血管を鍛える
3人に1人が「血管病」で命を落とす時代。だが、血管そのものは本来、120年もの耐久性を持つと言われている。この強い器官をきちんとケアすれば、寝たきりも早死にも防ぐことができる
日本人の死因トップ3の割合は、1位のがんが30%、2位の心疾患(心不全、心筋梗塞など)が15.9%、3位の脳血管疾患(脳卒中、脳出血など)は11.1%ですが、2位と3位を合わせると27.0%。つまり、日本人の死因の約3割に当たります。この2位の心疾患と3位の脳血管疾患が起こる引き金となるのは動脈硬化、つまり血管が硬くなってしまい、内部で血液が流れにくくなるという病気です。この血流の詰まりが心臓や脳といった重要な器官付近で起こると、死を招いたり、重篤な後遺症が残ったりします。
こうした死因をすべて「血管の病気」というくくりで考えるならば、日本人の死因1位は「血管の病気」です。
健康な生活習慣を身につけ、きちんと身体のメンテナンスを行うことが大切で、最も重要なのが血管の健康、つまり、血管の寿命です。健康寿命は、血管の健康維持によってのばすことができるのです。
血管が寿命を左右する
血管は55歳くらいから老化すると言われている。ただし、これはあくまで平均値。ストレスや問題のある生活習慣が原因で、実年齢はまだ若いのに、血管だけは老人並みという人が非常に増えている。
「一日にタバコを1箱以上吸い、ラーメン中心の不健康な食生活をしていた20歳の大学生が、心筋梗塞を起こして運ばれてきたことがあります。彼の心臓を養う冠動脈の内壁にはプラーク(動脈硬化で生じたコブ)ができ、それが原因で血管が詰まってしまったのです。まだ若いからといって安心してはいけません。動脈硬化による血管事故は、男性のほうが圧倒的に多く、女性の4倍もあるのです」池谷医院院長の池谷敏郎医師
血管は厚く硬くなるほどもろくなる。
1日10万回動く心臓のリズムに合わせて収縮と拡張を繰り返すので、薄く柔らかい方がいい。
血管の老化とは、血管に弾力性や厚みがなくなり、しなやかだった血管が硬いゴワゴワの状態になることを言う。
血管が硬くなると血液の流れが悪くなり、コレステロールなどが血管の壁に付着、プラークと呼ばれるお粥状の塊になる。プラークがどんどん大きくなると、やがては血液の通り道が塞がれて詰まるのだが、その前にプラークが破裂し、血管を詰まらせてしまうケースの方が、実は多い。
プラークが破裂して傷口ができると、そこに止血役の血小板が集まり、傷を修復する。だがその一方で、血の塊(血栓)もできる。この血栓がその場で血管を詰まらせることもあるし、血流に乗って心臓や脳や肺に運ばれ、そこで血管を詰まらせると、寝たきりや突然死を招く心筋梗塞、脳卒中、肺栓塞症が起こる。
血管の老化には、もう一つの問題がある。血管が硬くなって血の流れが悪くなると、血液を全身に行き渡らせるために、ポンプ役の心臓がより強い圧力をかけて血を送り出すようになる。その結果、血圧は上昇。血圧が高くなると血管が刺激を受けるため、さらに動脈硬化が進んでいく、といった悪循環に陥ってしまうのだ。
血管の年齢は健康や寿命に直結する。だからこそ、日頃からのチェックが必要だ。まずは左に掲げた「血管年齢チェックテスト」で、自分の血管年齢を調べてみよう。
考案者は元自治医科大学附属病院院長で現・小山市民病院院長の島田和幸医師。
●血管年齢20~30代=まだ若々しく、しなやかで健康的な血管状態。
●血管年齢40~50代=血管の老化が進行している可能性がある。血管を若く保つケアが必要。
●血管年齢60~70代=血管がかなり老化している。動脈硬化が進んでいる可能性が大であり、放置すると数年以内に深刻な血管病を起こす恐れも。
●血管年齢80代以上=動脈硬化が進行している。明日にも血管病の発作を起こし、倒れても不思議ではない状態。喫煙者はただちに禁煙すべきレベル。
血液はドロドロでも平気?
血管の老化は、ひとたび始まったらもう止められないというのが医学の常識だった。これが本当なら諦めるしかないことになるが、どうにかする手立てはあるのだろうか。
「血管の老化は治せないというのが定説でしたが、今は血管を若返らせることができるということがわかってきました。また、すでにできてしまったプラークを完全に無くすことまではできなくても、傷つきにくく安定した状態にすることで血管事故は防げます。そのための血管の鍛え方も、数多くあるのです」前出の池谷医師
血管には3つの層がある。外側を覆っている外膜、血管の構造を支えている中膜、そして直に血液と触れ合っている内膜(内皮細胞)だ。血管を鍛えるというのは、具体的にはこの内膜を鍛えることをいう。
「内膜は血液の流れる量を調整しながら全身に流す働きをしています。また、血液が固まらないようにしたり、血液の成分がいたずらに壁の組織に入り込まないようバリアするなど、非常に重要な働きをしている。まさに『血管の司令塔』なのです。この内膜の働きがプラークによって妨害されると、動脈硬化、さらには心筋梗塞や脳卒中を引き起こす。それを防ぐには、内膜を鍛えればいいのです。
よく血液がドロドロになって固まると言われますが、正しくは、内膜の内皮細胞が劣化するから固まりやすくなるのです。だから、内膜がしっかりしていれば、血液はある程度ドロドロでも大丈夫です」 前出・島田医師
血栓が詰まる原因は
1 血管壁に異常がある
2 血液の流れが悪い
3 血液の粘稠度が高い ドロドロ
なので、血液のケアだけではなく血管そのもののケアをする必要があります。
血管を傷つける原因
過剰な塩分がナトリウム濃度を上げて外から水分が流入して血液量が増加して圧力が高まり、同時に心臓は増えた水分量を送り出すために血圧が上昇する。
過剰なカロリー(糖分と脂質)が体内のタンパク質と結びついて血管を傷つけたり、LDLコレストロールを酸化させ動脈硬化を進行させる。
生活習慣のすすめ
朝起きたらコップ一杯の水を飲む。
朝起きてから1時間かけて副交感神経から交感神経にゆっくりと変えていく
就寝時に減った水分を回復。
食事の時は、はじめに野菜ばかりを食べる。胃液を薄め、空腹感が落ち着いて食べ過ぎを防ぐ、余分な糖分と脂質の吸収を抑える。炭水化物はしめに。
油(特にサラダ油などのオメガ6系脂肪酸)を取りすぎない
血管の新陳代謝は1000日なので気長に確実に少しづつ
皮膚は28日のターンオーバーで新しい表皮に入れ替わりますが、血管壁の内皮細胞の周期は1000日です。
具体的な鍛え方
まずは「2分下半身ストレッチ」(右図1参照)。3種のストレッチを各20秒ずつ、左右両脚でやる。あわせて2分で完了なので、デスクワークの合間でもできる。「筋肉を使うと内皮細胞も活性化し、鍛えることができる。下半身に数多くある大きな筋肉を刺激するこのストレッチは、効率よく強い血管を作る効果があるのです。下半身に起こりやすい動脈硬化の予防にもなります」(前出・島田医師)
2番目は「自治医大学附属病院推奨体操」(次ページ図2参照)。同大の理学療法部が考案したこの体操は、身体に溜め込まれた余分なカロリーを燃やし、内膜を鍛えてくれる。高血圧の改善や血管病の予防を目的につくられた、身体にも血管にもやさしい体操。
一日20分の早歩きが効果的
ふくらはぎにポイントをあてたエクササイズ
「よく『足は第二の心臓』と言われますが、『ふくらはぎは第二の心臓』と言った方がふさわしいでしょう。ふくらはぎは足から心臓に向けて戻る静脈血の通路です。ここの血流が悪くなると、足から心臓に戻る血液の流れが悪くなり、ひいては全身の血液循環も悪くなる。高血圧の人は、ふくらはぎが硬くなっている例が多く、ふくらはぎをチェックすればその人の血液循環の状態がわかります」東京医科大学・八王子医療センター病院長の高沢謙二医師
チェックの仕方は、両足を揃えてまっすぐに立ち、上体を前に倒して、膝を曲げずに両手を床につけるようにする。
この時、指先が床まで届かなかったり、ふくらはぎや太ももに痛みを感じるようなら、ふくらはぎが硬くなっている証拠だ。反対に、体の柔らかさは、血管の強さに繋がる。 硬くなったふくらはぎに対しては、ふくらはぎを柔らかくし、ミルキングアクション(血液を心臓に送り返す働き)を促進する「かかと上げ下げ運動」が効果的。
具体的な方法は図3のとおり。この運動は立ってやるだけではなく、座ってやってもいい。また、寝ながらつま先を伸ばしたり起こしたりしても同様の効果が得られる。いずれも一日1分程度行えば充分。
それ以上の効果が期待できるのが「つま先歩き」。つま先で歩くと、下半身には体重の4倍の負荷がかかる。その結果、ふくらはぎの筋肉が刺激されて筋肉内の毛細血管が増え、全身の血流がよくなるという仕組みだ。最初は一日10歩程度で十分。一日30歩を限度に、無理のないよう徐々に増やしていく。
同じく高沢医師がすすめるのが、「足裏たたき運動」。血管若返りが期待でき、血液の循環も促してくれる。
右に紹介してきたとおり、血管をしなやかにするには運動が効果的だ。それも息をつめて一気に走る100m走のような無酸素運動ではなく、ゆっくり酸素を取り入れながら行う有酸素運動がよい。
「有酸素運動を行うと、筋肉の代謝がよくなり、血液がゆったり流れます。内膜の内皮細胞にとって、血液がゆったり流れるのはいいことで、血管の若返りにつながるのです。また、筋肉の代謝が盛んになると、毛細血管が増えます。道路に喩えるなら、道が増えることによって渋滞が解消され、車(血液)がスムーズに流れる状態になるのです。これだと心臓は血圧を上げて血液を流さなくて済む。血管によく、高血圧対策にもなるわけです」(前出・島田医師)
最も手軽で基本的な有酸素運動は「早歩き」だ。時速6kmくらいのスピードで、一日20分歩く。これを続けると、血液の流れがよくなる。
「この速度で20分くらい歩くと、ブラジキニンという物質が分泌されるようになります。この物質には、血管を広げる働きがあるため、血液の流れがスムーズになり、血圧を下げてくれる。また、血流がよくなると、(1)血管の掃除がよくできる、(2)血管がよく開く、(3)毛細血管が増える、(4)ミルキングアクションが促進される、という4つの効果が得られます」
特に注目したいのが(1)と(2)。血管の掃除がよくできると、コレステロールなどプラークのもとになっているゴミ≠ェ、溜まりにくくなる。そのため、血管の老化予防に繋がる。
いずれも最低3ヵ月以上は続けること。「若返り血管がつくられる目安は3ヵ月」(前出・高沢医師)。
血管が硬くなると血液の流れが悪くなり、コレステロールなどが血管の壁に付着、プラークと呼ばれるお粥状の塊になる。プラークがどんどん大きくなると、やがては血液の通り道が塞がれて詰まるのだが、その前にプラークが破裂し、血管を詰まらせてしまうケースの方が、実は多い。
プラークが破裂して傷口ができると、そこに止血役の血小板が集まり、傷を修復する。だがその一方で、血の塊(血栓)もできる。この血栓がその場で血管を詰まらせることもあるし、血流に乗って心臓や脳や肺に運ばれ、そこで血管を詰まらせると、寝たきりや突然死を招く心筋梗塞、脳卒中、肺栓塞症が起こる。
血管の老化には、もう一つの問題がある。血管が硬くなって血の流れが悪くなると、血液を全身に行き渡らせるために、ポンプ役の心臓がより強い圧力をかけて血を送り出すようになる。その結果、血圧は上昇。血圧が高くなると血管が刺激を受けるため、さらに動脈硬化が進んでいく---といった悪循環に陥ってしまう。
呼吸法を変えてみる
また深呼吸や腹式呼吸もおすすめ。腹式呼吸(深呼吸)をすると、血管の緊張をほぐす副交感神経の働きが活発になり、血管を開く。そして血液の流れがよくなれば、先の「早歩き」で解説したとおり、血管が若返ってくる。
血管の老化は気づかないうちに進行し、ある日突然命を奪う「サイレントキラー」だが、血管病に怯えストレスを溜めこむと、それだけでも血管は収縮し、血液の流れを悪くしたり、血管に傷をつけたりするという。
若々しい血管を手に入れるのに、遅すぎるということはない。さっそく、各自の性格や体質に合わせて、血管を鍛えるエクササイズを習慣になる工夫を考え実践してしてみる。
毛細血管は運動不足で消えてしまう
全身にある毛細血管は成人の場合、その長さはぜんぶで地球2周半分にもなります。手足の指先まで細かく張り巡らされ、細胞や筋肉に血液を届ける役割を果たすため、全身にある血管の90%以上が毛細血管なのです。
ただし、毛細血管は運動不足で消えてしまうこともあります。体を動かすためには毛細血管を通じて筋肉の隅々まで栄養を届ける必要がありますが、運動しないと体が栄養を届ける必要がないと判断。毛細血管が減ってしまうのです。
太りすぎでも毛細血管は減る可能性が大。脂肪は本来、必要のないものですが、毛細血管はそこにも伸びていきます。しかし、心臓から全身に送られる血液の量は一定なので、余分な脂肪に血液が行くぶん毛細血管に届かなくなるのです。
毛細血管を鍛えるには動脈を鍛える
毛細血管は食べすぎにも影響されます。食べ物を摂取すると、それを消化・吸収するため、一時的に胃や腸に血液が集中。暴飲暴食や常に間食をする人は、慢性的に胃や腸に血液が集中して、毛細血管がダメージを受けてしまうのです。
それでは、毛細血管はどう鍛えればよいのでしょう? 血管というと開いたり閉じたりするイメージがあるもの。お風呂に入ると緩んで、寒いところに行くとキュッと締まったりします。これは血管の壁に細い筋肉があるからです。
ところが、毛細血管にはその筋肉が存在しません。つまり毛細血管の血流というのは、その手前の動脈が押している勢いでなんとか流れている状態です。このため、毛細血管を鍛えるにはその手前の動脈を鍛えるのが効果的。有酸素運動など適度な運動で血液の巡りをよくするしかありません。
血管は糖分が5%を超えると傷つく
血管が細い時に大量の糖分を摂取すると気絶する おはぎを食べ過ぎて気絶する
危ないのは、張り切ること、熱心なこと、あきらめないこと この3つが揃うと血管が弱る
諦観と血管
大事なのが諦めること。すると副交感神経が活性化し、血管が太くなる。
「あきらめる健康法 自律神経を整える」 小林ひろゆき 順天大学医学部 便秘の専門家
ものごとが上手くいく時は、あなたはもう一つ何かをあきらめています。
上手くいかない時は、何か一つをあきらめていないことが多い。
あきらめると平常心が戻ってくる。
ゆっくり動くと呼吸はゆっくりとなり副交感神経が活性化する。
昆虫のナナフシは静止した状態で30分いられるのに、人には瞑想が必要。
動かない状態、静止した状態も動くと同じぐらいに重要なことです。
目覚めている時は、「わたし」(自己意識)はとても有用ですが、ぐっすり眠るためには、「わたし」を忘れないといけません。睡眠時間も、「わたし」をあきらめている時なので、ひとまず脱力したり、ボーとするのが難しい人には、睡眠時間を伸ばしたり、二度寝、三度寝をするのも、はじめの取っ掛かりになると思います。
また睡眠と覚醒の間は多くのアイディアが浮かんでくる時でもあるので、積極的にこの機会を活かすこともできます。