片頭痛のメカニズム
片頭痛というのは、三叉神経から血管を拡張させるようなCGRPをはじめとしたいろいろな物質が出て起きるわけですけれども、その広がった血管からいろいろなものがしみ出て、それが血管の回りに炎症を起こす。その炎症が広がっていく。そこには消炎鎮痛薬でいいわけです。ですから、トリプタンを使って、ちょっとしてNSAIDs、理論的にはそうなのですけれども、実際には両方一緒に使ってもいいことが多いといわれています。
動くと、おじぎでもいいのですけれども、特におじぎなどをしますと脳の静脈圧が上がります。運動でもそうです。そうすると、脳の静脈圧が上がることによって脳の血管が広がる。そうすれば片頭痛がひどくなるということで、動くと辛いのが片頭痛。
それに対して緊張型頭痛の場合は、筋肉の硬さ、緊張から来ることが多いものですから、かえって動くとほぐれて紛れるということがありうるので、「動いてどうですか」ということですね。
トリプタン
セロトニン
アミトリプチリン
トリプタン
トリプタンは頭蓋血管に存在する5-HT1B受容体に作用し、その血管収縮作用により片頭痛の拍動痛を鎮め、また、同時に三叉神経終末の5-HT1D受容体の賦活(ふかつ)により、髄膜血管周囲の神経原性炎症の原因となる血管作動物質の放出を抑制することによって効果があらわれます。
早期服薬の必要性
トリプタンは片頭痛のどのタイミングにも有効ですが、片頭痛の早期に服用するほうが効果が優れます。片頭痛がひどくなるとアロディニアという現象があらわれ、トリプタンの効果があらわれにくくなります。
アロディニア(異痛症)
脳が痛みに敏感となり、通常痛みを感じない程度の刺激でも痛みを感じる現象で、片頭痛の75%に認められるといわれています。アロディニアが起こると皮膚が過敏な状態になり、髪の毛を触っても不快感が起こりブラシや櫛がかけられなくなります。さらには顔や手足までピリピリする状態があらわれます。
トリプタン乱用頭痛
トリプタンが片頭痛の早期に有効であるからといって、あまりにも頻回にのむとかえって頭痛が誘発されます。3ヵ月を超えて月に10日以上トリプタンを服用するとトリプタン乱用頭痛となります。できれば月10日以内の服用に留めたいものです。この範囲内であれば大きな問題はありませんので、いたずらに服用を警戒しないようにしてください。
片頭痛による経済的損失の評価とトリプタンの費用対効果の評価
トリプタンは鎮痛薬に比べて高価な薬剤であったため、欧米各国においてトリプタンが医療費支出に見合うだけの効果を持っているかどうか、いわゆる費用対効果の評価が行われました。その結果は社会全体に対して経口トリプタン薬により便益が還元されると結論されています。
セロトニン
アミトリプチリン
抗うつ薬は抑うつ状態がなくても、片頭痛に関係の深いセロトニンの代謝を改善することにより片頭痛の予防に有用です。とくに緊張型頭痛を合併している片頭痛に高い有効率が示されています。抗うつ薬のなかでは三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンはエビデンスも十分にあり、広く使用されています(推奨のグレードA)。
三環系抗うつ薬は、抗コリン作用による副作用(眠気、口渇等)がありますが、低用量から用いることにより副作用を軽減できます。新しいタイプの抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、三環系抗うつ薬にみられやすい副作用は少なく、今後のエビデンスの蓄積が期待される薬剤です。