ヴィパッサナー瞑想　vipassanā-bhāvanā

はじめに

語源、意味、歴史

何を目指しているのか

メカニズム

瞑想法　　概要

所々の目標　　　10段階のステップ

４段階の覚り

問題点　　瞑想が進まない理由

コラム

宇宙はサンカーラで成立している？

ただ気づいているだけ覚る理由

はじめに

潜在意識に操られている日常生活

私たちは一日の大半を、自動反応している機械のように過ごしている、という見方がある。

つまり、今その瞬間に何をしているのか実はほとんど理解しておらず、暮らしている、というのだ。

心理学ではこの状態を潜在意識とも呼ぶので、私たちはこの潜在意識に支配されて生きている、ということである。

自覚があれば失敗を避けるだろうが、自覚がなければ失敗するときも自覚なく失敗している。

何となく調子がわるく、

何となく忘れ物して、

何となく人を傷つけている。

これが気づきがない状態である。

もし瞬間瞬間の現実に気づいていたなら、「いま・ここ」という現実に対して適切な理解が生まれる。

これらが覚りの瞑想であるヴィパッサナー瞑想の考え方である。

語源、意味、歴史

vipassanaはパーリ語で「２をみる」、つまり分別して気づく、という意味

Vipassati，[vi+passati] to see clearly； to have intuition，to obtain spiritual insight

vi 2（vīsatiは20）を意味し、二元性、分，離，別，異を含意する。　ラテン語のdīvido=divide

passati：[dis + a； dis is changed to pas．] sees； finds； understands　　見つける、理解する

２とは

はじめに自分のナーマ（心のはたらき、名〔みょう〕）とルーパ（物質、 色〔しき〕）を２つに分けて徹底的に観察し、その後にそれぞれをまた分別してそこにあるものを観察していく。

釈尊の悟りは「物事をあるがままに観察する」ヴィパッサナー瞑想によって、三相（aniccā,dukkhā,anattā）という仏教的真理を洞察して、涅槃寂静に達したとされている。

ヴィパッサナーはインドから東南アジアへの貿易に伴い6世紀頃誕生した、という説があるので文献や根拠を調べている。

現代のヴィパッサナー瞑想は、ミャンマー上座仏教の伝統的なヴィパッサナー瞑想法を踏襲した比丘であるレディ・サヤドー（1846年 - 1923年）からサヤ・テッ・ジ（1873年 - 1945年）に伝えられ、在家の瞑想法として確立されたものである。

在家者が実践するために、時間がかかるサマタ瞑想の修行を省略し、最初からヴィパッサナー瞑想のみを修行していく方法がサヤ・テッ・ジによって確立され、サヤジ・ウ・バ・キンを経てサティア・ナラヤン・ゴエンカに受け継がれた。

瞑想を通して心身と宇宙が共に振動であり、通じあうことがありありと実感できるという点が、人々の心性に訴えかけるところがあり大きな魅力になっている。

しかし、この心身と宇宙の振動が釈尊の体験した解脱の覚りなのか、「大いなるもの」と「わたし」の合一なのか、いまだ私は研究中である。

他にも日本テーラワーダ仏教協会（マハシ系）、グリーンヒル瞑想研究所(マハシ系）やミャンマーのパオ・セヤドーの教えを基にした「パオ・メソッド」やタイのWat Pa Tam Wuaなどでもヴィパッサナー瞑想法を実践している。

出典

ヴィパッサナー瞑想に関連することが記述されている経典は以下のとおりである。

長部（ディーガ・ニカーヤ）の『大念処経』（大念住経、長部第22）https://suttacentral.net/dn22/en/sujato

中部（マッジマ・ニカーヤ）の『念処経』（四念処経、中部第10経）https://suttacentral.net/mn10/en/sujato

『入出息念経』（安那般那念経、中部第118経） https://suttacentral.net/mn118/en/sujato

ヴィパッサナー瞑想は何を目指しているのか

やる気と努力と認識力と感知したものを吟味する能力を育くむ

真理をありのままに知るという智慧paññāを現出させて「ありのまま」の事実を見るため

心を純粋な意識にさせてあげるのはどうかと提案するサマーディ瞑想に対して、

心に事実を見せてあげるのはどうかと提案するのがヴィパッサナー瞑想である。

すべての現象は「本当は、無常である」という見方を育て上げて、4段階の覚りに至る

「わたし」が錯覚であるという体感からはじまり、

無常の体感によって苦しみからの離脱

死ぬ前の苦しみから離脱。そして、死の瞬間にはこの世に思いが残らないようにするため

心身と宇宙の振動の察知

輪廻転生からの解脱　

病気と死ぬ瞬間

瞑想を病気の治療に使ってもきりがない。

次から次へと死ぬまで病気はやってくるからである。

また結果という因果関係から離脱することが瞑想の目的なので、想いと実践が矛盾する。

死ぬ前の苦しい時にはできれば感覚、難しければ呼吸に気づいていることで、苦しみから離脱する。

ヴィパッサナー瞑想の目的は、解脱の心である8種類の出世間心lokuttara-cittaを作ることである。

出世間心とは「知る」というエネルギーが消える瞬間に生まれ、存在を感じなくなる心である。

意味がわかりづらいと思うので一言でいうと、「覚りの心」のことである。

経験をしなければわからないので、経験のない私には記述して説明のしようがない。

出世間心は色界禅定に入っている状態でヴィパッサナー瞑想を実践した場合、それぞれの色界禅のレベルに応じて出世間心が生まれる。
たとえば、
色界の第二禅の状態でヴィパッサナー瞑想を行って、初めて覚りに入ったとする。

このときの心は預流道の色界第二禅ということになる。
色界禅定は、初禅〜第五禅までの５段階があり、それぞれの段階に「道」と「果」の８つの心が対応するので、、８×５＝４０種類の出世間心が生まれる可能性がある。

無常の体感

ヴィパッサナー瞑想は息の出入りや皮膚の感覚など身体に起こる生滅変化を観察するのが基本。

そして、物質と心の無常を体感し覚っていく。

だから、物質が存在しない無色界（gatiやdhammā）ではヴィパッサナー瞑想ができない。

そのため、無色界心と出世間心が対応する事はない。

またヴィパッサナー瞑想で覚るときは非常に集中力も高まっているため、少なくとも色界の初禅に達するというのが通説である。
言い換えると、覚るときは必ず色界禅のいずれかの心で覚る。

色界禅以上の集中力がないと、ものごとの変化消滅を如実に観察できないからと言われている。

出世間心lokuttara-cittaが育まれると、

「無常しかない。生命は無常であり、一時的な現象に虚しく執着しているのは苦である。

このような世界から解放されたい」という智慧paññāが現れて、輪廻転生は究極的な恐怖として感じ、すべての現象に対して、「諦め」が生じる。

神秘体験や超能力を仏教からみる

自我意識がない瞬間に生まれる知覚で、「非自己意識的認識」がある。

自分で音を聞こうするのではなく、耳（鼓膜）に当たるだけにしてみる。

聞くのではなく放っておくと、普段とは違う音が勝手に聞こえることがある。

ただ音がするのを気づいていると、一般の聴覚とは異なる微細聴覚が現れる。

神秘体験は、ボケ−として、自分（自己意識）が抜けているのではなく、日常の５感覚よりも微細な変化に気づく瞬間である。

しかしこれは神秘ではなく、より微細な波動を体感するだけでのことであるが、それは通常の五感感覚では捉えることができないものである。たとえば、物質を通常の色と形ではなく、動く粒子の集合体として捉えることである。

ヴィパッサナー瞑想はこのような訓練をしているが、これは超能力を目指す狙いはない。

超能力は執着を強くする招かれざる客であり、解脱の邪魔をするものである。

瞑想が危ないのは幻覚を体験するからである。

生命体のとらえ方

生命をどのように捉えるかによって、行う瞑想も目指す内容も変わってくる。

瞑想	目的、ベクトル	美学	とらえ方	呼称	基準
慈悲喜捨	平和	調和、自我減少	生きとし生けるもの	衆生	世俗諦
禅定（サマタ）	欲界からの離脱	集中、分別統一	心と体	欲界・色界・無色界	真理諦
ヴィパッサナー	生を乗り越える	覚り、無常	五蘊	生命からの離脱	勝義諦

無量瞑想（慈悲喜捨）は他の生命との調和、

ヴィパッサナー瞑想は他の生命との関係をなくして輪廻転生からの離脱を目指すものなので、

この二つの瞑想の方向性は正反対である。

しかし方向性は反対だが、この二つの瞑想が補完し合って、心が成長する。

解脱した後もまだ体が残っているので、無量瞑想は必要になる。

「生命との関わりは慈悲喜捨であるべきだ。」と釈尊は説く。出典？

生きとし生けるもの慈悲の世界があり、慈悲を願い、その上でそこからの離脱がある。

慈は「衆生に楽を与えたいという心」の意味である。

悲は「人々の苦を抜きたいと願う心」の意味である。

しかし解脱した後には、慈喜捨は必要がなく、悲の心だけが必要である。

「もう私は大丈夫だけど、あなた方の苦しみを共に除きたい」と。

ヴィパッサナー瞑想の瞑想対象は「生きるとはなにか？」

ヴィパッサナー瞑想でサマーディをつくる目的は、真理をありのままに知りたいという智慧paññāを目指すためである。

生きるとは、呼吸、腹部の収縮と拡大、呼吸、歩いたり座ったり立ったり横になったりすること。

体、感覚、概念、衝動、認識という「色受想行識」があることが生きることである。

それらの体、感覚、心、心の内容から一つを選んで、それを対象として瞑想する。

パーリ語の参考資料

#20　adhipati　主　

Cattāro adhipatī chandādhipati viriyādhipati cittādhipati vīmaṃsādhipati.

意欲主、精進主、心主、觀主という４つが主である。

vīmaṃsā：[f．] experiment； investigation 観，観慧，思察，審察，思量，思惟

adhipati主：[m.] lord； master； ruler 　　　

まとめ役、役場で言えば村長、国で言えば総理、もしくは法律

chanda やる気

「何かしたい、行動したい、頑張りたい」という気持ち。　　

意欲と訳してもでもいいが、「欲lobha」ではない。

ヴィパッサナー瞑想が進み、やる気と努力の力が育まれると、

元気になって活発になり、行動が素速く生き生きとする。

その人がいるだけで雰囲気が明るく、きれいになり、その人の顔を見るだけで落ち着く。

実践者の波動が感知できるので、喋らなくてもみんなが良い気持ちになって落ち着く。

viriyā　　　　　　努力、精進、英雄の気持ち

cittādhipati 　　　認識能力が大きくはたらき、超能力のような力が身につく

vīmaṃsā　　　　観：experiment； investigation 観慧，思察，審察，思量，思惟

観察つまり、感知して吟味すること。

この力が強いと、言葉の限界や概念の問題、つまり哲学がすぐに解明できるようになる。

相手の良い点と欠点が的確に分かるようになる。

vīmaṃsāがsati念になる可能性もあるが、心所は智慧　　

この４つを育んだので釈尊は覚ることができた

「自分はこのadhipati主の４つをずいぶん育てた。誰よりも育てた。だから最初に道を開くことができた。」

出典？

初めて道を開くのは大変なエネルギーが必要である。

ヒトによって瞑想の結果に差があるのは、やる気、努力、認識する力、察知して思惟する力が違うから。

これは神通力に達するためになければならない力でもある。

メカニズム

妄想のメカニズム

心のメカニズム

滅するメカニズム

無常のメカニズム

覚りのメカニズム

共時性のメカニズム

「いま・ここ」にあるものにスポットライトを当て続けることで、外部からの刺激と意識からの信号を遮断して、瞑想対象の本当の姿をありのままに察知しようとするのが、ヴィパッサナー瞑想の狙いである。

そうすることで物質と心が常に生じては滅していくことを体感し、この世に対する執着が減少し、徐々に心が浄化され、この欲界からの離脱を望むようになる。

どのようなメカニズムになっているのか具体的にみてみたい。

妄想のメカニズム

ヴィパッサナー瞑想と妄想

ヴィパッサナー瞑想は真理を発見するために行う実験である。

あえてラベリング（自分が当てているスポットライトを言語化する）する意味は、世俗諦に洗脳されている状態から抜け出すためのテクニックである。

世俗諦とは日常生活の常識のことで、曖昧な概念を使う暮らしのことである。

なんにでもラベリングするのではなく、するのは自分の「存在」にラベリングする。

ラベリングの目的は、妄想を分離することである。

非存在を具体的な存在で表現することなので、本当に感覚するものだけに適切な言葉でラベリングすることで、なにが錯覚であるかを浮かび上がらせる方法である。

たとえば、「生きる」とは抽象的な存在で、具体的には、呼吸する、歩く、立つなどの行為である。

ラベリングをするには、まずは身体に感覚がないと行為が認識されないので始まらない。

そこで、歩いたり、座ったときの皮膚の感覚をラベリングしていく。

そこにある具体的な認識で、重心がかかとから親指に移っていく過程であったり、右足が着地したり、離れていく過程などである。

これが「あるもの」をネーミングする作業である。

たとえば、足に痛みがあれば、「痛み」とラベリングする。

しかし「痛い」という言葉は禁止する。その理由は、「痛い」という言葉は、これまでの人生で「私が痛みを感じる」という時に使用している割合が多いので、そこに「わたしが感じる」という非存在が入り込むからである。

ここで言う「痛い」は非存在な妄想であり、「痛み」は勝義諦として実際の「ある」感覚とする。

耳に入る音波をラベリングするのは難しいが、もしするのならば、絶対音感で表現するのならばいいが、カラスの鳴き声や車のエンジン音やうるさい音などではラベリングしてはいけない。

何故ならばこういうラベルは認識作用を複合させることで作られる思考や感情なので、これらは世俗諦であるからである。

ここでのラベリングは「音、音、怒り」とラベリングするのが訓練のメソッドである。

瞑想実践者はこうして世俗諦と勝義諦の区別を明確にすることは、、真理を発見するために欠かせない土台になる。

実践が進むと、「あるもの」と「ないもの」の差を体感し、見分けるようになる。

すると、「まとめあげる認識機能」がありとあらゆる妄想概念を作って、その概念に執着していることを発見する。

これがありのままに「見る」ことに繋がる。

そして洗脳が壊れ、無常を発見して、解脱に至る。

解説は危険

ヒトは瞑想を始めとして様々な経験をするが、勝義諦と世俗諦を区別する能力がない時にでも、自分の経験を真実として解説してみることがある。

たとえば、瞑想をして光を体験したら、それが何であるのかこれまでの自分の考えてきた概念か教えられた概念を使って解説しようとする。

大脳皮質は解説しないと落ち着かないクセがあるからである。

こうして自分の体験を空想の概念で説明することで、真理の発見から遠のいてしまう。

ヴィパッサナー瞑想の実践者は感覚と経験は同じものであることを理解し、ラベリングして確認するだけで止めておかなくてはならない。

それ以上の行為は、概念化や解釈や解説となり、存在しない妄想の世界に入ってしまうからである。

鋭い態度とは、６根に信号が入ったら、それに気づくことで止めることである。

そうしないと、次に意の中で関係のない情報を察知して、そこから想像を重ねると現実離れしてしまうことになる。

長部経典の第一の「梵網経Brahmajāla Sutta」では瞑想実践者たちの62種類の邪見が紹介されている。

https://suttacentral.net/dn1　　　　 https://suttacentral.net/dn1/en/bodhi

意門（意識）からは勝手に事実から離れている信号が入ってくるので、いろいろな思考をするが、頭で考えること（思考）を単なる心の回転とみなして、ヴィパッサナー瞑想をする時にはこれらを妄想とみなし、今、妄想が心のなかにある、ということを確認するようにし、弟子には指導する。

ヴィパッサナー瞑想の基本は気づき（sati念）

なぜ気づきが基本で大切なのか？

ヒトは多くの場合、本人は自覚していないが、感情と思考のパターンという潜在意識によって、判断と言動をしている。

そこで、自分がやっていることを一つ一つ実況中継（ラベリング）することで、潜在意識による判断と言動を意識（自覚）することができる。

これまでは認識していなかったことを識ることで、パターンに操られていることをはじめて知ることになる。

これが気づきの力であり、これを繰り返して、癖になるようになるまで訓練を積めば、気づき（sati）を常時保つことになり、これまでに知らずに学習して作成してしまったパターンの自動反応回路を弱めたり、取り外したりすることができる。

このパターン回路をこれからはアプリと呼ぶことにする。

入力の信号が入ったら、決まった結果を出力するアプリケーションのプログラムに似ているからである。

私たちは自分の潜在意識に新たなアプリを作成し、時には必要のないアプリに操られているので、その力を弱めたり、とりはずすことができるのがヴィパッサナー瞑想である。

そのためにはしなければならないのは、アプリの使用数やインパクトを徐々に減らすことである。

筋肉のように頻度よく使うものは発達し、使わないものは衰退するのが、この宇宙の法則の１つである。

ところが、私たちの日常生活では常に刺激を得ることで暮らしてきたので、刺激に依存してしまっているので、刺激の量が減ることに慣れていないので、このようなことは苦手である。

だから修行が必要となってくるわけである。

自分が苦しみから逃れたり、潜在意識や他人に操られるのを避けたり、心を軽く明るくしたり、心が安穏するためには必要なことなので、後は、本人がどうしたいか、という選択や必然性に依拠する。

では、もしアプリに反応する感度を弱めたいのならば、どうすればよいのだろうか？

まずは体の動きを止めることで感覚器官からの信号の量を減らし、

心のはたらきは瞑想対象と意識からの信号（過去の記憶、未来の空想）に限定されるように努め、

次に、心を努めて安穏とさせていることで、浮かび上がってくる過去と未来からのイメージ（想saññā）から作られたアプリ（行sankhāra）が反応する回数とインパクト力を徐々に弱めていく。

信号を受信する時に気持ちを安穏とさせていると、その信号には弱いタグ（引き寄せる渇望、押し返す嫌悪）もしくは中立のタグしかつかなくなるので、その信号では強いアプリを作ることができなくなる。

アプリは入力の強弱のタグに対応して強弱の出力をする自動反応回路なので、入力のタグが弱ければ弱い反応をする回路を作ること、すなわちアプリの弱体化になる。

アプリの強度は使用回数と心情のインパクトに比例して強化されるので、できるだけ弱体化させるためには、使用回数を減らし、回路の出力に反応しないで、心情を安穏としていることを目指す。

反応するとまた新たなアプリを作成するからである。

アプリの使用回数を減らすのが気づきと集中で、アプリを弱体化させるためのツールが安穏とした心である。

気づきは、アプリを使っていることを自覚させ、自覚せずに使用している現状から離れる機能を持つ。

集中とは「いま・ここ」にスポットライトあてることで、アプリの入力が途絶えるので使用ができなくなる。

「いま・ここ」のメカニズムは、心のはたらきの仕組みがわかると理解できる。

ナノの単位で瞬間を分析してみると、心cittaは一つしかなく、それが次々と生まれては消えることを繰り返すことで認識が起きるので、同時には２つのことには反応できないことがわかる。

実際に心は１瞬には１つのことしか認識できないが、１秒間に膨大な数の認識が起こるので、まるで同時に認識しているかのように錯覚してしまう。

認識システムと五蘊　そこからの離脱法

このように、対象にスポットライトを当て続けていると、１つしかない心は使用され続けることになるので、他の信号が入ることができなくなる。

しかし、坐禅による足の痛みなどの強い信号が入ってきた時には、瞑想対象に対する集中を遮断して、そこにいろいろな情報（思考、記憶、妄想、空想）を加えて、その痛みの信号に関して心のはたらきを使用するようになるので、痛みの信号を感知したら、すぐにそれに気づくだけにして、瞑想の対象にスポットライトを再び当て直すようにして、この作業を際限なく繰り返す。

この段階での修行の目的は６感覚信号に気付くだけにして、その感覚を新たな信号に結び付けないことである。

この時には日常的な認識（受・想・行　　感覚化、概念化、アプリ化）を使わないでいるが、別に脳が機能低下しているわけではない。

これは認識機能をデフォルトに戻す試みなので、これが成功すれば、一つ上の次元（欲界の天部）のより微細な変化に気付くことができるようなり、瞑想目的の１つが達成される。

潜在意識の自動反応アプリを使用しないため、概念が勝手に編集されて捏造されることもないので、前よりも微細な心の落ち着き（至福感）を感じることができる。

日常生活では自分が視覚を始めとした五感をコントロールしていると思っているが、これは錯覚で、実際には見たいとか見たくないとか自分の判断には関係なく、過去に目に触れた信号を経験することで作成したアプリによって、概念化（現象化）したものでしかない。

気づきsatiの威力

気付きとは何なのか？

気づくと何が起きるのか？

日常生活での認識とは「合成された認識」である。

色声香味触の信号と意の信号を混同させてしまい、カタチを作りたい潜在意識の機能によって、仮想の認識が作り上げられている。

たとえば、耳が認識するのは、音という周波数の波動だけなのだが、それを鳥の囀りが聞こえる、と根拠が曖昧なのにも関わらず、自覚なしに判断され、その解釈を自動的に認識してしまう。

この色声香味触の信号と意の信号が合成してしまうのを強引にカットするのがsatiの効力である。

自覚せずに入力信号と想saññāを結び付けて、そこから想念や空想や妄想が回転しだす前に、気づくことで、心の回転（心路citta vithiにおける第９ステップ）は止まる。認識システムと五蘊　そこからの離脱法

もしsatiが早期であれば、信号と想saññāの結び付きを阻止したり、心が安穏した状態であれば、3種のちの中立のタグがつく可能性が増え、後のソート検索機能に引っかからないので、アプリが作成されず、中立を保ったままの記憶（認識）になるかもしれない。

受vedanā、想saññā、行sankhāraの認識プロセスの途中で、他の意識（sati）を入れることでアプリは作成されなくなる。

これがsatiの威力である。

また前の心と新しい心は関連性があるのだが、横やり（sati）が入ることで、心のはたらきは一度に１つのことしかできないので、このアプリ作成のはたらきを阻止することができるのである。

信号とイメージ（想saññā）を合成することが減っていくと、信号が概念に捏造されることが減っていくので、ありのままの状態を認識するようになる機会が増える。

合成することが少なくなった認識をそのままで理解する。

この訓練の積み重ねがdhammavicaya、 ダンマの探求・調査のことである。

ここで修行者は混乱する可能性があるので注意が必要である。

これまでの認識の仕方と新しい認識の仕方は違いがあるからである。

合成という捏造が減るたびに、智慧paññāの心所は強く大きくなる。

すると、徐々に真理（ダンマ）がわかるようになってくる。

「さまざまな組み合わせによって私たちが認識する現象が成り立っている」、という真理も発見する。

つまり組み合わされたものとはすべて概念であり、それらは脳が効率よく認識するために作られるもので、脳にとって都合の良い「記号」であるが、これらは「架空のもの」であり、ありのままではない、ということが分かってくるのである。

こうなってくると、一箇所の視点による認識にこだわることがなくなるので、これまで普遍的だと思い込んでいた因果関係にもスポットライトを当てることができるようになる。

そこでaniccā,dukkhā,anattāに目覚めがはじまる。

「自分の願う状態を維持することはできず、この世には完全な状態はなく、自分の意識は無力である」

という事実のことである。

そして、幻覚である現象に「わたし」が囚われていることを改めて発見する。

すると同時に表面的な煩悩のいくつかは消えていく。

この煩悩を断つ働きが智慧paññāの役割である。

「美味しい」は錯覚？　　まとめ上げる力が幻想を生む

美味しいという感覚は、分別して味覚を感知するのではなく、「まとめ上げる」ことによって生まれる。

味は単独（甘味、旨味、苦味、鹽味、酸味）で味わう場合は問題は起きないが、たとえば、カカオの苦味と砂糖の甘味とミルクの旨味が混ざるものを美味しいと思うと、心が欲lobhaで汚れる。

つまりこのまとめ上げる力が推進力となって、概念というアプリが作成され、これを釈尊は錯覚という。出典

まとめ上げたことは概念として認識するので、概念にはソート探索機能のためのタグが付いているので、それによって欲lobhaもしくは怒りdosaのアプリを生み出すことになる。

このまとめる力が、言語化、名詞、形容詞、副詞、アプリという「パターン」をつくり、これらを基準にすると過剰一般化という誤謬をうみ、次には無明の難しい方向に歩いていってしまうのである。

苦行に心酔するわけ

勤勉が美しいとする厳しい歴史や環境がある。

余裕が生まれ、文化が育ち、その中で怠惰に暮らしていると、

そんな生き方から脱却することに魅力を感じる時がある。

食欲や睡眠や快適さは生命の本能なのに、それと闘う人の話を聞きありがたく感じ英雄に見えることもある。

大衆は勤勉になるような歴史や環境や洗脳があるので、苦行を批判できずに賞賛してファンになる。

賞賛するのは自分にできないことを苦行者がするためか？

生命が本来しないことをするから魅力を感じるのか？

苦行者はヒトの心の弱みに打ち克っていると思うからなのか？、

心の汚れを減らしていると思っているからなのか？

本能の１つに肉体からの離脱があるからなのか？

禁欲生活も長く続けると愛着が生まれ、自分の生き方のアイデンティティになってしまう。

しかし、儀式儀礼や苦行は心を清らかにするのではなく、

もし心が荒だっていれば、アプリが作成され、執着を生むだけで、

どれもが大衆の妄想でしかない。

無常と向き合うことで現実を見る

事実はシンプルである、

すべてが確実に死ぬことである。

問題は、現象は瞬間的なものでしかないのに、その現象があり続けさせようとすることである。

ありのままをみるしかない。

宇宙の法則の前では何をしても無駄である。

できることは落ち着いて察知（観察）することである。

すると無常とは偶然ではなく、因果法則の連続性という必然が無常であると分かるようになる。

察知してすべてが無常であると分かったら、ちゃんと諦める。

無常を受け入れて納得すると、生き続けたい、という気持ちをやめることで、心は落ち着きを取り戻す。

この心が預流の道心を育む。

サマーディ瞑想によって、死によって身体が消えることが分かるが、それだけでは色界欲や無色界欲という楽しさもでてくるのに対して、

ヴィパッサナー瞑想の特徴は、とことんと無常を再認識し、深く体感し、我の無力を再認識し、色界にも無色界にも永遠がないことを再認識することである。

無常には重層的な意味があり、それを体と心で深く実感するのがヴィパッサナー瞑想である。

つまり妄想が入り込む隙がなくなるのである。

2段階の妄想

まずは音の話から。

１秒という短い間にも膨大な種類の音々が生滅変化している。

その音々を全部まとめて、「音をきいた」と言っているが、これは妄想である。

生滅する膨大な音々をまとめることで、「音楽」「虫の声」などと認識するが、これがすでに幻想である。

まとめる作業とは、消えていく音を除外し、生まれてくる音だけを繋げて、次にそれを既存の概念と根拠もないのに結び付けて編集することである。

生滅する音々を概念として実体化させていることなのでこれを妄想とよぶ。

次にはその妄想に基づいて、「私が」音を聞いた、と思ってしまって、「我」を作り上げるという２つ目の妄想をする。

ヴィパッサナー瞑想をして確かめてみると、「そこには音楽も虫の声もない。ただ単なる音々という波動のエネルギーが瞬間瞬間に耳の鼓膜にあたっているだけである。静かな時に聞こえる沈黙の音が鳴り響いている。」

この感覚に慣れていないと、音を勝手に編集する「自我」という幻覚が、必然的に生まれてしまう。

ヴィパッサナー瞑想と解釈

ヴィパッサナー瞑想では解釈は禁物である。

解釈しないで、体験するものをそのまま体験し続けて、先に行く。

解釈とは学習した既知の固定観念と比べることなので、未知の新しい体験をこれまでの体験に分類しているようでは、それは誤解を積み重ねる行為である。

修行に励んでも、自分の古い固定概念だけを基準にしていたら、心の成長はとまり、心は変化しなくなる。

解脱とは「これが真理だ」と落ち着きたくなる気持ちを始め、一切の概念に対する執着を捨てて、真の自由を経験することである、らしい。

心のメカニズム

心の進化論と心の変化論

仏教以前のインド、そして現在の多くの宗教団体の概念には、「人間は輪廻転生して、徐々に魂が浄化していく。だからやがて高次元に輪廻転生して最終的にカミと一緒になる」というものがある。

釈尊は「心はただ変化するだけで、進化はしない」とする。　　出典

しかし、心の方向性をほんの僅か変えると、元に戻れない軌道に至り、それが預流sotāpattiの道心となる。

心の方向性をほんの僅か変えるための修行がヴィパッサナー瞑想である。

どの方向なのか？

「ありのまま」に察知する、ということである。

心の法則　　　滅エネルギーと生エネルギー　　　　止まらない　　　　　種類　　　意志では管理できない

生命体（心と体の流れ）が死ぬ理由は、体を維持するために補給されていたエネルギーが途切れたため。

すると体はカタチを維持できなくなり、壊れてしまう。

しかし、心は1つの心が死ぬことで、新しい心がまた生まれてくる。

心は瞬間ごとに死んでおり、体の死とは違い、物質的エネルギーで維持されるものではなく、死と再生が繰り返されるもの。

心に刺激というエネルギーを与えても、寿命は瞬間なので、すぐに死んでしまうので、心が同じ状態を保つことは1秒たりともない。

死ぬ心と生まれる心は別々なものである、というのが論蔵の主張である。

心は２つの違いを認識するのであって、もし２つが同じであったら、何を見ても聞いても、見えも聞こえもしないので認識することができず、生きていないことになる。

こうして、常に独自の心の回転が続き、止まることができないのも心の法則。

この心の種類は一般人には45種類しかなく、阿羅漢は89種類の可能性がある。

これは、心には同一なものはないので無数だが、45種類に分類できるということで、同じ花を美しいと思っても1回目と２回目では、心の強さや繰り返す回数などに違いがあり、それによって感情や思考も変わる。

たとえば、驚いたり、感動したり、飽きたり・・・。

心の一つ一つの違いなどは「心のそのようなはたらきだけはヒトには理解できない。考える必要もない。考えたら頭が狂ってしまう」と釈尊は説く。出典？

１つ１つの心はまったく別のものなので、心の並びを前後を自由に変えて糸でつなげることはできないが、１つの心が原因となり、次の心の結果となる、見えないが決して切れない因果の糸でで繋がっているのが、ありのままの状態である。

ヒトの意志では自分の心であってもコントロールできないので、「維持」と「気づき」という二つの瞑想法を仏教では勧めている。

サマタ瞑想は、統一することで、心の流れを良い方向のままに維持することができる。

ヴィパッサナー瞑想は、気づき続けることで、心の流れを転換させることで心を間接的に管理することができる。

たとえば死ぬ瞬間に何か不善心所がはたらく現象にひっかかってしまったとしても、気づきを入れる癖がついているのならば、それによって流れを転換することができる。

これが智慧paññāである。

これができないと、心に映ったものに引っ張られてしまい、下手をすれば妄想のスパイラル回転から逃れるのに時間がかかってしまう。

ポイントは心は瞬間瞬間に死んでいるということ

これが認識しづらいのは、心は物質の信号に依存して認識しているから。

物質（体）の変化は心の変化より遅いので、物質の信号を認識しようとすると心が瞬間ごとに死んでいることが分かりにくい。

わからない、ではないのか。分かる方法などあるのか？

ヴィパッサナー瞑想を重ねると、体のレベルの信号（dhātuで構成されている）よりも微細な心のレベルの信号（bhūtaで構成されている）の変化を察知することができるようになる。

常に振動、すなわち出滅を感じているバンバー状態のことを指すのか？

バンバー状態の後に胸のhadaya vattuを感じたり、ニミッタで見ることを指しているのか？

カルマの種が発現することで起こる妄想や、過去の記憶や未来の想像に対して関心がなくなり、沈黙の音に囲まれ、体を動かさず、呼吸が小さくなると、察知できるようになってくる。

人によっては、関心のスポットライトを動かす時に、眼を閉じていても、光の強弱を感じたり、体に「地」のチクチクを感じたり、体に湧き上がる「気」を感じたり、心が消え去る連続性を感じたりする。

なぜ死ぬと新しい心が生まれてくるのか？

１つのエネルギーが消えると、それに似たエネルギーが再現するため。

死が原因となって生という結果を生み出す。

認識が心のガソリン

５感覚器官の刺激以外からでも、ヒトが感じる理由は、心に刺激を与える微細な信号があるからである。

２種類の信号があり、１つは行sankhāraによって作られたエネルギーの有る「カルマの種」、もう１つが経験したすべての記録でありエネルギーを持たないnāma gottaである。

nāma：by name 　　gotta：clan； ancestry.血統

心は「認識」するために生まれ、その仕事を終えると死んでいく。

感動的な信号である「カルマの種」が入ってくると、臨場感が高まり、心を強く回転させてしまい、輪廻を結果的に延ばすことになる。

強烈な対象（信号）が入ったら、それに引っかかって心は回転する。

臨場感はない、簡潔な信号でも、心は止まることなく自己回転する。

死ぬときの心の引っかかりをとるヴィパッサナー瞑想。

強烈な信号が入ってくると、臨場感が高まり、そこに引っかかって、心を強く何度も回転させてしまう。

これが不善心所であった場合は結生心（死ぬ瞬間の心）の時に影響を受けるので、この回転を他の対象に変える必要がある。

それができるのがヴィパッサナー瞑想でしている「心に気づく」見方だけである。

自分の感覚で起きていることをしっかりと確認するクセをつけることで、強烈な対象が不善心所に導くパターンを変更して、その不善心所が入り込んだ心から離れることができる。

強烈なパターン（アプリ）は岩を削ったように深くなっているので、それらの引き寄せや押し離れるタグを中立にするまでには、長いヴィパッサナーの実践が必要とされる。

臨終の時の幻想は、五感覚器官からの信号の体験ではなく、意門からの直接の体験であるためより鮮明で、ここから心を引き離すようにコントロールすることはできないので、解脱しない限り、輪廻転生を避けることができない。

健康志向や活動的な人の根本が暗い理由

彼らは「不安」を取り除きたい人たちであるから。

すべての生命は死と背中合わせで不安と恐怖で覆われているので誰もこれを取り除くことはできず、どうすることもできない。

問題は、どのような不安や恐怖であるかわからないことである。

答えは生きているから不安なのであるから、不安を取り除くためには死ぬしかない。

あらゆる生命は、死から離れるために、必死で頑張って生きる。

だから落ち着かず、そわそわして、表面的には健康的で活動的であっても、根本から徹底的に暗い。

これがポジティブな生命体の本性。

感覚、物質、心が変化するメカニズムは？

なぜ上げる足は軽く、下げる足は重く感じるのか？

歩行瞑想、すなわち歩く動作にsatiを入れて感覚を察知してみる。

それは足を上げたい、足を下ろしたい、という意思エネルギーによって、物質の感じ方が変化するからである。

どのように？

無常のメカニズム

無常を知らないから苦しむ

生命のすべてが「生きていたい」と願うのは、常に死と背中合わせで暮らしているからである。

しかし、どう頑張っても結局は死ぬのであるから、智慧のある者は、生きることに頑張らない。

願っても結果を得ることができず、無駄であることをする必要はないので、願うことを止める。

願いは切りがない無駄な努力であるから。

無常から逃げると永遠を妄想する

この世は無常である。

無常だから生まれたものは必ず死ぬ。

自分が死ぬことを考えて渇愛が生まれる。

渇愛があるから生きていたいという欲望が余計に生まれる。

無常（死）が嫌なのだ。

代わりに「常にいつでもある」ものに執着する。

そして「永遠」を作り上げて妄想する。

心の流れは続いているので、認識の主体である自分が常に表に現れるようになると、まるで自分がずっといるのではないかという誤解をしてしまう。

この誤解に永遠に生きていたいという願望（希望、渇愛、欲望）が重なると、永遠の魂という妄想が生まれる。

天国、命、不死、魂を永遠として、自分自身で自己暗示にかけて縛り付けて一時的な安らぎを求めてしまう。

永遠の魂が本当にあるのならばリラックスすればいいのだが、誰一人も永遠の魂があるかどうか信用していないので、今日も発言と行動は一致しない。

どうせ妄想するならばダンマがいい

khaṇaṃ vo mā upacchagā　　出典？

「今だけが類い稀なチャンス、この出会いを逃すなかれ」

と生きていければいい。

それができるまでは、

どうせ妄想するならばダンマを妄想するのがいい。

「なぜ無常か？何が因果律か？この教えの意味は？」

ダンマを妄想すれば智慧が育まれる。

アニッチャが明らかになる智慧

アニッチャ・ヴィージャ・ニーニャ　Anicca viija niña 　

アニッチャを知ることでニッバーナのニッチャnicca永遠を知ることができる。

あるがままを見るためには表面が溶けて、奥へ行くこと。これがヴィパッサナーvipassana。

形を構成する要素は微細なエネルギーによって成り立っている。

どれもが同じエネルギーの組み合わせでしかない。

想saññāは行sankhāraに囚われているので、サンカーラを消去してサンニャをパンニャに変えるのが修行。

パンニャとはウダヤバヤuppadavaya-dhammino「生と滅を見ること」　　

これが解放になる。

サンカーラという眼鏡の色で表面に見えるものが決まるが、その眼鏡がバラバラになるまではサンニャに囚われている。

サンニャをもっと抽象度の高いものに変えるのが智慧の力

狂ったサンニャをアニッチャ・サンニャ（微細エネルギーに解体するパターン）、すなわちパンニャにする

地は重く、鈍く、棘のように突き刺さる性質がある。

水はまとまり（結合）で、火は冷たさも含めて温度であり、風は動きで、空は領域である。

思想や感情は体に感覚を伴う。

この感覚をアニッチャと共に気づいていられると、サンニャがパンニャに変化する。

たとえば感情という塊はバラバラになって最終的には波になる。

Pakampitaすなわち波動になるのだ。

サンニャがある限り表層が大事になり、パンニャに変わることでその奥にある「あるがまま」の状態を知ることができ究極の真実がわかる。

６門によって学習したサンニャを基準にした判断を信じなくなることで、表向きの世界ではこう見えるのだな、こう感じるのだな、と理解することで、心が幻（粒子の粗い表層の世界）に反応しなくなるので、ニュートラルな状態でいられて、その結果、渇望と嫌悪が生まれなくなる

修行のないディッティdiṭṭhiはミッチャー・ディッティmicchā diṭṭhi、すなわち哲学でしかない。

実際に感覚を感じていればサンニャがパンニャになる。

覚りのメカニズム

覚りのプロセスとその瞬間

覚りとは、徹底的に自分の身体と心の現象に気づき続けて、無常を体感して納得して腑に落ちること。

「生きていきたい」という心の渇愛を観つづけていると、これらの体や心の現象は現れては消えてしまうものなで、掴むことができるものではない、ことがわかる。

また、いくら探してもこの世には永遠はない。

これらのことが分かると、得ることができないこと（生きようとすること、永遠の生、永遠のモノ）を求めても、そのような結果はないのだから、そのような行為に意味がないことを感じるようになる。

このような実感が芽生えてくるので、覚る前には徹底的に落ち込む体験をする人が多い。

この極度の落ち込みが修行となり、性格が力強くなり、智慧と生き方の基本が練られて、本当のものが見えるようになってくる。

恐ろしいものを見ても大丈夫と言えるだけの精神的な準備が覚りには必要である。

このような訓練を積み重ねると、集中力も抜群になってくる。

するとヴィパッサナー瞑想も大きく進み、すべては変化するものであることが分かり、無常が見えて、生滅変化が見えて、滅することが見えて、いろいろなことの結果も見えてきて、何もやることがなくなり、嫌な気持ちや、不安や恐怖感がでてきて一層落ち込むことになる。

ところがこの落ち込みが嘘のように消える瞬間がある。

生きていても意味がないので、生きていたくもないし、生き続けることを諦める心が生じる瞬間がある。

これが覚りでこの世の無常を深く納得した瞬間になる。

これからは生きていきたいという渇愛は消えてしまい、聖者の流れに入ったことになる。

もう堕落のない心が進化する方向（聖なる道）にしか進めなくなる。

ヴィパッサナー瞑想の書き換え　　実体のある妄想から無常のあるがまま

集中すると、瞑想対象にスポットライトが当たるので、思考ができなくなる。

思考は止まり、あらゆる現象をそのまま確認する作業を積み重ねる。

見ているモノはずっとそこにあるのではない、という事実に気づくのが目的の第一段階。

現象は生まれては消えるもの、だとただ気づく。

修行が進むと、消えるもの、滅することの側面だけにスポットライトを当てるようにする。

これは17心刹那のセットを少しずらすことである。

どのようにして？

眼からの情報を認識する心の17ステップの過程

	パーリ語	略語	内容
1	Atīta Bhavanga	過	以前の有分心Bhavanga　　　　「生命相続流」（life　continuum） 現在の対象を認知しない状態　　 完全に寝ている状態　　　　潜在意識ではない
2	Bhavanga Calana	動	振動する Bhavanga 有分心が動揺して弱くなり始めた状態　「有分動揺」という
3	Bhavanga Upaccheda	捨	捕獲された Bhavanga 有分心が弱くなり消える状態。 有分心が捨てられ、捨断される。「有分捨断」
4	Pancadvaravajjana	五	５感覚の扉からの電磁波に注意を向ける意識　 「目が覚めた」という状態で「五門引転心」という vipāka viññāna の生起
5	Cakku Vinnana	眼	心が眼の扉の電磁波（pasāda rūpa）を知覚する「眼識」
6	Sampaticchana	領	心が眼識のデータのコピーを受ける領受心
7	Santīrana	推	調査する意識　　　推度心　　　これはどんな振動かと推度する 眼識のイメージを探求し精査する
8	Vottapana	確	決定する意識　　「直前の推度した心」を確定する 「見たもの」を確定するのではなく、推度した心を確定する。
9	Javana	速	kamma viññānの生起　　　認識がはじまる 同じ振動が七回起きる速行心
10	Javana		自分勝手に推度したものについて、すぐ感情が反応する ここで善行為か悪行為かに分かれる
11	Javana
12	Javana		最大のエネルギー転照
13	Javana
14	Javana
15	Javana		kamma viññānの消滅
16	Tadarammana	彼	意識の登録　　　彼所縁心　　　「味わい」のようなもの
17	Tadarammana		意識の登録　　異熟心なのでvipāka viññānaなのか？ どこに登録するのか？識蘊なのか？

cf.

記憶や予測や想いなどのdhammāはマインドの物理的感覚器官である脳mana indriyaが5感覚器官を介さずに直接に感知するので、

意門心路と呼ばれ、

明瞭の場合は　　動捨意速速速速速速速彼彼の12ステップ

不明瞭の場合は　動捨意速速速速速速速　　の10ステップが心路citta vithiとなる。

心刹那の回転である認識プロセスを変えることで、

モノの滅（無常）を見ることができる。

これをbhaṅga-anupassanā ñāṇa 壊随観智という。　　　

この智慧が出てくると、生命には覚るより他の選択がないことを理解し、了解realisationする。

修行が進むと、有分心になる癖が弱くなり、心が強くなり、明確に認識できるようになり、

五門を通す信号は第2の心刹那ではなく、5,6,7の間の住の刹那の間で認識プロセスが起こったら、速行心7が起こる間で認識対象であった物質が消えている。

この場合に、「滅」に気づく可能性がある。

物質の滅の側面を領受心、推度心、確定心が受け取ると、滅にたして速行心が起こる。

普通の人には無智、無関心の速行心が生まれるところが、修行者は、智慧の速行心になる。

滅するという対象物がないものを認識することになるので、有分心が少なくなる？

五門と意門からの信号は途絶えるので、そこで第一段階の涅槃を感じるのか？そんなことはない、

覚るのは瞬間、結果は継続

果心は煩悩が取り除かれた後の状態を体験するはたらきなので、一瞬のことではない。
例えばヤブガラシという雑草を引き抜くのは一瞬だが、引き抜いた後の状態はずっと続くように。
同じように、果心も瞑想を行うことで長く体験する事ができる。

覚った人はずっと覚った状態なのかどうか？
実は、出世間心が生まれるのは覚りの瞑想（ヴィパッサナー瞑想）をしているときだけである。
覚った人も通常は大善心で生きている。（最終の第四段階に至った阿羅漢だけは唯作心）
なぜならば、覚った人もヒトとしての体がある以上、食事したり、寝たり、人に説法したりするからである。

つまり日常生活では五感を頼りにしないといけないので、そのときは大善心がはたらいて生きている。

釈尊は亡くなる前に

「（他の宗教の人々でも）この方法で心を清らかにすれば覚れます」

「付け加えると、今は、八聖道の教えは仏教にしかないので、sotāpatti,sakadāgmi、anāgāmi, arahattaも、世の中で仏教にしかない。」と言った。出典？

覚る瞑想がヴィパッサナー瞑想。
出世間心をつくるためには特別なトレーニング（瞑想）が必要になる。

観察瞑想、または気づきの瞑想とも呼ばれ、一瞬一瞬の身体や心の状態を観察するトレーニングである。

体が自分とは関係ないまるで一つの物体だとしたときに、そこに起こる変化をつぶさに観察することができるようになっていく。

方法は主に４つで、座る、立つ、歩く、臥す、がある。

覚ると「知る」人になる

覚りは一般常識の範囲とは関係がない次元のことなので、五感感覚や大脳で理解することはできない。

心の次元を超えたことなので、体験する以外に察知する方法がない。

言葉で分別してもそれは覚りではなく、無常aniccaという流れを体験しなければ覚ることはできない。

無常の体験とはすべての物質や心は生滅変化するエネルギの流れを実感すること。

覚ると考えるのではなく、「知る」人になる。

考えるとは、「私」が必要である。この「私」がいることが前提となり、思考が可能になる。

しかしこの前提が間違っているのならば、人間の思考そのものが根拠のないものになってしまう。

覚ると「わたし」という錯覚が基準ではなくなる

釈尊は「私がいる」という前提に挑戦して、なぜ自我意識が生まれるのか、そのメカニズムを観察してみた。

出典？

そこで発見した事実を、実際に体感できるようにしたノウハウが仏教である。

結論は、「私がいる」とは、巧妙な錯覚である、という事実である。

どのようにして「私がいる」という前提が錯覚であるかどうかと挑戦したのか？

「私がいる」という実感は「私」にあるのだから、「私」を観察すればいい。

実際にあるのであれば、それを発見できるはずである。

この「私」を観察する実践方法がヴィパッサナー瞑想と呼ばれる自己観察方法である。

心のシステムを理解する方法で、これが無常を体験するメソッドになる。

どのようにして？

しかし、「私がいる」と感じる自己意識が生まれるのも事実である。

では、自己意識が生まれるにはいかなるプロセスなのか？

自己観察をすると、眼耳鼻舌身に物質である色声香味触が触れる。

現代用語でいう光子photn、空気（聴覚の媒体は？）、匂いのある分子化合物、味蕾に収まる物質、圧力

１触れる時に感覚の受vedanāが生まれる。

２この受とはソート検索する時に便利な「快・不快・中立」のタグの取り付けを自動的に受けるという意味である。

３この感覚という一時的な機能が生まれた時に、いきなり「私」が現れるので、「私が感覚した」とヒトは想う。

このように「私」という概念は、タグを受け取った瞬間に生まれる。

次の瞬間が認識で、主体が客体を知ることである。

すなわち「わたし」が認識される対象（現象）を知ることなので、主体と客体のセットがないと認識は生じないことになる。

また、「私」という概念がないと、ヒトは思考することができない。

つまり思考とは主体があってはじめて成り立つので、すべての知識は「私」という実体がある、状態を必要としている。

「ありのまま」の事実とは違う、「実体の私がある」ことで思考、知識は成立している。

私という前提に基づかないと思考もシンボル（言語、数値）も知識も成りたたないのである。

次に受vedanāについて考察すると、

感じることは瞬間たりとも止まることなく続き、絶えず変化し、無常である。

無常による受vedanāによって生まれる自己意識、すなわち「私」は常に変化し無常であるので、固定された「不変の実体がある私」などは存在しない。

これを経典はanattāと記述しているが、これが宇宙と自己との波動が共鳴する無我と勘違いされて解釈されてきた。

たとえば、音だけを体験してみる。

音があるかどうかをみてみよう、とジーと集中してみる。

すると「それは流れている。同じものではない」ことが分かる。

同じCDを繰返しても音が同じではないのだ。

何故か？

音が同じではないと感じるのは、こちら側の問題かもしれないので、次に音を感受することに受vedanaに集中してみると、自分の受vedana自体が変化し続けていることが分かる。

たとえば無声音の周波や背景の音がずっと流れている。

受vedanaも生滅変化していく流れなのである。

この揺らいでいる音の感覚が働いている時には「私」があるのだが、この「私」は確固たる不動の固定された確かなものではない。

主観的な流れは次々と消えて新しく生まれる。

すなわち、流れは繋がっているので継続されているのだが、一回ごとに断絶されていて、連続されてはいないのである。

一度消え去ったものは再現reappearanceしないのである。　

「私」は確固たる個体や主体といったものではなく、すぐに滅してしまう一瞬の流れでしかない。

カタチも核も基盤も一定性もパターンも確定された回路もない。

それを我すなわち「私」とヒトの大脳が勝手に呼んでいる幻にすぎない。

anattāとは無常aniccāのこと

無常を体験すると「自我があってもなくても無力である」ことが初めて分かる。

自我がないというのは、否定的な意味や虚無のことではなく、

「自我がなにをしても、すべてのものは一瞬も留まることなく、絶え間なく流れていく」という事実。

だから無我とは正確に言うと、「ある」でも「ない」ともどちらでもない。

自我がないのではなく、「固定された常に不変の自我」はなく、有力な自我などはない、ということ。

魂がないのではなく、「固定された常に不変の魂」はなく、有力な魂などはない、ということ。　

「因果法則によって流れていく」常に変化しているエネルギーがあるだけである。　

これが分かって、これに従って暮らすのが覚りの生活である。

覚ってもまだある悩みが次へのステップへの動機になる

無常が分かり、苦しみや自分の無力に驚きながら受け入れて預流果に至っても、眼耳鼻舌身を楽しませようとし、それを探し求めることをやめるわけではない。

しかしこの探し求めることで苦しみが生まれる。

心地よい刺激があると楽しいと感じるのであれば、心地悪い刺激があれば気持ち悪いと感じるのである。

欲を追うのが楽しいと思っている限り、同様に怒りも消えることはない。

預流果に至っても貪りと怒りは残り、悩みは残る。

貪りとは気持ちいいものは体験したい気持ち。

怒りとは気持ち悪いものを排除したい気持ち。

そうすると貪りと怒りの煩悩が生まれる。

無常を理解しているので、欲による苦悩を味あう愚かさに気づくことができるので、ここでさらに落ち着く必要性を感じるようになり、その落ち着きが次のステップに挑戦する衝動になる。

こうして「これは追いかけなくてもよいのではないか？」と新たな自問がはじまる。

サマーディ瞑想なしで覚れるのか？

ヴィパッサナー瞑想だけ実践していても、預流果を覚る時には、サマーディ瞑想をまったくしていなくても、心は必ず第一禅定のレベルに成長する、と言う。

尋伺があったままでも、ヴィパッサナー瞑想で解脱されるとされている。

ヴィパッサナー瞑想をしている時にいかなる感覚もなくなるメカニズムをどのように言語化できるか？

五門引転心がはたらいているかぎり、どこか一箇所の感覚器官もしくは意識が作動してしまうので。

無色界禅定ではヴィパッサナー瞑想はできない

無色界禅定では瞑想の観察対象が重力を持つエネルギーではないため、色界の第四禅定を作ってからヴィパッサナー瞑想に入る。

ヴィパッサナー瞑想には、生滅変化する現象の波を内観して、観察して、無常をドーンと体験しないと、ヴィパッサナー瞑想にならず覚ることができない。

ヴィパッサナー瞑想は感覚すなわち物質と心の接触することが条件なので、物質がない世界ではヴィパッサナー瞑想はできない。

ヴィパッサナー瞑想は体感覚器官が信号（物質）と接触した瞬間に生じる感覚に気づき続け、aniccaの概念に浸っていることで、感覚に±すなわち渇望と嫌悪のタグがつかなくなることでや、サンカーラが解体し、狂ったサンニャはアニッチャ・サンニャによって、パンニャへと変化し、この灯火がavijjaを照らし、世界はvijjaに変わる。

共時性のメカニズム

paṭiccaの意味　　　共時性

avijjā paccayā saṅkhārā, のpaccayāの代わりにpaṭiccaを使っている経典がある。出典？

「無明によって行となる」の翻訳だと、連続性が強調され、共時性（無明がなければ「行」はない、という厳密な関係性）が希薄になる。

paccayāは原因を表す（連続性）だけではなく関係（共時性）を表している。

「よって」と訳せば連続性、「関係」と訳せば共時性にスポットライトが当たる。

連続性を強調するだけならば、uppajjati,hotiの「生まれる」という単語でも十分である。

uppajjati　　生滅サイクルのはじめの「生じる」のパート

hoti　　　　　枠内にエネルギーが充満して、エネルギー転換が起こる

サマーディ瞑想とヴィパッサナー瞑想をする者は共時性に注意する

「いま、ここ」の現象を感知、観察するので、連続性よりも共時性の因縁関係が大事になる。

「無明によって行となる」とは、「行があるときにも無明がある、そして、最後の生、老、死があるときも、他の項目の全てがある」ということである。

たとえば、時刻を示す機器である時計は、どの部品にも役割があり、1つでも部品を取ってしまえば、もう時計ではなくなる。部品はそれぞれの機能をしているだけだが、それが最終的には時計という幻覚をうむ。

同様に、12支縁起は、現象の機能が揃っていることで、人という幻覚が成り立つ。

歩行ヴィパッサナー瞑想では、足を上げて、運んで、下ろす、という動きを観察する。

どれほど集中してどれほど微細に観察しても、各行為の間には、時間的な隙間がない。

また２つの行為（上げる、下ろす）は同時に起こることはないことが簡単に発見できる。

次に自分の思考をヴィパッサナー瞑想で観察してみる。

自分の思考は妄想である、また妄想が出てきた、また・・・と気づきを続けていると、考えというのは同時に２つ、3つが出てくるのではなく、１つを考えてから隙間なく次の思考に移ることが確認できる。

「私がいる」という錯覚は、身体が無間に生まれては消えていく流れを体験できないことから「変わらない私がいる」という錯覚が生じる。

心が止まったという経験は誰にもない。

心の変化はあまりに早いので、この発見が難しいが、無間縁の法則を理解すれば、心は永遠不滅ではなく、無限に変化していくものだと発見する。

そうなれば、個には永遠不滅の魂があるとする常住論は、消えていく。

そこで因果法則を無視して「私がいると思い込む」ことをayoniso（否定+如実）-manasikāra（意思を実践する）「不如理作意」という。

根縁indriyapaccayo (The Faculty-causal-relation)

20の根は場合によって、認識に支配的な影響を与える。

眼耳鼻舌身意の6根と命根、楽根、苦根、喜根、憂根、捨根、信根、精進根、念根、定根、慧根、「知らないことを知ろう」という根、「知る」根、「知り終えた」根の20が根縁になる。Mohavicchedanī,p329 注釈書

根縁が「支配としてはたらく」ことで認識に影響を与える。

ヴィパッサナー瞑想では、あえて念satiの心所を育て、あらゆる認識に気づきの影響を与える。

こうして、心が変わっていき、念という心所が強くなり、心の支配者としても兼務するようになる。

参考資料

妄想の原因を捜索する方法

妄想は、五浄色の眼耳鼻舌身と境色の色声香味と触（地、火、風）と性色の男女と命色から生まれる

すなわち根色と境色のこと。

他の物質はぶつかっても反応しないので、それらについて考えたり捉えたりすることはできないので妄想を生むこともない。

ヒトは根色と境色だけに基づいて、すべての妄想の世界は作り上げられている。

「神はいるのか」

「どこから生まれたか」

「どこへ行くのか」

魂論

我論

などの哲学のこと。

なぜヒトは妄想だとは分からないのか？

ヒトが求めているのは便利で効率の良い思考パターンである。

そこで、多くのケースは社会的評価のある偉大な人の言葉を鵜呑みにして、それを信じてしまうから。

しかし、他人が言ったことを、そのまま真実だと思い込む方がおかしい。

個々は違うパターンで生きているので、その人の性向に適した、TPOに適した、思考パターンが必要である。

また、偉大な人が偉大になる前にしていた思考パターンが重要なのであって、完成された思考パターンを過剰に評価しても盲信を生むだけであり、本人の心の成長のTPOに適したものにはならないことが多い。

なぜ信じてしまうのか？

妄想を語る人の思考パターンと妄想を聞く人の思考パターンが似ているから。

同調は楽であるから。

浄と境と称される12種は麁色、近色、有対色であることが分かると妄想の原因が判明する。

oḷārika-rūpādi, sukhuma-rūpādi 　麁色など　細色など　

Pasāda-visaya-saṅkhātaṃ dvādasavidham pi oḷārika-rūpāṃ santike- rūpaṃ, sappaṭigha-rūpañ ca.

Itaraṃ sukhuma-rūpaṃ dūre- rūpaṃ appaṭigha-rūpañ ca.

浄と境と称される12種は麁色、近色、有対色、他の（16種類）は細色、遠色、無対色と呼ばれる

麁とは粗いという意味で、はっきりと認識できる色。

具体的には、浄色５＋境色７の計１２のこと。

眼耳鼻舌身

色声香味と触の地、火、風

有対とは反応すること、すなわち対立しているということ。

薬が効くのは対立しているということ。薬が効かないのは対立していないということ。

認識する機能の物質（根色）が分かると、

他人と自分というわけ方もあるが、この身体もあの身体も、物質の部分と認識する働きの部分でできているので、この視点に立って分別する時には、認識するものと認識しないもの（認識されるもの）があるだけで、自他の差がなくなる。

「魂の永続性」の実感が生まれるのならば、認識の働きをさせている物質やその場所を観察すればいい。

indriya-rūpa, aindriya-rūpa 　　根色と非根色　　indriyaは「働く場所」、仕事場、faculty, institution

Pasāda-bhāva-jīvita-saṅkhātaṃ aṭṭhavidham pi indriya-rūpaṃ nāma.Itaraṃ aindriya-rūpaṃ.

（6つの）浄と（2つの）性と称される8種は根色、他（の20種）は非根色と呼ばれる

根色indriya-rūpaとは「認識する」現場のこと。

生命の働きは認識することだけ。足が痛い、悔しい、妄想、これらは全て認識である。

bhāva- rūpa性色とは、生命の性別を作る働きをする身体のエネルギーのことで、これを「場」として認識することによって男女の働きの方向が変わる。

例えば、クマノミの性転換。

まずは性色のエネルギーが働くことで、身体が変化する。

jīvita-rūpa命色とは、この生命体が壊れそうになっても修復して平衡性を保つエネルギーのこと。

例えば、植物はこのエネルギーが強いので、伐られてもしばらく生存できるが、動物はすぐに死ぬ。

これを「場」として認識することで、認識する主体の要素であることが分かる。

ヴィパッサナー瞑想では認識が妄想であっても問題はない。

大事なのはそれが妄想であることに気付いていることだからである。

妄想も高度な禅定も、どちらもただの認識である。

ちゃんとsatiを入れているかどうかがポイントである。

妄想であっても、その力を認識している間は、現象（身体や物質）は変化する。

根色を認識しないと男らしさ、女らしさが芽生える

逆に、これをただの物質エネルギーだと認識すると、男である、女である、という概念が消える。

平衡性（欠けた部分を補強し、余分な部分を排除）を保とうする。

感動とは、感覚器官から入った信号を使って自分特有の認識をして妄想を生み出すアプリが作られていることである。

瞑想法　概要

準備

妄想の嵐への対処法

妄想の嵐とは最近のサンカーラsankhāra、もしくは深いところにあるサンカーラに触れたことが原因で生じる。

恐れずに立ち向かう。

はじめは難しいが何回も続けているとだんだんと収まってくる。

炭火に水をかけるようにはじめは音がして水蒸気を出すがだんだんと妄想の嵐の力が弱まってくる。

心の反発

野生の牛の鼻に縄をかけると暴れるが続けていると、だんだんと馴らされていく。

同じように野生の心は反発して暴れまわるが、体の表面にスポットライトを当てることを繰返していくと、だんだんと落ち着いてくる。

感覚と呼吸

自分の心が落ち着くにつれて感覚も粗雑なもの（オラーリカoḷārika）から微細なもの（スクマsukhuma）に、そしてさらに微細なもの（アティ・スクマati-sukhuma ati-超）そして、最も微細なもの（パッサディpassaddhi　　無色界の寂静）に呼吸もだんだんと微かなものへと変化していく。

ここで微かな呼吸とするどい感覚が結びついて、お互いを助けあい、より深い気づきができるマインドになっていく。

我を忘れる瞬間

短い単純なメロディーの繰返しなどに集中すると、我を忘れる瞬間があり、その瞬間にする認識自体を神秘体験だと捉えたり、神と一体になった、と捉えるが、このような瞬間はだいたいの人にある普通の体験である。

ある概念（妄想）をズーッと強引に念じていても禅定状態が生まれるからだ。

瞑想がその体験の一つであるが、多くの宗教で何故このようなことをするのかというと、

「目には見えなくても神々は至る所にいる。自分はずーっと何かの神に見られている」と感じるため、という説もある。

こうなると、自分の身・口・意の行為をコントロールすることができる。

すると心の中にさえ、微かにでも、不善の心が生まれなくなる。

不善心は自動反応回路（アプリ）を潜在意識のうちに作るので、それが原因で自動反応してしまい、ありのままの状態が見れなくなり、覚ることができないからである。

この不善の心が生まないことがヴィパッサナー瞑想で覚るための必要条件となるので、瞑想をする前に、不善心が生まれない状況にするために禅定状態を作る。

ヴィパッサナー瞑想をする前のサマタ瞑想40業処の目的

40業処の瞑想を実践するのは煩悩の機能が極力低下するため。

40業処の瞑想は禅定を作れる瞑想と禅定を作れない瞑想がある。

禅定を作れる瞑想は多くの宗教である。

禅定を作れない瞑想は仏教だけが紹介するサマタ瞑想である。

禅定を作れない瞑想を紹介するのは、智慧paññāが現れるためである。

智慧paññāとはありのままに物事を観察できる、如実知見が起こるからである。

禅定が作れなくても、仏教の勧めるサマタ瞑想をすることで、煩悩の機能が低下して、如実知見が現れる。

サマタ瞑想はヴィパッサナー瞑想をスムーズに完成させるための準備である。

そして、このサマタ瞑想がそのままヴィパッサナー瞑想に変わる。

ānāpāna-sati安那般那念　ānaは入息、apānaは出息、satiやsmṛtiは念（意識していること）を意味する。

広義には、そこから身体の観察へと移行していき、四念処に相当する観行（ヴィパッサナー）の領域も含む。

Ānāpānassati Sutta (MNパーリ中部経典118)『入出息念経』、Ananda Sutta (SN 54.13)、Padīpopama sutta (SN 54.8)相応部の『入出息相応』（安般相応、Anapana-samyutta）等で説かれている。

サマタ瞑想からヴィパッサナー瞑想へ

サマタ瞑想を続けると物欲や性欲がなくなり、普通の生活に戻っても、つまらなく感じ、面白くも喜びも感じなくなる。

このように煩悩が落ちついて、心が清らかになってくると、ヴィパッサナー瞑想を実践する。

ヴィパッサナー瞑想では一般的には神秘体験は生まれない。

ただ意識がエネルギーであることや、体の内外の違いが感じられず、微細粒子の出滅によって身体が成り立っている身体感覚をもつ。

これはもう十分な神秘体験という人もいる。

八聖道が方法で、結果が解脱。

八聖道の修行が俗世間のレベルまで進んだ人は、最後にヴィパッサナー瞑想に挑戦する。

ヴィパッサナー瞑想で妄想saññāが消えて、代わりに智慧paññāがありのままの姿で現れてくる。

その智慧paññāで「一切の現象は、私の望むように保持することはできず、不完全であり、私は無力である」ことを覚る。

すると、一切の現象から離れたい、脱出したい、という強い意欲が生まれてくる。

そして、心が「現象たるものは何であろうとも、それから離れたい」という強烈な離viratiの想いが募ってくる。

この体感が出世間心を作り、解脱へと導く。

ヴィパッサナー瞑想とは死に至るプロセスから死の瞬間までの疑似体験だと感じる。

仏教では、心の停止が死である。

3段階の心境　　Parikamma、upacāra、appanā

妄想を控えて観察に慣れてくると、体の表面にいろいろな感覚があることに気づくことになる。

これがはじめの段階のParikammaと呼ばれるものである。

次のupacāra段階になると、感覚の有無だけではなく、感覚という現象が生まれては消えることを察知するようになる。

集中力が上がると認識しきれない速さで、現象が現れては消えることが察知できるようなる。

認識できない速さなのに、察知するという表現には、論理的な矛盾がある。

完全に認識できないが、対象を察知することは可能である。暗闇でうごめく孔雀のように

これはバンガーとよばれるもので、体皮に内外の違いが感じられない微細粒子が出滅する感覚をもつ。

「無常しかない、生命も無常であり、このような一時的な現象に虚しく執着している理由がみつからない。

無常の連続は心が重くなり、なにをしても無力である。このような世界から解放された方がよいのではないか。すべては一時的な現象であって、この世界で生きるとは蜃気楼のようなものだ」

と智慧paññāが現れる。

輪廻転生は究極的な恐怖感として感じ、すべての現象に対して、「諦め」が生じる。

これがヴィパッサナー瞑想のappanā安止の段階である。

この後に、覚りに達する。

サマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想

サマタ瞑想では複数の対象を認識することを避けて一つの対象を認識し続けることで、一境性ekaggatāの心所を育てる。

智慧paññāの心所は一境性に働くので、智慧paññāの心所を大きくなる。

ヴィパッサナー瞑想は智慧paññāの心所を極力、強く大きくする。

この智慧paññāの心所は煩悩を滅し、人格を向上させる力を持っており、一度育てると、結果は後戻りしない。

だからといって、ヴィパッサナー瞑想では「智慧paññāを育てる」という大胆なことに挑戦するのではなく、satiを実践する、と具体的な実践を繰り返す。

維持（サマタ）と転換（ヴィパッサナー）で心を管理する

意志では心をコントロールできないので、「維持」と「気づき」という二つの瞑想を仏教では勧めている。

サマタ瞑想は、統一することで、良い方向の心の流れをそのままに維持することができる。

ヴィパッサナー瞑想は、気づき続けることで、心の流れが循環に陥ってもそこから転換させることで心を管理することができる。

たとえば死ぬ瞬間に何か不善心所がはたらく現象にひっかかってしまったとしても、気づきを入れる癖がついているのならば、それによって流れを転換することができる。具体例は？

これが智慧paññāである。

これができないと、心に映ったものに引っ張られてしまい、下手をすれば妄想の回転から逃れるのに時間がかかってしまう。

sati念　　

気づくこと。

今の状況に目覚めていること。

心に留めて忘れない働き。

自分の置かれている状況に目覚めていること。

ヴィパッサナー瞑想では言葉でラベリングすることで、satiを成長させている。

satiは明るい心所で、行動の始まり、智慧の始まり。

「知る」ということは、まず知る対象に気づくことから始まる。

satiがあるならば、いつでも、いろいろな智慧が湧いてくる。

どのような智慧paññāが具体的に？

潜在意識が意識に変わる、深層がみえてくる、あるがままが観える回数が増える、因縁の関係が明らかになる、偶然が必然になる。

智慧が湧いてくればくるほど、ヒトは元気になり、satiで生きると、新しい発見があり、人生はすごく楽しい。

発見するとこれまでの苦労は水の泡のように消えてしまう。

この喜びをsatiの人は常に感じている。

実践方法　

ヴィパッサナー瞑想で、認識機能を一つづつ察知していく。

ものごとそのものを感じるのではなく、見えている、聞こえている、という見る機能、聞く機能そのものを気づき続ける。

たとえば、ある音（たとえば鶯の鳴声）があって、それが聞こえた、そうしたら心が反応して嬉しさが生まれてきた、という一つづつの事実関係を把握することで、認識の仕組みを体で（クセとして）納得し続ける。

このような認識の仕組みが常に変化することを体感し続けると、心が変化する。

この変化のほんの瞬間において、現象から離脱する状態を体感する。

この瞬間が涅槃である。

このように涅槃は認識から離脱して外側にあるものなので、日常の五感器官とマインドによる認識能力では捉えることができないものである。

認識を起こす物質と起こさない物質を分別するのはヴィパッサナー瞑想の二番目の段階である「分離識」に導くため

瞑想する時に、「心身で感じること・察知すること・気づくこと・認識することを、これは心、これは身体というように分別してみる。」

このように分析した後に、物体として身体を感じている時に、身体には認識を起こす物質と起こさない物質があるので、このことにも気付いて（分析して）みる。

認識を起こす物質　　　　　物質　　筋肉、骨、血管、血液、ホルモン分泌成分、液体、固体

認識を起こさない物質　　　状態　　免疫物質、酵素、腸内微生物、気体、栄養素、ネットワーク、メカニズム

この分離識の瞑想ができると、膨大なことを知ってしまう可能性がある。

覚る瞬間の対象物　　　　ヴィパッサナー瞑想の無我

壁や声や概念などの対象がある限りはそこは出世間次元ではない。

心がある、心が活動するということは対象があるということだから、いまだ世間の中に居るということ。

世間の中を対象にして暮らしていると、すべては無常だ、何を対象にしても面白くなくなり、気持ちがウキウキと活き活きとしない状態になる。

そこで、ある一箇所、ある瞬間の時空で、心は対象を取らない、ことをする。

そこで、自分の意思や努力ではなく、心が感覚の確認を常に続けている状態でいることがある。

その時、心は、あらゆる対象があまりにイヤになり、対象を取らない瞬間がある。

その瞬間に何がおきているのか？

自分がいる、という概念はなく、すべてが消えて、心が止まる。

すべてが消えた次の瞬間は、また自分がいる。

覚りの心は、禅定の心とは違い、ある特定の超越した感覚を感じ、煩悩が根源から消えてしまう。

メカニズムは？

このような心は、一人の生命には4回しか生まれない。

ただし阿羅漢が滅尽定をする場合に限っては何回も可能である。

参考資料

#17

vatthu-rūpa, avatthu-rūpa 　　基色と非基色

Pasāda-hadaya-saṅkhātaṃ chabbidham pi vatthu-rūpaṃ nāma. Itaraṃ avatthu-rūpaṃ.

浄と心と称される6種は基色、他（の22種）は非基色と呼ばれる

基色とは認識を起こす物質、非基色とは起こさない物質。

28種類の色

四大種４、浄色５、境色７（４）、性色２、心色、命色、食色、、　　　実際に存在する物質そのもの

分断色、表色２、変化色５（３） 相色４、　　　　　　　　　　　　実際に存在する物質の状態

#19

indriya-rūpa, aindriya-rūpa 　　根色と非根色　　indriyaは「働く場所」、仕事場、faculty, institution

Pasāda-bhāva-jīvita-saṅkhātaṃ aṭṭhavidham pi indriya-rūpaṃ nāma.Itaraṃ aindriya-rūpaṃ.

（6つの）浄と（2つの）性と称される8種は根色、他（の20種）は非根色と呼ばれる

indriya-rūpaは「認識する」仕事場のこと。

生命の働きとは認識することだけ。足が痛い、悔しい、妄想、これらは全て認識である。

bhāva- rūpa性色とは、生命の性別を作る働きをする身体のエネルギーで、これを「場所」として認識することで、男女の働きの方向が変わる。

例えば、クマノミの性転換。

まずは性色のエネルギーが働くことで、身体が変化する。

jīvita-rūpa命色とは、この生命体が壊れそうになっても修復して平衡性を保つエネルギーのこと。

例えば、植物はこのエネルギーが強くて、伐られてもしばらく生存できるが、動物はすぐに死ぬ。

心が生まれる基盤が心色

心は止まることなく常時変化しながら働いている。

例えば、寝ている時は何も考えていないが、心は働いているように。

人工心臓をつけている人も心（認識システム）があるので、心臓で心が生まれるのではない。

身体のいろいろな所で心を起こしており、思索のデータを整理するのは大脳皮質だが、生きて認識するのは細胞全部である、と進歩的科学者は考えるようだが、パーリ経典では、メンタル体という素粒子よりも微細なエネルギーによって構成されているhadaya vatthuが心を司る、と考える。

認識することを、心のはたらきといい、心のはたらきがあるものを生命と呼ぶ。

よって、どの細胞も生命であり、心がある、ということになる。

わかりやすいのは単細胞の生命体、たとえばアメーバーやゾウリムシや菌類などは環境を認識してサバイバルしているので心のはたらきがある、ということである。

所々の目標

実践方法

ヴィパッサナー瞑想による4領域の無常　　　この世には無常しかないことを実感する。

感性　　　　　体の表面、内臓の感覚の常なる変化

理性　　　　　一般化という概念の利便性の奥にあるのは、TPOに応じた常なる変化

智性　　　　　理性や四大元素や時空の奥にあるのは　エネルギー体の常なる変化

禅定性　　　　心の奥にあるのは、エネルギー体の常なる変化　　煩悩とその原因も見えてくる

無常の体験とはすべての物質や心は生滅変化するエネルギーの流れであることを実感すること。

日常生活では渇愛があるので「わたしがいたらいいな」という概念が生まれてくる。

概念があると「わたし」が見える。

渇愛がないと「わたし」の必要性がなくなる。

そこで、「なんだ、すべては無常だ。それなのに不変なことをベースにして生きていくなんて、いくら便利だからといっても、実際の自然の法には則していないので、効果はない。とくに命に関しては。

不変を基準にしてものごとを考えるなんて、宇宙の法則に反し、長い目で見ると、結果を得ることもなく、意味がなく、無駄で、この世を大切にせず、害を与え、なんて馬鹿らしいことなんだ」

この瞬間に、真我や「わたし」や自己があるという概念が邪見（有身見）であることをわかり、それが消える。

メンタル・ボディが永遠にあると考えるのもsakāya ditthi（有身見）です。

メンタルボディがありますが、bhavaからbhavaへと劇的に変化します。 たとえばしばらくの間、devaまたは人間であったとしても、次のbhavaはapāyasにある可能性があります。

私たちの肉体には、「私のもの」とみなすに値するものは何もありません。

この事実を理解すると、sakāya ditthi（Sōtapannaステージを達成するための4つの条件の1つ）が削除されます。ただし、これはsakkāya ditthiを削除する1つの方法にすぎません。

この側面については、特にMūlapariyāya Sutta (MN 1)“, “Kaccānagotta Sutta (SN 12.15) とMahā Hatthipadopama Sutta (MN 28)で説明されています。

自分の存在をこれまで誤解していたが、その誤解が解ければもう二度と誤解は生じない。

一度理解したら誤解は二度と生じない。

いったん無常だと分かれば二度と逆戻りしない。

智慧paññāにより邪見が消えることになる。

変化の生滅を捉えて無常を体験する方法　　　　鍵はスローモーション

無常は概念ではなく体験することにしか意味がない。

無常を体感しない限り、煩悩は消えず、解脱できない、と仏教は断言する。　出典？

なぜならば、

物質と心は猛烈な速さで変化・生滅しているので、一本の一繋がりのように感じ、いつでも存在している固定的な「実体」として見てしまうからだ。

たとえば、音楽も1秒間に20〜40万回変化するので、スローモーションにしてバラバラに分解できれば一つに繋がっていないことが分かる。

そして音楽がただの音々の集積になる。

音楽にするためにはある程度のスピードが必要なのである。

たとえばテレビでは一秒間を30に分断したものを連続させることで、音が１つに繋がるように感じられる。

そこで、意図的に徹底的にスローモーションにする修行をしてみる。

すると、無常であることを体験する心が育まれていく。

だからヴィパッサナー瞑想とは「スローモーションにする訓練」とも言える。

換言すると、微細感覚器官を使って対象を把握することで、心が肉体器官を介さずに感知するので、認識スピードが格段と早くなることで、これまでの５感覚器官を介しての認識が遅く見えるということである。

たとえば音楽が音の集積と認識したり、目を閉じた状態で蛍光灯が光の点滅であるのを感知するようになる。

また、微細感覚器官を使わず、５感覚器官からの信号に対しても、細かい差分を感知できるようになることで、

たとえば痛みなどの感覚は感触の集積として捉えることができるようになる。

無常がわからないのは、現象が猛烈な速さで変化するから。

そこで心を磨いて、その速さを捕まえてみると、無常を経験できる。

ヴィパッサナー瞑想の無我

瞬間ごとの体験だけにスポットライト当てる。

これまでの概念として理解する方法から離れて、ありのままを捉えようとするアプローチに変更する。

すなわち、意門からの流れを断ち、五門からの信号に対してのみ集中することで、固定化された概念が、瞬間の生滅を繰り返す感覚の積み重ねの前では単なる虚像であり、イメージであり、妄想であったことがわかり、意味がなくなるのを実感する。

五門からの信号は、なんのカタチもない信号の集積であり、それらの変化であることを経験して、それらは確固たる実体ではなく、実体と感じたものは概念が作り上げたものであることを実感する。

また現象と主体はセットなので現象が瞬間瞬間に変化していることを認識すると、主体は現象の影響を受けて、主体も常に変化し続け、自我が消えてしまう。

正確にいうと、自我が消えるのではなく、自我だと思っていたものが何ものでもなかったことが分かる。

「私がいる」という状態をよく観察してみると、それは心にいろいろなものが生まれそして消えていく流れでしかない。

白米が口から胃腸そして肛門から出ていくように、六門からの信号が心のはたらきによって流れて終わることを繰返していることでしかない。

どの部分にも「わたし」だ、と言える時空がない。

輪廻の先を質問されてもその時にはもう「わたし」はないのだから、どこにも生まれ変わることはない。

言える答えは、「今の瞬間だけを見ろ。そこにすべてがある。」

「前・あそこ」と「いま・ここ」は同一ではない、だからといってまったく違うものでもない。

瞬間の変化を見ていると、「わたし」という概念は消えているので、これまでの思考も知識も、単なるカタチであることを理解して、それに頼ることはなくなり、ホッとすることがある。

これが涅槃である。

「これからは悩む必要もない」とあるがままに理解する。

自分で体験することだから、決して消えることのない本物の智慧paññāである。

#29 bojjhaṅga　　覚支

Satta bojjhaṅgā sati-sambojjhaṅgo dhammavicaya-sambojjhaṅgov iriya-sambojjhaṅgo pīti-sambojjhaṅgo passaddhi-sambojjhaṅgo samādi-sambojjhaṅgo upekkhā-sambojjhaṅgo.

念正覚支、択法正覚支、精進正覚支、喜正覚支、軽安正覚支、定正覚支、捨正覚支という７つが覚支である。

七覚支覚るためには順番どおりに実践する

ヴィパッサナー瞑想を実践する修行者が解脱に達するために完了しなくてはいけないもの。

仏道の最後の段階に入って精進する人が備えるべき心の中身の話。

これから修行を始める人は、1番目のsati、すなわち身体の感覚を察知する気づきからはじめる。

修行している人は、自分に必要な修行項目である菩提分法bodhipakkhiyā dhammāを選んで実践する。

念正覚支sati-sambojjhaṅgo

念の行を実践して、微妙にでも体が動いたらそれを自動的に確認してしまう、もしくは、察知して確認しないと体を動かさないというクセができるまで続ける。

このように実践が自分と一体になるような気がするまで続ける。

その時には修行者は、気づくことだけではなく、

物事の変化も見えてくるようになると二番目の択法正覚支へ。

択法正覚支dhammavicaya-sambojjhaṅgo

Vicaya，[fr．vi+ci： see vicinati] search，investigation　調査　検証

実際に目や耳に触れたものと概念（名前）を結び付けることなく、そのままsatiできようになると、そこ赤い形はあるが、バラの花は存在しないし、耳に触れる音はあるが、音楽は存在しない。

これはsatiの実践が進んだことの証である。

ここまでsatiが進むと、択法正覚支が現れてくる。

択法とは、分別能力のこと。

１眼の前に物質を見る

２どんな種類ものかと分かるようにする　　材質、性質、関係性

３どのカテゴリーに入れるか判断する

４分別する。

ヴィパッサナー瞑想も同じように、

１「いま・ここ」の感覚を察知する

２どんな種類ものかと分かるようにする　　

３どのカテゴリーに入れるか判断する

４分別する

無理に分析能力をつけてはいけない。分別能力が勝手に起こるまで修業を続けながら、待つ。

無理につければ想saññāになり、待つとそれは想saññāを解放する智慧paññāとなる。

一般社会では、分別（分析）能力がないので、相違点があるものをまとめて１つにしてしまう。

これが過剰一般化のこと。

そして分別をちゃんとしないままにまとめることにより、「心の回転（「知る」器）citta」に、心のはたらき、観察者、認識者、自我意識、自己意識といろいろと付加させて、終いには体も「自分」とするようになる。

このような分別をせずに一つにまとめて、それを一般化するという行動パターンが、妄想を拡げている。

たとえば、バラの花がきれいかどうかは、分析能力がある場合は、自分の心の働きを感じながら判断する。

このプロセスは、

バラと呼んでいる花の形が目に触れる。

そして自分の心の様子を感知する。

澄んでいたり、忙しかったり、暑かったり、爽やかだったりといろいろな心の様子があり、またどの心所が心の中に入ってきているかを感知できる。

また、多くの人はこれがキレイだと思っているデータやバラに関わる自分の過去のイベントを「意門」を通じて感知する。

目の前にある花についての感覚（たとえばきれい、びっくり、関心がある、関心がない）が生まれるので、今はこのような感情がこの花と関連していることを感知する。

このように分析能力を伴う気づきは、対象に付属している情報を取り払うことで、対象に対する執着が徐々に薄れていく。

satiとdhammavicayaはセットで機能する。

「無常の滅」が体感できれば覚り　　　dhammavicayaの範疇

択法正覚支dhammavicaya-sambojjhaṅgoの最終段階が完成すると覚りの心（出世間心）が現れる。

存在は概念に過ぎず、実際には、物事はただ変化するだけで、消えてはまた生まれていくだけで、生まれいくプロセスを察知して「ある」とよんでいるだけで、消えていくプロセスである「ない」は察知してはいない。

消えていくプロセスを察知することを無常の体感と呼び、これが智慧である。

智慧には知識から体感、応用までの多くの層がある。

知識だけでは覚ることはない。

「これがあるから、これが起こる。これが消えると、これも消える」という発見を体感する修行が必要。

これは物理エネルギーの領域（kāmaloka）、すなわち５感覚器官を介する信号同士の「横の関係性」ではなく、意識エネルギーの領域（rūpaloka）と物理エネルギーの領域（kāmaloka）との間の「縦の関係」である。

これが「釈尊のいう因果法則の発見」である。

したがって仏法でいう因果関係は縦の関係性のことなので、科学や日常生活で使わている横の関係とは言葉同じであるが内容は違うものになる。

「無常の滅」が体感できれば修行は完了になるが、各自の心の汚れ具合によって、この発見にかかる時間はヒトによってさまざまである。

nāmaとrūpaの分別

dhammavicayaとは心のはたらきと物質のはたらきを区別できることである。

区別できない人は「心と体は一体である」とか「魂と体は一体である」と発言したりする。

事実は、心と体は不可分離の状態ではたらいているのだが、質的には違うものである。

つまり、心と体は別々にはたらいている。

心と体が区別できたら、次には心のみを察知する。そして体のみを察知する。

すると心も体も瞬間瞬間変化していることが察知できる。

精進正覚支v iriya-sambojjhaṅgo

ものごとが分別して見えてくると、面白くなり、さらにどうなるかと体験したくなる。

そのまま続ければ覚りに至るのだが、プロセスの評価、ビフォア・アフターの評価（心身の向上、集中力の向上など）をしたくなり、それで満足して途中で止めてしまうという落とし穴がある。

止めてしまうと、無常の法則に従って、堕落していく。

満足すると分別するのをやめるようになるので、満足をしてしまうと成長が止まる。

だからといって、不満と闘うのではなく、不満を条件として大事に扱う。

途中の結果を喜びたい者が、怠けを割り込ませ、中途で精進をストップする。

さまざまな工夫をして、自分を奮い立たせる必要があるので、この努力が精進である。

修行者の正精進とは最終解脱に至るまで満足しないと決意するのが、阿羅漢への道。

心にある感情や妄想を悪とし、生じていない善とは、煩悩をなくして覚りに至ること。

「仏教の修行は戦争に行って闘うほど厳しいものである」と釈尊は説く。出典？

喜正覚支pīti-sambojjhaṅgo

念正覚支、択法正覚支がよくできたならば、そこで「よくできた」と満足すると修行が中止してしまうので、戦場状態である精進正覚支を行う。

心が清らかになっていくと、俗世間の悩み苦しみが減じると、集中力が上がり、智慧が育まれていき、自然に心に喜びが生じる。これが喜正覚支である。

自己評価することも、満足することも禁じられているので、修行する前の自分と今の自分の精神状態を具体的に比較してみる。

すると心の成長がそうとう進んでいることに気づき、喜びが生まれる。

修行は無駄ではないことが改めて分かる。

真理が分かる喜び

真剣にsatiをすると、忙しくて妄想する暇がなくなる。

自分を振り返ってみると、世俗的な楽しみを望む気持ちはほとんど消えている。

こうして、純粋で、完全に、心が長い間清らかに回転しているのだから、結果として心と体に喜びを感じる。

なぜ喜んでいるのかは本人にも理由はわからない。

寝る時間ももったいない、と思ってまた修行ばかりしている。

苦しいはずなのに、本人はすごく楽しい。

笑いたいほど楽しい。

この楽しみは出世間の道に入っている時に確実に生まれる。

それは自分は世間の苦しみから離れている、という感じ。

ヴィパッサナー瞑想の実践をしていても、世間の苦しみが頭に浮かんでも、そこから離れていることが実感でき、強烈な喜びが生まれてくる。

喜びが生まれてくると、やる気が出てきて、さらに精進しやすくなる。そして一段と分別能力に磨きがかかる。

そうすると、さらにsatiを実践するようになる。

このようにリストの順番の逆方向にも進歩する。

sati→法の探索→精進→喜pīti　　

喜pīti→やる気（精進）→分別（dhammavicaya法の検証）→「いま・ここ」で生きる（sati）

このように全ては自然に進歩していくが、satiだけは本人が意識してやらなければいけない。

satiが土台である。仏教はsatiで始まる。

satiさえすれば、他のものはきれいに自然に揃ってくる。努力しなくてもいい。

軽安正覚支passaddhi-sambojjhaṅgo

喜びにも落とし穴がある。それは興奮によって集中力が切れて、修行ができなくなること。

そこではじめは喜びに驚いても、それに慣れて落ち着くのがいい。

「落ち着くべきである」という条件が、軽安正覚支passaddhi-sambojjhaṅgoである。

この落ち着きは、普段の落ち着きとは段違いのものである。

Passaddhi　 [fr．pa-強意（前に，先に） + sambh（梵wrambh）平息] calmness，tranquillity，repose，serenity安息

体が軽くなり、柔軟になったと感じ、体重がゼロに近い状態になったように経験する修行者もいる。

また掃除や歩行や沐浴などの普段の生活でsatiが自由自在に入れることができるようになる。

瞑想のプロになったので、肉体の痛みや環境の寒暖などのトラブルがなくなり、修行を簡単に進められるようになる。

心が弱い時や怒りや欲があると体は硬く、重くなる。

定正覚支samādi-sambojjhaṅgo

心は複数の対象を同時に認識することはできない。

satiは心が勝手に対象をめざして飛び回っているのを停止させる。

これがヴィパッサナー瞑想におけるサマーディである。

現実をありのままに確認する作業とは、言葉を変えると集中力であり、「いま・ここ」に生きるということである。

捨正覚支upekkhā-sambojjhaṅgo

これまでの６つの支をできるだけ成長させて、バランスを整える「最後の調整」で、スムーズにはたらけるように落ち着いて冷静に修行を続ける気持ちのはたらきがupekkhāである。

ヴィパッサナー瞑想の10段階

(01)サンマサナ　　　　　sammasana

綿密な理論的観察と分析によるアニチャ・ドゥッカ・アナッタの正しい理解

(02)ウダヤッバヤ　　　 udayavaya　生滅arising and passing away

ルーパとナーマが出現しては消滅するということを知ること

(03)バンガ bhaṅga 破壊　breaking up; dissolution　分解、崩壊、融解

ルーパとナーマの素早く変化する性質をエネルギーの急流として知ること

(04)バヤ bhaya 　怖畏，恐怖　　fear; fright

正にこの自己の存在が恐ろしいものだという事実を知ること

(05)アーディーナヴァ　　ādīnava： disadvantage.　　 過患，患難，過失，危難.

正にこの存在が悪に満ちているという事実を知ること

(06)ニッビダー nibbidā：[f．] aversion； disgust； weariness　　自己嫌悪，厭離，

正にこの自己の存在は胸が悪くなるようなものだという事実を知ること

(07)ムンチタカンヤター muñcitukamyatā　　 [muñcitu-kamyatā] 脱せんと欲すること，欲解脱

正にこの自己の存在から逃れることが緊急に必要だということを知ること

(08)パティサンカー paṭisaṅkhā：reflection； judgement； consideration　　省察，思択，考察

アニチャを基礎として、十分な認識を持って救済のために勤める時が来たと知ること

(09)サンカールペッカー　sankhar’upekkha-ñana　

今やサンカーラから脱し、自己中心主義を断ち切る時期に来ているという事実を知ること

(10)アヌローマ anulomaṃ：バランスのよい平静さ　Direct order順行　真っ直ぐsuccession 連続、継続　

目標に達する試みの速度を速めることができる知識

S.N. Goenka 「実践における仏陀ダンマの本質」の原文を探してパーリ語の表現をチェックする。

参照 19段階

Sensations arise and disappear at a high frequency rate. With our poor levels of attention, we can only detect great changes, but in spite of that they are still there, you can feel the change despite the few seconds you spent observing before going to the next sensation. Once you become more and more concentrated, the “same” feelings begin to disarm and you can detect more textures inside them. That procedure continues to unfold over and over again, until it is supposed that the meditator reach the state of bhanga dissolution, an important point in the progress of insight called “Visuddhiñana-katha”:

visuddhi：[f．] purity； holiness； splendour； excellency

ñana　　　　　wisdom

katha　　　　　theory

1. Knowledge of Classifying （nāmarūpa-pariccheda-ñāṇa）　名色分離　　分別（涅槃、心所、心、身体）

1. Knowledge of Classifying (Vibhaṅga-ñana)　　　　　　分別（涅槃、心所、心、身体）

2. Knowledge of causation （paccaya-pariggaha-ñāṇa）　　　nāmaが原因でrūpaが結果という因果関係

2. Knowledge of Aggregation (pañca-kkhandha-ñana)　　五蘊　受vedanā、行sankhāra

3. Knowledge of Nature （sammasana-ñāṇa）　　　　　　三相tilakkhaṇa　aniccā,dukkhā,anattāの理解

4. Knowledge of Changing (udayavaya-ñana) 生滅の深く明晰な理解、対象の微細化

5. Knowledge of Dissolution (bhanga-ñana)　　　　　　融解

6. Awareness of Fearfulness (bhayatupatthana-ñana)　　恐怖

7. Knowledge of Misery (adinava-ñana)　　　　　　　　　悲惨

8. Knowledge of Disgust (nibbida-ñana)　　　　　　　　　うんざり

9. Knowledge of Desire for Deliverance (muncitu-kamyata-ñana)　　釈放の願い

10. Knowledge of Re-observation (patisankhanupassana-ñana)　　　　再び観察

11. Knowledge of Equanimity about Formations (sankhar’upekkha-ñana)　　サンカーラの平静化

12. Insight Leading to emergence (vutthanagamini-vipassana-ñana)　　　　出現に導く内観

13. Knowledge of Adaptation (anuloma-ñana)　適応（目標に達する試みの速度を速めることができる知識）

14. Maturity Knowledge (gotrabhu-ñana)　　成熟　

聖者には達していないが、次の瞬間には必ず聖者の域に達する心

15. Path Knowledge (magga-ñana)　　　　　道の確立　預流道心 チューター・ソータ　第１禅定が必要？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

16. Fruition Knowledge (phala-ñana)　　　　　　　　　　結実の知識

17. Knowledge of Reviewing (paccavekkhana-ñana)　　　　　再検討　　自分の心に残っている煩悩を発見

18. Attainment of Fruition (phalasamapatti)　　　　　　　　　結実の達成　預流果心　　　ソータパンナ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無常を認めることで得る境地

19. The Higher Paths and Fruitions　　　　　　　　　　　　次の段階への道と果のための知識

参照　　十六観智　ñāṇa-dassana

『清浄道論』にまとめられた上座部仏教のヴィパッサナー瞑想によって獲得される智（ ñāṇa）の総称。

マハーシ・サヤドー. “The Progress of Insight”. Access to Insight.

ウ・ジョーティカ 2016.

名色分離智（nāmarūpa-pariccheda-ñāṇa） :

現象認知における意識（nāma ナーマ, 名）と対象（rūpa ルーパ, 色）の分離。

縁摂受智（paccaya-pariggaha-ñāṇa） :

意識（nāma ナーマ, 名）と対象（rūpa ルーパ, 色）の相互条件付け・因果関係の理解。

思惟智（sammasana-ñāṇa） :

上記の因果の生成消滅を通じての「三相」（無常・苦・無我）の理解。

生滅智（udayabbaya-ñāṇa） :

生成消滅のより深く明晰な理解。高い集中、平静さ、対象の微細化、時間感覚の伸張・喪失、強い光やイメージ（nimitta ニミッタ）の経験などを伴う。

壊滅智（bhaṅga-ñāṇa） :

生成消滅の消滅のみに注意を払い、対象の消滅と、それを観察する意識の消滅を感得。

怖畏智（bhaya-ñāṇa） :

消滅の継続的観察を通して、意識（nāma ナーマ, 名）と対象（rūpa ルーパ, 色）の生成消滅現象を危険なものと感得。ただしその危険感覚と自己の同一化を避けることで恐れは無い。

過患智（ādīnava-ñāṇa） :

消滅の継続的観察を通して、意識（nāma ナーマ, 名）と対象（rūpa ルーパ, 色）の生成消滅現象を、苦の集まりで、幸福はなく、無利益・不利益（過患）であると感得。

厭離智（nibbidā-ñāṇa） :

消滅の継続的観察を通して、意識（nāma ナーマ, 名）と対象（rūpa ルーパ, 色）の生成消滅現象を、魅力が無い退屈で疎ましい幻滅したものとして感得。

脱欲智（muñcitukamyatā-ñāṇa） :

上記6-8を踏まえた上で、その生成消滅現象から脱したい、自由になりたいと欲する。

省察智（paṭisaṅkhā-ñāṇa） :

瞑想を放棄せず、瞑想こそが唯一の解決手段であると考え直し、瞑想に留まり続ける。

行捨智（saṅkhārupekkhā-ñāṇa） :

現象をより深く強い注意力で、対象から完全に距離を保って平静に観察する。「中道」「空」に到達[5]。

(諦)随順智（(sacca)anuloma-ñāṇa） :

上記4-11の「八智」の集成として、涅槃（現象の停止）へと向かう。

種姓智（gotrabhu-ñāṇa） :

涅槃（現象の停止）への移行。

道智（magga-ñāṇa） :

涅槃（現象の停止）の経験。一刹那。

果智（phala-ñāṇa） :

涅槃（現象の停止）の経験。二刹那。

観察智（反省智）（paccavekkhaṇa-ñāṇa） :

涅槃（現象の停止）経験の反省（振り返り）。4の生滅智（生成消滅）から瞑想再開

十六観智と『清浄道論』の「七清浄」との対応関係

七清浄	十六観智
見清浄（ditthi-visuddhi）	名色分離智（nāmarūpa-pariccheda-ñāṇa）^[7]
度疑清浄（kankhā-vitaraṇa-visuddhi）	縁摂受智（paccaya-pariggaha-ñāṇa）^[8]
道非道智見清浄（maggāmagga-ñāṇadassana-visuddhi）	思惟智（sammasana-ñāṇa） 生滅智（udayabbaya-ñāṇa）^[9]
行道智見清浄（paṭipadā-ñanadassana-visuddhi）	壊滅智（bhaṅga-ñāṇa） 怖畏智（bhaya-ñāṇa） 過患智（ādīnava-ñāṇa） 厭離智（nibbidā-ñāṇa） 脱欲智（muñcitukamyatā-ñāṇa） 省察智（paṭisaṅkhā-ñāṇa） 行捨智（saṅkhārupekkhā-ñāṇa） (諦)随順智（(sacca)anuloma-ñāṇa）
	種姓智（gotrabhu-ñāṇa）
智見清浄（ñāṇadassana-visuddhi）	道智（magga-ñāṇa） 果智（phala-ñāṇa）
	観察智（反省智）（paccavekkhaṇa-ñāṇa）

七清浄の1は戒律、2は禅定（サマタ瞑想）、3〜7ヴィパッサナー瞑想

参照　不完全な記録

１）サンマ・サナ：綿密な理論的観察と分析によるアニチャ・ドゥッカ・アナッタの正しい理解

２）ウダヤヴァヤ：ルーパとナーマが出現しては消滅するということを知ること

３）バンガ：ルーパとナーマの素早く変化する性質をエネルギーの急流として知ること

４）バヤ：正にこの自己の存在が恐ろしいものだという事実を知ること

５）アディナワ：正にこの存在が悪に満ちているという事実を知ること

６）二ビダ：正にこの自己の存在は胸が悪くなるようなものだという事実を知ること

７）ムンチントゥ・カミャタ：正にこの自己の存在から逃れることが緊急に必要だということを知ること

８）パティサンカ：アニチャを基礎として、十分な認識を持って救済のために勤める時が来たと知ること

９）サンカルペカ：今やサンカーラから脱し、自己中心主義を断ち切る時期に来ているという事実を知ること

10）アヌロマ：目標に達する試みの速度を速めることができる知識

第一の洞察智（名色分離智）― 意識と対象（感覚）の区別に気づくこと。客観的な観察

最初の洞察智は、存在するのはただ現象だけで、恒常的なものは何もなく、存在者もなく、実体もなく、「私」もなく、自我もなく、人格もなく、ただ純粋な現象があるだけと知ることです。この「私」というのは、心の創り出したものです。心は、我と我が身の重荷を創り出します。この最初の段階の悟りによって、この「私」性、「私」性という誤った見解（邪見）が根絶されます。

最初の洞察智を得るために、意識（ナーマ：名、心、精神）と対象（ルーパ：色、身体、物質）を分離させます。意識と対象（感覚）をプロセスとして見て、存在者、実体、魂としては見ないのです。私の意識があるのではありません。あるのは、意識のプロセスです。私の対象（感覚）があるのではありません。あるのは対象（感覚）のプロセスです。

ふたつのことが起こっていて、ひとつはナーマ（意識）であり、ひとつはルーパ（対象）です。このふたつのものを非常にはっきりと観察した時、それが最初の洞察智になります。第一の洞察智は、無我（anatta）を知ることです。この対象があって、この気づきがある。対象と気づきというこのふたつを非常にはっきりと観察します。感覚と気づきは自然現象ですが、意識は対象という条件で生じています。

目を閉じている時には、目の前にあるものをあなたは見ることができません。目を開けた瞬間に、何かがあなたの目に飛び込んできて、この気づき、この見る意識が起こります。それはこの瞬間に起こります。あなたは対象と意識という二つのものを見ることができます。名色分離智とは、こうした見方です。

形は存在せず、男でも女でもないと観察します。これらの現象には、形状も外形もありません。それらは単なる性質です。硬さはただ硬さであり、柔らかさはただ柔らかさです。動きはただ動きにすぎません。瞑想する際には、ただ性質に注意を払います。あらゆる性質は存在者ではありません。実際には、存在者などいないのです。心と身体が動いているのであって、存在者が動いているのではないのです。

心が平静になり、純粋な性質を見る時に、私たちはそれが単に純粋な性質であって、存在者ではなく、男でも女でもないことがわかります。貪欲とは女でも男でもありません。貪欲とは、ただ何かを欲することです。これが最初の洞察智です。この最初の洞察智に至ることができなければ、進歩の望みは全くないでしょう。

名色分離智という洞察智に至った（純粋な性質を見る）時、その洞察智を得た状態が見清浄です。それは、第一の洞察智とともにやって来ます。

食事をする時、心と身体が食べているのであって、「私」が食べているのではありません。食べているのは心と身体なのですが、私たちは、私が食べていると考えています。実際には、ただ心と身体のプロセスが食べているだけです。これをプロセスとして理解できれば、あなたはこの見清浄を得たことになります。

第二の洞察智（縁摂受智） ― 意識と対象（感覚）相互の条件付、因果関係を理解すること

精神と物質の現象が、互いを条件付け合っていることを観察し、理解することが第二の洞察智です。このルーパ（物質的プロセス）は、このナーマ（精神的プロセス）によって生じている、あるいはその逆、などなど、状況に応じて、この両者は、互いを条件付け合っています。その条件付けを知り、その条件によって生じているのだと知ることです。

この対象（感覚）は、この意識の原因です。対象（感覚）があるから、意識が生じたのです。意識はそれ自身によって生じるのではありません。音の意識は音があるゆえに生ずるのです。長い期間、瞑想を続ければ「私が注意をした時だけ、私は音を聞く」という理解に至ります。音があっても、意識が生じなければ音は聞こえません。

ほとんどの時間、私たちは夢の中にいるかのように、無意識に何かをしながらふらふらと過ごしています。そこで突然、私たちは目を覚まし、そして「見る」ということがあり、それが本当に驚くべきことであるのを知ります。あなたは「見る」ということを、真に新しい何かとして経験するのです。ただ何かが存在するということこそが、真に驚くべきことなのです。

眼に関しては、中立的な感覚だけを感じています。それは快でもなく、不快でもありません。あなたがそれを快か不快として解釈すると、それは別のプロセス、つまり精神的プロセスになります。自分が見たものを好む時、それはもはや眼の意識（眼識）ではなくなります。この繋がりは別の意識になります。心が解釈をする時、それはもはや見る意識ではなく、心の意識なのです。

あなたが何かを見る時、純粋に見るのが眼識で、その時には、あなたは自分が何を見ているのかすら知らないのです。ただ純粋に見ることがあるだけなのです。自分が見ているものを確認するのは別の段階で、それからあなたは、自分がそれを好むかどうかを決定するのです。

第三の洞察智（思惟智） ― 意識と対象の因果である生成と消滅を通じて無常・苦・無我を知ること

瞑想する際に、無常（anicca：永続的でないこと）、苦（dukkha：不満足）、無我（anatta：コントロール下にないこと）という、自然現象の三つの特性全てを観察します。一つの対象（感覚）と、三つの特性（無常・苦・無我）の一つの側面だけを、繰り返し観察するのです。恒常的な実体は存在せず、持続する硬い中心核は存在せず、魂は存在しません。全てはプロセスなのです。

瞑想者は、何かが現れてしばらくのあいだ留まり、そして消えてゆくのを観察します。全てがゆっくりとした動きになります。思考や感覚が、映画のスローモーションのような、ゆっくりとした動きになります。瞑想者は、生成し、しばらく留まり、消滅するのを、観察することができます。時々は、少し変化してから消滅することもあります。この変化も、また、無常の一つの側面なのです。

それらは生ずべき十分な原因があるから生じ、消滅することがその本性であるから消滅します。何であれ生成する本性をもつものは、完全に消滅するという本性をもっています。受（感覚）を観察しているとしたら、あなたは無常としての受、あるいは苦としての受、もしくは無我としての受を観察することになるのです。

瞑想において、受に注意を払っていると、それがますます明晰になっていきます。そこに留まって、それをさらに明晰にすることは、とても重要なことです。いかなる種類の精神的状態についても、それに何度も繰り返し注意を払ってください。あなたはこうした全てのことを総じて理解するでしょうが、一つのことを完全に理解したならば、それで十分です。

この瞑想において、私たちは何も解釈せず、物事を組み合わせることもありません。私たちは各瞬間、各現象を個別的に見ます。各々の瞬間と現象を個別的に見ることができた時、あなたは本当にその本性を見ることができるのです。物事を組み合わせたら、それは観念になってしまいます。

物事が生じるためには、原因と条件が必要です。しかし滅するためには、原因も条件も必要ありません。十分な原因があればそれは生じます。同じことが、他のいかなる自然現象についても言えます。それらは私たちの願望には従わないでしょう。瞑想して強い集中力を育てれば、思考は時々止まります。あなたがそれを望むからではありません。条件のゆえにそうなるのです。

何ものも「物体」として考えることはできません。宇宙全体が一つのプロセスなのであって、物体ではないのです。何かを物体として見る時、それはあたかも変化していないように見えます。しかし、電子や陽子や中性子をプロセスとして見れば、それらは常に変化していることが分かります。互いに結合した時もまた、それらは変化するのです。

もしあなたが、全ての思考が身体に影響するのを感じ取れるくらい敏感になることができたなら、思考に全くうんざりしてしまうでしょう。あなたは思考が浮かぶままには任せなくなります。あなたはよりマインドフルになり、ネガティブな思考はどんどん減っていくことになります。あなたがますますマインドフルになれば、思考に耽溺し過ぎることはなくなるでしょう。

瞑想とは、存在者や「私」はなく、ただ気づきの連続、瞑想する意識の連続だけが存在するのを観察することです。私が瞑想と呼んでいるものは、単に連続する意識、気づきに過ぎません。

このポイントに至ってはじめて、瞑想者の誤った見解は剥落するに至ります。誤った見解が、本当に剥がれ落ちるのです。私が瞑想しているのではありません。私が瞑想と呼んでいるものは、単に連続する意識、気づきにすぎないのです。このポイントに到達しない限り、その人は次の段階へは進めません。

第四の洞察智（生滅智） ― 現象の生成と消滅を経験し道を見分けること

この段階を過ぎると、もはや、ナーマ、ルーパ、無常、苦、無我など、ダンマに関する思考は存在しなくなります。物事（感覚）が生成し、消滅しているのを非常に鋭く、明らかに観察するようになるのです。

第四の洞察智は、現象（感覚）の生成と消滅を洞察する智慧です。これは、ウダヤッバヤ・ニャーナと呼ばれています。ウダヤ（udayo）とは生じることであり、バヤ（vayo）とは滅することです。この二つが合わさって、udayabbaya という語がつくられています。私たちは、何にしても以前とは異なってはいるものの、それは以前のものと同じだと考えるところがあります。しかし無常が本当に意味するのは、以前のものは「もはや存在していない」ということです。

この段階に達する前は、瞑想者は自分が正しいことをやっているのか不安になることがあります。これはナーマなのか、 これはルーパなのか、 これは無常なのか、 これは苦（不満足）なのか。 しかし、この段階に到達すると、こうした迷いは全て去ってしまいます。瞑想はたいへん自然なものになり、努力をあまりせずとも進んでゆき、それゆえ、心がとてもバランスのとれた状態になるのです。心はこうしたウペッカー（捨）の態度をもちます。つまり、非常に強力な平静さが育つのです。

この平静さには、多くの特性があります。その一つが、恐怖も喜びもないということです。喜びはある種のローバ（貪欲）であり、何かを好むことです。この段階に到達すると、興奮はなく、幸福でも不幸でもなく、心は大変落ち着いていて、バランスのとれた状態になっています。

この段階において、瞑想者は非常に明るい光を経験することがありますが、これは心がたいへん集中していることを示しています。サマタ瞑想（アーナーパーナ瞑想）でも、この種の光は経験できます。それは集中と心のエネルギーを示すサインです。

第五の洞察智（壊滅智） ― 生成と消滅の消滅のみに注意を払い、それを観察する意識の消滅を感得すること

消滅をより明らかに観察し、生成には同じだけの注意を払わない。注意を払えば生成を観察することはできるが、消滅と消失により多くの注意を払う。注意を払うとそれはもはやそこにはない。気づこうとした瞬間に、それはもう去っている。それを観察することはもうできない。それはちらりと見えるだけで、もはやそこには存在しない。

この段階においては、瞑想するたびに、その対象が何であれ、たとえ動きであっても、瞑想者はその感覚と、次から次へと非常な速度の消滅に非常に明らかに気づいている。形にはもう注意を払っておらず、感覚に注意を払っている。全ての形と固形性は消えてしまう。つまり、あなたは形と固形性に、もう注意を払わない。あなたはただ感覚と、その非常な速度の消滅にのみ注意を払う。

対象が非常な速度で消滅するのを観察するのが、第一のバンガ・ニャーナだ。智慧（意識？）の消滅を観察するのが、第二のバンガ・ニャーナだ。この二つを合わせて、第五の洞察智である壊滅智（バンガ・ニャーナ）が完成する。

最初の洞察智においては、瞑想者は少し考える。第二の洞察智においては、生成や気づき、そして思考の原因について、多くのことを考える。第三の洞察智においては、瞑想、または無常・苦・無我についてより多く考える。第四の洞察智において、思考は比較的少ない。第五の洞察智では、思考はほぼ存在しない。考えることができない。消滅が非常な速度になってきて、それについて考える暇が存在しない。

第六の洞察智（怖畏智） ― ナーマとルーパのプロセスを危険なものとして観察すること

この段階において、瞑想者はあまり喜びに満ちておらず、意気盛んでもない。危険と見てはいるが恐れないということが洞察智ということだ。恐怖は、同一化から来る。同一化が存在せず、物事を単に消滅してゆく非人格的なものと捉えていれば、それはあなたとは何の関係もない。だから恐怖もない。誰もこれに同一化することはできず、それにしがみつくこともできず、そして頼ることもできないということを観察する。

第七の洞察智（過患智） ― 生成と消滅の不利益（過患）を観察すること

一般に人々は、よりよい場所、よりよい世界に再生することができれば、それは素晴らしいことだろうと考える。しかし、この精神と物質のプロセスが消滅していることを、綿密かつ明らかに観察すれば、あなたには理解できる。

「何のために？ 全てはこんなに速く消滅している。そもそも何かを求めることに、何の意味があるだろう！」

何であれ生起することは危険なのだ。何かが満足をもたらしてくれると考えて、それを得ようと考えることすら危険なのだ。つまり、生起するものはただ純粋な苦であり、また消滅するものも純粋な苦なのだ。

生成しないことは安全だ。何事も起こらなければ、実に安全だ。何かが起これば、それは消滅することになる。そこに安全はない。何も生成しないことが幸福であるということだ。

第八の洞察智（厭離智） ― 深く幻滅し、何事も幸せに思わないこと

何かを全く魅力を失わせるものとして観察すること、つまり「幻滅」だ。幻滅する、あるいは何事にももはや喜ばない智慧のことだ。これはまた退屈をも意味する。瞑想に関する退屈ではない。生成しては消滅し、また生成しては消滅するというこのプロセスを観察して、刺激を受けるものなど何もない、同じことが終わりなく、何度も繰り返し生起しているのだと認識するという、そうした意味における退屈だ。瞑想者は、楽しむことのできるものなど何もないことを観察する。全てはとても退屈なのだ。

Sabbe sangkhara aniccia！ 「全ての現象は無常である」

智慧をもってこれを観察する時、ドゥッカ（苦）にまるで魅力を感じなくなる。これが清浄の道だ。執着していないから、それについて心が乱れることがもうない。あなたは執着から、完全に離れている。

第九の洞察智（脱欲智） ― 自由になりたいと欲すること

全てのものを危険と観察（第六の洞察智）し、全ての生成消滅を不利益（第七の洞察智）なものと観察し、全てのものを魅力を感じる価値のないものと観察（第八の洞察智）した後、瞑想者はこれら全てのものから自由になりたいと欲する。

生成消滅が実に退屈であることを観察し、これ以上それとともにあることを欲せず、そこから離れたいと思い、抜け出したいと思い、それらから脱出したいと欲し、それらに全く飽き飽きしてしまう。この段階は脱欲智と呼ばれ、「脱出したいと欲すること」を意味します。

瞑想者は瞑想の対象と瞑想する意識から自由になりたいと思う。対象（感覚）と、瞑想している気づきから自由になりたいと欲する。これはつまり、もうこれ以上何事にも気づきたくないということだ。

第十の洞察智（省察智） ― 瞑想（観察）に戻ること

注意深くしていなければならない。退屈を感じた時は「よくなりつつある」と、ただ再確認するのだ。

瞑想はプロセスの心（路心）を育てる。これは現在に気づいている心だ。行動すればするほど、心は基礎的な状態（有分心）を強める。これは生命と意識の連続性を維持する心だが、瞑想を深めると、そこに長くは留まらなくなる。だから、有分心の時間はどんどん短くなる。

考えると、そこに同一性が生じる。思考によって「自分」が考えているのだと感じてしまう。思考によって、そこに連続性があるかのように感じられる。思考は繋ぐのだ。考えなければ、一つの出来事と別の出来事の間に繋がりは存在しない。思考がなければ、繋がりも連続性も存在しない。何かが生成し、消滅している。ただ、それだけだ。意味は存在しないのだ。

だから、考え過ぎないように警告する。思考が自然に浮かんできたら、ただそれに気づき、そして手放す。考えることによって、あなたは思考に同一化してしまう。思考が起こったら、ただ思考が起こったと気づくことだ。

通常、人はこの思考のすき間、意識の持続機能（有分心）をたいへん広く、長い時間もっているが、瞑想すればするほど、心はますます鋭くなり、そして思考のすき間はますます小さくなる。だから、同じ時間のプロセスにおいて、私たちはより多くの気づきをもつことになる。気づきがこの時間のスパンの中にぎっしり詰め込まれることになる。たいへんに集中した心を備えた瞑想者にとって、一秒は非常に長い時間だ。時間が大きく歪むのだ。

第四の洞察智の後は、全てがより楽しく、より幸せに、より刺激に満ちて、より喜びに満ちたものになるだろうと考える人たちもいる。そうはいかない。事態は下降してゆく。私たちはより深い洞察智を得て、しかも幸せを感じないのだ。しかしながら、これはスランプではない。

「この精神と物質のプロセスを観察することは退屈で幻滅を感じるものであり、それについて良いことは何もない」と感じた時に、瞑想者はあるポイントに到達する。

第十一の洞察智（行捨智） ― 対象から距離を保って平静に観察し「中道」「空」に到達すること

より深く強い注意力をもってプロセスを観察すると、心はより落ち着いて静かになる。気づきとサマーディはさらに強くなり、心は対象から完全に距離を保った状態になる。これが行捨智だ。

非常に綿密に、しかし対象から距離を保った態度で、完全な非同一化の状態で観察する。対象（感覚）を自己として観察せずに、完全な平静さを保ちながら、完全に対象（感覚）から切り離された態度と、同時に強い注意力をもって観察する。「これを観察している私は存在しない」。悟りへの道を切り開くには、この種の完全な非同一化が必要とされる。

心は対象から完全なる距離を保っており、非同一化が徹底していて、別様であることへの望みはもはや全く存在せず、とても単純に、ただプロセスを観察している。これが心の最高の状態だ。何かをしようと欲することはもはやなく、ただ完全な注意を払っているだけだ。

サンカーラ（行）とは、条件付けられた現象のことで、実際には、精神的プロセスと物質的プロセスのことだ。このプロセスがサンカーラと呼ばれる。ウペッカー（捨）とは平静さを意味する。平静さには多くの側面がある。その一つが、度を越えて頑張り過ぎず、リラックスし過ぎることもないというエネルギーのバランスだ。悟りへの道を切り開くには、この種の強力なバランスも要求される。

幸福は一つの極端であり、不幸はまた別の極端だ。幸福でも不幸でもない状態は、ある種のウペッカーになる。この段階において、瞑想者は幸福でも不幸でもない。

この段階においては、いつも自然に準備ができていて、その場にぴったり合っている。何かが起こって知覚が起こると、注意は既にそこにある。だから、注意を払うことにすら努力する必要はない。それは完全な形で、ただ起こっているだけだ。 実のところ、これが中道なのだ。

この段階では、あるのは全体的で完全な注意だけで、心の状態はぐっとシンプルになっている。瞑想は、たいへんシンプルになっている。

第十二の洞察智（随順智） ― 涅槃（現象の停止）へと向かう。

あなたはこちら側にも、もう一方の側にもいません。あなたは中間にいるけれども、既にこちら側は手放してしまっている。戻ることはできるでしょうか。いいえ、ロープからは手を離してしまったのですから、戻れるはずがありません。

こちら側を手放したということは、あなたはもう精神と物質の現象を観察していない、ということです。あなたは心が完全なる停止へと、即ち精神的現象と物質的現象の終わり、涅槃へと向かっているのを観察しているのです。

第十三の洞察智（種姓智） ― 涅槃（現象の停止）への移行。

あなたは、精神的・物質的プロセスの停止へと着地する。プロセスのこの停止状態のことを「道心」と呼んでおり、その対象が涅槃だ。

これはたいへんな速さで、非常に短い数瞬の連続のうちに起こる。それぞれの心の状態というのは、おそらくは千分の一秒、あるいは百万分の一秒といった、非常に短い時間しか持続しない。それぞれの心の状態は連続的に起こり、その時にはもう後戻りすることはできない。その後には完全な静寂、完全な静止がある。生成するものは存在せず、消滅するものも存在しない。もう観察は存在しない。あなたはもはや観察していないのだ。

観察が可能であるためには、あなたはその外側にいなければいけない。だから瞑想者がこの涅槃の状態にある時には、その人はもう涅槃を観察してはいない。それを観察することはできないのだ。自身の精神的な状態を、観察することすらできないのだ。

第十四の洞察智（道智） ― 涅槃（現象の停止）の経験。道心。

一刹那の間に起こること。

第十五の洞察智（果智） ― 涅槃（現象の停止）の経験。果心。

二刹那あるいは三刹那の間に起こること。

道心の後には、直ちに果心が続きます。この果心（結果の意識）は道心と同じもので、唯一の違いは、それが煩悩の根絶をしないことです。しばらくすると、あなたはその状態から出てきます。

第十六の洞察智（観察智：反省智） ― 涅槃（現象の停止）経験の反省（振り返り）。

果心の後に、観察智と呼ばれるもう一つの洞察智がある。そこであなたは、「何かが起こった！ 一瞬前は、すごく安らかで、生成も生滅もなく、とても静かで、とても明らかで、完全な平安だった」と何が起こったのかを思い返す。

この反省が起こっている時、心は非常に落ち着いて安らかであり、あなたは振り返って涅槃の状態について考える。この観察智は、実のところ一種の思考だ。あなたは考えて、完全な平安とは、精神的と物質的のプロセスの完全な停止であるということを理解する。

手放したその瞬間、心は五蘊のどれも観察できなる。無常も苦も無我も、また我も、観察できなくなる。完全な静謐と停止が、ただ知られるのみだ。こうして瞑想者は、涅槃とは現象の完全な停止であることを理解する。

涅槃とは一つの経験だ。その瞬間には、対象と観察が停止する。その二つのものが停止する。瞑想者には、全てが終焉したように感じられる。

そしてしばらくの後、瞑想へと再び戻る。瞑想へと再び戻った時は、第四の洞察智（生滅智）である生成と消滅から再開することになる。これが、このブレークスルーのもう一つの側面だ。ブレークスルーの後、あなたは生成と消滅を再び、非常にはっきりと観察することができる。

ひとたびブレークスルーを経験すると、その時点で、これ以外の実践が本当の意味での解脱をもたらすことはあり得ないことを理解する。

最後に考えておくこと

あなたは観念や解釈のみを考えることができるのであって、直接経験を考えることはできないのです。

あなたの心が、まさにいま・ここで落ち着いて、何であれ身体と心で起こっていることに注意を払い続けている時は、あなたには安定があり、そしてまた自由があります。完全な注意を払っている時には、思考が存在しないからです。

物語や人、あるいは状況について考えることなしに、欲深くなることはできません。つまり欲望は、思考を伴うわけです。怒りについても同じことが言えます。それについて何も考えることなしに、腹を立てることはできません。

覚る瞬間

本気で真面目に森の中など人がいないところで徹底的にヴィパッサナー瞑想をすると、梵天たちが助けてくれる。

精神的なレベルが高くなればなるほど、高いレベルの生命が助けてくれる。

禅定に入って心の次元が変ったら、「では、こうしなさい」と問題点を直接に心に指示をして教えてくれる。

禅定に入っていないと、梵天とコンタクトをとることができない。

梵天はヒトの心が読めるので、本気でないとダメ。

しかし、この本気かどうかは本人にはわからない。

多くの人は禅定には入れないので梵天の助けは期待しないほうがいい。

ヴィパッサナー瞑想がかなり進む

すべてが無常だと分かる

ナーマとルーパを徹底的に知って、心と体の変化の流れを体験して、

自分も含め何もかも徹底的に嫌になる

すべてが無意味に感じる

良いことが一つもなくなる。

瞑想するのも嫌になる。

瞑想を止めるのも嫌になる

このようなどうしようもない感情のようなものが出てくるので、選ぶ道は１つしかない。

これぐらい、精神的に無常を体験して、すべてが無意味に感じることができて初めて、「捨てる」という意志もしくは想いが出てくる。

「全部、捨てる」。

ここで瞑想を止めたらそれで全部が終わる。

もう少し瞑想を続けると、覚りの境地が生まれる。

４段階の覚り

近行upacārāと安止定appanā-samādhiの混同

近行の結果として、心が清らかになり、なかなか怒ることも欲が生まれることもなく、落ち着いた状態になるため、多くの修行者が近行で「これでいい」と満足して修行を止めてしまう。

近行では先が見えないため、先を見ようとはせず、それで安心してしまうため

安止定は、心の何かが切れて「破った」という認識があり、次元を破って上に飛んだという体感がある。

膜を破って飛び出し、もう元には戻らない状態を経験する。

出世間の安止速行　　　ヴィパッサナー瞑想

遍作parikamma、近行upacārā、随順anuloma、種姓gotrabhūの後には預流道心maggaが生まれる。

この預流道心の智慧で3つの煩悩（有身見、戒禁取、疑）が断ち切られる。

サマーディ瞑想の安止速行心では、　レベルの高い欲が生まれてしまうので、煩悩を断つことができない。

預流道心が生まれた時にも五自在は必要で、特に一番目の引転自在が大切であり、その時には「自分がどうなったか？」すなわち消えた煩悩をよく観察する。

二度目からは預流果心phalaだけが生まる。

瞑想が終わると五自在の5番目の観察自在paccavekkhaṇa-vasītāを使って3つの煩悩は消えたが、自分には欲と拒絶があるという欠点も見えるようになるので、もっと上のレベルにチャレンジするようになる。

ヴィパッサナー瞑想をすると五自在が1セットになっているので、いつでも自分の弱点がきちんと見えているはずである。

ヴィパッサナー瞑想での覚りの心路citta vithi（安止速行路）の順番

はじめて覚る時の特徴は3つの煩悩を完全に断ち切ること。

ある段階の無常を発見したことで、有身見（身心に実体があるという誤解）、戒禁取（修行方法に対する思考パターンのこだわり）、疑（覚りの道への不確かさであったが、こうではないか？という曖昧さ）の煩悩がなくなる。

magg-citta預流道心が煩悩が消すはたらきで、次に生まれるphala-citta預流果心は煩悩が消えたあとの心である。

名色nāma・rūpaの無常相などを所縁として（意識界のaniccaを実感して）随順智（目標に達する試みの速度を速めることができる知識）が得ることにより、速行心では遍作、近行、随順、種姓、道、果と順番に生じる。

覚る時の心路citta vithiの順番は、

有分、有分捨断、意門引転心、遍作（近行定）、近行（近行定）、随順（近行定）、種姓（近行定）、道（安止定）、果（安止定）、果（安止定）、有分

の11ステップが一連となった心路である。

近行定と安止定が速行のはたらきをし、速行は7回までと決まっているので、果心は2心刹那だけ生じることになる。

種姓とは

凡夫と聖者の境目の心のこと。

凡夫の姓とは、有身見・疑をもっている生命のこと。

聖者の姓とは、有身見・疑を捨断した生命のこと。

種姓心とは聖者には達していないけど、次の瞬間には必ず聖者の域に達する心のこと。

種姓心は、煩悩を抑えるが、滅することはできない。

ヴィパッサナー瞑想の場合は、種姓心の後に預流道心が生まれる。

預流sotāpatti　　　　覚りの道に入った覚りの第一段階目

sota流れ　āpatti　入った　　　　流れに預かった

道とは、煩悩をなくすプロセスの道。

覚りへの道。聖人への道。

預流道心で取り除かれる煩悩は３つある。有身見（うしんけん）疑（ぎ）戒禁取（かいごんじゅ）

これらは三結とも呼ばれるのは、結とは結生の意味で、次に生をつくる原因になる煩悩という意味である。

有身見　　　　預流果になって取り除かれる初めの煩悩

sakkāyadiṭṭhi 　　　sat実体・reality　+kāya体系・system（カタチあるもの）+diṭṭhi考え方

「実体として何かが存在する」（ここに真たるシステムがある）と考えてしまう煩悩のこと。

たとえば、絶対で不変の自我や体や魂や永遠といったものを基準にするといった間違った見解の事。

世の中すべての物質と心は常に変化する性質のものだと実感することで、「実体として何かがある」「本当のシステムを求めたい」「真の私を求めたい」「永遠でありたい」と思い、これまでは勉強したり修行したりして、「無常」と戦っていたが、これには意味がないことが分かり、無常を認めることで得る境地が預流果。

この世には、この自分とは、ただ肉体という物質の流れと心という認識の流れがあるだけで、それを「私」と呼んでいるにすぎないことを認識する。

「私」とは自分自身の体と心もコントロールすることもできないモノであるので、コントロールするための核にすることができないという証拠は、老化、病気、死を避けることができないことからもわかる。

消えない煩悩　　　性格が悪いのは当然のこと

一番初めであり大事なことは有身見のメカニズムを体感として理解すること。

欲や怒りや嫉妬が残っていることを心配する必要はない。

性格はとても汚れているものなので、その醜さや酷さや不完全さを大げさに騒ぐべきではない。

このような煩悩を消すには長い時間がかかる。

だから阿羅漢になるまでは、欲や怒りが危険な状態にエスカレートしないように気をつけるだけでいい。

欲や怒りが問題なのではない。

いつまでも怒り続けるような病的な怒り方がいけないのであって、「怒ってしまった、まあ仕方がない」と冷静にそれに気付いて、その後は怒らないようにする、それぐらいの柔らかい考え方でいい。

また、自分には欲がないからと格好をつけるのは無知な行為で、これが事実を見ることができない無明である。

覚りのために必要なことは、欲や怒りなどの煩悩を消すより前に、思考（誤解）の問題を解いて、治すことである。

ものごとを正しく見ること。

誤解を解くこと。

ものごとを正しく見ないことが、多くの煩悩を呼び寄せてしまっている原因である。

表面に現れた欲や怒りではなく、根本の「ちゃんと見えないこと」を治すのが第一優先である。

上から目線

文明人（消費者、都会の外からの供給物である水、酸素、食料、エネルギーによって成り立っている世界で暮らす都会の人）が求めているのは信仰の対象であって、自分自身が「道」を歩くことではないので、「道」を歩いている者のアラや欠点や見つけてそれを指摘することで、自分の自我と消費者という立ち位置を保っている。

「上から目線」を気にする人は自分が他者の欠点に気づくことで自我を保っているので、他者が同じように自我を保っているのを見ると、自分自身がいつもしていることをあからさまに見てしまうので嫌悪感を覚える。

このことを本人が自覚できていないので、気づかず内に相手に怒りの反応を起こしてしまい、「上から目線」という非難をするのである。

頭では本人が「上から目線」をすることを否定するのは、自分自身がその基準で実際に生きていることを認めたくないからである。

よくよく考えるとこのような事実がわかるので、そうならないように条件反射の回路を作り上げて、そのような人が周りに現れた場合はすぐに反応することで、そこから逃避するのである。

このような上から目線という安易で表面的な基準で判断をしている者は、この判断基準がすぐに壊れるほどの弱いモノであることを潜在意識では知っているので、それに言及されることを避けようとして自動反応回路の装置（アプリ）を作り上げたのである。

これらを意識するのはこれまでそして現在と未来との自分の自己肯定のシステムを否定しなければならない辛いことなので、その人の潜在意識は、上から目線を見たらそれを即座に叩くという自動反応アプリケーションを作り上げて、自分自身を見ないようにしてサバイバルして暮らそうとしている。

しかしこの世のことわり、そのようなことでは回避できない。

こうして暗く重たい心境の時空が増えてしまう。

疑 vicikicchā 　　　　　よく調べもせず不確かなことを適当に判断してしまうこと　　

具体的に３つの疑いがある。

過去・現在・未来に対する疑い　　　現象があるから成り立つ概念で、実際に「ある」とは言えない。

因果法則に対する疑い　　　　　　　条件下で原因があって一時的に結果になる。瞬間の生滅の連続でしかない。

仏道・修行方法に対する疑い　　　　梵我一如になっても無常を実感していないから生存欲が消えていない。

覚った人は無常を実感し、「生きていたい」といくら頑張っても意味がない、と分かるので、疑いが消えていく。

例えば

怠けていてもいずれ幸せがやってくるさ

自分はがんばってもどうせダメなんだ

今好き放題やっても死んだらリセットだ

どれも、真実をよく調べもせず（無視して）妄想で判断していることが分かる例である。

戒禁取（かいごんじゅ）sīlabbataparāmāsa 戒とは戒め。禁とは禁制、ルール（儀式）、取とは取著（執着）

sīla戒めbata儀式parāmāsa　徹底的に執着してしがみついている状態

間違った戒めや儀式に執着するという意味

何の根拠もなくありがたがられている儀式には意味がない。

道心　　　一度だけの瞬間

道とは、煩悩を取り除くはたらきという意味。

例えば、大根の花が咲き、実を結び、種を飛ばし、また新しい大根が生まれるが、もし種になる前に抜いてしまったら次の大根は生えてこない。

同じように、煩悩を根こそぎ取り除くのが道心であり、道心は引き抜く一瞬しか生まれないのが特徴。

編み物の結び目を外せば、後はただ糸を引っ張っただけで、すべてが解けてしまうように、煩悩を断つには何度も必要なく、一度でいい。

ブッダの説法を聞いて、大勢の人がその場で預流果に達したと経典には書かれている。出典？

瞑想実践しなくても預流果の覚りに達することができるようである。　　出典？

果心　　道心の結果の心のはたらき

果心は、道心（涅槃にいたる道）の結果の心のことなので、道心は善心、果心は異熟心という表現をする。

果心は煩悩が取り除かれた後の状態を体験するはたらきなので一瞬ではない。

例えば大根を引き抜くのは一瞬だが、引き抜いた後の状態はずっと続くように。

同じように、果心も瞑想を行うことで長く体験する事ができる。

「今まで輪廻の中で一生懸命にやってきたことを止めよう」と諦める瞬間が道心。

次の瞬間にホッとして「これもやらなくていい」と感じて成果を味あうのが果心。

何か雷が落ちたようなことになったな、と涅槃を味あう。

そして、後に客観的に観察paccavekkhaṇāすることで、自分の心に残っている煩悩を発見できる。

詳細は「宝経rātana suttam」にある。経蔵小部の第1経である小誦経Khuddaka-pāṭhaの6番目のお経。

預流果の徳を讃えており、預流果の聖なる力で、苦しみを取り除き、心を清らかにし、悪い霊を取り出す。

https://suttacentral.net/kp6/jpn/taikan

6.仙人たちが賞讃せし者は、彼の八輩即ち四双の者たちなり。彼ら善逝（ブッダ）の弟子たちは、布施供養を受くに値す。彼らに施されしものには大果あり。此は僧（サンガ）が勝宝たる由縁なり。此の真実により、幸いがあらんことを。

7.堅く決意し、ゴータマ（ブッダ）の教えに基づきよく励み、欲から離れている彼らは達すべき境地に達して、不死なる境地を体得し、その涅槃を余すところなく享受せり。此は僧（サンガ）が勝宝たる由縁なり。此の真実により、幸いがあらんことを。

8.［城の］主柱が地に立ちてあるならば、四方の風に揺らぐことはない。［四］聖諦を如実に観ぜし仙人［預流果の者］は、是の如く喩えらるると我は言う。此は僧（サンガ）が勝宝たる由縁なり。此の真実により、幸いがあらんことを。

9.深き智慧により正しく説かれたる［四］聖諦を実践する者たちはたとい（後に）大いに放逸になろうとも、八回目の［転］生を引き寄せること有らず。此は僧（サンガ）が勝宝たる由縁なり。此の真実により、幸いがあらんことを。

10.知見［四聖諦の明知］の成就と共に、以下の三つのもの（煩悩は捨て去られる。有身見、疑、あらゆる戒禁取なり。また四悪趣に陥ることを離脱し、六重罪を為すことは能わず。此は僧（サンガ）が勝宝たる由縁なり。此の真実により、幸いがあらんことを。

11.身、口、意にて悪を犯すことになりても、彼はそれを隠蔽すること能わず。知見に達した者は隠蔽すること能わずと言わるるなり。此は僧（サンガ）が勝宝たる由縁なり。此の真実により、幸いがあらんことを。

14.「古き［業］は尽き、新しき［業］は生ぜず」。再び生まるることに未練はない。種子［業］が尽きた。貪欲を根絶やしにした。彼の賢者たちは、灯明の如く寂滅す。 此は僧（サンガ）が勝宝たる由縁なり。此の真実により、幸いがあらんことを

覚りの第二段階　　　sakadāgāmin　一来果　　saki一回　　āgāmin来る

瞑想実践が必要。

煩悩は消えないが減少する。

kāmarāga欲愛と vyāpāda強烈な怒りは弱まる　　

kāmarāga 　欲愛とは低次元な欲で、美味しいものを食べたい、良い音楽を聞きたい、強烈な性欲→情欲

vyāpāda　　機嫌が悪くなるくらいではなく、怒りに駆られたり、ぶん殴りたくなるような強烈な怒り

一来果の心境は

「ラーメンは美味しいことには美味しいが、そんなに必死になって欲を追いかけるほどの大したものではない。

いただけるものをいただいて、自分の家族を養うためには頑張るが、余計なもののために悪いことをするほど大したものはこの世にはなく、くだらないことである。」

覚りの第三段階　　　anāgāmin　不還果　　　　　an否定（母音の前）　　āgāmin来る

kāmarāga欲愛と vyāpāda強烈な怒りが消える。

何よりも先にこの世の法則を理解することが大事。

正見を得て、理性を育てることがこの段階の目標である。

煩悩を人の好き勝手に消すことはできない。

欲や怒りや存在欲の煩悩を消すのは、この世の法則を理解した後の話。

まずはダンマ（仏法）を理解するところから始めなくてはならない。

気持ちの良さを追うことを止めることで欲も怒りもなくなると、

眼耳鼻舌身の世界にいても生きていたいという希望がなくなるので

「死後は人間界に決して戻らない」という意味で、不還果と名付けられている。

浄居（じょうご）とはanāgāmin不還果が再生する時に生まれる聖者だけがいる色界の梵天界のこと。　

大乗仏教の「浄土」はこの浄居から発達した概念ではなかろうか？

仮の定義　　生命と心の違い　　１つの叩き台

「いのち」　　　ダンマdhammaの普遍エネルギー

スクリュー　　　スクリューができ、そこを普遍エネルギーが通過することで、運動が起こる

本能？煩悩？　　スクリューを心が理解すると、「生きていたいという一つの目的」にみえる。

心　　　　　　　知る（体感する）機能　　　

心が生きたい気持ちを生むのではなく、スクリューの存在が生きたい目的と心が解釈する。

生命　　　　　　心があるもの

煩悩∈心　　　心の機能でスクリューを調べてみると、生きる衝動には３つの渇愛がある。

生きていなくてはならない理由

Kama taṇhā　　　 欲愛　　肉体は常に物質エネルギーレベルの刺激を欲しがるのが特徴

Bhava taṇhā 　　　存在欲　心は常に刺激を欲しがる

Vibhava taṇhā 　　破壊欲　肉体の依存の無い所に永遠があると思い、肉体を超越しようとする怒りの感情

生命体は感覚にタグをつけて3つに分けてしまうので無明である

avijjā 無明　　ありのままの現実を発見していないこと　　無知のこと

taṇhā 　　渇愛　　付着、結合、愛着

細胞の仕事は、心に入力されるデータをプラスかマイナスか中立のタグをつけることで、存在欲を支えるか、もしくは邪魔するか、中立でいるかの３つに振り分ける。

心はプラスとマイナスの2種類の色眼鏡を通して世界を知ろうとするので、ありのままに観察することができない。

すなわち、すべての生命は無明である。

cf.中立には無関心の痴、離脱の捨upekkhāの二種類がある。

もし捨upekkhāのタグであっても、それで覚ったと勘違いするのであればこれは痴である。

この瞬間は２度と再現しないという無常を深く意識して感覚する時には、sukhaなどのタグが着くので、これではサンカーラを作成することができない。

渇愛を消すのは諸行無常の体感だけ

生きていたい衝動である存在欲には終わりがない。

しかし、望む状態があるのは一瞬のことで、すぐに別のものに変化してしまうことがわかってしまったら、そんなものをどうしても欲しがることができるだろうか？

感覚している時に無常（一瞬のうちに消え去り、同じものは再現しないこと）を深く理解していればしているほど、対象物に付加される渇望もしくは嫌悪のタグが小さくなり、最終的にはsukha、dukha、中立であったとしても、nirāmisaというサンカーラを作ることができないタグに張り直される。

最終の段階　阿羅漢果　arahatta

生存欲の生きていたいという欲は簡単には消えず、「死なない限りは生きていてもいいじゃないか」というくらいに生きることへの欲は残っている。

この僅かな欲も阿羅漢になると全部消える。

阿羅漢道心ではじめて消える5つの煩悩を知ることで、初期の修行ではこれらをなくそうとしても、無理なことを学ぶ。

rūpa-rāga色貪,　色界に対する執着　　色界に行っても無常であることはかわらない　　存在欲がなくなる

arūpa-rāga無色界に対する欲　　　無色界に行っても無常であることはかわらない　全ての存在欲の消滅。

māna慢　計るという意味。自分を尺度にして他人を比較して評価する　　　　　　　　　　　

計ったり比べたりする基準である「私」が消えることで、高慢や卑下がなくなる

阿羅漢になるまでは慢があることを自覚するのが大事。

uddhacca掉挙じょうこ　混乱状態　　　慌てて動くことが幸せであるという錯覚をうむ。

２種類の心の混乱があり、予測どおりにいかない状態、もう１つは眼の前の出来事を把握できない状態に陥る。

avijjā無明　真理を知らないこと。　この煩悩が消えると完全に真理を知ることができる。　

無明が消えることを智慧という。智慧の光で無常を観る。

無常を発見する智慧が現れるのを徹底的に待つ

阿羅漢になるために修行する時は、貪瞋を捨てようなどと頑張ることはしない。

もうそれらはないので無明から離脱するだけ。

仏道は「智慧に始まり、智慧に終わる」出典？

非想非非想処地　nevasaññā-nāsaññāyatana- bhūmi

無色界第三の無所有処も対象があるということは、心のはたらき（認識）であるので、心そのものは弱いまま。

認識するという邪魔なはたらきも止めてみることから生まれるbhūmiステージである。

心に何も認識しない状態を訓練することことで禅定を作る。

このように、心があるかどうかは言えない状態になる。

あるのだけど何も認識しない、認識があるとも無いとも言えない状態。

認識する要因である「saññā（区分する原型、分別用のカゴ、パターン、概念）」があるとも、ないとも言えない状態なので、認識の核が揺らぐので、これ以上の瞑想はない。

これ以上にあるのは、「認識が止まる」ということで、これは「心のはたらきがない、すなわち「いのちがない」ことなので、生命体の存在そのものと矛盾してしまう。

矛盾しない瞑想法は、ヴィパッサナー瞑想だけ。

理由は、まだ言葉が存在する非想非非想処の次元の先は、ヴィパッサナー瞑想が「存在を捨てる」ためのメソッドで、これが、言葉も考えることも不可能な次元に導くからである。

また、非想非非想処定を作ったとしても、五自在をして欠点をチェックしなければ、成長はそこで止まり、ヴィパッサナー瞑想をすることがなくなってしまう。

滅尽定

Nirodha-samāpatti-kāle dvikkhattuṃ catutthāruppa-javanaṃ javati. Tato paraṃ nirodhaṃ phusati. Vuṭṭuhāna-kāle ca anāgāmi-phalaṃ vā arahantta-phalaṃ vā yathāraham eka-vāraṃ uppajjitvā niruddhe bhavaṅga-pāto ‘va hoti.

Sabbatthā ‘pi samāpatti-vīthiyaṃ bhavaṅga-soto viya vīthi-niyamo natthīti katvā bahūni pi labbhantī ti.

滅尽定に入るときには、第四の無色界禅定の速行心が2回速行して、それから、滅に触れる。

出定するときには、不還果心あるいは阿羅漢果心が適宜に１回生じ、滅して有分に落ちる。

禅定の心路においてはいつでも、有分の流れのように心路の法則がないので、たくさんでも得られる。

samāpatti：[fr．saṁ+ā+pad] 'attainments'，is a name for the 8 absorptions of the fine-material and immaterial spheres to which occasionally is added as 9th attainment，attainment of extinction （nirodhasamāpatti）

kāle 　　　門？　出入り口？　　

dvikkhattuṃ：adv．[dvi-khattuṃ] 二回

niyamo：Ascertainment確認，certainty； restraint，training

bahu：[adj．] much; many; plenty; abundant．（plu．） many persons

滅尽定

存在を捨てた阿羅漢が、覚りの智慧paññāを使って、サマタ瞑想をする場合は、心を止めることが可能になるので、心も体も存在しなくなり、「いる」こともなくなり、言葉にならない状態になる。

これを滅nirodhaと言うが、これは阿羅漢だけができる禅定である。

物質の次元を超えたところに滅nirodhaの次元はあるので、そこには時空が存在しない。

心のはたらきを止めることはできるのか？

阿羅漢になった者が非想非非想処定のサマーディまで訓練すれば、自分の心をきれいにストップできる。

たった一つの心路の流れが１週間かかる。

こうなると物理学の法則も適用しない。

原子ほど落ち着きのないものはないという物理学の法則が通用しないのだ。

もし原子も電子も完全にストップしたら、それを壊すことは不可能になる。

原子爆弾を使っても壊れない。なぜなら止まっているから、何の影響も受けないからである。

そういうわけで、滅尽定に入ったら、その人の身体に対して何もすることは誰にもできない。

滅尽は煩悩が消えたこと 滅尽定 nirodhasamāpatti　　　

釈尊が新たに加えた禅定　　　　nirodha滅する samāpatti定　　

非想非非想処の禅定で境地まで達したら、存在したいという煩悩もないのだから、「この波も止めてもらったらどうですか」という段階に進む。

心の波が完全に消えることで、心の機能も切れてしまう。

生きていながら、涅槃という状態を体験する。

もう身体は動かない。

自分がいる、という概念はなく、すべてが消えて、心が止まる。

すべてが消えた次の瞬間は、また自分がいる。

覚りの心は、禅定の心とは違い、ある特定の超越した感覚を感じ、煩悩が根源から消えてしまう。

このような覚りの心は、一人の生命には4回しか生まれない。

ただし阿羅漢が滅尽定をする場合に限っては何回も可能である。

覚りの瞬間と境地を語る概念

ヴィパッサナー瞑想では瞬間だけの覚りを体験できる。

長期にわたって覚りの体験したければ、禅定を修行しなければならない。

預流果になるとは、たったほんの瞬間だけ、それを体験できる。

すると、いくつかの煩悩は消えてしまう。

そのためには、心が整い、集中力も育無事が必要で、本気で煩悩を消したくなった瞬間に預流果の体験がうまれる。

それを体験すると、心の波の力は全部崩れてしまう。

メカニズムは？

涅槃とは動詞

仏教では永遠という言葉を使わず、涅槃nibbānaを使う合理的理由は、

静的な仮構の名詞を使うのではなく、動的な因果の関係で事実だけを表現するためで、

「こういう煩悩というはたらきがあるから輪廻転生する。そこで、煩悩というはたらきを消してしまう。消したら輪廻転生しない」。　

nibbāna （nir (to cease) + √vā[ vāti， blows] blowing to become extinguished）； 吹き消す

以上で語ることは終わり。

輪廻転生しなければ、言葉も概念も成り立たない。

成り立たないことについて、語り得ない。

そこで「涅槃に入ったものは永遠不滅である」「永遠はない」と言うようなことは概念化できないことであり、口から出すものではない。

始めはないが、終わりはある。阿羅漢の覚り

釈尊は「原因を根本から捨てれば、終わる」と説いた。

出典？四諦の滅諦のこと？

仏教とは因果法則を理解する教えである。

問題点　　瞑想が進まない理由

業kammaの罠から抜ける方法

業kammaとは未来に結果を生むエネルギーの塊のようなもので、この業kammaの因果法則によって、未来が決まってしまう。

そこで業kammaとうまく付き合っていく方法を考えてみる。

たとえば、絵を見ただけでは善悪はないが、それに貪瞋痴が反応してしまったら、業kammaが作られる。

その絵を「欲しい」と思ったら業はできるが、「きれいだ」と思うだけならば、過去の業の影響を受けただけにすぎない。

ヴィパッサナー瞑想で、「何か見えたら、それが「色」（形と色のある対象物）だと確認する」訓練を繰り返す。

それらの信号が「色・音・香・味・触」だと確認するだけ。

その信号を認識したのは、過去の業が原因のためである。

これだけを理解する。

これだけで終わり。

何もそこから連想しない、思考しない。

これをただ確認するだけで留まるのがクセになるまで繰返す。

こうしていれば、新しい業が作られることはないので、新しく生まれる業kammaはない。

古い業を消滅していくだけである。

これが気づきの力で、業kammaを消滅させていくメカニズムである。

しかしこれらを完璧にできるのは阿羅漢だけである。

心地よいものを見たら、８種の欲心が生まれ、悪いものを見たら２種の怒りが生まれ、ボーとしていたら２種の無知の不善心（浮つきか疑い）が生まれる

阿羅漢の真似をするのは涅槃を体験する意志であり、修行法は各自の段階において適切なものにしないと瞑想を含め生活においても前に進めなくなる。

急がば廻れ

何でも阿羅漢のマネをするのは危険だ。

akusala-citta 不善心　　12種類の貪瞋痴の煩悩が伴う心

貪根心　lobha-mūla-citta 8

瞋根心 dosa-mūla-citta 2

痴根心 moha-mūla-citta 2

貪根心とは、この日常の世界で自分が楽しんだり、受け入れたら、それらはすべて貪根心

具体的には、ケーキを受け入れるのが貪根心、笹の葉っぱを拒絶するのが瞋根心。

これらの肯定の対象を貪lobhaといい、否定の対象をdosaという。

欲心の「欲」は、一般的に使う欲とは違い、６つの器官（五感＋心）で、感じた対象を「もっと」と、求める心である貪根心のことを欲心という。

1. ワクワクしてるか、平常心か

2. 悪いと理解しているか、理解していないか

3. 意志が強いか、弱いか

２×２×２　で　８つの貪根心の種類がある

２つの瞋根心 dosa-mūla-citta

paṭigha-sampayutta　瞋恚相応のsankhāraがあるものとないもの　　　　怒りが内因

paṭighaとは、反対する、ぶつかる、否定する、拒否する、cofrontation。

認識すると同時にその対象を拒否したくなること。

paṭighaのことを仏教用語では瞋恚や怒りとよぶ。

paṭi（対して）+gha（hata （hanの過去分詞　殺した） + ta →　gha）

「対象を拒否して殺す（滅する）」　「認識した対象を消滅したくなる→拒否する」

まず、イヤだという暗い心（domanassa-sahagata憂倶）が生まれる。

domanassa　　 　du+manas+sa よくない+心+付いている

somanassa　　　 su+manas+sa　　　　良い +心+付いている

心manaの源泉である動詞は、知るmāna

入力された信号が見たくないもの、聞きたくないものなので暗い心になる。

次にそれを受け入れたら悲しみ、拒否したら怒りとなる。

心が暗くなるのは対象を拒否しているからであり、これらが悲しみと怒りの心である。

暗い人は強烈な悲しみや怒りを持っている。

心が暗い間は、悲しみと怒りを育んでいる。

これを本人は自覚できていない。

引きこもり、自殺、自傷行為、加害行為、

文句、不平、不満、身体のあちこちの痛み、

戦争、革命、

ライバル意識

「失敗した」「批判された」

の基にあるのは「怒りの心」

引き寄せ近づくモノ　　肯定　好き　　欲　

	分析	仏教訳語	内容　　　　　特徴　差異	英語
kāma		欲 愛欲，欲念	色声香味触を認識する世界 感覚を受け入れて、引き寄せる ベターを求めること　足るを知らない	the five sense-objects sense-desire　pleasure
rāga		貪，貪欲 染色，色彩	快感、好感 預流果、一来果になっても保持する	lust,greed ,attachment colour； hue； dye；
taṇhā	tan場所+hā　融合・溶接・　　 付着	愛 渇愛，愛欲	対象にこだわること、愛着 渇望や嫌悪のタグが付着する原因 苦と輪廻転生の主なる根源	attachment付着 cravingの訳は間違え
abhijjhā	abhi強い ijjha→ icca	貪欲，貪求，貪愛	欲に駆られた異常な妄想 ３つある不善意業kammaの１つ abhiレベルが高い-icchā欲求	covetousness貪欲、強欲 むやみに欲しがる 参照　jhe静的思考
lobha		貪欲	不善業の根元になる３つの１つ	greed
sukha	受vedanā	楽 渇望（VAJ）	近づくタグ　近づくという体的反応 vedanāを楽,苦,不苦不楽の3つに区分	physical pleasure craving
somanassa	su+manas+sa　　　　良い+心+付着	喜	近づくタグ　　近づくという心的反応 楽,苦,喜,憂,捨と分類した時の１つ	mental happiness
chanda	見えない矢	欲/志欲/意欲	色声香味触の信号に対する欲望 （ kāmacchando）想いへの欲は？	intention，will desire
iccha	aniccāの 対義語	願/渴望/欲望	希求を持続させる 滅、非再現、微細界、無価値を不認識	wishing，longing having desires

引き寄せるモノの発展形

sukha受vedanāで受け取るタグ→ rāga好感、煩悩になる →lobha貪欲→abhijjhā欲する異常な妄想

rāgaとlobhaの違い

rāga好感、煩悩になる →lobha貪欲

押し離れるモノ　否定　嫌い　怒り　　　

	仏教訳語	対義語	内容　特徴　差異	英語
rūpa, arūpa	色界、 無色界	kāma kāma	重力物質エネルギー 重力エネルギーがない
paṭigha	瞋恚，障碍	rāga	預流果、一来果でも保持する	repulsion反感/不快感
taṇhā	愛?	vivicca		attachment
byāpādo	瞋恚	abhijjhā kāmarāga	怒りに駆られた異常な妄想 ３つの不善意業kammaの１つ	malevolence憎悪 fury　激怒、激情
dosa	過悪、病素、瞋 憎恨	lobha	不善業の根元になる３つの１つ	hatred，anger
dukkha	苦 嫌悪（VAJ）	sukha　楽 渇望（VAJ）	受vedanāを楽、苦、不苦不楽の3種に区分した１つ　 肉体的苦しみ、痛み	physical displeasure aversion
domanassa	憂	somanassa喜	受vedanāを楽、苦、喜、憂、捨と分類した時の１つ 心的苦しみ、悲嘆、	mental unhappiness
		chanda	色声香味触に対する欲望 貪欲（ kāmacchando）
aniccā	無常	iccha	希求の持続は不可能	impermanent

押し離れるモノの発展形

dukkha受vedanāで受け取るタグ→paṭigha不快感、煩悩になる →dosa瞋恚→byāpādo怒りの異常な妄想

dosaとpaṭighaの違い

dosaは√dus「汚れる」という語根から作られており、汚れるということから、「遠ざかる」のタグがついている「汚れた暗い心」のことを指す。

cf.　「近づく」のタグがついている「汚れた暗い心」はlobha

たとえば、rāga-dosaのrāgaとdosaは対語ではなく、rāga は快感という意味で反意語はpaṭigha不快感、

dosaは怒りや憎しみで汚れたくらい状態を指すので、

rāga-dosaで「快で汚れた暗い心情」という意味になる。

煩悩の３段階　

異常者	日本語訳	一般人	日本語訳	Sotāpanna	預流
abhijjhā	駆られた貪欲	Lobha	過度な貪欲	rāga	受け入れの欲
byāpādo	駆られた怒り	dosa	過度な怒り	paṭigha	拒絶の怒り
		moha	妄想	avijjā	無明

欲とはなにか？

形声文字(谷+欠)。「左右にせまる谷の象形と谷の口の象形」

ここでは「谷の口」は「容」に通じ、「物を入れる」の意味と「人が口を開けている」象形

から、物を口に入れようとする事を意味し、そこから、「ほしい」を意味

最古の経典では、「欲望」は見えない矢、それからjappa、そして発展していった。

欲望は冒頭 5 偈では［見えない矢］と表されており、であり、Sn4-15 ではジャッパとなりその後に変化していった考えられる。

ジャッパ jappa/　私達を突き動かすもの。欲望や衝動や熱望。

後にタンハー tanhā/ 渇愛、チャンダ chanda/ 希求、イッチャiccha/ 希求、指向性、などで表される。

貪欲とんよく（巴: kāmacchando）- 五感覚器官からの信号に対する要求　→　欲望・執着

以下の英訳は間違っているのが私見

taṇhā：（lit．'thirst'）：'craving'，is the chief root of suffering，and of the ever-continuing cycle of rebirths．�WWhat，o monks，is the origin of suffering? It is that craving which gives rise to ever-fresh rebirth and，bound up with pleasure and lust，now here，now there，finds ever fresh delight．It is the sensual craving （kāma-taṇhā），the craving for existence （bhava-taṇhā），the craving for non-existence （vibhava-taṇhā）�W （D．22）

taṇhāにはtan場所+hā　融合の意味があるので、対象に付着する執着、英語ではattachmentのほうが良いのではないか？

文脈では、苦しみの根幹にある煩悩を意味するので、渇望cravingと訳すと対義語の嫌悪aversionとのセットが必要になるのでは？

しかし広義では渇望cravingと訳したほうが、アメリカ人にはわかりやすいのか？

比べずに自分の良心に従って行動する

他人の評価を気にせずに、明るく堂々している時空を作る

難関の試験や試合に受かったり勝利したら、勝ったぞ、ではなく、ただ事実を認め、

「自分には能力があったのだから、受かってよかった。他の人は残念だった」と想う。

痴根心 moha-mūla-citta は疑と掉挙

無知の「疑」　　vicikicchā-sampayutta疑相応

不確かなことを、自分で調べたり確かめたりせず、知らないのに、判定すること。

例えば、

「宗教はみんな良いことを言っている、みんな同じだ。」

「みんないろいろな意見がある。どれが本当だかわからない。」

「しきたりだから」

相手の気持やTPOを考慮せずに過剰一般化することで判定すること。

vi離れる+cikicchā治癒、智慧　　

vi+kita+cha+ā．vi分ける？強調？+kita[kṛのpp．] 飾られたる，汚されたる+cha６？+ā

uddhacca掉舉

心が安穏しておらず混乱もしくは怠惰になっており、物事をはっきり認識していない状態のこと。

浮つき、ソワソワ、ぼんやり、眠気、ウトウト

#7 upādāna　　固執

Cattāro upādānāni kāmupādānaṃ diṭṭhupādānaṃ sīlabbatupādānaṃ attavādupādānaṃ.

欲の固執、見の固執、戒禁の固執、我説の固執という4つが固執である。

upā近くに＋ādāna 掴む・取得　　近くに置いておく、という意味で対象を掴み続けている行為

軛と結びと固執の違い

軛　　　自分は自由になりたいが自分に繋げられている、　　自分から見たメカニズム

結び　　自分に結ばれている事実　　　　　　　　　　　　　客観的に見た組織的なシステム　言い訳

固執　　自分で捕まっている、わざわざ。　　　　　　　　　潜在意識を含めて、意図的に自分から

upādāna固執は「わたし」が見る幻想なので、まずはこれは幻想であることを認識しなければならない。

軛と結びからの解放は頭で理解できるが、固執から解放は「もう固執しない」と頭で理解しても捨てることができるものではなく、修行、すなわち体験による確証が必要なものである。

どのような修行なのか？　　

ヴィパッサナー瞑想による感覚に気づき続けることで、感覚の滅することを体感することなのか？

具体的には、感覚に３つのタグが付着する時に、心を穏やかにしておくことで、中立のタグが付く可能性があり、

次に、それについて詮索して感情のタグ（domanassa憂とsomanassa喜）がつかないようにする。

そして最終的には、anicca　vijjaの知識を得て、nirāmisa sukha、nirāmisa dukha、 nirāmisa upekkhaのタグを上書きすることで、サンカーラを作ることができないようにする。

(nis+āmisa); free from sensual desires, disinterested, not material ,　having no meat or prey

sāmisa：a．[sa-āmisa] 有味の，食味ある，物質的の，肉体的の、具体化

nirāmisa：[adj．] having no meat； free from sensual desires； non-material

八正道を実践している時に自分の成長が十分に早くないと感じる時や、なぜ私はsōtapannaになれないのだろうか？とか、前に進むためには私は何をしていないのだろうか？などと悩む時がある。

これらには煩悩はないので、dōmanassa vēdanāではなく、nirāmisa dukha vēdanāである。

そしてもしその感覚が中立なものであれば、それはnirāmisa upekkha vēdanāである。

日常における渇望と嫌悪から離れたために起きる感覚であり、

三相（貪瞋痴）の悪影響を理解することで、マインドは熱くならず、落ち着いて冷静な時の感覚である。

これはサティパッターナでも“ātāpi sampajāno”として強調されていることで、

自分の感覚の無常を気づき続けることで、

自分の無意識の中にある貪瞋痴を見守ることで、

マインドから熱を取り除く、という意味である。

禅定している時に感じる感覚もnirāmisa sukha vēdanāである。この時にtāpa（熱）は欠落している。

これらの感覚は他人の必要なことを手伝っている時にも起こる。

とくに metta bhāvanāの瞑想をして、無常に気づき続けている時に感じる感覚である。

kāma-upādāna

もっときれいな音を探す、もっと美味しい味を探し、自分から欲に捕まって、命を繋げようとする行為

diṭṭhi-upādāna

ここは東京だ、と言うのも邪見なのは、色声香味触の信号を基準にして「こうである」と理解すること自体が間違っているからである。

情報に捕まっていることで、無常を体感していないから。

ではどのような体感をすればいいのか？

ここは東京に似ているので東京の可能性が高い、とでも言うのであろうか？

sīlabbata-upādāna

「シーラ戒律を実践することは良いことである」という考えに本人が捕まっている状態

考えに捕まったら理性がなくなる。

理性がなくなると覚りがなくなる。

仏道の基本であるはずの戒律を実践している限りは、無常を体験しない、というトンデモナイ矛盾が起きる。

戒律は大切だということで、戒律を「実体」視してしまっているからである。

戒律の主旨から離れてしまう戒律の理解である。

attavāda-upādāna　vāda：theory；creed controversy．説、論　　　　attavāda：the theory of soul．

自我のセオリー、すなわち「私がいる」という概念に固執する

困った時は随念anussati

瞑想をしても負の旋回の中に落ち込み、進まない時がある。

そんな時には散歩、横になる、そして随念がいい。

Buddhānussati仏随念

偉大なる人物の能力を考察しているのだから、人の心を明るくしてくれる瞑想

このサマタ瞑想を続けると、ヴィパッサナー瞑想を実践しようという意欲が高まってくる。

まずは９つの徳を勉強すると、１つの徳がとりわけ気に入るようになるので、それを自分の性格に合う徳として瞑想の対象として選ぶ。

upasamānussati寂止随念

upasama：[m．] calmness； appeasement　鎮静

涅槃を対象にしてサマタ瞑想をする。

「寂静の境地は涅槃である」釈尊の言葉は俗世間の表現。　

日常経験を基礎にして「寂静」「安穏」の意味を推測して瞑想する。

推測する材料は

死別した人に対して、愛着があると心は激しく揺らぐ。

死なないというあり得ない前提で生きている。

貪瞋痴の感情で悩み苦しむ。

自分が安穏でいられるように挑戦してみる。

たまたま煩悩が働かず、慈しみの気持ちでいる時があるので、「ものごとは一時的で、無常で、消え去るものだ」という冷静な状態な時があるので、この時の様子を大事に覚えておく。

心が乱れた時には、感情が勝って安穏が消えて苦しむ状況をありのままに観る。

このような精神訓練が、寂止随念。

この訓練が、解脱に達するヴィパッサナー瞑想の準備瞑想になる。

maraṇānussati死随念

Sabbe sattā marissanti, maraṇantanhi jīvitaṃ

一切の衆生は死ぬのだ。生きることの終点は死である。

人は死なないという前提で、「幸福になる」人生設計をしている。

これが苦しみを生むという結果に終わる。

しかしこれでも諦めず、次の計画を立てて、苦しみの悪循環の中で生きる。

解決方法は一つだけで、「私は必ず死ぬ」ことを確認して、認めること。

死を避ける回路はあるが、認める回路はないので、これは死を念じることで作る必要がある。

回路が出来上がってくると「誰でも死ぬ」という前提で人生設計をするようになる。

他人の死を観て、自分もかならず同じ運命になる、自分の死に入れ替えて念じる。

「この人は亡くなって死体となっている。私も確実にこのようになる。私にも死が訪れる」と念じる。

「死という現象と出会うために、私はこの世にいるのだ」と念じる。

天国で永遠に暮らすように祈っているのは、自分がこの世に永くいられることを願って祈っている。

ヴィパッサナー瞑想で必要となる智慧を開発する予行演習になる。

欲、怒り、エゴ、嫉妬、無知などの感情が機能しない状態になることがこの瞑想の狙いである。

ヴィパッサナー瞑想が進まないのは「一切現象の滅」を観ることができないのが原因になって死に至るケースが多いが、死随念を経験していれば、この課題をパスする。

コツは「生まれた生命はかならず死ぬ。これが普遍的な事実である。誰にも止めることができない」と理解した上で随念する。

感情的に見ると逆効果になるので、理性に基づいて死随念を実践すること。

死随念によって、明るい性格で執着が薄い人間になる。

悩まない、苦しまない、怒らない、気楽に生きる人になる。

コラム

サンカーラの拡大解釈　　　　宇宙はサンカーラなのか？

普通の解釈

元型

宇宙創造では

ダンマ＝無明の意味

宇宙、サンカーラの特徴に気づく

無明は（条件が揃うと）サンカーラになる　

Avijjāpaccayā saṅkhārā,　

Paṭiccasamuppādasutta 　Saṁyutta Nikāya 12.1　縁起経　英訳　Dependent Origination

これはエネルギーからカタチが生まれ、それが苦しみの原因である、という縁起説の第一ステップである。

Avijjā＝a（否定）＋vijjā（智慧、知識）から、「叡智ではない」ことを指すので「無明」と訳されて2000年が経つ。

私から見れば「無明」は十分に素晴らしいのだが、涅槃からみれば、智慧のない満足できない状態のことを意味する。

普通の解釈では、ヒトの無知から生じる心の機能についての第一段階として理解する。

身近な深層意識の具体例でいうと

アルコール依存症者はアルコールの怖さを知らないことから、「行き詰まると飲酒する」という回路を深層意識に作ってしまっている段階のことである。

瞑想を始めた初心者は、サンカーラをヒトの心の一部だとみるが、その本質はエネルギーが偏りを持つで物質化していく回路のことであるので、サンカーラをヒトという範囲だけではなく、カミや宇宙誕生の範囲でも見てみようという試みである。

仏教でサンカーラという語句を使う時には、ヒトの行sankhāraだけではなく、「この世」にある「自動反応する生成回路」をも含んで指すことがある。

ヒトの認識システムという心の一部が「行sankhāra」だとすると、ビッグバンの後に星から生命体であるヒトが生まれたのだから、このサンカーラの元型はもともと宇宙に存在することになる。

行sankhāraという見えない自動回路を、ヒトの認識システムという限定された枠組みを取り外して、

この世のありとあらゆるカタチを産み出して製造している自動回路にしてとらえてみる。

回路という観念をヒトの心の自動反応作用だけではなく、宇宙のはじめにあった「空のエネルギー」が「型」によってすべてのカタチが生成したのだ、とメタファーで飛躍して拡張してみる。

この例えには、エネルギーが「偏り」になる、という元型が底流にある。

縁起説はこの宇宙で起きているあらゆる出来事の底流にあるエネルギー転換の生滅のプロセスを段階的に説明しているので、

あらゆることに適応して解釈することができる。

このステップを宇宙創造の中で理解すると、

エネルギーの塊が、同じ密度で拡散するのではなく、偏りを持つことで密度の高いところと低いところが生じ、密度の高いところからはガスが生じ、そこから星が生まれ、地球が生まれ、生命体が生まれた、という話の中で「偏り」を持つステップに相当する。

エネルギーしかないので無に見えるものから有が生じるプロセスの第一段階である。

エネルギーの塊が「時空と膨張する方向性」に偏りを作ってしまったことで、後に物質が誕生することになる。

この宇宙の物質は始めの「偏り」によって成り立ったという仮説をたててみる。

宇宙学でいう、ビッグバン38万年後の宇宙の晴れ上がりの時に見られる「偏り」がダークマター、そしてそれらが素粒子になっていったという話である。

「カミは細部に宿る　God is in the details」ということわざがある。

このカミをパーリ語に訳せば、ダンマDannma、すなわち宇宙（自然、この世）の法則、具体的にいうと宇宙の普遍エネルギーのことである。

この世から涅槃を見るのと、涅槃からこの世を見るのでは評価が180度変わるものがある。

この世ではdhammaは大切な宇宙法則であるが、釈尊がdhammaは涅槃の彼岸に渡る時の筏のように大切なものだが、渡ってからは背負い続けるものではなく捨てるものだ、と語った。

Alagaddūpamasutta Majjhima Nikāya 22 蛇喩経 英訳　The Simile of the Viper　

釈尊が説いたことは涅槃に至ることで、その一歩手前が無明であるので、その無明とは筏であるdhammaのことであると解釈することができる。

普遍エネルギー＝Gods＝dhamma＝宇宙法則はエネルギーが0の涅槃から見れば無明

カタチのない宇宙のエネルギーの塊（無明）がカタチのエネルギーになったのは、偏りという見えない型によってである、という喩えだ。

「空」は「色」になる。そして「型」こそが「空」から「色」が生まれた作用点であると考えてみる。

この世では「空」エネルギーが数々の型によってカタチになり、それによってこの世が成り立っているとする。

これは型によって物質という空間的カタチになっただけではなく、型によって時という時間的カタチになる。

一つであった時空を型という自動回路が時間と空間に分別しているというメタファーである。

過去における意思・行動の結果が、目の前に起こっている現実と結びついている、と考えるのは、

過去に「空」エネルギーがサンカラーラの型（偏り）に変換したことで、自動的に反応する原因となって、眼の前の現実に結びついている、という解釈である。

このカタチを作り出す型が、回路のことであり、機械的自動反応のことであり、カルマの原因であり、サンカーラのことである、と次々に抽象度があげていく。

すると、この自動生成回路という「偏り」を通過しなければ、時間も空間も生まれずに、何事も限定されずにどのようにもなれる状態のまま（「空」）でいられる。

またこのシステムのことを理解して、これが作動するたびにそのことに気づいていれば、

自動生成回路が反応することで時間と空間が生まれ、その中でカタチができたとしても、それに執着しなければならない必然性が減少もしくは消滅する。

またこの世のカタチだけではなく、時間と空間を産み出した回路もいつかは、また消え去っていくモノであることには違いがない。

いかなる回路であっても必ず消滅（崩壊）するのが「この世」、そしてその一部であるサンカーラの特徴である。

ただ気づいているだけ覚る理由

いかなる回路であっても必ず消滅（崩壊）するのが「この世」、

それを作っているサンカーラの特徴である。

釈尊はこう説いた

Sabbe saṅkhārā aniccā　　　Dhammapada 20　Maggavaggo 277　法句経　英訳 the Path

すべてのサンカーラは無常である。

わからないことを妄想し続けるのではなく、

サンカラーラの特徴を知り、ただ静かに優しく見守るだけで、各自の心の中にあるサンカーラ（機械的自動反応）という回路は弱体化し、ついには消滅する、これが覚りへの道だと仏教が説くことに不思議を感じるかもしれない。

Mahāsatipaṭṭhāna sutta　Dīgha Nikāya 22　大念処経　

英訳The Long Discourse about the Ways of Attending to Mindfulness

見守るとは、深層意識で勝手に作用している機械的反応に表層意識が気づき、そのプロセスを見る、ということである。

すると、ただこれだけのことで、意識体の認識の限界を知ることができる。

こうして、自分の心の変化に気づき続けることで、これまでの解決策とは別の選択肢がある可能性も理解できるようになる。

なぜならばこれまでの多くの解決策は、深層意識に作成された回路に操作されたものが多いことがわかるからである。

Dhammapada 154　　創造主よ、私のために家を再び建てることはもうない、ついに渇望の終わりに達した。

カタチに近づいたり離れたりする必然性（快・不快、好き・嫌いのタグ）の理由がわかれば、それらにタグをつける必要性やその馬鹿らしさもわかるので、無闇にアプリを作ってプログラム任せにすることが減少し、しまいにはアプリを使うことがなくなっていくこともある。

このような状態が続くと、新たな自動回路を無闇に生成することにも慎重になる。

その時に穏やかな心境でこれを見守る、ということは、過去につくった自動回路に快・不快の濃度が薄いタグに、もしくはどちらでもないタグの上書きするということになる。

生命はサバイバルのために、入力信号にすぐに反応する回路を作り続けることで、進化し続けてきた。

これが神経管が脳に発達した原動力の１つである。

生命にかかわるTPOの時には素早く近寄ったり、遠ざかったりすることが必要なため、血圧を上げたり、呼吸数を増加させたりして、環境に反応しやすいように体が変化する。

生命体はこのような時に条件反射の回路が作成されるようにプログラミングされており、それは膝蓋腱反射のような体レベルの条件反射だけではなく、表層意識の感覚のパターン、そして深層意識の感情や思考のパターンにも及ぶ。

しかし、TPOによってはそれらの回路の中に生命に逆にダメージを与えるものがあれば、その回路は弱体化もしくは上書きするのがいい。

そしてこの回路の上書きや消滅が、回路に操作されて苦しみから離脱方法であることを先達たちは発見した。

この時に鍵となるのが、涅槃から見た「この世」の特徴である。

それは「生命体が望むような状況は長期に渡っては継続することはなく、この世の無常の現象は生命体に苦しみを感じさせ、そこから離脱しようとしても、普遍エネルギーによって生かされている生命体自身の力ではどうすることもできない」

この「無常」という当たり前でありながら深淵な摂理をもって、目の前の色蘊（イメージのrūpaエネルギー）に接すると、心は穏やかな状態なままなので、自動反応回路は作成されなくなり、過去に作った自動反応回路を使う頻度も減り、自他の現象に対する執着心が減少もしくは弱体化したものに体験するたびに上書きされることになる。

そうしてこのような体験が何度か繰り返されることによって、自動的に反応していたものが反応しないという体験が上書きされることで、自動反応回路がもう自動ではなく、ただの１つの選択肢になってしまう。

また、「生命体の法則」では、使われないモノは徐々に退化するので、最終的には、回路自体が消滅していく。

執着心は、潜在意識の内に自動的に湧き上がってくる渇愛・嫌悪・妄想によって生成される。

これは受蘊によって感覚の瞬間に付加される快・不快のタグによってできた信号が想蘊によって区別化され、これを基にして自動回路である行sankhāraが生成されるからである。

そこでこの自動回路が作用していることに気づき続けていることとは、「わたし」という価値基準と自動回路が同化している現状から離脱することになる。

自動回路を対象として観る、ということは、「わたし」と自動回路は分別しているということなので、この２つはもうすでに同化しておらずに距離をもって付き合うことになり、このような関係になることで、自動回路はもう自動ではなく単なる回路になっている。

自動回路の作用に気づき続けているということはもう潜在意識の状態ではなく、表層意識の内に行われていることなので、回路に操られているのではなく、回路の仕組みをただ見守るということになる。

回路は選択肢の１つのになり、もう自動回路ではなくなっているということである。

機械的に操られて支配されるのではなく、自由でいられるためには、自動回路の存在に気づくことだけで、自動回路の支配から離脱していることになる、というのはこのようなメカニズムがあるためである。

Sabbe saṅkhārā aniccā　　　すべてのサンカーラは崩壊する　　　　　　Dhammapada, XX. 5(277)

この一文は、この世のカタチだけではなく、時間と空間を産み出した回路もいつかは、消え去っていき、時空のないところに回帰し、そこからまた新たな展開がある、ことを暗示している。

The Buddha and His Teachings

by Narada Thera | 1988 | 145,972 words

This book is an attempt to present the life and teachings of the Buddha , made by a member of the Order of the Sangha. The first part of the book deals with the Life of the Buddha, the second with the Dhamma, the Pāli term for His Doctrine. Used as reference are: Pāli Texts, commentaries, and traditions prevailing in Buddhist countries, especiall...

Chapter XXXVIII - The Way to Nibbāna (III) < Previous　Next >

Transient are all conditioned things,
Sorrowful are all conditioned things,
Soulless are all conditioned and non-conditioned things.

—Dhp 277-279

INSIGHT (VIPASSANĀ)

When the jhānas are developed by temporarily inhibiting the hindrances (nīvaraṇa) the mind is so purified that it resembles a polished mirror, where everything is clearly reflected in true perspective. Still there is not complete freedom from unwholesome thoughts, for by concentration the evil tendencies are only temporarily inhibited. They may rise to the surface at quite unexpected moments.

Discipline regulates words and deeds; concentration controls the mind; but it is insight (paññā), the third and the final stage, that enables the aspirant to sainthood to eradicate wholly the defilements inhibited by samādhi.

At the outset he cultivates 'purity of vision' (diṭṭhi-visuddhi) ^[1] in order to see things as they truly are. With one-pointed mind he analyses and examines this so-called being. This searching examination shows what he has called personality, to be merely a complex compound of mind and matter which are in a state of constant flux.

Having thus gained a correct view of the real nature of this so-called being, freed from the false notion of a permanent soul, he searches for the causes of this "I" personality. He realises that there is nothing in the world but is conditioned by some cause or causes, past or present, and that his present existence is due to past ignorance (avijjā), craving (taṇhā) grasping (upādāna), kamma, and physical food of the present life. On account of these five causes this so-called being has arisen, and as past causes have conditioned the present, so the present will condition the future. Meditating thus, he transcends all doubts with regard to past, present and future. ^[2]

Thereupon he contemplates the truth that all conditioned things are transient (anicca), subject to suffering (dukkha), and devoid of an immortal soul (anattā). Wherever he turns his eyes he sees naught but these three characteristics standing out in bold relief. He realises that life is a mere flux conditioned by internal and external causes. Nowhere does he find any genuine happiness, for everything is fleeting.

As he thus contemplates the real nature of life and is absorbed in meditation, a day comes when, to his surprise, he witnesses an aura (obhāsa) emitted by his body. He experiences an unprecedented pleasure, happiness, and quietude. He becomes even-minded, religious fervour increases, mindfulness becomes clear and insight keen. Mistaking this advanced state of moral progress for sainthood, chiefly owing to the presence of the aura, he develops a liking for this mental state. Soon the realisation comes that these new developments are impediments to moral progress, and he cultivates the purity of knowledge with regard to the path and not-path. ^[3]

Perceiving the right path, he resumes his meditation on the arising (udaya ñāṇa) and passing away (vaya ñāṇa) of all conditioned things. Of these two states the latter becomes more impressed on his mind since change is more conspicuous than becoming. Therefore he directs his attention to contemplation of the dissolution of things (bhaṇga ñāṇa). He perceives that both mind and matter which constitute this so-called being are in a state of constant flux, not remaining for two consecutive moments the same. To him then comes the knowledge that all dissolving things are fearful (bhaya ñāṇa). The whole world appears to him as a pit of burning embers—a source of danger. Subsequently he reflects on the wretchedness and vanity (ādīnava ñāṇa) of the fearful and deluded world, and gets a feeling of disgust (idā ñāṇa) followed by a strong will for deliverance from it (muñcitukamyatā ñāṇa).

With this object in view, he resumes his meditations on the three characteristics of transiency, sorrow, and soullessness (paṭisaṇkhā ñāṇa) and thereafter develops complete equanimity towards all conditioned things—having neither attachment nor aversion for any worldly object (upekkhā ñāṇa). ^[4]

Reaching this point of spiritual culture, he chooses one of the three characteristics for his object of special endeavour and intently cultivates insight in that particular direction until the glorious day when he first realises Nibbāna, ^[5] his ultimate goal.

"As the traveller by night sees the landscape around him by a flash of lightning and the picture so obtained swims long thereafter before his dazzled eyes, so the individual seeker, by the flashing light of insight, glimpses Nibbāna with such clearness that the after-picture never more fades from his mind." ^[6]

When the spiritual pilgrim realises Nibbāna for the first time, he is called a sotāpanna, one who has entered the stream that leads to Nibbāna for the first time.

The stream represents the noble Eightfold Path.

A stream-winner is no more a worldling (puthujjana), but an ariya (noble one).

On attaining this first stage of sainthood, he eradicates the following three fetters (saṃyojana) that bind him to existence:

1. Sakkāya-diṭṭhi (sati + kāye + diṭṭhi)—literally, view, when a group or compound exists. Here kāya refers to the five aggregates of matter—feeling, perception, mental states, and consciousness. The view that there exists an unchanging entity, a permanent soul, when there is a complex-compound of psycho-physical aggregates, is termed sakkāyadiṭṭhi. The Dhammasaṇgaṇī enumerates twenty kinds of such soul-theories. ^[7] Sakkāya-diṭṭhi is usually rendered as self-illusion, theory of individuality, or illusion of individualism.

2. Vicikicchā—doubts. They are doubts about (i) the Buddha, (ii) the Dhamma, (iii) the Sangha, (iv) the disciplinary rules (sikkhā), (v) the past, (vi) the future, (vii) both the past and the future, and (viii) dependent origination (paṭicca samuppāda).

3. Sīlabbataparāmāsa—adherence to (wrongful) rites and ceremonies.

The Dhammasaṇgaṇī explains it thus: "it is the theory held by ascetics and brahmins outside this doctrine that purification is obtained by rules of moral conduct, or by rites, or by both rules of moral conduct and rites." ^[8]

For the eradication of the remaining seven fetters a sotāpanna is reborn seven times at the most. He gains implicit confidence in the Buddha, the Dhamma, and the Sangha. He would not for any reason violate any of the five precepts. He is not subject to rebirth in states of woe as he is destined to enlightenment.

With fresh courage as a result of this distant glimpse of Nibbāna, the noble pilgrim makes a rapid progress, and perfecting his insight becomes a sakadāgāmi (once-returner), the second stage of sainthood, by attenuating two other fetters—namely, sense-desires (kāmatāga) and ill will (paigha).

Now he is called a once-returner because he is born in the human realm only once, should he not attain arahantship in that birth itself. It is interesting to note that the ariya saint who has attained the second stage of sainthood can only weaken these two powerful fetters with which he is bound from a beginningless past. At times, though to a slight extent, he may harbour thoughts of lust and anger.

It is by attaining the third stage of sainthood, that of the anāgāmi (never-returner), that he completely eradicates those two fetters. Thereafter he neither returns to this world nor is he born in the celestial realms, since he has rooted out the desire for sensual gratification. After death he is reborn in the pure abodes (suddhāvāsa), an environment reserved for anāgāmis. There he attains arahantship and lives till the end of his life.

When a layman becomes an anāgāmi, he leads a celibate life.

The anāgāmi saint now makes his final advance and destroying the remaining five fetters—namely, attachment to realms of form (rūpatāga), attachment to formless realms (arūparāga), pride (māna), restlessness (uddhacca), and ignorance (avijjā)—attains arahantship, the final stage of sainthood.

Stream-winners, once-returners, never-returners are called sekhas because they have yet to undergo a training. arahants are called asekhas (adepts) because they no more undergo any training.

An arahant, literally, "worthy one", is not subject to rebirth because he does not accumulate fresh kammic activities. The seeds of his reproduction have all been destroyed.

The arahant realises that what was to be accomplished has been done, a heavy burden of sorrow has finally been relinquished, and all forms of craving and all shades of ignorance are totally annihilated. The happy pilgrim now stands on heights more than celestial, far removed from uncontrolled passions and the defilements of the world, experiencing the unutterable bliss of Nibbāna.

Rebirth can no longer affect him since no more reproductive seeds are formed by fresh kammic activities.

Though an arahant he is not wholly free from physical suffering, as this experience of the bliss of deliverance is only intermittent nor has he yet cast off his material body.

An arahant is called an asekha, one who does not undergo training, as he has lived the holy life and has accomplished his object. The other saints from the sotāpatti stage to the arahant path stage are called sekhas because they still undergo training.

It may be mentioned in this connection that anāgāmis and arahants who have developed the rūpa and arūpa jhānas could experience the nibbānic bliss uninterruptedly for as long as seven days even in this life. This, in Pali, is known as nirodha-samāpatti. ^[9] An ariya, in this state, is wholly free from pain, and his mental activities are all suspended. His stream of consciousness temporarily ceases to flow.

With regard to the difference between one who has attained nirodha-samāpatti and a dead man, the Visuddhimagga states: "In the corpse, not only are the plastic forces of the body (i.e., respiration), speech and mind stilled and quiescent, but also vitality is exhausted, heat is quenched, and the faculties of sense broken up, whereas in the bhikkhu in ecstasy vitality persists, heart abides, and the faculties are clear, although respiration, observation, and perception are stilled and quiescent. ^[10]

According to Buddhism, in conventional terms, this is the highest form of bliss possible in this life.

WHY DOES AN ARAHANT CONTINUE TO LIVE WHEN HE HAS ALREADY ATTAINED NIBBĀNA?

It is because the kammic force which produced his birth is still not spent. To quote Schopenhauer, it is like the potter's wheel from which the hand of the potter has been lifted, or, to cite a better illustration from our own books—an arahant is like a branch that is severed from the tree. It puts forth no more fresh leaves, flowers and fruits, as it is no longer supported by the sap of the tree.

Those which already existed however last till the death of that particular branch.

The arahant lives out his life span adding no more fresh kamma to his store, and utterly indifferent to death.

Like Venerable Sāriputta he would say:

Not fain am I to die nor yet to live.
I shall lay down this mortal frame anon
With mind alert, with consciousness controlled.
With thought of death I dally not, nor yet
Delight in living. I await the hour
Like any hireling who hath done his task. ^[11]

WHAT HAPPENS TO THE ARAHANT AFTER HIS PASSING AWAY?

As a flame blown to and fro by the wind goes out and cannot be registered, so says the Buddha, an arahant, set free from mind and matter, has disappeared and cannot be registered.

Has such an arahant then merely disappeared, or does he indeed no longer exist?

For him who has disappeared, states the Sutta Nipāta, there exists no form by which they could say, 'He is'. When all conditions are cut off, all matter for discussion is also cut off.

The Udāna explains this intricate point thus:

"As the fiery sparks from a forge
are one by one extinguished,
And no one knows where they have gone
So it is with those who have attained
to complete emancipation,
Who have crossed the flood of desire,
Who have entered the calm delight,
of those no trace remains." ^[12]

The Aggivacchagotta Sutta (MN 72) also relates an interesting discussion between the Buddha and Vacchagotta concerning this very question.

Vacchagotta, a wandering ascetic, approached the Buddha and questioned, "But, Gotama, where is the bhikkhu who is delivered of mind reborn?"

He was of course referring to the arahant. The Buddha replied:

"Vaccha, to say that he is reborn would not fit the case."

"Then, Gotama, he is not reborn."

"Vaccha, to say that he is not reborn would not fit the case."

"Then, Gotama, he is both reborn and not reborn."

"Vaccha, to say that he is both reborn and not reborn would not fit the case."

"Then, Gotama, he is neither reborn nor not reborn."

Vaccha, to say that he is neither reborn nor not reborn would not fit the case."

Vaccha was baffled on hearing these seemingly inconsistent answers, and, in his confusion, exclaimed:

"Gotama, I am at a loss to think in this matter, and I have become greatly confused."

"Enough, O Vaccha. Be not at a loss to think in this matter, and be not greatly confused. Profound, O Vaccha, is this doctrine, recondite and difficult of comprehension, good, excellent, and not to be reached by mere reasoning, subtle and intelligible only to the wise and it is a hard doctrine for you to learn, who belong to another sect, to another faith, to another persuasion, to another discipline, and who sit at the feet of another teacher. Therefore, O Vaccha, I shall now question you, and do you make answer as may seem to you good. What think you, Vaccha? Suppose a fire were to burn in front of you, would you be aware that fire was burning in front of you?"

"Gotama, if a fire were to burn in front of me, I should be aware that a fire was burning in front of me."

"But suppose, Vaccha, someone were to ask you: 'On what does this fire that is burning in front of you depend?' What would you answer, Vaccha?"

"I would answer, O Gotama, 'It is on fuel of grass and wood that this fire burning in front of me depends'."

"But Vaccha, if the fire in front of you were to become extinct, would you be aware that the fire in front of you had become extinct?"

"Gotama, if the fire in front of me were to become extinct, I should be aware that the fire in front of me had become extinct."

"But, Vacca, if someone were to ask you—'In what direction has that fire gone, East or West, North or South?' What would you say, Vaccha?"

"The question would not fit the case, Gotama, for the fire depended on fuel of grass and wood, and when that fuel has all gone, and it can get no other, being thus without nutriment, it is said to be extinct."

"In exactly the same way, Vaccha, all forms, sensations, perceptions, mental activities, and consciousness have been abandoned, uprooted, made like a palmyra stump, become extinct, and not liable to spring up in the future.

"The saint, O Vaccha, who has been released from what are styled the five aggregates, is deep, immeasurable like the mighty ocean. To say that he is reborn would not fit the case. To say that he is not reborn would not fit the case. To say that he is neither reborn nor not reborn would not fit the case."

One cannot say that the arahant is reborn as all passions that condition rebirth are eradicated, nor can one say that the arahant is annihilated, for there is nothing to annihilate.

Robert Oppenheimer, a scientist, writes:

If we ask, for instance, whether the position of the electron remains the same, we must say 'no', if we ask whether the electron's position changes with time, we must say 'no'; if we ask whether it is in motion, we must say 'no.'

The Buddha has given such answers when interrogated as to the condition of man's self after death. ^[13] But they are not familiar answers from the tradition of the 17th and 18th century science."

Nibbāna, it may safely be concluded, is obtained by the complete cessation of the defilements (kilesa), but the real nature of this supreme state (dhamma) cannot be expressed in words.

From a metaphysical standpoint, Nibbāna is complete deliverance from suffering. From a psychological standpoint, Nibbāna is the eradication of egoism. From an ethical standpoint, Nibbāna is the destruction of lust, hatred and ignorance.

FOOTNOTES AND REFERENCES:

[1]:The third stage of the path of purity

[2]:Kaṅkhāvitaraṇavisuddhi, the fourth stage of the path of purity.

[3]:Maggāmaggañāṇadassanavisuddhi, the fifth stage of the path of purity.

[4]:These nine kinds of insight—namely, udaya-, vaya-, bhaṅga-, bhaya-, ādīnava-, idā-, muñcitukamyatā-, patisaṅkhā-, and upekkhā-ñāṇa—are collectively termed paṭipadāñāṇadassanavisuddhi, purity of vision as regards knowledge of progress, and are the sixth stage of the path of purity.

[5]:Insight found in this supramundane path consciousness is known as mānadassanavisuddhi—purity of vision which is knowledge, the seventh member of the path of purity.

[6]:Dr. Dahlke.

[7]:See Dhammasaṅgaṇī Translation, p. 259.

[8]:Section 1005.

[9]:Literally, 'attainment to cessation'. See Bodhi, Ed., A Comprehensive Manual of Abhidhamma, pp. 178, 363 ff.

[10]:The Path of Purity, part ii, p. 872.

[11]:Psalms of the Brethren. p. 346.

[12]:See Woodward, Verses of Uplift, p. 114.

[13]:Evidently the writer is referring to the state of an arahant after death.

現代の文献

アルボムッレ・スマナサーラ『自分を変える気づきの瞑想法』　サンガ、2011年

バンテ・ヘーネポラ・グナラタナ『マインドフルネス――気づきの瞑想』　サンガ、2012年

ミャンマー関係者によるもの

天野和公『ミャンマーで尼になりました』　イースト・プレス、2013年

ウィリアム・ハート 『ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門―豊かな人生の技法』（春秋社、1999年） ISBN 978-4393132845

マハーシ長老 『ミャンマーの瞑想――ヴィパッサナーの観法』　アルマット、2011年 ISBN 9784877315931

井上ウィマラ『呼吸による気づきの教え―パーリ原典「アーナーパーナサティ・スッタ」詳解』 (佼成出版社、 2005年)　ISBN 978-4333021697

地橋秀雄 『ブッダの瞑想法――ヴィパッサナー瞑想の理論と実践』（春秋社、2006年）　ISBN 978-4393710579

山下良道『青空としてのわたし』　幻冬舎、2014年

藤田一照・山下良道・永井均『〈仏教3.0〉を哲学する』　春秋社、2016年

タイ関係者によるもの

アーチャン・チャー『手放す生き方――タイの森の僧侶に学ぶ「気づき」の瞑想実践』　サンガ、サンガ文庫、2012年

ラリー・ローゼンバーグ 『呼吸による癒し―実践ヴィパッサナー瞑想』（春秋社、2001年） ISBN 978-4393364062[注釈 5]

プラユキ・ナラテボー『「気づきの瞑想」を生きる――タイで出家した日本人僧の物語』　佼成出版社、2009年

カンポン・トーンブンヌム『「気づきの瞑想」で得た苦しまない生き方』　佼成出版社、2007年

心理学者・医療者・哲学者らによる著作

ジョン・カバット・ジン『マインドフルネスストレス低減法』　北大路書房、2007年

マーク・エプスタイン『ブッダのサイコセラピー――心理療法と“空”の出会い』　春秋社、2009年

リック・ハンソン『脳を鍛えてブッダになる52の方法――ハーバード大学神経心理学者が教えるブッダの智恵をもたらす脳トレーニング』　サンガ、2014年

永井均・香山リカ　「特別対談　ヴィパッサナー瞑想を哲学する」『サンガジャパン Vol.17』、サンガ、2014年5月

永井均『存在と時間　哲学探求1』　文藝春秋、2016年3月、pp.100-106

その他

小池龍之介『「自分」を浄化する坐禅入門』　PHP研究所、PHP文庫、2014年

島岩・坂田貞二 編 『聖者たちのインド』 春秋社、2000年

天使の槍　　聖人アヴィラのテレサが1565年に記述した

「私は左側のすぐ近くに、肉体を持った天使の姿を見た。それを見るのに慣れておらず、非常に稀に・・・

その天使は大きくはなく、背が低くて、最高に美しかった―――最上位の天使であるかのように顔が燃えていた。手に長い金の槍を持っていて、鉄製の先端が小さい炎のように見えた。その槍をときおり私の心臓や腸に突き刺した。そして槍と一緒に内臓も引き抜くと、私は神の大きな愛で燃えていた」

今日のところまでの筆者の解釈は、

天使とはまだ成長途中の内なる自己意識と理念

燃えているのはクリスタルな魂、

長い槍とは側頭葉の刺激、

小さい炎とは過剰な電気信号、

心臓や腸とは中間意識、深層意識

引き抜くとは共鳴

神の大きな愛とは自我の消滅による内なる神エマニエルとの合一感。

都市文明社会が始まる前は、先述の宇宙人に誘拐されるのでは、このような世界観だったのではないだろうか？

これに類似した体験は、ヴィパッサナー瞑想の最中に体の流れの悪いところを「気づいて寄り添う」のではなく、その箇所を「見詰め」続けた時にしたことがある。

S.N. Goenka 実践における仏陀ダンマの本質

アニチャ・ドゥッカ・アナッタは仏陀の教えの中で３つの本質的要素です。

アニチャを本当に知ったならば、その結果ドゥッカを知り、また究極の真理としてアナッタを知ることになるでしょう。この３つを共に理解するのには、時間がかかります。アニチャは実践によって最初に体験し理解されるべき必須要素です。単に仏教の本や仏陀ダンマについての本を読んで得た学問的知識だけでは、本当のアニチャを理解するのに十分ではありません。というのも実践的側面が欠けているからです。自分自身の内で常に起こ

っている変化の過程を、アニチャの本質として理解し体験することによってのみ、仏陀の言う方法でアニチャを理解することができるのです。このアニチャの理解は、仏陀の時代と同様、仏教の学問的知識の全くない人々によっても発展させることができます。

アニチャを理解するためには、厳密かつ勤勉に八正道に従わなければなりません。八正道はシーラ・サマーディ・パンニャという３つの段階に分かれます。

シーラつまり道徳的な生活は、心を一点集中させるサマーディを得るための基礎です。

またサマーディが申し分のない時に初めてパンニャを発展させることができるのです。従ってシーラとサマーディは、パンニャを得るための必要前提条件と言えます。パンニャとはヴィパッサナーの実践を通して、アニチャ・ドゥッカ・アナッタを理解するということを意味します。

仏陀が現れようと現れまいと、シーラとサマーディの実践は人間世界に存在します。実際シーラとサマーディはあらゆる宗教に共通の特徴です。しかし、これらは苦の消滅という目的達成のための手段ではありません。

「苦の消滅」を求めているうちに、シッダッタ王子はこのことを発見し、苦労を重ねて苦の消滅へ導く道を見いだす努力をしました。６年間休みなく修行を続けて、その道を見いだし、完全に悟りを開き、その後神々や人々に苦の消滅へ向かう道に従うよう教えを説いたのです。

これに関して、私は次のことを説明したいと思います。行為・言動・思考のどれによるものであれ、あらゆる活動は活動の力、つまりサンカーラ（またはカンマ）を後に残します。サンカーラは、その活動がよいものであるか悪いものであるかによって、言うなれば個人の貸方勘定、又は借方勘定に行きます。従ってサンカーラの蓄積は誰にでもあり、それが苦と死を伴う生命維持のエネルギーの供給源となるのです。そしてアニチャ・ドゥッ

カ・アナッタの理解のために本来備わっている力を発展させることによって、自分の口座に蓄積されたサンカーラを取り除くことができるのです。この過程はアニチャの真の理解によって始まります。その間新しい活動による更なる蓄積と、生命を支えるエネルギーの供給の減少とが、時間毎にそして日毎に同時に行われています。従って人の持つ全てのサンカーラを取り除く作業は、一生涯或いはそれ以上の生涯に渡って行われることになりま

す。全てのサンカーラを除去した人は苦の消滅に到ります。何故ならその時にはどんな形の生命体にせよ、生命維持に必要なエネルギーを供給するサンカーラがもはや残っていないからです。仏陀やアラハットは、その生命が終わると苦の消滅に達し、その時パリ・ニッバーナの状態に入ります。今日ヴィパッサナー・メディテーションを行っている私達にとっては、アニチャを十分に理解し、アリヤ−ソターパティの段階に達することで十分だ

と言えるでしょう。ソターパティに達した人は苦の消滅までに７回以上生命を得ることはありません。

ドゥッカとアナッタの理解への扉を開き、その結果苦の消滅へと導くことになるこのアニチャは、仏陀を通してのみ、或いは仏陀の死後は彼の教えを通してのみ遭遇することができます。但し、それも八正道や悟りの３７要素（ボディ・パッキヤ）に関する事柄が損なわれずに存在し、求める人が手にすることができる限りにおいてです。

ヴィパッサナー・メディテーションを上達させるためには、実習者はできる限り連続的にアニチャを体験し続けなければなりません。仏陀の僧侶達へのアドバイスは、座っているにせよ、立っているにせよ、歩いているにせよ、横たわっているにせよ、あらゆる姿勢でアニチャ・ドゥッカ・アナッタを自覚し続けるように努力しなさい、ということでした。

このアニチャ・ドゥッカ・アナッタの連続的自覚は成功の秘訣と言えます。仏陀が息を引き取りニッバーナの状態に入る直前におっしゃった言葉は、次の通りです。

崩壊、或いはアニチャはあらゆる構成された事物にもともと備わっています。

勤勉に自力で救済の道を歩みなさい。

ディガニカーヤ・スッタ（Digha nikaya Sutta）16

実際これは仏陀の４５年間の全ての教えの真髄と言えます。もし全ての構成された事物に備わっているアニチャを留意し続けるならば、やがて必ずや目標に到達することができるでしょう。

アニチャの理解を深めるうちに、「自然の真の姿」に対する洞察力がますます卓越したものになります。そうするほどに、最終的にはアニチャ・ドゥッカ・アナッタという３つの本質に対して、どんな疑いも持たなくなるでしょう。そしてその時初めて、目に見える目標に向かって前進することができるのです。

今やアニチャが第一の本質的要素だと理解したのですから、アニチャとは何かを非常に明確に、そして出来るだけ深く理解しようと努めるべきです。そうすることで、実践や討論の中で混乱することもなくなるでしょう。

アニチャの真の意味は「非恒常性」または「崩壊」で、生物無生物にかかわらず、宇宙に存在する全てのものに元来備わっている非恒常性、崩壊という性質のことです。

今日の世代の人達に、私の説明を分かりやすくするために、注意を向けて頂きたいことがあります。一つはアイザック・アシモフ著『原子の内幕 − 百万人の核物理学入門』の「原子の内容」の最初の文章、そして１５９ページで人間などの生物の体内のあらゆる部分で、同時に起こっている化学反応について述べている箇所です。

これらの文章は、ものはどんな異なったものであれ全て「原子」と呼ばれる小さな粒子からできている、という見解をはっきり認識するのに十分です。この原子は、現れては消滅或いは変化する状態にあるということが、科学によって証明されています。従って構成された事物は全て変化し崩壊、つまりアニチャの影響下にあるという仏陀の概念を受け入れるべきです。

しかし仏陀はアニチャの理論を詳しく説明するために、物質を作る作用から説明を始めました。仏陀の知る物質とは今日の科学が発見した原子より、もっと小さなものです。仏陀は弟子達にこう教えました。宇宙に存在するものは、生物であれ無生物であれ、全てカラーパ（原子よりもっと小さなもの）からできており、その１つ１つは生じると同時に消滅していると説きました。カラーパはパタヴィー（固体）、アーポ（液体）、テジョ（熱）、ヴァーヨ（動き）、ヴァンニャ（色）、ガンダ（匂い）、ラサ（味）、オジャー（栄養）という８つの自然要素からなる集合体です。初めの４要素はカラーパの中で優位を占める物質的特性と呼ばれ、後の４要素は前者の４つの要素に依存し、それから生じる単なる付加物です。カラーパは物質界において最も微小の粒子で、今日の科学の領域を越えるものです。

この８つの自然要素（これらは単に作用の特質を持っているだけです）が一緒になって初めて、カラーパという物質界で最も小さな物質が出来ます。言い換えれば、これらの作用を起こす８つの自然要素の一瞬の共存が、その瞬間に、ある集合体を作り、仏教ではその集合体をカラーパと呼んでいるのです。カラーパの大きさは夏のインドで四輪馬車の車輪が巻き上げるほこりの粒子の約 46656 分の 1 です。カラーパの生存期間はほんの一瞬で、人間がまばたきをする間に、一兆ものカラーパが生存を繰り返します。これらのカラーパは全て常に変化し流動する状態にあります。ヴィパッサナー・メディテーションが上達した者は、それをエネルギーの流れとして感じることができるでしょう。人間の肉体は考えられているような１つの存在物ではなく、

物質（ルーパ）とそれと共存する生命力（ナーマ）の集合物の連続体なのです。

私達の体そのものが、常に変化する状態にある小さなカラーパから成り立っていると知ることは、変化や崩壊という自然の真理を知ることです。常に燃焼の状態にあるカラーパの絶え間ない崩壊と交替によって起こる変化や崩壊（アニチャ）というこの自然の摂理は、必然的にドゥッカ、苦の真実と同一視されるべきです。

無常（アニチャ）をドゥッカ（苦或いは病）として体験して初めて、仏陀の教えの中で大いに強調されている４つの真実の「苦についての真理」が理解できるようになるでしょう。それは何故かというと、一瞬たりとも逃れることのできないドゥッカという微妙な自然の摂理を理解するならば、ルーパとナーマと共にある自己の存在に恐れや嫌悪を抱き、興味を失い、よりすぐれた状態、つまりドゥッカを越えた苦の終止へ逃れる道を探そうとするからです。では苦の終止とは一体どのようなものでしょうか。もしソターパティの段階に達し、実践によってニッバーナの平和という、条件付けられていない状態に入っていけるほど十分に上達したならば、たとえ人間であろうと苦の終止を味わうことができます。

いずれにせよ、日常生活で実践を通してアニチャを自覚し続けるならば、自分自身の中で肉体的にも精神的にも変化が起こっているのがよく分かるようになるでしょう。

ヴィパッサナー・メディテーションの実践に入る前に、サマーディがある一定の段階に達した後、まずルーパ（物質）とナーマ（心と精神的特性）についての理論的知識に精通しておくべきです。もしこれらを理論として十分に理解し、サマーディが好ましい段階に達したならば、仏陀の言葉の真の意味において、アニチャ・ドゥッカ・アナッタを理解することができるでしょう。

ヴィパッサナー・メディテーションにおいては、ルーパ（物質）の変化する性質だけでなく、ナーマの変化する性質、つまりルーパの変化の過程に向けられる注意力という思考要素をも注意深く観察します。時々注意力はルーパのアニチャにのみ向けられるでしょう。

また時には思考要素（ナーマ）のアニチャにも向けられるかも知れません。ルーパのアニチャを注意深く観察するならば、ルーパのアニチャの自覚と同時に起こる思考要素もまた変化・推移の状態にあると理解するでしょう。その時に、ルーパとナーマの両方のアニチャを共に体験したと言えるのです。

私がこれまで述べてきたことは、全てルーパの変化の過程と、それによって起こる思考要素の変化の過程に伴う肉体的感覚を通して、アニチャを理解するということに関連しています。更にアニチャは他の種類の感覚を通しても同様に理解することができます。

アニチャは次のような接触によって得た感覚を通して発展させることができます。

１）視覚器官による目に見えるものとの接触

２）聴覚器官による音との接触

３）嗅覚器官による匂いとの接触

４）味覚器官による味との接触

５）身体器官による接触

６）心的感覚による思考との接触

実際、この６つの感覚器官のどれを通してもアニチャの理解を深めることができます。

しかし実践において、これらの感覚のタイプの中では、常に変化の状態にある体の構成部分での接触によって起こる感覚が、内観メディテーションでは最も広範囲に渡るものだとわかっています。そればかりでなく、体の構成部分での（体内のカラーパの摩擦・放射・振動による）接触による感覚は、他の感覚のタイプよりも分かりやすく、従ってヴィパッサナー・メディテーションの初心者にはルーパの変化する性質を持つ身体的感覚を通して、

よりたやすくアニチャを理解することができます。これが、アニチャを早く理解する手段として、身体的感覚を選んだ主な理由です。他の手段を試みることも自由ですが、他の感覚型を通して試みる前に、私は、身体的感覚を通してアニチャの理解を確立させることを勧めます。

ヴィパッサナーにおける知識は次の 10 の段階があります。

１）サンマ・サナ：綿密な理論的観察と分析によるアニチャ・ドゥッカ・アナッタの正しい理解

２）ウダヤヴァヤ：ルーパとナーマが出現しては消滅するということを知ること

３）バンガ：ルーパとナーマの素早く変化する性質をエネルギーの急流として知ること

４）バヤ：正にこの自己の存在が恐ろしいものだという事実を知ること

５）アディナワ：正にこの存在が悪に満ちているという事実を知ること

６）二ビダ：正にこの自己の存在は胸が悪くなるようなものだという事実を知ること

７）ムンチントゥ・カミャタ：正にこの自己の存在から逃れることが緊急に必要だということを知ること

８）パティサンカ：アニチャを基礎として、十分な認識を持って救済のために勤める時が来たと知ること

９）サンカルペカ：今やサンカーラから脱し、自己中心主義を断ち切る時期に来ているという事実を知ること

１０） アヌロマ：目標に達する試みの速度を速めることができる知識

これらはヴィパッサナー・メディテーションをしている間に到達する様々な段階であり、短期間で目標に達した人の場合には、後になって初めてその段階を知ることになります。アニチャの理解の上達と共に、これらの段階を達成していきますが、ある段階では有能な先生の調節や援助を得なければならないでしょう。しかしこれらの目的達成を前もって期待してはいけません。と言うのも、そういう期待は連続的なアニチャの認識の邪魔をしますが、その認識こそが望ましい報酬をもたらすからです。

では毎日の生活における社会人の観点から、ヴィパッサナー・メディテーションを論じ、今ここで、正にこの世の中で得られるヴィパッサナー・メディテーションの利点について説明してみましょう。

ヴィパッサナー・メディテーションの最初の目標は、自分自身の内でアニチャを活性化すること、或いはアニチャの内に奥深く潜んでいる自己を体験すること、そしてついには内的・外的平穏と平静の状態に辿り着くことです。これは内にあるアニチャの感覚に専心した時に達成されます。

今、世界は人類を脅かすような重大な問題に直面しています。ヴィパッサナー・メディテーションを行い、今日のあらゆる出来事の中で、深く内在する平穏を見つけ出す方法を学ぶのに、今が適切な時だと言えるでしょう。アニチャは誰の内にもあり、誰もが持っており、誰の手にも届く所にあります。ちょっと自分自身の内を見てみれば、そこにあり、アニチャを体験することができるのです。アニチャを感じ、体験し、専心することができるようになれば、自己の外にある観念化という世界から、自由自在に逃れることができます。アニチャは世俗人のためのものであり、大切にすべき人生の宝です。それをもって、自己の幸福と社会の繁栄のために、平穏でバランスの取れたエネルギーの宝庫を作り出すことができます。アニチャが正しく上達すれば、肉体的・精神的病の根源に迫り、徐々に内在する悪いもの、つまりそれらの病の原因を取り除いていきます。仏陀の存命中パセナーディ・コーサラ王国のサヴァティやその周辺には９千万人の人が住んでおり、その内の５千万人がソタパティの流れに到達したアリヤでした。従ってヴィパッサナー・メディテーションに専念していた人はもっといたでしょう。

アニチャは出家し世を捨てた人のためにあるだけでなく、一般人のためにもあるのです。

今日私達を不安にさせている障害があるとしても、有能な先生やその指導の助けによって、比較的短期間でアニチャを活性化させることができます。一旦アニチャを活性化させたならば、努力を重ねアニチャを保つことが必要です。しかし更なる上達への機会や時期が来た時には、ヴィパッサナーの第３段階のバンガに向けて努力することを忘れてはいけません。この段階に達したならば、もうほとんど或いは全く問題はないと言えます。何故ならその時には大した苦労もなく、ほとんど自動的にアニチャを体験することができるからです。こうなればアニチャはその人の基礎となり、日常生活に必要な肉体的・精神的活動が終わるや、アニチャに戻ることができます。しかしながら、まだバンガの段階に達していない人にとっては、まだいくらかの困難が伴いがちです。そのような人の場合には、アニチャと外にある肉体的・精神的活動との間で綱引きが行われます。従って「仕事をする時には仕事をし、遊ぶ時には遊べ」というモットーに従うのが賢明だと言えるでしょう。常にアニチャを活性化させる必要はありません。昼でも夜でもその目的のためにある定まった時間を設けて、実践することで十分でしょう。少なくともその時には、特にアニチャの自覚と共に、心または注意を体の内部に向け続けるよう努力しなければなりません。すなわちアニチャの自覚を一瞬一瞬と連続させ、明らかに上達の邪魔になるようなどんな散漫な思考も差しはさむ余地のないようにするのです。もしそれが可能でないならば、呼吸への集中へ戻りなさい。何故ならサマーディはアニチャへの鍵だからです。またサマーディはシーラを土台としているので、よいサマーディを得るためには、シーラが完全でなくてはなりません。よいアニチャのためにはサマーディがよくなくてはなりません。もしサマーディが優れていれば、アニチャの自覚もまた優れたものとなります。

アニチャを活性化するためには、心を平静という完全な状態に置き、注意をメディテーションの対象に向けること意外には、特別なテクニックなどありません。ヴィパッサナーにおいて、メディテーションの対象はアニチャであり、注意を体の感覚に引き戻すことに慣れた人の場合には、アニチャをすぐに感じることができます。体の表面や体内でアニチャを体験するために、まずアニチャを得やすい箇所に注意を向け、そこに専心します。そして注意を一ヵ所から次の場所へ、頭から足へ、足から頭へと動かし、時々奥深くまで精査して行くのです。この段階において、体の組織ではなく、物質（カラーパ）の形成とその絶え間ない変化に注意を向けるのだ、ということをはっきりと理解しておく必要があります。これらの指示に従うならば、きっと上達が得られるでしょう。しかし、その上達は個人のパーラーミーやいかにメディテーションに専念しているかによって左右されます。

もし高いレベルの知識を持ったならば、アニチャ・ドウッカ・アナッタという三つの特性を理解する力が増すでしょう。そうすることでアリヤという目標（それは全ての人が視野にいれておくべきですが）にだんだんと近づいていくことになります。

今や科学の時代であり、今日誰もユートピアを抱いてはいません。皆、結果がすばらしく、具体的で、はっきりとしており、個人的で、即刻実現するものでなければ、受け入れようとはしません。

仏陀は生存中にカラーマ達にこうおっしゃいました。

「カラーマよ、評判や伝統やうわさに惑わされてはいけません。昔の著書の堪能さにも、論理の道理にも惑わされてはいけません。ある理論を十分に考慮したからと言って、またそれに賛成だからと言って、惑わされてはいけません。それが自分の好みに合うからといって、或いは師の威信に敬意を払うからと言って、惑わされてはいけません。

しかし、カラーマよ、自分自身で知ったならば、これらのことが健全でなく、非難するに値し、賢人によって咎められるものであり、これらを実践したときに損失と悲しみをもたらすと知ったならば、その時には拒否しなさい。

しかし、カラーマよ、どんな時にも、自分自身でそれが健全であり、非の打ち所がなく、賢人によって誉め称えられるものであり、それに従って実践した時に、繁栄と幸福の助けになると分かったならば、その時には、カラーマよ、それを受け入れ実践しなさい。」

今やヴィパッサナーのタイムレコーダーは打たれました。すなわち仏陀ダンマが復興しヴィパッサナーを実践するときが来たのです。私達は有能な先生のもとで、広い心を持って一連の訓練をまじめに受ける人に、はっきりとした結果が生じることに何の疑いも持っていません。そして私の言う結果とは、すばらしく、具体的で、はっきりとしており、即刻実現するものであり、これからの人生において、その人をよい状態に留め、安らぎと幸福の状態に置くものなのです。

全てのものに幸がありますように、そして平和が世界に行き渡りますように。

ヴィパッサナー瞑想をする理由

臨終の時に引っかかりをとるヴィパッサナー瞑想。

強烈な信号が入ってくると、臨場感が高まり、そこに引っかかって、心を強く何度も回転させてしまう。

これ不善心所であった場合は結生心になってしまうので、この回転を他の対象に変える必要がある。

それができるのがヴィパッサナー瞑想でしている「心に気づく」見方だけである。

自分の感覚で起きていることをしっかりと確認するクセをつけることで、強烈な対象が不善心所に導くパターンを変更するに心から離れることができる。

強烈なパターンは岩を削ったように深くなっているので、それらの欲や怒りのタグを中立にするまでには、長いヴィパッサナーの実践が必要とされる。

臨終の時の幻想は、五感器官の間接的な体験ではなく、意門からの直接の体験であるためより鮮明で、ここから心を引き離すようにコントロールすることはできないので、解脱しない限り、輪廻転生を避けることができない。