腸を鍛える 丁宗鐵
現状 昔よりも薄くなっている腸 脂肪がびっしりとついたペラペラの薄い腸
現代の肥満は昔は手に入らなかった冷えたものと糖分が生んだ現代生活病
腸の萎縮は、冷蔵庫とエアコンの普及によって現れた病気。
腸は筋肉そのもの 平滑筋
サルコペニアといって筋肉量が減ると病気にあるというデータがある。
食べることは腸の筋肉を鍛えること
筋肉が動くと体温が上がり、体温が一度上がるとエネルギーは1.5〜1.8倍消費される。
1日のトータルでは骨格筋よりも消費するエネルギーがはるかに大きくなる。
温野菜などの低カロリーで繊維質なものを食べると腸が運動ができる。
腸を鍛える8つのポイント
1 食べる ダメなものは甘いものや果物ジュースなどの消化しやすいもの
2 食物繊維の多い食品をとる
3 あたたかいものは腸を活性化させる
4 発酵食品は腸内環境を良くする
5 スパイシーな食事 コショウ、シナモン、ネギ、生姜、ニンニク、ワサビ、シソ、カレー、辛子
6 よく噛むこと 咀嚼数で脳は満足
7 五味 甘味、辛味、酸味、苦味、旨味
8 ぐっすり眠る 昼は交感神経をを優位にさせる
腸の運動にとって注意が必要なもの 冷たくて甘い飲み物
糖分 腸の入り口で分解され吸収される
タンパク質 アミノ酸まで分解されないとアレルギーの原因となる アミノ酸で経口すると腸は働かない
脂肪酸 長鎖脂肪酸は腸の働きは必要だが、乳製品やパーム油などの中鎖脂肪酸では腸は働かない
アルコール 胃と十二指腸で吸収されるので腸が使われない
冷えたもの 大量の冷水を呑むと温めるために腸に血液が集中して脳虚血を起こし、心臓に負担をかける
間食・夜食 インスリンが出るのは普通は1日3度、また胃に食べ物が残っていると腐敗する
胃が空になっているかどうかはお茶やビールを飲んで沁みたら空だということ。
果物や牛乳にも注意
特にジュース。簡単に吸収してしまうために腸を使わないだけではなく冷えているから。
果物を取るならば食後ならば量も食べられないし、インスリンが出ているので血糖値が上がりにくい。
牛乳のタンパク質であるカゼインは食物アレルギーを引き起こすといわれている。
糖分は「気」と血管にとっては毒である
血糖は血管壁を傷つけるので、高血糖が続くと細い血管から順に傷ついて、血管が詰まりやすくなる。
一番詰まりやすいのは目の網膜、腎臓、心臓、脳の血管です。
糖分の取り過ぎによって腸が弱り、「気」が弱まる。すると獲得意欲も弱り、ますます消化吸収がラクな甘いものばかりを取るということになる。そうするとさらに消化吸収力が弱まるから、「気」が落ちてくる。同時に自律神経機能も弱くなってウツのような状態がもたらされる。
負のスパイラル 腸を使わない食生活
簡単に消化できるもの→腸が怠ける→腸が衰える→楽にエネルギーになるものを欲しがる→簡単に消化できるもの
膵臓は小腸の表面にある粘膜にホルモンを供給し消化をコントロールしている。しかし糖分やアミノ酸を摂取していると腸が働く必要がなくなり、ホルモン分泌も減少し、消化能力が低下してますます消化する手間の掛からないものを欲しがる。
便通で見極める
虚証の人は朝から温かいものを食べる。腸を鍛えるというよりも腸と交感神経の活性化の助走を行うため。
実証の人が断食する時は、大量の水を飲んで消化液を薄める作業が必要。断食後は腸が萎縮しているので急に食べると腹痛を起こして死に至るので、籠城させた勝ち戦の将軍はたらふく食べさせた。
生活のパターンや運動やダイエットや暮らし方は、自分に合うかどうかは便通で見極める
気血水
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西洋 |
東洋 |
機能 |
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気 |
神経 |
+消化 |
血や水を全身に廻らす |
エネルギーの交流 |
水 |
免疫 |
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皮膚や粘膜を丈夫にする |
生体防衛 免疫機能 |
血 |
内分泌 |
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栄養を運び老廃物を回収 |
内部循環 |
神経伝達物質やリンパ球は脳よりも腸に多くある
セロトニンは90%以上が腸にある。
免疫システムのリンパ球や免疫細胞の60%は腸にある
キラーT細胞は腸で作られたり活性化されたりしている
ウツと腸 腸の衰えが感情不安を導く
ウツとは生命を維持していくことへの漠然とした不安
腸が衰えるとセロトニンやホルモンの分泌も減少し、長期にわたって体のリズムや「気」のバランスが崩れてしまう。
血管が細くなって生活習慣病の兆候がある人が鬱っぽくなると糖尿病でもないのに甘いものが欲しくなる。
腸の状態が弱ると、手っ取り早くエネルギーが取れる甘いものや脂っこいものばかりを欲しがる。
向精神剤は精神安定剤が多いのでこれを服用すると腸も眠ってしまう。
日内リズム 昼は働き、夜は眠る
昼間は交感神経、夜間は副交感神経というリズムがバランスよく入れ替わるのが健康な状態。
メリハリが必要。
ウツの人は会社や学校を休むとむしろ治らない。
食事と睡眠時間をしっかりするのが一番大切。これが一番体に効く。
実践プログラム
1 目標は20歳の時のベスト体重
2 糖断ちして脂質代謝酵素系をオンにして食事で腸を鍛える
3 食事量ではなく体重第一主義に
4 体質や性格に合わせてルールを決める 大雑把な実証、真面目な虚証
5 繊維質の多い食品
6 毎日、体を動かす
食べる時は温かいものから
冷たいものを食べると代謝が下がる。
熱い味噌汁から飲むほうが代謝が上がる
朝は冷たいものを飲むと胃腸を温めるために血液が集まり、脳が起きない
西洋栄養学の欠点
カロリー計算など袋に詰めたら重くなるだろうというような、人間が生き物であることを忘れている。消化吸収能力はその人によって違うので、各自の腸の状態から改善して代謝を上げていくのが東洋や漢方の考え方の違い。
夏バテ対策
冷たいものや甘いものを避ける
1日一回は汗ばんで代謝を上げる
貝原益軒の養生訓
【腹八分にすべし、満腹は禍あり】(308)
珍美の食に対すとも、八九分にてやむべし。十分に飽き満るは後の禍あり。少しの間、欲をこらゆれば後の禍なし。少のみくひて味のよきをしれば、多くのみくひてあきみちたるにその楽同じく、且後の災なし。万のむくひて味のよきをしれば、多くのみくひて、あきみちたるにその楽同じく、且後の災なし。万に事十分にいたれば、必ずわざはひとなる。飲食尤満意をいむべし。また、初に慎めば必ず後の禍なし。
【濃厚なものより淡泊なもの、肉は控え目】(306)
凡(すべて)の食、淡薄なる物を好むべし。肥濃・油膩の物多く食ふべからず。生冷・堅硬なる物を禁ずべし。あつ物、只一によろし。肉も一品なるべし。*(さい)は一二品に止まるべし。肉を二かさぬべからず。また、肉多くくらふべからず。生肉をつゞけて食ふべからず。滞りやすし。羹に肉あらば、*(さい)には肉なきが宜し。
【温かい酒がよく、冷やしたり熱するのはダメ】(447)
凡そ酒は夏冬ともに、冷飲熱飲に宣しからず。温酒をのむべし。熱飲は気升(のぼ)る。冷飲は痰をあつめ、胃をそこなふ。丹渓は、酒は冷飲に宣しといへり。然れ共多くのむ人、冷飲すれば脾胃を損ず。少飲む人も、冷飲すれば、食気を滞らしむ。凡そ酒をのむは、その温気をかりて、陽気を助け、食滞をめぐらさんがため也。冷飲すれば二の益なし。温酒の陽を助け、気をめぐらすにしかず。
【昼間は間食をしないほうがよろしい】(370)
日短き時、昼の間、点心(てんじん)食ふべからず。日永き時も、昼は多食はざるが宜し。
【晩食は朝食より少なめに】(371)
晩食は朝食より少なくすべし。*(さい)肉も少きに宜し。
【食後に寝てはいけない】(532)
『医説』曰く、「食して後、体倦(う)むとも、即(ち)寝(いぬ)ることなかれ。身を運動し、二三百歩しづかに歩行して後、帯をとき、衣をくつろぎ、腰をのべて端坐し、両手にて心腹を按摩して、たて横に往来すること、二十遍。また、両手を以て、わき腰の間より、おさへなでて下ること、数十遍ばかりにして、心腹の気ふさがらしめず。食滞、手に随つて消化す」。
【四十歳以後はいわゆる「接して漏らさず」】(465)
孫真人が『千金方』に、房中補益説あり。「年四十に至らば、房中の術を行ふべし」とて、その説、頗(すこぶる)詳(つまびらか)なり。その大意は、四十以後、血気やうやく衰ふる故、精気をもらさずして、只しばしば交接すべし。この如くすれば、元気へらず、血気めぐりて、補益となるといへる意(こころ)なり。ひそかに、孫思*(そんしばく)がいへる意をおもんみるに、四十以上の人、血気いまだ大に衰へずして、槁木死灰の如くならず、情慾、忍びがたし。