モシ キリマンジャロの麓      叫び

 

やさしき北の人々へ

こんな荒地までわざわざきてくださってありがとう

あなたかたが私達の荒地に樹を植えてくれるという思いやりは本当に感謝します

それらの木々がモッコリと繁り、いつの日か昔々のように緑の塊がずっと続く迷路になることを

私達も願っています

だからもう三日間も火のない竈にその木を切ってくべることができないことは悲しいことだけど

地球の環境のためには我慢しようと思います

今晩はみんなで火を囲んで食事をするという私達の夢、これはきっとサタンの誘惑に違いありません

私達はそんな幻夢のために北の方々が植えた木を伐るという欲望が消えさるように神に祈ります

先日私達はこんな噂をききました

あなたがたの国の一画にには固くて四角いものが天に届く程聳えたち、

その中に雷がキラキラと輝いているということです

その神殿は多くの木を伐り倒すことによって生きているとききました

私達はいつもあなたがたにお世話になっていて申し訳ありません

私達は貧しいけれども義のある戦士です

借りた貸しはしっかりと返します

人間として隣人として友人としてできるかぎりのお返しをしたいと思っています

今度は私達があなたがたの国へ行ってその神殿を取り毀して

ほんの少しですがお礼ができれば、と願っています

 

 

人類愛しましょう

 

専門家の行きつくところはシステムの歯車

好き嫌いにかかわらずシステムによってメシを食う

これは秩序(コスモス)の宿命(ダルマ)だけど役割が歯車だけだと体に心に精神に毒になる

黒幕たちは呑気にメシの食い過ぎてマンネリしていてつまらなそうだよ

こんな時こそ、黒幕の皆さんを驚かせて恐れさせ、人生の素晴らしさを一緒に共有しようではありませんか

この謎に満ちた幸運の輪が回り続ける世界の面白さを彼らに身をもって教えないのは我々の怠慢であり

彼らをそして私達を不幸に導いてしまうではありませんか

さあ、みんなで人類愛しましょ

 

 

切っちゃえ 

南の心という剣で北の物質を根こそぎ切断

都市のうそ

組織のうそ

統一のうそ

夢のうそ

ファロスのうそ

宗教のうそ

形にあらわすといううそ

世界全部をぶった切る

不自由、不正義、権力の弾圧、復讐、どれも私の胸をこがすものばかり

 

そして、

 

ついに

剣は私の喉に触れた

「北」の新時代用に鋳型された私に

「南」の心が力となって身を刳る

探検者である刑事が一皮むけば犯罪者になる

刑事の縄が巧妙で力があればあるほど

自分の首を少しずつ確実にしめあげる

がんじがらめに体をしばりあげる

おまけに口に汚物をぶちこむ

腹の底で波うつ臓液の声はやまない

私の爆発の糧であるポコポコ幻想をきれいにしっかり埋めてくれる

なんたる親切

刃こぼれした剣を研ぐには砥石を見つけにゃならぬ

 

ダルエスサラームの白昼夜

 

逃げたい

ともかく逃げたい

どこにも停まらない振り子から

 

南は私に色をくれた、感性の窓を開けてくれた、心の先にある魂にふれさせてくれた

北は私がカッコよくいられる所、金、世間、物

南が善、北は偽善

 

南によってなにかを知りつつある私

南によって「生」の秘密を垣間見た私

ああ、でも北は私の生まれた所

北の教育と思考で鋳型された私

南が真、北は偽真

 

人に幻を、世間に嘘をつくのが好きだけど

どこか遠くにいる『わたし』には嘘をつくのが嫌、何故か嫌

だけど俺は遠くの見ることもできぬ『わたし』に辿りつく程には力がない、何故かない

 

私の体臭がする北の幻想の仕事は、俺を欺いて『わたし』から遠ざけることだ、

とどこからかの声が囁く

 

シティボーイの閉じた思考は本人を二極にひっぱる

一枚一枚緑の札を数える

武器の学歴が目の前にぶらさがる

よきポストが席をあけてまつ

なぜか今、これらを受け入れるのは

俺が北に屈し南を見捨てることに繋がる

少年の中の乙女がつっぱる

やさしさをかかげ、可憐を鎧に、純を刀に、自我を土の下に埋め込んで

 

とうとう驢馬が道の二股で倒れた

私は「ない、ない」でも向かって「いく、いく」

それは蕾のようにまずかったけれど、ぐんじょう色の夜空に小さく白く浮かんでた

月に向かって臓液を吐き出して叫んだ

狂って吠えた

 

 

この頃はどうしても世界を二つに分けて考える病にかかっていた。 白と黒というように、なんでも二分法でわけて、そのどちらにもいけない現実に、夜になると実際に月に向かって吠えて暮らしていた。

そしてこれを続けた後に、全体でものを理解しようとする五分法が急に幻視として顕れ、一挙に目の前に地平線が現れ、いままでの鳥瞰図だけの視点に虫から見た等身大の視点が体から立ち上り体に落ち着いた。

ただ先進国で働くことに疑問があり、かといって途上国では現地の人から多くの期待をされ、塀を作って王様の暮らしをするか、みんなのリーダーになることを求められ、イギリス人のような貴族生活には嫌悪感があり、みんなを導くほどのものはまだ何もなかった。 地球が泣かず人間も喜ぶ仕事がみつからず、国連やNPOやNGOや海外青年協力隊のような仕事の実際と理想の間を埋めることは自分が体験してきたことを誤魔化すように思われて、ますますこれから将来の仕事もなくなり胸の詰まった毎日だった。