喘息の治療法
喘息とは気管支の慢性炎症のことなので、炎症をなくせば治ります。
メカニズム
原因
対策
メカニズム
炎症というのは、気管支にとって大きなダメージになります。この炎症が頻繁に起こると、気管支の粘膜が、ちょっとした刺激にも反応するようになってしまいます。<気道の過敏性亢進を伴う慢性炎症>
敏感になった気管支の粘膜は、健康な状態ならどうということもない小さな刺激であっても、すぐに「異常だ!」と察知するようになります。そしてそれが更に炎症を起こす原因になったり、筋肉の収縮につながったりするようになります。発作が一時的に治まったとしても、炎症自体は続いているため、ほんのわずかな刺激で、再び発作は起こります。
原因 アレルギーとストレス
喘息の原因というのはさまざまです。ハウスダストや花粉、あるいは特定の食べ物によって喘息を起こす人もいます。
しかしながら、喘息は、“それ以外の原因”が発作の引き金になることもあります。
たとえば、運動。それから飲酒。ストレス。汚い空気。“香り”が喘息の原因となることすらあります。明確な原因がわからない、という人も多く、「その原因から身を離せば止まる」と断言できないのも、喘息の難しいところです。また、重症度も人によって大きく違います。
発作と時間 発作が表れるのは時間が関係する?
喘息発作が表れやすいのは、夜中から明け方の間です。
これは睡眠中、体の筋肉が緩んだり舌が下に落ちるなど、上気道が狭くなることが原因です。
症状は人や体調によって異なり、軽度の場合は息苦しさや胸の痛みだけで済みます。
重度になってくると、喉が詰まるような感覚に襲われ呼吸が困難になり、横になって寝ることができないほどになります。
対策
気管の腫れを抑えることによって治療できます。何故腫れるのか?
アルコール
アルコールは 血管拡張作用があり、血圧を下降させ、その後、血管を収縮させて血圧を上昇させる。アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドの血管拡張作用、その反動として心拍数増加が起こり、末梢血流量が増えるためです。心拍数はアセトアルデヒドにも増加させる作用がある。アルコールを摂取すると、血管が拡張すること、血流が増えること、この二つの理由で血管が浮き出てきます。
冷え
定温動物であるヒトの体には、不要な熱が体内にこもらないように、皮膚の汗腺から汗として水分と伴に排泄する作用が備わっています。
しかし、冷え性や低体温によって血液の循環が悪くなると、排泄作用が鈍ってしまい、肌や筋肉に水分がこもったような状態になります。
そして、体はほかの出口を探し、肺や気管支のほうへと熱と水分を集めます。
そうして、肺や気管支の粘膜に水分と熱が過多になって、炎症を起こしてしまう。
ほこり
体内にそれが入らないように腫れることにより防御しようとしているからです。花粉症の鼻水、くしゃみ、扁桃腺の腫れなどと同じ現象です。
対策
アルコールの量を控える
汗の出る体質にするために、汗をかく習慣をつける
ほこりが気管支に入らないようにする
日常
一番大事なのは気管支の腫れを抑えることです。そのために必要なのは普段はそこに手を置いて温め、慢性の炎症をなくす努力をすることです。患部をいたわる意識を持つことが必要です。
交感神経の働く時間を減らす必要があるので、意識を使う時間を意識的に減らす必要があります。外界からの刺激には反応してしまうので、刺激をなくすか刺激があっても反応しない条件反射を作り上げる必要があります。
わかりやすく、一言で言うとストレスを減らすことです。ストレスとはラテン語で言う抑圧や緊張や苦痛のことです。減らすというのはなくすことではありません。ストレスのある時間の後はステレスのない時間と空間を増やすことを意味します。減り張りのある神経の状態にするということです。
考え方を理性から知性に切り替えるのが役に立ちます。ものを二つに分けてその一つを選択する理性から、二つに分けて選択しなかった方にも価値があると思う智性にスポットライトを当てることです。負の意味を理解してそれも大切にすることで、ストレスは劇的に減ります。
交感神経を抑えるために、呼吸法や瞑想法も有効です。
図解
アレルギーの話しをしますと、必ずや色々な登場人物(=細胞)とさまざまな因子(=サイトカインなど)がでてきて、それらが網の目のようなネットワークを形成してしまいます。確かにひとつひとつの関係に注目すればどれも正しいことばかりなのですが、では全体的に見ると一体どうなっているの?となると誰も答えることができません。
最も嘆くべきは、AがBを抑えるという1対1の関係にのみに着目して喘息全体の話しができあがってしまい、それが十分に解明されないうちに新薬として世に出てしまうという愚(というには開発に携わってきた方には申し訳なけいとは思いますが…)が実際にこれまで起きてきました。AがBに作用してCを出す。その結果Dが集まってきてEが起きる。これは一見人々を納得させやすいのですが、所詮最初に言い出した方の仮説でしかありません。真実かも知れないし、全くの嘘であるかも知れない。生体はひとつの因子、ひとつの細胞で話しの決着が付くものではありません。いつか有機的に統合されたとき真実が見えるのでしょう。
気管支喘息の発症メカニズムを理解するには、まず正常な気管支の解剖を理解しなければなりません。
気管支粘膜は、下図のように気道上皮細胞、上皮下組織、気管支平滑筋層、奬膜組織(外膜)などからなります。上皮細胞は、線毛細胞と粘液細胞からなり、線毛細胞は繊毛運動によって痰を喉の方へ送り出す働きがあります。上皮下組織は、毛細血管に富み、正常でも、マクロファージ、リンパ球、好塩基球(肥満細胞)が存在し、通常の免疫(外敵からの防御)を営んでいます。気道粘液は、上皮細胞でも作られますが、気管支粘膜腺といってある程度まとまって粘液を産生する機構があります。
次に、アレルギー性喘息の最も多い原因であるダニ抗原を原因とした喘息発症のメカニズムを説明します。ダニが気管支へ侵入してくると、生体はそれを排除すべく防御機構が働きます。
ダニ抗原は、上皮下に存在するマクロファージ(あるいは樹状細胞)に捕らえられ、細胞内で分解され、その一部は細胞膜上に現れます(抗原提示という)。マクロファージには、お互いに仲間を認識する抗原(自己認識抗原)も細胞膜上に発現されています。
リンパ球には、T細胞とB細胞とがあって、T細胞の一部のヘルパーT細胞がこのマクロファージと接触します。ヘルパーT細胞には、表面に種々の抗体を有する細胞があって、その中でたまたまマクロファージ上のダニ抗原と反応する抗体を有するヘルパーT細胞がこのマクロファージと出会うと、ヘルパーT細胞は活性化されます。この時、自己認識抗原を認識できることが活性化の条件とされています。
活性化されたヘルパーT細胞は、抗体を産生するB細胞(Bリンパ球)の中で、ダニ抗原と同じ抗体(IgE)を産生する細胞を増殖・活性化させ、結果的にダニに対するIgE抗体が全身あるいは気管支粘膜に増加します。これがいわゆる感作です。アレルギー体質の方は、この過程が普通の方より過剰なのかも知れません。
これは、次にダニ抗原が侵入したときに、それを排除する準備状態されていると考えられます。
B細胞によって産生される抗体(免疫グロブリン)には、この他にIgG、IgM、IgA、IgDなどがあります。これらは中和抗体といって、ウイルスや毒素などの外敵に直接結合し、それらの働きを弱めてしまう抗体として有名ですが、これらと違って、このIgEにはダニ抗原を弱めたり、排除する働きはありません。
ダニ抗原へ結合したIgEは、好塩基球(あるいは肥満細胞)の細胞膜上にあるIgEの受容体(レセプター)に結合すると、この細胞はあたかも爆弾のスイッチを押されたように、細胞内からヒスタミンやロイコトリエンなどの生理活性物質を放出します。これらは、血管透過性を亢進させ、気管支平滑筋を攣縮させ、気管支粘液腺からの粘液の分泌を亢進させます。
上皮下の粘膜では、血管内水分が粘膜下へ滲出し“水浸し(浮腫)”状態になり、気管支平滑筋が痙攣を起こし咳が誘発され、粘液の分泌が盛んになります。これらは、間接的なダニ抗原の排除に繋がっているのかも知れません。
ここまでが、これまで喘息発作のメカニズムと考えられてきた点です。
感作した動物に抗原チャレンジを行うと、確かに10-20分後に同じ気道収縮が起こり、一秒率の低下、PF値の低下、あるいは気道抵抗の上昇などが認められます。これを即時型反応と言います。しかし、その4-8時間後にも約1-2日間にわたる気道抵抗の再上昇が認められることがわかりました。
この気道狭窄を調べるために、気管支粘膜を採取して、顕微鏡で見てみるとそこには、好酸球やリンパ球などの新たな炎症性細胞の集積が確認されたのです。これは遅発型反応と呼ばれるようになりました。
この認識の変化こそが、喘息の慢性化の機序を説明するきっかけになったと言えるでしょう。そして、研究の主体は、なぜこの遅発型反応が引き起こされるか、分子生物学的手法を用いた研究が盛んに行われました。
抗原への暴露後の即時型反応に引き続いて、リンパ球の活性化・増殖が起こり、これらから血液中の好酸球を引き寄せる因子(サイトカインや炎症性メディエータなどと呼ばれる)が放出され、血液中から好酸球が気管支粘膜へ集まってくることがわかりました。これらの因子には、IL-3、IL-4、IL-5、IL-13、GM-CSF(これらの因子の正式名称は覚えても仕方ないので省略します)などが知られており、これらは単に血液中から好酸球を呼び寄せるだけではなく、血液中に放出され白血球を作る骨髄へ作用し、好酸球の数の増加をも促してしまうのです。好酸球を引き寄せる因子はこの他にもいくつか新しい因子が報告されてきていますし、今後もまだまだ発見されるかも知れません。
これらの因子は、リンパ球からだけではなく、好塩基球、気道上皮、あるいは滲出してきた好酸球自体からも産生され、まさに好酸球が次々と動員されるようなネットワークができあがってしまうのです。
薬
アレルギーを予防する薬、慢性炎症を予防する薬、気管支の収縮を和らげる薬、が、喘息の治療薬です。
喘息発作のおきるしくみ〜アレルギー反応を中心に
<アレルギー>とは、≪普通の人にとっては、何でもないようなものが、ある特定の人にとっては、不快な反応をおこすこと≫をいいます。この原因になるものをアレルゲン(抗原)といいます。ダニ、HD、花粉、食物、等々いろいろな物質があります。これら抗原が、アレルギー反応の引き金になるのです。
では、なぜ、ある特定の人にだけアレルギー反応が起きるのでしょうか、これは、その人が反応する物質に対して、特異的IgE抗体を持っているからです。この特異的IgE抗体は、マスト細胞という細胞の上に乗っています。体外から侵入してきたアレルゲンが、この特異的IgE抗体にくっつくことにより、アレルギー反応が始まるのです。これを抗原抗体反応といいます。
アレルゲンが、特異的IgE抗体と反応すると、異物が入ってきたというメッセージが、マスト細胞に伝わります。すると、マスト細胞は破裂して、多くの有害な化学伝達物質(ロイコトリエン、ヒスタミン、等)を放出します。
この化学伝達物質が過敏な気管を刺激することによって、気管支表面の筋肉(気管支平滑筋)が収縮します。同時に内側の粘膜も収縮し、炎症が生じて、痰が増えてきます。
その結果、ゼイゼイ、ヒューヒューという苦しい呼吸状態が出現します。これが喘息発作の始まりです。
薬のはたらくしくみ〜【予防薬】と【発作治療薬】
気管支喘息の治療薬には、発作を予防する【予防薬】と、発作がおきたら使用する【発作治療薬】(気管支拡張剤)との2種類があります。
【予防薬】アレルギー反応を予防したり、慢性炎症を改善します。
※
予防薬は、普段から使用していないと、いざというときに効果が出ませんので、発作が無くても、きちんと続けることが大切です。
【予防薬】@.アレルギー反応を予防する薬:ロイコトリエン受容体拮抗薬
近年、喘息発作を起こす化学伝達物質としてロイコトリエンが重要視されるようになり、このロイコトリエンを抑制する薬としてロイコトリエン受容体拮抗薬(以下、LT受容体拮抗薬)が、新しい気管支喘息予防薬として使用されるようになってきました。LT受容体拮抗薬は、慢性炎症の改善効果も期待されており、軽症〜重症の気管支喘息に広く使用されています。
・主なLT受容体拮抗薬:オノン、シングレア、キプレス。
【予防薬】A.慢性炎症を改善する薬:吸入インタール、吸入ステロイド
A−1.インタール+交感神経刺激剤(メプチン、ベネトリン、)
インタールというお薬には、気道の過敏性を改善する働きがあります。吸入で使用されますが、少量の交感神経刺激剤と一緒に吸入すると、とても効果があります。規則正しく吸入を続けると、1〜2週間くらいで、症状の改善がみられてきます。
この薬は、セリ科植物の成分から作り出されたものです。体内にはほとんど吸収されませんので、副作用の心配をしなくてすみます。いいことづくめの薬のようですが、次に述べる吸入ステロイド剤と比べると慢性炎症を抑える働きはあまり強くないため、中等症くらいまでの気管支喘息に向いてる治療と言えます。
また、1才未満の乳幼児で、カゼをひきやすく、すぐゼイゼイ、ゼロゼロしたりするような場合は、すでに乳幼児期から気道過敏性の亢進が始まっているときもあります。このような場合、将来、気管支喘息を発症することも多く、早期に吸入療法を開始することにより本格的な気管支喘息への進展を防ぐことも可能です。
A−2.吸入ステロイド(パルミコート、フルタイド、アドエア、シムビコート、レルベア、フルティフォーム等)
インタールが、主に乳幼児の軽症〜中等症の治療薬であるのに対して、吸入ステロイドは、全年令に渡って重症度に関わらず、慢性炎症を改善する最適の治療薬です。
喘息は発作を繰り返すうちに、過敏性が亢進するだけでなく、慢性炎症が著明になってきます。慢性炎症とは、気管支が汚れすぎて、ちょっとやそっとでは元に戻れない状態を指します。こうなりますと、インタールもあまり期待できません。慢性炎症を改善する最適の薬が吸入ステロイドです。
ところで、ステロイドというと、マスコミの悪宣伝もあってか、副作用を心配される方も多いようです。内服薬や注射と異なり、吸入薬では極めて微量ですので、普通に使用する量では心配ありません。また、吸入薬は吸入された後、気管支や消化管を経て肝臓で分解され、体外に排出されます。そのため全身に回ることがなく安全性が高いといえます。
吸入ステロイドも、予防薬ですので、発作の最中に使用しても効果がありません。普段から吸入を続ける必要があります。気管支喘息の本態が気道過敏性や慢性炎症ということがわかってきた現在では、軽症、中等症でも積極的に使用されるようになってきました。その結果、重症化する患者さんは少なくなりました。
また、慢性炎症は幼児期からでも進行する場合もあり、今や、吸入ステロイドは、喘息治療の第1選択剤になりつつあります。内服剤だけでは改善が思わしくない場合、早めに吸入ステロイドを使用すると良い結果が得られます。
【発作治療薬】発作時に、気管支を広げるお薬(気管支拡張剤)
※
ゼイゼイ、ヒューヒューしてきたら、もう予防薬だけでは間に合いません。なるべく早めに、気管を拡げるお薬(気管支拡張剤)を内服(吸入)します。
【発作治療薬】気管支拡張剤:気管支平滑筋の収縮を和らげ、呼吸を楽にする薬です。治療薬として歴史も古く、大変有効なお薬と評価されています。また、予防薬としても使用されます。ただ、少し副作用のみられる場合もありますので、医師の指示をよく守って使用して下さい。
早く効果が現れるもの(交感神経刺激剤)と、ゆっくり効果が現れるもの(テオフィリン製剤)との2種類があります。薬の作用が異なりますので、一緒に使用すると効果的です。
・主な交感神経刺激剤:メプチン、ベネトリン、ブロンコリン、ベラチン、ホクナリン、ブリカニール、など
・主なテオフィリン製剤:テオドール、テオロング、スロービット、ユニフィル、テルバンス、アーディフィリン、など
☆.交感神経刺激剤は、心臓がどきどきしたり、指がふるえるような副作用が、みられる事がありますが、中止するとおさまります。また、吸入薬は回数が増えると確実に心臓に負担がかかりますので、主治医の指示をよく守って下さい。
☆.テオフィリン製剤は、吐き気や、心臓がどきどきすることがあります。特に1才未満のお子さんでは、興奮しやすくなって、夜間不眠状態になることもあります。(通常、6ヶ月未満の赤ちゃんには処方しません。)また、抗生剤や、胃炎の薬などの影響を受けて、テオフィリンの濃度が上がったり下がったりしますので、この薬を内服しているときは、他剤との併用に注意が必要です。
まとめ:長い一生、喘息で苦労しないため、将来のための治療。
それが、小児期の喘息治療の目的です。
気管支喘息の治療薬は、【予防薬】と【発作治療薬】(気管支拡張剤)の2種類があります。予防薬としては、LT受容体拮抗薬、吸入インタール、吸入ステロイドがよく使用されます。発作治療薬として頻用されるテオフィリン製剤は予防薬としても効果があります。
現代の治療は、LT受容体拮抗薬と吸入ステロイドの組み合わせが主流になっています。それに、交感神経刺激剤や、テオフィリン製剤が必要に応じて使用されています。
最近は、「吸入ステロイド+長時間作動型交感神経刺激剤」というお薬もよく使用されています。これは、吸入ステロイドに気管支拡張作用を持つ交感神経刺激剤を加えたものです。吸入ステロイドをパワーアップした薬剤で、慢性咳そう(咳喘息)にもよく処方されています。
気管支喘息治療の原則は発作を起こさないことです。(当然のことですが)そのためには、発作のない時でもきちんと治療を続けることが大切です。
発作を繰り返すたびに、気管支の過敏性は高まり、さらに慢性炎症から、リモデリングへと進み、難治性となり、一生薬が手放せなくなることもあります。
こどもの気管支喘息は成人と比べると治りやすいとも言われています。それは、慢性炎症が、あまり進んでいないからです。今(小児期に)、治療をすることは、今だけ良くなればよいのではなく、長い一生、喘息で苦労しないため、将来のための治療でもあるのです。
予防薬は、良くなってくれば、少しずつ減量し終了します。大事なことは、少し調子がよいからといって、いきなり止めないこと。再発の反復は治り難くなります。医師の説明を良く聞き、内容を理解して治療を続けましょう。