五蘊の認識システムと離脱

認識とは「心の世界」での作用である。

この心の世界とは「霊・魂・心・物」の区分では、3番目の領域になる。

そしてヒト（意識体）はこの「心の世界」を生活の中心として、「霊・魂・物」と接している。

「心の世界」という風船の中にいて、他の世界を眺め、霊や物質の世界と関わりを持っている。

まずはこの風船のことをよく知り、その中を探検し、

そしてその膜の外側との直截にコンタクトすることができれば、

これは大いなる試み（エッセイ）となる。

はじめに　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　五蘊の認識システムと機能とは

五蘊による認識プロセスの詳細　　　　　　　　　　五蘊（色・受・想・行・識蘊）

認識システム　　　論蔵の見解　　　　　　　　　　ヒトはこの世をいかに認識しているのか？　　　　　

17ステップの心路

cittaからviññānaへの9段階

五蘊からの離脱　　　　　　　　　　　　　　　　　認識を修正するために各蘊でやるべき手順

色rūpa

受vedanā

想saññā

行sankhāra

識viññāna

コラム

十二因縁Paticca-samuppāda　　Chain of conditioned arising 　

業kammaとは何か？　　　　　　五蘊がうみだす意図のことなのか？

カルマKAMMA業とは未来を創るエネルギーのこと　　　

想saññāの呪い　　　　　　　　高学歴者が地球を滅ぼす

中国が五蘊を否定した理由　　　中国の深層心理

サンカーラの拡大解釈　　　　　宇宙はサンカーラなのか？

ただ気づいているだけ覚る　　　解脱のメカニズム

はじめに

五蘊による認識システムとは

三蔵（パーリ語仏典の経蔵、律蔵、論蔵）では、この「心の世界」をmanō lōka（メンタル界）と呼び、

これを「５つの集まり」と呼びました。

manō lōkaとnāma lōkaは異句同義として解釈してよいのか？

rupakkhandha　　　　色蘊　　　 物質をメンタル界でのイメージに変換する

vedanakkhandha　　　受蘊　　　 イメージにタグをつけて検索機能を付加する

saññākkhandha　　　 想蘊　　　 共通するものを一つの入れ物に入れて観念化する

saṅkhārakkhandha　　行蘊　　 　イメージを回路にしてアプリ化する

viññānakkhandha　　 識蘊　　　 イメージを認識というカタチに変換する

khandhaとは、集めたもの、集合体、塊、堆積物、積み重ねたもの、という意味で、特定の種類のイメージの集合体のことです。

具体的な機能は

rupakkhandhaでは風船の外側にあるrūpa（物質）を見たり、聞いたり、嗅いだり、味わったり、触ったり、想ったりすることで、

物質界の物質をメンタル界のモノに変換します。

外側の物質を内側のイメージにする、ということです。

そのイメージはメンタル界の受vedanāの機能によって「近づく・遠のく・どちらでもない」という検索タグを付けられます。

それらはvedanakkhandhaに保管されます。

次に、メンタル界の想saññāの機能によって、過去に自分が作った「観念のカゴ」（共通性があるものを同じ容れ物に入れることを、

一般化と呼びます。そしてその容れ物が多いことが知識があると言います。）と「タグのついたイメージ」とを照合して、

新しいイメージをどれかの「観念のカゴ」に区分します。そしてこれまでのカゴが相応しくない場合は、新しいカゴを作って、

その中に入れます。

それらのプロセスが行われ、そららのイメージがまとめて保管されているのがsaññākkhandhaです。

この認識プロセスをしている時に、本人の身体の波動が変化した場合には、メンタル界の行sankhāraの機能が発動し、

身体の波動が起きたことで「タグがついた一般化されたイメージ」が回路化されます。

身体の波動に変化がない、もしくはタグが「近・遠のどちらでもない」もの、もしくは「一般化」されていないイメージのどれか１つの条件があれば、回路化されることはありません。

身体の波動とは、血圧や心拍数や呼吸などのことで、緊張したり、生命に関わる時に活性化する体の変化のことです。

「近・遠のどちらでもない」タグとは、TPOによって近遠のどちらにも変化させることが可能なもの、

「一般化されていないイメージ」とは、イメージを英語のaではなくtheとしてとらえること、

つまり個々の変化し続けるありのままを基準にして、動きを停める固定化された「決めつけ」をしないと、回路化はされません。

反対に、心拍が上がり、近・遠のタグをつけ、一般化されると、回路化された自動反応回路はsaṅkhārakkhandhaに保管されます。

最後に、メンタル界の識viññānaの機能によって、イメージがカタチ（意識）に生成されます。

意識のカタチには大別して２つあり、エネルギーを持つ「カルマの種」になるか、

もしくはエネルギーを持たない「nāma gotta記録」になります。

sankhāraを経由したものが「カルマの種」になり、経由しないものが「nāma gotta記録」になります。

私見では、カルマの種は存命中にはviññānakkhandha、死後には「nāma gotta記録」と共に魂（正確にはcittaの9段階変成の2番めのmano界）と宇宙意識界に転送されると推察しています。

この宇宙意識への転送は、まだ実験体験中なので、まだ確定したものではありません。

しかしヨーガ派の実践者にはこのような体験をしたり、信じたりしている人たちがいます。

心と魂との違いはエネルギーの微細さの違いであり、

この世をrūpa lōkaとmanō lōkaに分けた場合は心と魂はどちらもmanō lōkaメンタル界になりますが、

心はbhūtaとmahābhūtaで構成される領域、魂はgatiとdhammāで構成される領域になります。

この領域の違いを他の名前で呼ぶグループもあります。

五蘊（rupa、vedana、saññā、saṅkhāra、viññānaの倉庫khanda）にそれぞれの構成物が格納されています。

仏教の心所による認識システムの説明は

心所とは、パーリ語のcetasikaのことで、心の領域にある具体的な構成要素をメンタル要因、すなわち心所と呼びます。

画用紙が心全体cittaだとすれば、たくさんの絵具が心所cetasikaに喩えられます。

上座部仏教は魂やātmanを認めない人が多いので、魂という語句にこだわらずに、

そのまま心全体はcittaとして話をすすめるのがいいかと思います。

cittaとは伝統的日本文化に対応するのは魂と心、ヨーガ派ではātmanとchittaとahannkāraの複合体であるとして話を進めています。

cetasikaの数は宗派によってことなりますが、上座部仏教の大寺派ではAbhidhammattha Saṅgaha摂阿毘達磨義論を基準として

52だとしています。

説一切有部は46、大乗仏教の唯識派は『唯識三十頌』を基準にして51としています。

上座部摂阿毘達磨義論の心所

大乗唯識の心所

三蔵（律蔵Vinaya-pitakaと経蔵sutta-pitakaと論蔵abhidharma）　における認識システムは

共一切心心所（触、受、想、思、一境性、命根、作意）の七つは、citta（心と魂）に常にはたらいています。

三蔵ではこの七つが揃うことで「認識」というはたらきが生じます。

何かを見るときは、

瞼を開けた瞬間に、「見たい」というエネルギーがあって、対象に集中して、対象に触れる。

対象に触れるとそれを感じる。

そして、感じたものを識別します。

「見よう」というエネルギーもはたらきますし、そこには命根という「生きている」というはたらきもあります。

これらはdhammāという素粒子以下レベルでのはたらきで、「見た」と思う以前の一瞬の認識です。

作意manasikāra　→　一境性（集中）ekaggatā　→　接触phassa　→　受vedanā　→　想saññā　→

思（意思・動機づけ）cetanā　→　命根（一瞬の生成と消滅）jîvitindriya

五蘊による認識プロセスの詳細

五蘊の認識プロセスに立ち戻って、例を出しながら具体的に詳細を確認したいと思います。

なぜならば、他の認識論は仕組みをいろいろな観点から分析して、認識の誤謬のメカニズムを説明していますが、

私たちが感じる苦しみからどのように離脱するかについては語っていないからです。

対して五蘊は具体的にどうすればよいのかを釈尊が探求した時に発見したものなので、

それを活用するためには、具体例を出しながらそのメカニズムを確認し、その後は活用法を明記したいと思います。

5感覚器官は睡眠中であっても無意識のレベルで働いており、過去に作ったイメージをそのまま借用して夢をみたり、寝ていても蚊に刺されたところを掻いたりします。

具体的には、寝ている時に蚊に刺されたときなど、その皮膚から異物の信号が脳に届き、

その刺激に反応して「掻く」という行動を起こします。

起きている時に、もし刺されたところが青黒く紫色になっていれば、

これはただの蚊が刺したものとは違うので新しい現象を新しいイメージを作成して、無用心にすぐ掻いたりしないで病院に行くかもしれません。

五蘊の中で受蘊と想蘊と行蘊と識蘊の４つのは寝ているときにでも「夢」で認識プロセスは働いていますが、

目を覚ましている時にしか発動しないのは「色蘊」です。

夢では過去に作ったイメージが再現されますが、睡眠中は外側にあるものを新しいイメージとして変換することはありません。

寝ている時の内外の刺激（たとえば蚊刺され、腹痛）は5感覚器官を介して、神経管を電気信号(活動電位)として、

シナプスを化学信号(神経伝達物質)の物理的信号、そして第６感覚器官である脳の電磁波の刺激（たとえば夢）は、

メンタル界にある五蘊に転送されます。

そこで微細なエネルギー（電磁波）に変換された信号はイメージとして、受蘊や想蘊や行蘊に保持されているデータと照合され、

行蘊にある回路ならば、行sankhāraの自動反応回路が働いて、眠っているのに刺された箇所を掻いたり、寝返りをうったり、

蒲団の中に潜り込むなどの各自が以前に学習した条件反射運動をおこす可能性があります。

こうして寝ていてもヒトは無意識のレベルでは刺激に気づき、それに反応して生活しています。

つまり表層意識が働いていない状態でも、「深層にある意識」は入ってきた信号にスポットライトを当てることで、

認識プロセスが進み（想蘊にあるデータとの照合）され、それに対する反応（行蘊にある自動反応回路の発動）が起こります。

その時に、夢を見ていれば識蘊は入力された信号を夢の出来事として認識する可能性があります。

識viññānaが発動するには入力された信号が入ってくるのが条件となります。

たとえば、憤怒の発動は識viññānaに信号が入力される以前であり、行sankhāraによる自動反応回路の反応です。

「我を忘れる」と言うように、識viññānaが機能する以前に感情が発動しています。

怒りや憎しみの反応をした後に、その様子を感覚器官を経由する信号を識viññānaが感知して、自分がいま憤怒の状態であることを少し遅れて把握します。

このように識viññānaには、sankhāra経由と経由しない信号の入力があります。

例えば、何かの匂いがしていると感知するのは、表層意識が気が付かない内に色蘊が匂いの粒子をイメージに変換させており、

それを識viññānaの機能で気づくことができれば、次の段階で、その匂いの色蘊イメージを受蘊（ vedanā khandha）と

想蘊（saññā khandha）にあるデータとの照合を行ない、既知のものに特定することができるかもしれません。　

もし、その匂いのイメージを過去に行sankhāraが回路化していれば、すぐに近・遠どちらかの自動反応しており、

その後に、匂いを識viññānaは気づき、それを分析することになります。

そしてこの識viññānaの「気づき」にも表層から深層に至るまでのいくつかの段階があり、鍛錬や練習することで、

粗大なものからより微細なものに気づくことができるようになります。

たとえば目を閉じて静かにすることで、外界からの信号を弱体化することになるので、

より微細な信号に気づくことができるようにもなります。

たとえば、忙しいときには気づかなかった、背中や胃腸などの内臓の痛みです。

また自分が作り上げた記憶の信号は微細なものですが、感知する頻度が増えます。

エネルギーを持っているカルマの種は動きが強いので、エネルギーのないnāma gottaは心の中で想起されることは難しいことです。

強い意志（意識エネルギー）を使って特定の記憶（対象記録）にスポットライトを当てないかぎり、カタチになる機会は多くありません。

換言すると、まずは静かにすることで、エネルギーの強い記録（カルマの種）が頭に浮かんでくる度に、

それにやすらかに気づいていることを繰り返すことで、カルマの種のエネルギーとそれを作り出した回路sankhāraを弱体化しないと、

体の微細な信号や昔に作成したnāma gottaにアクセスしづらいということになります。

色rūpaと色蘊rūpa khandha

起きている時は、表層意識がオンになっているということなので、

随意筋や随意器官や感覚器官の肉体（rūpa khandha色蘊）のスイッチもオンの状態になっています。

色蘊（rūpa khandha）とはヒトがこの世の物質エネルギーを把握する時に、

肉体（五感覚器官、神経管系器官）によって把握される対象物（モノや情報の信号）のイメージを作成する「場」のことを指します。

ということは、物質はヒトが覚醒している・いないに関わらず、常に「ある」のですが、

色蘊は意識できる（ヒトが起きている）時に存在するものであることが再確認できます。

ですから色と色蘊は同じではありません。これらは物質界の物質とメンタル界の各自の物質の印象（イメージ）なので別物です。

たとえば、同じ松の木という物質であっても各自によって色蘊が異なるのは、個々の体験や印象や分別の仕方が違うためです。

物質（rūpa）は無常の時間的サイクルが大きく、量子力学レベルまで拡大しないと常時変化していることには気が付かない構造を

持つ物が多く、その物質が「無常」であることに気が付きにくいものです。

たとえばプラチナのような金属の固体は気体や流体に比べると無常であることがわかりにくいように。

また物質そのものは無常であっても、構成エネルギーの最小単位であると仏法ではされているsuddhāshtakaの寿命は長いと説かれています。

そのsuddhāshtakaが膨大な数が集まって構成される電子などの一部の素粒子の寿命も、現代の物理学では長いことが確認されています。

それに対して色蘊（rūpa khandha）はその物質への印象（イメージ）なので、体験を重ねるごとに変化はするが、

想定外の体験をしない限り大きく変わるものではありません。

だから「受想行識」に比べると変化は小さいですが、

常に微細な変化をし続けている「受想行識」と同様に無常であるという本質に変わりはありません。

受vedanāと受蘊

次はヒトの認知作用、つまりココロ（mind）の働きについてです。

五感の感覚器官は、常時において信号（刺激）を受信しています。

常時というのは寝ている時も、ということなので、表層意識がいつも気がついているとはかぎりません。　

刺激（情報）はある量に達すると、感覚器官を介して、電気化された信号として神経管（脊髄・脳）を通じて粗大なエネルギーから

微細なエネルギーに変換されてメンタル界に送られます。

色蘊で印象となったイメージは、次の段階の受 vedanāが感覚（sensation）プロセスになります。

この感覚プロセスには３つの特徴があります。

１つ目は寝ていても起きていてもこの感覚プロセスは休みなく信号は流れており、それを感じているということです。

例えば寝ている時も、無意識の内に蚊を追い払ったり、刺されたところを掻いたりしています。　　　　　

2つ目はこの感覚プロセスはマインド（hadaya vatthu　メンタル界にある「知る」機能）と結びつくことによって、その信号にスポットライトが当たり、そのマインドのエネルギーにより、そこが強調されて強く感覚されるということです。

例えば、ある匂いに意識が奪われている時には、意識が嗅覚との接触（つながり）を優先させるために、

他の器官からの情報に意識は気づきにくくなります。

耳に入ってくる情報量に変化がなくても、意識のスポットライトが音から匂いに変わると、音の感覚は減少するということです。

また、精緻な意識状態になることで、これまで感知できていなかった微細な信号を感知できるようになります。

物質とマインドは関連しているので、微細な物質エネルギーを感知しているときには、心は緩やかに安定しており、

呼吸もほとんど気にならないものになっているでしょう。

普段には気がいていない微細な感覚の領域が日常の感覚の外側に大きく拡がっているという事実があります。

３つ目は、感覚には無意識の内にタグが自動的に結びつけられているということです。

私が「タグ」と呼んでいるものは、ちょうど洋服に品質表示マークが付いているように、感覚にも近・遠を示すタグが付いているということです。　

感覚（ sensation 受vedanā） が肉体に生じる時に、このカラダの感覚の特徴は、それぞれの信号に「近・遠・そのどちらでもない」という３種のうちのどれかのタグが知らないうちに結びつけられ、

これが基になって次の段階での知覚や感情を生み出している、という事実です。

またこのタグと同時に感覚には身体的なタグも付加されると言われています。

大脳以外の体の細胞にそのタグされた感覚の記憶が保持されるというものです。

（この快・不快のタグと身体的なタグは同一なものなのかどうかについては、

私は現在、瞑想や思考や体験を通して確認している最中なので実験結果を積み重ねつづけた後で詳細な説明することにします。

メンタルボディや再生プロセスやnāma gottaという記録や釈尊特有の表現があり、

現代科学では解明されていないものも含まれているので、もう少し時間がかかると思います。）

このようなタグがそれぞれの感覚に付加されて保存（記録）されていること、に普段は気がついていない場合が多いでしょう。

しかし、マインドが安定して平静になり、意識が微細な変化を感じ取れるようになっている時には、

この感覚の過程を何層にもなっている「わたし」（たとえば、神経学neurologyでいう「観察者」）は感じることができます。

脳の中の幽霊　ラマチャンドラン

意識と本質　井筒俊彦

無意識と自己意識の脳 ダマシオ The Feeling of What Happens

想saññāと想蘊

受vedanāの次は想saññāです。

想（saññā）は知覚作用perceptionとして、意識のある時にだけではなく、実は寝ている時も夢を見る時にも本人は気づいていなくても働いています。

　

知覚作用とは、新たな情報信号を過去の経験からつくられた枠組み（カゴ）で区分けすることです。

私はこの想saññāが作る観念の枠組（共通項の輪郭）を「カゴ」と呼んでいます。

たとえば、洗濯する時に、下着とジャケットを区分したり、色落ちしやすいものとしにくいものを区分したりするときに使う「カゴ」また、乾いた洗濯物を箪笥に入れる時に、ジャケットとシャツと下着は別の棚の引き出しに区分します。

この棚の引き出しのことを「カゴ」と呼び、これらが集まっているところが想蘊saññā　khandaです。

このカゴ自体も常に変化して確固たるものではないので、ある種の「幻想」とも言えないことはありません。

六処（salāyatana眼耳鼻舌身意の対象を求める心）が起こり、対象が見つかってそれと接する時（接触phassa）、

新しい情報（raw information）が既知の情報に区別される働きが自動的に生じます。

この区分される過程が想saññāです。

たとえば色や形が目に触れると、目がそれを感じた瞬間に、言葉であれこれと考えるより前に、

認識システムは瞬間的に新しい情報を既知の情報を組み合わせて再構築しています。

スマートフォンのカメラ機能でいうと、顔を自動認識するのが想saññāの機能です。

過去に学習した特徴を基準にしてそれに一致するものを同じであると知覚する機能です。

私たちは、興味のある対象には想saññāの機能を使って、観念という枠組みの「カゴ」をつくっています。

たとえば、誰かと話をしている時でも、耳には相手の話し声以外のたくさんの音も入ってきていますが、

相手の話にスポットライトを当てるということは、聴きたい音に似ている音質の「カゴ」だけを照合させることなので、それ以外の音に対する関心を低下させています。

心理学でいうカクテルパーティー効果です。つまりスポットライトが当たっていない音には想saññāとの照合が行わない、

逆に言うと、カゴにある音だけが認識されることになります。

たとえば山で山菜や筍やキノコを見つけるときも同じです。

過去の体験で作成した想saññāのカゴにスポットライトを当てて、それに色蘊の力を使ってイメージにして、その映像を外界の景色に照合させて、同じ色の三つ葉の中からから四つ葉のクローバーを見つけることができるようになります。

想saññāは訓練によって鋭く強くすることができます。

一般的にいうと、勉強ができるようになりたい人は、色々と工夫して想saññāの働きを力強くしたり数を増やしたりしています。

これが記憶術となり、イメージ反応の俊敏さや知識量を増やすことになります。

これが教育や洗脳のメカニズムです。

どちらも新たなsaññāを教え、そのsaññāを基準にして判断するように条件反射をつくまで反復させる手法が２つの共通点です。

どちらもsaññāを単なる参照するものとして基準にしないという心構えに導かない、というのも共通しています。

私たちの認識システムはいつでも新しい想saññāをつくり続けています。

感覚器官に、全く同一なのものが接触（phassaコンタクトする）することは決してありません。

対象だけではなく、感覚器官が対象を求める心、そして想saññāが常に変化をし続けているからです。

だから精密に言うと、同じ音を二回聞くことはないのです。

すべては一度かぎりです。

デジタル音源だとしても、私たちの器官や感覚や気持ちは変化し続けているから、同じ音質であっても、違って聴こえます。

けれども似ているものを二度、三度と認識すると、「同じものだ」と錯覚するように脳はプログラミングされています。

類似なものをパターン認識して同一と判断するからです。

想saññāは主体が使うものであったのに、逆に想saññāに使われるようになったからです。

これが「妄想・観念」とも言われるもので、主体が認識システムに使われて、想saññāの同じカゴのものを、勝手に同一だと判断していることに起因しています。

この「観念、一般化、言葉」というシステムを使うことによって、情報（raw information）は能率よく短時間に分別できるので、

生産性と利便性のために生命体はこのシステムを長い時間をかけて作りあげてきました。

ただ欠点は過去に学習した想saññāのカゴを基準にしてしまうと、「いま、ここ」には対応できないということです。

「観念、知識、記憶」などもすべて想saññāを基盤にして作り出したものです。

たとえば、私たちが「わたしがいる」などと錯覚する原因となっているいちばんの原因（元凶？）は

物質界のものをメンタル界に変換することに起因していますが、メンタル界を使用する以上はこの変換を避けることができません。

一般的には概念は外的・共通的・客観的なものであり，観念は内的・個人的・主観的なものだと考えられています。

概念という客観性がこの宇宙にあるとしても、各自が対象を理解する時には観念という主観性を介してしか理解するしかありません。

ところがヒトは客観性の立場で対象を理解できると信仰する集団がいます。

それが新興宗教の人工衛星教で、新興といってももう300年の歴史があるですが。

新興宗教の誕生　　「人工衛星」教

コペルニクスが正しいと思ってしまう罠

仏典の役割　　人工衛星（コペルニクス的転回）の外に出る指標

この「過去の想saññāのカゴ」を基準（依存）にしてしまうことが、すべての錯覚の原因になっています。　

例えば、AのマスとBのマスのどちらが濃く見えますか？

答えはご想像の通りです。見た目はAですが実際は・・・。両手で周囲を隠して、AとBだけを比べてみればわかると思います。

ではなぜ、ヒトは頭の中でとらえた感覚（見た目の認識）と実際の目の前の事実とは違ってしまうのでしょうか？

それは大脳皮質によって過去に学習したパターンが目の前の事実を補正（編集）しているからです。

影と光、碁盤の白黒という過去に学習した想saññāのカゴが、AとBの色の濃さを判断しているので、

この２つが同じ濃度だと証明できた後でも、まだAの方が濃いとヒトは感じてしまいます。

つまり、影の場所は本来の光が当たればもっと明るいはずである、という想saññāのカゴと

市松模様の白黒の色の濃度はどこでも同じである、という想saññāのカゴによって、

この２つを基準にすることで、眼の前の色の濃度を「ありのまま」に見ることができなくなってしまっているのです。

これは、想saññāのカゴを基準にしてしまうことが習性になってしまうと、その回路を使ってでしか目の前のことを見ることができず、ありのままの「いま、ここ」が見えなくなってしまうからです。

このように、想saññāを鍛えてしまったヒトたちはsaññāの影響を受けやすいという対価を払うことになります。

瞬間瞬間、色々な想saññāのカゴが生まれては消え、消えては生まれて、流れ続けていきます。

ですから想saññāのカゴは絶対のものでも、基準になるものではありません。

「いま、ここ」には「何か変わらぬもの」や「わたし」などはありません。

ただただ一時も途絶えることなく生滅をくり返し流れゆく想saññāがあるだけです。

これが想saññāのカゴを基準にする認識の習慣性の力は大きく、知識のある人やその才能で仕事を得ている人たちほど、

誤謬から抜けられない生涯を送る人が多い理由です。

ですから、このような想saññāを基準にした認識を基にして成り立っている「自己」というのは当てにならないものなのです。

行sankhāraと行蘊

次は行sankhāraです。

ここがパーリ語で五蘊を理解する時の秘密の鍵になっています。

これがブッダをはじめとした先達たちが発見したヒトの認識システムのクセ、そして欠点、もしくは便利さのキーポイントです。

中国、日本の仏教界では五蘊を「メカニズム（機能）」としてちゃんと理解せずに、

「単語（カタチ）」として受け入れただけなのではないか？という場面によく出会います。

参照は後述のコラム　　「中国が五蘊を否定した理由　　　中国の深層心理」

行蘊saṅkhāraは英語訳では反応作用reactionと説明されることが多いです。

各自の意思にかかわらず自動的に反応してしまう回路のことで、マインドの中で行われる条件反射です。

たとえば、膝蓋腱反射が肉体の条件反射としたら、梅干しを見ると唾液が出るというのはマインドの条件反射です。

私たちが目覚めている時には日常生活の中で、カラダの内やカラダの外の対象物から信号（刺激・情報）を入力とする自動的に反応する回路を本人は気づかずに作り続けています。

また、寝ている時でさえも、夢の中で行sankhāraの回路は作られており、それが夢の中でも機能しています。

密度の違う快・不快の新たな経験をすることで、感覚（受蘊vedanā）のタグを上書きしない限り、

過去に学んだ体験から作られた自動反応回路を保存し続けています。

このココロの条件反射である「反応（reaction行saṅkhāra）」は表層意識が働いていない状態でも自動的に機械的に作動します。

例えば、ある言葉に不快のタグを付けた過去の体験があると、その言葉を聞いただけで、

反射的に嫌悪する反応をしてしまうメカニズムが発動します。

条件反射という機械的回路を使うことで瞬間的に感覚や言動という決まった結果がアウトプットされるので、

ある特有のTPOにおいてはメリットのある有効なメカニズムです。

しかし、物事はいつも同じTPOの状況ではないので、このようなインプットとアウトプットを結びつけて固定化させてしまう回路を

常設してしまうと、決めつけられた反応がデメリットになることも多くなります。

回路なので、一度できたパターンは新たな上書きをして書き換えをしない限り、

インプットがあれば何度でも同じアウトプットが繰り返されます。

意識体（ヒトや虫を含めて）はあらゆる瞬間にも、この自動的に反応してしまう行saṅkhāraを作り続けて暮らしています。

たとえば睡眠中の無意識の時にも臨場感のある夢を見るとそのプロセスでサンカーラは作られますが、新しいサンカーラは作られるのは、意識がある時が顕著です。

そして五感に臨場感がある意識が活性化している時には、溝の深い回路（強くて壊れにくいトラウマなど）が作られます。

サンカーラの生成のメカニズムとその維持

ではサンカーラはどのように作られ、それらがどのように維持されているのか？

生命体がこの地球に誕生した当時、35億年前の単細胞体は環境から影響を受けていたが、

その影響から何かを選択することはあったのだろうか？

ウイルスは意識体に含まれるのであろうか？

植物は意識体に含まれるのであろうか？

虫には心臓があるのであろうか？

石には意識があるのか？

まず、なぜ意識体はサンカーラを必要としたのか？　

どのようなメリットがあって、サンカーラを作るのでしょうか？

それはヒトに特有なものなのでしょうか？

意識はヒトに特有なものではなく虫にもあります。

意識とは内外からの信号を受信してそれに対してアウトプットを複数の中から１つを選択する機能のことではないだろうか？

そうするとリトマス試験紙には意識はないが、アンドロイドには意識があることになるのだろうか？

また意識エネルギーが物質エネルギーに転換されるとすれば、石のようなどんな物質にも意識エネルギーはあるというような論理になってしまうのではないか？　そうであれば石は意識エネルギーによって物質となるが、石はカルマの種を作成しないので、輪廻することもなく、無常の法則により、壊滅して砂に移行するだけである。

意識体が内外の信号に対して反応するのに、多くのTPOに照合したり、適応したり、予測したりして、適切なアウトプットを選択するには膨大な処理計算が必要となるので、時間がかかってしまう。

しかしこの世ではすぐに反応しなければならないことに満ちている。

発車寸前の電車に飛び乗り、黄色信号で行くか止まるかの判断をし、特売品に手を伸ばすかどうか？

蚊はヒトから叩かれそうになるとすぐに避けなければならない。

このような時に、自動的に反応する回路を作っておけば、いちいち膨大な処理計算をする必要がなくなるので、

瞬間的に反応することができるようになる。

特にサバイバルや獲物を捕まえるときには有効な言動になる。

こうして黄色信号を見た瞬間にブレーキを踏む回路を作る人もいれば、

その時の車のスピードや交差点の距離も要因にして回路を作る人もいれば、

それに前後の車のスピードや横からの移動物体の有無の要因も含めて回路を作る人もいる。

どれにしても止まるべきか行くべきかと考慮する必要はなくなる。

このような回路を作っておけば、レストランでパンフレットのように厚いメニューから何を選ぶのか迷う必要がなくなるのである。

これが意識体が回路を作り出す理由であろう。

メリットは効率性、時短、簡略、合理性、便利、容易、コスパであろう。

ただすべてのメリットには気が付かないデメリットが必ず伴うので、後はどちらを優先させるかという選択である。

これがTPOによっては、回路を上書きする必要性が出てくる理由であるので、後述する。

まずはどのようにして回路を作成しているのかというプロセスである。

たとえば、日本人が梅干しを見た時や、パブロフの犬のように、

特定の視覚や聴覚の信号が入った時に唾液が反射的に出るという回路がある。

これは酸っぱい梅干しを口に入れると口内の刺激が強すぎるから唾液を出すことでそれを弱めようとする反応や

メトロノームの音の後には必ず餌がもらえるという条件があったので、音が聞こえた時に嬉しい餌のことを想像して、

食べている状態をイメージして、「エアー咀嚼」で唾液を出したのである。

意識がイメージを再現するだけで、物理的作業と同じ反応が体に起こることが再確認された。

自動反応回路というアプリの完成である。

このメカニズムをわかりやすく解説したのが五蘊である。

回路の作成に必要な部品が受vedanāのタグ、そして想saññāのカゴである。

そして行sankhāraがこの2つから回路を作成する機能である。

行sankhāraはいつも回路を作っているのではなく、ある条件のときにしか回路は作成されない。

その作成するスイッチが入るかどうかは、マインドの状態に依存する。

つまりマインドが落ち着いているときにはスイッチが入らず、マインドが活性化しているときにスイッチが入るメカニズムになっている。

生命体がサバイバルしやすいようにプログラミングされたのではないか、と推察する。

マインドの状態は見ることはできないが、マインドと体は連動しているので、

マインドの状態が反映されやすい呼吸や心拍や血圧は数値化することができるので、

それらを観ることでマインドの状態を推察することが可能である。

したがって、呼吸が安定していない時に、マインドは受vedanāのタグと想saññāのカゴを基盤にして

自分の無意識が選択したアウトプットを結びつけた回路を作成する傾向が強くなる。

ポイントは選択した主体は表層意識ではなく、無意識と呼ばれる深層意識であるので、

表層意識ではどのような選択をしたのか把握できていないことである。

そして一度できた回路は上書きされないかぎりそのまま行蘊に保存されるということである。

また、次の段階の識viññānaでこの回路を介したものが、「カルマの種」と呼ばれる未来に実がなるエネルギーを作成することである。

良い果実ならばよいが、悪い毒ならば避けたいが、条件が揃うと発芽して結果に結びつき、このプロセスはヒトの意志では消去することができない。

この「カルマの種」は原因のエネルギー回路のことであり、気づくことができない限り、消すことはできない。

しかし芽が出る条件を揃えないようにしたり、小さな実にしたり、エネルギーを減らすことは可能である。

行sankhāraの回路が作られるメカニズムはこのようになっており、このプロセスが繰り返されることで、

回路の堅度は強くなり、使わなければ弱くなる。

また、砂糖漬けの梅干しを食べたり、メトロノーム音の後に餌を提供しないという体験を何度か積み重ねると、

以前の回路が上書きされるので、唾液が出ることがなくなるようになる。

ただし、また酸っぱい梅干しを何度も食べると、元のように唾液が無意識のうちに出るようになる。

このメカニズムがマインドの世界でも起きているので、このメカニズムを知ることで、

自分が作成してしまっているマインドの条件反射の回路を見つけ出していくのは、面白い作業だと思うのだけど、どうだろう？

このメカニズムは体の条件反射だけではなく、感覚、感情、思考、深層意識のパターンにも共通なので、１つずつ気づいていくことが回路に操られない生活の言動につながる。

特に怒りや憎しみという周囲にも苦しみを与える感情を多用する人は、そのアプリ回路を見直すことはマインドの掃除になるので、心が爽やかに晴れることが増えることになるだろう。

サンカーラの3つのレベル

サンカーラの強度を軸にして３つのレベルに分類してみます。

水面に石を落とした時の水紋、砂浜に書いた落書き、石に彫り込んだ溝の三段階です。

水紋はすぐに消え、落書きは一日に２回ある潮汐によって消えるが、彫り込んだ溝は自動的に消えることはない。

ではどうすればこの溝が消えていくのか？

多くの人たちがこの問題に立ち向かい、解決にトライしたが、かえってその溝を深くしてしまう失敗を重ねてしまうことも多かった。

ブッダたちのような先人たちはどのような方法をとったのであろうか？

それはただその溝があることに気づき、それをあるがままに平静に見守っているということであった。

ただこれだけである。

あまりにも簡単なことであったので、そんなことで石に彫られた溝が失くなることなどはありえない、として信じることはできず、

多くの人がはじめから試そうともしなかったことでもある。

サンカーラの堅度の種類

堅度	弱い	普通	強い
喩え	水紋	潮汐のある浜辺の砂城	木や岩に刻まれた溝
カルマの種	作成しない	作成する	作成する
強度	普通	強度　abhisaṅkhāra	強度　abhisaṅkhāra

サンカーラが使われている領域の種類

領域	深層意識	潜在・表層意識	潜在意識・体
内容	習慣、傾向、性格、思考	シンボル構築、言語化、	条件反射、感情、感覚
パーリ語	manō sankhāra	vaci sankhāra	kāya sankhāra
使用するもの	メンタル体	大脳	大脳辺縁系。脊髄、小脳

識viññānaと識蘊　　　　　　　　　　　識の役割　　物質界とのつながり、サンカーラ経由の種

識viññānaは「意識」と訳されますが、そこには潜在意識や、エネルギーを創出するものや、未来を築くものや、

苦しみに導くものなどといったいろいろな多層を持つ側面があります。

この識viññānaを理解し、ちゃんとした付き合い方を学ぶことで、苦しみから離脱することができるようになります。

識viññānaの特徴は、

意図することが、エネルギーを生み出していること

つまりメンタル界と物質界の架け橋になっていること。

過去と未来を考えることでカルマの種を生み出して、それが潜在意識なっていること。

純粋なcittaにいろいろなメンタル要因が付着するので各層のおいて性質の異なる意識となり、最終的に識viññānaになること。

たとえば「未来の希望」がヒトを苦しみにつなげることもあります。

なぜそんなことになるのか調べていきたいと思います。

入力経路のよって区分すると3種類

行sankhāra経由のKamma viññāṇa

カルマの種が実を結んでカタチ（結果）になったvipāka viññāṇa

過去や未来と関わりなく、「いま・ここ」で言動することで意識になったkiriya viññāṇa

Kamma viññāṇa　　 意図を持って未来に実現される可能性があるカルマの種というエネルギーを生み出します。

vipāka viññāṇa　　過去の原因が結果になったことで、現在に意識されたものです。

kiriya viññāṇa　　行動している時に付随する中立的な意識で、

意識したことでエネルギーを使用したので、エネルギーを生み出しません。

過去も未来とも関連しない「いま・ここ」だけが連続している意識です。

という3種類の識viññānaがあります。

vipāka viññāṇaとkiriya viññāṇaは経験した後に、記録nāma gottaとしてマインドに保存されるだけですが、

Kamma viññāṇaはエネルギーを創出するので、それが集まって「カルマの種」となり、未来を作る原因となり、

それらは識蘊に待機する潜在意識となり、関連するrūpaエネルギーと接触すると、未来の言動というカタチになります。

Viññānaとviññānakkhanda

viññāṇaとは「想い」の全体的な経験のことで、cittā のcetasikāによってカタチになります。

viññāṇakkhandhaはそれらの経験がマインドの中で積み重なっている所です。

1つの心路（citta vithi）でviññāṇaを体験することはありません。

平均で何百万または何十億ものcittāによってviññāṇaを体験しています。

これらの束になっているもの、すなわち堆積したものを、パーリ語でkhandhaと呼ばれます。

したがって、私たちが経験と呼ぶものは、viññāṇakkhandhaすなわちcittāの堆積している束の全体的な結果です。

多くの意識viññāṇaが生み出され続けていますが、

viññāṇaをエネルギーの有無の視点で３つに分けることができます。

Kamma viññāṇa　　 意図を持って未来に実現される可能性があるカルマの種というエネルギーを生み出します。

vipāka viññāṇa　　過去の原因が結果になって現在で意識され、それによってエネルギーは消化されました。

kiriya viññāṇa　　行動している時に付随する意識で、過去も未来とも関連しない「いま・ここ」の意識です。

このKamma viññāṇaとは心理学でいうトラウマなどの潜在意識を作成するものです。

この潜在意識はviññāṇakkhandhaに保持されて、6感覚器官からの信号と結びつくとvipāka viññāṇaとして表層意識に現れます。

vipāka viññāṇaとkiriya viññāṇaは経験され後にnāma gottaと呼ばれる記録になってマインドに保存されます。

サンカーラの保存場所には諸説ありますが、いまのところの私見では

日常生活で使用するサンカーラはメンタル体のviññāṇakkhandhaであり、

輪廻転生で受け継げられるサンカーラは「cittaからviññānaに到る9段階の変化」の2番めにあるmano界（魂）であり、

サンカーラではないが宇宙意識として回路は、エネルギーが存在する直前の根源自性prakritiにnāma gottaは保持されると推察しています。

cf.　manoの機能の伝統的解釈は「分別」だとしています。

認識するプロセスをそのまま（客観的）に、ありのまま（主観的）に表現をすることで、

「感覚（ 受蘊vedanā）」の特徴（利点・機能・限界・欠陥・弱点）に気づくことができます。

そして、これが「わたし」に囚われない方法の一つだと思います。

リンク　　脳は可愛がってあげなくっちゃ　

序章　「脳」の伝統と喩えと神経学　　　　

第一章　間違い続ける脳と「わたし」

第二章　実は無意識が司令塔？　脳の使い方マニュアル

第三章　自己意識の使い方　　　柔軟な自己意識を育てる

第四章　　意識が届かい世界　　カラダで生きる

ヒトはこの世をどのように体験しているのか？　論蔵からの視点

宗教では、霊と心と物質の世界を前提にしているので、

物質の世界にすべての根拠と理由を還元させようとする科学とは違ったアプローチになります。

一般的な現代科学はこの世をマインドと物質エネルギーに分けて説明するので、はじめから魂や霊の世界を除外しています。

対して、三蔵ではこの世をエネルギーのない涅槃nibbānaとエネルギーのある物質に分けて説明します。

そして、マインド（心）をメンタル界として物質界と区別はするが、

どちらもエネルギーとしては同じ領域のものだとマッピングしています。　

	涅槃	霊	魂	心（マインド）	物質
科学				マインド＝心　非物質　 確立されていない心理学	粒子、素粒子、波動、 物質エネルギー界
宗教		霊我	真我 カミ	天人	物質 物質エネルギー
三蔵	涅槃nibbāna 非エネルギー	純粋citta、manō nāma gotta	mānasan エネルギー カルマの種	意識はエネルギー メンタル体　　　　　　 hadaya vatthu　マインドの座 心所	五境（感覚信号） 五大dhātu（元素） mana indriya 脳 物質エネルギー界

　　　　　

では、「他」を認識しているマインドはどのようなシステムになっているのでしょうか？

三蔵では以下のように説明しています。

まずは五感覚器官を介した信号を脳で処理することで情報にして、それをエネルギー体であるマインドhadaya vatthuに送って、

そこで一連の17のステップがあるマインドのはたらきを経て、認識や判断や行動などができるようになります。

このプロセスを理解すると、ヒトはどこで勘違いしてなぜ間違え続けるのかが分ります。

6つの身体感覚を通して、私たちは心で内と外の世界を経験します。

ヒトは目で見、耳で聞き、鼻で匂い、舌で味わい、体で触れ、脳がイメージを受けとめ、その非常に短い瞬間を、マインドが認識します。

たとえば対象を見るとき、眼球から入った信号はニューロンを介して脳に送られます。

そして脳でそれぞれの信号を0.01秒（10ミリ秒）の塊として処理します。

現代科学では、その処理された情報を脳で認識し、この認識により、「わたし（主体）」が生まれる、と考えています。

対して、三蔵（上座部仏教）では脳は信号の処理作用をするだけで、それらをメンタル体のマインドhadaya vatthuに送り、

そこで感覚として察知する、と説きます。

マインドとは心のことなのですが、日本語で心と書くと、心情や感情や観念や思考や意思や魂や精神などの定義と交錯するので、

このエッセイでは、マインド＝心は、上座部仏教で定義しているように「知るはたらき」とします。

心（nāma）と物質（rūpa）　

ヒトの耳には鼓膜などの物質と、聞く作用の両方がセットとしてある。

この２つを分けないで混同していることで真理がわからず、間違え続ける原因の１つである。

これらを混同している間は、認識は脳内で起こる固定化された物質的反応だと誤解することになる。

メンタル体としての心が科学的には発見できないので、nāma（メンタル界）のはたらきが理解できず、

科学は五感覚器官の分析だけで終わり、nāma（メンタル界）のはたらきまで解明することができないの現状である。 　　

nāmaとは五蘊のメンタル界のことで、具体的には色rūpa受vedanā想saññā行saṅkhāra識viññānaの５つのはたらきの集合体を指す。

しかしウィキペディアをはじめ多くの書には色rūpaは物質としか解釈していないので、色を除外して後の４つがメンタル界だと理解している。

三蔵では色蘊rūpakhandaは色rūpa（物質）とは違い、心（マインド）が物質を捉えたイメージ、すなわちメンタル界のことなので、nāmaの中に含まれる、と解釈している。

rūpaは「まとまりのあるエネルギー」のことを指すので、物質だけではなく、物質エネルギーも含むだけではなく、イメージのような意識エネルギーをも含むので、日本や中国仏教の伝統的解釈にとどまっていると、パーリ経典を誤解して解釈することになってしまう。

出典？

rūpaは日本語の「心」のように、並べる語句によって内容が異なる。

無色界arūpa lokaと色界rūpa lokaを並べると、この時のrūpaは重力を持つエネルギー（まとまりのあるエネルギー）を意味し、

rūpaを心と並べると物質を意味し、五蘊の中の色蘊rūpakhandaの時には、物質ではなく、メンタルのイメージを意味し、

私見であるが、nāma−rūpaとつなげると、これは意識エネルギは重力エネルギーであることを意味していると考察している。

認識のプロセスと心路citta vithi

各知覚イベントは、一連（17ステップの心のはたらきである心路citta vithiを繰り返すことで、「世界を体験」をしています。

cittaは１つしかないので、同時にイベント体験はできませんが、心路citta vithiのスピードは速いので、

すべての感覚入力が同時であると体感するには十分な速さです。

こうして、私たちは物事を見るだけでなく、同時に聞いたり、匂いを嗅いだり、味わったり、考えたりしている、と思って、

勘違いした状態を続けています。

	物質と心	目の視覚	舌と味覚	耳と聴覚	処理	速度	媒体
5門の路 pancadvara citta vithi	物質界	眼球	味蕾	鼓膜	脳	10^−6秒	電気・化学信号 シナプス 電磁波
識の路　　　 viññāna citta vithi	メンタル界	見る 意識	味あう 意識	聞く 意識	心 意識	10^−9秒	電磁波

たとえば木を「見る」ときに何が起こるかを順番に見てみます。

樹木から反射した光が網膜に当たり、眼球の裏側に樹木の画像が映し出されます。それは網膜上にある本当に小さな画像ですが、

多くの葉、個々の花、果物が非常に詳細に「見えます」。

どうしてそんなことが可能なのでしょうか？

その画像は化学信号として脳に送信されます。脳はどのようにして木を「見る」のでしょうか？

この問題について、人工知能に積極的に取り組んでいるJeff Hawkinsが著書「On Intelligence」で、

視覚やその他の感覚入力に関する現在の科学的知識について論じています。

著書の55ページで、眼球の裏側にある画像がどのように脳に伝達されるかを説明しています。

「これらの入力を電線の束すなわち光ファイバーの束のようにして視覚化できます。」

および「脳への入力はこれらの線維に似ていますが、それらは軸索axonsと呼ばれ、

「活動電位」すなわち「spikes」と呼ばれる神経信号を運びます。これらは、一部が化学的で一部が電気的です。

説明されているように、視覚信号だけでなく、脳へのすべての感覚入力（音、味、匂い、および身体の接触）は同じタイプです。

音が聞こえ、光が見え、圧力を感じますが、脳の内部には、これらの異なる種類の神経信号の間に根本的な違いはありません。

活動電位の差異の認知が「知る」はたらきをしています。

科学者は、脳がこれらの異なる種類の信号をどのように区別するかをまだ解明できていません。

さらに、彼らはマインドがどのように「光」、すなわちその木のイメージをを見るか理解できていません。

さらに引用すると「頭の中に光はありません。そこは暗いのです。脳に入る音もありません。内部は静かです。

実際、脳は感覚を持たない体の中の唯一の部分です。外科医があなたの脳に指を刺しても、あなたはそれを感じないでしょう。

あなたのマインドに入るすべての情報は、軸索上の空間的および時間的パターンとして入ります。」

しかし、脳に伝わる化学的および電気的信号が、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚としてどのようにマインドに感知されるかは謎です。

科学者は、答えを脳に探すことでこのパズルを解決しようとしています。

三蔵がこれらのプロセスをどのように記述したかを見てみます。

実際の「見る」こと（および聴覚、嗅覚など）は、gandhabbaすなわちメンタル体にあるhadaya vatthuのプロセスになります。

粗雑なrūpaであるdhātuで構成されている肉体に比べて、

微細なrūpaであるbhūtaで構成されているgandhabbaは非常に細かい精微な霧のようなもので、

マインドの座であるhadaya vatthuは肉体の心臓の近くにあります。

肉体が死んだとき、繊細なgandhabba（メンタル体）は幽霊のように肉体から引き離されます。

私たちはそれを見ることができないほど繊細です。

そして、死ぬとすぐに死体は死後硬直をはじめ完全に不活性な物体になっていきます。

gandhabbaが肉体に生命を与えていたので、去った後は肉体は単なる物質になります。

もう1つの重要なポイントは、gandhabbaの繊細な体には、hadaya vatthuの周りに5つのpasāda rūpaがあることです。

この微細なrūpaと接触することで、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚となります。

脳を扱うだけの科学者では解決できないパズルの「欠けている部分」は次のとおりです。

脳は、化学信号および電気信号を分析する非常に高度なコンピューターのようなものです。

約10ミリ秒間隔のパケットで送信される化学信号および電気信号は、電磁波（electromagnetic wave＝EM波）に変換され、

hadaya vatthu周囲にあるpasāda rūpaに電磁波を介して送信されます。

もちろん、釈尊は電磁波について説明しませんでした。これらの波は、パーリ語で「kirana」と呼ばれます。

例として、木を見た場合を考えてみましょう。

目から脳に到達する連続した一連の「データのパケット」（上記の化学信号および電気信号）は、

脳によって処理され、EM波（kirana）に変換されます。

次に、これらの波はhadaya vatthuの隣りにあるcakkhupasāda（淨眼）に進みます。

cakkhupasāda（淨眼）とは肉眼ではなくメンタル体の視覚情報を受信する微細器官のことです。

目から軸索を介して脳へと移動する化学/電気信号よりもはるかに（10³）速い電磁波信号として情報を伝達します。

そのようなEM波（kirana）のパケットがcakkhupasādaに伝わると隣りにあるhadaya vatthuに振動を伝えます。

これが木に関する視覚データをマインドへの「転送」です。

この信号が移行された瞬間に、マインドに意識が生まれます。

これが「cakkhunca paticca rupeca uppajjati cakkhuviññānam」が意味することです。　

論蔵『論事』14.3　Kāyakammaṁsanidassanantikathā

ここでのcakkhuはcakkhu pasāda rūpa（物質界の肉眼ではなくメンタル界の眼）のことであり、

rūpa（rupeca）は、木に関する脳からの視覚信号を電磁波に変換したもの（実際の木ではなくイメージ）です。

rūpaの意味しているのは、視覚の対象物とは異なります。

私たちは、対象物、ここでは木を直接に見てはいません。

マインドに浮かぶ映像は、メンタル界の電磁波rūpaエネルギー信号です。

その信号には、その視覚対象物に関するすべての情報（データ）が含まれています。　

cakkhu pasāda（cakkhu）による視覚信号（rūpa）の受信は、

cakkhu pasādaがその信号がhadaya vatthuに「当たる（接触）」ことで転送した瞬間に発生します。

そしてその瞬間に、cakkhu viññānaが発生します：

これらのことから４つのことが明確になります。

１メンタル界もrūpaエネルギーによって成り立っていること

２しかし物質界のrūpaとは密度が違うため、直接に対象と接触するのではなく、すべてが電磁波変換されていること。

３この変換されたメンタル界の電磁波信号を五蘊が物質界のありのままの状態から５段階にわたって編集していること。

４最後に、その編集が誤謬の原因、眼の前の世界をありのままで見ることができなくなっている原因であること。

すなわち、私たちは日常の６感覚器官を介しての認識は、各自が過去の体験によって作り上げたアート（妄想、幻想、幻影、フィクション）でしかない、という事実です。

視覚意識は、視覚対象物に関する情報がマインドに転送される瞬間に発生します。

ただし、その一瞬の間に、対象物（この場合は木）だけでなく、

vedanā（付加される近・遠のタグと感覚）、sanññā（観念のカゴによる各自の勝手な分別）、

sankhāra（自動反応回路の作成と依存）、viññāna（過剰一般化による未来の因果関係の捏造）が行われています。

考え方を進化させる　　既知から未知へ　

「自分」と客観　　　自分を科学にあけ渡すと、心を閉じた人になっちまう

新しいものを自分のものにするメカニズム　　　認識とは何か？

想ったら現実になる　いや現実とは想うこと

意識が事実を変える

「わたし」が生まれる瞬間　　　分割したものを統合してもそれは仮の名称

たとえば、過去にその木を見たことがある場合、心所（メンタルの要因）にあるmansikāra cetasikaがその情報を提供することもできるので、すぐに木の名前を知ることができます。

しかし、これだけシンプルな行為の中にも、上記のメンタル要因による機能によって、眼の前の「ありのまま」に寄り添うのではなく、メンタル界を使用する（メンタル界の中という舞台にいる）ことによって必然的に発生する出来事（ドラマ劇）を生きる（鑑賞）ことになります。

使用するということは、使用するモノと使用されるモノが生じるということです。

つまり「わたし」が介入することで、「１つ」のものが２つに分裂して自己と対象が発生するのです。

どんな意識体もです。

これがメンタル界を使う時の宿命、もしくは面白さ、もしくは責任、もしくは事実です。

別の例では、スプーンでグラスを軽く叩くとどうなるか考えてみます。

さて、音はどこから来たのですか？グラスの中からですか？　　　　　　　　　いいえ。

スプーンの中から音はしましたか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いいえ。

スプーンがガラスにぶつかった結果、音が出ました。

スプーンがグラスに当たらない場合、音はありません。

同様に、「rūpa」すなわち肉眼を介したイメージ画像がメンタル界のcakkhupasādaに届き、hadaya vatthu（マインド）に「接触」しない限り「見るという出来事」すなわちcakkhuviññānaはありません。

このようにマインドと呼ばれる「実体」が常にあるのではありません。

微細なrūpaエネルギーとそれを受信するモノがこれまでの各自の体験に従って「印象」を創作しているだけのことです。

この印象をマインドと呼んでいるにすぎないので、個々の印象は実体がある、と瞬間的には言っても良いのではないかと思いますが、

次の瞬間には実体はないと言えます。

したがって、それらの瞬間のモノを寄せ集めて、統合させたモノ（ここではマインド）に「実体がある」ことにはなりません。

仮りに付けたただの名称です。

ミリンダ王の問い　　那先比丘経　　Milindapañha 1. Ārambhakathā

上記のように、5つの物理的な感覚器官を介して感覚入力信号を受信するときに、マインドが生じます。

それらをまとめて「マインド」と大雑把に呼びますが、実際には、citta, mano, manasan・・・ と9段階の一連のプロセスです。

ですから、マインドとは10億分の1秒で発生するviññānakkhandha識蘊などの五蘊を寄せあつめた集合体のことです。

同時を感覚することができないマインドのメカニズム

私たちは、コップを叩く音が聞こえるだけでなく、グラスとスプーンも同時に見ることができます。

しかし、これら2つの出来事は実際には「まったく同時に」発生しているわけではありません。

このcittaからviññānakkhandhaにいたるプロセス機関は１つしかないので、全く同時に発生することは不可能です。

私たちにはそれがすべて同時に起こっていると考えて（認識）しまうのは、まるで一瞬のように高速（10億分の1秒）で連続しているので、複数のタスクを同時にしているように感じるからです。

プロセスはビデオ映像の仕組みに似ています。

ムービーを作成するとき、実際に行われるのは、多くの静止画像を撮影し、それらを十分に速い速度で再生することです。

再生速度が遅すぎる場合、個々の画像を見ることができますが、特定の「投影レート」を超えると、実際の動きのように見えます。

ビデオのレートは１秒間に30コマ、映画は24コマです。

実際には個別のスナップショットなのですが、1秒間に30コマで連続すると、動きのある映像になります。

ヒトが外の世界を見るときに起こることは上記と非常に似ています。

番組の最後には、この「静止画の連続の動き」は私たちが見る幻想（フィクション）であると但し書きが表示されます。

（実際には「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」とあります）

それは実生活にも当てはまります。

私たちに何かが近づいてくるのを見ると、実際にはマインドに投影された一連の「静止画」の連続ですが、「ビデオのような動きのある体験」という錯覚をマインドは感覚します。

これが、すべての種類の感覚入力が同時に「自分のマインド」に来ていると感じるメカニズムであるので、私たちは連続したマインドがあるように錯覚してしまうのです。

釈尊は、この世界にはマインドより速いものは何もなく、私たちの5感で感じているものはまるで幻想であると説明したように。

出典？

誤謬が起きるメカニズム　　　　同じ信号でも異なる反応をする理由

次に、マインドの2番目の問題です。

なぜ同じ感覚入力信号であっても、私たち一人一人は異なる感情や認識を持つのでしょうか？

例えば、同じ人物を見たのに、人によって愛や怒りなどの異なる感情が起きるように。

それは「私には自分独自のマインドがある」と感じている理由にも関係があります。

各自によって反応が異なるからといって、各自に独自のマインドがあるのではありません。

はじめにすることは、外部感覚入力への反応が各自によって異なることを認識することです。

各自が持っている一連のgati（方向性、性向、傾向、思考、習慣のパターン）に基づいて、感覚入力を知覚して評価する「独自の回路」があるので、対象に対する感情や感覚や評価という反応が異なります。

つまり、外部からの感覚入力に対する反応は、感覚入力の種類だけではなく、各自の性向との両方に由来しています。

このメカニズムを知ることで、sakkāya ditthi（誤謬　各自の見解）を取り除き、それがSōtapanna（預流果）のステージに至る鍵になります。

このように、私たちの「マインドの状態」は私たちのgati（性向や思考や習慣のパターン）と私たちが受ける感覚入力の両方に依拠しているので「固定されたマインド」などはありません。

マインドは常に非常に急速に変化する可能性があります。

自分の過去にあった愛や怒りのことを振り返り、その内容を思い出せば、マインドの対象に対する想いが次々と変化してきたことを確認できます。

「道」を進むにつれて、こうした「想い」の極端に固執した反応は少なくなり、それが最終的にNibbanaにつながるniramisa sukha（穏やかな喜び）を体感することになります。

私たち一人一人は決まったマインドを持っていません。

つまり、「固定された独自の」vedanā、saññā、sankhāra、viññānaを生成などはしていないということです。

言い換えれば、私たちには独自のsaññākkhandha, vedanākkhandha, sankhārakkhandha, and viññānakkhandha などはないということです。

独自というのは、他とは異なり、確固たる実体がある、という意味でもあります。

英語で言うoriginality、identity、individualityのことです。

それぞれは異なる意味を持つ語句に見えますが、底流には独自性という共通点があります。

そして、釈尊はそのようなものがあるように見えるだけで、実際にはこの宇宙には存在しない、と説きます。

また、それらを「私のもの」とみなすことは有益ではありません。

このような認識を持つならば、それはSakkāya ditthi（妄想の見解）の１つです。

Sakkāya（sat[sant]-kāyaとは、存在する身体に由来しており、「ないものをあると思うこと」を意味します。

　

Sakkāya ditthiとは、「わたしとは私の体」、「わたしとは私の体のイメージ」、「わたしとは私のvedanā」、「わたしとは私のsaññā」、「わたしとは私のsankhāra」、「わたしは私のviññāna」と「わたし」と対象物を同化させてしまうことです。

こうして「I ＝ my mind」という「私とマインドを同化」させてしまうラベル付けを行ってしまっています。

パーリ経典中部44経のCūḷavedallasutta英訳では、五蘊はSakkāyaと呼ばれる、と記述されています。

このようなSakkāyaditthiを削除するためのより良い方法は、

「これらのすべての実体は私のものとみなされる価値はない」ということを認識することです。

「私は自分の体を持っている」、

「私は自分のマインドを持っている」、

「それらを自分のものとみなすことは実り多い」

とヒトは自動的に考えてしまう傾向があるからです。

マインドのプロセスを分析して「わたし」を見つける

本当に、私の体は「わたし」ではないのでしょうか？

マインドを分析してこれが真実かどうかを確認します。

マインドが何であるかを理解するために、釈尊は、「知る」プロセスを分解することによって、マインドがどのように発生するかを段階的に分析しました。

それが自分自身を「Vibhajjavādi」と呼んだ理由です。

vibhajjavādīとは　«vibhajja1　分別する　+vāda理論　+ṇī　者》、すなわち分別論者という意味です。

Subha Sutta (MN 99)にある

「Vibhajjavādo kho ahamettha、māṇava; nāhamettha ekaṃsavādo..」

「若者よ、私はVibhajjavādi（与えられたプロセスを部分に分割することによって多くの側面から分析する者）です、

私はただ一つの側面に基づいている固定観念を持ちません」。

重要な点は「わたし」の認識はアラハンの段階でのみなくなることを知っておくことです。

私たちは最終段階に行くまでは、「わたし」の認識をなくすことを目指すのではなく、

まずは自分の五蘊（色・受・想・行・識蘊）で作ってしまった見解を一つ一つ上書きしていくのがステップです。

段階を踏まずに、アラハンの真似をすると本人と周囲を迷わせ苦しめることになります。

未知の段階に至ろうと試みる時に、ステップを経由せずに最後の段階だけを実践して、そのたびに失敗する行為です。

これが現代そして未来都市文明生活者が持つデフォルト（初期設定）の思考と行動のパターンになります。

最終目的から始めるという病いなので、ゴールが訪れることは決してありません。

目的ではなく、常に自分にとって必要なことから優先する、つまり「急がば廻れ」もしくは「自分の躰の聲を聴く」ことが、

想saññāを鍛えてしまった者（高学歴者、都市生活者、理想主義者、現代文明生活者）にとっての座右の銘になると思います。

物質界での認識プロセス

頭部にある物理的なセンサーである目、耳、鼻、舌と神経系を介して触覚が察知した信号は脳に伝えられます。

視覚についての例を見てみると、たとえば対象物がサッカーボールの場合、その信号は形、色、動いている方向、スピードは別々の信号して入力され、脳内でこれらの情報が統合されることで例えば、こちらに素早く向かってくるスピンがかかっているボールだという情報になります。

これらのプロセスは、脳内「mana indriyaマインドの感覚器官」の処理で行われると三蔵では説明しています。

物質界では、物理的因果関係hetuがある膨大な法則があるので、

眼の前の運動をすべての因果関係を計算式にして確定することは不可能です。

（重力、反重力、電磁波、風、自転、公転、磁力、電気、化学反応、湿度、温度、密度、大気分析、気圧、光、潮汐、摩擦、熱、材質、耐久力、粘性、反射性、伸縮性、柔軟性、太陽放射、放射線、宇宙線、対流、地震、台風、天候、隕石、彗星、ヒッグス粒子、新星爆発、ホワイトホール、ダークマター、ダークエネルギー、意識、弱い力、強い力、などなど）

その中でTPOに大きな影響があるものを意図的に選択し、近似値を出すことを日常生活ではしています。

たとえば、近代科学史をみるだけでも、ニュートン方程式からシュレディンガー方程式、そしてディラック方程式へと徐々に正確になってきましたが、まだまだ完成の途上です。

動物はこれらの情報を分析して統合する能力は乏しいですが、ヒトはこれらの物質界の情報を一般化してメンタル界のマインドで、

未来に起こることを避けたり、希望する方向に事態を導けるように、対策を練ることができます。

つまり五蘊（色・受・想・行・識蘊）の機能を使用します。

メンタル界での認識プロセス

物質である五感覚器官を介して外界と体内感覚を経験し、これを処理する過程を見てみます。

上記したように、目、耳、鼻、舌、身体の5つの物理的感覚器官によって感覚データは収集し、

それらは中枢神経系を介して10ミリ秒単位のパケット信号として脳に伝達されます。

そして脳では、特定の時間間隔（約10ミリ秒）でデータが処理され、　

それらは「光線システム」であるkiranaによって電磁波に変換されて、

メンタル界のエネルギー体（manomaya kaya）に転送され、

マインドの「場」であるhadaya vatthu とその周りにある5つのpasāda rupa（cakkhu目、sota耳、jivha舌、gandha鼻、kaya身体のデータを受信する機能）へ送ります。

この５つのpasāda（澄明な） rupa（電磁波エネルギー）とは色、音、味、香、感触の物質的データを電磁波に変換されたものです。

この電磁波がマインドの「場」を振動させることで、一連の17ステップのマインドのはたらきが実行されるとしています。

hadaya vatthu とpasāda rupaのどちらも微細なエネルギー体なので目には見えませんが、

場所は肉体の心臓に重なった所に位置されているとされています。

三蔵　パーリ語	日本語訳	内容の説明	機能	粒子と波動
ārammaṇa	対象	対象物	実体としての仮設	物質
ṣaḍ viṣaya梵　 pañca viṣayāḥ dhammārammaṇa	六境　六外処 五境 法所縁	色声香味触法 色声香味触 物質エネルギー	感覚＋想いの信号 感覚信号 微細エネルギー	電気・化学反応 粒子物質 粒子エネルギー
kirana	作業場は脳	光線システム	電磁波に変換	電磁波
mana indriya	マインドの感覚器官 dhammāを感知する	物質エネルギー処理松果体の説がある	データ処理して 差異を認識	物質→波動
pasāda　rūpa	澄浄な信号	電磁波受信	受信と振動	電磁波
hadaya vatthu	マインドの「場」	マインドの入り口	17回の振動	電磁波
17citta vithi	17段階の心路	17の心のステップ「知る」プロセス	「知る」はたらき	電磁波

マインドの認識メカニズムと時間

メンタル界のマインドで起きていることは、映画を見ているときに起こることに似ています。

映画を見ているときにスクリーンに映る動きは自然に見えますが、

実際には、プロジェクターが静的なフィルムを毎秒24フレームの速度でスクリーンに投影しています。

ヒトは40ミリ秒ごとに静止画像（１フレーム）を見ると、そららは連続している同じものと認識することになります。

同様に、私たちのマインドは、聞いて、嗅いで、味わって、触れている短い情報の連続を「同じ」ものとして知覚します。

しかし、実際には、各感覚のイベントはほんの一瞬で「同じ」ものではありません。

脳から送信される10ミリ秒の一塊の各「情報パケット」を、

一連である17の心（マインドcittaのセットである心路citta vithi）で処理することで、認識することができるようになります。　　　

心路については後述しています。

この17ステップのうちの7つだけが実際の認識（視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚）に関わり、

その７つのうちの1つから３つだけが実際の認識そのものであり、それに費やされる時間は10億分の1秒というほんの瞬間です。

科学の時間と三蔵の時間

マサチューセッツ工科大学(MIT)の発見では、身体が感覚データを取得するのに必要な最小時間は約13ミリ秒であるとされています。

Detecting meaning in RSVP at 13 ms per picture

これが脳による処理速度です。

次に三蔵では、

物質界（mana indriya）の情報パケットは電磁波に変換され、

メンタル界のエネルギー体であるマインドの「場」（hadaya vatthu）に直接送信される、としています。

そしてマインドは、送信された情報を10⁻⁹ 秒（10億分の1秒）単位であるnanosecondで処理します。

脳の処理は10ミリ秒のスケールなので、マインドの速度より1000倍遅いことになります。

これは、「感知速度」をメンタル界と比較すると、物質界の脳の処理速度は制限されており、

マインドは常時「脳からのデータを待っている」状態になっていることを意味します。

　

以上の説明は三蔵に記述されたものを現代語訳したものですが、三蔵では瞬間を刹那（khaṇa　Sk．kṣaṇa）として表し、

具体的な秒数は記述されていないので、現代科学では各情報パケットの単位が約10ミリ秒であると推定されているので、

それを基準にして、具体的な数字に置き換えています。

現代科学では、認識のすべては脳内で行なわれていると考えるのが主流派であり、脳＝マインドを前提にしているのに対して、

三蔵の立場は、マインドが（メンタル界の）エネルギー体であり、

その機能や構造やシステムを現代科学が推察するのにもう少し時間がかかるであろうと推定しています。

たとえば、眼球からのデータを脳にノンストップで送信し続けていると想定すると、

この感覚データを取得する時間は約10ミリ秒とされるので、1秒に約100個の「データパケット」が脳で処理されていることになります。

１秒＝1000ミリ秒（ms）　　　　　　　　　映画の１フレームは約40ミリ秒（1000／24）

心の働きCittaのプロセス　　　心路citta vithiと呼ばれる17ステップ

マインドにおいて振動エネルギーを認識する心cittaの生滅の順番　　　　「眼門の極大所縁路」

眼を介した信号は脳で処理され、それらは電磁波に変換されメンタル界の映像を管轄する受信機能に転送されます。

そのデータ・エネルギーは鐘を撞いた時のように心cittaを17回振動させます。

これが、物質界の粗い粒子（dhātu）がメンタル界の微細な粒子(bhūta)となり、それを「知る機能citta」がどのような順序で認識するかのメカニズムです。

「知る機能」である17ステップのcittāを「心路　citta vithi」と三蔵では呼びます。

眼からの情報を認識する心の17ステップの過程

	パーリ語	略語	内容
1	Atīta Bhavanga	過	以前の有分心Bhavanga　　　　「生命相続流」（life　continuum） 現在の対象を認知しない状態　　 完全に寝ている状態　　　　潜在意識ではない
2	Bhavanga Calana	動	振動する Bhavanga 有分心が動揺して弱くなり始めた状態　「有分動揺」という
3	Bhavanga Upaccheda	捨	捕獲された Bhavanga 有分心が弱くなり消える状態。 有分心が捨てられ、捨断される。「有分捨断」
4	Pancadvaravajjana	五	５感覚の扉からの電磁波に注意を向ける意識　 「目が覚めた」という状態で「五門引転心」という vipāka viññāna の生起
5	Cakku Vinnana	眼	心が眼の扉の電磁波（pasāda rūpa）を知覚する「眼識」
6	Sampaticchana	領	心が眼識のデータのコピーを受ける領受心
7	Santīrana	推	調査する意識　　　推度心　　　これはどんな振動かと推度する 眼識のイメージを探求し精査する
8	Vottapana	確	決定する意識　　「直前の推度した心」を確定する 「見たもの」を確定するのではなく、推度した心を確定する。
9	Javana	速	kamma viññānの生起　　　認識がはじまる 同じ振動が七回起きる速行心
10	Javana		自分勝手に推度したものについて、すぐ感情が反応する ここで善行為か悪行為かに分かれる
11	Javana
12	Javana		最大のエネルギー転照
13	Javana
14	Javana
15	Javana		kamma viññānの消滅
16	Tadarammana	彼	意識の登録　　　彼所縁心　　　「味わい」のようなもの
17	Tadarammana		意識の登録　　異熟心なのでvipāka viññānaなのか？ どこに登録するのか？識蘊なのか？

cf.

記憶や予測や想いなどのdhammāはマインドの感覚器官である脳のmana indriyaが5感覚器官を介さずに直接に感知するので、

意門心路と呼ばれ、

明瞭の場合は　　動捨意速速速速速速速彼彼の12ステップ

不明瞭の場合は　動捨意速速速速速速速　　の10ステップが心路citta vithiとなる。

いつ「見えた」のか？

17の一連のセットが終わったら、かならず有分心Bhavangaになります。
第一心刹那で、対象の振動が生まれて、
第十七刹那でその振動は終わります。

こういう17七心刹那のセットが何億回も生まれて、やっと「あ、花が見えました」という認識が生じます。

一心刹那＝一兆分の一弾指と言われ、10億分の1秒の単位になります。
一弾指を六十五刹那とも六十念ともいう解釈もある。

「ない」ものを見る？

モノ（bhūtaで構成されたエネルギー）には「生住滅」の波動があり、波のように生まれては、カタチを成し、そして消えていきます。

「生」の瞬間は見えません。「住」のときは見えます。「滅」のときはまた見えません。
生か滅のときは、信号が入力されないので、心は有分心のままで何も気づくことはありません。

ヴィパッサナー瞑想をすると、
「見ている『もの』はずっとそこにあるのではない」という事実に気づき、はじめのうちは寂しさを感じることでしょう。
現象は生まれては消えるものだと気づくことが瞑想の10段階あるはじめの一歩になります。

Javana Cittaでkamma viññānの生起が何度（10回ほど）も繰り返さることで執着tanhaが発生する。

vipāka viññānaはコントロールできないが、

kamma viññānaは自動反応回路である sankhāraを制御することによって間接的にコントロールすることができる。

このkamma viññānaは必ずmanō vipāka viññānaをはじめに経由する。

そこでアーナパーナ瞑想とサティパッターナ瞑想を通して、勝手に生起してしまうmanō sankhāra の動きに常に気づいていることで、

このmanō sankhāraが休むことなく生成し続ける vaci sankhāraと kāya sankhāra を制御することができようになる。

坐る瞑想を実践することによって、話すことも動くこともしないので、

意識的な言語とイメージ思考vaci sankhāraをコントロールして、生産を停めることだけはできる。

しかしそれ以外の日常生活の時間では、私たち自身が意図的に生起させているvaci sankhāra と kāya sankhāra（意識的思考、言語、行動）が「カルマ（因果）の種」を作り続けているので、これをコントロールする必要がある。

ダンマの階層的解釈

界	内容	エネルギー	回路	意識と物質
無色界	普遍エネルギー 重力をもたないので斥力となる	ダークエネルギー	manō sankhāra カルマの種 nāmagotta記録	深層意識
色界	重力を持つエネルギー　カタチに留める力 意識エネルギー　　　　心の内容 釈尊の教え　　　　　　Buddha Dhamma	ダークマター 重力 意識エネルギー	vaci sankhāra 感情、思考	表層意識
感覚界	物理エネルギーの法則	物質エネルギー	kāya sankhāra	物質

dhammāとは「生み出す」という意味で、dhammāによってすべてのものが生起するという意味である。

領域によってdhammaのカタチは異なって見える。

無色界では、時空と方向性を生み出した普遍エネルギーであり、

色界では、宇宙を媒介する意識エネルギーであり、

感覚界では、宇宙法則のエネルギーとして現れる。

心（マインド）が対象物（微細なエネルギー）に接触すると、そこにエネルギーが発生する。

このエネルギーが無色界のものであればdhammā (Dhamma rupa、記憶, 「カルマの種」kamma beeja)であり、

これらは「エネルギーの容れ物であるkamma bhavaに積み重ねるように記録される。　

色界のものであれば、心が感じたり想ったことになる。

このdhammāとは複数形で心が生み出したエネルギーであり、Buddha Dhamma宇宙の法則と区別することがある。

感覚界のものであれば、物質ネルギーのbhavaとなり、枠組みにエネルギーが充満すると物理的形になって誕生する。

そして未来において無色界のdhammā (Dhamma rupa　　記録、記憶、 「カルマ（因果）の種」など)が

マインドの感覚器官mana indriyaと再び接触することをきっかけとして、同じプロセスが再度となく繰り返される。

そしてその度にkamma viññānaは強くなっていく。

そしてこのkamma viññānaが強くなる度に、nāmarūpaとも呼ばれる色界のdhammāの量は大きくなる。

このnāmarūpaはマインドによって作られ、これが物質rūpaが生成される一番はじめの段階になる。

この物質化のプロセスにおいてkamma viññānaが媒体であり、構成要素の役割を果たす。

法句経の

“manō pubbangama dhammā…”. とは

心（マインド）がkamma viññānaを媒体としてdhammāを生みだすということを表している。

これは、私たちが貪瞋痴の状態の時には、たんなるindriya（感覚器官の機能　　眼とは見る機能）が

対象を求めるāyatana（対象をサーチする欲求を持つ意識、すなわち眼が見る意識の入力機械）となり、

見ることを主体がコントロールしていたのが、平常心を失うことで見る機能に逆にコントロールされてしまい、

新しい「カルマ（因果）の種」を生成してしまう。

DHAMMAPADA　　 Verse 1 & 2　Yamakavagga　法句経　　英訳　the Pairs

DHAMMAPADA
Mano pubbangamā dhammā manosetthā manomayā Manasā ce padutthena bhāsati vā karoti vā Tato nam dukkhamanveti cakkam’va vahato padam	ものごとは心にもとづき、 心を主とし、 心によってつくり出される。 もしも汚れた心で話したり行なったりするならば、苦しみはその人につき従う。 車をひく（牛）の足跡に車輪がついて行くように。
mano 　　mind pubbangama preceding; coming before dhammā states (of existence) manosettha led by the mind manomaya produced by mind manasa[ Adj. ] having a mind padutthena with wickedness bhāsati (he) speaks vā or karoti(he) acts tato nam because of that dukkhamanveti suffering follows one cakkam [eva] [ just as ] the wheel vahato leading padam foot [here meaning the hoof of an ox ]	Mind is the forerunner of all states. Mind is chief; mind-made are they. If one speaks or acts with wicked mind, because of that, suffering follows one, even as the wheel follows the hoof of the draught-ox. All phenomena have mind as their forerunner; they all are mind-made.  If one speaks or acts with an evil mind (i.e., engages in dasa akusala), then suffering (dukha) will follow just as the wheels of a cart follow the footsteps of the ox that is pulling the cart
Mano pubbangamā dhammā manosetthā manomayā Manasā ce pasannena bhāsati vā karoti vā Tato nam sukhamanveti chāyā’va anapāyinī	ものごとは心にもとづき、 心を主とし、 心によってつくり出される。 もしも清らかな心で話したり行なうならば、 苦しみはその人につき従う。 ——影がそのからだから離れないように。 意（おもい）は諸法（すべて）にさき立ち 諸法（すべて）は意（おもい）に成る 意（おもい）こそは諸法（すべて）を統（す）ぶ きよらなる意（おもい）にて、かたり、行わば 形に影のそうごとく　たのしみ彼にしたがわん （友松圓諦訳）
pasannena with clear, bright, pious (mind) sukhamanveti happiness follows one chāyā [eva] [ just as ] shadow anapāyinī(that) does not leave	Mind is the forerunner of all states. Mind is chief; mind-made are they. If one speaks or acts with pure mind, because of that, happiness follows one, even as one’s shadow that never leaves.

この二節にブッダの根本的な考え方が説かれている。

マインドが全てのものに先立ち、この全世界はマインドによって作られ、すべての基礎はマインドだ、

と説いている。

マインドが生み出したdhammā　によってこの世のすべての現象が生起されている、と説いているのである。

そして、このdhammāは思考(saṅkhāra) がマインドの働きに関わることでが生起（創造）されていると。

これらは

貪瞋痴によって影響を受けたマインドで、思考・言語・行動した場合には、

渇望の世界で生きることを繰り返し、苦悩が続くことを示している。

経験とは何か？　　　　

心路の回数とCetasikā（メンタル要因）がcitta（意、想い、思い、思考）の性質を決定する

想い（citta）は、特定の思考対象物（ārammana）に基づいて発生します。

たとえば、車の購入や散歩について考えます。

一度に1つの心路心路citta vithiしか発生しませんが、それぞれの持続時間は10億分の1秒未満です。

Cittā（複数形のcitta）は非常に早いスピードで流れます。

私たちは個々のcittaを経験していませんが、1秒間に発生する数十億のcittaの全体的な影響を経験しています。

各cittaには多くのcetasika（メンタル要因）が含まれており、

どのcittaにもはじめからある普遍的なメンタル要因は、saññā, phassa, manasikāra cetasikaなどがあります。

次に、cittaの「質」を表す「良い」および「悪い」cetasikaがあります。

誰かが怒っているとき、その時のほとんどのcittāは怒り/憎しみというdōsaの cetasikaを持ちます。

同じ人が腹を空かしている人に食事を与えている時には、その人のcittāは一時的に慈悲すなわち愛情深いcetasikaを持つことになるでしょう。

良いcetasikaと悪いcetasikaは混ざりません。つまり、良い考えか悪い考えのどちらかです。

意識viññānaのプロセス

Cittaからviññānakkhandhaへ　　　　　　9段階の思考プロセスもしくは、9段階の汚染

想い、思い、思考は何層にもなる意識から出来上がっているので、10億分の1秒以内に9つの段階を経ます。

それはcittaで始まり、viññāṇaまたはviññāṇakkhandhaで終わります。

viññāṇaとは「想い、考え」の全体的な経験のことで、cittā のcetasikāによってカタチになります。

1つの心路citta vithiでviññāṇaを体験することはありません。

平均で何百万または何十億ものcittāによってviññāṇaを体験しています。

これらの束になっているもの、すなわち堆積したものが、パーリ語でkhandhaと呼ばれます。

したがって、私たちが経験と呼ぶものは、viññāṇakkhandhaすなわちcittāの堆積している束の全体的な結果です。

gati（性向）とāsavā (āsavaの複数形　貪瞋痴)は、それぞれのcittaに現れない場合があります。

それらは休眠状態にあり、「トリガー（６境すなわち、６感覚器官に接触する物質rūpa）」と条件が現れるのを待っています。

たとえば、美味しい料理や魅力的な人を見るときのように、「楽しい思考の対象」にスポットライトが当たった場合にのみ、

貪欲な思考が生じます。

したがって、私たちの考え方（viññāṇa）は、

私たちのgati（性向、そしてそれによって起こる習慣）とāsavā（渇望）および特定の思考対象に依拠しています。

もちろん、私たちは特定のgatiとāsavāを取り除き、新しいものを育成することができます。

ĀnāpānaとSatipaṭṭhāna瞑想の主な目的は、悪いgatiとāsavāを取り除き、良いgatiを育むことです。

cittaの「土台の要因」

cittaには7つの普遍的なcētasikaメンタル要因があります。

cittaとcētasikaの関係は、白いキャンパスと絵の具、もしくは透明な純粋な水と絵の具のようなものです。

透明なcittaにいろいろなcētasikaが入ってマインドは汚れながらカタチになります。

基本的な絵の具は、Phassa（接触）、saññā（知覚）、vēdanā（感覚）、cētanā（意図）、ekaggata（一点性）、jivitindriya（生命機能）、manasikāra（記録とのアクセス）の７つです。

manasikāraとsaññāの cetasikaは、過去のすべての記憶、習慣（gati）、および渇望（āsavā）を特定のcittaに組み込むことができます。

「すべてをまとめる」のはcetanā(意思、意図volition) cetasikaの役割です。

これが、純粋なcittaの「土台の要因」であり、どのcittaも10億分の1秒しか持続しません。

そして、その短い時間の間に、他の多くのcētasika（良いものも悪いものも）がcittaに組み込まれます。

まずは、他のcētasikaが組み込まれていない単純なケースを考えてみます。

９の段階　　　　母親に会う例　　　　　

cittaの汚染のプロセスは、Pabhassara Sutta (AN 1.51)に記述されています。

母親に会うことを例にして考えてみます。

最初のcitta段階では、対象をみることもなく、「いのち」があるだけです。

次の「manō」のステップ（測定する、基準点をつくる、「対象に対して尊敬をもって目盛りを決める」）で、その人は女性であることがわかります。

「mānasan」の第3段階では、「san（付加する）」が登場し、追加情報（個人情報）が組み込まれます。

ここでは、その人は自分の母親であることがわかります。

私たちは少なくともcittaの「mānasan」段階に到達しない限り、この社会に生きることはできません。

そうしないと、群衆の中で特定の人を区別できなくなります。

cittaの実際の汚染は次の段階、の「hadayan」から始まります。

hadayanとは、その人が「ハートに近い」かどうか、すなわち近づきたいか、もしくは離れたいかをを識別することを意味します。

この例では、「自分の母親」として識別し、もちろんそれに付帯して対応しているvēdanāが発生します。

ここでのポイントは、悪いgati（単にavijjāとも呼ばれる、相互に関連するanusaya、āsāvasなど）がある限り、

思考が生じると汚染されるということです。

したがって、思考が生じたときに制御することはできません。

パーリ語	コップの中の喩え	内容	具体的
kilesa	泥（土と水）菌類、コップ	無明	本能
asava	底に沈んでいる発酵体	貪瞋痴	貪欲・怒・妄想
anusaya	底から表面に向かう水泡	渇望・嫌悪	欲望・願望
gati	表面に浮かんでいるアブク	性向	思考・習慣パターン

cittaは想像を絶する速さ（10億分の1秒）で作動しているので、viññānaの段階ではすでに汚染されます。

釈尊は、cittaは世界最速の存在だと言っています。出典？

私たちが本当に経験する段階は識蘊viññānakkhandha ですが、「想い」をcittaと大まかに呼んでいます。

citta 　　　　「いのち」そのもの　　　　対象を見ません

manō　　　　 　基準点をつくる　　　　　対象と記録と想saññāを照合する　ヒト、女性であることを認識

mānasan 　　　追加情報（個人情報）　　　記憶と照合して関係性を確認　　　その人は自分の母親である

アラハンはここまでの認識機能しかもたず、、これ先の過程には進まない。

悪いgati、āsāvas、anusayaを減らし、最後に取り除くことによってのみ実行できます。

Karaṇīya Mettā Sutta Khuddakapāṭha　9. Mettasutta　英訳　でその解放についてが記述されている。

hadayan 　　「ハートに近い」かどうか　　母親に付帯しているvēdanā感覚とタグを照合

pandaran 　「パワーを追加する」　　　　　記憶と記録を照合する

manō manāyatanam, 　　　　　　　　　　　 愛され、喧嘩したエピソード想起を繰り返しさらに愛着を深める

mana indriyam (or manindriyam)　　　　　manasikāra cētasikaによって自動的に行われます

viññāna　　　　　　　　anusaya、āsāvas、gatiのために非常に汚染されたcitta

viññānakkhandha　　　11種類のviññānaを含むviññānakkhandhaの一部になります。

11種類とは過去、現在、未来、近、遠、繊細（sukuma）、粗雑（ōlārika）、好き（paneeta）、嫌い（appaneeta）、

内部（ajjatta）、外部（bahidda）です。

anusaya、āsāvas、gatiだけでなく、過去の記憶や将来の希望なども照合して取り入れます。

汚れを減らすために私たちができることは、3領域のDhammaを学び、次にAnāpānaとSatipatthāna瞑想を実践することで、

avijjā（gati、āsava、anusayaのすべてに関連していることで実体と想っている幻影と回路）を減らすことです。

私見　

上座部仏教の９段階のcitta（心）

上座部仏教	内容	説明	サーンキヤ派	意識
citta	知る機能	白いキャンバス	prakrit 根本空	根本意識 真空意識
manō	全体像を把握	全体性機能　paññā	chitta心素	全体性意識
mānasam	分割して「知る」根源状態	阿羅漢はこの段階までしか認識しない	buddhi 理智	分別意識
hadayaṃ	自我認識 私の・・・	私という枠組みの内と外 saññāの生成と執着が始まる	ahaṇkāra 我執	枠組意識
paṇḍaraṃ	エネルギー増大	bhūtaレベルの微細要素を認識 執着に多くのエネルギーを割当てる	jñānendriya 微細知覚器官	直観意識
manōmanāyatanam	±のタグが付加	対象に受容的or反発的or中立な心	manas意思	近遠意識
mānaindriyam	意識エネルギー	対象に対する執着の力が強化する	karmendriya 微細運動器官	運動意識
viññāna	分割された智慧 日常の認識	智慧が除去された部分的認識と統合 世俗的な欲求・渇望	jīva 個我	統合意識
viññākkhandō	思考、記憶、空想	愛着を強め、現状を評価し、将来への新しい希望と計画のパターン認識	tanmātrā 微細元素	回路意識

上座部仏教の論蔵にある9段階のcittaの変化プロセスも宇宙コスモロジーに対応して説明できるとおもいます。

citta、manō、mānasam、hadayaṃ、paṇḍaraṃ、manōmanāyatanam、mānaindriyam、viññāna、viññākkhandō

次に地球における個体の生命体では

真我purusha（ātman）によって

根本自性prakritiは内部の3徳性gunaのバランスが崩れることで、

善性sattwaからは心素chitta、

動性jajasからは理智buddhi、

暗性tamasからは我執ahamkāraが生じ、

我執ahamkāraにも3徳性があるので

善性我執からは微細知覚器官jñānendriya

善・動性我執からは意思manas

動性我執からは微細運動器官karmendriya

暗性我執からは微細元素tanmātrā

微細元素tanmātrāからは粗雑元素bhūta

最後に地球元素に内在して生物になった。

これを発生した意識の順序に並べ、現代用語での表現を試みると

真我puruṣa（ātman）	真我意識	観照するだけだが、唯一の実体
根本prakrit 空prakriti （sattwa、jajas、tamas）	根本意識 真空意識	定まったカタチはなくdhammāエネルギーの塊 ３つの徳性のバランスが崩れるとカタチが創出する
心素chitta	全体性意識	善性　より微細なモノに抽象度を上げる機能をもつ
理智buddhi	分別意識	動性　　知を使って１を２にする機能
我執ahamkāra	枠組意識	暗性　　　具象化することで抽象度を下げる dhammāの塊がgatiが構成される
微細知覚器官 jñānendriya	直観意識	微細エネルギーのレベルで差異を知覚する　　　 視覚と聴覚のみで、嗅覚、味覚、触覚はない
意思manas	近遠意識	対象に対する感覚に±or中立のタグを貼る ２つをつなげるために共通点にスポットライトを当てる
微細運動器官 karmendriya	運動意識	微細エネルギーと身体の連動を体感
個我jīva	統合意識	アイデンティ 分類したものをまとめてあげて統合する
微細元素tanmātrā 　　　　　　　 仏教でいうbhūtaのレベル	回路意識	パターン認識するアプリを作成する
粗雑元素 　　　　　　　 rūpaの中の細かいdhātu	概念意識	一般化、概念化、シンボル化する
物質rūpaの中の粗いdhātu　 五感覚器官の信号が基盤	自我意識	差異にスポットライトを当てる５感覚器官と心による認識手段
他者の意識をも信号に含有	自己意識	他者を含めた「自分」を主体として、感覚器官を通じて外界からの信号を認識する子供の意識

これをヒトの誕生から具体化する流れでの表現を試みると、

まずはヒト以前にある意識では、

ゼロ意識　　エネルギーを少しも持たない意識の外側にあるモノ

宇宙意識　　受精以前からあるエネルギーをもつ宇宙の意識

霊魂意識　　メンタル体がもつ「いのち」の意識

次のヒトの意識では、

真我意識　　受精の瞬間に生じる個がはじめて持つ純粋意識　　

真空意識　　受精の瞬間の意識　　定まるカタチはないが「いのち」そのものとなる意識

全体性意識　受精直後の意識　　　カタチはあるが境界線がまだ確定されていない意識

分別意識　　細胞分裂後の意識　　外部（母体や自分の身体）の信号を体感する胎児

枠組意識　　外界と自分の意識との間に違いがあることを内胚葉の蠕動で認識しはじめる胎児の意識　

直観意識　　眼耳鼻舌身の感覚器官からではなく、微細な波動を直截に認識する胎児の意識

近遠意識　　中胚葉（循環器系器官）で外部の波長と同調することで対象と共通性と近遠を付加する胎児の意識　

行動意識　　自分の微細体と肉体がつながっていることがわかり、肉体を意識的に動かす胎児の意識

統合意識　　内/中/外胚葉が器官となり、信号の差異を把握して、それらをまとめて統合する新生児の意識

回路意識　　パターン認識　　インプット信号に対応する自動反応回路で世界を認識する乳児の意識

概念意識　　シンボリズム認識　　外界の信号をシンボルとして認識する幼児の意識

自我意識　　「自分」という主体を基準にして、感覚器官を通じて外界からの信号を認識する幼児の意識　　

自己意識　　他者を含めた「自分」を主体として、感覚器官を通じて外界からの信号を認識する子供の意識

マインド（citta）は１つしかないので心路citta vithiも１つで、同時には処理していない　　

ヒトが誰かと会話しているとき、相手を見ることと、聞くこと、言うことを「同時に」にしています。

しかし、実際は同時に見て聞いているように感じているだけです。

「認知する」ことができる心cittaは１つしかないため、瞬間的に１つのことを処理しては、次の瞬間に別のことを処理して、

認知対象を瞬間ごとに切り替えています。

インターネットなどのリモート通信では視覚と音声はパケットとなって発信と受信により処理されますが、

マインドは各パケットを10ミリ秒未満でcitta vithiを使って処理しています。

これらの「情報パケット」がマインドに絶えず入ってくるので、ヒトはそのような感覚を絶えず経験していると感じています。

しかしマインドが一度に処理できる「データパケット」は1つだけなので、

前後のパケットとの間には少なくとも10 msの遅延（時差）があるので、同時ということはありえない、というのが三蔵の立場です。

しかし、この短い時差であれば、すべての感覚入力を継続的に経験しているとヒトが知覚するのには十分な速さです。

五蘊の外に出る方法

色rūpa　　　 入力を減らす　　 物質とメンタルの関係を知り、物質の生成の順序を知る

受vedanā　 　快・不快の感覚を穏やかにただ観ていることで、タグを上書きする。　寂びを楽しむ

想saññā　　 知識の限界と苦しみを知る　　想saññāを慧paññāへ

行sankhāra　 パターン化の悲劇を知り、弱体化する方法を学ぶ

識viññāna　　 意識がエネルギーを生み出し、それが自他を苦しめている実態を知る

色rūpaのイメージを減らす方法　物質の創出過程　　

洞窟で20年？以上の修行をしている仏教徒がその洞窟の壁面に描かれた絵を見たことがない説話を聞いたことがある。

また、瞑想の参加者には、しゃべらないことと下を向いて歩くことをルールとしている寺やセンターが多い。

どちらも色蘊Rūpakkhandhaに余分なイメージを増やさないため、できるだけ感覚器官から入力される信号を減らすための工夫である。

色蘊に信号が入れば、それが受vedanāや想saññāの対象になる可能性が増えるからである。

色蘊に信号を入れない一番明確な方法は五感器官をできるだけ使わないことである。

特に視覚は膨大な信号をイメージ化するので、常に足元を見て、情報量を減少させるのには効果が高い。

また物質の創出過程を知ることで気づいていく意識の順番や、物質の道理や、何に気をつければよいのかというガイドマップに成る。

大宇宙の構成要素と内的心理器官に関する創造原理

	宇宙マクロ	宇宙原理	宇宙具象化	宇宙我執	個ミクロ	内容
絶対者ブラフマン	Brahman				puruṣa ātman
根本自性	prakriti				prakriti
大	mahā ākāsh	時間 空間 方向
大なる実在原理 ３徳性guṇa	mahat mahat sattwa mahat jajas mahat tamas	実在 大善性 大動性 大暗性			sattwa jajas tamas
心素	chitta	大善性	宇宙心素 samashti		心素 chitta
理智	buddhi	大動性	宇宙理智 samashti		理智 buddhi
我執	ahamkāra	大暗性	宇宙我執 samashti		我執 ahamkāra
微細知覚器官	jñānendriya		善性我執	５宇宙知覚器官 samashti	５微細知覚器官	眼耳鼻舌身
意思	manas		善・動性我執	宇宙意思 samashti	意思 manas
微細運動器官	karmendriya		動性我執	５宇宙運動 器官samashti	５微細運動器官	口語、手、足、排出、生殖
微細元素	tanmātrā		暗性我執	５微細元素	微細世界の万物
粗雑元素	bhūta				５粗雑元素	粗雑世界の万物

サーンキヤ	サンスクリット	内容	上座部仏教	説明
プルシャ	puruṣa	霊我　観照だけ	citta	変化のない実体　涅槃　出世間界
プラクリティ	prakṛti mahat	自性　 エネルギー	manō無色界	puruṣaが観ることで平衡が崩れて「空」なる根本物質が「有」として展開する
ブッディ	buddhi	「知る」根源状態	mānasam 阿羅漢はここまで	全体性機能　paññā
アハンカーラ	ahaṇkāra	自我、　認識	hadayaṃ	様々な階層の認識に分離していく saññāの生成と、それへの執着
	jñānendriya		paṇḍaraṃ	執着に多くのエネルギーを割当てる
	manas		manōmanāyatanam	対象に受容的or憎悪的になる心
	karmendriya		mānaindriyam	レベルの範囲内で力を強化させる
	tanmātrā		viññāna	智慧は除去され世俗的な欲求・渇望
	bhūta		viññākkhandō	愛着を強め、現在の状況を評価し、将来への新しい希望と計画

上座部仏教の論蔵にある9段階のcittaの変化プロセスもこの宇宙のコスモロジーと対応する。

citta、manō、mānasam、hadayaṃ、paṇḍaraṃ、manōmanāyatanam、mānaindriyam、viññāna、viññākkhandō

地球における個体の生命体では

真我purusha（ātman）によって

根本自性prakritiは内部の3徳性gunaのバランスが崩れることで、

善性sattwaからは心素chitta、

動性jajasからは理智buddhi、

暗性tamasからは我執ahamkāraが生じ、

我執ahamkāraにも3徳性があるので

善性我執からは微細知覚器官jñānendriya

善・動性我執からは意思manas

動性我執からは微細運動器官karmendriya

暗性我執からは微細元素tanmātrā

微細元素tanmātrāからは粗雑元素bhūta

に具体化して、生命体になった。

これを発生した意識の順序に並べ、現代用語での表現を試みると

真我puruṣa（ātman）　　　　　　　 真我意識　　　 　　　観照するだけだが、唯一の実体

空prakriti（sattwa、jajas、tamas）　 真空意識　　　　　　カタチはないがエネルギーの塊

心素chitta　　　　　　　　　　　　　全体性意識　　　 　　 善性　　　精神性に抽象度を上げる、

理智buddhi　　　　　　　　　　　　分別意識　　　　　 　　動性　　　知を使って１を２にする

我執ahamkāra　　　　　　　　　　　枠組意識　　　　　　　暗性　　　具象化することで抽象度を下げる

微細知覚器官jñānendriya 直観意識　　　　　　　微細エネルギーのレベルで差異を知覚する　　　　　　　　　　

意思manas 共通意識　　　　　　　２つを繋ぐ共通点にスポットライトを当てる

微細運動器官karmendriya 運動意識　　　　　　　微細エネルギーと身体の連動を体感

個我jīva　　　　　　　　　　　　　統合意識　　　　　　 　アイデンティ（分類）をまとめて統合する

微細元素tanmātrā 観念意識　　　　　　　一般化、観念化、シンボル化する

粗雑元素bhūta 潜在意識　　　　　　　パターン認識する

物質rūpa　　　　　　　　　　 　　　表層意識　　　　　　　差異にスポットライトを当てる６感覚器官

この表層意識を頂点として暮らし、それを基準にしたままで死亡していくケースも多いが、

変化し続けている環境の中で暮らしていることに気づいた者の中には、生まれてきた意識を遡っていく賢人も現れてくる。

こうして、一般的な生活者と賢人と呼ばれる修行者の生き方によって、死生観に違いが出る。

表層意識　　感覚器官を通して外界からの信号を「自分」という主体を使って認識する日常生活の意識

潜在意識　　インプット信号に対応する自動反応回路で世界を認識していることに気づき、これを弱体化する

観念意識　　観念による過剰一般化によって世界を認識していることに気づき、それを弱体化する。

統合意識　　分析して統合するアイデンティティーによって世界を認識していることに気づき、それを弱体化する。

行動意識　　自分の意識と体がつながっていることを認識し、動くことによって得る意識を育む。

共通意識　　他の生命体との共通項にスポットライト当てることで区別することを弱体化する。　

直観意識　　元素の基になる微細エネルギーを体感して、その交感する意識を育む

枠組意識　　知識は定義する（枠組み）によって世界を認識していることに気づき、それを弱体化する。

分別意識　　知は分別によって世界を認識していることに気づき、それを弱体化する。

全体意識　　「ありのまま」は分けずに直観よって世界を認識していることに気づき、それを弱体化する。

真空意識　　なにもない空間から時空の点が湧き上がる刹那を感じるのを待つ意識を育む

真我意識　　時空とエネルギーを持たない元来の自分の意識に出遭う

意識から物質へのプロセス

意→モノ		領域、機能
パーリ語	梵字
dhammā		arūpa 無色界	エネルギー kammicエネルギーのパケットである。 dhammāは観念、さらには仏法も含む dhammāにはaniccaやdukkhaの特性はない。 しかし、dhammā にはanattaの特性はあるので、本質的に必要な重要なものは何もない。 kamma bijaはdhammāの一部である、とも言える kamma bija以外にも多くの Dhammāがある。
kalpaカルパ			dhammaが集まった4特性
kamma bija カルマの種			abhisaṅkhāraだけがkamma bijaになる エネルギーの塊
gati		arūpalōka 28〜31	「性向、キャラクター、性質、特質、偏向」になる rūpaのgati段階、 すなわちrūpaの起源は、「manō rūpa」とも呼ばれます。 これらはマインドで視覚化するもの。 過去のシーンを視覚化がmanō rūpa gathiを作成するプロセスにおいて、関連する物質的なものについて私たちは常に考えます。それらがmanō rūpa hadaya vatthuだけがある。
		rūpalōkas
mānasan	buddhi 分別意識	メンタル界	知を使って１を２にする　　想saññāとの照合 アラハンはここまで、これ先の過程には進まない
hadayan,	ahankāra 枠組意識	vēdanāの タグづけ	具象化することで抽象度を下げる
pandaran	manas   共通意識	想saññā	「パワーを追加する」　　 ２つをつなげるために共通点にスポットライト 記憶と記録を照合する
manō manāyatanam	jīva 統合意識	行sankhāra	アイデンティ（分類）をまとめて統合する エピソード想起を繰り返しさらに愛着を深める
mana indriyam	tanmātrā 観念意識	計算処理 変換処理	一般化、観念化　　　シンボル化 微細元素tanmātrā
viññāna	bhūta　 潜在意識	kamma viññāna	粗雑元素　　　　パターン認識する anusaya、āsāvas、gatiのために非常に汚染されたcitta 意識過程citta vithiのjavanaステージ
viññānakkhandha	rūpa 表層意識		物質 　dhātu 11種類のviññānaを含むviññānakkhandhaの一部になる
bhūta	suddhāshtaka dhammā	rūpalōkas 12〜19	gathiが育まれるとbhūtaになり、これがsuddhāshtaka のステージ カルパの複合体である八元素suddhātthakaになり、 すなわち物質を生成する。 物質の最小単位bhūtaで作られたhadaya vatthu mana indriyaはdhātuではなく、bhūtaで hadaya vatthuは上位3種はdhammāで 構成されているのではないか？ マインドで経験するrūpaがdhamma manañca paṭicca dhammē ca uppajjati manōviññāṇaṃ Cha Chakka Sutta (MN 148) dhammāとmana indriyaの接触がmanō viññāna anidassan appatighan dhammāyatana pariyā pannarūpan anidassanaは「見えない」ことを意味し、 appatighaは「最高の器官でさえ感知できない」 dhammāyatanaはmana indriyaのこと Pariyā [pari+yā] winding round，転回 pannarūpanはrupaとの唯一の接触を意味する。
mahā bhūta	４大元素 色、音	rūpalōkas 20〜27	bhūtaがさらに密を増したもの rūpi brahmasが住む　16段階 brahmasの体はmahā bhūtaで構成されている gandhabbasの微細体はmahā bhūtaで構成。 hadaya vatthuにcakkhuとsōta pasāda rūpaがある BakaBrahmāが到達し、普遍世界と勘違いしていた領域 Brahmanimantanika Sutta (MN 49)では、釈尊と彼の弟子たちがこの領域を訪れ、Bakaを諭した。
微細なdhātu		kāma lōka ６〜11	mahā bhūtaがさらに凝縮する devaは人には不可視の繊細なdhātuで構成 cakkhuñca paṭicca rūpē ca uppajjati cakkhuviññāṇaṃ、 sōtañca paṭicca saddēca uppajjati sōtaviññāṇaṃ、 Cha Chakka Sutta (MN 148) (vanna) rūpa すなわち光とcakku indriya（眼）が接触 するとcakku viññānaが起こる。 視覚には光の粒子（光子）と肉眼との相互交流がある。 アインシュタインまでは光は粒子だとは考えられて おらず、Comptonたちが証明したのは1920年代 sadda rūpa（音波）が sōta indriya（耳）と接触 するとsōta viññānaが起こる。
粗いdhātu	香、 味、 体（触感）	欲界 kāma lōka １〜５	私たちの体は、密度の高いdhātuで構成されている。 ghānañca paṭicca gandhē ca uppajjati ghānaviññāṇaṃ jivhañca paṭicca rasē ca uppajjati jivhāviññāṇaṃ kāyañca paṭicca phōṭṭhabbē ca uppajjati kāyaviññāṇaṃ Cha Chakka Sutta (MN 148) kāya viññānaは最も粗いpottabbaすなわちdhātu との接触に起因する。 身体の接触（感触）、味、匂いは粗い接触です。 それらは直接の接触（pottabba）を伴い、 それらは固体粒子（味と匂い）を伴います。

rūpaの段階　　エネルギーから物質へ

rūpaの大きさとその寿命と感覚器官

	大きさ	寿命	界	感覚・メンタル器官
nāmagotta	ない	未来永劫			エネルギーを持たない
dhammā	photon の 10億分の1	有限			nibbana以外のもの
gati	dhammāの集合体		arūpa 無色界	hadaya vatthu	エネルギー構成物
kalp
bhūta	原子の 10億分の1		rūpa　　 色界	hadaya vatthu mana indriya	suddhāshtaka物質最小単位 kalpaが８つの複合体
mahā bhūta			rūpa　　 色界		メンタル界の目と耳 嗅覚、味覚、触覚はない
微細なdhātu			kāma 欲界 deva		肉眼では見ることができない
粗いdhātu 最も密度が高い			kāma 欲界 人、 動物以下	mana indriya 眼vanna rūpa varna 耳sadda rūpa 鼻gandha 舌rasa 体 ōja	cakku indriya sōta indriya pottabba 　　kāya

心の受vedanāを使って苦しみから離脱する方法

釈尊の大発見とはヒトの心には受蘊という入力信号にタグをつける機能があるので、

これを使うことでこの世から離脱することが可能であるということであった。

受vedanāには9種類あるので、自分に感じているのはどれなのかを知るが１つの目標である。

だが、はじめのうちは、そのような余裕もないので、

することはただ、自分の感じたことを、近・遠（快・不快、好き・嫌い）どちらの感覚なのか、

ゆったりとした気持ちで、それを確認するだけで良い。

その感覚を否定したり、肯定したり、評価するのではない。

ただ観ているだけ、気づいているだけ、で苦しみが減少する。

メカニズムは、

その感覚が「近よりたい・遠ざかりたい」という極端なものであっても、ただそれを心穏やかな状態で見ることができると、

その入力データに近・遠のタグを貼ることはせず、心が穏やかであれば、近遠のどちらでもないupekkhaのタグを貼ることになる。

そこで、徐々に近遠の感覚が弱体化して、両極端の感覚が減っていく。

すべての入力信号にはタグがつくが、それはその時の自分の心の安定度に比例する。

近・遠のタグが貼られ、想saññāと結びつけて自動反応回路である行sankhāraを作成するので、

一番はじめの段階の受vedanāでいかに近・遠のどちらでもないupekkhāのタグを貼ることが重要になる。

そうすれば、苦しみを生み出すカルマの種kamma bīja（無色界のsankhāra）を生み出すことがなくなるからである。

ポイントは、その時に心が穏やかであること、呼吸と血圧と心拍が安定していることである。

そうでないときには、逆効果になるので、ただちに自分の感覚を観ることを中止する。

生命体は反射運動というスピードの速い反応において、サバイバルしてきた歴史があるので、

このようなタグづけがプログラミングされているが、意識体は過剰にこれを運用することで、

逆に生きづらく苦しくなっているのが現状であり、意識を活用するメリットに付随するデメリットである。

また感覚に対して、意図的にそのことについて「近づく」「遠ざかる」感情を考えることは、

本人は気づいていないがこの意識の底流には渇望、嫌悪、無知の固執があるので、後々に苦しみにつながるので、

パターン化しそうなことがあればすぐにその言動を中止する。

アラハンは、固執した考えを一つも持たない。

この世の性質は、自分の「近づく」「遠ざかる」という望みが長期にわたり継続することなく、

物質的なものはエネルギーのない世界から見ると拘束される苦しみであり、

自分ができることはなにもなくただ無力であることを常に体感して暮らしているからである。

希望でさえも、いやだからこそ、それは未来を確定させるエネルギーであり、

結局はその希望によって苦しむことを将来の結果になるからである。

したがって、エネルギーの宿命を理解し、実感し、ありのままの姿を見る練習が必要となる。

こうして道を歩むことで、諦観でエネルギーに接し、寂静という感覚を体感し始める。

瞑想者がすることは

安らかな心と共にvipāka vēdanāを体感すること。

Samphassa jā vēdanāは起きないようにすること。

vipāka sukha vēdanā（たとえば禅定の喜び）に溺れるのを避けること。

Nirāmisa vēdanāは育むように努力すること。

samphassa jā vēdanāとはsamphassa (san + phassaすなわち自分のマインドの中にあるsanとの接触によって生じる

対象に渇望または反発がある感情）、すなわちsōmanassa vēdanāとdōmanassa vēdanāのことです。

vēdanāの９種類

	近寄る	遠ざかる	どちらでもない	特徴
	快	不快	中立
肉体の感覚	Sukha	dukha	upekkha	誰にでもある
心の感覚	sōmanassa	dōmanassa	āmisa upekkha	阿羅漢はupekkhaだけ
八正道の途上の感覚	nirāmisa sukha	nirāmisa dukha	nirāmisa upekkha	修行者が育成するもの

3番目のタイプの受vedanā

nirāmisa vēdanā

日常生活ではマインドはストレスを感じますが、普通の人間は、マインドのこの熱（tāpa）にさえ気づいていないかもしれません。

sōmanassa vēdanāを生成している場合でも、それらは必然的にマインドのストレスにつながります。

ストレスはdōmanassa vēdanāで簡単に確認できます。

世俗的な対象物への渇望（および反発）から離れているときに発生するのがnirāmisa vēdanāです。

san（付加された貪瞋痴）の悪影響を理解し、それから遠ざかることによって、マインドが熱くなるのを防ぐと、

マインドは「冷え」始めます。

これがnirāmisa sukha vēdanāです。

寂静や寂寞と表現されることもあります。

日本文化でいう、「侘び」「寂び」の感覚でもあります。

これはMahā Satipatthāna Suttaの「ātāpi sampajāno 」で強調されているものです。

ātāpi とはā否定＋ tāpa熱を意味するので、エネルギーがないことを指します。

sampajānoはsanをpajānāti：[pa +ñā + nā]明確に知ることを意味し、

それはsanすなわち「不道徳な傾向（貪瞋痴）」を認識することによって、

人のマインドから火すなわち熱エネルギーを取り除くことを意味します。

jhānās（サマディー・禅定）で感じる気持ちもnirāmisa sukha vēdanāです。

そのような感情は、人に必要な贈り物をしたり手助けを自然にしているような、徳ある行為をしているときにも経験できます。

ただ重要な点はその時に評価や見返りなどの意図があれば、それはātāpiではなくなります。

ヒトの意図はtāpaすなわち熱があるので、nirāmisasukha vēdanāではなく、sōmanassa vēdanāになります。

瞑想に従事している間はNirāmisasukhaを体験できます。

これは、anicca、dukkha、anattaを理解してそれらのbhāvanāを行う場合、

つまり「ātāpi sampajāno 」を完全に理解して行う場合に最適化されます。

つまり、付加された貪瞋痴を整理し続けて、エネルギーを取り除くことです。

これはまだ私見ですが、bhāvanāとは、bhava＋nāで

31領域の上位20の枠組にエネルギーを送る行為のことで、いくらエネルギーを取り除くといってもはじめは難しいので、

そのエネルギーを下位6領域で溜めるのではなく、上位で溜める行為を指すのではないかと推察しています。

bhāvanāは一般的には瞑想、メンタルの成長と訳されており、アーナパーナ瞑想はānapāna bhāvanāの訳です。

vēdanā との付き合い方　　アラハンと領域

各自の解釈によって勝手に因と果を結びつけたサンカーラのために、いろいろなvēdanāが起きる。

この自動反応回路の発動を避けるためには、それが起きない環境にいることである。

しかし強力な回路はすぐに反応してしまうので避けるのは難しい。

しかしサンカーラによって起こる快・不快の感覚を完全に避けることは可能である。

たとえばアラハンはこれらから完全に解放されている。

まずは身体で感じる感覚について考えてみる。

sukhaのような快適な感覚は５つの感覚器官を経過して生起する。

例えば、快適な居住空間にいたり美味しい料理を食べたりすることで。

また頭痛や悪臭などがあれば、それらは５つの感覚器官を経過してdukha vēdanāとして生起する。

この2つのvēdanāは生来の因果の法則によるものなので、アラハンでも持っている感覚である。

脳を経過する徳のある因果の法則であればSukha vēdanāとして生起し、それが不徳の因果の法則であればdukha  vēdanāが生起する。

主にはこれらsukha と dukha vēdanāの感覚は物質の密度が十分に高い欲界で生起する。

また六道の内の下５つで（人間道、修羅道を三善趣、畜生道、餓鬼道、地獄道）特に下の4つでdukha vēdanā

は主に生起する。これがSōtapanna（預流果　涅槃に至る第一段階）は dukha vēdanāを感知しないので、最悪の苦しみに打ち勝った者と言われる由縁である。

deva lokas（欲界の天界）では善の因果の法則のためにsukha vēdanāが主な感覚である。

これがSōtapannaはdukha vēdanāを感じず、sukha vēdanāを感じるので、人間界以下の領域に二度と生まれることがないく、これから先もずっと健康である。　

色界と無色界では主に禅定の喜びがある。Sakadāgāmi（一来果　欲界にもう一度戻る）、そしてAnāgāmi（不還果はkama lōka欲界で生まれることはもうない）は、これから先もずっと幸福である。

体に感じる結果としての感覚vipāka vēdanāはニュートラルである。

後の四感の感覚もニュートラルである。

adhukkhama asukha（苦しみでも喜びでもない）で upekkha vēdanāとも呼ばれている。

これは体験できる本当のリアリティーであり、感覚とは(“vé” 存在+ “danā” 気づく) のことで、

絵を見たり、音を聞いたりして、そこで起きていることに「気づく」ことである。

たとえば駅で人を見るだけでは、だれにとってもはじめはそれはupekkha vēdanāでしかない。

しかし次の瞬間に、その人が自分の子供ならばsōmanassaに、敵ならばdōmanassa感覚に二分される。

それに対して見ず知らず人であったり、見る人がアラハンであれば、どちらの感覚も生起しない。

sōmanassa and dōmanassa vēdanāはマインドが作ったものなので、manō sankhāraによって生起している。

そしてこれらのmanō sankhāraは各自の性質や環境や渇望から起こる。

頭痛はdukha vēdanāであるが、この頭痛がどれぐらい続くかと感じて苦悶したりするのはdōmanassa vēdanāである。

ケーキを食べて感じる味覚はsukha vēdanāであるが、後で楽しむためにもっと買おう考え始めるとsōmanassa vēdanāが起きている。

このように５種類のvēdanā  (sukha vēdanā, dukha vēdanā, upekkha vēdanā sōmanassa vēdanā  dōmanassa

vēdanā)があるが、sankhāraのため、この世で私たちの感じる感覚の殆どは後者の2つのsōmanassa vēdanā

とdōmanassa vēdanāである

またsankhāraはbhava（枠内に蓄積されるエネルギー）を創り、ここから現世や来世の因果が起きてくる。

(abhi)sankhāraによってカルマの種が作成されて、閉じた輪（輪廻）の中で生きる転生が維持されていく。

これがsansāraと呼ばれる理由で“san” + “sära“とは「良い」という意味である。

人はsankhāra (“san” + “kāra” とは “kriya” 同義語で意味は「行動」) をやり続けるのが、

「良い」ことだと解釈することで成立している世界が、sansāra （転生プロセス）である。

こうして苦諦Dukkha Saccaに説かれている五取蘊（カルマの種）が私たちの身体に起きるdukha vēdanāを生起させるのは、原因を過去にもう作ってしまったことで、因果法則に従って未来において輪廻転生の中で結果が顕出するためである。

種が実を結ばないようにするためには？

因果の結果が生起する状況に陥らないためには、どのようにすればいいのか？

それは特別の力ではなく、常識さえあればいい。

例えば夜遅くに危険な地域に行けば、過去に作った悪性の「カルマ（因果）の種」が育つ可能性が増加するので、

常識をもってそれを避けることが可能性を減少させたり避けることになる。

前世から続く無数の善と悪の原因kammaがあるので、もし常識を持って行動する毎日を暮せば、悪因bad kammaが育つ機会を減少させ、

善因good kammaが育つ機会を増加させることができる。

しかし、これらの原因kammaの中に各自の性質や環境や思いによる渇望や嫌悪への執着を通してできたものがあり、

そこから生まれてくるvēdanāがある。

それがsōmanassa vēdanāとdōmanassa vēdanāである。

これらのvēdanāはアラハンは感じない。アラハンは悪い性向や性質や習慣がもうないので、

(abhi)sankhāraを留めていないため、サンカーラから起こるvēdanāを避けることができるからである。

　

例えば、

転法輪経の中に

Saṁyutta Nikāya 56　2. Dhammacakkappavattanavagga　11. Dhammacakkappavattanasutta

「誕生は苦しみであり、老いは苦しみであり、死は苦しみである」という一節がある。

“jāti ‘pi dukkhā, jarā ‘pi dukkha, maranan ‘pi dukkha…….”.

この節の意味は、結局は全ての誕生 jātiは苦しみを導くということである。

釈尊が伝えたかったのは、閉じた輪の中にいる限り、どのような「界」、

たとえば天界（欲界）、色界、無色界であっても結局は苦しみに導かれるということである。

このパーリ語の解釈を、私の日々の日常生活の感覚では理解すると以下のようになる。

“jāti ‘pi dukkha”

は「jāti‘pi dukkha」は、文脈によって「jāti pi dukkha」もしくは「jāti api dukkha」の短縮形である。

パーリ語の“pi” とは“priya”の短縮形で英語のlikeを意味し、“api” とは“apriya” のことでdislikeを意味するのであるが、

どちらのケースの短縮形も“ ‘pi”であるのでパーリ語では文脈によって判断するらしい。

誕生が苦しみであるという体感は、瞬間的にも涅槃nibbānaを体験した者が、その境地からみれば、

この世のいかなる体験も、結局は望むことは長続きせず（aniccā）、喜びになるものではなく（dukkhā）、

何をしても助けにならず無力であり実体がない（anattā）を意味しているので、

この世の喜びを謳歌している者にとっては「生きることは苦しみである」ということをすぐに理解するのは容易ではない。

もし“jāti ‘pi dukkha”

を「誕生は喜びであり」と訳したとしても、それは好きなモノの誕生は喜びであるが、自分に害を与えるモノの誕生は苦しみである。

これらは愛着や執着のためにこのようなの好き嫌いの違いが生まれてくる。

はじめに受vedanāで近・遠のタグを付けたことで、後に渇望や嫌悪の自動反応回路（行sankhāra）が作成されるのである。

この受vedanāも行sankhāraも外因ではなく内因である、つまり各自の心・意識・魂の問題である。

正確にいうと、外因は回路の部品でもなく、トリガーとも言われるただのきっかけの入力でしかなく、

各自の心の状態によって、外因は渇望にも嫌悪にもどちらでもない状態にもなる。

パッと見では、これらは外からくる原因（外因）だと見えてしまうかもしれないが、それは単なる一要素であって、

その要素をどのように受け止めるかというのは内側の問題であるので、原因は内側になる。

たとえば、同じ「鍬」も見ても、ある人は石だらけの畑を開墾できるので、やっと手に入った喜びであるが、

他の人はそれを武器として捉えて憎しみを持つ相手への感情が沸き起こっているかもしれない。

私たちは外部から要因が喜びや悲しみを起こしていると思おうとすることで、自分の内側を観ることを避けようとしているのである。

津波で身内が亡くなると、家族に大きな苦痛を与えます。

悲しみは彼の遠い親戚には少なく、彼を知っているだけの人にはさらに少なくなります。

そして、彼と関係のない国の反対側の誰かにとって、それは「単なるニュース」です。

したがって、これらの感情はすべて、ある種の愛着であるtanhāによって発生します。

貪欲（渇望、好き）または憎悪（嫌い）はすべてmanō sankhāraによるものです。

感情（または感情を生じさせる認識）は、自分の内側に存在します。

それは外から来るものではありません。

私たちは自分の意志によって、幸福や苦しみを引き起こすために外部のものを使用しているだけです。

外側に固有の苦しみや悲しみなどは存在しない。

感覚は外側の要因と接触することで、苦しみや喜びが起こるが、それは各自の性質や状況や渇望によるものであるからである。

だからこれらの渇望を取り去っているアラハンはこのような感情的な反応とはもう無関係な存在になっているのである。

だからといって喜びの感情を持たないことをすすめているのではない。

私たちが苦しみから解放されるためにしなければならないことは、自分の家族に対する愛着をやめることではなく、

パターンに囚われて、それらにコントロールされないこと、そして新しい「思い」のパターンを作らないことである。

私たちがする必要があることとは、新しい原因を排除することです。

明日や未来（来世においても）でそのような関係が形成されるのを止めるためです。

つまり、この世の義務をしっかりと果たしながら、転生プロセスを停止するように働きます。

縁起説（十二支縁起）はパーリ語でpatiichcha　samauppadaというのだが、

sama uppadaは量と質の両方を意味しているので、“pati（対して）+ ichcha（好き）”が強ければ、

その分だけ“sama （似たものが）+ uppada（生起）“も強くなる、ことを意味している。

また、paticcasamuppāda（十二縁起）によるとsankhāraの蓄積がどのようにさまざまな感情につながるかが明らかになります。

無明を原因とする縁起説akusala-mula paticcasamuppādaに

「phassa paccayā vēdanā」のステップがあります。

この発生するvēdanāは実際には「samphassa jā vēdanā」です。

貪瞋痴のある接触によって起きる感覚のことです。

対象に渇望または反発がある場合、samphassa jā vēdanā

すなわちsamphassa (san + phassa　自分のマインドの中にあるsan（余分に足されるもの）との接触によって生じる感情）を生成し始めます。

たとえば、Aの敵はAを見るとdōmanassa vēdanāすなわち、悪い感情を生成しますが、

Aの友人はsōmanassa vēdanāすなわち良い感情を生成します。

同じことは、音、味、匂いにも当てはまります。

たとえば、一部の人が楽しんでいる料理であっても、他の人にとっては嫌悪である可能性があります。

「普遍的に良い」味があるように見えても、そのような普遍性はアラハンには当てはまりません。

大念処経のvēdanānupassanā

大念処経では、気づきの瞑想が行われるが、その「感覚の気づき」のパートがvēdanānupassanāです。

まず、vēdanāが経験しているタイプを特定し、次にそれらについて何をしているのかを認識していきます。

一部の人が信じているような、すべてのvēdanāを取り除くことを、試そうとするのは間違っていることです。

これはプロセスを無視して結果に直接に飛びついては滑り落ちていくような行為です。

サティパッターナ瞑想におけるvēdanānupassanāの鍵は、感じているvēdanāの9種類をちゃんと認識できるかどうかである。

もしそれがdukha (vipāka) vēdanāであるならば、まずはできる限り減少できる方法を模索して、

その後は、その苦しみの感覚を安らかな心と共に見守ることである。

そしてその後に、なぜそのような苦しみの感覚が起きたのかを理解する必要がある。

これが目的である苦しみを止める方法である。

たとえば、座っている時に足が痛い時は我慢するのでなければどうすればいいのか？

我慢することで痺れて無感覚になるのは長い目で見れば良いことではない。

ただ痛みを感じることで学べることもある。

１つは痛みは自分ではないことを徹底的に確認することである。

それが実感できれば、メンタルのvēdanā であるdōmanassa と sōmanassa は生起することはない。

痛みも痺れもあるがそれは物理的な感覚であって、私や私の心ではないことが明白になる。

なぜdōmanassa と sōmanassa vēdanāを起こしてはいけないのだろうか？

その感覚に嫌悪もしくは渇望のタグがつくことで、サンカーラが作成される可能性が高まるからである。

また、その時にサンカーラが作成されなくても、似た信号を経験するときに以前にタグをつけた記憶のデータを照合して、

サンカーラを作成する可能性が一段と高まるからである。

したがって、特にTilakkhana(無常・苦・無我)を理解しようとする訓練を始めた時にはnirāmisa sukha vēdanāを育てることで、

dōmanassa とsōmanassa vēdanāが起きないようするのが良い。

vēdanānupassanāとは体験しているvēdanāの種類を見極め、それらをどうするか決めることである。

繰り返しになるが、すべてのvēdanāを取り除こうとするのは間違いである、

vipāka vēdanāにはlōbha、dōsa、mōha（貪瞋痴）はないが、vipāka vēdanāが貪瞋痴のあるsamphassa ja vēdanāにつながる可能性がある。

vipāka vēdanāはupekkhaの状態で経験することを目指すもので、

Samphassa jā vēdanāは停止させるもので、

Nirāmisavēdanāは育むものである。

要約すると、vipāka dukha vēdanāを避けるために、それらが出現する条件を作らないようにします。

それらが発生したときにvipāka sukha vēdanāにふけるようにはしないようにします。

samphassa ja vēdanāを抑制して徐々に弱体化させて、nirāmisa vēdanāを育成します。

これがvēdanānupassanāのすべてです。

寂しい感覚

八聖道を実践している者はマインドが作っている3つの感覚を知ることになる。

これらは抑圧したり排除させようとしても表れ出てくるもので、

それはnirāmisa vēdanāと呼ばれるもので

nirāmisa sukha vēdanā

nirāmisa dukha vēdanā

nirāmisa upekkha vēdanā

の３つがある。

 (nis+āmisa); free from sensual desires, disinterested, not material ,　

すなわち、五感覚欲求から離脱している感覚である。

日常における渇望と嫌悪から離れたために起きる感覚であり、

三毒（貪瞋痴）の悪影響を理解することで、マインドは熱くならず、落ち着いて冷静な時の感覚である。

これはサティパッターナでも“ātāpi sampajāno”

として強調されていることで、自分の感覚の無常を気づき続けることで、自分の無意識の中にある貪瞋痴を見守ることで、

マインドから熱を取り除く、という意味である。

禅定している時に感じる感覚もnirāmisa sukha vēdanāである。

この時にtāpa（熱）は消えている。

これらの感覚は他人の必要なことを手伝っている時にも起こる。

とくに metta bhāvanāの瞑想をして、「わたし」という枠組から外に出て、「わたしたち」という枠組の中で生き、

aniccāに気づき続けている時に感じる感覚である。

八聖道を実践している時に自分の成長が十分に早くないと感じる時や、なぜ私はsōtapannaになれないのだろうか？とか、

前に進むためには私は何をしていないのだろうか？などと悩む時がある。

これらには煩悩はないので、dōmanassa vēdanāではなく、nirāmisa dukha vēdanāである。

そしてもしその感覚が中立なものであれば、それはnirāmisa upekkha vēdanāである。

想saññāを使って離脱する方法

釈尊はこのSaññāを含めた五蘊の一つ一つがヒトを苦しみの世界に導くものなので、そのために意図して言語化をして、

その特徴とデメリットと修正方法を提示した。

その修正方法を実践しなければ、想saññāの機能をただ指摘しただけでは、誤謬を重ねることに変わりはない。

お馴染みの図でいうと

AとBの濃度が違うように見えるのは

私たちが過去に学習した「一般化や法則」が源になる。

見えている図柄は白黒が交互に並ぶ市松模様である、という一般化

光があたると円柱には影ができ、影のあるところはないところより暗くなるという法則

この「一般化」や「法則」を基準にして、目の前に起きていることと照合して、判断するのが「認識のプロセス」となる。

この基準という観念がSaññā である。

自分の経験viññānaを基盤として、そこから導かれるものを「法則」や「一般化」にするのが想saññāの機能である。

そして出来上がった数々の想saññāをすぐに使えるように常に待機している場所が心の中にある想蘊saññākkhandhaである。

たとえば、干した洗濯物（viññāna）をきちんと畳んで（判断）衣装棚（想蘊）の決まった棚に区分けして整理して入れる（想saññāの生成）ように。

この感覚信号を一般化された言語に瞬時に転換しているのもSaññā の役割である。

第二外国語学習時や、同時通訳者はこの作業に長けている人が多い。

また言語に限らず、イメージ、シンボル、音、ボディーランゲージ、などのコミュニケーションの基盤は

すべてこのSaññāを通すことによって行われている。

自分の体験を同じ体験をしていない他者に伝える時には、アナロジーによってその体験を伝えるしか方法がない。

すなわち相手の既知の体験をベースにして、未知のものを疑似体験として伝え、後に実際にその体験を実践してもらうのである。

このように対象物が何であり、どういう意味があるのか、を瞬間的に完全に理解できるので、saññāを「観念」だけではなく、「認識」と訳する人がいる理由である。

同じモノや考え方を体験しても体験者各自のsaññāが違うとその後の認識が変わってしまうので、

学校や社会では同じsaññāを共有できるまで何度でも繰り返すことを強要する。

これが教育というシステムである。

こうして想saññāを次々と増やしていくことを管理社会は評価し、家庭や学校や会社は教育する。

この想saññāの１つ１つは知識と呼ばれ、これを基準に外側にある情報を判断するだけではなく、

そのように見てしまうまで徹底的に繰り返し条件反射になるまで続ける。

個々の判断ではなく、そのように無意識のうちに「見える」ようになるまで訓練（洗脳）するのが、社会の常識である。

つまり眼の前の事実と脳の中のパターンに差異があっても、心の外側にある現象そのものより、

自分の脳の中の想saññāを表層意識になる前に、迷わず選択するようなロボットになるのが、文明社会で生きるコツである。　

この合理化には効率化という多大なメリットがあるが、自分や家族や仲間の「いのち」や健康などに関する問題になると、

このような表層意識では把握していない過剰一般化は、いのちを助けるのではなく、逆に危険に導く可能性が増えてくる。

このようなケースでは、想saññāに基準を置く、無意識の言動は修正するのが良い時もあると思うのだがどうであろうか？

次に、ヒトはどのように内外の信号を認識しているのかを考察してみる。

たとえば、机の上に赤い物体がある。

すると瞬間的にその物体と想蘊にある棚と照らし合わせて、一番近いものを表層意識を使わずに選んでいる。

ヒトはこのような区分けする棚をいっぱい持っていて、内外の信号が入ってくる度に瞬間に区分して棚と照合して、新語を棚に入れたり、出したりしている。

例えば、これは赤、あれは白と区分けし、、赤のカゴに入れた後には、次には丸と四角で分けたカゴにいれ、次ににはリンゴとトマトを区分けして、

眼の前の物体の信号をひとまず、リンゴのカゴにいれる。

こうやって眼の前の赤くて円い物体はリンゴに特定される。

例えば、週末にまとめて洗濯する時に、洗濯物をいくつかのカゴに区分けしているのだが、これによって洗濯物の特徴に合わせて、洗う順番や洗剤の種類などを使い分けることができる。

無意識で行われる区分けの容れ物をカゴ、意識化した後にそれを整理したものを棚とここでは勝手に呼んでみる。

Saññā の機能には「カゴ」で無意識のうちに区別するものと、「棚」に意識的に整理するものがある。

このように情報を自分の過去に作成した枠に区分したり、枠を作るのが想saññāの機能となる。

たとえば色や形が目に触れると、目がそれを感じた瞬間に、言葉であれこれと考える以前に、

認識システムは瞬間的に「生」の情報を個別の情報に区別している。

スマートフォンのカメラ機能でいうと、顔を自動認識するアプリがちょうど想saññāにあたります。

たとえば、中央の突起物を中心線にして左右の等距離にあるモノを眼とする、というプログラムのことです。

英語で言えば眼の前のthe red thing が一般化されたan appleに化けるプロセスである。

この世の全てのリンゴなど知るはずもないのに、

勝手に一般化することで、本人は自覚していないのに分かった気になっているというマジックである。

その内容についてはなにも分かっていなくても、たしかにカゴに分けた（分類）ので、ひとまず満足することになる。

この「分ける」プロセスを「理解した」とする機会は多い。

たとえば、この動いている白くて小さな物体がヤマトシロアリの幼虫である、というように。

またこのSaññā を、「嵌め込まれた信号」と表現するとすることもできる。

身体の内外から届く「感覚信号」を予めに「彫っていた多数の穴の空いた板」に流してみて、

丁度ハマったものだけを自分が知っている信号として認識するプロセスのことである。

これによって入力された感覚信号の中にある既知のデータと似ているものを瞬間的に把握することができるようになる。

そしてこのSaññā によって「決めつけ」という過剰一般化が起きる。

ではこのような過剰一般化による誤謬の世界から離脱するためにはどうしたら良いのか？

本能ならば、それを修正することもできるが、認識は想saññāがないと成り立たないので、単純に想saññāを除外することはではない。

想saññāは特殊なTPOの時に限って、通用するものなので、

想saññāに依存して、想saññを基準にしない　　　　

想saññāは使うものであり、使われないようにする

想saññāの枠組を自分の都合の良いものに上書きする

想saññāを経由しない認識方法も学ぶ

まだすべてはわかっていないが、最後の「想saññāを経由しない認識方法」とは、saññāをpaññāに昇華させる方法である。

paññā のpa-はサンスクリットのpra-に対応し、 前に，先に，強意の意味があり、

想saññā以前のaññā [Sk. ājñā]はhighest knowledgeのことで、完全智，開悟を意味する。

この世の最高の智慧は、エネルギーのあるものとエネルギーのないものを体感することなので、

sanという余分なものを足す以前にあった智慧に至るには、

想saññāからsanを加える以前のaññāに至るはたらきがpaññāであると推察している。

具体的には、伝統的に言われているように、aniccā,dukkhā,anattāを体感し、一般化が導く先の悲しみの結果を理解し、

眼の前のありのままの姿を「いま・ここ」として共に生きることである。

簡潔にいえば、足裏を地球の中心につなげ、心身をゆるめ、骨で立ち、ゆるやかな呼吸をし、心地安らかな状態で暮らすことが始めの第一歩になる。

cittaは９段階にわたってフィルターがかかり（汚れが重なり）最後は識蘊viññānakkhandhaになるのだが、

１段階目の一番純粋であるcittaには７つのcetasika（フィルター中身であるメンタル要因）があるのだが、

その１つが想saññāであるので、生きている限り、意識がある限り、想saññāから離脱することができないのではないか？

という私見がある。

だとすれば想saññāを智慧paññāに変える瞬間が都度都度あったとしても、また想saññāは現れる。

したがって、想saññāから離脱や変換して解決する問題ではなく、このような事実に気づきながら生きていくことが、

想saññāを基準にして判断しないことなのかもしれない。

行sankhāra　　　サンカーラを消滅させる方法

具体的に表層意識にはのぼらない内に自動的に反応してしまう回路（サンカーラ）を弱体化させるには？

１　　思考法を変える方法　　　　　　　　　　　　　SAMMÂ SANKAPPA

２　「いま、ここ」の感覚に意識を向ける方法 　　　SAMMÂ SATI

３　　内観する方法　　　　　　　　　　　　　　　　SAMMÂ SAMÂDHI

などがありますが、ここでは１番目の思考法の変換と２番めの「気づき」という仏教の伝統について考察してみます。

SAMMÂとはsan+māに由来し、sanは余分に加えられたもの、māは排除するという意味になる。

これを漢字文化圏では「正」の字を当てて翻訳し、日本では「正しい」と解釈されたが、パーリ語の語源では正しさではなく、余分なものである貪瞋痴が加わっていない状態を意味する。

八聖道もしくは八正道（ARIYA ATTANGIKA MAGGA：Ariyaは「聖なる」、atthangikaは「八支の」、maggaは「道」）の実践を仏教では説いている。

八とは、１．正見（フィルターのかかっていない見解）、２．正思惟（フィルターのかかっていない考え方）、３．正語（フィルターのかかっていない言葉）、４．正業（フィルターのかかっていない行動）、５．正命（フィルターのかかっていない仕事）、６．正精進（フィルターのかかっていない努力）、７．正念（フィルターのかかっていない気づき）、８．正定（フィルターのかかっていない精神統一）のことである。

サンカーラを消滅させるには、思考パターンを変えることが有効である。

これは正思惟SAMMÂ SANKAPPA（Sammā は加算しない、sankappa は「思考・意向・意図」）の実践である。

Sammāとはsanは加算のmāは否定のことで、余分に足されたものとは具体的には貪瞋痴である。

ヒトの「思考や思想」を実際に動かしているのは、

情報に付加されている「快と不快のタグ」と「過去に学習したイメージというカゴ」と「機械的自動回路」なので、

これらは各自の過去に由来する思い込みの反応のアウトプットにすぎないので、

五蘊の話をする時には「思考」のことを「妄想」と言い変えた方が理解しやすい場合が多い。

妄想とは過去の事実に基づいて考えていることなので、「いま・ここ」の変化し続ける現実に対応していないためである。

人はいつも何かを考えているが、ほとんどは過去に体験した（主観的な）記憶（感情が付加したもの）で妄想しているに過ぎないということができる。

だから「考えては間違う、そして間違っては考える」という間違いのサイクルの中に居続けることになる。

そこで「では正しく考えよう」と思っても、そもそも何が正しい思考なのかさえよくわからない状況の中にいることになっている。

そこで、仏教では、下記の三つの妄想を避け、三つの思考をすることを勧めている。

三つの妄想とは、(1)渇望（kāma sankappa）(2)憎悪（vyāpāda sankappa）(3)害意（vihiṃsā sankappa)である。

kāma sankappa渇望とvyāpāda sankappa憎悪

dosa渇望cravinngとrūga嫌悪 aversion

この２つの類似した関係の違いを知っている方がいらっしゃればご教示お願いいたします。

引き寄せ近づくモノ　　肯定　好き　　欲　

	分析	仏教訳語	内容　　　　　特徴　差異	英語
kāma	感覚 感覚信号	欲 愛欲，欲念	色声香味触を認識する世界 感覚を受け入れて、引き寄せる心	the five sense-objects sense-desire　pleasure
rāga	接近回路	貪，貪欲 染色，色彩	預流果、一来果になっても保持する	lust,greed ,attachment colour； hue； dye；
taṇhā	付着する	愛着、渇愛	貪欲または憎悪によって結びつく付着 苦と輪廻転生の主なる根源	stick,attached, adhesion dosaとlobhaのこと
abhijjhā	abhi強い jhe静的思考 iccha	貪欲，貪求，貪愛	欲に駆られた異常な妄想 ３つある不善意業kammaの１つ abhiレベルが高い-icchā欲求	covetousness貪欲、強欲 むやみに欲しがる
lobha		貪欲	不善業の根元になる３つの１つ	greed
sukha	受vedanā 5感覚反応	楽	近づくタグ　 近づくという体的反応 vedanāを楽,苦,不苦不楽の3つに区分	physical pleasure craving
somanassa	受vedanā 心反応	喜	近づくタグ　　 近づくという心的反応 楽,苦,喜,憂,捨と分類した時の１つ	mental happiness
chanda	見えない矢	欲/志欲/意欲	色声香味触に対する欲望 貪欲（ kāmacchando）	intention，will desire
iccha	aniccāの対語	願/渴望/欲望	希求を持続させる	wishing，longing having desires

引き寄せるモノの発展形

sukha受vedanāで受け取るタグ→ rāga好感、煩悩になる →lobha貪欲→abhijjhā欲する異常な妄想

離れるモノ　否定　嫌い　怒り　　　

	仏教訳語	対義語	内容　特徴　差異	英語
rūpa arūpa	色界 無色界	kāma kāma	微細なエネルギー 普遍エネルギー	form formless
alobha	無貪	lobha	非欲 善業の根元になる３つの１つ	disinterested.
paṭigha	瞋恚，障碍	rāga	預流果、一来果でも保持する	repulsion反感/不快感
byāpādo	瞋恚	abhijjhā	怒りに駆られた異常な妄想 ３つの不善意業kammaの１つ	malevolence憎悪 fury　激怒、激情
dosa	過悪、病素、瞋 憎恨	lobha	不善業の根元になる３つの１つ	hatred，anger
dukkha	苦 嫌悪	sukha	受vedanāを楽、苦、不苦不楽の3種に区分した１つ	physical displeasure aversion
domanassa	憂	somanassa	受vedanāを楽、苦、喜、憂、捨と分類した時の１つ	mental unhappiness
nekkhamma sankappa	離欲	chanda	色声香味触に対する欲望 貪欲（ kāmacchando）
aniccā	願が継続しない 無常	iccha	希求の持続は不可能	impermanent
		taṇhā	苦と輪廻転生からの解放	free from

離れるモノの発展形

dukkha受vedanāで受け取るタグ→paṭigha不快感、煩悩になる →dosa瞋恚→byāpādo怒りの異常な妄想

一切皆苦の「苦」はパーリ語でドゥッカ（dukkha）であり、これは日本語の「苦しい」という意味だけではなく、

「不満」や「価値がない」といった意味もあります。

阿毘達磨(アビダルマ)文献によれば、苦は「逼悩」の義と定義されていて、「圧迫して（○○に）悩まされる」という意味です。

これらは自分の脳からの視点から見ると、「自分の思い通りにならない」ということです。

次にこれを仏の視点から見ると、「あらゆるものには執着するほどの価値がない」といったニュアンスでしょうか？

この苦には二つの用法がある。

一つは楽や不苦不楽に対する苦であり、他は「一切皆苦」の文脈での苦である。

前者は日常的感覚における苦受であり、これを肉体的な身苦(苦)と精神的な心苦(憂)に分けられることもある。

後者は、楽もそれが壊れる時には苦となり、不苦不楽もすべては無常であって生滅変化を免れえないので、

これも苦であるとされ、これを苦苦・壊苦・行苦の三苦という。すなわち、どのような立場にしても、苦ではないものはないわけで、一切皆苦とはこの意であるとされる。

(1)渇望の妄想。 Kāmaの英訳は sense-desire

Kāmaは欲や愛欲と訳されることが多いですが、５感覚信号によって影響を受けることを意味しています。

このKāmaの欲とは、自然にある欲の範囲を越えて執着することです。

たとえば、「お腹がすいたから何か買おう」「旅行に行きたいからバイトでもしよう」などと考えるのは自然なことで、別に問題はありません。

しかし「ここまで」という具体的な際限のない欲は危険で、これにこだわりはじめると、これは思考と言うよりも妄想です。

現代の株式会社の基本理念は収益の増大を求める社会集団なので「いくらあっても、あればあるほどいい」ことをベースにしているので、

人間は苦しみ続け、苦労を味わっています。ですから、際限のない欲望を求める妄想を避けることが大切です。

このような話をすると、人（脳）は自分にとって都合の良い範囲を限定して、その中で自分のことを相対的に判断する習性があるので

「私には、はじめから強い愛欲の妄想はない、私はそんなに欲も執着もない」という人が

都会や先進国つまり利便性の良い環境で暮らせる地域には大勢います。

「私にはどうしてもあれがほしい、これでなければダメだなどと執着することはない」と思っている人が多くいる、

と自分の身の回りを見て感じるのが常識だと思います。

そして正しいことを言い、実践している人も多くいます。

例えば、エコを唱え、地球や人に優しく、利己的な言動に異議を感じ、社会的に公平で正義感のある言動や行動している人たちです。

しかし、これらの「正しさ」や「無欲」の基準が先進国圏や都市生活圏になっているため、

日常生活のレベルの基準は後進国や村から見れば信じられないほど高く、

クオリティー・ライフに対する執着心は実は根深いものになっています。

必要としている冷房、暖房、清潔、エネルギー、利便性、安全性、福祉、医療の確保を当然とし、

そこから生まれてくる正義、純潔、公平、優しさ、公正を当然として生活しています。

これらの利便性については「空気」のように感じているので、

先・中・後進国の現代都市生活空間の基準が人類史上で異常に高まっていることを実感していることは少ないようです。

ですから、都市生活圏のレベルを維持するために、その生活圏の外にある伝統的価値観や不合理性や保守的対処法や自然をどんどん破壊して、

他の生命にも多大な迷惑をかけながら、都市生活習慣を続けながら思考ではエコライフを提言し、

自分のことを執着心の少ない善人だと思っているケースもあります。

先進国のヨーロッパやアメリカを含めても、世界のどこで200リットルの水を溜めて、それを42度まで温め、

それを捨てる習慣を持つ人がこの地球にいるのでしょうか？

これは400回分の調理に必要なエネルギーになります。

その他にも洗剤や石鹸やシャンプーはそのまま家の外に流されます。

わかりやすく比較できるのは、地球上にいる75億人の4人に1人が一日の収入が200円以下で年収で7万円もないことです。

エコや自然やリサイクルやSDGsや自然資源維持などを唱える人だとしても

1日の電気、ガス、水、ガソリン、灯油の使用量は、これらの地域の6ヶ月分になります。

Global Rich List 　　http://www.globalrichlist.com/

例えば、このウェブサイトに年収を300万円(25万円/月)を入力すると、

全世界の上位1.82％に属しており、全人類70億人のうち1億2154万1003番目に裕福な人、との表示が出ます。

時給換算すると1時間で1562.5円で、ジンバブエの平均的（大多数はこれ以下ということ）な労働者の場合は同じ1時間で63.97円なので、

東京では平均以下であったとしても、後進国と比較した場合は25倍の収入があるということになります。

都市生活圏は欲望によって成り立っている一面もあるので、その中で、欲に流されないことを自覚している人たちの生活は、

確かに都市生活圏の枠内では相対的に欲は少ない傾向があります。

しかし、この範囲を拡げるとまた違った結果になります。

「見えない」城壁の中にいるとなかなか気が付けないものですが、欲が少ない生活者も、範囲を拡げてしまうと、

大いなる欲を持っていることになります。気がつけていないだけで、執着の妄想とは意外に深くて大きいものです。

(2)憎悪の妄想　　　　vyāpāda の英訳はmalevolence

嫌な気持ちになる暗い思考が憎悪の妄想です。

たとえば「私なんか何をやってもダメだ」とクヨクヨ考えることも憎悪の妄想に分類されます。

暗い感情、嫌な気持ちが出てきたら、まずは考えることをストップすることです。

憎悪に溢れた暗い心であれこれ考えても、良いアイディアも知恵も浮かびません。

ただし怒りや嫌悪にも自然な範囲があります。

たとえば「乱暴運転はやめなさい！」と子供を叱ったりするような、

すぐに消える怒りは長期的な憎悪ではないので別に気にする必要はありません。

憎しみ、恨み、後悔、落ち込み、嫉妬、憂鬱などの簡単には消えない感情で長期にわたり妄想することが危険なのです。

なぜ危険なのか？

それは、これらの感情には部分的ではありますが、そのヒトにとっては正しい一面性があるからです。

ですから、その「正義」の一面性だけに執着していると、

時には「自分が正しい」ことから人殺しまでしてしまうように憎悪の妄想は実行力があります。

例えば戦争のように。

ここに「正義」や「正しさ」の恐ろしさがあります。

憎悪はこのように「正義」の限界を垣間見せてくれる役割もしているので、ただ「憎悪」を排除するだけではなく、

もし、憎悪があることに気づいたら排除するのではなく、まずは見守り、次にそこから離脱することです。

達人になると自らが憎悪に近づき「慈悲」の力に守られて憎悪を抱きしめることで

それが霧散して消滅していくという高い経験値が必要な高等技術もあります。

これについては次の害意の妄想で説明します。

(3)害意の妄想vihiṃsāの英訳はHurting　　

害意の妄想も憎悪ですが、自分にとって邪魔な相手に向ける攻撃的な憎悪です。

自分の好ましくない対象を、倒そう、潰そう、消してしまおうとする思考のことです。

これも日常生活でよくあることです。誰でも自分が邪魔されると暴力的になるものです。

たとえば、虫など弱い相手であれば「害虫だ」と簡単に殺します。　

時には自分にとって邪魔な人に対しても攻撃をしてしまうこともあります。

攻撃にカテゴライズすると暴力的になるので、自分の行動を正当化させるためには排除という言葉を使うこともあります。

傷つけるとは、相手側からの視点から見ると、排除されることです。

この排除する対象は害虫や人だけではありません、この世の法則や観念そのものにも該当することがあります。

例えば、差別や不平等や抑圧のように。

しかし、例えば「苦」を消してしまおうとしても消えさるものでもないし、

「死」を排除しようとしても排除できるものでもありません。

同じように「戦い」や「いじめ」などのネガティブな思考法をただ排除しようとしても、

それは一時的に表層意識という表舞台から深層意識という舞台裏に移動させただけなので、

この抑圧されたものは気を抜いた瞬間に今度は反動の力を持ってまた表舞台に戻ってきてしまいます。

ここに２つの問題があります。

排除するとは、気を抜けない社会になるということ。

このように目的を達成するために問題物を除去するという思考法は、一時的には求めていた結果になる状況を作り出すので、

よりエスカレートして除去していく傾向があります。

しかしこの問題物を除去させることで成立している時空間は、一見すると純粋で完璧で清潔で合理的な世界ですが、自然な状態ではないので、常に気を張っておく必要があります。

そして、それは気を抜いて自然に任せておくことができないので、高い意識を維持しなければならない生きづらい世の中をつくり出します。

もう一つの問題は反動です。

邪魔者を排除する思考を続けると、長期的にみると以前よりも状況がひどくなってしまうという事実です。

表舞台から裏舞台に移動させることで生じた抑圧力は、気を抜いた瞬間には今度は反動力となり表舞台に戻ってくる、

ということがあることはわかってもらえるかと思います。

ただ抑圧力とそれに反動する力の量は同じなので問題はないのではないか？という論理的な考え方をする方もいると思います。

たしかに力の量に関してはその通りかもしれないのですが、問題は障害物を排除した時空に長くいると生命体はその環境に慣れて適応化してしまい、それが当たり前となることで、使わない機能は肉体とココロの両方のレベルで退化するようにプログラミングされていることです。

具体的に言うと、体内の免疫力は低下し、肉体の機能は衰え、ココロの抵抗力がなくなることで、

自然の力によって以前の世界に一気に戻る時に、その力に耐えられない肉体、メンタル、思考回路になってしまい、

パニックに陥ってしまう可能性が高くなります。

これは、以前よりも「いのち」にとっては危険な状況に陥ることになってしまうということです。

ですから、ネガティブなものをただ排除するのではなく、そのネガティブな力を認めながらも、

それが暴走しないように付き合う方法を各自が見出して、穏やかな心をもって暮らしていくことが大切です。

次に仏教が奨めている３つの思考です。

(1) 離欲（nekkhamma sankappa)　(2)無瞋恚 (avyāpāda sankappa)　(3)無害（avihimsā sankappa）です。

(1)離欲の思考　freedom from sensual lust　　 kāmaの対義語

ものへの依存をやめようとする意向です。欲kamaの反意語です。

「ものがありすぎると苦しい（執着するほど価値がない）し、

欲から離れた方が心がやすまる。離れる方法はあるかな」と意識すると心が穏やかになっていきます。

(2)無瞋恚の思考　　a（否定）　+　vyāpāda（嫌悪）

憎悪のない、明るい慈しみの思考です。

「皆が幸せになってほしいな、どうすれば皆が仲良く平和になるだろうか」と考えます。

自分が何かうまくいかない時でも、クヨクヨと落ち込まず、明るく心安らかになる方法を考えます。

慈しみを育てると、

とても幸せに生きられます。

(3)無害の思考 a（否定）　+vihiṃsā（傷つける）　　　他者を傷つけない

仏教では、自分を害する相手を許すこと、できれば逆に助けてあげることを教えています。

私たちはすぐ「相手が悪い」と問題の原因を自分の外側に見ようとしますが、

嫌なことをする相手に怒らないで対応できるかどうかは実は自分自身の問題なのです。

外側を「敵」として攻撃するのは無知なやり方です。

無害の思考で上手く問題を解決することはすばらしい修行になります。

思考（妄想）を固定化させて放置しているのは危険なことです。

固定化された思考を使うことは、実は思考によって操られている状態のことです。

大げさに支配さてしまっていると言ってもいいでしょう。

例えば、○○主義に陥ったり、ある学問にこだわってその視点だけでこの世を理解しよとすることです。

この状態ではココロは全く成長しなくなります。無常（目の前にある現実）を受け入れず、

これまでに学習した回路（サンカーラ）に依存して、機械のように自動的に反応するようになってしまっているからです。

このように思考を使うことは危険であることをアタマでわかっていても、

多くの人は自分で自分の思考を管理しようとはせずに、逆に思考に管理されます。

自分の思考を管理するとはなにも難しいことではありません。

急に思考法を柔軟にするとか、一面ではなく多面でモノを見るとか、表層だけではなく多層で体験する、

といった魔法のような秘術を実践する必要はありません。

ただ、あるがままに「ああ、自分はこんなことを考えている、あんなことも考えている、

今は自分の考えなのにそれに操られている」と自分の思考の状態をゆったりと見守るだけでいいのです。

それが良いとか悪いとか、ネガティブなものであってもポジティブなものであっても評価をしないで、

ただそうなんだ、と見守り、自分の感覚に寄り添うだけです。

そして、その時には、呼吸を整え、ゆったりとして落ち着いた心構えでいればいいだけです。

そうすると自分は何者かが見えてきます。

自分の思考は、自分の個性であり、人格です。ですから正直に見て下さい。ダメなところも自分の一部です。

そして「悪いこと、無意味なこと、ろくでもないことを考え続けることをやめる」と決めて実行します。

すると離欲と慈しみの思考が育っていきます。

これが正思惟の「道」です。

二番目の「いま、ここ」の感覚に意識を向ける方法とは「正念」のことです。

パーリ語ではSAMMÂ SATI（サンマー・サティ） 　　

satiとは気づきのことです。　　

sanmmāとはsan足す＋mā否定で、余分なものを足さないことを意味します。

Sati（サティ）は「念、憶念、記憶」と訳されていますが、英訳はawareness、mindfulness、すなわち、気づいていることです。

「正念」とは「貪瞋痴のない気づき」のことになります。。

「ありのまま」の状態に気づいていくことで、ココロの汚れが無くなる方へ向かいます。

正念と正定は、解脱のための修行方法だと言われています。

「今の瞬間の自分に気づくこと」…これが satiの修行法です。

「自分に気づくだけで悟りまで至れるものだろうか」と思うでしょう。

私はまだ悟っていないので、この方法については本来は書くべきではないのですが、

これまでの体験で「気づき」というはたらきには実に大きな力をもっていることは実感しています。

Dīgha Nikāya 16　Mahāparinibbānasutta　経蔵長部第16経「大般涅槃経」

釈尊の最後の言葉に『appamāda：不放逸（気づかない』という言葉が出てきます。

Appamāda，[a + pamāda] thoughtfulness，carefulness，conscientiousness，watchfulness，vigilance，earnestness，

Pamāda，[cp．Vedic pramāda，pa+mad] carelessness，negligence，indolence，remissness

これは「今の瞬間に気づいている状態（覚醒している状態）を維持する」という意味です。

換言すると、気づきをやめると、眼の前のことを混同して一般化して怠けてしまうので、そうしないようにする、ということです。

新たな信号が入ってくるとそちらに気が奪われてしまうと、関係のない２つを混同し始めます。

長い時間にわたって強く集中するのではなく、ただ瞬間瞬間に気づいていることで、

自我が成立する時空がなくなり、対象物をまとめて混同（一般化）することが少なくなり、

次第に自我という妄想も減り、無常を体感し続けることで、結ばれていた紐が次々と解けて、

ありのままを知る（覚る）ことになります。

釈尊は最後の最後まで sati の実践に励むことを説かれていました。

同じ言葉でも瞑想者用語と日常生活用語では意味には違いがあり、瞑想者のいう「混同しない」というのは、

過去に学習した想蘊や出来上がった行蘊に依存して生活することも「混同して怠けている」ことになります。

『四念処経＜しねんじょきょう＞Mahāsatipaṭṭhānasutta 経蔵の長部経典 22中部経典 10（英訳）も、

sati の修行方法について詳しく説いている経典です。

そこには「人間のすべての憂い、悲しみ、悩みを全部なくすため、清らかな心を作るため、

涅槃を経験するためには sati （気づき）を実践をします」と説かれています。

「四念処」の「四」とは「身体・感受作用・心・心の内容」の四つで、

感覚器官に入る情報を想蘊（サンニャ）を基準にして認識することで妄想したり、推測したりするので、煩悩は限りなく生まれでてくるので、「身体・感受作用・心・心の内容」の変化に気づいていることで、想saññāを基準にしない実践をします。

経典には「Sati の実践によってのみ解脱に至る」と説かれてます。

それほど大きな力を持っているsati のメカニズムを説明することは私には容易にはできません。

できるのは方向を指し示すぐらいだけであとは「わび」ることぐらいです。

Sati については理屈で理解しようとするよりも、各自が実際に実践してみることで体験することが真に役に立つことだと思います。

アタマで理解したとしてもカラダにとっては意味がないばかりか害になる可能性さえあります。

もし「気づき」がなければどんな状態になるのでしょうか？

「聞くこと」を例にしてみると、耳に音が入った瞬間に「気持ちのいい音楽だ」「悲しい思い出がする」などと感情や記憶や固定観念で、瞬間的に気持ちがよくなったり、悪くなったりします。

このように「聞くこと」によって煩悩（渇望・嫌悪・無知）が自動的に無意識の内に生じてしまいます。

音に「怒りなさい」と命令されると怒り、「執着しなさい」と命令されると執着するのであれば、まるで音に操られている奴隷の状態です。

これは音だけではなく、「見るもの・音・匂い・味・皮膚感覚・妄想や思考」という六つの感覚器官から入る情報にも同じことで、私たちはこれらに命令され、支配され続けています。

これは自分のココロを煩悩に差し出しつづけている状態に陥っている、ということもできます。

感覚の対象（この場合は音）によって、意識が操られています。

この支配されている状態から離脱するのがsati （気づき）です。

自分の「いま、ここ」の感覚に気づくことによって、欲や憎悪の条件反射を止め、これを続けることで、煩悩が生じない状態に移行していきます。

といっても、この瞬間の「音」だけに気づこうとして暮らしていても、好きな音楽が突然に聞こえた時に直ちに惹かれる気持ち（過去の記憶、条件反射、執着）がなくなるわけではありません。

しかし、これでいいのです。その時は、この音楽に惹かれているのだな、と自分のココロの状態を察知してあげればいいのです。

Sati を長年にわたり、毎日毎日積み重ねていくと、対象への条件反射が減少するので、それにつれて執着は薄れますが、

音に対しての自分の感覚はあるので、音を大事にする気持ちは深まります。

私は３ヶ月ほどでsatiの力を実感しました。

この練習をしていると、六感から入力される情報に束縛されないように少しずつなっていくようです。

そして、Sati をちゃんと実行していれば、集中力（サマディ）、智慧（パンニャ）、精進（ワーヤーマ）などが意図せずともついてくると言われています。出典？

Sati の実践は「その時その時、今の瞬間の自分に気づいていく」という、とても簡単なやり方なので、

年齢を問わず、修行を始めてすぐの初心者から実践できます。

そして sati を正しくつづけると、その人を浄化して育て上げ、究極の悟りまで運び、解脱するところまで成長させる道だと説かれています。出典？

Satiの道は、涅槃まで進ませる不思議な道です。

これは、何か神秘的な体験を得る道ではありません。

表面のサンカーラが消滅しても深層のサンカーラが浮かび上がってくる理由

心に浮かぶ想いは過去に作成した「カルマの種」の条件が揃ったので因果の果実としてカタチになって表れ出た、と仏法では説きます。

サンカーラ（機械的自動反応回路）こそが過去から未来への直線的な時間を産出している源であり、

「いま、ここ」ではなく現在（過去と未来の間にある直線的時間）に生きているかぎりは、サンカーラの中で生きているということになります。

サンカーラにとっては、常にサンカーラが満ちた世界でないと居場所がなくなってしまい、存在理由が消失してしまうわけです。

だからこそ、ヴィパッサナー瞑想などを実践して、表面上にあるサンカーラを消滅させたとしても、

サンカーラは直線的な時間の流れを止めないために、まだ心の奥にある深層のサンカーラが表面に立ち上がってくるようになります。

サンカーラが表面に立ち上がらないようになった状態こそが、時間から離脱して、「いま、ここ」の世界に生きているといえると推定します。

識viññānaからエネルギーを除去する方法

苦しみを与えるものと離脱　　　viññānaとは汚されたcittaのこと

Digha Nikaya（経蔵長部） のKevaṭṭa Sutta (DN 11)の有名な句、

「Viññānaは目に見えず、無限であり、すべての人の転生プロセスにつながる」

“Viññāṇaṃ anidassanaṃ anantaṃ sabbatō pabhaṃ..”

ここで「anidassanaṃ」は「見えない」という意味です。

Viññānaは単なるnāma dhammā（メンタルの現象）ではなく、kammaエネルギーを持っています。

しかし、それは「目に見えるrūpa」よりもずっと微細なものです。

そして「ananta」の意味は無限なのでviññāna dhatuは無限ということです。

「sabbatō」は「あらゆる意味で/すべてのため」を意味します。

「pabha」は「繰り返されるbhava」を意味します。

viññānaとは汚されたcittaであり、私たちは皆、純粋なcittaではなく、viññānaを経験しています。

もっと正確にいうと、発生したviññānakkhandha (五蘊のviññāna）で条件が揃うのを待ちかまえている意識がviññānaです。

パーリ語	コップの中の喩え	内容	具体的
kilesa	泥（土と水）菌類、コップ	無明	本能
asava	底に沈んでいる発酵体	貪瞋痴	貪欲・怒・妄想
anusaya	底から表面に向かう水泡	渇望・嫌悪	欲望・願望
gati	表面に浮かんでいるアブク	性向	思考・習慣パターン

普段はcittaのことを「想い」や「思考」などと大ざっぱに呼んでいます。

解脱した者でさえ、純粋なcittaが維持されることはなく、3段階目の「mānasan」の汚れた状態を毎秒ごとに経験しています。

アラハンは悪いgati、āsāvas、anusayaを取り除き、cittaに「mānasan」の段階を超えて汚染させないことにより、

転生プロセスを停止しています。出典？

すべてのcittaが同じように汚染されるわけではありません。

cittaは、6つの感覚器官の1つが対象に接触したときにプロセスが作動するので、cittaの汚染レベルは、

その感覚入力が何であるかに依っています。

心の汚れや汚染という表現を使っていますが、これはマインドに付着しているcetasika（メンタル要因である心所）が

次々と段階ごとに加わり、だんだんとフィルターがかかることを意味しています。

マインドが最も純粋である時のpabhassara cittaは「いのち」のことなので、付着したcetasikaに「生命を吹き込む」すなわちエネルギーを与えるので、cetasikaが活性化した状態になることを汚れといっています。

ですから、cetasikaが良いか悪いかに関わらず付着することによって汚れは増しますし、

悪いcetasikaならば自分だけではなく周囲の意識体のマインドも荒たてるので汚れが大きくなります。

汚染の強弱を測る一つは自分の心の穏やかさ具合が基準になります。

またそれに対応する呼吸、心拍、血圧の変動率も数値的な目安になります。

マインドは純粋なcittaが汚染されたviññāṇaに変化するプロセスが行われる「場」のことを意味するので、

マインドの中をみてみるとそこには、９段階の意識の変化があることがわかります。

citta、mano、manasan、hadayaṃ、pandaran、mana indriyan、manayatan、viññāṇa、viññāṇakkhandhö。

の９つのステップでcittaにcetasikaが付着します。

上記の順番にしたがって、ヒトの各citta（10億分の1秒しか存在しない）は、８段階において汚染されています。

その後に、viññāṇakkhandhaに追加されます。

kamma viññāṇaとは汚染されたcittaのことです。それらは「saṅkhāra paccayā viññāṇa」を介して発生します。

しかし、vipāka viññāṇaは単なる意識または「気づき」です。

cittaの汚染は、saññāとvēdanāに現れます。つまり汚染具合によって作成されるsaññāとvēdanāが異なるということです。

たとえば、おいしい料理を味わったり、魅力的なものを見たりすると、貪欲な考えが生じることがあります。

しかし、特定の対象物に対して私たち全員が同じ欲求を持っているわけではありません。

ある人が切望している料理や素材が、他の人にとっては嫌われている可能性があります。

たとえば納豆やドリアンのように。

また他の例えでは、ある人は一部の人には好かれても、他の人には嫌われるかもしれません。

保守やリベラルの政党の党首のように。

そして実際には嫌いな納豆が目の前にあったとしてもcittaが汚染されるわけではありません。

なぜならば同時に他にも多くの信号（情報）が周囲にあるので、納豆にスポットライトを固定させる必然性がないからです。

電車に乗って窓から通り過ぎる何十億の視覚対象物があっても、それは流れる風景としてとらえられていれば、

9段階のうちの４段階目以降の汚染はありません。

次々と数十億のcittaが心の中を流れていくので、そのレベルまでしか汚染されません。

しかし、人目を引く物体を見る（スポットライトを当てる）と、汚染のレベルはより強くなります。

乳児に生じるcittaがpabhassara citta、つまり純粋なcittaであると思っている人がいますが、それは間違いです。

乳児の脳は発達していないため、自分自身を言語で観念を表現することもできず、まだ成長していないので悪行をしないので、純粋な精神であると考えているようです。

しかし、anusaya（たとえば貪瞋痴）があるために乳児のcittaも汚染されています。

anusayaは、乳児、動物、色界や無色界などのあらゆる生命が持っています。

magga phala（実のある道、具体的には預流果から阿羅漢に至る道）に到達してはじめて、

各自のanusaya（およびāsāvas渇望とsamyojana（足枷））の一部が永久に除去されます。

Sōtapanna（預流果）のcittaは、一定レベルの汚染にとどまります。

ですから、Sōtapannaはapāyas（欲界の下位４つ）の再生につながる強力なakusala cittaを確かに生成しません。

Anāgāmiステージに到達すると、すべてのkāmāsava（kāmā āsava）は取り除かれているため、

kāma lōka（欲界）の粗雑なrūpaであるdhātuで構成されている対象物は粗い官能的しかないので誘惑されることはありません。

したがって、Anāgāmiはkāma lōka（4つのapāyas、人間界、6つのdēva界）のどこでも生まれ変わりません。

Arahantステージに到達すると、すべてのavijjā（およびすべての悪いgati、anusaya、āsavaなど）が取り除かれています。

Arahant は4番目のNibbānaに到達したため、31領域のどこにも再生することはありません。

将来への「期待」

将来への「期待」が汚れた意識、すなわちViññāṇaのステージであるというのが意外である人は多いと思います。

期待が「転生プロセスの持続」を担う「カルマのエネルギー」だということが納得できないからでしょう。

私たちは想い、シンボル構築し、行動することで、（abhi）sankhāraを非常に簡単に、喜んで作り出しています。

「avijjā paccayā sankhāra」によって（abhi）sankhāraを喜んで生成し、

それが「sankhāra paccayā viññāna」の段階ではさまざまな種類のViññāṇaを育んでいます。

縁起Paticca Samuppādaサイクルが始まるのはそのためです。

それらは結局、「jāti paccayājara、marana、soka、parideva、dukkha、..」すべての苦しみになってしまいます。

したがって、「avijjā paccayā sankhāra」および「sankhāra paccayā viññāna」は、すべての将来の苦しみにつながります。

「単なる意識」と呼ぶことができる、つまり「将来の期待」がない、5種類のViññāṇaがあります。

これらは、5つの物理的な感覚入力に対するcakkhu viñññna（見ること）sōta viññāna（聞くこと）匂うこと、味あうこと、触感です。

５身体感覚を介する感覚入力に加えて、マインドへの直接の感覚入力もあります。

これらは心に浮かぶ「過去の記憶と将来の希望」のことで、これがmanō viññānaです。

理由もなくマインドに浮かび上がってきたように見えますが、過去の記憶がマインドと直接に接触することによっても起こります。

このプロセスは“manañca paṭicca dhammē ca uppajjati manōviññāṇaṃ“、つまり

mana indriya（マインドの器官である脳）がdhammā（すなわち過去の記憶のエネルギー）を感知したときに、マインドの意識が発生するという意味です。

これが過去の出来事や将来の期待を想起するということです。

こうして、マインドは6種類の「感覚入力」を受け取ることができます。

つまり、マインドはこれらの6種類の感覚イベントを「認識」すなわち「意識する」ようになります。

それらに基づいて、マインドは「行動を起こす」かもしれません（さらに考え、話す、または体を使って行動します）。

それらはvaci sankhāra（考える回路）とkāya sankhāra（行動する回路）と呼ばれています。

次に、それらのsankhāraは、縁起Paticca Samuppāda（PS）プロセスによって、汚された想い、すなわち「汚されたViññāṇa」に発展していきます。

そのような「汚されたViññāṇa」は、無明からはじまるPSプロセスを介してのみ発生することになります。

そして、それはマインドがその感覚入力（魅力的な人物、心地よい音、おいしい食べ物、いい香り、心地よい感触、

または重要な過去のイベント（または計画された将来のイベント））に執着している場合にのみ起こります。

「汚れる」というのは、識viññānaは過程の途中で多くのcetasikaが加わった分だけ、純粋なcittaに比べて付着したものがある、という意味です。

メンタル要因のフィルターがかかる、もしくはメンタル要因が付着する、と言い換えてもいいと思います。

そしてnibbanaに至るとは、識viññānaから純粋なcittaへの遡及と同意なので、cittaに付着したものを払ったりして掃除していくことで、涅槃nibbānaへの道を歩む者にとっては、「汚れている」という形容詞を使うことになります。

kamma viññānaはエネルギーを持ち、未来の結果につながるもの、すなわち原因となります。

これは良きと悪しきに関わらず将来につながるものですが、nibbanaは過去と未来に付着するものを掃除した時に至れる境地であるので、過去や未来についてつながりを捨てて、ただ「いま・ここ」だけで暮らすことによって体感できるものです。

私たちが何かを喜んで把握するときはいつでも（すなわち何かに執着するときはいつでも）、その行動から生じるすべての結果は原因に類似した性質を持っています。

換言すれば、意図して接すると、同様のbhava（存在）が発生するためです。

縁起PaticcaSamuppāda（PS）によって、pati + iccaが sati +uppādaを導くのです。

すなわち、pati + iccaは「喜んで（向かって）愛着する」ことを意味し、

sama +uppādaは「対応する（類似した）存在を生み出す」ことを意味します。

「汚されたViññāṇa」すなわち「将来への期待」がmanō viññāṇaすなわち「マインドの意識」で生じます。

縁起説（PS）で言及されているViññāṇaのことです。

マインドはその力使って、「カルマのエネルギー」すなわちkamma bijaを作成します。

『スッタニパータ』(Sutta Nipata 3.12 Dvayatānupassanāsutta):

には識viññāna（kamma viññāna）こそが苦しみの原因である、と説いてる箇所があります。

パーリ語原文　　単語	訳文
“Yaṃ kiñci dukkhaṃ sambhoti, Sabbaṃ viññāṇapaccayā; Viññāṇassa nirodhena, Natthi dukkhassa sambhavo“.	どのような苦しみが起こったとしても それらのすべては「識」によるためであり、 「識」が消滅すれば、 苦しみの生産はなくなる。
nirodhena　　消滅する Natthi　　　　 [na-atthi] なし，非存 sambhavo　 生産、誕生、原因、根源	Whatever suffering that arises, all that arises due to viññāṇa;  With the not arising of viññāṇa, there is no existence with suffering

また、 中部経典『中阿含経』(Majjhima Nikaya 49)Brahmanimantanika Suttaでは

	訳
Viññāṇaṃ anidassanaṃ anantaṃ sabbato pabhaṃ, taṃ pathaviyā pathavattena ananubhūtaṃ, āpassa āpattena ananubhūtaṃ, tejassa tejattena ananubhūtaṃ, vāyassa vāyattena ananubhūtaṃ, bhūtānaṃ bhūtattena ananubhūtaṃ, devānaṃ devattena ananubhūtaṃ, pajāpatissa pajāpatittena ananubhūtaṃ, brahmānaṃ brahmattena ananubhūtaṃ, ābhassarānaṃ ābhassarattena ananubhūtaṃ, subhakiṇhānaṃ subhakiṇhattena ananubhūtaṃ, vehapphalānaṃ vehapphalattena ananubhūtaṃ, abhibhussa abhibhuttena ananubhūtaṃ, sabbassa sabbattena ananubhūtaṃ.	Viññānaは見ることができず、無限である。 そして全てのものを産み続けるプロセスに導く。 この（純粋でない）viññānaでは本当の patavi土, āpo水, tējo火, vāyo風, bhūta元素, deva神々, pajapti brahma神々の王, abhassara　輝き流れる神々, subhakinha 栄光なる輝きの神々, vehapphala 果実の神々 を理解することができない。 すなわちこの世の全てのものをだ。
	“Viññāna is unseen, infinite, and leads to the rebirth process for all. With viññāna (defiled consciousness), one cannot comprehend the real nature of, etc., i.e., everything in this world (sabba)”.

縁起説

“avijjā paccayā saṅkhāra; saṅkhāra paccayā viññāṇa; viññāṇa paccayā nāmarūpa, nāmarūpa paccayā salāyatana, salāyatana paccayā phassō, phassa paccayā vēdanā, vēdanā paccayā taṇhā, taṇhā paccayā upādāna, upādāna paccayā bhavō, bhava paccayā jāti, jāti paccayā jarā, marana, sōka-paridēva-dukkha-dōmanassupāyasā sambhavan’ti”

私たちの日常生活の中で起きている出来事は、6つの感覚器官から情報の爆撃を受けているようなものである。

「何かを見逃すかもしれない」と恐れて、飢えた感覚が門を閉めず、うろつき探すからである。

これがマインドに「平和」が欠如にしている根本的な原因である。

あまりにも多くの「好み」を持ってしまい、それらすべての感覚信号に心身のエネルギーと時間を捧げている。

マインドに張り付いているアプリの掃除をしないと、第六感の入力、つまりマインドをオフにすることはできない。

マインドが貪欲、憎しみ、無知（間違ったビジョンすなわちmicchādiṭṭhi）に悩まされている場合、「マインドの安らぎ」が訪れることはない。　

「間違ったビジョン」に導くアプリを徐々に取り除くことによって、安らかな世界を体感することができる。

そうして、マインドに浮かぶさまざまな種類のViññāṇaの数は減っていく、

大事でもないViññāṇaが強く迫り、マインドを拘束している。

それらをオフにするのは簡単ではない。

だが、自分の心の仕組みが分かると、自動的に大掃除が始まり、識viññānaはオフになる。

大切ではないことで何をしようとするのだろうか？

考えるべきより良いもの、すなわち安らかな心をもたらすものがここにあるというのに。

Viññāṇaは転生と苦しみの原因

Dvayatānupassanāsutta (Sutta Nipata 3.12)

「Yaṁ kiñci dukkhaṁ sambhoti、

Sabbaṁ viññāṇapaccayā;

Viññāṇassa nirodhena、

Natthi dukkhassa sambhavo」。

「どんな苦しみが起こっても、すべてはviññāṇaが原因で起こることである。

viññāṇaが発生しなければ、苦しみのある存在はない。」

Brahmanimantanika Sutta (Majjhima Nikāya 49)

かつてブッダはBaka Brahmāの頭に浮かんでいるものを見ました。

「私の存在は不変で、安定しており、永遠であり、過ぎ去るものではなく、生まれたものではなく、老化したり、死んだり、亡くなったり、

出現したりすることもありません。

…私はpatavi, apo, tejo, vayo dhatuへの渇望から逃れ、もう苦しみはありません。

この存在の状態からは、さらなる解放はありません。」

ブッダはBaka Brahmaがkāma lokaで体験が可能な官能的な喜びへのtanha（愛着）がなくなっていることを知っていたので、より高いBrahmaの領域があることを告げた。

「Viññāṇaは目に見えず、無限であり、すべての人の転生プロセスにつながります。viññāṇa（汚れた意識）では、

patavi, āpo, tējo, vāyo, bhūta, deva, pajapti brahma（色界１禅定）,abhassara brahma（色界２禅定）, subhakinha brahma（色界３禅定）,

vehapphala brahma（色界４禅定）など、つまりこの世(sabba)のすべての本質を理解することはできません」。

31の領域のいずれにも避難所はない

確かにMaha Brahmāは宇宙年齢の4分の1（数十億年）という非常に長い寿命があり、

体はdhātuで構成されていないので、病気や体の痛みにさらされません。

その状態でbhavaの終わりまで平和な生活を送ります。

ですからBaka Brahmaが肉体の次元から微細体（メンタル体）に移行したことで、すべての苦しみを克服したと思ったのは当然のことです。

しかし、bhavaの終わりにはまだapāyāで転生することもあります。

Maha Brahmāはkāma rāgaを抑圧しただけであり、10のsamyojana（拘束しているもの）のどれも除去していないからです。

(1) 有身見　personality-belief (sakkāya-ditthi)　　 self identification views

(2) 疑sceptical doubt (vicikicchā) 　　　　　　　uncertainty

(3) 戒禁取（誤った戒律への執着） (sīlabbata-parāmāsa; s. upādāna) grasping at precepts and practices

(4) 欲の貪りsensuous craving (kāma-rāga) 　　　　sensual passion

(5) 憤怒ill-will (vyāpāda) 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　resistance

(6) 色貪c raving for fine-material existence (rūpa-rāga)　　 passion for form

(7) 無色貪craving for immaterial existence (arūpa-rāga) 　　　passion for formless phenomena

(8) 慢（比較への執着）conceit (māna)

(9) 掉挙（落ち着きのなさ）restlessness (uddhacca)

(10) 無明ignorance (avijjā) 　unawareness

これらは苦しみの原因となり、約100年しか維持できないこの肉体を誇りに思うことや、

この体を「私のもの」と見なす価値があると感じのは何故でしょうか。

これはdiṭṭhi（見解）を取り除く1つの方法です。

問題は「自己」があるか、ないかではありません。

「自己」の認識を持つことに価値があると考えるのは賢明なことなのでしょうか？

「自己」の誤った認識は、将来の生活において不道徳な行動と苦しみにつながるだけです。

コラム

十二因縁 Chain of conditioned arising Paticca-samuppāda　　　　　　　出典　阿含経　　

釈尊が菩提樹下で悟ったといわれる真理。十二縁起とも呼ぶ。

生老病死という四苦で言い表される我々苦的存在は，無明ではじまり老死で終わり、以下のような十二種の契機によって成立するとみる因果法則である。

典拠　相応部　Evame-tassa kevalassa dukkhakkandhassa samudayo hoti　　Samyutta Nikaya �]�U(1)1

経蔵（巴: Pañca Nikāya）の内の、第3番目の「部」（nikāya）である「相応部」（saṃyutta）に、十二縁起のことが記されている。

漢訳仏典における『阿含経』の内の『雑阿含経』に相当する。

漢字仏教用語	英訳	パーリ語	内容
無明 むみよう	ignorance	avijjā	a否定　　　vijjā： higher knowledge叡智 貪瞋痴の覆いが付加されて、昏くなっている状態
行 ぎよう	reaction	saṅkhāra	saṅ付加するkhāra　行為 自動反応回路化したアプリケーション・プログラム
識 しき	consciousness	viññāṇa	vi分割したññāṇa全体性智慧 エネルギーを生み出す認識の仕方
名色 みようしき	mind & body	nāma-rūpa	nāmaメンタル界とrūpa重力界 意識エネルギーと重力エネルギーに転換
六処	six senses	salāyatana	sal＝6種の　 āyatana　探索する意識 心、目、耳、鼻、舌、体が対象を探す
触 そく	contact	phassa	phassa．[phusati，Sk．sparśa] 触，接触 器官と境（dhammā、光子、音、香、味、触）との結合
受	sensation	vedanā	vedanā　vediは知るyu結合する　知るものにタグを付加　　　 別の解釈はvé” 存在+ “danā” 気づく 近・遠・中立のタグをつける
愛	craving &aversion	tanhā	tanhā　付着する （近・遠に）付着するattachment、すなわち愛着
取	attachment	upādāna	upa近く+ādāna引っ張る 対象物を引き寄せて、エネルギーを注入する
有(う)	the process of becoming	bhava	bhava　メンタル・エネルギーの容れ物 枠組の中に蓄積されるエネルギー
生 しょう	birth	jāti	jāti　生まれる、誕生 形になる、エネルギーが凝縮して物質になる
老死	ageing and death	jarā-maranam	jarā-maranam　老死 メンタルと肉体の苦しみの継続

参照文献

The gem set in gold Acharya S.N. Goenka

解釈の経典は、Vinaya-pitaka律蔵 　　sutta-pitaka経蔵 （Collection of Discipline）

Dear Bikkhus, I introduce thought as karma. It is after having thought that we engage in action physically, verbally and mentally.

( Nibbedhika sutraya)

コラム

業とはいったい何なのか？　　カルマとは五蘊がうみだす意図のことなのか？

「比丘らよ、『意志が業だ』と私は言う：Cetanāhaṁ, bhikkhave, kammaṁ vadāmi」 というブッダの言葉があります。

Nibbedhikasutta　Aṅguttara Nikāya 6.63　英訳　Penetrative

cetanā：'volition'，will，consciousness，

one of the seven mental factors（cetasika）mental impression認識作用・接触（phassa），feeling （vedanā），perception （saññā），

volition （cetanā），concentration （samādhi），vitality 生命（jīvita），advertence作意・思念・注意（manasikāra）．Cf．Tab．II，III．

Bhikkhu　　出家し具足戒を守る修行比丘

Vada，（adj．） speaking

ここでは「kammam業」＝「cetanā意志」と説いています。　

意志には、表層的な意志と深層の「作為の有無」があります。

ココロには常に「行為を起こす動機となる想い」があります。

例えば、妄想する場合でも、「なぜこういうことを妄想するのか」と調べてみると、そこには意志とその底流には何らかの「作為の有無」があります。カルマの種のことであり、深層意識にあるアプリ回路のことです。

この「想い」がcetanā（意志）であり、これが「業」です。

この「想い」とは浄化されているかどうかを問われるもので、表層的の「何かしたい」という時の意志だけではなく、

その底流にあるのが「作為の有無」です。

無私であるかどうかを問われているのが「cetanā意志」です。

この「cetanā意志」が清らかなものか、貪瞋痴で汚れているかによって、それが善業か不善業かが決まります。

たとえば「自分が成功したい」という貪りや「人に負けないぞ」という怒りで行動するのは不善業です。

欲や怒りが強いと意志も強いので、一時的にはうまくいくように見えますが、長期的には良い結果にはなりません。

一見「良いこと」であっても、cetanā意志が清らかでない場合は、長い目で見れば結果的には悪いことになります。

ここでいう良いと悪いとは宇宙の法則に則しているか、反しているかということです。

また物質エネルギーの領域に留まるのを悪、意識エネルギーや普遍エネルギーに向かう力を善と呼びます。

無私なのか作為なのかということでもあります。

例えば「病院をつくりたい、学校をつくりたい」という意志は、一見では良いことであっても、善業（カルマ）か悪業（カルマ）かはわかりません。

欲のない慈しみの気持ちではじめると結果も良いし、充実感も得られます。

なるべく「自分が」という意識（自我）を判断の基準にせずに行動することが、良い結果を得る道です。

1つの理由は、創設者ではなく、学校の生徒の現在と未来にとって適切なことかどうかが問われるからです。

ある行動の動機である意志（ヒトの計らい）だけではなく、その底流にダルマ（宇宙の法則）があるのかどうかを問うことが重要です。

一般的に言う意志には作為（ヒトの計らい）があることを見極めて、その奥にあるものに注意をするように説いたのがブッダです。

業の積み重ねのメカニズムはどのようになっているのでしょうか？

ピンとこないかもしれませんが、たとえば花を見て「花だ」と思ったら、その瞬間にもう業を積んでいるケースもあります。

「花を見る」とは、眼球から入った情報を瞬時に脳の中で分解してからまた統合することで「花」であると認識するということです。

このプロセスには機械的な分別・統合作業以外にも意志による選択や過去の経験が関わっています。

また「花」とわかると同時に快・不快のタグやそれに反応する感情や記憶や予想も加わっています。

これは個人のこれまでの経験による作業なので、同じものを見ても脳内の認識は一人一人で違います。

もっと正確に言うとその時の各自の気分や体調によっても認識が変わります。

例えば寝起きの時と仕事の時の感性が違うように。

はじめに眼球に光（電磁波）が通過します。これは善でも悪でもなく、業にはなりません。

次にこの特定の光（周波数）を「花」と判断した瞬間には、快・不快（好き・嫌い、近寄る・遠ざかる）、過去の記憶、未来の予想、

これと結びついた感情、学習した条件反射、自動反応回路が機械的に付随します。

これが、自分の過去と今と未来を結びつける「業」になっています。

聴覚においても、音が「周波数」の段階ならば「業」にはなりません。

しかし「鳥の鳴き声」「車のエンジン音」と認識した瞬間には「業」を積んでいることになります。

たとえば道を歩いているだけでも、

景色、音、足裏の感覚、筋肉、心肺の変化をはじめとした情報が脳内に入り、それが機械的（無意識的）に分別と統合の認識プロセスをする時に、TPOパターンの回路を生成することで、感情や性格や思考パターンも変わっていきます。

ただ歩いているだけなのに、「わたし」は変化しているということです。

こういう単純な行為でさえ、小さな業を生成していることになります。

ただ歩いているだけでも、業からは逃がれられないのです。

何をしても、瞬間瞬間の小さな粒子が積み重なり続けて、無数の業を積み重ねながら、無意識の内に「わたし」は変化し続けています。

六処（眼耳鼻舌身意の対象を求める意識）に対象が触れるとその瞬間に脳内で現象をつくり出し、感情をはじめとして条件反射が生まれています。

それらは次から次へと流れて行き、その瞬間瞬間、業がポテンシャルなエネルギーとして蓄えられ、同時に自分を変化させていきます。

「わたし」に生じる感情の多くはAKUSALA−CETASKA:不善心所（不善なるココロのはたらき）なので、

感情＝煩悩とほぼ言ってもいいくらいなのですが、SOBHANA-CETASIKA：浄心所（善なるココロのはたらき）が生じることもあります。

善心所が生じると善い業を蓄積することになります。

この時の善悪は「わたし（自我）」を基準にしていれば悪、この基準から離脱していれば善という定義です。

たしかに幸福は善い業の結果です。たとえば花を見て「きれいだ」と喜んだとすると、その瞬間、その人は過去の善業の結果を見ています。

同じ花を見て不機嫌になった人は、悪い業の結果を受けているのかもしれません。

判断には各自の過去の経験が反映するので、同じ花を見ても、一人は幸福になり、一人は不幸になります。

過去の行為が今の瞬間の幸不幸を決めています。

しかしたとえ善果を得て幸せになっていたとしても、ここには罠があります。

幸福を喜ぶ人は、ここから多くの感情をつくり出すからです。

この感情は多くのケースでは「欲」という不善のカテゴリーに入ります。

するとその人は幸福を感じつつ、次から次へと、不善業を積んでいくことになります。

また「イヤだなあ」と機嫌が悪くなったならば「憎悪」のカテゴリーに入る不善業を積み重ねていくことになります。

そこで、どちらも感じなければいいとして「良い」とも「嫌」とも思わければいいのではないかと思うかもしれません？

しかし多くの場合はその時には、妄想という「無知moha」がはたらいていることになり、これも不善業を積み重ねていることになります。

ですから「生きる」ということは、渇望と嫌悪と妄想の悪業を膨大に積み重ねていくことだというのが仏教の解釈です。

しかも、何をしていなくても、快・不快のタグを付けた記憶とそれを基にした回路があるので、インプットを何度も何度も繰り返すことで、自動的に反応する回路（サンカーラ）の溝を深くしてしまいます。

こうやって情報がインプットされたり、何かを考えるだけでも不善行為を重ねることになってしまいます。

このように、私たちが一瞬一瞬につくり出していく業は大量ですが、それに比べて、過去から現在までに連なる生命体をカタチにしている「業」の量は、個人が作り上げている量とは比べものにならないほど宇宙的膨大です。

ヘッケルの反復説で知られる「個体発生は系統発生を繰り返す」というのは、個体と系統という２つのフラクタルな相似性に焦点を当て、一つの生命体の発生の過程はこれまでの生命体の進化の過程を繰り返すことを指摘しています。

例えば、ヒトの場合は胎内で魚類、両生類、爬虫類、鳥類の特徴を経過して哺乳類として子宮から出てくるとされます。

ヒトの胎児の成長過程を観察したものを三木成夫氏がまとめています。

これまでの無始なる過去から生命体が作り上げてきた走行・反射・条件反射・思考回路の積み重ねのを「業」と呼べば、

「業」こそは生命であるとも言えます。

これを業と呼ぶならば、業を償おうとしても、償い切れるものではありません。

業kammaは償うものではなく、弱体化して、次に離脱するものだと思います。

釈尊は考えてもきりがないのは四つは「ブッダの境地」「禅定」「業」「宇宙」だと説いています。

Acinteyyasutta　Aṅguttara Nikāya 4.77　　英訳　Unthinkable

過去生の業など放っておきなさい、と説かれます。

大切なのは自分が「いま、ここ」で罪を犯さないことですよ、と。

過去を嘆いたり後悔したりしても罪を重ねるだけです。

過去のことを考える暇があったら、「いま、ここ」の瞬間に気づくことです。

自分がかつて何をしたとしても、皆な誰でも生命体という無量の業を背負っているのだから、そこを基準とすれば個体の間に大差はありません。

生命体はこれまでに積み重ねて生成されている膨大な業があるので、TPOの条件が揃うと、ある業が自動的（機械的）に働く仕掛けになっています。

生命体の業の働きを停止させことはできません。

ではヒトは何もできないのか？手も足も出ないかというと、そうではありません。

条件が揃わなければ、当然ですが結果も変わるからです。

そこで仏教では、法則（ダルマ）を正しく理解して平静に落ち着いて生きることを薦めます。

つまり、良いことに出会っても嫌なことに出会っても、無執着の心構えで、ただありのままを見守っていることです。

世間では「執着を捨てるなどとんでもない、喜怒哀楽こそすばらしい」という生き方が一般的です。

「楽しんでこその人生だ」と常に喜びを探し求めています。

つまり、これは「欲」の不善業を探し求めていることになります。しかし実際には、この世では好ましいものばかりに出会うことはありえないので、当然、「出会うことができない」という嫌悪が生じます。

ポイントは固執しないということです。喜びに出会えば、それを喜べば良いので、問題はその喜びに執着してそれを求め続けない、ということです。

この世に表面的で一時的な「良いこと」は多くありますが、深みのある長期的な善行為というものは少ないものです。

たとえば「慈悲」という最高の善行為を教えられても、教わったとおりに無差別の慈悲を実践することは難しいことです。

善悪の判断を止めるように言われても、「なんと素晴らしいことか」「なんと腹立たしいか」とあれこれと無意識の内に判断（妄想）することは止められません。

こうして、欲と嫌悪と妄想という膨大な不善業をつくりながら生きていくことを私たちは無意識の内に選択をしてしまったおり、

その結果が次の原因となっています。

こうして、この因果応報の帰結の連続（輪廻）から離脱することができず、私たちはただ機械的にサンカーラに操られていることになります。

そこで、上座部仏教では智慧をもってこの現状をありのままにただ見守っている「内観」を薦めます。

対象を自分の外側から自分の内側の世界に変換させるのです。

「サンカーラに操られている生き方はとても危険です、智慧をはたらかせて生きてみなさい、智慧こそ救いであって、智慧がなければ変化はありません」と説いています。

出典？

智慧とは知識のことではありません。

これまでの感覚パターンや思考パターンに頼ったり、感覚に快・不快のタグが自動的に付加させるのではなく、安らかな心境でこれらのメカニズムや自分の感覚の変化に気づくことで妄想から離脱させるのが智慧です。

智慧を育てる方法が「内観」です。何かを認識して判断する前に、ただ淡々とサティ（気づき）をすると、

不善業はつくられずに繊細な感覚と鋭い判断能力と智慧が生まれていきます。

すべての原因が自分の作ってしまった受vedanā、想saññā、行sankhāra、識viññānaを基準にして生きていることがだんだんと理解していくからです。

自分の内面で起こっていく出来事を、あるがままにただ観ていく。

これだけです。

これについて私はまだ実践している途中なので、これからどのようなことになるかはわかりませんが、

五蘊の相違点やこれまでの体験を書くことによって、気づくことがあると思い、あえて言語化する実験をしています。

コラム 　　　　　　　　　　　日本テーラワーダ仏教協会のKammaカンマの解釈のWEBを引用

カルマKAMMA：業<ごう>とは未来を創るエネルギーのこと

大昔から人間は、「なぜ自分はここに、このようにいるのか」という、存在の成り立ちに対する答えを求めてきました。

この疑問は多くの宗教や哲学を生み出し、

「全能の神にすべては創造されたのだ」

「どんなことも偶然の産物にすぎない」

「全部、過去世で決められた運命だ」　

圧倒的な自然から身を守るために宗教を産み出した、というフロイト

狩猟を通して死と向き合い、獣と同調することで宗教を産み出した、というエリアーデ

運命はすでに神によって決定されている、というキリスト教の預定説、

生命流動集合体の繰り返し、というヒンズー教の輪廻、

再現して証明できないことは語るべきではない、という科学実証主義、

大脳皮質の構造が捉えることができないモノを脳にとって都合の良い創作物、とするカミ論者、

思考脳そのものがカミ、という「意」論者

など様々な答えが語られてきました。

仏教では、モノの成り立ちについて因果法則を説きます。

「ある原因とある条件が揃ったところである結果が現れる、その原因や条件が消えればその結果も消える」

というのが因果法則です。

TPOによってカタチが生まれ、このTPOは常に変化しているので、カタチも次々に生まれそして消えていく、ということです。

仏教ではこの因果法則によって「カタチ」が現れることを業といいます。

理系の人には、業kammaとは、あるエネルギーは次のエネルギー形式に転換するので、生まれては消えていく性質を持つもの、と説明するのがいいかもしれません。

「Kamma (業)」には多くの意味があります。その理由は「業」は多層領域にあるものなので、それぞれの多層領域における意味合いがあるからです。

領域において意味合いは異なりますが、共通しているのは「行為」です。

Sk．dhāman=Gr．dh=ma，Sk．nāman=Lat nomen] the doing，deed，work； orig．meaning （see karoti） either building （cp．Lit．kùrti，Opr．kūra to build） or weaving，plaiting （still in mālākamma and latā° “the intertwining of garlands and creepers”； also in kamma-kara possibly orig．employed in weaving，i．e．serving）； cp．Lat．texo，to weave=Sk．takṣan builder，artisan，& Ger．wirken，orig．weben．Grammatically karman has in Pāli almost altogether passed into the --a decl．，the cons．forms for Instr．& Abl．kammā and kammanā Gen．Dat．kammuno，are rare．The Nom．pl．is both kammā and kammāni．

仏教では、身体の行動だけでなく、想うこと、言葉で思うこと、深層意識で考えていることも行為に入ります。

「善因善果、悪因悪果」という言葉で知られるように、良い行為には良い結果が、悪い行為には悪い結果がついてくる法則です。

たしかにこのような関係性が強いことは誰もが体験しています。

しかし、この世には不条理だと思えることがたくさんあります。

正直でまじめな人が病気になったり（ヨブ記）、生まれたばかりの幼児が突然の事故で亡くなるなど、

表層や現世の因果関係では理解できないことが多々あります。

こんな時にヒトは「定め、運命、宿命」そして「業」について考える機会になります。

ブッダは、「すべては宿命であって、決められた定めである」という考え方をしていません。

すべてが決められているならば人間が努力する余地はなくなり、こういう考え方は邪見だとしています。出典？

「ではいったいなぜ？」という疑問が起きますが、すべての原因と条件を明確に知ることは、人間には不可能であり、

人間には知り尽くすことができず、無理に科学的な論理性で理解しようとすると頭が狂ってしまうようなことが四つある、と説いています。

その中の一つがこの「業」です。　

Acinteyyasutta　Aṅguttara Nikāya 4.77　　英訳　Unthinkable

「ブッダの境地」「禅定」「業」「色界や無色界を含む全領域」の４つの共通点は、「感覚界の枠組の外側」の領域の話、すなわちヒトの6感覚器官を介する認識システムの領域の外側の世界を含むので、

言葉で定義することもできないので、当然ながら6感覚器官を介した信号をベースにする論理的因果関係が成り立たない世界であるということです。

一言でいうと、説明しようとすると頭が狂ってしまう４つの共通点は「仏」や「カミ」の世界の話です。

脳を使った認識システムでは、全体のほんの一面しか感知できないのだが、それを語り合って表現しようとすると、

「象を触る盲人たち」のように各自が実際に感覚した正しいことでありながら、そこから自分の経験を過剰一般化して言語化することで、事実とは異なる見解を勝手に作成してしまって、混乱を招くことになります。

この世で見られる論理的因果関係とは、時空ともに仮の範囲を決めることで、その中には因果関係があるように見えるので、

「幻」の話をあえて続けて遊ぶことはできます。

これに対して、仏教でいう「業」の因果関係の話は、境界線があるかのように見えている「この世」だけではなく、

机と素粒子、机と電磁波、机と宇宙、机と異次元、そして前世と来世、それから前前世と来来世と次々に時空ともに限界なく拡がっていく領域の話なので、

科学的な論理性を基準にしたら、それは狂っている、と表現するしかできなくなってしまうわけです。

ブッダは業について以下のように説いています。

「業を自己とする、これが正見である：kammassakatā sammāditthi 」

Ñāṇavibhaṅga Vibhaṅga 　論蔵　分別論　智分別　　英訳　16　Analysis of Knowledge

kammassakatā：f．[kammassaka-tā] 業自性，業を自己とすること

kammassako：Having karma for his portion，having his own individual karma

Sammadiṭṭhi：正見 Sammā加算されていない（エネルギーが加えられていない）　diṭṭhi見解

これはどういう意味なのでしょうか？　

はっきり言うと正確にわかりません。　　

昔のことなのでブッダが言ったかどうかも確証はありませんし、もしそう言ったとしても、どのようなTPOで言ったのかがわからないので、あまり意味がないことでもあります。

その時の言われた本人の状況を鑑みて話されたことだと思うので、それがわからないからです。

意味があるのはそう言われた本人だけです。

すると、ブッダの言葉については何を考えても意味がなくなってしまうので、ここでは試みとして推察するのも楽しいかと思います。

推察の目的は「五蘊」を理解するためです。

kammassakatā sammāditthi

にはいろいろな解釈があります。

「業を自己とする」自己（自我）というのは「業」という因果法則の中で生まれた存在であるということなのでしょうか？

業は己に由来する、という意味で、各自の持つ業はその各自のものである、ということなのでしょか？

業が自己をつくったという意味なのでしょうか？

業こそが、この生命をこの世に存在させ、時空を分割させている因果法則だということなのでしょうか？

ここでは、サンカーラを消滅させるために、

本来の時空を「時と空間」に区切ってしまっている「この世」から離脱する方法について考えてみる視点で考えてみたいと思います。

自分の行為の結果は自分に返ってくる、それを理解することがSammadiṭṭhi：正見である、という解釈で話を進めます。

行為は深層意識において回路をつくりので、そこにインプットと条件が揃うと回路が作動して、アウトプットが出力され、これを善きも悪きも含めて自業自得と呼びます。

仏教では、各自と宇宙（他者）は繋がっていることにスポットライトを当てることも、

また同時に各自と全体性は分離していることにスポットライトを当てることもします。

各自と宇宙は繋がっていることにスポットライトを当てると、私たちは常に周りの影響を受けていることに気づきます。

例えば、人は無意識の内に似た者同士でつきあいをします。

怒りっぽい人は怒りっぽい人同士、悪い考え方を持っている人は悪い考え方を持っている人同士、音楽の才能がある人は音楽の才能がある人同士など、性格別、能力別、血統別、文化別、時代別、環境別、思考別、境遇別などでグループをつくります。

そこでもし現状を変化させたい意志がある場合には、「つながり」ではなく「分別」にスポットライトを当てます。

すると、個人主義者のように、各自を完全に独立した個人としてとらえることができ、この場合はヒトは周囲のモノに影響を受けず周囲に支配されていません。

ある人が犯罪を犯しても、その親兄弟を責めることはしません。

「業」はあくまでも自分だけのものとしてとらえるからです。

すべては自己責任なので、他人のせいにすることができないのです。

「未来」を変えたいという意志が本人にある時には、他人のせいにするのではなく、何でも全部自分の責任にするのが早道です。

「業は自分のものだ」というのは、「こういうことをするとこうなる」という因果関係を明らかにすることで、その後のやるかやらないかは、それぞれの個人の選択になります。

ここで理系には納得できない２つの公理を提示します。

公理とは定理や定義の前提条件があって、

数学の公理とは、ゲームをアナロジーにすると「ルールブック」に当たります。

たとえばサッカーでなぜ手を使ってはいけないのかを問うて議論をしても理由はみつかるかもしれませんが、サッカーそのものは始まらず、手を使わないボール遊びというルールを決めたところから遊びは始まります。

数学の定理や定義を絶対のものだと思えているのは、その前提条件である公理について考慮していないためです。

数学では２つの直線が交わるところを点とする。２点の最短距離を直線とする。１−１＝0とする。

などといった、領域の枠組を限定されたところから話をはじめるのが公理です。

公理という勝手な決めつけによって、点の無限性や、３（４）次元以外での最短距離や、ゼロの無限性（「空」性）は除外されたところから話がはじまるからです。

宗教の公理は量子力学によっては証明されることもありますが、一般数学の領域の枠組の外側にあるものになります。

１つ目の公理は、「意識はエネルギーである。」

したがって、意識は物質に影響を与える、ということになります。

たとえば、ヤングのスリット実験をする時に、観察者（意図）がいると、光子の波動性が粒子になるという結果があります。

２つ目は「エネルギーのない世界があり、それに見つめられることにより、そこにエネルギーのある世界が生じる」です。

すなわち３（４）次元の時空は、０次元を前提として成り立ち、その０次元にはエネルギーがないのでなにもエネルギー的運動はないが、唯一できる「観る」ことにより、観られた者にはエネルギーが生じて時空と方向性が誕生する、という「公理」です。

一般数学では不可解な２点ですが、量子力学では起こる現象なので、そこから「業kammaとはエネルギーである」という公理を前提にすると、説明できることがいくつかあります。

第一定理は、エネルギーのない０次元が「観る」ことで、エネルギーのある時空が創出される

第二定理は、エネルギーのあるものを照射すると対象はそのエネルギーに影響をうける。

ということです。

具体的には

１　エネルギーのない「あの世」が「観る」ことで、時空と方向性という生命（スピン、自転、公転、銀河運動、生命体運動、膨張エネルギー）が創出され、これが「いのち（霊）」エネルギーとも呼ばれる。

そして生命はエネルギー界のルールに則して運動する。

これが宇宙の星星とその「間」の運動であり、cittaがviññānaになるまでのプロセスであり、純粋なものが各段階でフィルターがかかるということであり、宇宙創生の神話となります。

２　意識は物質エネルギーに影響を与える、すなわち影響があるということは、それは原因（意識）に物質エネルギーがあるからである。

つまり、意識の特徴の１つは、物質エネルギーよりはるかに微細なエネルギーである、ということです。

このエネルギーのない世界と微細なエネルギーのある世界と物質エネルギーの世界の因果関係を説くのがカルマの法則である。

つまり、「カルマとはエネルギーである」という公理（ルール）にもとづいて、この世界を見てみると、

これまで気が付かなかった関連性がわかるようになるというのが宗教の存在価値です。

他の考え方で説明すると、宇宙には普遍のdhammaエネルギーで満ちているので、カルマという回路を作ると、そこにdhammaが通過することで、エネルギーが活動し、それを生命と呼ぶ、ということになります。

普遍エネルギーとカルマという回路という概念を公理にして前提にすることで、「あの世」と宇宙と意識と物質との間で行われるエネルギー転換が説明されます。

したがってここでいう宗教とは、組織や教義や信仰とは違うアプローチで、

この世の関連性をエネルギーを通して見てみる、という試し（エッセイ）のコラムである。

観られることでエネルギーは生じるが、そのままにしておくと、そのエネルギーは消滅し、また生起するという「宇宙のリズム」を持つ。

ところがエネルギーを持ったものが、ある対象にスポットライトを当て続けると、その照射によって、対象にエネルギー転換が生じ、それがまるで意志をもったかのように運動を始める。

「意志をもった」というのは誤謬であるが、それまではエネルギーは勝手に生まれ勝手に消えるというエネルギーの宇宙リズムで運動していたが、誤謬という回路を作成することで、エネルギーは決まったアウトプットに集中することになる。

この意図（誤謬、決めつけ、思い込み）によってアウトプットにエネルギーの塊ができる。

この誤謬というエネルギーの塊は、条件が揃うとそれに応じたカタチ（他のエネルギー形式）に変換される。

こうして「意図というリズム」のエネルギーは転換し続けるので、この「意図されたリズム」を転生プロセスと宗教ではよぶ。

そして「意図されたリズム」を停止させ、意図のエネルギーがゼロになる瞬間に「本来の宇宙エネルギーのリズム」が垣間見えて、

それを体験することもできるので、それも生活の中に取り入れることが、宗教の目的であり、宗教の一部である。

このようにカルマ業kammaをエネルギーに置き換えてみると、違ったアプローチでこの世と接することになる。

エネルギー転換の種類と因果関係の構成要素

法（dhamma）　普遍のdhammaエネルギーによって宇宙が構成されることでエネルギー転換が可能になっている

自然（utu）　　宇宙法則のdhammā、 bhūta、 dhātūレベルのエネルギー転換

種子（bīja）　　形をもたないbhūtaと形を持つdhātūレベルのエネルギー転換

業（kamma）　形をもたないbhūtaレベルのエネルギー転換

心（citta）　　意識体の心によるbhūtaとdhātūレベルのエネルギー転換

この解釈は未熟な私見で、詳細を調査中です。

カルマの善悪を論ずるのは、どの立場に立つかという環境やTPOの問題になる。

たとえば

エネルギーの有無で悪善を決める、解脱者の価値観もあるし、

より微細なエネルギーに向かう実践するのを善、物質エネルギーに留まるのを悪とする修行者の価値観もあるし、

自分の属している世界を善、その外側を悪とする、自己肯定者の価値観もあるし、

脳内で捏造した理想を善、それに当てはまらないものを悪とする、脳中心主義者の価値観もあるし、

私を悪、私たちを善とする世間中心主義の価値観もあるし、

個人を悪、集団を善とする社会主義の価値観もあるし、

集団を悪、個人を善とする個人主義の価値観もあるし、

社会が望まないものを悪、社会が望むものを善とする道徳主義もあるし、

個のルールを悪、社会のルールを善とする規則主義の価値観もあるし、

ルールを法にして、破るのを悪、守るのを善とする立法主義の価値観もあるし、

その法を政治に利用して善悪とする法治主義の価値観もある。

どれも、ある人が片方側のTPOにいることによって生まれた観念です。

多くの人は表層意識では認識せずに、これらの価値観を複数同時にもっているので自分の言動の判断が矛盾に陥ることになる。

その結果、極端にならないようにバランスを保ってこの世で暮らしている。

したがって、まずはエネルギーにそのものには善悪はないことで理解して、エネルギーと宇宙との関連性から全体像を掴み、

その後で、自分の立っている場所と他の場所との関係性を考慮して、善悪の価値観を加えることで、カルマのことを理解しやすくなる。

業kammaがエネルギーであることがわかると、因果関係の原因と結果もまた違う角度から体感できます。

つまり、エネルギーがそこにあれば、それが違うカタチに変換される、という熱力学第一の法則です。

科学と宗教の違いは、科学は「閉じた系」の中でしか起きない、といい、宗教ではあらゆる宇宙空間で起こることだとしているところです。

これらに関心がある人はまた別のエッセイで説明します。

リンク先

釈尊の風　縁起篇　　　　この世とあの世を繋ぐ宇宙の法則　

認識システムと五蘊　そこからの離脱法

意識から物質が生まれるプロセス　三蔵の教え

どちらにしても、因果関係の原因と結果はのカタチが変わるだけで、エネルギーそのものであることには変わりはありません。

すると、ここに特徴のある２つの法則があることが見えてきます。

一つは、自分の意志が結果につながっている因果関係です。

二つ目は、この世にはヒトの意志でどうしようもない宇宙の法則（aniccā）があるということです。

ですからこの二つ目の法則である「aniccāの法則」を体感し続けることで、一つ目の法則が通用する範囲を会得し、

その範囲内で、自分の意志とその結果に注意を払う（スポットライトを当てる）ことができるようになります。

これが身につくと「ある行為をすればある結果になる。もしこの行為が自分の意志によるものならば、この結果も自分の意志に由来するものである。」

そして「すべては自己の意志に関わっている」ということが段階的にわかります。

例えば、自分の運を好転（淀みから流れを生成）させたければ、自分の欠点を良く理解して、その欠点が鍛えられる環境に留まるという方法があります。

しかしその環境は快感が充足されない時空間なので、強い忍耐力が必要とされます。

八聖道の正思惟で説かれていた無害（avihimsā sankappa）の思考です。

ネガティブなものを排除しないで、それを見守り、あえてそれに寄り添うことでココロの成長と浄化を促す方法です。

確かに効果的ではありますが、実際には初心者が準備もせずに突然に試すには難しい方法です。

そこで、この「快を感じない」時空と正面から向き合う時の、秘密兵器が先程の普遍エネルギーの性質です。

「すべてのものは移り変わり続けている」ということです。

わかりやすい理解は外側にある対象ではなく、内側の「自分の心持ち」がです。

すべては無常なのだから、運命も転じる、ということです。

それは「やればできる」ということではありません。

やらなくても変化がある、やっても変化がない、ということがあるという法則です。

原因と条件（TPO）が揃ったところにカタチが一時的に現出します。

いくら努力をしても宇宙の法則に逆らうことには長期的な結果は伴いません。

この理を体感し、まずは自分の内側をあるがままに見守っていくこと（内観）を習慣にすることで、

自分の外にある事柄にも客観的に判断して合理的に対処することができるようになっていきます。

仏教では、幸不幸はココロの問題だと説いています。

Ratanasutta　Sutta Nipāta 2.1　宝経　　英訳　jewels

交通事故で足が一本なくなった人は不幸であるとは決められないのです。その人が明るく堂々と生きていれば、別に不幸ではありません。

中にはちょっとしたケガだけで落ち込んで不幸になる人もいます。

幸不幸は各自の思考パターンに由来しています。

思考パターンは過去の行為の結果（業）です。

つまりエネルギーが次のカタチに変換された、ということです。

意識はエネルギーなので、思考パターンというアウトプットが決まっている回路は、そこにエネルギーが集中するからです。

ただちに思考パターンを変えるのは難しいですが、訓練すれば変えることができます。

そのために必要なのは、メカニズムを理解して、具体的な智慧と経験を積み重ねる練習です。

そして自分を徹底的にありのままに見ることができる力が必要です。

自分自身の本質を変えるためには、かなりの勇気がいります。

なぜならば生命体は楽で安定した環境にとどまり、そのための思考パターンを作り上げるようにプログラミングされているからです。

そして多くの人がそれを基準とし、仕事とし、生活とし、生きがいとし、信念とし、自分のすべてを誠実に捧げてきたからです。

これが、表層意識にかじりつき、潜在意識、シンボル意識、統合意識、共通意識、・・・、と意識のステップを昇ることをしない、

つまり五蘊の中で逗まり続けることを選択している理由です。

コラム

想saññāの呪い　　　　　　　　高学歴者が地球を滅ぼす

想saññāの中でも、力強いのは、法則や一般化の知識である。

これらを大量に的確に正確に学んだために、一般社会では評価されて暮らすことができるようになる。

こうして想saññāを基準に判断をする人たちが多くいる。

子供の時から本を読むことで常に変わり続ける世界、すなわち「遊び」の世界にいる時空体験が少ないために、

想saññāの世界からこの世と接してしまう癖をライフスタイルとして得てしまい、その生き方によって、仕事、金、名誉、世間からの評価を得ているために、自分の根幹にある誤謬を見ることを意識だけではなく無意識にでもすることができなくなる。

換言すれば、「いま・ここ」のありのままの姿をみない訓練を積んできたので、それを習慣として暮らしている。

自分の人生を否定する勇気が持てないのは当たり前のことである。

今は、中学校から大学の博士課程に至るまでの学問は、こうした想saññāの数を増やして、

その想saññāを正しさとし、それを基準にして考え、判断し、思考を重ね、物事に対処する。

このような思考パターンに慣れて、癖として、これが理性だと思い、生きる人は、当然のごとく、このような教育という繰り返しを重ねたほど強く、深く、固くなる。

これが学歴が高いほど、想saññāを基準にして生きている人が多くなる確率が増えるという理由である。

一般化、法則、合理化、論理的、数値化、言語化、プログラミング化、因果関係、理由、未来予測、時短、効率化、コスパとどれも計算機の求めている美学なので、現代の学問が目指しているものと重なることになる。

あるTPOのデータを別のTPOにも適応させることを過剰一般化、もしくは決めつけと呼ぶ。

自分に大義名分、正しさ、理想、評価、理念がある時は、このような思考法は「いのち」のとって危険な存在になる。

自分の正しさを基準にしやすいので、外部のありのままの姿を見る回数がますます減り、

自分の想saññāを恥ずかしげもなく、自信満々に押し通そうとするからである。

私は生きている。生命体は生きている。地球は生きている。宇宙は生きている。

聲を発していなくても、各自の意識の一番底流にある「生命」と同じ波動が共鳴する。

そして異次元のエネルギーのない「いのち」がただ透明にそこにある。

「観念、知識、記憶」などもすべて想saññāを基盤にして作り出したものです。

この「過去の想saññāのカゴ」を基準（依存）にしてしまうことが、すべての錯覚の原因になっています。　

エッセイにある例題をもう一度繰り返します。

例えば、AのマスとBのマスのどちらが濃く見えますか？

答えはご想像の通りです。見た目はAですが実際は・・・。両手で周囲を隠して、AとBだけを比べてみればわかると思います。

ただ欠点は過去に学習した想saññāのカゴを基準にしてしまうと、「いま、ここ」には対応できないということです

ではなぜ、ヒトは頭の中でとらえた感覚（見た目）と実際の目の前の事実とは違ってしまうのでしょうか？

それは大脳皮質で過去に学習したパターンが目の前の事実を補正しているからです。

影と光、碁盤の白黒という過去に学習した想saññāのカゴが、AとBの色の濃さを判断しているので、

この２つが同じ濃度だと証明できた後でも、まだAの方が濃いとヒトは判断してしまいます。

つまり、影の場所は本来の光が当たればもっと明るいはずである、という想saññāのカゴと

碁盤の白黒の色の濃度はどこでも同じである、という想saññāのカゴによって、

この２つを基準にすることで、眼の前の色の濃度を「ありのまま」に見ることができなくなってしまっているのです。

これは、想saññāのカゴを基準にしてしまうことが習性になってしまうと、その回路を使ってでしか目の前の「いま、ここ」が見えなくなってしまうからです。

このように、想saññāを鍛えてしまったヒトたちはsaññāの影響を受けやすいという対価を払うことになります。

そして、「saññāを基準にして判断する」という習性の力はこれほど強いものです。

特にこの習性を職業にしている人たち（たとえば、高学歴者、教授、弁護士、医者などなど）は、

眼の前の「ありのまま」の状態をみることは難しくなっている事実は、現状で得ているメリットに比例します。

瞬間瞬間、色々な想saññāのカゴが生まれては消え、消えては生まれて、流れ続けていきます。

「いま、ここ」には「何か変わらぬもの」や「わたし」などはありません。

ただただ一時も途絶えることなく生滅をくり返し流れゆく想saññāがあるだけです。

これほど想saññāのカゴを基準にする認識の習慣性の力は大きく、

知識のある人やその才能で仕事を得た人たちほど、誤謬から抜けられない生涯を送る人が多い理由です。

ですから、このような想saññāを基準にした認識を基にして成り立っている「自己」というのは当てにならないものなのです。

私はこの想saññāという枠組（イメージの包む輪郭）を「カゴ」と呼んでいて、例えば乾いた洗濯物を箪笥に入れる時に、上着とシャツと下着は別の棚に区分します。

この棚のことを「カゴ」と呼び、これが想saññāの元型です。イメージとも呼ばれますが、このカゴ自体も常に変化して確固たるものではないので、「幻想」とも言えます。

それなのに、この想saññāのカゴを基準（依存）にすることで、差異と区別（差別）に過剰な評価を与え、ここから偏見と優先性が生じさせてしまっています。

このことは明確であるのに、このテーマで話し合う機会はあまりありません。

この「カゴ」自体が過去のある限定されたTPOによって作られたものであり、このカゴの使い方（分類法）も昔に学んだやり方をただ機械的に踏襲しているだけなので、

過去に作ってしまったクセや善悪や好き嫌いや美醜などの価値観が伴ってしまっています。

この価値観とはすべて過去の体験に由来しているもので、目の前の現実とは違いがあることは明らかです。

過去の教育や経験によって想蘊（知識）は増大し続け、それらをベースにして生きることは「いま、ここ」を体感するのではなく、過去の記憶によって縛られれていること、そして操られていることだ、とも言えます。

中国が五蘊を受け入れない深層心理

大乗仏教の「般若心経」では１行目から「五蘊皆空なりと照見して、一切の苦厄を度したまえり」

「空の中には、色もなく、受想行識もなし」と五蘊には意味がないことを宣言し、

原典「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄」

釈尊の五蘊の発見と、それによる誤謬の見解を修正する方法をないがしろにし、新しい方法を提示しています。

小乗仏教（上座部仏教 Theravāda　 theraとは上部、長老のこと）では、五蘊というヒトの陥ってしまう認識のクセを、

穏やかな心で見守り、気づき続けるという方法で「悟りの道（ekāyano maggo）」を実践してきました。

しかし、般若心経に象徴される大乗仏教では、五蘊を言葉として理解するだけで、五蘊の長所とそのデメリットを理解して、そこから離脱する方法は実践せずに、

ただ観念（理性・知識・大脳皮質）として理解し、それは意味がないと宣言し、

その後は確かに効果的な力を発揮する呪術（条件反射と信仰とイメージトレーニング）で「空」の領域まで飛び越えようとしてきました。

具体的には、「羯諦羯諦　波羅羯諦　波羅僧羯諦　菩提薩婆訶」というマントラ（心経）によってです。

大乗仏教は、大いなる民衆のためにという「正義」を旗印に持ち出すことで、「空」の実践を言葉による解釈に置き換えた一面があります。

抽象度を一つ上げるという大脳皮質が得意とする戦略です。

基準をカラダからアタマへと変移させました。

正確に言うと「体感」から「思考」へのパラダイムシフトです。

体感よりも理性を重んじることで、生産性（合理性、理知性、法則性）というメリットを得ることができましたが、２つの誤謬を産み出してしまっています。

一つは過剰一般化という論理的誤謬です。

実際には個々のケースでしか成り立たないことを範囲外には適応しない法則で２つをまとめてしまっているということです。

共通性がないところに共通性があると誤解させています。

二つ目は、理念で正しさ（自由、公正、公平、純粋、正義、平和）を産み出して、これに感情を結びつけることで意識のスポットライトを強化させていることです。

理性を重視すると、その危うさからヒトは無意識の内にバランスを取ろうとして感情を重視するようになります。

まずは、一部分だけにスポットライトを当てることで１つの確かな因果関係が目立つ状況を作ります。

こうしてその因果関係だけを強調することで、自分の正当性を強固なものにします。

次に、他者との感覚を共有することを省略して、自分の理性の論理性を価値観の基準を置くことで、それに矛盾するものを排除する言動をとるようになります。

メリットは理性の尊重ですが、それによって実際に行っていることは他者の立場や体、そして、もし宗教家で霊や魂の存在を実感しているならば、その霊や魂までをも踏みにじることになっています。

ここに２つの誤謬があります。

１つは、この世はすべてが変化し、すべてがエネルギー転換することで違うカタチに変換し続けているので、本当は一般化することなどできないからです。

2つ目は、理性との接し方をちゃんと体験していないために、いまだ理性の限界と矛盾を知らないという未熟な無知の段階にとどまっていることです。

理性の限界を知り、理性の範囲を知ることが、智慧paññāの第一歩目になります。

五蘊とはヒトの認識メカニズムを言語化したものですから、認識の限界を示す智慧でしたが、大乗仏教では「限界」という智慧を使わずに、「空」という因果関係を持ち込むことで、ヒトの認識システムは本質が捉えることができうると捉えました。

これが想定外から想定内へ（認識の限界から可能性へ）の価値観に変革をもたらす仕掛けのタネです。

このモノの捉え方は中国の「城郭」都市の中で成り立つ官僚的システムが望んだことでした。

ここに中国仏教が成立した時空の必然性があったと推察します。

東アジア大陸では前漢から唐の時代には周囲の辺境との間に境界線を引き、内部を統一しなければならない理由があったのでしょう。

そのためにも範囲の中（中国）の人民が「空」を体験する毎日を生活の中で実践して続けるのではなく、

国（城郭の中で暮らす人）にとっての合理性と生産性を高めることを優先させ、次に呪術の即効性をアピールする必要があったのだと推察します。

歴史を振り返ると、仏教を小乗的解釈から大乗的解釈になる時期とは、周囲の異民族を侵略して領土を拡大していく空間的膨張とは重なります。

たとえば、

北部の匈奴や突厥の脅威を軽減させる盟約

西域の張騫・大宛（フェルガナ）・大月氏・安息（パルティア）、高昌国への圧迫や侵略

チベット高原の吐蕃を服属させる

南西部（ベトナム）には遠征軍を送って直轄領にする

東部の高句麗を征服

長期性よりも短期性、深層よりも表層、機能よりもカタチです。

しかしこれでは、仏教がこの世に生じた必然性である、本質的な心（メンタル界のアプリ、自動反応回路、感情パターンや思考パターン）の浄化（弱体化、上書き、救済、掃除）にはなりません。

そのために、この世から「自我」を解放する方法を模索し続ける必要性が中国では生じて、その後に独自の方法である禅や密教や浄土教が生じたのだと考えます。

サンカーラの拡大解釈　　　　宇宙はサンカーラなのか？

普通の解釈

元型

宇宙創造では

ダンマ＝無明の意味

宇宙、サンカーラの特徴に気づく

無明は（条件が揃うと）サンカーラになる　

Avijjāpaccayā saṅkhārā,　

Paṭiccasamuppādasutta 　Saṁyutta Nikāya 12.1　縁起経　英訳　Dependent Origination

これはエネルギーからカタチが生まれ、それが苦しみの原因である、という縁起説の第一ステップである。

Avijjā＝a（否定）＋vijjā（智慧、知識）から、「叡智ではない」ことを指すので「無明」と訳されて2000年が経つ。

私から見れば「無明」は十分に素晴らしいのだが、涅槃からみれば、智慧のない満足できない状態のことを意味する。

普通の解釈では、ヒトの無知から生じる心の機能についての第一段階として理解する。

身近な深層意識の具体例でいうと

アルコール依存症者はアルコールの怖さを知らないことから、「行き詰まると飲酒する」という回路を深層意識に作ってしまっている段階のことである。

瞑想を始めた初心者は、サンカーラをヒトの心の一部だとみるが、その本質はエネルギーが偏りを持つで物質化していく回路のことであるので、サンカーラをヒトという範囲だけではなく、カミや宇宙誕生の範囲でも見てみようという試みである。

仏教でサンカーラという語句を使う時には、ヒトの行sankhāraだけではなく、「この世」にある「自動反応する生成回路」をも含んで指すことがある。

ヒトの認識システムという心の一部が「行sankhāra」だとすると、ビッグバンの後に星から生命体であるヒトが生まれたのだから、このサンカーラの元型はもともと宇宙に存在することになる。

行sankhāraという見えない自動回路を、ヒトの認識システムという限定された枠組みを取り外して、

この世のありとあらゆるカタチを産み出して製造している自動回路にしてとらえてみる。

回路という観念をヒトのココロの自動反応作用だけではなく、宇宙のはじめにあった「空のエネルギー」が「型」によってすべてのカタチが生成したのだ、とメタファーで飛躍して拡張してみる。

この例えには、エネルギーが「偏り」になる、という元型が底流にある。

縁起説はこの宇宙で起きているあらゆる出来事の底流にあるエネルギー転換の生滅のプロセスを段階的に説明しているので、

あらゆることに適応して解釈することができる。

このステップを宇宙創造の中で理解すると、

エネルギーの塊が、同じ密度で拡散するのではなく、偏りを持つことで密度の高いところと低いところが生じ、密度の高いところからはガスが生じ、そこから星が生まれ、地球が生まれ、生命体が生まれた、という話の中で「偏り」を持つステップに相当する。

エネルギーしかないので無に見えるものから有が生じるプロセスの第一段階である。

エネルギーの塊が「時空と膨張する方向性」に偏りを作ってしまったことで、後に物質が誕生することになる。

この宇宙の物質は始めの「偏り」によって成り立ったという仮説をたててみる。

宇宙学でいう、ビッグバン38万年後の宇宙の晴れ上がりの時に見られる「偏り」がダークマター、そしてそれらが素粒子になっていったという話である。

「カミは細部に宿る　God is in the details」ということわざがある。

このカミをパーリ語に訳せば、ダンマDannma、すなわち宇宙（自然、この世）の法則、具体的にいうと宇宙の普遍エネルギーのことである。

この世から涅槃を見るのと、涅槃からこの世を見るのでは評価が180度変わるものがある。

この世ではdhammaは大切な宇宙法則であるが、釈尊がdhammaは涅槃の彼岸に渡る時の筏のように大切なものだが、渡ってからは背負い続けるものではなく捨てるものだ、と語った。

Alagaddūpamasutta Majjhima Nikāya 22 蛇喩経 英訳　The Simile of the Viper　

釈尊が説いたことは涅槃に至ることで、その一歩手前が無明であるので、その無明とは筏であるdhammaのことであると解釈することができる。

普遍エネルギー＝Gods＝dhamma＝宇宙法則はエネルギーが0の涅槃から見れば無明

カタチのない宇宙のエネルギーの塊（無明）がカタチのエネルギーになったのは、偏りという見えない型によってである、という喩えだ。

「空」は「色」になる。そして「型」こそが「空」から「色」が生まれた作用点であると考えてみる。

この世では「空」エネルギーが数々の型によってカタチになり、それによってこの世が成り立っているとする。

これは型によって物質という空間的カタチになっただけではなく、型によって時という時間的カタチになる。

一つであった時空を型という自動回路が時間と空間に分別しているというメタファーである。

過去における意思・行動の結果が、目の前に起こっている現実と結びついている、と考えるのは、

過去に「空」エネルギーがサンカラーラの型（偏り）に変換したことで、自動的に反応する原因となって、眼の前の現実に結びついている、という解釈である。

このカタチを作り出す型が、回路のことであり、機械的自動反応のことであり、カルマの原因であり、サンカーラのことである、と次々に抽象度があげていく。

すると、この自動生成回路という「偏り」を通過しなければ、時間も空間も生まれずに、何事も限定されずにどのようにもなれる状態のまま（「空」）でいられる。

またこのシステムのことを理解して、これが作動するたびにそのことに気づいていれば、

自動生成回路が反応することで時間と空間が生まれ、その中でカタチができたとしても、それに執着しなければならない必然性が減少もしくは消滅する。

またこの世のカタチだけではなく、時間と空間を産み出した回路もいつかは、また消え去っていくモノであることには違いがない。

いかなる回路であっても必ず消滅（崩壊）するのが「この世」、そしてその一部であるサンカーラの特徴である。

ただ気づいているだけ覚る理由

いかなる回路であっても必ず消滅（崩壊）するのが「この世」、それを作っているサンカーラの特徴である。

釈尊はこう説いた

Sabbe saṅkhārā aniccā　　　Dhammapada 20　Maggavaggo 277　法句経　英訳 the Path

すべてのサンカーラは無常である。

わからないことを妄想し続けるのではなく、

サンカラーラの特徴を知り、ただ静かに優しく見守るだけで、各自の心の中にあるサンカーラ（機械的反応）という回路は弱体化し、ついには消滅する、これが覚りへの道だと仏教が説くことに不思議を感じるかもしれない。

Mahāsatipaṭṭhāna sutta　Dīgha Nikāya 22　大念処経　

英訳The Long Discourse about the Ways of Attending to Mindfulness

見守るとは、深層意識で勝手に作用している機械的反応に表層意識が気づき、そのプロセスを見る、ということである。

すると、ただこれだけのことで、意識体の認識の限界を知ることができる。

こうして、自分の心の変化に気づき続けることで、これまでの解決策とは別の選択肢がある可能性も理解できるようになる。

なぜならばこれまでの多くの解決策は、深層意識に作成された回路に操作されたものが多いことがわかるからである。

カタチに近づいたり離れたりする必然性（快・不快、好き・嫌いのタグ）の理由がわかれば、それらにタグをつける必要性やその馬鹿らしさもわかるので、無闇にアプリを作ってプログラム任せにすることが減少し、しまいにはアプリを使うことがなくなっていくこともある。

このような状態が続くと、自動回路を無闇に生成することが減り、新たな自動回路を作ることにも慎重になる。

その時に穏やかな心境でこれを見守る、ということは、過去につくった自動回路に快・不快の濃度が薄いタグ、もしくはどちらでもないタグの上書きするということになる。

生命はサバイバルのために、入力信号にすぐに反応する回路を作り続けることで、進化し続けてきた。

これが神経管が脳に発達した原動力である。

生命にかかわるTPOの時には素早く近寄ったり、遠ざかったりすることが必要なため、血圧を上げたり、呼吸数を増加させたりして、環境に反応しやすいように体が変化する。

生命体はこのような時に条件反射の回路が作成されるようにプログラミングされており、それは膝蓋腱反射のような体レベルの条件反射だけではなく、表層意識の感覚のパターン、そして深層意識の感情や思考のパターンにも及ぶ。

しかし、TPOによってはそれらの回路の中に生命に逆にダメージを与えるものがあれば、その回路は弱体化もしくは上書きするのがいい。

そしてこの回路の上書きや消滅が、回路に操作されて苦しみから離脱方法であることを先達たちは発見した。

この時に鍵となるのが、涅槃から見た「この世」の特徴である。

それは「生命体が望むような状況は長期に渡っては継続することはなく、この世の無常の現象は生命体に苦しみを感じさせ、そこから離脱しようとしても、すべてのエネルギーは普遍であるので、生命体自身の力ではどうすることもできない」

この「無常」という当たり前の摂理をもって、目の前の色蘊（イメージのrūpaエネルギー）に接すると、心は穏やかな状態なままなので、自動反応回路は作成されなくなり、過去に作った自動反応回路を使う頻度も減り、自他の現象に対する執着心が減少もしくは弱体化したものに上書きされることになる。

そうしてこのような体験が何度か繰り返されることによって、自動的に反応していたものが反応しないという体験が上書きされることで、自動反応回路がもう自動ではなくただの回路になってしまう。

また、「生命体の法則」では、使われないモノは自動的に退化するので、最終的には、回路自体が消滅していく。

執着心は、無意識の内に自動的に湧き上がってくる渇愛・嫌悪・妄想によって生成される。

これは受蘊によって感覚に付加される快・不快のタグによってできた信号が想蘊によって区別化され、これを基にして自動回路である行sankhāraが生成されるからである。

そこでこの自動回路が作用していることに気づき続けていることとは、「わたし」という価値基準と自動回路が同化している現状から離脱することになる。

自動回路を対象として観る、ということは、「わたし」と自動回路は分別しているということなので、２つは同化しておらずに距離をもって付き合うことになり、このような関係になることで、自動回路はもう自動ではなく単なる回路になっている。

自動回路の作用に気づき続けているということはもう無意識の状態ではなく、意識の内に行われていることなので、回路に操られているのではなく、回路の仕組みをただ見守るということになる。

回路は残るが、自動回路ではなくなっているということである。

機械的に操られて支配されるのではなく、自由でいられるためには、自動回路の存在に気づくことだけで、自動回路の支配から離脱していることになる、というのはこのようなメカニズムがあるためである。

Sabbe saṅkhārā aniccā　　　（すべてのサンカーラは無常である。

この一文は、この世のカタチだけではなく、時間と空間を産み出した回路もいつかは、消え去っていき、時空のないところに回帰し、そこからまた新たな展開がある、ことを暗示している。