激しい肩コリの原因とその対処法
あたためてもよくならないコリ、もんでも治らないコリ
なぜ治らないコリがあるのか?
キーワードは、トリガーポイント
コリの原因
まずはコリの原因を知る。以下のようなものが代表例。
日常的な同じ動作の繰り返し(仕事による反復動作、単純作業など)
同じ姿勢の長時間維持(デスクワークなど)
明らかに原因のある損傷(交通事故による外傷、ムチウチ、スポーツによる肉離れなど)
内臓疾患
精神的ストレス
などにより、筋肉にストレスがかかるとトリガーポイントと呼ばれる「コリ」が筋肉に発生。
トリガーポイントによる痛みは、痛いところをもみほぐしても意味がない。
トリガーポイント自体を刺激することで、痛みが緩和される。
※ストレスは交感神経という血の巡りを調整する神経に影響を与え、血の巡りが悪くなる。
それによって痛み、コリを生じる。
トリガーポイントについて
トリガーポイントとは、痛みや苦痛の元となる部分のこと。
このトリガーポイントによる痛みが交感神経を緊張させる
血管が収縮し血行不良になる
痛みが増強する
という悪循環を引き起す。
この悪循環に入った筋肉は、
酸素不足、栄養不足で固く短くなり柔軟性が無くなる
柔軟性の低下により骨格に歪みが生じる
骨格の歪みが筋肉にストレスを生み、新たなトリガーポイントが発生する
例えば、
通常首の骨は沿っていてしなるようになっている。
それが筋肉が固くなることで骨格が変わりまっすぐになる。
すると首の骨のしなりがなくなり、頭の重さが肩や首にもろにかかる。
結果、肩や首の筋肉に負担がかかる。
厄介な事にトリガーポイントは別の場所にも痛みを飛ばす性質がある。
肩や首のコリが原因の頭痛、腕のしびれなどが顕著な例。
そしてまた痛みが飛んだ先でも悪循環が起こり、また関連痛を飛ばし、どんどん症状が広がる。
トリガーポイント自体は痛くない
腕のトリガーポイントに直接注射針を刺す
トリガーポイントではなく、周辺や指先などほかの場所に痛みや重さを訴えた
脳の混乱によって引き起こされた痛みのため、トリガーポイント自体は痛くない
前述したように、
トリガーポイントによる痛みは、痛いところをもみほぐしても意味がない。
トリガーポイント自体を刺激することで、痛みが緩和される。
よってトリガーポイントを探し、そこを刺激することが治療につながる。
対処法
まずトリガーポイントを探す
コリがある人の大部分にはトリガーポイントが存在する
普段痛みを感じていないところも触るのがポイント
トリガーポイントの大きさは、パチンコ玉やウズラの卵くらい
首、肩の痛みの場合は、肩甲骨に沿った部分をチェック
腰の痛みの場合は、背中の真ん中とおしりのふくらみの上をチェック
内臓疾患がコリや慢性痛を引き起こしている場合もある
押すと別の所に痛みが広がるところがトリガーポイント
自宅でできるトリガーポイント解消法
トリガーポイントを中心に筋肉に沿って軽くなでる
トリガーポイントがある筋肉をストレッチでゆっくり伸ばす
もんだり押さえたりするときは優しくする
強すぎると逆効果になることもある
ペインクリニック(麻酔科)での治療
方法
トリガーポイントに麻酔を打つ「トリガーポイントブロック」が中心
注射は保険適用(800円でできる)。最初の5回くらいは週1回の感覚で続けたほうがよい
トリガーポイントに鍼をさして弱い電気を流してほぐす治療法もある
トリガーポイントブロックの効果
首痛を訴えるAさんのトリガーポイントに麻酔を注射し、首や肩の筋肉の固さと血流量を比較
首と肩の筋肉が麻酔を打つ前より柔らかくなり、血流も改善した
トリガーポイントブロックは痛みを抑えるだけでなく、筋肉をほぐす効果がある
注射が交感神経の興奮をとることによって血のめぐりがよくなる
普通の肩コリの対処法
ついでに普通の肩コリの対処法
十分な睡眠
横になると重力の影響が減り、肩や首への負担がかかりにくい
腹式呼吸でリラックスし、筋肉を弛緩させる
横になって呼吸すれば自然と腹式呼吸になる
寝る前に大きくゆっくり腹式呼吸を行い、リラックスする
肩周辺の筋肉を頻繁に動かすようにする
仕事中など、同じ姿勢を持続している場合、こまめに肩を動かしたりすることでコリにくくする
もみほぐす
コリをもむことで血流をよくし、コリがほぐれる
参考サイト
肩こりさんに、手軽にできる解消法を試してもらった - はてなニュース
の質問の参考になれば幸いです。
肩こりになりやすい人体構造
肩こりの原因に深くかかわっている人体構造。人間の肩の骨、首の骨、筋肉に、どうして負担がかかるのか、理解を深めましょう。
人間の骨格が、肩こりをつくる?
人体は、背骨によって支えられています。
背骨は、頭蓋骨の下から骨盤まで、椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨24個がつながっており、その部位によって「頸椎(けいつい)」「胸椎(きょうつい)」「腰椎(ようつい)」に分けられます。
これらの骨は一直線に連結しているのではなく、側面から見ると「ゆるやかなS字カーブ」を描いており、「生理的弯曲」といわれています。このS字カーブのおかげで人間は、うまくバランスを保ち、2本足で立つことができる仕組みになっているのです。
背骨の中でも、首の7つの骨「頸椎」は、肩こりと深い関係があります。
大きな負担がかかっている「首の骨」(頸椎)
頸椎は、胸椎と腰椎に比べて、前後左右・ねじるなど可動範囲の大きさが特徴です。
また頸椎は、重い「頭部」を支えるという役割もあります。人間の頭部の重量は、成人で3〜4kgあるといわれています。これを支えながら前後左右に動くために、頸椎には常にかなりの負担がかかり続けています。その結果、頸椎を支える特定の筋肉に疲れがたまり、こりを引きおこしていきます。
「肩の関節」もまた、負担が大きい
肩関節は、動きが大きい点と重いものを支えている点が、頸椎と共通しています。
肩関節はそれぞれ左右7つの関節が連動して動きます。単独で動くほか、腕の動きにも対応して動きます。
そして、肩からつりさげられている重い「腕」を支えながら、さまざまな動きする結果、五十肩など肩関節の故障を引きおこします。肩関節も、頸椎同様に大きい負担がかかる部位なのです。
首・肩・腕をコントロールする「筋肉」
骨や関節以外で、人体を支えているのが筋肉です。
中でも首の筋肉には、骨格とともに重い頭部を支えながら、動きをコントロールするという役割があります。
また肩周辺の筋肉は、姿勢の維持と腕の動きに大きな役割を果たしています。
肩や首周辺には、「僧帽筋(そうぼうきん)」「三角筋」「肩甲拳筋(けんこうきょきん)」「棘上筋(きょくじょうきん)」「棘下筋(きょくかきん)」など、大小さまざまな筋肉があり、幾重にも重なって首や肩を支えています。
これらの筋肉には大きな負担がかかりやすく、筋肉に疲労がたまって肩こりがおこりやすくなっています。
肩こりに最も深くかかわる「僧帽筋」
僧帽筋(そうぼうきん)は、肩こりと最も深く関わる筋肉といわれています。
重い頭の角度を保つだけでなく、上体をおこしている間、左右合わせて10Kgにもなるといわれる腕を支えているために、疲労がたまりやすい筋肉です。
特に、なで肩で筋力の弱い女性にとっては、とても疲労がたまりやすい筋肉といえます。
筋肉の不自然な収縮が、こりを生む原因
正しい姿勢は、骨格によってかたち作られますが、その姿勢を維持して各部の動きをコントロールしているのが筋肉です。首や肩周辺の筋肉には、あたりまえの姿勢や動きをとるだけでも大きな負担がかかり、疲労がたまりやすい仕組みになっています。
また、体を曲げる、伸ばすといった動きをスムーズに行うためには、筋肉を緊張させたり緩めたり、収縮と弛緩が交互に行われます。この筋肉の収縮と弛緩には、血管を縮めたりゆるめたりして血行を促し、筋肉に酸素を運ぶ役割もあります。
しかし、一定の姿勢を保つ時間が増えたり、悪い姿勢を保つことなどで、筋肉は収縮しつづけ疲労がたまっていきます。
□肩こり増加は、現代社会の副産物
現代社会は情報化システムが進化し、コンピュータと無縁な生活は考えられない環境となりました。パソコン作業でおこる身体的疲労は、主に目・首・肩です。子どもの生活をみても、パソコンやゲームなどに費やす時間が増え、首・肩への負担が大きくなっているようです。
また、便利で快適になった生活への変化とともに、運動不足、生活習慣の乱れ、ストレスなどで、多くの人の慢性的な肩こりは避けられない状況になっています。
□肩こりの原因は、大きくわけて2つ
肩こりの原因をみてみましょう。「病気が原因でない肩こり」と「病気が原因でおこる肩こり」という2つに分類することができます。
「病気が原因でない肩こり」のメカニズム
この肩こりの主な原因はズバリ、血流の悪さ、血行不良です。
悪い姿勢や体型、疲労やストレス、生活習慣や老化現象などによって、肩の筋肉が緊張し血行が悪くなると、筋肉に酸素や栄養が不足し、乳酸などの疲労物質が排出されずに蓄積されます。これを繰り返すごとに、筋肉は少しずつ硬い筋肉に変わっていきます。
これが、このタイプの肩こりがおこるメカニズムです。
ですから「病気が原因でない肩こり」は、血行を良くすることが症状改善のポイントとなります。私たちに圧倒的に多いのが、この「病気が原因でない肩こり」です。
肩こりのサイクル
➀肩の筋肉が緊張⇒➁血管の圧迫⇒➂老廃物の生成・蓄積⇒➃神経へ伝達⇒➄痛みを認識(反射的に筋肉が収縮して再び➀へ)⇒➀
肩こりを放置しておくと、このような悪循環を繰り返してしまいます。このサイクルを断ち切ることが大事です。
「病気が原因でおこる肩こり」
一方「病気が原因でおこる肩こり」とは、病気があってその症状のひとつとしてあらわれる肩こりのことです。
重大な病気が原因となっているケースもありますので、「たかが肩こり」「たいしたことはない」と甘くみるのは禁物。取り返しのつかない段階まで病気が進行しないように、肩こりがつらいときは医師に診てもらい、原因を突き止めましょう。
肩こりと共に以下の症状があらわれたら、病気が原因の肩こりかもしれません。
1.
肩こりの痛みが強いとき、痛みが増すとき
2.
手がしびれるとき
3.
力が入らないとき
4.
肩から指まで冷たい感じがあるとき
5.
頭痛がするとき
6.
熱があるとき
7.
息苦しいとき
8.
胸部痛・背部痛があるとき
背骨や肩甲骨の疾患、心臓・肺・循環器系・内科系疾患、眼科疾患、うつなどの精神疾患などの可能性があります。早期の発見・治療が大事です。
首こりと肩こりは同じようなものとして認識されることが多いです。医学的には、肩こりとは首こりを意味すると説明する医師もいらっしゃいます。
肩こりの原因が首の筋肉である場合が非常に多いのは事実です。ですから首こりと肩こりが混同されるのは、仕方ありません。しかし、肩こりと首こりには大きな違いがあります。肩こりが昔から人々悩ませ、肩こりは治らないもの、仕方のないこと、が常識となっているのは、治すことが出来る人がいなかったからだと私は思いますが、医療の専門家(整形外科医)が、肩こりとは首こりであるとしている点も理由のひとつではないでしょうか。
そして、四十肩・五十肩といった肩関節周囲炎にも言えることですが病院では「原因が分かりません」「痛みの原因はたぶん○○」と曖昧な回答をされた経験をお持ちの方は多いでしょう。様子をみましょうということで、症状の緩和のための痛み止めの薬・ブロック注射をされるというのが、典型的なパターンです。当然、これでは治るわけありませんよね。
肩こりと首こりの決定的な違い(解剖学・生理学に基づいた見解)
首こりと肩こりは同じようなものとして認識されることが多いです。医学的には、肩こりとは首こりを意味すると説明する医師もいらっしゃいます。
肩こりの原因が首の筋肉である場合が非常に多いのは事実です。ですから首こりと肩こりが混同されるのは、仕方ありません。しかし、肩こりと首こりには大きな違いがあります。肩こりが昔から人々悩ませ、肩こりは治らないもの、仕方のないこと、が常識となっているのは、治すことが出来る人がいなかったからだと私は思いますが、医療の専門家(整形外科医)が、肩こりとは首こりであるとしている点も理由のひとつではないでしょうか。
そして、四十肩・五十肩といった肩関節周囲炎にも言えることですが病院では「原因が分かりません」「痛みの原因はたぶん○○」と曖昧な回答をされた経験をお持ちの方は多いでしょう。様子をみましょうということで、症状の緩和のための痛み止めの薬・ブロック注射をされるというのが、典型的なパターンです。当然、これでは治るわけありませんよね。
首こりと肩こりは違います。
本題に戻ります。
肩こりと首こりの違いを、筋肉の部位が違うからと説明しているところもございますが、そういうことではありません。首の筋肉が原因で肩が凝る、それは首こりではなく肩こりです。
このようなツラい症状を感じる場所で、首こりと肩こりと言葉を分けるのが適切です。場所が違う以外に違いがあるのかといいますと、肩こりと首こりに明確な違いがあります。肩こりと首こりの決定的な違い、それは神経症状として出るか出ないかです。
@首こりによる感覚神経の症状
頭部の感覚は、大後頭神経、大耳介神経、小耳介神経等といった神経が感じます。これらの頭部の感覚を担う神経は、首の骨の内側にある脊髄から出ているのです。
首がこると首の神経を圧迫し、後頭部・側頭部・頭頂部の痛みを誘発します。これがいわゆる緊張性頭痛です。(もちろん後頭筋や側頭筋などといった頭部の筋肉のコリが直接神経を圧迫する場合もあります。)
また、肩〜腕〜手の動きや感覚を担う神経、および血管も首に由来します。神経は頚椎から出るのでイメージがつきやすいのですが「心臓から出た血管が腕に行く前になぜ首へ?」と疑問をもたれる方は少なくありません。解剖学を紐解くことで、その疑問は解決します。
心臓をスタートとする血管は一度鎖骨の高さまで上に上ってからまた腕の方へ降ります。その首の前側の鎖骨近辺で、首の筋肉である斜角筋を貫くため、首こりによってシビレや血流障害による冷えなどが生じます。正確には斜角筋はその位置によって前・中・後の三つに分かれ、前と中の間を斜角筋隙といい狭い隙間があり、その間を神経(腕神経叢=腕を支配する神経群)と血管(鎖骨下動脈・鎖骨下静脈)が通るために、首こりで斜角筋が硬くなると圧迫するのです。しかし、これらはレントゲンに写りません。ですから病院でレントゲン検査をしても異常なし、となります。肩こり・首こりの重症の方が、腕や肩甲骨周囲に放散する不快な症状を自覚して、病院で検査しても異常なしとされ、病院で原因不明とされるのは、これが理由です。例えば不快な症状のひとつに手の冷えを感じるケースがあります。これは、血液の通路である血管がコリにより元詮をされている状態なので、末端を温めても温めても改善ません。病名として胸郭出口症候群の一つともいえますが、胸郭出口症候群を起こす原因は、肩こり・首こりだけではありません。
胸郭出口症候群が疑わしい場合は、まずは整形外科にて骨や内臓の問題(特に頚椎の状態ですね)をチェックしていただき、異常がないという事が確認されてから治療を開始する事をご推奨いたします。というのも、シビレや冷えなどは神経系・循環器系の病気が隠れている可能性があるため、軽視はできないからです。
特に目立った異常が見当たらない、という事であれば胸郭出口症候群として治療を開始することになるのですが、胸郭出口症候群の治療は単にマッサージや鍼灸、電気・温熱療法を行えば治るかというとそうではありません。これがけっこう複雑で患部だけへの治療ではその時はよくても改善には向かわないのです。
もちろん、まずは緊張が高まっている斜角筋を中心とした首の筋肉を弛める必要があります。筋肉を緩めた後、首に負担のかからないようにする筋力強化が必要となります。
胸郭出口症候群になりやすいのは、痩せ形・なで肩の女性が多いです。そのためその多くは筋力が弱いがために首周囲へ負担が強いられてしまうという背景があることが多いです。つまり筋肉を弛めたあとに筋力強化が必要なのです。さらに、その筋力強化は単にダンベルや重りをもって筋肉を肥大させる運動ではなく、体を効率よく負担がするないように動かすことができるようにインナーマッスル(深部の筋肉)であったり、体幹とよばれる胴体部分の筋肉を活性化させる必要があります。「活性化」と表現したのは、単に筋肉をつけて「マッチョ」になることが良いのではなく、あくまでも負担なく合理的に体を動かす事ができるようになるのが目的なので一概に筋力トレーニングといってもその中身が全く異なるからです。女性でいうと痩せすぎていない「健康美」、男性でいうと「細マッチョ」と呼ばれる状態をイメージ→デザインして、体造りを行います。繰り返しとなりますが、治療としての意味での筋力強化に、重量物を歯を喰いしばって持ち上げるようなハードなトレーニングは必要ございません。
胸郭出口症候群になりやすい方を上記であげましたが、あくまでそれは「教科書的になりやすいといわれている例」にすぎません。実際にはデスクワーク中心の男性にも多く見られます。たとえ体重が多くても、筋肉量が多いとは限りませんので個人的には発症しやすい例として「痩せ形」と表現する事に疑問をもっている次第でございます。話が少しそれましたが、そのため「首肩こり」「(常にではないけどたまに)手にがしびれる」「手が冷えやすい」という事に心当たりがある方は、本当に症状が重篤になる前に一度整形外科にて診ていただき、MRIやCTといった検査を受けてください。ヘルニアや頸椎症の可能性があります。ヘルニアというと腰のイメージが強いですが、腰も首も背骨という意味では同じです。首のヘルニアは、頸椎椎間板ヘルニアといいます。
整形外科での検査で異常が無いようでしたら、整形外科での治療の範疇ではないということになります。問題は、骨ではなく筋肉です。是非、軽症のうちに治してしまいましょう。胸郭出口症候群の治療には、西洋医学的な解剖学に則って筋肉と動作に対しても治療が必要となりますので、基本的には肩こり・首こりを治すと同義とお考えいただいて良いです。
「整形外科に行ったあとどこに行けばわからない方」は、乱文でございますがこちらを参考にしていただけましたらと思います→→『どこに行けば肩こり、腰痛は治るの?治療院を選ぶ基準が分からない!という疑問に答えます!』
A首こりによる自律神経の症状
首には上神経節・中神経節、星状神経節という自律神経(交感神経)のツボのような要所が存在します。
これらが首こりによって、圧迫刺激されることによりバランスを乱し、偏頭痛や吐き気、めまい、睡眠障害といった自律神経失調症状が引き起こされます。
この神経のツボ(交感神経節)は左右一対あり、数珠のように首から腰まで背骨の際を一つながりになり、交感神経幹という組織を形成します。そのため、それらが不調となると肩甲骨や背中の不快感にもつながります。
さらには自律神経への影響として血圧の変動といった循環器領域や各内臓機能も不安定となり、イライラや情緒不安定などの精神症状にもつながります。
また、迷走神経という副交感神経も脳から出て首の筋肉間を通って内臓へと下降していくため首こりにより不要な刺激を受けることでバランスを乱し、内臓諸機関の機能を乱します。
首肩こりと自律神経の関係を調べていくと、自律神経が乱れるという所までは同じだがつきつめると交感神経に着目してる説、と副交感神経に着目している説がありとてもわかりにくいと思います。つきつめて調べていらっしゃる方の中には「いったいどっちなんだよ!!」と混乱している方も少ないないと思います。実はこれらは表裏一体でシーソーのように均衡を保っており、一概にどちらか一方のみといういいきれないというのが実情なのです。首肩こりにお悩みの方は元々精神的ストレスを抱えていらっしゃる方もいますし、首肩がつらくてストレスとなってしまっている方もいます。天候など気圧の影響を受けやすい方も自律神経は乱れやすい体質といえます。このような方々は自律神経のシーソーのバランスがとりにくく、片方へ傾いたら戻れなくなってしまったり、戻ろうとしたら戻りすぎてかえって反対に傾いてしまったりとしてしまうわけです。これがいわゆる「自律神経が乱れた状態」となります。つまり、自律神経を考える場合、対をなす交感神経と副交感神経がどちらか一方が働いてもう一方が働かなくなるいうように絶対的に変化するのではなく、あくまでも相対的なものなのであるとう事を頭にいれていただきまして、どちらか一方に着目するのではなく、ある事象が起きることによって双方に影響が出る事があり、それは個人差があるという事をご理解いただきたいと存じます。そのため当記事でも首こりによって交感神経・副交感神経療法への影響をご紹介させていただきました。
このように首こりは悪化・長期化すると自律神経系の異常をきたし全身症状へと移行していきます。 (交感神経と副交感神経を合わせて自律神経といいます)
肩こりは主にその局所のつらさに留まる一方、首こりは高い頻度で全身症状へ移行してしまうため、首こりのほうがつらいと感じる方が多い傾向にあるようです。
病状は
肩こりから首こりに移行するパターン
首こりの症状として肩こりを感じるパターン
がありますので見極めが大切です。
(A)は放置すると首こりへ移行してしまう可能性があるため、悪化しないためのケアを行うか、この時点で治してしまえば問題ありません。
(B)はのんびりしているとどんどん悪化していってしまうので早急に集中的な対処を推奨します。
これは多くの肩こり・首こりの患者さんを診てきた治療家としての経験的なものですが、「施術をしてもすぐに元通り」という方は首こりが原因の方が多いようです。
「首こり」と「肩こり」は似て非なるもの、この見極めはとても重要です。
肩こり・首こりと聞くと気軽に感じるかもしれませんが、それらは体からの悲鳴です。肩こりや首こりを治すということは、つらい症状を引き起こしている原因をひとつひとつ解決することです。つらい部分の症状を緩和しても再発するだけで、薬、お店、病院に通い続けることになるだけです。時間やお金がかかるだけでなく、厄介なことに徐々に悪化していきます。
ですから肩や首の凝りの治療をお受けになる際には、しっかりと見極めをしていただき、最適な対処を受けていただきたいと思います。そのためには、治療院選びがとても重要になります。
どこに行けば肩こりは治るの?
治療を行なう人は、患者さんに対して、まずはご自身の体が”どのような状態”で”何が起こっているのか”を知っていただく、理解してもらうように分かりやすく説明する義務があると思います。そして、患者さんも、説明をスムーズに理解するために、ただしい知識を身につけておくと、よりよい治療が受けられることでしょう。
重要なことですので、繰り返し申し上げますが、肩こり・首こり・腰痛の治療でもっとも大切なことは、症状の見極め、原因の究明です。これを間違えると、どんなによい腕を持った医師・治療家でも治すことはできません。
マッサージ業界では、ゴッドハンドと呼ばれる(自称?)人がもてはやされますが、つらい症状を緩和するだけなら、ある意味誰でも出来るといえます。症状の緩和は、治療そのものではございません。治療を行なう上で最初に行なうことですが、むしろ治療の前段階にあたるものです。
本当の意味で腕のいい治療家というのは、つらい症状の原因を正確に把握して、その人その人にあった適切な治療ができる人です。
こちらにさらに詳しく書きました →→ 首こり・自律神経失調症・精神的不調の関係性(肩こりと首こりでは、なぜ首こりの方がつらいのか)
首こり、自律神経失調症、精神的不調の関係性(肩こりよりも首こりの方がつらい理由。首こり対処方法。)
はじめに当記事は首こりがうつ病、パニック障害、不眠などの原因だと関連づけるためのものではございません。
首こり病、首のこりを治せば、うつ病やパニック障害などの精神疾患や自律神経失調症など、西洋医学的に対症療法とならざるを得ない症状が治るという話を耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。これには、医学的根拠はなく、ありえません。(詳しくは下記にございますが、原因のよくわからない不定愁訴は単一ではなく様々な原因が複雑に絡みあって生じるため、ひとつを解決したら良くなるというものではないのです。)
心底お悩みで藁をもつかむ思いの方には申し訳ございませんが、原因のよくわからない症状は「〇〇を治したら治る」という単純な図式では解決できないものなのです。
確かに首こりに付随して、西洋医学的検査に出ない数々の不定愁訴が出現する事はありますが、この場合、あくまでメインとなる症状は「首のこり」です。当院は、あくまで首のこりを治す治療院ですので、ご留意いただきたいと存じます。
首こりをご自覚されている方で以下のような状態に心当たりはありませんか?
連休で体を休めても、いつもより多く睡眠をとっても一向に疲れが抜けないし首・肩の具合が回復しない・・・
体を休めようとしても緊張が抜けずに休まらない・・・
頭痛がする・・・
胃腸の調子が悪い・・・
良くないとわかっていてもイライラしてしまう・・・
もし、このような状況があてはまるようであれば、単純な首こりではなく、慢性化し全身症状へと波及してしまっている可能性があります。
悩ましい首こりの原因とは
一般的に肩こり・首こりの原因は筋疲労や血流、姿勢、骨格のゆがみなどと解釈されている場合が多いですが、実際は非常に複雑なんです。
まず、肩こり・首こりの原因は大きく3つあります。
原因@ 解剖学的な問題
筋肉バランス、骨格、姿勢、動きなど主に体の構造面
原因A 神経生理学的な問題
自律神経、運動神経(脳と筋肉の命令系統)など主に体の機能面
原因B 心理学的な問題
ストレスやメンタルバランスなど主に精神面
どの要素からスタートとなるか、どの要素が主な原因となるかは個人によって違いがあるのですが、いずれにしてもこの三つが複雑に絡み合って慢性的な症状が出現します。
[例1・解剖学的な問題からスタートする場合]
長時間のデスクワーク・不良姿勢などで首肩の筋肉が疲労する → コリが神経を圧迫して頭痛を招く→つらさや痛み、コリが自律神経を乱す(交感神経優位となる) → 全身の緊張が高まりリラックスできなくなる → 体を休めようとしても休まらなくなる → 体だけでなく精神も休まらなくなる → いくら施術をうけてもすぐに元通り・・・
[例2・神経生理学的な問題からスタートする場合]
天気や気圧など環境の変化で体調が悪くなりやすい → 自律神経が乱れやすい → 交感神経が優位になる → 心身共に緊張しやすい、イライラしてしまう、偏頭痛になりやすい、胃腸の調子が慢性的に良くない → 苦痛から体の硬直を招き、不良姿勢となる → 首コリとなる → 筋肉の緊張や痛み・コリがさらに自律神経のバランスを乱し状態を悪化させる・・・
[例3・心理学的な問題からスタートする場合]
仕事や日常生活など心理的にストレスがかかる状況 → 交感神経が活発に働き続ける → 自律神経が乱れる → 首から背中にかけて交感神経幹が存在するため、筋緊張が高まり血流も悪くなる → コリ感や痛みの出現 → 痛み・コリ・不快感によって良い姿勢がとれない → 胃腸など内臓の調子も良くない → まとわりつく不快な症状がさらにストレスとなる、常につらい状態で対症療法をしてもすぐに元通りとなるためそれもストレスに・・・
首のコリ・首の痛みなど慢性的な不快感は、それを伝える神経回路の性質上、情動や感情に影響を及ぼします。精神状態を悪化させ、自律神経を乱すことにつながります。
http://www.carenet.com/report/series/orthopae/pain_practice/14.htmlから引用させていただきました
「肩こり・首こり」という体のハード面の問題が慢性化する事で、精神や自律神経というソフト面に影響を及ぼし、再び筋肉・血流・内臓というハード面の不調を生む事となります。
慢性的な痛み・苦痛は情動に影響します。あまりイメージがわかないかもしれませんが、慢性疼痛を心療内科で診ることはめずらしい事ではありません。肩こり・首こりが心療内科の範疇として扱われ、デパスなどの抗不安薬が効果的な理由は心理的要素や自律神経の影響が深く絡んでいるためです。
このように、上記原因@〜Bの三つのどれからスタートするかは個人差がありますが、いずれもマイナスに作用しあって負のサイクルを形成してしまいます。
軽症の方は疲れたなと思った時に温めたり軽く揉んだりすればすぐ良くなりますが、重症の方・慢性化してしまっている方は一時しのぎにしかならないと思います。軽症の方は原因@の解剖学的な問題の場合であり、後者は三つの原因が強く絡みあってしまっています。つまり、負のサイクルが生じてしまっているか、否かの違いです。
この負のサイクルが形成されてしまっているからこそ、「いくら対処を行っても一向に前に進まないだけでなく、年々悪化していく」状態となってしまうのです。
当院では、原因の特定できない様々な不調(不定愁訴)を安易にストレスのせいにすることは禁じております。
しかしながら、心身相関という言葉があるように人間である以上「精神」「自律神経」「解剖学的要素」は密接に関係しています。
肩こり・首こりは直近で生命の危機が及ぶことがない故に軽視されがちです。しかしながら慢性し負のサイクルが出来上がってしまっている方の生活はとてもつらい状態です。
そのため、単純に骨格のゆがみや姿勢・部分的な血流といった解剖学的要素だけでなく体を総合的にとらえて対処をする必要があります。
冒頭でも申し上げましたように、当記事は首こりとうつ病・パニック障害などを関連づけるためのものではございません。ネット上の治療院の宣伝文句には「首コリを治せばうつ病やパニック障害が治る!」とありますが、これには多々疑問が残ります。確かに精神疾患をお持ちの方は首コリを自覚されていらっしゃる場合が多いです。一方、首こりがつらくて精神面に影響が出てしまうこともあります。しかしながら、精神疾患をお持ちの方にとって首こりはあくまで症状のひとつにすぎないので、首こりを治したら病が治るというのは根拠もありませんし、あまりにも軽率すぎます。このような無責任で軽率な宣伝広告は精神疾患に苦しみ、藁にもすがる思いの患者さんに対して失礼極まりない事です。そのため、当記事ではあえて「精神的不調」という表現をさせていただいております。原因と結果、病気の本質と症状などを混同せず、きちんと整理する必要があるのではないかと筆者は考えております。
肩こりと首こりでは、なぜ首こりの方がつらいのか?
肩こりの専門家とされる整形外科医は、肩こりは首こりである、としますが、その違いに言及することは稀でしょう。たしかに肩こりの原因の多くは首の筋肉です。ですので、肩こりと首こりは、よく混同されますが決定的な違いがございます。首こりと肩こりの違いは神経症状の程度の差にあります。
特に首こり・首周囲の痛みを自覚されていらっしゃる方は自律神経失調症も併発しやすい傾向にあります。反対に、自律神経失調症の方は首こりも自覚している場合が多いです。
これは私の経験論というだけではなく、100年以上の歴史があるイギリスのJRSM(Journal of the Royal Society of Medicine)という医学雑誌にも、首の痛みと自律神経失調症の関係性を示した文献[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9771493]が掲載されておりました。
上記文献より引用させていただきました
(当文献はアンケート調査としては対照群数が少なく、被験者の主観をまとめたものであり、メタ分析されたエビデンスレベルの高いものではありませんがひとつの根拠として示させていただきます。)
首と自律神経の深い関係を示す3つの根拠
根拠その1
解剖学上、首と自律神経は密接な関係にあります。頚部には交感神経の重要な中継地点である上・中・星状神経節や、副交感神経である迷走神経が狭いエリアに存在しています。
首の筋肉が硬くなること(首こり)で二つの自律神経に物理的負荷や血流障害が起こり、正常な機能を全うできなくなり自律神経失調症の症状が出てします事が考えられます。
根拠その2
頭部の感覚を担う大後頭神経・大耳介神経・小耳介神経は頚椎から出て、首の筋肉の間を貫き上部へ走行します。首の筋肉が硬くなり、これらの神経を圧迫することにより、後頭部や側頭部の頭痛を招くこととなります。
根拠その3
上述しましたが、自律神経の乱れや頭痛など慢性的な苦痛によりイライラや不眠、うつ症状など精神的な症状にもつながってしまいます。
このように、自律神経失調症症状や頭痛が発生しやすいという点、そして精神症状の度合いからして肩こりと首こりを比較すると首こりの方がつらいと感じる場合が多いです。
読者様のうち、首こりだけではなく、イライラや過緊張といった症状・胃腸の不具合なども出ているようであれば、その原因はゆがみや血流だけでなく、他の要因も関与しており、少なくとも軽症ではない状態と推測できます。
自分でできる対処方法について
最近では「首こり完治」「首の痛みを自分で治す」などといった内容のDVDや本が発売されています。恐らく当記事の読者様は肩こり・首こりがつらいという事で市販薬や湿布、漢方をはじめ、マッサージやストレッチ、温熱療法などは既に様々行ってきたことと思います。
しかしながら楽になるのはその時のみか変化無しでしょう。世の中で「効く」といわれていることは、全て一時しのぎだったと思います。
読者様は非常にお困りだからこそ、調べ、お読みでいただいているものと認識しています。
そのため当記事は、よくある一時しのぎの解消法をご紹介するためのものではありませんし、そのような方法を試されてダメだった方がお読みいただいているものと認識し書いております。
これらをふまえ、本当に親身になって実際の事を考えると、インターネット・テレビで紹介されているストレッチや体操、町の簡易的なもみほぐしや整体・カイロプラクティックなどでどうにかなるのは原因@の状態方で、つまりは軽症の方のみです。
原因@ABの要素が複雑に絡みあってしまっている重症の方は、残念ながら、セルフケアや簡易的な処置では一時しのぎであるだけではなく、いつまで経っても良くならない焦りやイライラが返って悪化を招き、先に進まず同じことを繰り返し行うことで慢性化させてしまいます。
軽症ではない方が根本的に改善したいようであれば、きちんと原因と状況を分析して、それに対する「治療」が必要です。
とはいえ、自ら行うことが全くないかというとそうではありません。
肩こり研究所が推奨するセルフケア方法
よくあるツボ押し・ストレッチ・体操などの解消法は、コッた部分に刺激を与えてほぐすことを目的としています。もうおわかりだとは思いますが、これでは焼け石に水ですしいくら続けても先に進むことはありません。
コッている部分はストレッチしても伸びませんし、無理をして伸ばすことによりかえって傷める可能性もあります。首をいくらストレッチしても改善されることはありません。慢性的にコッいる部分は単なる筋疲労ではなく、神経系の不具合が生じています。
理想としては、第一に体の機能をつかさどる、自律神経のバランスを整える生活を意識していただき、それに加えて日頃に姿勢や筋肉バランスを整えていくことが良いのです。
セルフケアでは、コッている部分・つらい部分へのアプローチに執着しないことが大切です。
自律神経が乱れやすいのは体質的な部分はもちろんありますが、特にマイナス要素は「不規則な生活」と「ストレス」です。
今すぐ実行できる対処としては、睡眠のリズム、食事のリズムはじめ、日常生活のリズムを規則正しくすることです。自律神経は身体が不安定な状況となると、それを安定させるために活発に働き、それが慢性的になると負荷となります。
1)生活リズムに対する工夫
睡眠に関しては「長時間寝れば良い」「〇時間寝れば良い」というのではなく、できるだけ就寝時間と起床時間を一定にすることが自律神経にとって負担が少なくなります。極端なムラを無くすことが大切です。
例えば、日頃睡眠時間が少ないからといって休日は昼間まで寝るのではなく、あえてリズムを崩さずに起床し、昼寝や休日は早めに就寝し睡眠時間を確保する方が良いです。
食事においても、一日三食きっちり食べることが重要なのではなく、なるべく同時刻にムラなく食べる事が自律神経には良い影響を与えます。嗜好品を無理に制限せず、栄養素や食材こだわったり、義務的に食べるのではなく、何よりも、食事を楽しむという事が重要です。
2)ストレスの対処について
生きている以上、ストレスを無くすことは不可能ですが、なるべくそれをため込まないようにすることは可能です。独自のストレス解消方法をお持ちの方はそれを意識的に実行していただくことが良いのですが、慢性的な不調を抱えていらっしゃる方は、その方法を持ち合わせていらっしゃらない場合が多いです。
レジャーにでかけると体は疲労しますが、メンタルの休息になるというのは良くあります。日頃の診療でも、体の休息とメンタルの休息を別個に考え、オフを管理する術を身に着けることを私はご推奨しております。
最適な方法は人によりけりですが、ひとつの手段として、適度な運動は効果的です。
ここでのポイントは少しでも良いので「汗」をかくことです。汗をかくことによりストレス解消や自律神経を安定させる効果が期待できます。
どんな運動・メニューを行えば良いか?というよりは、この場合は無理なく続けられる事なら何でも良いです。数回で終わるのではなく、あくまで習慣として細く長く続けられる、楽しく続けられる事が一番肝心です。
例えば、好きな音楽を聴きながら20〜30分早歩きするのも良いです。その準備運動の際に腕を頭上まで回すと肩甲骨のストレッチ効果となり、首こりに関連する筋肉に対して良い影響は期待できます。
また、入浴等で汗をかくよりも、運動によって体を能動的に動かすことによる発汗のほうが効果的です。筋肉の収縮と弛緩が交互に起こるため、筋ポンプ作用により全身の循環も促され、ムクミ対策にもなります。
適度な疲労を促すことにより、自律神経失調症の特徴である「寝つきが悪い」「眠りが浅い」などの睡眠に対する症状へも良い影響が期待できます。
治療ではなく、「ストレス解消=リラックス」という目的であればリラクセーションに行くことも良いとは思います。半身浴・温泉・スパ・アロマなどもリラックスを促しストレス解消の手段となります。
しかしながらこれには注意点もあります。リラクセーションと治療は異なるという点です。クイックマッサージや整体に行って、肩こり・首こり解消を求めてはいけません。
また、たとえ気持ち良かったとしても、つらい部分をひたすらグイグイ押したり、関節をボキッとするような施術は返って状況を悪化させる可能性が高いので絶対におすすめできません。
リラクセーションの場合はあまり強くない力で全身をまんべんなく行う方法が良いです。手や足への刺激は副交感神経を優位にするからです。リラックスは治療において重要な要素のひとつではありますが、治療ではありません。
業界の傾向として、リラクセーションを行う店がさも治療とみせかけて肩こり・首こり解消をうたう場合が非常に多いです。そのような中、リラクセーションと治療を明確に線引きし、クライアントにお伝えする店は信頼度が高いといえます。
もし適度な強さで全身をまんべんなく行う施術で効果を実感できない場合は、たとえ強く行ったり、その後その施術を続けても状況が変わることは考えられません。そればかりか慢性化し、悪化していく路をたどることとなります。
話が少しそれてしまいましたが、ツボ押しやストレッチなどセルフケアは数々の対処方法があるとは思いますが、それらのほとんどは不調となってしまった部分の対処法となります。
「不調になってしまってから対処する」のではなく、日頃から「自律神経に負担の少ない」「できるだけ乱れにくい」生活をし、全身へ目をむけることが肝心です。
(姿勢や筋肉バランスにおいてのセルフケア、筋力トレーニングはお体を拝見させていただかないと改善の見込みのある方法をご提案できませんので、ここでは割愛させていただきますことをご了承ください。)
まとめ
この長い文章を最後までお読みくださった読者様は恐らく今まで本当に様々な方法を試してきたものと思います。
そのため、セルフケアをお読みいただいて「規則正しい生活をしろって言われてもそれができないから困ってるのじゃないか。結局我慢するしかないんじゃないか。」と思われるかもしれません。
定期的に運動をしているし、ストレスもさほど自覚していない・・・ でもつらい。
そのような方もいらっしゃると思います。
「簡単肩こり解消マッサージ」「肩こり解消のツボ」「即効性のあるストレッチ」などインターネット上には様々な人が様々な「効果的な事」を提唱しています。しかしながらそれで本当に解消された方はどれくらいいるのでしょうか・・・?
正直に申し上げて、現代人においてセルフケアで全てを解決することに限界があるのもまた事実です。特に肩こり・首こりは気軽に思えて実は非常に複雑です。
とはいえ、根本を理解し、それに対する手立てを行うことは全く無意味ということではないと思います。
もし、「今のライフスタイル上、自分ではどうにもならない」「自分で頑張って色々やってみたけれど一向に改善されない」。しかし「なんとかしたい!」という事でしたら治療をご検討いただけたらと思います。
まずはセルフケアで対応し、それでだめなら専門家へ相談を。治療はそのような方のためにあるものと考えております。
当記事が、迷走して困ってしまっている患者さんのヒントとなりましたら幸いです。
首ポキ解消法の真相(首をポキポキ鳴らすのは本当に危険なのか?脳血管障害や死亡リスクとの関連性)
このブログ記事は専門用語が多く、読みづらいかもしれません。Q&Aの会話形式で分かりやすく解説した記事を別途ご用意しました。 首ポキは肩こり解消になるの?ネット上やテレビ番組で喧伝される噂や説に対する皆様の疑問にお答えします。まず、最初に上記のリンク先の記事をお読みいただければ、幸いです。
肩こり解消のために、ついつい首をポキポキ鳴らしていませんか?
デスクワークなどで、前傾姿勢を長時間続けますと、首や肩が疲れてしまいます。ですから、首を回したり、伸びをしたりする人がほとんどではないでしょうか。その際に、首の関節をボキボキ鳴らす人も少なくないでしょう。関節を鳴らすことが気持ちいいと感じる方もいらっしゃいます。このような動作は、たしかに一瞬、楽になったと感じるかもしれません。しかし、コリを解消する効果は残念ながらありません。凝った→ほぐす、の繰り返しでしかないのですが、これは実は悪循環です。
首をボキボキならすことを「首ポキ」と呼ばせていただきます。首ポキが、実は危険な行為である、ということが一部で話題になりましたが、情報が錯綜しています。首をよく鳴らす人は脳卒中になりやすいという話を耳にした方も少なくないと思います。肩こり、首こりの専門治療を行っている者として、詳しく解説したいと思います。
肩こりは、女性の体の悩み第1位、男性では第2位です。
厚生労働省発表の「平成22年 国民生活基礎調査の概況」によりますと、国民の13%、約1200万人の方が肩こり・首こりを訴えています。以下の表の有訴者というのは自覚症状をもっている人を意味します。
出典:厚生労働省国民生活基礎調査
肩こりは男性よりも女性に顕著で、肩こりで悩んでいる人は、なんと腰痛よりも多いのです。
「首ポキ」は患者さんから受ける質問、第1位です。
当院は肩こり・首こり治療を専門としておりますが、中でも患者さんからの質問で特に多いのが「首ポキ」です。
慢性的な肩こりや首こりにお悩みの方は少なくとも一回は首をポキっと鳴らしたことがあるのではないでしょうか?または、鳴らす目的はなくとも、首を曲げていたらポキっと鳴ってしまった経験がおありだと思います。
また、街中に溢れている整体やカイロプラクティックなどで施術を受けると、決まって「骨のゆがみ」を指摘され関節をポキポキと関節を鳴らされます。
インターネット上を調べてみると、どれも出元が同じであろうと考えられる引用文章ばかりで「首を鳴らすと死ぬ」「1トンの圧力がかかる」などといった情報が流れており医学的な立場からの解説が乏しいです。「とりあえずは危険なのではないか」という認識が広まってきているようですが、いざつきつめた解説はどこにもされていないのでまとめてみました。
そこで今回は「首ポキ」について医学的な見解と解説をします。かなり長文となっておりますので、時間が無い方は色の部分だけを追いかけていただいても良いかもしれません。
首ポキに纏わるウワサを医学的に検証
@ 関節ってなぜ鳴るのでしょうか?
関節の隙間内の空気が、風船が割れるような感じで鳴る、というイメージをお持ちの方が大半だと思います。
そうではなく、実は・・・と答えを述べたいところですが、残念なことに、まだ確定的なことがわかっていないのです。
しかし諸説ある中で一番有力なのが、関節内にキャビテーションが生じるため考えられています。キャビテーションとは液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象です。余談ですがこの現象は19世紀末に、高速の舶用プロペラが、予想された性能を発揮しなかったことから発見されました。
人体では、関節は骨と骨が関節包という袋のような物に覆われていて、関節腔という僅かな隙間があり、そこには滑液という一種の潤滑油で満たされています。普段動かさない範囲に関節を曲げたり伸ばしたりすると、関節腔の容積が増し、陰圧となり、結果滑液が気化し空洞が発生します(キャピテーション)。そして下がった圧力を戻す働きが作用し、反対側から滑液が一気に流入して空洞が消滅すると同時に滑液に溶けていた窒素や二酸化炭素等の気泡が発生します。これらが消滅するときの衝撃により音が発生し、関節内で共鳴することであの「ポキッ」という音が鳴るのです。
出典:http://www.wikihow.com/Crack-Your-Neck
つまり「ポキッ」と鳴る音は、骨や軟骨そのものが摩擦を起こすことで鳴っているのではないのです。なので「ポキッ」と鳴った後は通常数十分ほど時間が経たないと鳴りません。
肩や膝を動かすと常時パキパキ・ゴリゴリ・ジャリジャリと音がするのは関節の適合性や安定性が悪いがため発生する音なので別物です。 以下はキャピテーションにより発生する「ポキッ」を題材に話を進めます。
A 「1トンの衝撃」・・・鵜呑みは禁物です!
様々な所で、首の骨を鳴らすと「1トンの衝撃」がかかると言われています。しかしこれには一考が必要です。
まず、「トン」は重量の単位であり衝撃力を表す単位ではありません。衝撃とは物理的には急激な速度変化の度合いのことをさします。
速度変化の大きさ(加速度)の単位は[m/s^2]が基本ですが、衝撃の場合は重力加速度との比をとって[G]が使われます。衝撃力はこの加速度に物体の質量を乗じたもので単位は[N]が基本ですが、重力加速度で割って[kgf]やこれを1000分の1にした[重量トン]が使われることが多いのです。
つまり、衝撃力を表す時に、直接その重量が負荷としてかかるわけではないのに慣用的に「〇〇キロの衝撃」や「〇〇トンの衝撃」と表現されることが多いのです。衝撃力には時間の概念が必須なため、力が作用する時間次第でがらりとイメージが変わってしまいます。
これらをふまえると、まず重量としての1トン(1000kg)が首にのしかかるというのは間違いです。仮に1トンという数値が本当だとして、衝撃力に換算にしても1000分の1秒で瞬間的に1kgがかかったら1トンの衝撃となるので、1トン(1000kg)の重さがのしかかるというイメージは間違っています。
そのため首ポキッにより1トンの衝撃がかかり即死亡したり、即重度の障害を生むことは考え辛いですが、上記の計算では少なくとも1キロの負荷はかかっていることになるので、例え1キロだとしても組織の微細な損傷は少なからず生じるものと考えられます。
しかしながらそもそも、この「1トンの衝撃力」という根拠を調べてみても出所がわからず、クラッキング時の衝撃力を正確に計測したデータや実験についての文献が見つからないため、「歪みが原因の理論」と同様、マーケティングの一貫で患者さん方に恐怖を植え付けるためにどこかの治療家が言い出したことなのかもしれません。
とはいえ、ものすごい破壊力のある衝撃が加わるわけではないものの、「ポキッ」は空気の破裂という現象により生じると考えられているため、その程度はわからずとも少なからずの衝撃があることには変わりはありません。関節内は非常にデリケートな部分であるが故に関節包という袋で守られていることもあり、小さな衝撃による組織損傷も十分に考えられるため軽視はできません。
B 首ポキで死んでしまう可能性について
[1] インターネット上では「首をポキッと鳴らすと首に1トンもの衝撃が加わり、頚動脈破裂したり脊髄損傷が起こり死亡したり半身麻痺となる」などと書き込まれています。
果たしてその真相は・・・
まず、「1トンもの衝撃・・・」というのは≪2≫で解説しました。軽視はしてはいけませんが、みなさんがご想像する“1000kgの重量がのしかかる”という意味ではなく、即刻首の骨が折れるような負荷ではないことはお伝えさせていただきました。
[2] 続いて「頚動脈が破裂したり脊髄損傷が起こり・・・」という点です。
外から大きな力が加わり、首を傷めることによって生命に影響を及ぼすのは、
@延髄(えんずい)損傷 …
脊髄と脳の移行部に存在し、呼吸や脈拍など生命維持に不可欠な機能を支配する中枢神経です。中枢神経と末梢神経を合わせて神経系といい体の機能や動きを調整します。中枢神経とは神経系の親玉のことです。例えば絞首刑では首を縄で絞めて呼吸できないようにするのではなく、落下時の衝撃で上部の頚椎を脱臼骨折させ延髄を破壊することを行います。延髄が破壊されたら人間は生きることはできません。
A頚髄(けいずい)損傷 …
頚椎、つまり首の骨の中に納まる中枢神経のことをいいます。より頭に近い上部の頚髄(第1〜4頚髄)と、下部(第5〜7頚髄)を損傷するのでは生命維持という点で大きな差があります。上部の頚髄は横隔膜を支配するため、損傷すると自分で呼吸ができなくなり人口呼吸器無しでは生きることはできません。下部の頚髄ではその程度により、動きだけでなく様々な内臓諸器官の機能不全がおこりますが、基本的には首から下が麻痺します(損傷頚髄以下の神経伝達が途絶えて運動が不可となります)。
しかしこれらは交通事故や極限状態のスポーツによる日常生活では計りしれない衝撃が加わった際に、頚椎(首の骨)の脱臼骨折が起こり、その中に納まる延髄や頚髄が損傷します。「首ポキ」と交通事故などの衝撃をくらべると・・・答えは明らかです。お年寄りや、重症の骨粗鬆症を患っていない限り、自らの力でそこまで首の骨に負荷を与え、内部の中枢神経に負荷を与えることは不可能です。
ただし、カイロプラクティックや整体などでしばしば行われる首をお急激に動かす手技には危険が潜みます。
そのような手技を受ける際に患者は仰向けで脱力し筋肉や靭帯が緩む肢位、つまりとても無防備な状態で動かされることとなります。この状態で無理な力が加えられる事により、頚椎の脱臼骨折が起こる可能性は十分に考えられます。“首ポキ施術”による事故はこのような可能性があるので、他人によって力を加えられて行うのは避けるべきです。そのような危険をおかしてまで“首ポキ施術”を行っても、お悩みの症状は解決しませんし、「首ポキ」をしなくても治すことは可能だからです。
[3]
「頚動脈が破裂する・・・」においても解剖学上明らかに矛盾があります。
首に手を当てて拍動を触知できる、みなさんがご想像するいわゆる頚動脈は、首の骨・関節とは離れた部分にあます。また、動脈は生命活動に重要な血液を循環させているため非常に頑丈な構造となっています。“いわゆる頚動脈”の太さはタピオカの吸えるストローくらいですが、触った感じは例えるならば庭の水まきをするホースをご想像下さい。あの硬さ・弾力が主要な動脈です。私は実際に人体解剖にて触知しましたが、引きちぎろうとしてもびくともしませんでした。それほど動脈とは強固な構造なのです。
なので「首ポキ」の衝撃の程度も前述しておりますが、即刻頚動脈が敗れる心配はありません。また、百歩譲って「首ポキ」が動脈を損傷可能な衝撃を持ち合わせていたとしても“いわゆる頚動脈”は首の骨の関節内にあるわけではないので、その衝撃をまともに受けるわけではありません。
しかし!!軽視はできません。
首の主要な動脈は2つあります。一つは“いわゆる頚動脈”と言われる総頚動脈です。総頚動脈はノド仏のあたりで外頚動脈と内頚動脈に分かれます。その名の通り、外頚動脈は主に頭部の表面部分を栄養し、内頚動脈は頭の深部、つまり脳を栄養します。この総頚動脈からの流れは上記で説明しましたように、首の骨とは離れた部分にあるため首ポキ衝撃による影響は考え辛いです。しかしあまり知られていない首のもう一つの主要な動脈が椎骨動脈が論点となります。
出典:http://www.painneck.com/blog/neck-cracking-and-neck-popping/
椎骨動脈とは総頚動脈(内頚動脈)とは別ルートで脳を栄養する重要な血管です。解剖学的には、左右一対の椎骨動脈は首の骨の中(横突孔)を貫いて上行し、脳に入るとやがて一つに合わさり脳底動脈となり、脳の深部を栄養します。脳底動脈は脳の内部で内頚動脈と合流し脳の中で血管のループ(大脳動脈輪=ウィリスの動脈輪)を形成します。つまり、脳は重要な臓器であるため総頚動脈(内頚動脈)1つではなくサブルートをもって栄養されているのです。
そこで着目するのが、椎骨動脈の走行です。
先ほども述べましたが、椎骨動脈は第1〜第6頚椎を貫いて脳に至ります。つまり頚椎に直にくっついて存在します。≪1≫で解説しましたように「首ポキ」は頚椎の関節での物理現象により起こるため、その衝撃は椎骨動脈に影響を及ぼすことは十分に考えられます。
これまでをふまえて「首ポキ」の血管系への影響を考察と共に以下にまとめてみます。
A)
“いわゆる頚動脈”つまり総頚動脈(内頚動脈)への影響は解剖学的にみて考え辛く、可能性があるとすれば椎骨動脈である。
B) ≪2≫で解説しましたように「首ポキ」による衝撃一撃で血管が破れることは考え辛いが、頻回行うことで椎骨動脈には少なからず影響を与える可能性はある。
C) 首が鳴るためには日常的な可動域を超えて動かすことになるため、首の骨の間(横突孔)というとても狭い通路を通るため、椎骨動脈には過剰は進展や摩擦などの刺激が加わる可能性がある。
D) 衝撃・進展・摩擦=物理的刺激は組織を傷つける可能性があり、血管の内部が傷つくとそこが変性し動脈硬化が促進される。また血栓が形成されやすくなる。
E) 椎骨動脈にできた血栓が何らかの影響で流れた場合、脳に侵入し、塞栓となり脳梗塞となる可能性がある。
補足)上記は動脈のみに着目して解説してきましたが、首の骨の内部を通る椎骨静脈系というのも存在します。こちらは静脈なので心臓へ帰るほうのルートです。静脈は動脈より壁が脆弱なため物理的刺激には圧倒的に弱いです。余談ですが、鍼灸の針では静脈は刺すことができますが、動脈は弾かれて刺すことはできません。この椎骨静脈系は首の骨にまとわりつくように存在するため、B)C)等の負荷の影響は動脈よりも受けやすいです。静脈系で血栓が生じそれが流れると、塞栓症として肺梗塞や心筋梗塞のリスクが考えられます。
首ポキについてのまとめ
キャビテーションによる「首ポキ」は関節の構造が造りだす物理現象であり、関節の形状にも個人差があるため、鳴りやすい方・鳴りにくい方がいるのは確実です。そのため、鳴ること自体は異常ではありませんが長期に渡って常習的に鳴らしたり、無理な力で鳴らすことによる弊害はあります。
上記のように分析してみると、自ら動かした時に鳴ってしまうのは直近で生命につながる問題となるのは考え辛いです。しかしそれが長期間にわたり常習的に行われると血管に影響が出て循環器領域で生命を脅かす疾患につながる可能性は十分に考えられます。こういった点では鳴らす癖がある方は早めに治した方が良いでしょう。
一方、施術の一貫として行われる「首ポキ」においては、それを行うにあたってのメリットとデメリットを考慮すると、上記で説明した中枢神経を損傷するというリスクを抱えてまで行うメリット、つまり施術による効果が考えられません。首ポキ施術をすることによって一生首にまつわる不快な症状が消えるならばまだしも、そうではないからです。したがって、施術の一貫としての安易な「首ポキ」を受けるのは絶対に避けるべきです。
ところで、
なぜ、ついつい常習的に首を鳴らしてしまうのでしょうか?
首を鳴らさなくていてもたっていられなくなってしまうのでしょうか?
それは前回の記事で解説しましたが、重症・慢性化し神経症状としての肩こり・首こりとなってしまっているからです。このように
「常に気になってムズムズしてしまう」
「首を捻じったり 動かさないと いてもたってもいられない」
「無意識のうちにいじっていたり 鳴らしてしまう」
「発作的に急激につらくなる」
「睡眠が充実していなく、朝一が一番つらい」
というのに心当たりがあれば、それは肩こり・首こりの負のスパイラルにはまってしまっているサインです。この状態では放置していても絶対に治ることはありませんし、簡単な施術による“ほぐし”程度ではすぐに元通りとなります。
つらくて我慢できない時にとんぷくとして簡易的な施術を受けるが楽になるのはその時のみで結局つらい状態から解放されることはなく、徐々に悪化していきます。この状態を変えるには「治療」が必要です。
肩こり・首こりは直近で生活や生命に支障がでるわけではありません。しかし放置や適切な処置を行わないことに確実に進行・悪化していきます。是非確実な治療を受けることをお勧めします。
実際に首をボキっとしての危険性は、カイロプラクティックや整体などで首ボキ施術を受けても10万人に一人くらいしか起こらない、と言われています。
しかし「45才未満で脳卒中を起こした人は一週間以内にカイロプラクティックで首ボキをやっていた人がやっていなかった人と比べて5倍多かった」というデータがアメリカ心臓病学会の2001年に出された報告にて示唆されています。
こちらの記事を参照しました→http://stroke.ahajournals.org/content/32/5/1054.full
首ボキ施術のリスクについては、イギリスのブルネル大学(Brunel University)のリハビリテーション研究室の報告によっても椎骨動脈解離や脳血管障害をはじめ重篤な神経疾患への可能性が示唆されているようです。
こちらの記事を参照しました→http://www.brunel.ac.uk/news-and-events/news/news-items/ne_190062
このように首ボキ施術にはリスクが伴うことから、日本では厚生労働省からは禁止するよう促されております。参照:厚労省ホームページ
おそらく・・・ 自ら首をポキッと鳴らしてしまう方は首や肩がどうしてもわずらわしくて、気になってしまい、仕方がなく鳴らしてしまっていることでしょう。
また、首ポキ施術を受けた方、受けている方は肩コリ・首コリを治したくて整体やカイロプラクティックにかかられたことでしょう。
しかしながら、そのような解消方法を行って肩コリ・首コリが治った方はおそらくいないと思います。
百歩譲って、首をボキッとして完治するようならば、行う価値はあるかもしれませんが、現実問題それはありえません。(肩コリ・首こりの原因は”骨のゆがみ”ではないからです。詳しくはこちらの記事で解説しています)
どのような施術を受けるは患者さんの自由ではあるのですが、少なくとも首ポキ施術を受けるにあたって、リスクと効果を比べてお勧めはできません。
自ら首ポキを行ってしまう癖がある方も、それを繰り返すことは何もプラスにはなりませんので、是非意識していただきたいと思います。
体操・ストレッチ・温熱療法など血行改善により肩こり・首こりが解消されない理由 (医学的根拠に基づき神経生理学の観点から解説)
あべこべ体操の効果を検証
首や肩がこる原因は血行が悪いから?
多くの方々が「血行が悪いから肩こり・首こりが起こる」という解釈をしておりますが、以前から私はそれに疑問を抱いていました。
確かに血行不良を起こしているとその部分は痛みや違和感を覚えます。慢性的な肩こり・首こりを自覚している方は、肩甲骨から上部の広範囲にわたって不快感や痛みを自覚しています。その部分を温熱療法により血行を良くする処置を行うと、気持ち良く、一時的には症状が軽減されます。大事なことですので、もう一度言います。あくまで“一時的”なのです。
慢性的な方であれば皮膚温度が戻るやいなや、症状はすぐに元通りとなってしまいます。よって、この場合は温熱刺激により痛みを感じる境界線(疼痛閾値:とうつういきち,Pain Threshold)を引き上げているにすぎません。
肩こり・首こりの症状は筋肉の硬さと必ずしも相関関係がありません。
以下に3つの根拠を挙げます。
筋肉がやわらかくても猛烈な症状を自覚している方がいる。反対にとても硬くなっていても、症状を全く自覚していらっしゃらない方もいる。
筋肉を徹底的に弛緩させる施術を行い、物理的な“硬さ”が減少している状態でも、発作的に症状が出現してしまう方がいる。
慢性的な症状を自覚している場合、その筋肉に対して様々な刺激を加えても、反応性が鈍く、緊張、弛緩共に変化が起こらない(起こりにくい)方が多いという事実。
身近で分かりやすい例でいいますと、猫背などで姿勢が見るからに悪い方でも、全く肩こり知らずの方はいます。逆に、とても姿勢がよく、体のバランスがよいのに、肩こりで悩まれているという方もいます。力学的に良好な姿勢を維持しても症状を自覚する場合もあれば、逆に力学的によろしくない姿勢でも症状が出ない場合もあるということは、ご理解いただけると思います。
そこで私は、仮説をたてました。
丸山太地の仮説
肩こり・首こりの“ジンジンするような痛み、不快感”という症状そのものは、血行不良により蓄積する疲労物が感覚神経を刺激して生じる。
しかし、その根本的な原因は『血行を調整する機能』『筋肉の動きを調整する機能』の異常にあるのではないか?
この仮説を、もう少し具体的に説明いたします。
仮説:『自律神経系の異常』と『運動神経系の異常』の2つが、肩こりの原因である。
まず、血液の流れは、生命を維持する上での根幹のひとつです。血液の流れのことを血流または血行といいます。
そして、自律神経。自律神経という言葉は広く認知されています。自律神経は、常に働いている神経です。起きている時も寝ている時もです。自ら律する神経という名前の通り、人が意識しなくても自ら機能しています。
神経というとイメージは掴めるけど具体的にはよくわからないという方が多いと思います。ごくごく簡単に説明いたしますと、脳や脊髄にある神経(中枢神経)とそれ以外の体の各所にある神経(末梢神経)に便宜的に分けられています。抹消神経も、体性神経と自律神経の2つに分けられます。運動神経というのは体性神経のひとつです。ここで注意していただきたいのが、運動神経という言葉です。スポーツ万能の人を運動神経が良い、と表現しますが、それではありません。筋肉の動きを調整する神経のことを解剖・生理学的には運動神経と呼びます。
血行と自律神経は、密接な関係にあります。血行が悪くなれば、自律神経が乱れます。自律神経が乱れると血行が悪くなります。
ですので
『血行を調整する機能』の異常 ⇔ 自律神経系の異常
が自然な考えだと思います。
さらに、
『筋肉の緊張(硬さ)を調整する機能』の異常 ⇔ 運動神経系の異常
も存在するのではないか?と考えました。
こちらにつきましては当ブログの別記事「鍼灸マッサージ治療裏事情(1) 硬ければ重症か?コリのメカニズムを神経生理学の観点より解説」をご覧下さい。)
この2つを合わせてまとめますと、
慢性的で治らない肩こり・首こりの根本原因は「姿勢が悪い」「筋肉が硬い」「体のゆがみ」「血行が悪い」「冷えている」といった表面的な問題だけではなく、体を調整する“機能の異常”である。
という考え(仮説)に辿り着いたわけです。
『自律神経系の異常』と肩こりの関係性を裏付ける研究論文を発見
この仮説の検証を続けていたところ、自律神経系の異常と肩こりの関係性を裏付ける文献が見つかりましたので今回はそれをご紹介させていただきたいと思います。
名古屋学院大学 リハビリテーション理学部 理学療法科による研究論文 [BMC Musculoskelet Disord
2012;13:146.]です。
この研究が示唆することは
@ 慢性的な肩こり・首こりを自覚している方とそうでない方の首肩の筋肉(僧帽筋)に負荷をかけたところ、両者が共に血行不良が生じ、その差はなかった。
肩こり・首こりの有無に関わらず筋肉に負荷がかかった時は筋疲労が起こる。
A 筋電図所見上、慢性的な肩こり・首こりを自覚している方とそうでない方に筋収縮の様式に差は無く、筋収縮時は、両者は共に筋血流量は増加した。
“慢性化”の決定因子は単純な局所血行障害ではない。
B 慢性的な肩こり・首こりの方は、そうでない無い方に比べて負荷終了後、回復時の酸素化ヘモグロビンと総ヘモグロビンが少なかった(=対照と比較し血行が悪かった)
慢性的な肩こり・首こりの方はコッている筋肉の有酸素性の回復能力が低く、筋疲労の回復が遅い。
C 肩こり・首こりの症状の無い方は運動後に交感神経の活動が亢進したが、慢性的な肩こり・首こりの方は変化しなかった。
運動することにより交感神経の活動が亢進することは正常な機能であり、それにより筋肉内の血流が増加し、筋に酸素や栄養素を送ると共に疲労物質を排除する働きをする。
よって慢性的な肩こり・首こりの方は運動終了後、筋肉内の血流が増加せず、組織が酸素欠乏するとともに各種疲労物質が蓄積しやすい状態となっているため、いつまでも疲労から回復することができない状態となっている。
の4点です。
酸素化ヘモグロビン図酸素化ヘモグロビン解説
総ヘモグロビン図総ヘモグロビン解説
上記文献本文より引用させていただきました。
この論文のまとめ
肩こり・首こりの症状有無に関わらず、負荷がかかると両者は同様に筋疲労し血行は減少するが、負荷がかからなくなった時にいかに血行が回復するかどうか差が生じることとなる。
その原因は自律神経、特に交感神経が適切に働かないことによる。
ということです。
人間であるため、同一動作や不良姿勢を続けることにより限られた部分へ持続的な負荷が加わった場合、そこが疲労するのは正しい生理現象です。 (2リットルのペットボトル3本入った袋を長時間持っていたら腕の筋肉が疲労しパンパンになるのが至極当然のように、体重の約10%(5〜7kg)の重量がある頭部を不合理な方法で支え続けたら、その部分は誰しもが確実に疲労します)
そのため慢性化している方ほど疲労やコリが休息によりリセットされることなく“永遠に蓄積され続けてしまう”ということが重症と軽症を隔てる要素です。
よって慢性化を左右する因子は『血行を調整する自律神経の異常』なのです。
しかしながら興味深いのは、今までは“慢性化している肩こり・首こりの方は交感神経が異常に働きすぎている”という見解が一般的だったにも関わらず、本研究では“交感神経が適切に働かないこと”が要因だとしています。
これらをふまえまして私は、
@自律神経は交感神経と副交感神経が相互に働きあって相対的な優位性により機能を調整するため、慢性的な肩こり・首こりの方はどちらか一方ばかりが優位になっているのではなく、適切な時に適切なバランスで自律神経が作用できなくなってしまっているのではないか。
Aそのため重症の肩こり・首こり患者さん程、頭痛・めまい・吐き気・胃腸の不調・全身倦怠感などといった自律神経失調症の症状も同時に抱える場合が多いのではないだろうか。
と考察しております。
交感神経=ストレスといったイメージがもたれやすく敵視されやすいのですが、筋肉の血行は交感神経により支配されているため、その働きは必要不可欠です。
慢性的な肩こり・首こりを治すためには、単に体のハード面(筋肉・姿勢・骨格・血行など)だけではなくソフト面(機能・自律神経・運動神経・精神など)をまでを視野にいれた治療の必要性が裏付けられました。
一般的には、肩こり解消方法というとストレッチや体操などの筋肉を動かす事や温めることにより、血行改善を図り改善されると認識されています。しかしながらそれで改善される方は極少数なはずです。そのような処置で肩こり・首こりが解消されない理由は、根本原因である自律神経の不調があるからなのです。
疲労が蓄積した時などに、たまに「首肩がつかれたな。もんでほしいな。」と思われるぐらいの方でしたら、体操(ストレッチ)や温熱療法で改善してしまいますが、心底お悩みで藁をもつかむ思いで肩こり解消方法を調べていらっしゃる方には残念ながら効果は無いとお考えいただいたほうが良いかもしれません。
体操やストレッチ、温熱療法によって少なからず自律神経にとって良い反応は起こりますが、慢性的な肩こり・首こりを患っていらっしゃる方はそれだけでは不十分です。しっかりと自律神経を整える治療並行して行う必要があります。
結論
慢性的な肩こり・首こりは、○○秒で出来る簡単な体操やストレッチ、温め(温熱療法)のみでは、完治はありえません。
一時的には楽になるかもしれませんが、治らないので繰り返すことでしょう。すると、だんだん、慣れてしまい、コリが悪化する可能性があります。
気軽に感じる肩こり・首こりですがそのメカニズムはとても複雑で、治すためにはその本質を患者さんご自身にもしっかりと理解していただく必要があります。
YouTubeやテレビでは様々な処置や対処方法、体操などが推奨されています。しかしながら、それらを行っても、根本的には改善されないということ、つまり、コリの原因そのものを的確にとらえられていない可能性があります。そもそも原因は人によって様々です。
簡単に治る体操は、定期的に流行るものかもしれません。雑誌でも特集が組まれることもあるでしょう。それが本当に効果があるなら、誰も苦労しません。肩こり、首こり、腰痛などで苦しんでいる人は増え続けています。これが現実です。一時的な、安らぎ、リラクセーション効果を求める人は多く、それを狙ったビジネスが盛んですが、私は真剣に治したいという強い思いで治療にのぞんでいます。