幻視

 

100年前の表層の中心と世紀末から流れる時間で育った都市の小さな屋根裏でビジョンが与えられた

ChaosからCosmosへの収斂で水蒸気が一粒の水滴となって、焦燥の池に静寂の波動紋を落とした

 

乙女 母 青年 父

水 土 火 風

都市 郊外 森 山・沙漠

呪術 多神 主神 一神

クリトリス ヴァギナ アヌス マインド

パステル 原色 補色 光闇

物性 感性 悟性 理性

物質 心 魂 精神

美 豊饒 情熱 叡智

五識 意識 マナ識 阿頼耶識

プロテスタント カトリック オーソドックス ミスティズム

善悪の対立 善悪の親近 善悪の闘い 善悪の統一

小説 民話 伝説 神話

 

解脱の近道にあは底なしの深淵が待ちうけ、人を呑みこむレテの川がしたり顔して案内人をしていた

 

今見たものは嘘にちがいない

全てが夢想の中にちがいない

私一人をこの幻視の中に置かないでおくれ

一枚の落葉の音が本当に心臓をキュッとしめつける

霧雨の匂いが鼻腔の奥をつきさす

一口の珈琲が舌の先まで麻痺させる

一撫の羽毛が延髄の芯を震わせる

本の一文字の血潮と共に縮小・膨張する

身に何がおころうとしているのだ

 

祭りがさった後の冬の海

何億光年の彼方の星がきまぐれに語りつづける沈黙

私が私として立つことができるまでの時代との訣別

果たしてその日が来るのかどうか私は知らぬ

生を食らう「時」をねじふせて私の味方にするまで

もう少し「時」をおくれ

 

私は口を結んで大地の中へ分け入った