緊張型頭痛とはどのような頭痛か
緊張型頭痛は頭全体が鉢巻きで締め付けられるような痛みが続く頭痛です。
頭全体、もしくは後頭部から首にかけて締めつけや圧迫感があり、拍動感(ズキズキする感じ)はないことが特徴。
頭の両側が締めつけられるような頭痛が特にきっかけもなく始まり、個人差はあるが数十分〜数日間ダラダラと持続する。後頭部から首にかけて圧迫感があり、「鉢巻きをしているような感じ」「帽子で頭が締めつけられる感じ」と表現する患者もいる。
頭痛以外に、首や肩、後頭部のこり、めまいなどを伴うこともある。
ストレスの影響がある緊張型頭痛の場合は夕方、仕事の負担がたまりやすい時間帯に痛みを感じることが多い。
主な原因は身体的・精神的ストレスによる筋肉の緊張と考えられます。
例えば、上半身を前かがみにしたパソコン操作や、うつむき姿勢など一定の姿勢を長時間続けると、頭を支えている首や肩の筋肉に大きな負担がかかり、頭の筋肉も緊張し、血管の圧迫などによって血流が悪くなり、頭痛が起こってきます。
また精神的なストレスは自律神経に影響して、頭痛の誘因になります。
メカニズム
筋肉の血流の減少や、筋肉が硬くなったり、筋肉に対する疼痛に対する痛みの感じ方の程度の成績から、筋膜や神経などにある痛みに対する受容体が関与する末梢性因子が存在すると考えられます。
一方、脳幹や大脳などの中枢が関与するメカニズムとして筋膜から中枢への痛みに対する反応が三叉神経を介して中枢を感作するとする中枢性の因子もあります。
緊張型頭痛のメカニズムは末梢、中枢いずれの関与も考えられ、おそらく頻度の少ない緊張型頭痛では末梢性因子が主に関与し、頻度の高いおよび慢性の緊張型頭痛では三叉神経を介した、末梢と中枢の両者が複雑に関与していると考えられます。
原因
長時間のパソコン、携帯メール、ゲーム機の使用や車の運転など、不自然な姿勢を長時間続けることが一因。
また高さの合わない枕の使用などがきっかけで発症することも多い。
体の冷えなどによる身体的ストレスも原因となり得る。
頭痛のメカニズムは完全には判明されていないが、交感神経の過剰、筋肉の緊張による血管の圧迫、血液循環の不良などによって起きると考えられている。
頭痛の頻度が少ない「反復性緊張型頭痛」は、肩こりなど筋肉の緊張が原因とされている。一方で、頭痛がほぼ毎日の「慢性緊張型頭痛」は筋肉の緊張に加え、精神的なストレスも大きく関わっているとされている。
対策
生活習慣として普段から正しい姿勢をたもつことと、長時間同じ姿勢をとり続けないことを心がけることが大切です。
運動や入浴は血行を促進します。
セルフケアで頭痛が改善されない場合は、薬物療法が行われます。
筋肉の緊張を緩和する筋弛緩薬や鎮痛薬のほか、精神的ストレスが大きい場合には抗うつ薬や抗不安薬が用いられます。
いずれも1−2週間毎に医師の診察を受け、症状がどのくらい軽くなったか、副作用がないかなどを確認しながら、薬の種類や量を調整していきます。
東海大学八王子病院 病院長 北川泰久
運動療法(体操)や入浴、リラクゼーションが治療の基本となります。
運動療法の基本は全身の筋肉をバランスよく動かすことです。首や肩が張っているからといって、首や肩だけ動かしていても張りはとれません。ラジオ体操やテレビ体操のように左右の手足を対称的に使う動きが基本です。使う筋肉に偏りのある野球やテニスの後では筋肉痛が起こりやすいのに対して、水泳のように手足を対称的に使う運動では筋肉痛が起こりにくいことからもお分かり戴けるかと思います。
入浴は体を温めることにより、首や肩の血流を改善するのが目的です。あまり熱すぎない温度でゆっくりと時間をかけて入浴しましょう。
運動療法によっても改善しない緊張型頭痛は薬物療法の対象となります。
鎮痛薬は有効であり、長時間のデスクワークなどにより比較的急性に起こった緊張型頭痛で2−3日の内服で軽快するような場合にはよいと思いますが、既に慢性化してしまって連日になっている頭痛に対しては、のみ始めると毎日のむことになる可能性が高く、薬物乱用頭痛に発展してしまう危険があるためお勧めできません。
慢性化してしまった緊張型頭痛に対しては、抗うつ薬や抗不安薬、筋弛緩薬が有効な場合があります。これらのくすりが医師から処方された場合には、まずは処方箋通りの用法できちんとのむようにし、定期的に診察を受けて症状の変化の有無を伝えることが重要です。
(国立病院機構北海道医療センター神経内科 藤木直人)
「緊張型頭痛の危険因子、誘因」 その1
緊張型頭痛の性状、メカニズム、治療や対策法についてはすでに述べられておりますが、一部重なる部分もご容赦いただき、ここではこの頭痛の誘発因子について説明させていただきます。
まず、私が外来で患者さんにお伝えするのは、片頭痛なのに肩こり頭痛だと誤解している方が極めて多く、その誤解を解くために、頭蓋骨内の脳表血管が広がる頭痛が片頭痛。頸部や頭蓋骨周囲の筋肉内の血管が縮むのが緊張型頭痛であるとお伝えします。
そのため、緊張型頭痛には、片頭痛と逆のリラックス、入浴や運動など血管を広げることが推奨されるわけです。
■筋肉の中の血管が縮むということはどういうことか?
筋肉痛は誰でも経験していると思います。
走りすぎた後に足がつってしまい、筋肉が固くなり痛みを伴うことがあります。それと同様のことをイメージしてください。
肩から頸部さらに後頭部にかけての筋肉群と頭蓋骨周囲の筋肉が、同様に固くなるということです。
これは、筋肉が疲労してくるのは、筋肉内に乳酸などが貯留して末梢血管を収縮させます。
その結果、血流が悪くなり筋肉は魚の干物のように固くなります。
(医)斐水会 ながせき頭痛クリニック 永関慶重
「緊張型頭痛の危険因子、誘因」 その2
頭は3−4kgの重さがあり、この頭を体幹とつないでいるのが頸部です。子供の持つボーリング球の6ポンド程度の重さです。
この頭の重さを支える姿勢は、下向きと上向きであり、また、心理的などストレスがかかるとこの後頸部の筋肉は交感神経が支配しているため、無意識にいかり肩になります。
これら3つの姿勢が緊張型頭痛の危険因子であり、これらの姿勢をとることが誘因となります。
これらを下向き頭痛、上向き頭痛、いかり肩頭痛と3つに分類してそのの誘因となる姿勢を調査した結果は以下の通りです。
■下向き頭痛:手芸、編み物、読書、草刈り、調理、貴金属製造、内職、木工、IT関係のパソコン作業。
■上向き頭痛:剪定、摘果や受粉作業、電気工事、クロス張りなどの作業、丸背の高齢者。
■いかり肩頭痛:絶えず重いものを持ち上げる、子供を抱っこ・おんぶする、重いカバンやリュックを背負う、長時間の運転、寒冷ストレス
これらはいつもそうなるかではなく、もともと慢性的に肩が凝っている状態に、上記のような負荷がかかり筋肉の緊張が加重されたとき、さらには筋肉を使っている時間が長時間にわたったときなどに緊張型頭痛になると考えられます。
このような筋肉の固くなる状態を避けることが肝要です。
(医)斐水会 ながせき頭痛クリニック 永関慶重
予防/治療後の注意
予防のためには、ゆったりとした時間を持ち、心身のストレスを上手に解消することが重要。
緊張型頭痛には肩こりが関係している場合が多いため、肩の筋肉をほぐすことも大切だ。日頃から適度な運動を行うことや同じ姿勢を続けないことを心がけ、ウォーキングやストレッチを行う。
リボトリール錠0.5mg
主成分:クロナゼパム(Clonazepam)
薬の作用と効果について
脳のベンゾジアゼピン受容体に作用し、脳の興奮している状態をしずめ、てんかん発作(けいれん、意識消失など)を抑えます。
通常、小型(運動)発作、精神運動発作、自律神経発作の治療に用いられます。
筋弛緩薬。抗不安作用。日本では1981年より、商品名ランドセン、リボトリールで販売され、適応はてんかんである。また、自律神経系統の疾病であり、抗不安作用も強いことからパニック障害の治療に使用されることもある。 連用により依存症、急激な量の減少により離脱症状を生じることがある。中止の際には漸減が原則である。
ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬はBZD受容体に作用することでBZD受容体を刺激し、主にGABAの神経伝達を亢進することで催眠・鎮静作用をあらわします。 また、脳の活動を抑えることで抗不安作用や抗けいれん作用などもあらわし、睡眠障害の他、けいれん発作の予防薬や麻酔前投与薬などとして使用される薬剤もあります。
脳内の抑制性神経伝達物質であるGABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)が作用するGABA受容体は抗不安、催眠・鎮静などに深く関わり、GABA受容体はベンゾジアゼピン(BZD)受容体と共に複合体を形成している。BZD受容体が刺激を受けるとこの複合体に塩化物イオン(Cl−)が流入し、脳の興奮が抑制され抗不安作用や催眠・鎮静作用などがあらわれる。
本剤はBZD受容体に作用しこの受容体に結合することでGABAの活動を高め、抗不安作用や催眠・鎮静作用などをあらわし不安障害や心身症などの諸症状を改善する。また本剤は脊髄反射を抑えることで筋肉の緊張を緩和する筋弛緩作用により腰痛症や緊張型頭痛などに使用する薬剤もある。
「受容体の働き」
受容体は、内分泌系、神経系、免疫系からの情報伝達物質を認識し結合して、細胞内の核へ情報を伝える役目を果たします。その指令に基づき、細胞は目的とする酵素などを作り出します。個々の受容体は、それぞれ一つの物質しか受けることができません。結合する物質をリガンドと呼び、受容体との関係はカギとカギ穴のようなしくみになっています。