ñāṇaを段階的に育む

はじめに

準備　　　　　　　　　　 ñāṇa（深い理解）に向けて心の準備　

修行前のñāṇa

修行中のñāṇa

涅槃にいたるñāṇa　

参考資料

道に至る順番

はじめに

paññā とñāṇaとvijjaの相違点

智慧paññāは、各自がもつ自動反応回路を弱体化して、究極的には除去して涅槃に至るための実践的智慧を意味します。

智慧paññāなどの潜在意識に作用する力を言語で論理的に説明するのがñāṇa の機能です。

瞑想を実践する時には、瞑想対象と自分の心のメカニズムを知り、

何に対して集中し、何をどのように意識し、何を段階的に目指しているのか、

を熟慮しなければ、表層的な実践だけでは実りを得ることができません。

これらの潜在意識のメカニズムを理解し、涅槃に至るための段階的知識はñāṇaと呼ばれます。

対して、vijjaは古代バラモン教の叡智を指すものとして、仏教以前から知られているものです。

仏教ではavijjā無知に対してのvijjaという、涅槃に至る知識という解釈も加わりました。

ñāṇa（深い理解）に向けて心を準備させる5要素　　　　　　　　Manual of Vipassana Meditation U Ko Lay著　P46　

1） Anandaは「kalyāṇamitta（自分にアドバイスを与えてくれ、意欲を高めてくれるような、よき友）を持つのは有益なことで、よき友を持つことは、聖なる生活の修行実践の半分を達成させてくれる」と考えました。

ブッダは「たった半分ではありません。それはすべてです」と説いています。　

SN 3.18　Kalyāṇamittasutta　　　　SN 3.18. 善き朋友の経

2）極めて注意深く、細部に至るまで入念にsīla（道徳）の規律を守ること。すなわちsīlaの純粋性を保つことです。

3）実践への意欲を高めてくれるインスピレーションあふれるdhammaの話を聴けること。ブッダの説法を書物として読めること。ブッダや有名な弟子たちの伝記を読めること。これらのことは、saddha（ブッダの教えに対する信頼感）を育んでくれます。

4）「不健全かつ悪しき心の状態を取り除き、よい心の状態を培ってviriyaを育むため、継続的努力をする」という確固たる決意をしていること。

5）この世に存在するすべてのものが、生じてはただ消え去っていく様子を観察し、それらがいかに条件づけられており、いかに無常であるかを観察することで、智慧と分析的識別を育むこと。そしてsatiとsamādhiを育むこと。

ブッダがMeghiyaに対して語ったこと　　　Manual of Vipassana Meditation U Ko Lay著　P48　

また、ブッダはMeghiyaにさらに4つの修行をおこなうようにアドバイスしました。これは、特に4タイプのネガティブな心の状態を克服するための実践方法です。　　　AN9.3. Meghiyasutta　　　　　　AN9.3. メーギヤの経

1）肉体が有するasubha（美しくないこと/醜さ/不浄）の不愉快な性質について考察すること。そのための方法は心の中で肉体を解剖し、さまざまな部位や器官に分けて、さまざまな機能（たとえば消化や排泄）に分けてみることです。

目的は自分や他者の肉体に対する過剰な執着や愛欲を克服することで、肉体のことで思い悩んだり、気がかりに思ったりすることから解放されるためです。

2)mettā（友愛の情）、思いやり、他者との一体感によって自他を分け隔てしない気持ちのありようを偏りなく育んでいきます。それによって、怒りや敵意や苛立ちが克服され、幸福で、満ち足りて、寛大な心の状態がもたらされます。

3）鼻孔の下の触覚を利用して、肉体を出入りする呼吸への気づきを培います。これによって、とりとめない過度の雑念が引き起こす心の騒がしさを克服することができます。そうすることで心を統御し集中させることができ、より効果的に心を用いることができるようになります。

4）「anicca」の理解を育むことで、「自己」と呼ばれるものがもつ利己主義とうぬぼれが取り除かれます。そして「すべての現象には実体性などない。すべての現象はanatta（『自己』などと呼ばれる、永遠性のある『核』は存在せず、移り変わる現象に対して「私」はどうすることもできない」という事実が理解できるようになります。

「Meghiyaよ。aniccaを知覚することで『no-self自己ではないもの/非我anatta』への知覚が確立されます。非我が知覚されていると、私を基準にして他を比較して評価することが根絶やしにされます。そして、その者は今生のうちにNibbānaを感得します」

Anattasaññī asmimānasamugghātaṁ pāpuṇāti diṭṭheva dhamme nibbānan”ti.　 AN9.3. Meghiyasutta

肉体、感覚、知覚、言動、心といったものは実際のところは無常であり、そこに主格（固定した「核」としての自己）はないという事実は、あることを前提にして暮らしている者にとっては違和感となります。そしてその事実を受け入れないで暮らすことで、私たちは（潜在意識では）不満足を感じ、苦しみを経験します。物質や心が常在だと想いがちになるのは、生きて存在していたい、と私たちは渇望しているからです。具体的には、この世の事物や事象を、まるで本当に永遠のものであり、自分の所有物であるかのように体験していたい、と潜在的に渇望しているからです。

渇望により、事実をそのままみるのではなくバイアスをかけて対象を作り上げて理解してしまうのです。

このように「実際の現実」と「その現実に対する私たちの見方や願い」の間にはギャップがあります。これこそが「苦」と呼ばれているものです。

aniccaへの理解を深めていくことで、無常のものに対して「これは私である」と思い込むことをやめていきます。

そして無常のものに対する渇望を捨て去ります。

ないものを渇望しても、結果を得ることができず、苦をただ味わうことにしかならないからです。

渇望が存在しなければ苦は存在しません。このことをはっきりと理解することは「エネルギーが付加されていない見解」を持つことです。

これこそが「八聖道」の第１ステップの「正見」です。

私たちは、自分の「見解」（第１ステップ）にしたがって、

考え、話し、行動し、生活（第2〜5ステップ）して、自分の心を浄化し、

苦しみを生み出す「渇望」を取り除くために全精力を注ぎ、気づきの修行をおこない、瞑想実践をおこなうのも（第6〜8ステップ）、

「エネルギーが付加されていない見解」があることが前提です。

このようにして、苦を生み出す「渇望」のすべてが消滅する方向に向かっていきます。

ブッダの教えは極めて膨大ですが、そのすべては、Tipiṭaka「三つの籠」（vinaya、suttanta、abhidhamma）に収められています。

ブッダは、はかり知れぬ智慧で絶対的真理をすべての角度から捉え、その膨大な知識を私たちに与えてくれました。さらにまた、ブッダはそのはかり知れぬ智慧で、教えのすべてを小さなクルミの殻の中に収めたかのようにOvāda Pāṭimokkha（訓誡と戒）という簡潔な3つの節句の中に収めました。

Ovāda Pāṭimokkhaは、ブッダの教えを短い言葉で要約しています。

Sabbapūpassa akaraṇaṃ 　　　すべての悪しき行為をやめること

Kusalassa upasampadā　　　　　よい行為を積んでいくこと

Sacittapariyodapana　　　　 　自身の心を浄化すること

Etaṃ Buddhāna sāsanaṃ　　 　これがブッダたちの教えです　　

DN 14　Mahāpadānasutta　　　　Dhammapada183　 Ānandattherapañhavatthu

修行する前のñāṇa　　　準備段階

kammassakatā ñāṇa 　　「今の自分を構成しているのはこれまでの自分が為したkammaである」ことを理解する知識

kamma　因果関係のあるエネルギー 　+　Sakatā　自体の性質、特性

kammassakatā ñāṇaと清らかなsīla（戒律）を基盤にして、初歩的段階、すなわち、基礎的mūla（根本）の道の実践をおこないます。

これによって、kammassakatā sammā diṭṭhiが生じてきます。Kammassakatāとは「kammaだけが自分の所有物である」ことを意味します。

瞑想実践を開始するまえに、このkammassakatā sammā diṭṭhiを取得しておかねばなりません。

Manual of Vipassana Meditation　U Ko Lay著　日本語訳P40

この世の生命体は自らの行為であるkammaを継承することで輪廻の中を彷徨っているという知識を基準にして生きることをkammassakatā-ñāṇa-sammādiṭṭhiと呼びます。これは仏陀の固有の教えではなく、バラモン教を含め多くの賢人たちが体験している知識です。これには輪廻転生や31領域の宇宙や、メンタル体や、生きとし生けるもの、についても示唆する知識です。

カンマが唯一の拠り所　　　　　

カンマkammaとは「行為」のことで、言動（表層意識と身体の行為）と心（潜在意識を含めた）のエネルギー転換を意味します。

漢字文化圏では歴史的にkammaは「業」と訳されていますが、業kammaを「原因」と解釈するだけでは、誤謬に導かれる可能性があります。

自身の財産はkammaだけいう事実の知識、すなわちカンマだけが身内、すなわち　父であり母であり兄弟であり友であり助手である、と説かれることがあります。

Kammassakatā　　　カンマだけが自分の産物　　　「業を自己とする」「業自性」「生命とは業」「命の材料は業である」

kammassako 　　カンマを所有し、カンマの蓄えがカタチになる

kammadāyāda　　　カンマを次々と受け継ぐ　業は相続するもの　　相続する財産を「業」という

来世はカンマから生まれる　　　「生きるエネルギー」を財産として生命が生まれます。

Kammayoni　　　　　カンマの起源、　　Yoniとは、胎、子宮、生、生まれること、起源、原因、originという意味。

カンマが生命を生み出す。生命を創ったのは業です。業が初めて生命を誕生させるのです。　

kammabandhu 　　　カンマは親類、縁者。親族に守られ育てられ、死ぬまで絆は切れません。　

kammapaṭisaraṇo　　カンマは拠り所　　paṭisaraṇa　 shelter； help； protection避難所　拠り所

kammaṃ satte vibhajati, 　生命体の行為によって分別される　vibhajati：[vi + bhaj + a] divides；dissects；classifies．分別する

yadidaṃ 　　　　　　　　　すなわち　　　　　　yadidaṃ：[（yaṃ + idaṃ），ind．] which is this； that is； namely．

hīnappaṇītatāya 　　　　　優劣、善悪　　　　　hīnappaṇītatā：Inferiority and superiority，goodness and badness

MN 135　　Cūḷakammavibhaṅgasutta　　　　　MN135. 小なる行為の区分の経

Kammassakā, māṇava, sattā kammadāyādā kammayonī kammabandhū kammappaṭisaraṇā. 

Kammaṁ satte vibhajati yadidaṁ—hīnappaṇītatāyā”ti.

知覚ある生命体とは、行為を自らのものとし、行為を相続し、行為を根源とし、行為を眷属とし、行為を帰依所とするものたちのことです。

行為は、生命体を31領域に区別します。すなわち、カンマの働きの違いによって粗雑な生命体や精妙な生命体になります。

AN10.216　Saṁsappanīyasutta　　　　AN10.216. 蛇行するものの経

“Katamo ca, bhikkhave, saṁsappanīyapariyāyo dhammapariyāyo? 2.2Kammassakā, bhikkhave, sattā kammadāyādā kammayonī kammabandhū kammapaṭisaraṇā, yaṁ kammaṁ karonti—2.3kalyāṇaṁ vā pāpakaṁ vā—tassa dāyādā bhavanti.

「比丘たちよ、では、どのようなものが、蛇行するものの教相であり、法（教え）の教相なのですか？比丘たちよ、有情たちは、行為を自らのものとする者たちであり、行為を相続する者たちであり、行為を根源とする者たちであり、行為を眷属とする者たちであり、行為を帰依所とする者たちであり、あるいは、善きものであれ、あるいは、悪しきものであれ、その行為を為すなら、その行為を相続する者たちと成ります。

AN5.161　 Paṭhamaāghātapaṭivinayasutta　　　5.161. 第一の憤懣〔の思い〕の取り除きの経

Yasmiṁ, bhikkhave, puggale āghāto jāyetha, kammassakatā tasmiṁ puggale adhiṭṭhātabbā: ‘kammassako ayamāyasmā kammadāyādo kammayoni kammabandhu kammapaṭisaraṇo, yaṁ kammaṁ karissati kalyāṇaṁ vā pāpakaṁ vā tassa dāyādo bhavissatī’ti; evaṁ tasmiṁ puggale āghāto paṭivinetabbo.

　「第一の害心調伏経」（『増支部』5-161）

Yasmiṃ, bhikkhave, puggale āghāto jāyetha, kammassakatā tasmiṃ puggale adhiṭṭhātabbā –
			語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
			Yasmiṃ, bhikkhave, puggale āghāto jāyetha, kammassakatā tasmiṃ puggale (161-3.)
			kammassakatā	kṛ	名	ā	女	単	主	業自性、業を自己とすること
			adhiṭṭhātabbā –	adhi-sthā	未分	a	女	単	主	確立・決意・執持されるべき
		訳文
		比丘たちよ、ある人に対する害心が生ずるようならば、その人に対して業自性が執持されるべきです。
		161-12.
		‘kammassako ayamāyasmā kammadāyādo kammayoni kammabandhu kammappaṭisaraṇo, yaṃ kammaṃ karissati kalyāṇaṃ vā pāpakaṃ vā tassa dāyādo bhavissatī’ti;
			語	語根	品詞	語基	性	数	格	意味
			‘kammassako	kṛ	形	a	男	単	主	業を所有する、自業の
			ayam		代	代的	男	単	主	これ
			āyasmā		形	ant	男	単	主	尊者、具寿
			kamma	kṛ	名	an	中	依（属）		業
			dāyādo		名	a	男	単	主	相続人、後継者
			kamma	kṛ	名	an	中	有（持）		業
			yoni		名	i	女→男	単	主	胎、子宮、起源、原因
			kamma	kṛ	名	an	中	依（属）		業
			bandhu		名	u	男	単	主	親類、縁者
			kamma	kṛ	名	an	中	有（属）		業
			paṭisaraṇo,		名	a	中→男	単	主	帰依処、帰趣、所依
			yaṃ		代	代的	中	単	主	（関係代名詞）
			kammaṃ	kṛ	名	an	中	単	対	業、行為
			karissati	kṛ	動	未	能	単	三	なす
			kalyāṇaṃ		形	a	中	単	対	善い、善良の、善巧なる
			vā		不変	‐	‐	‐	‐	あるいは
			pāpakaṃ		形	a	中	単	対	悪しき
			vā		不変	‐	‐	‐	‐	あるいは
			tassa		代	代的	中	単	属	それ、彼
			dāyādo		名	a	男	単	主	相続人、後継者
			bhavissatī’	bhū	動	未	能	単	三	ある、なる
			ti;		不変	‐	‐	‐	‐	と、といって、かく、このように、ゆえに
		訳文
		『この尊者は、自らの業ある者、業の相続人、業を起源とする者、業にゆかりある者、業の帰趣ある者であり、彼は善あるいは悪の業をなすであろうが、その相続人となることであろう』と。
		メモ
		・『南伝』は、対象の人物はいずれ業の異熟を受けると考えよ、というニュアンスで訳しているのに対し、『原始』は話者自身の業の異熟として、いま当該人物という怨憎会苦が発生していると捉えよ、という意味合いに取っているようである。構文からして、ここでは前者にならった。

Dhammā-vavatthāna-ñāṇa　　vavatthāna分別する　　Dhammāを分析する知識

この語尾がāのdhammāは「教え」や「宇宙法則」のことではなく、物質エネルギー、すなわち物質の構成要素である。

この世にあるDhammāとはメンタル界のjavana cittaから生じた物質エネルギーであることを知る。

この世には生じては消え去るnāma (メンタル現象) とrūpa (物理エネルギー現象) しか存在せず、永続的な実体があると仮設されている人も生命体も魂も実際には存在しない、という事実を理解する知識です。

nāmarūpa pariggaha ñāṇa　　物質エネルギーとメンタルの現象が有する性質の知識　　　Pariggaha　取得、理解、感得

心の清らかさが取得されるとすぐに、「感覚器官の対象」と「それを知覚する心」を区別できる知識が生じてきます。

すなわちnāmaとrūpaを明確に、あるがままに識別できる明晰な知識です。

これが、nāmarūpa pariggaha sammā diṭṭhiすなわち「この世にnāmaとrūpaという2つの主要な構成要素以外には何も存在しない」見解です。　　　　　　　　　　Pariggaha　取得、理解、感得

bhava（すなわち、物質エネルギーとメンタルの現象の混同）の性質に対する知識を育むことで、nāmaとrūpaという現象を完全に捉えることが徐々にできるようになり、nāmarūpa pariggaha ñāṇaとnāmarūpa pariggaha sammā diṭṭhiが生じていきます。

次に、解放に至る道は「八聖道」以外になく、この八聖道は3ステップから成る実践的修行であることを知っておくことは大切です。

第1ステップはsīla（カタチの清らかさ）、第2ステップはcitta visuddhi（心の清らかさ）、第3ステップは智慧の育成（ñāṇaと、そこから生まれる見解）です。

たとえば、常見（五蘊や魂や我は普遍で、転生で次の生命体に移行する）も断見（死後には生前の自動反応回路は断滅するので転生はない）といった考え方も、あるTPOの視点に立てば、一理あるように見えます。

しかし、この2つの見解はどちらも、「kammaとその結果」の関係性を部分的に捉えてしまい、全体的に理解できてしていません。

つまり、五蘊は常に変化していますし、同時にkammaには因果関係はあるので、五蘊は輪廻の中では断滅することはありません。

八聖道の実践に取りかかるまえに、まずはmicchā diṭṭhi（誤った見解）を捨てて、代わりに、kammassakatā sammā diṭṭhiを持たねばなりません。

つまり、「kammaは存在する。そして、kammaがもたらす結果は存在する」という見解を受け入れる必要があります。

認知のñāṇa　　 sutamayā ñāṇa、cintāmayā ñāṇa、bhāvanā-mayā ñāṇa　　　　３種の認知アプローチ

まず、書物を読んだり誰かの話を聞いたりしてsutamayā ñāṇaを育みます。次いで各自は思考して、cintāmayā ñāṇaを育み始めます。その後、微細領域での体験をしてbhāvanā-mayā ñāṇaを育み始めます。

第1段階のsīlaが一定のレベルにまで浄化されると、心は安定し、落ち着きます。そしてまた、自分の内面を貫く洞察力がある程度そなわります。

次に第2段階に歩み始めます。suttanta pitaka（経蔵）にしたがって、sammā vāyāma（努力）とsammā sati（気づき）とsammā samādhi（集中）の実践を開始します。この道を歩むことによって、次第にcittaが浄化されていきます。修行者はpariyuṭṭhāna kilesa（汚れた心によって生み出された汚濁）を除去し始め、そして、その汚濁を遠ざけるようになります。

Pariyuṭṭhāna 先入観「過度の努力」　　[pari　+　uṭṭhāna　エネルギー　立ち上がる 爆発　origin； energy；　

第3段階のbhāvanā-mayā ñāṇaを培うためにはmūla maggaを育まねばなりません。Mūla maggaとはkammassakatā ñāṇa（生命体は、自分の為したkammaの所有者である、という知識）の助けを借りながら、自分のsīla（言動）を清らかにすることです。

第１に、sutamayā ñāṇaがあります。これは、ブッダの教えについて書物を読んだり話を聞いたりして生じる理解です。この第一ステップのsutamayā ñāṇaは、それ自体では不十分なものなので理解する際には注意深くあらねばなりません。なぜなら、このsutamayā ñāṇaの段階で、文字や意味を誤解したり不完全に理解したりすると、続く2つのñāṇaの段階に影響を及ぼしてしまう可能性があるからです。

たとえばDhammacakkappavattanasutta　法の輪の転起の経を学ぶ中で、saṅkhittena pañcupādānakkhandhā dukkhāすなわち「端的に言えば、渇望する5つの集合体が苦である」というブッダの言葉や、yaṁ kiñci samudayadhammaṁ sabbaṁ taṁ nirodhadhammanすなわち「生起する性質を持つものはすべて、消滅する性質も持つ」という2つの節の意味を誤って解釈してしまうと、このsuttaの実践的側面の全体を間違えることになります。

第２はcintāmayā ñāṇaです。これは、読み知ったり聞き知ったりする内容について、熟考することによって生じる理解です。言葉の内包している意味を読み取り、消化し、その言葉を自分の経験と論理性に関連づけて理解するということです。

第3️はbhāvanā-mayā ñāṇaです。これは、教えを実際に実践に移すことによって生じる理解です。心の育成、つまり瞑想やその他の実践的応用によって得られる理解です。

この第3の理解こそが、sampajāno（完全なる理解と把握）の意味するものです。

sampajānoは、「四つの聖なる真理」、すなわちNibbānaをみずから体験するまで「八聖道」を最後まで歩みきることで達成されます。magga ñāṇaとphala ñāṇaが生じて涅槃nibbānaに達成するのが、仏教の真の目的です。

ここで疑問が生じます。どうすれば、magga pala ñāṇaにつながるbhāvanā-mayā ñāṇaを生じさせることができるのでしょうか？

その答えは、「ñāṇa（理解）の取得に向けて、心を準備しておく」です。

Abhiṇha sutta 　 abhiṇha：[adj.] continuous； habitual.連続的、習慣的、恒常的、

AN5.57 Abhiṇhapaccavekkhitabbaṭhānasutta 　　　 5.57 幾度となく注視されるべき状況の経

“Pañcimāni, bhikkhave, ṭhānāni abhiṇhaṁ paccavekkhitabbāni itthiyā vā purisena vā gahaṭṭhena vā pabbajitena vā. Katamāni pañca?

１‘Jarādhammomhi, jaraṁ anatīto’ti abhiṇhaṁ paccavekkhitabbaṁ itthiyā vā purisena vā gahaṭṭhena vā pabbajitena vā.

２‘Byādhidhammomhi, byādhiṁ anatīto’ti abhiṇhaṁ paccavekkhitabbaṁ itthiyā vā purisena vā gahaṭṭhena vā pabbajitena vā.

３‘Maraṇadhammomhi, maraṇaṁ anatīto’ti abhiṇhaṁ paccavekkhitabbaṁ itthiyā vā purisena vā gahaṭṭhena vā pabbajitena vā.

４‘Sabbehi me piyehi manāpehi nānābhāvo vinābhāvo’ti abhiṇhaṁ paccavekkhitabbaṁ itthiyā vā purisena vā gahaṭṭhena vā pabbajitena vā.

５‘Kammassakomhi, kammadāyādo kammayoni kammabandhu kammapaṭisaraṇo.

Yaṁ kammaṁ karissāmi—kalyāṇaṁ vā pāpakaṁ vā—tassa dāyādo bhavissāmī’ti abhiṇhaṁ paccavekkhitabbaṁ itthiyā vā purisena vā gahaṭṭhena vā pabbajitena vā.

女性であれ男性であれ、家庭人であれ隠遁者であれ、すべての者が、間断なく常に熟慮、熟考、考察すべき、自然が有する５つの事柄があります。

現実が有する５つの事実とは何でしょうか？

1．「老い」があります。老いは自然が有する事実です。老いからは逃れることも回避することもできません。自然が有するこの事実は、間断なく常に熟慮、熟考、考察すべきです。

2．「病」があります。病は自然が有する事実です。病からは逃れることも回避することもできません。自然が有するこの事実は、間断なく常に熟慮、熟考、考察すべきです。

3．「死」があります。死は自然が有する事実です。死からは逃れることも回避することもできません。自然が有するこの事実は、間断なく常に熟慮、熟考、考察すべきです。

4．愛し好む人たちは生死に関わらず、様々なことで互いに別離することになります。自然が有するこの事実は、間断なく常に熟慮、熟考、考察すべきです。

5．kammaは各自が持つ唯一の所有物です。kammaを相続するのは自分のみです。kammaのみが自分の存在を条件づける「原因」です。kammaのみが自分の親類であり、自分の唯一の拠りどころがkammaです。自分がよい行為をおこなおうとも、悪い行為をおこなおうとも、自分はその行為の相続者となります。

Bhikkhuらよ。以上が、女性であれ男性であれ、家庭人であれ隠遁者であれ、すべての者が自然に有する５つの事実、すなわち間断なく常に熟慮、熟考、考察すべき５つの事柄です。

修行しているときのñāṇa

Udayabbaya ñāṇa　　　メンタル現象と物質エネルギーの現象が生成しては崩壊するさまを、はっきりと見極める知識

udayabbaya-ñāṇa（心身の現象の発生と消滅を観想することによって生じる知識）と関連したkāyagatāsatiは、それらの発生と消滅をはっきりと見ているので、道を進むにあたって価値あるものです。

kāyagatāsati [kaya 体　+gata 関する+　sati 気づき]　 体を基準にするマインドフルネス

1）SN22.95 Pheṇapiṇḍūpamasuttaからの抜粋 SN22.95. 泡沫の団塊の経

Pheṇapiṇḍūpamaṁ rūpaṁ,vedanā bubbuḷūpamā;

Marīcikūpamā saññā,saṅkhārā kadalūpamā;

Māyūpamañca viññāṇaṁ,desitādiccabandhunā.

Pheṇapiṇḍūpamaṁ [pheṇapiṇḍa　泡の塊+upamā 譬喻，比喻，譬，喻]

「『形態は、泡沫の団塊の如きものである。感受〔作用〕は、泡粒の如きものである。表象〔作用〕は、陽炎の如きものである。諸々の形成〔作用〕は、芭蕉の如きものである。そして、識知〔作用〕は、幻想の如きものである』

「イメージとは泡の塊、感覚機能は泡粒、観念は陽炎、自動反応回路は芭蕉、経験は幻想、（どれもすぐに消えてしまうものでしかない）別訳

rūpaとは泡沫のようなもの

rūpaとは水路や小川の水面を漂うあぶくのようなものです。水膜の中に空気の泡が閉じ込められてあぶくはできます。空気の泡によって膨らんだ水膜が寄り集まってあぶくの塊を作ります。その大きさは人間の拳や頭や人体やそれ以上の大きさになることさえあります。あぶくでできたこの大きなかたまりは、一見すると実体性があるもののように見えますが、注意深く観察すると、実体などはなく、頼ることができないものであることが分かります。

同様に、頭と胴体と手足がある人体は男性や女性の形状をしており、一見すると実体があり、美しい容貌をしており、生ける実在物のように思われます。

しかし、この肉体を入念に分析して観察すると、それは単なるあぶくの集まりのようなものにすぎず、実体などはないことが分かります。

肉体は32種の構成部位（頭髪、体毛、手の爪、足の爪、歯、皮膚、肉、筋肉、骨など）の集まりにすぎないことが分かります。さらに注意深く観察を進めると、肉体は通常の目では捉えることができない極小の微粒子の集まりであることが判明します。

実体のないものに飽きる気持ちを育む法句経　

Sabbe saṅkhārā aniccā”ti,yadā paññāya passati;

Atha nibbindati dukkhe,esa maggo visuddhiyā. 　　　　KN Dhammapada 20 Maggavagga 道の章　　　　

「一切の形成されたものは無常です」（諸行無常）と智慧をもって観るときに、

ひとは苦から厭い離れます。これが清浄への道です。

ti　　　　　　[iti の略．] と

yadā 　　　　[ya-dā]　の時に　　whenever； when．

paññāya 　　　 [pajānāti の ger．] 知りて，了知して　　　 [paññā の instr．gen．等] 慧によりて，慧の

passata　　　　[paś Sk．paśyati] 見る； 見出す，知る．

Atha 　　　　　hen; and also

nibbindati　　　　[ni + vid + ṃ-a] gets wearied of； is disgusted with　　 厭う，厭離す

リンク　三相　この世の3つの特徴と法則

nāmaとrūpaはkammaとcittaとutu(熱)とāhāra（栄養）に条件づけられることでこの世に現出するのでanicca（無常）です。

vipassanaの実践を通じて、ヨギyogisは、rūpaとnāmaがanicca（無常）であり、つかの間のモノであることを理解します。

その時、ヨギyogis（修行者）はnāmaとrūpaに飽き、うんざりし、それらから離れはじめます。

このようにして瞑想者がnāmaとrūpaに飽き、うんざりし、それらから離れる時、その者は「エネルギーが付加されていない道」をちゃんと歩んでいます。

その道はすべての汚濁と苦しみから解き放たれた純粋なるNibbānaに真っすぐにつながる道です。

Sabbe saṅkhārā dukkhā”ti,yadā paññāya passati;

Atha nibbindati dukkhe,esa maggo visuddhiyā. 　　　　　　KN Dhammapada 20 Maggavagga 道の章

「一切の形成されたものは苦しみです」（一切皆苦）と智慧をもって観るときに、

ひとは苦から厭い離れます。これが清浄への道です。

形成された反応回路のアウトプットは常に、眼の前のものとは異なります。このギャップに気づかずに評価・判断・言動、生活をしていると、事実から乖離して苦しみにつながります。これを経験した修行者は、nāmaとrūpaに飽き、うんざりし、それらから離れます。

このようにして瞑想者がnāmaとrūpaに飽き、うんざりし、それらから離れる時、その修行者は「エネルギーが付加されていない道」の上にいます。その道はすべての汚濁と苦しみから解き放たれた純粋なるNibbānaに真っすぐにつながる道です。

Sabbe dhammā anattā”ti,yadā paññāya passati;

Atha nibbindati dukkhe,esa maggo visuddhiyā.　　　　　KN Dhammapada 20 Maggavagga 道の章

「ネルギーのあるすべてのものは私自身ではありません」（諸法無我）と智慧をもって観るときに、

ひとは苦から厭い離れます。これが清浄への道です。

１）見たり聞いたりする時に関わるすべての「nāmaとrūpaの現象（カタチ）」は「自己（self、atta）」ではありません。

２）dhammāエネルギーは勝手に反応し、生じては消え去るので、私の力ではどうすることもできず、私は無力です。

vipassana ñāṇaを通じてこの真理を感得した修行者は、nāmaとrūpaに飽き、うんざりとし、それらから離れます。

このようにして瞑想者がnāmaとrūpaに飽き、うんざりし、それらから離れる時、その瞑想者は「エネルギーが付加されていない道」の上にいます。その道はすべての汚濁と苦しみから解き放たれた純粋なるNibbānaに真っすぐにつながる道です。

Dukkha sacca ñāṇaにおける、sacca ñāṇaとkicca ñāṇaとkata ñāṇa　　　　　　　四聖諦における3段階の知識

Idaṁ dukkhaṁ ariyasaccan’ti me, bhikkhave, pubbe ananussutesu dhammesu cakkhuṁ udapādi, ñāṇaṁ udapādi, paññā udapādi, vijjā udapādi, āloko udapādi.

SN56.11　Dhammacakkappavattanasutta　　 SN 56.11. 法の輪の転起の経

「『四つの聖なる真理』を理解し、実感、すなわち四つの真理のそれぞれの3段階の智慧を取得して初めて、『私はブッダとなった』と宣言しました」

3段階の知識とは、sacca ñāṇa（真理についての知識）、kicca（すべきこと） ñāṇa（真理を達成すべき課題についての知識）、kata（完了した） ñāṇa（必要な課題が達成された知識）です。

こうして「dukkha」、「dukkhaの原因」、「dukkhaの止滅」、「dukkhaの止滅に至る道」についての真実を完全に知りました。

ブッダはvipassanaの実践と聖なる道の取得を通じて、dukkhaの真理を感得しました。そしてarahatta phalaを取得してNibbānaの至福を体験したのちにbhava、すなわち3領域（lōka）の生命体が有する「渇望する5つの集合体がdukkhaである」ことをブッダは知りました。

こうして、「6感覚器官を介して生じるメンタルと物質エネルギーの現象」がdukkha（苦）であることをブッダは理解しました。

渇望する5つの集合体、換言すると、生成と消滅を常に繰り返している「変化のプロセス」そのものが生命体です。

したがって、それらがdukkha　です。

この智慧がブッダの内に生じたのは、教師から教わったからではなく、みずからが実体験をしたからです。こうして「渇望する5つの集合体が苦である」とブッダは宣言しました。この「これが聖なる真理」という知識をDukkha sacca ñāṇaといいます。

では、「苦の真理」を知ったならば、次は何をすべきなのでしょうか？

次に努力すべきは、「生」の苦しみを、注意深く、貫くようにするどく精査して、完全に理解することです。苦を完全に、適切に認知するまでこの作業を続けます。

苦しみの理解とは、苦しみを構成している要素の理解です。これはkicca ñāṇaの育成と呼ばれます。苦しみの3要素は次のとおりです。

a) dukkha dukkha

一個の生命体がnāma（メンタル）とrūpa（物質エネルギー）で構成されたものである、ことが明らかになると、生命のすべての苦しみは鮮明なものになります。

具体的には、誕生、老い、病、死、愛せざるものや不快な状況との遭遇、愛するものや快い状況との別離、欲するものを手に入れられないこと、嘆きや悲しみが肉体的苦痛とメンタル的苦痛の苦しみです。

SN56.11　Dhammacakkappavattanasutta　 SN 56.11. 法の輪の転起の経　　　　

DN22 Mahā Satipaṭṭhāna Sutta　

b) viparināma dukkha

viparināmaとは「変化している」という意味です。それはこの世の性質、すなわち普遍の法則です。生活の中で味わう幸福な気持ちや幸福な状況は「無常」の性質を有するので、永続せずに必ず変化します。そして、遅かれ早かれ消え去るので、変化する時に苦しみが生じます。

「無常なるものはみな苦である」とブッダは説きます。栄枯盛衰、人生の浮き沈みに直面するときはいつでも、生における苦しみを多々経験します。

上記の2種の「苦しみ」は、生における共通の経験なので理解しやすいものです。

「この世は苦しみである」という第一の聖なる真理は、一般的にこの2種のdukkhaの観点から説明されます。しかし、この説明だけでは、ブッダが伝えようとしたdukkhaの意味の全体を、余すことなく伝えきれていません。

c）sankhāra dukkha

この3つ目のタイプのdukkhaはvipassana瞑想による直接的体験で初めて明瞭に理解されるものです。

vipassana実践を通じて、「私」、すなわちあらゆる生命体は常に変容状態で、物質的エネルギーとメンタル的エネルギーが結合したものにすぎない、という事実です。この結合したものとはpañcakkhandha（5つの集合体）のことです。Pañcakkhandhaの中に、Pañcupādānakkhandha（渇望する5つの集合体）があり、これが対象に執着する要素になります。具体的には、

(1）rūpakkhandha（物質エネルギーの集合体）　　感覚器官経由の信号のイメージ化と(5)の経験で生成される感覚イメージ、すなわち記憶や空想

(2）vedanākkhandha（感覚の集合体）　　　　　　3種のタグの１つを付加させた自動反応回路の集積物

(3）saññākkhandha（知覚の集合体）　　　　　　感覚器官経由の信号と過去の観念との瞬間的照合、すなわち「評価する」自動反応回路の集積物

(4）sankhārakkhandha（メンタル形成の集合体）　(2)と(3)を構成要素にした条件反射の自動反応回路の集積物　

(5）viññānakkhandha（意識の集合体）　　　　　(2)と(3)と(４)を経由するもの（感覚、評価、反応）や経由しないもの（感知）による体験の集積物

特に4番目のsankhārakkhandha（メンタル形成の集合体）は意思行為（メンタル活動）全般がこの集合体に含まれます。

論蔵Abhidhammaが説くところによれば、vedanā（感覚）とsaññā（知覚）を直接に経由する行為を除く、その他の50タイプの「メンタル行為」が、sankhāraと呼ばれます。　

具体的には、phassa（接触）、cetanā（意思）、manasikāra（（対象に対して向けられる）意識）、chanda（意志）、adhimokkha（決意）、saddha（信頼）、samādhi（メンタル集中）、paññā（智慧）、viriya（気力/意欲）、lobha（欲望）、dosa（憎しみ）、mōha（妄想）、māna（自己を基準にする）などです。

Sankhāraとは日常生活における実際的なaction（行動）やreaction（反応）のことです。sankhāraは、よいものも悪いものもあります。

一般的に「kamma」と呼ばれているものは、このsankhārakkhandhaに含まれます。

ブッダは「Bhikkhuよ。私がkammaと呼んでいるのは、cetanā（意思）のことです。まず初めに意思が生まれ、その次に、体や言葉や心を用いて何らかの行動がおこなわれます」とsankhāraとkammaとcetanāを定義しています。

出典は？　AN 6.63　Nibbedhikasutta　　　　AN 6.63. 洞察の経

cetanā（意思）とは、メンタルが創り出すもの、すなわちメンタルの活動です。「意思」の役割は、何らかの行為、すなわちよい行為、悪い行為、あるいはそのどちらでもない行為に関心を向けることです。したがって意思とは、「kammaを形成するもの」と呼ぶこともできます。６感覚器官と、それに対応する外界の感覚対象が接触するとき、viññāna（感知）が生じ、それからvedanā機能（付加されるタグ）とsaññā（過去の知覚との照合による評価）が生じます。その後にaction（行動）やreaction（反応）が続きます。　

「vedanā感覚」と「saññā知覚」は意思行為ではないので、kammaエネルギーを生み出しません。しかし、sankhāraはkammaとしてact（行動）とreact（反応）するので、kamma的「結果」を生み出します。　

saññāの付加しているエネルギーはkammaエネルギーではないのか？

saññāの付加しているエネルギーはkammaエネルギーではなく回路エネルギー

kammaエネルギーはjavana cittaから生じますが、回路エネルギーは心路citta vithiが回転することで生じるものです。

回路エネルギーの根源は物質エネルギー？

生活の中で変化に遭遇するとき、苦しみがあります。そして無常の性質がある生命は常に変化を経験します。したがって、そこにはいつもviparināma dukkha　（変化によってもたらされる苦、無常による苦）があります。

このviparināma dukkhaの直後にsankhāra dukkha　があります。「知覚する生命体」は、生活の中で直面するあらゆるモノに対して、満足することが決してありません。不快な状況に遭遇すると、その状況を変えたいと欲します。したがって、現状を自分好みのものへ変えようと努力することになります。逆に、快い状況や状態に遭遇すると、そのような幸運な状況を保ちたいと欲し、現状を維持しようとします。今楽しんでいる幸せな暮らしを永続させたいと願うからです。そして、これらの生命の無常の性質に逆らう努力で本人は苦しみます。これが私たちの常に苦しむsankhāra dukkhaです。つまり、状況を変えようとしたり維持しようとしたりするどちらのケースも骨の折れる作業であり、一時的にしか報われないものです。

「執着する5つの集合体」はきびしい苦しみなので、「要するに、対象に付着する5つの集合体（言い換えるならばnāmaとrūpaが混濁してエネルギーを発するもの）は非常に恐ろしい苦しみです。なぜならば、これらは「私」「私のもの」「永遠性」「至福」「自己」「自我」への執着を引き起こすからです」と、ブッダは苦の真理を説きました。　出典？

そのような「苦の真理」について知ることを、sacca ñāṇa（真理の知識）といいます。次いで「このdukkhaは、中道に沿ってvipassana瞑想を実践することで取り除かれること」と「何をなすべきか」を実感的に理解する知識を、kicca ñāṇaといいます。その次には、その「道」を歩む努力をします。そして道を歩みきってゴールに到達したとき、自分が何をなし遂げたのかを振り返ります。ゴールに到達したことで取得される知識のことをkata ñāṇaといいます。

この「道」は3つのグループに区分されます。sīla（道徳）、samādhi（メンタル集中）、paññā（智慧）です。sīlaの実践をとおしてsamādhiは培われます。samādhiが培われることによってpaññāが育まれます。

「八聖道」の3ステップについて、「ひとつのステップを実践したら次のステップに移り、そのステップを実践したら次のステップに移る」と考えるのではなく、これら3つは、どんな段階にあるときでも互いに強め合うので、3つは適宜に育成されるべきものです。

ブッダは懸命に、忍耐強く励み、dukkhaの本質を詳細にわたって分析しながら、sacca ñāṇaを育みました。

dukkhaの本質は上記のdukkha dukkha、viparināma dukkha、sankhāra dukkhaの3つです。これを解明した時に初めて、ブッダは「これこそが、ariyaの知覚すべき苦の真理です。Bhikkhuらよ、このようにして、私がかつて聞いたことのない事実に関する理解、知識、智慧が、私の内に生じ、貫く洞察と光が、私の内に生じました。」と宣言しました。　　出典？

続いて、ブッダはdukkha saccaについてのkicca ñāṇa（達成すべき課題の知識）を育みました。それを終えた後、「苦についてのこの聖なる真理は、正確かつ十分に理解されねばなりません。Bhikkhuらよ、このようにして、かつて私が聞いたことのない事実についての理解、知識、智慧が、私の内に生じ、貫く洞察と光が、私の内に生じました」と宣言しました。

次いで、ブッダはdukkha saccaについてのkata ñāṇa（必要な課題が達成されたこと知る知識）を育みました。

その後に、「苦についてのこの聖なる真理が、完全かつ正確かつ十分に理解されました。Bhikkhuらよ、このようにして、かつて私が聞いたことのない事実についての理解、知識、智慧が、私の内に生じ、貫く洞察と光が、私の内に生じました」と宣言しました。

ブッダは、残る3つの聖なる真理（samudaya sacca、nirodha sacca、dukkha　nirodhagāminī paṭipadā ariyasacca）についても、

同じように、sacca ñāṇa、kicca ñāṇa、kata ñāṇaの3つを繰り返し説明しました。

ブッダは最後に、次のような宣言をしてこの説法をまとめました。　

SN56.11　Dhammacakkappavattanasutta　 SN 56.11. 法の輪の転起の経

「Bhikkhuらよ。現実について完全にはっきりと理解し、四つの聖なる真理を3段階の12通りで完全に明瞭に洞察していなければ、この世（deva、māra、brahma、人間（隠遁者、brahma、王、国民など）に向けて、『私は無比無類の、もっとも優れた、完全なる覚りを独力で取得し、正しく感得し、完全なる覚りを得た至高のブッダとなった』と宣言しませんでした。

しかし、Bhikkhuらよ。私は、現実について完全にはっきりと理解し、そして四つの聖なる真理を3段階の12通りで完全に明瞭に洞察した時、この世（deva、māra、brahma、人間（隠遁者、brahma、王、国民など）に向けて、『私は無比無類の、もっとも優れた、完全なる覚りを独力で取得し、正しく感得し、完全なる覚りを得た至高のブッダとなった』と宣言しました。

「私の得た解放は、揺るぎないもので、これが最後の誕生で、もう次の誕生はない」という知と理解が私の内に生じました。」

ブッダがこの偉業をなし遂げるために注ぎ込んだ努力、気力、熱意、忍耐の途方もない膨大さを、私たちはただ思い浮かべることしかできません。それを思うことは、私たちにとってインスピレーションとなり、この覚者が示してくれた手本を見習おうという意欲を与えられます。

5種の光のñāṇa

(1)  Kammassakatā-ñāṇa—(すべての生命体は自身の財産はkammaだけいう事実の知識)。

(2)  Dhamma-vavatthāna-ñāṇa—(Dhammaの分析知識)。

(3)  Paccaya-vavatthāna-ñāṇa—(因果関係の分析的知識)。

(4)  Lakkhaṇa-paṭivedha-ñāṇa—(三相の特徴を実現する知識)。

(5)  Nibbāṇa-paṭivedha-ñāṇa—(涅槃を実現する知識)。

論蔵　　Ledi Sayadaw　　The Manuals of Dhamma日本語訳

paccaya-pariggaha ñāṇa（因果についての知識）　　paccaya　縁、条件が揃う、関係性、因果性　+　Pariggaha理解、感得

次に、ブッダは自分の心路citta vithiを「縁起の法則」の考察に向かわせました。

これを継続することによって、paccayapariggaha ñāṇa（因果についての知識）が育まれます。

これによって、hetupaccaya pariggaha sammā diṭṭhi（先行的「原因」と、その後にやって来る「結果」に対する見解）がもたらされます。

縁起の法則は、12のステップから成っています。

「原因」となる過去の素因が2つ（avijjā、sankhāra）に対しての、「結果」となる現在の素因が5つ（viññāna、nāmarūpa、salāyatana、phassa、vedanā）、

「原因」となる現在の素因が3つ（taṇhā、upādāna、kamma bhava）に対しての、「結果」となる未来の素因が3つ（jātiすなわちupapatti bhava、jarā、maraṇa）です。

Paccaya-vavatthāna-ñāṇa　　因果関係（nāmaとrūpaの起源とプロセス）の分析的知識　vavatthāna分別する

(a) nāmaとrūpaの起源を理解する。

(b) 縁起の12のつながりを理解する。

「無知を通じて、kammaの形成が生じます。 kammaの形成を通じて、意識が生じます。 意識を通じて、メンタル的および肉体的な現象が生じます。 メンタル的および物理的現象を通じて、6つの基盤が生じます。 6つの基盤を通じて、接触が生まれます。 接触を通じて、感覚が生まれます。 感覚を通じて、渇望が生じます。 渇望を通じて、固執が生まれます。固執を通じて、自発的な行動と更なる存在が生まれます。 自発的な行動と更なる存在を通じて、転生が起こります。 転生を通じて、老年、死、悲しみ、嘆き、痛み、悲しみ、絶望が生じます。 こうして混合物のない純粋な苦しみの塊が生じます。」

この因果関係の徹底的な無知から、次の3種の誤った見解が生じますが、縁起の理解、つまり因果関係の分析的知識の光はそれらの誤った見解を克服することができます。

(i)　Ahetuka-diṭṭhi (存在の無因性の見解)

nāmaとrūpaが自発的に存在し、原因も条件もなく存在するという誤った見解

(ii)　Visama-hetu-diṭṭhi (非原因を原因とする見解)　　　visama [vi-sama]　 uneven；unequal不等の，非理の

原因はなく、自発的に生じることもないnāmaとrūpaが原因によって生じ、すべての生命体、形成、肉体的およびメンタル的現象は、例えば永遠の神の力によって発生し、存在し続けるという誤った見解。原因でないものを原因として主張する誤った見解

(iii)　Pubbekta-hetu-diṭṭhi (生命体の過去世の自発的行為だけを原因とする見解) 　pubbekata former done．行った、前世の

nāmaとrūpaが原因や条件なしに生じるのではなく、全能の神の力によって生じるわけでもなく、実際には、生命体が過去世で行った善行と悪行によって引き起こされ、条件付けられているという見解。

生命体の過去の自発的行為が唯一の原因であるという見解

これらの3つの誤った見解のうち、Ahetuka-diṭṭhiは非常に誤った見解であり、Visama-hetu-diṭṭhiも同様です。しかし、Pubbekata-hetu-diṭṭhiは部分的に正しいため、他の2つほど誤りではありません。

部分的な正しさ

どこが部分的に正しいのでしょうか？

nāmaとrūpaは以下のことで生じます。

(i)   過去のkammas,

(ii)   paccuppanna-citta—(現世の意識)

(iii)  paccuppanna-utu—(現世の環境)

(iv)  paccuppanna-āhāra—(現世の食物)

ここでいう、過去の自発的行為によって生じるnāmaとrūpaに関しては、この見解は部分的に正しいですが、意識、環境、栄養によって生じるnāmaとrūpaに関しては、この見解は間違っています。

縁起の原理に照らして検討すると、縁起の十二因縁のうち、過去のkammaによって生じる因縁に関しては、この見解は正しいですが、無明、行sankhāra、渇愛、執着、kamma-bhava（再生をもたらす自発的行為）など、現世の原因によって生じるその他の因縁に関しては、この見解は間違っています。

これをPaṭṭhāna（関係）の原理に照らして検討すると、この見解はNānakkhaṇika-kamma-paccaya（過去のkammaとその結果の関係）のみを受け入れ、Sahajāta-kamma-paccaya（現在のkammaと共存するdhammaの関係）を含む他の23の関係を拒否しています。したがってPubbekata-hetu-diṭṭhiは部分的には正しく、全体的には間違っています。

これらの3種類の誤った見解、その他の誤った見解、懐疑的な疑念は、因果関係に対するこの徹底的な無知から生じます。

この因果関係の分析的知識の光を持っている人はCūḷa-Sotāpanna（次に転生する生命体がApāya領域にはない、という意味で将来が保証されている人）になると言われています。

Lakkhaṇa-paṭivedha-ñāṇa　三相の特徴を洞察する知識　　　　paṭivedha：m．[cf．paṭivijjhati＜vyadh] 貫通，通達，洞察，理解

(i) 縁起の結果であるnāmaとrūpaが急速に生じては消滅するというaniccaの事実を理解すること。

(ii) 非常に恐ろしい苦の事実を理解すること。 最下位4領域に転生する苦しみ

(iii)　nāmaとrūpaは生命体の実体ではないというAnattaの事実を理解すること。

arahatがLakkaṇa-paṭivedha-ñāṇaの光に到達したときのみ、すべての穢れ、足枷、生命体をSaṇsāra（輪廻転生）と結びつけるtaṇhāのもつれなどのあらゆる種の苦しみを取り除き、涅槃に到達することができます。

Nibbāṇa-paṭivedha-ñāṇa　　　　　　涅槃を洞察する知識

生命体が「存在の悪循環」の中でさまよっている間、Dhammaを実践することによって、すべての穢れ、足枷、taṇhāのもつれが減少し、最終的には苦が完全に停止するsanti（絶対平和）と呼ばれる状態になることを洞察する知識。

5種の徹底的な無知を次々と克服して、5種の光が次々と達成され、5番目の光が達成されるとすぐに、5種の徹底的な無知は完全に消滅し、最下位4領域のすべての悪、誤った信念、すべての苦が停止されます。

anattaについてのñāṇa

これを得るとsakkāya-diṭṭhi（身は実体であるという見解）を自身から取り除く可能性が生じます。sakkāya：the existing body．

具体的にはrūpa, nāma, khandha, āyatana, dhātu, paṭicca-samuppādaなどの理解を意味します。

anatta bhāvanāの作業は、まずSīla-visuddhi を満たすことから成り、次にkāyagatāsatiを確立し、激しく不安定な心を静め、自身の心を制御した後に、Samathaとvipassanaの作業に努力を注ぎます。 そうした努力によってdiṭṭhiのanusaya領域が消滅されたときに、すべてのuppanna生起、転生とanuppanna micchā diṭṭhisとduccaritas [du-carita] 悪行 が消滅します。

vipassana ñāṇa

自分自身の体、感覚、心、深層意識を洞察することで、自分の未来を変えていくことができることを理解する知識です。

いわゆる「内観」のことで、自分の外側からの信号は、条件の１つであり、本当の原因は、自分の内側にある回路であることを理解して、それを洞察して、回路を上書きする知識です。

洞察に関連する知識のことをvipassana ñāṇaと呼ぶので、多くのvipassana ñāṇaがあります。

nāmaとrūpaに分別する洞察のñāṇaもvipassana ñāṇaの1つです。

10段階のステップ

(1) Sammasana-ñāṇa　　　　　　　存在の3つの特徴についての洞察力

(2) Udayabbayanupassanā-ñāṇa　　現象の発生と消滅についての洞察力

(3) Bhaṅgānupassanā-ñāṇa 　　　溶解についての洞察力

(4) Bhayānupassanā-ñāṇa 　　　　溶解は恐ろしい状態であること（感覚でしかない溶解状態を評価する罠）についての洞察力

(5) Ǎdīnavānupassanā-ñāṇa　　　　欠陥状態の洞察力　ādīnava：[m.] disadvantage.過失　無常と死による破壊の洞察？　

(6) Nibbidānupassanā-ñāṇa　　　　　うんざりする状態についての洞察力

(7) Muccitu-kamyatā-ñāṇa 　　　　　逃避願望から生じる洞察力

(8) Paṭisankh-ānupassanā-ñāṇa 　　さらなる観想から生じる洞察力

(9) Saṅkhārupekkhā-ñāṇa 　　　　　安穏さから生じる洞察力

(10) Anuloma-ñāṇa　　　　　　　　適応知識 Anuloma順番通り、正順　　　　　

sankhāra upekkhā ñāna　　　サンカーラを消滅し続けることで涅槃に至る知識

休火山のような潜在的種子であるanusaya やkilesa煩悩を理解する知識。

仏教用語	パーリ語	コップの中の泥水の喩え	内容	具体的
煩悩	kilesa	泥（土と水）菌類 コップの水と泥、全体	無明　 10種の汚れ	すべての汚れ
有漏	asava	底に沈んでいる発酵体	感覚のタグ　　貪瞋痴 誤った観念　想saññā	本能 渇望　嫌悪 思考
随眠 ずいめん	anusaya	底から表面に水泡	使われていない自動反応回路 潜在力 休火山の潜在的種
趣	gati	表面に浮かんでいるアブク	性向となる自動反応回路の束 感情の回路	性格・習慣 貪欲・怒り

普段は使用されていない自動反応回路があることを把握し、その回路が作成されたときのTPOを理解して、その回路の構成要素である受vedanāのタグを遠近からupekkhā（どちらでもない）に上書きします。

または受vedanāのタグ機能が付加する時に対象がaniccaであることを自覚することで、通常の3種のタグからarāmisaのタグに上書きします。

また、回路のもう１つの構成要素である想saññāにエネルギーが付加されていることを理解して、そのエネルギー付加機能が発動する時に、対象がaniccaであることを自覚することで、saññāをエネルギーのないñānaに上書きします。anicca saññā

このようにして、kilesa煩悩を消滅させていきます。

具体的実践方法は、

まず、心の寂静を保つ。

次に、修行者がすることは感覚のsatiとsampajāna だけで、後はdhammに委ねて、時が来るのを待ちます。

禅定のñāṇa

第１のvijjā ñāṇa 　　　　pubbe-nivāsa abhiñña（貫くように見とおす洞察の智慧）　　　　第三禅定に達した者の知識

自分の心をpubbe-nivāsa abhiñña（過去世の知）に向けるとすぐにbodhisattaは、過去における幾多ものさまざまな生涯を思い出していきました。

過去世を１つ、２つ、３つ、百、千、数千、数万、数十万と思い出しました。また、幾度もの世界の崩壊期間における生の数々、そして幾度もの世界の発展期間における生の数々なども思い出しました。「この過去世において私はこのような名前で呼ばれていたのか。このような家庭に生まれたのか。このような外見をしていたのか。このように育てられたのか。このような楽しみを味わい、このような苦痛を味わったのか。そして死んで、その次はこのような生に生まれ、このような名前で呼ばれるのか」 このようにして彼は、数多くのさまざまな経験を思い出し、それぞれの経験の特徴や、関連する出来事も思い出しました。

このように、pubbe-nivāsa abhiññaとは、過去の継続した生を思い出すことを可能にするものです。また、pubbe-nivāsa abhiññaは、第１のvijjā ñāṇa（貫くように見とおす洞察の智慧）としても知られています。vijjā ñāṇaとは、lokuttara magga pala(世俗の外側にいたる「道」と「実り」)の取得につながるものです。こうして、bodhisattaの連続しているマインド（心路citta vithi）に、次のような智慧が生じました。

「始まりが知られていない昔から繰り返され、果てしなく長い輪廻の中には、究極的には、nāmaとrūpa（メンタルと物質エネルギー）しか存在しません。誕生、生活、死の3局面でも、そこにはnāmaとrūpaという2つの現象があるのみです。」

nāmaとrūpaの現象は、まるでランプの火や川の流れのように、実際に途切れることなく変化（流動）し続けており、それはすべての生命体のいかなる時でも同様です。そこにはただnāmaとrūpaの連続体だけがあり、それが6種の感覚器官（目、耳、鼻、舌、体、心）通じて、対象を見たり音を聞いたりする各機能があるにすぎません。「私」「彼」「人」などと呼ぶべき、「知覚する個」などという確固としたものはありません。実際、そのような「知覚する生命体」を創造するdevaもmāraもbrahmaもいません。

このようにして、pubbe-nivāsanussatti vijjā ñāṇaを用いて、bodhisattaはその時、vikkhambhana　pahānaを一時的に遠ざけていました。Vikkhambhana pahānaとは、attaに関する20の間違った見解（永遠不変の「主格」があると信じる）のことです。「5つの集合体（五蘊）（rūpa、vedanā、saññā、sankhāra、viññāna）」のそれぞれに、4つずつの誤った見解があります。具体的には、「rūpaはattaである」、「attaはrūpaである」、「rūpaはattaの中に存在する」、「attaはrūpaの中に存在する」という4つの誤謬が、他の蘊にもあります。

このように、bodhisattaは満月の夜の前半に、pubbe-nivāsanussatti abhiññaを実現しました。そしてこれを用いて、数々の過去世と出来事を思い出し、遠い過去に生み出した20個の誤った見解（sakkāya diṭṭhi）とmōha（妄想）とを一時的に遠ざけました。

第2のvijjā ñāṇa　　dibba-cakkhu abhiñña（天眼の知）　　　第三禅定に達した者の知識

そして夜の中ほどに、dibba-cakkhu abhiñña（第2のvijjā ñāṇa）の取得に心を向かわせました。

dibba-cakkhu abhiñña（天眼の知）は、 cutûpapāta ñāṇaとも呼ばれます。これを通じて彼は、死の直後、すなわち次の誕生を迎える瞬間の「知覚する生命体」たちを見ました。そして、誰が高いカーストや血統などに生まれ、誰が低いカーストや血統などに生まれるのかを目の当たりにしました。そして、美しい容姿に生まれるもの、あるいは美しくない容姿に生まれるもの、恵まれたbhavaに生まれるもの、あるいは哀れなbhavaに生まれるものを目の当たりにしました。

bodhisattaは、dibba-cakkhu abhiññaを通じて、Apāya界（最下位4つの悲惨なbhava領域）に住み、不幸に苦しむものたち、人間界やdeva界やbrahma界に住んで幸福を満喫し、さらにはその幸福をますます高次で優れたものに高めていく「知覚する生命体」たちを見たあとに、次のように思索しました。

「apāyaに住むこの生きものたちは、いったいどんな行為をなしたがしたがって、これほどまでにひどい苦しみに苦しんでいるのだろうか？ この人間たち、devaたち、brahmaたちは、いったいどんな行為をなしたがしたがって、それぞれのlōka（存在領域）においてこれほどまでにすばらしい至福を味わい、さらにはその至福を増していっているのでしょうか？」

尊きbodhisattaは、満月の夜の中ほどに、第2のvijjā ñāṇaであるdibba-cakkhu abhiññaを取得しました。この第2のvijjā ñāṇaの効力によって、彼の心路citta vithi（citta）からは、avijjā mōha dhātu（無知と妄想の要素）が完全になくなりました。「知覚する生命体」の生じては消え去ることを覆い隠して見えなくしてしまう無知と妄想が、１つも存在しなくなりました。

pubbe-nivāsa ñāṇaを用いて、まず手始めに直近の過去世であるSetaketuという名前のdevaの生涯を見て、そこから過去にさかのぼっていきました。そして数多くのbhavaと世界サイクルを思い出していきました。そのように過去にさかのぼっていく過程で、84,000年周期で盛衰するさまざまな世界サイクルを観察しました。いくつもの世界体系が火や水によって破壊され、そして、その破壊された世界のがれきや破片からふたたび新たな世界体系が徐々に築き上げられるのを見ました。

dibba-cakkhu ñāṇaを用いることで、彼は、死の瞬間、そして次の生に宿る瞬間の人間たちを研究しました。卑しい者と貴い者、美しい者とそうでない者、幸福な者と惨めな者を見ました。卑しい者が、体や言葉や心の行為によって悪行をなし、尊いariyaたちを罵しる悪行をなし、誤った見解をもつことで悪行をなし、そして悲惨なlōkaに転生するのを見ました。また、良き者たちが身体的、言語的、思考的行為によって善行をなし、尊きariyaたちを罵らず、エネルギーが付加されていない見解を持つことで善行をなし、そしてdeva界やbrahma界の幸福なlōkaに転生するのを見ました。このようにしてbodhisattaは、さまざまな世界体系の存在、さまざまな世界のさまざまな時代、各lōkaごとのさまざまな世界に住んでいたさまざまな生命体のことを知りました。

彼はpubbe-nivāsa ñāṇaを取得しましたが、結局のところ、発見したのは同じ事実でした。すなわち、そこにはあるのはただnāmaとrūpa（メンタル界と物質エネルギー界）のみであるということ、そして、すべての生命体でも、すべての時においても、nāmarūpaの現象は間断のない変化する（流動）状態にある、ということです。

yathākammūpaga ñāṇa[yathā+kamma+（upa+gamu+tvi）upava]「satta有情」が「bhava」に転化するメカニズムを理解する知識

そしてbodhisattaは、yathākammūpaga ñāṇaの取得に心を向かわせました。そして、さまざまな「satta知覚する生命流動体」の「誕生」を形成する善行と悪行を分析して理解する知を育みました。

yathākamma+ありのままのkamma　＋（upa+gamu+tvi）upava　経験する] あらゆる生き物が、善いkammaまたは悪いkammaによってこの世に生まれてくることを知る知識

こうして、dibba-cakkhu abhiññaを基盤としたyathākammūpaga ñāṇaを用いることによって、bodhisattaは、生命体たちが過去になした善行と悪行を詳細にわたって振り返り見ました。そして、彼らの真の姿をあるがままに知るようになりました。

「apāya lōkaに住むものたちは、過去世で体による行為、言葉による行為、思考による行為によって悪行をなしました。彼らは、ariya（聖者）たちを中傷し、罵倒し、非難しました。彼らは誤った見解を持っており、その見解にもとづいてさまざまな悪行をなし、また、他の者にもさまざまな悪行をなさせました。そして、死で肉体が崩れ去ると、次はapāya（苦しみに満ちたlōka）に転生しました。apāya lōkaとは、niraya（「途切れることのない苦しみ」のlōka）、tiracchāna（動物のlōka）、peta（幽霊のlōka）、asurakāya（asuraのlōka）の4つです。そして、よいlōkaに住む生命体は、過去において、体による行為、言葉による行為、思考による行為によって善行をなしました。彼らはariyaを中傷、罵倒、非難しませんでした。彼らはエネルギーが付加されていない見解を持ち、その見解にもとづいてさまざまな善行をなしました。また、他の者にもさまざまな善行をなさせました。そして、死で肉体が滅び去ると、彼らは人間界、deva界、20のbrahma界のよいlōkaに転生しました」

yathākammūpaga ñāṇaを用いることによって、彼は「知覚する生命体」たちの過去の行為についての真の事実をはっきりと見通すことができるようになりました。そして、16種のkaṅkhā（疑念）を捨て去ることでkaṅkhā vitaraṇa visuddhi（疑念を取り除いた清浄）の境地を取得しました。

涅槃に至るñāṇaとその段階

Nāmarūpa Paricceda Ñāṇa 　Nāmarūpaを完全に切断する知識　　　paricca　 distinguished or understood．熟知して

転生プロセスをどのようにして終わらせることができるかを説明する知識

自分の思考、発言、行動がどのようにしてさまざまな領域での誕生につながる可能性があるかを理解すると、その人はnāmarūpa pariccheda ñanaを得て、Sotāpanna になります。

その理解により、Sotāpannaは転生プロセスを終了（切断）できることを知ります。したがって、Nāmarūpa Pariccēda Ñanaと名付けられました。

nāmarūpaは、文脈、つまり、使用される場所に応じて、いくつかの異なる (しかし関連した) 意味を持ちます。 しかし、最も重要な意味はnāmarūpa pariccheda ñanaに関連しています。

将来の出生は自分のgatiによるものです。自分の将来の出生は自分のgatiによって決定されるという認識と、自分のgatiに従うbhava と jātiを把握する能力は「nāmarūpa paricceda ñāna」と呼ばれます。

これは「nama」によって「rūpa」が決まることを基本的に意味しています（文字通り、身体は思考（メンタル）に依拠します。）

nāmarūpa pariccheda ñanaによって、マインドがどのように物質と関係しているのか、つまり viññānaがどのようにしてマインドと物質の間の重要なつながりとして機能しているのかを理解します。

paricceda　pariとは「完全な」または「包括的な」を意味します。 uccēdaは「切断する」または「照射する」という意味です。 したがって、nāmarūpa pariccheda ñanaは、Paṭicca Samuppāda (PS) の「viññāna paccayā nāmarūpa」ステップで、kamma viññāṇaを介してnāmarūpaがどのように生成されるかについての知識または理解を意味します。

ここから先は三蔵に記述されているブッダになる前のゴータマ菩薩の体験した内容です。

sotāpattiの「maggaとpala（道と果実）」のñāṇa

縁起のステップを、前から順番に、そして逆順に追体験を繰り返し続けることで、一段また一段と高次のvipassana ñāṇaを育みます。

そしてついに、「第一の道」であるsotāpattiの「maggaとpala（道と果実）」のñāṇaを取得します。

Sotāpatti maggaの取得で、bodhisattaの心路citta vithiは、3つの汚濁であるsakkāya diṭṭhi（五蘊khandhaを「主体」と見なすこと）、vicikicchā（疑念）、sīlabbataparāmāsa（儀式（固定観念）への執着）を完全に捨て去ります。

これら3種の汚濁（結saṃyojana）は、もう二度とbodhisattaの心路citta vithiの中に生じることがなくなります。

vicikicchā　

[vi + kita+cha+ā．cikitā-saṃ）]　kita：[kṛ の pp．] 飾られたる 物事を徹底的に考え、結論を出す欲求の欠如

vicikicchā「疑心暗鬼」とは、五つの障害（nīvaraṇa）のひとつで、三つの束縛（saṃyojana）のひとつ.

束縛では、師（仏陀）、教え、僧伽、修行、過去と未来、条件性についての疑念を指す（Dhs．1004　Dhammasaṅgaṇī　『法集論』論蔵の第1論。； cf．A ．X、71 ）。

また、物事が善良かどうか、実践するべきかどうか、価値が高いか低いかなどの不確実性にも当てはまる。

Vis．M．XIV、177によると、vicikicchāは（物事を徹底的に考え、結論を出す）欲求の欠如である。迷いに根ざした不善な意識の2つのクラスのうちの1つに関連している（表I、番号32）。　 kaṅkhā （16の疑い）も参照。

sotāpattiの「maggaとpala」を実現したあと、bodhisattaは次の5つのものを振り返って確認します。

1）sotāpatti magga

2）sotāpatti pala

3）この2つが目的としていたもの、つまりNibbāna

4）sotāpattiの「maggaとpala」を得ることによって破壊された汚濁

5）自分の内にまだ残っている、今後滅却すべき汚濁

これら5つの考察的知識は、「5つのpaccavekkhaṇa ñāṇa」と呼ばれます。

上記の5つの対象をあらためて確認したのちに、bodhisattaはふたたび一連のvipassana ñāṇa（洞察による智慧）を培い高めていきます。

たとえばUdayabbaya ñāṇaなどの精査を微細な領域までより深く拡げます。

sotāpattiのmaggaとpala ñāṇanの結果

その後のgati はSotāpannaの「道徳的なgati 」に永久に変化し、apāyāの誕生につながるようなことは決してしません。Sotāpannaは感覚入力により「samphassa ja vedana」をまだ生成する場合がありますが、それらは穏やかであり、したがって生じる苦しみは穏やかなものです。

たとえば、ある日、XはYが別の人と婚約したと聞いた、とします。Xはどうなるでしょうか？

Xはひどく取り乱していて、惹きつけられているレベル（そしてXのgati ）に応じて、Xは何か悪いことをするかもしれません。

たとえば、惹きつけ（tanhaのレベル）が非常に強く、Xが「暴力的な性格」つまり、暴力的なgati）を持っている場合、XはYまたはYが婚約した相手を傷つける可能性があります。そうすれば、Xは「Yの損失」を苦しむだけでなく、悪いkammaを実行することで、将来の苦しみの原因にもなるでしょう。

これから、tanhaとgatiの両方が重要な問題であることがわかります。どちらも、愚かな行動の悪い結果（adeenava）を熟慮することで軽減できます。

そして、それはanicca、dukkha、anattaを理解することで永続的に行うことができます。

そして、じきに彼は、第2の道であるsakadāgāmī maggaとsakadāgāmī phalaを取得します。

sakadāgāmī maggaによって、「感覚への渇望」（kāmarāga）と「嫌悪」（vyāpādaすなわちdosa）という、やや粗大な2つの汚濁を根絶やしにします。

これ以降はbodhisattaの心路citta vithiは、粗雑なkāmarāgaとvyāpādaから完全に解き放たれます。

sakadāgāmīのmaggaとpalaを取得したあと、bodhisattaは5つのpaccavekkhaṇa ñāṇaをふたたび培います。すなわち「sakadāgāmī magga」、「sakadāgāmī phala」、「その2つが目的としていたNibbāna」、「滅却された汚濁」、「まだ残っている汚濁」の5つをふたたび確認しました。そして、一連のvipassana ñāṇaを培い、Udayabbaya ñāṇaなどのより深遠な領域の精査を続けます。

そしてじきに第3の道であるanāgāmī maggaとanāgāmī・phalaを取得します。

anāgāmī maggaを得ることによって、彼は微細なkāmarāga kilesaとvyāpāda（dosa）とを完全に捨て去りました。その後、5つの考察的知識（anāgāmī magga、anāgāmī・phala、その2つが目的としていたNibbāna、滅却し終えた汚濁、まだ残っている汚濁）をじっくりと確認したのち、Udayabbaya ñāṇaなどの一連のvipassana ñāṇaをさらに育んでいきます。

āsavakkhaya ñāṇa（āsava漏+khaya滅) 自身の内に残る、道徳性を汚染する元凶のすべてを把握して消滅させる知識

それからbodhisattaはāsavakkhaya ñāṇaを取得して、

「āsavaとは本当は何であるのか」、「āsavaの原因とは何であるのか」、「āsavaの止滅とはどのようなものなのか」、「āsavaの止滅に至る道とはどのようなものであるか」を真に完全に理解しました。

そしてmahāvajira vipassana [mahanta+vajira金剛ñāṇa知恵]の境地についに到達しました。このようにしてbodhisattaは、āsavakkhaya ñāṇa（すなわちarahatta magga ñāṇa）を培い、それを用いて、自身の内に残る汚濁のすべてを取り去りました。こうして、これらの汚濁はもう二度と生じることはなくなりました。

asavakkhaya （āsava漏+khaya滅) nanaとしてブッダが悟ったことは

kāma assādaや感覚対象についての考えを強制的に抑制することは不可能ですが、それを行うことができる唯一の方法は、dhamma（特にこの世のaniccaの性質）を学び、そのような考えの悪い結果（adeenava）について考えて、マインドを浄化することです。

すなわち、悪い習慣（gati）を取り除き、良い習慣（gati）を育成することによってāsava（およびanusaya）を取り除く方法です。

pāramī pavicāru ñāṇa（徳の完成について詳細に探究する智慧）

Dīpankara Buddhaは、何をどのように実践すればブッダとなれるのかを、Sumedhaに教えませんでした。Sumedhaはブッダとなる方法に自力で思い至らねばなりませんでした。そして彼は十個のpāramī（完成すべき徳目）を満たさねばならないことを発見しました。

十個のpāramīとはすなわち、dāna（布施）、sīla（道徳性）、nekkamma（放棄/出家）、paññā（智慧）、viriya（努力）、Khanti（寛容さ）、sacca（真実）、adhiṭṭhāna（強い決意）、mettā（慈愛）、upekkhā（平静さ）です。

Dīpankara Buddhaの足元に身を投じた時以来、bodhisattaはdānaなどの10のpāramīを完成させることを通じて、徳を育み蓄える努力を続けてきました。これは凡人には達成しがたいことです。自分の善行の見返りとして、いずれのlōkaでも何がしかの世俗的な悦楽を得たいという願いを、一切抱きませんでした。彼がなした善行のすべては

「この行為をなすことで蓄えられた功徳が、私の内にsabbaññutā ñāṇa（全知）が生じるためのupanissaya paccaya（十分条件）の一部となりますように」という願いのみに基づいていました。

arahatta magga ñāṇa

5人の修行者は、ゴータマがブッダになったことを信じませんでした。「友、Gotamaよ。君は、並の者には得がたいappanājānaなどに至り実践する者に違いないが、dukkha cariyā（苦行）を6年間にわたって実践した際には、Arahatに至らしめるarahatta magga ñāṇaとsabbaññutā ñāṇaを取得することができなかったではありませんか。

今は「四つの必要条件」を満たすために励む時であるのに、あなたは瞑想実践をあきらめてしまいました。それなのにどうして、arahattamagga pala ñāṇaとsabbaññutā ñāṇaを理解し取得することができた、と言うのでしょうか？」

ブッダは自分が「四つの必要条件」を満たすための努力はおこなわなかったこと、瞑想実践をあきらめてはいなかったこと、真の覚者となったことなどを説明しました。ブッダは3度にわたって5人に説明し続けましたが、5人は3度にわたって、彼の言葉を信じることを拒みました。

sabbaññutā ñāṇa（最高の褒賞「全知」）

ゴータマ菩薩がカピラヴァットゥKapilavatthuでの世俗的生活のすべてを捨て去ってから6年が過ぎた日のことです。

満月の晩が明ける直前に、最上の勝利がついに彼におとずれました。sabbaññutā ñāṇa（最高の褒賞「全知」）を勝ち取った瞬間、とうとう、至高の覚りを得たブッダとなったことを,はっきりと理解しました。つまり、すべての心あるもの（satta）を抑圧し苦しめている病いを完全に理解し、そしてその病いが生じる原因を完全に理解した覚者となりました。

そしてまた、生命体が抱えるすべての苦しみとそれを克服してNibbānaの安らぎを取得する道を発見しました。

　

縁起のステップを正順と逆順で入念に繰り返して追体験する「聖なる道」を歩み、sabbaññutā ñāṇa(全知)に到達し、独力での覚りに到達した至高のブッダとなりました。それは夜の闇を暁光が破ろうとする直前のことでした。

棟木を打ち砕けば、無知の家は完全に破壊し尽くされます。心はNibbāna、すなわち条件づけから解き放たれ、至高の安らぎ、完全なる解放を取得します。無知の棟木を破壊する手段は一連の各ñāṇaと実践です。そして究極的にはsabbaññutā ñāṇaの栄冠をともなうarahatta magga ñāṇaとarahatta phala ñāṇaです。

現代科学者が発見した時に概要を書きつけるのと同様に、ブッダは「bhava」（生成/存在）に関する真理を解き明かす大発見をした時に、心の中に2つの節句を書き留めました。

Sahampatiという名のbrahmaが勧請をおこなうと、Gotamaブッダは仏眼を用いて、「satta　心がある生命流動体」の世界を概観して以下を知りました。

a）āsayānusaya ñāṇa：生命体の内にひそむ欲望（貪瞋癡をうむ煩悩）についての知識

b）indriyaparopariyutta ñāṇa：「成熟度」すなわち「感受機能」についての知識 　　　　他者の意図を知る知識

āsayānusaya　«āsaya 棲処+anusaya随眠，煩悩　+　ñāṇa»

Paropariya [para-avara] この世とあの世に属するもの、または能力の範囲内に来るすべてのもの

他人の感覚や意図に起こっていることに関する知識

ブッダは概観すると、生命体にははっきりと異なる4つのタイプがあることを発見しました。

青、赤、白色とさまざまな池の蓮のように「satta　知覚ある生命流動体」は、4つのカテゴリー、すなわち4タイプに分類できます。

1）水中で生まれて、水中で成長し、そして水中にある蓮

2）水中で生まれて、水中で成長し、そして水面と同じ高さになる蓮

3）水中で生まれて、水中で成長し、水面よりも高く、水が付着して濡れない蓮

4）水中で生まれるが、成長することがなく、池底にある蓮

sabbaññutā ñāṇaとāsavakkhaya ñāṇaとを同時に理解し、それによって覚りの境地に至ったブッダでしたが、その後すぐに菩提樹の下を離れはしませんでした。彼は、解放への道を妨害する5つの敵対的な力、すなわち5つのmāraを滅ぼし尽くした後も、その勝利の玉座にしばらく鎮座したままでした。

5つのmāraとは、以下のものです。

1．神としてのマーラ　（devaputta-māra）

2．汚れのマーラ　　　（kilesa-māra）

3．五蘊のマーラ　　　（khandha-māra）

4．業形成のマーラ　　（kamma- māra）

5. 死としてのマーラ （maccu- māra）

SN23. 11，12，23、　SN4、Sutta Nipāta 3.2　Padhānasutta、経集3.2. 精励の経（Sn.v.425ff.）

では、Māraは五蘊として説かれています。

paṭisambhidā ñāṇa（4つの分析的知識とasādhāraṇa ñāṇa（6つの独特の智慧）

このようにしてsabbaññutā ñāṇaを取得したのと同時に、bodhisattaはついにsammāsambuddha（独力で覚りに至った完全なる覚者）の段階に至りました。

sammāsambuddhaがそなえているのは、「四つの聖なる真理」についての知識、paṭisambhidā ñāṇa（4つの分析的知識）、ブッダが有する14の智慧を構築するasādhāraṇa ñāṇa（6つの独特の智慧）です。

同時に、彼はまた、ブッダとなった者が有する18のāveṇika dhamma（特別な性質）と、4つのvesārajja ñāṇa（勇者の智慧）も取得しました。

paṭisambhidā ñāṇa　　意味と法則、これらの言語、これらの機知についての知識

asādhāraṇa （共通しない）ñāṇa

āveṇika 特殊なdhamma

vesārajja　自信 self-confidence ñāṇa

参考資料

道に至る順番

体験

現状把握　　　　自分の立ち位置、現代の特徴

全体図　　　　　ステップの順序

現状の理解　　　文明時代の思考パターン

試行実践　　　　kāyagatāsati　　 Satipaṭṭhāna、ānāpāna sati

具体的目標　　　iddhi　nāma- rūpa（宇宙法則と深層真理）　三相→四聖諦　主格の弊害　試行錯誤　育成

Dhamma　　　　Dhammaの認識　　　浄化の道の7段階　　心所　五蓋

決意　　　　　　血が枯れるまで

基盤資質　　　　iddhipāda（道を完成する基盤）を認識し確立　　1.chanda 　2.vīriya　3.citta 　4.vīmaṃsa

基盤回路　　　　indriya回路を確立する　　　　　　　　　　 saddhā、vīriya、sati、samādhi、paññā

回路育成　　　　bala力の相互作用を確認し育成　　　　　 反義の性質を知って素材回路の力を高める

浄化の確立

Dhamma学習　6大元素、縁起、多層の四聖諦

７つのSambojjhaṅgas

知識の確立

瞑想　　　　　本格的瞑想を実践する

ステップ	主題	方法・手段	内容
体験してみる	未体験を既知に	10日間コース
現在地を確認	自分を知る	観察	自分の立ち位置を知る 　マインド制御の不可 10日で起きたことを分析してメカニズムを仮説する。 その仮説は日常生活での試行錯誤によって支持される
知識の準備	全体図	学習 TheArt of Living	学ぶ段階と順番を知る　この表を見る　　 智慧による多層性、五蘊、無常、四諦、八正道、六処
現状の理解	都市生活者 学校教育 科学信奉者 論理学信奉者 欧米思考 輪廻否定者 カンマの無理解 21世紀の住人	経典、 推論 実証体験	文明内における思考パターンの現状を知る 言葉と実体の関係性、　　現象学 ４つの範囲　　学問の範囲、測定可と不可の範囲 理念の性質と限界、 全体性と部分　過剰一般化 自動反応回路の存在と生成と弱体化 ダンマとは何か？dhamma-antarāya　危険、障碍 体操とストレッチの実践　ヨガ、合気道、気功、太極拳
実践の準備	kāyagatāsati	Satipaṭṭhāna ānāpāna sati 眼を開けた冥想	体と心の変化に気づいていることでaniccāや マインド制御の体験が最初の段階です。 kesā（頭髪）、lomā（体毛）、nakhā（爪）、dantā（歯）、taco（皮膚）は、taca pañcakaの5つに注意をしっかりと向ける
学ぶ内容と 順番 必要な要素 を知る	iddhi	観想 20日間コース	学ぶ内容を知る　　　　　 1. nāma-rūpaなど深層にあるdhammaの知識 2. 正確に知るべきこと　三相→苦諦 3. 主格を基準で生きているsakkāya-diṭṭhiの弊害を知る 4. 試行錯誤の体感をして初めて覚ることを知る 5. 何を育む（成長、発展）べきかを知る
浄化の順番			(1) Sīla-visuddhi (道徳の浄化)、 (2) Citta-visuddhi (意識の浄化)　 kāyagata sati を確立すること (3) Diṭṭhi-visuddhi (見解の浄化) 、　　　　 nāmaとrūpaを分別し、６大元素を分析的認識する　 五蘊のチェック　あるがままを観察する (4) Kaṅkhāvitaraṇa-visuddhi (疑いの克服による浄化)、　　原因から結果が生まれることに疑いがなくなる ６大元素の出現と原因を明確に認識する 四大元素の原因はkamma、citta、utu、āhāra、 viññāṇaの原因は6つの知覚の対象であることを認識 (5) Maggāmaggañāṇa-dassana-visuddhi (道であるものとそうでないものの知識とビジョンによる浄化) 苦しみの始まりと苦しみの終わりを見ることができる。 (6) Paṭipadañāṇadassana-visuddhi (道の知識とビジョンによる浄化) 　６大元素の中に三相を認識する 一歩一歩の歩き方　行道 →　八聖道 bhanga溶解、体はカラーパの集まりであり、波動。 消えていくものにスポットライトを当てる傾向を習慣にする 心と体が結びついたnāma-rūpaで把えると執着と習慣になり、それらが苦しみとなる。 感覚に反応するのを止める　　　 (7) Ñāṇadassana-visuddhi (知識とビジョンによる浄化) 　　　4つのmagga ñāṇasを理解する 智慧でnāma-rūpaをnāmaとrūpaに分別する 具体的には感覚をaniccaで感じていられば、それは感覚を分別したrūpaとrūpaの衝突をnāmaとして体験していること。 四大元素の分析、rūpa-vipassana（物理的現象の観想）、nāma-vipassana（メンタル的現象の観想）
決意			たとえ私の皮膚と筋と骨だけが残り、私の肉体の肉と血が枯れ果てようとも、勝ち取れるものを勝ち取るまで、私は努力のプロセスを止めることを許さない。 増支部　AN2.5 Upaññāta-Sutta　　　 AN 2.1–10. 行罰刑の章　近しく知られたものの経
道に至る資質を確認する	iddhipāda	基盤の性質を確立する	道を完成するための基盤 1.chanda達成できないならば死んだほうがまし 2.vīriya　エネルギーと労力の多さを楽しむ 3.citta iddhiに夢中な時にのみ満足する執着心 4.vīmaṃsa またはpaññā　深層dhammaの研究
dhammaの学習 第2段階 微細領域 マインド領域			五蘊、縁起、四聖諦、四大元素、31領域 udayabbaya-ñāṇa（心身の現象の発生と消滅を観想することによって生じる知識） 五蓋の除去　　 心身の心所を知る　　論蔵の概要を学ぶ
決意の確立	sammappadhāna	決意 達成内容の意義 The Art of Dying	修行の方向性を知り、やりきることを決意する。 皮膚を残すが、血が乾くまで。
基盤となる力 （回路）の育成	indriya 支配者	回路の確認 回路の育成 長期間サーバー	回路には誰も逆らうことができない 1.Saddhindriya　　信頼、確信、渇望からの離脱 2.Vīriyindriya　　　屋外で目を開けて生活 3.Satindriya　　　　aniccāを気づき続ける 4.Samādhindriya　　メンタル集中維持 5.Paññindriya　　　回路の洞察
浄化の確立	visuddhis	30日間コース	7つのvisuddhis（浄化） (1) Sīla-visuddhi (道徳の浄化)、 (2) Citta-visuddhi (意識の浄化)　kāyagata satiの確立 (3) Diṭṭhi-visuddhi (見解の浄化) nāmaとrūpaを分別し、６大元素を分析的認識する　 (4) Kaṅkhāvitaraṇa-visuddhi (疑いの克服による浄化)、 ６大元素の出現と原因を明確に認識する 四大元素の原因はkamma、citta、utu、āhāra、 viññāṇaの原因は6つの知覚の対象 (5) Maggāmaggañāṇa-dassana-visuddhi (道であるものとそうでないものの知識とビジョンによる浄化) (6) Paṭipadañāṇadassana-visuddhi (道の知識とビジョンによる浄化) 　 ６大元素の中に三相を認識する (7) Ñāṇadassana-visuddhi (知識とビジョンによる浄化) 　　　4つのmagga ñāṇasを理解する
力（要素）の相互作用を知り、育成	balaの育成	関係性を確認 資質力を育成 45日間コース	素材の力の相互関係を知る 欠けている箇所を確認して成長させる Saddha　　渇望の除去 Vīriya　　　怠惰をリズムの一部に Sati　　　　微細感覚を基準に Samādhi　　空想に飽きる Pañña　　　妄想の理由を知る
dhammaの 学習 第3段階			六大元素、dhammaとNibbānaの関係の探究 無色界領域　kilesa領域
知識の確立	ñāṇa	長期間サーバー	1) Kammassakatā-ñāṇa 自身の財産はkammaだけという事実の知識 2) Dhamma-vavatthāna-ñāṇa nāmaとrūpaを分別し、生命がないとする知識 3) Paccaya-vavatthāna-ñāṇa nāmaとrūpaの起源とプロセスを理解する知識 4) Lakkhaṇa-paṭivedha-ñāṇa nāmaとrūpaがanicca（三相）である知識 生命の実体はnāmaとrūpaというanatta 5) Nibbāṇa-paṭivedha-ñāṇa 涅槃を理解する知識
実践	samatha　初級	ānāpāna 中級 60日間コース	体の感覚の3段階　通常、微細、より微細、 nimittaの安定
	vipassana初級	60日間コース	nāmaとrūpaに分別する洞察 10段階のステップ (1) Sammasana-ñāṇa 存在の3つの特徴についての洞察力 (2) Udayabbayanupassanā-ñāṇa 現象の発生と消滅についての洞察力 (3) Bhaṅgānupassanā-ñāṇa 溶解についての洞察力 (4) Bhayānupassanā-ñāṇa 恐ろしい状態についての洞察力 感覚でしかない溶解状態を評価する罠 (5) Ǎdīnavānupassanā-ñāṇa 欠陥状態の洞察力　　 無常と死による破壊の洞察？ (6) Nibbidānupassanā-ñāṇa うんざりする状態についての洞察力 (7) Muccitu-kamyatā-ñāṇa 逃避願望から生じる洞察力 (8) Paṭisankh-ānupassanā-ñāṇa さらなる観想から生じる洞察力 (9) Saṅkhārupekkhā-ñāṇa 安穏さから生じる洞察力 (10) Anuloma-ñāṇa 適応知識 Anuloma順番通り、正順　　　　　 5つのabhiññāの取得
預流向を知る	cūti-Sotāpanna	長期間サーバー	預流果に至るpāramiを育む
禅定	Jhāna samāpatti	ānāpāna 上級 100日	8段階（後にもう1段階）
成果に至る 7要素	Sambojjhaṅgas	長期間サーバー	1.Sati sambojjhaṅga 2.Dhammavicaya sambojjhaṅga 3.Vīriya sambojjhaṅga 4.Pīti sambojjhaṅga 5.Passaddhi sambojjhaṅga 6.Samādhi sambojjhaṅga 7.Upekkhā sambojjhaṅga
八聖道を知る	ariya-aṭṭhaṅgika-magga	八正道ではなく八聖道の実践	八聖道を知ることで、次の段階の八正道を明確に実践する
道と成果	Magga&Pāla	Vipassana上級 120日	16段階
預流果の完成	Sotāpanna	Nibbānaの感覚	最終的なanatta bhāvanāでsakkāya-diṭṭhi を自分自身から取り除く

「無常の滅」が体感できれば覚り　　　dhammavicayaの範疇

択法正覚支dhammavicaya-sambojjhaṅgoの最終段階が完成すると覚りの心（出世間心）が現れる。

存在は概念に過ぎず、実際には、物事はただ変化するだけで、消えてはまた生まれていくだけで、生まれいくプロセスを察知して「ある」とよんでいるだけで、消えていくプロセスである「ない」は察知してはいない。

消えていくプロセスを察知することを無常の体感と呼び、これが智慧である。

智慧には知識から体感、応用までの多くの層がある。

知識だけでは覚ることはない。

「これがあるから、これが起こる。これが消えると、これも消える」という発見を体感する修行が必要。

これは物理エネルギーの領域（kāmaloka）、すなわち５感覚器官を介する信号同士の「横の関係性」ではなく、意識エネルギーの領域（rūpaloka）と物理エネルギーの領域（kāmaloka）との間の「縦の関係」である。

これが「釈尊のいう因果法則の発見」である。

したがって仏法でいう因果関係は縦の関係性のことなので、科学や日常生活で使わている横の関係とは言葉同じであるが内容は違うものになる。

「無常の滅」が体感できれば修行は完了になるが、各自の心の汚れ具合によって、この発見にかかる時間はヒトによってさまざまである。

nāmaとrūpaの分別

dhammavicayaとは心のはたらきと物質のはたらきを区別できることである。

区別できない人は「心と体は一体である」とか「魂と体は一体である」と発言したりする。

事実は、心と体は不可分離の状態ではたらいているのだが、質的には違うものである。

つまり、心と体は別々にはたらいている。

心と体が区別できたら、次には心のみを察知する。そして体のみを察知する。

すると心も体も瞬間瞬間変化していることが察知できる。

精進正覚支v iriya-sambojjhaṅgo

ものごとが分別して見えてくると、面白くなり、さらにどうなるかと体験したくなる。

そのまま続ければ覚りに至るのだが、プロセスの評価、ビフォア・アフターの評価（心身の向上、集中力の向上など）をしたくなり、それで満足して途中で止めてしまうという落とし穴がある。

止めてしまうと、無常の法則に従って、堕落していく。

満足すると分別するのをやめるようになるので、満足をしてしまうと成長が止まる。

だからといって、不満と闘うのではなく、不満を条件として大事に扱う。

途中の結果を喜びたい者が、怠けを割り込ませ、中途で精進をストップする。

さまざまな工夫をして、自分を奮い立たせる必要があるので、この努力が精進である。

修行者の正精進とは最終解脱に至るまで満足しないと決意するのが、阿羅漢への道。

心にある感情や妄想を悪とし、生じていない善とは、煩悩をなくして覚りに至ること。

「仏教の修行は戦争に行って闘うほど厳しいものである」と釈尊は説く。出典？

喜正覚支pīti-sambojjhaṅgo

念正覚支、択法正覚支がよくできたならば、そこで「よくできた」と満足すると修行が中止してしまうので、戦場状態である精進正覚支を行う。

心が清らかになっていくと、俗世間の悩み苦しみが減じると、集中力が上がり、智慧が育まれていき、自然に心に喜びが生じる。これが喜正覚支である。

自己評価することも、満足することも禁じられているので、修行する前の自分と今の自分の精神状態を具体的に比較してみる。

すると心の成長がそうとう進んでいることに気づき、喜びが生まれる。

修行は無駄ではないことが改めて分かる。

真理が分かる喜び

真剣にsatiをすると、忙しくて妄想する暇がなくなる。

自分を振り返ってみると、世俗的な楽しみを望む気持ちはほとんど消えている。

こうして、純粋で、完全に、心が長い間清らかに回転しているのだから、結果として心と体に喜びを感じる。

なぜ喜んでいるのかは本人にも理由はわからない。

寝る時間ももったいない、と思ってまた修行ばかりしている。

苦しいはずなのに、本人はすごく楽しい。

笑いたいほど楽しい。

この楽しみは出世間の道に入っている時に確実に生まれる。

それは自分は世間の苦しみから離れている、という感じ。

ヴィパッサナー瞑想の実践をしていても、世間の苦しみが頭に浮かんでも、そこから離れていることが実感でき、強烈な喜びが生まれてくる。

喜びが生まれてくると、やる気が出てきて、さらに精進しやすくなる。そして一段と分別能力に磨きがかかる。

そうすると、さらにsatiを実践するようになる。

このようにリストの順番の逆方向にも進歩する。

sati→法の探索→精進→喜pīti　　

喜pīti→やる気（精進）→分別（dhammavicaya法の検証）→「いま・ここ」で生きる（sati）

このように全ては自然に進歩していくが、satiだけは本人が意識してやらなければいけない。

satiが土台である。仏教はsatiで始まる。

satiさえすれば、他のものはきれいに自然に揃ってくる。努力しなくてもいい。

軽安正覚支passaddhi-sambojjhaṅgo

喜びにも落とし穴がある。それは興奮によって集中力が切れて、修行ができなくなること。

そこではじめは喜びに驚いても、それに慣れて落ち着くのがいい。

「落ち着くべきである」という条件が、軽安正覚支passaddhi-sambojjhaṅgoである。

この落ち着きは、普段の落ち着きとは段違いのものである。

Passaddhi　 [fr．pa-強意（前に，先に） + sambh（梵wrambh）平息] calmness，tranquillity，repose，serenity安息

体が軽くなり、柔軟になったと感じ、体重がゼロに近い状態になったように経験する修行者もいる。

また掃除や歩行や沐浴などの普段の生活でsatiが自由自在に入れることができるようになる。

瞑想のプロになったので、肉体の痛みや環境の寒暖などのトラブルがなくなり、修行を簡単に進められるようになる。

心が弱い時や怒りや欲があると体は硬く、重くなる。

定正覚支samādi-sambojjhaṅgo

心は複数の対象を同時に認識することはできない。

satiは心が勝手に対象をめざして飛び回っているのを停止させる。

これがヴィパッサナー瞑想におけるサマーディである。

現実をありのままに確認する作業とは、言葉を変えると集中力であり、「いま・ここ」に生きるということである。

捨正覚支upekkhā-sambojjhaṅgo

これまでの６つの支をできるだけ成長させて、バランスを整える「最後の調整」で、スムーズにはたらけるように落ち着いて冷静に修行を続ける気持ちのはたらきがupekkhāである。

ヴィパッサナー瞑想の10段階

(01)サンマサナ　　　　　sammasana

綿密な理論的観察と分析によるアニチャ・ドゥッカ・アナッタの正しい理解

(02)ウダヤッバヤ　　　  udayavaya　生滅arising and passing away

ルーパとナーマが出現しては消滅するということを知ること

(03)バンガ              bhaṅga  破壊　breaking up; dissolution　分解、崩壊、融解

ルーパとナーマの素早く変化する性質をエネルギーの急流として知ること

(04)バヤ                bhaya 　怖畏，恐怖　　fear; fright

正にこの自己の存在が恐ろしいものだという事実を知ること

(05)アーディーナヴァ　　ādīnava： disadvantage.　　 過患，患難，過失，危難.

正にこの存在が悪に満ちているという事実を知ること

(06)ニッビダー          nibbidā：[f．] aversion； disgust； weariness　　自己嫌悪，厭離，

正にこの自己の存在は胸が悪くなるようなものだという事実を知ること

(07)ムンチタカンヤター  muñcitukamyatā　　 [muñcitu-kamyatā] 脱せんと欲すること，欲解脱

正にこの自己の存在から逃れることが緊急に必要だということを知ること

(08)パティサンカー      paṭisaṅkhā：reflection； judgement； consideration　　省察，思択，考察

アニチャを基礎として、十分な認識を持って救済のために勤める時が来たと知ること

(09)サンカールペッカー　sankhar’upekkha-ñana　

今やサンカーラから脱し、自己中心主義を断ち切る時期に来ているという事実を知ること

(10)アヌローマ anulomaṃ：バランスのよい平静さ　Direct order順行　真っ直ぐsuccession  連続、継続　

目標に達する試みの速度を速めることができる知識

S.N. Goenka  「実践における仏陀ダンマの本質」の原文を探してパーリ語の表現をチェックする。

Dharma - Its True Nature

1995年5月にインド、イガットプリのダンマ・ギリで開催された国際会議の議事録です。論文と議論は、「ダルマ」という言葉の意味に焦点を当てています。ダルマは理想的な社会秩序のあらゆる本質を体現し、性別、カースト、信条、宗派、宗教、国籍による差別なく普遍的に適用可能なものです。論文には、ダルマという用語の定義に関する活発な議論の抜粋が随所に散りばめられており、現代の社会問題、科学、そして急速に変化する現代社会におけるダルマの役割に焦点を当てています。

Author: S. N. Goenka

Publisher: Vipassana Research Institute

Publication Date: 1/1/1999

Product Type: Softcover Book

Pages or No. of Discs: 75

ISBN 13: 978-81-7414-124-8

ISBN 10: 8174141243

Weight (Pounds): 0.35

Product Code: 141243

参照 19段階

Sensations arise and disappear at a high frequency rate. With our poor levels of attention, we can only detect great changes, but in spite of that they are still there, you can feel the change despite the few seconds you spent observing before going to the next sensation. Once you become more and more concentrated, the “same” feelings begin to disarm and you can detect more textures inside them. That procedure continues to unfold over and over again, until it is supposed that the meditator reach the state of bhanga dissolution, an important point in the progress of insight called “Visuddhiñana-katha”:

visuddhi：[f．] purity； holiness； splendour； excellency

ñana　　　　　wisdom

katha　　　　　theory

1. Knowledge of Classifying （nāmarūpa-pariccheda-ñāṇa）　名色分離　　分別（涅槃、心所、心、身体）

1. Knowledge of Classifying (Vibhaṅga-ñana)　　　　　　分別（涅槃、心所、心、身体）

2. Knowledge of causation （paccaya-pariggaha-ñāṇa）　　　nāmaが原因でrūpaが結果という因果関係

2. Knowledge of Aggregation (pañca-kkhandha-ñana)　　五蘊　受vedanā、行sankhāra

3. Knowledge of Nature （sammasana-ñāṇa）　　　　　　三相tilakkhaṇa　aniccā,dukkhā,anattāの理解

4. Knowledge of Changing (udayavaya-ñana)          生滅の深く明晰な理解、対象の微細化

5. Knowledge of Dissolution (bhanga-ñana)　　　　　　融解

6. Awareness of Fearfulness (bhayatupatthana-ñana)　　恐怖

7. Knowledge of Misery (adinava-ñana)　　　　　　　　　悲惨

8. Knowledge of Disgust (nibbida-ñana)　　　　　　　　　うんざり

9. Knowledge of Desire for Deliverance (muncitu-kamyata-ñana)　　釈放の願い

10. Knowledge of Re-observation (patisankhanupassana-ñana)　　　　再び観察

11. Knowledge of Equanimity about Formations (sankhar’upekkha-ñana)　　サンカーラの平静化

12. Insight Leading to emergence (vutthanagamini-vipassana-ñana)　　　　出現に導く内観

13. Knowledge of Adaptation (anuloma-ñana)　適応（目標に達する試みの速度を速めることができる知識）

14. Maturity Knowledge (gotrabhu-ñana)　　成熟　

聖者には達していないが、次の瞬間には必ず聖者の域に達する心

15. Path Knowledge (magga-ñana)　　　　　道の確立　預流道心 チューター・ソータ　第１禅定が必要？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

16. Fruition Knowledge (phala-ñana)　　　　　　　　　　結実の知識

17. Knowledge of Reviewing (paccavekkhana-ñana)　　　　　再検討　　自分の心に残っている煩悩を発見

18. Attainment of Fruition (phalasamapatti)　　　　　　　　　結実の達成　預流果心　　　ソータパンナ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無常を認めることで得る境地

19. The Higher Paths and Fruitions　　　　　　　　　　　　次の段階への道と果のための知識

4.　Udayavaya Ñānaとは「sankata.の発生とその発生の阻止に関する知識」

涅槃への鍵はudayavaya ñāṇaの中にあります。

javana cittaによる abhisaṅkhāra (すなわちcētana) のため、「来世の転生が発生（udaya）」するので、それを阻止する知識。

つまり、苦しみはどのように生じ、どのようにしてそれを止めることができるのか？についての知識

āsavas（悪いgati）を減らして不道徳な思考をコントロールすることで、最終的にはその思考の発生を止めることができます。

これは、マインドに浮かぶ道徳的または不道徳な考えを常に警戒することによって行われます。 これがSatipaṭṭhānaです。Maha Satipaṭṭhāna Suttaを参照してください。

そして、その考えが道徳的であれば、私たちはそれを育てます (āna)。 それが不道徳であれば、不道徳な言動につながる前にそれを止めます(pāna)。 これがĀnāpānasatiです。7. What is Änapāna?を参照してください。

参照　　十六観智　ñāṇa-dassana

『清浄道論』にまとめられた上座部仏教のヴィパッサナー瞑想によって獲得される智（ ñāṇa）の総称。

マハーシ・サヤドー. “The Progress of Insight”. Access to Insight.

ウ・ジョーティカ 2016.

名色分離智（nāmarūpa-pariccheda-ñāṇa） :

現象認知における意識（nāma ナーマ, 名）と対象（rūpa ルーパ, 色）の分離。

縁摂受智（paccaya-pariggaha-ñāṇa） :

意識（nāma ナーマ, 名）と対象（rūpa ルーパ, 色）の相互条件付け・因果関係の理解。

思惟智（sammasana-ñāṇa） :

上記の因果の生成消滅を通じての「三相」（無常・苦・無我）の理解。

生滅智（udayabbaya-ñāṇa） :

生成消滅のより深く明晰な理解。高い集中、平静さ、対象の微細化、時間感覚の伸張・喪失、強い光やイメージ（nimitta ニミッタ）の経験などを伴う。

壊滅智（bhaṅga-ñāṇa） :

生成消滅の消滅のみに注意を払い、対象の消滅と、それを観察する意識の消滅を感得。

怖畏智（bhaya-ñāṇa） :

消滅の継続的観察を通して、意識（nāma ナーマ, 名）と対象（rūpa ルーパ, 色）の生成消滅現象を危険なものと感得。ただしその危険感覚と自己の同一化を避けることで恐れは無い。

過患智（ādīnava-ñāṇa） :

消滅の継続的観察を通して、意識（nāma ナーマ, 名）と対象（rūpa ルーパ, 色）の生成消滅現象を、苦の集まりで、幸福はなく、無利益・不利益（過患）であると感得。

厭離智（nibbidā-ñāṇa） :

消滅の継続的観察を通して、意識（nāma ナーマ, 名）と対象（rūpa ルーパ, 色）の生成消滅現象を、魅力が無い退屈で疎ましい幻滅したものとして感得。

脱欲智（muñcitukamyatā-ñāṇa） :

上記6-8を踏まえた上で、その生成消滅現象から脱したい、自由になりたいと欲する。

省察智（paṭisaṅkhā-ñāṇa） :

瞑想を放棄せず、瞑想こそが唯一の解決手段であると考え直し、瞑想に留まり続ける。

行捨智（saṅkhārupekkhā-ñāṇa） :

現象をより深く強い注意力で、対象から完全に距離を保って平静に観察する。「中道」「空」に到達[5]。

(諦)随順智（(sacca)anuloma-ñāṇa） :

上記4-11の「八智」の集成として、涅槃（現象の停止）へと向かう。

種姓智（gotrabhu-ñāṇa） :

涅槃（現象の停止）への移行。

道智（magga-ñāṇa） :

涅槃（現象の停止）の経験。一刹那。

果智（phala-ñāṇa） :

涅槃（現象の停止）の経験。二刹那。

観察智（反省智）（paccavekkhaṇa-ñāṇa） :

涅槃（現象の停止）経験の反省（振り返り）。4の生滅智（生成消滅）から瞑想再開

十六観智と『清浄道論』の「七清浄」との対応関係

七清浄	十六観智
見清浄（ditthi-visuddhi）	名色分離智（nāmarūpa-pariccheda-ñāṇa）^[7]
度疑清浄（kankhā-vitaraṇa-visuddhi）	縁摂受智（paccaya-pariggaha-ñāṇa）^[8]
道非道智見清浄（maggāmagga-ñāṇadassana-visuddhi）	思惟智（sammasana-ñāṇa） 生滅智（udayabbaya-ñāṇa）^[9]
行道智見清浄（paṭipadā-ñanadassana-visuddhi）	壊滅智（bhaṅga-ñāṇa） 怖畏智（bhaya-ñāṇa） 過患智（ādīnava-ñāṇa） 厭離智（nibbidā-ñāṇa） 脱欲智（muñcitukamyatā-ñāṇa） 省察智（paṭisaṅkhā-ñāṇa） 行捨智（saṅkhārupekkhā-ñāṇa） (諦)随順智（(sacca)anuloma-ñāṇa）
	種姓智（gotrabhu-ñāṇa）
智見清浄（ñāṇadassana-visuddhi）	道智（magga-ñāṇa） 果智（phala-ñāṇa）
	観察智（反省智）（paccavekkhaṇa-ñāṇa）

七清浄の1は戒律、2は禅定（サマタ瞑想）、3〜7ヴィパッサナー瞑想

第一の洞察智（名色分離智）― 意識と対象（感覚）の区別に気づくこと。客観的な観察

最初の洞察智は、存在するのはただ現象だけで、恒常的なものは何もなく、存在者もなく、実体もなく、「私」もなく、自我もなく、人格もなく、ただ純粋な現象があるだけと知ることです。この「私」というのは、心の創り出したものです。心は、我と我が身の重荷を創り出します。この最初の段階の悟りによって、この「私」性、「私」性という誤った見解（邪見）が根絶されます。

最初の洞察智を得るために、意識（ナーマ：名、心、精神）と対象（ルーパ：色、身体、物質）を分離させます。意識と対象（感覚）をプロセスとして見て、存在者、実体、魂としては見ないのです。私の意識があるのではありません。あるのは、意識のプロセスです。私の対象（感覚）があるのではありません。あるのは対象（感覚）のプロセスです。

ふたつのことが起こっていて、ひとつはナーマ（意識）であり、ひとつはルーパ（対象）です。このふたつのものを非常にはっきりと観察した時、それが最初の洞察智になります。第一の洞察智は、無我（anatta）を知ることです。この対象があって、この気づきがある。対象と気づきというこのふたつを非常にはっきりと観察します。感覚と気づきは自然現象ですが、意識は対象という条件で生じています。

目を閉じている時には、目の前にあるものをあなたは見ることができません。目を開けた瞬間に、何かがあなたの目に飛び込んできて、この気づき、この見る意識が起こります。それはこの瞬間に起こります。あなたは対象と意識という二つのものを見ることができます。名色分離智とは、こうした見方です。

形は存在せず、男でも女でもないと観察します。これらの現象には、形状も外形もありません。それらは単なる性質です。硬さはただ硬さであり、柔らかさはただ柔らかさです。動きはただ動きにすぎません。瞑想する際には、ただ性質に注意を払います。あらゆる性質は存在者ではありません。実際には、存在者などいないのです。心と身体が動いているのであって、存在者が動いているのではないのです。

心が平静になり、純粋な性質を見る時に、私たちはそれが単に純粋な性質であって、存在者ではなく、男でも女でもないことがわかります。貪欲とは女でも男でもありません。貪欲とは、ただ何かを欲することです。これが最初の洞察智です。この最初の洞察智に至ることができなければ、進歩の望みは全くないでしょう。

名色分離智という洞察智に至った（純粋な性質を見る）時、その洞察智を得た状態が見清浄です。それは、第一の洞察智とともにやって来ます。

食事をする時、心と身体が食べているのであって、「私」が食べているのではありません。食べているのは心と身体なのですが、私たちは、私が食べていると考えています。実際には、ただ心と身体のプロセスが食べているだけです。これをプロセスとして理解できれば、あなたはこの見清浄を得たことになります。

第二の洞察智（縁摂受智） ― 意識と対象（感覚）相互の条件付、因果関係を理解すること

精神と物質の現象が、互いを条件付け合っていることを観察し、理解することが第二の洞察智です。このルーパ（物質的プロセス）は、このナーマ（精神的プロセス）によって生じている、あるいはその逆、などなど、状況に応じて、この両者は、互いを条件付け合っています。その条件付けを知り、その条件によって生じているのだと知ることです。

この対象（感覚）は、この意識の原因です。対象（感覚）があるから、意識が生じたのです。意識はそれ自身によって生じるのではありません。音の意識は音があるゆえに生ずるのです。長い期間、瞑想を続ければ「私が注意をした時だけ、私は音を聞く」という理解に至ります。音があっても、意識が生じなければ音は聞こえません。

ほとんどの時間、私たちは夢の中にいるかのように、無意識に何かをしながらふらふらと過ごしています。そこで突然、私たちは目を覚まし、そして「見る」ということがあり、それが本当に驚くべきことであるのを知ります。あなたは「見る」ということを、真に新しい何かとして経験するのです。ただ何かが存在するということこそが、真に驚くべきことなのです。

眼に関しては、中立的な感覚だけを感じています。それは快でもなく、不快でもありません。あなたがそれを快か不快として解釈すると、それは別のプロセス、つまり精神的プロセスになります。自分が見たものを好む時、それはもはや眼の意識（眼識）ではなくなります。この繋がりは別の意識になります。心が解釈をする時、それはもはや見る意識ではなく、心の意識なのです。

あなたが何かを見る時、純粋に見るのが眼識で、その時には、あなたは自分が何を見ているのかすら知らないのです。ただ純粋に見ることがあるだけなのです。自分が見ているものを確認するのは別の段階で、それからあなたは、自分がそれを好むかどうかを決定するのです。

第三の洞察智（思惟智） ― 意識と対象の因果である生成と消滅を通じて無常・苦・無我を知ること

瞑想する際に、無常（anicca：永続的でないこと）、苦（dukkha：不満足）、無我（anatta：コントロール下にないこと）という、自然現象の三つの特性全てを観察します。一つの対象（感覚）と、三つの特性（無常・苦・無我）の一つの側面だけを、繰り返し観察するのです。恒常的な実体は存在せず、持続する硬い中心核は存在せず、魂は存在しません。全てはプロセスなのです。

瞑想者は、何かが現れてしばらくのあいだ留まり、そして消えてゆくのを観察します。全てがゆっくりとした動きになります。思考や感覚が、映画のスローモーションのような、ゆっくりとした動きになります。瞑想者は、生成し、しばらく留まり、消滅するのを、観察することができます。時々は、少し変化してから消滅することもあります。この変化も、また、無常の一つの側面なのです。

それらは生ずべき十分な原因があるから生じ、消滅することがその本性であるから消滅します。何であれ生成する本性をもつものは、完全に消滅するという本性をもっています。受（感覚）を観察しているとしたら、あなたは無常としての受、あるいは苦としての受、もしくは無我としての受を観察することになるのです。

瞑想において、受に注意を払っていると、それがますます明晰になっていきます。そこに留まって、それをさらに明晰にすることは、とても重要なことです。いかなる種類の精神的状態についても、それに何度も繰り返し注意を払ってください。あなたはこうした全てのことを総じて理解するでしょうが、一つのことを完全に理解したならば、それで十分です。

この瞑想において、私たちは何も解釈せず、物事を組み合わせることもありません。私たちは各瞬間、各現象を個別的に見ます。各々の瞬間と現象を個別的に見ることができた時、あなたは本当にその本性を見ることができるのです。物事を組み合わせたら、それは観念になってしまいます。

物事が生じるためには、原因と条件が必要です。しかし滅するためには、原因も条件も必要ありません。十分な原因があればそれは生じます。同じことが、他のいかなる自然現象についても言えます。それらは私たちの願望には従わないでしょう。瞑想して強い集中力を育てれば、思考は時々止まります。あなたがそれを望むからではありません。条件のゆえにそうなるのです。

何ものも「物体」として考えることはできません。宇宙全体が一つのプロセスなのであって、物体ではないのです。何かを物体として見る時、それはあたかも変化していないように見えます。しかし、電子や陽子や中性子をプロセスとして見れば、それらは常に変化していることが分かります。互いに結合した時もまた、それらは変化するのです。

もしあなたが、全ての思考が身体に影響するのを感じ取れるくらい敏感になることができたなら、思考に全くうんざりしてしまうでしょう。あなたは思考が浮かぶままには任せなくなります。あなたはよりマインドフルになり、ネガティブな思考はどんどん減っていくことになります。あなたがますますマインドフルになれば、思考に耽溺し過ぎることはなくなるでしょう。

瞑想とは、存在者や「私」はなく、ただ気づきの連続、瞑想する意識の連続だけが存在するのを観察することです。私が瞑想と呼んでいるものは、単に連続する意識、気づきに過ぎません。

このポイントに至ってはじめて、瞑想者の誤った見解は剥落するに至ります。誤った見解が、本当に剥がれ落ちるのです。私が瞑想しているのではありません。私が瞑想と呼んでいるものは、単に連続する意識、気づきにすぎないのです。このポイントに到達しない限り、その人は次の段階へは進めません。

第四の洞察智（生滅智） ― 現象の生成と消滅を経験し道を見分けること

この段階を過ぎると、もはや、ナーマ、ルーパ、無常、苦、無我など、ダンマに関する思考は存在しなくなります。物事（感覚）が生成し、消滅しているのを非常に鋭く、明らかに観察するようになるのです。

第四の洞察智は、現象（感覚）の生成と消滅を洞察する智慧です。これは、ウダヤッバヤ・ニャーナと呼ばれています。ウダヤ（udayo）とは生じることであり、バヤ（vayo）とは滅することです。この二つが合わさって、udayabbaya という語がつくられています。私たちは、何にしても以前とは異なってはいるものの、それは以前のものと同じだと考えるところがあります。しかし無常が本当に意味するのは、以前のものは「もはや存在していない」ということです。

この段階に達する前は、瞑想者は自分が正しいことをやっているのか不安になることがあります。これはナーマなのか、 これはルーパなのか、 これは無常なのか、 これは苦（不満足）なのか。 しかし、この段階に到達すると、こうした迷いは全て去ってしまいます。瞑想はたいへん自然なものになり、努力をあまりせずとも進んでゆき、それゆえ、心がとてもバランスのとれた状態になるのです。心はこうしたウペッカー（捨）の態度をもちます。つまり、非常に強力な平静さが育つのです。

この平静さには、多くの特性があります。その一つが、恐怖も喜びもないということです。喜びはある種のローバ（貪欲）であり、何かを好むことです。この段階に到達すると、興奮はなく、幸福でも不幸でもなく、心は大変落ち着いていて、バランスのとれた状態になっています。

この段階において、瞑想者は非常に明るい光を経験することがありますが、これは心がたいへん集中していることを示しています。サマタ瞑想（アーナーパーナ瞑想）でも、この種の光は経験できます。それは集中と心のエネルギーを示すサインです。

第五の洞察智（壊滅智） ― 生成と消滅の消滅のみに注意を払い、それを観察する意識の消滅を感得すること

消滅をより明らかに観察し、生成には同じだけの注意を払わない。注意を払えば生成を観察することはできるが、消滅と消失により多くの注意を払う。注意を払うとそれはもはやそこにはない。気づこうとした瞬間に、それはもう去っている。それを観察することはもうできない。それはちらりと見えるだけで、もはやそこには存在しない。

この段階においては、瞑想するたびに、その対象が何であれ、たとえ動きであっても、瞑想者はその感覚と、次から次へと非常な速度の消滅に非常に明らかに気づいている。形にはもう注意を払っておらず、感覚に注意を払っている。全ての形と固形性は消えてしまう。つまり、あなたは形と固形性に、もう注意を払わない。あなたはただ感覚と、その非常な速度の消滅にのみ注意を払う。

対象が非常な速度で消滅するのを観察するのが、第一のバンガ・ニャーナだ。智慧（意識？）の消滅を観察するのが、第二のバンガ・ニャーナだ。この二つを合わせて、第五の洞察智である壊滅智（バンガ・ニャーナ）が完成する。

最初の洞察智においては、瞑想者は少し考える。第二の洞察智においては、生成や気づき、そして思考の原因について、多くのことを考える。第三の洞察智においては、瞑想、または無常・苦・無我についてより多く考える。第四の洞察智において、思考は比較的少ない。第五の洞察智では、思考はほぼ存在しない。考えることができない。消滅が非常な速度になってきて、それについて考える暇が存在しない。

第六の洞察智（怖畏智） ― ナーマとルーパのプロセスを危険なものとして観察すること

この段階において、瞑想者はあまり喜びに満ちておらず、意気盛んでもない。危険と見てはいるが恐れないということが洞察智ということだ。恐怖は、同一化から来る。同一化が存在せず、物事を単に消滅してゆく非人格的なものと捉えていれば、それはあなたとは何の関係もない。だから恐怖もない。誰もこれに同一化することはできず、それにしがみつくこともできず、そして頼ることもできないということを観察する。

第七の洞察智（過患智） ― 生成と消滅の不利益（過患）を観察すること

一般に人々は、よりよい場所、よりよい世界に再生することができれば、それは素晴らしいことだろうと考える。しかし、この精神と物質のプロセスが消滅していることを、綿密かつ明らかに観察すれば、あなたには理解できる。

「何のために？ 全てはこんなに速く消滅している。そもそも何かを求めることに、何の意味があるだろう！」

何であれ生起することは危険なのだ。何かが満足をもたらしてくれると考えて、それを得ようと考えることすら危険なのだ。つまり、生起するものはただ純粋な苦であり、また消滅するものも純粋な苦なのだ。

生成しないことは安全だ。何事も起こらなければ、実に安全だ。何かが起これば、それは消滅することになる。そこに安全はない。何も生成しないことが幸福であるということだ。

第八の洞察智（厭離智） ― 深く幻滅し、何事も幸せに思わないこと

何かを全く魅力を失わせるものとして観察すること、つまり「幻滅」だ。幻滅する、あるいは何事にももはや喜ばない智慧のことだ。これはまた退屈をも意味する。瞑想に関する退屈ではない。生成しては消滅し、また生成しては消滅するというこのプロセスを観察して、刺激を受けるものなど何もない、同じことが終わりなく、何度も繰り返し生起しているのだと認識するという、そうした意味における退屈だ。瞑想者は、楽しむことのできるものなど何もないことを観察する。全てはとても退屈なのだ。

Sabbe sangkhara aniccia！ 「全ての現象は無常である」

智慧をもってこれを観察する時、ドゥッカ（苦）にまるで魅力を感じなくなる。これが清浄の道だ。執着していないから、それについて心が乱れることがもうない。あなたは執着から、完全に離れている。

第九の洞察智（脱欲智） ― 自由になりたいと欲すること

全てのものを危険と観察（第六の洞察智）し、全ての生成消滅を不利益（第七の洞察智）なものと観察し、全てのものを魅力を感じる価値のないものと観察（第八の洞察智）した後、瞑想者はこれら全てのものから自由になりたいと欲する。

生成消滅が実に退屈であることを観察し、これ以上それとともにあることを欲せず、そこから離れたいと思い、抜け出したいと思い、それらから脱出したいと欲し、それらに全く飽き飽きしてしまう。この段階は脱欲智と呼ばれ、「脱出したいと欲すること」を意味します。

瞑想者は瞑想の対象と瞑想する意識から自由になりたいと思う。対象（感覚）と、瞑想している気づきから自由になりたいと欲する。これはつまり、もうこれ以上何事にも気づきたくないということだ。

第十の洞察智（省察智） ― 瞑想（観察）に戻ること

注意深くしていなければならない。退屈を感じた時は「よくなりつつある」と、ただ再確認するのだ。

瞑想はプロセスの心（路心）を育てる。これは現在に気づいている心だ。行動すればするほど、心は基礎的な状態（有分心）を強める。これは生命と意識の連続性を維持する心だが、瞑想を深めると、そこに長くは留まらなくなる。だから、有分心の時間はどんどん短くなる。

考えると、そこに同一性が生じる。思考によって「自分」が考えているのだと感じてしまう。思考によって、そこに連続性があるかのように感じられる。思考は繋ぐのだ。考えなければ、一つの出来事と別の出来事の間に繋がりは存在しない。思考がなければ、繋がりも連続性も存在しない。何かが生成し、消滅している。ただ、それだけだ。意味は存在しないのだ。

だから、考え過ぎないように警告する。思考が自然に浮かんできたら、ただそれに気づき、そして手放す。考えることによって、あなたは思考に同一化してしまう。思考が起こったら、ただ思考が起こったと気づくことだ。

通常、人はこの思考のすき間、意識の持続機能（有分心）をたいへん広く、長い時間もっているが、瞑想すればするほど、心はますます鋭くなり、そして思考のすき間はますます小さくなる。だから、同じ時間のプロセスにおいて、私たちはより多くの気づきをもつことになる。気づきがこの時間のスパンの中にぎっしり詰め込まれることになる。たいへんに集中した心を備えた瞑想者にとって、一秒は非常に長い時間だ。時間が大きく歪むのだ。

第四の洞察智の後は、全てがより楽しく、より幸せに、より刺激に満ちて、より喜びに満ちたものになるだろうと考える人たちもいる。そうはいかない。事態は下降してゆく。私たちはより深い洞察智を得て、しかも幸せを感じないのだ。しかしながら、これはスランプではない。

「この精神と物質のプロセスを観察することは退屈で幻滅を感じるものであり、それについて良いことは何もない」と感じた時に、瞑想者はあるポイントに到達する。

第十一の洞察智（行捨智） ― 対象から距離を保って平静に観察し「中道」「空」に到達すること

より深く強い注意力をもってプロセスを観察すると、心はより落ち着いて静かになる。気づきとサマーディはさらに強くなり、心は対象から完全に距離を保った状態になる。これが行捨智だ。

非常に綿密に、しかし対象から距離を保った態度で、完全な非同一化の状態で観察する。対象（感覚）を自己として観察せずに、完全な平静さを保ちながら、完全に対象（感覚）から切り離された態度と、同時に強い注意力をもって観察する。「これを観察している私は存在しない」。悟りへの道を切り開くには、この種の完全な非同一化が必要とされる。

心は対象から完全なる距離を保っており、非同一化が徹底していて、別様であることへの望みはもはや全く存在せず、とても単純に、ただプロセスを観察している。これが心の最高の状態だ。何かをしようと欲することはもはやなく、ただ完全な注意を払っているだけだ。

サンカーラ（行）とは、条件付けられた現象のことで、実際には、精神的プロセスと物質的プロセスのことだ。このプロセスがサンカーラと呼ばれる。ウペッカー（捨）とは平静さを意味する。平静さには多くの側面がある。その一つが、度を越えて頑張り過ぎず、リラックスし過ぎることもないというエネルギーのバランスだ。悟りへの道を切り開くには、この種の強力なバランスも要求される。

幸福は一つの極端であり、不幸はまた別の極端だ。幸福でも不幸でもない状態は、ある種のウペッカーになる。この段階において、瞑想者は幸福でも不幸でもない。

この段階においては、いつも自然に準備ができていて、その場にぴったり合っている。何かが起こって知覚が起こると、注意は既にそこにある。だから、注意を払うことにすら努力する必要はない。それは完全な形で、ただ起こっているだけだ。 実のところ、これが中道なのだ。

この段階では、あるのは全体的で完全な注意だけで、心の状態はぐっとシンプルになっている。瞑想は、たいへんシンプルになっている。

第十二の洞察智（随順智） ― 涅槃（現象の停止）へと向かう。

あなたはこちら側にも、もう一方の側にもいません。あなたは中間にいるけれども、既にこちら側は手放してしまっている。戻ることはできるでしょうか。いいえ、ロープからは手を離してしまったのですから、戻れるはずがありません。

こちら側を手放したということは、あなたはもう精神と物質の現象を観察していない、ということです。あなたは心が完全なる停止へと、即ち精神的現象と物質的現象の終わり、涅槃へと向かっているのを観察しているのです。

第十三の洞察智（種姓智） ― 涅槃（現象の停止）への移行。

あなたは、精神的・物質的プロセスの停止へと着地する。プロセスのこの停止状態のことを「道心」と呼んでおり、その対象が涅槃だ。

これはたいへんな速さで、非常に短い数瞬の連続のうちに起こる。それぞれの心の状態というのは、おそらくは千分の一秒、あるいは百万分の一秒といった、非常に短い時間しか持続しない。それぞれの心の状態は連続的に起こり、その時にはもう後戻りすることはできない。その後には完全な静寂、完全な静止がある。生成するものは存在せず、消滅するものも存在しない。もう観察は存在しない。あなたはもはや観察していないのだ。

観察が可能であるためには、あなたはその外側にいなければいけない。だから瞑想者がこの涅槃の状態にある時には、その人はもう涅槃を観察してはいない。それを観察することはできないのだ。自身の精神的な状態を、観察することすらできないのだ。

第十四の洞察智（道智） ― 涅槃（現象の停止）の経験。道心。

一刹那の間に起こること。

第十五の洞察智（果智） ― 涅槃（現象の停止）の経験。果心。

二刹那あるいは三刹那の間に起こること。

道心の後には、直ちに果心が続きます。この果心（結果の意識）は道心と同じもので、唯一の違いは、それが煩悩の根絶をしないことです。しばらくすると、あなたはその状態から出てきます。

第十六の洞察智（観察智：反省智） ― 涅槃（現象の停止）経験の反省（振り返り）。

果心の後に、観察智と呼ばれるもう一つの洞察智がある。そこであなたは、「何かが起こった！ 一瞬前は、すごく安らかで、生成も生滅もなく、とても静かで、とても明らかで、完全な平安だった」と何が起こったのかを思い返す。

この反省が起こっている時、心は非常に落ち着いて安らかであり、あなたは振り返って涅槃の状態について考える。この観察智は、実のところ一種の思考だ。あなたは考えて、完全な平安とは、精神的と物質的のプロセスの完全な停止であるということを理解する。

手放したその瞬間、心は五蘊のどれも観察できなる。無常も苦も無我も、また我も、観察できなくなる。完全な静謐と停止が、ただ知られるのみだ。こうして瞑想者は、涅槃とは現象の完全な停止であることを理解する。

涅槃とは一つの経験だ。その瞬間には、対象と観察が停止する。その二つのものが停止する。瞑想者には、全てが終焉したように感じられる。

そしてしばらくの後、瞑想へと再び戻る。瞑想へと再び戻った時は、第四の洞察智（生滅智）である生成と消滅から再開することになる。これが、このブレークスルーのもう一つの側面だ。ブレークスルーの後、あなたは生成と消滅を再び、非常にはっきりと観察することができる。

ひとたびブレークスルーを経験すると、その時点で、これ以外の実践が本当の意味での解脱をもたらすことはあり得ないことを理解する。

最後に考えておくこと

人は観念や解釈のみを考えることができるのであって、直接経験を考えることはできません。

自分の心が、まさに「いま・ここ」で落ち着いて、何であれ身体と心で起こっていることに注意を払い続けている時は、安定があり、そしてまた自由があります。完全な注意を払っている時には、思考が存在しないからです。

物語や人、あるいは状況について考えることをしないで、欲深くなることはできません。

つまり欲望は、思考を伴うわけです。怒りについても同じことが言えます。それについて何も考えることなしに、腹を立てることはできません。

覚る瞬間

本気で真面目に森の中など人がいないところで徹底的にヴィパッサナー瞑想をすると、梵天たちが助けてくれる。

精神的なレベルが高くなればなるほど、高いレベルの生命体が助けてくれる。

禅定に入って心の次元が変ったら、「では、こうしなさい」と問題点を直接に心に指示をして教えてくれる。

禅定に入っていないと、梵天とコンタクトをとることができない。

梵天はヒトの心が読めるので、本気でないとダメ。

しかし、この本気かどうかは本人にはわからない。

多くの人は禅定には入れないので梵天の助けは期待しないほうがいい。

ヴィパッサナー瞑想がかなり進むと、

すべてが無常だと分かる

ナーマとルーパを徹底的に知って、心と体の変化の流れを体験して、

自分も含め何もかも徹底的に嫌になる

すべてが無意味に感じる

良いことが一つもなくなる。

瞑想するのも嫌になる。

瞑想を止めるのも嫌になる

このようなどうしようもない感情のようなものが出てくるので、選ぶ道は１つしかない。

これぐらい、精神的に無常を体験して、すべてが無意味に感じることができて初めて、「捨てる」という意志もしくは想いが出てくる。

「全部、捨てる」。

ここで瞑想を止めたらそれで全部が終わる。

もう少し瞑想を続けると、覚りの境地（預流果）が生まれる。