狂気の子分
心が物質にくわれている
腕白小僧が刑事に捕らえられる
つっぱり乙女がクラブに嵌る
志が部屋代で飛んでいく
一齧りずつ臓の奥へと侵入する
このまま体を明け渡せというのか
どこへいった原初の血潮
どこへいった湧き溢れる力
これが呪文だったのか
未知なるものが取り憑いた
両手を顔にあてるとバンパイア
内で闘いがはじまった、きついやつである
狂気に導くのはよしてくれ、
そうでなきゃ耐えるだけの力をおくれ
ちゃんと死が待っているんだろうね
遠くに立って勝手によそ見しないでおくれ
覚悟を決めて宣言する
すべてをうけよう、逃げることなく
隠すことなく、洩らすことなく
「私」をかけて、砕けることも省みずここに立つことを誓う
すると
新しい境に入っていった
破壊 なにもかもこわしつくせの地響きの合唱が呻く中で呪文をとなえた
「形あるものはすべて消えされ」
世界中の核兵器、戦車、空母、発電所を爆破せよ
超都市、体制(システム)、科学、化学、コンピューターよ、水蒸気の中に消えされ
山、岩、砂、粒子を残さずバラバラに掻き砕け
すっとぼけて観念、思想、文字、記号、ついでに言葉も消えちまえ
不浄なるものを焼き尽くした業火が赤紫色に幽かにゆらめいている
全てをくいつぶした後にただ廃墟がひろがり
なんという地平線
なんという震撼、恍惚、忘世
浮体感と合一感は破壊の中でたちどまる劇は終わらない
狂気と呼ばれる愛と魔のクラッシュが
今まで以上の力を持って
砂礫の海からバベルの塔を雲の上までつきあげる
どうしようも押さえることのできない生命(いのち)がある限り、
外皮に覆われつくされ窒息死することはない
「子分」を人間にささげてくれた創造主に、私は悲愛(いと)しい祈りをささげる