アダルトチルドレン 

 

 

本来家族は安全で安心できる場、自尊心を持つことや、人間関係の在り方を学べるとこのはずですが、安全で安心できる場として機能しない家族=機能不全家族で育った人は、潜在的に自分や他者との接し方について誤った考え方を学んでしまいます。

この機能不全家族で育った人をアダルトチルドレン(アダルトサヴァイバー)と言います。

 

アダルトチルドレンは大人になってからも

 

「いつも問題を抱えていて生づらい」

「どうしても人間関係がうまくうかない」

「人を心から愛せない・信じられない」

「家族や子供が問題を起こしている」

「自分が子供を虐待してしまった」

など様々な、切実でありながら漠然とした感覚に悩まされます。

 

これらはアダルトチルドレンを克服しない限り、一生あなたについて回る問題です。

何のきっかけも無しにアダルトチルドレン特有の心の在り方が変わることはありません。

 

アダルトチルドレンはあなただけの問題ではありません

あなたが育った家族であなたに刷り込まれた、不健全な考え方・振る舞い・コミュニケーションは、実はあなただけの問題ではとどまりません。

「あんな親にだけはなりたくない」と心に決めていたはずなのに、いつの間にか、かつて自分が受けていた理不尽な行為と同じ行動をしている。たとえば、虐待を受けて育った母親が自分の子供を 虐待してしまう。

このようなことは偶然や特別ではなく、よくある事例なのです。

 

確かにあなたが子供の頃に受けた傷はあなたのせいではありません。しかし現に今あなたが抱えている傷を癒すのはあなたにしかできない役割です。

そうでなければ、あなたの家族、子供、友人、恋人。

あなたが大切に思っている人たちに、その影響は負の連鎖を繰り返していくのです。

 

 

 

リプロセス・リトリート あなたが自分を自分を癒す方法

 アダルトチルドレンは医学的な意味での病気ではありません。

ですから薬で治るわけではありませんし、もちろん手術などでどうにかなるものでもありません。

唯一治療法と呼べるものがあるとすれば、あなたが自分で自分を癒してあげることしかないのです。

 

あなたが自分を癒すために「リプロセス・リトリート」という方法があります。次のような8つのプロセスであなたのインナーチャイルドを癒します。

 

■リプロセス・リトリートの8つのステップ■

T.安全性の確保

U.問題の認識

V.トラウマ(心の傷)の表現

W.トラウマの再現

X.トラウマのやりなおし

Y.アファメーション

Z.行動と思考の健全化

[.人間関係の健全化

 

簡単に言うと、リプロセス・リトリートとは、子供の頃に受けた心の傷を疑似的に再現して、正常な体験をやり直すことでアダルトチルドレンの傷・トラウマから回復させる方法です。

 

 

「アダルトチルドレンは、一生、生き辛さから回復できない」

「アダルトチルドレンは、親から受けた影響を克服できない」

そう思い込んでいたアダルトチルドレン当事者が

「子どもへの虐待がなくなった」

「自分を肯定できるようになった」

「生きることが楽になった」

と言って、一歩一歩心の傷を癒していきます。

 

 

アダルトチルドレンが抱える問題

ここで、多くのアダルトチルドレンが抱える問題や症状について、典型的なものをいくつかあげて見ましょう。

ものごとを最期までやり遂げることが難しい

自分に自信がない。自分はダメだと思う

自分に対して過酷な批判をする

他人と親密な関係を持つのが難しい

白黒がはっきりしすぎて、ほどほどにすることができない

必要以上に相手に忠実である

何が正常で、何が異常なのか分からない

他人からの助けを得るのが下手である、

自分は他人と違っていて、居場所が無く、孤独に感じる

他人から認められたいという気持ちが強い

何かあると反射的に反応する、又は何の反応もしない

自分でコントロールできない状態が起きるとパニックを起こす

常に怒りが爆発したり、イライラしている

理由もないのに、体の調子が悪い

摂食障害になっている

うつ状態になりやすい

アルコールや、処方薬などに依存している

よく不安感を感じている

自分の感情が鈍磨していたり、体からでるメッセージに気がつかない

対人恐怖があったり、引きこもりをしている

 

などです。まだ他にも項目はありますが(詳しくは、スタディキットをご参照ください)、これらは、人間であれば、誰でもが時には当てはまります。しかし、多くの項目が常に当てはまる場合は、あなたはアダルトチルドレンの一人かもしれません。これらは、機能不全な家族の中で、生き抜くための手段として、長い間かかって無意識のうちに作り上げられたパターンかもしれません。もしそうであるならば、癒しのワークをしていくことで、これらの生き苦しさや、問題のパターンを変えていける可能性があります。

 

 

 

アダルトチルドレンの理解と回復のために

あなたが、アダルトチルドレンの一人であるのか、あなたの育った家族は 機能不全家族なのか、家族から受けた影響を把握する。

あなたの心の傷を表現して外に出し、絵に描いたり、文章に書いたりしながら、 心の傷を自ら癒す方法を身につける。

安心して育つことができなかった、あなたの内なる子ども(インナーチャイルド)を 自ら親となって、育てる手順を身につける。

低いあなたの自己イメージを把握し、自分で自分を世話することによって、 自分を許し、自己イメージを上げる技術を獲得する。

あなたに心の傷を与えた相手を、自分の安全性を確保しながら許す技術を得る。

あなたがもつ「怒りの仕組み」を理解し、自らが怒りを持つ場面の条件や状況を把握し、 怒りが出る前に、流れを変える技術を得る。

「気持ちいい人間関係」を築く方法を練習し、ありのままの自分で、 相手と一緒にいられるかかわり方の技術を得る。

あなたがわくわくすること、楽しいと思うことが何なのかを調べ、 自分がなりたい自分へと進んでいるときの感覚を得る。

 

上記の技術や、能力を身につけるための、具体的な方法をこのスタディキットの中で、述べていきます。

 

 

 

 

 

誤解の多い、アダルトチルドレン(複数)という言葉についての説明

アダルトチルドレンというのは、子どもっぽい大人、大人になりきれない大人、大人のような子どもという意味ではありません。

 

アダルトチルドレンとは、今は大人になっているけれど、子どものとき、アルコール依存症などの機能不全な家族で育った人たち(Adult Children of Alcoholics)と、今でもそういった家族で育っている子どもたち(Children of Alcoholics)と区別をつけるためにつくられた言葉です。

 

区別をつける必要があったのは、現在機能不全な家族で育っている子どもには、自己を振り返るだけの能力が、ととのっていませんが、もう大人になってしまった人は、過去を振り返ってみて、問題を直視でき、癒しができるからです。

 

ここで扱うのは、大人の問題です。

子どものころ、アルコール依存症などの親がいて、心を傷つけられるような言動や、暴力のある環境で育った人たちに、いくつかの共通点が見られることがわかりました。

 

心の傷(トラウマ)の影響で、心や、人間関係に障害を持ったり、息苦しさを感じたりしている大人たちが多くいることが判明したのです。

こうした人たちのことをアダルトチルドレンと呼ぶようになりました。

 

アダルトチルドレンという言葉を共有することができるようになって、自己意識が高まり、癒しや回復への希望を可能にしました。

 

「私は、アダルトチャイルドです」というとき、自己意識の高さと、自分の癒しに責任を取り、よりよい人間になる努力をするという誇りが感じられます。

 

 

癒しと回復のポイントとは?

一対一のカウンセリングでは、なかなか回復しないので、もっと効果的な方法として作り上げたのが、リプロセスリトリートというワークです。

 

リプロセスリトリートは私が自ら体験し、クライアントに試した中で効果のあったものだけを集めて、実践的に作り上げた癒しの手法です。

 

 

●リチュアル

 リチュアルとは、セレモニー、儀式という意味です。

 リチュアルは、過去にうけた心の傷を捨て去り、 癒していく作業の象徴や比喩としておこうなうものです。

 自分の癒しへの決意を新たにしたり、 自分の問題に決着をつける儀式として行います。

 

●ジャーナリング

 自分が過去に受けた心の傷について、回想して書き出したり、 出さない手紙を自分や傷を与えた人に対して書くことです。

 心の傷に対する認識ができたり、書くこと自体が癒しにつながります。

 

●アートセラピー

 言葉では表現できない自分自身の問題や心の傷を 絵や粘土、コラージュなどで表現します。

 左脳だけではなく、右脳を使って、 無意識に沈んでいるものを、意識できる形にする役割があります。

 心の傷を外に表現すること自体が癒しのプロセスとなります。

 

●ボディセラピー

 心の傷は無意識にからだのあちこちに溜まっていくので、からだを動かすことによって、外に解放します。

 自分の心とからだの結びつきを認知します。

 

●イメージセラピー

 目を閉じて、心の傷をイメージで思い浮かべたり、 心の傷が癒されている過程を、誘導にしたがってイメージします。

 インナーチャイルドセラピー(内なる子どもの心の癒し)もこれに入ります。

 

●メディテーション

 からだや自分の心の奥から聞こえるメッセージに耳を傾けます。

 アダルトチルドレンは、反応的に行動したり、 あれこれ心配して心が休まらない傾向があるため 静かにゆっくりと呼吸に注目しながら行う瞑想は役立ちます。

 

●話し合い

 自分の心の傷となった体験を、同じような体験をもつ人の輪のなかで話し、わかちあいます。今まで誰にも話せなかったことを、

 批評や判断をされない安全な場所で話すことは、心の重荷を軽くします。

 

●リプロセス

 イメージワークや、サイコドラマ(役割を演じる心理劇)を使った体験的なワークで自分の過去の傷となる経験を再現して、傷を洗い流し、 さらには、こうあってほしかったという場面や人間関係を設定して、人生のやり直しをし、 演じることで、受け入れられる感覚を体にインプットして、 自分の望む人間関係を構築する礎を築きます。

 

●アファメーション

 自分を肯定し、いたわり、元気付ける言葉や、 自分の成長をサポートするいろいろな活動のことです。

 自分を世話する方法や、こうなりたい自分に近づく方法なども学びます。

 なんども繰り返しおこなうことで、古い害のある、 否定的な思考や行動を、肯定的なものに変えていきます。

 

 

 

心の傷を癒すことの大切さ

心の傷を家族から受けた人は、自分をいたわり、自分の心の傷の癒しをしましょう。

心の傷の連鎖が続く可能性を、少しでも少なくしましょう。

 

良いことに、自分の傷を癒すことによって、自分の人生も、家族との関係もよいものに変えることができます。

人に与える悪い影響が連鎖するように、良い影響もまた、連鎖します。

 

そして、これが最も大事なことですが、あなたがどのように育てられようと、 いつからでも、どこにいても、人生は選びなおすことができます。

そして、どんな人生を選ぶかは、あなた自身にかかっています。

 

 

アダルトチルドレンの癒しの過程とは?

癒しは、部分ではなく全体の流れがあって、はじめて、癒しのプロセスひとつひとつが生きてきます。アダルトチルドレンの癒しと回復をするうえで、回復の過程の全体を理解することがなかったが故に挫折する人がいます。まずは癒しの仕組みと全体像を把握してください。癒しの過程を知ることで、あなたはアダルトチルドレンの回復に必要な心構えと、期間、全体の流れを理解することができるでしょう。

 

アダルトチルドレンの癒しの最初のステップ、安全性の確保とは?安全性の3大要素とは?

アダルトチルドレンの多くの方は、自分の安全性について、あまりにも無頓着です。自分がとても危険な状態にさらされているのにもかかわらず、そのことに気付いていなかったり、気付いていても、危険から離れる行動をとれないで、されるがままであったりします。安全性が確保されない限り、癒しを行うことは不可能であるどころか、逆に危険なものとなります。そして、安全性には、暴力や、虐待などの危険から身を守る、身体的な分かりやすい安全性の確保以外にも、2つ要素があります。3つの要素からなる安全性について、今、自分は大丈夫であるか、チェックを行い、危険な状態にあると気付いたら、安全性を確保する対策を一緒にしていきましょう。

 

あなたは本当にアダルトチャイルドなのか。自分がアダルトチャイルドであるかどうかを正確に把握する方法とは?

自分自身の今の心の状態を正確に把握することが、アダルトチルドレンの回復を始めるためには必要です。アダルトチルドレンという言葉の意味すらよく分かっていないことはよくあります。アダルトチルドレンのチェックリストを使って、チェックをすることで、あなたは、自分がアダルトチルドレンの一人であるかないかを把握し、適切に対応することができるようになるでしょう。

 

健全な家族と、健全ではない家族とはなにか。アダルトチルドレンが育った機能不全家族とは?

アダルトチルドレンは、健全ではない家族で育ったがゆえに、「何が健全か」が分かりません。極めて異常な出来事が、家族の中で日常的に起こっていたにもかかわらず、あなたはそれ以外の家族を知らないので、異常であったことが分からないのです。安全性が常に確保されていない家族のことを機能不全家族と言います。そして、自分の家族で起きていたことをはっきりと知ることで、あなたがどのような影響を家族から受けているかを把握することができ、それからやっと、回復のプロセスを始めることができます。だから、忘れないでください。家族の状態を把握することは、家族を責め立てることが目的ではなく、自分がなりたい自分になるためなのだということを。

 

機能不全の連鎖と、「本来、自分はどうなりたいか」を明らかにする「ジェノグラム」とは?

ジェノグラムと呼ばれる家系図を使って、機能不全さの連鎖を明らかにする方法があります。例えば、自分が親にされたことは、親がその親にされたことであることが、ジェノグラムを使うと、明らかになったります。そして、ジェノグラムを見ていくうちに、自分が自分のパートナーや子どもに対して、このままだとどのように関わっていくことになるのか、また、自分の子どもが、更にその子どもに対して、どのような関わり方をするかが見えてきます。今すでに自分が身をおいている流れ・・・それを自らの手で明確にし、把握しましょう。現状が明らかになることで、あなたは、自分がどうなりたくなくて、本当はどうなりたいのかを、知ることができるでしょう。そして、明確になった自分の意思は、あなたを本来ありたい姿に、力強くあなたを推し進めるでしょう。

 

トラウマ、心の傷を癒す「表現ワーク」とは?多種多様でユニークな表現ワークの「バリエーション」とは?

心の傷を回想し、いろいろな表現方法で表現し、外に出すことによって、心の傷を変化させ、癒していくことができます。私自身、この方法でトラウマを克服し、回復をしてきましたし、多くのクライアントも同様に、「表現」することで回復をしています。同じ表現方法でも、やる度に、異なる変化や癒しが起きるので、何度も繰り返し、心の傷を表現すると、癒しが深まります。一つのトラウマの表現ができたら、次のトラウマの表現をしていきましょう。ただし、心の傷を表現することは、ことさら安全性の確保と自分のケアが必要となるので、注意が必要となります。心の傷を癒す、様々なバリエーションの「表現ワーク」の手法を知ることで、あなたは、今まで不可能と思ってきた、心の傷を自ら癒す手段を得ることができます。

 

ものごとの記憶が発生する「2歳以前に起きていた、トラウマとなる体験」を癒し、「無意識の回路」にアクセスして、回復する「スクリブルワーク」とは?

2歳以前に起こっていた場合は、事実としての記憶はありません。事実を記憶できる脳の海馬がまだ発達していないからです。意味も分からないのに、ある状況にあうと、異常に反応する場合は、もしかしたら、トラウマが、2〜3歳前に起こり、篇桃体が反応しているからかもしれません。記憶に無いトラウマの処理は、理性や言葉を使ってすることはできません。しかし、赤ちゃんが、発達段階上でする、「スクリブル」というやり方を使って、意味の分からないトラウマを表現し、癒し、回復することができる可能性があります。この手法は、「なぜかよくわかないけど反応してしまうトラウマ」にアクセスし、回復させる手段になるかもしれません。

 

あなたが家族から受けた心の傷、家族から与えて欲しかったのに与えてもらえなかったものを嘆く「グリーフワーク」(嘆きのプロセス)とは?

グリーフワークとは、傷つけられたことによって、自分がもっていたものを失ってしまった時、または、あるべきものが得られなかった時に感じた喪失感を表現して嘆く、癒しの手法です。嘆くことによって、自分の心が洗われ、ずっと閉じこめられていた苦しみや重みが解き放たれて、心が軽くなります。失った過去、存在するべきものが存在しなかったことを嘆くということは、家族を責めたり、愚痴をいうことではなく、感じていることを、ありのまま感じ、表現することを自分に許可することです。この方法を知ることであなたは、自分が抱えてきた重荷を、外に吐き出し、心の傷を手放すことが出来るようになります。

 

あなたが、家族から欲しかったものを、本当に与えられたこととして、「過去を再構築」する、リプロセスワーク(やり直し)とは?

実際の人生で、健全な成長のために必要だったものが与えられなかったり、大切なものを失ったことが、リプロセスワークのなかで、「補充」されます。今まで体験したことが無いので分からなかったことが、「これが欲しかったのだ」「ああ、こうして欲しかったのだ」と気づき喪失感が満たされ、癒されていきます。私が行ういろいろなワークの中でも、リプロセスワークが、一番パワフルなトラウマの癒しの方法です。このワークを行うことで、あなたは、本当に欲しかったもの、欲しかった感覚を得ることができるでしょう。そして、その感覚は、あなたを危険なものから遠ざけ、本当にありたい自分へと近づけます。

 

あなたの内なる子どもを癒すインナーチャイルドワークとは何か。インナーチャイルドを癒すことで、日常生活の何が変わるのか。

インナーチャイルドとは、心の傷や周りからの過度な要求のために、心の傷がついたときの子どものままで凍り付いてしまい、成長が止まってしまった、もう一人の自分です。本来の自分を解き放つためにインナーチャイルドを癒して、育て直すワークをしていきます。このワークをすることで、あなたは、今まで無視してきた自分の内なる子どもの存在に気付き、その子どもにアクセスする方法を得ます。そして、インナーチャイルドとの関係を積み上げていくことで、自分と他人に対して、愛情と慈しみの心が芽生え、少しづつ人間関係が改善され、自信がついていくことでしょう。

 

 

なにをやってもうまくいかなくなる「自己イメージの低下」とは?低下してしまった自己イメージをあげる方法とは?

人間として自立するために、自分に対する肯定的なイメージを作りあげていくことは、とても大切なことです。安全な場所として機能しなかった家族のもとでつくってしまった自己評価は、ときとして、著しく低いものです。心が無防備な小さい頃から、自分が唯一頼りにしている家族のメンバーから、存在を否定されるような仕打ちが、何度となくおこるようであれば、自己イメージが低くなってしまうのも、当然のことです。本書にある自己イメージのワークを行なうことで、あなたは、知らず知らずのうちに行なってしまっていた自己イメージを低下させる行動を把握し、とめられるものはとめて、更に、自己イメージを高める行動を「作り上げていく」ことができます。

 

親を対等な立場の一人の人間として扱い、より魅力的な深みのある人間になれる「許し技術」を身につける「許しのワーク」とは?

ほとんどの親は、子どもに対して、子どものためになると思うことを行って、育てています。子どものために自ら進んで苦労をし、犠牲をはらうことも多々あります。ひどい虐待をする親であっても、子どもをかわいい、愛しいと感じることもあったかもしれません。自分の親から学んだことを、それがよいことかどうか吟味することなく、そのまま自分の子どもにしてしまったと言うことはよくあることです。自立をし、自分がなりたい姿になる上で、「許す技術」は重要なものです。許しは、技術です。許しの技術を習得することによって、あなたは、心の重荷を降ろすことができ、より自立し、魅力的な深みのある大人に成長することができます。

 

怒りの仕組みとは?怒りを抑えられない時にできる対処方法とは?逆に怒りを表現することが必要な場面とは?

アダルトチルドレンにとって、怒りの問題は深刻です。小さな無力であった子どもの自分が、力の強い大きな大人、しかも自分を守ってくれるはずの家族から虐待を受けたり、支配されて長い間、虐げられて育てば、怒りがたまるのは当然のことです。怒りは人間であれば誰でもが抱く、自然な感情のひとつであり、良いものでも、悪いものでもありません。怒りは通常、自分自身の安全性がおびやかされたときに現れます。たとえば、暴力をふるわれたり、自分の生命に危険が迫ったと感じたとき、怒りを覚えることがあります。そうしたときに感じる怒りを表現することは、安全性を確保することに役立ちます。怒りの表現の仕方、対処の仕方を学ぶことで、あなたは自分の怒りがいつ爆発するかと恐れる必要がなくなります。と、同時に怒りの表現が必要な場面では適切に怒りを表現することができるようになり、人間関係が心地よいものとなります。

 

建設的で発展的な人間関係を作る方法とは?

建設的で発展的な人間関係を作る方法は、生きていく上で、人生の基礎を作る大切な技術です。しかし、これらの技術、方法は、学校でも家庭でも教えられることは稀です。むしろ、ほとんどないといってもよいでしょう。自然にできると思われがちですが、人と人とが、言葉を交わし、相手の言うことを正確に把握し、それに対して、こちらが思うこと、感じていることを瞬時に言葉にして伝える技術は、よくよく考えてみると、それほど簡単なものではないことに気づきます。特に会話があまりなかった家庭、建設的な人間関係など望むべくもない家庭で育った人にとってはなおさらです。本書では、心地よい人間関係の作り方を練習します。その方法を学ぶことによって、あなたは、ついしてしまっている不健全なコミュニケーションをやめることができ、相手と自分、双方が心地よく一緒にいられる技術を身につけることができます。

 

過去のトラウマにプラスの意味をつけ、学び、成長していく方法とは?

歴史上の偉人と呼ばれる人の生い立ちをみてみると、大変な人生を乗り越えてきた人であることが多いものです。不健全な家族で育ったとしても、その経験から学び、新しい人生の流れを作っていくことができます。虐待を受けたり、不健全な関わり方を受けて、大きな心の傷を負ったあなたは、それだけ、大きく成長できる可能性をもっていると言えます。過去のトラウマにプラスの意味をつけ、学び、成長していく方法を学ぶことによって、他人の痛みに共感することができ、自分の経験をもとに、他人に貢献することもできるでしょう。

 

自分のなりたい姿、わくわくすること、行きたい方向性を見つける方法とは?

自分の方向性、やりたいこと、ゴール、満足することを自分自身が知っておくと、たとえ、「よい話」をもちかけられたとしても「それは自分の行きたい方向性とは違う」と判断ができるので、軸がぶれずに、簡単にだまされるということも起きません。方向性がはっきりしていればいるほど、目の前にある情報がいきたい方向に自分がいくことにとって、役立つかどうかを判断できるので、よりスムースに、自分がなりたい姿に近づくことができます。

 

 

質問と回答

質問:アダルトチルドレンとは病気なのでしょうか?

 

回答:アダルトチルドレンというのは、機能不全な家族で育った大人という意味で、医学上の病名ではありません。病気ではないため、特効薬のような薬もありませんし、手術もできません。だれかに、お任せして、「治してもらう」ということができないのがアダルトチルドレンです。

だからこそ、自分で癒しに取り組む以外、他に方法がありません。

 

 

質問:アダルトチルドレンの問題や症状は本当に治りますか?

 

回答:アダルトチルドレンの心の傷は、努力を続ければ、何らかの形で癒されていくと思います。私が、みてきたアダルトチルドレンのうち、あきらめないで癒しに取り組んだ人で、改善、成長しなかった人を見たことがありません。

しかし、癒しは一生続くことは知っておいてください。完璧に問題がなくなることは、生きている人間である以上、あり得ません。

 

 

質問:自分の夫や妻、恋人、友人、子どもがアダルトチャイルドの場合、どのようにつきあえばいいですか。

 

回答:アダルトチルドレンは、まず自分たちの問題をある程度、解決しない限り、アダルトチルドレン同士でよい人間関係を作ることは難しいでしょう。お互いの傷が反応しあって、依存しあったり、破壊的になったりします。その場合は、まず相手と距離をとってください。そして、安全性を確保して、自分の癒しに取り組んでいきましょう。自分の癒しがかなり進んだところで、もし相手が望むなら、先行く仲間として手を差し伸べることができるかもしれません。

 

 

質問:大好きなはずの人と一緒にいるのに、つらくて仕方がないです。どうしてですか?

 

回答:アダルトチルドレンは、心地よい人間関係を作ることが苦手です。相手や自分に負担を強いたり、大好きなのに、一緒にいるとつらい、ということがよく起きます。なぜそうなるのか、どうしたらいいのか、今は全く見当がつかないかもしれません。

しかし、あせらないでください。あなたがそうなるには理由があります。そして、それは癒しを進めていきながら、たまねぎの薄皮をはがすように、少しづつ分かっていくものなのです。

 

 

質問:アダルトチルドレンである私たち親の間に生まれてきた、子に対して、親である私になにができますか?

 

回答:親である自分たちが、アダルトチルドレンであることに気付いたのなら、自分たちの癒しに真正面から取り組むことが、自分の子どもにできる最大のサービスです。子どもに対して、これ以上のことはできないと言ってもいいかもしれません。

癒しのワークはそれぐらい、価値のある仕事です。その証拠に自分の心の癒しに取り組み始め、回復が進むにつれて、子どもが本当に愛しく感じらるようになった人は多いですし、また、子どももあなたを違う目で見るようになることでしょう。

 

そのような例は枚挙にいとまがないほどです。どうか、安心して、自分の癒しに取り組んでください。子どもになんとかしてやらなければと、必死になって子どもにのめりこみ、自分の問題を放り出したら、それは責任転嫁や依存になりやすいので、注意してください。

 

 

 

 

アダルトチルドレンの生きづらさ

アダルトチルドレンとは、どのような家庭で育ってきたのかは、機能不全家族のコーナーでお分かりいただけたかと思います。
いわゆる「機能家族」で育ってきた人には、理解しがたい家庭環境かもしれません。
が、それを理解して、どうか苦しんでいる人がいたときに助けてあげてほしいのです。
ここでは、アダルトチルドレンが、どのようなことが苦しいのか、生きづらいのかをお話ししたいと思います。


さまざまな事情で子供時代を、子供としてすごすことができなかったアダルトチルドレンは、周囲に気を使い、
また感情を表現する事ができずに育っています。
したがって大人になっても、素直に自分の感情を上手に表現する事ができないことが多いのです。
言いたい事が言えなかったり、またその感情を抑えすぎて急に爆発したり。
また、泣きたいときに泣けなかったりして、ひとりぼっちで声を立てずに泣いていたり。
これって、子供時代にうまく感情を表現する事ができなかったまま、大人に成長したからなのです。

また、アダルトチルドレンは子供の時代に大人を信頼できずに育ってきたので、他人を信頼する力が弱いのです。
他人を信頼できないので、援助や助けを求めるのが下手なのです。
それから、甘えたくても甘えさせてくれる人がいなかった子供時代を送っています。
甘える事ができなかったから、大人になってからも人に依存したくてもできません。
その辺が不器用なので、自分の心をコントロールしたがったり支配しようとします。
さらに間接的に相手の心もコントロールしようと一生懸命になります。
しかし、相手の心が思い通りにならないと、相手を恨み、信頼できなくなります。


子供時代を淋しく暮らしてきたアダルトチルドレンは、大人になっても得体の知れない淋しさにさいなまれたり、抑うつ的になったり不安になったりすることがあります。
結婚や恋愛をしても、なぜか淋しく満たされない気持ちになるのです。

 

回復について

ACは病気ではありません。

親・家族によって子供時代に付けられた心の傷は、一生のこるもので、消えることはないからです。

ですからACへの治療というのは特別なく、大切なのは、今の苦しみをいかに軽減させるかなのです。

 

 

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第一段階:否認を解く

ACの人は、人のせいにできなかったからここまで苦しかったのです。

通常、人のせいにするということは、自分の責任を果たさないということでよくないことですが、ACはそうではないのです。

何でも過剰に責任を感じていきづらさを感じてきたのですから「親が悪い」と、親のせいにすることは全然悪くないのです。

 

「今まで自分が辛かったのは、親が悪かったのだ」と思えれば、心が軽くなると思います。

一人で無理なときは、カウンセラーにかかったり、自助グループに参加するのもよろしいでしょう。

親に拘束され、支配され、苦しんできたことを、認めること。

これが回復への第一歩です。

 

第二段階:否認していた怒り・抑うつ感・罪悪感・絶望感を表現する

ACは感情を表に出すことが苦手です。

しかし感情を出しきることで、心は軽くなります。

方法としては、粘土や箱庭などで感情を表現する「アートセラピー」、ヨガや太極拳、ボディームーブメントなどの「ボディーセラピー」、傷つけた親に出さない手紙を書いたりする「ジャーナリング」などがあります。

いずれも個人で行うよりも、グループセラピーの方が安全であり、望ましいとされます。

そして本当の意味で嘆きや悲しみを最終的に実感するには「グリーフワーク」(悲哀の仕事)が重要になってきます。

理想化され、幻想化された親を捨てるのです。

心の中にいた、理想化された親を捨て、現実の親と上手に付き合えるようになることが理想です。

 

第三段階:理想化していた親の代わりになって支えてくれる人を探す

第二段階で、理想化された親を捨てたら、今度は親を探します。

ただ、カウンセラーや自助グループにそれを頼るならば、一生カウンセリングが続いてしまいます。

そう、自分が自分の親になればいいのです。

自分を愛して、自分を育てればよいのです。

ACの人は、自己評価が低いので、いつも陽性の肯定感をあたえてあげればいいのです。

そのままの自分でいいこと。生きているだけでいいこと。機能不全家族の中を生き抜いたサバイバーであること。

自分で自分を勇気づけてあげましょう。