膠原病

 

自己免疫疾患+結合組織疾患+リウマチ性疾患=膠原病

 

膠原病は、特定の臓器ではなく、結合組織(組織の間にあり、膠原線維などから成る部分)や血管に炎症・変性が生じ、さらに全身のいろいろな臓器や組織に炎症が起こる病気です。したがって一つの病気の名称ではなく、膠原病という病気のカテゴリーに入るいくつもの病気を総称して「膠原病」と言います。

 

膠原病の原因

原因は不明ですが、膠原病患者の血液中には、自身の体の構成成分と反応してしまうリンパ球(自己反応性リンパ球)や抗体(自己抗体)が見つかっており、これらが膠原病を引き起こす原因になっている。

免疫システムによって自身の臓器を攻撃してしまう、いわゆる「自己免疫疾患」です。

 

自己免疫疾患とアレルギーとの相違点

免疫システムが過剰に働く疾患であることが共通点だが、

アレルギーでは対象が異物であるが、自己免疫疾患の対象は自分自身の細胞であり、

アレルギーは免疫システムが正常に機能しているが過剰であるのに対して、

自己免疫疾患は免疫システムが異常になってしまっている。

どちらの対処療法も免疫システムを機能不全させるためにステロイドを使用するが、長期の使用では免疫不全が慢性化し、自己免疫力が低下して病原菌に対処できなくなる。

 

原因の1つはストレス

自己免疫疾患の原因はわかっていないが、ストレスに関係があると推察されている。

 

なぜストレスが自己免疫疾患につながるのか

自分の意志や願望が具体化できないことはストレスの原因の1つです。

満足している状態では、心も穏やかであるが、不満の状態が続く場合には、局面打開するために脳は活性化せざるを得ない。

この時の自律神経の状態は交感神経が活性化しており、副交感神経が鎮静している。

緊急性を要する言語活動や身体運動には交感神経の活性化が必要であるが、体の臓器や筋肉や血管などの修復やホルモンの生成などは副交感神経の活性化が必要となる。

体の器官に異常がある時には、交感神経と副交感神経の緩やかにして大きな波動が破損箇所の修復に効果的である。

 

もし交感神経の活性化が基準となる環境にいるのであれば、副交感神経が活性化するTPOを意図的に増やすことがわかりやすい一歩となる。

草むしり、ハンモック、雲の流れと遊ぶ、温泉、ハイキング

 

 

 

ストレスとはなにか

自分の本当の気持ちを表面に現れないようにブロックして、潜在意識に抑え込むのはストレスである。   

たとえば、本人は環境に合わせて上手に対応しているつもりでも、本心が周囲の意見と対立している場合は、自分の周囲の意向に合わせている言動は本心を攻撃しているとも言える。

だから、自分の気持ちを大切にしないというのは、自分自身を攻撃しているようなものである、と言えないことはない。

 

気持ちと体の相関関係

気持ち(意識)と体は連動している関係なので、本当の気持ちを抑え続ける言動は、自分の無意識が自分の体を攻撃している可能性もある、と考えてみるのはどうだろうか?

 

周囲と自分の考え方の違いに対処するのは3つの方法がある。

自分の考え方を周囲に理解してもらい、認めてもらう。

周囲の考え方の奥底にある事実を腑に落ちるように納得して、対立することをやめる。

TPOに合わせて周囲の場所では周囲のやり方で、そうでない場所では自分のやり方にする。

 

 

 

炎症の意味

異物をマクロファージが捕食するためには熱が必要なので炎症が起きる

たとえばあるタンパク質が消化器系器官にある時は反応がなくても、循環器系器官(血管)にある時は異物として処理される。

たとえばタンパク質や炭水化物は異物だが、それがアミノ酸や糖類に分解されると異物ではなくなる。

 

 

 

対処法

近くの医者ができることは参考にできたので、次は自分自身でいろいろと改善できる可能性を試してみる。

「守自意からはじめる」

「自然からのメッセージ 病に感謝」

 

 

体内のタンパク質を異物として反応することが原因なので、タンパク質の量を減らしてみることで改善できるかどうか試みてみる。

 

これまでの療法を続けながら、

体内に入ってくる過大タンパク質の量を減らしたり、タンパク質をアミノ酸に分解するように試してみる。

外部からの異物(タンパク質含有物質)をシャットダウンする。

自己免疫が正常にするために、気持ちをやすらぎと緩やかにして過去に作った回路を上書きする。

 

 

 

 

自己免疫疾患    免疫が自分を攻撃することがある

免疫機能に異常が起きると、自身の正常な組織にまで反応して攻撃をすることがあり、その状態を「自己免疫疾患」といいます。

 

免疫機能が正常に働いていれば、自身の組織と異物を区別し、病気の元である異物(抗原)に対してのみ反応し、攻撃して排除します。ところが免疫機能に異常が起きると、正常な組織を異物だと認識して異常な抗体を作ります。そして、体内の臓器や組織をターゲットにして攻撃し 、炎症を起こしてしまうのです。

 

免疫が自分を攻撃するようになる理由

免疫が自分を攻撃するようになる要因にはさまざまなものがあります。考えられる理由について見ていきましょう。

 

変化した物質が異物と認識されてしまう

ウイルスなどの異物が体内に入ると、体内の細胞が変化し、その刺激によって免疫細胞が攻撃をするという仕組みになっています。そのため、体内に存在する正常な物質でも、ウイルスや紫外線、薬などの環境要因によって変化すると、異物と認識されて攻撃されることがあるのです。

 

入ってきた異物が体内に存在する物質に似ている

体内に存在している物質と似ている異物が入ってくると、それが体内に存在している問題のない物質なのか、異物なのか、見分けがつかなくなる場合があります。こうなると異物のみならず、体内の物質も攻撃の対象になることがあります。

 

抗体の産生を調節する細胞の異常

抗体の産生を調節する細胞の機能に異常が起きると、体内の細胞をターゲットにして攻撃する、異常な抗体が作られると考えられています。

 

ウイルスなどの異物が体内に侵入すると、免疫の司令塔であるリンパ球の一種の「T細胞」が、異物を破壊する働きがある「キラーT細胞」に司令を出し、「B細胞」に抗体を大量に作るように命令します。ところが、B細胞の機能に障害が起きると 異常な抗体が作られてしまい、正常な細胞も攻撃のターゲットにしてしまうのです。

 

体内の別の場所にあるべき物質が血管内に入ってしまう

例えば腸内に存在していても攻撃対象にならない物質も、血管内に入ると攻撃対象になるといったことがあります。このように、本来は別の場所に存在しているべき物質が血管内に入ってしまうと、血管内に存在している免疫細胞が刺激されて、攻撃を引き起こすことがあります。

 

遺伝

病気そのものではなく、自己免疫疾患を発症しやすい体質が遺伝することがあります。また、体質的に異物に対する感受性が強い場合、一般的なウイルス感染が、自己免疫疾患発症の引き金となることもあります。さらに、自己免疫疾患を発症するのは女性のほうが多いことから、ホルモンと関わりがあるとも考えられています。

 

代表的な自己免疫疾患

自己免疫疾患に分類される病気には実に多くの種類があり、攻撃を受ける場所によって症状が異なります。ここでは、代表的な自己免疫疾患についてご説明します。

 

バセドウ病

パセドウ病は、甲状腺が攻撃され、機能が活発になりすぎて甲状腺ホルモン値が高くなる「甲状腺機能亢進症」 です。自分の細胞を傷つける異常な抗体によって甲状腺が刺激され、甲状腺ホルモンが過剰に作られて発症します。

甲状腺ホルモンは、脳や心臓、胃腸の働きの活性化、新陳代謝の促進、体温の調節をする役割があるため、過剰に作られることで、過剰な発汗や不安、睡眠障害、体重の減少などのさまざまな症状につながります。

 

橋本甲状腺炎

橋本甲状腺炎は、甲状腺が攻撃され、機能が低下して甲状腺ホルモン値が低くなる「甲状腺機能低下症」です 。パセドウ病とは正反対で、甲状腺ホルモン量が不足して新陳代謝が悪くなります。疲労感があり、寒さに耐えられないといった症状が見られ、生涯にわたって甲状腺ホルモン補充の治療が必要です。

原因は不明ですが、甲状腺を攻撃する抗体が作られて徐々に破壊され、甲状腺ホルモンの分泌ができなくなり発症すると言われています。

 

膠原病

膠原病は一つの病気の名前ではなく、全身の血管や皮膚、関節、筋肉、内臓などが炎症や変形を起こす病気の総称で、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、血管炎、強皮症などが含まれます。

症状は多彩で、発熱、湿疹、関節痛、筋肉痛、筋力低下、こわばりなどのほか、全身の倦怠感が見られる場合もあります。

原因は不明ですが、遺伝的な要因と、紫外線、感染症、ストレスなどの環境による要因が絡み合い、免疫機能に異常をきたして発症すると考えられています。

 

関節リウマチ

関節リウマチは、関節が攻撃されて炎症を起こして腫れや痛みが生じる「炎症性関節炎」の一つです。炎症による痛み、起床直後や長時間動かさない場合のこわばりが見られ、疲れや脱力感を感じる人もいます。

正確な原因は不明ですが、免疫機能の異常により、関節の内側を包んでいる組織が攻撃され、次第に関節の軟骨や骨がすり減って変形が生じます。

 

全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデスは、関節、神経系、血管、皮膚、腎臓、消化管などの臓器が攻撃されて炎症を起こす病気です。発熱、全身の倦怠感、攻撃された臓器の腫れや痛みなど、さまざまな臓器の障害が一度に、または次々に起こります。

根本的な原因は不明ですが、遺伝的な要因、紫外線、感染症、特定の薬剤の使用などによる免疫異常が原因で発症すると言われています。

 

アルツハイマーは自然炎症

アルツハイマーやパーキンソン病や動脈硬化や痛風は自己の代謝物に過剰反応する免疫疾患だと考えることができる。

自然免疫のことを自然炎症と医学用語では呼ぶ。

 

 

 

 

自己免疫疾患の治療法

自己免疫疾患の治療では、主に免疫抑制剤(免疫機能の働きを抑える薬)を使った免疫抑制療法が行われます。ただ、免疫抑制剤は、問題が発生している免疫機能だけでなく、正常な免疫機能も抑えてしまうため、感染症やがんにかかる可能性が高まります。

 

慢性の自己免疫疾患を治療するためには、長期に渡って薬を服用して、症状を制御しなくてはいけません。

 

膠原病に含まれる病気

膠原病には、全身性エリテマトーデスや全身性硬化症、多発性筋炎皮、膚筋炎、ベーチェット病、シェーグレン症候群など、数多くの疾患が含まれています。リウマチも実は代表的な膠原病の一つで、関節を標的とする膠原病です。

 

膠原病の症状

発熱、関節痛、筋肉痛、皮膚症状(皮疹、レイノー症状など)、リンパ腺の腫れ、眼症状(ドライアイ、ぶどう膜炎など)、口腔症状(ドライマウス、口内炎など)、しびれなどの症状が多くみられます。

 

ただし、これらの症状は全ての膠原病に共通して認められるわけではなく、膠原病に限られたものでもありません。膠原病と言っても、症状の数や種類、程度は患者さんによって大きく異なり、治療方針や治療内容もそれぞれ異なります。

 

膠原病の治療

対症療法として薬物の投与を行うケースがほとんどです。病気を引き起こすリンパ球の働きを抑えたり、自己抗体が作られるのを抑えたりするために、ステロイド剤と免疫抑制剤を使用します。

 

膠原病の治療法は、同じ病気であってもそれぞれ異なります。例えば関節炎の場合、鎮痛剤だけの方がいる一方で、ステロイドによる治療が必要な方もいます。多発性筋炎の場合、ステロイドに加えて複数の免疫抑制剤が必要になるケースもあります。また、膠原病以外の病気を併せもっている患者さんもいます。

 

 

 

 

 

自己免疫  autoimmunity

生物が自身の健康な細胞、組織、およびその他の体の正常な構成要素に対して免疫応答を起こすシステムである。このような異常な免疫応答に起因する疾患は「自己免疫疾患」と呼ばれる。

顕著な例としては、セリアック病、感染後過敏性腸症候群、1型糖尿病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、橋本甲状腺炎、バセドウ病(グレーブス病)、特発性血小板減少性紫斑病、アジソン病、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎、多発性筋炎(PM)、皮膚筋炎(DM)、多発性硬化症(MS)があげられる。自己免疫疾患は、ステロイドで治療されることが非常に多い[3]

 

自己免疫とは、自己タンパク質に反応する抗体やT細胞の存在を意味し、正常な健康状態であってもすべての人に存在する。自己反応性が組織の損傷につながる場合、自己免疫疾患を引き起こす原因となりうる。

 

歴史

19世紀後半には、免疫系は自分の体の組織に対して反応できないと考えられていた。20世紀に入って、パウル・エールリヒが「自己中毒忌避説(horror autotoxicus)」という概念を提唱した。エールリヒは、後に、自己免疫による組織攻撃の可能性を認めながらも、特定の生得的な(本来備わる)防御機構によって自己免疫応答が異常になることを防止できると考え、理論を修正した。

 

1904年、発作性寒冷ヘモグロビン尿症の患者の血清中に赤血球と反応する物質が発見され、この理論は異議を唱えられた。その後の数十年の間に、多くの疾患が自己免疫応答と関連付けらてきた。しかし、エールリヒの仮説が権威を誇ってきたことから、これらの知見の理解が妨げられていた。

免疫学は、臨床的な学問というより生化学的な学問分野となった[5]1950年代までに、自己抗体や自己免疫疾患に関する現代的な理解が広まってきた。

 

最近では[6]、自己免疫応答は脊椎動物の免疫系に不可欠な要素であることが認められるようになった(「自然自己免疫」と呼ばれることもある)。自己免疫(autoimmunity)と同種免疫(alloimmunity)を混同してはならない。

 

低レベルの自己免疫

高レベルの自己免疫は健康に有害であるが、低レベルの自己免疫は実際に有益な場合がある。自己免疫には有益な因子があるという経験をさらに突き進めると、自己免疫が哺乳類がいつまでも生き残るための自己防衛機構であることを証明するという意図で、仮説を立てることができるかもしれない。

 

システムが無作為に自己と非自己を区別する能力を失ったわけではなく、自己の細胞への攻撃は、血液化学を恒常的に維持するために必要な代謝プロセスが循環した結果かもしれない。

第二に、自己免疫は、外来抗原の利用可能性が免疫応答を制限している感染の初期段階で(すなわち、病原体がほとんど存在しない場合)、迅速な免疫応答を可能にする役割を果たしているかもしれない。、Stefanovaらの研究(2002年)では、1種類のMHCクラスII分子(H-2b)を発現するマウスに抗MHCクラスII抗体を注射し、CD4+T細胞とMHCの相互作用を一時的に阻害した。抗MHC抗体投与から36時間後、これらのマウスから回収したナイーブCD4+T細胞(非自己抗原に遭遇したことのない細胞)は、ZAP70(英語版)リン酸化、増殖、およびインターロイキン-2産生によって決定されるように、ハトシトクロムcペプチド抗原に対する応答性の低下を示した[訳語疑問点]。このように、Stefanovaらは(2002年)、外来抗原が存在しない場合でも、自己MHCの認識(強すぎる場合、自己免疫疾患の原因となりうる)がCD4+T細胞の応答性を支持することを実証した[7]

 

免疫寛容

ニューヨークのノエル・ローズとエルンスト・ウィテブスキー、ロンドン大学のロイットとドニアックによる先駆的な研究により、少なくとも抗体産生B細胞(Bリンパ球)に関しては、関節リウマチや甲状腺中毒症などの疾患は、免疫寛容(「非自己」に反応する一方で「自己」を無視する個人の能力)の喪失と関連しているという明確な証拠が示された。この破綻により、免疫系は、自己決定因子に対して効果的かつ特異的な免疫応答を始めるようになる。免疫寛容の正確な起源はまだ解明されていないが、20世紀半ば以降、その起源を説明するために、いくつかの理論が提案されてきた。

 

免疫学者の間では、3つの仮説が広く注目されている。

 

クローン削除理論

バーネットにより提唱され、自己反応性リンパ系細胞が、個体の免疫系の発達過程で破壊されるというものである。フランク・バーネットとピーター・メダワーは、「後天的免疫寛容の発見」により、1960年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

クローン・アネルギー理論は、ノッサルによって提案され、自己反応性のT細胞やB細胞が正常な個体では不活性化され、免疫応答を増幅することができないというものである[8]

イディオタイプネットワーク理論は、イェルネによって提案され、自己反応性抗体を中和できる抗体のネットワークが体内に自然に存在するというものである[9]

さらに、他の2つの理論に対する研究が一心に取り組まれている。

 

クローン無視理論:胸腺に存在しない自己反応性T細胞が成熟して末梢に移動する時、適切な抗原と遭遇できない(到達不能の組織のため)。したがって、破壊を免れた自己反応性B細胞は、抗原または特定のヘルパーT細胞を見つけることができないという理論である[10]

抑制因子集団理論または制御性T細胞理論は、制御性T細胞(一般的にはCD4+FoxP3+細胞など)が、免疫系における自己攻撃的な免疫応答を防止、ダウンレギュレート、または制限するように作用する。

また、寛容は「中枢性」寛容と「末梢性」寛容に区別することができ、これは上述したチェック機構が中枢リンパ器官(胸腺および骨髄)で働くか、末梢リンパ器官(リンパ節、脾臓など、自己反応性B細胞が破壊される可能性がある)で働くかによって決まる。これらの理論は相互に排他的ではなく、これらの機構のすべてが脊椎動物の免疫寛容に積極的に貢献していることを示唆する証拠が増えていることを強調しておく必要がある。

 

ヒトの自然発生的な自己免疫において認められる寛容性の喪失については、そのほとんどがBリンパ球によって生じる自己抗体応答に限定されているという不可解な特徴がある。T細胞による寛容性の喪失を証明することは非常に困難であり、異常なT細胞応答を示す証拠がある場合、それは通常、自己抗体によって認識される抗原に対するものではない。したがって、関節リウマチでは、IgG Fcに対する自己抗体が存在するが、対応するT細胞応答は明らかに見られない。全身性エリテマトーデスでは、DNAに対する自己抗体があるがT細胞応答を引き起こすことはできず、また、T細胞応答に関する限られた証拠は、核タンパク質抗原を示唆している。セリアック病では、組織トランスグルタミナーゼに対する自己抗体があるが、T細胞応答は外来タンパク質のグリアジンに対するものである。このような違いから、ヒトの自己免疫疾患は、ほとんどの場合(1型糖尿病などの例外を除いて)、外来抗原に対する正常なT細胞応答をさまざまな異常な方法で利用しているB細胞寛容性の喪失に基づいていると考えられている[11]

 

免疫不全と自己免疫

免疫不全症候群の中には、臨床的にも検査的にも自己免疫の特徴を示すものが多数ある。これらの患者は、感染症を排除する免疫系の能力が低下しているため、恒常的な免疫系の活性化によって自己免疫を引き起こす原因となる可能性がある[12]

 

たとえば、炎症性腸疾患、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患など、複数の自己免疫疾患が見られる分類不能型免疫不全症(CVID、一般的な可変免疫不全症)が一例である。

 

別の例として、常染色体劣性の原発性免疫不全症である家族性血球貪食症候群がある。このような人には、汎血球減少、発疹、リンパ節腫脹、肝臓や脾臓の肥大がよく見られる。パーフォリン欠乏による未処理のウイルス感染が複数存在することが原因と考えられている。

 

X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)では、慢性および(または)再発性の感染症に加えて、関節炎、自己免疫性溶血性貧血、強皮症、および1型糖尿病などの多くの自己免疫疾患が見られる。また、慢性肉芽腫症(CGD )でも、細菌や真菌の反復感染や、腸や肺に慢性的な炎症が見られる。CGDは、好中球によるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)オキシダーゼの産生低下によって発症する。RAG低型変異は、正中線肉芽腫症(多発血管炎性肉芽腫症およびNK/T細胞リンパ腫の患者によく見られる自己免疫疾患)の患者に見られる。

 

また、ウィスコット・アルドリッチ症候群(英語版)(WAS)の患者も、湿疹、自己免疫症状、再発性細菌感染症、リンパ腫を示す。

 

自己免疫性多腺性内分泌不全症・カンジダ症・外胚葉ジストロフィー(APECED)では、臓器特異的な自己免疫症状(副甲状腺機能低下症や副腎皮質機能不全など)や慢性皮膚粘膜カンジダ症など、自己免疫と感染症が共存する。

 

最後に、IgA欠損症(英語版)は、自己免疫やアトピー性現象の発症と関連することもある。

 

遺伝的要因

遺伝的に自己免疫疾患を発症しやすい人がいる。この感受性は、複数の遺伝子とその他の危険因子が関連している。遺伝的に素因がある人が、必ずしも自己免疫疾患を発症するとは限らない。

 

多くの自己免疫疾患では、3つの主要な遺伝子が疑われている。これらの遺伝子は次に関連している。

 

免疫グロブリン

T細胞受容体

主要組織適合性複合体(MHC

最初の2つの遺伝子は、抗原の認識に関与しており、本質的に可変で、組み換えの影響を受けやすい。これらの変異により、免疫系は非常に多種多様な侵入者に対応することを可能にするが、自己反応性を持つリンパ球が生まれる可能性もある。

 

HLA DR2は、全身性エリテマトーデス、ナルコレプシー[13]、多発性硬化症と強い正の相関があり、1型糖尿病とは負の相関がある。

HLA DR3は、シェーグレン症候群、重症筋無力症、SLE、および1型糖尿病と強い相関がある。

HLA DR4は、関節リウマチ、1型糖尿病、尋常性天疱瘡の発症と相関している。

MHCクラスI分子との相関関係はほとんどない。最も代表的で一貫しているのは、HLA B27と強直性脊椎炎や反応性関節炎(英語版)などの脊椎関節症との関連である。クラスII MHCプロモーター内の多型と自己免疫疾患との間には相関関係があるかもしれない。

 

MHC複合体以外の遺伝子の寄与については、疾患の動物モデル(Linda WickerによるNODマウスの糖尿病に関する広範な遺伝学的研究)や、患者(Brian Kotzinによるエリテマトーデス(SLE、英語版)感受性の連鎖分析)において、依然として研究の対象となっている。

 

最近では、PTPN22(英語版)は、1型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、バセドウ病、アジソン病、重症筋無力症、白斑、全身性硬化症、若年性全身性強皮症、ライテル症候群、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎など複数の自己免疫疾患と関連している[14][要説明]

 

性別

自己免疫疾患における

女性/男性の発生数の比

橋本甲状腺炎       10:1[15]

バセドウ病(グレーブス病)           7:1[15]

多発性硬化症 (MS)           2:1[15]

重症筋無力症       2:1[15]

全身性エリテマトーデス (SLE)      9:1[15]

関節リウマチ       5:2[15]

原発性硬化性胆管炎           1:2

自己免疫疾患の発症にはヒトの性別も何らかの役割を果たしている可能性を示す証拠があり、ほとんどの自己免疫疾患は性関連である(表を参照)。男性が女性と同じかそれ以上に発症しやすい自己免疫疾患には、強直性脊椎炎、1型糖尿病、多発血管炎性肉芽腫症、クローン病、原発性硬化性胆管炎、乾癬などがある。

 

自己免疫における性別役割の理由はさまざまである。一般に、女性は男性に比べて、免疫系を誘発したときに大きな炎症反応を起こし、自己免疫のリスクが高まる。性ステロイドの関与は、多くの自己免疫疾患が、たとえば妊娠中、月経周期中、経口避妊薬の使用時など、ホルモンの変化に応じて変動する傾向があることで示される。また、妊娠歴があると、自己免疫疾患のリスクが持続的に高まるようである。妊娠中に母親と子供の間でわずかであるが直接に細胞交換されることで、自己免疫が誘発されることが示唆されている[16]。これは、ジェンダーバランスを女性の方向に傾けることになる。

 

別の理論では、女性が自己免疫疾患になりやすいのは、不均衡なX染色体不活性化によるものであることを示唆している[17]。プリンストン大学の Jeff Stewart によって提案されたX染色体不活化の偏り理論は、最近(2008年)、強皮症や自己免疫性甲状腺炎で実験的に確認されている[18]。他にも複雑なX連鎖遺伝的感受性機構が提案され、研究が進められている。

 

環境要因

感染症と寄生虫

感染症と自己免疫疾患の間には、興味深い逆相関が存在する。複数の感染症が流行している地域では、自己免疫疾患はめったに見られない。その逆は、ある程度は当てはまるようである。衛生仮説では、これらの相関関係は病原体の免疫操作戦略に起因すると考えている。このような観察結果は、偽りとか効果がないとかさまざまに言われているが、いくつかの研究によると、寄生虫感染は自己免疫疾患の活動性低下と関連している[19][20][21]

 

その機構は、寄生虫が自分自身を守るために、宿主の免疫応答を弱めていると推定されている。このことは、自己免疫疾患に苦しむ宿主に、偶然の利益をもたらす可能性がある。寄生虫による免疫調節の詳細はまだわかっていないが、抗炎症剤の分泌や宿主の免疫シグナルへの干渉が考えられる。

 

逆説的な観察として、ある種の微生物が自己免疫疾患と強く関連していることがあげられる。たとえば、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)は強直性脊椎炎と、コクサッキーウイルスBcoxsackievirus B)は1型糖尿病と、それぞれ強く相関している。これは、感染生物がBリンパ球を多クローン性活性化するスーパー抗原を産生し、さまざまな特異性の抗体を大量に産生する傾向があり、その一部は自己反応性である可能性があると説明されている(後述)。

 

化学物質および薬物

ある種の化学物質や薬物は、自己免疫疾患の発症や、自己免疫疾患を疑わせる症状に関連することがある。これらのうち最も顕著な例は、薬剤誘発性エリテマトーデスである 。通常、問題のある薬物を中止すると患者の症状が治まる。

 

現在、喫煙は、関節リウマチの発症および重症化の主要な危険因子として確立されている。喫煙の影響は、シトルリン化ペプチドに対する抗体の存在と相関していることから、これはタンパク質の異常なシトルリン化に関連しているかもしれない

 

自己免疫の病因

自己免疫疾患の病因には、遺伝的素因と環境調節を背景に、いくつかの機構が作用していると考えられている。これらの機構の一つ一つを余すところなく説明することは本稿の範囲を超えるため、重要な機構のいくつかを要約して説明した。

 

T細胞バイパス

正常な免疫系では、B細胞が形質細胞(プラズマB細胞)に分化し、その後大量の抗体を産生する前に、T細胞によるB細胞の活性化が必要である。T細胞のこの必要条件は、スーパー抗原を産生する生物の感染などでまれに回避されることがあり、これはスーパー抗原が多クローン性B細胞活性化(英語版)やT細胞活性化さえ開始できるためである(T細胞受容体のβサブユニットに非特異的に直接結合する)。

T細胞-B細胞間の不調和 - 正常な免疫応答は、同じ抗原に対するB細胞とT細胞の反応を伴うと想定される。たとえ、B細胞およびT細胞が抗原を認識する方法が全く異なることを知っている場合でも(B細胞は分子の表面上の立体構造を認識し、T細胞はタンパク質の前処理されたペプチド断片を認識する)。しかし、このことを必要とするものは私たちが知る限り何もない。必要なのは、抗原Xを認識したB細胞が、想定外のタンパク質Y(通常はX)をエンドサイトーシスで処理し、それをT細胞に提示することである。RoosnekLanzavecchiaは、IgG Fcを認識したB細胞が、免疫複合体(英語版)(抗原と抗体からなる分子)の一部としてB細胞によってIgGと共エンドサイトーシスされた抗原に応答した任意のT細胞から助けを得られたことを示した。セリアック病では、組織トランスグルタミンを認識するB細胞が、グリアジンを認識するT細胞の助けを得ていると考えられる。

 

B細胞受容体を介したフィードバックの異常

ヒトの自己免疫疾患の特徴は、その大部分が少数の抗原群に限定されていることであり、その中には免疫応答におけるシグナル伝達の役割が知られているものがいくつかある(DNAC1qIgG FcRoCon. A受容体、ピーナッツアグルチニン受容体(PNAR))。この事実から、特定の抗原に抗体が結合すると、膜結合リガンドを介して親B細胞に異常なシグナルがフィードバックされ、自然発症的な自己免疫が生じるのではないかと考えられた。これらのリガンドには、B細胞受容体(抗原に対する)、IgG Fc受容体、補体C3dと結合するCD21Toll様受容体9および7DNAや核タンパク質と結合する)、PNARがある。また、アセチルコリン受容体(胸腺筋様細胞上)やホルモンおよびホルモン結合タンパク質に対する自己抗体など、より間接的なB細胞の異常な活性化も想定される。この考え方は、T細胞-B細胞間の不調和(上述)という概念とともに、自己反応性B細胞が自己永続するという仮説の基礎となっている[22]。自発的自己免疫における自己反応性B細胞は、T細胞ヘルプ経路とB細胞受容体を介したフィードバックシグナルの両方が破壊されたために生存していると見られ、その結果、必ずしもT細胞の自己寛容性を喪失しなくとも、B細胞の自己寛容性の原因となる負のシグナルを克服できると考えられている

 

分子擬態

外来抗原は、特定の宿主抗原と構造的に類似していることがある。したがって、この抗原(自己抗原を模倣する)に対して産生された抗体は、理論的には宿主抗原にも結合し、免疫応答を増幅させることができる。分子擬態という考え方は、A群β溶血性レンサ球菌に感染した後に発症するリウマチ熱との関連で生まれた。リウマチ熱は半世紀にわたって分子擬態に起因するとされてきたが、正式に同定された抗原はない(どちらかと言えば、あまりにも多くの抗原が提案されている)。さらに、この病気の複雑な組織分布(心臓、関節、皮膚、大脳基底核)は、心臓特異的な抗原がないことを提示している。この疾患が、たとえば免疫複合体、補体成分、および血管内皮の間における異常な相互作用によるものという可能性は大いに残されている。

 

イディオタイプ交差反応

イディオタイプ(英語版)とは、免疫グロブリン分子の抗原結合部位(Fab)に見られる抗原性エピトープのことである。PlotzOldstoneは、抗ウイルス抗体のイディオタイプと問題ウイルスの宿主細胞受容体との交差反応によって自己免疫が生じる可能性があるという証拠を示した。この場合、宿主細胞受容体はウイルスの内部イメージとして想定されており、抗イディオタイプ抗体は宿主細胞と反応する可能性がある。

 

サイトカイン調節不全 - 最近、サイトカインは、その機能を促進する細胞の集団(ヘルパーT細胞タイプ1およびタイプ2)に応じて、2つのグループに分けられた。タイプ2のサイトカイン(Th2サイトカイン)には、たとえばIL-4IL-10、およびTGF-βがあり、炎症誘発性免疫応答の誇張(悪化)を防ぐ役割を担っているようである。

 

樹状細胞アポトーシス

樹状細胞と呼ばれる免疫系細胞は、活動中のリンパ球に抗原を提示する。樹状細胞のアポトーシスに欠陥があると、不適切な全身リンパ球活性化と、その結果として、自己免疫寛容が低下する可能性がある[23]

エピトープスプレッディングまたはエピトープドリフト - 免疫応答が一次エピトープ標的から他のエピトープ標的へ変化したときをいう[24]。分子擬態(上述)とは対照的に、他のエピトープは一次エピトープと構造的に類似している必要はない。

 

エピトープ修飾または潜在性エピトープ暴露

この自己免疫疾患の機構は、造血系の欠陥に起因しないという点で独特である。その代わりに、この疾患は、哺乳類の非造血系細胞および臓器の糖タンパク質上に、下等真核生物および原核生物に共通する潜在的なN-グリカン(多糖)結合が露出することに起因する[25]。このような系統的に原始的なグリカンの露出は、1つまたは複数の哺乳類の自然免疫細胞受容体を活性化し、慢性的な無菌性の炎症状態を誘発する。慢性的な炎症性の細胞障害があると適応免疫系が動員され、自己抗体の産生が増加するのに伴い自己寛容性が失われる。この形態の疾患では、リンパ球の欠如が臓器損傷を促進する可能性があり、IgGの静脈内投与が治療につながる。このような自己免疫疾患への経路は、さまざまな変性疾患状態の根底にあると考えられるが、現在の所、この疾患機構を診断する方法は存在しないので、ヒトの自己免疫におけるその役割は不明である。

自己免疫疾患の病因における制御性T細胞、NKT細胞、γδT細胞などの特殊な免疫制御性細胞型の役割は、現在研究が進められている。

 

 

分類

「自己免疫疾患の一覧(英語版)」も参照

自己免疫疾患は、各疾患の主要な臨床病理学的特徴に応じて、全身性、臓器特異的、または局所性の自己免疫疾患に大別される。

 

全身性自己免疫疾患には、セリアック病、エリテマトーデス、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、強皮症、関節リウマチ、クリオグロブリン血症性血管炎(英語版)、および皮膚筋炎などがある。これらの疾患は、組織特異的ではない抗原に対する自己抗体を伴う傾向がある。したがって、多発性筋炎は多かれ少なかれ組織特異的な症状を示すものの、自己抗原はしばしば偏在するtRNA合成酵素であることから、このグループに含まれることがある。

局所症候群は、特定の臓器または組織に影響を及ぼす。

内分泌系:1型糖尿病、橋本甲状腺炎、アジソン病

消化器系:クローン病、悪性貧血

皮膚科系:尋常性天疱瘡、白斑

血液学系:自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病

神経学系:多発性硬化症、重症筋無力症、自己免疫性脳炎、グルテン失調症

従来の「臓器特異的」および「非臓器特異的」という分類法では、多くの疾患が自己免疫疾患として一括りにまとめられていた。しかし、ヒト慢性炎症性疾患の多くは、B細胞とT細胞による免疫病理の明確な関連性を欠いている。過去10年間で[要説明]、組織の「自己に対する炎症」は、必ずしもT細胞やB細胞の異常な応答に依存しているものではないことが確固として証明されてきた[26]

 

このことから、自己免疫の範囲を、一端は古典的な自己免疫疾患で、もう一端は自然免疫系に起因する疾患という「免疫学的疾患の連続体」に沿って捉えるべきであるという最近の提案につながった。この枠組みには、自己免疫の全範囲を含めることができる。一般的なヒトの自己免疫疾患の多くは、この新しい枠組みを使用して、自然免疫を介した免疫病理を実質的に持っていることがわかる。この新しい分類法は、病気の機構を理解し、治療法を開発する上で、意義を持っている[要説明][26]

 

診断

自己免疫疾患の診断は、患者の正確な病歴と身体検査、および日常の臨床検査における特定の異常(たとえば、C反応性タンパク質の上昇)を背景とした疑義の高い指針[要説明]に大きく依存している[要出典]

 

いくつかの全身性疾患では[要説明]、特異的な自己抗体を検出できる血清学的分析法を使用することができる[要出典]。限局性疾患は、生検標本の蛍光抗体法によって最もよく診断される[要出典]

 

自己抗体は多くの自己免疫疾患を診断するために用いられる[要説明]。自己抗体のレベルを測定して、疾患の進行を決定することができる[要出典]

 

治療

自己免疫疾患の治療は伝統的に、免疫抑制剤、抗炎症剤、緩和療法が用いられてきた[10]。自己免疫疾患では、炎症を抑えることが重要である[27]。橋本甲状腺炎や1型糖尿病におけるホルモン補充などの非免疫学的療法は、自己攻撃的反応の結果を治療するもので、これらは緩和療法である。食事療法は、セリアック病の重症度を抑えることができる。 ステロイドやNSAIDによる治療は、多くの病気の炎症症状を抑える。免疫グロブリン療法IVIG)は慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)やギラン・バレー症候群(GBS)に使用される。TNFα拮抗薬(エタネルセプト)、B細胞除去薬(リツキシマブ)、抗IL-6受容体(トシリズマブ)、共刺激遮断薬(アバタセプト)など、特定の免疫調節療法が関節リウマチ(RA)の治療に有用であることが示されている。これらの免疫療法の中には、感染感受性などの有害作用のリスク増加に関連しているものもある。蠕虫療法は、特定の腸管内寄生線虫(蠕虫類)を患者に接種することを含む実験的アプローチである。現在は、2種類の密接に関連した治療法があり、一般に鉤虫(こうちゅう)として知られるアメリカ鉤虫(Necator americanus)、または豚鞭虫卵(ぶたべんちゅうらん、Trichuris Suis Ova)のいずれかを接種する[28][29][30][31][32]

 

T細胞ワクチン接種(英語版)はまた、自己免疫疾患の将来の治療法としても検討されている[要出典]

 

栄養と自己免疫

ビタミンD/日光

ヒトのほとんどの細胞や組織は、T細胞やB細胞を含めてビタミンD受容体を持っているので、適切なレベルのビタミンDは免疫系の調節を促進する[33]。ビタミンDは、日光浴によって生合成され、T細胞やナチュラルキラー細胞に作用することで、免疫機能の役目を担っている[34]。研究によると、低血清ビタミンDの低下は、多発性硬化症、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス(一般に単にループス/狼瘡と呼ばれる)などの自己免疫疾患との関連性が示されている[34][35][36]。ただし、ループスでは光線過敏症が起こるため、患者は日光を避けるように助言されており、これがループスで見られるビタミンD欠乏の原因となっている可能性がある[34][35][36]。ビタミンD受容体遺伝子の多型は、自己免疫疾患の患者によく見られ、自己免疫におけるビタミンDの役割について一つの潜在的な機構を示している[34][35]1型糖尿病、ループス、および多発性硬化症におけるビタミンD補給の効果については、さまざまな証拠がある[34][35][36]

 

ω-3脂肪酸

研究によると、ω-3脂肪酸(おめが-さん-しぼうさん)を適切に摂取することで、自己免疫疾患の症状の原因となるアラキドン酸の影響を打ち消すことが示されている。ヒト実験や動物実験では、ω-3脂肪酸が、関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、乾癬などの多くの症例で有効な治療法であることが示唆されている[37]

大うつ病は必ずしも自己免疫疾患ではないものの、その生理学的症状のいくつかは炎症性であり、本質的に自己免疫である。ω-3は、うつ病の生理学的症状を引き起こすインターフェロンガンマおよびその他のサイトカインの産生を抑制する可能性がある。これは、相反する作用を持つω-3脂肪酸とω-6脂肪酸の不均衡が、大うつ病の病因に関与しているという事実に起因する可能性がある[37]

 

プロバイオティクス/微生物叢

発酵乳製品に含まれるさまざまな種類の細菌や微生物叢(マイクロフローラ)、特にラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)は、マウスの腫瘍に対する免疫応答を刺激するとともに、免疫機能を調節し、非肥満性糖尿病の発症を遅延または予防することが示されている。特にシロタ株L. caseiLcS)はその傾向が強い。LcS株は主に欧州や日本のヨーグルトや類似商品に見られ、他の地域ではほとんど見られない[38]

 

抗酸化物質

乳幼児の1型糖尿病の発症にはフリーラジカルが関与しており、妊娠中に抗酸化物質を大量に摂取することでリスクを低減できるという学説が立てられていた。しかし、1997年から2002年にかけて、フィンランドの病院で実施された研究では、抗酸化物質の摂取量と糖尿病リスクの間に、統計的に有意な相関関係はないと結論付けられた[39]。この研究では、正確な測定やサプリメントの使用ではなく、質問票により食物摂取量をモニタリングし、それに基づいた抗酸化物質の摂取量が推定された。

 

 

 

 

混合性結合組織病Mixed Connective Tissue DiseaseMCTD

全身性エリテマトーデス様・強皮症様・多発性筋炎/皮膚筋炎様のうち2つ以上の症状が混在し、

血液検査で抗U1-RNP抗体という自己抗体が陽性となる病気です。

 

 

レイノー現象、関節痛、皮膚の様々な異常、筋力低下、内臓の問題が発生します。

診断は症状や特徴的な抗体の濃度を測定する血液検査の結果に基づきます。

治療は、症状の重症度によって異なり、非ステロイド系抗炎症薬、ヒドロキシクロロキン、コルチコステロイド、免疫抑制薬が使用されることがあります。

 

混合性結合組織病は男性よりも女性に多くみられます。混合性結合組織病は世界中でみられ、すべての年齢の人に発生し、発生率が最も高いのは、多くの場合が青年期と20代です。混合性結合組織病の原因は不明ですが、これは自己免疫疾患です。

 

混合性結合組織病の症状が他の結合組織の自己免疫疾患の症状と大きく重なるために医師が区別できないことがあることから、混合性結合組織病は重複疾患であると考えられています。しかし、混合性結合組織病患者の全員が他の自己免疫疾患の症状を発症するわけではありません。

 

症状

混合性結合組織病の典型的な症状は、レイノー症候群(手の指が突然青白くなってチクチクしたり、寒冷や感情的な動揺に対する反応としてしびれや皮膚の蒼白がみられたりします)、関節の炎症(関節炎)、手の腫れ、筋力低下、嚥下困難、胸やけ、息切れです。レイノー現象は、他の症状がみられる何年も前から先行することがあります。どのように始まるかとは関係なく、混合性結合組織病は悪化する傾向があり、症状が体の数カ所に広がっていきます。

 

全身性エリテマトーデスに類似した発疹が生じることがあります。指の皮膚が硬くなるなど、全身性強皮症に類似した皮膚の変化がみられることもあります。毛が薄くなる場合もあります。

 

混合性結合組織病では、ほぼすべての患者が関節にうずくような痛みを感じます。約75%の患者では、関節炎で一般的にみられる腫れと痛みが生じます。混合性結合組織病では、筋肉の線維に損傷が起こるため、筋力の低下や筋肉の痛みを感じることがあり、特に肩や殿部でよくみられます。腕を肩より上に上げる、階段を昇る、椅子から立ち上がるなどの動作が非常に困難になる場合があります。

 

混合性結合組織病患者のうち、最大75%で肺が侵されます。肺の中や周囲に液体がたまることもあります。一部の患者では、運動時に息切れを起こすなど、肺機能の異常が最も深刻な問題となる場合もあります。肺にある空気の袋(肺胞)の周囲にある組織を侵す間質性肺疾患が最も一般的な肺の問題です。肺高血圧症は、死亡の主な原因となる疾患で、心臓から肺につながる動脈(肺動脈)の血圧が異常に高くなる病気です。

 

ときには心臓の力が弱くなり、心不全に至ることもあります。心不全の症状としては、体液の貯留、息切れ、疲労などがあります。25%の患者で腎臓が侵され、その場合の損傷は、全身性エリテマトーデスが原因の場合と比べれば軽いものとなるのが通常です。他の症状として、発熱、リンパ節の腫れ、腹痛などがあります。

 

シェーグレン症候群を発症することもあります。時間が経過するにつれて、多くの患者に、全身性エリテマトーデスか全身性強皮症でみられる典型的な症状が現れます。

 

診断

血液検査

全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎の症状が重複している場合には、混合性結合組織病が疑われます。

血液検査を行い、混合性結合組織病患者のほとんどで認められる、抗核抗体(ANA)とリボ核タンパク(RNP)に対する抗体の濃度を測定します。混合性結合組織病の可能性が最も高いのは、これらの抗体の量が多く、なおかつ類似する病気で認められる他の抗体が検出されない人です。血液検査の結果は混合性結合組織病の診断を下すのに役立ちますが、そこで検出される異常がときとして健康な人や別の病気の人でみられることがあるため、それだけでは混合性結合組織病の診断を確定することはできません。混合性結合組織病の診断は、症状、身体診察の結果、すべての検査結果など、医師が集めたすべての情報に基づいて下されます。

 

肺高血圧症の有無を判定するために、医師は肺を評価する肺機能検査と心臓を評価する心エコー検査を行います。他の臓器が侵されていることが疑われる場合は、問題を検出するために、MRI検査や筋生検(検査のために筋肉の組織を一部採取すること)など他の検査を行うことがあります。

 

予後(経過の見通し)

混合性結合組織病は、治療を受けたとしても患者の約13%では病気が進行し、死に至る可能性のある合併症を引き起こす可能性があります。死因としては肺高血圧症(こちらが主)や心疾患があります。主に全身性強皮症または多発性筋炎の特徴が認められる場合には、予後は悪くなります。

 

混合性結合組織病によって余命が縮むことはないようですが、全身性強皮症や多発性筋炎、肺高血圧症、心疾患の特徴など、特定の特徴がみられる患者は例外です。

 

治療

軽症の場合、非ステロイド系抗炎症薬、ヒドロキシクロロキン、またはごく低用量のコルチコステロイド

中等症から重症の場合、コルチコステロイドや免疫抑制薬

その他の症状に対して必要なその他の治療

混合性結合組織病の治療は、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、自己免疫性筋炎の治療と同様です。通常はコルチコステロイドが有効で、早期に診断された場合には、特に有効です。軽症の場合は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ヒドロキシクロロキンやその類似薬、またはごく低用量のコルチコステロイドによる治療が可能です。より重症になるほど、より高用量のコルチコステロイドが必要となります。中等症から重症の場合は、さらに免疫抑制薬(アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチルなど)も必要なことがあります。主要な器官が重度に侵されている人には、通常は高用量のコルチコステロイドと追加の免疫抑制薬が必要です。

 

一般に、病気が進行するほど、また臓器の損傷が大きくなるほど、治療の効果は小さくなります。全身性強皮症に類似した皮膚や食道の組織の損傷では、治療に対して反応がみられる可能性が最も低くなります。

 

筋炎または全身性強皮症を発症する人には、症状に基づいた治療が行われます。レイノー現象がみられる人には、症状に基づいた治療が行われ、カルシウム拮抗薬(ニフェジピンなど)や血流を増やす薬(シルデナフィルやタダラフィルなど)が投与されることがあります。

 

コルチコステロイドを服用している患者では、骨粗しょう症に伴う骨折リスクが高くなります。そのような患者では、骨粗しょう症を予防するために、ビスホスホネート系薬剤やビタミンDとカルシウムのサプリメントなど、骨粗しょう症の治療に用いられる薬を投与することがあります。免疫抑制薬の投与を受けている患者には、真菌のニューモシスチス・イロベチイ Pneumocystis jiroveciiなどによる感染症を予防するための薬も投与されます(免疫力が低下した人の肺炎予防を参照)。

 

混合性結合組織病の患者では、動脈硬化のリスクが高く、医師は綿密なモニタリングを行い、動脈硬化特有の症状と合併症が起きた場合はその治療が行われます。

 

医師は、肺機能検査、心エコー検査、またはその両方を、症状に応じて12年毎に行い、肺高血圧症がないか混合性結合組織病患者のモニタリングを続けます。

 

 

 

 

 

 

 

https://utano.hosp.go.jp/html/patient/know/rheum_07.html

 

国立病院機構 宇多野病院リウマチ膠原病内科    柳田英寿      202031日作成

 

混合性結合組織病の特徴(1):血管の障害-初めはレイノー現象から-

混合性結合組織病で、初めに起こってくる症状として多いのは、強皮症と同じく、「レイノー現象」です。レイノー現象は、「手の指の血液の流れが一過性に悪くなる」症状です。冷たい空気や物に触れた時や、精神的に緊張した時に起こります。

 

手の指の先端が、@まずはろうそくのように真っ白になり(血管が収縮して血液が流れなくなります)、Aそのあと紫色になり(酸素を含まない暗い色の血液が血管の中に滞った状態です)、B最後に、濃い赤色になる(収縮していた血管がふたたび開いた時に、一時的に流れる血液の量が増加します)という、三段階の色の変化を見せる症状です。

 

これほど明らかな三段階の変化でないこともありますが、最初の、ろうそくのように真っ白となることは共通です。レイノー現象のない患者さんもいらっしゃいますが、混合性組織病の患者さんの99%でいつかはレイノー現象がみられるという報告もあります。血管の障害が混合性結合組織病の重要な特徴といえるでしょう。

 

治療のことに触れるのは少し気が早いかもしれませんが、レイノー現象があったときはどのように対処するのでしょうか。まずは、レイノー現象が起こるような血流が不良の状態のために、どれだけ組織がダメージを受けているかを評価することから始まります。血流が維持できないと、酸素や栄養を受け取れませんので組織は壊れていきます。その結果、手の指に潰瘍(皮膚が切れて、くぼみができること)や壊疽(皮膚とその下の組織が壊れて黒くなること)ができます。このようなときに、血流を改善する治療を行います。

 

ガイドラインの指標では、上記のようになっていますが、実際の診療では、潰瘍ができていなくても、生活上の不便(寒冷時の痛みやこわばり、脱力など)があれば、血流改善の治療を行います。

 

血流改善の治療は以下の3つに分かれます。

@基礎療法

禁煙、食事ではたんぱく質を十分にとる、保温(加温は穏やかに、お湯や蒸しタオルで)

A理学療法(リハビリ)

手足の屈伸運動(運動は血流を改善し、むくみをとってくれます)

B薬物療法

レイノー現象をなくすことが薬物療法の目的ではありません。血流が悪いことによって起こる潰瘍や痛みなどの症状を軽減、消失させることが目的です。

 

血管拡張剤、抗血小板剤、抗凝固薬などを単独、あるいは組み合わせて使います。十分な量を使うことが必要です。基本的には内服の薬ですが、大きな潰瘍や壊疽ができているときは、注射・点滴での薬を使うのが一般的です。

 

薬剤としては、商品名でいいますと、プロサイリン・ドルナー、オパルモン・プロレナール、リプル・パルクス・プロスタンディン(これらは注射剤で重症の時に使います)、プロスタンディン軟膏、アンプラーグ(頭痛や動悸が少ない)、プレタール、トラクリア(有効だが効果)、ユベラ(軽症の時)などが代表的です。血管を拡げるこれらの薬を使うときは、頭痛・動悸・立ちくらみに注意する必要があります。抗凝固薬として使われるのは、ワーファリンが代表的です。

 

潰瘍がある程度進行しますと、そこに病原菌の感染を起こすことがあります。病原菌が付いているところの傷は治りませんので、その場合は、内服や注射の抗生剤(ゲンタシン軟膏などの塗り薬では不十分)を使う必要があります。

 

「混合性結合組織病の特徴(2):線維化-皮膚の硬化は強皮症よりも軽く、範囲も限定的-

レイノー現象の次に起こる症状は何でしょうか。血流が悪いと、当然のこととして組織は酸素不足になります。酸素不足になると、線維芽細胞という細胞の活動が活発になると考えられています。線維芽細胞は、名前通りに線維成分(コラーゲン)を合成するだけでなく、炎症(痛み、腫れ、熱、発赤)を誘発する作用があります。血流に関わる、血管の平滑筋細胞、内皮細胞、血小板などの細胞も線維化・炎症を促すと考えられています。

 

この結果として、血流が悪い手足の先端のほうから線維化(皮膚の硬化)が起こってきます。炎症も伴いますので、症状としては、手指のこわばり、痛み、腫れ、皮膚の硬化ということになります。

 

これらの一連の反応を軽減・防止するためにも、十分な血流を確保することが大事であることがおわかりいただけるかと思います。

強皮症の場合は、手指や足指を越えて、手のひらや足の甲、前腕、下腿にまで皮膚の硬化が拡がっていくことが多いのですが、混合性結合組織病の場合はそこまで線維化(皮膚の硬化)が拡がってはいきません。指だけにとどまります。手指、足指だけでなく、内臓においても、混合性結合組織病は、強皮症よりも線維化の程度が少ない病気です。

 

我が国からのJpn J Rheumatol 1997;7:279の報告によりますと、84%の患者さんに皮膚の硬化(線維化)が認められますが、強皮症よりも程度の軽いものです。したがいまして、皮膚病変が治療の対象になることはほとんどありません。血流障害による皮膚潰瘍・壊疽の治療については、先ほどお話しさせていただきました。

 

「混合性結合組織病の特徴(3):炎症-強皮症ではあまりない、発熱がよくみられる-

混合性組織病では、発熱(一過性のこともあり、また継続することもあります)がよくみられます。たとえば、初期の段階では、微熱が続いて体がだるいだけで、その他の特徴的な症状がでないこともあります。熱にしても、37度代の微熱から、39度以上になるような高熱の場合もあります。発熱がある場合は、同時に、あるいは遅れて、以下のような症状がでることがありますので注意が必要です。

 

@関節の痛みや腫れ、Aリンパ節の腫れ、B心膜炎(心臓を覆う膜に炎症が起こり、胸が痛む)、C胸膜炎(肺や胸の内側を覆う膜に炎症が起こり、胸や背中が痛む)、D筋炎(筋肉に炎症が起こり、痛みを感じたり、力が入らなくなる)、E腎炎(自覚症状としては出にくく、浮腫がでることも)、F中枢神経(脳)病変(頻度はわずかです。頭痛・抑うつ・不安・けいれんなど)

 

ここまでで、混合性結合組織病の特徴、(1)血管の障害、(2)線維化、(3)炎症、についてお話ししました。次は、診断の話に移っていきましょう。

 

2.混合性結合組織病の診断

「混合性結合組織病の概念」

まずは、混合性結合組織病の概念からご紹介します。厚労省の指定難病の解説によりますと、混合性結合組織病は以下のような疾患とされています。

 

@全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎などのみられる症状や所見が混在し

A血清中に抗U1RNP抗体がみられる

 

「抗U1RNP抗体とは」

混合性結合組織病は、「膠原病」の一種です。膠原病は、原則として、まず発症前から「自己免疫反応」が起きて「自己抗体」が作られ、「炎症」を誘発し、病気の発症に至ります。

理由は明確ではありませんが、それぞれの膠原病によって、作られる「自己抗体」の種類は異なります。また、これも理由は明確ではありませんが、作られる「自己抗体」の種類によって、病変の起こる臓器の種類も異なってくるという傾向があります。

 

U1RNP抗体も、この「自己抗体」の1種です。抗U1RNP抗体は、混合性結合組織病のほかに、全身性エリテマトーデスでも認められることがあります。どちらの疾患でも、抗U1RNP抗体が陽性の患者さんでは、肺病変(間質性肺炎)、肺高血圧症が比較的に多いことがわかっています(Lupus 2015;24:1057)。この2つの臓器病変については、のちほど説明いたします。

 

日本人は、欧米人に比べて、抗U1RNP抗体が陽性になることが多いといわれています。

 

混合性結合組織病の診断基準

診断基準は、以下の3つのパートに分けられます。

 

共通所見:@レイノー現象、A指ないし手背の腫脹(B肺高血圧症が加えられることも)

免疫学的所見:抗U1RNP抗体陽性

混合所見

1.の共通所見のうち、レイノー現象はすでに説明しました。指ないし手背の腫脹というのは、いわゆるむくみですが、手の指が紡錘状、それよりもソーセージ状といったほうがよいかもしれませんが、そのように腫れてきます。寒冷時のほうがより明らかです。手背も同様に腫れてきます。

2.の抗URNP抗体についても説明しました。

 

3.の混合所見をみてみましょう。他の3つの種類の膠原病の病変と重なる所見です。これらの所見がどれだけ認められるかで、診断していきます。

 

(1)全身性エリテマトーデス様所見

@多発関節炎

Aリンパ節腫脹

B顔面紅斑

C心膜炎または胸膜炎

D白血球減少(4000/μl以下)または血小板減少(10/μl以下)

 

(2)強皮症様所見

@手指に限局した皮膚硬化

A肺線維症、拘束性換気障害(%VC=80%以下)または肺拡散能低下(%DLco=70%以下)

B食道蠕動低下または拡張

 

(3)多発筋炎様所見

@筋力低下

A筋原性酵素(CK等)上昇

B筋電図における筋原性異常所見

 

1.の共通所見の1所見以上が陽性、かつ、2.の抗U1RNP抗体が陽性、かつ、3.の混合所見の(1)(2)(3)のうち、2項目以上につき、それぞれ1所見以上が陽性、のときに、混合性結合組織病と診断されます。

 

3.混合性結合組織病の病像の特徴

「混合性結合組織病の病像のタイプは3種類?」

診断の方法をみていただきました。これをみますと、混合性結合組織病というのは、何か、ばらばらな病気のようにみえるかもしれません。たしかに患者さんごとの差異はかなりあります。しかし、一定のグループ分けが可能だという報告もあります(Lupus 2012;21:1421)。

この報告によりますと、以下の3つのグループに分けられます。

 

グループ@:血管病変・血流障害型(肺高血圧症や手足の潰瘍、血栓症が多い)

グループA:肺線維症、筋炎、消化管病変型

グループB:関節リウマチ型(関節炎が中心)

 

私の経験からも、このような傾向はあるように思います。それぞれの病変については、のちほど説明します。

 

混合性結合組織病の病変の時系列

診断のところであげましたように、混合性結合組織病は多様な症状・病変を呈することがありますが、発症後、どのくらいの時期であるかによって、起きてくる症状・病変には一定の傾向があります。混合性結合組織病の病変の時系列を追ってみましょう。

 

@長期の経過を通して続く症状・病変

レイノー現象、指ないし手背の腫脹、抗U1RNP抗体

A経過中に、だんだんと無くなっていく症状・病変

発熱、紅斑、関節炎、心膜炎、胸膜炎、筋炎などの炎症症状

B経過中に、だんだんと強くなってくる症状・病変

皮膚の硬化、肺線維症、食道病変

C肺高血圧症の存在が予後を左右する(肺高血圧症がある場合、放置していると進行していくので、しっかり治療しなければならない)

 

まとめますと、時間の経過とともに、「炎症」から「線維化」が主体になっていくのが混合性結合組織病と、言えるかもしれません。

 

混合性結合組織病の予後(将来の進行度・重症度)

混合性結合組織病の患者さんの発病から5年後での生存率は96.9%です。生命の危険は少ない病気といえるでしょう。注意すべき病変としては、先ほども紹介しましたが、肺高血圧症、呼吸不全(肺の病変の進行)、心不全(心臓の病変の進行)があります。

 

ガイドラインでは、患者さんへの説明のポイントとして、以下の6つの項目が挙げられています。

 

@慢性疾患であるため、長期間の診療を要すること

A病変は多彩で、個々の患者で病変の分布、重症度は多様

B生命及びQOL(生活の質の確保)の面からも、予後は他の膠原病と比べて比較的良好

C肺高血圧症の有無を確認するために、胸部レントゲン、心電図、心エコーなどの検査を定期的に行うこと。労作時(動いた時)の息切れなどの自覚症状が出現した時は、すぐにこれらの検査をして、肺高血圧症の有無を確認

D根治的な治療はない(Eに示すように、地道な治療が必要です。このような表現をしますと、@とあわせて、混合性結合組織病だけが特別に治療が難しいように誤解されそうです。しかし、一般に病気というものには、たいていの場合、根治的な治療はありません。高血圧症、糖尿病、心不全など、たいていの病気は根治的な治療はなく、ずっと治療を続けなければなりません)

Eステロイド薬をはじめ、対症療法を正しく使えば、疾患のコントロールは可能

 

4.混合性結合組織病の臓器病変

ここからは、いよいよ、それぞれの症状、臓器病変の説明に移っていきたいと思います。

 

4-1.「肺高血圧症:混合性結合組織病の予後に影響する臓器病変」

概要

これまでも繰り返しお示ししましたように、大事な病変です。まずは、全身と心臓と肺の血流の説明からさせていただこうと思います。

 

血液は全身から帰ってきて、右の心臓に入り、肺動脈を経由して、肺に送り込まれていきます。血液は、肺で酸素を受け取り、肺静脈を経由して、左の心臓に帰っていきます。左の心臓からは、今度は大動脈を経由して、全身へと送り出されていきます。

 

この一連の過程で、肺の血管の異常などのために圧力が増して、右の心臓から肺へ血液を十分に送り込めない状態が、「肺高血圧症」です。

 

肺高血圧症になりますと、右の心臓に負担がかかり、右の心臓の機能低下(右心不全)になります。右心不全になると、息切れや足のむくみなどの症状がでてきます。また、肺の血管を血液が通過しにくくなりますから、肺で酸素を受け取った血液が減ってしまい、左の心臓から全身に送り出される血液の量が減り、全身の活動のために必要な酸素を供給できなくなってしまいます。このため、初期では、活動量の多い状態で息切れを感じるようになり、さらに進行すると、ちょっとした活動や、ついには安静時でも息切れを感じるようになってしまいます。

 

肺高血圧症の原因はいろいろあり、それによって治療のやり方も変わってくるのですが、混合性結合組織病の肺高血圧症の主な原因としては、血管の炎症によって血管の壁や内側の細胞が増え、血管の内腔が狭くなってしまうことがあげられます。炎症が認められることは、強皮症の場合には血管の炎症所見がほとんどみられないことと、対称的です。

 

「炎症」を抑え込む治療としては、ステロイド剤や免疫抑制剤が有効です。のちほど、説明します。

 

肺高血圧症への対応:診断

「自覚症状の出現に注意すること」と「定期的な検査」が望まれます。

 

肺高血圧の重症度は、NYHA4つのクラスに分類されます。このうちで、クラス2の段階で治療を開始できれば、さらに悪化していくことは少ないことがわかっています。

 

ちなみに、クラス2とは「安静時は大丈夫だが、通常の活動(屋外の活動、坂や階段を昇ることなど)で呼吸困難、疲労、胸痛、失神あり」の状態です。これに対して、クラス3というのは「安静時は大丈夫だが、通常以下の活動(平地の歩行など)で呼吸困難、疲労、胸痛、失神あり」となります。注釈として入れましたように、階段を昇るときに、たとえば半年前よりも息切れが強くなってくるようでしたら、注意が必要ということになります。

 

このようなことをきっかけに、あるいは年1回程度の定期チェックとして、まずは、心臓超音波(心エコー)検査を行います。その結果、肺高血圧症が疑わしいということになったら、心臓カテーテル検査(肘や足の付け根から、カテーテルという合成樹脂のチューブを入れて、肺動脈の圧を測定します)を行い、肺高血圧症の診断を確定し、重症度を評価します。

 

肺高血圧症への対応:治療

混合性結合組織病の肺高血圧症の原因は、肺の血管の「炎症」であると先ほど申し上げました。そこで、炎症を抑え込むことが治療の中心となります。つまり、ステロイド剤(中等量以上、体重50sであればプレドニゾロン40r/日程度)や、免疫抑制剤(通常はエンドキサンの点滴)が治療の中心になります。

 

これに対して、「炎症」が少ない強皮症の肺高血圧症の場合は、狭くなった血管の内腔を拡げてあげる、血管拡張剤を使うことが治療の中心となります。もちろん、混合性結合組織症の肺高血圧症でも、血管拡張剤を使うことはあります。肺高血圧症に使う血管拡張剤は、レイノー現象や皮膚の潰瘍に使う血管拡張剤と同じものもありますが、特有のものもあります。その種類は、この10年くらいで驚くほど増えました。詳しくは、このホームページ内の「強皮症」のページの中の肺高血圧症の欄をご参照ください。

 

4-2.「間質性肺炎、肺線維症」

概要

間質性肺炎とは、肺の壁に当たる部分、血管や神経などのある「間質」に炎症が起こる肺炎です。気管から気管支、細気管支として分かれて、最終的な肺の空間部分となる、肺胞には、炎症があまり起こらないので、咳は結構出るのに痰が出ないのが特徴です。発熱をともなうこともあります。

 

これに対して、肺線維症とは、同じ肺の壁に炎症が起こるのですが、「炎症」の程度が軽く、「線維化」のほうが主体であることに違いがあります。「線維化」が主体であるので、間質性肺炎よりも病変の進行はゆっくりであることが一般です。

 

どちらの場合も、最終的には肺の壁が線維化し、血液との酸素の受け渡しができなくなっていきますので、酸素不足による息切れ、呼吸不全になっていきます。

 

間質性肺炎、肺線維症の診断

初期症状は、酸素不足になる病態ですので、肺高血圧症と同じように、労作時(動いた時の)息切れということになります。再び、階段を昇るときの息切れが強くなってきた場合に注意が必要です。

 

このような自覚症状があるときなどには、あるいは、定期チェックとして、肺の画像検査や呼吸機能検査を行います。画像検査としては、単純レントゲンとCTがありますが、やはりCT、とくにHRCT(高分解能CT)が有用です。現在進行中の間質性肺炎の場合は、HRCTで、すりガラスのような影として現れます。過去の炎症部位は、明確な白色あるいは、蜂の巣のような空洞として現れます。すりガラスのような影は肺の下のほうに多く、また外側の壁際に多いのが特徴です。

 

海外からの報告ですが、Ann Rheum Dis 2012;71:1966によると、混合性結合組織病では、52%の患者さんですりガラスのような影が認められるとされています。

 

肺の壁の状態は、呼吸機能検査でのDLcoという項目が低下するということでも評価できますが、「百聞は一見にしかず」であり、HRCTの有用性にはかないません。しかし、HRCTには、放射線の被曝という問題があります。技術の進歩で被曝量は減ってきてはいるのですが、無視はできません。

 

そのため、簡便な評価として、KL-6という血液検査があります。KL-6は肺胞に存在している細胞から放出される物質です。間質性肺炎のために肺の壁が壊れると、KL-6は肺胞から血管のほうへ漏れ出していきます。壁が壊れれば壊れるほど、漏れ出るKL-6の量は多くなるので、間質性肺炎が改善しているのか、悪化しているのかを評価することができます。

 

間質性肺炎、肺線維症の治療

現在進行中の病変であるかどうかで、治療するかどうかを決めます。完全に線維化されて固まってしまったところに対しては、残念ながら治療は無力です。

 

「炎症」の要素が強い時は、肺高血圧症と同じようにステロイド剤(中等量以上、体重50sであればプレドニゾロン40r/日程度)と、免疫抑制剤(エンドキサンが主です。保険適応外ではありますが、セルセプトが用いられる場合もあるようです)による治療になります。

 

「線維化」の要素が強い時は、「抗線維化薬」による治療が適当かもしれません。オフェブという抗線維化薬が、強皮症の肺線維症の場合には保険適応になっていますが、現時点では、混合性結合組織病は適応外です。

 

ある程度以上進行してしまったために、すでに酸素不足の状態になっている場合には、在宅酸素療法で酸素を補います。最近の機器は小型化されて軽くなり、外出にも便利になっています。

 

4-3.「食道病変:逆流性食道炎」

概要

我が国からの報告Jpn J Rheumatol 1997;7:279によると、患者さんの78%で、食道の筋肉の委縮、つまり食道の壁の筋肉の一部が線維線分で置き換わっているという変化を認めています。

 

混合性結合組織病では、消化管の始まりである食道にも、線維化が起こっているわけです。しかし、より線維化の強い病態である強皮症では、食道の他に、さらに下の小腸や大腸にも線維化が起こります。混合性結合組織病でも、小腸や大腸の線維化は起こらないわけではありませんが、その頻度はより少なく、程度もより軽いものになります。

 

食道に線維化が起こると、食道の動きが悪くなり、その下に位置する胃から、胃酸が逆流するのを防げなくなってしまいます。胃は酸にも抵抗できるような構造になっていますが、食道はそのような構造にはなっていません。そのために、食道の粘膜が傷み、胸の痛みとして感じられるようになります。それだけでなく、胃酸の逆流によってむせたり、咳が出たり(とくに寝ているとき)、さらには、食道の動きが悪いので、食べたものが胸につかえたりすることもあります。

 

こういう病変のことを「逆流性食道炎」といいます。逆流性食道炎の診断は、基本的には内視鏡(胃カメラ)で行います。

 

逆流性食道炎の治療

基礎療法としては、以下のようなものがあります。

 

@食後すぐに横にならないようにして、重力の力も借りて逆流を防ぐ

A油の強いものは消化管の運動を抑え気味にしますので、摂取を控え気味にする

B1回の食事量を控えめにする。間食を行って、トータルのカロリーを確保する

Cゆったりとした気持ちで食事をとる

 

薬物治療としては、プロトンポンプインヒビターといわれる種類の制酸剤、タケキャブ(最強)・パリエット・ネキシウム・タケプロン・オメプラール、消化管の動きをうながす消化管運動賦活剤、ガスモチン・ガナトン・ナウゼリン・セレキノン・六君子湯を使います。

 

4-4.「発熱:混合性結合組織病の臓器病変のサインでもある」

発熱がある場合は、同時に、あるいは遅れて、以下のような症状がでることがあるので注意が必要であることは、初めのほうでもお話ししました。

 

@関節炎、Aリンパ節腫脹、B心膜炎、C胸膜炎、D筋炎、E腎炎、F中枢神経(脳)病変、です。

 

次の項からは、これらの病変についてお話ししていきます。いずれも「炎症」がかかわる病変ですので、ステロイド剤や免疫抑制剤で治療します。また、ステロイド剤や免疫抑制剤による治療が有効である、という特徴があります。

 

発熱自体は、消炎鎮痛剤(ロキソニンなど)や、少量のステロイド(一般的にはプレドニゾロンで20r/日以下)で対応します。より強力な治療が必要になることもありますが、そのような場合は、たいていは上にあげました臓器病変を合併しているときです。

 

4-5.「関節炎」

混合性結合組織病の患者さんのほぼ全員が、関節炎を一度は経験します。60-70%は軽症、かつ一過性といわれます。一過性の場合は関節の変形などに至ることはないので、消炎鎮痛剤による対症療法でよいでしょう。期間を限定できれば、少量のステロイド剤でもよいのでしょう。

 

しかし、関節リウマチのように慢性の経過をたどり、関節の拘縮(十分に曲げ伸ばしできなくなること)や変形に至ることもあります。症状が継続する、あるいは拘縮が起こるリスクがあるようであれば、関節リウマチの関節炎に準じた治療を行います。当ホームページの関節リウマチ関連の記事をご参照ください。

 

4-6.「心膜炎・胸膜炎」

心臓を覆っている心膜や、肺を覆っている胸膜に炎症が起きて、水が溜まってくるのが、心膜炎、胸膜炎です。胸の痛みや息苦しさといった症状であらわれます。

 

胸部単純レントゲンや、CT、超音波エコー検査、さらには溜まっている心嚢水や胸水をとってきて検査するなどの方法で診断されます。心嚢水や胸水の検査をするのは、感染症でも心膜炎や胸膜炎を起こすことがあるからです。

 

混合性結合組織病の心膜炎・胸膜炎に対しては、中等量以上のステロイド剤、もしくは免疫抑制剤の併用で治療を行いますが、感染症であった場合にこのような治療を行えば、かえって悪化してしまうことになります

 

4-7.「筋炎」

先ほどから紹介しています、我が国からの報告によると、混合性結合組織病の患者さんの54%で、筋肉の委縮(線維化)が認められ、25%で筋肉への細胞の浸潤(炎症)が認められるとなっています。

 

混合性結合組織病の筋炎の治療は、多発性筋炎や皮膚筋炎の治療に準じます(当ホームページの炎症性筋疾患をご参照ください)。簡単に申し上げると、中等量以上のステロイド剤と、免疫抑制剤(アザニン、メトトレキセート、ネオーラル、エンドキサンなど)を使います。

 

幸いなことに、混合性結合組織病の場合は、治療によって速やかに改善することが多く、日常生活に支障をきたすような筋肉の委縮は、少ないことが知られています。

 

4-8.「腎炎」

先ほどからの我が国からの報告では、混合性結合組織病患者さんの29%に、糸球体腎炎が認められています。この中には、軽症で治療不要のものも含まれています。

 

腎炎の病態も治療も、全身性エリテマトーデスの腎炎に準じたものとなっています。筋炎の場合と同様に、全身性エリテマトーデスに比べると、混合性結合組織病の腎炎は治療によって改善しやすいことが知られています。

 

4-9.「神経病変:無菌性髄膜炎」

混合性結合組織病の神経病変として特徴的なものが、「無菌性髄膜炎」です。

 

症状は、強い頭痛と発熱です。通常は、意識レベルが低下するまでのことはありません。

 

診断は、脳脊髄液を採取して検査を行うことと、頭部MRIの検査で他の脳の病気の可能性を除外することで行います。

 

無菌性髄膜炎は、消炎鎮痛剤によって誘発されることもあります。この場合は、消炎鎮痛剤を中止するだけで改善することもあります。しかし、一般的には、治療のためにステロイド剤を使う必要があります。ステロイド剤の使用量は、やはり中等量以上で、たとえば体重50sの人であれば、プレドニゾロン20-50r/日を使います。

 

消炎鎮痛剤で無菌性髄膜炎を起こすリスクがあるとはいっても、頻度は少ないものです。ですから、状況によって、混合性結合組織病の患者さんに消炎鎮痛剤を使うことはありえます。

 

4-10.「神経病変:三叉神経痛」

混合性結合組織病の神経病変として、もう一つ特徴的なものとして、「三叉神経痛」があります。場合によっては、この三叉神経痛が初発症状(一番初めに出る症状)になることもあります。

 

三叉神経は、名前の通りに3つの枝に分かれています。第1枝はひたいのほうに、第2枝は頬に、第3枝は顎のほうに分布しています。これらの枝の領域のいくつかで、痛みやしびれなどの感覚異常が起こります。両側に起こることもあります。症状は長く続くしつこいもので、患者さんを悩ませるものとなります。

 

前項の「無菌性髄膜炎」までは、ステロイド剤や免疫抑制剤による治療が有効な病変が続きましたが、この「三叉神経痛」については事情が異なります。発症して間もない時期であれば、ステロイド剤が有効なこともありますが、その効果は限定的であることが多く、治療に苦労することが多い病変です。結局。根本的な改善というよりは、症状を軽減させるという選択肢をとることになることが多いと思われます。その場合は、テグレトール、リリカ、タリージェ、サインバルタなどの薬剤が使われます。

 

4-11.「血球減少」

血球には、白血球と血小板と赤血球があります。混合性結合組織病の血球減少は、主に白血球の減少で、血小板や赤血球の減少は、あまりありません。

 

血球減少は、混合性結合組織病の診断基準の「混合所見」にも記載されている病変ですが、治療が必要になることは、あまりありません。比較的多い白血球減少でも、治療対象となる、白血球数(WBC1000/μl以下、もしくは好中球数1000/μl以下、リンパ球数500/μl以下になることはめったにありません。

 

治療が必要になった場合でも、ステロイド中等量以下で(プレドニゾロンで10-15r/日)有効である場合がほとんどです。

 

4-12.「混合性結合組織病によくある合併症:唾液腺炎(シェーグレン症候群)」

混合性結合組織病では、他の膠原病である、シェーグレン症候群を合併しやすいということが知られています。シェーグレン症候群は、唾液腺の慢性の炎症のために、唾液が出にくくなる(口腔乾燥)ことと、涙腺の慢性炎症のために、涙が出にくくなる(眼球乾燥)が主な症状となる、膠原病です。

 

混合性結合組織病の場合は、理由は不明ですが、このうちの唾液腺の病変が出やすいということが報告されています。先ほどからの我が国からの報告によれば、混合性結合組織病の患者さんの81%に、唾液腺に細胞が浸潤している(炎症)のが認められ、57%に、唾液腺の委縮(線維化)や破壊像(炎症)が認められています。混合性結合組織病の患者さんの25%に、シェーグレン症候群を合併しているといわれます。口の乾燥症状、唾液の出にくさがある場合には、シェーグレン症候群を疑って、検査をする必要があります。とくに血液検査で、抗SS-A抗体や抗セントロメア抗体が陽性である場合は、シェーグレン症候群の可能性が高くなります。

 

唾液腺の炎症は気づかれにくいものです。ですから、口の中が乾きやすいことなどから、唾液の分泌が悪いことにご本人が気づかれることには、もう炎症のピークは過ぎてしまっており、ステロイド剤や免疫抑制剤が有効である時期も過ぎてしまっています。治療としては、対症療法が主体となり、唾液の分泌を促す、サリグレンやサラジェンという薬を使います。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。いつもながら長くなってしまいましたが、必要なところだけ拾い読みをしていただければと思います。混合性結合組織病の患者さん向けの解説ページは、まだ少ないように思います。血管の障害、線維化、炎症がキーワードなのですが、実際に患者さんと接していても、ご自分の病気のことがよくわからなくて困っていらっしゃるケースを、しばしば経験します。この記事が、患者さんと、関係する方々のご参考になれば、これほど嬉しいことはありません。当ホームページでは、今後とも実用的な情報を発信させていただこうと思います。それでは、またいつかの日にお会いしましょう。

 

202031日作成

 

国立病院機構 宇多野病院  統括診療部長

リウマチ膠原病内科  柳田 英寿