催眠術の仕組みと実践

 

はじめに

メカニズム

由来と種類 

かかりやすい人、かかりにくい人

催眠術を使うメリット・デメリット

簡単なかけ方

「現代催眠」の具体的プロセス

 

 

 

はじめに

「手が開かなくなる」という催眠術のビデオです。

自分が催眠術がかかるのかどうか試すことができます。

 

 

 

メカニズム

実際に催眠術という技術を目の当たりにしたことはありますか?

あなた自身がかかったり、身近で催眠術を行っていたり……

「催眠術」という言葉は知っていても、自分の経験として知っている方は少ないのではないでしょうか。

 

多くの人が催眠術に対して疑問を感じるのは「経験したことがない」からです。

テレビで芸能人がかかる姿を見ても「催眠術はすごい」と自分事に置き換えられる人は多くはいません。

 

 

一般的に、催眠術は「科学的根拠がない」と思われていますが、催眠術の技術は「催眠療法(ヒプノセラピー)」として、さまざまな症状や疾患を対象に研究されています。

 

催眠療法が一部の痛みを伴う症状・疾患の管理に有用な可能性を示唆するエビデンスが増えています。

参照:厚生労働省eJIM「催眠療法」

 「催眠術は嘘」という認識があるのは、テレビで見る催眠術はほんの一部分だけを映しているためです。

 

 

催眠術とは何でしょうか?

100人の専門家に質問をすれば100通りの答えが返ってきます。

そして、その全ての答えは正しく、催眠状態は人それぞれ違い、個性的なものです。

そして突き詰めていくとよく解らないが、「催眠」という状態は存在して、何かが起こり、結果が現われるという事です。

 

@催眠とは「有る考え(暗示)を受け入れたいかどうか」だけである。(ワイズホファー & ヒガート)

A催眠とは一つあるいは一連の「考え(暗示)」に集中し、受容していく状態である。(エリクソン)

B催眠とは、リラックスと一定の注目と暗示の組み合わせによって個人の中に生まれる選択権をもつ暗示である、ある種の変性意識状態である。(アンサリ)

C催眠とは、信頼できる暗示に影響されやすくなっている状態をいう。(ハル)

D催眠の基本は流動的な意識状態であり、それは色々な刺激の繰り返しによって生み出される。その状態にあると、通常の意識状態よりも暗示が効果的にはたらく。(マルサス)

E催眠とは暗示の作用が高まる意識状態である。(ボウアーズ)

F催眠とは「条件付け」の一つである。(ソルター)

G催眠中は意識に理論づけをしようとする力が弱まる為、与えられた事実または暗示を受け入れ、その通りに行動しやすくなる。(カプリオ&バーガー)

H催眠はリラックスを生み、顕在意識を休ませ、被暗示性と気づきを高め、イマジネーションを通して潜在意識にふれるプロセスである。催眠はまた、思考とイメージをリアルに体験する状況をつくりだす。(クラズナー)

I催眠とはプラス・マイナスのタグのない潜在意識のアプリケーション(自動反応回路)である。(松尾)

 

 

催眠術の誤解

@『意志が弱いと催眠術にかかりやすい?』これは全く根拠の無い事ですが、意志が弱いと催眠にかかっていると思う人が多いのです。しかし、実はその逆で、平均以上の知性があって、集中力が高く、想像力豊かな人がもっとも催眠にかかりやすいというデータがあります。

 

A『私は催眠にかかっていませんでした』「催眠術にかかりたいのに掛からない」と言っている人は「催眠とは全く意識の無い状態だ」と思っている為です。

催眠に掛かったからといって、意識が無くなるわけではありません。催眠術師の声も聞こえるし、催眠中に身の回りで起きている事は全て認識しています。むしろ普段よりも感覚が鋭くなり、集中力が高まります。

 

B『ちゃんと催眠から目覚めるでしょうか?』催眠術に掛かったままの人はいません。

催眠状態があまりに心地よくて普段の意識情態に戻りたくないと思う人が沢山居る為、催眠術師が催眠から目覚めるように指示してもすぐに反応しない場合もあります。

その場合は次のどちらかの方法で目覚める事が出来ます。

A催眠状態から抜け出したくなった時に自分でめざめる。

B睡眠に入った後、自然に目覚める。

 

 

臨床心理学者は心身がリラックスし、かつ集中した状態が催眠術のゴールだと考えています。

心理学的には催眠状態には2つのセオリーがあります。

1つ目は、変性意識(トランス)状態とは、催眠術が別の意識へ導いた結果だ、というものです。

変性意識は睡眠に似ていて、脳の精神プロセスの働き方が覚醒時とは異なる全く違った状態であり、必ずしも日常の意識で認識できるものではない、と考えます。

 

2つ目は「non-state theory」と呼ばれ、催眠術はロールプレイングのようなものだというセオリーです。

上記の変性意識状態とは違い、高度の集中と、催眠というものに対する期待のコンビネーションであるというものです。

換言すると、日常の意識があり、ルールに沿って遊んでいるということです。

そして今、催眠状態を心理学的に解明するために、研究者はさらなる証拠を必要としているのが現状です。

 

 

 

私説では、催眠状態とは、1点やイメージ作成に集中して、他の信号(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)が意思の中に入ることを遮断した状態にして、「概念」だけの因果関係の回路を作成して、それの回路を活用することです。

 

自転車の運転などの運動感覚の強い因果関係は心(呼吸、血圧、脈拍)の不安定(エネルギー)を条件にしているのに対し、催眠術の暗示は、リラックスして集中することで落ち着いた心的状態の時に作成され、エネルギーを殆ど持たないアプリなので、エネルギーがほとんど内蔵されていないので、回路はすぐに解体可能なものになります。

これを強度なものに変換するには、何度も繰り返すことで強く太い回路にすることは可能です。

したがって、催眠術とは一時的で、プラス・マイナスのないフラットな条件反射システムを使用したコミュニケーションのことです。

 

 

 

認識と催眠術のプロセスの違い

日常生活における認識のメカニズム

1  5感覚器官を介した外界の波動・粒子の信号を、心でイメージに変換する。

2  イメージ・データに緊張(喜び・悲しみ)があると、プラス・マイナスのタグを付加する。

3  イメージ・データを概念(グループ)と比較・参照する

4  入力信号に自動反応するアプリケーションを潜在意識に作成する。

5  上記のアプリの出力がヒトの認識となる。

 

これは上座部仏教のパーリ語経典で説かれている認識プロセスのメカニズムです。

正確には五蘊(色・受・想・行・識蘊)に呼ばれるものです。

釈尊の風 五蘊篇    心のメカニズム  人類史の発見

認識システムと五蘊 そこからの離脱法

 

 

催眠術のメカニズム

リラックスして変性意識状態になる。したがって、緊張がないのでプラス・マイナスのタグは付加できない。

入力と出力が決まったアプリケーションを作成する。   

具体的には「○○すればするほど△△になる」ことイメージすることで、アプリケーションが発動する。

泡が弾けるイメージをする程度の意識エネルギーによってアプリケーションを解体するほど強固性をもたない。

 

 

2つの相違点

催眠術は、「概念(言語シンボル)」で構成された、すぐに解体できる行動パターンのことです。

パーリ語経典で言えば、「受vedanā」のない「行sankhāra」です。

したがって催眠術のアプリケーションは変性意識状態によって受vedanāのタグがつけることなく、行sankhāraが作成されるために、過去の日常生活で作ったアプリケーションの上書きをすることなく、原因と結果の因果関係の回路を設定することができます。

 

変性意識状態にもいろいろありますが、催眠術の変性意識状態とは深くリラックスしている心境のことなので、術師と被験者との信頼関係が前提になります。

ただし、催眠術のアプリケーションは、受vedanāのタグがないので、強固性がなく、意識の小さなエネルギーでもすぐに解体します。

 

つまり、催眠術とは一時的で、プラス・マイナスのないフラットな条件反射システムを使用したコミュニケーションのことです。

 

 

たとえば、梅干しを見せただけで、唾液が出てきてしまうのは、

実際には食べていないので、舌にある酸味の味蕾を刺激していないが、過去に酸味を体験した行動パターンが潜在意識に自動反応回路として残っているので、梅干しを視覚信号として捉えると、このアプリケーション(言動パターン回路)が発動して、「唾液を分泌」という判断を脳が下すからです。

いわゆる条件反射と呼ばれるものです。

 

催眠術の存在を信じて催眠にかかる(かかりたい)と思っている人は暗示にかかりやすく、催眠術に懐疑的で催眠にかからない(かかりたくない)と思っている人にはかかりません。

 

また、催眠術にかかるかどうかは周囲の環境や催眠術を施す人との信頼関係があるかどうかも密接に関係してきます。

たとえば、誰かがいる場所で、一方的に情報を与えられる状態では、普通の人はなかなか催眠術にかからないものですが、信頼できる相手と二人きりでいるならば、催眠術にかかる可能性はあります。

 

ちなみに、催眠術は訓練によって意図的に「かかりやすくする」ことも可能です。

催眠術師の助手があっさり催眠にかかるのは、日頃から訓練をして催眠術がかかりやすい状態にしていることと、催眠術をかけてくる相手を信頼しているからです。

 

次に、催眠術にかかるには、暗示の内容を受け入れることが必須条件になります。

本人が心からやりたくないと思っている事をやらせることはできません。

 

無意識にでも生存本能や嫌悪感が勝るような暗示はかけることができません。

また、本人が心底望んでいないことは絶対にできません。

極端に言えば「自殺しなさい」という暗示をかけても、望んでいないのに本当に自殺をしてしまう人はいません。

信頼関係が大切なので、初対面の相手に催眠術をかけるのは実は難しいのですが、観客が「この人はプロの催眠術師だから自分も催眠にかかるに違いない」と思ってくれたら、一定数の人にはかけることができます。

 

 

催眠術にかかった状態とは、一言で言うと「中層意識」の状態になっていることを指します。

レム睡眠に近い状態と言われ、潜在意識や無意識など、いろいろな人が違った定義をしています。   

実際、テレビで見る催眠術のパフォーマンスでも、かかった人は目を閉じて眠ったような状態であることが多いです。

レム睡眠に近い状態とは、覚醒しているのでもなく、かといって眠っているのでもありません。

ちょうど眠りに入る前にうとうとしている気持ちのいい状態で、表層意識と無意識とが繋がっている状態です。

人が一番リラックスしている状態とも言えます。

上座部仏教での10意識では、表層意識の奥にある潜在意識や概念意識や統合意識のことで、その奥にある共通意識や枠組意識には至っていません。17ステップの心路citta vithiではバーバンガcittaと呼ばれる状態です。

催眠では、リラックスすることに集中した状態を作り出し、催眠術師の提案(暗示)によってこれまでの思い込みに縛られた状態からオープンな状態へと導いていきます。

 

催眠にかかった状態は無意識になっている状態なので、普段であれば酸っぱいはずのレモンでも、表層意識で対象を分析して判断するのではなく、催眠術師が暗示した概念を優先して判断しています。

ですから術師が「甘い」と言えば甘く感じてしまうのです。

つまり5感覚器官からの信号でも、過去の学習によるパターンではなく、

あらたな「概念」でつくった回路を介した信号として、判断しているのです。

 

私たちが経験則で抱いている「思い込み(過去に学習したパターン)」がなくなった状態を想像してみると、わかりやすいかもしれません。

 

 

 

 

Hypnosis催眠術の由来と種類

催眠術の由来、そこから発展した古典催眠術、そして現代催眠術について

 

催眠術の由来

さまざまな瞑想方法や夢やトランス状態に関する記述が旧約聖書やインド聖典にあります。

私たちが知っている催眠術は、1700年代のドイツの内科医フランツ・メズマーが提唱した「動物磁気」が始まりとされています。

mesmerize(魅惑する)」の語源になった人物で、メズマーは催眠術の原因を動物磁気と呼んでいました。

 

彼はすべての生き物には目に見えない磁力が流れていると考え、その流れを調整することにより、あらゆる病気の治療が可能であると主張していました。

具体的には、薄暗い明かりや不思議な音楽、磁力やジェスチャーで患者のトランス状態を呼び覚まし、目に見えない磁気の流れのバランスを取ることで、患者が健康になった、認識していました。

 

動物磁気説

人間や動物、さらに植物も含めたすべての生物が持つとされる目に見えない自然の力(Lebensmagnetismus)及び、それを用いた医療技術のこと。メスメルの理論そのものは当時において既に否定されていたが、治療術自体は何らかの成果があると見なされて研究は続き、やがて催眠術や催眠療法へと発展する。

参照:ウィキペディア(Wikipedia

 

他のグループでも人間の身体には「磁気」のような性質があり、このバランスが崩れることで病気や不調が起こるのではないかと考えられ、磁気を帯びた金属をかざす治療などが研究されていました。

しかしその研究の後、磁気を帯びた金属ではなく、メスメル自身の手をかざすだけでも治癒同様の効果があることがわかりました。

次に、科学者たちが動物磁力を検証し、ヒーリング能力に関する磁力の流れは事実ではないという結論になりました。メズマーの研究は信頼をなくし、後の治癒者がトランス・セラピーを後継することは無くなりました。

 

しかし1800年の中頃、英国の外科医のジェームズ・ブレードがこの潜在的なセラピーを研究し始めました。

催眠(Hypnosis)は彼の造語だとされています。

催眠術を説明するためにギリシャ神話の眠り神「hypnos」と「−sis」という状態を表す接尾辞から「hypnosis」(催眠状態)という語句を作りました。

催眠による心の深く安定した状態は睡眠に似ていたためです。

 

hypnos」とはギリシャ神話で、眠りの神です。ニュクス(夜)の子で、タナトス(死)の兄弟であり、翼のある青年の姿をしており、木の枝で人の額に触れて眠りに誘う特性を持ちます。

 

最近の臨床心理学者は催眠と睡眠との共通点を研究しています。

また、集中した催眠状態と瞑想との関係性についても研究しています。

テレビの派手な催眠術と違って、臨床催眠術はシンプルで「集中による感覚器官からの信号の遮断」と「心の安定」だけです。

 

落ち着いた音楽が流したりするのは、まずは気持ちを安定させるのが意図で、最終的には外部からの情報を遮断して、自分で作り上げるイメージに集中することを目指します。

術者は優しく話しかけ、時に揺れる懐中時計などで、患者が集中できるよう促します。

そしてリラクゼーションと集中した状態を体験してもらい、術者の提案によりオープンな(思い込みのない)状態に導きます。

催眠に携わる人の間では「催眠は魔術的なものでは無く、科学であるから術をつけないで欲しい」という主張もあります。

 

 

 

A古典催眠術とは舞台催眠術 (Stage Hypnosis いわゆるショー催眠) の事です。

いわゆる催眠商法も、これの応用を含むとされます。

一般のほとんどの人が「催眠術」をTVなどでよく見る、いわゆる「ショー催眠」としてしか認知していない為に「超能力」「魔術」などといったものと同一視し、誤解されがちで、「あるわけない」「やらせだ」などと評価されがちです。

実際には、素人でも簡単なものなら意外と容易に習得できたりもするので、テレビでは実際の作業の中心となる準備段階のシーンを詳細に放映される事は少なく、「かかっている」ように見えるシーンをメインに放映します。

 

実は、催眠術には「古典催眠」と「現代催眠」の2種類があり、テレビで見る催眠術のパフォーマンスの多くが「古典催眠」と言われる手法です。

古典催眠では、催眠をかける側に能力があるという考え方が基本なので、怪しい雰囲気を醸し出すための衣装や髪型をし、「威光暗示」という方法を利用しています。

 

威光暗示とは、ハロー効果とも呼ばれ、「ある対象に対する印象や評価が、その見た目や特徴に左右されて歪められてしまう現象」のことを言います。

 

黒い大きなマントを羽織って大袈裟なパフォーマンスをし、「いかにも特殊な能力を持っていそう」と被験者に感じさせていました。

その名残から今も「催眠術師」と呼ばれてテレビに映る人は、「特殊なパワーを持っていそうな怪しい人」に見せているわけです。

 

たとえば、手をかざす人が特殊な能力を持っていると思う人がいます。

しかし、最初に説明したように、催眠術は心理学を用いた技術なので、特殊なパワーを持った人がいるわけではありません。

 

催眠術は、かける側とかかる側の間に適切な信頼関係を築くためのコミュニケーションが必要です。

そこで、「この人は催眠術ができる人だ」と被験者が思うのであれば、少なからず催眠術にかかりやすい状況を事前につくりだすことになります。

 

例えば、美容商品を例にあげると、綺麗な女優さんが使っている商品だと知ると「あの女優さんのように綺麗になれる」と思えたりしませんか?

だからこそ、美容商品のCMではほとんどの場合、皆が憧れる女優さんやタレントさんが起用されているわけです。

 

古典催眠は、見た目で「いかにも催眠術をかけることができそう」とあらかじめ思わせることで、催眠術をかけやすい状態へとしているのです。

 

 

一方、現代催眠では、かかる側の能力が8割という考え方で、催眠術師は催眠までのサポートをするだけ……というスタンスなので、「いかにも催眠術師」という格好はしていません。

B催眠術は心理学を応用した、心理カウンセリングなどでも使われる「技術」が現代催眠です。

好き勝手に被験者を操ったり、一瞬にして眠らせたり、というのは通常ありません。

実際には外部から自己暗示によって、潜在意識ににある「言動パターン」を作成したり、消去する技術です。

 

催眠療法などで用いられており、まずは被験者が術師の言葉以外の信号が入ってこない状態を作ってから、被験者が以前に作り上げた行動パターン(思い込み)が基準にならない催眠状態へと導きます。

 

 

 

催眠術にかかりやすい人とそうでない人の違い

 

催眠術にかかりやすい人の特徴

催眠術にかかりやすい人は、催眠術によるメリットを受けやすい人でもあります。

また、「自分は絶対催眠術にかからない」と思っている人でも、次の項目に多くが当てはまるのならば、催眠術にかかる可能性が増えます。

 

1.無意識では催眠術にかかりたいと思っている

2.想像力が豊か

3.あまり人を疑わない

4.素直である

5.感受性が豊か

6.集中力が高い

 

特徴1  催眠術にかかりたいと思っている

まず、催眠術にかかりやすい人のほとんどが「催眠術にかかりたい」と思っている人です。

催眠術によって問題の解決を望んでいたり、催眠の状態を体験したいと感じていたり、催眠術に対してオープンな状態と言えます。

催眠術にかかりたいと思っているということは、「催眠術はかかるもの」と信じている状態です。

催眠術では、相手のことを信頼して委ねることが大切になってくるので、「催眠術にかかりたい」と心から思っているというのが大前提になってきます。

 

特徴2  想像力豊か

催眠術はかける側に能力があるのではなく、かかる側の能力が8です。

想像力が豊かな人は、催眠術にかかる能力が高いと言えます。

というのも、催眠術ではさまざまな暗示をかけていきますが、その暗示に沿った映像が瞬間的に想像できる人でなければ話が進まないからです。

想像力が豊かな人の方が、過去の学習したパターンを基準にしない状態から、新たな世界をスムーズに思い描く傾向があります。

 

特徴3  あまり人を疑わない

催眠術では、「信頼関係」がとても重要です。

催眠をかける相手を信頼し、相手の導きを受け入れられることで、新たな体験をすることができます。

普段からあまり人を疑わず、相手のことをスムーズに受け入れられる人は、催眠術にかかりやすい人と言えます。

 

特徴4  素直である

「あまり人を疑わない」にも通ずるところがありますが、人の言うことに対して素直に受け入れる人も催眠にかかりやすいです。

催眠術では、元々ある思い込み(経験したパターン)を取り払い「ここに試してみたい新たな概念のパターンがあります」と新しい思い込みを作っていきます。

しかし、「いや、それは嘘だ」と思ってしまう人だと、新しい思い込み(概念のパターン)が受け入れないため、催眠術が成立しないのです。

 

特徴5  感受性が豊か

感受性が豊かな人は、常日頃からたくさんのことを感じ取って、想像を膨らませることが得意です。

催眠術では「想像力」が必要になってくるため、感受性が豊かな人も催眠術にかかりやすいと言えます。

また、感受性が豊かな人は言葉という「概念」から具体的なイメージをしやすいという性向も、催眠術にかかる際にはとても有効です。

 

特徴6  集中力が高い

催眠術では、集中することでリラックスした状態になるのが最初の一歩です。

テレビのパフォーマンスでも、振り子を使用して「あなたはだんだん眠くなる」と暗示をかけるのがあります。

あのパフォーマンスでは、振り子に集中させている間に表層意識から中層意識へ移行する状態を作りだしているのです。

催眠術では「集中する」という能力が求められるため、元々集中力が高い人は催眠術にかかりやすいと言えます。

集中すると5感覚器官からの信号が遮断されて、心は深く安定し、中層意識にあるアプリ回路(思い込み)を介せずに、術師の暗示(提案)を受け入れてみる準備ができるからです。

 

 

 

催眠術にかかりにくい人はどうしてかからないの?

催眠術にかかりにくい人は基本的に「絶対に催眠術にはかからないぞ」という強い思いを抱いていることがほとんどです。

催眠術師の言う通りになりたくないので、催眠術師の言葉に対して集中していない状態と言えます。

つまり術師の言葉を具体的にイメージ化していないからです。

催眠術では受け手の集中する能力は不可欠です。

催眠術師が誘導する状態に対して集中しない人は、催眠術にかかりにくくなります。

 

 

催眠術にかかりやすい人は、治したい問題をかかえ、「この人物なら自分を治してくれるかもしれない」という期待を持ってその場に来ています。

この時点で、もう8割方その人を信頼しているといって良いでしょう。

 

反対に、かかりにくい人は「自分がこうと思ったらその考えを曲げない」ような人、または催眠術にかけられると自分が何をしでかすかわからないという恐怖を抱えている人です。

そういった人は最初から自分の心を他者に委ねることをガードしているので、かかりにくくなるのは当然です。

 

催眠術を取り上げているテレビでも、「催眠術なんて嘘だ」と信じていない人はかかっていないことが多いです。

しかし一方で、「催眠術に対して懐疑的」と言っているタレントさんがかかる姿を見ることもあります。

「催眠術を信じていない」と言いながら、どこかで「もしかしたらかかるかもしれない」という思いを抱いていれば、催眠術師のコミュニケーション技術によって、催眠状態へ導くことは可能になります。

 

催眠術にかからない人は、元々持ち合わせた性格や性質によるものがほとんどですが、思い込みのブロックを外していくことで、催眠術にかかることはできます

ちなみに、思い込みのブロックは、本人が意識的になくそうと思ってもなかなか難しいことです。

なぜならば、思い込みのブロック(経験のパターン)は中層意識である潜在意識で抱いているものだからです。

 

中層と深層の意識は人間の意識の97%を占めていると言われており、表層の意識を強く影響を与えます。

つまり、中層意識から思い込みの影響力を解かないと、催眠術にかかることはできません。

 

 

 

催眠は自主的なプロセスです。術者の話を聞き、集中し、リラックスしようとしなければいけません。

研究者は、1015パーセントの人は非常に催眠にかかりやすいと考えています。

20パーセントの人は催眠に強い抵抗力があります。

 

ある研究者は核磁気共鳴画像法MRIを使いました。

その結果、催眠術にかかりやすい人はそうでない人と比べて、脳梁の先端が、大きなことがわかりました。

そこは集中を司る部分です。

 

ほかの研究者は催眠にかかった人の脳波を調べました。

基本的に、神経がコミュニケーションするためには電気化学的エネルギーが必要なためです。

 

脳波図、EEGを使い、研究者が脳の働きをモニターし、脳波の異なるパターンを見ました。

研究で、催眠にかかりやすい人はシータ波の増加傾向が特にあることがわかりました。

シータ波は暗算や空想にふけるときなどに活性化し、注意と視覚化に関連性があります。

つまりMRIEEGのデータは催眠術が集中して他の5感覚器官からの信号を遮断している状態と関連性があることを示しています。

 

 

なぜ催眠術師の意のままになってしまうのか?

では、術者の提案(暗示)によって患者の考え方が変わるのはどうしてでしょう。

 

脳は多くの感覚情報を受信し、それらの編集と解釈により状況を理解しています。

その時に、過去の記憶や未来の予測である表層意識の情報が、底層にある5感覚器官からの情報に影響を与える、ということがわかっています。

これを認知心理学ではトップダウン処理、もしくは概念駆動型処理と呼びます。

 

たとえば、飲むワインは同じですが、高いワインとや安いワインとして試飲すると、高いとされるワインのほうがやや美味しかったという人が多くなるというデータがあります。

高いほうが美味しいことを期待したことが原因と考えられるだけでなく、高いとされたワインを飲むと、脳にある喜びを処理する部分がより活発にもなりました。

 

また、医者がよくなると言ったピル(薬)を飲むと、それがただの砂糖であるにも関わらず、効果があると感じてしまうプラセボ効果もトップダウン処理によるものです。

cf. ボトムアップ処理はデータ駆動型処理とも呼ばれ、データ1つ1つそのまま駆動させて情報処理する)

 

つまり、催眠にかかった人は術師の提案にオープンになり受け入れることによって、実際の感覚信号よりも「概念」を優先させて、判断や価値観が変わります。

催眠のこのような効果は科学的にも証明されています。

 

 

例えばストループテストというものがあります。

いろいろなインクで書かれた語句が次々と出され、インクの色、もしくは語句を声に出して読む実験です。

ストループ課題(the Stroop task

物忘れ予防にオススメの脳トレ「間違えずに色を読む?」ストループテスト

 

たとえば、インクの色を基準にする指示があるときには青のインクで書かれた黄色という語句がある場合は青と答え、語句を基準にする指示があるときには黄色と答えます。

誤りが多くなったり、答えるのに時間がかかるのは、語句とインクの色を同時に処理しているためです。

 

神経科学者のチームは催眠が与える効果をストループテストを用いてfMRIで脳の活動をモニターして調べました。

催眠セッションの数日後に、ストループテストの最中の脳をスキャンしてみると、催眠にかかりやすい人は、より早く正確に言葉の色を言い当てました。

 

さらに驚くことに、脳の活動に測定可能な違いもあり、字の解読を司る脳の部分は活性化しませんでした。

つまり脳が言葉を概念として認識していなかったのです。それと同時に、作業における混乱も見られませんでした。これは催眠術に抵抗力がある人の脳とは異なるものでした。

催眠による提案は被験者の判断を変え、語句を概念ではなく色としてみていました。

 

 

また、ある神経科学者による別の研究では催眠によって記憶がブロックできることがわかっています。

実験では、被験者は45分のフィルムを見て、1週間後に催眠を受けました。

あるサインを聞くと映画を忘れるという提案(催眠暗示)を与えられ、さらなるサインで記憶が戻るというものでした。

そして被験者はfMRIに入り、忘れるサインを聞かされたら、映画の詳細が思い出せませんでした。

映画を見た部屋の詳細は思い出せたのにも関わらず、内容は思い出せませんでした。

提案を与えられたグループの人たちの脳の記憶に関する部位が、提案(催眠暗示)を受けなかったグループと比べて活性化されていませんでした。

それは、外傷性脳損傷によって引き起こされると同じように記憶がない状態で、催眠後健忘症と呼ばれ、実際の健忘症の研究モデルとして使われています。

 

私的解釈は、後ほどまでに残る深い記憶の作成は、その時の心(呼吸、血圧、脈拍)の不安定(エネルギー)を条件にしているので、リラックスすることで深い催眠状態に入った時に作成された回路(記録)はエネルギーがほとんど内蔵されていないので、この回路で前の記録を上書きした場合は、以前の記録は解体していしまい、後に記憶することができなくなる、と推測しています。

 

 

 

手術や薬物治療の前に痛みや不安を減らし、より早い回復のために催眠術を使う外科医もいます。

不安や痛みを和らげるために出産に使われることもあります。

催眠セラピーは禁煙、うつ、PTSDなどの行動セラピーと一緒に使われることもあります。

ものの見方を変えて痛みを和らげる、または忘れさせるということは可能です。

 

ただし、催眠は治療ではありません。

催眠的提案が全ての人に効果があり、役立つわけではありません。

 

 

 

 

催眠術を使うメリット・デメリット

催眠術を使うことで得られるメリットとデメリットは以下の通りです。

 

催眠術を使うメリット

思い込みを変えることができる

•行動を変えることができる

•元々持っている能力を引き出すことができる

催眠術では、今持っている「思い込み(過去に学習した経験のパターン)」を変えることができるので、ストレスケアや恐怖症の克服などに役立ちます。

また、元々持っている能力を引き出すことができるため、自己受容や自己肯定にも繋がり、行動を変えることもできます。

例えば、「人前で話すのが苦手だ」と自分のことを評価していても、それ自体が単なる思い込みである可能性もあります。

催眠を使い、あなたの思い込みを変えることで、自然と行動が変化する可能性があります。

 

また食べ物の好き嫌いも、結局の所、過去に自分で作った反応パターンであることがわかると、本人が望むならば、それを思い込み(パターン)と捉え直すことで、対する好き嫌いの感情を変えることができます。

 

 

催眠を使うデメリット

•マイナスの要素を増幅させることがある

•人によっては効果を感じにくい

 

催眠術はメリットの方が強く感じますが、あまりに精神が疲れている状態の場合は、マイナス要素が増幅することもあるので注意が必要です。

たとえば、思い込みを変えるのは、自分が経験したプロセスを繰り返すことが必要であり、その時に心を安らかにしているのが最低条件なのですが、もし疲れや気分や感情によって、自分の心の安定をキープできず、心が動揺してしまう状態ならば、自動反応回路が強化されてマイナス要素が増幅されてしまうからです。

 

また、催眠にかかりにくい人は、表層意識で物事の表層レベルだけで2つを結びつけて捉えようとするので、効果を感じにくい傾向があります。

換言すると、催眠術とは中層意識(潜在意識)にある「概念意識」と「パターン意識」と「統合意識」を編集する技術なので、表層の関係性だけにしかスポットライトを当てようとしないのならば、中層意識へのアクセスを拒むことになるので、催眠効果は現れません。

 

 

 

 

 

実践  催眠術初心者でもできる簡単なかけ方

ここからは、よく使われる初心者でもできる催眠術の簡単なかけ方について説明します。

催眠術にかかりやすい特徴を持っている人は、このやり方で簡単にかかることができます。

 

 

かけ方1.フィンガースティック

ひとつ目のやり方は「フィンガースティック」という方法です。

1.まず、両手の指を交互に組んで、お祈りするようなポーズを作ってください。

2.指を組んだまま両肘を上げて、手が顔の前に来るくらいにします。

3.組んだ指の人差し指だけを立てて、忍者が印を結ぶようなカタチにします。

4.両方の人差し指を5センチくらいまで離してください。

5.さて、力を入れずに人差し指をジーっとしばらく見つめていてください。

6.さあ、指がだんだんくっついてきますよ。

7.どんどんくっつきます。

8.ほーら、くっついてしまいましたね。

 

しばらく見つめていると、だんだん指がくっついてきませんでしたか?

ほとんどの人が、おそらく指がくっついたはずです。

 

これは「観念運動」といい、「指がくっついていた方が自然体である、無理がない」という人間の体の構造を利用して、言葉で誘導したかのように見せるテクニック。

実は、指が離れている状態は意識して作っている状態なので、力を抜いてリラックスすると自然とくっついてしまうというだけのことです。

 

しかし、普通は「観念運動」を意識していないので、被験者は「催眠術にかかった!」と思います。

 

 

かけ方2.カタレプシー

二つ目のやり方は「カタレプシー」という方法です。

こちらは二人以上で行うやり方なので、親しい人と行ってください。

Katalepsieとは、意志がまったく消失したかのごとく、他人のなすがままになり、例えば四肢を他動的に動かしても、そのままの状態を保っています。

 

【カタレプシー】

1.利き手をグーにしてグッと握ってください。

2.親指を立てて爪の先をジーっと見てください。

3.ジーっと見ているとあなたの手はどんどん硬くなり、まるで石のようになってきます。

4.3つ数えると、固まって手が開かなくなりますよ。

5.321、はい、固まりました!

かかりやすい人はコレだけで本当に開かなくなってしまいます。

 

かけたあとは、必ず解いてあげてくださいね。

3つ数えると解けます。123、はい! 」これで解けます。

こちらも凝視法を利用した簡単な催眠術です。

 

ただし、はじめから「かかるもんか」と思っている人は抵抗があるのでかかりにくいです。

かかりやすくするためには、事前段階でコミュニケーションをしっかり取り、信頼関係を築くことが大切ですよ。

 

催眠術を体験できる動画

最近では、催眠術を体験できる動画も種類がたくさんあります。

催眠術にかかってみたいけど、ヒプノセラピーhypnothrapy催眠療法や本格的な精神療法などにはお世話になりたくない、という人も多いでしょう。

 

そこで、もっと手軽に体験できるものとして、YouTubeがあります。

自宅にいても簡単に体験することが出来ます。

「手が開かなくなる」

「催眠術 まぶたが開かなくなる」

 催眠術にかかりたい人の為の動画」

 

実際に催眠術を体験することはできましたか?

催眠術は何か特別なトリックがあるわけでも、催眠術師に特別な能力があるわけでもありません。

あなた自身にかかる能力があるかないか……とてもシンプルな心理学の技術です。

 

 

催眠術を学ぶ方法

催眠術は「かける側」ではなく「かかる側」に能力があると考えると、

催眠術師になるために特殊な能力は必要ないことがわかります。

催眠術師には特別な資格も必要ありませんから、「私は催眠術師です」と言ってしまえば、誰にでもなることができるのです。

 

催眠術の技術では、相手の「思い込み(経験したパターン)」を利用して、行動を導きます

その思い込みこそが潜在意識のことです。

眠術は潜在意識を使う心理テクニックの一つで、私たちは普段何気なく過ごし、何気なく選択しているものの全てに潜在意識が関わっているので、心理学を知っておくと便利です。

 

 

催眠術の技術を学ぶと、日常生活でも活用することができます。

•催眠術を使ってダイエットする

•催眠術を使って禁煙する

•催眠術を恋愛成就に応用する

では、ひとつずつ具体例を。

 

活用法1    催眠術を使ってダイエット

ダイエットに使える催眠術を二つご紹介します。

1.スリムな自分をイメージする

2.自分にかける暗示の文章を録音して聞く

 

ダイエットに関しての催眠術は、実はアスリートのしているイメージトレーニングと同じメカニズムです。

自分に対して暗示をかけ、食欲を減退させたり、食べる意思をコントロールします。

 

1.スリムな自分をイメージする

まずはじめに、ダイエットに成功して、スリムになった自分をイメージしてください。

これは、潜在意識のパワーを最大限に活用する方法なので、入眠前や入浴タイムなど、できるだけリラックスした状態で行うと効果的です。

 

痩せて魅力的な人になるとどうなるか? といった具体的なことまで想像しましょう。

•痩せて憧れの人から声をかけられている自分

•痩せて周りの評価が変わって人気のある自分

•痩せて着たかった服を着て自信満々な自分

できるだけ嬉しい状態をイメージし、潜在意識にその時のイメージと感情をインプットすることが大切です。

 

具体的にイメージができると、イメージした自分がどんな日常を送っているかも想像します。

日常まで想像することができれば、自分の意思をコントロールすることが可能な状態と言えます。

 

2.自分にかける暗示の文章を録音して聞く

「私はダイエットに成功する」「油や甘いものより淡白で奥深い味わいが好き」など、短い文章で願望や持っていきたい傾向などをスマホなどに録音します。

 

そして、これも眠る前などに毎日聞くようにします。

毎日コツコツとやり続けることが肝心です。

 

文章を作る時のコツは、出来るだけ具体的な内容にすることです。

実際にその場面を想像できるくらい、具体的な言葉を使いましょう。

 

 

 

活用法2   催眠術を使って禁煙

催眠術を使って禁煙する方法は、自分自身に暗示をかける方法です。

タバコが吸いたくなったら、次の手順で行ってみてください。

やっていくうちにだんだん上手になり、禁煙へのステップを上げることができます。

 

1.タバコが吸いたくなったら、タバコを吸ったときの落ち着いた気分、

リラックスした気分を思い出してみましょう。

2.3つ数えたら、その気分を思い出しますよ。123、はい。

スーッとタバコを吸い込むと、ニコチンと煙が口から喉を通り、肺に入ってくるのを感じ、心が落ち着きます。

3.これからはタバコを吸う必要はありません。

なぜならあなたは、一気に息を吸って吐き出すと、この感覚をいつどこでも思い出すことができるからです。

4.さあ、もう一度、一気に息を吸い込んで、少し呼吸を止めて、そしてゆっくりと吐き出しましょう。

するとあの時の落ち着いた気分がよみがえってきます。

5.14の「落ち着いた気分」を「冴え渡った気分」にしてもう一度行う。)

6.あなたはもう、禁煙に成功しています。

タバコを吸う必要は、もう感じることはありません。

7.それでは、催眠から覚めましょう。

 

以上の手順で自分に催眠術をかけて、徐々に禁煙を目指します。

慣れると簡単にできるようになります。

 

 

活用法3   催眠術を恋愛成就に応用

催眠術は、恋愛を叶えるためにも応用できます。

 

ですが、ここで伝えるのは相手にかける催眠術ではありません。

「自分はステキな人(または意中の人)を振り向かせることができる」と自分に暗示をかける、自己暗示です。

 

夜寝る前か朝起き抜けに、いくつかの文章を声に出して読み上げるだけです。

•私は魅力的です。

•私は愛される価値があります。

•私の恋愛は成功します。

たったこれだけです。

 

 

眠りの前後は意識が無意識に限りなく近づくため、無意識をコントロールしやすくなっています。

したがって、眠りの前後にこのような言葉を自分に言い聞かせることで、自分に暗示をかけることができます。

 

できれば10日以上毎日行います。

徐々に自然と自信が湧いてきて、あなたは不安がなくなり、より素敵な人になっているはずです。

 

相手は変えることは難しいことですが、自分自身は変えることができます。

そして、自分の潜在意識を変化させることはできます。

 

あなたが、もし好きな人がいても「どうせ私なんて相手にしてもらえない」「振り向いてもらうなんて無理だ」と潜在意識が思っていれば、相手にも波動としてそれが伝わってしまいます。

しかし、そうした思い込み(思考パターン)は、先ほどお伝えした自己催眠で解くことが出来ます。

 

また、あなたの中に「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」「彼氏は◯◯すべき」「彼女は◯◯すべき」などがあるなら、それも刷り込みなどによる思い込みです。

「クリスマスや誕生日には一緒にいるべき」なんていうのもそのひとつです。

もし一緒にいられないと不安になったり、愛されていないなどと思うのは、自分で自分を追い詰めているようなものです。

 

周りがしているからといって、自分もしなければならないなんていうことはありません。

また、自分がそうすべきだと思っていても、相手の中にはそんなルールはないかもしれません。

カップルの数だけそれぞれ付き合い方の形があります。

自分の中の「べき」をなくすことで柔軟さが出てきて、恋愛のハードルも下がります。

 

 

 

 

 

 

 

「現代催眠」の具体的プロセス

古典催眠とは真逆で「催眠はかかる側の能力が8割」というような考え方。

催眠術師はそのサポートをしてあげるというスタンスです。

 

こちらのほうが催眠療法などでは一般的な考え方なんですが、古典催眠風のほうが催眠術師がすごそうに見えるので、テレビなどで取り上げられやすいんですよね。

 

催眠術とは科学的に説明できるものなのでしょうか?

実は、催眠術を医療行為に活かすなどの研究は進んでいるものの、「なぜ催眠にかかるか」というそもそもの原理については、まだ十分に研究されていません。

催眠の定義も、研究者によって違うんですよ。

 

端的にいうと、暗示を用いて、感覚や意識の変化をもたらすのが催眠術です。

編集部・葛上

 

んー、わかるようなわからないような…

 

ではここからは、実際に編集部メンバーに催眠術をかけながら説明をお願いします!

編集部メンバーが実際に催眠術を体験! 本当にかかるのか?

ということで、編集部から体験を希望するメンバーを2人(福田・いしかわ)、集めてきました。

編集部・葛上

 

そもそも、催眠術ってかかると思う?

編集部・福田

 

僕は絶対にかからないと思います。そういうの疑っているタイプなので。

編集部・いしかわ

 

私はメンタルに自信がないからかかるかも…(笑)。心が弱い人がかかりやすいって聞いたことあるし。

 

編集部・葛上

 

催眠術には2つのステップがあります。

 

まずは催眠にかかりやすい状態にする「催眠誘導」をおこない、

そのあとに身体感覚や知覚の変化を起こする「催眠暗示」をかけます。

 

それではみなさん、ラクにしてください。

いまから深呼吸をしていただきます。息を吐き出すと同時に力が抜けるところを想像してください。

人によってはだんだん体が重くなるかもしれません。

それでは、いまから数字を数えます。すると深い催眠に入っていきます。

 

10

9

8

7

6

エレベーターで下に降りているイメージでもいいです。

5

4

3

2

1

 

 

はい、これでリラックスして集中しやすい催眠状態に入ってます。

ここまでが催眠誘導にあたります。つまり準備が終わった段階ですね。

 

 

では次に、催眠暗示をかけていきます。

 

まずは手をギューっと握ってください。爪の先が白くなってきたり、手が温かくなったりしますよね。するとだんだん、あなたの手は石のように鉄のように硬くなっていきます。

 

 

3つ数えると、もう手は開きません。

 

1…

2…

3

 

今朝、なに食べました?

パンッ(手を叩く音)

 

もう開かない。

!?

 

手が開かなくなり、思わず笑ってしまういしかわ。福田も手が開かないよう

 

それでは、いしかわさん。次は左腕を前に伸ばしましょう。

 

想像してください。手から肩の付け根まで太い鉄の棒が通ります。

 

ひとつ…

ふたつ…

みっつ…

パンッ(手を叩く音)

 

はい、これで曲がらない。

あっ!

えっ! ヤバい…! 左手で曲げようとしても曲がらない!

思いっきり力を入れて、なんとか腕を曲げようとするいしかわ

 

手を叩くと完全に解けます。ワンツースリー

パンッ(手を叩く音)

 

…左手で曲げようとしすぎて、右腕が折れるかと思った(笑)。

 

 

実際に催眠をかけられてみて、どんな感じでした?

 

なんだろう…本気で手を開こうと思えば開けるけど、空気読まなきゃ…と思ってたら、いつの間にか開けなくなってるって感じ。

 

外から見ると同じ現象でも、人によってかかり方は結構違うんですよ。

 

「力を入れたくても入れられない」人もいれば、「力が入りすぎてしまって手が動かない」という人もいます。

 

手が開けなくなる催眠をかけるとき「今朝、なに食べました?」って言ってたのはなんですか?

 

文章の内容に意味はないんですが、一瞬気が取られて頭が空っぽになりますよね。その瞬間に暗示を差し込むと成功率が上がります。

 

相手を驚かして、その瞬間に暗示を入れる「驚愕法」という手法があり、メカニズムはそれに近いですね。

 

なるほど…あんまり驚く感覚はありませんでしたが、それで暗示が入りやすくなるんですね。

体の動きだけじゃなく、「感覚暗示」で味覚などを操作することもできる

 

いまやったように体の動きを操作するのが、「運動暗示」という一番カンタンな催眠術です。

 

次のレベルが「感覚暗示」といって味覚などを操作するもの、一番難易度が高いのは「記憶暗示」で、自分の名前を忘れさせたり、幻覚を見せたりすることができます。

 

そんなこともできるんですね…。「味覚を操作」なんて本当にできるんですか?

 

できますよ。じゃあ水を口に含んで、レモンを思いっきり絞って口に果汁を入れるシーンを想像してみてください。

レモンは柑橘系のさわやかな香りがして、すっぱいですよね…それがたくさん口に入ってます。

 

そう強く思ってると、水にも酸味を感じてきませんか?

ん…?

 

あー、すっぱい!!

 

うう…なんでこんなに味が変わるんですか?

 

山登りにたとえるとわかりやすいかもしれません。

 

山のふもとから「水がレモン味に変わる」という山頂がみえていても、普通はどうやったら登れるのかわかりません。そこで私がいろんな言葉を投げかけてルートをつくり、山頂まで導いてあげるイメージです。

 

人によってどのルートがいいかは全く違うので、相手を観察しながら、その時々でベストな道のりを案内するのが催眠術師の役割です。

 

たしかに、いろんな言葉が頭に入ってくることで、ハマる瞬間がくる気がします。

 

もっと丁寧にやると、水をコーラに感じさせることもできます。

 

いかにして存在しない炭酸を感じてもらえるかを考えて、いろんな言葉でイメージを具体化していくんですよ。

 

催眠術が想像の力を使うって、こういうことなんですね!

仕事に使える! 「自己催眠」のかけ方とは?

 

ここまで漆原さんに催眠術をかけていただきましたが、素人が自分に催眠をかけて仕事に活かすことはできるのでしょうか?

 

できますよ。基本的には先ほどと同じで、催眠誘導と催眠暗示の流れを自分でおこないます。

 

まず催眠誘導として深呼吸と数字のカウントダウンをセットでやりましょう。

 

深呼吸するときは息を吐くと同時に力を抜く。足のほうから頭まで、下の部位から順に力が抜けていくことをイメージするとラクだと思います。

 

 

リラックスしたなと思ったら、頭のなかで10から1をゆっくり数えます。それと同時に、力が抜けて心地いい状態になっていく想像をしましょう。

 

5…4…3…2…1…

 

数え終わりましたかね。次に体の重さや温度をじっくり感じましょう。

 

力が抜けて体が重くなったことを感じたら、温度も感じてみてください。

 

ヒーターやキャンプファイヤーに手を近づけると手が温かくなりますよね。そのイメージをだんだん身体中に広げます。

 

 

そこまでできたら、催眠暗示をかけます。やることは、目的の状態を示す暗示文を繰り返し頭のなかで唱えるだけです。

 

オススメは「○○すればするほど△△になる」という構文。たとえば、「エクセルに数字を入力すればするほど楽しくなる」みたいに。

 

この文章がつくれるものなら、たいてい実現できます。

 

え、すごい!

 

じゃあ試しに、「数字を足すほど楽しくなる」という暗示を自分にかけて、トランプの数字を足していってください。

 

わかりました。

 

熱心に数字を足すふたり

じゃあ、催眠を解きます。ワンツースリー

パンッ(手を叩く音)

 

おお、確かにどんどんハマっていく感じがしました…! すごい。

 

いまは漆原さんに解いてもらいましたが、自己催眠は自分でも解けるんですか?

 

はい。頭のなかで泡がパチッとはじけるところを想像したら解けます。

 

じゃあ、今の「トランプ」をやらなくてはいけない作業に置き換えれば、仕事が捗る自己催眠がかけられるんですね…!

催眠術でも「できること」「できないこと」がある?

 

ちなみに本人の能力を超えることはできますか?

 

たとえば「世界一の編集者になる」みたいな。

バカっぽい暗示だ(笑)。

 

能力を超えるのはムリですね。ただ、英語が喋れるようにするのはカンタンです。

 

!? 自分の能力は超えられないのでは?

 

というのも、催眠術は心理抵抗を取り除くのに向いているんですよ。本人の知らない単語は出てきませんが、知っている範囲の言葉はすべて自然に出せるようになる。

 

つまり、いろいろ考えたり恥ずかしがったりして喋れない人が、最大限喋れる状態にはできる、ということですね。

 

あーなるほど! 「英語を話せば話すほど楽しくなる」というような暗示をかけて、抵抗をなくせばいいんですね。

 

ほかに、催眠をかけても「できないこと」ってありますか?

 

催眠術というと、「なんでも言うことを聞かせられる」というイメージがあるかもしれませんが、防衛本能が働くので、本人がやりたくないことは絶対にさせられません。

 

「誰かに財布をあげたくなる」みたいなことも?

 

できません。

 

それを聞いてちょっと安心しました(笑)。

「驚愕」させられることがわかっている人も催眠にかけられるの?

 

「自分は催眠にはかからない!」と思っている人を暗示にかけることもできるんですか?

 

たとえば“驚愕”って言ってますけど、「これから驚愕法を使います」と宣言していたら驚きはしませんよね。そんなネタバレ状態でも可能なんでしょうか。

 

はい、かけられますよ。

 

おお! じゃあ「俺は催眠にかからない」と意気込んでいた、福田にお願いします。

 

福田さん、紙をつまんでいただけますか?

はい。

 

よく見つめてください。

 

シュッ(紙が擦れる音)

 

これでもう離せません。指がくっつきました。

 

離れるっしょ…

はな…れ…

 

親指と人差し指をくっつけた状態のまま、固まる福田

 

編集部・いしかわ

あはははははは!

 

パチンッ(指を鳴らす音)

漆原さん

これでもう解けました。

 

編集部・福田

なんでだー! いや、なんでだー!!

 

漆原さんによると、「催眠術にかかりやすいのは、イメージを具体化する集中力がある人」とのこと。参加した編集部メンバーは、2人とも催眠術がかかりやすい体質でした。

 

ちなみに、「心が弱いと催眠にかかりやすい」みたいなウワサはウソらしいです。

それでは最後に、自己催眠を仕事に活用する方法をおさらい!

 

1. まずは深呼吸を繰り返し、リラックスできたらゆっくり10から1まで数を数える。

2. 体の重さを感じたり、体が温まるところを想像したりして、よりリラックスした状態に。

3. 事前につくった暗示文を繰り返し唱える。「○○すればするほど△△になる」という構文がおすすめ。

4. 目的が達成できたら、最後にゆっくり1から10へ数えて解除しましょう。

さっそく筆者もこの原稿の執筆時に試したところ、非常に集中して作業ができる感覚がありました。みなさんも今日からお試しください!

〈取材・撮影・文=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉