ヨーガ・スートラ

The Yoga-Sutras of Patanjali　　　　　　　　　　　　　　　　　

参考本

ヨーガ・スートラ: パタンジャリ哲学の精髄　アニルヴィディヤーランカール (著), Anil Vidyalankar

解説ヨーガ・スートラ佐保田鶴治

インテグラル・ヨーガ　スワミ・サッチダーナンダ　　サーンキヤ哲学を理論的支柱として論理を展開している

J.W.Hauer Der Yoga : ein Indischer Weg zum Selbst an Indian way to the self

注釈書　「ヨーガ・バーシヤ」ヴィヤーサ　本多恵・訳

内容

第1章（51節） - 三昧の章　　　　　　　　　三昧章

第2章（55節） - 達成の手段（実修）の章　　禅那章

第3章（55節） - 超自然（自在）の章　　　　自在章

第4章（34節） - 独存の章　　　　　　　　　独存位章

重要なのは第１章　宗教史上最も優れたもの　　　全体の要約　後の３章は補足

解脱を目指すための見事なガイドになっている

成立はAD４c～AD５c

「瑜伽師地論」アサンガAD４cとは別物

首尾一貫性を欠く記述が散見される。

具体的には？

文献批評

J.W.Hauerの研究では、成立の時間順序は古い方から

１　2.28～3.55　yogāṇga　　　　　ヨーガの部門　　BC２のパタンジャリが作者

２　1.23～1.51　īśarapraṇidhāna　自在神祈念　　　自在神の解釈次第

３　2.1～2.27　　kriyāyoga　　　行事ヨーガ　　　クリヤーヨーガ（バラモン正統派）を宣揚する意図を抱く

４　4.2～4.34　　nirmāṇacitta　　転変心　　　　　大乗の唯識・瑜伽派の形而上学と認識論を論敵

５　1.1～1.22　　nirodha　　　　止滅　　　　　　　スートラ編集者の作品

思想体系批評

サーンキヤ哲学にはcittaの定義が詳細ではなく、manasとbuddhiの関係性と宇宙と個人の関係性が曖昧である。

私見

宇宙

ブラーフマ、プラクリティ、グナ　時空方向、大mahat、宇宙心素・理性・我執　　　

善性宇宙我執から宇宙知覚器官

善・動性宇宙我執から宇宙意思

動性宇宙我執から宇宙運動器官

暗性宇宙我執から５微細元素　　→粗雑元素

個人

パラアートマン、アートマン、　citta　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　buddhi、

ahankāra、　　　微細知覚器官　　微細indriya

manas

微細運動器官

微細元素　　　　粗雑世界　　　粗雑感覚器官

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　微細世界

読む前に当時の常識や当時の概念や創造原理や前提条件を知ることで全体像が理解がしやすくなる

宇宙創造と個体誕生の関連性

行samskāraとは　　　　業、残存印象、煩悩との関係

輪廻転生とカルマについて

カタチになる時の3つの特性グルについて

真我、原因体、微細体、肉体の関係性

生命力は次々と変化しながら受け継がれていく流れについて

因果とは？　　　　因中有果説

ヨーガの八部門　　アシュタaṣṭau　　８　　　アンガaṅga　　部門、支、段階

第1段階:ヤマ（Yama）/禁戒　2.30、31　yamaとは抽象度を１段階昇華（抑制と埋没）させること　

第2段階:ニヤマ（Niyama）/勧戒　　　　2.32　清浄1.33～40、知足、修行（苦行）、読誦、自在神への祈念

第3段階:アーサナ（Asana）/坐法　　　　2.46～48

第4段階:プラーナヤマ（Pranayama）/調息法　　2.49～52　　　

第5段階:プラティヤハーラ（Pratyahara）/制感　2.54～55

第6段階:ダーラナー（Dharana）/　凝念　3.1　精神集中　執持　　　　マインドの集中、思考の集中　

第7段階:ディヤーナ（Dhyana）/瞑想　　 3.2　　無心　禅定　　静慮

第8段階:サマディー（Samadhi）/三昧　　3.3

第1段階:ヤマ（Yama）/禁戒　2.30、31　

yamaとは抽象度を１段階昇華（抑制と埋没）させること　

非暴力(2.35)、誠実(2.36)、不盗(2.37)、ブラーフマナ(2.38)に従う、不貪(2.39)が、ヤマ（禁戒）である。

これらの禁戒は、階級、場所、時間、状況に限定されない普遍なもので、大いなる誓いである。

第2段階ニヤマの清浄の詳細　1.33～40　　　　心の浄化法　parikarmaで心の清澄@rasādaを得る

ニヤマ　　ニは保持（自治、実行）、ヤーマは節度、　　

自分の内部に向けられたyama。

Yamのメカニズムは抽象度を１段階昇華させて対立をなくすこと（現段階の抑制と上位段階での埋没）

清浄　シャウチャ　　(2.40,41)

１　慈悲喜捨の念想

２　呼吸法

３　幻覚的感覚現象の発現

４　白光のヴィジョン

５　聖者の心を対象とする念想

６　夢、熟睡などで得た体験を対象とする念想

７　その他の自分の好きなものの念想

samtoṣa知足　　出家は生命をつなぐに足り、在家は不満を持たないことを基準とする(2.42)

tapas苦行　　　修行への専心、熱意、強い意欲、最大の努力(2.43)

自己禁欲（self-mortification）よりも肉体の条件付body-conditioningと解釈する。

語源は火。　　E.ウッド氏

svādhyāya読誦　低い声で唱えjapa、真言mantraを繰り返して唱える　　　イーシュヴァラのシンボルOM

　　　　　　　　指導霊iśta-debatāに保護と指導を仰ぐことができる (2.44)

īśarapraṇidhāna　自在神祈念　　1.23～1.29　　　　　2.32　　　2.1 2.45

bhakti誠信の帰依や願求ではなく、praṇidhānaとはパーリ語のpanidhānaと同じく、強い願望、祈願、執心を意味する。

対象のイーシュヴァラは無数のプルシャの中の例外者のことで、各自のプルシャとは違って、煩悩や業などによって未だかつて汚されたことがなく、無上最勝な一切知の種子をそなえたプルシャ真我のこと。　　1.24

いちばんはじめのグル　1.26　　したがって、世界創造者たる至上神ではなく、信仰の対象ではない。

最古のグルは、先師なしにグルになったので、そのグルは人間以上の存在で、イーシュヴァラと呼ばれる。

真のグルに出会うのは難しいので、他力的な行法で、イーシュヴァラへの祈願によって、目に見えない世界の神霊にグルになってもらおうと念願を起こす。1.29

自在神祈念の仕方は、「OM」を反復誦唱し、OMが表示する自在神を念想（心がける）すること　1.28

他力門は自力門への予備段階である。

Five Niyamas

In Patanjali's Yoga Sutras, the Niyamas are the second limb of the eight limbs of Yoga. Sadhana Pada Verse 32 lists the niyamas as:[7]

Shaucha (शौच): purity, clearness of mind, speech and body[8]

Santosha (सन्तोष): contentment, acceptance of others and of one's circumstances as they are, optimism for self[2]

Tapas (तपस्): austerity, self-discipline,[9] persistent meditation, perseverance[10][11]

Svadhyaya (स्वाध्याय): study of self, self-reflection, introspection of self's thoughts, speeches and actions[11][12]

Ishvarapranidhana (ईश्वरप्रणिधान): contemplation of the Ishvara (God/Supreme Being, Brahman, True Self, Unchanging Reality),[2][13] attunement to the supreme consciousness[14]

Ten Niyamas

In the diverse traditions and historical debate within Hinduism, some texts suggest a different and expanded list of niyamas. For example, the Shandilya and Varaha Upanishads,[15] the Hatha Yoga Pradipika,[16] verses 552 to 557 in Book 3 of the Tirumandhiram of Tirumular suggest ten niyamas,[17] in the sense of positive duties, desirable behaviors and discipline. The Hatha Yoga Pradipika lists the ten niyamas in the following order, in verse 1.18,[16][18]

Tapas (तपस् ): persistence, perseverance in one's purpose, austerity[10][11]

Santoṣa (सन्तोष): contentment, acceptance of others and of one's circumstances as they are, optimism for self[2]

Āstikya (आस्तिक्य): faith in Real Self (jnana yoga, raja yoga), belief in God (bhakti yoga), conviction in Vedas/Upanishads (orthodox school)[19]

Dāna (दान): generosity, charity, sharing with others[20]

Īśvarapūjana (ईश्वरपूजान): worship of the Ishvara (God/Supreme Being, Brahman, True Self, Unchanging Reality)[21]

Siddhānta vakya śrāvaṇa (सिद्धान्त वक्य श्रवण) or Siddhānta śrāvaṇa (सिद्धान्त श्रवण): Listening to the ancient scriptures[19]

Hrī (ह्री): remorse and acceptance of one's past, modesty, humility[16][22]

Mati (मति): think and reflect to understand, reconcile conflicting ideas[23]

Japa (जप): mantra repetition, reciting prayers or knowledge[24]

Huta (हुत) or Vrata (व्रत):

Huta (हुत): rituals, ceremonies such as yajna sacrifice.

Vrata (व्रत): Fulfilling religious vows, rules and observances faithfully.[25]

Some texts replace the last niyama of Huta with Vrata.[19] The niyama of Vrata means making and keeping one's vows (resolutions), which may be pious observances.[26] For example, a promise to fast and visit a pilgrimage site is a form of Vrata. The education process in ancient India, where Vedas and Upanishads were memorized and transmitted across generations without ever being written down, required a series of Vrata niyamas over a number of years.[27]

第3段階:アーサナ（Asana）/坐法、体位、姿勢、ポーズ　　　動詞語源√sat

YS 2.46に　　坐法の本質は安定感と快適さ、とある。

YS 2.47に　　体を緩め、心を緩め、心を無限性と同調して合一することapattiを試みる。

無限性、たとえば無限空間の観念に同調して合流すると、われを忘れる。そうなれば、心の悩みや不快感は消え去る。

この状態になったら相対的価値観によって悩まされることはない。

たとえば、寒熱、毀誉褒貶など。

アーサナの場所は「平坦、清潔で、砂礫や火気がなく、喧声や水や他人の隠棲所などがなく、目を遮るようなものもなく、閑静で快適なところ、風にさらされない、ひそまったところ」

シュヴェーターシュヴァタラ・ウパニシャッド2.10

第4段階:プラーナヤマ（prāṇāyāma）/調息法　　　　prāṇa生気　　　āyāma　長く伸ばす

大宇宙の呼吸と自分の呼吸とをシンクロさせて、宇宙のエネルギーをによってみずからの生命の律動を活性化させる。

グルの直接指導によるので、文字に書き残すことをはばかった結果だと推察される。

プラーナとは宇宙に流れる生命エネルギーのこと。

この力で心の輝きsattvaを覆い隠している煩悩を消し去り、意思が凝念に耐え得るような力を養う。

2.49と2.50の2つの解釈

１　粗い呼吸śvāsa-praśvāsaを絶ち切り、呼息２、吸息１、止息４の割合にして、呼息では鼻先の綿毛が動かず、吸息では蟻の這うようなむずがゆさを感じる

２　prāṇāyāmaを気の流れを抑止すると解釈して、止息kumbhakaと捉えるので、粗い呼吸の出入りを止める。

　　息を吐き終わって止息、体内に息を満たして止息、無条件の止息である。

2.51の第４の調気の解釈　　　三昧のときの呼吸　　　　　最も難解な経文　　A.Bailey氏

息が絶えてしまったような呼吸　　　　　Hauer氏

息を出した後に無意識に起きる止息　　　Riecer氏

霊界の霊的生命との内的呼吸　　　　　　　スウェーデンボルグ

第5段階:プラティヤハーラ（Pratyahara）/制感

Pratyaharaは「引き止めておく」という意味をもつ

pratyā√hrは「後退させる」、ここでは感覚器官を世間的な対象から引き戻す、ことを意味する。

感覚器官が勝手に対象と結びつかないようにすること　　　2.54　

「対象に引かれてゆく諸感覚器官をひっこめて、感覚器官を克服nigrahaすること」Nāradiya

つまり、感覚器官をコントロールすることで、manasが専心ekāgrataに沈潜するのを妨げないようにする。

すると感覚器官は外界の信号から引き離されるが、働きは保持しているが、心の作用が止滅が実現すると、感覚器官の働きも消滅する。

制感法を習熟すると、対境（色・音・香・味・触）に快苦を感じなくなる。

後世になると、バストリカ鞴呼吸を使って、心理作用が受動的になって感覚器官の引っ込みを用意にする方や、いつの対境（たとえばかすかな音）にスポットライトを当てて外界の音を遮断して、次に想像で作った音にスポットライトを移して、さきのかすかな音を忘れるように努める

観世音菩薩「首楞厳経」

「かの仏はわたしに、聞・思・修の行によって三摩地の境地に入ってゆく方法を教えて下さった。先ず初めに、音を聞くという経験のなかで、外から入ってくる音の流れを押し返して、聞こえる音を無くする。耳から入ってくる音が寂然として消えてしまうと、しまいに聞くはたらきも、聞かれる音もことごとく無くなってしまうのである。」

これが人空といい主観的存在の空なる真理である。

大乗では、さらに客観的存在の空なる真理である法空を証得する必要がある。

samyama綜制

これからの3段階はsamyamaといい、cittaを克服する方法である。

この３段階は同一の思念対象で連続してゆく一連の心理過程である。

第6段階:ダーラナー（dhāraṇā）/　凝念　精神集中　執持　　　　マインドの集中、　concentration

√drh保持する、つなぎとめるから派生したdhāraṇāは諸感覚器官を動かさぬようにおさえていること

3.1　「心を特定の場所に縛りつけること」

凝念は制感の半面である。

対象は具体的なモノ、deśa場所である。viṣaya対境と同義に使われている、客体といわれるものの根源、客塵。

抽象的なものは輪郭が不明確なので、観想の対象には適しない。

サットヴァやプルシャなどを観想対象にする場合も代用品としての「場所」は必要である。

第7段階:ディヤーナ（Dhyana）/静慮　瞑想　無心　禅定　　　meditation

3.2　　そうして、集中の途切れない継続が禅定である

凝念の場所を手がかりālambana所縁としたpratyaya想念が、中断しないでekatānatā一筋に伸展していく。

凝念の心理は一点を集中として据え付けることである。対して静慮の心理は一点から流れを同心円の方向に拡大したり、中心へかえるや螺旋の形に流れを伸ばす。

凝念は対象をできるだけ明確に意識することである。対して静慮は明晰な対象意識をあらゆる瞬間に持ち続けながら、その対象に関する想念の領域を次第に拡げてゆくことである。

凝念の対象は単純であるほどよく、静慮の動きはできるだけ複雑なのが良い。

たとえば、１つの花を対象に選び、凝念することで他のすべての事物への関心をしりぞけ、その花の印象だけを明瞭かつ明晰に心に焼き付けるように努力する。

それが成功したら、その明瞭かつ明晰な想念を極限まで展開していく。その花の色、形、香り、生産地、送り主の想いなど際限なく拡げていく。それは昏沈でもなければ掉挙でもなく、平静に綿々に続いてゆく澄明な意識の流れである。

第8段階:サマディー（Samadhi）/三昧　　contemplation

静慮を続けると、最後に静慮の主観面の存在が忘れ去られてしまって、対象である客体面だけが意識の全領域を占領するようになり、その結果、客体そのものが直接的にそこにあるかのように感じられる。それが三昧の境地である。　　　　　　YS3.3の解説

心の働きが死滅した状態　　YS1.2

現代の言葉でいうと直観intuition、anschauungのことで、判断や推理などの思考作用を加えないで、対象を直接に把握する、主客未分の意識である。

主観からは全く独立な客体arthaそのものが、まるで裸でそこに現れている。

抽象的なものでも具体的な内容を持つ。　YS1.49

静慮と三昧の間には連続性がなく、飛躍的超越が必要な大きなギャップがある。

しかし超えるというのは、そこに主意的な能動の意味合いが含まれるので、正確な表現ではない。

静慮は意思の努力によって主体的に行われるものだが、三昧は前触れもなく不意に襲来して顕れる。

samāpatti三摩鉢底、等至と同義語

A有想から　　有尋三昧　　有伺三昧　　有楽三昧　　有我想三昧　　⇒　無想三昧　アートマン

有尋三昧　　

有伺三昧　　

有楽三昧　　

有我想三昧　　

⇒　無想三昧　アートマン

B有種子から　有尋定無尋定有伺定　無伺定　⇒　無種子三昧　パラアートマンparamtman 仏教の影響

有尋定　　　

無尋定　　　1.43

有伺定　　　

無伺定　

⇒　無種子三昧　パラアートマンparamtman

尋と伺の違い

仏教

インド

欧学者

尋vitarka

心の粗大な働き

あれかこれか

５大10根

粗雑元素

感覚器官

推理論証

伺vicāra

微細な働き

細かく伺察

５唯３内官

YS1.45

微細元素

理智我執意思

覚・慢・意

直観

尋と伺の後に心境が楽になるānannda三昧になる。仏教でいる第三禅

次に楽もなくなり、asmitā我想だけが残る。ウペッカーの状態の第四禅

我想は真我とbuddhiを同一視してしまうのが問題である　YS2.6

しかしまだ意識samprajñātaが残っているので、心を止める想念virāma pratyayaを修習するYS1.18

Virāma　　　　止める　止滅

pratyay　　　　想念

具体的には、想念が浮かんでくるごとに、その想念をneti、netiそうではない、そうではない、と否定を繰り返す心理操作を行う。これには有想三昧の習修によって心が陶冶されていることが条件である。そうでなければ心は動揺する。

あまりに長く延長すると生命が危ないとされる。

今日のインドではnirvikalpa無分別三昧と言われ、良い例はラーマ・クリシュナの伝記の中に見ることができる。

分別知vikalpaのある有尋定

分別知とは言葉と対象とその観念とを区別するパターン通常の認識

言葉だけの知識　　YS1.9　　　対象の経験を欠いたもの

論理的には無尋＝有伺である

無想三昧と無種子三昧の違い　　　　注釈家ヴィアーサvyāsaの見解

無想三昧　　　　意識の表面には１つも想念は現れないが、心に行（種子）は残る　　　　

無種子三昧　　　いかなる行（種子）も残らない

参照　　仏教の４禅

初禅 paṭhama-jhāna (梵 prathamadhyāna) 　　　　有尋有伺定

諸欲・諸不善（すなわち欲界）を離れ、尋・伺（すなわち覚・観）を伴いながらも、離による喜・楽と共にある

第二禅dutiya-jhāna (梵 dvitīyadhyāna)　　　　　　　　無尋無伺定

尋・伺（すなわち覚・観）が止み、内清浄による喜・楽と共にある状態。

第三禅 tatiya-jhāna (梵 tṛtīyadhyāna) 　　　　　　　　無尋無伺定

喜を捨し、正念・正見（すなわち念・慧）を得ながら、楽と共にある状態。

第四禅 catuttha-jhāna (梵 caturthadhyāna)

楽が止み、一切の受が捨てられた不苦不楽の状態。

定と三昧の違い

定とは

心理作用が弱まると、知る主体、知覚器官、知覚対象は、宝石（透明な水晶）のようになる。宝石の近くにあるものと同じものが映っているような体験を「定」という。　YS1.41

cf. 　Dharana　精神集中　　　Dhyana/瞑想　禅定　　　　Samadhi三昧

知る主体とは真我、知覚器官とは理智や意思や感覚器官のこと。

定では、真我と理智と知覚対象の３つがあるのに対して（仮説では主体になってしまっている理智と知覚対象）

三昧では、直観によって、真我と対象が合一している。（仮説では理智が昇華して直観になった）

有種子三昧と無種子三昧の違い

有種子sa-sabīja　

１対象（客体）を対象にする

２対象を持っていること

３輪廻転生する世界の束縛の因子を残している

４心素cittaのなかに行、すなわち種子が存在する

無種子nir-bīja

無伺をも止滅nirodhaして、一切が止滅された時に現れる　1.47

一切とは雑念や想念だけではなく、行すなわち保存された記憶表象をも含む。

すると、心は根本自性に消えていく、つまり真我が独存を回復する。つまり解脱する。

無種子三昧＞無想三昧≒無伺三昧　　　　

無想三昧には行が残る1.18

無伺三昧の行は他の行を抑制する性質がある　　　1.50

どのようにして無想三昧を得るのか？　　

無伺から得たprajñā 叡智に対する離欲の信念3.49,50

仏教の滅尽定に相当する

行samskāra

行はcittaの大地bhūmiに眠っている種子bījaである。

種子とは潜在的可能性で、条件が整えば隠れた状態tiro-bhāvaから顕わな状態āvir-bhāvaに転換する。

この潜在的可能性は無始の過去生からの堆積であるので無限というほどにあるが、3種に大別できる。

残存印象vāsanā　　 TPOではなく、パターンを基準にしたもの　　　gati　癖、性向、性癖　　

業karma　　　　　　前世で善悪のある行為だけが現世の業となる。　　　　業遺存karmāshaya

煩悩kleśa　　　　　次々に行を生み出す回路

これらを弱体化して、つぎに発現する結果を抑止するのがヨーガ修行の目的である。

残存印象vāsanā

無始から積み重ねられた経験bhogaの印象がcittaの中に残存しているもの

現代心理学では、記憶の把住（とらえ、とどめおくこと）と再生を認め、個人の出世依頼の意識と無意識の経験だけを認めるが、

対してインド哲学では、無始以来の過去から続く転生に積み重ねられた無数の潜在記憶があり、現実の生に反応したものだけが再生する、と考える。

潜在記憶のなかで今の生涯に適合するものだけが発現されると考えるので、前世が猫であっても、ヒトとして生まれた場合には前世の記憶は滅多に出てこない。

共通するのは、過去の経験の記憶が、現実の経験の中に無自覚のうちに出てくるということである。

輪廻転生を通じて一貫した自己同一性があると考えられる根拠は、残存印象vāsanāと再生の同一性にある、とYSは説く。

残存印象vāsanāの原因となる経験は煩悩を原因とする「cittaの作用」である。そして条件が整うと、「cittaの作用」の一つである記憶sm r̥tiとして発現する。この過去の記憶は現在の経験とが複合して、新たな印象の種となり、それらは心素の中に残る。

こうして残存印象は永久に存続する。

残存印象は煩悩（原因）、記憶（結果）、citta（依る場所）、経験対象（alambana所縁）の４つに支えられている。

vāsanāは仏教では薫習や習気と訳されている。

業karma

正確には業遺存karma－āśayaといい、業の結果として生じた行samskāraのこと

āśayaとは潜在印象の結果として残るもの。　　

ヒトの行為のなかで善悪の価値を持った行為だけが、業遺存としてcittaの中に残す。

原因となる業（行為）が善dharmaであるか、悪adharmaであるかに応じて、悦びをもたらすものと、苦しみをもたらすものに分かれる。

業はアプリ回路なので、同じ入力する信号であってもTPOによって出力vipaka（異熟果）も変わり、出力には色々なバリエーションがある。

この出力は業報とも言われ、jāti境涯（現世の境遇）、āyus寿命、bhoga快苦の経験（幸・不幸の意識）の3種ある。

残存印象と煩悩は心理的な経験として発現するのに対して、業は環境となる外界的事象として発現する。

また残存印象と煩悩は、無始の過去から輪廻の間に蓄積されてcittaを縛り上げているが、対して業の大部分は次世で業報として消費されるので、現世で蓄えた業だけが来世に残される。

死に臨む時、現世で蓄積したすべての業遺存が一度に現れて、来世の境涯と寿命と経験の種子となる。

Source: Cologne Digital Sanskrit Dictionaries: The Purana Index

Āśaya (आशय).—The cause of karmas which in turn lead to birth.

Source: Cologne Digital Sanskrit Dictionaries: Edgerton Buddhist Hybrid Sanskrit Dictionary

Āśaya (आशय).—as in Sanskrit, and Pali āsaya, mental disposition, intent (La Vallée-Poussin, Abhidharmakośa iv.24 intention); common, but not specifically Buddhist, except the adverbs āśayena heartily, earnestly Rāṣṭrapālaparipṛcchā 12.9 (ms. āśrayena; compare adhyāśayena), and āśayataḥ ibid. Mahāvyutpatti 7119; Divyāvadāna 281.4, 10; Avadāna-śataka ii.151.2; Daśabhūmikasūtra.g. 16(352).11. The mgs. abode, basis etc. are also standard Sanskrit Cf. adhyāśaya, which is speci- fically Buddhist. If Senart is right in keeping āsayāni in Mahāvastu iii.400.3, it would have to be understood as = āśayāni, (evil) intentions or inclinations; but see āsaya. Often [compound] with anuśaya, q.v.

煩悩kleśa　　　　　

煩悩は業の根因mūlaである。YS2.12

業遺存が業報として発現する際にも煩悩は根因となる。　YS2.13

煩悩除去hānaの手段は３つある。

kriyā-yoga行事ヨーガの修習によって煩悩の力を弱体化する　2.2

静慮によって煩悩の働きが捨てられ　　　　　　　　　　　　　2.11

未発の煩悩はcittaの逆転変prati-prasavaによって始めて除去される。

仏教のpaṭiloma逆観のこと？

プルシャが自己の真相であることを知ったならば、cittaは任務を完了して、これまでの転変とは逆に向きを変えて、これまでに転変してきたいろいろな煩悩の行をだんだんと消していって、cittaの本源である自性prak r̥ti

の中へ没入layaしてしまう。

次々に行を生み出す回路

　　　　 TPOではなく、パターンを基準にしたもの　　　gati　癖、性格　　

āīūṭḍṣṇṃr̥ñṅśḥ

超自然的な叡智

弁別知＝識別智　viveka-khyāti　　　真我と自性を体験して認識できる智慧

直覚智＝直観智　Ṛtambharā prajñā　　　　　真理のみを保有する叡智　　　1.49

Ṛta真理、神の秩序、永久不変の法則　リグ・ヴェーダ

事象の特殊性viśeṣārthatvaを対象とし、言葉と概念が用をなさず、主客の対立を超えた直観

現代哲学の純粋直観pure intuitionまたは知的直観intellectuelle intuitionと推察できる

支配力vaśīkāra　　　　　　　物質世界の極致から極大にわたって知る知性　　　1.40

離憂霊能viśoka-siddhi　　　　世界の一切の事象を知る叡智　　　　　　　　　3.49　　1.36

救済者・照明智　tāraka-pratibhā　　すべてのものすべての在り方を一度に知る叡智　　　3.49

最高直観智prasamkhyāna　　　　あらゆる存在の配置の順序、それらの差異と本質を知る叡智　4.29

法雲三昧dharma-megha　　　　　最高直観智に対してさえ執着を起こさず弁別知の後に発現する三昧4.29

　　　　　　　　　　　　　　　すべての煩悩と業は滅び去る

ヨーガ・スートラ（Ｉ1〜16）

無種子三昧（ニルビージャ・サマーディ）　　　　　　ブラフマン（paramatmanのこと）を覚る

無想三昧（アサンプラジュニャータ・サマーディ）　　アートマンを覚る

有想三昧（サンプラジュニャータ・サマーディ）自意識などの想念、表層意識がまだ残っている

無想三昧（アサンプラジュニャータ・サマーディ）表層意識は消滅して潜在と無意識だけである。

心の諸作用を「止滅させる想念」を修習する、またはイーシュヴァラ・プラニダーナ（自在神祈念、念神）によって、有想三昧から、想念はなくなったが未だ潜在印象の残る無想三昧へと進む。

『ヨーガ・スートラ』では無想三昧が最も存在感を持って語られており、中心的位置づけとなっている。

有種子三昧（サビージャ・サマーディ）煩悩を作る原因がまだ残っている（さらに4段階に分かれる）

無種子三昧（ニルビージャ・サマーディ）対象がすべてが消え去った

心の境位（心の状態）が詳細に説明されている。

有種子三昧の段階を上り詰めると三昧知（直感知）が生じ、これからも潜在印象が生じるが、すでに煩悩が消滅しているため、心の作用が生じることはなく、これが無種子三昧であり真の解脱であるとされる。

ヨーガ・スートラ（Ｉ17〜40）

１有尋サマディー　　　欲界の粗五大のレベルを対象にするサマディー

２有伺サマディー　　　色界の微細のレベルを対象にするサマディー

３有楽サマディー　　　心そのものを瞑想する　　実際にはcittaではなくmanasを瞑想している

４有我サマディー　　　我執アハンカーラを瞑想する

５無想サマディー（アサンプラジュニャータ・サマーディ）　対象は根本自性？自己？　　自己アートマン！

ヨーガ・スートラ（Ｉ41〜51）

有尋定と無尋定は欲界　　　有伺定と無伺定は色界

無種子サマディーが純粋になった時は、

意識があって、ちゃんとそこをみているのだけれども、あまりに何も動かないので意識がない状態に感じる

想うのでもなく想わないでもない意識状態にそのまま入り込んでいる。

突如、太陽が1000も同時に輝いたような眩い均質な光が意識を一度に覆うことになる。

これが、リタムバラー・プラジュニャー、すなわち絶対的な真理意識である。

Sutra 1.47 心の波立ちが止まり、真我が映り出す

nirvicāra-vaiśāradye-‘dhyātma-prasādaḥ ॥47॥

（訳）ニルヴィチャーラ・サマーディ（無伺三昧）が純粋になれば、至高の真我が輝く。

[SV訳]: 論理を伴わない集中が浄化されれば、チッタ（心）はしっかりと落ち着く。

Sutra 1.48 有種子三昧で得られる真理

r̥taṁbharā tatra prajñā ॥48॥

（訳）これがリタムバラー・プラジュニャー、絶対的な真理を得た状態である。

Sutra 1.49 真理と他の知識の比較

śruta-anumāna-prajñā-abhyām-anya-viṣayā viśeṣa-arthatvāt ॥49॥

（訳）この特別な真理は、聞いたり・聖典から学んだり・推量したりして得られる知識とは完全に異なる。

[SV訳]: 聖典から得たり推量したりして得られる知は、一般的な対象に対する知識である。ここで述べられたようなサマーディから得られる知はより高位のもので、推量や聖典から得られる知が到達できない領域へ達することができる。

Sutra 1.50 行からの解放

tajjas-saṁskāro-‘nya-saṁskāra pratibandhī ॥50॥

（訳）このサマーディによって生じる行は、他の全ての行を消し去る。

[SV訳]: このサマーディによって生じる印象は、他の全ての印象を覆い隠す。

Sutra 1.51 無種子三昧とは

tasyāpi nirodhe sarva-nirodhān-nirbījaḥ samādhiḥ ॥51॥

（訳）この行すらも消え去った時、全ての行が消える。これがニルビージャ・サマーディ（無種子三昧）である。

[SV訳]: 他の印象を全て覆い隠すほどのこの印象さえも抑止することによって、全てが抑制され、「種子の無い」サマーディが訪れる。

たとえば轆轤を回すとだんだんと回転が止まっていくように、この体験をすると、思考を回す、つまりモノを考えることがだんだんと停まっていく。ただ考えようと努力したら考えることができるが、意志がなければ、突如色々な考えが飛び込んでくるようなことはない。

欲（種子）が残っている人は潜在的にモノ（たとえば金、性癖、仕事の成功）に心をずっと回転させることで考え続けている。

潜在界でずっと轆轤を回し続けている。

このリタムバラー・プラジュニャーを経験すると、あらゆる印象を押さえつけてしまい、轆轤を回す手が停まってしまう。

ヨーガ・スートラ（総論１）

胸に青白い光が霊視できるのは、我執が中心になっていて、「わたしのもの」に取り憑かれている証し

常に自分自身の心を内観して自分の感情を鎮めて安らかにしている人は、感情に巻き込まれなくなり、本人が気が付かないであるとき忽然とプルシャを覚っているときがある。

預流果や阿羅漢に達していることがある。

エジプトの宗教がシリウス系だった以外は、他の宗教はすべて太陽系レベルであった。

神智学も太陽系レベルであることを主張している。

神々より先に進化して、パラアートマン（滅尽定）に達したのはこれまでの人類では５名　　

人類は魂を持ってまだ1100万年？しか経っていない。

パタンジャリ2bc ヨーガ・スートラの編纂者　　『マハーバーシヤ』サンスクリット文法学の体系を完成

シャンカラ

ウッダーラカ・アール二8bc世界には最初に「有」（サット）があった、その「有」はブラフマンという根本実在だと説いた。これは早々に「ブラフマンだけが唯一無二の有である」という論理（ロゴス）を提起した

ヤージュニャヴァルキヤ　　紀元前７００年前後　ウパニシャッド

アージニャタ・カウンディヤ　阿若僑陳如(アージュニャータ・カウンディニャ)

http://www.sakya-muni.jp/pdf/mono03_s03_06.pdf

釈尊の最初の弟子たちはあっという間に悟りました．カウンディニャという弟子が悟ったとき，釈尊は自分以外にもリンゴを食べた人が現れたことを喜んで，「カウンディニャが悟った，カウンディニャが悟った」と言ったと伝えられている。それ以来カウンディニャは「アージュニャータ・カウンディニャ（悟ったカウンディニャ）」と呼ばれるようになった。．

賢者のカウンディニャには、ある神話が伝わります。

カウンディニャが礼拝時に、ガネーシャ神が好むドゥールヴァーの草を捧げていた時のことでした。

妻は、「そのような草にどのような価値があるのか」と疑問を投げかけます。

カウンディニャは、「このドゥールヴァーに等しい量の金を探しなさい」と、妻に述べました。

妻は神々のもとへ行き、等しい量の金を確かめようとするも、どんなに金を天秤にかけても、ドゥルーヴァーの方が重くなります。

最後には、あらゆる神々が天秤に乗るも、ドゥルーヴァーの方が重いままでした。

そこで妻は、献身とともに捧げられたものの価値に気づきます。

それは、どんなものよりも価値があるものとなって、私たちを導くものでした。

カウンディニャに捧げるポーズは、全身を通じて、その献身の価値を教えてくれるものです。

このポーズでは、何よりも、バランスの取り方を学ぶ必要があります。

自ら生み出した拠り所のない不安定さの中でバランスを取ることは、天秤を釣り合わせるように容易ではありません。

その不確実な安定の中では、カウンディニャの妻のように、疑いや迷いを抱き、混乱することも多くあります。

しかし、バランスを取るポーズの実践を通じては、眉間のあたりにあるとされるアージュニャー・チャクラが活性化されるといわれます。

第三の眼ともいわれるこのチャクラが活性化される時、私たちは感覚や思考に揺さぶられることのない、崇高な存在を知ることが可能となります。

ヨーガ・スートラ（有想三昧）

ラーマクリシュナ1836年

インドの光聖ラーマクリシュナの生涯　　by 田中嫺玉

p79間もなく心眼が完全に開けて、マーの姿を見るのに瞑想も何も必要なくなった。・・・・・・・・・

マーはバルコニーに立って髪を風になびかせながらガンジスの流れと遠くカルカッタの灯を眺めていた。

これが有尋サマディーでの世界観。

私たちの世界　　　　　　　　　贍部洲（欲界第６亜界）第６次亜界第６次々亜界

ラーマクリシュナの世界　　　　贍部洲（欲界第６亜界）第６次亜界第５次々亜界　　

波動が高くて見えないがこの世とダブっている

ヨーガ・スートラ（有種子三昧）

解説ヨーガ・スートラ佐保田鶴治

B有種子から　有尋定　　　無尋定　　　有伺定　　　無伺定　⇒　無種子三昧　パラアートマンparamtman

太陽系第１レベルの世界

無種子三昧　パラアートマンparamtmanは大梵天（色界）を７つに分けたときに５つ目の境地

無伺定　　色界の第５亜界の第６次亜界の１～３の境地

有伺定　　色界の第５亜界の第６次亜界の４～７と第６亜界第６次亜界の１～６の境地

無尋定　　欲界の第５亜界の第５次亜界の１～３の境地

有尋定　　欲界の第５亜界の第５次亜界の４～７と第６亜界第５次亜界の１～６の境地

サマーディ瞑想から外れると普通の状態に戻ってしまう。

しかし無想や無種子を体験すると恒常のものになる

ヨーガ・スートラ（無想・無種子三昧）

無種子三昧の体験したのは人類で５名ほど　　

シャンカラ

パタンジャリ2bc ヨーガ・スートラの編纂者　　『マハーバーシヤ』サンスクリット文法学の体系を完成

ラマナ・マハリシは自分の体験例を語り、写真もある

ヴェーダの賢者の面影を人々は見ていた。

バグワン・ラマナ師はインドの数ある聖者のなかでも、宗教とは一線を画している特別な存在。御神体は聖アルナチャーラのお山です。人間が作った神殿ではない。シヴァ神はヒマラヤに棲むとされますが、アルナチャーラ山はシヴァの御神体そのものです。ラマナ師は存命中、この山を毎日歩くことを日課とされたのでした。誰も師匠を持たず、この大地、山の精霊と神だけをひたすら愛したのです。十代の頃から「私は誰？」それだけをひたすら問い続けた「だけ」で、極めて稀な悟り、解放を得たのです。

誰でも知っているかのサイババですら、ラマナが地球に生まれたのは奇跡に近いと言ったほど。ラマナ師は、悟るには師匠も不要、マントラも不要、瞑想も不要と仰った。これこそ新世紀の正しいスピリチュアリズムだと思います。「私」は「自我」ではなく、究極的に「真我」を求めれば、誰もが俗世にあって、普通の生活をしながら悟る道を歩める。

シッダへの道

プレイオブコンシャスネス　　　スワミ・ムクタナンダ

瞑想の過程体験が克明に綴られている。

1974年にニチャナンダからシャクティーパットイニシエーションを受け、次の8年間を瞑想の生活を過ごした。

シッダヨーガの伝統をもたらした。

有尋定

第６亜界の第４次亜界の第五次々亜界なので、次元がより人間に近く低いものである。

無尋定・有伺定

スワミ・ムクタナンダ　

17レベル　黄金色の蓮華　色界の第６亜界の第１次亜界の第６次々亜界なので、次元がかなり高い

無伺定

24レベル　　プルシャ自己実現の体験　　色界の第５亜界の第４次亜界　　　　　ムシ・サマーディ

21レベル　　死への恐れ　　　　　　　　色界の第５亜界の第５次亜界

サンスクリット語のヨーガ・スートラ

https://www.ashtangayoga.info/philosophy/source-texts-and-mantra/yoga-sutra/yoga-sutra-1-on-the-experience-of-absolute-unity-ronald-laura/200518-yoga-sutra-11-yoga-is-presence-ronald-laura/

１

atha　　　　　　now 　　　　　particle　　　

yoga　　　　　　yoga　　　　　tatpuruṣa-compound lokative

anuśāsanam　　 introduction　　　　　nominative singular　　　substantive masculine

This very moment (atha) is your chance to immerse yourself in the state of yoga (yoga)

２

yogaḥ 　　　　　yoga　　　　　　　　nominative singular

citta 　　　　　inner perceptual space　　　tatpuruṣa-compound lokative

vr̥tti 　　　　　the movements　　　　　　tatpuruṣa-compound genitive

nirodhaḥ 　　　to come to rest 　　　　　　nominative singular

In the state of yoga (yoga) your inner perceptual space (citta) is absolutely clear (nirodha).

Yoga (yoga) [is] the calming [nirodha) of the movements (vr̥tti) in the field of awareness (citta).

３

tadā 　　　　　then 　　　　　　　　particle

draṣṭuḥ 　　　the observer　　　　　 genitive singular 　　　　　draṣṭr̥　substantive masculine

svarūpe 　　　in it’s own form 　　　lokative singular 　　　　　svarūpasubstantive masculine

avasthānam　　 linger　　　　　　 nominative singular　　　　　avasthāna substantive neuter

With clarity within your perceptual space you (draṣṭr̥) can directly experience your true nature (svarūpa).

Then [arises] a lingering of the Observer (draṣṭr̥) in its own form (svarūpa).

āīūṭḍṣṇṃr̥ñṅ ś ḥ

a｜ā｜ai｜au｜b｜bh｜c｜ch｜d｜dh｜ḍ｜ḍh｜e｜g｜gh｜h｜ḥ｜i｜ī ｜j ｜jh ｜k ｜kh ｜l ｜ḷ ｜ɭ ｜ɭh ｜m ｜ṃ ｜n ｜ṇ ｜ñ ｜ṅ ｜o ｜p ｜ph ｜r ｜ṛ ｜ṝ ｜s ｜ṣ ｜ś ｜t ｜th ｜ṭ｜ṭh ｜u ｜ū ｜v ｜y

日本語訳

１原文

２サンスクリット語のアルファベット化

３サンスクリット語の語順に従った直訳の日本語

４サンスクリット語の単語の意味、文法、格、

５解釈、解説

６英訳訳の例

https://www.sanskrit-trikashaivism.com/en/patanjali-yoga-sutras/629

First Section: On concentration

अथ योगानुशासनम्॥१॥
Atha yogānuśāsanam||1||

では、はじめる「ヨーガ」の教えを　　　YS1.1

Atha 　　　　　では、始める

yoga　　　　　　ヨーガ

anuśāsanam　　教え、指示、教示

YOGAの意味　　つなぐ、くびき

yogaは英語のyokeと同じ語源で、２頭の牛をつなぐ「くびき」のことで、身体と精神を「くびき」でつないで統合することで、物質を基準にした現世のくびきを離脱するという意味である。

ラテン語iugum、フランス語joug、スペイン語yugo　英語yoke、join

原義は√yujで、自分自身を絶対的に結合する。　　byマッソン・ウルセル

ネガティブ　上座部仏教では足かせとなる煩悩　欲、生存、誤った見識、無明

ポジティブ　大乗では修行

漢訳は旧訳では相応、すなわち「合わせる」という意味で使われた。

玄奘三蔵は音写語として瑜伽（ユキャ）をあてた。　　瑜は美しい玉、伽はナスビ

多種のヨーガ

心理　ラージャ・ヨーガヨーガ・スートラ　　クラシカル（古典的）・ヨーガ

生理　ハタ・ヨーガ　　　　　　　ポスト・クラシカルヨガ　　タントリック

倫理　カルマ・ヨーガ

宗教　バクティ・ヨーガ

心霊　ラヤ・ヨーガ呼吸が停止し、知覚も消え、心身が動かなくなった状態

哲学　ジュニャーナ・ヨーガ

呪法　マントラ・ヨーガ

And now begins (atha) the instruction (anuśāsanam) regarding Yoga (yoga)||1||

[1.1] 　　　　

योगश्चित्तवृत्तिनिरोधः॥२॥
Yogaścittavṛttinirodhaḥ||2||

「ヨーガとは、心の働きを止めることである。」YS1.2

Yoga　　　　ヨーガ

citta　　　　心、心素（インド哲学）、心所（上座部）、マインド＋ハート（現代）４つの内的心理器官の１つ

vṛtti　　　　働き　心理作用、対象認識

nirodhaḥ　　止めること　止滅

cittaの語根はcitで、知覚の如き認識作用を意味する。　これを心素、

vṛttiの語根はvrtで、歩く、行く、回転する運動、無秩序な動きを原意とするので、「作用」とは対象に向かって近づいてゆくことで、対象認識を意味する。1.6にあるように大別すると、5種類の心理作用がある

心が知覚器官を介して外界の信号に合わせて変形することがvṛttiであり、このプロセスで心が外界の信号を認識する。

このような心が外界の信号によって変化する不安定な状態を遮断し、心理作用を完全にコントロールすることがヨーガの目的である。

つまり客観（現象）を主体がコピーして認識するのではなく、主体は動かず、ただ観ているだけで独立する状態になることで、現象はありのままの輝く状態になる。

これを「心の解体」とエリアーデの死のダスグプタは説明する。

心と作用の関係は、実体とその現われの関係で、たとえば湖と波のような関係である。

上座部仏教では、心Cittaと心所Cetasikaの関係

心と心理作用とは、認識する場所と認識された状態の関係である。

つまり、ヨーガとは認識を止める術（アート）である。

「心素がさらに動性の極く僅かな汚れをも離れて、自己本来の姿を保ち自分自身と真我との相異を識別する智慧のみを持ち、法雲三昧へと入ってゆくのである。これが最高の直覚智であると三昧境に入った行者はいう」

　YS1.2　ヴィヤーサ注解

「心素は生気に溢れ、活動的でもあり、また、不活発でもあるといった気質を持っていることから考えて、３種の徳性から成っている」　　YS1.2　ヴィヤーサ注釈

生物解剖学の心房と心室を結ぶ特殊な心筋線維のヒス束に心素と真我がある、とされる。

三昧には有想といって心理作用が残っているもの、そして無想といって心理作用が完全に消滅nirodhaḥして潜在意識と無意識だけが残っているものの2段階がある。

Yoga (yogaḥ) is the suppression (nirodhaḥ) of the modifications (vṛtti) of mind (citta)||2||

[1.2]

तदा द्रष्टुः स्वरूपेऽवस्थानम्॥३॥
Tadā draṣṭuḥ svarūpe'vasthānam||3||

「（心素の働きが止滅された）その時には、観る者（である真我）は自己本来の姿にとどまる。」YS1.3

Tadā 　　　　　その時

draṣṭuḥ　　　　観る者、純粋観照者、観ることだけができる者　　　　　真我prushaのこと

svarūpe　　　　自己本来の状態

avasthānam　　とどまる

Then (tadā), there is an abiding (avasthānam) in the essential nature (sva-rūpe) of the Seer (draṣṭuḥ)||3||

[1.3]

वृत्तिसारूप्यमितरत्र॥४॥
Vṛttisārūpyamitaratra||4||

「その他の場合にあっては（真我は心素の）いろいろな働きに（応じて）同化したカタチをとる」YS1.4

Vṛtti　　　（心の）働き、心理作用

sārūpyam　同化する

itaratra　　それ以外の時は、　　その他の場合では

On other occasions (itaratra), there is identity (sārūpyam) (between the Seer and) the modifications (of mind) (vṛtti)||4||

[1.4]

वृत्तयः पञ्चतय्यः क्लिष्टा अक्लिष्टाः॥५॥
Vṛttayaḥ pañcatayyaḥ kliṣṭā akliṣṭāḥ||5||

「（心の）働きは５つの種類があり、それらの中には苦を伴うものと、伴わないものがある。」YS1.5

Vṛttayaḥ 　　　（心の）働き、心理作用　　　　　Vṛtti とVṛttayaḥの違いは？

pañcatayyaḥ　　　５種類

kliṣṭā 　　　　　　煩悩、苦痛の原因　　　　　　（心身の）苦悩,苦痛,不幸,難儀　

akliṣṭāḥ　　　　　煩悩がない

「煩悩性kliṣṭaのものとは、煩悩を原因として生じたものであり、輪廻転生に導く業遺存karmāshayaを蓄積する場となる」YS1.5　ヴィヤーサ注解

煩悩性には5種類ある。煩悩の原因、煩悩を原因とするもの、煩悩に包まれたもの、煩悩に結びついているもの、煩悩に染まっているもの。

語源はkliś苦しめる、苦しむである。文献的源流は中期ウパニシャッドであるが仏教との共通点がある。

5種類の煩悩

無知avidyā

我想asmitā

貪愛rāga

憎悪dveṣa

生命愛着abhiniveśa

kṣetra

āīūṭḍṣṇṃr̥ñṅ ś ḥ

The (mental) modifications (vṛttayaḥ), which form a group of 5 (pañcatayyaḥ), may be or may not be based upon Kleśa-s --afflictions-- (kliṣṭāḥ akliṣṭāḥ)||5||

[1.5]

प्रमाणविपर्ययविकल्पनिद्रास्मृतयः॥६॥
Pramāṇaviparyayavikalpanidrāsmṛtayaḥ||6||

「（その５つは）正知Pramāṇa・誤謬viparyaya・想像vikalpa・睡眠nidrā・記憶smṛtayaḥである。」YS1.6

Vrittis：Patanjaliの5つの心の機能

正知　(pramāṇa　認識起源) 　 Valid Cognition認識　　　微細体のレベル

外界の事物との接触によって生じる経験のことを量りpramāといい、こうした経験を正しく認識する理智の心理作用のことを正知とよぶ。

直接体験（pratyaksha）：私たちの五感を使う（環境を通して直接知識を獲得する）

推論（anumāna）：論理と理性を適用して自分で物事を理解する能力。たとえば、山から遠くに煙が出ているので、火事があると推測する。

信頼できる証言（āgama）：他の誰かの知識と経験を信頼する。たとえば、酸素と水素が水を作り出す。

「直接経験による知識とは、感覚器官がその対象と接触したことによって生ずる知識であり、確かor不確かのどちらか一方に定まっている知識である。」ニヤーヤ・スートラ1.1.4

「理智の心理作用は正知であると言われているが、身体外の事物の情報は感覚器官を経て意思から理智へと伝わってくる。こうした、ある事物についての一般的あるいは特定の知識のことを正知という。」　ヴィヤーサ

誤謬　 (Viparyaya) Misconception　　微細体

対象の実態に基づいていない不正な知識のこと。

インドの認識論は真理の基準を対象との一致ということに置いたので、概念上の知識は単に言葉だけの知識によっていて、客観的対象を欠いた知識である。

私たち自身の偏見によって条件付けられている、私たちに関連するものを見る

私たちの考え（vrittis）は、誤解されている知識である可能性があるので、vrittisを落ち着かせる必要がある。

たとえば暗闇の中でホースを蛇と見間違える。

「誤謬とは、対象の実態に基づいていない、不正確な知識のことである」　YS1.8

誤謬は、我を忘れさせて夢中にさせたり、悩ませたり、不安にさせたり、時には破滅に導く原因となる。

誤謬は理智の楽しみのためだけにあり、ここから行（善行、悪行）が生じる

想像(Vikalpa)　　Imagination　微細体

想像力ちは作成されたアイデアのこと。

自分の考え方に基づいて、自分たちのために想像上の世界を作り出すことができる。

想像力は思考に影響を与え、真実ではないことを真実として確信し、幸福や苦しみを引き起こす。

「想像とは、言葉の上だけの知識に基づいて客観的対象を欠く知識のことである」　YS1.9

言葉shabdaと実体arthaと概念jñānaとが明確に区別されていないのに、その対象に相当する言葉だけを使っているような場合、すなわち言葉と概念だけで事物の知識を得ているのは想像の心理作用である。

我なる心理作用aham vrittiも想像の１種である。真我の実体を経験していないのに、真我を生命を持たぬ心素と同一のものとみなしているからである。

睡眠(Nidra)　Sleep　原因体

「深い眠りとは、空無を対象とする、心の働きのことである。」（YS1.10）

心が上記の3つの機能（認識、誤解、想像力）がないときに、眠りにつく。

退屈や倦怠感、ストレス、心配事や不安から「世界を脱出」するために眠る可能性もある。

「ヨガニドラ」と呼ばれる古代のヨガ瞑想法を使用すると、深い睡眠意識を体験することができる。

記憶(Smriti)　Memory　原因体

「記憶は経験された物体の記憶である」YS1.11

記憶が真であるか、偽であるか、不完全であるか、を判断することはできない。

記憶は現在の状況に影響を与える可能性がある。

記憶は「私たちの現在の瞬間を盗む」ことができる。

特定の印象を保持することにより、記憶は今を経験することを防ぐことができる。

私たちはすべての経験の合計であるので、Smritiを含むvrittis（心の機能）は、すべての思考が永続的な印象を生み出すための記憶である。

これらの印象は、苦しみにつながるか自由につながるかにかかわらず、自身の本質にとどまるために制御する必要がある。

このコントロールとは、執着したり、動揺したり、イライラしている自分から離れて、自分の心の機能を観察、すなわち「観察者」になることである。

反応なしで観察できるようになると、心とその機能を真我からより簡単に区別できるようになる。

「持続的な実践と冷静さの育成を通して、これらの心の変動を静めることができる」（YS1.12）

Correct knowledge (pramāṇa), false knowledge (viparyaya), verbal knowledge about something that is nonexistent (vikalpa), (deep) sleep (nidrā) and recollection --smṛti-- (smṛtayaḥ) (are the five modifications of mind)||6||

[1.6]

प्रत्यक्षानुमानागमाः प्रमाणानि॥७॥
Pratyakṣānumānāgamāḥ pramāṇāni||7||

「直接の知覚、（演繹的）推論、聖典の記述が正知の根拠となる。」YS1.7

Pratyakṣa　直接的（現実的）な知覚体験　　

anumāna　（論理的）（演繹的）推論、推察、論理、

āgamāḥ　　聖典（の記述）

pramāṇāni　認識起源

Direct perception (pratyakṣa), inference (anumāna) and testimony --āgama-- (āgamāḥ) are the Pramāṇa-s (pramāṇāni)||7||

[1.7]

विपर्ययो मिथ्याज्ञानमतद्रूपप्रतिष्ठम्॥८॥
Viparyayo mithyājñānamatadrūpapratiṣṭham||8||

「誤謬は、あれをこれだと妄想したことによる区分けである」　YS1.8

Viparyayo　誤謬

mithyā 　幻想　妄想

jñānam　　知、差異、知識

atadrūpa　　完全に違うもの？

pratiṣṭham　基づく　基礎とする　　原因とする

換言すれば、「誤謬とは、対象の実態に基づいていない、不正確な知識のことである」

誤謬は、我を忘れさせて夢中にさせたり、悩ませたり、不安にさせたり、時には破滅に導く原因となる。

誤謬は理智の楽しみのためだけにあり、ここから行サンスカーラ（善行、悪行）が生じる

Viparyaya (viparyayaḥ) is illusory (mithyā) knowledge (jñānam) based (pratiṣṭham) on mistaking a particular form for something completely different (atad-rūpa)||8||

[1.8]

शब्दज्ञानानुपाती वस्तुशून्यो विकल्पः॥९॥
Śabdajñānānupātī vastuśūnyo vikalpaḥ||9||

想像とは、「空」の体感ではなく言葉の認識から生じたもの

Śabda　　　　　　　　言葉、言語

jñān　　　　　　　　　知、差異、区分、知識、認識

ānupātī 　　　　　　　生じる、起こる、起因する、

vastu　　　　　　　　リアリティ　　あるがまま

śūnyo 　　　　　　　　「空」

vikalpaḥ　　　　　　　想像

「想像とは、言葉の上だけの知識に基づいて客観的対象を欠く知識のことである」　YS1.9

自分の考え方に基づいて、自分たちのために想像上の世界を作り出すことができる。

想像力は思考に影響を与え、真実ではないことを真実として確信し、幸福や苦しみを引き起こす。

実態に基づいていない空虚な言葉によって現れる心の作用は、言葉による錯覚である。

Vikalpa (vikalpaḥ) proceeds (anupātī) from a verbal (śabda) cognition (jñāna) about something which is devoid (śūnyaḥ) of reality (vastu)||9||

[1.9]

अभावप्रत्ययालम्बना वृत्तिर्निद्रा॥१०॥
Abhāvapratyayālambanā vṛttirnidrā||10||

「対象がない」心の変異が作用すると深い眠りにつく。（YS1.10）

心の対象がなくなると、心は変異して睡眠とよばれる状態になる。

Abhāva　　　　　存在しない　対象がない

pratyaya　　　　心理状態　　心の変化　　変動、変異

ālambanā 　　　基づく、もとにしている　基準とする　原因とする

vṛttir　　　　　　心理作用、変更、修正、調節、変換　　心の働き　　心の変化　　知ることの内容

nidrā　　　　　　深い眠り

The modification (vṛttiḥ) (known as) Nidrā (or deep sleep) (nidrā) is based (ālambanā) upon the mental state (pratyaya) of nonexistence (abhāva)||10||

睡眠とは、空無が対象の心理作用のことである。

「無に対する認識」に基づいた心の作用が、睡眠である。

[1.10]

अनुभूतविषयासम्प्रमोषः स्मृतिः॥११॥
Anubhūtaviṣayāsampramoṣaḥ smṛtiḥ||11||

Smṛti (or recollection) (smṛtiḥ) is the reproduction, without taking anything from any other sources (asampramoṣaḥ), of the thing (viṣaya) that was (previously) experienced (anubhūta)||11||

「経験したことを」

「記憶とは経験した対象を忘れないことである」YS1.11

Anubhūta　　　　　　経験する

viṣaya　　　　　　　　もの　対象　こと　　客体といわれるものの根源　客塵

asampramoṣaḥ 　　　　忘れない？

smṛtiḥ　　　　　　　　記憶

行を繰り返し呼び出す働きがある。

記憶の働きは行の目印となること。

５つの心理作用は記憶という形をとって心素の内部に刻み込まれる

過去に経験して忘れていないものが、意識に戻ってくる心の作用を、記憶という。[1.11]

अभ्यासवैराग्याभ्यां तन्निरोधः॥१२॥
Abhyāsavairāgyābhyāṁ tannirodhaḥ||12||

「実践と離欲の育成によって、心の変動を静めることができる」（YS1.12）

Abhyāsa　　　　　　　　　　実践、修習

vairāgyā　　　　　　　　　離欲、放棄、断念、否認、拒否、　　渇望からの離脱

bhyāṁ

tad　　　　　　　　　　　　それ

nirodhaḥ　　　　　　　　　鎮める、抑制する

心の作用は、修習と離欲によって抑制される。[1.12]

There is suppression (nirodhaḥ) of that (i.e. "of the previous five mental modifications") (tad) by means of Abhyāsa --practice-- and Vairāgya --renunciation-- (abhyāsavairāgyābhyām)||12||

तत्र स्थितौ यत्नोऽभ्यासः॥१३॥
Tatra sthitau yatno'bhyāsaḥ||13||

この心のやすらぎは実践を続けることで得る。YS1.13

Tatra　　　　　その

sthitau 　　　心の平安

yatnah　　　　努力

abhyāsaḥ　　　実践

Abhyāsa or practice (abhyāsaḥ) is the effort (yatnaḥ) to attain to that (tatra) Sthiti or mental peace (sthitau)||13||

[1.13]

स तु दीर्घकालनैरन्तर्यसत्कारासेवितो दृढभूमिः॥१४॥
Sa tu dīrghakālanairantaryasatkārāsevito dṛḍhabhūmiḥ||14||

「これを長い間、休むことなく確実に実践すると、堅固な基礎ができる」YS1.14

Saḥ　　　　　　　　　その

tu 　　　　　　　　　確かに

dīrgha　　　　　　　長い

kāla　　　　　　　　時間

nairantarya　　　　間断なく

sat　　　　　　　　本当の

kārā　　　　　信心の厚い態度

sevito 　　　与えられる　　授かる　授与される

dṛḍha　　　　堅固な

bhūmiḥ　　　基礎

修習は、長い間・休みなく・大いなる真剣さをもって取り組むことで、しっかりとした基盤をつくりあげる。[1.14]

And that (practice) (saḥ), when endowed (sevitaḥ) with a uninterrupted (nairantarya) and true (sat) devotional attitude (kārā) for a long (dīrgha) time (kāla), (has) certainly (tu) firm (dṛḍha)

foundations (bhūmiḥ)||14||

दृष्टानुश्रविकविषयवितृष्णस्य वशीकारसञ्ज्ञा वैराग्यम्॥१५॥
Dṛṣṭānuśravikaviṣayavitṛṣṇasya vaśīkārasañjñā vairāgyam||15||

対象を見たり聞いたりする渇望をコントロールできるようになるのが離欲である。

Dṛṣṭa　　　　　　　　　観られる

ānuśravika　　　　　　聞かれた

viṣaya　　　　　　　　対象　もの、こと、客体　客体といわれるものの根源　客塵

vitṛṣṇasya 　　　　　　渇望

vaśīkāra　　　　　　　意のままにあやつる

sañjñā 　　　　　　　知る

vairāgyam　　　　　離欲

Vairāgya or Renunciation (vairāgyam) is known (sañjñā) as the act of subjugating (vaśīkāra) the desire (vitṛṣṇasya) for objects (viṣaya) seen (dṛṣṭa) or repeatedly heard from the scriptures (ānuśravika)||15||

[1.15]

तत्परं पुरुषख्यातेर्गुणवैतृष्ण्यम्॥१६॥
Tatparaṁ puruṣakhyāterguṇavaitṛṣṇyam||16||

この究極の真我の認識で「この世の3徳性」（グナ）から無頓着でいられる

tat→Tad

paraṁ 　　　一番高い　　究極

puruṣa　　　真我

khyāter　　　知識

guṇa　　　　　徳性　　　　　物質やエネルギーが持つ３つの特徴　　根本自性が内包する3つの特性

vaitṛṣṇyam　　無関心、無頓着

Indifference (vaitṛṣṇyam) to the Guṇa-s, (the qualities of nature) (guṇa), because of a knowledge (khyāteḥ) of Puruṣa (puruṣa) is called the highest (Vairāgya or Renunciation) (tad param)||16||

[1.16]

वितर्कविचारानन्दास्मितारूपानुगमात्सम्प्रज्ञातः॥१७॥
Vitarkavicārānandāsmitārūpānugamātsamprajñātaḥ||17||

姿とその精妙さと一体感と自我意識を手段として達するのが有想三昧（全体智のある瞑想）である。

Vitarka　　　　尋

vicāra　　　　　伺

ānanda　　　　歓喜

asmitā　　　　　自我意識

rūpa　　　　　　もの

anugamāt　　　　を手段として達する

samprajñātaḥ　　有想三昧　自意識などの想念がまだ残っているが大宇宙の事物を照らし出すことができる

サムプラジュニャータ・サマーディ（区別ある三昧・有想三昧）は論証性（尋）・反射（伺）・歓喜・純粋な自意識（我想）を伴う。[1.17]

Samprajñātasamādhi (samprajñātaḥ) (is achieved) by means of (anugamāt) Vitarka, Vicāra, Ānanda and Asmitā (vitarkavicārānandāsmitārūpa)||17||

विरामप्रत्ययाभ्यासपूर्वः संस्कारशेषोऽन्यः॥१८॥
Virāmapratyayābhyāsapūrvaḥ saṁskāraśeṣo'nyaḥ||18||

「（心素の働きの）変異を止滅する修習すると、止める行だけが残るのが無想三昧である」

「もう一つの三昧（無想三昧）は、心素の働きを止める想念を修習した結果、（止念の）行だけが残っている境地である」YS1.18

Virāma　　　　止める　止滅

pratyay　　　　変動、変異　　想念　概念

ābhyāsa　　　実践、修習　

pūrvaḥ　　　　先行する　上位である　前に行く　　重要である。

saṁskāra　　　行　

śeṣaḥ　　　　　残っている　

anyaḥ　　　　他の

śeṣo'nyaḥ

A samprajñātasamādhi無想三昧　全体智（部分に分けない）の三昧　　　想saññāが智慧paññāになる

無想三昧の境地に入っても、心素のすべての働きがなくなってしまった後でさえも、まだ行samskāraは消滅せずに残っている。

(Asamprajñātasamādhi is the) other (type of Samādhi) (anyaḥ) that is preceded (pūrvaḥ) by the practice (abhyāsa) of stopping (virāma) the mental fluctuations (pratyaya) (which is the natural fruit of the highest Vairāgya or Renunciation, but that) it (still) contains a residue (śeṣaḥ) of latent impressions (saṁskāra)||18||

[1.18]

भवप्रत्ययो विदेहप्रकृतिलयानाम्॥१९॥
Bhavapratyayo videhaprakṛtilayānām||19||

存在を原因とするのが、肉体を離脱した者や根本自性に没入した者である。

肉体を離脱した者や根本自性に没入した者でも、真我ではなく「存在（根本自性）」を原因にしてしまっている。

Bhava　　　　　　　　　存在　　　輪廻転生の世界　　　無知の世界　物質とエネルギー　　三界

pratyayo 　　　　　　　　原因とする　　作用

videha　　　　　　　　　　離身者　肉体を離脱した者、神々の異名

prakṛti-laya　　　　　　　　根本自性に没入した者

ānām

「存在を原因とする」とは輪廻転生の世界であるので、無知avidyā（真我と自性をまだ混同している）の境遇なので、また転生してしまうのは、離身者と自性に没入した者である。

両者は修習により、肉体を離れることができたり、自性に至るまでの実践ができたが、まだ真我に至っていないので、この世に再誕することになり解脱することができない。

存在（輪廻転生）の原因となる無想三昧？無種子三昧？

nirvījasamādhi

nirbījaamādhi無種子三昧

asamprajñāta 無想三昧

(There are two types of causes for Nirvījasamādhi --a Samādhi without an object to meditate on--: "upāyapratyaya" --the mental condition that is the outcome of a conscious effort by using a method-- and "bhavapratyaya" --the mental condition that is the outcome of latent impressions of ignorance--. The first type produces "Asamprajñātasamādhi", while the second one brings about a similar but not identical state).

(Thus, Nirvījasamādhi is caused by) the mental condition (pratyayaḥ) (that is the outcome) of latent impressions of ignorance (bhava) in the case of both the Videha-s or (discarnate) Deva-s (videha) and the Prakṛtilaya-s or those who have dissolved themselves in the primeval constituent principle (prakṛtilayānām)||19||

[1.19]

श्रद्धावीर्यस्मृतिसमाधिप्रज्ञापूर्वक इतरेषाम्॥२०॥
Śraddhāvīryasmṛtisamādhiprajñāpūrvaka itareṣām||20||

「堅信と活気と回想と三昧と智慧を用いるのが重要である」

Nirvījasamādhi　　　"real Asamprajñātasamādhi"-　　　主語は何？

Śraddhā　　　信念、堅信

vīrya　　　　　活力、元気、精力、精進，努力　　英雄的　パーリ語Vīriya，（‹vīra英雄‹aj去+īr，vi取代aj）　

smṛti　　　　　回想　記憶、念想　　　いつも心がけていること

samādhi　　　三昧

prajñā　　　　真の智慧、叡智

pūrvaka 　　　先立つ、重要である、優先する

itareṣām　　　　手段を用いる

(However,) in the case of those who tread the path of the conscious effort by using a method --upāya-- (itareṣām), (Nirvījasamādhi --which is now "real Asamprajñātasamādhi"--) is preceded (pūrvakaḥ) by faith (śraddhā), vigor (vīrya), recollection (smṛti), full concentration (samādhi) (and) true knowledge (prajñā)||20||

[1.20]

तीव्रसंवेगानामासन्नः॥२१॥
Tīvrasaṁvegānāmāsannaḥ||21||

「熱烈さによって離脱に至る」YS 1.21

Tīvra　　　　　　　　熱烈

saṁvegānām　　　　精神的解放

āsannaḥ　　　　　　到達する

(That very Nirvījasamādhi is quickly) reached (āsannaḥ) by those people having an intense (tīvra) desire of spiritual emancipation (saṁvegānām)||21||

[1.21]

मृदुमध्याधिमात्रत्वात्ततोऽपि विशेषः॥२२॥
Mṛdumadhyādhimātratvāttato'pi viśeṣaḥ||22||

「（熱烈さの）穏やさか、中ほど、強烈さの結果として（離脱に至る期間？に）違いがある」

Mṛdu ゆっくり　穏やか

madhya　　　　　中程　　

adhimātratvāt　　早い　　　強烈

tatas　　　　　　したがって、結果として

api 　　　　　　　一様に、公平に、さらに、でさえも、まさに

viśeṣaḥ　　　　　　違いがある　　差異がある

Because of (the methods or means) being mild --slow-- (mṛdu), moderate --medium-- (madhya) and excessive --"adhimātra" or speedy-- (adhimātratvāt), (there is) consequently (tatas) difference(s) (viśeṣaḥ) even (among those people who have an intense desire of spiritual emancipation) (api)||22||

[1.22]

ईश्वरप्रणिधानाद्वा॥२३॥
Īśvarapraṇidhānādvā||23||

「（あるいは）「大いなるもの」に深く専念する（ことで三昧は成る）」YS1.23

Īśvara　　　　　　　大いなるもの、主宰神、イーシュヴァラ、宇宙意識

praṇidhānādvā　　　専念、献身、祈祷、帰依

母親の膝に抱かれた乳児がその母親の世話に身を任せている限りは、慈しみ深い慈愛を受け続けることができるように、自己を滅却し絶対者ブラフマンへ完全に帰依しえた者だけが、絶対者ブラフマンとの霊的交流という甘露を味わい続けられる。

身体内外における絶対者ブラフマンの実相と根本自性についての知識も明らかにしてくれる。

これをラジャー・ヨーガでは法雲dharma megha三昧の境地と呼ぶ。

Or else (vā) (one can achieve Nirvījasamādhi) through profound devotion (praṇidhānāt) to Īśvara (īśvara)||23||

[1.23]

क्लेशकर्मविपाकाशयैरपरामृष्टः पुरुषविशेष ईश्वरः॥२४॥
Kleśakarmavipākāśayairaparāmṛṣṭaḥ puruṣaviśeṣa īśvaraḥ||24||

苦悩の原因、カルマ（因果のメカニズム）、結果、潜在意識からの影響をうけないのがプルシャ（本来の自己）であり、それはイーシュヴァラ（絶対者ブラフマン）が具象化したものである。

Kleśa　　　　　煩悩、苦悩の原因

karma　　　　　業、因果回路、パターン回路、アプリ、行サンスカーラの集合体、カタチとしての行為

vipāka　　　　　行為の結果、因果の果、結果

āśayaih　　　　　潜在印象の結果、　業遺存　　　　　　　＝残存印象vāsanā？

aparāmṛṣṭaḥ 　　影響を受けない

puruṣa　　　　　プルシャ、本来の自己、アートマン　　　プルシャとアートマンの関係

viśeṣah 　　　　特有の、独特な、特異な、　　TPOに限定されたことによる具体物　　具象化による結果

Īśvara　　　　　　　大いなるもの、主宰神、イーシュヴァラ、宇宙意識

Īśvara (īśvaraḥ) is a particular (viśeṣaḥ) Puruṣa (puruṣa) who is not affected (aparāmṛṣṭaḥ) by Kleśa-s --afflictions-- (kleśa), actions (karma), fruit of the actions (vipāka) or the resulting latent impressions --āśaya-- (āśayaiḥ)||24||

[1.24]

तत्र निरतिशयं सर्वज्ञवीजम्॥२५॥
Tatra niratiśayaṁ sarvajñavījam||25||

「大いなるもの」は、全知の種にも越えられない

Tatra 　　　　　　　　それ　彼

niratiśayaṁ 　　　　　越えない　超越しない、凌がない

sarvajña　　　　　　　全知

vījam　　　　　　　　種

イーシュヴァラには、全知の種が備わっている。[1.25]

In Him (tatra), the Omniscient (sarvajña) Seed (vījam) (has attained to a state which) cannot be exceeded or surpassed (niratiśayam)||25||

पूर्वेषामपि गुरुः कालेनानवच्छेदात्॥२६॥
Pūrveṣāmapi guruḥ kālenānavacchedāt||26||

（「おおいなるもの」が）以前の師にさえも越えられないのは、時間に制限されていないからである。

Pūrveṣām　　　　　　前、昔、以前

api 　　　　　　　　一様に、公平に、さらに、でさえも、まさに

guruḥ 　　　　　　師　　

kālena　　　　　　時間

anavacchedāt　　　制限されない

「絶対者ブラフマンは時間に制限された御方ではない」　YS1.26

別名、shankara、vishunu、hiraṇyagarbha （Hiraṇya黄金‐garbha胎子、卵）Ṛg Veda 10.121

「真我を車主と知れ。されば身体は馬車、理智は御者、意思は手綱なりとこそ知れ。

賢者は諸々の感覚器官を馬と呼び、感覚の対象物を馬にとっての道と呼び、身体と諸感覚器官と意思とを具したる真我をば享楽者と呼べり」　　　　　　　カタ・ウパニシャッド　3.3.4　　　　　ヤーマ師の喩え

(That Īśvara is) the Guru (guruḥ) even (api) of the former (guru-s) (pūrveṣām), because He is not determined or limited (anavacchedāt) by Time (kālena)||26||

[1.26]

तस्य वाचकः प्रणवः॥२७॥
Tasya vācakaḥ praṇavaḥ||27||

彼（大いなるもの）（を示す）言葉は聖なる波動（Om）である。

Tasya 　　　　　彼

vācakaḥ 　　　　言葉

praṇavaḥ　　　　聖音　オーム　　波動

The word (vācakaḥ) to (designate) Him (tasya) is Praṇava or Om̐ (praṇavaḥ or praṇavaḥ)||27||

[1.27]

तज्जपस्तदर्थभावनम्॥२८॥
Tajjapastadarthabhāvanam||28||

それ（Om）を唱えその（大いなるもの）意味を瞑想する

Taj→tad　　　　　　　　それ

japas→ japaḥ　　　　　唱える

tad　　　　　　　　　　それ　　

artha　　　　　　　　　　意味

bhāvanam　　　　　　　瞑想

その意味を熟考しながら「オーム」を繰り返し唱えることが、サマーディへの道である。[1.28]

(Those who have finally understood the intrinsical relationship between Praṇava and Īśvara will perform) the muttering (japaḥ) of that (Om̐) (tad) (and) the contemplation (bhāvanam) on its (tad) meaning (artha)||28||

ततः प्रत्यक्चेतनाधिगमोऽप्यन्तरायाभावश्च॥२९॥
Tataḥ pratyakcetanādhigamo'pyantarāyābhāvaśca||29||

それ（大いなるものへの帰依）によって、本来の自己に気づき、同時に妨げるものが取り除かれる。

Tataḥ→tatas　　　　　　それ

pratyakcetana　　　　　本来の自己

adhigamah　　　　　　　気づく　識る

o'py→api　　　　　　　　一様に、公平に、さらに、でさえも、まさに

śca→ca　　　　　　　　　 (api... ca) と同様に、同時に

antarāya　　　　　　　　障碍　　妨げるもの

abhāvah　　　　　　　　除去する　取り除く

śca→ca

From that (practice of Īśvarapraṇidhāna or devotion to Īśvara --Lord--) (tatas) (also comes) the realization (adhigamaḥ) of one's own true Self (pratyakcetana) as well as (api... ca) the removal (abhāvaḥ) of obstacles (antarāya)||29||[1.29]

व्याधिस्त्यानसंशयप्रमादालस्याविरतिभ्रान्तिदर्शनालब्धभूमिकत्वानवस्थितत्वानि चित्तविक्षेपास्तेऽन्तरायाः॥३०॥
Vyādhistyānasaṁśayapramādālasyāviratibhrāntidarśanālabdhabhūmikatvānavasthitatvāni cittavikṣepāste'ntarāyāḥ||30||

病気、無気力、疑念、不注意、怠惰、誤謬、心が安定した心境に到達できないのは、心が投影する障碍である

Vyādhi　　　　　　病気

styāna　　　　　　　精神的欠落　無気力

saṁśaya　　　　　　疑い

pramāda　　　　　不注意　怠慢、無頓着

ālasya　　　　　　　　怠惰

avirati　　　　　　　　自制できない　　コントロール不能

bhrānti-darśana　　　誤謬

alabdha　　　　　　　満足できない心境　　安定しない状態

bhūmikatva　　　　　　心が安定している

anavasthitatvāni 　　　目的が確立されていない　不規則な　　放蕩

citta　　　　　　　　　心の

vikṣepāh　　　　　　　放出　　投影、　投射

ste'→te　　　　　　　　そららの

antarāyāḥ　　　　　　　障碍

病気・無気力・疑念・不注意・怠惰・誤った認識・安定した心境に到達できない状態・得られた心境から滑落すること、これらの心の散動がその障害である。[1.30]

Sickness (vyādhi), mental inefficiency (styāna), doubt (saṁśaya), negligence (pramāda), idleness (ālasya), non-abstention --lack of control-- (avirati), erroneous perception (bhrānti-darśana), the state of not attaining (alabdha) to any yogic stage (bhūmikatva) (and) unsteadiness --anavasthitatva-- (anavasthitatvāni). Those (te) mental (citta) projections (vikṣepāḥ) (are) the obstacles (antarāyāḥ)||30||

दुःखदौर्मनस्याङ्गमेजयत्वश्वासप्रश्वासा विक्षेपसहभुवः॥३१॥
Duḥkhadaurmanasyāṅgamejayatvaśvāsapraśvāsā vikṣepasahabhuvaḥ||31||

苦痛・失望・体の震え・呼吸の吸入と呼出は（心の）投射と一緒に起こる

Duḥkha　　　　　　　　　苦痛

daurmanasya　　　　　　悲痛　悲惨

aṅgam　　　　　　　　　　体

ejayatva　　　　　　　　　震え

śvāsa　　　　　　　　　吸入

praśvāsāh 　　　　　　呼出

vikṣepa　　　　　　　　　　投射

saha　　　　　　　　　　　と一緒に

bhuvaḥ　　　　　　　　　生じる

心の散動に伴って、苦痛・失望・体の震え・呼吸の乱れが起こる。[1.31]

Pain (duḥkha), feeling of wretchedness and miserableness (daurmanasya), shakiness or trembling (ejayatva) of the body (aṅgam), inhalation (śvāsa) (and) exhalation --praśvāsa-- (praśvāsāḥ) appear or arise (bhuvaḥ) together with (saha) the (aforesaid) projections (vikṣepa)||31||

तत्प्रतिषेधार्थमेकतत्त्वाभ्यासः॥३२॥
Tatpratiṣedhārthamekatattvābhyāsaḥ||32||

For (artham) keeping that back --i.e. for stopping those mental projections-- (tad-pratiṣedha), the practice (abhyāsaḥ) of (concentration on) a single (eka) principle (tattva) (is recommended)||32||

Tad　　　　　　　　　　その

pratiṣedha　　　　　　

artham　　　　　　　　理解する？

eka １つの

tattva　　　　　　　　　原理

abhyāsaḥ　　　　　　実践

一つの対象に集中することが、これらの障害と付随物を防ぐ方法である。[1.32]

मैत्रीकरुणामुदितोपेक्षाणां सुखदुःखपुण्यापुण्यविषयाणां भावनातश्चित्तप्रसादनम्॥३३॥

慈・悲・喜・捨（他人の幸福を慈しみ、不幸に同情し、有徳の人物と関わることを喜び、受vedanāのタグをつけない）　　苦楽・徳不徳とみされるものを探求すると、心は安穏する。

Maitrī　　　　　　　　　友愛　　慈しみ

karuṇā　　　　　　　　　慈悲　　悲しみの共有

muditā　　　　　　　　　喜び　　喜びの共有　　　嫉妬しないこと

upekṣāṇāṁ 　　　　　　　不動　平静　　無関心　　捨　　　受vedanāのタグをつけない

sukha　　　　　　　　楽、幸福

duḥkha　　　　　　　　苦

puṇya　　　　　　　　　徳

apuṇya　　　　　　　　不徳

viṣayāṇāṁ 　　　　　　　　みなす

bhāvanātah　　　　　　　瞑想　　　探求する

citta　　　　　　　心

prasādanam　　　　平和　　安穏

慈・悲・喜・捨（他人の幸福を慈しみ、不幸に同情し、有徳の人物と関わることを喜び、不徳の人物とは関わらないこと）の習慣を養うことは、心を本来の平静な状態に保つ。[1.33]

Maitrīkaruṇāmuditopekṣāṇāṁ sukhaduḥkhapuṇyāpuṇyaviṣayāṇāṁ bhāvanātaścittaprasādanam||33||

Peace (prasādanam) of mind (citta) (is achieved) by (internally) contemplating (bhāvanātaḥ) on (the feelings) of friendship (maitrī), compassion (karuṇā), sympathy in joy (muditā) or indifference --upekṣā-- (upekṣāṇām) regarding (viṣayāṇām) (beings who are) happy (sukha), suffering pain or distress (duḥkha), virtuous (puṇya) (or) impure (apuṇya), (respectively)||33||

प्रच्छर्दनविधारणाभ्यां वा प्राणस्य॥३४॥
Pracchardanavidhāraṇābhyāṁ vā prāṇasya||34||

呼気と保息またはプラーナ気（のコントロールによっても心の安穏は保たれる）

Pracchardana　　　　　放出　呼気

vidhāraṇābhyāṁ 　　　保存、保有、記憶

vā 　　　　　　　　　　もしくは、または、

prāṇasya　　　　　　　プラーナ

または、心の平静はコントロールされた呼気と保息によって保たれる。[1.34]

Or (vā) (that very peace of mind can also be achieved) by exhalation (pracchardana) and retention --vidhāraṇa-- (vidhāraṇābhyām) of Prāṇa --the vital energy contained in the breath-- (prāṇasya)||34||

विषयवती वा प्रवृत्तिरुत्पन्ना मनसः स्थितिनिबन्धिनी॥३५॥
Viṣayavatī vā pravṛttirutpannā manasaḥ sthitinibandhinī||35||

微細次元の根源または活動性は、意思の安定が出現する原因である。

Viṣayavatī 　　　　対象物　　　客体といわれるものの根源　客塵

vā 　　　　　　　　もしくは、または、

pravṛttir　　　　　活動性　　知覚する　　　　

utpannā 　　　　　出現する

manasaḥ 　　　　　心の意思

sthiti　　　　　　　　　安穏とした　鈍重性　具象化

nibandhinī　　　　　原因

「口蓋において色をとらえる」YS1.35　ヴィヤーサ注解

形に関する粗雑次元の信号は、ブラフマランドラで微細次元のものへと変換されるが、転換された信号は微細視覚器官を刺激することで、物体の像をとらえることができる。

視覚神経がブラフマランドラに到る途中で口蓋内部を通っていることに気づくことで、○○を理解する。

仮説

粗雑元素は途中（口蓋）まではまだ微細元素に変換されていない

ブラフマランドラで粗雑色元素が微細色元素に変換される

微細元素に変換されるには、心が落ち着いている状態（瞑想状態）が条件である。

この色（視覚）の場合は、眼の前に精神集中することで、それが成功している場合は口蓋の意識もある。

または、微細な対象への感覚に集中することが心の安定をもたらす。[1.35]

Or (vā) a higher perception (pravṛttiḥ) relating to objects (viṣayavatī), (at the moment that) it emerges (utpannā), causes (nibandhinī) calm (sthiti) of mind (manasaḥ) (too)||35||

विशोका वा ज्योतिष्मती॥३६॥
Viśokā vā jyotiṣmatī||36||

もしくは、悲しみから放たれ輝く

Viśokā 　　　　　悲しみ、後悔、悲哀から離れる

vā もしくは、または

jyotiṣmatī　　　　輝いている

または、永遠に輝く至上な内なる光に集中することによって。[1.36]

Or (vā) (a higher perception) that is luminous (jyotiṣmatī) and free from sorrow (viśokā) (can also brings about peace of mind)||36||

वीतरागविषयं वा चित्तम्॥३७॥
Vītarāgaviṣayaṁ vā cittam||37||

もしくは、賢人の所有する心は。

Vītarāga　　　　賢人

viṣayaṁ 　　　　属する　　所有する　　　客体といわれるものの根源　客塵

vā 　　　　　　もしくは

cittam　　　　心を

または、知覚できる対象への執着から完全に自由な心に集中することによって。[1.37]

Or (vā) (the contemplation on) the mind (cittam) belonging (viṣayam) to a sage who is free from passions (vītarāga) (can also produce tranquility of mind)||37||

स्वप्ननिद्राज्ञानालम्बनं वा॥३८॥
Svapnanidrājñānālambanaṁ vā||38||

夢や深い眠りにおける知識の助けによっても

Svapna　　　　　　夢

nidrā　　　　深い睡眠

jñāna　　　　　区切り、区分け、差異、知

ālambanaṁ 　　支援　　助け

vā

または、神々しい夢や深い眠りにおける経験に対して集中することによって。[1.38]

Or (vā) the support (ālambanam) of the knowledges --in the form of words and/or images-- (jñāna) (experienced) in dreams (svapna) or in the state of dreamless sleep (nidrā) (can also bring peace and steadiness to the mind)||38||

यथाभिमतध्यानाद्वा॥३९॥
Yathābhimatadhyānādvā||39||

Or (vā) by meditating (dhyānāt) on whatsoever suitable --from a yogic viewpoint, of course-- thing one may like (yathā-abhimata) (he can also attain to peace of mind)||39||

Yathā　　

abhimata　　　　

dhyānāt　　　禅定

vā

または、どんなものでも、自分を高めてくれるものを選んで瞑想することによって。[1.39]

परमाणुपरममहत्त्वान्तोऽस्य वशीकारः॥४०॥
Paramāṇuparamamahattvānto'sya vaśīkāraḥ||40||

それ以上分けられないものから無限のおおきなモノに到るまで、そしてそれを超える神についても、

Paramāṇu　　　　　　　根本的元素

paramamahattva　　　無限の偉大さ

antah　　　　　　　　　に到るまで

asya 　　　　　　　　　超えるもの

vaśīkāraḥ　　　　　　　主人、支配者、神

瞑想によって、根本的な原子から最も巨大なものまで次第に解明されていく。[1.40]

(When the mind gets stabilized on different realities at will, from one as minute as) an atom --in the sense of the minutest conceivable particle which cannot be further divided-- (paramāṇu) up to (antaḥ) (other that is) infinitely great (paramamahattva), (then, complete) mastery or dominion (vaśīkāraḥ) over it (asya) (has been achieved)||40||

क्षीणवृत्तेरभिजातस्येव मणेर्ग्रहीतृग्रहणग्राह्येषु तत्स्थतदञ्जनता समापत्तिः॥४१॥
Kṣīṇavṛtterabhijātasyeva maṇergrahītṛgrahaṇagrāhyeṣu tatsthatadañjanatā samāpattiḥ||41||

When a weakened (kṣīṇa) fluctuation of mind (vṛtteḥ) (finally) arises consequently --that is, when the mental fluctuation is lastly weakened and the mind attains stability-- (abhijātasya), (this fluctuation behaves) like (iva) a (transparent) gem (maṇeḥ) in respect of the knower (grahītṛ), the instrument of knowledge (grahaṇa) and the knowables --grāhya-- (grāhyeṣu) --which are all objects of mental concentration--. (This, as it were,) act of assuming the color --nature-- of any near reality (tad-stha-tad-añjanatā) (by that gem-like weakened fluctuation of mind, is known as) Samāpatti or Engrossment (samāpattiḥ)||41||

心理作用が弱まると、知る主体、知覚器官、知覚対象は、宝石（透明な水晶）のようになる。宝石の近くにあるものと同じものが映っているような体験を「定」という。

cf. 　Dharana　精神集中　　　Dhyana/瞑想　禅定　　　　Samadhi三昧

Kṣīṇa　　　　　　　弱る

vṛtteh　　　　　　心理作用

abhijātasya　　　　安定

iva 　　　　　　　似ている　　　のように

maṇeh　　　　　　宝石　水晶

grahītṛ　　　　　　　賢者　識る者

grahaṇa　　　　　　知を媒介するもの　知覚器官

grāhyeṣu 　　　　　知り得るもの　　　知覚対象

tat　　　　　　　　それ

stha　　　　　　　　立っている

tad　　　　　　　　それ

añjanatā 　　　　　　同一 Identity. 　Pātaṅjala 　Yogadarśana, I.41.

samāpattiḥ　　　　　定　禅定　専心　没頭　融解

Samāpatti

1) Meeting, encountering.

2) Accident, chance,, accidental encounter; समापत्तिदृष्टेन केशिना दानवन (samāpattidṛṣṭena keśinā dānavana) V.1; M.4; क्रियासमापत्तिनिवर्तितानि (kriyāsamāpattinivartitāni) R.7.23; Ku.7.75.

3) Assuming an original form.

4) Completion, conclusion.

Samapatti in Theravada glossary　　　Source: Dhamma Dana: Pali English Glossary

F (Absorption). Fact to be mentally absorbed, by means of a very high level of concentration, enabling consciousness to be regularly and a long time focused on an object such as nibbana or a jhana.

透明な水晶が近くに置かれたものの姿や色を自然に映し出すように、ヨーギーの心はその働きを完全に弱めることで、清澄で均衡した状態となり、知る者・知られるもの・知の間の境界がなくなる。この瞑想の最高点がサマーディ（三昧）である。[1.41]

https://www.wisdomlib.org/hinduism/book/yoga-sutras-study/d/doc628713.html

Sūtra 1.41-46 [Samāpatti and Sabīja-Samādhi]

शब्दार्थज्ञानविकल्पैः सङ्कीर्णा सवितर्का समापत्तिः॥४२॥
Śabdārthajñānavikalpaiḥ saṅkīrṇā savitarkā samāpattiḥ||42||

「（対象の）言葉と意味と区分の概念が混同しているのは有尋定である。」

Śabda　　　　言葉

artha　　　　　意味

jñāna　　　　　知　差異　

vikalpaiḥ 　　　想像、空想　概念？

saṅkīrṇā 　　　結合する

savitarkā 　　　有尋

samāpattiḥ　　　定

対象の「名前」「形態」「知」が混入した状態のサマーディを「サヴィタルカ・サマーディ（有尋三昧）」と呼ぶ。

Savitarkā Samāpatti (savitarkā samāpattiḥ) (is that Engrossment which is) combined (saṅkīrṇā) with ideas or thoughts (vikalpaiḥ) of (sameness) between word (śabda), (its) meaning (artha) and (the resulting) knowledge (jñāna)||42||

[1.42]

स्मृतिपरिशुद्धौ स्वरूपशून्येवार्थमात्रनिर्भासा निर्वितर्का॥४३॥
Smṛtipariśuddhau svarūpaśūnyevārthamātranirbhāsā nirvitarkā||43||

「記憶は浄化され、（心素の）本来の姿は空虚のごとくになり、対象のみ光り輝くのが無尋三昧である」YS1.43

記憶（行サンスカーラとつながる回路）が浄化されて、認識しているものの「名称」や「時間的変化」から離脱すると対象は「空」にもどりただ輝く。これが無尋三昧である。

Smṛti　　　　　　　　記憶

pariśuddhau 　　　　浄化

svarūpa　　　　　　　ありのままの姿、本来の姿　　　swarūpa　本性、自性、本質的な面　

śūnyevā　　　　　　　　「空」、空虚

artha　　　　　　　　　対象

mātra　　　　　　　　のみ、唯一？

nirbhāsā 　　　　　　輝く

nirvitarkā　　　　　　　無尋　　　　

nir　　　　　　　　　　無

vitarkā　　　　　　　　暴力hiṁsāなどādayaḥのような否定的な行為をもたらす思考

記憶の意識が消えるSmṛtipariśuddhikと、自己意識もまた失われる事実は現代心理学ではどのように捉えられているのか？

記憶喪失になった者の認識システムは、対象のみ光り輝く無尋三昧のようであるには見えないが、ここを研究することも大事である。

When memory (smṛti) is completely purified (pariśuddhau), (and the intuitive cognition is), as it were (iva), devoid (śūnyā) of its own essential nature (sva-rūpa), (that Samāpatti or Engrossment) in which only (mātra) the object (on which the mind is concentrated) (artha) shines forth (nirbhāsā) (is called) Nirvitarkā (nirvitarkā)||43||

[1.43]

svarūpa = own form; true nature; true form Source: Ashtanga Yoga: Yoga Sutrani Patanjali

自己本来の姿や性質、ありのまま、本質的な面、自性、本性、

svarūpaは根本自性なのか？未顕根本自性なのか？

Source: Wisdom Library: Sāṃkhya philosophy

Svarūpa (स्वरूप, “homogeneous”) refers to one of the two types of pariṇāma (change　潜在が顕現する) according to the Sāṃkhya theory of evolution. It is also known as sadṛśa. Svarūpa-pariṇāma（心素自体の顕現） occurs during pralaya (dissolution), when each guṇa goes on transforming in itself without establishing dominance over the other guṇas. Pariṇāma refers to the ‘change’ or ‘flux流動’ occurring in prakṛti (matter), but which is absent in puruṣa (consciousness).

Source: Google Books: Manthanabhairavatantram

Svarūpa (स्वरूप) refers to one’s “essential nature”, according to the second recension of the Yogakhaṇḍa of the Manthānabhairavatantra, a vast sprawling work that belongs to a corpus of Tantric texts concerned with the worship of the goddess Kubjikā.—Accordingly, as Śrīkaṇṭha said to the Goddess: “Having abandoned this Vaiṣṇavī Māyā, reveal (your) essential nature (svarūpa). Tell me the Kula liturgy (krama) and (give me) the Kaulika consecration. O mistress of the gods, you are my saviour. There is no other (true) Vidyā at all. (I am) devoid of the Command and have fallen from (my) austerities. O mistress of the gods, tell (me) the knowledge (that will liberate me)”.

एतयैव सविचारा निर्विचारा च सूक्ष्मविषया व्याख्याता॥४४॥
Etayaiva savicārā nirvicārā ca sūkṣmaviṣayā vyākhyātā||44||

By means of this --i.e. by the previous explanation-- (etayā) (the Samāpatti-s or Engrossments known as) Savicārā (savicārā) and (ca) Nirvicārā (nirvicārā), whose objects (viṣayā) are subtle (sūkṣma), are also (eva) explained (vyākhyātā)||44||

こうして、有伺も無伺も微細次元の対象は説明される。

Etaya　　　　　　こうして

iva→eva 　　　　もまた

savicārā 　　　有伺　　　　　　　微細次元の存在を対象とする

nirvicārā 　　　無伺

ca 　　　　　　・・と　　　そして

sūkṣma　　　　　微細

viṣayā 　　　　　対象、客体

vyākhyātā　　　　説明する

有伺と無伺定は微細次元を対象にした禅定である。

上座部仏教では色界の初禅天は有尋有伺定、２禅天は無尋有伺定、３禅天から無色界の非想非々想処地までは無尋無伺定になる。

同様にして、微細な対象に対して行われるサヴィチャーラ・サマーディ（反射を伴う三昧・有伺三昧）およびニルヴィチャーラ・サマーディ（反射を伴わない三昧・無伺三昧）は説明される。[1.44]

सूक्ष्मविषयत्वं चालिङ्गपर्यवसानम्॥४५॥
Sūkṣmaviṣayatvaṁ cāliṅgaparyavasānam||45||

微細の根源は、根本自性である。

Sūkṣma　　　　　　微細、精妙

viṣayatvaṁ 　　　　　対象　　　　　客体といわれるものの根源　客塵

ca　　　　　　　　　そして

aliṅga　　　　　　　根本自性　　未顕現である万物の根源　　　それ以上の質量因の中へ没し去らないもの、　無没それ以上の質量因の中に没し去らないモノ Prakṛti-- (aliṅga)||45||

paryavasānam　　　　終わる、最高点に達する、頂点をなす、完結させる

微細Sūkṣmaとは「全体」から粗雑なもの（11根と5大粗雑元素）と真我を除いたもの、である。

具体的には、５微細元素、微細生気、我執ahankāra、心素citta、buddhi、manas、mahat時空軸、guna３徳性、根本自性prakrtiである。

別訳は、「対象は無相の根本自性までである。　YS1.45」

微細の根源は、非顕現の根本自性（名称・形態・想念もない、３グナの完全な平衡状態）である。

「多様性があるもの、ないもの、１つの意味しかないもの、そうでないものは３徳性の変化（グナの関係性）によリ生じる」2.19

[1.45]

And (ca) the character or condition of being a subtle (sūkṣma) object (viṣayatvam) (regarding a previous one which is less subtle) ends or culminates (paryavasānam) in Aliṅga --the Unmanifested

ता एव सवीजः समाधिः॥४६॥
Tā eva savījaḥ samādhiḥ||46||

「これらが有種子三昧である」YS1.46

Tāh　　　　　これら

eva 　　　　だけ

savījaḥ 　　　有種子

samādhiḥ　　三昧

vījaとは因果の種となる行サンスカーラがあることを意味している。

行サンスカーラが残っているので、瞑想が終わると、心の波立ちや束縛へと戻る可能性を持つ

Only (eva) those (four varieties of Samāpatti or Engrossment --Savitarkā, Nirvitarkā, Savicārā and Nirvicārā--) (tāḥ) (constitute) Savījasamādhi (savījaḥ samādhiḥ) (or the perfect concentration in which one uses a gross/subtle object or "vīja" as a support for his mind to become one-pointed)||46||

[1.46]

निर्विचारवैशारद्येऽध्यात्मप्रसादः॥४७॥
Nirvicāravaiśāradye'dhyātmaprasādaḥ||47||

「無伺三昧が無垢清浄となったとき（を熟練すると）、内的心理器官に清澄が生ずる」　YS1.47

Nirvicāra　　　無伺三昧

vaiśāradye　　上達、熟練　　or　無垢清浄？

adhyātma　　内的心理器官　　この文脈では特に理智、ブッディ、buddhi

prasādaḥ　　　清澄、透明、浄化、純粋、

三昧行法によって心素が清浄化され純粋化になると、〇〇理智buddhi？の善性が動・暗性のグナを抑えて透明で不動な状態を保つ。

言葉では言い表せず、心素だけが味わうことのできる思考の幸福感が湧き上がって真我が輝く。

[SV訳]: 論理を伴わない集中が浄化されれば、チッタ（心）はしっかりと落ち着く。

On getting skill or proficiency (vaiśāradye) in Nirvicārasamādhi --also known as Nirvicārā Samāpatti or Engrossment-- (nirvicāra), clearness or purity (prasādaḥ) in the inner instruments of knowledge --specially Buddhi or Intellect-- (adhyātma) (is developed as a result)||47||

[1.47]

ऋतम्भरा तत्र प्रज्ञा॥४८॥
Ṛtambharā tatra prajñā||48||

「直覚智とはこのような智である。」YS1.48

Ṛtambharā 直覚智　　　　　真理のみを保有する　　Ṛta真理、神の秩序、永久不変の法則　リグ・ヴェーダ

tatra 　　　このような

prajñā　　　智　　　　　　完成した区分、智慧

（訳）これがリタムバラー・プラジュニャー、絶対的な真理を得た状態である。

「直覚智とは、真理をそれ自体の中に宿しているような知性をいう」YS1.48

「（この智慧は」真理のみを保持するものであり、そこには誤まれる知識の片鱗だに存在しない」

YS1.48ヴィヤーサ注解

すなわち、誤ちを受け付けない知性の力のこと。

ヨーガ8段階の修行とは、知性の中にある動性と暗性を取り除くことで、真我と根本自性が識別できる智慧の光が現れでるのをゴールとする。

この境地の後に、無伺三昧に入れば、内的清涼adhyātma prasādとよばれる光が顕れ、これが直覚智である。

絶対的な真理を得た状態である

無伺三昧に入り切ると直覚智ritambharā　prajñāの境地が生じる。

肉体の感覚器官を介した信号で推理された知識は、微細元素、意思、理智、心素、我執、大といった事物に対しては間接的な情報を与えるにすぎない。

対して直覚智ritambharā　prajñā は直接的で究極的で誤解が混じりこまない知識である。

知り得た知識に真智の光prajñā ālokaを当てることで、誤謬や想像や疑問を生じさせるような不確実な知識を取り除く必要がある。

善性の光のみが、肉体の感覚器官では捉えられぬ精妙な事物の真の知識を得ることができる。

すなわち霊視によらなければ、事物の創造、維持、破壊のプロセス、内的心理器官、粗雑元素、微細元素、真我、絶対者ブラフマンを体感できない。

The deep understanding or knowledge (prajñā) (obtained) in that (state of Nirvicārasamādhi or Nirvicārā Samāpatti) (tatra) (is called) Ṛtambharā (ṛtambharā)||48||

[1.48]

श्रुतानुमानप्रज्ञाभ्यामन्यविषया विशेषार्थत्वात्॥४९॥
Śrutānumānaprajñābhyāmanyaviṣayā viśeṣārthatvāt||49||

「（無伺三昧の境地で得た智慧は）伝承や推理の知識とは異なり、（事象の）性質（特殊性）を対象とする」YS1.49

Śruta　　　　　　　伝達、伝承　　聖典から学ぶ

anumāna　　　　　　推論、推理、推測、推定

prajñābhyām　　　　知識

anyaviṣayā 　　　　違い　　異なる

viśeṣa　　　　　　　　性質

arthatvāt　　　　　　対象物

「無伺三昧の境地で得た智慧は、事象の特殊性を対象とするゆえに、伝承や推理の知識とは異なる」

無伺三昧の境地で得た深い智慧は

(And that Prajñā or deep knowledge gained in Nirvicārasamādhi) is different (anyaviṣayā) from knowledges (prajñābhyām) gotten through oral transmission (śruta) or inference (anumāna), because it relates to the particular characteristics (viśeṣa) of objects --artha-- (arthatvāt)||49||

[1.49]

तज्जः संस्कारोऽन्यसंस्कारप्रतिबन्धी॥५०॥
Tajjaḥ saṁskāro’nya saṁskāra pratibandhī||50||

「これ（三昧）によって生じる行は、他の全ての行を消し去る。」　YS1.50

Taj　　　　　　これ

jaḥ 　　　　　　生じる

saṁskāro　　　行サンスカーラ

anya 他の

saṁskāra　　　行サンスカーラ

pratibandhī　　消し去る

（訳）このサマーディによって生じる行は、他の全ての行を消し去る。

[SV訳]: このサマーディによって生じる印象は、他の全ての印象を覆い隠す。

The latent impression (saṁskāraḥ) born (jaḥ) of that (special Prajñā arisen in Nirvicārasamādhi) (tad) obstructs (pratibandhī) the other (anya) latent impressions (saṁskāra)||50||

[1.50]

तस्यापि निरोधे सर्वनिरोधान्निर्वीजः समाधिः॥५१॥
Tasyāpi nirodhe sarvanirodhānnirvījaḥ samādhiḥ||51||

「これ（行システム　自動反応回路アプリ）すらも消え去った時、全ての行が消える。これが無種子三昧である。」

YS 1.51

Tasya　　　それ　　　この文脈ではサンスカーラ

api 　　　　　も

nirodhe 消え去る、止滅

sarva　　　　すべて

nirodhānān　　消え去る、

nirvījaḥ 　　　無種子

samādhiḥ　　　三昧

（訳）この行すらも消え去った時、全ての行が消える。これがニルビージャ・サマーディ（無種子三昧）である。

[SV訳]: 他の印象を全て覆い隠すほどのこの印象さえも抑止することによって、全てが抑制され、「種子の無い」サマーディが訪れる。

On the cessation (nirodhe) of that --i.e. of the latent impression born of the aforesaid Prajñā-- (tasya) too (api), there is Nirvījasamādhi --or the perfect concentration which is objectless or "nirvīja", i.e. no object or "vīja" is utilized as a support for one's own mind to become one-pointed-- (nirvījaḥ samādhiḥ) through the suppression (nirodhāt) of all (mental modifications or fluctuations) (sarva)||51||

[1.51]

Here concludes the First Section dealing with concentration

Second Section : On practice

तपःस्वाध्यायेश्वरप्रणिधानानि क्रियायोगः॥१॥
Tapaḥsvādhyāyeśvarapraṇidhānāni kriyāyogaḥ||1||

修行生活と典籍研究と読誦とイーシュヴァラへの帰依がクリヤー・ヨーガである。

Tapaḥ　　　　　　　修行生活　　質素な生活　

svādhyāya　　　　　　　典籍研究と読誦

īśvara　　　　　　　　主宰神

praṇidhānāni 　　　　帰依

kriyāyogaḥ　　　　　実践ヨーガ

「苦行、読誦、主宰神への祈念の３つを実践ヨーガkriyā yogaという」YS2.1

苦行を浄化の助けとして受け入れること（タパス）・霊的な書物を研究し自己研鑽すること（スヴァーディヤーヤ）・宇宙意識に身を委ねること（イーシュヴァラ・プラニダーナ）が、「クリヤーヨーガ（実践のヨーガ）」の内容である。[2.1]

Austerity or Penance (tapas), Study of scriptures and Chanting of mantra-s (svādhyāya) (and) Devotion --praṇidhāna-- (praṇidhānāni) to the (Supreme) Lord (īśvara) (are) Kriyāyoga (kriyāyogaḥ)||1||

समाधिभावनार्थः क्लेशतनूकरणार्थश्च॥२॥
Samādhibhāvanārthaḥ kleśatanūkaraṇārthaśca||2||

三昧を行うのは煩悩を弱め、減少させるためである。そして、

Samādhi　　三昧

bhāvana　　　行う　

arthaḥ 　　　のため

kleśa　　　　　　　煩悩

tanūkaraṇa　　　　薄まる、弱まる、減少する、

arthah

ca　　　　　　　そして

これらは煩悩を最小化し、サマーディを達成する助けとなる。[2.2]

(Kriyāyoga should be practiced) for (arthaḥ... arthaḥ) producing (bhāvana) Samādhi or Perfect Concentration (samādhi) and (ca) attenuating (tanūkaraṇa) the Kleśa-s (kleśa)||2||

अविद्यास्मितारागद्वेषाभिनिवेशाः पञ्च क्लेशाः॥३॥
Avidyāsmitārāgadveṣābhiniveśāḥ pañca kleśāḥ||3||

Ignorance (in the form of a misapprehension about Reality) (avidyā), egoism (in the form of an erroneous identification of the Self with the intellect) (asmitā), attachment (rāga), aversion (dveṣa) and fear of death (which is derived from clinging ignorantly to life) --abhiniveśa-- (abhiniveśāḥ) are the five (pañca) Kleśa-s or Afflictions (kleśāḥ)||3||

無明、エゴ、執著、嫌悪、生存欲が５つの煩悩である。

Avidyā　　　　　　　　無明　　無知

asmitā　　　　　　　　エゴイズム　過剰自意識、自己中心

raga　　　　　　　　　愛着　執著

dveṣa　　　　　　　　　嫌悪

abhiniveśāḥ 　　　　　　死の恐れ　　　　生存欲　　生命欲

pañca 　　　　　　　　５つ

kleśāḥ　　　　　　　　　煩悩　　　苦痛の原因

[2.3]

अविद्या क्षेत्रमुत्तरेषां प्रसुप्ततनुविच्छिन्नोदाराणाम्॥४॥
Avidyā kṣetramuttareṣāṁ prasuptatanuvicchinnodārāṇām||4||

無明は（煩悩）の場所である。休止、弱体化、妨害、活性化に関わらず。

Avidyā 　　　　　無明　　無知

kṣetram　　　　　場所　　田地　発生の基盤

uttareṣāṁ 　　　　続いて起こる　　次の

prasupta　　　　　　　　休止状態

tanu　　　　　　　　　　　弱まる　減少する　薄まる

vicchinna　　　　　　　　妨害される

udārāṇām　　　　　　　　　活動的

kṣetramとは農地のことで、歴史的には田地と訳されており、「発生の基盤prasara-būmi」を意味する。

あらゆる煩悩の根基であるので、最高智prasamkhyānaによってしか破ることができない。

Avidyāもまた一つの智であり、自性、buddhi、ahankāra、5微細元素の8原理を誤って真我だと思い込むことである。

無知は、それらが休止状態・微弱な状態・妨害されている状態・持続している状態であるかに関わらず、後に述べられた他の煩悩の田地となる。[2.4]

Ignorance (in the form of a misapprehension about Reality) (avidyā) is the (breeding) field or ground (kṣetram) for the subsequent (four Kleśa-s) (uttareṣām) (whether they be) dormant (prasupta), attenuated (tanu), interrupted (vicchinna) or active --udāra-- (udārāṇām)||4||

अनित्याशुचिदुःखानात्मसु नित्यशुचिसुखात्मख्यातिरविद्या॥५॥
Anityāśuciduḥkhānātmasu nityaśucisukhātmakhyātiravidyā||5||

永遠ではないもの、清浄ではないもの、苦、自己ではないものを、永遠で、清浄で、楽、自己であると思ってしまうのが無明である。

Anityā　　　　永遠ではない　　無常

aśuci　　　　　　純粋ではない　　清浄ではない　　不浄

duḥkha　　　　苦悩、苦痛　　　無楽

anātmasu 　　　非自己　　無我

nitya　　　　　　永遠

śuci　　　　　　純粋　　清浄

sukha　　　　　楽

ātma　　　　　自己

khyātih　　　　考慮　　真知　　見解

avidyā　　　　無明

永遠ではないもの、清浄ではないもの、苦、自己ではないものを、永遠で、清浄で、楽、自己

無明とは、常に変化し続けるものを不変（永遠）とし、不純なものを純粋で清浄とし、苦を楽とし、真我でないもの（８原理）を真我とする区分けをする。

まずは徹底的に区分けをして差異を体感し、

次に、区分けされたものたちの共通点を直観して分けることを停止する。

こうして、ただ区分けをし続ける方法や、混同したままにまとめ上げて統合する、という無明の智（区分けの仕方）は消える。

つまり、はじめから十分に区分けをせずに統合してしまう過剰一般化することをやめ、

また区分けをしたままにして、それらの共通点を体感しない理智の限界を知る。

仏教の大念処経で、体、感情、心、心の内容が、いかに不浄、苦、無常、無我であるかを気づくための行法であり、無意識に行っている無明の区分けする仕方に意識化するのが目的である。

[2.5]

Ignorance (avidyā) is to consider (khyātiḥ) as everlasting (nitya) what is not everlasting (anitya), as pure (śuci) what is not pure (aśuci), as pleasure (or "pleasant") (sukha) what is pain (or "unpleasant") (duḥkha) and as the Self (ātma) what is the not-Self --anātma-- (anātmasu)||5||

दृग्दर्शनशक्त्योरेकात्मतेवास्मिता॥६॥
Dṛgdarśanaśaktyorekātmatevāsmitā||6||

観る者と観る作用との力を同一としてしまうのが「わたし」である。

Dṛg→dṛś　　　　　　見るもの、知るもの、観照者　プルシャ　　完全意識　真我

darśana　　　　　　知る（区分けする）働き・作用（媒介・道具）　　　

śaktyoh　　　　　パワー

ekātmatā　　　　　　　　同一

evā→iva　　　　　　　　　同等　同量　等しい

asmitā　　　　　　エゴ　　我想

観るものとはプルシャ、観るための道具とは理智buddhiのことと特定する注釈者もいるが、内的心理器官だけではなく、知覚器官や運動器官をも含めた解釈もある。

サンスクリット語のbuddhi（区分けし判断すること）は、漢字仏教用語としては「覚」と訳され、入力した信号や情報を区分けする内的心理器官の１つで、「魂の科学」の訳者は理智と呼んでいる。

参照　　内的心理器官とは心素citta、我執ahankāra、理智buddhi、意思manasの４つである。

asmitā我想とは何か？

何かを見たときに、誰がそれを経験したのかと考えることなく私達は日常生活を送っている。

客観的に考えると、それを経験したのが「わたし」asmitāである。つまり経験の主人公svāminである。

しかし、ここに無明がある、とヨーガ・スートラは説く。

この「わたし」が見る、という見解の時の「わたし」は、プルシャではなく、buddhiとしてしまう謬見である、という。

ここからも苦が生じるので、この見解が解消されるように修行することを提案する。

asmitāとはasmi「わたしはある」という動詞を名詞にしたものである。

すなわち、この「わたしはある」という基準をもつことが、「我は存在する」という煩悩である。

つまり、自我の実在を信じる心情が我想asmitāである。

[2.6]

Egoism (asmitā) is tantamount (iva) to the identification (ekātmatā) of the Cognizant or Knowing (dṛk) Power --śakteḥ or śaktyāḥ--¹ (śaktyoḥ) --i.e. "Puruṣa or the Absolute Consciousness"-- with the cognitive (darśana) power --śakteḥ or śaktyāḥ--²(śaktyoḥ) --i.e. "Buddhi or intellect"--||6||

¹"śaktyoḥ" means really "of the two powers" (Genitive Dual of "śakti" --power--). However, I had to translate it in singular for the sake of convenience. Nevertheless, I have also given the respective forms for the Genitive Singular of "śakti", that is, "śakteḥ or śaktyāḥ" --of the power--, for the sake of clarification.
² Idem.

सुखानुशयी रागः॥७॥
Sukhānuśayī rāgaḥ||7||

楽の（行為の）結果が貪愛である

Sukha　　　楽

anuśayī 　結果

rāgaḥ　　　愛着　執著　　２つの違いは？

バーシャの注釈では、快楽を経験した人がその体験を追憶してその手段に対して抱く愛着gardha、渇望tr̥ṣṇā、慳貪lobhaが貪愛rāgaである。

[2.7]

Attachment (rāgaḥ) is that which results (anuśayī) from pleasure (sukha); --i.e. "Attachment is the modification that is forged by the remembrance of enjoyed pleasure"--||7||

दुःखानुशयी द्वेषः॥८॥
Duḥkhānuśayī dveṣaḥ||8||

苦の行為の結果が嫌悪である

Duḥkha　　苦

anuśayī 　　結果

dveṣaḥ　　　嫌悪

dveṣaはrāgaの反対概念で、バーシャの注釈では同義語として、pratigha瞋、manyu怒、jighāmsā破壊欲、krodha忿の４つをあげている。

この４つの共通点は過去に「遠離」のタグをつけた信号（刺激・情報・事物）を再び経験する時に、拒絶するときの反応である。

説一切有部の五位七十五法ではpratigha瞋とkrodha忿が含まれる。

忿は、瞋に付随して起こるいきどおりのことで、例えば、自分の気に入らぬことに激怒して、杖で人を打とうとするぐらい激しい感情になる心をさす。この心は粗暴な言動を生み出す。

[2.8]

Aversion (dveṣaḥ) is that which results (anuśayī) from pain or sorrow (duḥkha); --i.e. "Aversion is the modification that is forged by the experience of misery"--||8||

स्वरसवाही विदुषोऽपि तथारूढोऽभिनिवेशः॥९॥
Svarasavāhī viduṣo'pi tathārūḍho'bhiniveśaḥ||9||

賢者でも持って生まれて確立されているのが死の恐怖である

Svarasavāhī 　　持って生まれた、　先天的、　固有の味の流れを保持するもの

viduṣah　　　　　賢者　　　　　　　輪廻転生と解脱の理を知った人、つまり真我と自性を区別できる人

'pi→api　　　　　同じように　　

tathā　　　　　　仕方、方法、態度

ārūḍhah　　　　　確立する

abhiniveśaḥ　　　死の恐怖　　　生存欲　　生命愛着

Svaは固有の、rasaは味、vāhīは保持するものを意味する。

rasaと表現したのは、本能的衝動で、それを的確に言い表せないためだという説がある。

固有の味をマニプラバー注釈では、「死の苦の経験から生じた習気vāsanāの集団」と解釈している。

つまり「生死に関わる行サンスカーラの集合体」である。

abhiniveśaḥとは何か？

バーシャは、「わたしがこの世にいなくなることのないように」「わたしはいつまでもいきておれますように」と思う心情であり、この原因を前世に経験した死の苦痛の記憶である、とする。つまり死に対する恐怖心である。

しかし煩悩とはこのような消極的なものだけではなく、「生への執著」という積極的なものもある。

たとえば自己保存の本能や、自己存在の維持や、これらを放すまいとする固執の心情である。

niveśaとはサンスクリット辞書によると、entering, entrance,settling in a place, encamping, halting、dwelling-place, habitation of any kind (as a house, camp, palace etc.) などが並ぶ。

「生活の場所」を表す。

abhiは強調する意味なので、生活の場所、広義では「この世」にこだわることも語源の１つなのではないか？

Source: DDSA: The practical Sanskrit-English dictionary

Niveśa (निवेश).—1 Entering, entrance.

2) Encamping, halting.

3) (a) A halting place, camp, encampment; सेनानिवेशं तुमुलं चकार (senāniveśaṃ tumulaṃ cakāra) R.5.49;7.2; Śi.17.4; Ki.7.27.

4) A house, an abode, a dwelling; निवेशपरिवेशनम् (niveśapariveśanam) Mb.14. 45.1; भृशं ददर्श (bhṛśaṃ dadarśa)...... स निवेशवीरुधः (sa niveśavīrudhaḥ) Ki.4.19.

5) Expanse, contour (of the breast); नवातपालोहितमाहितं मुहुर्महानिवेशौ परितः पयोधरौ (navātapālohitamāhitaṃ muhurmahāniveśau paritaḥ payodharau) Ki.4.8.

6) Depositing, delivering,

7) Marrying, marriage, settling in life; ततो निवेशाय तदा स विप्रः संशितव्रतः । महीं चचार दारार्थी न च दारानविन्दत (tato niveśāya tadā sa vipraḥ saṃśitavrataḥ | mahīṃ cacāra dārārthī na ca dārānavindata) || Mb.1.14.1.

8) Impression, copy.

9) Military array.

10) Ornament, decoration.

11) Founding (a town), निवेशं चक्रिरे सर्वे पुराणां नृवरास्तदा (niveśaṃ cakrire sarve purāṇāṃ nṛvarāstadā) Rām.1.32.5.

12) Settling in a place; वास्तुकर्मनिवेशं च भरतागमनं तथा (vāstukarmaniveśaṃ ca bharatāgamanaṃ tathā) Rām.1.3.16.

Derivable forms: niveśaḥ (निवेशः).

Source: Cologne Digital Sanskrit Dictionaries: Shabda-Sagara Sanskrit-English Dictionary

Niveśa (निवेश).—m.

(-śaḥ) 1. Entrance, entering. 2. Delivering, entrusting, depositing. 3. A camp. a place, the residence of a king or general. 4. Any dwelling. 5. Military array. 6. Ornament, dress, decoration. 7. Marriage. 8. Encamping. E. ni before, viś to enter, aff. bhāve ghañ,

Source: Cologne Digital Sanskrit Dictionaries: Benfey Sanskrit-English Dictionary

Niveśa (निवेश).—i. e. ni-viś + a, m. 1. Settling, [Harivaṃśa, (ed. Calc.)] 3520. 2. Encamping, 4999. 3. A residence, Mahābhārata 1, 7781. 4. A camp, 5, 173. 5. Marriage, 1, 1051. 6. Foundation, [Rāmāyaṇa] 1, 34, 5. 7. Impression, mark, [Śākuntala, (ed. Böhtlingk.)] [distich] 142, v. r.

[2.9]

The inborn (svarasavāhī) fear of death (abhiniveśaḥ) is established (ārūḍhaḥ) in like manner (in everyone) (tathā), even (api) in the wise (viduṣaḥ); --i.e. "Fear of death may be found in the ignorant as well as in the learned people"--||9||

ते प्रतिप्रसवहेयाः सूक्ष्माः॥१०॥
Te pratiprasavaheyāḥ sūkṣmāḥ||10||

それら（煩悩）は心理作用の停止と微細元素を放棄する（ことで消える）

Te 　　　　　　　　　それら

pratiprasava　　　　　心理作用の停止　　　

heyāḥ 　　　　　　　　放棄する

sūkṣmāḥ　　　　　　　微細元素　微細次元

微細元素とは行サンスカーラのことを意味する。

これらの煩悩が潜在的な状態のときは、根因に回帰させることで破壊することができる。[2.10]

Those (te) subtle (Kleśa-s or Afflictions) (sūkṣmāḥ) are to be abandoned or forsaken (heyāḥ) by means of the cessation of (mental) production (pratiprasava)||10||

ध्यानहेयास्तद्वृत्तयः॥११॥
Dhyānaheyāstadvṛttayaḥ||11||

禅定は消滅させる。それ（煩悩）の心理作用を。

Dhyāna　　　　禅定　　瞑想

heyāh　　　　　放棄する

tad　　　　　　それ

vṛttayaḥ　　　　修正　　心理作用

これらの煩悩が心の作用として現れているときは、瞑想によって破壊することができる。[2.11]

The (afflictive) modifications (vṛttayaḥ) of that --i.e. "of the abovementioned Kleśa-s or Afflictions"-- (tad) are to be abandoned or forsaken (heyāḥ) through meditation (dhyāna)||11||

क्लेशमूलः कर्माशयो दृष्टादृष्टजन्मवेदनीयः॥१२॥
Kleśamūlaḥ karmāśayo dṛṣṭādṛṣṭajanmavedanīyaḥ||12||

煩悩の元になって、カルマの原因と結果は現世と来世で顕現する

Kleśa　　　　　　　　　　　　煩悩

mūlaḥ 　　　　　　　　　　　基盤にしている

karmāśayo 　　　　　　　　カルマの原因と結果

dṛṣṭādṛṣṭajanma　　　　　　　　現世と来世

vedanīyaḥ　　　　　　　　　　顕現する

[2.12]

Latent impression of action (karma-āśayaḥ), which is based (mūlaḥ) upon Kleśa-s or Afflictions (kleśa), becomes manifest (vedanīyaḥ) in the present life (dṛṣṭa... janma) or in a future life (adṛṣṭajanma)||12||

सति मूले तद्विपाको जात्यायुर्भोगाः॥१३॥
Sati mūle tadvipāko jātyāyurbhogāḥ||13||

残っている根はその結果が境涯、生きる期間、経験となる。

Sati 　　　　　　　　　　　残る　　残存する

mūle 　　　　　　　　　　元になるもの　　根

tad　　　　　　　　　　　　それ

vipākah　　　　　　　　　結果　　一貫性　　　　　　　　　

jāty→jāti　　　　　　　　　誕生　境涯

āyur→āyus　　　　　　　　人生の期間

bhogāḥ　　　　　　　　　　経験

[2.13]

As long as that --i.e. "Kleśa-s or Afflictions"-- remains (sati) at the root (mūle), the consequence or result (vipākaḥ) of it (tad) is birth (jāti), span of life (āyus) and experience --bhoga-- (bhogāḥ)||13||

ते ह्लादपरितापफलाः पुण्यापुण्यहेतुत्वात्॥१४॥
Te hlādaparitāpaphalāḥ puṇyāpuṇyahetutvāt||14||

それらの快楽と痛みという結果は善と悪（のカルマ）の原因による

Te 　　　　　　　　　　　　それら

hlāda　　　　　　　　　　　快楽

paritāpa　　　　　　　　　　痛み

phalāḥ 　　　　　　　　　　　結果

puṇya　　　　　　　　　　　徳性

apuṇya　　　　　　　　　　　悪徳

hetutvāt　　　　　　　　　　原因

[2.14]

On account (hetutvāt) of virtue (puṇya) and vice (apuṇya), those --i.e. "birth, span of life and experience"-- (te) (appear as) the fruits (phalāḥ) of pleasure (hlāda) or pain (paritāpa), (respectively)||14||

परिणामतापसंस्कारदुःखैर्गुणवृत्तिविरोधाच्च दुःखमेव सर्वं विवेकिनः॥१५॥
Pariṇāmatāpasaṁskāraduḥkhairguṇavṛttivirodhācca duḥkhameva sarvaṁ vivekinaḥ||15||

「（自分自身で作ってしまった）因果と自動反応回路を経験して苦しみ、（この世の相反する）徳性により心は対立するので、賢者にとっては実に一切が苦である。」　YS 2.15

Pariṇāma　　　　　顕現関係　　因中有果　　因果の結果　　潜在が顕出する

tāpa　　　　　　　　経験

saṁskāra　　　　　　行　自動反応回路

duḥkhaih　　　　　　苦

guṇa　　　　　　　　３徳性

vṛtti　　　　　　　　心理作用

virodhāc　　　　　　対立

ca 　　　　　　　　また

duḥkham　　　　　苦

eva 　　　　　　　まったく、実に

sarvaṁ 　　　　　　すべて

vivekinaḥ　　　　　賢者

Pariṇāmaとは因中有果が意味する、もとからあったものが、新たに顕れ出ることで、「展開する」ということで、

可能態dyanmeiが現実態energeiaiに移行することで仏教用語で転変という。

転変の基礎となる実体substantiaは有法dharminすなわち、法dharmaの所有者である。

つまり法の主体のことで、この実体が現象態となって顕現するのには、３種（法dharma、時間的位相lakṣaṇa、様態avasthā）の転変が必要である。

陶器に喩えると、粘土が土団子、壺となる時、どれもが粘土であるというのが有法、現在の形で何かを判断するのが時間的位相、そして現在の形は瞬間ごとに粒子の結合が弱体化しているのが様態である。

ヒトが５知覚器官を使って経験しているのは様態としての事象である。

転変とは、有法の中の潜在性が現在性に転ずることである。

āīūṭḍṣṇṃr̥ñṅ ś ḥ　　　āśraya

「明哲の士にとっては一切は苦である。なぜかといえば、現象の転変と現実の悩みと、それに行、これらのすべてが苦であるからであり、かつ、3種の徳性の働きが互いに相反するからである。」YS　2.15

賢者が完全な離欲の境地に達した後では、実を結んだ業karmaによる経験があっても、その経験は賢者を束縛せず、心素と我執に関係した三昧の境地に入って、解脱にむかう助けになってくれる。

For discerning people (vivekinaḥ), everything (sarvam) is indeed (considered to be) (eva) painful (duḥkham) because of the sufferings (duḥkhaiḥ) (derived from) the results or consequences (of one's own actions) (pariṇāma), (from) the sorrowful experiences (tāpa) (and from) the latent impressions (saṁskāra), and also (ca) due to the (mutual) opposition (virodhāt) of the modifications (vṛtti) of the Guṇa-s (or qualities of Pradhāna¹) (guṇa)||15||

¹"Pradhāna" is Prakṛti.

[2.15]

हेयं दुःखमनागतम्॥१६॥
Heyaṁ duḥkhamanāgatam||16||

未来の苦は放棄できる。

Heyaṁ 　　　放棄される、見捨てられる

duḥkham　　　苦しみ

anāgatam　　未来の

Future (anāgatam) pain (duḥkham) is to be abandoned or forsaken (heyam)||16||

[2.16]

द्रष्टृदृश्ययोः संयोगो हेयहेतुः॥१७॥
Draṣṭṛdṛśyayoḥ saṁyogo heyahetuḥ||17||

「観るものと観られるものを一体にすることが、放棄する原因となる」

Draṣṭṛ　　　　　　　観るもの　　　　　　真我

dṛśyayoḥ 　　　　　観られるもの　　　　根本自性からなる宇宙、自然、体、物、対象物

saṁyogo 　　　　　結合

heya　　　　　　　　放棄される　孤独、わびしい、見捨てられる

hetuḥ　　　　　　　原因

The union (saṁyogaḥ) of the "Seer" --i.e. "of the Subject"-- (draṣṭṛ) with the "seen" (or knowable) --i.e. "with the animate or inanimate object" or "dṛśya"-- (dṛśyayoḥ) is the cause (hetuḥ) of that which is to be abandoned or forsaken (heya)||17||

[2.17]

प्रकाशक्रियास्थितिशीलं भूतेन्द्रियात्मकं भोगापवर्गार्थं दृश्यम्॥१८॥
Prakāśakriyāsthitiśīlaṁ bhūtendriyātmakaṁ bhogāpavargārthaṁ dṛśyam||18||

「意識があり、変化し、自力ではなく（グナの３徳性、善・動・暗もしくは照明・知・カタチ）、（粗雑と微細の）元素と（微細）感覚器官からなり、経験と解放のためにあるのが知られるもの（客体すなわち根本自性からなる宇宙、自然、心素、我執、理智、意思）である。」

Prakāśa　　　感覚（意識）のある　　

kriyā　　　　変わりやすい　　　　運動する

sthiti　　　　自力で行動［運動，抵抗］できない(⇔active)　カタチ、枠組み付けられる　　鈍重性　具象化

śīlaṁ 　　　　自然、宇宙　

bhūta　　　　元素　構成要素

indriya　　　感覚器官と運動器官　　知覚器官

ātmakaṁ 　　成り立つ

bhoga　　　　経験する

apavarga　　解放

arthaṁ 　　　　　　　　　　　　のため　　動機、目的

dṛśyam　　　　　　　　　　　　知られるもの、対象、客体、視られるもの　根本自性

この世界全体は粗雑次元の物質と微細次元の物質元素とからなり、これは不生から生じた不死の子たるアートマンにとっての経験と離脱のために創造された　　　　　　YS2.18

「視られるものとは、照明、運動、停止の性格をあわせ具え、粗雑元素と知覚、運動の器官とからなり、真我の経験と解脱をその目的とするものをいう」　　YS2.18

The "knowable" --i.e. "the object"-- (dṛśyam) is by nature (śīlam) sentient (prakāśa), mutable (kriyā) and inert (sthiti). (Secondly,) it consists (ātmakam) of (subtle and gross) elements (bhūta) (and) Indriya-s --i.e. "Powers of perceiving (Jñānendriya-s)" along with "Powers of action (Karmendriya-s)"-- (indriya). (Lastly,) it is for the sake (artham) of experience (bhoga) and Liberation (apavarga)||18||

[2.18]

विशेषाविशेषलिङ्गमात्रालिङ्गानि गुणपर्वाणि॥१९॥
Viśeṣāviśeṣaliṅgamātrāliṅgāni guṇaparvāṇi||19||

多様性があるもの、ないもの、１つの意味しかないもの、そうでないものは３徳性の変化によリ生じる

Viśeṣa　　　　　　　　　　多様性

aviśeṣa　　　　　　　　　　単様性

liṅgamātra　　　　　　　　一つを意味がするもの

aliṅgāni 　　　　　　　　　定義できないもの

guṇa　　　　　　　　　　　３徳性

parvāṇi　　　　　　　　　　変化、変異　盛衰

グナの段階は、顕現した状態・非顕現の状態・定義された状態・定義できない状態がある。

[2.19]

The states of mutation (parvāṇi) of the Guṇa-s (or qualities of Pradhāna¹) (guṇa) (are): "diversified" (viśeṣa), "undiversified" (aviśeṣa), "indicator-only" (liṅgamātra) and "one which is with no indication or mark" --aliṅga-- (aliṅgāni)||19||

¹"Pradhāna" is a synonymous with Prakṛti.

द्रष्टा दृशिमात्रः शुद्धोऽपि प्रत्ययानुपश्यः॥२०॥
Draṣṭā dṛśimātraḥ śuddho'pi pratyayānupaśyaḥ||20||

観る者は純一な観る力であり清浄であるが、心理作用は心素or理智が受け持つ

Draṣṭā 　　　観る者　　　　　真我

dṛśi　　　　　観る力　　　

mātraḥ 　　　のみ　だけ　　純一な

śuddhah　　清浄　　

'pi→api　　だが

pratyaya　　表象　心理作用　　　心の変化、修正

anupaśyaḥ　保持する

「観照者は純一なる視る力そのものである。それは清浄であるが、しかし、心素が提供する表象を介して視ている」YS2.20

真我はいかなる属性をも具えていないために、探求は困難になる。

「（真我は）心素に映る自分自身の姿を視て、自分自身を意識するものである」YS2.20ヴィヤーサ注解

心素に映し出された真我と感覚器官から伝えられた行サンスカーラとが、認識対象たる物体に着色されるのであって、純粋意識たる真我自体はいかなるモノからも色づけされることはない。

つまり着色するのは心素と理智のみであり、真我はこの色づけられた心素を視る。

視る（知る）働きは理智に属する性質であるが、識別智を得るまでは、知る性質は真我に属していると錯覚されてしまっている。

つまり真我は心素と理智とを視るのであって、これらを混同したり同一としてみる無知ゆえんの錯覚が誤謬をうむ。

「真我は理智とは同一のものではないが、かといって全く異質のものというわけでもない。」

YS2.20 ヴィヤーサ注解

態様を変化させることのない真我は、事物によって着色される理智の働く状態を視る立場である。

換言すると、感覚器官からの信号（認識対象の情報や知識）を真我に提供するのが理智である。

これが「（真我は）理智が提供する表象を介して視ている」YS2.20

観るものは観るための力そのものであり、純粋だが、それは心を通して観られる（心が波立っていれば、色付けられた状態で現れる）。[2.20]

The Seer (draṣṭā) is only (mātraḥ) a Witness --i.e. "He is an absolute Knower and completely devoid of Guṇa-s and subsequent mutation"-- (dṛśi) who although (api) pure (śuddhaḥ), beholds (anupaśyaḥ) the mental modifications (pratyaya)||20||

तदर्थ एव दृश्यस्यात्मा॥२१॥
Tadartha eva dṛśyasyātmā||21||

その対象物は、観られることが本当の役割である

Tad　　　それ

artha 　　対象

eva 　　本当に

dṛśyasya　知られること

ātmā　自然　役割？　担当？

観られるものは、観るものの目的のためだけに存在する。[2.21]

The nature (ātmā) of the knowable (dṛśyasya) is really (eva) (to be) the object (of perception) (arthaḥ) of That --i.e. "of Puruṣa, the Absolute Knower"-- (tad)||21||

कृतार्थं प्रति नष्टमप्यनष्टं तदन्यसाधारणत्वात्॥२२॥
Kṛtārthaṁ prati naṣṭamapyanaṣṭaṁ tadanyasādhāraṇatvāt||22||

Even though (api) disappeared (naṣṭam) with regard (prati) to one (Puruṣa) who has accomplished his purpose (with it) (kṛta-artham), that --i.e. "the object or knowable"-- (tad) does not (really) disappear (anaṣṭam) because of being common (sādhāraṇatvāt) to others (anya) (too) --i.e. "other Puruṣa-s also might use it even after its having been utilized by one of them previously"--||22||

対象は消えるが、消えないのはそれを他と共有しているからである。

Kṛta

arthaṁ 　　

prati　みなす

naṣṭam　消える　消滅する

apy　　　　　そうだが

anaṣṭaṁ 　消えない

tad　それ

anya　　他の

sādhāraṇatvāt　　共通している　共有する

観られるものは、解脱を達成したものにとっては破壊されているが、他のものにとっては依然として存在し、共有されている。[2.22]

स्वस्वामिशक्त्योः स्वरूपोपलब्धिहेतुः संयोगः॥२३॥
Svasvāmiśaktyoḥ svarūpopalabdhihetuḥ saṁyogaḥ||23||

所有されるものと所有するものの力が、実在原理を認識する原因となり、合一する

Sva　　　所有されるもの

svāmi　　所有するもの

śaktyoḥ 　パワー　　力

svarūpa　　実在原理

upalabdhi　　認識する

hetuḥ 　　　　原因

saṁyogaḥ　　　綜制　　合一

所有するもの（プルシャ・真我・魂）と所有されるもの（プラクリティ・自然界）の結合が、双方の本来の状態と力に関する認識を引き起こす。[2.23]

Union or alliance (saṁyogaḥ) is the cause (hetuḥ) for realizing (upalabdhi) the true nature (sva-rūpa) of the two powers (śaktyoḥ) (called) "object --as property--" (sva) (and) "subject --as owner--" (svāmi)||23||

तस्य हेतुरविद्या॥२४॥
Tasya heturavidyā||24||

それを原因として無明となる

Tasya 　　それ

hetur　　　原因

avidyā　　無明

「この結びつきの原因となるのは無知である。」YS2.24

[2.24]

Ignorance (avidyā) is the cause (hetuḥ) of that (union or alliance) (tasya)||24||

तदभावात्संयोगाभावो हानं तद्दृशेः कैवल्यम्॥२५॥
Tadabhāvātsaṁyogābhāvo hānaṁ taddṛśeḥ kaivalyam||25||

それが存在しないと合一も存在せず、解放されて、ただその知る者のみがある

Tad　　　　　その

abhāvāt　　存在がない

saṁyoga　　合一　　綜制

abhāvh　存在しない　

hānaṁ 解放された状態

tad　その

dṛśeḥ 　　　　知る者　　プルシャ

kaivalyam　　独存

[2.25]

The absence (abhāvaḥ) of union or alliance (saṁyoga) arising from the absence (abhāvāt) of that --i.e. "of Adarśana or lack of discriminative knowledge or real discernment about Reality"-- (tad) is Kaivalya (kaivalyam) or the state of Emancipation (hānam) of that (tad) (absolute) Knower (dṛśeḥ) (known as Puruṣa)||25||

विवेकख्यातिरविप्लवा हानोपायः॥२६॥
Vivekakhyātiraviplavā hānopāyaḥ||26||

区分する知が混同を消滅させ、解放する手段である

Viveka　　区分する

khyātir　　知識　　真知

aviplavā 混乱がない　　混同がない

hāna　　解放

upāyaḥ　方法　手段

[2.26]

The means (upāyaḥ) of Liberation (hāna) is discriminative (viveka) knowledge (khyātiḥ) which is completely devoid of confusion or disorder (aviplavā)||26||

तस्य सप्तधा प्रान्तभूमिः प्रज्ञा॥२७॥
Tasya saptadhā prāntabhūmiḥ prajñā||27||

それは７層あり、究極の智慧である。

Tasya 　それ

saptadhā ７層

prāntabhūmiḥ 究極の

prajñā　　　　智慧

それとは識別智のこと。

１：これ以上さらに何かを知ろうとする欲求、

２：何かを遠ざけようとする欲求、

３：新しいものを得ようとする欲求、

４：何かしたいという欲求、

５：悲しみ

６：恐怖

７：妄想

の７つが終息する智慧

[2.27]

A seven-fold (saptadhā) (and) ultimate (prāntabhūmiḥ) deep understanding (prajñā) (comes) to that (Yogī who has attained discriminative knowledge) (tasya)||27||

योगाङ्गानुष्ठानादशुद्धिक्षये ज्ञानदीप्तिराविवेकख्यातेः॥२८॥
Yogāṅgānuṣṭhānādaśuddhikṣaye jñānadīptirāvivekakhyāteḥ||28||

ヨーガの段階を実践することで、純粋でないものは破壊され、違いを照らす光が最高点に達するのが識別智である。

Yoga　　　ヨーガ

aṅga　　枝　手足　　支える　　支部　　段階

anuṣṭhānāt　実践によって

aśuddhi　　　汚れ　　純粋ではない

kṣaye　　破壊

jñāna　　　知識　区別　差異

dīptih　　光

ā　　　　最高点に達する

viveka　　区別する　識別する

khyāteḥ　　智　　　　　jñānaとkhyāteḥの違い

「ヨーガの諸段階を修行してゆくにつれ、次第に心素の汚れが消えてゆき、それに応じて智慧の光が輝きを増し、遂には識別智が現れる」YS2.28

真我ātman　　　　　精妙にして極小

神我paramātman　　絶対者ブラフマンは万物の中にあって極大

この2つを識別できると、喜びと悲しみ、情欲と憎悪といった2者対立の感情を克服することができる。

識別（弁別）智とは根本自性prakritiと真我purushaとを区別できる　　　　ヨーガスートラ2.28

こうして根本寂静swarūpa sthitiの境地に至ることができる

この識別智は最終的な三昧の境地のなかで現れてくる智慧である。

[2.28]

On the destruction (kṣaye) of impurity (aśuddhi) through the practice (anuṣṭhānāt) of the limbs (aṅga) of Yoga (yoga), (there emerges) the Light (dīptiḥ) of Knowledge (jñāna) culminating (ā) in discriminative (viveka) knowledge (khyāteḥ)||28||

यमनियमासनप्राणायामप्रत्याहारधारणाध्यानसमाधयोऽष्टावङ्गानि॥२९॥
Yamaniyamāsanaprāṇāyāmapratyāhāradhāraṇādhyānasamādhayo'ṣṭāvaṅgāni||29||

Yama禁戒、niyama勧戒、asana坐法、prāṇāyāma調息法、pratyāhāra制感、dhāraṇā凝念、dhyāna静慮、

samādhayah三昧が８段階である。

Yama　　　　禁戒

niyama　　　勧戒

asana　　　　坐法

prāṇāyāma　　調息法

pratyāhāra　　制感

dhāraṇā　　　凝念

dhyāna　　　静慮

samādhayah　三昧

'ṣṭāv→aṣtau　８

aṅgāni　　　　部門、支、段階　

[2.29]

Yama (yama), Niyama (niyama), Āsana (āsana), Prāṇāyāma (prāṇāyāma), Pratyāhāra (pratyāhāra), Dhāraṇā (dhāraṇā), Dhyāna (dhyāna) (and) Samādhi --samādhi-- (samādhayaḥ) (are) the eight (aṣṭau) limbs --aṅga-- (of Yoga) (aṅgāni) --after this statement, Patañjali will describe each of them in detail--||29||

अहिंसासत्यास्तेयब्रह्मचर्यापरिग्रहा यमाः॥३०॥
Ahiṁsāsatyāsteyabrahmacaryāparigrahā yamāḥ||30||

非暴力・誠実・不盗・自制・不貪がヤマ（禁戒）である。

Ahiṁsā　　　　非暴力

satya　　　　　非妄語

asteya　　　　　非取

brahmacaryā　　ブラーフマにしたがって　　非淫

aparigrahā 　　　非所有

yamāḥ　　　　　　ヤマ　禁戒

[2.30]

Non-injury --harmlessness-- (ahiṁsā), Veracity --truthfulness-- (satya), Abstention from stealing (asteya), Continence --dwelling in Brahma-- (brahmacarya) and Non-possession --abstinence from avariciousness/covetousness; aparigraha-- (aparigrahāḥ) (are the five) Yama-s or Restraints (yamāḥ)||30||

जातिदेशकालसमयानवच्छिन्नाः सार्वभौमा महाव्रतम्॥३१॥
Jātideśakālasamayānavacchinnāḥ sārvabhaumā mahāvratam||31||

（これらの禁戒は）階級、場所、時間、状況に限定されない普遍なもので、大いな誓いである。

Jāti　　　　　　　　　　　境涯、階級

deśa　　　　　　　　　　　場所

kāla　　　　　　　　　　　時間

samaya　　　　　　　　　　状況、環境

anavacchinnāḥ 　　　　　　限定されない

sārvabhaumā 　　　　　　　普遍の

mahā　　　　　　　　　　　大いなる

vratam　　　　　　　　　誓い

[2.31]

(Those Yama-s or Restraints turn into) a great (mahā) vow (vratam) (when they become) universal (sārvabhaumāḥ) and unrestricted (anavacchinnāḥ) by (any consideration of) class (jāti), place (deśa), time (kāla) or customary duty --"established custom and conventional rule or usage" are also valid translations for "samaya"-- (samaya)||31||

शौचसन्तोषतपःस्वाध्यायेश्वरप्रणिधानानि नियमाः॥३२॥
Śaucasantoṣatapaḥsvādhyāyeśvarapraṇidhānāni niyamāḥ||32||

Cleanliness (śauca), Contentment (santoṣa), Austerity or Penance (tapas), Study and Recitation of Sacred Scriptures (svādhyāya), and Devotion --praṇidhāna-- (praṇidhānāni) to the (Supreme) Lord (īśvara) (are the five) Niyama-s or Observances (niyamāḥ)||32||

ニヤマ（勧戒）は、清浄・知足・熱意・自己研鑽・神への祈念（帰依）によって成り立つ。[2.32]

वितर्कबाधने प्रतिपक्षभावनम्॥३३॥
Vitarkabādhane pratipakṣabhāvanam||33||

On the inhibition (bādhane) (of those Yama-s and Niyama-s) by (erroneous) ways of thinking and feeling (vitarka), (a Yogī should cultivate) contemplation (bhāvanam) on the opposites (pratipakṣa)||33||

否定的な思考によって心が波立つときは、反対の（肯定的な）思考を用いて打ち消す。これがプラティパクシャ・バーヴァナである。[2.33]

वितर्का हिंसादयः कृतकारितानुमोदिता लोभक्रोधमोहपूर्वका मृदुमध्याधिमात्रा दुःखाज्ञानानन्तफला इति प्रतिपक्षभावनम्॥३४॥
Vitarkā hiṁsādayaḥ kṛtakāritānumoditā lobhakrodhamohapūrvakā mṛdumadhyādhimātrā duḥkhājñānānantaphalā iti pratipakṣabhāvanam||34||

暴力や侮蔑などの否定的な行為をもたらす思考を自分だけではなく他者がすることを認めただけでも、貪瞋痴（欲望・怒り・迷妄）が先行していても、穏やか・中ほど・激しい状態であっても、苦と無知は終わりのない結果となる。だから対立（反作用）に対して深く熟慮する。

Vitarkā 　　否定的な行為をもたらす思考

hiṁsā　　暴力

ādayaḥ 　　侮蔑する　　尊敬しない

kṛta　　　自力　自分

kārita　　他力　他者

anumoditāh　同意　賛意　認める

lobha　　　　欲　貪欲　　貪

krodha　怒り　憤怒　　　瞋

moha　　　痴

pūrvakā 　先行する　優位である

mṛdu　　　　穏やか

madhya　　　中ほどの

adhimātrā 　強烈な

duḥkha　　苦

ajñāna　　無知　　区別できない

ananta　　終わりのない

phalā 　　結果　　因果

iti

pratipakṣa　　　対立する

bhāvanam　　　考え

暴力hiṁsāなどādayaḥのような否定的な行為をもたらす思考Vitarkāが生まれたとき、あるいは他者のそれを認めただけのときであっても、欲望・怒り・迷妄などいかなる原因によって引き起こされたものでも、穏やか・中位・激しいなどいかなる状態であっても、それらは無知によって生まれ、無知がある限り終わらない苦痛をもたらす。

それらによってどのようなこと（反作用）が起こるのかを熟考することもまた、対抗手段pratipakṣa　bhāvanamである。[2.34]

[2.34]

(Such actions as) injury (hiṁsā), etc. (ādayaḥ) proceeding from (erroneous) ways of thinking and feeling (vitarkāḥ) (are as follows): (I) those which are performed by oneself (kṛta), got done by another (kārita) or approved --anumodita-- (anumoditāḥ); (II) those which are preceded (pūrvakāḥ) (either) by covetousness (lobha), wrath (krodha), or delusion (moha). (Moreover, the aforesaid actions can be either) mild (mṛdu), moderate (madhya) or intense --adhimātra-- (adhimātrāḥ). "(They are) the unending (ananta) fruits or consequences (phalāḥ) (resulting from) pain (duḥkha) (and) ignorance (ajñāna)" --"iti" stands for inverted commas-- is the opposite (pratipakṣa) thought (bhāvanam)||34||

अहिंसाप्रतिष्ठायां तत्सन्निधौ वैरत्यागः॥३५॥
Ahiṁsāpratiṣṭhāyāṁ tatsannidhau vairatyāgaḥ||35||

攻撃しないようになるとその周辺では敵意がなくなる。

Ahiṁ　非暴力

sāpratiṣṭhāyāṁ 確立する

tat　それに

sannidhau 近寄る

vaira　敵意

tyāgaḥ　止める　止まる　なくなる

On the establishment (pratiṣṭhāyām) of Ahiṁsā or Non-injury (ahiṁsā) (in a Yogī, there is) cessation (tyāgaḥ) of hostility (vaira) (in one) coming close (sannidhau) to him (tad)||35||

[2.35]

सत्यप्रतिष्ठायां क्रियाफलाश्रयत्वम्॥३६॥
Satyapratiṣṭhāyāṁ kriyāphalāśrayatvam||36||

誠実になると行為と結果が直結する

Satya　　　真実　真理　　誠実

pratiṣṭhāyāṁ 　　確立する

kriyā　行動　行為

phala　結果

āśrayatvam　つながり　　　　āśraya　拠り所　　ここで潜在的行が形となる

誠実な行為が誠実な結果になる。

つながりを強調する理由は？

[2.36]

On the establishment (pratiṣṭhāyām) of Satya or Truthfulness (satya) (in the Yogī), a state of connection (āśrayatvam) between (his) actions --as the general idea expressed by any verb-- (kriyā) and the (resulting) fruits or consequences (phala) (arises) --i.e. "all that the abovementioned Yogī says will come true in the long run"--||36||

अस्तेयप्रतिष्ठायां सर्वरत्नोपस्थानम्॥३७॥
Asteyapratiṣṭhāyāṁ sarvaratnopasthānam||37||

盗まないようになると、すべての宝石が集まってくる。

Asteya　　　　盗まない

pratiṣṭhāyāṁ 　確立する

sarva　　　　すべて

ratna 宝石

upasthānam　近くに集まる

「すべての宝石」とは、世界中の富ではなく、各自にとって必要なものを意味する。

換言すると、「貪欲が減少する」「外界からの刺激が減少する」そして「足るを知る」という心の浄化によって、学習した自動反応回路を弱体化することができる。

[2.37]

On the establishment (pratiṣṭhāyām) of Asteya or Non-stealing (asteya) (in the Yogī), all (sarva) jewels (ratna) stand near in order to serve (upasthānam) (him)||37||

ब्रह्मचर्यप्रतिष्ठायां वीर्यलाभः॥३८॥
Brahmacaryapratiṣṭhāyāṁ vīryalābhaḥ||38||

宇宙原理に従うと、活力を得る

Brahmacarya　　ブラフマン（梵）（宇宙我）（宇宙意）に忠実である、ように振る舞う

pratiṣṭhāyāṁ 確立する

vīrya　　活力　　スタミナ　精進　英雄

lābhaḥ　獲得する

ブラフマチャリヤの解釈は多く、自制や淫らな性行為などあるが、ポイントは過剰な欲望の節制

宇宙原理に忠実なこととは「いま・ここ」の変化に応対すること、もしくは心を働かせないという２つの極点

宇宙原理に反することは、パターンからはじめてTPOに合わない無理強いをすること　

自制といっても、宇宙原理ではなく作ってしまったパターンに合わせることかもしれない。

[2.38]

On the establishment (pratiṣṭhāyām) of Brahmacarya or Continence (brahmacarya) (in that Yogī, there is) acquisition (lābhaḥ) of Vīrya --lit. "energy, vigor, stamina, strength, etc."-- (vīrya)||38||

अपरिग्रहस्थैर्ये जन्मकथन्तासम्बोधः॥३९॥
Aparigrahasthairye janmakathantāsambodhaḥ||39||

所有しないようにすると、（自分や宇宙の）存在がどのようなものか、という根本的な知をえる。

Aparigraha　　所有しない

sthairye 　堅固にする

janma　　存在

kathantā　　　　なに、そしてどのような状態なのか？

sambodhaḥ　　　全知識

[2.39]

When (that very Yogī) stands firmly (sthairye) in Aparigraha or Non-possession (aparigraha), full knowledge (sambodhaḥ) of "the how, the what state?" (kathantā) about (his past, present and future) existences (janma) (arises)||39||

शौचात्स्वाङ्गजुगुप्सा परैरसंसर्गः॥४०॥
Śaucātsvāṅgajugupsā parairasaṁsargaḥ||40||

浄化をはじめると、自分の体を嫌悪し、他者との接触をしなくなる

Śaucāt　　浄化清浄

sva　　　　各自自身の

aṅga　体

jugupsā 嫌悪

parair　　他と

asaṁsargaḥ　接触を考えなくなる

シャウチャー（内的・外的な清浄）に徹することで、自身の体に対してすら嫌悪感が生じ、他者の体と交わることへの興味もなくなる。[2.40]

From Śauca or Cleanliness (śaucāt), dislike (jugupsā) toward one's own (sva) body (aṅga) (arises, and consequently) unconcernedness to contact (asaṁsargaḥ) with other (bodies) (paraiḥ) (is also developed)||40||

सत्त्वशुद्धिसौमनस्यैकाग्र्येन्द्रियजयात्मदर्शनयोग्यत्वानि च॥४१॥
Sattvaśuddhisaumanasyaikāgryendriyajayātmadarśanayogyatvāni ca||41||

善性（サットヴァ）の純粋性、快活、集中力、感覚器官のコントロール、本来の自己を知る可能性をも得る。

Sattva　　善性

śuddhi　　純粋性

saumanasya　満足、快活性

aikāgrya　　集中する

indriya　感覚器官　

jaya　　征服、制御、コントロール

ātma　　本来の自己

darśana　　　認識のため　

yogyatvāni 可能性

ca　また

(Besides, from Śauca or Cleanliness,) purity (śuddhi) of nature or disposition (sattva), satisfaction of mind (saumanasya), one-pointedness (aikāgrya), conquest (jaya) of the Indriya-s --5 Jñānendriya-s or powers of perception, and 5 Karmendriya-s or powers of action-- (indriya) (and) fitness or ability --yogyatva-- (yogyatvāni) for perceiving (darśana) the Self (ātma), (are) also (ca) (developed)||41||

[2.41]

सन्तोषादनुत्तमसुखलाभः॥४२॥
Santoṣādanuttamasukhalābhaḥ||42||

足るを知ることで、無上の幸せを得る

Santoṣ　　　満足

ādanuttama　まさるものがない　無上の　無比の

sukha　　幸せ

lābhaḥ　　獲得する

サントーシャ（知足）によって、至上の幸福がもたらされる。[2.42]

From Santoṣa or Contentment (santoṣāt); (there is) acquisition (lābhaḥ) of unsurpassed (anuttama) happiness (sukha)||42||

कायेन्द्रियसिद्धिरशुद्धिक्षयात्तपसः॥४३॥
Kāyendriyasiddhiraśuddhikṣayāttapasaḥ||43||

肉体と感覚器官が完全になるのは、不純を破壊する修行である

Kāye　　肉体

indriya　感覚器官

siddhih　完全達成

aśuddhi　　不純、不浄

kṣayāt　破壊する

tapasaḥ　　修行　苦行、熱意

[2.43]

Perfection (siddhiḥ) of body (kāya) and Indriya-s --5 Jñānendriya-s or powers of perception, and 5 Karmendriya-s or powers of action-- (indriya) (is acquired) through Tapas or Austerity (tapasaḥ), which brings about destruction (kṣayāt) of impurities (aśuddhi)||43||

स्वाध्यायादिष्टदेवतासम्प्रयोगः॥४४॥
Svādhyāyādiṣṭadevatāsamprayogaḥ||44||

聖典研究と読誦によって、望んだ神と交合する

Svādhyāyād　聖典研究と読誦

iṣṭa　　　望んだ、　選んだ

devatā　　神々

samprayogaḥ　　合一　交合

[2.44]

Union or communion (samprayogaḥ) with the desired or chosen (iṣṭa) deity (devatā) (is obtained) from Svādhyāya or Study and Recitation of Sacred Scriptures (svādhyāyāt)||44||

समाधिसिद्धिरीश्वरप्रणिधानात्॥४५॥
Samādhisiddhirīśvarapraṇidhānāt||45||

三昧の完全なる到達は大いなるものへの帰依による

Samādhi　三昧

siddhir　　完全な到達、達成

īśvara　　主　神　大いなるもの

praṇidhānāt　　帰依

「主宰神への祈念によって三昧に成功することができる」　　　YS2.45

参照）　「あるいは主宰神に対する祈念によっても無想三昧の成功に近づくことができる」　　YS1.23

[2.45]

Perfection or complete attainment (siddhiḥ) of Samādhi or Perfect Concentration (samādhi) (is achieved) through devotion (praṇidhānāt) to the Lord (īśvara)||45||

स्थिरसुखमासनम्॥४६॥
Sthirasukhamāsanam||46||

堅固で快適な坐りをする

Sthira　　堅固、安定

sukham　同意、　快適、

āsanam　　姿勢　　坐法

[2.46]

Posture (āsanam) (should be) firm (sthira) and agreeable --pleasant-- (sukham)||46||

प्रयत्नशैथिल्यानन्तसमापत्तिभ्याम्॥४७॥
Prayatnaśaithilyānantasamāpattibhyām||47||

努力を気にすることがなくなると、時空の無限の中で、融解する。

Prayatna　　努力

śaithilya　弛緩によって　

ananta　　時空の無限　

samāpattibhyām　　　融解　溶解　合一

[2.47]

By means of relaxation (śaithilya) of effort (prayatna) and absorption --samāpatti-- (samāpattibhyām) in the infinite --i.e. "in the infinite space around"-- (ananta) (Āsana or Posture is perfected)||47||

ततो द्वन्द्वानभिघातः॥४८॥
Tato dvandvānabhighātaḥ||48||

From that (tatas), (there is) immunity (anabhighātaḥ) with regard to the pairs of opposites (dvandva)||48||

そう（融解の体験をすると）すると、二元性（の対立）は免除される

Tato→tatas　それ

dvandva　二元性

anabhighātaḥ　　免疫、免除、のがれる

[2.48]

From that (tatas), (there is) immunity (anabhighātaḥ) with regard to the pairs of opposites (dvandva)||48||

तस्मिन्सति श्वासप्रश्वासयोर्गतिविच्छेदः प्राणायामः॥४९॥
Tasminsati śvāsapraśvāsayorgativicchedaḥ prāṇāyāmaḥ||49||

吸気と呼気の動きが止まる。これがプラーナーヤーマ調息法である。

Tasmin　　その

sati　気づき？　be動詞？

śvāsa　　吸気

praśvāsayoh　呼気　

gati　動き　

vicchedaḥ 　休止、中断　　

prāṇāyāmaḥ　　　調息法

「安定したアーサナが得られたならば、呼息と吸息の流れを断ち切ることがプラーナーヤーマである。」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

YS2.49

[2.49]

Once that (tasmin) (Āsana or Posture) has been (perfected) (sati), Prāṇāyāma (prāṇāyāmaḥ), (which) is the suspension (vicchedaḥ) of the flow (gati) of inhalation (śvāsa) and exhalation --praśvāsa-- (praśvāsayoḥ), (should be developed)||49||

वाह्याभ्यन्तरस्तम्भवृत्तिः देशकालसङ्ख्याभिः परिदृष्टो दीर्घसूक्ष्मः॥५०॥
Vāhyābhyantarastambhavṛttirdeśakālasaṅkhyābhiḥ paridṛṣṭo dīrghasūkṣmaḥ||50||

（プラーナは）外に向かう働き、内に向かう働き、停留する働きがあり、空間、時間、数が霊視され、（プラーナは）長くそして微細になる。

Vāhya　　外側の

ābhyantara　内側の

stambha　抑制　

vṛttir　　働き、作用　

deśa　　空間

kāla　　時間

saṅkhyābhiḥ　数　　

paridṛṣṭo　　観られる

dīrgha　　長くなる

sūkṣmaḥ　　微細

[2.50]

(Prāṇāyāma) has (three) Operation(s) (vṛttiḥ): (1) External (vāhya), (2) Internal (ābhyantara) and (3) Suppression (stambha). (And when Prāṇāyāma is) observed (paridṛṣṭaḥ) according to space (deśa), time (kāla) and number --saṅkhyā-- (saṅkhyābhiḥ), it becomes long (dīrgha) and subtle (sūkṣmaḥ)||50||

वाह्याभ्यन्तरविषयाक्षेपी चतुर्थः॥५१॥
Vāhyābhyantaraviṣayākṣepī caturthaḥ||51||

外側や内側の領域を超えたものが第４のものである。

Vāhya　外側

ābhyantara　内側

viṣaya　領域　　　　　客体といわれるものの根源　客塵

ākṣepī 超える　

caturthaḥ　４番目

「プラーナーヤーマには、内的あるいは外的な対象に集中しているときに起こる、第四の型がある。」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

YS2.51

つまり、「プラーナーヤーマ」は単なる“吸う・吐く”をコントロールする「呼吸法」ではなく心身の生命エネルギーをコントロールする方法であり、“吸う・吐く”と“止める”あるいは、自然に“止まる”（第四の型）を実践することを指します。

呼吸が自然に“止まる”ことを「ケヴァラ・クンバカ」といい、深い瞑想に入ると「ケヴァラ・クンバカ」は自然に訪れる。

この呼吸が切り替わる瞬間にスポットライトを当てる

[2.51]

The fourth (kind of Prāṇāyāma) (caturthaḥ) transcends or excels (ākṣepī) the sphere of influence (viṣaya) of External (vāhya) and Internal (ābhyantara) (Operations)||51||

ततः क्षीयते प्रकाशावरणम्॥५२॥
Tataḥ kṣīyate prakāśāvaraṇam||52||

それが破壊するのは輝きを覆っているものである。

Tataḥ それ

kṣīyate 　破壊する

prakāśa　　輝き？

āvaraṇam　ベール　覆うもの　　覆障　　煩悩と業のこと

「その結果、内なる光を覆い隠していたヴェールが破壊される。」　

YS2.52

「調気法を行ずることによって、心素の輝き被い隠していた煩悩が消える」　YS2.52

[2.52]

Through that (tatas), the veil (āvaraṇam) over Prakāśa --i.e. "over the revelation of true knowledge"-- (prakāśa) is attenuated (kṣīyate)||52||

धारणासु च योग्यता मनसः॥५३॥
Dhāraṇāsu ca yogyatā manasaḥ||53||

精神集中を実践することでも意思が適性になる

Dhāraṇāsu 精神集中の実践

ca　　また、・・・も

yogyatā 　適性、理解力、素質、才能、習性　能力

manasaḥ　　心の　　意思の

ここでの「意思の適性」とは意思が動きを止めることである。

「意思が色々な精神集中に堪えられるようになる」　YS2.53

すなわち、意思の動きが鎮まり、精神集中できるようになる。

「微細次元の音を知覚するには、舌の付け根に瞑想をほどこせ」　ヴィヤーサ注解

「微細次元の香を知覚するには、鼻のさきに瞑想をほどこせ」　ヴィヤーサ注解

「微細次元の味を知覚するには、舌端に瞑想をほどこせ」　ヴィヤーサ注解

「微細次元の色を知覚するには、口蓋に瞑想をほどこせ」　ヴィヤーサ注解

「微細次元の触を知覚するには、舌の中央に瞑想をほどこせ」　ヴィヤーサ注解

YS3.25　YS2.53参照

[2.53]

Mental (manasaḥ) fitness or aptitude (yogyatā) for the dhāraṇā-s or concentration practices (dhāraṇāsu) (is) also (ca) (developed)||53||

स्वविषयासम्प्रयोगे चित्तस्य स्वरूपानुकार इवेन्द्रियाणां प्रत्याहारः॥५४॥
Svaviṣayāsamprayoge cittasya svarūpānukāra ivendriyāṇāṁ pratyāhāraḥ||54||

それらの対象とは結びつかず、心の（あるがままの）本質が引き続くようになるのが、感覚器官の制感である。

Sva　それらの

viṣaya　　　対象　　客体といわれるものの根源　客塵

asamprayoge 分離している　　結びつかない

cittasya 　心の

svarūpa　　本質　実在原理

anukāra 　　引き続く　流れる

iva　　　　　のように

indriyāṇāṁ 　感覚器官

pratyāhāraḥ　　制感

「制感とは、諸感覚器官がそれぞれの対象と結びつかなくなって、心素自身の模造品のように視える状態をいう」YS2.54

[2.54]

Pratyāhāra or the Withdrawal (pratyāhāraḥ) of Indriya-s --5 Jñānendriya-s or powers of perception, and 5 Karmendriya-s or powers of action-- (indriyāṇām) (is), as it were (iva), a following (anukāraḥ) the essential nature (sva-rūpa) of mind (cittasya) (by those very Indriya-s), when separated (asamprayoge) from their (corresponding) (sva) objects (viṣaya)||54||

ततः परमा वश्यतेन्द्रियाणाम्॥५५॥
Tataḥ paramā vaśyatendriyāṇām||55||

それによって、最上のコントロールを感覚器官にしたことになる

Tataḥ　それ

paramā 　　最高の　無上の

vaśyatā　　コントロールする　制御する

indriyāṇām　感覚器官

[2.55]

From that (Pratyāhāra or Withdrawal) (tatas), supreme (paramā) mastery or control (vaśyatā) of the Indriya-s --5 Jñānendriya-s or powers of perception, and 5 Karmendriya-s or powers of action-- (indriyāṇām) (arises)||55||

Here concludes the Second Section dealing with practice

Third Section : supernatural powers

देशबन्धश्चित्तस्य धारणा॥१॥
Deśabandhaścittasya dhāraṇā||1||

一箇所に固定された心を集中（執持）という。

Deśa　　一箇所

bandhaś　固定する

cittasya　心の

dhāraṇā　精神集中　執持

[3.1]

Concentration (dhāraṇā) is the mind's (cittasya) fixation (bandhaḥ) on one point (deśa)||1||

तत्र प्रत्ययैकतानता ध्यानम्॥२॥
Tatra pratyayaikatānatā dhyānam||2||

そうして、集中の途切れない継続が禅定である

Tatra 　それで　　　　in Dhāraṇā-

pratyaya　　心理作用

ekatānatā 　集中の継続

dhyānam　禅定　静慮　瞑想

「意識作用が一点に集中し尽くす状態」YS3.2

[3.2]

In that --in Dhāraṇā-- (tatra), the continuous flow of similar (ekatānatā) mental modifications (pratyaya) is Meditation (dhyānam)||2||

तदेवार्थमात्रनिर्भासं स्वरूपशून्यमिव समाधिः॥३॥
Tadevārthamātranirbhāsaṁ svarūpaśūnyamiva samādhiḥ||3||

その（状態）はちょうど対象だけが輝き、自己が空虚になるようなので、（これが）三昧である。

Tad　　　それ

eva　　ちょうど

artha　　対象

mātra　　だけ　独自の

nirbhāsaṁ 光り輝く

svarūpa　自己　あるがまま　

śūnyam　　「空」　　形はないのにエネルギーがある

iva 　まるで・・よう

samādhiḥ　三昧

[3.3]

Perfect Concentration (samādhiḥ) is just (eva) that (condition) (tad) in which only (mātra) the object (of concentration) (artha) shines forth (nirbhāsam), and the self (sva-rūpa) is absent (śūnyam), as it were (iva)||3||

त्रयमेकत्र संयमः॥४॥
Trayamekatra saṁyamaḥ||4||

３つ（Dhāraṇā, Dhyāna and Samādhi）は一点を対象にすることで、サンヤマという。

Trayam　　３つ

ekatra 　一箇所の対象

saṁyamaḥ　　綜制

サンヤマsaṁyamaとはニヤーマのヤーマであり、ヤマ（ヤーマ）は他者を尊敬することを意味し、具体的には自分の心身をコントールすることを実践する。

サンヤマとは心身の制御が完全に綜合されることを意味し、漢字では歴史的に綜制と訳されている。

[3.4]

The (abovementioned) triad --i.e. Dhāraṇā, Dhyāna and Samādhi-- (trayam) on a single object (ekatra) is Saṁyama (saṁyamaḥ)||4||

yama

Moral Disciplines; First step of the Ashtanga; 　　　Source: Wisdom Library: Yoga

In Yoga philoshopy, there are five or ethical standards called the Fice Yama's. They act as moral guidelines.

The five yama's are:

Non-violence

Non-lying

Non-stealing

Non-sensuality

Non-greed

Source: Wisdom Library: Yoga

Yama (यम, “forbearance”) is a Sanskrit word referring to “respect for others”. It is one of the eight brances of yoga, also known as the eightfold-path (aṣṭānga). Also see the fifth section of the Varāha-upaniṣad.

Yama is of ten kinds:

ahiṃsā (nonviolence)

satya (truthfulness)

asteya (not stealing)

brahmacarya (celibacy when single, not cheating on one's partner)

kṣamā (forgiveness)

dhṛti (fortitude)

dayā (compassion)

ārjava (non-hypocrisy, sincerity)

mitāhāra (measured diet)

śauca (purity, cleanliness)

तज्जयात्प्रज्ञालोकः॥५॥
Tajjayātprajñālokaḥ||5||

そのコントールはちゃんと区分けできる光（があたっているから）である

Taj→tad　その

jayāt　　征服　制御　コントール　支配

prajñ　叡智　智慧　　完全な知　　ちゃんとして区分け　

ālokaḥ　光

綜制samyamaの力によって制感、精神集中、禅定、三昧の行法sādhanāを完全に行えるようになると行者は微細次元の感覚を働かせることができるようになれる。　　YS3.5

微細元素tanmātrāと微細生気sūkshama prāṇa

微細体にとっての敬虔の対象になる精妙な事物divya vishaya

微細次元の残存印象vāsanāや心理作用vrittiを捉えて除去する

サンヤマに熟達することで、知の光が訪れる。[3.5]

Through the conquest (jayāt) of that --i.e. Saṁyama-- (tad), the Light (ālokaḥ) of Wisdom (prajñā) (dawns)||5||

तस्य भूमिषु विनियोगः॥६॥
Tasya bhūmiṣu viniyogaḥ||6||

それの適用は段階がある

Tasya それの

bhūmiṣu 段階　層

viniyogaḥ　適用　応用

サンヤマの実践は、段階を経て達成される。[3.6]

(There must be) application (viniyogaḥ) of that (tasya) to the stages (of the practice) (bhūmiṣu)||6||

त्रयमन्तरङ्गं पूर्वेभ्यः॥७॥
Trayamantaraṅgaṁ pūrvebhyaḥ||7||

３つは内的である。前のものよりも。

Trayam　　　　３つ

antaraṅgaṁ 　内的

pūrvebhyaḥ　前のもの

前のものとは

第1段階:ヤマ（Yama）/禁戒

第2段階:ニヤマ（Niyama）/勧戒

第3段階:アーサナ（Asana）/坐法

第4段階:プラーナヤマ（Pranayama）/呼吸法

第5段階:プラティヤハーラ（Pratyahara）/制感

内とは有想の禅定からいい、外とは、有想の禅定を得るのに障碍となるものを取り除く、５段階のことを指す。

[3.7]

The triad (of Dhāraṇā, Dhyāna and Samādhi) (trayam) (are more) internal (practices) (antaraṅgam) than the previous ones --i.e. Yama, Niyama, Āsana, Prāṇāyāma and Pratyāhāra-- (pūrvebhyaḥ) (within the framework of Samprajñātayoga)||7||

तदपि वहिरङ्गं निर्वीजस्य॥८॥
Tadapi vahiraṅgaṁ nirvījasya||8||

それらよりも、外にあるのは無種子三昧である

Tad　　　　　　それ

api 　　　　だが　といえども

vahiraṅgaṁ 外側

nirvījasya　　無種子三昧

[3.8]

(In turn,) that very triad (tad api) is external (vahiraṅgam) in respect of Nirvīja or seedless concentration --i.e. Asamprajñātayoga-- (nirvījasya)||8||

व्युत्थाननिरोधसंस्कारयोरभिभवप्रादुर्भावौ निरोधक्षणचित्तान्वयो निरोधपरिणामः॥९॥
Vyutthānanirodhasaṁskārayorabhibhavaprādurbhāvau nirodhakṣaṇacittānvayo nirodhapariṇāmaḥ||9||

日常の意識状態が消えて、自動反応回路を意のままにあやつれるようになり　止滅の瞬間とがつながる。これが止滅転変である。

Vyutthāna　　　　　日常生活での意識状態　　　

nirodha　　　　　　消えていく

saṁskārayor　　　行　自動反応装置　　　潜在力

abhibhava　　　　意のままにあやつる　軛をつける

prādurbhāvau 顕現

nirodha　　消えていく　止滅

kṣaṇa　　　　　瞬間、刹那

citta　　　　　　心

anvayo 　　　つながる

nirodha　　　止滅

pariṇāmaḥ　　転変　　潜在が顕出する　顕現関係　　因中有果　　因果の結果　　

サーンキヤ学派は、この世の物質とエネルギーの元である根本自性から展開しているとし、転変とは、原因の中に元来潜在していたものが、顕わになったことをいう。因中有果論のことである。

つまり無から有が生じるのではなく、はじめから無などはなく「空」から有が顕れるという。

この転変の基礎になっているのがグナ、すなわち３つの徳性であり、これらは休みなく動き続けるので、瞬間瞬間に転変し続けている。āīūṭḍṣṇṃr̥ñṅ

citta心素も根本自性の転変によって顕現したものであり、５つの状態（況位citta-bhūmi）がある。　

citta-bhūmiとはヒトのある時の心理状態avasthāのことである。

行には原因と結果があるので、心理状態にも原因と結果がある。

落ち着きがない状態　kṣipta

痴呆状態　　　　　mūḍha

散漫な状態　　　vikṣipta

専念状態　　　ekāgratā　　　　　　　 YS3.12

止滅状態　　　nirodha　　　　　　　　YS3.9

前者３つが雑念Vyutthānaであり、後者が三昧samādhiである。

寂静転変prashānta vāhitā　　　 YS3.10

三昧転変samādhi　　　　　　　 YS3.11

換言すると、前者は煩悩性があり輪廻の世界に束縛し、後者は非煩悩性で人を解脱へ導く。

[3.9]

The subjugation (abhibhava) of the latent impression(s) --saṁskāra-- (saṁskārayoḥ) of the manifest state --i.e. "Vyutthāna" or the ordinary state of consciousness in which there is mental fluctuation-- (vyutthāna) and the appearance --prādurbhāva-- (prādurbhāvau) of the latenci(es) --saṁskāra-- (saṁskārayoḥ) of the arrested state of mind (nirodha) (is) the mutation (pariṇāmaḥ) of (that very) arrested state of mind (nirodha). (This mutation) is linked (anvayaḥ) to the mind (citta) at (every) moment (kṣaṇa) of that arrested state of mind (nirodha)||9||

Note that "saṁskārayoḥ" literally means "of both of latent impressions" (i.e. "of those of Vyutthāna --manifest state-- and Nirodha --arrested state of mind--). In turn, "abhibhavaprādurbhāvau" literally means "the subjugation (abhibhava) and appearance (prādurbhāva)". I had to adapt the translation so that the purport of the aphorism may be understood properly.

तस्य प्रशान्तवाहिता संस्कारात्॥१०॥
Tasya praśāntavāhitā saṁskārāt||10||

Through the latent impression(s) (saṁskārāt) of that (arrested state of mind) (tasya), a continuous undisturbed state of mental tranquility (praśānta-vāhitā) (is brought about and kept)||10||

その

行（自動反応回路）を通じて、

Tasya それの

praśānta

vāhitā

継続する何ものにも邪魔されない心理状態

saṁskārāt行

ニローダ・パリナーマ（止滅転変）の流れは、習慣によって安定したものになる。[3.10]

सर्वार्थतैकाग्रतयोः क्षयोदयौ चित्तस्य समाधिपरिणामः॥११॥
Sarvārthataikāgratayoḥ kṣayodayau cittasya samādhipariṇāmaḥ||11||

Diminution (kṣaya) of attention to all (objects) (sarva-arthatā) and the emergence/development --udaya-- (udayau) of one-pointedness --ekāgratā-- (ekāgratayoḥ) (is) the mutation (pariṇāmaḥ) of Samādhi --perfect concentration or absorption-- (samādhi) of mind (cittasya)||11||

Note that "sarvārthataikāgratayoḥ" literally means "of both attention to all objects (sarva-arthatā) and one-pointedness (ekāgratā)". In turn, "kṣayodayau" literally means "on the diminution (kṣaya) and emergence/development (udaya)". I had to adapt the translation so that the purport of the aphorism may be understood properly.

対象にすべてを一点集中すると心の顕現が減少して、三昧に

Sarva　すべて

arthata　　対象

ekāgratayoḥ 　一点集中

kṣaya　減少

udayau 　　　　顕現、　発展、出現

cittasya 心の

samādhi　　三昧

pariṇāmaḥ　変化、変異　潜在が顕出する　顕現関係　　因中有果　　因果の結果　転変

Sarva－artha－taとは、あらゆる対象に惹かれる状態で、これに対するのは専念状態ekāgratā（YS3.12）である。

心の散動が収まり、一点集中が成るとき、サマーディ・パリナーマ（三昧転変・三昧への進展）は訪れる。[3.11]

ततः पुनः शान्तोदितौ तुल्यप्रत्ययौ चित्तस्यैकाग्रतापरिणामः॥१२॥
Tataḥ punaḥ śāntoditau tulyapratyayau cittasyaikāgratāpariṇāmaḥ||12||

そしてまた、過去と現在が同じ想念であることが、一点集中の状態（専念転変）である

Tataḥ 　それら

punaḥ 再び

śānta　過去

uditau 現在

tulya　同じ

pratyayau 想念

cittasya　心の

ekāgratā　一点集中　

pariṇāmaḥ　変化　　潜在が顕出する　顕現関係　　因中有果　　因果の結果

認識対象が同一のように変化を示さない場合でも、それは刹那ごとに転変する想念が類似して連続しているので、正確には同一ではない。

そしてまた、次第に消え去る過去の想念と今湧き上がる想念が同一なとき、エーカーグラタ・パリナーマ（専念転変・一点集中）が在る。[3.12]

There (tatas) again (punar) --i.e. "during Samādhi"--, the past (śānta) modification --pratyaya-- (pratyayau) being the same (tulya) as the present --údita-- (uditau) one --i.e. pratyaya-- (pratyayau), (occurs) the mutation (pariṇāmaḥ) of the one-pointed state (ekāgratā) of the mind (cittasya)||12||

Note that "śāntoditau" literally means "a past --pratyaya or mental modification-- (śānta) and a present one (udita)". In turn, "tulyapratyayau" literally means "two mental modifications or pratyaya-s (pratyayau) being the same (tulya)". I had to adapt the translation so that the purport of the aphorism may be understood properly.

एतेन भूतेन्द्रियेषु धर्मलक्षणावस्थापरिणामा व्याख्याताः॥१३॥
Etena bhūtendriyeṣu dharmalakṣaṇāvasthāpariṇāmā vyākhyātāḥ||13||

これらによって、粗雑元素の感覚器官による、特質、時間的位相、状態の転変が詳しく説明される。

Etena これらによって

bhūta　粗雑元素　　　地水火風空

indriyeṣu 感覚器官

dharma　法、本質的特徴

lakṣaṇa　時間的位相

avasthā　古いのと新しい状態

pariṇāmā 変化　転変

vyākhyātāḥ　詳細に説明する

これによって、微細または粗大な対象および感覚器官における、形・時間・状態の３つの転変が説明される。[3.13]

By means of this --i.e. "through the previous exposition about the three mutations mentioned in the 9^th, 11^th and 12^th aphorisms"-- (etena), the mutations (pariṇāmāḥ) of essential attribute (dharma), temporal character (lakṣana) (and) state as old and new (avasthā) in the gross elements (bhūta) and Indriya-s --i.e. Powers of perception and action-- (indriyeṣu) (are) explained in detail (vyākhyātāḥ)||13||

शान्तोदिताव्यपदेश्यधर्मानुपाती धर्मी॥१४॥
Śāntoditāvyapadeśyadharmānupātī dharmī||14||

The characterized object (dharmī) is (that which) continues to exist (anupātī) through (the following three) characteristics (dharma): appeased --i.e. past-- (śānta), risen --i.e. present-- (udita) and indefinable --i.e. future-- (avyapadeśya)||14||

潜在・生起・非顕現の状態を経ていくのは原質（プラクリティ・自然界の構成物）である。[3.14]

क्रमान्यत्वं परिणामान्यत्वे हेतुः॥१५॥
Kramānyatvaṁ pariṇāmānyatve hetuḥ||15||

継続しつづける違いの数々は、転変とは差異であることが原因である。

Krama　　　継続　連続　帰結

anyatvaṁ 　違い

pariṇāma　変化　　潜在が顕出する　顕現関係　　因中有果　　因果の結果

anyatve 　差異　違い

hetuḥ原因

これらの変化の連続が、様々な転変の原因である。[3.15]

Difference (anyatvam) in the sequence or succession (krama) (is) the cause (hetuḥ) in respect of the mutative (pariṇāma) difference (anyatve)||15||

परिणामत्रयसंयमादतीतानागतज्ञानम्॥१६॥
Pariṇāmatrayasaṁyamādatītānāgatajñānam||16||

転変の３相（特性、時間、状態）はコントロールを通じて、過去と未来を区分けする。

Pariṇāma　転変　　潜在が顕出する　顕現関係　　因中有果　　因果の結果

traya　３つ

saṁyamāt　綜制を通じて

atīta　過去

anāgata　未来

jñānam　知　差異　区分け

[3.16]

Knowledge (jñānam) of past (atīta) (and) future (anāgata) (is achieved) through Saṁyama (saṁyamāt) on the three (traya) mutations (pariṇāma) --i.e. the mutations of essential attribute, temporal character and state as old and new--||16||

शब्दार्थप्रत्ययानामितरेतराध्यासात्सङ्करस्तत्प्रविभागसंयमात्सर्वभूतरुतज्ञानम्॥१७॥
Śabdārthapratyayānāmitaretarādhyāsātsaṅkarastatpravibhāgasaṁyamātsarvabhūtarutajñānam||17||

言葉と対象と概念は相互に負担になる行となるが、そこから離脱するには統制によってすべての元素と波動を区分けすることである。

Śabda　言葉

artha　意味

pratyayānām　考え　概念

itaretara　相互に

adhyāsāt　　負担　課する

saṅkarastat　行　自動反応回路

pravibhāga　別れる方法

saṁyamāt　綜制によって

sarva　すべて

bhūta　元素

ruta　　音　　　波動　微細元素

jñānam　知　区分け

「言葉と、言葉の表示する客体と、言葉の知識内容とを混同するために混乱が起きている。これら３者の区別に綜制をほどこすことによって、あらゆる生きものの叫び声の意味が解る」YS3.17

bhūta ruta jñānamあらゆる生物の叫び声の意味が解る、というのは

あらゆる言語は、言葉(śabda),対象 (artha)知識内容jñānaに分けられ、3者を混同することがなくなると言葉を理解することができる。

word (śabda), meaning (artha) (and) idea --pratyaya-- (pratyayānām

仮説śabda言葉,　　artha対象そのもの、pratyaya概念

attha：[Sk．artha] 義，道理，意味

微細聴覚器官によっても、ラジオ同様、遠くで発せられた音を聴き取ることが可能である。これを透聴という。

ラジオでは粗雑次元の音のみが聴き取れるが、透聴では微細次元の音も聴き取れる。

粗雑次元の音はたえず空気と触れ合うことで、肉体の耳の内部に入り知覚神経を経て、ブラフマランドラにある微細聴覚器官に捉えられる。

「微細次元の音を知覚するには、舌の付け根に瞑想をほどこせ」　ヴィヤーサ注解

[3.17]

Through the reciprocal (itaretara) imposition (adhyāsāt) of word (śabda), meaning (artha) (and) idea --pratyaya-- (pratyayānām), an intermixture appearing in the form of a unified impression (saṅkaraḥ) (is brought about). By means of Saṁyama (saṁyamāt) on that (intermixture) (tad), but in a separate way (pravibhāga), knowledge (jñānam) of (the meaning hidden in) the sounds (ruta) (emitted by) all (sarva) beings (bhūta) (is acquired)||17||

संस्कारसाक्षात्करणात्पूर्वजातिज्ञानम्॥१८॥
Saṁskārasākṣātkaraṇātpūrvajātijñānam||18||

行（自動反応回路）を理解することによって、前世の境涯を知る

Saṁskāra　　　行　因果の元になる回路

sākṣātkaraṇāt　認識することによって

pūrva　前世

jāti　境涯

jñānam知

[3.18]

Knowledge (jñānam) of previous (pūrva) births (jāti) (is attained) through the realization (sākṣātkaraṇāt) of latent impressions (saṁskāra)||18||

प्रत्ययस्य परचित्तज्ञानम्॥१९॥
Pratyayasya paracittajñānam||19||

概念によって、他者の心を知る

Pratyayasya 概念

para　他の

citta　心

jñānam　知

概念や想念に綜制を実践することで、その由来や目的を理解することができる

[3.19]

Knowledge (jñānam) of the others' (para) minds (citta) (is achieved by practicing Saṁyama) on the notions (pratyayasya)||19||

न च तत्सालम्बनं तस्याविषयीभूतत्वात्॥२०॥
Na ca tatsālambanaṁ tasyāviṣayībhūtatvāt||20||

その（知識は）元ではないのは、粗雑元素の次元には届かないからである

Na ではない

ca 確かに

tat　それの

sālambanaṁ 基礎　対象

tasya　それ

aviṣayī　届かない

bhūtatvāt　元素のため

理解できるのは想念のレベルであり、

各自や各社会の置かれている状況までを理解しているのではない。

それなのでその由来や目的が分かってもそのTPOや必然性は理解できない。

その想念の拠り所になった対象（sālambanaṁ 基礎）は微細レベルではなく粗雑レベルなので、知ることはできないので、知ることのできる範囲を誤謬しないようにする。

しかしここで得られる知には、その者の心の中で想念を支えているもの（動機づけとなる背景の思考など）は含まれず、それはこのサンヤマの対象とはならない。[3.20]

(However,) the basis or support (sālambanam) of that --i.e. "of the aforesaid notions"-- (tad) certainly (ca) does not (na) (come to get known by the Yogī practicing Saṁyama on the notions) because it is (bhūtatvāt) out of reach (aviṣayī) of him (tasya) --i.e. it is not a perceivable object for that Yogī--||20||

कायरूपसंयमात्तद्ग्राह्यशक्तिस्तम्भे चक्षुःप्रकाशासम्प्रयोगेऽन्तर्धानम्॥२१॥
Kāyarūpasaṁyamāttadgrāhyaśaktistambhe cakṣuḥprakāśāsamprayoge'ntardhānam||21||

体の姿形に綜制することによって、認識能力が確かに抑制されて、視覚の範囲を超えることで（ヨーギを）視覚化できなくなる。

Kāya　　体

rūpa　　　形

saṁyamāt　綜制

tad　　それへ

grāhya　　認識能力

śakti　　確かな

stambhe 　抑制、鎮圧

cakṣuḥ　　視覚の

prakāśa　　範囲

asamprayoge　超える修習

antardhānam　視覚化できない

体の形態・性質にサンヤマを行うことによって、形態を知覚する力が妨害され、目の中に像が投影される力が分離されてヨーギの体は見えなくなる。[3.21]

On the suppression (stambhe) of the property (śakti) of perceptibility (grāhya) pertaining to that --i.e. to the body-- (tad) through Saṁyama (saṁyamāt) on the (visible) form (rūpa) of (that very) body (kāya), when the Yogī has (thus) gone beyond (asamprayoge) the range of the eyes (cakṣuḥ-prakāśa), (there is) invisibility (antardhānam)||21||

सोपक्रमं निरुपक्रमं च कर्म तत्संयमादपरान्तज्ञानमरिष्टेभ्यो वा॥२२॥
Sopakramaṁ nirupakramaṁ ca karma tatsaṁyamādaparāntajñānamariṣṭebhyo vā||22||

カルマの結実には早いものと遅いものがある、そしてカルマを綜制すると、死期を知る。死の兆候でも知ることもできるが。

Sopakramaṁ 　　結実が早くなる

nirupakramaṁ 　結実が遅くなる

ca 　　そして

karma 　　　　カルマ　業

tat　　　　　　それ　　この文脈ではカルマのこと

saṁyamād　　綜制する

aparānta　　　最期　　死期

jñānam　　　知

ariṣṭebhyh　　　死に近づく兆候　

vā　または

同様にして、音（触・味・臭など）の消失も説明される。[3.22](※)

カルマ（業・行為と結果）には、速やかに現れるものと、ゆっくり現れるものの２種類がある。それらにサンヤマを行うことで、あるいは死の前兆に対してサンヤマを行うことで、死期を知ることができる。[3.23(3.22)]

Karma --i.e. action and its inherent latent impressions-- (karma) (is of two kinds:) Sopakrama --i.e. fast in fructifying-- (sopakramam) and (ca) Nirupakrama --i.e. slow in fructifying-- (nirupakramam). By means of Saṁyama (saṁyamāt) on that (karma) (tad) or (vā) through the signs of approaching death (ariṣṭebhyaḥ), knowledge (jñānam) of the latter end --i.e. "death"-- (aparānta) (is achieved)||22||

मैत्र्यादिषु बलानि॥२३॥
Maitryādiṣu balāni||23||

慈しみは（他の力を）強化する

Maitryā　友愛　慈

ādiṣu そうして

balāni　強化する

友情・慈愛などに対してサンヤマを行うことによって、ヨーギはそれらの特性において秀でた能力を得る。[3.23]

(Through Saṁyama) on friendship (maitryā) and so on (ādiṣu), (different kinds of) strengths (balāni) (are acquired)||23||

बलेषु हस्तिबलादीनि॥२४॥
Baleṣu hastibalādīni||24||

パワー（を綜制すること）で、象の力などを得る

Baleṣu 力

hasti　象

bala　　力

ādīni　様々　など

[3.24]

(Through Saṁyama) on (various) strengths (baleṣu), the strength (bala) of an elephant (hasti), etc. (ādīni) (may be attained)||24||

प्रवृत्त्यालोकन्यासात्सूक्ष्मव्यवहितविप्रकृष्टज्ञानम्॥२५॥
Pravṛttyālokanyāsātsūkṣmavyavahitaviprakṛṣṭajñānam||25||

超視覚の光を使って、微細レベルで視えないものや離れたものを知る

Pravṛtty　超視覚　　　活動性

āloka　　光

nyāsāt　　適応する

sūkṣma　　微細レベル

vyavahita　視えない

viprakṛṣṭa　離れた

jñānam　知る

「（心の」働きがもつ光輝を（綜制によって）照射することで、（ヨーガ行者は）どんな微細なものでも、人目につかぬところに隠されているものでも、遥か遠くにあるものでも知ることができる」YS3.25

微細次元の世界では空間とか方向には限界がないので、意思はいかに遠距離であっても近くに引き寄せることができる。

「微細次元の音を知覚するには、舌の付け根に瞑想をほどこせ」　ヴィヤーサ注解

「微細次元の香を知覚するには、鼻のさきに瞑想をほどこせ」　ヴィヤーサ注解

「微細次元の味を知覚するには、舌端に瞑想をほどこせ」　ヴィヤーサ注解

「微細次元の色を知覚するには、口蓋に瞑想をほどこせ」　ヴィヤーサ注解

「微細次元の触を知覚するには、舌の中央に瞑想をほどこせ」　ヴィヤーサ注解

YS3.25　YS2.53参照

内なる光にサンヤマを行うことによって、微細な・隠された・遠く離れたものに関する知が得られる。[3.25]

By applying (nyāsāt) the light (āloka) of the supersensory perception (pravṛtti), knowledge (jñānam) of subtle (things) (sūkṣma), (objects which are) obstructed from view (vyavahita) (or) remote (viprakṛṣṭa), (is obtained)||25||

भुवनज्ञानं सूर्ये संयमात्॥२६॥
Bhuvanajñānaṁ sūrye saṁyamāt||26||

Through Saṁyama (saṁyamāt) on the Sun --i.e. the solar entrance in the body-- (sūrye), knowledge (jñānam) of the worlds (bhuvana) (is achieved)||26||

多層世界を知るには太陽神経叢に綜制する

Bhuvana　　　世界

jñānaṁ 　　　知る

sūrye 　　　　太陽　　　　　体の太陽神経叢　　チャクラ？

saṁyamāt　　綜制する

[3.26]

Through Saṁyama (saṁyamāt) on the Sun --i.e. the solar entrance in the body-- (sūrye), knowledge (jñānam) of the worlds (bhuvana) (is achieved)||26||

चन्द्रे ताराव्यूहज्ञानम्॥२७॥
Candre tārāvyūhajñānam||27||

体内の月や星（に綜制すると）　配列を知る

Candre 月　　　体内の月神経叢

tārā　星々

vyūha　　配合、アレンジ、関係性　配列　　　　経路？

jñānam　知る

月にサンヤマを行うことによって、星の配置に関する知が得られる。[3.27]

(Through Saṁyama) on the moon --i.e. the lunar entrance in the body-- (candre), knowledge (jñānam) of the arrangements (vyūha) of stars (tārā) (is acquired)||27||

ध्रुवे तद्गतिज्ञानम्॥२८॥
Dhruve tadgatijñānam||28||

北極星（に綜制すると）の運動を知る

Dhruve 北極星

tad　それの

gati　運動　　　　パーリ語では習慣　パターン、固定化された回路、キャラクター、役割

jñānam　知る

[3.28]

(Through Saṁyama) on the pole star (dhruve), knowledge (jñānam) of the movement (gati) of that --i.e. "of the stars"-- (tad) (is got or gotten)||28||

नाभिचक्रे कायव्यूहज्ञानम्॥२९॥
Nābhicakre kāyavyūhajñānam||29||

臍のチャクラからは体の構造と性質を知る

Nābhi cakre 臍のチャクラ　　Maṇipūra

kāya　体の

vyūha　構造と性質

jñānam　知る

[3.29]

(Through Saṁyama) on the navel-cakra --i.e. "Maṇipūra"-- (nābhi-cakre), knowledge (jñānam) of the structure and disposition (vyūha) of the body (kāya) (is obtained)||29||

कण्ठकूपे क्षुत्पिपासानिवृत्तिः॥३०॥
Kaṇṭhakūpe kṣutpipāsānivṛttiḥ||30||

喉のくぼみ（に綜制すること）で空腹と渇きを止める

Kaṇṭha　喉

kūpe くぼみ

kṣut　空腹

pipāsā　　渇き

nivṛttiḥ　作用停止

[3.30]

(Through Saṁyama) on the cavity (kūpe) of the throat (kaṇṭha), (there is) cessation (nivṛttiḥ) of hunger (kṣut) (and) thirst (pipāsā)||30||

कूर्मनाड्यां स्थैर्यम्॥३१॥
Kūrmanāḍyāṁ sthairyam||31||

亀の管（に綜制すること）で落ち着きと安定性をえる。

Kūrmanāḍyāṁ 　亀の管

sthairyam　静かさと堅固さ　　　不動

「亀の管に対して綜制をするならば堅忍性が得られる」　　YS3.31

亀の管kūrmākāra nāḍiは喉のすぐ下の鎖骨間の奥にある、微小な亀の形をした管

[3.31]

(Through Saṁyama) on the bronchial tube (kūrmanāḍyām), calmness and firmness (sthairyam) (are achieved)||31||

मूर्धज्योतिषि सिद्धदर्शनम्॥३२॥
Mūrdhajyotiṣi siddhadarśanam||32||

王冠の光（に綜制すること）で達人たちのヴィジョンを得る

Mūrdha　　王冠

jyotiṣi 　　光

siddha　　達人　　　神霊

darśanam　視覚感覚

王冠の光とは頭頂のサハスラーラチャクラのこと？

[3.32]

(Through Saṁyama) on the coronal (mūrdha) light (jyotiṣi), (there is) perception or vision (darśanam) of the Siddha-s --i.e. not the Perfected Beings but a kind of demigods-- (siddha)||32||

प्रातिभाद्वा सर्वम्॥३३॥
Prātibhādvā sarvam||33||

照明智によってすべては知られる

Prātibhāt　特異な智（弁別智、識別智）に到達する前の智慧によって　　　照明智、別名はtāraka

vā 　　もしくは

sarvam　すべて

Prātibhaは照明智のことで、別名はtārakaで、これを得ると綜制をほどこさなくても、すべてを照らすことで照らされたものを区分けすることができる。

識別智という太陽が上る前の曙光のようなものYS3.54

佐保田氏の一説によると、manas意思から突如と光が生じ、これに綜制を向ける時に照明智が生ずる。

[3.33]

Or (vā) through Prātibha --i.e. knowledge which comes to a Yogī before the attainment of discriminative knowledge-- (prātibhāt), everything (sarvam) (becomes known)||33||

हृदये चित्तसंवित्॥३४॥
Hṛdaye cittasaṁvit||34||

心臓に（に綜制すること）で心素の知識を得る

Hṛdaye 　心臓

citta　　　心の　　　　心素の　　心所の

saṁvit　知識

綜制の対象であるHṛdayeには原因体、その内部に心素があり、下向きの蓮華の形をしている。

[3.34]

(Through Saṁyama) on the heart (hṛdaye), knowledge (saṁvid) of mind (citta) (is attained)||34||

सत्त्वपुरुषयोरत्यन्तासङ्कीर्णयोः प्रत्ययाविशेषो भोगः परार्थत्वात्स्वार्थसंयमात्पुरुषज्ञानम्॥३५॥
Sattvapuruṣayoratyantāsaṅkīrṇayoḥ pratyayāviśeṣo bhogaḥ parārthatvātsvārthasaṁyamātpuruṣajñānam||35||

「善性（優位の心素）と真我は同じものではないのに、両者が想念において混同されている状態が経験と呼ばれるものである。そこで、自己以外のもの（真我）のためにある善性（優位の心素）を捨てて、自己のためにのみある真我に向かって綜制をなす時、真我の智が現ずる。」YS3.35

Sattva　　　　　　　善性　　この文脈では、善性（優位の心素）

puruṣayor　　　　　真我　　　観る者　　観照者

atyanta　　　　　　　完全に

asaṅkīrṇayoḥ 　　　　違い

pratyay　　　　　　　概念、　　　　　　想saññā？

āviśeṣo 　　　　　　　違いがない

bhogaḥ 　　　　　　　経験

parārthatvāt　　　　　他者のためにする？　　捨てる？

svārtha　　　　　　　自分自身

saṁyamāt　　　　　　綜制

puruṣa　　　　　　　真我

jñānam　　　　　　　差異、知識

経験とは特性の影響を受けることで心素や我執など内的心理器官の内部で生じる態様の変化のことをいうが、実際には心素の態様自体が経験である。

もし心素が存在しなければ、苦楽の経験を生じさせることができない。

「苦楽の経験bhogaは真我で終わる」サーンキヤ・スートラ1.104

一般的には苦楽を体感することを経験というが、究極的には純粋意識chitiすなわち真我purushaを経験することである。

苦楽の経験や行為の主体は心素だが、純粋意識としての経験の主体は真我である。

ある事物を経験する場合、真我は理智の働きによって心素の上に映し出されるが、その事物を経験するのは心素であって、真我そのものが経験するわけではない。

「（料理された）食物がそうであるように、結果を経験するのは実際に行為した者以外の者になることがあるかもしれない。」サーンキヤ・スートラ1.105

理智の働きによってもたされた経験も、実際には純粋意識としての真我が経験するかのように視える。

心とプルシャ（真我）は完全に異なっていて、これらを混同することは全ての経験（苦難や快楽）の原因となる。これらの違いに対してサンヤマを行うことによって、プルシャに関する知が得られる。[3.35]

Experience of pleasure or pain (bhogaḥ) (based on) a conception (pratyaya) which does not distinguish (aviśeṣaḥ) (between such) completely (atyanta) different (asaṅkīrṇayoḥ) (entities as) Buddhisattva --i.e. Buddhi or intellect having abandoned all traces of Rajas and Tamas, that is, Buddhisattva is simply a sattvic Buddhi-- (sattva) (and) Puruṣa --i.e. the real Self or Knower-- (puruṣayoḥ), exists for another --i.e. for Puruṣa-- (parārthatvāt). Through Saṁyama (saṁyamāt) on (this) Puruṣa --i.e. one's own Self-- (svārtha), knowledge (jñānam) of Puruṣa (puruṣa) (is thus obtained)||35||

ततः प्रातिभश्रावणवेदनादर्शास्वादवार्ता जायन्ते॥३६॥
Tataḥ prātibhaśrāvaṇavedanādarśāsvādavārtā jāyante||36||

それから　直観力、超聴覚、超触覚、超視覚、超味覚、超嗅覚が生じる

Tataḥ それから

prātibha　直観力

śrāvaṇa　超聴覚

vedana　超触覚　

ādarś　超視覚

āsvāda　超味覚

vārtāh　超嗅覚

jāyante　生じる

真我を綜制することで生じる能力である。

[3.36]

From that (Saṁyama on Puruṣa) (tatas), Prātibha --a kind of intuitive knowledge-- (prātibha), Śrāvaṇa --i.e. supernatural power of hearing-- (śrāvaṇa), Vedana --i.e. supernormal power of touch-- (vedana), the Ādarśa-s --i.e. the supernatural powers of seeing-- (ādarśa), Āsvāda --i.e. supernormal power of tasting-- (āsvāda) (and) Vārtā --i.e. supernatural power of smelling-- (vārtāḥ) arise (jāyante)||36||

ते समाधावुपसर्गा व्युत्थाने सिद्धयः॥३७॥
Te samādhāvupasargā vyutthāne siddhayaḥ||37||

それらは三昧にとっては障碍であり、雑念にとっては超能力である。

Te 　それらは

samādhāv　三昧の中では

upasargā 障碍　邪魔するもの

vyutthāne 日常の意識状態　　雑念

siddhayaḥ　達成　超能力

「これまで述べてきたような超能力は、三昧にとっては障碍である。雑念にとっては霊能であるが」YS3.37

綜制による超能力siddhiは無想三昧に入る妨げになる。

正しい識別智の助けを借りて、超能力は使わないようにして、快楽の対象物はいずれ朽ち果てる無常のものであることを忘れることなく、完全なる離欲に境地に達するように努める。

絶対者ブラフマンと合一した境地に達した後では、必要最小限度になさねばならないことkrita krityaのみをなし、生きる使命をまっとうする。

聖者は２極の感情の対立から解き放たれ、欲望をもって行為をしたり、何かを楽しもうということがない。

結実してくる業が出尽くした後では、肉体、微細体、原因体のすべては質量因の中へと帰滅し、真我はその本来の性質に安住する。

[3.37]

Those (supernormal powers) (te) are obstacles or hindrances (upasargāḥ) in Samādhi (samādhau), (but) accomplishments (siddhayaḥ) in Vyutthāna --i.e. the ordinary state of consciousness in which the mind fluctuates-- (vyutthāne)||37||

बन्धकारणशैथिल्यात्प्रचारसंवेदनाच्च चित्तस्य परशरीरावेशः॥३८॥
Bandhakāraṇaśaithilyātpracārasaṁvedanācca cittasya paraśarīrāveśaḥ||38||

束縛する原因を弱め、完全な理解と心に思いはせ、　他者の体の中を洞察する

Bandha　束縛

kāraṇa　原因の

śaithilyāt　弱体化

pracāra　思い巡らす　

saṁvedanāt　完全な理解

ca 　　　・・と　　　そして　　　　　caの文法法則

cittasya 心の　　　主語は何？　どこにかかっているのか？

para　他の

śarīra　体の中へ

āveśaḥ　貫通力　浸透力　看破力

心を体に縛り付けている原因を緩めることによって、そして心の作用が働く過程に関する知によって、他者の体に入り込むことができる。[3.38]

Through the weakening (śaithilyāt) of the cause (kāraṇa) of bondage (bandha) and (ca) complete knowledge/understanding (saṁvedanāt) of the roaming (pracāra) of mind (cittasya), (mental) penetration (āveśaḥ) into the body (śarīra) of another (para) (is possible then)||38||

उदानजयाज्जलपङ्ककण्टकादिष्वसङ्ग उत्क्रान्तिश्च॥३९॥
Udānajayājjalapaṅkakaṇṭakādiṣvasaṅga utkrāntiśca||39||

ウダーナ気をコントロールすることで、水や泥や棘などがあるところを障碍なく動き、死期も決められる。

Udāna　ウダーナ・プラーナ　　　鼻から（喉から？）頭頂にとどまる上昇する力

jayāt　コントロールする

jala　　水

paṅka　　泥

kaṇṭaka　棘

ādiṣu　　など　

asaṅgah　障碍なき動き

utkrāntiśca　死期において

ウダーナの引き上げる力で真我を上昇させると、生命を死に至るので、意のままに死ぬことができる。

[3.39]

By conquering (jayāt) Udāna --i.e. one of the five main vital energies-- (udāna), (there is) movement without obstacle (asaṅgaḥ) in water (jala), mud (paṅka), thorns (kaṇṭaka), etc. (ādiṣu) and (ca) exit from the body (at will) at the time of death (utkrāntiḥ)||39||

समानजयाज्ज्वलनम्॥४०॥
Samānajayājjvalanam||40||

サマーナ・プラーナをコントロールすれば、光輝をあやつる

Samāna　サマーナ・プラーナ　　　　心臓から臍にとどまり、消化と平等に配分する力がある

jayāt　コントロールする

jvalanam　光輝

「サマーナ気を克服するならば、（肉体から）火炎が出る」　YS3.40

心臓から臍までで、水元素が優位で、白色をして冷たい性質を持っている。

消化過程で胃や肝臓や腸などの内臓器官の機能が働くようにしている。たとえば消化液を分泌させる。

胆汁と混じり温め、粘液と混じり冷やすという性質を持つ。

つまり、消化器官を正しく機能させることができる。

[3.40]

By conquering (jayāt) Samāna --i.e. one of the five main vital energies-- (samāna), effulgence (jvalanam) (is achieved)||40||

श्रोत्राकाशयोः सम्बन्धसंयमाद्दिव्यं श्रोत्रम्॥४१॥
Śrotrākāśayoḥ sambandhasaṁyamāddivyaṁ śrotram||41||

聴覚器官と空元素の関係に統制をほどこすと、神の聴覚の力になる

Śrotra　聴覚の力　　ここでは聴覚器官

ākāśayoḥ 　「空」or　空元素

sambandha　関係性

saṁyamāt　綜制を通じて

divyaṁ 神

śrotram　聴覚の力

「聴覚器官と空との結びつきに綜制をほどこすことによって、天耳通が得られる」YS3.41

仏教の天耳通のこと。

この「空」は微細空元素のことであり、質量因は暗性優位の我執である。

[3.41]

Through Saṁyama (saṁyamāt) on the relationship (sambandha) between the (ordinary) power of hearing --i.e. Śrotendriya-- (śrotra) (and) the space --i.e. ākāśa-- (ākāśayoḥ), divine (divyam) Power of Hearing (śrotram) (is developed)||41||

कायाकाशयोः सम्बन्धसंयमाल्लघुतूलसमापत्तेश्चाकाशगमनम्॥४२॥
Kāyākāśayoḥ sambandhasaṁyamāllaghutūlasamāpatteścākāśagamanam||42||

体と空元素の関係に綜制をほどこすか、軽い綿に禅定すると、（綿のような軽さが得られ）空の中で動ける

Kāya　体

ākāśayoḥ 　空元素

sambandha　関係性

saṁyamāt　綜制によって　

laghu　軽い

tūla　綿

samāpatteh　禅定　or　融解　溶解　一体化

ākāśa　空元素

gamanam動き

行者の空中歩行の術のことで、仏教の神足通のこと

体とエーテル（空間）の間の関係にサンヤマを行うことによって、、エーテルの中を自由に移動することができるようになる。[3.42]

By means of Saṁyama (saṁyamāt) on the relationship (sambandha) between the physical body (kāya) (and) the space --i.e. ākāśa-- (ākāśayoḥ); and also (ca) by absorption --i.e. identification with-- (samāpatteḥ) into the light (laghu) cotton (tūla), movement (gamanam) through the space (ākāśa) (is obtained) --i.e. the Yogī can fly with the help of this kind of Saṁyama--||42||

वहिरकल्पिता वृत्तिर्महाविदेहा ततः प्रकाशावरणक्षयः॥४३॥
Vahirakalpitā vṛttirmahāvidehā tataḥ prakāśāvaraṇakṣayaḥ||43||

（身体の）外側で想像ではない心理作用をすると大脱身がおきる。それは光で遠隔の覆いを超える

Vahir　　外側

akalpitā 想像ではない

vṛttir　心理作用

mahā　偉大な

videhā 肉体のない　　　脱身

tataḥ　それから

parkāśa　光を超えて

āvaraṇa　ベールの　覆いの　　　覆障　　煩悩と業のこと

kṣayaḥ　遠隔

想像ではない（akalpitā）と強調されているのは、身体を自分の一部と考えたり、意manasだけを体外に遊ばせようとする妄想ではないことを伝えるためである。

mahāvidehāは遊離魂現象のことで、意manasは身体の内にあるという観念から離れ、意を実際に身体から開放した場合に起こる。

心の光を覆っているベールは、煩悩や業などの障碍であり、動・暗性のグナから成る　YS2.52

[3.43]

A unimagined (akalpitā) conception (vṛttiḥ) (which is held) outside (vahis), (is known as) the great (mahā) discarnate (videhā). From that --i.e. from Mahāvidehā or the great discarnate-- (tatas), (there is) removal (kṣayaḥ) of the veil (āvaraṇa) over the Light --i.e. over Buddhisattva-- (prakāśa)||43||

स्थूलस्वरूपसूक्ष्मान्वयार्थवत्त्वसंयमाद्भूतजयः॥४४॥
Sthūlasvarūpasūkṣmānvayārthavattvasaṁyamādbhūtajayaḥ||44||

（5大元素の）粗雑性、本質、微細レベル（との関わり）、生得性、目的を綜制することで、粗雑元素に勝利する

Sthūla　　粗雑元素レベル

svarūpa　本性　本質的な面、特質　

sūkṣma　微細レベル

anvaya　本来備わっている　生得

arthavattva　目的　客観　実在

saṁyamāt　統制によって

bhūta　　　粗雑元素　要素

jayaḥ　　　勝利

勝利とは自在にコントロールすることを意味する

粗雑元素を支配した境地をbhūta jayaとよぶ。

微細とは地水火風空の順に元素が減っていくことや微細元素が構成要素になっていることを探求すること

生得性とはグナの善・動・暗性の優位性や割合などを指す

「５粗雑元素の粗雑な面、本質的な面、微細な面、内在する徳性の面、その有目的性の面などに順次綜制をほどこすならば、５粗雑元素を支配することができる」　　YS3.44　　佐保田訳

霊眼や霊耳などの微細な知覚器官は、この世の何処にあるものでも知覚することができる。

物質元素をコントロールできるようになった行者は、粗雑元素を使って超常的なものまでも創り出すことができる。

[3.44]

Through Saṁyama (saṁyamāt) on the grossness (sthūla), essential nature (sva-rūpa), subtlety (sūkṣma), inherence --i.e. inherent quality-- (anvaya) (and) objectiveness (arthavattva) (of the Bhūta-s or Elements), victory (jayaḥ) over (those very) Bhūta-s or Elements (bhūta) (is secured)||44||

ततोऽणिमादिप्रादुर्भावः कायसम्पत्तद्धर्मानभिघातश्च॥४५॥
Tato'ṇimādiprādurbhāvaḥ kāyasampattaddharmānabhighātaśca||45||

それ（綜制）から縮小させる力などが顕現して、体の完全性とその（体の）障碍がなくなる法則とを得る。

Tato'→tatas　それから

aṇimā　　縮小させる力

ādi　　　など

prādurbhāvaḥ 顕現

kaya　　　体の

sampad　　完全

ca　　　　・・・と　　　そして

dharma　　法　原理　

anabhighāh　障碍のない

taśca→tad＋ca

From that (aforesaid Saṁyama) (tatas), (there is) manifestation (prādurbhāvaḥ) of Aṇimā --i.e. the supernormal power of minimization-- (aṇimā), etc. (ādi), bodily (kāya) perfection (sampad) and (ca) non-obstruction (anabhighātaḥ) in respect of the characteristics (dharma) of that (very body) (tad)||45||

[3.45]

रूपलावण्यबलवज्रसंहननत्वानि कायसम्पत्॥४६॥
Rūpalāvaṇyabalavajrasaṁhananatvāni kāyasampat||46||

姿形、魅力、強さ、堅固、健全さが体の完全性である

Rūpa　　色姿

lāvaṇya　魅力

bala　　力づよさ

vajra　　堅固、光る艶

saṁhananatvāni 堅実、健全、実質的

kaya　体の

sampad　完全性

[3.46]

Bodily (kāya) perfection (sampad) (consists of) beauty (rūpa), charm (lāvaṇya), strength (bala) (and) adamantine (vajra) solidity --saṁhananatva-- (saṁhananatvāni)||46||

ग्रहणस्वरूपास्मितान्वयार्थवत्त्वसंयमादिन्द्रियजयः॥४७॥
Grahaṇasvarūpāsmitānvayārthavattvasaṁyamādindriyajayaḥ||47||

（感覚器官の）把握性、本質、主客性、生得性、目的を綜制することによって、感覚器官に勝利する

Grahaṇa　受容性　　信号を受け入れる性質、把握性

svarūpa　　本質　性質、特徴、特性

asmitā　　わたしを主体にする、主体が対象（客体）を認識する方法

anvaya　　本来備わっている

arthavattva　目的性　客観性　対象性

saṁyamāt　　綜制によって

indriya　　　感覚器官

jayaḥ　　　　勝利

勝利するのは真我であり、感覚器官に使われるのではなく、感覚器官を自在にコントロールするようになる。

[3.47]

Through Saṁyama (saṁyamāt) on receptivity (grahaṇa), essential nature (sva-rūpa), I-sense (asmitā), inherence (anvaya) (and) objectiveness (arthavattva) (of the Indriya-s --i.e. powers of perception and action--), victory (jayaḥ) over (those very) Indriya-s (indriya) (is obtained)||47||

ततो मनोजवित्वं विकरणभावः प्रधानजयश्च॥४८॥
Tato manojavitvaṁ vikaraṇabhāvaḥ pradhānajayaśca||48||

それ（綜制）によって、迅速な意思、体の独立性、原因体を理解することで、根本自性に勝利する。

Tato→tatas　それから　それによって

mano→manas　意思

javitvaṁ 　　　素早さ　速さ　迅速

vikaraṇa　　　　体の独立性、感覚器官の独立性

bhāvaḥ 　　　状態　原因体？

pradhāna　　根本自性

jayah　　　　　勝利

ca　　　　　　　　・・・と　そして

以下をどのように理解するかがポイント

vikaraṇa　　　　体の独立性、感覚器官の独立性

bhāvaḥ 　　　状態　原因体？

それによって、迅速な心、感覚器官を必要としない体、自然界の根因（プラクリティ）への支配を得る。[3.48]

From that (aforesaid Saṁyama) (tatas), swiftness (javitvam) (as) of mind (manas), a state (bhāvaḥ) in which the organs of sense act independently of the body (vikaraṇa), and (ca) victory (jayaḥ) over Pradhāna --i.e. Prakṛti, the original source of the material universe-- (pradhāna) (are secured)||48||

सत्त्वपुरुषान्यताख्यातिमात्रस्य सर्वभावाधिष्ठातृत्वं सर्वज्ञातृत्वं च॥४९॥
Sattvapuruṣānyatākhyātimātrasya sarvabhāvādhiṣṭhātṛtvaṁ sarvajñātṛtvaṁ ca||49||

善性と真我の違いを知るだけで、すべての存在をコントロールする全知とを得る

Sattva　　善性

puruṣa　プルシャ　真我

anyatā　　　　差異

khyāti　　　　知識、考慮　　真知

mātrasya 　　独自の　だけ　唯一の

sarvabhāva　　すべての存在　　　すべての原因体　生きとし生きるもの

adhiṣṭhātṛtvaṁ 至高　　覇権　　統治権

sarva　すべて

jñātṛtvaṁ 知るもの　分けるもの

ca　・・と

善性グナの一つであり根本自性の最も浄化さらた部分であり、この世のエネルギー界で最も純粋な部分であるが、これは真我とは明らかに違うものなので、この２つを混同することなく区分けすることがヨーガの目標である。

[3.49]

To one established in (discriminative) knowledge (khyāti-mātrasya) of the difference (anyatā) between Buddhisattva --i.e. sattvic Buddhi full of discriminative knowledge-- (sattva) (and) Puruṣa (puruṣa) (comes) supremacy (adhiṣṭhātṛtvam) over all (sarva) beings (bhāva) and (ca) omniscience (sarvajñātṛtvam)||49||

तद्वैराग्यादपि दोषवीजक्षये कैवल्यम्॥५०॥
Tadvairāgyādapi doṣavījakṣaye kaivalyam||50||

それ（識別智）すら執着しないことで、悪種は破壊され、完全な解放に至る

Tad　　それ　識別智

vairāgyāt　放棄、断念、自制　　執著しない　　執著から離脱する

api　　　　でさえ、ですら

doṣa　　　嫌悪　悪

vīja　　　　種

kṣaye　　　破壊

kaivalyam　完全な解放　　　独存位　　解脱moshaとの違いは？

[3.50]

By renunciation (vairāgyāt) even (api) of that --i.e. of Vivekakhyāti or discriminative knowledge-- (tad), when there is destruction (kṣaye) of the seeds (vīja) of evil (doṣa), Kaivalya or complete Emancipation (kaivalyam) (is experienced)||50||

स्थान्युपनिमन्त्रणे सङ्गस्मयाकरणं पुनरनिष्टप्रसङ्गात्॥५१॥
Sthānyupanimantraṇe saṅgasmayākaraṇaṁ punaraniṣṭaprasaṅgāt||51||

（行者は）天の存在からの招待があっても、慢心することもあるので、受け入れるべきではない。

（その後に）望まない結果になることがある。

Sthāni　天の存在

upanimantraṇe 　招待される

saṅga　　　　　　受け入れる

smaya　　　　うぬぼれ、慢心、過大評価

akaraṇaṁ 　　　すべきではない

punaraniṣṭa　　望まない結末

prasaṅgāt　　　　可能性がある

天の存在とは、粗雑元素でできた体を持たないが、輪廻転生する原因（歓喜）体の存在のこと。

仏教では33の天界がある。欲界６、色界○○、無色界○の階級がある。

自己の過大評価は、解脱の道への障碍になることから、気をつけることを説いている。

自分のもしくは周囲の人が体験して苦労したので、これらを戒めるために注意したのかもしれない。

[3.51]

When invited (upanimantraṇe) by beings occupying a high position --i.e. celestial beings-- (sthāni), (that invitation) should not be accepted (saṅga... akaraṇam) nor should it cause (akaraṇam) conceit (smaya), since it involves the possibility (prasaṅgāt) of undesirable results (punar-aniṣṭa)||51||

क्षणतत्क्रमयोः संयमाद्विवेकजं ज्ञानम्॥५२॥
Kṣaṇatatkramayoḥ saṁyamādvivekajaṁ jñānam||52||

瞬間と瞬間の連続性に綜制をほどこすことによって、識別智が顕れる

Kṣaṇa　　瞬間　刹那

tat→tad　　その

kramayoḥ 　継続、連続、つながり、受け継ぎ

saṁyamāt　　綜制によって

viveka　　　識別

jaṁ 　　　　生じる

jñānam　　　区分け　知

「刹那と、刹那から刹那への連続とに対して綜制（精神集中、瞑想、三昧のこと）をほどこせば、その識別から生ずる智が現れる」　ヨーガスートラ3.52

[3.52]

Through Saṁyama (saṁyamāt) on moment (kṣaṇa) (and) its (tad) sequence or succession --i.e. krama-- (kramayoḥ), a knowledge (jñānam) which arises (jam) from (that) discernment or discrimination (viveka) (is acquired)||52||

जातिलक्षणदेशैरन्यतानवच्छेदात्तुल्ययोस्ततः प्रतिपत्तिः॥५३॥
Jātilakṣaṇadeśairanyatānavacchedāttulyayostataḥ pratipattiḥ||53||

境涯、時間的特徴、位置の違いが感知できないほど似ているものも、それによって鮮明な違いがわかる。

Jāti　境涯　種、領域

lakṣaṇa　時間的特徴

deśaih　位置

anyatā　　差異から

anavacchedāt　識別できない、認識できない、感知できない

tulyayoh　　似ている

tataḥ 　　　　　それによって

pratipattiḥ　　鮮明な認識、違い

[3.53]

Through that (knowledge) (tatas), there is clear perception (of the difference) (pratipattiḥ) between two things looking alike (tulyayoḥ) since difference (anyatā) is indiscernible (anavacchedāt) by means of class or species (jāti), temporal character (lakṣaṇa) (and) position --i.e. deśa-- (deśaiḥ)||53||

In other words, even though two things look alike because the difference is indiscernible via class or species, temporal character and position, the Yogī can perceive the difference through that knowledge obtained by practicing Saṁyama on moment and its sequence.

तारकं सर्वविषयं सर्वथाविषयमक्रमं चेति विवेकजं ज्ञानम्॥५४॥
Tārakaṁ sarvaviṣayaṁ sarvathāviṣayamakramaṁ ceti vivekajaṁ jñānam||54||

（前述の鮮明な認識は）救済者は、すべての空間とすべての時間で、実を結ばない。これが識別智である。

Tārakaṁ 　　　　　　救済者　直観智　　　一度に全体を把握する認識手段

sarva　すべて

viṣayaṁ モノ　　　　客体といわれるものの根源　客塵

sarvathā　いつも

viṣayam　モノ　　　　客体といわれるものの根源　客塵

akramaṁ 結実しない

ce→ca　　　・・と

iti　　　　　　・・・とて

vivekajaṁ jñānam　識別智

「識別から生じた智は、救助者と呼ばれるものであって、すべてのもの、すべての在り方を対象とし、しかも一度に一切を知ることができる」　YS3.54

識別智から生じた智慧の光は、どんな事物でも一瞥しただけで完全に理解し尽くしてしまうことができる。

cf.　三昧境から生じてくる智慧の光とは別のものである。

[3.54]

Knowledge (jñānam) which arises (jam) from discernment or discrimination (viveka) is "Tāraka or intuitive knowledge (tārakam). (It is) comprehensive of all (sarva) things (viṣayam) appearing (viṣayam) at all times (sarvathā) and (ca) has no sequence (akramam... iti)"||54||

Note that "iti" stands for inverted commas.

सत्त्वपुरुषयोः शुद्धिसाम्ये कैवल्यमिति॥५५॥
Sattvapuruṣayoḥ śuddhisāmye kaivalyamiti||55||

善性と真我との純性が同じになると、（真我に）独存性が現れる。

Sattva　善性

puruṣayoḥ プルシャ

śuddhi　純粋性

sāmye 品質

kaivalyamiti　　独存性

ti　　　　　　　この章が終わったことを意味している

[3.55]

When there is equality (sāmye) of purity (śuddhi) between Buddhisattva --i.e. sattvic Buddhi-- (sattva) (and) Puruṣa (puruṣayoḥ), "the state of complete Emancipation" (kaivalyam iti) (dawns)||55||

Note that "iti" now indicates the end of the section.

Here concludes the Third Section dealing with supernatural powers

Fourth Section : On Liberation

जन्मौषधिमन्त्रतपःसमाधिजाः सिद्धयः॥१॥
Janmauṣadhimantratapaḥsamādhijāḥ siddhayaḥ||1||

生まれついて、薬草によって、マントラによって、修業によって、三昧によって、超自然的な能力は生じる。

Janma　　誕生とともに

auṣadhi　　薬草

mantra　　　真言　マントラ

tapaḥ　　　　修行、質素　苦行

samādhi　　三昧

jāḥ 　　　　　くる

siddhayaḥ　　　超能力

[4.1]

The Siddhi-s or Supernatural Powers (siddhayaḥ) come (jāḥ) with birth (janma), (or they are achieved by means of) herbs (auṣadhi), mantra-s (mantra), austerities (tapas) (or) perfect concentration (samādhi)||1||

जात्यन्तरपरिणामः प्रकृत्यापूरात्॥२॥
Jātyantarapariṇāmaḥ prakṛtyāpūrāt||2||

他の境涯の転変は根本自性の流入による。

Jāty→i　　境涯、種族

antara　　他の

pariṇāmaḥ 転変　　　潜在が顕出する　顕現関係　　因中有果　　因果の結果

prakṛty　　根本自性

āpūrāt　　流入

[4.2]

The transformation (pariṇāmaḥ) into other (antara) species (jāti) (is accomplished) through the filling in (āpūrāt) of their essential nature (prakṛti)¹||2||

¹ In other words, the mould of the new species into which one wants to be transformed "fills in" (or permeate) the essential nature of the new body and organs and shapes them according to the respective parameters. It is as if one were to exert pressure on a pile of wet sand with a recipient. The wet sand will assume the form of that recipient, no doubt. The process of transformation from one species into another proceeds in a similar way.

निमित्तमप्रयोजकं प्रकृतीनां वरणभेदस्तु ततः क्षेत्रिकवत्॥३॥
Nimittamaprayojakaṁ prakṛtīnāṁ varaṇabhedastu tataḥ kṣetrikavat||3||

Cause (nimittam) (does not set) the essential natures (prakṛtīnām) into motion (aprayojakam) but (tu) it breaks down (bhedaḥ) the barrier (or mound) (varaṇa). For that reason (tatas), it is like (vat) the farmer (kṣetrika) (who breaks down a barrier or mound so that the water may flow into his field)||3||

（業は）転変の助因であり、（業は）自性の流出の妨げとなるものを破壊する。あたかも農夫（の仕事）に似ている。

Nimittam　原因　　副因

aprayojakaṁ 　動きの中へ　　使役者ではない者

prakṛtīnāṁ 　根本自性　本質

varaṇa　　障壁　　塚、土手

bhedah　壊れる

tu　　　しかし

tataḥ 　そのため

kṣetrika　　農夫

vat　　　　　・・ようだ

農夫の仕事とは、水の流入を妨げるものを取り除くことである。

cittaと行と作用vrittiの関係とは？

作用の根源がcittaである。cittaが転変して作用を発現する場合に助因の役目をするのが行である。

換言すると、cittaの中にある行にすべての条件が整うと潜在化されていた行が作用として顕現するのである。

法とは何か？

実体（dharmin有法）が特定の形に限定されて現象した形が法dharmaである。

行と法とcittaと作用の関係は？

行はcittaの法であり、作用（雑念や止滅など）vritti は行の法である。

つまり、cittaが具象化されて行になり、行が具象化されて作用となる。

これらの転変は法だけではなく、時間的位相と様態の層でも行われる。

善行その他の行いは、自然界の流れを直接的に生み出すものではない。しかしそれらは自然界の進化を妨げる障害を破壊するものであり、農夫が水路を塞いでいる障害物を取り除くかのように、その本来の流れを導くのみである。[4.3]

निर्माणचित्तान्यस्मितामात्रात्॥४॥
Nirmāṇacittānyasmitāmātrāt||4||

「（多くの転生において現れ）生じている心素は、すべて自我意識のみから生ずるものである。」YS4.4

Nirmāṇa　　現れる、創造される、生じる、

cittāni　　　心、心素、心所

asmitā　　　自我意識

mātrāt　　　純粋な

輪廻転生の旅の岸へたどり着き、終着点を目前にして、何の不安も抱かなくなっている。

ここでいう終着点とは、主客の次元を超え、心理作用やvrittiや対立する感情もなくなり、微細次元の苦悩も存在しなくなる境地のことである。

苦痛に満ちた記憶も消え失せてしまい、生前解脱の最も寂静な境地が実現されている。

生前解脱jivana　muktiに達した行者も、持てる全ての業karmaが結実し終わるまでは自分自身の肉体を維持してゆかねばならない。行者は自分の行サンスカーラを霊視することができ、またこの世の構成要素をコントロールできるので、心素を創り出して、素早く自分の業karmaを結実させてしまい、長い間待たずとも自分の肉体から抜け出してゆける。

心素がこのような状態の時には、無知avidyāから生じる生命欲abhiniveshaは焼き上げられた種子のようになってその働きを抑えられてしまうので、肉体に執著することの無くなった行者は、肉体から抜け出してゆく。

ただ空腹や喉の渇きをいやそうとする行為を生じさせる業bhoga　karmaだけはあり、肉体の働きを最小限度にまで抑制しながら生き続ける。

行者はただ絶対者ブラフマンの命に従って行為するだけになる。

エゴのみが、（本来備わっている以外の）心の働きを生み出す。[4.4]

Nivesha in Sanskrit glossary Source: DDSA: The practical Sanskrit-English dictionary

Niveśa (निवेश).—1 Entering, entrance.

2) Encamping, halting.

3) (a) A halting place, camp, encampment; सेनानिवेशं तुमुलं चकार (senāniveśaṃ tumulaṃ cakāra) R.5.49;7.2; Śi.17.4; Ki.7.27.

6) Depositing, delivering,

8) Impression, copy.

9) Military array.

1) Ornament, decoration.

12) Settling in a place; वास्तुकर्मनिवेशं च भरतागमनं तथा (vāstukarmaniveśaṃ ca bharatāgamanaṃ tathā) Rām.1.3.16.

The created (nirmāṇa) minds (cittāni) are (produced) from the pure (mātrāt) I-sense (asmitā)||4||

प्रवृत्तिभेदे प्रयोजकं चित्तमेकमनेकेषाम्॥५॥
Pravṛttibhede prayojakaṁ cittamekamanekeṣām||5||

多様な活動性は、１つの心が多くの動きをするためである。

Pravṛtti　　　　行動　　　活動性

bhede 　　　　多種の

prayojakaṁ 　　動き

cittam　　　　　心の

ekam 1 一つの

anekeṣām　　多くの

心はたった一つだが、瞬時に連続することで数多くのことをこなすことができる。

(Only) one (ekam) mind (cittam) (sets) the many (created minds) (anekeṣām) into motion (prayojakam) during their various (bhede) activities (pravṛtti)||5||

[4.5]

तत्र ध्यानजमनाशयम्॥६॥
Tatra dhyānajamanāśayam||6||

Of these (created minds) (tatra), (those) brought about (jam) through meditation (dhyāna) are without any (an) latent impressions (āśayam)||6||

これらの禅定は因果の種子（残存印象）を造ることがない生じさせる。

Tatra 　　　これらの

dhyāna　　　禅定

jam　　　　　生じさせる;起こす,〈事を〉成し遂げる

an　　　　　　〇〇なしで

āśayam　　　残存印象　　サンカーラ　潜在印象の結果、　業遺存　

瞑想によって生まれた心のみが、人為的に生み出された様々な心とは異なり、カルマの印象（力）から逃れている。[4.6]

कर्माशुक्लाकृष्णं योगिनस्त्रिविधमितरेषाम्॥७॥
Karmāśuklākṛṣṇaṁ yoginastrividhamitareṣām||7||

ヨーギの行為は白でも黒でもない。他の人は3種ある。

Karma　　　業　　　行為

aśukla　　　白

akṛṣṇaṁ 　　黒

yogini　　　　ヨーギ

trividham　　3種

itareṣām　　　他の

ヨーギの行為は白（善）でも黒（悪）でもない。他者の行為は黒・白・グレーの３種類に分かれる。[4.7]

The action (karma) of a Yogī (yoginaḥ) is neither white (aśukla) nor black (akṛṣṇam), (while) those of others (itareṣām) are of three kinds (trividham)||7||

ततस्तद्विपाकानुगुणानामेवाभिव्यक्तिर्वासनानाम्॥८॥
Tatastadvipākānuguṇānāmevābhivyaktirvāsanānām||8||

その結果は相応した時に確かに顕れ出るものでヴァーサナ-という

Tatas　　　　　　　それ　　　　　　上記の　３つの行為

tad　　　　　　　　　　　それ　　　上記の３つ種類

vipāka　　　　　　　結果

anuguṇānām　　　　　相応した

eva　　　　　　　　　確かに

abhivyaktih　　　　　顕れ出る

vāsanānām　　　　　　行サンカーラの種子

ヴァーサナー（行為によって蓄積する潜在的な力→後に煩悩を生み出す）によってもたらされる結果は、現在の生における欲に整合するときのみ、発現する。（その他のヴァーサナーは保留され、整合する生が訪れたときに発現する。）。[4.8]

From that --i.e. from those three aforesaid kinds of action-- (tatas), (there is) certainly (eva) manifestation (abhivyaktiḥ) of Vāsanā-s¹ (vāsanānām) suitable --anuguṇa-- (anuguṇānām) to the consequences or results (vipāka) of that --i.e. of the three abovementioned types of action-- (tad)||8||

¹ Careful here with the technical terms: Vāsanā-s are latent impressions of "feelings" produced by birth, life-span and experience of pleasure and pain. Also note that Vāsanā is not synonymous with Karmāśaya, despite both of them being latent impressions, since the latter arises out of "actions" or karma and not out of feelings like the former. There is a big difference between those two kinds of latent impressions. In turn, the word "saṁskāra" is commonly used to designate "latent impressions" in general. Use these terms properly, please.

जातिदेशकालव्यवहितानामप्यानन्तर्यं स्मृतिसंस्कारयोरेकरूपत्वात्॥९॥
Jātideśakālavyavahitānāmapyānantaryaṁ smṛtisaṁskārayorekarūpatvāt||9||

境涯、場所、時間で隔たれていても、すぐに記憶と行とは同一になる

Jāti　誕生　　境遇、境涯

deśa　　空間、位置

kāla　　時間

vyavahitānām　　分かれる

apy→api　　　　　　関わらず、　ではあるが

ānantaryaṁ　　　　すぐに

smṛti　　　　　　　記憶

saṁskārayoh　　　　行サンスカーラ

ekarūpatvāt　　　　似ている　　　同一性

「残存印象は、その成立した時と、その発言した時の間が、多くの境涯、場所、時によって隔てられているにも関わらず、その間に断絶のない連続性があるとされるのは、再現した記憶とそれの行との間には同一性があるからである」YS4.9

「記憶と行との間には同一性がある。ゆえに、多くの境涯、場所、時間に隔てられても、行から記憶が生じる」

YS4.9　ヴィヤーサ注解

ヴァーサナーが種・空間・時間によって隔てられていようとも連続性をもつのは、記憶とサンスカーラの間に同一性があるためである。[4.9]

Because of similarity (ekarūpatvāt) between memory (smṛti) (and) latent impressions --saṁskāra-- (saṁskārayoḥ), (there is) immediate (ānantaryam) (emergence of Vāsanā-s) even though (api) separated --vyavahita-- (vyavahitānām) by birth (jāti), space or position (deśa) (and) time (kāla)||9||

तासामनादित्वं चाशिषो नित्यत्वात्॥१०॥
Tāsāmanāditvaṁ cāśiṣo nityatvāt||10||

それらは無始であり、また生への愛着もいつもある

Tāsām　　　　　　　それらの

anāditvaṁ 　　　　　始まりのない　　無始

ca　　　　　　　　　　また

aśiṣo→ āśiṣaḥ　　　　自分への愛着　　生存欲　　生命欲求

nityatvāt 　永遠

「また残存印象が無始であるのは、生への愛着がいつも存在しているからである」YS4.10

「残存印象が無始である」とは、あらゆる生物の心臓内部には永遠に生き続けたいという願望が納められており、この願望は遙か永遠の過去より現在に到るまで続いてきているものであるから、残存印象もまた無始のものであることを説いている。

「この結びつきの原因となるのは無知である。」YS2.24

大宇宙の創造が始まった時に、真我のまわりには3種の徳性からなる根源自性によって創られた精妙な覆いができた。その覆いには「欲望」も溶け込んでいた。

この覆い（枠、限り、カタチ、具象、「空」ではないもの）ができた瞬間を境として、真我から生命の活動力が放射されはじめた。

覆いをまとうまでの真我は何の欲望も持たず、不満も知識に対する渇望も具えていなかった。

つまり真我は愛憎や苦楽や努力とは無縁な完全に自由な存在であった。

真我が我執から生じる自己意識「わたし」に触れただけで、輪廻転生samsāraが生じ、苦しみの大海原が現れでるという事実

生命欲が永遠であるため、サンスカーラもまた無始である。[4.10]

Seeing that the desire for self-welfare --āśīs-- (āśiṣaḥ) is eternal --nitya-- (nityatvāt), those (Vāsanā-s) --tās-- (tāsām) (from which it emerges are) also (ca) beginningless (anāditvam)||10||

हेतुफलाश्रयालम्बनैः सङ्गृहीतत्वादेषामभावे तदभावः॥११॥
Hetuphalāśrayālambanaiḥ saṅgṛhītatvādeṣāmabhāve tadabhāvaḥ||11||

（行は）

Hetu　　　原因

phala　　　　結果

āśraya　　　基盤　　　要因　　拠り所　　　ここで潜在的行が形となる

ālambanaiḥ 　条件　　援助　　縁？

saṅgṛhītatvāt　一緒にある

eṣām　　　　　サポート

abhāve　　　　ない

tad　　　　　　それ

abhāvaḥ　　　ない

サンスカーラは原因・結果・基盤・支柱（対象）と共にあり、これら４つの消失によってサンスカーラもまた消える。[4.11]

Since (Vāsanā) is held together (saṅgṛhītatvāt) by cause (hetu), fruit or result (phala), refuge (āśraya) (and) support --i.e. "ālambana" or the supporting object which attracts Vāsanā-- (ālambanaiḥ), in the absence (abhāve) of these --i.e. cause, fruit or result, refuge and support-- (eṣām), (there is also) absence (abhāvaḥ) of that (Vāsanā) (tad)||11||

अतीतानागतं स्वरूपतोऽस्त्यध्वभेदाद्धर्माणाम्॥१२॥
Atītānāgataṁ svarūpato'styadhvabhedāddharmāṇām||12||

過去と未来に形があるのは時間の差異の法則による

Atīta　　　　　過去

anāgataṁ 　　　　未来

svarūpatah　　本質原理

o'sty→asti　　　ある　存在する　　　

adhva　　　　　　時間　　過去・現在・未来

bhedāt　　違い

dharmāṇām

「過去」や「未来」は、現在世界において、性質の状態の違いによって顕現した事象の内に存在する。（ある事象の性質が変化していくのを認識することで、過ぎ去った性質は過去として存在し、未だ顕現していない性質は未来として存在することを認識する）[4.12]

Past (atīta) (and) future (anāgatam) exist (asti) in their essential forms (sva-rūpataḥ). (The difference is only) in the characteristics (of the forms) (dharmāṇām) at different (bhedāt) times or phases --i.e. past, present and future-- (adhva)||12||

ते व्यक्तसूक्ष्मा गुणात्मानः॥१३॥
Te vyaktasūkṣmā guṇātmānaḥ||13||

Those (characteristics) (te) are manifest (vyakta) (and) subtle --sūkṣma-- (sūkṣmāḥ) (and) consist

(ātmānaḥ) of the (three) Guṇa-s (guṇa)||13||

それら（の性質）が微細元素のレベルでも顕れ出て、徳性によって構成されている。

Te それら

vyakta　　　出現

sūkṣmā 　　微細

guṇa　　　　徳性

ātmānaḥ　　　成り立つ

顕現・非顕現の状態に関わらず、これらの性質はグナ（自然界の構成要素）に基づいている。[4.13]

Those (characteristics) (te) are manifest (vyakta) (and) subtle --sūkṣma-- (sūkṣmāḥ) (and) consist

(ātmānaḥ) of the (three) Guṇa-s (guṇa)||13||

परिणामैकत्वाद्वस्तुतत्त्वम्॥१४॥
Pariṇāmaikatvādvastutattvam||14||

（３徳性の）同時発生する変化、これが事物の実在原理（本質）である。

Pariṇāma　　　　　　　　変化、変形、盛衰　　潜在が顕出する　顕現関係　　因中有果　　因果の結果

ikatvād→ekatvāt　　　一致する　　同時発生する

vastu　　　　　　　　事物　モノ　対象物

tattvam　　　　　　　実在原理

事物の本質（同一性）は、グナの転変の一貫性に基づいている。[4.14]

Due to the coordinated or coincidental (ekatvāt) mutation (of the three Guṇa-s) (pariṇāma), an object (vastu) appears to be something real (tattvam)||14||

वस्तुसाम्ये चित्तभेदात्तयोर्विभक्तः पन्थाः॥१५॥
Vastusāmye cittabhedāttayorvibhaktaḥ panthāḥ||15||

同じ事物でも心は異なるため、区分けのしかたも違う道となる

Vastu　　　　　事物　物　対象物

sāmye 　　　　同じ

citta　　　　　　心

bhedāt　　　　違い

tayor　　　　　区分け、知

vibhaktaḥ 　　違い　差異

panthāḥ　　　道　方法　過程

各々の心は異なるため、同じ対象への認識も様々に異なる。[4.15]

Despite sameness (sāmye) of objects (vastu), there is a different (vibhaktaḥ) way or path (panthāḥ) to them both --i.e. object and its inherent knowledge-- (tayoḥ) since there are different (bhedāt) minds (citta)||15||

न चैकचित्ततन्त्रं वस्तु तदप्रमाणकं तदा किं स्यात्॥१६॥
Na caikacittatantraṁ vastu tadapramāṇakaṁ tadā kiṁ syāt||16||

１つの心だけに依る事物はなく、それ（心）はこれから何がおこるが認識しない

Na 　　　　　ない

ca　　　　　　確かに

ika →eka　　１つ

citta　　　　　心

tantraṁ 　　　頼る　依る　

vastu 　　　　事物

tad　　　　　　それ

apramāṇakaṁ 経験しない　認識しない

tadā 　　　それから

kiṁ 　　　　何

syāt　　　おこる

事物は、ある一つの心に依存して存在している（心が世界を創り出している）とは言えない。もし心が対象を認識できなかったら、その対象は存在しないことになってしまう。[4.16]

The object (vastu) certainly (ca) is not (na) dependent (tantram) on only one (eka) mind (citta), (because if so,) what (kim) would happen (syāt) when (the object) is not experienced or cognized (apramāṇakam) by that (mind) (tad) then (tadā)?||16||

तदुपरागापेक्षित्वाच्चित्तस्य वस्तु ज्ञाताज्ञातम्॥१७॥
Taduparāgāpekṣitvāccittasya vastu jñātājñātam||17||

それ（対象物）がどのように心を色付けするかは、（心が）対象物を区分けするかしないかによる。

Tad　　　　それ

uparāga　　　色付けする

apekṣitvāt　　　どのように

cittasya 　　　心

vastu 　　　　事物

jñāta　　　　差異

ajñātam　　差異がない

ある対象が認識されるかされないかは、心がそれによって色付けされるかされないかによって決まる。[4.17]

The object (vastu) is known (jñāta) (or) unknown (ajñātam) to the mind (cittasya) according to how (apekṣitvāt) it colors (uparāga) that (very mind) (tad)||17||

सदा ज्ञाताश्चित्तवृत्तयस्तत्प्रभोः पुरुषस्यापरिणामित्वात्॥१८॥
Sadā jñātāścittavṛttayastatprabhoḥ puruṣasyāpariṇāmitvāt||18||

いつも知られる心の作用は、それ（心）を支配するのは観照者で不変の存在である。

Sadā 　　　いつも

jñātāh　　　知られる

citta　　　　心

vṛttayah　　　　修正、作用、

tat→tad　　　それ　　この文脈では心

prabhoḥ 　　王、支配者

puruṣasya　　ただ観る者　観照者　プルシャ　真我

apariṇāmitvāt　　　変えられない　　不変

心の支配者であるプルシャ（真我）は不変であり、心の状態は常に知られている。[4.18]

To the Lord or Master --i.e. Puruṣa-- (prabhoḥ) of that --i.e. of mind-- (tad), the mental (citta) modifications (vṛttayaḥ) (are) always (sadā) known (jñātāḥ) because of the immutability (apariṇāmitvāt) of (that very) Puruṣa (puruṣasya)||18||

न तत्स्वाभासं दृश्यत्वात्॥१९॥
Na tatsvābhāsaṁ dṛśyatvāt||19||

それ（心）は自らが輝くものではなく、（真我）に知られる存在である。　

Na 　　　　　ない

tat　→tad　　　それ

svābhāsaṁ→sva-ābhāsam　　自己照明

dṛśyatvāt　　　　　知られる存在、客体

心は単独で輝くものではない。それはプルシャによって知覚される客体であるからである。[4.19]

That (mind) (tad) is not (na) self-illuminating (sva-ābhāsam) since it is a knowable object

(dṛśyatvāt)||19||

एकसमये चोभयानवधारणम्॥२०॥
Ekasamaye cobhayānavadhāraṇam||20||

（心は）同時に、そして両方（外界とない下位）を（一度に）認識しない。

Ekasamaye 　　同時に

co→ca　　　　　そして

ubhaya　　　　　　両方

anavadhāraṇam　　認識しない

心は主（真我）・客（外界の対象）を同時に知覚することはできない（このことからも、心が単独で輝くものではないことが示される）。[4.20]

And (ca) there is no cognizance (anavadhāraṇam) of them both --i.e. mind and knowable objects-- (ubhaya) simultaneously (ekasamaye)||20||

चित्तान्तरदृश्ये बुद्धिबुद्धेरतिप्रसङ्गः स्मृतिसङ्करश्च॥२१॥
Cittāntaradṛśye buddhibuddheratiprasaṅgaḥ smṛtisaṅkaraśca||21||

心が他から知ることができるものとして理智が区分けをすると記憶と行は無限に続いてしまう。

Citta　　　心

antara　　　他の

dṛśye 　　　　知ることのできるもの

buddhi　　　　理智

buddheh　　　　区分、判断、

atiprasaṅgaḥ 　　過度の延長　　過度に広がる　無限の

smṛti　　　　　　記憶

saṅkaraśca　　　行サンスカーラ

もし心が他の心からの認識によって存在すると仮定すると、無限の心が必要となり、結果として記憶の混乱が生じる。[4.21]

(If one's own mind were to be) a knowable object (dṛśye) to another (antara) mind (citta), (then there would be) a undue extension (atiprasaṅgaḥ) of Buddhi(s) (buddheḥ) of Buddhi-s (buddhi) and (ca) intermixture (saṅkaraḥ) of memories (smṛti)||21||

चितेरप्रतिसङ्क्रमायास्तदाकारापत्तौ स्वबुद्धिसंवेदनम्॥२२॥
Citerapratisaṅkramāyāstadākārāpattau svabuddhisaṁvedanam||22||

When Citi or Consciousness (citeḥ), though untransmissible--apratisaṅkramā-- (apratisaṅkramāyāḥ), takes on --āpatti-- (āpattau) the form (ākāra) of that --i.e. of Buddhi-- (tad), (it becomes) the consciousness or intelligence (saṁvedanam) of one's own (sva) Buddhi (buddhi)||22||

意識を伝達できないそれ(理智)は形を帯びて、各自の理智の意識になる

Citeh　　　　　　　　　　　　意識

apratisaṅkramāyāh　　　　　　伝達できない

tad　　　　　　　　　　　それ

ākāra　　　　　　　　　　形

āpattau 　　　　　　　　　とる　　引き受ける　帯びる

sva　　　　　　　　各自の

buddhi　　　　　　理智

saṁvedanam　　　意識

プルシャの意識は不変である。その像を映し出すことによって、心は真我に気づく。[4.22]

द्रष्टृदृश्योपरक्तं चित्तं सर्वार्थम्॥२३॥
Draṣṭṛdṛśyoparaktaṁ cittaṁ sarvārtham||23||

観る者と観られる者が影響しあうと、（真我は）心のすべてを理解する

Draṣṭṛ　　　観照者

dṛśya　　　　見れれるもの

uparaktaṁ 　影響する

cittaṁ 　　　　心

sarva　　　　すべてを

artham　　　理解する

心は観るものと観られるものの両方に染められたとき、全てを理解する。[4.23]

Mind (cittam), being affected (uparaktam) by (both) the seer (draṣṭṛ) and the seen (dṛśya), (is) all-comprehensive (sarva-artham)||23||

तदसङ्ख्येयवासनाभिश्चित्रमपि परार्थं संहत्यकारित्वात्॥२४॥
Tadasaṅkhyeyavāsanābhiścitramapi parārthaṁ saṁhatyakāritvāt||24||

それ（心）は無数の潜在している行によって多様に変化するが、他の対象でもあるので一緒に行動する。

Tad　　　　　　　それ

asaṅkhyeya　　　無数の

vāsanābhih　　　潜在した行サンスカーラ　　種子

citram　　　　　多様にする　　変化を与える

api 　　　　　　だが

para　　　　　　他の

arthaṁ 　　　　対象

saṁhatya　　　　　結合した　　一緒に

kāritvāt　　　…だから,…のゆえに行動する

数えきれない欲望を持ちながらも、心は他者（プルシャ）のために存在し、心は常にプルシャと共に活動する。[4.24]

That (mind) (tad), although (api) variegated (citram) by innumerable (asaṅkhyeya) Vāsanā-s --i.e. latencies resulting from feelings, not actions-- (vāsanābhiḥ), (exists) for (artham) another --i.e. Puruṣa-- (para) inasmuch as (its constituents) act (kāritvāt) conjointly (saṁhatya)||24||

विशेषदर्शिन आत्मभावभावनाविनिवृत्तिः॥२५॥
Viśeṣadarśina ātmabhāvabhāvanāvinivṛttiḥ||25||

違いを識る者は自己と原因体を調べ尽くして心理作用が停止している。

Viśeṣa 特別な違い　　　　真我と心素

darśina 知る者

ātma　　自己

bhāva　　自然　　原因体？

bhāvanā　　調べ尽くす　　　熟考を積み重ねる　丁寧に調べる　　　原因のメカニズムを知るプロセス

vinivṛttiḥ　　心理作用の停止

識別を得た者は、心をアートマンであると誤解することが永遠に止んでいる。[4.25]

To one who knows (darśinaḥ) the special distinction (viśeṣa) --i.e. to one who has realized Puruṣa or the Self--, there is cessation (vinivṛttiḥ) of the practice of pondering (bhāvanā) over the nature (bhāva) of his (own) Self (ātma)||25||

तदा विवेकनिम्नङ्कैवल्यप्राग्भारञ्चित्तम्॥२६॥
Tadā vivekanimnaṅkaivalyaprāgbhārañcittam||26||

そして違いを見分けやすくなり完全な解放に関心を向ける

Tadā 　　　　　そして

viveka　　　　差異を見分ける

nimnaṅ　　　傾向がある

kaivalya　　　　完全な解放

prāgbhārañ→prāk-bhāram　　　方向づける　　スポットライトを当てる

cittam　　　　心を

そして心は識別へと向かい、カイヴァリヤ（独存）に引き寄せられていく。[4.26]

Then (tadā), the mind (cittam) inclines (nimnam) toward discriminative (knowledge) (viveka) (and) is directed (prāk-bhāram) toward complete Liberation (kaivalya)||26||

तच्छिद्रेषु प्रत्ययान्तराणि संस्कारेभ्यः॥२७॥
Tacchidreṣu pratyayāntarāṇi saṁskārebhyaḥ||27||

そこ（完全な解放へのプロセス）では、他の行サンスカーラが現出する

Tac→tad　　　　　それ

chidreṣu 　　　　　穴の中に追い込まれて　　　この文脈では湧き上がる、破る、飛び上がる

pratyaya　　　　　修正　　調節

antarāṇi 　　　　　他の

saṁskārebhyaḥ　　行サンスカーラ　　潜在印象　

その間にも、それを妨げる思考が過去の印象によって湧き上がってくる。[4.27]

In the holes --i.e. in the breaches-- (chidreṣu) of that (discriminative knowledge) (tad), other (antarāṇi) mental modifications (pratyaya) (emerge) because of (residual) latencies

(saṁskārebhyaḥ)||27||

हानमेषां क्लेशवदुक्तम्॥२८॥
Hānameṣāṁ kleśavaduktam||28||

それら（行）を除去することの煩悩（を除去するの）と同じことだと言われる

Hānam　　　　除去する

eṣāṁ 　　　　それら

kleśa　　　　　苦の原因　　煩悩

vad→vat　　　同じように

uktam　　　　言われる

これらの障害は、これまでに説明された煩悩に対処する方法を用いて、取り除くことができる。[4.28]

It is said (uktam) (that) the removal (hānam) of these --i.e. of the mental modifications mentioned in the previous aphorism-- (eṣām) is as (vat) (that of) the Kleśa-s or Afflictions (kleśa)||28||

प्रसङ्ख्यानेऽप्यकुसीदस्य सर्वथा विवेकख्यातेर्धर्ममेघः समाधिः॥२९॥
Prasaṅkhyāne'pyakusīdasya sarvathā vivekakhyāterdharmameghaḥ samādhiḥ||29||

完全な識別により最高の時空に対しても無関心になり、知の塊を区分けし尽くすのが宇宙原理につながる三昧である

Prasaṅkhyāne　　三昧智　　rajaaとtamasが取り去られた智　　　　　全知

'py→api　　　　　と同様に

akusīdasya 　　　無関心

sarvathā 　　　最高の状態

viveka　　　　　差異を知る

khyāteh　　　　知識　区分けした塊

dharmameghaḥ 　法雲　　　ダルマの道　　　宇宙原理につながる生き方

samādhiḥ　　　三昧

「行者が最高の直覚智に対してさえ何らの期待を抱かず、あらゆる形の識別智を尽くしたならば、法雲三昧が顕れる」YS4.29

究極的には法雲三昧の境地のなかで、心臓内にある輝く光球から、ガンジス河の水のように尽きることなく不断に注がれてくる智慧の雨を全身に受けて、なすべきことはすべてなし遂げたと言えるような最高の満足感に浸りきれるようになる。

法雲三昧の境地のなかで修行すれば、行サンカーラは2度と再び発芽すなわち結実することもなくなる。

完全な識別によって、その者は最上級の結果に対しても無関心となり、揺るがない識別知を持ち続ける。これをダルマメーガ・サマーディ（法雲三昧）と呼ぶ。（「ダルマ」は、美徳・正義・法・義務・道徳・信心・ご利益・天命、の意味を持つ）[4.29]

One who, having attained discriminative (viveka) knowledge (khyāteḥ) in the highest degree and at all times (sarvathā), does not take an interest (akusīdasya) even (api) in (that) omniscience resulting from "Vivekajaṁ jñānam" or "Knowledge arising from discernment" --See III 54-- (prasaṅkhyāne), (experiences a type of) Samādhi or Perfect Concentration (samādhiḥ) (known as) Dharmamegha --i.e. Cloud of Virtue-- (dharma-meghaḥ)||29||

ततः क्लेशकर्मनिवृत्तिः॥३०॥
Tataḥ kleśakarmanivṛttiḥ||30||

それ（法雲三昧）から、煩悩とカルマが停止する

Tataḥ 　それ

kleśa　　　煩悩

karma　　　業　カルマ

nivṛttiḥ　心理作用の停止

「その時、煩悩と業は還滅する」YS4.30

行の1種がカルマである。行＞カルマ

身体内外における絶対者ブラフマンの実相と根本自性についての知識も明らかにしてくれる。

これをラジャー・ヨーガでは法雲dharma megha三昧の境地と呼ぶ。

この境地の後に

願ったことは何でも実現する境地 satya samkalpa

真理を求める欲望を持つ境地 satya kāma

どんな欲望にも満足する境地 āpta kāma

欲望にとらわれない境地 niṣkāma　　　

最終的な離欲の境地 akāma

離身解脱videha mukti　　　　自分はこの身体であるとの思いを消し去った

生前解脱jivana mukti　　　　この世にありながら解脱の境地

この結果、業kammaと残存印象vāsanāと心裡作用vrittiはすべて消え去ってしまう。

3種の徳性を支配し得た境地、つまり真我が徳性の集まりである根本自性との関係を断つこと。

[4.30]

From that --i.e. from Dharmamegha-- (tatas), there is cessation (nivṛttiḥ) of Afflictions (kleśa) (and) actions (karma)||30||

तदा सर्वावरणमलापेतस्य ज्ञानस्यानन्त्याज्ज्ञेयमल्पम्॥३१॥
Tadā sarvāvaraṇamalāpetasya jñānasyānantyājjñeyamalpam||31||

Then (tadā), due to the infinity (ānantyāt) of knowledge (jñānasya) free --apeta-- (apetasya) from all (sarva) veiling (āvaraṇa) impurities (mala), the knowable(s) (jñeyam) (appear to be) few (alpam)||31||

それから、覆っていたすべての汚れから離れた区分けの仕方は無限にあるので、さらに知られるべきモノはわずかである

Tadā 　　それから

sarva　　　すべて

āvaraṇa　　ベールで覆う　　覆障　　煩悩と業のこと

mala　　　　不純　汚れ

apetasya 　　自由　束縛されない　離脱

jñānasya　　　差異

ānantyāt　　　無限

jñeyam　　　　　知られるもの

alpam　　　　いくつか　　わずか

「その時、覆い隠すすべての汚れ（煩悩と業）を離れた智は無限であるから、さらに知られるべき対象は僅かしか残らない」　ヨーガ・スートラ4.31

覆いと不純を取り除かれた知は無限であり、さらに知られるべきものはほとんどない。[4.31]

ततः कृतार्थानां परिणामक्रमसमाप्तिर्गुणानाम्॥३२॥
Tataḥ kṛtārthānāṁ pariṇāmakramasamāptirguṇānām||32||

それから、目的は達成されたので、転変していたカルマの（大本である）徳性の働きは終わる

Tataḥ それから

kṛta－arthānāṁ 　　　目的を達成する

pariṇāma　　　　　　変化、変異、転変　　潜在が顕出する　顕現関係　　因中有果　　因果の結果

karma　　　　　　業　連続、継続、帰結、順番

samāptir　　　　終える

guṇānām　　　　徳性（善性・動性・暗性）

そのときグナは目的を果たしたため、その転変の流れを終える。[4.32]

From that (Dharmamegha or Cloud of Virtue) (tatas), when the Guṇa-s --i.e. "qualities of Prakṛti"-- (guṇānām) have accomplished their purpose (kṛta-arthānām), there is cessation (samāptiḥ) of the mutative (pariṇāma) sequence (krama) (of those very Guṇa-s)||32||

क्षणप्रतियोगी परिणामापरान्तनिर्ग्राह्यः क्रमः॥३३॥
Kṣaṇapratiyogī pariṇāmāparāntanirgrāhyaḥ kramaḥ||33||

相互に影響する瞬間に、変化し続けることが終結して認識できるもの、それがカルマである。

Kṣaṇa　　刹那　　瞬間

pratiyogī 　相互に関連する

pariṇāma　　変化、変形　潜在が顕出する　顕現関係　　因中有果　　因果の結果

aparānta　　　終結

nirgrāhyaḥ 　　認識可能な　気づき可能な

kramaḥ　因果

時の流れによる変化は刹那の間（現在）に存在し、その連続性は、転変の終わりにおいて認識される。[4.33]

Sequence (kramaḥ) is correlated (pratiyogī) to the moments (kṣaṇa) (and) is perceivable or noticeable (nirgrāhyaḥ) on the termination (aparānta) of the mutations (pariṇāma)||33||

पुरुषार्थशून्यानां गुणानां प्रतिप्रसवः कैवल्यं स्वरूपप्रतिष्ठा वा चितिशक्तिरिति॥३४॥
Puruṣārthaśūnyānāṁ guṇānāṁ pratiprasavaḥ kaivalyaṁ svarūpapratiṣṭhā vā citiśaktiriti||34||

「独存位とは、真我のためという目的のなくなった３種の徳性が自分自身の本源へ没入し去ることである。あるいは純粋意識たる真我がそれ自体に安住すること、といってもよい」YS 4.34

かくして、無上なる独存が成り、グナはもはやプルシャに仕える目的を持たず、元の状態（変化が止まった・非顕現の状態）へと還入される。あるいは、純粋な意識の力が、その本来の姿に帰着するとも言える。[4.34]

Puruṣa　　　　　　　プルシャ

artha－śūnyānāṁ 　　充満の目的

guṇānāṁ 　　　　　　グナ

pratiprasavaḥ 　　　　根本自性　　根本の事象

kaivalyaṁ 　　　　　完全離脱　　独存位

svarūpa　　　　　本来のあるがまま

pratiṣṭhā 　　　　　確立される

vā 　　　　　　　　　もしくは

citi　　　　　　　　　意識

śaktiriti　　　　　　　力　　パワー

guna徳性は、自己の本質に安住している真我に向かって、内的心理器官を生じさせることはない

換言すれば真我は独存位となり、内的心理器官は質量因である未顕根本自性へと帰滅してゆく。

Complete Liberation (kaivalyam) or (vā) the Power (śaktiḥ) of Consciousness (citi) established (pratiṣṭhā) in her own nature (sva-rūpa) (occurs when) the Guṇa-s --i.e. "qualities of Prakṛti"-- (guṇānām) return to their original source --i.e. Prakṛti-- (pratiprasavaḥ), as they have no (further) purpose to fulfill (artha-śūnyānām) for Puruṣa (puruṣa) --final "iti" indicates the end of this scripture--||34||

Here concludes the Fourth Section dealing with Liberation, and also the scripture itself.

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ヨーガスートラ日本語訳一覧　　

※節番号をクリックすると解説記事が開きます。

第１章サマーディ・パダ三昧部門

では、「ヨーガ」について解説しよう。[1.1] 　　　　

ヨーガとは、心の波立ちを止めることである。[1.2]

その時、観る者（真我・魂）は心にその本来の姿を映し出す。[1.3]

それ以外の時、観る者は、心の波立ちに応じて歪んだ姿で認識される。[1.4]

心の作用には５つの種類があり、それらの中には苦（煩悩）を伴うものと、伴わないものがある。[1.5]

その５つは、正知・誤解・言葉による錯覚・睡眠・記憶である。[1.6]

正知の根拠となるものは、直接的（現実的）な知覚・推論（演繹）・聖典の記述である。[1.7]

誤解は、その知識が正しい根拠に基づいていないときに起こる。[1.8]

実態に基づいていない空虚な言葉によって現れる心の作用は、言葉による錯覚である。[1.9]

「無に対する認識」に基づいた心の作用が、睡眠である。[1.10]

過去に経験して忘れていないものが、意識に戻ってくる心の作用を、記憶という。[1.11]

心の作用は、修習と離欲によって抑制される。[1.12]

これら２つのうち、絶え間ない努力をすることが「修習」である。[1.13]

修習は、長い間・休みなく・大いなる真剣さをもって取り組むことで、しっかりとした基盤をつくりあげる。[1.14]

見たり聞いたりした対象への渇望から開放された人の、克己の意識が「離欲」である。[1.15]

真我の認識によって、グナ（世界の構成物）への渇望からさえも解放される。[1.16]

サムプラジュニャータ・サマーディ（区別ある三昧・有想三昧）は論証性（尋）・反射（伺）・歓喜・純粋な自意識（我想）を伴う。[1.17]

揺るぎない信念を持って、心の作用を完全に抑止する実践を絶え間なく続けることによって、あとには「行（物事がそのようになる力）」だけが残る。これがもう一つのサマーディ（アサムプラジュニャータサマーディ・区別のない三昧・無想三昧）である。[1.18]

肉体を脱して自然界と一体化した人々や、神々（神性を得た人間）は、再誕に至る。[1.19]

その他の人々（ヨーガ実践者）は、信念・強さ・洞察・三昧・叡智によって解脱に至る。[1.20]

強い熱意のある実践者には、サマーディは非常に早く訪れる。[1.21]

成就に必要な時間は、実践が穏やかであるか・中位であるか・最上であるかによって大いに異なる。[1.22]

またはイーシュヴァラ（宇宙意識）への完全な献身によって、サマーディは成る。[1.23]

イーシュヴァラとは、苦悩・行為・行為の結果・欲望からも影響を受けない、至上の魂である。[1.24]

イーシュヴァラには、全知の種が備わっている。[1.25]

イーシュヴァラは古代の師にとっても師であり、時に依存しない。[1.26]

イーシュヴァラを示す言葉は「オーム」である。[1.27]

その意味を熟考しながら「オーム」を繰り返し唱えることが、サマーディへの道である。[1.28]

この実践によって、全ての障害が消え、同時に内面の自我に関する知が湧き上がる。[1.29]

心の散動に伴って、苦痛・失望・体の震え・呼吸の乱れが起こる。[1.31]

一つの対象に集中することが、これらの障害と付随物を防ぐ方法である。[1.32]

または、心の平静はコントロールされた呼気と保息によって保たれる。[1.34]

または、微細な対象への感覚に集中することが心の安定をもたらす。[1.35]

または、永遠に輝く至上な内なる光に集中することによって。[1.36]

または、知覚できる対象への執着から完全に自由な心に集中することによって。[1.37]

または、神々しい夢や深い眠りにおける経験に対して集中することによって。[1.38]

または、どんなものでも、自分を高めてくれるものを選んで瞑想することによって。[1.39]

瞑想によって、根本的な原子から最も巨大なものまで次第に解明されていく。[1.40]

対象の「名前」「形態」「知」が混入した状態のサマーディを「サヴィタルカ・サマーディ（有尋三昧）」と呼ぶ。[1.42]

記憶が浄化され、集中対象の「名前」「形態」に関わらず「知」のみが輝く時、これがニルヴィタルカ・サマーディ（無尋三昧）である。[1.43]

微細な対象は、非顕現の状態（名称・形態・想念もない、自然の完全な平衡状態）へと終着する。[1.45]

これらのサマーディはサビージャ・サマーディ（有種子三昧）、心の波立ちや束縛へと戻る可能性を持つ。[1.46]

ニルヴィチャーラ・サマーディ（無伺三昧）が純粋になれば、至高の真我が輝く。[1.47]

これがリタムバラー・プラジュニャー、絶対的な真理を得た状態である。[1.48]

この特別な真理は、聞いたり・聖典から学んだり・推量したりして得られる知識とは完全に異なる。[1.49]

このサマーディによって生じる行は、他の全ての行を消し去る。[1.50]

この行すらも消え去った時、全ての行が消える。これがニルビージャ・サマーディ（無種子三昧）である。[1.51]

第２章サーダナ・パダ実修部門

これらは煩悩を最小化し、サマーディを達成する助けとなる。[2.2]

無知・我想（エゴ）・執着・嫌悪・生命欲が、５つの障害（煩悩）である。[2.3]

無知とは、永遠でないものを永遠であると認識し、不純なものを純粋と認識し、苦を楽と認識し、真我でないものを真我であると認識することである。[2.5]

我想（エゴ）とは、「観る者（真我・魂）」と「観るための道具（体・心）」の同一視である。[2.6]

執着は、快楽の上に住まう。[2.7]

嫌悪は、苦痛の上に住まう。[2.8]

肉体的な生命に依存すること（生命欲）は、自身の（過去の経験による）潜在的な意識に従って起こり、これは賢者すらも支配する。[2.9]

これらの煩悩が潜在的な状態のときは、根因に回帰させることで破壊することができる。[2.10]

これらの煩悩が心の作用として現れているときは、瞑想によって破壊することができる。[2.11]

カルマ（行為と結果）の子宮の根はこれらの煩悩の中にあり、カルマは見える生（現世）や見えざる生（未来）の経験をもたらす。[2.12]

その根が存在する限り、行為の結果もまた起こり、様々な生類としての再生があり、それらの生には寿命と経験がある。[2.13]

カルマは、善業によって楽を、悪業によって苦を、結果としてもたらす。[2.14]

得たものを失う不安や恐怖・結果として心に残り新たな欲を生み出す印象（サンスカーラ）・心を左右する３つのグナの持続的な不均衡を鑑みるに、識別ある人にとっては、全てが苦であることは明らかである。[2.15]

未来の苦は、避けることができる。[2.16]

この避けられる苦の原因は、観るもの（プルシャ・真我）と観られるもの（プラクリティ・自然）の結合である。[2.17]

観られるもの（プラクリティ・自然界）は、グナ（照明・活動・惰性＝サットヴァ・ラジャス・タマス）によって成り立つ、元素や感覚器官で構成される自然界であり、その目的は観るもの（プルシャ・真我・魂）に経験と解脱の両方を与えることである。[2.18]

グナの段階は、顕現した状態・非顕現の状態・定義された状態・定義できない状態がある。[2.19]

観るものは観るための力そのものであり、純粋だが、それは心を通して観られる（心が波立っていれば、色付けられた状態で現れる）。[2.20]

観られるものは、観るものの目的のためだけに存在する。[2.21]

観られるものは、解脱を達成したものにとっては破壊されているが、他のものにとっては依然として存在し、共有されている。[2.22]

その結合の原因となるのは、無知である。[2.24]

無知がなくなれば、もはやこのような結合は起こらない。これが観るもの（プルシャ）の独立（独存）である。[2.25]

絶え間ない識別が、無知を破壊する方法である。[2.26]

識別知を得たものの最高位の知は、７層に分かれる。（識別知を得たものは、１：これ以上さらに何かを知ろうとする欲求、２：何かを遠ざけようとする欲求、３：新しいものを得ようとする欲求、４：何かしたいという欲求、５：悲しみ、６：恐怖、７：妄想、の７つが終息するのを経験する。）[2.27]

８支則のヨーガ（アシュターンガ・ヨーガ）を実践することで、不純は次第に遠ざかり、知の夜明けが訪れ、識別知が導き出される。[2.28]

８支則のヨーガとは以下の項目で成り立つ。１：ヤマ（禁戒）、２：ニヤマ（勧戒）、３：アーサナ（姿勢）、４：プラーナーヤーマ（呼吸制御）、５：プラティヤーハーラ（感覚抑止）、６：ダーラナー（集中）、７：ディヤーナ（瞑想）、８：サマーディ（三昧、合一、超意識状態）[2.29]

ヤマ（禁戒）は非暴力・誠実・不盗・自制・不貪によって成り立つ。[2.30]

これらの偉大な誓約は普遍であり、階級・場所・時間・環境に限定されるものではない。[2.31]

ニヤマ（勧戒）は、清浄・知足・熱意・自己研鑽・神への祈念（帰依）によって成り立つ。[2.32]

否定的な思考によって心が波立つときは、反対の（肯定的な）思考を用いて打ち消す。これがプラティパクシャ・バーヴァナである。[2.33]

暴力などのような否定的な行為をもたらす思考が生まれたとき、あるいは他者のそれを認めただけのときであっても、欲望・怒り・迷妄などいかなる原因によって引き起こされたものでも、穏やか・中位・激しいなどいかなる状態であっても、それらは無知によって生まれ、無知がある限り終わらない苦痛をもたらす。それらによってどのようなこと（反作用）が起こるのかを熟考することもまた、プラティパクシャ・バーヴァナである。[2.34]

アヒンサー（非暴力）に徹した者のそばでは、全ての敵意が止む。[2.35]

サティヤ（誠実）に徹した者には、行為に対して自然な結果が従う。[2.36]

アステーヤ（不盗）に徹した者には、全ての富が集まる。[2.37]

ブラフマチャリヤ（自制）に徹することで、活力が得られる。[2.38]

アパリグラハ（不貪）に徹したとき、自分がどのように・なぜ生まれたのか（物事の因果関係）という根本的な知を得る。[2.39]

シャウチャー（内的・外的な清浄）に徹することで、自身の体に対してすら嫌悪感が生じ、他者の体と交わることへの興味もなくなる。[2.40]

さらに、サットヴァの純粋性・心の快活さ・集中力・感覚の制御・自己実現への適性を得る。[2.41]

サントーシャ（知足）によって、至上の幸福がもたらされる。[2.42]

タパス（苦行・熱意）によって、体と感覚の不純が破壊され、超自然的な力が得られる。[2.43]

スヴァーディヤーヤ（自己研鑽・聖典の研究・読誦）をすることで、望んだ神霊との交わりが訪れる。[2.44]

イーシュヴァラプラニダーナ（宇宙意識への完全な帰依）によって、サマーディは達成される。[2.45]

アーサナ（坐法）は、安定していて快適な姿勢である。[2.46]

努力なしに自然な状態で姿勢をとれるようになり、永遠なるものに瞑想することで、アーサナに熟達することができる。[2.47]

アーサナに熟達した者は、二元性によって思考を妨げられることがなくなる。[2.48]

安定した姿勢が得られたとき、吸気と呼気の動きが制御される。これがプラーナーヤーマ（調気・呼吸法）である。[2.49]

その働きは外的・内的・静止のいずれかの状態をとる。これらは空間・時間・数において規則的に行われ、長短それぞれの方法がある。[2.50]

内的および外的な対象に集中しているときにおこる、第四の型をとるプラーナーヤーマ（ケーヴァラ・クンバカ：自然な止息）がある。[2.51]

その結果、心の内面にある光を覆っていたベールが破壊される。[2.52]

そして心はダーラナー（集中）への適性を得る。[2.53]

感覚器官が外的な対象から離れ、心の本来の状態を映し出すとき、これがプラティヤーハーラ（制感・感覚抑止）である。[2.54]

これによって、感覚器官の無上な統御が成る。[2.55]

第３章ヴィブーティ・パダ成就部門

ダーラナー（集中）とは、心を特定の対象に留め置くことである。[3.1]

ディヤーナ（瞑想・禅定・静慮）とは、集中対象への絶え間ない認識の流れである。[3.2]

サマーディ（三昧）とは、対象が全ての形態を失ったかのようになり、その意味（本質）だけが映し出される瞑想状態である。[3.3]

これらの３つ（ダーラナー・ディヤーナ・サマーディ）をひとつの対象に対して行うことを、サンヤマ（綜制）と呼ぶ。[3.4]

サンヤマに熟達することで、知の光が訪れる。[3.5]

サンヤマの実践は、段階を経て達成される。[3.6]

これら３支（ダーラナ・ディヤーナ・サマーディ）は前の５支よりもより内的である。[3.7]

これら３支といえども、無種子三昧よりは外的である。[3.8]

湧き上がってくるサンスカーラ（物事がそのようになる力）は、それに代わる心の作用を生み出すことによる抑止的な努力によって消滅する。このような新たな心の流れが、ニローダ・パリナーマ（止滅転変）である。[3.9]

ニローダ・パリナーマ（止滅転変）の流れは、習慣によって安定したものになる。[3.10]

心の散動が収まり、一点集中が成るとき、サマーディ・パリナーマ（三昧転変・三昧への進展）は訪れる。[3.11]

そしてまた、次第に消え去る過去の想念と今湧き上がる想念が同一なとき、エーカーグラタ・パリナーマ（専念転変・一点集中）が在る。[3.12]

これによって、微細または粗大な対象および感覚器官における、形・時間・状態の３つの転変が説明される。[3.13]

潜在・生起・非顕現の状態を経ていくのは原質（プラクリティ・自然界の構成物）である。[3.14]

これらの変化の連続が、様々な転変の原因である。[3.15]

転変の３段階にサンヤマ（綜制）を行うことによって、過去と未来の知が得られる。[3.16]

通常は混同されている言葉（音）・意味・その背後にある知に対してサンヤマを行うことで、全ての生物が発する言葉（音）に関する本質的な知が得られる。[3.17]

サンスカーラ（物事がそのようになる力）を直接的に知覚することによって、過去世に関する知が得られる。[3.18]

他者が発するアイデアに対してサンヤマを行うことによって、その者の想念に関する知が得られる。[3.19]

同様にして、音（触・味・臭など）の消失も説明される。[3.22](※)

友情・慈愛などに対してサンヤマを行うことによって、ヨーギはそれらの特性において秀でた能力を得る。[3.24(3.23)]

象などの強力な動物に対してサンヤマを行うことによって、ヨーギはその動物たちの強さを得る。[3.25(3.24)]

内なる光にサンヤマを行うことによって、微細な・隠された・遠く離れたものに関する知が得られる。[3.26(3.25)]

太陽にサンヤマを行うことによって、太陽系すべてに関する知が得られる。[3.27(3.26)]

月にサンヤマを行うことによって、星の配置に関する知が得られる。[3.28(3.27)]

北極星にサンヤマを行うことによって、星の動きに関する知が得られる。[3.29(3.28)]

臍のチャクラにサンヤマを行うことによって、体の構造に関する知が得られる。[3.30(3.29)]

喉のくぼみにサンヤマを行うことによって、空腹と喉の渇きを止めることができる。[3.31(3.30)]

クールマナーディ（鎖骨間の奥にある、微小な亀の形をした管）にサンヤマを行うことによって、瞑想姿勢における不動が得られる。[3.32(3.31)]

頭頂の光（サハスラーラチャクラ）にサンヤマを行うことによって、達人（シッダ）たちの姿が見える。[3.33(3.32)]

または、プラティバー（純粋な生活を通して自然に起こる悟り）によって（サンヤマを行うことなく）全てを知ることができる。[3.34(3.33)]

心臓にサンヤマを行うことによって、心の働きに関する知が得られる。[3.35(3.34)]

心とプルシャ（真我）は完全に異なっていて、これらを混同することは全ての経験（苦難や快楽）の原因となる。これらの違いに対してサンヤマを行うことによって、プルシャに関する知が得られる。[3.36(3.35)]

このプラティバー（真我に関する、輝ける知）によって超自然的な聴覚・触覚・視覚・味覚・嗅覚が得られる。[3.37(3.36)]

これら（超自然的な感覚）はサマーディへの道においては障害となるが、世俗的な追求においてはシッディ（霊能・成就）となる。[3.38(3.37)]

心を体に縛り付けている原因を緩めることによって、そして心の作用が働く過程に関する知によって、他者の体に入り込むことができる。[3.39(3.38)]

ウダーナ気（上向きの生気）を支配することによって、ヨーギは水・沼地・棘の上に浮くことができるようになる。[3.40(3.39)]

サマーナ気（均一化を司る生気）を支配することによって、体は輝きに包まれる。[3.41(3.40)]

耳とエーテル（空間）との間の関係にサンヤマを行うことによって、超自然的な聴覚が得られる。[3.42(3.41)]

体とエーテル（空間）の間の関係にサンヤマを行うことによって、綿のような軽さが得られ、エーテルの中を自由に移動することができるようになる。[3.43(3.42)]

体の外にあって認識されていなかった思考の波にサンヤマを行うこと（マハーヴィデハ・偉大なる脱身）によって、真我の光を覆っていたベールが破壊される。[3.44(3.43)]

自然界を構成する要素（五大元素：土・水・火・風・空の順番に粗大→微細となっていく）の本質・相互関係・目的に対してサンヤマを行うことによって、それらに対する支配が得られる。[3.45(3.44)]

それによって、アニマ（体を小さくする力）などその他のシッディ、体の完全化、体の機能が自然界の要素によって影響を受けなくなる能力が得られる。[3.46(3.45)]

体の完全化は、美・気品・強さ・揺るぎない強健によって成される。[3.47(3.46)]

感覚器官および自然界の本質（エゴと感覚器官の目的の間の相互関係）にサンヤマを行うことによって、それらに対する支配が得られる。[3.48(3.47)]

それによって、迅速な心、感覚器官を必要としない体、自然界の根因（プラクリティ）への支配を得る。[3.49(3.48)]

サットヴァ（「心」を含む、自然界）と真我との違いを識別することによって、すべての状態・形態における存在への支配が「全知」として得られる。[3.50(3.49)]

これら（すべてのシッディ・超能力）に対してすら無執着であることによって、束縛の種は破壊され、カイヴァリヤ（独存）の状態が訪れる。[3.51(3.50)]

ヨーギは、神々からの誘いを受けたとしても、これを受容することなく、またそれによって慢心の笑みすら浮かべるべきではない。再び望まざる状態に引き戻される可能性があるからである。[3.52(3.51)]

時間の中の一片（刹那）にサンヤマを行い、それを繰り返すことによって、識別知が得られる。[3.53(3.52)]

これによって、種・特徴・位置などが酷似していて識別できなかったものが、識別できるようになる。[3.54(3.53)]

この識別知は、全ての状態にある全ての対象を同時に理解する、解脱をもたらす直観知である。[3.55(3.54)]

穏やかな心が真我に等しい純粋性を得た時、カイヴァリヤ（独存）が訪れる。[3.56(3.55)]

第４章カイヴァリヤ・パダ絶対部門

シッディ（超能力）は、前世における行・薬草・マントラ・タパス（熱意・苦行）・サマーディによって得られる（ただしサマーディで得られるもの以外は不自然である）。[4.1]

異なる生物として生まれ変わることは、プラクリティ（自然界を構成する要素）の流入によってもたらされる。[4.2]

エゴのみが、（本来備わっている以外の）心の働きを生み出す。[4.4]

生み出された心の働きは様々に異なるが、本来備わっている心は、それら全ての心に対する命令者となる。[4.5]

瞑想によって生まれた心のみが、人為的に生み出された様々な心とは異なり、カルマの印象（力）から逃れている。[4.6]

ヨーギの行為は白（善）でも黒（悪）でもない。他者の行為は黒・白・グレーの３種類に分かれる。[4.7]

ヴァーサナーが種・空間・時間によって隔てられていようとも連続性をもつのは、記憶とサンスカーラの間に同一性があるためである。[4.9]

生命欲が永遠であるため、サンスカーラもまた無始である。[4.10]

サンスカーラは原因・結果・基盤・支柱（対象）と共にあり、これら４つの消失によってサンスカーラもまた消える。[4.11]

顕現・非顕現の状態に関わらず、これらの性質はグナ（自然界の構成要素）に基づいている。[4.13]

事物の本質（同一性）は、グナの転変の一貫性に基づいている。[4.14]

各々の心は異なるため、同じ対象への認識も様々に異なる。[4.15]

ある対象が認識されるかされないかは、心がそれによって色付けされるかされないかによって決まる。[4.17]

心の支配者であるプルシャ（真我）は不変であり、心の状態は常に知られている。[4.18]

心は単独で輝くものではない。それはプルシャによって知覚される客体であるからである。[4.19]

心は主（真我）・客（外界の対象）を同時に知覚することはできない（このことからも、心が単独で輝くものではないことが示される）。[4.20]

もし心が他の心からの認識によって存在すると仮定すると、無限の心が必要となり、結果として記憶の混乱が生じる。[4.21]

プルシャの意識は不変である。その像を映し出すことによって、心は真我に気づく。[4.22]

心は観るものと観られるものの両方に染められたとき、全てを理解する。[4.23]

数えきれない欲望を持ちながらも、心は他者（プルシャ）のために存在し、心は常にプルシャと共に活動する。[4.24]

識別を得た者は、心をアートマンであると誤解することが永遠に止んでいる。[4.25]

そして心は識別へと向かい、カイヴァリヤ（独存）に引き寄せられていく。[4.26]

その間にも、それを妨げる思考が過去の印象によって湧き上がってくる。[4.27]

これらの障害は、これまでに説明された煩悩に対処する方法を用いて、取り除くことができる。[4.28]

このサマーディによって、全ての苦痛とカルマが終結する。[4.30]

覆いと不純を取り除かれた知は無限であり、さらに知られるべきものはほとんどない。[4.31]

そのときグナは目的を果たしたため、その転変の流れを終える。[4.32]

時の流れによる変化は刹那の間（現在）に存在し、その連続性は、転変の終わりにおいて認識される。[4.33]

三明六通

〘名〙仏語。三明と六通。

宿命通、天眼通、漏尽通の3つをまとめて、三明（巴: tevijjā）と呼ぶ。

六通はそれに天耳通(てんにつう)（=六道衆生の声を聞くこと）、他心通(たしんつう)（=六道衆生の心中を知ること）、神足通(じんそくつう)（=種々の神変を現ずること）の三つを加えたもの

六神通　巴: chaḷabhiññā

「直接的な知識」「高度な知識」「超常的な知識」のこと。

仏教において仏・菩薩などが持っているとされる6種の超人的な能力。6種の神通力。六通ともよばれ、止観の瞑想修行において、止行（禅定）による三昧の次に、観行（ヴィパッサナー）に移行した際に得られる、自在な境地を表現したものである。

具体的には以下の6つを指す。

神足じんそく通（巴: iddhi-vidha-ñāṇa） - 自由自在に自分の思う場所に思う姿で行き来でき、思いどおりに外界のものを変えることのできる力。飛行や水面歩行、壁歩き、すり抜け等をし得る力。

天耳てんに通（巴: dibba-sota-ñāṇa） - 世界すべての声や音を聞き取り、聞き分けることができる力。

他心たしん通（巴: ceto-pariya-ñāṇa） - 他人の心の中をすべて読み取る力。

宿命しゅくみょう通（巴: pubbe-nivāsānussati-ñāṇa） - 自他の過去の出来事や生活、前世をすべて知る力。

天眼てんげん通（巴: dibba-cakkhu-ñāṇa） - 一切の衆生の業による生死を遍知する智慧。一切の衆生の輪廻転生を見る力。

漏尽ろじん通（巴: āsavakkhaya-ñāṇa） - 煩悩が尽きて、今生を最後に二度と迷いの世界に生まれないことを知る智慧。生まれ変わることはなくなったと知る力。

経典の記述

『沙門果経』

パーリ語経典長部の『沙門果経』においては、釈迦がマガタ国王に仏教の沙門（出家修行者、比丘・比丘尼）の果報を問われ、まず戒律順守によって得られる果報、次に止行（禅定、四禅）によって得られる果報を次々と述べた後に、その先の観行（四念住（四念処））によって得られる果報を、以下のように述べている[6]。

（四禅の次に）「自身の身体が、元素から成り、父母から生まれ、食物の集積に過ぎず、恒常的でない衰退・消耗・分解・崩壊するものであり、意識もその身体に依存している」と悟れる（= 「身念住」（身念処））

（その次に）「思考で成り立つ身体（意生身）を生み出す」ことができる

（その次に）「様々な神通（超能力）を体験する」ことができる（以下、神足通）

「一から多に、多から一となれる」

「姿を現したり、隠したりできる」

「塀や、城壁や、山を通り抜けられる」

「大地に潜ったり、浮かび上がったりできる」

「鳥のように空を飛び歩ける」

「月や太陽をさわったりなでたりできる」

「梵天の世界にも到達できる」

（その次に）「神のような耳（天耳通）を獲得する」ことができる

「神と人間の声を、遠近問わず聞くことができる」

（その次に）「他人の心を（自分の心として）洞察する力（他心通）を獲得する」ことができる

「情欲に満ちた心であるか否かを知ることができる」

「憎しみをいだいた心であるか否かを知ることができる」

「迷いのある心であるか否かを知ることができる」

「集中した心であるか否かを知ることができる」

「寛大な心であるか否かを知ることができる」

「平凡な心であるか否かを知ることができる」

「安定した心であるか否かを知ることができる」

「解脱した心であるか否かを知ることができる」

（その次に）「自身の過去の生存の境涯を想起する知（宿住通（宿命通））を獲得する」ことができる

「1つ、2つ…10…100…1000…10000の過去生を想起できる」

「それも、幾多の宇宙の生成（成刧）、壊滅（壊刧）を通して想起できる」

「それも、具体的・詳細な映像・内容と共に想起できる」

（その次に）「生命あるものの死と生に関する知（死生通（天眼通））を獲得する」ことができる

「生命あるものがその行為（業）に応じて、優劣、美醜、幸不幸なものになることを知ることができる」

「生命あるものが（身口意の）業の善悪により、善趣・天界や悪趣・地獄に生まれ変わることを知ることができる」

（その次に）「汚れの滅尽に関する知（漏尽通）を獲得する」ことができる

「苦しみ（汚れ）、苦しみ（汚れ）の原因、苦しみ（汚れ）の消滅、苦しみ（汚れ）の消滅への道（以上、四聖諦）を、ありのままに知ることができる」

「欲望・生存・無知の苦しみ（汚れ）から解放され、解脱が成され、再生の遮断、修行の完遂を、知ることができる」

仏教における9段階の禅定　　　https://j-theravada.net/world/study/pali-sutta3-2/

誰がどんなふうにやっても同じ段階の禅定に入れば同じ内容を体験しますが、実は禅定に入る時から既に、心の状態は同じパターンになっています。

簡単に言えば二つのことがなくなって、色界第一禅に入ります。

一つは日常の世間的なこと・欲界への執着がなくなること、

二つ目は悪いことから離れることです。

心を何か一点の対象に集中させて、日常の欲と悪から切り離すと、色界第一禅に入るのです。

第一禅は、言葉による思考と言葉によらない思考がある（有尋・有伺 savitakkaṃ savicāram）、あらゆる関わりから離れること（遠離 viveka ）で生じる喜悦感（pīti）と幸福感（sukha）に満ちた状態です。

これはまだ、禅定と言うよりは、一点に集中して欲や悪などあらゆる関わりから無理やり離れて生じた楽の体験というようなものです。それでも、欲界の煩わしさから完全に離れられた状態は、明らかに喜び、幸福です。第一禅の最中では思考はまだはたらいています。

第二禅は、言葉によるものとよらないものの二種類の思考（尋・伺）が消えることにより内（心）が穏やかになり、心が統一され、無尋・無伺の三昧（samādhi）から生じる喜悦感と幸福感に満ちた禅定です。

必死で一点に集中しなくても既に心は統一されていますので、この段階からは本当にリラックスできます。ここで初めて思考作用がなくなります。第一禅の「離れることで生じる」喜悦・幸福に対して、ここでは「三昧（samādhi）から生じる」喜悦・幸福に満ちると言われるように、厳密に言えば第二禅でやっと、心が禅定（サマーディ）状態に入っているのです。

ところで、思考作用がはたらいていないのにどうしてその禅定の中身が分かるのでしょうか、説明できるのでしょうか？禅定の最中は確かにただそれを体験しているだけで、何の説明も思考も心に起こってはいないのですが、その禅定から出て日常の欲界の心に戻った後で、その時の禅定状態の心を振り返って、思考と言葉で説明しているのです。体験が先にあり、それについての思考が後からついてくるのです。

第三禅は、喜悦感と幸福感の内、喜悦感から離れることから、平安（upekhako）であり、気づきと味わいがあり（sato ca sampajāno）、幸福感を身体で感じ、聖者たちが「平安で、気づきを具えて幸福でいる」と語る禅定です。

ここでは、心が統一されている禅定の喜びさえもなくなり、ただ平安の幸福感だけを感じています。ウキウキする気分が治まって、落ち着いた幸福感だけになるのです。しかも気づきと味わい（sati,sampajāna サティ・サンパジャーナ）はますます冴え、心は澄み渡っています。この状態を、禅定を嗜んでいた仏教外の人々も「平安で云々」と言っていたのです。

第四禅は幸福感を無くし、苦を無くし、また既に喜びと憂いが消えていることより、不苦不楽の、清らかな平安に（のみ）気づきがある（upekhāsatipārisuddhim）禅定です。

喜悦と幸福の内、残っていた落ち着いた感じ・幸福感さえなくなりますと、幸福でなくなるのではなく、それどころか「苦」がなくなります。この「苦」は私たちが欲界で通常味わう苦ではなく、色界禅定の最中にさえ感じる、対象と触れて生じる喜悦感や幸福感などの心の揺れ動きのことです。禅定が進むと、この最高の幸福感さえ煩わしいと感じられるのです。それがこの第四禅で消えるのです。禅定から生まれる喜びも、禅定に関して生じる様々な憂いも、色界最高の禅定に達して既に消えていますから、不苦不楽の平安だけを気づき味わうのです。

何かの対象に触れても心の揺らぎが起こらない、喜悦感も幸福感さえもなくした平安状態の禅定が、対象を取る色界四禅の最高の状態です。禅定をこのレベルまで達してから、釈尊は最高の阿羅漢果に達しました。同様に色界第四禅から悟りを開いたお弟子さんたちの話も、お経にたくさん残っています。

無色界等至は四つ

平等・平安の悟りの方向ではなく、禅定をさらに進もうとするなら、色界を超えて、何も対象を取らない無色界等至に進むしかありません。

五番目に、対象に対する意識（rūpasaññā）を完全に超え、（対象に）触れるという意識（patighasaññā）をなくし、あれこれ定まらずに意識することも止めて、「虚空は無辺である」という空無辺処に達します。

この五番目からが無色界の禅定・無色界等至（samāpatti）です。喜悦感も幸福感もなくなり、ただ平安だけを気づき味わう色界第四禅の段階から、心が何かに触れることさえなくして、ただ、虚空が限りないという心の状態に到達します。壁などで仕切った「空間」ではなく、遮る「もの」が本当に何もない「虚空」だけが限りない、何にも対象にぶつからない心の状態です。

六番目に、空無辺処を完全に超え、「識は無辺である」という識無辺処に達します。

「物質対象に何にも触れない、触れない」と外に心を向けていた空無辺処から、逆に心そのものに心を向けて、心自体が、何にも遮られることのない、限りないものだと、対象に触れず、ほとんど揺れ動きもしない心だけを、ただ味わいます。

七番目に、識無辺処を完全に超え、「何もない（空）」という無所有処に達します。心だけ、ということさえ意識しない「何もない」状態の禅定です。

八番目に、無所有処を完全に超え、非想非非想処に達します。

何も意識しない心さえなくしてみようと、意識はおろか、意識しようとする衝動「想（saññā）」さえ起こさせない、でもそれさえも完全に起こらないのは心自体が滅することでちょっと不可能で、実際には想が起こるのか起こらないのか分からないほど微かにして、もちろん意識などは全く起こらない状態にまで達します。

世俗的に言えば仮死状態のような、意識しようとする衝動さえ起こさないよう抑えられている禅定が、この、色界禅定を超えた無色界等至の最高の状態です。

このように始めは何かの対象を通して四段階、次に心だけで四段階、心を制御する禅定が、合計八種類あります。

苦も楽も感じないのが究極の楽？

八種類の禅定を駆け足で見てきましたが、何だか変な話ではないかとお思いになったでしょうか？禅定に入ってこーんな楽しいことやあーんな嬉しいことが味わえるのではないかと期待していたのに、第一禅定の最初っから、いきなり世間の楽しみを全部離れないといけないなんて、がっかりなさいませんでしたか？

しかもその後も、禅定の段階が一つずつ上がる度に、何かポイントとかご褒美とかが一つずつ貯まるのではなく、それどころか全く逆に、思考作用が消える、喜悦感が消える、幸福感が消えるなどと、一つずつ、感覚がどんどん消えていくのです。無感覚で無感動で、それで何か面白いのでしょうか？

これは実際にその段階に達した人だけに分かることですが、禅定に入ると、欲界世間の楽しみは確かに煩わしいものだと感じられるそうです。卑近な例で申し訳ありませんが、何の物音も聞こえない山奥の湖畔に佇むと、一流ホテルでのパーティの華やかさが煩わしく思い出されるようなものです。苦はもとより楽さえも、しっかり観察して味わうと、「苦に他ならない。捨てるべきものだ」と分かるそうです。

そんなわけで、禅定の段階が上がる度に、味わうものが一つずつ消されていくのです。究極の禅定は、想自体さえ、はたらいているかいないか分からないほどの、何ものにもほとんど触れない「楽」です。

色界四つと無色界四つの八種類の禅定は、釈尊より前から知られていました。釈尊は無色界等至の最後の二つ、七番目と八番目を、出家してすぐに習い、すぐに修得したのでした。それでも、その禅定から出ればまた元通りの心の状態に戻るのです。釈尊は、これら八つの禅定全てを、「現世で楽しむためだけのものだ、執着するな」と、教えておられます。

その一方で、禅定に入れるほど心を集中できるなら、心の力が強いなら、それだけ早く、簡単に、悟りの各段階に達することができるのも事実です。禅定を楽しむだけでは欲が増えるだけで悟りはかえって遠退きますけど、禅定に入れるほどの集中力で観（ヴィパッサナー）瞑想をして、全てのものごとの絶え間ない生滅変化・無常をありのままに捉えられたら、悟りはとってもスムーズに達せられるのです。禅定は、悟りの助けのためには大変有効な修行です。

滅尽定は悟りの体験

最後に九番目の禅定を説明しないといけません。これだけは、今の世界では釈尊より前には誰にも達せられていませんでした。想受滅とか滅尽定などと呼ばれていて、想がはたらいているかどうかも分からない非想非非想処からさらに進んで、想で全ての触れることの滅を感受して、それでお終いになるのです。後は滅だけで、想もない状態です。全ての感受を断ち切った、究極の「楽」です。

お経では簡単に、他の無色界等至と同様に「非想非非想処を完全に超え、想受滅に達します」とだけ説かれますが、実はこれができるのは、完全に悟って阿羅漢になった人だけです。最初の八つの禅定は感受を減らしていくもので、悟っていない人でも瞑想の達人なら達せられるものですが、この九番目の想受滅だけは、減らすだけでなく、滅するという、レベルの違うことをするのです。

まず悟りを開いて、その人が禅定も得意なら、色界四禅から無色界四等至を経て感受を減らして減らして、最後にレベルを乗り越えて、この九番目の滅の禅定に達することができるのです。感受を完全に滅する想受滅は、「全てのものごと・現象が無常であり、絶え間ない生滅の繰り返しに過ぎない」と自分の力で発見し悟りを開いた阿羅漢、「滅」を自ら捉えた人にしかできないのです。

九番目の想受滅は、瞑想とか禅定という言い方が当てはまるかどうかさえちょっと分からない、悟りの追体験なのです。何も感受しない、本当に滅の状態です。意識はもちろん、意識したいという衝動・想さえなくして、想によって何かが感受されることさえ滅した状態です。

悟った人は最長七日間、想受滅の状態のままで居続けられるそうです。想受滅の間は何の心のはたらきもありませんから、その最中にそろそろ出定しようかなどと考えることもできません。どのくらいの時間想受滅に入っているか、いつ想受滅から出定するか、想受滅に入る前に予め決めておきます。時間が来たら、レンジでチーンとするみたいに自動的に心がはたらき始めて、また欲界の日常の心にまで戻るのです。

想受滅では心の状態に連動して、身体のはたらきもその間ほとんど止まります。飲食や排泄はもちろん、呼吸さえほぼなく、細胞の活動自体がほぼ完全に休止します。身体に絶え間なく起こるはずの活動・変化がほとんど起こりませんので、硬いお地蔵さんのような状態になります。「時間よ止まれ！」などと言ってヒーローが活躍する時は、止まった人々や動物や落ちかけのお皿などが全部カチンカチンに固まって止まっているように描かれていますが、あんな感じです。実際には時間なんかはなく、絶え間なく連続する「変化」があるのですが、その変化がほとんど起こらない身体は、カチンカチンなのです。

樹下で想受滅に入っていたあるお坊様を見た町の人が、そのお坊様が亡くなったのだと思い込んで火葬にしようとして、動かない身体の周りに薪を積んで一昼夜燃やし、翌日骨を拾いに行ってみたら、ちょうど想受滅から出定したお坊様が身体に付いた薪の灰を払い落としているところに出くわして腰を抜かしたという出来事がお経に記録されています。

想受滅まで達せられると、悟りもＯＫ、禅定もＯＫで、言うことなしになります。