ダイエットのコツ

潜在意識の回路を使うアプローチ

 

 

はじめに

糖分を摂取するメカニズム                      生存     ストレス緩和

「わかっている」のに実践できない理由       表層意識と潜在意識

心のメカニズム                     3つの本能  緊張と緩和  自動反応回路の作成

段階的実践方法                 初級    中級     上級 

 

 

 

はじめに

ダイエットの願望を実現するための答えはシンプルです。

摂取する量を減らすことです。

 

誰でも答えを知っているのに実践できないのは何故なのでしょうか?

鍵は潜在意識です。

表層意識では食べることを控えていても潜在意識の欲求があれば、ついつい食べてしまうからです。

では、摂取する理由や潜在意識のメカニズムを知って、具体的なダイエットの方法を見ていきましょう。

 

 

カロリーを摂取するメカニズム

動物は外部から栄養分を摂取することで生命を維持しています。

しかしクマや虫の冬眠など長期にわたって摂取しないことも可能です。

ヒトも食事を摂取しなくても長期に渡って生命維持することができます。

これまでの食べ物なしで最も長く生き延びた記録は、アイルランドのテレンス・マクスウィニー(18791920)の74日間です。

1997年に発表された研究(Michael Peel,BMJ(1997))では、ハンガーストライキで自発的に食事を止めた人は、平均して4561日後に死亡していると報告されています。

たとえば私は年に一度ほど3週間の間は水しか飲まない断食をして身体を整えて元気になります。

 

ここでのポイントは動物は生命の維持のためだけに栄養分を摂取しているのではないということです。

生命維持以外でも、ストレスの解除、気分転換、リラックス、習慣のために動物は栄養摂取をしています。

 

たとえば、

学習や仕事が忙しい時には、普段よりストレスを感じる機会が増えるので、交感神経の活性化に連動して脳内にドーパミンを分泌させて幸せな気分になり、ストレスに対抗しようとします。

 

その交感神経の活性化の最も手っ取り早い方法が、カロリー(糖質)を摂ることです。

したがって、ストレスを感じたときに甘いものを口にしたくなるのは、ヒトとして自然な反応です。

 

このようにストレスの解除と栄養摂取とを因果関係で結びつけた回路を作成すると、これが潜在意識となり、ストレスを感じる時にカロリーを欲しがるようになります。

したがって、「本気でダイエットをすればやせられるのだけど、今は一時的に仕事が忙しいために甘いものを食べているにすぎない」という認識でいるかぎり、ダイエットは進みません。

 

糖質によってストレスを解消する状態に陥っていると、目標意識を高く保つことで一時的に体重を落とすことができても、潜在意識にある自動反応回路が太くて強いものである限り糖質を欲しがるので、意図的なダイエット期間が終了するとすぐにリバウンドしてしまい、糖質依存とも呼ばれるようになります。

 

糖質依存は、アルコールやニコチン、薬物の依存症と同じように、一度なってしまうと抜け出すにはコツがいります。

また、ほかの依存症よりも厄介なことは「不健康なことをしている、マズイことをしている」という本人の意識が低いうえに、スナックやジュースなどのカロリーの高いものを欲求するようにテレビや雑誌やインターネットは宣伝しており、どこでも簡単に買えてしまうからです。

 

この糖質依存のサイクルを断ち切るためには、糖質制限に関する正しい知識とコツを知ったうえで、1日の糖質摂取量を60g以下に落として糖質依存から完全に抜け出す必要があります。

 

 

 

 

「わかっちゃいるけどやめられない」のは?

 

この世を、物質、感情と理性(表層意識)、情緒(潜在意識)、深層意識という「層」(レベル)でみることもできる、と私は想っています。

この理性と情緒の関係性は、感情を抑制する理性ではなく、表層意識の全体性を扱うのが理性、潜在意識の全体性を扱うのが情緒という意味です。

ですから、ここでの情緒とは感情のことではなく、数学者の岡潔が定義した意味で使っています。

ですから情緒というよりも「無意識の感覚」と一般的には言われているものです。

またこの「無意識の感覚」を探求していくと、理性の可能性と限界を知ることが情緒である、とも言えます。

これは私の言うアプリ、上座部仏教でいうサンカーラ、現代語でいうと感情と思考の自動反応回路のことです。

 

 

「わかっている」のは物質や理性の層であって、

「やめられない」のは情緒(潜在意識)や深層意識の層をまだわかっていないためだと仮説します。

この「やめられない」とは、あるTPOでは「はじめられない」ということです。

たとえば、糖質依存をやめられず、ダイエットをはじめられない、ということになります。

糖質依存のメカニズムが論理的には分かっていても、潜在意識にも呼びかけて「やめる」方法や「はじめる」方法は「わかっていない」ということです。

 

 

そこで、各自が持つ感情や深層意識にあるアプリを理解して、それに適応した「やめかた」を試行錯誤して作り上げることで、表層意識の「わかる」から次の段階である潜在意識と深層意識の「わかる」に移行していきます。

 

 

この「わかる」という段階は下図のように違いがあるので、どの視点に立って話しているのかによって、感じる世界は異なります。

 

4つの理解の層と心身との関係

主語

人類

生命体

見えない生命体も含有

内容

知ってる

考えている

やっている

できている

物質と内面性

物質

感情と理性

情緒、智性

神性

物質と意識

物質

表層の意識

潜在の意識

深層の意識

基準

自我意識

理性

習慣アプリの脱着

宇宙の法則、真理

H2Oの性質

大気

美学

適者生存

人類愛

融通無碍

独立した全体性

インド(ヨガ)

肉体

意思マナス

自性プラクリティ

観照プルシャ

上座部仏教

身体

メンタル体

サンカーラ

ダンマdhamma

キリスト教

神道

心    和魂

頭    奇魂

魂    荒魂

霊     幸魂

善悪

上下、左右、内外

善悪、優劣

体は悪、精神は善

善悪はない

 

← 特殊性       普遍性 →

← 心の不安      心の穏やかさ →

 

 

 

前述した体と意識のアプリ(自動反応回路)は各自によって異なるので、最終的には自分で独自のアプリを見つけてだして、徐々にそれらを上書きするしかありません。

この時に白黒をはっきりさせた極端なカタチとして理解しようとする未熟な方法を使ってしまうことがあります。

たとえば、なんでもこの世は二つのうちの1つだと考えてしまい、AでなければBである、と条件反射的に判断して具体策を実践してしまうことです。

しかし、このようなやり方ではアプリを弱体化することはできません。

 

対象を2分法で分別してしまって白黒で判断する回路は、意図的に書き直すまでは、この条件反射の考え方は継続します。

また、これは「やめられない」理由をみつけだして、言い訳を作りだします。

 

たとえば、遺伝子を原因として、自分の未来は預定説のようにすでに決められていると考えたりします。

確かに遺伝子は因果関係の要因の1つですが、環境やイベントなどの多くの条件が揃わないと遺伝子の性質がこの世でカタチになって現れることはありません。

たとえば、キュウリの種があるだけで実がなるのではなく、適度な水と光と土という条件が必要です。

種という原因があるだけで実という結果が生じるわけではありません。

 

 

ここで、わたしたちがこの世に生きている目的の1つは、各自の感情や情緒や深層意識に寄り添い、それらと一緒に歩むこと、だと仮説してみます。

つまり「やめられない」というまだ未知の回路のメカニズムを知ってみる、という試みです。

 

 

 

本能のメカニズム

ヒトには3つの欲求があります。

細胞レベルでは     外からの新たな信号を求める

心理レベルでは     想いの変化を求める

深層意識レベルでは   心が作成したパターン回路に従い、肉体を含めた物質信号からの離脱を求める

これらの3つの欲求が本能と呼ばれるものです。

 

 

まずは、このような欲求が自分にあることを理解して、これらのメカニズムと接することで、自分の望みを達成することが容易になります。

つまり、意識を持つ生命体は深層意識にあるパターンによって操作されて暮らしているので、自分の想うようにしたい時にはこの潜在意識と深層意識の回路を上書きするのが効果的です。

 

ヒトの本能は食欲、性欲、睡眠欲だと言われることもありますが、これらを吟味してみるとどれもがそれほどの頻度の高い欲求とは限らず、これらが強い欲求となるのは深層意識の作成された回路によるものだからです。

つまり深層意識にある回路を弱体化することで、欲求を低下することが可能になります。

 

 

深層意識とは

言語化されている表層意識とは異なり、

嫌なことを拒絶する怒りや嫌なことを受け入れる悲しみなどの感情や、ある特定の信号に対して決められたアウトプットになるトラウマや、過剰一般化のように自分では気づいていない思考回路が深層意識です。

 

また、このエッセイでは潜在意識とは表層意識と深層意識の間にある中層意識として捉え、人によっては自分の潜在意識を気づいている人もいれば、気づいていない人もいます。

そして、深層意識にある自分の思考回路は多くの人が気がついていません。

 

 

緊張と緩和のメカニズム

多くの場合で「やめられない」のはそのやめられない言動が心身を緩和に導く回路になっているためです。

すなわち、心身の極度の緊張状態が続いて交感神経が活性化される場合、その状態を緩和させる副交感神経が活性化させるように体は作用します。

これが平衡感覚や平衡運動とよばれるものです。

ヒトは大脳皮質の神経(表層意識)だけではなく、このようにバランスを取ろうとする自律神経や大脳辺縁系(潜在意識)によって判断が喚起され、それが言動となります。 

 

たとえばストレスの多い仕事をした場合には、その後に安らかな音楽を聴いたり、糖分を食べたり、落ち着く香りを嗅いだり、静かな風景を眺めたり、ストレッチなどをして筋肉を緩めたりして、怒りや悲しみの緊張よりも喜びを感動の弛緩を選択しています。

 

したがって、食べる量を減らすためには

@心身が緊張する機会を減らし、

A心身が緩和する自動反応回路を食べることだけでなく、他の5感覚信号(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、想起)に結びつく回路に振り返ることが有効になります。

 

情報処理をしている心(マインド)は1つしかないために一度に複数の信号を受け付けられません。

しかし私たちが視覚と聴覚を同時に使えるように感じているのは、この情報処理を瞬間的(10億分の1秒)に行って、視覚と聴覚の情報処理を相互に繰り返しているためです。

ヒトは物質をどのように認識しているのか  論蔵における認識のプロセス  

 

そこで副交感神経が活性化する時の信号を味覚以外の感覚と結びつける回路を作成し、その回路を多用することによって、味覚に依存する割合を低減することが可能になります。

 

物理的に口から入る食料の総量が減れば、体重は減少せざるを得ません。

味覚以外の新しい自動反応回路を作るまでは、体重を減らしたいという動機を何度も繰り返して確認できるように、目標を張り紙にして目に付くところに貼るなどして暮らすことも効果的です。

 

味覚以外の自動反応回路が作成されると、表層意識を使わなくても自動的に発動する作用が起こるので、もう張り紙をする必要がなくなります。

 

 

 

 

 

実践方法

 

初級編   リラックスと感覚器官とを結びつける回路の作成

緊張した後にはリラックスして身体が弛緩する自動反応回路が発動するので、その回路を摂取以外の自分が望むものに置換します。

味覚以外の感覚信号回路を作成して、味覚と結びついていない回路を使うことで、食べる行為を低減させることができます。

 

つまり、これまでの味覚を介する回路によって潜在意識が欲求している行動パターンを実行するのではなく、

自分が望む自動反応回路に置き換えることで、受け身ではなく自発的になることです。

 

緊張した後にする行為の一例

 

 

 

初級的行動

創造的行動

 

嗅覚      

香り瓶

アロマオイル作成

 

聴覚     

曲を聴く

作曲

 

触覚    

マッサージ

血液循環を感じる体操 

 

視覚       

環境ビデオ

絵を描く

 

想覚     

本を読む

エッセイを書く

 

 

断食 空腹の時にする回路の作成

摂取しないことがダイエットそのものですが、断食をするのは「食べたい」と想った時に、他の5感器官の信号と結びつけて新たな回路を作成することが本来の目的でもあります。

たとえば空腹を感じた時に、何かを食べる代わりに、体を動かしたり、水を飲んだり、好きな香りを嗅ぐ習慣をつけることです。

 

これまでに学習した摂取の条件反射回路を弱体化して、上記のように他の回路に代替するのです。

そのためには断食をすることで何度も「食べたい」という感覚を感じ、その度に違う回路と結びつけて、断食が終わった後に、「食べたい」と想ってもこれまで通りに条件反射的に摂取するのではなく、他の選択肢(新たに作成した回路)を気づかないうちに選んでいる練習を積み重ねます。

 

 

 

中級編     体の弛緩と結ぶつける回路の作成

初級のデメリットは具体的な感覚器官を介する信号が身の回りにないことがあることです。

たとえばその場に音の再生機やフラグランスや運動できる場所がないようなケースです。

そのような時には「何か食べたくなる」と感じる時に、自分の体の重力の位置の変化に気づくように心を穏やかにするという回路が発動するように私はしています。

 

体の重点は姿勢によって変化します。

たとえば立っている時に両足の親指を曲げると重点は踝の下に移動するので、前かがみの姿勢からバランスの取れた良い姿勢に移行します。

こうなると筋力を使う程度が減少し、インナーマッスルによって姿勢を保つことができるようになります。

 

これが「骨で立つ」という姿勢のことでくるぶしの上に重心があり、その上に骨盤があり、その上に背骨があり、その上に頭がのっている状態です。

 

 

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重心が後ろにある                 重心が前にある       骨で立っている状態    

 

 

このような姿勢になり、静かに呼吸をし、心が穏やかになり、副交感神経が活性化することでストレスは低減します。

 

私はお腹が空いたと感じるたびにこのような体をリラックスさせることを心がけ、このような回路を作成させることで、表層意識を使わなくても自動的に回路が発動するように訓練しました。

したがって、リラックスした状態を保持することでストレスを感じる回数と量が減り、糖分を始めとした栄養摂取と結びつけていた回路を使うことが減ります。

そして使用するものは発達し、使用しないものは退化するという宇宙法則により、ストレスを感じると栄養摂取をするという回路は弱体化していきます。

 

つまり、これまではストレスを感じるたびに栄養摂取する回路から、体の重点に気づくことで体がリラックスするという意識の回路に移行していくことになり、糖分をはじめとした栄養摂取の量が減少し、ダイエットが順調に行われることになります。

 

 

上級編      味覚のイメージ再現法

好きな小説は何回読み返しても楽しいものですが、しまいには暗記するところが増えてきて、読まなくも諳んじる部分が増えてきます。

また、好きな絵や音楽を何回も見たり聴いたりすると、実際の絵や音がなくてもそれを想像の中で再現することが可能になります。

このように6感覚器官を介した信号は各自の意思と訓練によって感覚そのものを再現することが可能になります。

 

感覚器官を使うプロは、その信号がその時になくても、過去の経験で得た信号を足したり引くことが想像の中で体感することができるので、クリエイティブな仕事をすることができます。

たとえば、楽曲のアレンジャーや、新しい地域で新作メニューを試みる料理人や、新たな香水を開発する調香師

などです。

 

同じことをダイエットにも応用します。

自分の食べたいものを食べているところを想像することです。

この時にはそれに反応して胃液が分泌されてしまうので、水や代わりのものを摂取して胃液を薄める必要があります。

このことからわかるように、食事をしていない時に食べ物を連想させるテレビや映画を見ると食欲を掻き立てるので、ダイエットしている期間、特に夜にはテレビを見ること避けるのが賢明です。