快眠への根本処方

 

自分の心と向き合って、不眠の障害と付き合う4ステップ

 

 

 

1回目 自律神経の働きを復習     思考の限界    

2回目 意識のメカニズム       わかっちゃいるけどやめられない

3回目 潜在意識のメカニズム     心の働き

4回目 潜在意識の書き換え      具体的な方法

 

 

 

 

1回目 自律神経の働き        思考の限界    潜在意識の働き

 

交感神経から副交感神経へ

なかなか寝付けないときに「ねよう、ネムロウ、眠むるぞ」と焦るほど、頭は冴えてしまうことがあります。

覚醒から睡眠に移行するためには自律神経系が交感神経優位から副交感神経優位に切り替わる必要がありますが、「眠らなければ」と考えていると緊張が高まり、交感神経が優位な状態になるからです。

 

 

 

不眠症の主な原因は自律神経の乱れ

不眠症の原因の1つは自律神経の乱れです。

自律神経とは、生命体を維持するための体の調整を自動的に行なってくれている神経のことです。

 

このように、私たちの生命を維持するために体のあらゆる臓器や機能を自動でコントロールしてくれているのが自律神経です。

 

自律神経には活動している時に働く「交感神経」とリラックスしている時に働く「副交感神経」があり、

これらがシーソーのように交互に切り替わることによって、生命体は健康状態を維持しています。

例えば内臓の運動や体温の上昇や発汗は自分の意思で動かすには訓練や技法が必要なので一般的には表層意識では操作することが難しいとされています。

 

 

交感神経と副交感神経の活性化によって、各部位や体の機能の働きも変わってきます。

 

部位

交感神経が働く場合

副交感神経が働く場合

瞳孔

拡大

収縮

涙腺

涙の分泌を抑える

涙を生産する

唾液腺

唾液の量が少なくなる(濃度が上がる)

唾液の量が多くなる(濃度が下がる)

気管支が拡張

気管支が収縮

汗腺

汗の濃度が上がる

汗の濃度が下がる

冠動脈

収縮

拡大

心臓

心拍数が増加

心拍数が減少

血圧

上昇

下降

皮膚

収縮

拡張

副腎皮質

アドレナリン・ノルアドレナリンの分泌

特に無し

白血球

増加

減少

末梢血管

収縮

拡大

胃腸

あまり働かない

活発に働く

消化管

消化液の分泌を抑制する

消化液の分泌を促進する

肝臓

グリコーゲン分解を促進する

胆汁分泌を促進する

立毛筋

収縮(鳥肌が立つ)

緩む

陰茎

血管が収縮する(射精時)

血管が拡大する(勃起時)

子宮

収縮する

緩む

膀胱

排尿を抑制する(尿を貯める)

排尿を促進する(尿を出す)

 

 

 

自律神経が普段の生活で乱れてしまう大きな原因は次の3つです。

 

生活習慣の乱れ  ・・・不摂生な生活  衣食住(暴飲暴食、過度なダイエットなど)

ストレス     ・・・精神的・肉体的・環境のストレス(住環境、仕事環境、家庭環境の大きな変化)

身体的、精神的疾患・・・病気、生理現象

 

特に現代人は「不規則な生活習慣」と「ストレス」に晒されやすく、自律神経の乱れによって不眠症の症状を発症してしまう人が増えています。

 

通常、睡眠と自律神経には密接な関係があり、睡眠を行う際にはリラックスする自律神経である「副交感神経」が働きます。

しかし、この「交換神経」と「副交感神経」の切り替えがうまく行われないことにより、睡眠時に「交換神経」が働いてしまうことがあります。

これが「自律神経の乱れ」と言われる現象です。

 

 

 

睡眠の障害になる交感神経が活性化される原因

 

睡眠時にストレスホルモン(コルチゾール)が分泌されてしまう

睡眠時も体温が高い状態

メラトニンの分泌が不足してしまう

 

 

睡眠時にストレスホルモンが分泌される

人間はストレスを感じると、そのストレスに対抗するために脳の視床下部のストレス中枢というところから「ストレスに対処しなさい」という命令が「副腎」に下されます。

命令を受けた「副腎皮質」は、コルチゾールと呼ばれるホルモンを分泌します。

コルチゾールはストレスホルモンの一種で、血糖上昇させ、抗炎症(刺激が発生した時に免疫系が引き起こす局所的な防御反応を抑制する作用)や、免疫を抑制する作用があり、脳や体がストレスに対処できるように体を調節する働きがあります。

 

 

 

 

 

コルチゾールが分泌されると、交感神経を刺激し、脈拍や血圧を上昇させます。

つまり、ストレスから身を守るために体の運動機能を高め、脳を覚醒状態に変えます。

つまり自立神経が乱れてしまうと、睡眠時に本来あまり分泌されないストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されてしまい、脳と体を覚醒状態へと導いてしまうことがあります。

これが「眠れない」「寝たのに眠い」という不眠症の症状を引き起こします。

 

 

睡眠時も体温が高い状態

人間には朝起きて、日中に活動し、夜に就寝するという一定の生活リズムがあります。

 

この生活リズムと同じように人間の体温にも「朝は低く、日中に高くなり、夜は低くなる」という一定のリズムがあります。

例えば夜行性の動物などは、活動する夜に体温が高くなり、休息をとる朝から日中にかけて低くなります。

 

体温の変化と自立神経は密接に関係しており、交感神経が優位になると体温は上昇し、副交感神経が優位になると体温は下降します。

逆に体温が上昇すると、交感神経が優位になりやすく、体温が下降すると副交感神経が優位になりやすくなります。

自律神経が乱れていると、体温調節機能が衰え、睡眠時に体温がうまく下がり切らずに、ある程度体温が高い状態を維持してしまいます。

そのため交換神経が優位になってしまい、「眠れない」「寝ても眠い」という状況を作りだします。

 

メラトニンの分泌が不足

眠気は、睡眠ホルモンの一種である「メラトニン」が分泌されることで感じることになります。

通常、夕方から夜にかけて多くメラトニンが分泌されることで副交感神経が活発になり、心拍や体温、血圧が低くなり、最終的に睡眠にいたります。そして朝の太陽の光と反応してメラトニンが消え、起床するという仕組みです。

 

メラトニンの分泌は自律神経と密接な関係にあるため、自律神経が乱れてしまうと、このメラトニンがうまく分泌をされずに、うまく副交感神経を優位にすることができません。

 

そのため心拍や体温、血圧が高いままとなってしまい、脳や体が覚醒状態が睡眠時も続いてしまいます。

これが「寝付けない」「寝ても眠い」状態を作り出してしまうのです。

毎日朝起きたら、朝日を浴びる(太陽の光によってメラトニンを消滅させることができるため、起床時間を体内時計に記憶させることができます)

 

 

 

 

思考の限界

ヒトは意思を使って、考察したり、判断したり、実行したりします。

しかし、この意思を直接に使っても実行できないこともあります。

その領域は内臓運動、ホルモン、エンザイム自律神経の調節、感覚、感情、条件反射

したがって、いくら思考しようが、意志を持とうが、自分の意思を自分の身心に反映できない領域ががあります。

 

次回は意識には階層があること、そして各階層には特徴があり、アプローチの仕方が違うことについて説明していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

2回目 意識のメカニズム       わかっちゃいるけどやめられない

 

 

虫をはじめ動物には意識があります。

(植物や微生物については別の場所で考察しています。)

 

その意識とはいろいろと段階があり、その呼び方は地域や時代やアプローチによって変わります。

 

 

 

 

4段階の「意識」

 

意識を大まかに4つの段階に分けてみます。

感覚意識、表層意識、中層意識、深層意識です。

 

段階

内容

別称

感覚意識

6感覚器官からの信号を認識する

感性  感覚

表層意識

信号を意思によって処理する機能

理性  意思

中層意識

条件反射の回路によって働く機能   表層意識の外側にある

智性  潜在意識 情緒

深層意識

思考回路を段階的に取り外すことで感じる意識

神性  超意識

 

 

 

 

4つの理解の層と心身との関係

意識

感覚器官の信号

表層意識

中層(潜在)意識

深層意識

物質と内面性

物質

表層意識、理性

情緒、智性

神性

基準

自我意識

理性

習慣アプリの脱着

宇宙の法則、真理

物質と意識

物質信号にタグ

思考

条件反射の書き換え

条件反射の取り外し

H2Oの性質

大気

インド(ヨガ)

肉体

意思マナス

自性プラクリティ

観照プルシャ

上座部仏教

身体

メンタル体

サンカーラ

ダンマdhamma

キリスト教

神道

心    和魂

頭    奇魂

魂    荒魂

霊     幸魂

善悪

上下、左右、内外

善悪、優劣

体は悪、精神は善

善悪はない

内容

知ってる

考えている

やっている

自然にできている

美学

適者生存

人類愛

融通無碍

独立した全体性

主語

人類

生命体

見えない生命体も含有

 

← 特殊性         普遍性 →

← 心の不安定       心の穏やかさ →

 

 

1つ目や2つ目の意識は知識の量や論理性の明確さと関係があるので、成績や偏差値やIQで数値化できるものです。

対して、3つ目や4つ目は簡単に数値化して計測できないものです。

12の意識をよく使う人は、この意識に執着してアイデンティを形成して、それから先にある34の意識に気づきたがらない傾向があります。

ですから、1と2の意識を使う頻度が他者よりも多いがために、自分の体や家族や周囲の人や自然や地球や宇宙に対してより深層での理解を怠ることもある。

 

 

「わかっちゃいるけどやめられない」のは?

 

この世を、感覚意識、表層意識、中層意識、深層意識という「層」(レベル)でみます。

この表層意識と中層意識の関係性は、感情を抑制するのが表層意識と理解するのではなく、理性などの自分の意思を使用するのが表層意識、感情などの条件反射をコントロールするのが中層(潜在)意識という意味です。

 

ここでの中層意識(情緒)は感情そのものではなく、表層意識では操作できない潜在意識のメカニズムを理解して、それに寄り添う態度を意味します。

ですから情緒というよりも、一般的に使われている無意識の感覚というほうが良いかも知れません。

 

これらは私の言うアプリケーション、上座部仏教でいうサンカーラ、現代語でいうと条件反射や感情や思考の自動反応回路のことです。

 

 

「わかっている」のは物質信号の感覚や理性の層であって、

「やめられない」のは感情や深層意識の層をまだわかっていないためだと仮説します。

 

この「やめられない」とは、あるTPOでは「はじめられない」ということと同義語です。

少なくても「やめる」方法や「はじめる」方法が「わかっていない」という状況です。

 

 

そこで、各自が持つ感情や深層意識にあるアプリを理解して、それに適応した「やめかた」を試行錯誤して作り上げることがちゃんとした「わかる」ということになります。

 

理解には上図のように段階があるので、どの視点に立って話しているのかによって、体感と認識の世界は異なります。

 

 

前述した体と心のアプリ(自動反応回路)は各自によって異なるので、最終的には自分で独自のアプリを見つけてあげて徐々に上書きするしかありません。

この上書き段階の時に極端なカタチである白黒とはっきりさせて理解しようとする未熟な方法を使ってしまうことがあります。

たとえば、なんでもこの世は二つのうちの1つだと考えてしまい、AでなければBである、と条件反射的に判断して具体策を実践してしまうことです。

 

これらの回路を意図的に書き直すまでは、この考え方のパターンは継続します。

また、これは「やめられない」という言い訳を作るための行為です。

たとえば、遺伝子を原因とするように。確かに遺伝子は要因の1つですが、環境やイベントなどの条件が揃わないと遺伝子の性質がこの世でカタチになって現れることはありません。

キュウリができるのは種だけではなく、適度な水と光と土が必要なように。

 

 

ここで、

わたしたちの生きている目的の1つは、各自の感情や深層意識に寄り添い、それらと一緒に歩むこと、だと仮説してみます。

つまり「やめられない」という深層意識のメカニズムを体験しながら知ってみる、という試みです。

 

 

 

 

 

 

 

 

3回目 中層(潜在意識)のメカニズム     心が認識するプロセス

 

私たちの経験する出来事が如何に潜在意識で働き、それが表層意識に影響を与えているのかを考えてみます。

潜在意識の働きは普段の表層意識では気が付かないことなのであまり考慮されていませんが、

潜在意識で行われているプロセスを知ることは自分のマインドと一段と深く付き合う第一歩目となります。

たとえば梅干しを食べなくても見るだけで唾液が出てきたり、ベルが鳴るだけ唾液を出すパブロフの犬の実験のように条件反射の回路はこの潜在意識の下で作成されています。

 

この条件反射の回路は肉体、感覚、感情、思考のレベルで形成され、このエッセイではアプリケーションまたは自動反応回路と呼ぶことにします。

上座部仏教ではサンカーラsankhāra、中国仏教では行蘊と呼ばれているものです。

 

 

次に、このアプリケーションが潜在意識の領域で作成される認識プロセスについて考察してみます。

ヒトはどのようにして情報を認識しているのでしょうか?

 

ステップ1

6感覚器官(眼耳鼻舌触脳)を介した電気信号がマインドで処理されて情報になります。

この時の信号には3種類の「タグ」が自動的に貼り付きます。

近づきたい、遠ざかりたい、どちらもでもないの3種類です。

 

 

ステップ2

タグの付いた信号は共通項によって分別されます。

これが概念と呼ばれるものです。

たとえば、樹になり、多くの種類の赤や緑色や黄色で、甘酸っぱい果実の「りんご」も概念です。

また測定することができない抽象的な正義や自由も概念です。

このように干された洗濯物は上着、シャツ、下着と棚で分別されるように、個々の信号は概念という棚に名付けられます。

 

ステップ3

1のタグ付きの信号と2の概念を部品として、自動反応回路が作成されます。

過去に経験した信号に似たものが入力されると、それに自動的に反応して、決まったアウトプットが出てくる回路です。

 

たとえば、津波の時のサイレンに似ている音がすると、体が硬直して毛穴が開き呼吸が浅くなる、といったようなトラウマです。

 

この自動反応回路のポイントは、体が緊張し、血圧が上がり、呼吸が浅く、心拍数が増加するときに作成されて強化されることです。

逆に、体が弛緩し、血液が下がり、呼吸が深く、心拍数が減少した時に、回路は弱体化します。

 

 

ステップ4

この自動反応回路を使った知覚はパターン認識と呼ばれます。

メリットは過去のパターンという概念を使って認知するので、効率がよく認知スピードが速いことです。

デメリットはパターンとは過去の経験を一般化したものなので、目の前の現実とは違う認識をすることです。

すなわち、自動反応回路によってアウトプットが決められてしまうので、インプットの信号を適切にあるがままに認識できなくなってしまうことです。

 

 

思考をし続けてしまうメカニズム

それは、これまでの過去の体験により、ある思考をしてしまう回路つくってしまったからです。

この回路は緊張している時に作成され、弛緩している時に弱体化されるものです。

たとえばトラウマのように強い回路が一度作らてしまうと、数々の信号がトリガー(きっかけとなる入力信号)となり、この回路が発動して思考という条件反射が連続してしまいます。

この回路のインプットとアウトプットは自分の意思(表層意識)では制御できないので、回路(潜在意識)そのものを弱体化するしか解決法はありません。

 

 

回路の作成と消去(強化と弱体化)

この回路の強化と弱体化はその時の心身の緊張(血圧、呼吸、心拍数)に関係しています。

緊張があれば回路が強化され、弛緩していれば回路は弱体化されます。

 

 

 

 

 

4回目

潜在意識の書き換え      具体的な方法

潜在意識で行なっている自分にとって不都合な自動反応回路を変えるにはいろいろな方法があります。

 

ステップ1のタグは必ずついてしまいますが、そのタグには強弱と9つの種類があるので、不都合なものはできるだけ弱くて、取り外しのしやすい種類のタグに置き換えます。

vedanāと受蘊vedanākkhandha

また対象を固定化したものから流動化したものとして捉えることで、タグを信号に強く結び付けられたものから、TPOによって付け替え可能なタグの種類に変えることができます。

具体的には信号を受け取る時に、その信号は一時的なもので絶対的ではないことを実感して、できるだけ心が穏やかな状態で受信することがタグを付け替える手段になります。

 

ステップ2は概念(言葉)を絶対のものとは思わず、概念とはその時の自分が作り上げている「仮の姿」(限定されたTPOでしか通用しない因果関係)であることを理解することです。

自分の経験と推測を「統合」することで概念は形成されますが、「統合」されたものには固定された実体はなく、その時の自分がまとめあげた流動的なものでしかないので、概念を信じたり依存することなく、ただ効率化と利便性するために「統合」して概念化したものであることを常に理解しておくことです。

saññāと想蘊saññākkhandha

 

ステップ3の自動反応回路は、体の緊張、血圧の増加、脈拍の増加によって作成され、その回路が強化されるものであり、逆に体の弛緩、血圧の低下、脈拍の減少によって、回路の弱体化、そして消滅していくというメカニズムがあります。

したがって、自律神経のメカニズムを利用して、呼吸法などをつかって交感神経を副交感神経に移行させることが自動反応回路の弱体化に有効になります。

sankhāraと行蘊sankhārakkhandha

 

ステップ4の認識は、パターン認識によって導かれたものでしかないことが理解できると、自分の認識さえ絶対とすることができなくなります。それが効率化のために自動反応回路によってアウトプットされたものの可能性があるからです。

そうなると自分や他者の認識に対して即座に善悪のレッテルを貼って判断することが減少していきます。

数多くの要因と条件が相互作用してこの世の出来事が現われているので、単純な区分けは表層的なものでしかなく、中層や深層にはまた他の解釈があることがわかってきます。

viññānaと識蘊viññānakkhandha

 

 

したがって、回路を更新するために重要なことは

1 この世の物理的や心理的な現象は常に変化し続けているものであることを肝に銘じて信号を受信し、

2 心穏やかな状態で信号を受信することで回路を弱体化させる

ことによって、これまでの自動反応回路が意図せずとも上書きされます。

 

とてもシンプルなどではじめは信じられないかもしれませんが、一度自分自身で確かめてみて、この方法が効果的かどうかを実感してもらえれば嬉しいです。

 

 

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