  足裏に意識を向けさせる    

持ち上がる身体    頭頂に意識を向けさせる。

立っている姿勢   チェックポイント 顎、肩、腕、肘、脚

坐っている姿勢   チェックポイント 顎、肩、胸、膝

 

練氣の4つの原理

1 心身のリラックス                  練気の原理の根本

2 身体中心の確保                   練気の体に関する原理

3 合理的身体運動  重みの伝達と伸筋主導       練気の技に関する原理

4 呼吸力と氣のパワー  意識とエネルギーの集中    練気の

 

1 リラックスするのは重さを感じるため

心身ともにどっしりとした安定感を得るには、まず自分の重さを感じることからはじめます。

そのためには心身がリラックスしていることが前提になります。

身   姿勢の習慣  脱力 ダラーとしているのではなく無駄な力が抜けていること

心   とらわれやこだわりを取り去る

 

使われる筋肉は弛緩していればしているほど、その筋肉の持つ能力を発揮できます。

普通の動きには拮抗する2つの筋肉を使う。

効率よく動かすにはこのような無駄を極力減らし、意図する筋肉のみを使えるようにする。

 

力を抜くとは刀を抜くと同じ意味での抜く。

心に囚われる方法  眉間にシワ、口をへの字、肩をいからせる、背を曲げる

心の囚われをとる。うまくやろう、失敗を恐れる、

 

 

2 腹が据わるとは

自分の中心点である丹田の位置をすえる。

 

丹田を据える運動

スワイショウ、鞭手、足振り、足振り上げ、足振り落とし

 

まずは内部の体の重さである「重力」を感じ、次にそれに反する「抗力」を感じ、これが足の裏からスネ、股関節、体幹へと伝わるのを感じる。

この抗力を利用して手足を降り出す。

 

3 力を抜いて力を出す   筋力を使わず圧力を使う

一般的には力とは筋肉の収縮率によって生じる

実際の力は収縮率とは別の梃の原理を使った力がある。

相手や重力をつかって運動をする。

 

武術の達人たちが発見した力とは重力のもつ原動力。

重力と協調しながら身体運動を行う。

 

身体全体に作用している重力と地面に接している部分からの抗力を合成する。

これを身体の「重み」とする。

この重みを身体各部へ移動させて、力を発揮する部分へと導きます。

重みをできるだけ小さなポイントに集約して「圧力(重心圧)」とし、これを「力」として発揮する。

筋肉の性質は、重みを伝達すること。

筋肉の導線としての作用を勁道と呼び、筋肉の伝達作用を利用して特定の部分に重みを伝えることを「勁道を通す」、という。

 

虚実分明  重みの移動を明確にする。手足に力を入れず、重みを正しく伝えて圧力として発揮する。

 

中国武術では筋肉の主たる機能は感覚器であると知られ、状況を感受、判断、反応する情報伝達機能であるとしています。

人体を水袋でできたエネルギー体として扱っている。

「重み」の連動を習得するには、人体を液体として扱い、流体力学をベースにする。

座取りの練習

筋肉には力を入れず、身体の中心から力を連動させ、腕は動かすことだけに使うと相手を楽に動かすことができる。

 

推手    屈筋主導から伸筋主導の動きへ  

手から勢いよく水や氣が出ているイメージで前に手を進めると、相手が倒れる。

通常は屈筋主導で人間は動いているが、伸筋で動く練習をする。

やってやるぞと思うと屈筋が緊張し、伸筋の働きを邪魔するので、筋力を緩めて、圧力を使う練習をする。

 

身体は言葉のような観念レベルではなく、イメージのような中層意識に働きかけるほど強く作用する。

 

 

4 呼吸力

呼吸は酸素と二酸化炭素の交換

気持ちとの関係性

深層意識と表層意識を繋ぐ役割

筋肉運動との関係               伸筋は吐く息と連動し、屈筋は吸う息と連動している。

 

呼気  伸筋 伸びる  自分から離れる   思いやり      ただ、やる

吸気  屈筋 縮む   自分中心になる   自己中心的     うまくやる

 

 

気のパワー

生命エネルギー(氣)を外部刺激の反応に使っているが、これを内部のチャクラへと逆転させる。

この時にエンドルフィンなどの脳内物質が抽出され強烈な快感を得ることができる。

この力をつかって感情や欲望を制御できる。

 

筋収縮のエネルギーであるATPアデノシン三リン酸を活性化させる。

 

意識と重心

意識する場所に重心が移動する。

 

 

道を極める

茶の湯とはただ湯をわかして茶をたてて

飲むばかりなることと知るべし      千利休「利休百首」

 

切り結ぶ白羽の下こそ地獄なれ

身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあり       柳生石舟斎

 

重力に適応した身体と身体運動

自然の法則に適応した心身を会得