Neurologic E.J.スタンバーグ   Sternberg

ヒトはなぜ宇宙人に誘拐されるのか?  意識と無意識の並列システム  

 

 

失明した本人がその事実に気がつかない症患 アントン症候群

視覚に関する両側の後頭葉が損傷

左頭頂葉の損傷  視覚信号を蓄積し、合理的な世界像を構築できるように統合して解釈を助ける

 

言い訳をする「眼鏡をかけていなかった」「部屋が眩しすぎる」「部屋が暗すぎる」

 

視覚系が損なわれたことに気づけないので、見えないのは部屋が暗すぎるからだと脳は考えた。

矛盾する情報(見えているはず・見えない)に直面した脳は、二つを一致させる論理的「理由」を考え出した。

 

記憶データをベースにして現在の知覚と法則を交えて思考して、物語を編集する。この物語が人生経験や自意識となる。

 

ブラックボックスの解析

中の仕組み(スイッチ、レバー、滑車)を見極める。

パターンを探して、仕組みを推測する。 コードにアクセスせずにプログラムを解析するようなもの。

 

かたい椅子効果   ハーバード、イェール、MIT2010 「オード」誌

クッションよりもかたい椅子に座ったほうが値下げ交渉に有利である。

明確な神経回路を見つけ、インプットとアウトプットの関係を説明するのが、著者の趣味。

脳のシステムを見出すのがキーポイント。意識と無意識の並列。

疑問が次々と生まれ、知覚、習慣、学習、記憶、言語、自我、アイデンティティーの謎につながる。

 

夢のバクダートを再建できる人間にとって、テレビという器械が何だというのか?  ダリ

 

サバイバルすための五感の発達

人間の視覚系は生き残りのために発達してきた。危険を察知し餌を探すためである。

視覚で最も重要なのは、方向、次にスピードだ。

 

視覚について

MT野   V5MT (middle temporal)

動きを視的に知覚するところ ここを損傷すると走る車はコマ送りに見える

 

  

 

 

カニッツァの三角形

脳は見たものを自動的に補足してしまう特徴を持つ。

 

意識と無意識の視覚

まずは無意識のシステムでパターン認識し、そのパターンに基づいて予期し、知覚の断片を組み合わせる方法を導き出す。

脳は文字の意味だけではなく、文字のパターンと文の構成規則も処理している。

「この ぶんょしうは もじの じゅんょじが いれわかっていても よむとこが できる」

脳が勝手に手がかりを探して文章を理解するからだ。言い方を変えると「つくり話」やウソを作るのだ。

 

 

 

次に意識的なシステムが、無意識の予測を受け容れて、必要があればそれに異議を唱えて、全体のバランスを鑑みて判断を下す。

この意識を利用する領域は前頭前野で無意識のパターン認識を利用した策略や歪曲を見破る。

 

前頭前野

歪曲を識別するには、無意識の修正と先読みをしてしまう脳の習性を抑制する必要がある。この内省力は、自動処理を停止し、習慣に従って補足する動きを防ぐ働きがある。

前頭前野のみを損傷した症例では、内省的認知力が欠けた状態で話を作る。理にかなっていない解釈やおかしな話を作り出す可能性がある。

2010年の「モーセの方舟」実験

 

夢の作られ方

夢は日常の要素を組み入れ、つなぎ合わせて物語を作ることもある。多くの場合は外部からの情報を遮断されるが、次のような例もある。寝ている時に霧吹きで水をかけると、水に関する夢を見る。

夢の伝導路は、目を閉じていて外界が見えない状態でも、視覚と同様の像の知覚を可能にすることから、視覚経路とは別の経路があることを示唆する。

夢を見ている間に脳と脊髄をつなぐ脳幹の支配下に入る。正確には脳幹内の脳橋、視床の視覚領域、後頭葉にPGO波が生じる。

夢の経路は、脳幹が目に代わって源になると推定される。脳幹から電気信号を受信した視覚野は、目覚めている時と同様にそれらの情報を理解しようとし、記憶のデータを利用して、信号の断片を関連づけて一つの物語と光景を作り出す。この無意識の補足と記憶と感情と条件反射と理念と未来を点を結ぶと隠喩的な物語になる。

夜間には前頭前野の活動が休止する。例外が明晰夢で、夢の世界を自らの意志で探索することができる。

夢は分析という「分ける」行為から逃れることができるので、突飛で独創的な結びつきで物語を語ることが可能になる。

寝ている間はシナプスを柔らかくして、記憶と学習した概念の結びつきをゆるめているという学説もある。

 

脳幹と幻覚

脳幹に炎症が起こると幻覚が生じ、炎症がおさまると幻覚も消える。 ベルナルド少年とハリーポッター2008

暗いところで幻覚が生じ、それは著しく鮮明なイメージであるが、明かりをつけると幻覚は消える。

暗さを知覚すると脳幹は早まってスイッチを入れてしまうので、目が醒めているときにも夢を見る。

 

不思議な国のアリス症候群  自分や周囲が拡大したり収縮する幻覚

視覚野の活性が低い。 2011年のポンゾ錯視を使ったfMRI測定実験

目の見えない人の幻覚  シャルル・ボネ症候群 fMRIと幻覚のロンドン実験

幻覚が始まると後頭葉が活性化し、幻覚が終わると元に戻った。

 

一時的に失明したアルプス登山者2004も、視覚入力が停止すると、脳は自ら視覚を生み出した。

仮説の一つは退屈した神経細胞が自発的に放電する。

もう一つは脳の可塑性。よく使われるニューロン回路は処理効率を高め、使われない回路は効率を下げる。

目が見えなくなると後頭葉からの入力がなくなり、非視覚的システムが活性化する。

 

視力のない人は、目で見ることができなくても、感覚の交差点が著しく発達しており、無意識のシステムは感覚の道路網を再構築し、視覚以外の感覚を絡み合わせて外界を画素化することで、視覚野をプログラミングし直すのだ。

 

特例を除き、5歳になる前に失明した場合は、日中も夢の中でも視覚心象を経験していないことが調査で明らかになっている。視覚的な夢を見ることはない。

生まれつき目の見えない人は異なる内的経験をしている。

 

耳の悪い人は幻聴で沈黙を埋める

小さい音だと、聴覚伝導路は退屈して脳内の無意識のシステムが幻聴のスイッチを入れて沈黙を埋めてしまう。

このような幻聴スイッチは元から学習することであるのだが、聴覚の回路が遮断されることで、スイッチを何度も使用することで回路が太くなる

 

内側即頭葉  EEG電極実験 映像とニューロン活動の関係性

脳の記憶形成の中核  海馬の隣

共感性 最初は並行経路を通じて処理されていた感覚信号がやがて結びつき、合体して合理化された近くを形成する。

 

アルファブロッキング

生まれつきの盲人も夢の中では「見ることができる」 ポルトガルのエルデル・ベルトルらの睡眠研究者

目を閉じてリラックスした時に視覚心象を必要とした時にアルファ脳波が見られる。

瞑想中の人の脳に見られるように、雑念を払えばアルファ波が優勢になる。

内的心像がおきるとアルファブロッキングされる

睡眠中も持続し、映画のような夢を見るレム睡眠にピークに達する。

 

無意識は優れたストリーテラー

日中は意識的に熟考し、夜間は無意識的に自由に感覚の探検をする。

 

盲視

右後頭葉を除去した手術を受けたダレンは左側にあるものが見えなくなるのだが、光を点滅させるとそれを言い当てることができた。意識には上がらないのだが、認知はできているのだ。

 

同じようなことが放心したドライバーにも起こる。助手席の人と話が夢中になっていても、目や耳から入ってくる情報を脳は処理してアクセルやブレーキやハンドルをコントールすることができる。なにも意識が自覚していないのにである。これは条件反射や間脳でマスターする運動反復能力なので、以前に学習したことを繰り返す自動的なアウトプットなので、インプットの些細な変化を見極められない時には、以前に学習したことをそのままアウトプットしてしまう。

これを習慣と呼ぶ。またこれは人間特有のものではなく、他の動物や虫もこのようなメカニズムで行動をする。

 

ニセの笑顔

作り笑いは口元の筋肉が動いているが目が笑っていない。

本物の笑顔は、眼輪筋を収縮させるため、目の横の皮膚が引き寄せられる。

 

無意識に車の運転ができるのは何故? トップ・アスリートは集中しないことで集中する。

ボストン・セルティックのレイ・アレンNBA

「もし狙いをつけたら、狙いをつけようとしたら右か左にそれてしまう」

考えるんではなく、」「筋肉の記憶」とも言われる習慣のシステムに任せて、訓練してきたことをやらせたほうが、うまくできる。

 

記憶の保存と検索

手続き記憶     手順を繰り返すことで強くなる記憶で、タイピングや車の運転など小脳との関係が強い

          外側線条体で生じる

エピソード記憶   過去の経験や感情や場所や考えなどの自伝的な人生で起きた出来事に関する記憶

          海馬に保存され、習慣的行動の最中は静止する

          習慣活動中は記憶できないだけではなく、情報を検索し引き出すこともできない。

          習慣中活動中は手続き記憶に支配されるために、ぼんやりしてしまう。

 

テレビと過食

受動的にテレビを見ていると、テレビに意識的なシステムを独占されてしまう。ゆえに食べることなどの日常的なことをすると、その行動は習慣のシステムにコントロールされてしまう。

無意識に運転するように、特に何も考えないでポテトチップスを食べ続けてしまうかもしれない。

習慣のシステムはエピソード記憶にアクセス出来ないため、限度という単純な考えさえ持たない。

他のことに気を取られていると、脳が行動を意識的にコントロールする能力が失われ、予め決められていたコースをたどる。ある意味で自制心を失った状態になるのだ。

習慣で行動している時は、食べた満腹感のフィードバック・ループが断ち切られるので、脳が食べ続けることを阻止し損ね、報酬信号を出し続けることによって食べ続けることを積極的に促進した。習慣のシステムに支配され、機械的に自動的に食べるのだ。

 

意識は2つのことがいっぺんにできない。

運転するか、その日にすることを思い浮かべるかのどちらかである。

そこで両方いっぺんにしたい時には、習慣という無意識に運転をしてもらい、考えるという意識に予定を建ててもらっている。

 

無意識で人を殺して無罪

オンタリオ州トロントのケネス・パークス(当時23才)は義理の両親を殺したが、半意識の状態にあったと判断されて無罪になる。

判決文は、

「コモン・ローでは、他の場合ならば犯罪となる行為を行った人物が、無意識または半無意識の状態であった場合には無罪である。精神の病気または理性の欠如のために、その行為の性質やそれを実行するのが間違っていることを認識できなかった場合も責任を問われない。

人は意識的、意図的行為に対してのみ責任を負うというのが刑法の指針である。」

 

ゾンビとレム睡眠

筋肉が麻痺し、この間に鮮やかな夢を見る。筋肉が麻痺しているため、夢が現実で行動に移されることはない。

一方、徐波睡眠は夢遊病のように、自動処理に取って代わられることを示す例がある。

頭の中は夢が占めていて、まるで夢を実行に移すロボットのように体は自動的に動く。

眠れなかったり、熟睡できなかったり、衰弱した精神状態の時に危険な空想が頭に忍び込む可能性はある。

レム睡眠時に夢を見た場合はそれを記憶している確率は75%だが、徐波睡眠では60%以下になる。

 

バラク・オバマの意思決定

「私はグレーかブルーのスーツしか着ません。食べるものや着るもののことで迷いたくないのです。他に決めなくてはならないことがたくさんあるのですから。意思決定力を温存しなければなりません。そのために身の回りのことをルーティン化するのです。瑣末なことに気を取られていてはやっていけません」Vánity Fáir誌 4年目

訓練によって自動化ができる

特定の行動を自動化するためには練習が非常に重要である。NLP

練習を重ねるほどにその行為は自動化され、より上手に複数のタスクを行うことができるようになる。

 

ジャック・ニクラウスの脳内実践メンタル・プラクティス

ボールを打つ前に、私は必ず頭の中の映画館に行く。そこでまず、落としたい場所にあるボールを―――鮮やかな緑の芝に乗っている真っ白なボールを見る。そのあとで、そこへ向かうボールを見る―――道筋や着地の仕方なんかを。その次は、それまでの想像を現実に変えるスイングが見えてくる。このホームシアターのおかげで、私は集中し、すべてのショットに前向きに取り組める 「ニクラウスのベターゴルフ」

 

頭の中でシミュレーションすることは、意識的なシステムが無意識のシステムを操作する方法である。また逆に無意識のシステムが頭の中でシミュレーションを引き起こし、意識的なシステムに影響をあたえることもある。

 

筋力も強化するイメージ

片方の肘と小指を曲げる想像する実験で筋収縮の強さが肘で13.5%、小指では35%上昇した。

クリーブランド・クリニックのグアン・ユーらの実験

運動行為を頭の中で練習すると、筋細胞に到達する信号を増幅させ、より強い収縮を引き起こすという仮説がたった。

 

トップ・アスリートのための7つのイメージ

Physical バットを振るために必要なすべての動作を頭の中でシミュレーションする

Environment 球場を照らすライトや観客のざわめきを想像する。

Task     スイングだけではなく、ボールも想像する

Timing    実際にバットを振るのにかかる時間をシミュレーションする。

Leaning    上達したらそのレベルに合わせてイメージを調整する

Emotion    決定的瞬間、緊張による心痛や高鳴る鼓動を感じる

Perspective   一人称でイメージする

 

重度の脳卒中からの回復   歩けず話すこともできなかったが8年かけて回復 ジル・テイラー1996

「イメージは身体機能を取り戻すのに有効な手段だ。特定の作業を行う時の感覚に注意を向けることが、回復を早めるのに役立ったと確信している。私は脳卒中を起こして以来毎日、階段を駆け上がることを夢見ていた。それがどんな感じか覚えていた。その場面を繰り返し想像し、体と頭が協調してそれを実行できるようになるまでその回路を維持したのだ。」

 

反証

イメージを使って脳領域を刺激するテクニックは通用するためには、運動野から筋肉につながる神経経路が無傷でなければならない。スポーツによる怪我は筋骨格で、脳は無傷あるので、イメージによる回復効果が生じる可能性がある。

ニューロンが無傷であるかぎり、意識的なシステムと無意識のシステムは互いに伝達し、変化させる。

 

幻肢感覚  ラマチャンドラン

失った手足が痒い場合は、できるだけその場所をリアルに想像して掻いてあげると、痒みが収まることがある。

 

頭の中でシミュレーションすることは、意識的なシステムが無意識のシステムを操作する方法である。また逆に無意識のシステムが頭の中でシミュレーションを引き起こし、意識的なシステムに影響をあたえることもある。

失った手足の部分を触ってあげると、被験者は撫でられているように感じて気味悪がった。

無意識のシステムが意識的なシステムをだまし、見えない手に触れられている感覚をうみ出した。

 

応用 優れたアスリートの動きを見るだけで、スポーツは上達する

ただし、実体験がありリアルに追体験できるだけの経験が必要である。

人は他者の行動を見ると、ミラーニューロンのネットワークが起動し、同じ行動を自分が行ったらどうなるかをシミュレーションする。

 

感情とミラーニューロン

ミラーニューロンは他人に同情した時に活性化するというデータもある。

感情が示された友人の顔を見ると、人は自分の顔のと同じ筋肉も活性化させる。

感情移入できない人や表情を真似することができない状態では、他人の表情が識別できないことが研究によって証明されている。

共感とは、他者の経験を頭の中でシミュレーションすることで生まれる。

脳内シミュレーションは意識と無意識の架け橋である。

 

直感とは無意識の記憶?

ヒトは経験をすると必ず、何らかの感情や体の状態を伴う。その感情が神経系に印象を残し、出来事の記憶と体の「マーカー」としてつながったままでいる。

この感情の生物学的な残物をダマシオはソマティック・マーカーと呼ぶ。

これが自分自身の過去の経験をシミュレーションする、ミラーニューロンのように。

ヒトは熟考する前に、ソマティック・マーカーがその効果を発揮し、それぞれのシナリオがどう展開するかシミュレーションする。どんな選択肢の可能性も決定される。選択肢のメリットを検討する前に、ソマティック・マーカーが数々の選択肢を除去していることに、私たちは全く気が付かないのかもしれない。無意識の内に行われるから。

ソマティック・マーカーは情動記憶の一種で、脳が過去に入手した情報を証拠として示す。私たちはそれを「直感」として経験する。

 

無意識の怖ろしさ 空白を埋めるためにフィクションする

記憶とは必ずしも信頼できる情報源ではない。しかしそれでも無意識は記憶に頼ってシミュレーションを行う。眠りについて知覚が失われると、脳は夢を語る。幻覚を産み出してまで世界を再構築する。完全な物語を作り出そうと気を配る。無意識のロジックは、文脈や記憶から引き出すことによって、情報の空白を埋めるよう命じる。だがその空白が知覚ではなく、記憶にあるとしたらどうなるか?

脳は自分自身で話を創って、記憶にある穴を埋めてしまうのが無意識の怖ろしさである。

 

変化する記憶

ビデオは正確な記録だが、記憶はミスをするし、時間とともに変化する。

記憶がその後の経験によって如何に操作され得るかを証明する実験をしたのはエリザベス・ロフタス。被験者の身内や知り合いに、被験者の幼児期になかったエピソードを話すことによって、被験者はそのエピソードを自分の体験として記憶するかどうかという実験である。多く使われたニセの記憶とは「ショッピングセンターで迷子になった話」だ。このような話をされた被験者は信頼できる人からの疑うことがない事実だと思ったため、迷子になった時の心像を鮮明にさせるために過去の他の記憶の断片をより集め、新しいエピソードを具体化させた。

 

記憶と自己中心的な思考    海馬と内側前頭前野

記憶を作成する時に活性化する器官は海馬であるが、記憶が薄れ曖昧になり誤りが蓄積すると、活動が低下する。

それに反比例するように活性化するの内側前頭前野である。ここは、自己中心的な思考をする時に活性化する。自己に密接に関連していると思うものを見ると働く。

 

エピソード記憶と情緒的な記憶

海馬傍回 エピソード     911ミドルタウンにいた人   その時に何をしていたか コーヒーを注文

扁桃体  情緒的な記憶    911ダウンタウンにいた人   感情に伴わない細部はあやふや 靴

海馬傍回は空間処理だけではなく皮肉に対しても発火する。

 

自分との関わりの深い記憶が人格、そして自己史に

記憶は自分がスポットライトを当てた経験によって作成される。その瞬間の感情や自分との関わりの意味が重要なファクターになる。それに基づいて脳は物語を書きはじめる。個人の歴史がセルフ・イメージを作り出し、知識を集める。脳内の無意識のシステムが記憶を符号化し、人格が形成される。

無意識のシステムは人生の様々な感情が付随したスナップショットを結びつけ、一つの物語を作る。これが自分史であり個人の人生だ。

 

 

記憶と危機感

記憶の生成には優先順位があり、もっとも重要なことにポイントを当て、後は省力する傾向がある。水も食物もないサバイバル状況を想像する時の記憶が定着しやすいという実験を40人の大学生でした例がある。

 

自己保身する脳

無意識の内に脳は自己像を破壊しないように、都合の良いように事実の一面だけをつなぎ合わせて、ニセの記憶をつくりだす。保身のために。一生苦しまくてもいいように。レッドソックスのコニグリアロに死球を当てたエンゼルスのハミルトンのように。

 

自己肯定する記憶は覚えているが、否定する記憶は都合よく忘れてしまう傾向がある。しかし、他人に関する負の行動については忘れやすいということはない。

無意識のシステムは自分の世界観と一致する事象や経験や記憶や未来を好む。自分が大事にしていることに関して物語を作り上げる。そして信じたい物語とうまく一致しないことは都合よく忘れたりする。

 

特に人から誘発された場合は誰でも作り話をすることは起こり得る。なぜ?記憶を空白のままにしておくわけには行かないのだろうか?

内側側頭葉を損傷すると作り話をする傾向がある。

ファンが主人公と一体感を覚えた時に発火する領域だ。

自分を軸にして世界観を作り上げる時に発火する領域だ。

損傷によって、他者の行動を自分のことに置き換えることができなくなると、どうなるんだろう?

自分を軸にしてエピソードを作れなくなるとどうなるのか?

損傷すると自我が脅威にさらされる。

自我とは、記憶、感覚と感情の経験、自己統制、内省。

 

もしかすれば自我が不安になるのではないか?

何が何でも自我を守りたい人がいるのではないか?

そんな人のためには脳は自我のためにどんなウソでも作り上げてしまうのではないか?

 

記憶喪失や混乱から自己を守っているのが作り話ではないだろうか?

作り話は「自我」を守るための脳のメカニズムなのであろう。防衛機制だ。

作り話によって記憶、すなわち人生の物語の連続性は維持されるのだ。

 

自己意識の存在意義は、モノを分けることだ。この自己意識だけを価値観にしてしまうと、全てのものを分けないと安心ができなくなる。分けるとは分類して名前をつけること、すなわち知る、ということ。だから自己意識だけが自分だ、という病気になると、何かを知らないということを絶対に認めなくなる。

自我を守るために記憶に空白があることを無意識の内に否定する。

そのためには別の記憶から瞬間的に盗用して、それらを継ぎ接ぎして空白を埋める。

これは個人の物語を失っているのだから、自分を失うことになるのに。

 

レイプ・ドラッグ

ケタミン  短期記憶喪失を起こす 麻酔薬

 

自己中心でしかありえない脳

自己中心のストーリーテラーの脳は、個人の信念や見解、希望、恐怖を軸にして、プロットを書く。書き続けることでしか価値が無いと思っている人がいる。だからもし記憶の空白があると、物語を紡ぐのだ。

 

金縛り(睡眠麻痺)のメカニズム   宇宙人に誘拐されるわけ

レム睡眠中は筋肉は麻痺する。起きた瞬間に再活性化されるのだが、時間差が生じることもある。そんな場合は、目覚めても体は完全に麻痺している。たいていは数秒から数分だ。

アメリカでは8%の人が体験する。不安に苦しんでいる場合に起きることが増えるデータが有り、ストレスが睡眠に持ち込まれるからだと推定されている。

またつねに他人に見られ、評価されていると感じる人にも多い。

犯人は側頭葉だ。宇宙人は自分自身の内なる宇宙からやってくる訪問者なのだ。

金縛りの状況を、無意識という単純で論理的な説明によると、現代アメリカという文化背景では、宇宙人による誘拐が一番しっくりとくるのだ。

 

 

天使の槍  聖人アヴィラのテレサが1565年に記述した

「私は左側のすぐ近くに、肉体を持った天使の姿を見た。それを見るのに慣れておらず、非常に稀に・・・

その天使は大きくはなく、背が低くて、最高に美しかった―――最上位の天使であるかのように顔が燃えていた。手に長い金の槍を持っていて、鉄製の先端が小さい炎のように見えた。その槍をときおり私の心臓や腸に突き刺した。そして槍と一緒に内臓も引き抜くと、私は神の大きな愛で燃えていた」

 

霊的啓示と側頭葉てんかん   マイケル・ガザニガ

ゴッホのようにモーセやムハンマドや釈迦も側頭葉に疾患を抱えており、そこが予言の源であると仮説する。

 

無意識のシステムは単純かつ論理的

一番楽な道を取るのが無意識で、障害物を迂回しながら上からしたへと流れる小川のようだ。

矛盾した刺激に対して、手元にある情報で、意味を探し求めて、最高の物語を作る。

 

側頭頭頂接合部の刺激

過度な刺激を与えると、ゴーストという他者の気配を呼び起こす。

刺激が足りないと、自分が存在しないという感覚が呼び起こし、自分自身がゴーストになる。

 

刺激が足りないと、人に対しての感情的になれないのだ。 感覚が鈍くなる。何も感じない。

扁桃体、海馬、側頭葉の領域が萎縮

二つのパターン  矛盾する刺激を一致させる時の物語の作り方の違い

症状

 

責任

気分

 

精神分析

 

妻と浮気

妻が別人

他人

潑剌

興奮

パラノイア

信念

自分は死人

自分はいない

自分

憂鬱 

虚無

うつ病

超自然的

 

 

心臓発作生存者の臨死体験サンプル   オランダの344人のデータ

死んでいるという認識 50

多幸感 56

死者と会う 32

トンネルと通る 31

天上の風景を見る 29

体外離脱 24

 

瀕死状態になると脳内で何かが起こり幻想を生み出すに違いない。

 

 

幻覚を生み出すレム侵入の原因は血液と酸素の欠乏

ダン・フルガム空軍大佐が飛行機のコックピットで体外離脱体験

海軍軍医ジェイムズ・ウィナリーの強大な遠心分離機のパイロット実験

脳と目への血液が妨害されると、脳は視覚を補足しようとする。これはレム侵入と呼ばれる。映像が意識に入り込むプロセスで、現実と空想の境目を曖昧にする。眠りに落ちる途中や目覚めた直後。臨死体験者の60%が体験。

これらの幻覚は脳内の青斑核でノルエピネフリンを放出することで、ストレスやパニックに対する生理学的反応を助けるためだと推定されている。

酸素と血液の欠乏という身体ストレスによって、恐怖や不安といった感情が起こり、それに対処するために放出され幻想を見ると推定されている。

この幻想で体はストレスの緩和を試み、リラックスさせ落ち着きを生み出そうとする。

 

金縛りと心臓発作の共通点は血液中の酸欠かもしれない。これが無意識の内に死の可能性を察知し引き金となり、幻覚を起こしやすくする可能性がある。

 

幻覚を見る3つの特徴

闇に包まれている

身動きがとれないと感じ無力感 ロープ、拘束

恐怖を感じていることが強い要因

 

アフリカの電気サカナ

アロワナ目モルミルス科の魚はコミュニケーションを取る時に電気信号を周囲の水に放つ能力を有している。

電気パルスを発射することを決めると、二つの指令を同時に出す。電気器官に、発射せよ、と同時に感覚系には、これから信号を発射する、自身の信号だから無視するように、と。

 

統合失調症のサブボーカル・ボイス

自分の声が耳に届いても、脳に欠陥があるために、不一致と誤判定し、自身の声だと認識できない。

感知した声と自身の声でないという二つの情報を両立させるために、「他の誰かの声に違いない」と論理的になる。

 

思考吹入という妄想

患者は自分の思考が自分のものではなく、外から吹き込まれたものだと信じ、時に強い妄想になり得る。

幻聴と同様に、不可解な力によって思考が吹き込まれると考える。

 

自己監視障害

自己と非自己を区別できなくなる病気が、統合失調症に他者によって思考や感情がアタマに植え付けられて、行動が制御されると考えるようになる。

これを基に、自我や個性が形成される。

 

自分をくすぐることができないのは何故?

自分をくすぐろうとしても、意図された行動行為のコピーが感覚系に送られ、随伴発射が発生する。

これによって、予測ができて見は守る準備ができ、感覚が取り消されて、くすぐりの効果を弱める

統合失調症患者は、自分自身をくすぐることができる。

 

催眠術 無意識と意識の分離

催眠状態の本質は、精神集中の誘発であり、空想や自発的な放心の場合と同様に、精神力が一つのアイディアや一連の思考に独占され、一時的に、その他のアイディアや印象、一連の思考に、個人の無意識や公平な意識を向けられなくなる。

 

催眠術をかけられると、人は特定の一連の思考に集中するあまり、外部からの暗示を受けやすくなるのだ。

無意識の状態ではなく、自身の想像に対して極度に集中した状態である。

脳内シミュレーションが他者によって押し付けられるものであり、何も気が散らされずに経験する。一心に集中して何かを想像すると、それは自分にとって現実のものとなるのだ。

 

 

前帯状皮質が矛盾を解決するのに役立っている。ここが無意識の内に対立する信号を感知し、意識的な分析によって矛盾を解決するため、前頭葉に報告するだと推定される。これでストループ課題(色と意味が違う文字ホワイトのような)反応時間が増加する。

 

催眠術をかけられると、前頭葉は活動せず、前帯状皮質だけが活性化される。

前帯状皮質の無意識の矛盾の監視と、前頭葉の意識的分析が切り離されることをジョン・グルゼリアは発見した。

催眠術は矛盾の監視を阻むのではなく、二つを分離し、矛盾の報告を妨害することでストループ効果を失わせていた。

催眠術によるトランス状態に入っている間に受けた暗示は、前頭葉の意識的な精査の対象とならない。そのため、催眠術をかけられた人は、突飛なことをするのだ。

 

サブリミナル・メッセージの効果は誇大宣伝

催眠術に比べれば微小でしかない。ボーリングに例えると、ボールによって弾き飛ばせるピンの方向に比べて、催眠術は投げる方向をレーンの外に設定することさえできる。

 

広告マン

必要性を生み出す

広告の中の人物と自分を同一視させる

同じように使えば問題を解決できる

その結果、ますます輝く、○○らしくなる。

 

外からの影響力(情報)を無意識の情報処理の背景ノイズの溶け込ませる。そうすれば、後は、無意識のシステムが、納得のいく説明を考え出してくれる。

 

ペプシコーラ・パラドックス

催眠術は前帯状皮質の活動パターンを変え、広告のブランドは内側前頭前野に影響する。

催眠術から抜ける方法

脳内の無意識システムが即座に注意を要するう重要な情報を感知しさえすればいい。たとえば名前、裸のアイドルなど

 

すべては自我を守るため

無意識のシステムは、補足したり、理にかなっていない行動を合理化したり、でっち上げたりする。なぜそんなことをするのか?矛盾した経験を首尾一貫させるような説明を創作する必要があるのか?答えは自我!

 

意識的システム  熟考や決断を可能とする  感覚や感情を覚える 

無意識システム  自我の統合性や連続性を保持し、そのために極端なことをする。しかしこれをあくまでも追求すると、自我を守るために自我が分裂するケースがある。

 

自我やアイデンティティのある場所

内省している時は、右前頭前野が活性化される 他者のことを考える時には活性化されない

ここが破壊されると、自己や大切な人を認識する能力、個人の歴史の記憶、個性や他者との相違点に対する不変の意識、思考や行動をコントロールできているという感覚がなくなる。   ピョートルの例では

 

離断症候群

癲癇の治療のために、脳梁分離術で左脳と右脳を分断すると、右手で欲しいものを取ろうとしたら、左手が伸びてきて、右と左で争っている感じがした。反発し合う磁石のように。

 

両脳半球がひとつの自我を共有

右目に笑う、左目に顔という文字を分離脳患者に見せて、なんでも見たものを書くように口頭で指示すると、患者は笑っている顔を描いた。

理由を尋ねると、「悲しい顔を見たい人なんかいますか?」

言語生成する左脳が右脳が見たものに気がついていないにも関わらず、論理的な説明を考え出す。

理由を考えるのは左脳である。

仮説では左脳が日常経験をまとめて、それを意味のある者にするために唯一の統一された物語を組み立てる

自我は右脳であることを認めつつ、自己処理は脳の至るところで行われ、左半球は重要な役割を演じている。

 

命にかかわる出来事に対する二つの対応

過覚醒 

PTSDの特徴であるストレス反応 フラッシュバックや悪夢 緊張して集中できない 驚きやすくなりビクビク

前頭葉と側頭葉と頭頂葉が活性化され、脈拍が著しく増加

 

ショック状態

失神したかのように外の世界に対して何も感じなくなり、外から遠く離れているように感じ、感情を失う。

後頭葉の一部だけが変化  過覚醒反応を未然に阻止するために情緒反応を麻痺させるかのように

 

自我の最大の脅威は心の傷

健康な人が悲しみのせいで無気力になり、ベッドから出れなくなることもある  例えば退役軍人

解離性障害

周囲の世界から切り離され、アイデンティティー(の一部)を失ったような感覚。

解離の目的は、トラウマによる苦しみの追体験を防ぐこと。過去の精神的な痛手に苦しめられずにすむように無意識が行う防衛機制である、自己防衛機能だ。

もろい心を守るため、ジギル博士はハイド氏を生んだ。

心(無意識)は記憶や耐え難い感情を切り離すことができる。

細菌感染のメタファーで言えば、免疫系は体の組織内に膿瘍を作って、病原菌を遮断する。この膿の膜に包んでバクテリアを近くの組織から離するように。

 

解離とは、心の痛みを伴い自己を脅かす有害な思考を、自己意識から隔てる作業だ。例えば侵入したコンピューター・ウイルスを、隔離フォルダーに入れておくように。このフォルダーを神経学者は「感情を担当する部位」と呼んでいる。

ヒトとコンピューターウイルスとの違いは、この隔離したウイルスは、ヒトでは交代人格として再び姿を表すことがある。

 

離人症性障害 「わたし」が自己や周囲から切り離されて、世界を体験するのではなく見ているように感じる。

解離性遁走  自分が何者かも、住んでいる場所も忘れてしまい、新しいアイデンティティーを持つ傾向がある。

解離性同一障害 人格や自我が分裂し、いくつかの別々のアイデンティティーのようなものに分かれてしまう

 

解離性同一障害

メインの「わたし」  外の世界に対してリアリティを感じなくなり、外から遠く離れているように感じる。

           心のなかでバリアが築かれている  解離した自己が標準

           心の傷になった記憶はブロックされておりアクセスできない

神経学的証拠はPETスキャン  解離状態を経験している人と同様の活動 活動の鈍化

           怒った顔を見せても、無意識がメインの「わたし」を守る

   

交代人格       ウイルス隔離フォルダーから甦った人格や過去の一部

           過覚醒と解離の2パターン

過覚醒でPTSDの特徴であるストレス反応がある  苦しみに襲われる

           驚きやすくなりビクビクなるのを避けるためにはどうすればいいのか?

答えは退行する

アイデンティティー全体を守るために、自我の一部を取り除くのだ。

だから交代人格は枠未熟であることが多いのだろう。

PETスキャン     偏桃体(感情中枢)が突然に活性化される

           海馬(エピソード記憶の中枢)が交代人格により異なる活動

           仮説 各交代人格が記憶領域の違う自分だけの記憶にアクセスしている、

           怒った顔が無意識のうちに心の傷となった記憶を呼び起こす

 

眼窩前頭皮質の活動が低下

ヒトは経験をする時に感情が神経系に印象を残し、出来事の記憶装置に「マーカー」する。

この情動記憶で自分自身の過去の経験を使ってシミュレーションするのだが、これが低下してしまうということは、もしかして各人格は記憶装置と部分的なアクセス権しかもたないことの裏付けになるかもしれない。

 

 

どうしたら交代人格が現れるのか?

ストレスや条件反射や学習や刺激によって、隔離フォルダー(不活性化の海馬)に閉じ込められている苦悩にさいまれる自我の一面(交代人格)が活性化される時。

 

解離の効果と副作用

心の傷となった記憶は、めったに現れない人格(苦悩に苛(さいな)まれる)の時にアクセスされるので、アクセスする回数が減れば、その領域は縮小する。

副作用は、有害な感情や記憶の隔離によって、自我の一部を持っていかれるということ。これが解離の感覚が非常に不快な理由である。アイデンティティー全体を守るために、自我の一部を取り除く。だから交代人格は枠未熟であることが多いのだろう。

そして潜在意識は、脳の大部分へのアクセスを遮断して、知覚自体を停止させることもある。

 

メインと交代人格は記憶が共有できない理由

 

記憶形式

場所

特徴

 

習慣

手続き記憶

車の運転・トラウマ

線条体

海馬にアクセスできない

小脳

非習慣

エピソード記憶

熟考

海馬

2つのことはできない

大脳

 

 

解離と催眠術のアナロジー      知覚を集中させて残りを除外する

特定のビジョンに集中するために、残りの知覚をないがしろにする、カクテルバーティーで雑音を無視するように。自分の行動を熟考する知覚もないがしろにする。

 

解離同一性の場合は、脳が集中すのは安全な心地よい状態で、除外するのはトラウマの記憶。

 

共通点はどちらも、fMRIで脳の前帯状皮質の活性化、ここは矛盾する情報の処理に関与して、歪曲(ストループ課題、皮肉)を感知して、矛盾を暴露し、誤りを発見する。

 

 

催眠のトランス状態とは、連絡が取れなくなった前頭葉にメッセージを送ろうとして、前帯状皮質がより懸命に活性化することだ。電波を受信できない山中で携帯が電波を探して、バッテリーが過剰に消費されるように。

矛盾を報告しようと無駄な努力を懸命に続けていて、他のことができなのがトランスの正体?だから、この活動を続けている間は、第三者の目で自分を見る視線を使うことができないのではないか?

 

解離を経験する人は、トラウマ記憶から自身を守るために、トランス状態になる。過集中の精神状態を作り出すことで、自我の比重を減らして、トラウマの記憶だけではなく、新しい精神的経験の大部分を意識に上るのを避けようとした。エピソード記憶ではなく手続き記憶で生きていこうとするのだ。

感情によって出来事を記憶装置に「マーカー」する眼窩前頭皮質の活動が低下することで、エピソード記憶能力は減少する。

しかしある刺激でトランス状態が中断して心の壁が崩壊すると、トラウマ記憶を思い出す。すると過去の厳しい現実がよみがえり、脳内では前帯状皮質の活動は鎮まる。

 

解離性同一障害は催眠の一形態である。

違いは催眠は外部からの暗示なのに、解離性同一障害は内部の無意識のシステム(潜在意識)によって生み出される。言い方を変えれば自動暗示状態もしくは自己催眠症候群だ。

 

転換性障害

ストレスによって、突然の麻痺や衰弱や失明といった身体に現れる神経疾患

健常対照群と比較すると、前頭前野が活性化され、視覚野の活動が低下している。

視覚伝導路は無傷なので目は機能している。潜在意識が意識的な資格をブロックして、盲視を連想させる。

意識には上がらないのだが、認知はできている。無意識のドライバーのように。

前帯状皮質は過剰に活動している、催眠状態や解離性同一障害者のように。

この過剰さが他のことをさせない原因である。意識は一度に一つのことしか集中できない。一つ事に集中したら、あとのことは潜在意識に任せるしかない。そこで矛盾を監視する領域○?や第三者からの視点の領域○?

 

このような大変な状況に対して患者本人は動ぜず無関心な態度を示す。なぜか?

催眠状態の人が自分の行動の得意性を認識できないのと同じだ。

目が見えないのは、催眠状態でハヤブサに襲われているように、「想像」したものである。そしてその「想像」を意識は確信している、目が見えないと。

転換性障害は一種の催眠状態である。

 

ヒステリーと転換性障害

神経学者 ジャン=マルタン・シャルコーは公開実験を行い、25歳の被験者の左足に、催眠術を利用して転換性麻痺を引き起こした。この時に前帯状皮質は過剰に活動していた。解離状態と同じように。

 

臨床的観点から見ると、催眠術は解離性同一障害を引き起こし、同時に治療できる。また同じように転換性障害を引き起こし、治療もできる。

神経学的観点から見れば、どちらの症状も催眠術によるトランス状態を連想させる前帯状皮質の過活動を示す。

 

トラウマは解離を引き起こすことができるのと同時に、特定の感覚情報から注意をそらして失明などの知覚麻痺や運動麻痺を引き起こすこともできる。

どちらも潜在意識が特定の方向へ意識を向けさせ、意識的経験を操作するのだ。

 

潜在意識と解離性同一障害

解離性同一障害の場合は、心の傷となった記憶や感情からアイデンティティーを守るために、潜在意識は傷の記憶から注意をそらし、意識の表層に現れるのを防ぐ。この隔離する時に、行き過ぎてしまうこともある。よくあるのが解離感覚で、世界から隔絶しているという感覚を持つことになる。患者はトラウマと一緒に自分の一部を失ったように感じていた。

潜在意識は自我を守るために、患者自身が転換性障害による失明という状況になっても、やむなく自我を分離する。分離した人格はこうして生まれる。

 

分離脳患者は、反対側の脳半球がつくりだしたものでさえも、潜在意識は整合させて唯一の物語にしようとする。

解離性同一障害の患者の潜在意識も整合した物語をもとうとする、人格を分けることによって。たとえそれが自我を分割することになっても。そして転換性障害を引き起こすことになってもだ。

 

 

組原さんの文章より引用

 私の場合、最初は琉大病院の音のしないところではじめて人工内耳をつけたら、自分の声も含めて人の声が普通の声として非常によく聞き取れた(170621参照)。その後上京したのだが、飛行機の中や電車の中や駅だと、もう耳がはじけるぐらいに大きな雑音が入ってくる。頭がクラクラッとなって、これはとてもじゃないが、外では使えないなと思ったのである。ちょっとの間そういう状態だったのだが、やがて気がついたのは、雑音がひどくても我慢していると、すぐにその雑音が消えてしまうということである。これは、人工内耳をつけて3年になる今でもそうなのである。つけた瞬間はワーッと悲鳴を上げたくなるような雑音でいっぱいなのだが、せいぜい10秒か20秒我慢すると、その雑音が消えてしまうのである。そして、人の声がちゃんと耳にはいるのである。雑音がなくなったわけじゃないだろう。ただそれを音として脳が拾わないような、そんな仕組みになっていると考えられる。不思議に思い続けているのだが、魔法のように雑音は消えてしまうのである。

 補聴器を買ってつけても、雑音が入ってくるばかりで、肝心の人の声は聞こえない、という苦情はよく耳にする。雑音がいつまで経っても大きくて我慢出来なくて、使わないままになっているという話も、特に、高齢になって難聴者となった人からはよく聞く。

 新田医師らが、どうすれば難聴者に補聴器が適合するのか、と取り組んでいたら、耳鳴りがしなくなったという患者さんがチラホラ出始めたというのである。

 その理由について新田医師らは次のように推論した。

 「カクテルパーティー効果」といわれる現象があり、カクテルパーティー会場のようにいろんな人の話し声や音楽が混じり合って騒がしいところでも、関心を持っていることだと少し離れていても、小さな声でも自然と耳に入ってくる。これはつまり、脳が働いて、あらゆる音の中から聞きたい音だけをピックアップして聞いているということである。換言すれば、人間は耳ではなく脳で聞いている。

 ところで、原因不明の耳鳴りで悩む人のうち9割以上が難聴であるとされている。 たとえば、内耳の蝸牛内の高音域を感じ取る有毛細胞が損傷したりしていると、高音域の振動が電気信号に変換されにくくなり、高音域の音の信号は脳にあまり送られなくなる。高音域の電気信号が十分に送られていないことが脳に分かると、脳はその音をがんばって聞こうとする。がんばっても高音域が送られてこない。なお一層脳ががんばる。こうして脳が過度に興奮状態になり(脳が不足部分を補おうとして活性を高め)、電気信号を増幅する結果、自分にだけ聞こえるのが耳鳴りではないか、というふうに新田医師らは推論したのである。(171210・日曜日)

 

 

 

神経の論理

意識と潜在意識が別々に働き、自我が形成されている。

アイデンティティーを構築するプロセスは、脳が資格を生み出すプロセスとアナロジー。

視覚経験は、形、色、大きさ、速度、方向といった幾つかのパーツによって分離され、脳の異なる部位で計算され、それから融合される。

同様に、自我の経験も自伝的記憶、感情、感覚、思考や行動のコントロールといった幾つかのパーツで構成され、異なる脳領域で扱われ、最終的には合体して統一された外界の経験を作り出す。

どちらも、二つのシステムに依存している。意識的なシステムによって私たちは自我を経験する。苦痛や喜び、行動する意志、心身を故意に制御する。そして潜在意識が作り出した物語を体験することができる。

一方の潜在意識のシステムはこの物語の作者だ。まとまりのない経験の断片を集め、必要があれば補足し、人生の物語を編纂する。自我を構築するのだ。さらに自我を維持して保護し、そのためには解離を利用して有害思考や記憶を排除さえする。

なぜそこまでするのか?アイデンティティーの何がそこまで尊ばれているのか?

サバイバルだ。内生的な生物は生き残りやすい。自分の生存、家族や仲間を守ることに力を注ぐ。個人の物語を持つことで、洞察するという行為を行うことができる。自分という軸がないとできないことは一杯ある。自身の意図を理解したり、推論や決断を熟考したり、目的や願望と一致する行動を取ったりするのに役立つ。アイデンティティーを持つことで、自身の性質をよりよく理解し、世界における自身の位置を向上させることができる。

 

 

自我とアイデンティティー

自我        :自己・自分、他人との区別を意識して使う    対義語は他者

アイデンティティー :存在証明や同一性、自分が自分である事の証明  

対義語Commonality共有性  schizophrenia精神分裂的な  Alterity他者受容性

 

自我とは意識のあり方です。自分と言う意識が示すものです。ですからこれが自我であると証明するものは必要ありません。自我は自我自らを証明しているからです。他人がどう思おうと、自分と言う自我は存在するのです。

 

アイデンティティはID(身分証明)と言う言葉が示すように、この私が、○○と言うものと同一のものである事を示すことです。ですから、アイデンティティは証明される存在です。自分と言うアイデンティティを証明する場合、自分の両親、家族、友達、会社、経験、考え方など、何か事実と思われるものを使って、これが私というものであると証明することです。ですから、そのアイデンティティと言うのは社会一般から受け入れられやすいものを選びます。自己自身の存在証明とは直接関係の無いものです。

 

 

「自我」は外観・内面や精神面も含む自分自身の対しての総合的な一人称に対し、

「アイデンティティ」は内面的・精神&思想信条的な自分の存在や主張を意図したり表したい時に個人・個性を強く持つ意識で用います

 

自我が強いとは、業が深く、自己中心的なこと。

自分という、アイデンティティーとは、自分が自分であるためのもの。それは、ゆらゆらと揺れて、孤独で脆いもの、だから、人は、この世では、生きるための仮面をかぶる必要がでてくる。

自我とは、そのアイデンティティーを防御するものである。弱くてもろいから、自我でそれを隠そうとする。そして、その自我をまた、仮面で虚飾する。ある意味、3重構造の外側で、人は、この社会と接している。

なにもなければ、タヌキと狐の化かし合いという世界である。当然に、自我で、100%アイデンティティーが隠されていることはない。その自我とアイデンティティーとの比率により、人の生きざまが変わってくる。アイデンティティーの比率が高くなれば、それは、信仰をもつ人、神を信じ、神とともにあろうとするだろう。なぜなら、アイデンティティーは、孤独で脆いものだからである。神という別な次元の感覚に支えられなければ、この世で何をもって生きるのか見えなくなるからである。なぜなら、この世は魑魅魍魎の狸と狐の化かし合いの世の中だからである。

 

 

自分が考える「自分」が「自我」

自分と他人を通しての「自分」が「自己」

 

心理学の派閥にも自我心理学派と自己心理学派があります。

自我心理学派の歴史は古く、自己心理学派は新しいです。

 

フロイトは他人の存在は軽視して、自我を中心に話を始めた。

自我は自己を動かして他者とかかわるため、直接他者にかかわることはない。

自己(セルフ)は自分自身で感じられるもの。直接他者と関わる。

他者視点での私の体験を自己と言う。

自分は悲しんでいる、など感じられる。

よって相手と共感することで他人の自己が観察できる。

 

「痛快心理学」和田秀樹より

自我を語る時は、よく「アイデンティティ(自我同一性)」という言葉が使われます。

アイデンティティは「自分視点の自分定義集」です。

人は14歳頃から40歳頃までの「青年期」の間に「自分は何者であり、何をなすべきか」を考えながら、イメージの自分と同一にしていきます。

もちろん誰しもがうまく同一にして形成していくわけではありませんが、何度もの危機的な体験の中で形成していくと仮定されています。

自己を語る時は「パーソナリティ(人格)」という言葉が使われます。

パーソナリティは「他人から見た自分らしさ」です。

例えば、自分は女だけど「男っぽい」と、周囲(他人)から言われたとします。

自分の中(自我)では「自分は女だ」と思っていても、周囲の目を通す(自己)だと「男っぽい」のです。

たとえ「男っぽい」と言われて、それを自覚しつつも「私は周囲から男っぽいと言われる女だ」と「自我」を正確にコントロールするのが「自己」です。

もし女なのに「私は男だ」と本気で「自我」で思い込んでいるとしたら、性格が分裂している精神病です。

あくまで他人との交流からの自分視点を重視するのがパーソナリティです。

 

※「自我同一性」という言葉は、古典的で説明に限界(他人の存在を無視しては心理で説明できないことが多いため)があるとされ、「自己同一性」と最近になって呼ばれるようになりました。どちらも同じ意味ですが、ここでは自我と自己の違いを説明すべく、古典的な言い方を使用しました。

 

 

逆向マスキング (遮蔽効果) masking

感覚の相互作用現象の一つで、二つの効果の掻き消し効果、遮音効果ともいわれる。強い刺激があると弱い刺激の存在が感じられなくなる現象。嗅覚、味覚のみならず、視覚、聴覚領域でも重要な現象である。マスクする音(マスカー:masker)に対してマスクされる音(マスキー:maskee)の振動数が高いほうが、低い振動数の音よりもマスクされやすい。マスキング効果は、基底膜の振動様式や聴覚神経での抑制効果によるものである。

聴覚:静かな時に聞こえる音楽は、騒音の中だと聞こえなくなる

嗅覚:嫌な臭いは香水などで消す

味覚:嫌なにおい・色をした食べ物は食欲をなくす

 

聴覚マスキング 

 ある音に対する最少可聴値(音の強度に対する刺激閾)がほかの音の存在によって上昇する現象(JIS Z 8109)。すなわち、ある音がほかの音の存在によって、聞こえなくなる現象。A音がB音をマスクする場合、B音は聞こえにくくなり、B音はきこえにくくなり、閾値が上昇したのかを測ればマスキングの大きさはわかる。B音が単独で与えられたときの音圧レベルの値をI0とし、A音を同時に鳴らした時のB音の音圧レベルの値をImとすると、この上昇分がマスキングの大きさである。すなわち、マスキング量(MdB)は、MImIoで表される。

 

 

種類

部分マスキング   音は聞こえるがその大きさが小さくなる

同時マスキング   マスクする音とマスクされる音が同時に提示される。最もマスキング量が大きい。

継時マスキング      二つの音が継時的に与えられて生じるマスキング

順向マスキング   マスクする音A→マスクされる音Bの順に提示するマスキング。マスクする音とマスクされる音の間に2040㎳以内の時間間隔が生じる

逆向マスキング    マスクされる音B→マスクする音Aの順に提示するマスキング。マスクする音とマスクされる音の間に140340㎳以内で時間間隔が生じる。時間間隔が同じであれば、順向マスキングより逆向マスキングのほうがマスキング量が多い。

認知マスキング   ほかの音などの提示によって音の認知が妨害されること。音が提示されると知覚的な表象が作られ、それに基づいてどのような音であるかについての認知が行われるが、後続音が提示されてしまうと先行音の知覚表象が妨げられて、認知がよくできなってしまうためではないかと考えられている。

両耳間マスキング(contaralatetal masking)  二つの音が左右の耳に別々に与えられた場合マスキングは同時マスキングより50B程度低い。純音を雑音でマスクしたとき、純音の振動数を中心にした、ある狭い帯域に雑音が集中している。この帯域を臨界帯域という。同耳マスキングと比べて、マスキング量は50dB程度少ない。マスクする音が骨伝導によって反対側の耳に伝わり、そこで同耳マスキングを生じさせているといえる。

傾向 

マスカーとマスキーの両方の周波数と強さをいろいろに変えてマスキング量を測定すると、次にあげるような一定の傾向がある。

@低周波数音は高周波数音をマスクしやすいが、高周波数音は低周波数音をマスクしやすい

A周波数の近い音ほどマスキング量は大きいが、あまり近いとうなりが生じてB音の存在が検知されやすくなるために、マスキング量はかえって減少する。同様のことは、B音の周波数がA音の倍音付近の場合にも生じる。

BA音の強さが増大するほどマスクされる範囲は広がり、マスキング量も増大するが、その割合は周波数によって異なる。

 

視覚マスキング 

ある視覚像が別の視覚像を壊し得ることを示す。二つの異なる刺激を素早く継時的に提示して、被験者が何を知覚するかを調べる方法である。

 

Averbach and coriell及びSperlingは、マスキング手続きを用いてアイコン貯蔵を調べた。フラッシュ光をマスク刺激として用い、被験者に文字刺激を短時間見せ、その文字刺激が消えた後すぐにフラッシュ光を提示した。そして見えた文字数を調べるという実験を行った。結果はマスク光がすぐ提示されるほど、報告できる文字数は少なかった。マスクが文字の近くに影響を及ぼしたと考えられる。

 

しかし、因果律によれば、ある事象は、それがほかの事象に先んじるか、あるいは同時に生起するときにのみほかの自称に影響を及ぼしえる、そして科学は因果律の上に成り立っている。よってマスクは先行する事象に逆行して影響を及ぼしているよう見えるだけであって、実際にそうではない。マスクはそれが生起したときに進行している過程影響するのである。たとえそれが文字の近くのような単純なものであっても、認知過程には時間がかかる、先の実験であれば、近く過程は短時間提示された刺激が消えた後にも侵攻しており、マスクはこの近く過程にかんしょうしたのである。

 

マスクが鑑賞しえるアイコン超像の過程は、少なくとも二段階ある。マスクはアイコンの形成を妨害しえるし、アイコンから文字を読みだす際の文字の道程も妨害しえる。

 

 

アイコン記憶:視覚的印象の「持続性」というものは、その刺激が終結してしまった後でさえ、それらの印象をしばらくの間、処理のために利用しうるようにさせるものである