大腸がん
結腸
1.上行結腸、
2.横行結腸、
3.下行結腸、
4.S状結腸
大腸がんの治療方針を決めるうえで、がんがどれくらい進行しているか(進行度)を精密検査で調べ、正しく把握することは、とても重要です。
進行度を把握するためのポイントとなるのは、次の3つです。
1. 大腸の壁にどれだけ深く入り込んでいるか
大腸がんは、大腸の壁のもっとも内側にある粘膜から発生します。
初めは粘膜の中にとどまっていたがんが、大腸の壁のどのあたりまで入り込んでいるかということが、進行度を判断する基準のひとつとなります。
この基準は深達度(しんたつど)と呼ばれています。
2. リンパ節へ転移しているか
リンパ液(体内より排泄された物質を運ぶ液体)が通る管を、リンパ管と呼びます。
このリンパ管どうしがつながっているリンパ節に、大腸がんが転移することがあります。
リンパ節のがん細胞はリンパ液によって運ばれ、さらに離れたリンパ節へと転移していきます。
3. ほかの臓器へ転移しているか
大腸がんは、肺や肝臓、腹膜などに転移することがあります。
これら3つの状態によって進行度を表す「ステージ」が決定されます。
ステージは、ステージ0からステージWまでの5段階に分類されます。
ステージ0に近ければ、まだそれほど進行していない初期の大腸がんだといえ、反対に、ステージWに近づくほど進行しているといえます。
5段階のステージ
0期の大腸がんは、がんが粘膜内にとどまり転移がないものとされています。
I期の大腸がんは、固有筋層(筋肉の層)にとどまり転移がないもので、0期〜I期が早期がんとされています。
II期の大腸がんは、固有筋層(筋肉の層)の外に浸潤している状態で転移がないものとされています。粘膜下層より深く浸潤すると進行がんとなります。
III期の大腸がんは、深達度に関係なく、リンパ節に転移がある状態とされています。
IV期の大腸がんは、肝臓や肺などへの血行性転移または腹膜播種(腹腔にがんが散らばること)がある状態とされています。
0期
0期はまだ浸潤が浅いこともあり、内視鏡のみで取り除ける可能性も高いのです。肛門から内視鏡を入れ、ポリペクトミーと呼ばれる内視鏡とワイヤーを使った治療法や、EMRと呼ばれる病変を浮き上がらせてから焼き切る治療法のほか、ESDと呼ばれる電気メスで剥ぎ取る方法などが代表的です。
1期
1期は粘膜下層までの浸潤にとどまっている状態であり、またリンパ節転移が見られません。
手術については内視鏡手術と鏡視下手術が行われます。
2期
がんの状態は、筋層から漿膜(しゅんまく)にがんが浸潤しているものの、転移がみられない状態のことをいいます。
ここまで症状が進行した場合、基本的な治療は開腹手術となります。
また、2期の大腸がんに関して、術後補助化学療法の有用性は確立されていません。
そのため、必ずしも補助化学療法が効果的とは言えないのです。
判断は医師によって異なるため、しっかり相談しておきましょう。
3A期・3B期
3A期とは、3個以下のリンパ節転移があるほか、リンパ管とリンパ節ががんに浸潤されている状態のこと。
3B期とは、4個以上のリンパ節転移があるほか、リンパ節ががんに強く浸潤されている状態のことをいいます。
。リンパ節転が認められた場合にはD3郭清(栄養血管の根元部分にある主リンパ節の切除)を行う他、3A期・3B期に入ってくると新たに抗がん剤治療という選択肢が出てきます。
また、標準治療だけでは十分な効果が得られなかった場合には「樹状細胞がんワクチン」を選択することもあり、こちらは標準治療と組み合わせることによって効果が期待される免疫療法です。
4期
大腸からリンパ管・リンパ節・静脈を通ったがんが転移している状態のことをいいます。
治療は開腹手術、抗がん剤治療、樹状細胞がんワクチンなどです。
遠隔転移巣の切除が可能で原発巣の切除もできる場合はそれぞれの切除を行いますが、原発巣の切除ができなかった場合は両方において切除以外の対応を取ることになります。
生活習慣
食事
よく咀嚼すること、食べ過ぎないことに気をつけると良いでしょう。
薬物療法中は、副作用で食欲の低下や味覚障害が発生することがあります。水分の摂取や軽い運動が大切です。
末期の状態では食欲が落ちやすいですが、腸管の動きや消化酵素の分泌のために、できるだけ口から栄養を摂ることが重要です。
大腸がんの手術後、控えめにしたほうがよい食品とは?
大腸がんの手術を終えた後、基本的には食事制限はありません。
ただし、手術後しばらく(1〜3ヵ月程度)は、腸閉塞を引き起こす可能性があるため、消化の悪い食品や食物繊維の多い食品を摂りすぎないようにしましょう。
また、ガスが発生しやすい食品や、刺激が強い食品も控えめにしたほうがよいでしょう。
控えめにしたほうがよい食べ物の例として、以下のものがあります。
消化しにくいものや油、糖分、強い香辛料などの刺激物です。
これらの食べ物については、食べてはいけないものではありません。食べすぎに注意し、ご自身の体調に合わせて少量ずつ食べるようにしましょう。
<タンパク質>
肉 |
油の多い料理(カツ、ビーフステーキなど) |
魚介 |
貝類、いか、たこ、すじこ、かまぼこ、干物、佃煮、塩辛など |
豆 |
大豆、枝豆など |
<糖質>
穀類 |
玄米、赤飯、玄米パン、胚芽入りパンなど |
いも |
繊維の多いさつまいも、こんにゃく、しらたきなど |
果物 |
繊維が多く酸味の強い果物(パイナップル、柑橘(かんきつ)類など)、干し果物など |
菓子 |
揚げ菓子、辛いせんべい、豆菓子など |
<脂質>
油脂 |
ラード、ヘッド |
<ビタミン・ミネラル>
野菜 |
繊維の多い野菜(ごぼう、たけのこ、ねぎ、れんこん、ふき、ぜんまい、わらび、きのこなど) |
海藻 |
こんぶ、のり、ひじき、わかめなど |
<その他>
調味料 |
辛子、カレー粉、わさびなどの香辛料の使い過ぎ |
飲み物 |
炭酸飲料、アルコール、濃いお茶、濃いコーヒーなど |
出典:がん情報サービス(国立がん研究センターがん対策情報センター)
治療方法
結腸がんも直腸がんも、初期であれば切除が治療の中心になります。
大腸がんの治療では、外科療法・化学療法・放射線療法を組み合わせて治療をおこなっていきます。
また大腸は抗がん剤や放射線が効きにくいため、薬剤や放射線を使う場合でも手術前にがんを縮小させたり、手術後に細かく散らばったがん細胞を死滅させたりするといった補助的な役割で用いられます。
進行した場合の治療方法
大腸がんは抗がん剤が効きにくいがんであるため、抗がん剤のみで治療することはありません。
また放射線治療も正常な大腸組織を損傷するので、基本的にはおこなわれません。
一方、直腸がんの場合には、陽子線・重粒子線治療がメインの治療法となります。手術に比べて通常の放射線治療による消化管出血,腸管穿孔などの副作用も起こりにくいので、これらを組み合わせた治療法が取られることが多いようです。
寿命
大腸がんの5年生存率は、
生存率とは、がんと診断された患者さんのうち、ある時点まで生存されている割合のことです。
大腸がんのステージ別の生存率をみると、ステージTのような初期の段階では、90%以上の確率で治ります。
ただし、ここで示されている生存率は、多くのがん患者さんの平均的な値です。患者さん一人ひとりの余命を決定づけるものではありません。
大腸がんの5年純生存率(ネット・サバイバル)(2014-2015年)
ステージ0 |
ステージT |
ステージU |
ステージV |
ステージW |
集計されていません |
92.3% |
85.5% |
75.5% |
18.3% |
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」
2018年の統計では年間で15万人以上が罹患し、男性・女性を合計すると日本でもっとも罹患数の多いがんでした。