パナマ地峡  熱さには鼻水                      1996年春

 

中央アメリカで毎日自転車をこいでいた。

目標は1日150キロ、日が昇る前からこぎ始めれば昼過ぎには、到達する距離だ。

風は吹かず、坂が少なく、道は舗装されているという条件がつくけれど。

北半球なのに夏ではなく春の3月と4月が一年で一番暑い。

タイやフィリピンなどのアジアでもそうだ。

理由は降雨量、この時期は雨が降らないから。

何をしていなくても気温は35度を超えている。

雲一つない頭上からはギラつく太陽、

そして道路は熱を吸うアスファルト、

そしてそのムッとする照り返し

自転車を7時間漕ぎ続けると、体の中から噴き出る熱が止まらない。

脳内がヒリヒリ、ドクドク、ガンガン熱くなる。

すると突然、鼻から水が流れ落ち続ける。

いくら啜っても止まらない、大量だ。

これ以上、脳内の温度が上がると壊れるから、鼻水ラジエターが脳ミソを冷やしている?

暑さではなく熱さ。

今日も鼻水を垂れ流し、ペダルこぐ。

 

 

地峡には大地への思いが収斂される。

あまりに大きい海の中で、大地は不安定になり、過大な期待がかかる。

そして、やっぱり、いろいろなものが、呼び寄せられるように、集まってくる。

先住民、スペイン人、コロンビア共和国、西部開拓、アメリカ人、ゴールドラッシュ、フランス人、合衆国。

税金を払わなくてもよい天国に見たて、今では世界の特上の船がビジネスが女が集まってくる。

大地はただ黙ってあるだけ、人がいてもいなくても。

 

地峡では二度、蕁麻疹になった。

治療法は、気を落ち着かせ、休むこと、掻かないこと。 後は冷やすこともいい時がある。

医学界においても蕁麻疹の原因はまだよくわかっていないのが現状です。

ただアレルギーだと言うとなんだか納得してくれる患者さんが多いそうです、トレンドですから。

でもメカニズムは大分わかっているので、対処方法はいろいろあります。

蕁麻疹の本態は皮膚表面そのものの炎症ではありません。皮膚表面(表皮)の内側にある真皮といわれる層の上部で、毛細血管の拡張や血管壁の透過性の亢進(こうしん 激しくなること)が起こり、血管内から血漿(けっしょう)成分が漏れ出てきてその場に蓄積します。そして、浮腫といわれる状態を形成します。これが蕁麻疹の本体です。このたまった液体がまた血管内に戻って、血管の拡張もおさまると、跡形なく消えてしまうわけです。

マスト細胞から放出されるヒスタミンC5H9N3、セロトニン、ロイコトリエン等などが血管拡張の原因です。

この作用により蕁麻疹やアレルギーの症状である、くしゃみや鼻水などが発生します。

 

原因である抗原に  IgE抗体が一緒になり、細胞のIgE受容体と結びつくと、ヒスタミンを放出させます。この刺激を引き起こすものこそが、蕁麻疹の原因なのですが、簡単に特定することができていません。

 ヒスタミンには血圧降下、血管透過性亢進、平滑筋収縮、血管拡張、腺分泌促進などの作用があり、過剰に分泌されると、ヒスタミン1型受容体(H1受容体)というタンパク質と結合して、アレルギー疾患の原因になります。

音や光などの外部刺激および情動、空腹、体温上昇といった内部刺激などによっても放出が促進され、オキシトシン分泌や覚醒状態の維持、食行動の抑制、記憶学習能の修飾などの生理機能を促進することも知られています。

 

薬物療法としてはこのヒスタミンの作用をブロックする抗ヒスタミン薬が中心となります。この薬剤はヒスタミンがヒスタミンH1受容体に結合することを阻害することで効果を発揮します。

だから、抗ヒスタミン薬はこの受容体の作用を抑制することで、アレルギー症状を抑えるので、アレルギーそのものを治す薬ではありません。

将来的には抗原が特定できなくても、IgEの抗体や受容体をブロックして、ヒスタミンが放出されない方法を見つけると予測されています。 その時は副作用との兼ね合いがポイントになるでしょう。

 

蕁麻疹の治療に,静脈注射は原則必要ない、服用(経口)でOK

その他の治療法は

抗ヒスタミンの経口や動脈注射

塩化カリウムを静脈注射  血圧を低下させる降圧剤と利尿剤としての働きがある

強力ネオミノファーゲンC注射 成分であるグリチルリチンに薬効がある 副作用としてアナフィラキシーショックがあることも稀にある。アナフィラキシーショックが疑わ れる場合は,はじめからステロイドの静脈注射

アドレナリン自己注射  交感神経を刺激させ、皮膚の末梢血管を収縮と気管支を弛緩させる

他にもタガメットなどのH2ブロッカー内服  精神安定剤内服 抗生物質内服  ヒスタグロビンなどの注射
心理療法  減感作療法などなど

蕁麻疹に対して,抗ヒスタミン薬,抗アレルギー薬が無効な場合,内科医,外科医, 安易な皮膚科医が,しばしば選択する治療法はセレスタミンを内服させる です。セレスタミンには,ベタメタゾン(ステロイド薬)が 0.25 mg含まれています。 これは,よくステロイド剤として使用されるリンデロン錠(0.5mg)の半量です。セレ スタミンを2〜3錠以上内服させると,多くの場合,血中コルチゾールが低下してきま す。これは副腎皮質の機能が抑制されていることを 意味します。ステロイドの主要な副作用としては,消化性潰瘍,糖代謝異常(糖尿病) ,骨粗しょう症,感染症誘発,白内障などがあります。

すべての薬は副作用があります。なければ薬ではありません。気をつけてね。

 

非常事態の時のための豆知識 
皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、静脈注射、動脈注射の違い

人間の皮膚は表面から、表皮→真皮→皮下組織→筋層というつくりになっています。

皮内注射は表皮と真皮の間に薬液を注入 ツベルクリン反応など検査で用いられる。投与量は0.1 - 0.2mlと少量

皮下注射は皮下組織内に薬液を注入  皮下組織は血管が少ないため、吸収速度が遅い

筋肉注射は筋層に注入      筋層は血管に富んでおり吸収速度もとてもはやい

静脈注射はそのまま血管系に入るのでそのまま吸収されます。

吸収速度は、静脈注射、筋肉注射、皮下注射で10:2:1の比率

注射剤の効果の持続時間は吸収速度の反対になります。ですから効果を持続させたい場合は皮下注射、筋肉注射。

皮下注射は皮膚に沿うように浅く指すのに対し、筋肉注射は45度から垂直に深く刺します。ただし動脈や神経に刺してしまわない注意が必要。

動脈注射をしない理由

静脈注射はよいのに動脈注射はどうしてだめなのか。静脈の場合そのまま心臓に戻り、全体に均等に流れていきますが、動脈注射の場合そこから先の末梢部分にしか薬剤が届かない可能性があるからです。抗がん剤治療などごく一部のみをターゲットとした治療の際は動脈注射をする場合がある。

ところでアレルギー治療に即効性が必要でしょうか?

必要な時もあります。でも私の体験では一分一秒といったことはありませんでしたが、気道が極端に腫れて呼吸も苦しくなった時があります。