がん消滅の罠 完全寛解の謎 岩木一麻

 

選考委員絶賛、第15回『このミステリーがすごい! 』大賞・大賞受賞作!

 

日本がんセンター呼吸器内科の医師・夏目は、生命保険会社に勤務する森川から、不正受給の可能性があると指摘を受けた。夏目から余命半年の宣告を受けた肺腺がん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金3千万円を受け取った後も生存しており、それどころか、その後に病巣が綺麗に消え去っているというのだ。同様の保険支払いが4例立て続けに起きている。

不審を抱いた夏目は、変わり者の友人で、同じくがんセンター勤務の羽島とともに、調査を始める。

一方、がんを患った有力者たちから支持を受けていたのは、夏目の恩師・西條が理事長を務める湾岸医療センター病院だった。その病院は、がんの早期発見・治療を得意とし、もし再発した場合もがんを完全寛解に導くという病院。がんが完全に消失完治するのか? いったい、がん治療の世界で何が起こっているのだろうか―。

 

 

ガンが消えたら嬉しいですよね。日本人の半分近くがガンで亡くなるし、私の両親もガンになりましたので他人事ではありません。作者は日本がんセンターにお勤めだけあって医療専門用語が沢山出てきます。ガン保険(リビングニーズ)の仕組みも意外で勉強になりました。

 

 夏目の恩師の西條教授が大学を突然辞めます。

一度見つかった癌を摘出して治ったように思わせて、培養して体内に再び戻して再発とか医師としてどうなん?新薬の承認の為とか色々あるだろうけど、医師として失格ですよね。

 気の毒な家庭(母子家庭で子供も障がいがある)の場合は3500万の保険を貰わせて

それから寛解させるって・・・金持ちには再発させたりって何様?って思いました。

 

そして西條教授のもう一つの動機背景。

 乱暴されて死んだ一人娘の為に犯人のDNAと合う男を捜してたんですね〜

 その娘とは実は血のつながりがない。すなわち妻は浮気をしたようです。

 その原因が西條教授が若い頃に無精子の人のために精子提供したことに妻がショックを

 受けたためだとか・・・(*_*) その浮気相手の事務長を人体実験のように何度も癌を植えては

 寛解させ、また植えて末期ガンの苦しみを味合わせて最後はバラバラにして自分の身代わり

 として遺棄。(DNAは残された娘さんの物と同じだから西條本人と認定されます)

 そこまでやる必要ある?事務長さん気の毒すぎ!(;´Д`)ノ 亡くなってる妻も悪いよ(・ε・)

 結局娘は乱暴されたわけでもなく、胞状奇胎で亡くなったのです。

 娘さんもなぜに偽名を使って恋をするん?恋人に失礼だと思うんです。

 そんで、癌を取ったり戻したりする美しい女医が本当の(若い頃の精子で出来た)娘と明して

 終わるんです。確かに意外といえば意外な終り方です。

 

でもね・・・精子バンクとかって、親が誰かって簡単にわかる?なんか海外で

親探しってニュース観たけど、大変なのよね。 医療関係者だからDNAとか直ぐに分るの

かな?医療的なことはやたらと詳しく書いてあるのに、動機や人物の関係が小さいエビって

感じでガッカリ感が凄いんです。(エビ天が凄く好きって訳じゃないんですけど^^;)

「このミス」で大賞取って、評論家が激賛してるけど、ハードル上げすぎかも・・・・

「次の作品に期待したい作家賞」みたいな方が良かったと思うなぁ〜

ほんと、辛口でした。ファンの方、ゴメンナサイね(´□`。)

 

 

 

 

「余命半年の宣告を受けたがん患者が、生命保険の生前給付金を受け取ると、その直後、病巣がきれいに消え去ってしまうー」
という現象が繰り返し起こるという、
人間消失ならぬ、がん消失という怪事件を推理する、
という話です。

1つは肺腺癌が全身に転移していて、
それ自体は専門の医療機関で確認されているのです。
余命半年という宣告で保険金が下りるのですが、
標準治療の抗がん剤を使用して、
余命の少しの延長しか期待は出来ない筈なのに、
数か月でがんは全て縮小して消えてしまいます。

もう1つは何か謎の病院があって、
特別な免疫治療をしているらしいのです。
ある人が人間ドックで初期の肺がんが見つかり、
それが早期なので切除すると、
しばらくして全身の転移が見つかり、
それがその病院の画期的な治療で、
みるみる縮小して消えてしまったり、
治療をやめると悪化したりするというのです。

本を読む前にそれだけの情報で、
どのようなトリックなのか考えてみました。
別に僕でなくても医学をちょっとかじった人なら、
誰でもそう考えると思うのですが、
本物の癌が急に消える訳はないと思うのです。
それがあれば純然たるSFで、
医学ミステリーという枠からは大きくはみ出してしまいます。
そうなると、
消えたのは「〇〇」ではない、
ということになり、
要するにこうしてこうしたのではないかしら、
と何となく答えは1つしかないという気がします。

でも、それだけのことでは、
さすがに素人でもすぐ分かってしまうのではないかしら、
そんなものを「空前のトリック」などと言うのかしら、
と疑問に思って、
悔しい気はしたのですが、
真面目に買って本を読んでみました。

読むと結局はほぼ想像の通りでした。

このように理屈で1方向で考えると、
すぐに1つの可能性しか残らなくなってしまうのは、
所謂「不可能犯罪」のトリックとしては上出来とは言えないと思います。

しかし、一方で多くの人は、
医療というものに一種の呪術性のようなものを期待し、
「私があなたの癌を100%治します」
などと言われれば、
明らかなインチキでも思考停止して信じてしまうようなところがあるので、
そこを上手く突いているという点は、
読者に受けるところがあるようにも思います。

同じような奇跡は実際にはゴロゴロ転がっていて、
有名芸能人の進行癌の報道などに対しては、
絶対に治る筈がないのに、
「奇跡を信じます」と言わないと非難を浴び、
真顔で皆が非論理的で非科学的な奇跡を、
信じて疑わないようなところがあるからです。

従って、そうした先入観や思い込みを、
一種のミスディレクションとして活用していると考えると、
満更低レベルのトリックとも言い切れません。

この作品はトリックはそんな感じのものなのですが、
小説としてはなかなか良く出来ていて、
かなり加筆されて手が入っていると思うのですが、
ミステリー的な小ネタの使い方が上手く、
全体に何かもやもやした不気味な感じというか、
グロテスクな感じがすることも悪くありません。


これはフーマンチューもののバリエーションのような作品で、
狂気に満ちた癌研究の第一人者の研究者が、
自分の知識を悪用して、
日本の重要人物に癌を作ってそれをコントロールすることにより、
彼らを強迫して理想の政治を実現しようとする、
というような話です。

本人の癌細胞に自死(アポトーシス)を誘導するような仕掛けをして、
それを大きくしたり小さくしたりする、
というような趣向です。
ただ、末期癌の恐怖を味合わせてから、
それを縮小させるようなことをするのですが、
それは成立しないという気がしました。

癌でもう悪液質のような状態が生じているとすると、
そこで慌てて癌細胞に自死の指令を出しても、
身体全体としてはもう手遅れの可能性が高いように思うからです。

自死させるような遺伝子に組み込んだ仕掛けとは何?、
というのが1つのポイントですが、
そこは昆虫から抽出した毒素みたいなことで、
適当に胡麻化している、という印象です。

それとは別に、
最初に免疫抑制剤をアレルギーの薬と嘘を吐いて飲ませておいて、
他人由来の癌を植え込み、
癌を消したい時にはその免疫抑制剤を中止すると、
拒絶反応で癌が消滅する、
という方法も使われています。
ただ、これも大分無理があって、
他人の癌細胞が生着するような強力な免疫抑制をしておいて、
それが他の医療機関でバレないというのも不自然ですし、
本人はそれを全く知らないのですから、
感染症などで体調を悪くする可能性も高そうです。
また肺癌の細胞をただ注射しただけなのに、
それが原発性の肺癌が全身に転移したのと同じに見えるような広がりで、
うまい具合に生着するというのも随分と不自然に思います。

著者は動物実験の知識はあるので、
癌の動物実験をそのまま人間に適応している訳です。
それはそれでグロテスクな趣きがあるので、
趣向としては成功していると言って良いのですが、
人間の患者さんの実際は、
多分あまりご存じがないのだと思うので、
「とんでもトリック」という感じのものになっています。

ただ、この作品はそのトリック以外の部分に、
そのミステリとしての妙味があって、
最初は如何にも探偵役に見えた変人研究者が、
事件の根幹に関わっていたり、
勧善懲悪にはならずに、
ラストは次のステップに入るというような捻りも良いのです。

人物もあまり細かく書き込まないことがむしろ成功していて、
ステレオタイプな人物しか出て来ないのに、
何か生々しい感じを出しているのも面白いと思います。


 

 

 

二人目の謎の患者は、またしても女性です。

 

しかし今度の女性は、双子ではありません。幼い子供を育てるシングルマザーで、子供は障害をもっており、母は肺がんというまさに困窮した状況にある女性です。

 

こちらの女性、子供の障害の治療のために通っている病院でアレルギー性鼻炎ではないかと声をかけられ、見てもらうことにしました。

 

この病院というのが、いわくつきの病院なわけですが・・・その理由まではここで明かさないようにします。

その病院で検査をうけたところ、ひどいアレルギー性鼻炎ということで、薬を投与してもらうことになりました。

この薬の投与をうけると、彼女のアレルギー性鼻炎の症状はすっかり良くなったそうです。

それもそのはず、この女性は非常に強力な免疫抑制剤を投与されていたのです。

アレルギーというのは、過剰な免疫反応による症状ですから、免疫を抑える薬を処方することはよくあることです。しかし、彼女は移植手術のときなどに使用されるような非常に強い免疫抑制剤を投与され、免疫寛容状態に陥っていました。

 

なぜ、彼女はそこまで過剰な免疫抑制をうけたのでしょうか。

これこそが、彼女のがんが寛解したトリックに結びついているのです。

 

生命保険に入ったとたんに、肺癌が見つかった!?

さあ、免疫抑制剤によってすっかりアレルギー性鼻炎がよくなった彼女は、その病院の先生を懇意にしはじめます。そうして生活の相談などをする中で、生命保険に入るように勧められたのでした。

薦められて、彼女が入った生命保険は・・・

余命宣告を受けたら、生命保険を生前受給できるという特約がついたものでした。この特約は実際に現在売られている生命保険にもつけることができるものです。リビングニーズ特約と呼ばれたりしています。

しかも掛け金はなんと生前の受取ではマックスの3000万円という大金でした。

 

その保険に入って少ししたころに、彼女は例の病院で健康診断をうけ、そうして肺に影が見つかったのでした。

診断の結果、肺癌でした。

 

しかも多発肺転移といって、肺のいたるところにがん細胞が飛び散っているもので、放射線などでは治療できない状態であることが分かりました。

そうなると、この病院では治療はできないということで、主人公の医師がいる大きながんセンターにやってきたのです。

がんセンターで検査したところ、彼女のがんは肺だけでなく肝臓にも転移しており、複数の医師と協議した結果、「余命3か月」という診断が下りました。

彼女はその診断書を保険会社に提出し、なんと3000万円もの大金を手にします。シングルマザーで、しかも子供も自分も病気を患っているのですから・・・3000万円は彼女にとって、唯一の救いでした。

しかし・・・保険会社も「ちょっとおかしいのではないか」と怪しむわけです。

シングルマザーがなぜかものすごく高額の生命保険に入り、そのときは何も異常がなかったのに、突然末期がんがみつかるなんて・・・

保険会社はいろいろと身辺調査をしますが、やはり保険加入時は健康であったことも証明されたし、加入後突然がんが見つかったという事実も確かなものでした。余命3か月ということも、多くの医師が判断したことで間違いないことが分かりました。

保険会社の疑惑は、さらに深まる・・・

しかし、彼女への疑惑はこれだけではなかったのです。

なんと、余命3か月の宣告を受けた彼女は、抗がん剤の治験に参加することに決めました。

治験とは、まだ承認されていない薬を試しに投与してみるという試験です。つまり効くか効かないかわからないが、新薬にかけてみるといった感じですね。

彼女の場合は、従来の抗がん剤も効きそうになく、放射線などの治療もできないため、治験で新薬にかけるしかなかったのです。

その結果、どうだったでしょう。

なんと、彼女の癌はきれいさっぱり消え去ったのです。

肺はもちろん、転移していた肝臓も、それはそれは綺麗に消え去って、まさに完全寛解の状態となり、元気に退院していったのでした。

なんだ!

彼女は新薬が劇的に効いて、がんが消えたのか!

そんなのトリックでも、ミステリーでもなんでもないじゃないか!と怒られそうですね。

しかし、それは違います。

彼女は末期がんです。基本的に抗がん剤というのは進行をやや抑えることができるもの。すなわち余命を少し延長できることはあっても、末期がんを完全寛解させるような効果はほぼありません。

万一奇跡が起こったのかも・・・って!?

そんな奇跡は残念ながら起こりません。それくらい彼女のがんは難しいものだったのです。

ではいったいなぜこのようなことが起こったのか!?主人公の医師はあらゆるルートをたどって情報収集し、そのトリックを見破りました。

 

【ネタバレ】「がん消滅の罠」2人目の患者は、がん移植による保険金詐欺だった!?

なんと、その結末は信じられないものでした。

彼女は、例のあやしい病院でアレルギー鼻炎の治療のために、強力な免疫抑制剤を投与されていました。つまり、他人の細胞を移植しても拒絶反応が起こらないくらいに免疫寛容状態にされてしまっていたのです。

その上で、治療と称して他人のガン細胞を移植されていたのです。

いやそんな馬鹿なと思うかもしれませんが、実際に現在の科学技術はもうこれらのことを可能にしています。というのも、癌の患者さんの組織をとってきて、生検することでがんの遺伝子診断をしたりといったことは普通に行われています。

またそのとりだしたガン細胞を試験管内で増やせるような株化細胞に転換させる技術も既にあります。

そして細胞を血液中に注入するという「細胞治療」も現在臨床研究がすすんでいる段階で、技術としては確立されています。

つまり彼女は、保険に加入した時も、そのあとも全くがん細胞なんてもっていなかったが、他人のがん細胞を注入され、それらが血液を介して肺や肝臓にいき、そこで病巣をつくってしまっていたということです。

通常他人の細胞が組織に宿ることはありませんが、彼女は移植手術を行う前とおなじような免疫寛容状態にされていたため、他人のがん細胞が彼女の組織に移植され定着してしまったということです。

血管を介してがん細胞が至る所に飛び散るわけですから、当然検査をうけるとがんは多発転移しており「末期がん」という診断がくだります。余命もそう長くはないものになります。

では、最後に彼女のがんは、なぜ新薬の治験に参加したとたん消えてしまったのでしょうか。

それは、簡単なトリックです。

彼女のがんは新薬でやっつけられたわけではありません。

もともと私たちの体には免疫機構があります。通常であれば、他人の細胞は免疫機構が攻撃し消されてしまいます。これが拒絶反応というものですね。

つまり、彼女はがん治療を始めると同時に、免疫抑制剤の投与をやめたのです。すると、免疫細胞の活動が活発になり、彼女の肺や肝臓に居ついた他人のガン細胞をやっつけます。

そうして、自然にがん細胞は消えてしまったということです。

これは彼女自身も全く知らなかったことで、あやしい例の病院が勝手にしたことでした。なぜそんなことをしたのか?

それは、ここでは明かさないおこうと思います。興味のあるかたは読んでみてください。

 

さて、最後の3人目のがん寛解のなぞについては、こちらの記事で解説したいと思います。

 

※またまた余談ですが・・・

この2人目のトリックは免疫によるガン細胞の消滅ということで・・・今話題のオプジーボ(ニボルマブ)などの免疫チェックポイント阻害剤を思わせるものがありますね。

免疫チェックポイント阻害剤も、すべての人に効果があるわけはないですが、20%程度の確率で腫瘍の縮小がみられさらに、ごくごくわずかではありますががん細胞が完全に消えてしまう人もいます。

今回は、免疫寛容状態でのがん細胞の移植ということで、自然発生したがんの治療とは異なりますが、しかし免疫によるがん細胞の消滅という点は同じです。

おそらくオプジーボなどの抗ガン剤をヒントにこのトリックは考え出されたのかなアと思いました。

 

さて、前回、その前と、この本に登場する末期がんが突然消滅した謎の患者さんについて解説してきましたが、これが最後になります。

3人目のがん完全寛解の患者さんは、裏社会の親方です。反社会的な方ということで、これまでの女性たちとは違ったタイプになります。

2人目の解説にもでてきましたが、とあるあやしい病院では、がんの早期発見のための検診が大変な人気でした。

保険適応外で多額の検診費がかかるため、この病院の検診を受ける人は、いわゆる富裕層です。富裕層とはすなわち社会的地位の高い人たちでもあるため、がんが見つかってもなかなか公表できない上に、どんな高額な治療費を払ってでも絶対に治したいと考える人たちということです。

例のあやしい病院では、他の病院では絶対に見つけられないような「超初期のがんを見つけます」とうたって、富裕層を集め、そうして実際に超初期のがんは一定の割合で見つかるのでした。

この3人目の患者さんも、超初期の肺癌が見つかりました。

そして、超初期だから手術で取り除けばほぼ転移の心配も再発の心配もないとのことで、手術を受けるのです。

手術時に取り出したガンは、培養されて、このあやしい病院が独自にあみだしたという「独自治療」の効果を検証してくれます。

その結果、独自治療がよく効くとわかれば、今後万一再発したり、どこかに転移が見つかっても「全く恐れることはない」と言われるわけです。

でも、これは患者さんへの嘘の説明。

実際は、取り出したガンを培養し、その細胞にある遺伝子を組み込んで、そしてその後患者の体内に戻していたのです。

「術後の回復を早めるために注射をしましょうね」なんて治療とみせかけて取り出したはずの自分のがん細胞が体内に再注入されていたということです。

患者さんは、術後数か月して再発の有無を確認するための検査を受けに来ました。

するとどうでしょう。

超初期では転移や再発はほぼ心配ないと言われて安心していたにもかかわらず、検査で再発が見つかるのです。

ここで患者さんは愕然とします。

しかし、そんな中まるで神の声のように医師が告げるのです。

「大丈夫ですよ。○○さんのがんには私たちの開発した独自療法がよく効くことがわかっていましたから、すぐにその治療を開始しましょう。」と。

そうして、その独自療法というものを受けた途端、がんはみるみる縮小していったのです。

こうなると患者さんは、この病院を信用するどころか、信者のようにすがってしまいます。そうして患者さんをから高額な医療費を集めると同時に、患者自身を自分たちの手の上で転がすようになるのです。

目的は・・・高額な医療費だけじゃない!?

 

なぜこの怪しい病院は、取り除いた癌を、また患者の鯛以内に戻すようなことをしているのでしょうか。

一見すると高額な医療費のためだと思われますよね。

しかしながら、実はこの病院の目的はお金ではないのです。その真相はぜひ本を読んでみてください。ここでは明かさないでおきます。

ポイントは、この3人目の患者は、反社会的な人だったということです。

さて、余談はここまでで、ここからは戻した癌のコントロールをどのように行っていたかという「がん完全寛解の謎」だけにしておきましょう。

遺伝子工学を応用!がん完全寛解の謎 そのB【ネタバレ】

3人目の患者は、二人目の女性とはちがい、実際に癌を患っていました。2人目の女性は、他人のがん細胞を移植されたのでしたよね。

また培養して体内に戻されたがん細胞も、自分の体内から取り出した細胞です。つまり、拒絶反応などの免疫作用でもって癌を消し去るということはできないわけです。

さあ、ではどんなトリックをつかったのか。

これは、遺伝子工学を研究している人にとっては何でもないことでしょう。

患者のがん細胞を培養するときに、ある遺伝子を取り込ませたのです。その遺伝子は、アポトーシスといって、細胞自身が自分で死ぬということをコードされた遺伝子です。細胞死を誘発する遺伝子ということですね。

いやいや、そんなことしたら培養してふやすことなんてできないじゃないか!と思いますよね。また体内に入れてもすぐに細胞が死んでしまって腫瘍を再発させることなんてできないじゃないか!と。

しかし、こういった導入した遺伝子には、信じられないかもしれませんがオンとオフのスイッチを付けることができるのです。これを専門用語では「プロモーター」と呼ぶのですが、ある物質の存在下でだけ、導入したアポトーシス誘導遺伝子が働くという仕組みです。

つまり、この3人目の患者は、抗がん剤などは全く投与されておらず、このスイッチとなる物質をただ体内に投与されていただけだったのです。その結果、癌細胞が勝手に死んでいき、癌が消えるという仕組みです。

抗がん剤ではないので副作用もなければ、効くか効かないかわからないといった不安もないのです。投与するスイッチ物質の量を調節することで、がんを完全にコントロールできるということです。

3人目のトリックもまた、なんてないことでしたが、読んでいる時は全くわからなかったですね。まさに謎解きです。

※では、ここでも余談ですが・・・

この遺伝子導入という技術も、実は全くのフィクションではなく、実際に既に医療として実施できるところまできています。

1人目は科学とは全く関係のないトリックでしたが、2人目のトリックといい、3人目のと陸といい、これらはもう非科学的なフィクションではないというところに私は恐ろしさを感じました。

医学の進歩によって、癌を含む多くの病気が治るようになることは嬉しいことです。しかし一方でこんな人体を使った詐欺行為ができてしまうということです。

再生医療や体外受精、代理出産、クローン作製などなど・・医学の進歩によって、様々な倫理面での問題が出てきています。人として高い倫理観をもっていなければ、医学の発展は思わぬ悪用をされかねないということでしょうね・・・

 

 

ものすごく簡単にネタバレすると、

・貧しい患者が保険金を受け取ったのちにがんが寛解するのは;
「救済」の意味での行為。
まず、免疫抑制剤を投与したのちに、他人のがん細胞を植え付ける。免疫抑制剤が切れれば、他人のがん細胞は消滅してしまう。普通は免疫が他人の細胞が入り込むことを防ぐため。
 
貧しい人はお金を受け取り、さらに人生を考え直すことでもう一度新たな視点でやり直すことができる。

・有力者が初期がんから転移し、さらにその後寛解するのは; 
権力や資金掌握のための行為。がんを治すことを条件に様々な利益を得るため。
細かい診断ができるがんドッグで、有力者に初期がんが見つかった場合に実行できる。一旦普通に手術して切除。その際がん細胞を培養し、遺伝子組換えでがんに自殺装置を組み込んで、のちに患者の体内に戻す。昆虫のホルモンに似たポナステロンという化学物質を投与すれば、がんは完全に寛解する。

・先生は妻を病気で亡くし、娘も亡くなっている。娘の死因は胞状奇胎という異常妊娠の一種。その胞状奇胎からもう絨毛がんになって亡くなった。絨毛がんは100%精子のDNA。;
先生は、娘が暴行されたと思い込み、強姦など犯罪者のDNAと娘の体内に残っていたDNAを照合し続けていた。実際はその男は羽鳥で、もちろん暴行ではなく、先生の娘と真剣に交際した結果だった。
先生の娘は羽鳥に偽名を使っていたし、親である先生には自分のがんを羽鳥の責任にしたくなかったため、乱暴されたと嘘をついていた。

・さらに先生は娘の死後、自分のDNAと娘のものを照合し、親子関係ではないことを知る。妻の不貞の相手は自分に似たタイプである事務職員で血液型も一緒。おそらく先生が学生時代に、無精子症の夫婦に精子を提供したことがショックで浮気。これが先生を今回の犯行に走らせた一番の原因と思われる。先生は浮気相手の男に徹底的に復讐。がんの実験も含め、末期がんから寛解を繰り返させる。その後殺害。

・先生はラストで、医療ミスの怨恨による拉致殺害されたことに社会的にはなったのだが、実はその検証に使われた血液は前述の浮気相手のもので先生は生きている。発見された屍体の一部のDNAと娘のDNAが一致するので警察は先生のものと断定して、残りの屍体は火葬。 
さらに宇垣という、実際に湾岸医療センターでオペをして先生の意志を実現させている女医は、先生のDNAを持っている。


という、どんどんどんでん返し!
いやーまとめるの大変だった。しかもこの見解で合っているのか微妙だけど。
間違いありましたらどなたかご指摘くださいませ!

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