なぜヒトは間違え続けるのか？
間違え続ける楽しさのゴールとは
間違え続けるのがこの人生の喜びである。
多くの人は間違えるのを嫌い、正解を選ぼうとしていて、間違えることをやめている。
それでは深い自己に至ることはない。
そこは間違え続けることでしかたどり着けないところだからだ。
なぜ間違えがそんなに嫌なのだろう？
間違える楽しさを知るためには、私たちが他者の意見を鵜呑みにしている今の自分の姿をまずは知るのがいいんじゃないかな？
目次
過剰一般化 TPO 三段論法 誰もが正しい 中立はない 間違いの発見
認識プロセス 動物はどう他者を理解するのか？ 無意識のシステム ベターの限界
論蔵 道元 認識が現状を把握できない理由
正しさの確定の仕方 科学（原子の証明）の限界 言語の限界 信仰（宗教、美学）の限界
正しさの実情 科学史における原子の証明 ０の階乗は１ ０！＝１
数式の美しさを求める欲求 単純さ、対称性
論理学と縁起説
思考パターンからの離脱 プラトンの観念との闘い 思考という道具に使われてしまっている日常生活
素粒子と場（あるがまま）
視点の違い 次元 並行の直線が交わる理由
コペルニクス 変化し続ける点と固定された点
銀河 銀河団の中心 インフレーション 宇宙の実態は無常
立ち位置 異教徒イエス
人口密度 （山と平野）
まちがいの訂正 ヒトはなぜ間違えを訂正しないのか
間違え続ける楽しさ
運動する意味、動く意味 視点と分母
なぜヒトは間違えるのか？
過剰一般化 TPO 実例 誰もが正しい 中立はない 間違いの発見
ヒトが間違え続ける理由はあまりにも簡潔なので拍子抜けしてしまうかもしれない。
その答は「言葉」や「科学」を使うからである。
それはヒトが観念（言葉、法則、科学）を使う時に、それぞれが通用するのは徹底的に限定されたTPOでしか成り立たないのだが、それらを他のTPOにも適用させてしまうことから生じる。
TPOとはTimeとSpaceとOccasionのことで、これを詳細に吟味してみると、二度と繰り返されることのない「唯一無二の無常」のことである。
この世（宇宙）は常に変化をし続けているので、時間と空間と状況が同一の出来事が2度と繰り返すことはなく、ただ一度きりの出来事であるのに、同じTPOがまた同じように繰り返すと勘違いして、眼の前に起きている出来事を過去に学習したパターンに当てはめて判断することから誤謬は生まれてくる。
なぜ勘違いをするかというと、この世には同じような出来事が常に繰り返されているので、同じようなもの
がまた起きていると判断することで、過去のパターンを適応させたり、同じようなものが起きるであろうと判断して未来を予測するからである。
これを合理性とよび、効率化や利便性を求めるときには核となる思考パターンである。
日常生活では効率化のためにこの合理性が多用されるのだが、これに依存してしまうことで誤謬が生まれるくる。
そしてこれは無意識の世界で行われているので、本人はなかなか気づくことができないのである。
たとえば下記のような3つの実験がある
実験１ 錯覚
AのマスとBのマスのどちらが濃く見えますか？
答えはご想像の通りです。見た目はAですが実際は・・・。
両手で周囲を隠して、AとBだけを比べてみればわかると思います。
ではなぜ、ヒトは頭の中でとらえた感覚（見た目）と実際の目の前の事実とは違ってしまうのでしょうか？
それは脳が常に事実を補正して、大脳皮質にとって理解しやすように変換するからです。
（脳のサイドから）良く言うと分かりやすく、（事実のサイドから）悪く言えば事実を捻じ曲げています。
これも周囲との関係や過去のパターンで認識するようにしているからです。
チェスの市松模様と、光と影の思考パターンをありのままの事実よりも優先させてしまうのです。
脳がなにをしているのかというと、過去の記憶の再利用と、分かった気持ち（レッテル貼り）になってやり過ごして新たな情報の無視と、なんでも条件反射にしてしまうのと、無意識の瞬間的自動修正。
ですから本当のことを言うと、脳は働くことをできるだけ減らそうとする、さぼり好きで偏見好きなんです。
実験２ モンティ･ホール問題
ここに、3つのドアがあります。
どれか1つには、ドアの向こうに豪華賞品があり、それ以外はハズレ（空）です。
どのドアの裏に豪華賞品があるかは、司会者のモンティは知っています。
参加者は、まず、3つのうち、どれか１つを選び、司会者のモンティに伝えます。
モンティは、それを受けて、残りの2つのドアから1つ、空のドアを開けます。
そして、あらためて参加者に、どちらかを選ぶように伝えます。
今、参加者が、ドア①を指定しました。
モンティは、残りのドア② と ドア③ から、ドア②を開けました。
参加者は、ドア① か ドア③ をあらためて選ぶことになります。
どちらが確率的に有利でしょうか？
１．ドアが３つあります
２．その中に 当りが１つ、ハズレが２つ あります
３．あなたは、ドアをひとつ選べます
４．あなたが選んでいないドアを司会者が開けます
５．開けられたドアは 必ず「ハズレ」です
６．あなたは、ドアを選びなおす権利があります
７．選びなおさない権利もあります
問い・・・あなたはドアを選びなおしますか？ 選びなおした方が、勝率が上がると思いますか？
「選びなおさない」派の気持ち
・残った どちらのドアも 確率的には 1/2 なので、直感を信じる
・もし、選びなおして「ハズレ」ると、後悔する
「選び直す」派の気持ち
・選びなおした方が勝率が上がるから
・ドアを開けられた時点で、確率が変動するから
解説の例
豪華賞品のある確率は、各ドアとも1/3 ずつです。
つまり、参加者が選んだ以外のドアは、2/3でした。
その内の、一つが無くなったので、選んだドアが1/3、そうでないほうが2/3です。
直感的に、分かりづらいかもしれません。
その場合には、ドアの数を増やせば、納得がいきます。
ドアが1000個あった場合に、選んだドア以外から、モンティが、998個の空のドアを開けたとします。
残った２つのうち、どっちに豪華賞品がある確率が高いかは、直感的に分かりますよね。
→
有名なモンティ・ホール問題は、自己意識は常に更新され続けないと1.5倍の確率で未来予想が外れてしまう例です。
もし脳が毎瞬間ごとに情報を更新していないのならば、五感感覚と脳を使った認知の方法で、この世を把握ができていないという実例です。
実験３ 植物は酸素を地球に供給していないって本当？
具体例を考えてみよう。
たとえば温暖化を防ぐためにタラを植林するプロジェクトを立ち上げようとする。
春にあの美味しいタラの芽を出す樹は伐採地でもはじめに生えてくるように、荒れ地でも成長が早く植林しても失敗が少ない。
欠点は木肌に棘があるのと、５年から長くても20年で他の優勢な樹木の成長によって枯れてしまうこと。
このタラの樹の酸素の生成量と二酸化炭素の吸収量を５つの時期に測定してみます。
1 昼の酸素生成量と二酸化炭素排出量を測定する
2 夜の酸素生成量と二酸化炭素排出量を測定する
3 1年目のある一日の酸素供給量を測定する
4 20年目のある一日の酸素供給量を測定する
5 枯れてから消滅するまでの酸素供給量を測定する
これらの時期と酸素・二酸化炭素の生成量を関連付けると以下のようになる。
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時期 |
スパン |
O2・CO2量 部分計 |
O2・CO2量 累計 |
結果 |
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１ |
任意の昼 |
瞬間 |
O2≧CO2 |
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光合成の法則 |
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２ |
任意の夜 |
瞬間 |
O2＜CO2 |
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呼吸の法則 |
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３ |
1年目 葉の成長 |
初期の１日 |
O2＞CO2 |
O2＞CO2 |
１年目の実験結果 |
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４ |
20年 葉が出なくなってくる |
後期の１日 |
O2≧CO2 |
O2＞CO2 |
測量可能な実験結果 |
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５ |
枯れた後に消滅 |
全期 |
O2＜CO2 |
O2＝CO2 同じ |
全体性の法則 |
タラの樹は昼間は光合成をするため、二酸化炭素を吸収して酸素を排出しています。
しかし、いつも酸素を排出しているわけではありません。
タラは秋の終わりに紅葉し、すべての葉を落とした後は春まではもう光合成はできず、体内に貯めた栄養分（炭素）で冬を乗り切っていきます。
そして、天気の悪い日や夜間や冬のことを考えてみると、光合成をしているのは案外短い時間でしかありません。
また、いくら昼間や夏には光があるからといって、タラの樹は温度や気圧や風や水分の不足によって光合成を常時しているわけではなく、植物は機械ではないので、いつも光合成して炭素を吸収しているわけではありません。
微生物が機械のように分裂を続けて勢力を拡張しているのではなく、周囲の環境に反応しながら成長するように。
植物に葉緑素があり、光合成の条件が整っているからといって、はたして二酸化炭素を機械的にいつも吸収しているのでしょうか？
たとえば、タラの樹は急激な成長によって幹や枝が折れやすくなったりするので、適切な成長スピードに合わせて光合成の効率を調節することで、しなやかでありながら強い幹や枝ができるのかもしれません。
私たちで言うといくら美味しい食物があるからといって暴飲暴食すると体を壊してしまうように。
話が横道にそれてしまいました、
閑話休題。
植物も生物なので、昼間であろうと夜であろうと、光合成によって取り入れた炭素をエネルギーとして使い、酸素を吸って（結合させて）二酸化炭素を吐いて、呼吸をして生きています。
昼間は光合成ができるので、二酸化炭素よりも酸素の排出量が増えることが多いですが、光合成をしていない時間帯では酸素よりも二酸化炭素の排出量の方が多くなっています。
1年目のタラの樹が順調に育っていれば、葉の数も増え、光合成によって酸素を排出します。たしかに呼吸もしているので、夜間は酸素を吸入して二酸化炭素を排出していますが、1日のトータルで観ると酸素の排出量のほうが二酸化炭素の排出量を上回っています。
光合成で吸収した炭素が体の一部になり、残りのカス？を酸素として体外に吐き出しているのです。
CO2 ⇒C（体内に吸収）＋ O2（体外へ排出）
20年目になるともうタラの樹の寿命なので葉が段々と出なくなり、それに比例して酸素を排出しなくなります。
葉が完全になくなったら、一切の酸素を排出しなくなるので、測定もこれで終わりになります。
そこで科学者の中にはこれまでの結果から、樹木の植林は二酸化炭素の吸収に効果的だと判断する人もいます。
しかし、ここには樹木自身が消滅するまでの測定結果が入っていません。
タラは吸収した炭素は樹木の幹や根や枝となっていますが、終末期の樹木が腐る過程（もしくは伐採、燃焼、菌類発生）では、これまでに空気中の二酸化炭素を体内に固定化することで貯め込んだ炭素は、燃焼や微生物による分解によって大気の酸素と結合して二酸化炭素となり、周囲の大気に還元されます。
友人から、樹木によって寿命は違うので、終末期に至るまでの時間が長い樹木であれば、それまでの光合成を行う時間と量も多くなるので、終末期に酸素を吸収し二酸化炭素を排出しても、結果として酸素供給量のほうが多くなり、酸素を供給していることになるのではないか、という指摘を受けました。
そこで、ここに一本のタラの樹がどれぐらいの酸素を大気に供給したのかを20年の観測をしないでも計測する方法があります。
光合成の化学式で見てみると、
6CO2+12H2O→C6H12O6+6O2+6H2O
となり、この式の右辺を見ると、6の炭素を取り入れる時に、６の酸素が排出されることになります。
すなわち、タラの樹にとっては食物であるC（炭素）を大気中から一つ体内に取り入れるたびに、O（酸素）を一つ排出することになります。
これは、タラの樹の体が大きくなった分だけ、酸素を地球に排出（供給）したことなので、植物の体重の変化を測れば、増加した分だけ酸素を体の外側、すなわち地球の大気に排出（供給）したことになります。
ここでのポイントは植物が酸素を吐き出すためには、そのたびに植物を食べ物（炭素）を自分の一部にしなければならないということです。
酸素を排出するとは、その分だけ体が大きくなってしまうということです。
ですから体の増加分がちょうど酸素を排出した量になるので、増加していなければ、光合成をして炭素を吸収していても、その炭素は生命活動や呼吸として利用されて排出することになるので、同量の酸素と二酸化炭素を排出していることになるので、これでは酸素を地球の大気に供給しているとは言えません。
このように植物の体の増減だけにスポットライトを当てると、トータルにおいて酸素を排出しているのかどうかがわかるのではないでしょうか？
しかし脳の特徴は、違いを見つけて其処にスポットライトを当てることですから、動物にはない植物の光合成を特別視して、その特徴である酸素の供給を過剰一般化しているのかもしれません。
こうなると始めの種から最期の消滅するまでの全体性で観た場合には、吸収した二酸化炭素と排出した二酸化炭素はちょうど同量となるので、植林によって酸素を供給するという説が誤りであることが分かると思います。
植林が悪いと言っているのではなく、林業や山の保全や涵水やタラの芽の収穫のために植林は有効です。
しかし、二酸化炭素の吸収という一面だけならば、植物の一生を通して観てみると、酸素を一つも供給していないので、どの植林も有効ではないということです。
このことを生物学の学生や教授に話をした時によくある反応が、二酸化炭素の固定化という観点で見るとそう見えるかもしれないが、光合成には水が必要で、そのH2Oを水素と酸素に分解するので、ちゃんと酸素は供給しているんだよ、という主張です。
確かに光合成の化学式は以下のようになっていて、光合成とは水を水素と炭素に分解する反応式だと言える。
一般性は CO2＋2H2A→(CH2O)＋2A＋H2O ファン･ニール の光合成の一般式(1929)。
もしくは
6CO2+12H2O→C6H12O6+6O2+6H2O
たしかに光合成のメカニズムとは2H2OからO2と2H2を生成するという言い方もできます。
しかし生物学者が作った光合成の式の右辺を見ると、6O2が生成される時とは、6つのCが固定化されるので、炭素Cとの酸素Oの割合は変わらないので、固定化された炭素の分だけしか酸素を供給することができないという事実に変わりはありません。
そしてこの固定化された炭素の集合体は最終段階では腐敗や燃焼で消滅するので、その時には、一つの炭素は酸素と結合して一つの二酸化炭素を生成してしまうことには変わりはありません。
C6H10O5+6O2→6CO2+5H2O
では、酸素が地球創成期には無かったのに18億年後の6億5000年前から急に増え始めたのはなぜなのか？
それは、藍藻（シアノバクテリア）類の死骸と泥粒などがストロマトライト岩石となって堆積したため、それらが腐敗も燃焼もせずに炭素が地球上に固定化されたからです。
また、大気中の二酸化炭素は、カルシウムなどの陽イオンと結びつき、 石灰岩としても地球に固定化されました。
それから25億年がたち、陸上植物が誕生したのは4億5000年前ですが、当時には酸素の割合はすでに15％弱であったと推定されています。
そして現在では95％あった二酸化炭素が0.032％にまで減少し、地球誕生では0％だった酸素が20.947％まで増加し、二酸化炭素の650倍もある。
地球史では空中の炭素を大地に固定化しているのは植物ではなく微生物であるという歴史だとも言える。
三段論法の限界
上記の３つの実験で見てきたように、私たちの判断と事実が一致しないことがある。
その原因の一つは、日常生活では3段論法を信じることが多いことに起因する。
たとえば
ある生物は大気中の二酸化炭素を固定化させて酸素を供給している。
光合成によって酸素が生成される。
この２つの条件によって、植物は酸素を地球に供給している
という結果が導かれるが、果たしてこの論理的結論は事実に則しているのであろうか？
実験３でみた結果で分かるように、この三段論法を信じるのは誤謬である。
このように、三段論法はいつも正しいわけではない。
たしかに結果が正当性をもつTPOもあるのだが、それは特殊なケースであって多くの場合は上記のように条件と結果は結びつかないのである。
２つの条件は正しい。
しかし結論は間違っている。
なぜなのだろうか？
それは脳のクセは過剰一般化だけではなく、もう一つのクセである過剰具象化(Over-representation)をしてしまうからである。
上記のある生物とは植物ではなくサンゴや藻類やシアノバクテリアなどの微生物のことだが、同じ生物であるからといって植物に具象化してしまった、という過ちに気がついていないからである。
帰納法は、ある特殊のTPOでしか通用しない法則をそのTPO以外でも法則として使用し、
演繹法は、ある特殊のTPOでしか通用しない法則をそのTPO以外でも具体的に使用してしまう。
この2つのことで過剰一般化と過剰具象化という誤謬を次々に生み出すことになった。
今日も大脳皮質と思考と無意識とパターンと習慣と権威と教育と宣伝によって、
「わたし」たちは、今日も元気に間違い続けている。
脳の特徴と限界 間違い続ける脳
上記の３つの実験から脳の特徴をみることができる。
1つ目は脳は思考パターンを使うことで無意識にデータを書き換えている実態、
2つ目は脳は常に更新を続けなければ現状を認識できないメカニズムを持ち、これが認識の特徴であり限界。
3つ目は脳は過剰一般化と過剰具象化をしがちになる傾向（クセ）
があることがわかる。
リンク 詳細のエッセイは
ベターを求めるアプローチの限界
ベターとは比較することで生まれてくる思考パターンである。
ベターを求めるように生命体はプログラミングされている。
もっと早く、もっと安定を、もっと合理的に、もっと強く、もっと上手に、もっと、もっと、と。
より良い選択肢を求め、前に進んでいく。
しかし、ベターには欠点もある。
ベターを目指し、ベターを選択し、ベターの状態になったことで、失うものもある。
まずは前者がなければ、後者はベターになることはできない。
ベターbetterによって切り捨てたもの、すなわちワースworseである。
前者のワースにはワースの良いところがあったのに、そこにはもうスポットライトを当てようとしない。
その前者の状況だからこそ、得ていたものがある。
ワースにも価値がある。
劣悪な環境に対する適応力、環境に対する親和力、忍耐、協調性、努力、調和、工夫、変化、無常、
「足るを知る」心のはたらき。
また、宗教などの精神性の視点から見ると、この「比較」をしている限りは、ヒトは物質界やエネルギー界の領域に閉じ込められていることを意味する。
ここでいう精神性とは仏教でいう「解脱した涅槃の世界」のことで、形を持たない霊性のことを指している。
（しかし日常世界で使う精神性とは、デカルトの定義した物質的ではないもの、すなわちエネルギー体のことを指すのが一般的である。）
そしてエネルギー界とは、ヒトの気持ちなどの「心のはたらき」や物質が形になる前、すなわち「無の空間」でプラスとマイナスの素粒子が生まれては次の瞬間に消えていく世界のことを指している。
この世界の物質とは違う「無色界（エネルギー体）」の視点では、
「空（カタチはないのにそこからすべてが生み出される）」がそのTPOに対応してエネルギーとなり、そのエネルギーが、たとえば朝靄が一滴の水滴になるように物質化するのがこの世である、と「空と心と物質」の関係を解釈する。
このような解釈の下では物質化したものを比べてベターを求めるだけでは、「カタチの檻」に閉じ込められてしまうので、物質をエネルギーに、そのエネルギーを「空」に還元させたり、三者を行き来させたりすることを阻害することになってしまう。
これはベターを求めることを否定しているのではなく、大いにベターを求めながら、同時にベターを求める限界を知ることでベターに囚われずに、ベターを求めるアプローチの外側にある純粋化（空化、清浄化）のアプローチに気づき、実践することの提示である。
いろいろな「わたし」 私には段階がある
これから意識の段階を説明するのに、話が分かりやすいように、表を先ず書いておくことにする。
ヒトの意識の構造は段階的になっていてこれを古今東西では呼び方を変えて解釈してきた。
詳細はリンク先や各章で説明するが、まずは大まかにどのように段階になっているのか見てみる。
インド哲学や現代心理学や仏教哲学ではどのように「わたしたち自身のこと」を定義して、それらはそれぞれがどのように対応しているのであろうか？
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物理学 |
「わたし」の段階 内容 |
仏教 |
瞑想 |
サーンキヤ哲学Sāṅkhya |
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解脱 |
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parātman brāhman |
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涅槃 |
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アートマンātman |
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関与者 |
変化のない実体 観照する主体 |
ほとけ 初期・阿羅漢の覚り Vasumitraの覚り 択滅無為 |
観察者 |
プルシャ puruṣa霊我 |
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エネルギー |
超感性的な根本物質 無明のはじまり |
自性 虚空無為 「空」 般若心経の覚り |
無色界 |
プラクリティprakṛti |
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直観意識 観察者 叡智 観照 消化器系感覚 腸内微生物 |
知る根源状態 全体性把握機能 智慧 |
citta（覚・我・意） 金剛般若経では覚 八千頌般若経では大１c頃の阿羅漢 |
「空」の瞑想 無形象唯識派 パンニャ 般若 |
ブッディ Buddhi覚 mahat 大 |
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分別意識 自我の根源 循環器系 器官感覚 |
感覚器官と心による認識 自我分別機能 mulādhāra
chakraにある |
自我、我執 有形象唯識派 4c頃の阿羅漢 阿頼耶識の種子 |
分別する自分を基準にすることから離脱する瞑想 |
アハンカーラAhaṅkāra |
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共通意識 （深層意識） 理性の限界 |
意識体の共通の意識 陽子と中性子と電子 普遍的正と邪の判断 |
色界 阿頼耶識 論蔵の心と心所 経量部の覚り 思考、意志、疑問 |
他者との共通性を求める瞑想 |
マナスManas |
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自己意識 |
自意識 アイデンティティ同一性 個性（進化するgati）を持つ「ダイナミックな自己」 |
欲界 末那識 |
アイデンティティのある（違いを求める）私は「わたし」ではない |
ジーヴァ jīva 生命我・個我 |
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無意識 |
集合意識 言語の限界 |
即非の論理 想saññā蘊 |
観念の発見 |
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潜在意識 |
ヘーゲル弁証法的感情内対立による進行 |
行sankhāra蘊 |
感情・思考パターンの発見 |
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顕在意識 |
基礎論理 |
五蘊（色・受・想・行・識蘊）の 識viññāna |
思っているわたしは「わたし」ではない |
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感情 感覚 感覚器官 |
感情パターン 感覚パターン 五感覚器官 |
行蘊 自動アプリ 受蘊 快・不快 眼耳鼻舌触 |
泣いている私は 「わたし」ではない |
五行為器官 Karmendriya五感覚器官 Jñānendriya |
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物質 |
対象、客体 |
五唯・五境Pañca Tanmātra 五大 Pañca Mahābhūta 色法 rūpa |
歩いている私は 「わたし」ではない |
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三蔵の１つであるAbhidhamma（論蔵）を学ぶと、釈尊が「自己」と「無自己」の両方の概念を拒絶した理由がわかります。
「生命体」は、瞬間的に常に変化する実体です。 だからといっていつも実体があるわけではありません。しかし、実体がいつもないわけでもないので、「存在しない」とは言えないのです。
インド哲学では、独自のアイデンティティによって決定されて個性を持つ「ダイナミックな自己」から、カタチのないただ観照するだけの自己である真我（霊我）へと導く「道」を説きます。
同じ「わたし」という語句を使っても、その時にいる環境により「わたし」の段階は違います。
「わたし」の領域を大きく4つのタイプに分けると物質、肉体、心、霊のレベルになります。
物質 私の家、金、服
肉体 私の体は疲れている
心 私の感情は悲しい
霊 私は物質でも肉体でも心でもカタチでもなく、ただ見ることしかできないものである。
このように、玉ねぎを剥くようにだんだんと外側の皮から一枚ずつ内側に入って、それを体感することをいくつかの宗教では修行と呼んで毎日実践しています。
リンク サーンキヤ学派の特徴
宗教の覚りについて間違い続ける原因
上記のように自己（「わたし」）には多層の段階があるのだが、それらを混同してしまうと、体（物質）と心（エネルギー）に影響を受けた自己（精神、霊魂）は認識パターンを基盤にして行動するので、つねに間違い続けてしまう。
つまり、「ありのまま」を見ることができずに思考パターンで判断して行動しているからである。
一般人によくある誤謬は、
下位の意識を上位の意識だと勘違いしている、たとえば
潜在意識の感情と思考パターンにコントロールされている。
無意識の一般化された言葉に囚われてしまっている。
無意識である集合意識にまだ気づいていない
アイデンティティという「違いを求める自己」を主体にしている
たとえば日常生活における「無我夢中」の心境とは、ただ最下部の顕在意識から次の潜在意識への移行という始めの第一歩目の変性意識でしかないのにもかかわらず、その体験を上位の「空」の体験だと勘違いすることから生まれる。
また運動や瞑想などをしている時に「手足などの体が周囲の空気とつながっている感覚」とは顕在意識から無意識への移行という第二歩目の変性意識でしかないのにもかかわらず、その体験を「空」の体験だと認識してしまうこともある。
目の前の崖の上にあると思われるゴールに到着するためには、崖を駆け上るのではなく、まずは無我夢中という第一歩を踏み出すことで、感情や思考のパターンに囚われている状態から離脱する体験を積み重ねることから始まる。
この体験は100里の旅のほんの始まりでしかない一里塚でしかないためである。
よくある宗教者の誤謬は
共通意識（マナス）を主体として把えてしまっている
分別する機能（アハンカーラという内的器官）を主体として把えてしまっている
直観（ブッディ）を使ってこの世の包摂関係を体験せずに、分別機能を使うことで二元論として捉えている
真我と心を分別するのではなく、心と物質を分別して、瞑想の時に寝てしまっている
常に変化しているものを実体のある不変なものだと誤謬してしまう。
智慧（ブッディ）を実現しても、そこはまだ自性（プラクリティ）が実現化した世界なので、まだ輪廻の世界に留まることになってしまっている。
意識できていないデータの書き換え
1つ目の実験でわかるように、私たちはなぜ錯覚、錯視、錯聴などの現象を繰り返すのだろうか？
それは、五感覚器官からの信号が脳に伝わってくるのですが、表層意識が認識できる領域の外側にある中層意識や深層意識で、勝手に都合の良いように情報が書き換えられて編集されているからです。
表層の顕在意識には、その奥にある潜在意識や無意識がしている電気信号の処理内容には気が付かないように脳はプログラミングされています。
その理由は、これらの作業に注意をいちいちとむけていると、刺激（信号）に対する反応のスピードは落ちてしまい、効率の良い大まかなに把握することがしずらくなるからだと推察されます。
意識というのは表層の顕在意識は氷山の一角でしかなく、それを支えているのは中層や深層にある意識であり、実はこれらが意識のメインであって、顕在意識はこれらのほんの一部分でしかありません。
もっといえば、生物の殆どの運動は潜在意識と無意識によって司られており、顕在意識が休んでいても無意識だけで生命維持ができています。
たとえば、睡眠時や脳障害による植物状態の患者のように。
そして時には隣りに座っている恋人との会話に夢中になって、よく知っている道ならばそれほど意識せずに車を運転している時のように。
また、寝ている時に蚊に刺されているところを掻いていたり、寒くなったら近くにある毛布を手繰り寄せて纏うことを本人は気が付かずにしています。
このような顕在意識を使わなくても自動的に行動に移している情動、条件反射、反射や走性の運動はたしかに効率の良いシステムですが、同時にこの便利な自動反応回路によるアウトプットが、TPOに適応していなければ、間違い続ける原因にもなっています。
TPOからはずれた行動を本人がコントロールできずに自動反応アプリが勝手に反応して行動してしまっているのですから。
認識の特徴と限界
2つ目は、脳と五感覚器官による認識の特徴とそのデメリットです。
まずはじめの「認識する」ということが、そもそもの問題になります。
認識するためには対象物にスポットライトを当てる必要があります。
ここでいうスポットライトとは「注意を向ける」、「関心を持つ」という行為の比喩のことです。
スポットライトがオンにされると当然ながら明るいところと暗いままのところができます。
この「分ける」というスポットライトをが一番はじめの間違い続ける原因になっています。
もともとは分けることができなかった暗闇とは「つながっている大きな一つのモノ」でした。それを光のスポットの輪で範囲を決めてしまうことを「分ける」といいます。
ライトを当てた方からみると偶然のことかもしれませんが、暗闇側から見れば、無理矢理で強引で痛みの伴う行為でもあるのです。
分けないことで成り立っているものが、分けられてしまうのですから。
分けられないことで機能しているものが、分けられることで機能が変化してしまいました。
全てが溶解しており、時に波のように蠢いていた暗闇が光によって、光と闇の二つに分断され、光が当たっているところでは、なにもが二項対立するのがルールの基盤になる世界に移行します。
一つのケーキを二つに切ると、二切れのケーキは左右・大小・多少・重軽・上下というように比較される対になってしまうように。
これは光側から見れば区分であり、知ることであり、分かり易くなるという、当たり前のことです。しかし、全てが溶解しており、時に波のように蠢いていた暗闇側からみれば、光の区分とは引き裂かれることであり、働きが破綻することであり、固定化されることであり、無理であり、無茶であり、暴力であり、偏見であり、差別であり、一方的であり、ありがた迷惑であり、間違いであるということになります。
また、そもそもスポットライトが当たっていないところはなにも「分かって」いません。
そして、光が当たっていて分かるところにしても、それは各人が目隠しをされて象の足だけを触って太い柱であると思っていたり、象の尻尾だけを触ってムチだと思っていることなのかもしれません。
リンク先 二酸化炭素と温暖化 坐禅のすすめ 群盲評象の譬え（群盲象を評す）
この世には「分けられない」すなわち「分からないこと」があります。
それなのに顕在意識は分けることでしか認識することはできないので、日常生活の「私」は間違え続けるしかありません。
リンク 常識の限界
思考とは窓を閉じること、こうして無常のモノを静止させることで疑わない信仰者になる
表層の顕在意識による「思考」にも限界があります。
それはモンティ・ホール問題であったように「思考」とは、常に融通無碍・臨機応変・自由自在に変化するモノ（環境、現象、心）を一時的にでも固定化させないと考えることが発動できないことに起因します。
思考するメリットは認識できることですが、デメリットは「更新」を随時にわたって継続しつづけなければ目の前の事情を正確に把握することができない、ということです。
そして多くの場合は更新を続けないので、過去に体験した記憶パターンを再利用して、現状を当てずっぽうに推察しているにすぎません。
この「思考」が間違え続けてしまうのは、「閉じる」ことに起因します。
ここでの「閉じる」とは、外界と内界からの信号を遮断することです。
まず常時入ってくる信号をとめて、次に内側でまだ動き続けている信号を一時停止させて固定化することで、ヒトははじめて深く「思考」することができるようになります。
このように「閉じる」ことで無常で流動的なこの世界のありのままの姿を固定化させてしまうことでしか、対象を認識して分析して法則化（一般化、言語化）することができないのです。
つまり、「膜（枠、囲い、境界線）」をつくって「閉じこめる」ことで、その内部に因果関係という法則を見つけることができ、それをあちこちで適用できるパターンとしておぼえて（過剰一般化して）、その法則を未来に適用する（過剰具象化）ことができるようになり、判断のスピードが早くなるというメリットになります。
意識の中層と深層の領域である潜在意識と無意識は常にこのプロセスをやり続けています。
しかし、実際のこの世は常に変化し続けているので、閉じてしまうことで、３つの問題がでてきます。
流動しているものを固定化させてしまっている問題 生命体の維持 病気の治療
この世の変化し続ける世界よりも常に遅れてしまう問題 フィットしない感覚 充実感の欠如
私たちが作ったパターンによって逆に支配されてしまう問題 形式主義に縛られる 保身
これらが間違い続けるという原因になっています。
過剰一般化している毎日
上記にある3つ目の思考実験で浮かび上がってくる問題は私たちは過剰一般化して判断していることでした。
見つけた法則とは、ある特殊のTPOの時にだけにしか通用することはありません。
特殊というのは、大きな範囲では地球上、大気圏の外の電離圏、太陽系、天の川銀河、銀河団、と拡がっていくからです。
たとえば、重力も場所によって変化するように。
しかも根源的な問題点は、この法則は「閉じた」時にだけ通用するものなので、常に変化するこの世には通じないものであるので、具体的な問題が多々起こります。
ある特殊なTPOにおいて働いているパターンをあらゆるTPOでも通用する法則とするのが一般化です。
このように形になってしまった一般化は特色のある新しいTPOの下では、当然対処できないことになります。
例えば、高等教育を受けた人は光合成の法則を習うと、植物が二酸化炭素を吸収して酸素を供給すると思い込み、植林運動を推し進めたりする行動の割合が増加してしまうように。
実情は植物の成長期の太陽が照っているときにはそのようなことが起こりますが、植物の一生というサイクルで観ると二酸化炭素の吸収も酸素の供給もしていないのにかかわらずです。
これも顕在意識や自己意識の特徴をよく表している過剰一般化の事実です。
確かに植物は二酸化炭素を吸収して酸素を供給し、この光合成の法則の基になる葉緑素を持っているのですが、これは太陽と風と湿度と気温の条件が重なっている時のある特定のTPOの時にだけしか起こらない現象です。それなのにこの特殊環境のもとでしか起こらない法則をこの条件の範囲外にでも適応させてしまって判断し、なおかつ行動を実行してしまいます。
一言でいうと表層の顕在意識とは、効率と予測を優先させるために、独断的で、断定的で、大雑把で、粗く、横着で、横柄で、怠惰で、一面的にならざるをえないものです。
特に心や「いのち」の領域では、法則が通用する範囲の外にあるものですから、固い物質でも変化し続けているのですから、心（エネルギー体）や「いのち（霊）」の領域では法則は単なる目安にしかなりません。
なぜ自己意識は過剰一般化をしたがるのでしょうか？
それには２つに理由を考えてみました。
１つは、脳のシナプスのオンとオフの二進法の積み重ねを使うことで「認識」が可能になるのですが、これは差異をつくることで区別ができることを意味しています。
つまり「違い」をつくったり見つけることが認識のベースとなっているからではないでしょうか。
ですから共通点よりも、違いである差異にスポットライトを当ててしまうクセが自己意識にあるのだと仮定してみました。
またもう一つは、区別を早急に安易にするためには、個々の状況や歴史や関係性やポテンシャルや性質や性向やTPOを考慮するのではなく、ただ法則を適応させることの方が効率がよく即時性があって便利だからではないでしょうか？
一般化することで、判断をシンプルに早くすることができ、相手の状況を考慮する機会を減少させることができます。自己意識はサボることが好きなのが特徴なのではないでしょうか。
また、法則を持ち出してこの世を認識しようとする自己意識は、この世の変化に対応する「愛」に欠けた認識方法だとも言えます。
相手の様子をうかがい、相手に委ねて、「待つ」ことはせずに、自己意識の中で作られた法則をもとに判断と実行を行ってしまうからです。
相手のためだといいながら、実はそれは自分自身の自己意識のためであることは少なくありません。
現代の都市生活をしているインテリと呼ばれる人の認識システムは、このように法則を一般化することをベースにしている傾向があります。幼児期から成長期にかけて、認識パターンの再現を何度も繰り返してしまったために、認識パターンが自動反応アプリケーションと化してしまい、これに操られて、認識、判断、行動をするようになってしまったからです。
本人は理知的で、冷静で、知性的で、合理的で、科学的で、理念的だと思っていますが、外から見るとアプリに対して誠実な信仰者のようにも見えます。
ですから、いくら知識（固有名詞や法則）の量はあっても、現状の中身を把握する時には正確性が伴わないことがあまりに多いということをよく自覚し、その上で自分の自己意識（脳での認識）とお付き合いするほうがスムーズにコトが運ぶかと思われます。
もし「正義や理念」がグローバル事業、利便性の追求、植民地政策、ある種の医療機関、ある種の教育、ある種の商売、ある種の平和運動などに内包しているのであれば、一度は吟味してみるのも面白いことでしょう。
植民地政策、ある種の医療機関、ある種の教育、ある種の商売、ある種の平和運動などに内包する「正義や理念」があれば一度は吟味してみるのも面白いことでしょう。
自己意識のメカニズム
潜在意識と呼ばれる意識の中層やある文化に共通する集合（無）意識やすべての生命体に普遍性を持つ意識（mana）の深層に気が付かないようにする生き方を自覚せずに選んでいる人がいます。
どうすれば表層の顕在意識だけで生きていけるのでしょうか？
それは思考と感情のパターンに身を任せて生きていくことです。
「思考」は外部から入ってくる情報・刺激・信号を一時的に遮断しないと発生しないので、ことあるごとに外部との連絡口を閉じます。こうして、情報の流れを一旦静止させて、動いているものを固定化されるので、それらを自分の意識や無意識が好むようにつなぎ合わせて法則化・一般化・言語化・名詞化・数式化することができます。
これが自己意識が持つ武器です。
これによって、未来予測の確定率を大幅に上げることができます。
しかし、これが通用するのは同じようなものの範囲が大きいTPOの中だけの限定された区域内だけなのですが。
またいくら想定されたとしても特殊なTPOが効率が悪いものならば除去されます。
除去しなければ効率が極端に下がってしまい、日常生活に支障をきたすからです。
例えば地面を這っている黒いアリはよく見るとエゾアカヤマアリであることが認識（分析・指し示し）されると、このアリの特徴であるギ酸を10cmも飛ばす能力があるという一般の法則を、目の前の個体にも適用させてしまいがちになります。
自己意識化のメリットは一般化することで特徴を簡潔に把握を一瞬にすることができ、未来予測（確率・統計）も行うことができることです。
しかしデメリットも多く、目の前のモノは特殊でユニークでこの世に一つしかない個体なので一般の法則が通用するとは限らないことです。
例えば目の前のアリがギ酸を飛ばすことができるとしても、それは成長期のときだけかもしれないし、オスだけかもしれないし、昼だけかもしれないし、湿度が高い時だけかもしれません。
それなのに一つの法則を発見したからといって、それをすべての他の個体のすべての状況や時空に適応させてしまうという間違いを自己意識は遂行してしまいがちです。
意識的人間が陥るクセ
私たちが論理性や科学的根拠に関心を向けると、その根拠に間違いがないと、それが正しいと判断するように教育の中で訓練されてきました。
しかし、もしかしたら、この正しさはある特殊のTPOだけに通用する根拠であって、全体を通じた一般的なものではないのかもしれません。
もしかしたら、先に欲しい結果（因果関係）があり、これをサポートする合理的な根拠を見つけることで、無意識の欲求を肯定しているだけかもしれません。
例えば光合成の法則に意識を向けることで、植物が地球の酸素を供給していると言って植林運動を啓蒙してきたデマのように。
もしくはコペルニクス的転回を自分勝手に解釈して、その思考パターンを他者に押し付けてしまっているように。
太陽系の星は地球を軸にしてが廻っているわけではありませんが、太陽を軸として銀河系が回っているわけでもありませんし、天の河銀河系を軸にして銀河星団が動いているわけでもないように。
ある誤謬を訂正したからといって、次にある枠組が正しくなるとは限りません。枠組みを変えると、そこには他の誤謬がまだまだ数多くあるからです。
また、ある枠組みを否定して、抽象度の高い次の領域（パラダイム・枠組み）に移行したとしても、新しい価値観のすべてを正しいものとして、新たな領域の中で一般性を語れるとはかぎりません。
新たな領域には新たな多くの誤謬があるだけではなく、抽象度の高い枠組みだと勘違いして、以前の枠組みのパターンを否定してしまっていることもあるのです。
たとえば理念についてよく語る方々のように。
理念とは「理性を信念にする」という意味で、まさしく脳による認識を価値基準の中心にそえることが正しいと信仰している新興宗教の教徒という喩えも一つの解釈です。
理念は大事なものではありますが、これも群盲評象の喩えのように、各者が自分の認識による体験だけを基準にするということは、表層にある顕在意識が、他の価値基準である潜在意識の感情的パターンの自分や、深層の循環器系器官の自分や、消化器系器官の自分や、腸内にいる微生物の自分の立場よりも優先されていることです。
３番目の実験で考察したように、光合成の法則がいくら正しくても、この法則に沿って植物が一生を通して二酸化炭素をいつも吸収しているわけでも酸素を生成していわけではありません。
植物も他の生命体と同じようにまずは酸素を常に吸い、二酸化炭素を出しつづけるのが一番の基本です。そして光を感知できるという限定された条件がある一定の間だけは光合成をして二酸化炭素を吸収することもある、というのが事実です。
ですから特定の短い一瞬（植物の成長期や晴れた日）だけで考えれば光合成による二酸化炭素の固定化は理にかなっていることでも、長期で考える場合は、二酸化炭素は吸収されなくなっており、全期で考える場合は終末期では二酸化炭素を吸収ぜずにこれまで貯め込んでいた炭素を逆に排出して、プラスマイナスがゼロになります。
このように顕在意識は全体性や計測できないものを除外して、短期で計測できる現象だけで合理性を構築して、それを基準にする機能と性質があります。
まとめ
以上の3つの実験を考慮してわかったことは、私たちの日常生活の認識には限界があるということです。
脳をそれほど信用してはいけないのかな？という提言です。
より正確にいうと、五感覚器官と脳による認識は、参考にする大事なデータではあるが、100％信用したり、依存したりするものではないことが確認できたと思います。
この普段の潜在意識を基準にする生き方は、国家が推奨する生活方針でもあるので、大学の博士課程が象徴するように一般的な教育の内容です。それらは顕在意識によって現象の底流にある法則を見つけだし、それを応用するというアプローチを主流とします。
このような教育は、この世の本質や「いのちの根源」に触れようとするのではなく、顕在意識にとって心地よいようにこの世界を把握したいがための方便を優先させて成り立っています。
数値化できることを求められる学問や理路整然と説明することが求められる世界では他のアプローチは思いつかないので、このようなアプローチを評価（基準に）することになります。
しかし、この世には論理的にはいくら正しくても、実際には顕在意識の判断だけでは予測どおりにはならないことで一杯です。正確にいうとそれらばかりです。
この世は表層と同様に中間意識（前意識・潜在意識・無意識）や深層意識（マナスmanas インド哲学）と呼ばれている意識体すべてに共通する意識の層があるためです。
表層の顕在意識を基準にすると利便性が高まるというメリットはありますが、常に二項対立と差別と諍いと不安定と乱れがそこには表出してしまうデメリットも伴います。
蛇足になりますが、このような表層の意識を基準にしてこの世を理解しようとするタイプの人たちは、無意識の内に押し込められた力の反発（根深いコンプレックス）によって「一元論や平等や平和や自由や安定」を求めてしまう言動をするのではないかと推察できます。
認識プロセス 無意識のシステム 論蔵 道元
ヒトはどのように認識するのか？ 論蔵では？道元は？
認識とはどのようなプロセスなの？
上記の実験の結果になる原因を確認していきます。復習のようになりますが再確認することでこれまでにつくりあげてしまっている自動反応回路の依存度を低減させていきます。
認識とは暗闇の中で懐中電灯を照らすようなもの
まずは、スポットライトが当たったところだけが認識の範囲になる。
するとスポットライトの当たった光のある領域と当たらない暗闇の領域の二つに分かれる。
次に光の当たった所だけを分析して、これまでの経験で作ってきた思考パターンの「籠」にそれらを振り分ける。
これが分けることができる、すなわち「分かった」ということ。これで分別が完了する。
つまりこれが、認識できた、ということになる。
英語のcognition は ラテン語源のco- (= together) gnoscere (= to know)に由来する。
だから理解できたということは、分類できた、ということでしかない。
その本質や機能を体感しなくても、籠に分けさえすれば「知った」ことになり知識とされる。
動物は他者をどう理解するか？
他者を理解する時は、ヒトやサルは他者の動きを自分の脳内でシミュレーションして、それを感知することで、他者の感情や他者の動きを予測している。
しかし、いくら他者の動きを自分の脳内で再現しても、それは各自が過去に学んだ感情や思考のパターンによって他者の感情や思考を推測しているのであって、それで他者を判断しているに過ぎない。
つまり、各自の学んできた感情や思考パターンは違うものなので、自分の学んだパターンを他者も体験しているであろうと過剰一般化してしまうのが、間違いを起こす原因になる。
他者の気持ちを推測することはできるが、各自が築き上げてきた因果関係のパターンは多くの条件によって多岐にわたるので、正確に再現するのは難しい。
また自分の潜在意識や無意識や自己意識や共通意識も十分に理解できていないと思うので、他者のことは分かることはできない、という前提から始めて、相手に寄り添うこで、だんだんと共有することが増えていく喜びがある、と考えるのが事実に近い。
認識の問題点、認識の限界
認識できているということは、意識できているということ。そして自己意識・・・。
意識できたのはいいですが、これまでに「脳の間違い」を見てきたように意識だけでは、その奥にある潜在意識や無意識には気が付かないように脳の構造とプログラムはできています。それらに気がついたら、刺激（信号）に対する反応のスピードは落ちるし、大まかに把握するという効率性も低下してしまうからです。
次にこの意識を思考（自己意識）に変えるにはどのようにしているのか？
まずは外部との連絡口を閉じて、外部から入ってくる情報・刺激・信号を遮断します。
すると意識の中の流れが止まり、固定化されるので、固定化された信号をつなぎ合わせたり削除したりして自己意識がしたいように編集することを経て、法則・一般化・名詞化・数式化することができます。
これが自己意識の持つ武器です。
この作業で未来予測の確定率を大幅に上げることができます。しかし、これが通用するのは同じようなことが再現されるという安定性のあるTPOの中だけの、限定された区域内だけですが。
まとめ
このように認識から意識、そして自己意識の３つの「識」のそれぞれの段階で問題があることがわかりました。
まとめてみると
認識 そもそも分けることに問題ありです。この世には「分けられない」「分からないこと」がありますから。
意識 顕在意識がまだ気が付いていない無意識を含め、意識は常につねに編集されたものです。
自己意識 常に融通無碍・臨機応変に変化するあるがままのモノを固定化させないと発動できないのが思考です。
このように、それぞれの段階での問題点になります。
繰り返しになりますが、
まずはじめの認識のレベルでですが、そもそもスポットライトを当てることに問題があります。スポットライトがオンにされると当然ながら明るいところと暗いままのところができます。この分けることが一番はじめの間違い続ける原因になっています。もともとは分けることができなかった暗闇という「大きな一つのモノ」を光の輪で範囲を決めてしまったからです。ライトを当てた方からみると偶然のことかもしれませんが、分けないことで蠢くことができる暗闇側から見れば、これは無理矢理で強引で痛みの伴う行為なのです。
次は意識のレベルです。リンク先では具体的な例を見ていきますが、意識を３つのレベルに分けることもでき、すると顕在意識は潜在意識と無意識によって支えられており、無意識の働きがなければ意識は成り立たないことがわかります。
リンク 脳は可愛がってあげなくっちゃ
リンク
無意識と自己意識の脳 ダマシオ The
Feeling of What Happens
もっといえば、生物の殆どの運動は無意識によって司られており、顕在意識が休んでいても無意識だけで生命維持をしています。例えば顕在意識を使わなくても自動的に行動に移している情動、条件反射、反射の運動のように。または、睡眠時や脳障害による植物状態の患者のように。そして時には隣りに座っている恋人との会話に夢中になっていても、よく知っている道ならばそれほど意識しなくても車を運転できる時のように。
また他の問題は身近な例では、錯覚、錯視、錯聴などの現象です。五感覚器官からの信号が脳に伝わるのですが、これが、情報が顕在意識が知らないうちに無意識にとって都合の良いように勝手に書き換えられてしまっています。
これも「わたし」が間違え続けている原因です。
最後の自己意識（思考）のレベルが間違え続けてしまうのは、「閉じる」ことに起因します。
外界からの刺激（信号）を遮断しないと自己意識は発生できないので、まずは「閉じる」ことから始めます。
「閉じる」ことで流動的な世界を固定化させることによってしか、それを分析して法則（一般化）することができないのです。
しかし、この世は常に変化し続けているので、閉じてしまうことで、二つの問題がでてきます。
流れているものを固定化させてしまっている問題と、
変化し続けるこの世界よりも自己意識は常に遅れてしまう問題です。
固定化してしまったことで、過剰一般化と過剰具象化が起きてしまいます。
つまりありのままの姿にそのまま対応できず、過去に学んだパターンを使って対応してしまっているということです。
しかも根源的な問題点は、そのパターンの元になる法則は無数にあり、それぞれの法則は「閉じた」時にしか通用しないものであり、その上、無数の法則の相互作用によって現象が起きているので、いくら法則を知っていても自己意識はありのままの姿を観ることができないという事実です。
そして常に変化し続けるこの世には、複数の法則をいくら使っても未来予測が近似値にもならないことが多々起こります。
閉じ込めることができないものとは、法則や一般化にできないので、自己意識のパターンは対処できず、それが意外に一杯あります、これらは法則の通用する範囲外の領域なのですから。
そしてより正確にいうと範囲外がこの世の真の状態である、と言う意外？で当たり前の事実を見つけることになるでしょう。
内容が重複してしまいますが、違う例えを最後にもう一つ使ってみます。
まずは大前提を考えてみます。
この世は常に変化している、休むことなく。
どこまでも区切りがなく、ずっと絶えなく。
量子力学では、「自然の本質は曖昧である。確定しているものなんてない」と古典力学の常識をひっくり返しました。
しかしこの変化し続けるモノとカタチ無きモノを顕在意識ではとらえることができません。
そこで、意識体は、これらの変化をビデオの１コマのように止めることで、はじめて認識できるようになる。
だから、意識はこの世の変化にいつも遅れてしまうし、その認識と判断は常に過去の状況に準じたもので、新たな「今」のものではない。
そこで、ベイズ統計のように常に常にデータの更新を必要とするのが自己意識（判断）の宿命です。
リンク ベイズ統計
そして問題は次の自己意識。
「囲む」という瞬間芸で、外から入ってくる情報（電気信号）を一旦止めて、時空や状況という条件を閉じて結びつけて固定化させて、それを分析して、その中に因果関係という法則を見つけ、それをパターンとしておぼえて（過剰一般化して）、未来に適用する（過剰具象化）。
これが自己意識ができる特徴で、メリットは未来予測の確率が高まるということで、デメリットは条件の変化によって法則の結果が変化することに対処できないことです。
そして、条件の変化が意外に一杯あるということ。
意識の枠に閉じ込めなかったものはどれもが法則外。
そして時空と状況の条件に少しでも変化が出たものも法則外。
だから正確にいうと単一の法則外がこの世の常態であると言うのが事実である。
法則では解決できない場合に脳はどのように反応しているんだろう？
いつでもなんでもかんでも変化し続けるものを意識でとらえ続けるほど、大脳は暇じゃないし、生真面目でもない。
大脳に囚われている「わたし」はある時にある場所であることにしか関心を向けようとしない我儘な性質であり、その時のパターンを無意識は繰り返し使用して、目の前の現実に手を抜いている。
パターンに任せてしまってありのままの姿に誠実であることをやめるのが、大脳に囚われたことで付随する性質である。
大脳が怠けようとするのは悪いことではない。
しかし、できれば潜在意識や無意識に任せるのではなく、本当に大脳を使うのをやめてみるのがいい。
そうして、大脳に依存しないことは、生命体や宇宙にとっては大切なこと。
特に病気の人や、社会的エリートや、理知的な人や、自己をアピールする人や、文章や音楽を多用する人や、精神病の人や、言語・法則に依存している人や都市生活者にとっては。
大脳が過剰に活動しても、法則というパターンでは解決できない場合や答えが見つからない時には、ヒトは思考停止に陥る。
いくら考えてもわからないのではなく、ちゃんと考えていないのに答えをみつけようとするから、ジレンマに陥って、思考することを無意識が選択するのである。
極端な例はヒステリー。
リンク先
エネルギーを運ぶ血液が頭部に集中したので、血流を元の体に戻せという身体の反乱である。
そうすることでジレンマDilemmaとは2つの間で立ち往生することではなく、本来の語源である、di2つのlemma主題、という2つの主題を同時に持つ両義性を意味している。
これは新しい思考法ではなく今東西にあるもので、ギリシャではヌース（直知）と呼ばれ、平安時代には紫式部は「やまとごころ」と呼び、ヨーロッパの中世まではintellectusインテレクトと呼ばれたものです。
智性が理性の中に閉じ込められたと言ってもいいし、成熟期を認めず青年期だけでこの世を書き直したと言ってもいいし、青年が乙女に陥落したと言ってもいいでしょう。
土に還ることを拒否した、いたずらっ子のおふざけです。
このように大脳がパターンで解決できないことでも古来からヒトはちゃんと対処してきていました。
リンク
新たな情報の無視と、過去の記憶の再利用と、分かった気持ち（レッテル貼り）になってやり過ごすのと、条件反射にしてしまうのと、無意識の瞬間的自動修正。
常に遅れてしまうということは、常に更新しないと目の前の現実を把握することができないという事が起きてしまいます。
有名なモンティ・ホール問題は、自己意識は常に更新され続けないと2倍の確率で未来予想が外れてしまう例です。
もし毎瞬間ごとに情報を更新していないのならば、脳でこの世は把握ができないという実例です。
道元の認識論
坐禅の先生である道元は、日常生活の認識の仕方では決して事実をありのままでは見ることができない、と説きます。
そして「正法眼蔵」の第一巻で
私たちはモノが変化すると時間軸を基準にして「薪が灰になる」と考えがちだが、薪が灰になるのは特殊なケースであって、実際には薪が灰になるとは限らないのに、そこに因果関係というパターンを作ってしまうのは誤謬であることを説いています。
薪は灰になるのではなく、特殊な条件が長く続くと灰になることに気づくことが間違え続けるのを止める一つの要因になる。
では薪は何になるのか？そして何が灰になるのか？
薪に十分な酸素と温度と火という条件が揃った瞬間に限って燃えることで炭化する。
化学式 C＋O2→CO2
しかしどれかが一つでも欠ける次の瞬間にはこの燃焼というプロセスは止まり、薪は少し黒く炭化する。
このように特別な条件（十分な酸素と温度と火）の瞬間が続くとはじめて灰になるが、このような状況は日常生活においてそれほど多く目にすることはない。
多くの木製の家具や柱はそのままであり、ボヤがあった家でも焦げている木はみるが灰になるのを稀であるし、森林の木は常時見るがそれが灰になるところはBBQやキャンプファイヤーや焚き火をしたときぐらいのものだろう。木（薪）は特別の状態の瞬間を長くにわたって保ち続けたという特例が灰になるのだ。
同じように、どのようなものが灰になるのかを詳細の具体例で探してみる。
燃えるものがすべて灰になるのではなく、殆どの燃焼物は大気の酸素と結びついて二酸化炭素として大気の一部となる。
灰とは物の燃え尽きた後に残る粉状のもえがらで、成分は主にカリウムやカルシウム、マグネシウムであり、微量のアルミニウム、鉄、亜鉛、ナトリウム、銅などの金属元素（ミネラル）やプラント・オパール由来の珪酸である。
しかし実際には木は木であり、灰は灰であるので、これらは別ものです。
たしかに木の一部は灰になることがあり、多くの物質の一部は灰になることがあります。
だからといって、時間軸を基準にする前と後ろにある２つを結びつけて「薪が灰になる」と考えるのは、実は本人が気が付かないうちに「思考パターン」を作ってしまっていることになります。
そして大きな問題（間違え続ける）のは、この思考パターンを他の事々にもはめ込んで暮らしていることです。
たとえば、薪が灰になると思っているように、生が死になる、と考えてしまうのはこのためです。
ヒトが眼の前の状況をありのままでは見ることができないのは、過去に学習した思考パターンを当て嵌めて理解するクセを付けてしまうことにより起こります。
そこで、心を浄らかにし、シンプルに生きるためには、私たちが日常生活で使っている思考パターンから離脱することを古今東西のマスターたちは説いています。
思考パターンから脱することで、霊を物質から離脱させるノウハウを説く「道」はどれも使っている言葉の意味あいが日常生活での意味や使い方と違ってくるので、初心者に勘違いをよくさせてしまいます。
これは立っている場所、次元、世界観、領域が違うことなので、致し方がないことです。
道元は生と死の関係には時間軸の前後はあっても、この前後ははっきり分かれていて、まったく別ものである、とう見方で生きることが大切だと説きます。
生が死になることもない（不生）し、死が生になることもない（不滅）。
「生と死は独立した別の状態（法位）だ」という見方で生きてみると、これまでと違った境地になりますよ、と説いています。
そうしてこの日常生活とは違う生と死が体感できるようなり、それを基準に生きるようになると、生きることと死ねことが同時にあることを実感して暮らすことになります。
ちょうど、１秒間に500万個の細胞が誕生し、同時に500万個の細胞が消滅していくように。
この実感を続けて生きていると、時間軸に囚われた価値観から離脱して、「いま・ここ」のありのままの姿にまた一歩近づくことになります。
原文 現成公案 第一の巻からの抜粋
たき木，はひ(灰)となる，さらにかへりてたき木となるべきにあらず。
しかあるを，灰はのち，薪はさきと見取すべからず。
しるべし，薪は薪の法位に住して，さきありのちあり。前後ありといへども，前後際断せり。
灰は灰の法位にありて，のちありさきあり。
かのたき木、はひとなりぬるのち，さらに薪とならざるがごとく、人のしぬるのち，さらに生とならず。
しかあるを、生の死になるといはざるは、仏法のさだまれるならひなり。このゆゑに不生といふ。
死の生にならざる、法輪のさだまれる仏転なり。このゆゑに不滅といふ。
生も一時のくらゐなり、死も一時のくらゐなり。
たとへば，冬と春のごとし。冬の春となるとおもはず、春の夏となるといはぬなり。
法位 ：法としてのあり方。 存在のあるがままの姿。 縁起の次元で顕れるすがた
個々の事物現象であると同時に、絶対普遍的な理法の位置、状態。
「是の法は法位に住して世間の相常住なり」法華経方便品
前後際断せり：前（薪の時）は薪だけ、後（灰の時）は灰だけで前後がはっきり分かれている。
前際の過去、後際の未来、中際の現在と合わせて三際と呼ぶ。
法輪： 転輪聖王（古代インドの理想的な王）が持っている全てを破壊する武器。
法輪を転ずることを仏の説法にたとえて転法輪という。
一時： 同時無時のこと。生は生で、その時の全体であり、死は死で、その時の全体である。
生という時や死という時もあるというような相対的な「一時」ではない。
現代語訳
薪は，灰になる。灰からもとの薪に帰ることはない。だからといって、灰が後で薪が先ととらえてはならない。
よく考えれば、薪は，薪という法位にあって先と後がある。前後はあっても，前後ははっきり分かれている。
灰は，灰という法位にあるものである。そして後と先がある。
「薪は灰になった後また薪にもどることはない」ように、人は死んだ後また生とはならないのである。
生は死になると言わないのが仏法の立場である。
死はあくまでも法位であって生ずることはない。
それ故に、不生と言う。
死は生にならない。これも仏法のきまった立場である。死はあくまでも法位であって滅することはない。
それ故に、不滅と言う。
生も死も、一時の法位である。
たとえば、冬・春のようなものである。冬を春になる前とは思はず、春を夏になる前とは言わないのと同じである。
解釈とコメント
前後はあっても，前後ははっきり分かれている。
生が死になることもないし、死が生になることもないということがよく分かる。
よく生から移って死になるということを考えがちである。
しかし、道元のこの考え方から生も死も，一時の法位である。
道元は法位という独特な言葉を用い、異なる状態であることを強調している。
「生と死は独立した別の状態（法位）だ」、と。
一般的には薪は灰になると思って暮らしている。
しかし仏教では生（薪）が死（灰）になるとは捉えない。
生と死は別ものである。
あるTPOでは薪となり、あるTPOでは灰となる。
どちらも同じ「空」から生じた別のカタチである。
同じ「空」から生じたのだからどちらも同じともいえるし、この世ではカタチが違うのだから別ものともいえる。
薪が灰になるのではい。「空」が薪になり、「空」が灰になるのだ。
薪と灰の間で成り立つのは前後の関係性だけだ。
つまり薪が前で灰が後であるので、これが逆に灰が前に薪が後になることはない。
換言すると
「空とつながる薪があり、それが灰になることも条件が揃ろうことであり得るが、
空につながる灰が薪になるような時間軸の前後が反転するような関係は両者の間にはない。」
対して「水と氷」の間では、前後が入れ替わる関係性がある。
ヒトは前後があるものを見て、因果関係を作り上げてしまうことが多い。
しかし薪と灰の間には因果関係はなく、薪は薪であり、灰は灰である。
ある状態の時には薪と呼び、ある状態の時には灰と呼ぶだけである。
炭素構造の違いによって呼び名が違うのである。
「わたし」と「空」とのつながりを感じないで、表層である現象だけにスポットライトを当てていると、ヒトの大脳は、表層にあるもの同士をなんでも因果関係で結びつけるようにプログラミングされている。
このように一般化することで効率がよくなり、利便性が高まるので、意識体は本能としてこの機能を先験的a priori に持っており、毎回実行している。
この事実につねに気づいていなさい、と「道」のマスターたちは説く。
前後の関係があるからといって、それだけで因果関係という思考パターンをつくってしまうことが誤謬の原因である、と道元は説く
薪が灰になるというパターンが特殊な条件のもとに生じた特別な例でしかないので、薪に炎をかざしても完全な灰になることの事例は多くはないのにもかかわらず、このような特殊なパターンを他のTPOにも適用してしまうことでヒトはまた間違い続けてしまうのである。
生と死の関係もこの薪と灰の関係において灰が薪にならないように、死が生になることはない。
生と死は前後の関係はあるが、薪と灰の関係では薪が灰になるという概念パターンを持たないように、生と死に関しても、生が死になるとう概念パターンを仏法（覚りの修行をしている時の指標にしている法則）では持たない。
道元禅師は以下のように説く。
しかあるを、生の死になるといはざるは、仏法のさだまれるならひなり。このゆゑに不生といふ。
死の生にならざる、法輪のさだまれる仏転なり。このゆゑに不滅といふ。
日常会話で使う「生」は死に対するものであり、生が死になるものであるが、マスターたちはこの思考パターンから離脱するために、これを「不生」とよぶ。
一度死んだものは、前と同じ生に戻らないのは、この宇宙の法則であり、死とは「生命活動がない状態」のことであり、「生が滅した状態」として日常では捉えているが、死の本質は「対立する生」が滅することではなく、「生命」を維持するための大事な機能なので、不滅とよぶ。
この生と死には時系列の連続性の因果関係が常時あるのではなく、生に特殊の条件（たとえば酸素や栄養素の欠如や病気による内臓の機能不全など）の瞬間が何十分と持続されるという特殊な事例において死という特例があるに過ぎない。
実際には生と死は同時性の因果関係であり、コインの裏表のように生と死は同時に相互作用によって成り立っている。たとえばヒト科の成人男性の場合は、１秒間に500万個の細胞が死ぬことによって500万個の細胞が生まれてくるように。
それなのに、この生と死には前後関係があるからといってこれをパターンとして概念化して、これを日常生活に適用とすることでヒトは間違い続ける。
「前後の関係で見る」という過去に作成したパターンの概念でこの世の状況を判断するのではなく、「いま・ここ」という、ありのままの常に変化し続けている状況をそのままに見守るという例を「冬と春」についても言及することで、新たな行動の仕方をいかに日常生活に適用するかを具体例を示している。
これは通時性という時間の観念から離脱して、常時変化してものの中で生きるという生き方の変換、
過去や未来という概念パターンから離脱して、「いま・ここ」だけに関心を向ける行動への変換
をすることによる体感する生き方を暮らしに基準を変えることによってはじめて新たな次元で生きることができることを提示している。
これが私に伝えてくれている道元の心の内容である。
これは道元のような「いま・ここ」を実践する仏教者だけが辿り着く「この世の見方」ではない。
エントロピーを数式で表した19cのボルツマンBoltzmannも「前後」という認識パターンでこの世を見るのは「私たちの視覚がぼやけているために個々の変化の区別が認識できない」ことでヒトの観念が「時間の矢」を生み出してしまっている、とエントロピーを通じて「この世の見方」を提示した。
リンク
駆け上がる時間 宇宙の「意」
リンク
では仏教ではヒトはどのように認識していると考えているのでしょうか？
三蔵法師がインドから持ち帰った「論蔵」を紐解いてみます。
ヒトはこの世をどのように体験しているのか？ 論蔵
5つの身体感覚を通して、私たちは心で内と外の世界を経験します。
ヒトは目で見、耳で聞き、鼻で匂い、舌で味わい、体で触れ、その非常に短い瞬間を、マインドが認識します。
たとえば対象を見るとき、眼球から入った信号はニューロンを介して脳に送られます。
そして脳でそれぞれの信号を0.01秒（10ミリ秒）の塊として処理します。
現代科学では、その処理された情報を脳で認識し、この認識により、「わたし（主体）」が生まれる、と考えています。
対して、三蔵（上座部仏教）では脳は信号の処理作用をするだけで、それらをエネルギー体のマインドに送り、そこで感覚として察知する、と説きます。
マインドとは心のことなのですが、日本語で心と書くと、心情や感情や観念や思考や意思や魂や精神などの定義と交錯するので、このエッセイでは、マインド＝心は、上座部仏教で定義しているように「知るはたらき」とします。
仏教では、霊と心と物質の世界を前提にしているので、物質の世界にすべての理由を還元させようとする科学とは違ったアプローチになります。
一般的な現代科学はこの世をマインドと物質に分けて説明するので、はじめから霊の世界を除外しています。
対して、三蔵ではこの世を霊と物質に分けて説明します。そしてマインド（心）のことはエネルギー体として捉えるので、マインド（心）をなんと物質界にマッピングしています。
|
|
霊 |
心（マインド） |
物質 |
|
三蔵 |
霊我、真我、非物質 |
マインド＝心 物質 エネルギー体 hadaya vatthu マインドの扉 citta心 心所 |
五境（感覚信号） 五大（元素） |
|
科学 |
|
マインド＝心 非物質 心と自己 |
粒子、素粒子、波動、 |
では、「他」を認識しているマインドはどのようなシステムになっているのでしょうか？
三蔵では以下のように説明しています。
まずは五感覚器官を介した信号を脳で処理することで情報にして、それをエネルギー体である心（マインド）に送って、そこで一連の17のステップのマインドのはたらきを経て、認識や決定を下す判断や行動などができるようになります。
このプロセスを理解するとヒトはどこで勘違いしてなぜ間違え続けるのかが分ります。
具体的な例をみてみます。
脳の処理
頭部にある物理的なセンサーである目、耳、鼻、舌と神経系を介して触覚が察知した信号は脳に伝えれれます。
視覚について詳細に見てみると、たとえば対象物がサッカーボールであった場合、信号は形の色と動いている方向とスピードは別の信号して入力され、脳内でこれらの情報が統合され、たとえば、こちらに素早く向かってくるスピンがかかっているボールだという情報になります。
これらのプロセスは、脳内の処理「mana 意識 indriya機能」で行われるとされています。
身体の次元では、因果関係kamma vipakaのルールの中で成り立っていますが、動物はヒトに比べてて観念化して未来予測をする能力が洗練されていないので、因果法則をコントロールすることで、未来に起こることを避けたり、希望する方向に事態を導く能力が乏しいのです。
対して、ヒトはこの情報を心に送って、対策を練ることができます。
心（マインド、メンタル界）のはたらき
物質である五感覚器官を使用して外界と体内感覚を体感し、これを処理する過程を見てみましょう。
感覚データは、目、耳、鼻、舌、身体の5つの物理的感覚器官によって収集されます。
その後、それらは中枢神経系を介して脳に10ミリ秒単位のパケット信号として伝達されます。
次のプロセスを「知るはたらき」であるマインドで行われると三蔵はしています。
そして、エネルギーという目には見えないが物質のレベルのマインド（心）が身体をコントロールしているので、身体は「殻」として考えます。
具体的には、
脳では、特定の時間間隔（約10ミリ秒）でデータが処理され、それらは「光線システム」であるkiranaによって電磁波に変換されて、肉体（物質としての身体）であるmana indriyaからエネルギー体（manomaya kaya）の扉であるhadaya vatthu とその周りにある5つのpasāda rupa（cakkhu目、sota耳、jivha舌、gandha鼻、kaya身体）に送ります。
この５つのpasāda（澄明な） rupa（物質、このケースはエネルギー体）は色、音、味、香、感触の物質的データを電磁波に変換されたものです。
この電磁波がマインドの扉を振動させることで、一連の17ステップのマインドのはたらきが実行されるとしています。
どちらも微細なエネルギー体なので目には見えませんが、場所は肉体の心臓に重なった所に位置されているとされています。
|
三蔵 パーリ語 |
日本語訳 |
内容の説明 |
機能 |
粒子と波動 |
|
ārammaṇa |
対象 |
対象物 |
実体としての仮設 |
物質 |
|
ṣaḍ viṣaya梵 kāmacchandaと dhammārammaṇa |
六境 六外処 五境 法所縁 |
色声香味触法 色声香味触 法 |
感覚信号 意からの信号 |
物質 |
|
mana indriya |
マインドの機能 意の知覚器官 |
知るという機能 脳内の松果体という説 |
データ処理して ギャップを認識 |
物質 |
|
kirana |
作業場 |
光線システム |
電磁波に変換 |
物質→波動 |
|
pasāda |
澄浄な信号 |
電磁波受信 |
受信と振動 |
エネルギー体 |
|
hadaya vatthu |
心の扉 |
マインドの入り口 |
17回の振動 |
エネルギー体 |
|
17 citta |
17段階の心路 |
17の心のステップ |
知るはたらき |
エネルギー体 |
心のはたらきの内容
マインドで起きていることは、映画を見ているときに起こることに似ています。
映画を見ているときにスクリーンに映る動きは自然に見えますが、実際には、プロジェクターが静的なフィルムを毎秒24フレームの速度でスクリーンに投影しています。
ヒトは40ミリ秒ごとに静止画像（１フレーム）を見ると、そららは連続している同じものと認識することになります。
同様に、私たちのマインドは、聞いて、嗅いで、味わって、触れている短い情報がを連続している同じものとして知覚します。
しかし、実際には、各感覚のイベントはほんの一瞬だけです。
脳から送信される10ミリ秒の一塊の各「情報パケット」を、一連である17の心（マインド）cittaのセットである心路citta vithiで処理することで、認識することができるようになります。
この17ステップのうちの7つだけが実際の認識（視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚）に関わり、その７つのうちの1つから３つだけが実際の認識そのものであり、それに費やされる時間は10億分の1秒というほんの瞬間です。
科学の時間と三蔵の時間
MITの発見では、身体が感覚データを取得するのに必要な最小時間は約13ミリ秒であるとされています。
Detecting
meaning in RSVP at 13 ms per picture
これが脳による処理速度です。
次に三蔵では、
物質（mana indriya）の情報パケットは電磁波に変換され、エネルギー体であるマインドの扉（hadaya vatthu）に直接送信される、としています。
そしてマインドは、送信された情報を10−9 秒（10億分の1秒）単位であるnanosecondで処理します。
脳の処理は10ミリ秒のスケールなので、マインドの速度より1000倍遅いことになります。
これは、「感知速度」は、比較すると遅い脳の処理速度によって制限されており、マインドは常時「脳からのデータを待っている」状態になっていることを意味します。
以上の説明は三蔵に記述されたものを現代語訳したものですが、三蔵では瞬間を刹那として表し、具体的な秒数は記述されていないので、現代科学では各情報パケットの単位が約10ミリ秒であると推定されているので、それを基準にして、具体的な数字に置き換えています。
現代科学では、認識のすべては脳内で行なわれていると考えるのが主流派であり、脳＝マインドを前提にしているのに対して、三蔵の立場は、マインドがエネルギー体であり、その機能や構造やシステムを科学は認識できていないと考えています。
たとえば、眼球からのデータを脳にノンストップで送信し続けていると想定すると、この感覚データを取得する時間は約10ミリ秒とされるので、1秒に約100個の「データパケット」が脳で処理されていることになります。
１秒＝1000ミリ秒（ms） 映画の１フレームは約40ミリ秒（1000／24）
認識器官は心（nāma）と物質（rūpa）のセットであるnāma-rūpa
わたしの耳には鼓膜などの物質と、聞く働き（機能）の両方がセットとしてある。
この２つを分けないで混同していることが真理がわからないで間違え続ける原因の１つである。
これらを混同している間は、認識を脳内で起こる固定化された物質的反応だと誤解することになる。
エネルギー体としての心が科学的には発見できないので、nāma（心）のはたらきが理解できず、科学は五感覚器官の分析だけで終わり、nāma（心）のはたらきまで解明することができていない。
nāmaとは五蘊から物質rūpaを除いた４蘊の心（マインド、メンタリティ）のことで、具体的には受vedanā想saññā行saṅkhāra識viññānaの４つのはたらきを指す。仏教用語では「名」と記述されてきたものである。
私見では、色蘊rūpakhandaは色rūpa（物質）とは違い、心（マインド）が物質を捉えたイメージのことなので、nāmaの中に含まれる、と解釈している。
|
|
物質と心 |
目の視覚 |
舌と味覚 |
耳と聴覚 |
処理 |
速度 |
対象 |
|
門による路 pancadvara citta vithi |
物質 |
眼球 |
味蕾 |
鼓膜 |
脳 |
10−6 秒 |
物理的信号の パケット |
|
識による路 viññāna citta vithi |
心 エネルギー |
見る |
味あう |
聞く |
心 |
10−9 秒 |
電磁波 |
各知覚イベントは、一連（17ステップの心のはたらき）を繰り返すことで、「世界を体験」をしています。
同時にイベント体験はできませんが、すべての感覚入力が同時であると体感するには十分な速さです。
こうして、私たちは物事を見るだけでなく、同時に聞いたり、匂いを嗅いだり、味わったり、考えたりしている、と思って、勘違いした状態を続けています。
マインド（心）は１つしかないので同時に処理しているのではない
ヒトが誰かと会話しているとき、相手を見ることと、聞くこと、言うことを「同時に」にしています。しかし、実際は同時に見て聞いているように感じているだけです。
「認知する」ことができる心は１つしかないため、瞬間的に１つのことを処理しては、次の瞬間に別のことを処理して、認知対象を瞬間ごとに切り替えています。
リモート通信では視覚と音声はパケットとなって発信と受信により処理されますが、マインドは各パケットを10ミリ秒未満でcitta vithiを使って処理しています。
これらの「情報パケット」がマインドに絶えず入ってくるので、ヒトはそのような感覚を絶えず経験していると感じています。
しかしマインドが一度に処理できる「データパケット」は1つだけなので、前後のパケットとの間には少なくとも10 msの遅延（時差）があるので、同時ということはありえない、というのが三蔵の立場です。
しかし、この時差であれば、すべての感覚入力を継続的に経験しているとヒトが知覚するのには十分な速さです。
リンク先
ヒトは物質をどのように認識しているのか 論蔵における認識のプロセス
正しさを確定する「あやふやさ」 正しさの基準
３つの手段 知覚、推論（論理学）、言葉（信仰、宗教、美学）
科学の実情と限界 （原子の証明）
縁起説
認識手段の３つ
固定された正しさがこの世にあると思っていることがある。
この世は常に動き、変化し続けているので、正しさもそれに合わせて変化し続けるので、常に一定した正しさなどはこの世にない。
たとえば手にした石が下に落ちない宇宙空間や、1＋１が10になる2進数があるように。
正しさを認識する３種の手段は、知覚、推論、信頼すべき言葉である、と言われると首をかしげることになる。
「知覚と推論（∋論理的必然性）と信頼すべき言葉（∋可能性・無・直感・伝承）」によって存在が確定される」
とインド哲学や仏教はヒトが事実を確定する時の根拠を冷静に分析する。
つまりこの程度のことで、私たちは存在を確定している、というのである。
本当なのだろうか？
これは現代科学でも同じことであり、なんとも頼りないことで事実を確定しているのである。
たとえば原子の証明 原子が存在するとなぜいえるのか？
１ 気体の化学反応
質量や気体の体積を正確に測る方法が普及し、物質の化学反応の前後で比例関係が見つかるにつれて、原子があると信じる科学者がふえていった。
例えば、水素+酸素→水蒸気 2+1→1
２ 気体の圧力と体積
気体に圧力をかけると体積が小さくなる反比例の関係
原子が高速で運動しているので、容器の壁に衝突する力と重り（圧力）が釣り合う ベルヌーイ
原子にはたがいに反発力が働いているので、間隔が縮まると力が増える ニュートン
例えば、ピストン容器に入れた気体に数種類の重りを乗せて、重りと体積の関係を調べる。
反論は「どちらの説も、気体に原子の数がいくつでも成り立つ。 便利な考え方にすぎない。」
３ 微粒子のブラウン運動
樹脂の微粒子を遠心分離機で粒子の大きさを揃え、さまざまな液体中で、微粒子の移動距離を何百回もはかり、その測定値から分子の数（アボガドロ数）を導いた。結果は６～７×1023の範囲であった。
一定の範囲におさまっているということは、原子の存在するという仮説が正しいことを強く示唆している。
この結果をみて、大多数の科学者が、分子、そして分子を構成する原子の存在が科学的に示されたと認められ、この業績によりペランは1926年にノーベル物理学賞を受賞している。
科学では何かを証明することはできない
科学ができるのは、あることが正しくないと反証することだけである。
科学の最も基本的で中心となる２つのことは、第一に実験をすること、第二に実験結果から数学的なモデルをつくること。
ではなぜ自然が隠している数学的なパターンや規則性、形状などを利用して、未来を予測したり技術を発展させたりできるのか？
「世界は数学という言葉で書かれた壮大な書物である」ガリレオ
海王星、電波、ヒッグス粒子の発見はすべて数学を道具として発見された。
自然界は数学的な性質をもっているというよりも、数学的な性質しか持ち合わせていない。
たとえば宇宙空間では互いに直交することができる線の数が３だというのは数学的な性質である。
アインシュタインの宇宙の曲率（空間の曲がり具合）も数学的性質である。
だがカタチになる時にはゆらぎの偶然性（これは必然性と呼ぶべきなのか？）を受け入れるしかない。
数学的法則で予測はできるが、眼の前のカタチは常に変化する。
変化し続けるカタチの１つを予測することで、実験結果を得ることができるが、それも条件が変化し続ける状況では、固定的なものではない。
原理には根拠がない たんなる仮定のこと これ以上は問わないという約束が基本原理
そもそも、物理の基本原理は仮定です。
たとえば特殊相対性理論は「光速度不変の原理」と「特殊相対性原理」が成り立つとしたときに、そこからどんな結果が導かれるのか示す理論です。
これは、どんな理論でも同じことです。基本原理から得られる結果が実験値と合うかどうかを確認していき、実験値と整合する結果が積み重ねられることで、少しずつ「確からしさ」が高まっていく、これが物理理論です。
論理的に言うと、基本原理には証明も根拠も必要ありません。
「何故」を繰り返していっても終りはなくきりはありません。
どこかで「これ以上、何故を問わないことにしよう」と決める、それが基本原理の定義だからです。
ですから原理には根拠がないのは、当たり前なのです。
もちろん「何故この基本原理が成り立つのか」と考えていくことは大事なことです。
ただし、根拠がないことを間違っている理由にすることは、できません。
光速度不変の原理は立証されていない、だからといってその原理は無意味とはいえない。
このような光速度不変の原理に限らず、どんな原理でも仮定であるので完全に立証することは不可能です。
その原理を支持する実験結果が100あろうが、立証したことにはなりません。
このような証明を求めることを「悪魔の証明」と呼びます。
絶対に証明できないことを、証明しろという要求は悪魔のようだからです。
ましてや、その証明ができないから間違いという理屈は成り立ちません。
証明できないものは間違えだとすると、何ひとつ正しい理論というものはなくなってしまいます。
逆に、間違っていることを示すのは簡単です。
反証がひとつあればいいのです。
正しいことは、実験結果を100個積み重ねても証明できませんが、間違っていることを証明するのは、結果がひとつあれば終わります。
光速度不変の原理が間違いだと主張するのであれば、他の科学者が追試しても再現性がある反証を示せばよいだけです。
原理の確からしさをどう高めるのか？
原理がなりたっていることを裏付ける実験は必要です。
光速度不変の原理で言えば、実際に光速度を測定して確認することです。
どうやって測定すれば精度よく結果が得られるか、実験物理学者の腕の見せ所です。
しかし、それだけでは限界があります。
光速度が一定かどうかという実験は、現在のところ地球上（せいぜい衛星軌道）で行うしかありません。全ての慣性系のうちのごくごく狭い部分だけです。
ですから、原理そのものだけではなく、原理から得られる帰結を実験で確かめることも必要です。
原理そのものでは実験できる範囲が限られていますが、その原理から導かれる結果を間接的に実験で確かめるのです。
他の理論とは結果が異なることが予想され、精密な実験ができる方法はないか、それを考えだす、これも物理学者の大事な仕事です。
そして、そのような結果を積み重ねていくことで「この理論は確からしい」と認められていきます。
何を基本原理に置くべきか？
特殊相対性理論では、「特殊相対性原理」と「光速度不変の原理」のふたつを基本原理としています。
実は、他の原理を基本原理にして、特殊相対性理論と等価な理論を作ることもできます。
等価な理論というのは、どんな計算をしても特殊相対性理論と同じ結果が得られる理論のことです。
等価な理論では、結果が同じなので「どちらが正しい」などと議論する意味はありません。
それは「科学」より「哲学」の問題です。
「光速度不変の原理が基本原理だとは認めない」という哲学なら、違う原理を基本原理にするだけです。
基本原理として他の原理を採用すると「光速度の不変性」は、その原理からの帰結となります。
ですから、その場合は「こういう理由で光の速度が不変になる」という説明ができます。
そして「何故」を繰り返していくと設定した基本原理に到達します。
そして、それ以上は「何故」を問えないという構造です。
理由を問わない基本原理に何を置くか、ただそれだけのことです。
物理理論は、できるだけ単純で、できるだけ少ない原理から理論を構築するのが望ましいとされます。
特殊相対性理論は、単純なふたつの原理から出発しており、その要件を満たした理論であることは間違いありません。
これより単純な原理で、等価な理論を創るのはおそらく無理でしょう。
特殊相対性理論と等価な理論
アインシュタインが特殊相対性理論を発表しなくても、近い時期に特殊相対性理論と等価な理論が完成したことは間違いありません。
たとえばローレンツやポアンカレの研究は、ほぼ特殊相対性理論と同じ結論に至っていました。
正確にいうと、特殊相対性理論の基本的な数学的形式であるローレンツ変換はすでに導かれていました。
この導かれる結果は特殊相対性理論と変わりません。
特殊相対性理論から導かれる結果は、当時の科学者たちにとってすでにそれほど奇妙なものではなかったのです。
特殊相対性理論が衝撃を与えたとすれば、当時の理論とは違った視点で理論を構築したことです。
これほど、分かりやすく単純な原理からローレンツ変換が導かれたからです。
もし特殊相対性理論を説明するとき、理解しにくい基本原理にしていれば、社会から攻撃されることも、広く理解されることもなかったのでしょう。
知覚できないものはどのように確定しているのだろう？
知覚できないもの
遠すぎる 観測の外側にあるもの
近すぎる 眼膏 眼につける軟膏
感覚器官の損傷や特殊な化学変化 聾唖者 色盲
思考器官の不安定 心が浮わつき散漫な状態 心が鈍り怠惰な状態
微細 大気中の水分
遮断 壁に遮られている状態
圧倒性 太陽輝く昼間の惑星や星
混淆 鳩の群中にいる鳩の特定
論理と言葉による確定
知覚を越えたものの存在は、推論によって確定される。
推論は標印（シンボル）と標印を有するものを前提とする。
推論（∋論理的要請）
物理学の礎はガリレオだという人がいるのも、ガリレオは自然界の奥にある法則を観察事実、実験事実を拠り所にして追求して数学的に表現した、ことによる。
知覚にも推論によっても捉えられないものは、信頼すべき言葉によって捉えられる。
信頼すべき言葉（∋可能性・無・直感・伝承）
たとえばインドでは、信頼すべきものは梵天などの教師、信頼すべき言葉とは天啓聖典、すなわちヴェーダ聖典のこと。
具体的には「インドラは神々の帝王である」「天界には妖精アプサラスたちがいる」
といったものは聖典や伝承されたものや、個の直観に依拠している。
唯物論者は知覚のみ、
仏教徒は知覚と推論（論理的推定）、
インド哲学のニヤーヤ学派は知覚と推論と類推と言葉、
シャンカラ以降のヴェーダーンタ学派は知覚と推論と類推と言葉と論理的要請と不知（無の確認手段）
によって正しさを確定する。
リンク先 ニヤーヤ学派 梵: Naiyāyika
推論が起こしやすい間違いは過剰一般化
時空を伴う因果 雲の大きさをみて降雨の量を推定する 雲になっていない大気を計算に入れていない
繋がっている残部 海の一部の塩分を図り、どの場所も同じ塩分だと推論する。
共通性（共時性？）A点にあったものがB点にあるのを見ると、そこに移動した運動が有ると推測すること
原子の周りを回る電子の軌道を推論してしまう
ここでフキノトウが出てきたので、あそこでも出てくるだろうと推測する
デモクリトス原子論の苦しさ 粒子にこだわってしまう人たち
原子の定義が、手のような鉤のついた単体アトムだが、仏教論理学から見れば、鉤という部分がある以上、それは分割できない粒子ではない。
分割できないとは特殊性しかないということであるので、鉤は共通項であるので、分割できないという定義と矛盾する。
そこでインド哲学では素粒子を含めて分割できない粒子を定義するのは論理的に不可能であるとし、粒子はカタチの微細なエネルギー体によって構成されると考える。
対して、ギリシャから西欧思想においては、「単体の物質がある」という信念が、電子と原子核、さらには原子核を構成する中性子や陽子、素粒子とあくまでも粒子にこだわるデモクリトスの子孫たちの思考パターンである。
これらがクォークや超ひも理論という物質まで理論上で「発見」するという、どうしても世界を粒子で構成させたいという情熱から来るものである。
リンク デモクリトスの深遠さと限界
粒子にこだわるのはどうしてであろう？そしてこの思考法はどのような問題を起こすのだろうか？
このこだわりは、この世は確かな実体によって構成されている基盤である、と信じこむために必要だからである。
確かな実体を基盤にして、社会のルールを構築して、特に近代社会以降は他者を踏みにじる行為によって利権を得てきたので、確かな実体（粒子と私）である対象と主体が確かなものである、という必要性にかられて、それに囚われざるを得ないのである。
またこれはギリシャや西欧だけの特質ではなく、古今東西のどの支配階層たちが望んだこだわりである。
確かな実体を持つと信じ込む人たちが増えれば、それに応じた管理方法があり、それが彼らの体制を維持することにつながるからである。具体例は現在の私たちの政治・経済・道徳・法律・教育システムである。
実体があるという信仰をもつためには、確かな現象とそれを見る確固たる「私（jīva個我意識）」を必要とする。
五感覚器官と大脳による認識とは、「私」が「対象」を知覚することであり、このときにはじめて対象は確かな実体を持つと同時に、主体も確固たるものとして、知覚されるのである。
実際には主体も対象も流動し変化し続けているので、確固たる実体さえもないのであるが、認識している瞬間だけは、主体は現象が実体があるように知覚し、現象は主体に実体があるように感じさせるのである。
ちょうど量子力学で、光を波動ではなく粒子として捉えるには観察者が必要であるように、観察するという主体があることで、現象を粒子化して捉えることになり、主体があやふやになれば現象は波動化して捉えることになる。
量子力学で「時間とエネルギー」そして「位置と運動量」の関係では、期間が瞬間に近づけば近づくほどエネルギーとしての波動ではなくカタチを持つ粒子になり、長い期間で見てみると粒子ではなく波動として存在する。
すなわちこの世の「無の空間」を「何もない無」をイメージしているのは各自の自己意識による想像でしかなく、実際には、絶えず素粒子が生成しては消滅している「ゆらぎの場」であると量子力学は説明する。
このように「一なるもの」を主体と対象の２つに分離することで、はじめて世界は実体があるかのように知覚されるのである。
この「私」は「他」を分別する主体になることで存在できるので、常に「他」を分別し続けなければ、「私」は実体であることを感じることができなくなってしまう。
そこで常時認識し続けることで、「私」は実体を持つように感じるのである。
ではこの五感覚器官と大脳による認識にはどのような問題点があるのであろうか？
「私（jīva個我意識）」は各自のこれまでの認識体験によって成り立つものなので（上座部仏教によれば前世からのgatiという業kammaも含めて）、各自によって基礎認識が違うことから、この個我意識を基準にすると、他者の基準と常に相容れないものとなる。
ときには2者の間で整合を取ることができず、時にはぶつかり競うことになってしまう。
どちらにとっても自分が体験した本当の体験とそこから導き出された判断なので、相手の経緯を体験することができていない場合は、自分が正しく相手が間違っていると判断をしがちになってしまう。
また「私」を中心軸にすることとは、過去に学習したパターンを現象に対応させるということなので、パターン化する主体とパターン化された客体という関係性でこの世を体験することになる。
換言すればパターン化する客体によって、パターン化された主体ということでもある。
この客体とは一般化されたパターンなので、あるがままの姿ではなく、自己意識があることによって存在することができるものなので、主体なしでは実在するものではなく、各自の心のなかでしか存在しない「観念」である。
この大脳皮質によって作成された「観念」は、正と反、つまり肯定と否定を土台にして構成されたものなので、このように「私」を主体にすれば、（ヘーゲルが看破したように）潜在的レベルでは常に比較と競合が起こることになる。
これが大脳皮質の機能である「分別」を中心軸においてしまった、物質を求めざるを得ない「近代西洋的な科学」の限界である。
対して、インド哲学では、物質を粒子の統合体として見るのではなく、あくまでもエネルギーに満たされた全体の中に凝集である、として把える。
これが後に仏教では「空」の考え方になり、中国では道教の「玄」として表されることになる。
分別することによる誤謬 自己意識の時代
意識の世界では、一つのものが左右・上下・内外・大小・白黒と二分される。
自己意識の世界はこの分別を法則化する。抽象化や形而上化とも呼ばれる。
たとえば、善いものとは？正しさとは？良いこととは？
この世は変化し続け、その中で正しさもTPOで常に変わるものである。
しかし定義された「正しさ」はそれらを変わらないものとして固定化しようとする。
それが定義の限界である。
するともうこれは自分にとって正しさであっても他者から見れば暴力である。
いきなり散文 意識のからくり
意識ができることとは、ただ2つに分かれてしまったものに名前をつけただけなの。
二つは兄弟なの、姉妹なの。名前は単なるレッテルなの、シールなの。
一つのものを白と黒に分けても、それはただ名前をつけただけなんだけど、意識生命体はこれを利用する方法を生み出したの、学習と呼ばれるもの。
そしてついにこれを使って、判断して行動に移す方法まで作ってしまったの。
これがすぐに行動というアウトプットを出るのが条件反射という回路（アプリケーション）。
受験勉強に必要な手法で、意識のインプットをアウトプットの行動と無意識のうちに一直線でつなげてしまうショートカットなの。
いい所は考える必要がなくとても早い、
不便な所はTPOにちゃんと適応していないので大雑把で不正確で、かつオートマチックなので無意識のうちに作動してしまう。
だから条件反射で因果を結ぶと、考える必要がなくなるのでとても便利な方法になるわけ。
そして、次に新しい時代が始まった。自己意識の時代。
白と黒の世界では良かったんだけど、これを自己意識の世界ではなんでも形あるものを「一般化」しちゃったの、一般化とは名詞でくくってしまうことであったり、法則を作ることだったり、抽象化することで、目の前の本体を離れて、あれはこのようなもんだ、なんていう実体のない話に変えちゃったわけ。
ここだけの唯一のりんごが一般名詞のリンゴ（紅玉、ふじ、日本一、デリシャス、などなど）になるという話。
また自己意識の特徴は、外からの情報を遮断して、取り込んだ世界の蓋を閉じて、常に変化していたものを固定化させて、こうしてはじめて分析することできるので、静止した要素で法則（因果関係）を見つけ出すこと。
自己意識のいいところは、作り上げた法則を基準にして未来予測が出来るようになって効率が上がり便利になること。
だめなところはこの世は常に変化しているので、法則は統計だったり近似値だったり、まるっきり外れることもあること。
その時にはもうどうしようもなく、取り返しの付かないことになることもある。
だから自己意識を生きる標準にセットアップしている人は、いつも想定内で生きようとして、想定外を極端に嫌がるの
良いことをするというのは、もう一つの兄弟であった悪いことを切り捨てることなの。
排除すること。ときには踏み潰すこともある。
全体性の中でリアリティ（ありのまま）をとらえる時には、この悪いことも大切な一つのピースであるのに。
だって元は同じものだったのを強引に切り裂いて大小、左右、優劣に分けただけのことなんだから。
いのちや宇宙やカラダなどは全体性の典型なので、こういうものには「分別」は通用しないんだ。
条件反射のようにインプットの信号とアウトプットの行動を結びつけたのが、思考パターンの法則。
わかりやすいところでは善意の押し売り。
喜んでいるのは本人の自己意識だけ。
でもカラダに関心のない人は自己意識が価値観の中心だから、自己意識が喜んでしまって満足しているの。
自分のカラダが泣いているのに、「私」はそれが分からないの。
本当に相手のことを大事にしているのならば、相手の食べたい時に、温かいものを作ってあげればいいよね。
これが私が言っている「心臓の眼」や「腸の眼」が充分ではない、ということ。
感覚器官の認識と自己意識の眼だけで、この世を見ているということ。
これらの意識の眼はエリートには都合の良い世界だけど、後の殆どの人にとって苦しい世界になってしまいます。
だからヒトのカラダの様子がわからない自己意識の価値基準を中心に生きてしまっている人は、本人はいいことをやっているつもりでも、他人の足を踏んでいるの。
こちらが痛いからやめてください、とお願いしても、私はあなたのためにイイコトしてあげているんだから、ちゃんと勉強してわかりなさい、って逆に怒られてしまう。
そして、そんな痛みは幻想だから、早く私のように自己意識を磨いて素晴らしい喜びを味わえるように、私が幸せを伝えてあげるわ、って優しく教えてくれる。
そう15世紀からヨーロッパが福音主義という名前で、アフリカ、南米、アジアを植民地にしていった戦法です。
正しいことをして他人の領地を支配するという、なんとも都合の良い理性による世界制覇です。
自分は良いことをしているという理念（理性を信念にする）という宗教で愛の溢れた行動をしているので、自ら止めることなどはありません。
みんなのためにと言っては、人の足を踏み続けて、自分の取り分を増やしている。
常に善きもの、良いもの、正しいものの正体
正 は 邑（町）に向かってすすむというのが字源。攻めて、征服するいう意味である。
正の「一」は町との境界線であり、止は足跡なので、相手の境界線を突破すること意味する。
征服して征服地の人から税をとることを征といい、その支配の方法を政という。
政は正と攴（攵）ボクとからなり、攵は手でムチをうつ象形文字である。
つまり制服した人びとから税の負担を強制することが政であり、そのような行為を正当として、正義とした。
このようにして正は「ただす、ただしい」の意味となった。
正しさは常に権力者によって、意味が変わってしまうのは、字源をみれば当然のことである。
リンク
論理学が扱うのは顕在意識と潜在意識まで
顕在意識 基礎論理 論理の三原則 同一律，矛盾律，排中律
潜在意識 ヘーゲル弁証法 正・反⇒合 感情の論理、思惑の論理、矛盾の論理
この先にある、無意識（即非の論理）、個我意識、共通意識、分別意識、全体性意識、空意識、霊の領域には論理学では対処できない。
論理学の記号
仮にAを命題(記述文)と理解してよいなら
同一律は〈AはAである〉〈A⇒A〉
矛盾律は〈Aかつ非Aでない〉〈～(A∧～A)〉
排中律は〈Aまたは非A〉と表現される法則。〈A∨～A〉
現代論理学の立場では、これらの根本原則を記号化している。
(⇒：ならば，～：ない，∧：かつ，∨：または，の意)。
縁起説 釈尊には間違いがすくない根拠
ブッダの十大弟子のひとりにシャーリプトラ（舎利弗）は釈尊に会う前は、懐疑論のサンジャヤのもとで学んでいた。サンジャヤは形而上学的問題について確定的な解答を避けたために、懐疑論者・不可知論者と呼ばれた。
懐疑論者といわれる人たちは、自分の経験を超えたような問題、たとえば、世界は永遠であるか永遠でないのか、人は死後存在するのか存在しないのかなどの問題に対して、判断することを中止したという。
王舎城で、シャーリプトラはアッサジの崇高な姿を見て次のように尋ねた。
アシヴァジト梵AśvajiとアッサジAssajiは同人物で、漢字では音訳で阿説示、意訳で馬勝と多くの表記方がある。釈尊が成道して最初に教えを説いた五比丘の一人である。
「友よ、あなたは誰について出家したのですか。あなたの師は誰ですか。
あなたは誰の教法に同意しているのですか。」
アッサジは「自分がブッダのもとで出家し、ブッダを師とし、その教法に同意している」と答えた。
シャーリプトラは、「あなたの師は何を主張する人であり、何を説く人でありますか」と問う。
それに対して、アッサジは返答した。
「もろもろの法は原因から生じる。如来はそれらの原因を説きたもうた。またそれらの止滅をも説かれる。ブッダはこのように説く人である。」
他の経典ではこの止滅を減却と訳しているのもある。 パーリ語のnirodha、仏教用語の滅尽のことである。
cf.「ものごとは原因があって生じるその原因を釈尊は説いた。そしてまたその減却をも偉大な沙門はこのように教えた」 『律』「大品」『仏教聖典』山口 益編P.113
止滅とはなんであるか？
この世に存在するあらゆるものは、原因があって生じているのであり、また、それによって生じたものはやがて止滅する性質のものである。
したがって、永遠に変わらない実体的なものがあるとは説かないし、だからといって虚無に陥ってしまうのでもない。
それは、あらゆるものが縁に依って起こり、縁に依って滅するという事実を示している。
シャーリプトラは、アッサジと出会うことでブッダが「縁起」の道理を説いていることを、初めて知った。
当時、懐疑論者であったシャーリプトラは、人それぞれに主観があり個性も異なっているのだから、ものの見方は相対的なものでしかないと考えていたようなので、絶対的な真理などは知ることはできないと考えて、否定的な見解に終始していたと推定される。
しかし、ブッダに帰依したアッサジの端正な風貌と動作、そしてその教えに接して、シャーリプトラは心をうたれた。
ものごとを判断しないことが自分の生き方だと思っていたシャーリプトラの中に、自分の日常と離れないところに確かな道理がある、という自覚が芽生えた。
その道理こそがブッダの説く「縁起」である。
12因縁の縁起には
「これあるが故にこれあり、これ生ずるが故にこれ生ず」と1～12へと順番に観ていく順観と、
「これなきが故にこれなく、これ滅するが故にこれ滅す」と逆に12～1へと観ていく逆観がある。
順観だけではなく、逆観がペアであることが推定から確定になる重要なポイントである。
私たちの日常生活では順観だけで２つ出来事に因果関係があると捉えて、そこに関係性があると信じ込んでしまっている事が多い。
たとえば、植物はその生涯において2酸化炭素を固定化すると信じていたりするのも逆観を考えていないからである。
他の例も考える。
ダイオキシンがヒトにとって猛毒である。
都市の温度が上がっているので地球温暖化である。
北極海の氷が溶けると水面が上がる。
リンク 限界シリーズ 限界がわかると次の扉が開ける
因あれば果あり 因なければ果なし
釈尊は十二縁起を説かれる際に、以下のように簡潔に縁起の条件論と因果論を説いている。
iti imasmiṃ sati idaṃ hoti,
imassuppādā idaṃ uppajjati;
imasmiṃ asati idaṃ na hoti,
imassa nirodhā idaṃ nirujjhati
Saṃyutta Nikāya. Nidānavagga, Natumhasutta (12-37) パーリ経典経部相応部
このように、
１これが有るときにそれが有り、
２これが生じるときにそれが生じる。
３これが無い時にそれは無く、
４これが滅するときにそれが滅する。
１これAがそれBを支えている 条件 太陽と地球の引力と地球の自転公転 同時性
２なかったAという原因が現れると、Bがみえてくる 因果 月の移動と月の満ち欠け 種と芽 連続性
３BにはAが欠かせないことを発見する 同時性のつながりの確定
４無常の変化と消えゆくことを因果関係の中で発見 因縁法則の完成
ある時とない時の２つのケースを曖昧にして、原因を探すから、問題の解決ができない。
ある時とない時を分別して2種類の因果法則を語ることで、推定が、断定となる。
明確な因果関係を知らないことで、苦しみから脱出することができず、悩みつづけることとなる。
「これあるとき、かれあり、これなきとき、かれなし。」
時間的解釈と空間的解釈
縁起を時間（瞬間、地球時間、三世（前世・現世・来世））の中で理解する胎生学的解釈
縁起を空間の中で理解する条件論的解釈
|
時空 |
因果関係 |
特徴 |
支持者 |
|
時間 連続性 |
これが生じるときにそれが生じる これが滅するときにそれが滅する。 |
胎生学的 因果論的 |
法律、エンジニア 現代の科学、医学、学問 |
|
空間 同時性 |
これが有るときにそれが有り、 これが無い時にそれは無く、 |
論理的 条件的 |
ナーガルジュナ 宇井伯寿、定方晟 量子力学 |
因果関係を時間的に解釈すれば、これとかれの間の不可逆的な因果関係を表す。
つまりこれからかれが生じるが、その逆のかれからこれが生じることはない。
たとえば、親と子の関係である。
しかし、空間的（論理的、無時間的）に解釈すれば、可逆的な相依的な因果関係を表わす。
すなわちこれ（A）からかれが生じると同時に、かれ（B）からこれ（A）が生じる。
たとえば、水と氷の関係である。
論理的解釈は人間の迷いが言語（ロゴス）への盲信に由来することを明らかにした。
たとえば農薬がミツバチをはじめとした昆虫を殺すという考え方があります。
確かに、いくつかの農薬にはミツバチを殺すものがあります。
だからといってある農薬はミツバチを殺すものではありません。
ヒトの大脳皮質は一つの因果関係を法則化してしまうクセがあります。
しかしこれは誤謬を生む原因なので、釈尊をはじめとした事実に則したものを大切にしようとした人たちは、この一方向で連続性のある因果関係だけで、「無意識の法則化」に陥らないように、
上記のような
１だけではなく、２、３、４の関係もなければ、法則化しないように提案しました。
同時性と逆順でもそこに因果関係があるかを確かめるのが心を浄めるのに大切であるという提示です。
具体例で観ると、
１これAがそれBを支えている ある種の農薬がミツバチを殺す 条件
２なかったAという原因が現れると、Bがみえてくる ある種の農薬を散布することで、ミツバチは死ぬ 因果
３ BにはAが欠かせないことを発見する ある種の農薬が存在しなくなればミツバチは死ぬことがなくなり 同時性の確定
４無常の変化と消えゆくことを因果関係の中で発見 農薬が散布することがなくなればミツバチが死ぬことが減る 因縁法則の完成
法則化という思考パターンは現実である無常には無意味ですが、とはいえパターンは便利で使いやすいものなので、使う時には最低でも２，３，４のケースにおいても再現性があることを確認してから使うことが、大人の義務ではないのか？と釈尊は提案しています。
2,3,4が確認できないのならば、口に出すことは時期尚早だという見解です。
多くの人は１の事実があるだけで、法則をつくり、それを過剰一般化させて適用して暮らしています。
しかし仏教の「縁起」とは、、時間による連続性だけではなく、同時性や逆からの連続性が認められないと、そこに因果関係があるとは認めませんでした。
瞑想を実践することで修正されるのは、このような思考パターンに操られてしまっている決めつけ（過剰一般化）からの解放です。
確かにある特殊のTPOの条件の下では因果関係が成立するのですが、それは他のTPOでは成立しないからです。
具体的な例では、ある限定された農薬がミツバチを殺すのであって、それは農薬の一部でしかない。
そこで、ある農薬がミツバチを殺すことを言及するならばある農薬の固有名詞を上げる必要があります。
農薬に問題があるのではなく、正確に言明するならば、ある成分がある種のミツバチの致死量とある特殊の条件の下において因果関係がある、ことを特定するのが適切です。
確定されていない推定（決めつけ）を外部の人に伝えるのは慈悲の心と隔たりをつくります。
ある種の成分とミツバチの致死量に深い相関関係はありますが、量と条件によって生死の割合も違い、ミツバチの種類によっても時期によっても、致死に至る確率は変わります。
たとえばモルモットの実験結果だけを基準にしてダイオキシンを劇薬と認定してしまうことで過剰に反応して、高温度焼却設備の導入だけではなく、偏見に満ちたサンカーラを世界中に増殖させてしまった洗脳が30年前にあったように、環境問題やヒトの意識を高める領域では、毎月新しい大きなパターンを作ってはそれを伝播させ続けるのが都市文明のコントロール術です。
今は沖縄の山や森や海で過ごしているので、農薬散布される面積は地球のごく一部だけのようにここからは見えます。
生産性の高い農地には農薬は頻繁に使われますが、山や森や生産性に執着しない農地で手間暇と金を傾けて農薬散布することはほとんどなく、この周りには昆虫で過剰と言えるほど溢れています。
グーグルアース（人工衛星）からこの地球を見てみると、農薬散布の面積はほんの一部であるのに、その地域に住んでいる人は周囲の環境から実体感をするので、昆虫が減少している現象を肌で感じて嘆いているように思えます。
効率性の高い農地の外側では太古に繋がるこれまでどおりの生命が活きている実感をわたしは毎日ここではしています。
都会の温度上昇や都会での二酸化炭素の増大は事実ですが、それは地球の温暖化や植物の減少と直接の関係があるとはいえない証拠がいくつでもあります。
同様に、都心部や高度な生産性を求める農地では昆虫の減少が著しいのは事実であり、そこでは生命のか弱さや儚さや苦しさが体感できますが、その領域から一歩でも外側の自然や都市の端に残されたスラムで毎日の生活を暮らし始めると、生命の大きさと深さに驚愕する体験をするチャンスがあります。
しかしそのためには自然の中で暮らすノウハウや対策や技術や経験や思考が必要なので、多くの人は体験していないという結果になっているのがこの400年の出来事なのでしょう。
生命の深さを体感できないのは毎日の生活環境による自業自得の結果なので、体感するためには各自が精進をするしかなく、試行しなければ体感することもありません。
上記の過剰一般化してしまう意識体のクセが次の瞑想ステップへ移行する妨げになります。
そこで初期の瞑想の段階は、無意識に多くのことに一般化している自分に、ただ「気づいている」という実践によって、このような思考パターンを一つずつ淡々と除去していきたい、と海岸の波波に足を浸けながら感じています。
リンク
思考パターン
邪見、唯物論、プラトンの観念との闘い
思考という道具に使われる日常 素粒子と場（あるがまま）
２つの邪見
欲の邪見
「生きていたい」という存在欲がある場合は、「不滅の実体がある」また「根源の原因がある」という妄想の欲に満ちた邪見を持つ、ことになる。
世の中に失望がある場合は、「道徳に意味はなく、天国もない」というように、精神性を否定することで、怒りに満ちた邪見を持つ。
どうして、存在欲と実体がつながるといえるのだろうか？
たとえば、霊の輪廻転生を信じるのであれば、「生きていたい」と思わなくても、死んでもすぐに転生して「生きる」のだから、存在欲が大きくなる必要はない。しかし、霊の実体を信じない人は、実体をエネルギー体である心や物質に求めて生きているので、死ぬことは物質である実体の止滅のことなので、不滅の実体がどこかにないと、死の恐怖が逃れることができない。
リンク 輪廻転生の証明
存在欲はどうしたら生まれるのだろうか？
現状を好み、この状態に固執すれば生きていたいと思い、現状を嫌い、その状態が深い深い苦しみに満ちたものが永続的に続くと思うならば存在欲は生じないのでなかろうか？
この世のエネルギーの根源が「空」であることが腑に落ちないと、なにか根源となるものがこの世のあると思いたがる。その原因によってこの世が存在すると思うことができれば、その原因を変化させることで、楽が続き、苦は楽に、楽は苦に変えることができるからである。
そのためには、連続的因果関係が生じる根源となる原因という不滅の実体が必要とされる。
生きることを諦めないためには。
不滅の実体がないのならば、なにを頼りに生きて生きていけるのだろう。
もし存在欲がないのであれば、生きていたいという欲望に依存せず、自分の生死に関わらず、自分の生に対して不利なことであっても、あるがままのこの世の姿を知ろうとするが、生に執着しているのであれば、生きることを妨げる思想や見解や欲望に対して、無視したり拒絶したり排除しようとする。
この世に根源の原因がない、ということは、自分の生を伸ばしたり、生を肯定することができなくなるので不安になるから、根源の原因を知ることで、生を肯定したり、延長する根拠にしようとするのだ。
怒りの邪見
この世に喜びを見い出せいない時は、この世を肯定できる宇宙の法則は存在しないのではないかと疑う。
この宇宙の法則とは物質ではない精神性のことなので、宇宙の法則をいくら自分の思いで否定してみてても、宇宙の法則に由来する信号は絶るることなく自分の身の回りにやってきて起きている。
怒りとは、過去に学習した自分のパターンがある信号を拒絶した時に起こる。
同じ信号を受け入れたときにはそれは悲しみとなり、拒絶したときには怒りとして感情は反応する。
だから否定した宇宙法則の信号を拒絶する度に、それは怒りという形となって表れる。
このように、この世の失望は、宇宙法則の否定となり、宇宙からの絶え間ない信号を拒絶することで、それは怒りという条件反射を生み続けることになる。
2つのタイプの唯物論 近代の唯物論とは実は観念論
インドでは唯物論者だと一般的に言う場合は、「死んだらどうせ土と水に還るだけ。だから生きている間に楽しめばそれが得である」という考えで、輪廻もないので、短い命がある限りは贅沢をして明るく楽しく生きて行くという主張である。
たとえば「借金してもタディ（乳脂）を食べよう」というように、唯物論者の生き方はかぎられた現世だけなのでその期間をできること（贅沢）を大切にし、欲ある思考を肯定する。
これは欲を求めることを第一にする快楽主義に似ている。
同じ唯物主義でもマルクス主義のような唯物論は快楽主義ではなく、破壊的な怒りを伴うので憤怒主義ともいえるものである。
２つの違いはモノに対するアプローチにある。
インドの唯物論者は物質のレベルを基準にし、次にこれに反応する心のレベルを洗練させていく。
対して近代から発達した唯物論者は、モノそのものではなく観念を基準にしているので、大脳皮質の特性である「分別をし続ける」ことを利用したアプローチをする。
たとえば「一」なるものを分別しては、分けた片方を否定すべきアンチテーゼにすることで、それを相反するもの（敵）に仕立て上げ、誠実に潔癖に合理的に効率的にアカデミックに優雅に優しく親切に一所懸命に排除しようと、プロセスよりも結果を目指し、なにがなんでも実行しつづける。
このようにして、彼らの倫理観や道徳観が生み出され続けている。
大脳皮質の本能である「分ける」機能を基準にしてしまったために、観念や思考が生み出され、それらを対象として執着してしまい、囚われてしまった病いである。
すると合理的で真面目で潔癖で効率的で素直で純粋であればあるほど、不純物を取り除く行為を阻害するあらゆるものに対して、破壊的怒りとも呼べる誠実さと真面目さで向き合うことになる。
このように見てみるとマルクスのような唯物主義論は唯物主義というよりも観念主義（大脳皮質）を根本にしているものであることがわかる。
プラトンの闘い
プラトンはこのような観念のしたたかさと闘っていた。
観念は私たちにこの世のありのままの姿を見させずに、各自の妄想の中に留まることができる力を与える。
観念とは内外からの信号をまずは遮断し、無意識が選択した信号を枠の中で固定化することによって作られたものであるからである。
だから観念に絡め取られて、観念を基準にしてしまって言動することで、だれでも自己正当化することができる。
たとえば、ある人がどんな悪事を働いたとしても、その悪という性質と自分自身とを区別することで責任転嫁させる技がある。
主体であるSを悪の性質と分別することで、まずは、いつものSと悪に影響を受けた主体S’とを別のものとする。
このようにS’をSから分離させておいてから、都合の悪いものはなんでもS’の責任にすれば、Sはそのままの自分を正当化させることができるのである。
これが観念的人間が無意識の内に行っている典型的な行動である。
これは現代社会でも認定されているシステムなので、人が犯行を起こした時に、本人が心神喪失状態であるかどうかを問われるのは、人の行動を判断する時に、この観念を基準にしているからである。
プラトンの思想的な闘いとは、ソーマ（身体＝物質レベル）を愛求する非求知者たちがもつ物質を基準にする世界観に対しての徹底的な考察と吟味であった。
物質的な性格のものを考察するには、物質の生成と消滅の「原因」を考える必要がある。
物質的要因は、原因が原因として機能するための必要条件（補助原因）でしかなく、真の原因として考えられるべきは、〈善〉Ἀγάθωνは古代ギリシア語ἀγαθός (agathós, “good”) + -ων (-ōn, Strabon suffix).とも呼ばれる秩序化の力である。
この世はエントロピーによって崩壊していくのに、一粒の松の種は秩序化した大木に育っていく。
しかし、そのような〈善〉という原因を証明することは困難だったので、「個がある性質をもつのは、そのイデアを分有しているからだ」という「イデア原因論」をプラトンは提示した。
線分の比喩は、イデアの「分有」での説明から、「原範型‐似像」での説明（イデアは原範型、個別のものはその似像）への移行を示している。
線分の比喩はまた、魂はいかにして、万有の始原である《善》に到達できるかを示している。
このイデアの探究方法には、仮設のもとに行われる悟性的思考（数学）と、仮設を超えて始原まで到達する理性的思惟（哲学）があり、後者は、ロゴスの「問答（対話）する力」によって行われる。
プラトンは個別のものｘと性質Ｆの結びついた常識的思考を突き崩して、イデアΦへとスポットライトを向け変えることを提案する。
しかし、イデアの「分有」での説明で「ｘはΦを分有することによりＦである」と記述すると、主語のｘが突出してしまい、常識的思考はｘとＦの区別だけを見て、Φを不要のものとみなしてしまう。
そこでプラトンは「分有」での説明を捨てて「原範型‐似像」での説明をするようになったが、それでも常識的思考（パターン認識）と結びついた個別のものが関係性の中で成り立っていることを吟味する必要がある。
リンク先 「プラトンの哲学」藤沢令夫(岩波新書) における分有の問題点
極微の世界を認めないウパニシャッド哲学
古今東西において、すべての物は極微の組み合わせで出来ている、と考えられた。
ひとつの極微に上下と四方＝合計７個の極微が集結したものを微塵と言う。
微塵が物質の最小単位で、極微はエネルギー体。
七つ集まると一つ上の塊となり名称がある。
このようにだんだんと物質の塊が以下のように大きくなっていく。
金塵、水塵、兎毛塵、羊毛塵、牛毛塵、隙遊塵、蟻（き）、蝨（しつ）、麭麥（こうばく）、指
ウパニシャッド哲学で極微とは「分割できない元素」のことをいう。
「分割できない」とは、共通性を徹底して排除し、それだけがもつ特殊性になること、そしてその特殊性によってすべてのものが構成されていることを意味する。
もし２つの「これ以上分割できない粒子」が結びつくと仮定すると、一つの粒子の東側と他の粒子の西側がくっつくことになると、それらの粒子には東側（北側）とか西側（南側）とかいう「特殊な点、部分、普遍的でないもの、他と違う所」があることになり、「分割できない」すなわち、特殊性が一つもない普遍的なもので、他のすべてと同一の基礎になるするという定義に反する。
以上のことからこれ以上分割できない最小粒子というものは定義できないのではなかろうか。
たとえば△と☆がくっついた△☆の接点には特殊性が生じることになり、これ以上が「分割できない」極微という定義に反することになるので、この「分割できない」極微が集まって構成する世界を構築することは論理的に不可能であるとウパニシャッド哲学では判断した。
ウパニシャッド哲学では、原子と分子の元素は物質ではなくエネルギー体として解釈することで、「分割できない」とは大きさがないということ、つまり「形がない」ものとして理解する。
それならば大きさのない粒子が接触せずに物質を構成できるのか、という反論や疑問がある。
しかし、量子の世界では無数の素粒子が瞬間的に生まれては次の瞬間には消滅していること、を量子力学では前提にして、「真空」と「素粒子」を定義している。
エネルギーから物質が誕生する 量子力学
加速器で電子と陽電子を衝突させた場合、不思議なことに両者は消えてしまう。
また、電子と陽電子が消えた後にクォーク、反クォーク、あるいはμ粒子、反μ粒子など、もとの電子と陽電子とはまったく別の種類の粒子が新たに誕生する。
「これらの新たに誕生した粒子は、もともと衝突前の電子と陽電子がもっていたエネルギーから生み出されたものです」藤井恵介
極微の世界では、外部からのエネルギーを加えなくても、ほんの一瞬であればエネルギーが存在する。
そしてこのエネルギーを使って「無の空間」から素粒子が生み出されれている。
これは不確定性原理によって引き起こさえている。
ΔxΔp≥ℏ/2 Δx位置の不確かさ Δp速度（運動量）の不確かさ ℏプランク定数
これは位置が確かになればなるほど、速度が不確かになり、速度が確かになればなるほど、位置が不確かになることを示している。
つまり位置を特定したら運動量がわからなくなり、運動量を特定したら位置がわからなくなる、のである。
非常に高いエネルギーを持つ瞬間があり、物理的（エネルギー）状態が一定にならないことを「ゆらいでいる」と量子力学ではいう。
E=mc２からエネルギーと質量を持つものは転換が可能なので、瞬間的に高いエネルギーをもった場所ではそのエネルギーが粒子にかわり、粒子がうまれることができる。
しかし、できた粒子はすぐに消滅して元の状態に戻る。
この真空での粒子の対生成・対消滅と同じことが宇宙のが誕生する時にも起こり、大きさが10－33センチよりも小さいときに宇宙の存在自体がゆらいでいた。
小さいものを見るとき
観察したい物よりも波長の短い光をあてることで対象を認識することができる。
可視光 肉眼 10-3m
可視光 光学顕微鏡10-6m
短波長 電子顕微鏡10-9m
短波長 加速器 10-19m
E = hν = hc/λ エネルギーの高い粒子ほど波長が短い 粒子のエネルギーを大きくしていく
さらに小さいものを見るときは粒子のエネルギーをあげて波長を短くするしかない
そのために加速器を使って陽子や中性子のスピードを上げてエネルギーを大きくすることでより短い波長が生まれるので観測することができるようになる。
さらに加速器で粒子のエネルギーを上げていくと、粒子が高エネルギーで衝突した瞬間に「重いもの」が生まれる。
E=mc2 エネルギーと質量は比例する。
こうしてブラックホールが誕生する。
ブラックホールは質量と半径によって生まれるものなので、最小のブラックホールも存在する。
「事象の地平線」を越えたところでは一切のものを認識することができなくなる。
地平線の内側の情報を出すことは物理学において不可能である。
このブラックホールができる時の粒子の波長のことをプランク長という。 ℓP≈1.616 229(38)×10−35m
ブラックホールの大きさが プランク長
ブラックホールの質量が プランク質量
ブラックホールの寿命 プランク時間
これがプランク・スケールの世界で、空間の最小単位であり、これより小さい領域はない。
なぜならばこれでブラックホールが生じてしまうから、これが私たちの観測できる限界である。
ブラックホールは質量と半径で生じるので、原理的に観測することは不可能になる。
量子力学においては観測できないものは「無い」と定義されているので、これがミクロの究極である。
空間とは伸縮自在（相対性理論）で変形可能な量子が「ゆらいでいる」Quantum fluctuation
こうして量子重力が発生するが、まだ数式化、理論化されておらず、超弦理論などが構築されている途上である。
プランク・スケールではブラックホールが発生して時空の認識が定かでない
自然の奥底に潜む粒性が無限に対して「限界」を設定する。 カルロ・ロヴェッリ
真空の中身とは
自然界には完全な真空は存在しない。
たとえば星と星の間でも１3ｃｍに1個の水素原子が存在する。
対してミクロの世界である原子核と電子の間は完全な真空だといえるが、現在の物理学ではこのような空間には「素粒子」が満ち溢れていると考えている。
宇宙空間からわたしたちの体の中や細胞の原子にいたるまで、素粒子が突然現れては消えていく。つまり無と有の区別がはっきりつかないというのが実際のようすである。
１つの粒子が複数の場所に共存するということは、Aという場所に存在している状態、Bという場所に存在している状態など、さまざまな状態が同時に多数（一般には無数）「共存」している。
日常生活では、もし、ここに1つのボールがあればそれはAという人の手の中とBという人の手の中に同時にあるということはありえず、どちらかにある。このような事実から思考パターンを構築して、物事を判断する基準としてこれをミクロの世界にも適応すると19世紀までは考えていたが、事実は上の図のように電子は一つの粒子ではなく雲のように広がり位置は不確定であった。
これは電磁波の波にも同じことが言え、波は１つだけの振幅（波の高さ）で振動しているわけではなく、さまざまな振幅の波が共存していることが明らかになった。
水飴のような真空
ヒッグス粒子が満ちた真空は、水飴に似ている。
ヒッグス粒子は素粒子を動きにくいようにしており、この「動きにくさ（加速しにくさ）」のことを質量と呼ぶ。
しかし初期宇宙の真空ではヒッグス粒子は水飴の役割を果たすことができなかったのは、すべての素粒子は質量が０であったか、素粒子がなかったのか、ヒッグス粒子がなかったのか、と推察できる。
その後真空の相転移がおき、ヒッグス粒子は水飴のはたらきをするようになる。
真空のエネルギーの源はなにか？
素粒子の定義
このような常識が通用しない事実の世界に入り込むためには、まずは素粒子とは何かを確認しておく。
素粒子は、エネルギーの塊のことなので、素粒子とエネルギーはたがいに変換が可能である。
素粒子は、粒子であると同時に波である。
素粒子は、位置と運動（速度）を同時に決定することができない
素粒子は、時間とエネルギーを同時に決定することができない
一方を正確に決めると他方があいまいになる。
たとえば位置を決めれば速度がわからなくなる。逆に速度を決めれば位置がわからなくなる。
電子がある特定の位置にあるとすると、次の瞬間には電子が全空間に広がってしまう。
したがって、電子が存在する位置を、原子のようにある程度限定された領域にとどめておこうとすれば、一点に固定させるのではなく、最初から共存するある程度の広がりをもって想定しなければならない。そうすれば共存する各状態がたがいに影響を及ぼし合って、それ以上広がらないようになる。
この性質を不確定性原理と呼ぶ。
換言すれば、ほんの一瞬であればエネルギーの量が変動しうるが、平均値は一定である。
「場の振動」で真空と素粒子を考える
場の量子論では、素粒子を場の振動によってあらわす。場が大きく揺れた時はエネルギーがたくさんあり、素粒子が存在している状態である。対してエネルギーがなくなると場の振動はおさまり、素粒子がないと考える。
この場の振動がおさまった状態が「真空」と定義される。
ただしこの真空が本当に何も存在しない「完全な真空」なのかどうかについては議論はしない。
真空の状態でも素粒子が沸き立っていると推測されるが、観測できないものなので、量子力学では、素粒子が存在する状態と真空との違いをエネルギーの差で表わすことに終始する。
19世紀までは、たとえば光子が０で、振幅が０という波がまったくない状態がエネルギーも最低だと考えていたが、20世紀からは量子力学が発見したことは、もしある瞬間に振幅が完全に０だったら、次の瞬間にはすべての振幅の波が共存することになる。
微小な振動の波が共存していることを認めずに、振動０を仮定してしまうと、それは予測もつかない莫大なエネルギーの潜在力を想定しなければならなくなる。
そこで最初から微小な振動の波が共存することを前提にすることで、波がお互いに影響を及ぼし合って、振幅がそれ以上大きくならないように働くことになる。
この微小な波のことを「ゼロ点振動」と呼ぶのは、振動０である状態の周辺にはわずかに振動している、という意味である。
たとえば光子がまったくない状態とは、電磁波の波がまったくないのではなく、この量子論的なゼロ点振動が充満している状態なのである。そしてこれは光子に限ったことではなく、電子にしろ陽子にしろ、すべての粒子のゼロ点運動が、この空間には充満している。
無の空間で沸き立つ素粒子たち
誕生しては消える粒子のようすは、不確定性原理によって一瞬だけ存在することが許される粒子である。
対生成の際には「粒子」と「反粒子」のペアが誕生する。誕生した粒子のペアは即座に衝突して対消滅する。
この沸き立つ素粒子の寿命は10－22秒（１兆×100億分の１秒）はあまりにも短いため直接に観測することができないので、仮想粒子と呼ばれている。
しかし実験によって存在は間接的に証明されている。カシミール効果の実験。
なお、原理的にすべての種類の素粒子が誕生しうる。また、素粒子だけでなく、陽子や中性子といった内部に構造を持つ粒子も対生成と対消滅をくりかえす。
10－20秒程度の時間では物質はある、ないという存在自体も定まらない。
何もないはずの真空中でも、2つの粒子はペアになって生まれたかと思えば、すぐに消滅する。
現代物理学では、このような真空のことを「沸き立つ真空」とよんでいる。
対生成・対消滅がおきる理由
時間と空間の関係、また運動量とエネルギーの関係は相関関係であることから、
ΔtΔE＞ｈ/２ t時間の長さ Eエネルギー でも不確定性原理は成り立つので、
時間の幅を短くすれば、エネルギーは不確かになり、さまざまな値をとることになる。
ほんの一瞬だけ許されたエネルギーを利用して素粒子が生成され、即座に消滅する。
逆に長い時間をかければ、エネルギーは限りなく０に近づき、概念としての真空の状態である「無」に見えるようになる。
原因は素粒子（物質）は、粒子性であり同時に波動性であること
素粒子はあるときには「粒子」のような性質をみせ、別の時には「波」のような性質をみせる。
概念的な「無」は概念の中でしか存在しないのだが、「無の空間」というと対生成・対消滅と粒子と波の２重の性質が想像されにくいので、「無」の代わりに「場」という表現を量子力学では使う。
対生成・対消滅を証明する実験がカシミール効果
2つの物体の間には万有引力がはたらくが、その引力よりもはるかに強い力がある。
これから説明するカシミール効果によってみられる強い力は、引力とは違い金属板の重量とは無関係の力が叩いているからである。
真空でもゼロ点振動があるので、ゼロ点振動のようすがわかれば、そのエネルギーもわかる。
1948年にオランダのカシミールはその変化を計算した。そして金属板の間隔がせまいほど、ゼロ点振動による真空のエネルギーが小さくなること示し、この予言された現象がカシミール効果である。
金属板に挟まれた限られた空間では、ある特定の波長しか存在できない。金属板の表面では波の振幅が０になるので、金属板に挟まれた空間でちょうどそのような形におさまる波長しか存在せない。
このため限られた仮想粒子しか存在できず、この空間内の仮想粒子の数は少なくなる。
一方で金属板の外側の空間では、そのような制限はなく、どのような波長の仮想粒子でも存在できる。
この数の差が、金属板の間と外側とでエネルギーの差を生み、引力（カシミール力）として現れる。
この実験は、仮想粒子の対生成・対消滅の証拠を示すものであると同時に、真空がエネルギーをもつことを証明する実験でもあった。
ロスアラモス国立研究所のラモロウの実験で証明されたのは1997年になってからである。
真空の正体 すべての物質のもをたどれば真空に行き着く
19世紀までは真空とは「何も存在していない空間」と日常生活の常識では定義されていた。
しかし現代物理学では、真空が無から物質をつくりだすという性質をもっていることがわかっている。
真空から素粒子を生み出す加速器実験
加速させた電子を金属のかたまりに打ち込むと金属原子の中の空間で、電子は高エネルギーのガンマ線を放出する。このガンマ線と高速の電子のガンマ線がぶつかると、陽電子と電子のペア（対生成）が誕生する。
もともとなかった陽電子と電子のペアを真空から拾ってくる。
「場」における磁力や重力
物理学が考える「場」とは、空間そのものがそなえもつ性質なので、磁場は「無の空間」のあらゆる場所に存在している。
磁力線は磁場の状態をえがいたもので、磁石が置かれると、その近くでは、磁場の状態の変化が光の速度で周囲へと広がる。
ポイントは他へ与える磁力や重力の影響は、磁石そのものではなく、磁場からであるということである。
たとえば、もし太陽が急になくなったしても、重力場によって、8分間（地球までの光速時間）は、地球は太陽の公転軌道を回り続ける。
「場」によって素粒子というものが存在する
素粒子とはモノではなく、場におけるエネルギーが集中することによって１つ２つと数えられる状態になる「こと」を指して、そのようによんでいる。
固い粒のようなイメージの素粒子は実際には空間を満たしている「場」が示す状態の一つにすぎない。
素粒子というものは、「無の空間」に広がる「場」から生みだされている。
電光掲示板のように、点灯する場所が移っただけなのに光の点が移動するように見えるのと同じように、実際の素粒子の運動も「固い粒」が動くのではなく、「場」の中でエネルギーの集中した場所が移り変わっていくだけである。
このように空間を満たす「場」が主役であり、素粒子は「場」の状態の特殊なかたち（エネルギーが集中した状態）にすぎない。
この世は電磁波
磁力の場である磁場と電気力の場である電場をセットにしたものを電磁場とよぶ。
電磁場の特徴は、磁場と電場が互いに相手を揺り動かしながら波のように伝わること。
光の正体が電磁波であることをマックスウェルは解明した。
どんな物体もその温度に応じた電磁波を放出している。
数式から生まれたカラクリがヒッグス場
力が素粒子によって伝えられるようすを方程式で書きあらわすには、力を伝える素粒子の質量が0でなければならない。そうでなければ理論が破綻してしまうからだ。 どの理論？
ところが、弱い力がウィークボソンによって伝えられているとすると、それには大きな質量があることが、加速器の実験でわかっていた。このままでは弱い力の理論を完成させることはできないので、矛盾をやり過ごすためのカラクリとして考え出されたのがイギリスの物理学者ヒッグスによって考案されたヒッグス場である。1964年のことである。
視点の違い 立ち位置 次元 人口密度 コペルニクス
変化し続ける点と固定された点
コペルニクス 銀河 銀河団の中心 インフレーション
カトリック教会がかつて地球を中心にして星々が回っている、というのには間違いも含まれている。
コペルニクスたちが太陽を中心にして太陽系の惑星が回っているというのは事実に則している。
だからといって太陽を中心に星々が回っているというわけではない。
コペルニクスの理論が成り立つのは太陽系という宇宙の中では極小であるほんの限られた領域だけであって、その外側では天の川銀河の中心を基点にして、星々は回っている。
またその天の川銀河をはじめ数々の銀河が集まった銀河団では、そのの中心を基点にして銀河が回っている。
このように範囲を拡げ続けると、回転の中心が次々と現れて、そこを基点にすると地球の動いているスピードも変化してまちまちである。
地球は自転しているので、赤道では西から東へ時速1670キロ
地球は時速108000キロ（秒速30キロ）で太陽の周囲を公転している
天の川銀河（1000億個の恒星が集まり、直径10万年光の円盤状の構造）の回転速度は太陽系では時計回りで時速約792000キロ（秒速約220キロ）で回転している。
またこの天の川銀河も宇宙の膨張の中にあるので、隣の銀河団から高速で遠ざかっている。
かみのけ座銀河団 6700km／s
おおぐま座Ⅰ銀河団 15400km／s
ペルセウス座銀河団 5400km／s
おとめ座銀河団 1180km／sだけが近づいているのはなぜ？
かみのけ座団4.2 億光年 9.13E+03 （ｋｍ/ｓ）
おとめ座団 0.59億光年 1.17E+03
Eとは何？
距離と後退速度が比例している。
この直線の傾き（ハッブルの定数）は1億光年につき2280km・s-1
コペルニクスが唱える太陽を中心に星が回っているという理論は太陽系の惑星にだけ通用するものなので、宇宙から見ればこの理論が通用するのは極めて狭い範囲に限定される。
それに対して、地球は一定のスピードで自転し続けているので、太陽系を除けば、地球を中心に星々が回っているというのは論理的である。
正確に言うと、惑星や星や銀河の中心軸は複数あるので、この宇宙には一つだけの基点などはない。
地球を中心にしてすべての星星が回っているのではないが、太陽系を除外すれば、一定スピードで自転し続ける地球を中心の定点として他の星々を観察することができる。
この物質的宇宙には静止しているものは何一つなく、すべてが相対的なので、アンドロメダ星雲から見れば、地球は太陽の周りを回っているようにも、天の川銀河の端を駆け巡っているようにも、宇宙の膨張とともに遠ざかっているようにも、視点の枠組みを決めることで違って見えてくる。
そして相対的ということは、たとえばアンドロメダ星雲から地球を見れば地球は自転しており、ということは、地球から天を見れば、星々は地球を中心に動いていることになるので、天動説にどこの間違えもない。
地球が自転する事実と天動説とは同じ内容のことであるので、視点を変えることによって記述が違うだけで同一のことを表している。
このように考えてみると、天動説が間違えで地動説が正しいという考え方も誤謬であることがわかる。
なぜキリスト教会が間違えでコペルニクスたちが正しいと思うようになってしまったのかというと、
第一に、スポットライトを太陽系（特に太陽と火星と金星）だけに当ててしまっていたこと、
第二に、矛盾をみつけた時に抽象度を一つ上げることで論理を再構成することで矛盾を解消できた場合に、前者が間違えで後者が正解であると判断してしまう大脳皮質のクセを優先する時代に入ったこと。
意識体はこのような大脳皮質の機能により判断基準を固定化してしまう思考パターンをしたがる。
この意識を軸に社会を構成している時空では、抽象度の高い方が正しく低い方が間違えとして判断する傾向が増大する。
社会人（単純化された規則を基準にして世界を見たがる人たち）が常に過剰一般化をすることを常識としている時空では、この正誤の判断が日常生活に染み込んでいる。
ありのままの姿とは抽象度によって表現できるものではなく、TPOの組み合わせ（原因、条件、法則、結果）によって常に変化し続けるので、パターン認識は通用しないので、それぞれに対応するしかない。
第三にカミがこの世界を造り、そのシステムを理解している教会が民衆たちを指導しているという思考パターンを教育（洗脳）してきたことで、教会は優位性を築き上げて利権を維持し、これに反するものを排除してきた教会史があるので、民衆はこれに気づき、反発することを学習した。
これには都市に居住する住民の割合が急激に増えたことに関係する。
コペルニクス的解釈の弊害
２つの弊害がある。
１つ目は視点を自分の肉眼から、理性の眼に移行させて、そこで固定化させてしまう傾向があること
２つ目は、矛盾を解決する法則を見つけると、以前を間違え、以後を正解とする判断基準を固定化させてしまう傾向があること、である。
１の結果により、理性を肉体よりも優先させ、理性が肉体を考慮に入れないで独り歩きする傾向が増えた。
コペルニクスの視点とは、観察者が地球上にいるのではなく、まるで太陽系の星を見渡すことができる静止人工衛星からの見渡しているかのようである。しかし、事実をよく見てみると、そのような場所には生命体が生きることができない位置である。（宇宙船に乗船していないのであれば）
そこの視点に立てるのは機械だけであり、もしくは妄想の中にいる偽疑似化されたカミである。
この視点に立って、倫理観を唱えるようになってから、見た目はキレイだが対象の内情に寄り添うことのない冷徹な理性と論理と正義が威張り始め、道徳は形骸化した。
人々の認識は脳機能を中心にしたものに移行したことで、これまでの循環器系器官の感覚や消化器系器官の感覚を弱めることで、全体性に対する親和性が低下した。
つまりハート（紫式部のやまとごころ）で感じたり、肝に銘じたり、腹に響いたり、腑に落ちたり、する体感の割合が減ったということである。
一言でいうと、腸内微生物に対する愛着や感謝が薄くなり、理性を勘違いする人々が増加した。
リンク 体と心が閉じてしまった近代文学
２の結果により、人工衛星からの視点を固定化する時空が増えることで、相対的動的解釈が減少した。
人工衛星の視点で一つの正しさを語るのはいいのですが、その視点を他の視点までにも適用しようとする過剰一般化の病いが蔓延しています。
各視点から見れば、どの視点にも、そこから見えるあるがままの姿がある、という事実があるのみです。
天動説を否定したからといって、地動説が正しいわけではありません。
たとえば、地球を中心軸にして太陽系は廻ってはいませんが、地球上にいる私の周りを太陽が廻っている、とは言うことはできます。
地球が自転している限りは、地球を中心に星々が動いているので、天動説とは地球の自転と同じことを別の表現を使って表しているにすぎません。
しかし天動説を否定し、地動説を主張する人々の中には、偽のカミ（人工衛星）の視点に身も心も依存してしまって、地動説の正しさを他者に強要することでその他者を踏みにじっていることに気が付かない人もいます。
たとえば、スポットライトを当てる範囲を変えることで、以前の法則に矛盾があったのが、以後の法則で矛盾が解消された場合には、以前を間違え、以後を正解と単純に判断する思考パターンをもつ傾向が増加した。
以前の法則の中にある真理性までも否定するのは、正誤で二分することで物事を判断することを基盤にした世界の住人の特徴である。
たとえば天動説が間違っていて、地上説が正しいと判断しているように。
範囲を変えるということを、抽象度の上下に関係させ、抽象度を上げることに価値があり正しいと思いたがるインテリが増えることで、対象に寄り添うことがなく、体感ではなく理性による判断を基準とする時空が近代以降に増大した。
近代以前は城の中に住むプリンセスの特権であったのに。
速度は見る立場によってかわる。 この世には静止している場所などはない ただそう仮想しただけ
絶対的な基準がないので、物体の絶対的な速度はこの世にはない
結局、物の速度は見る立場によって相対的なものである。
光の速度＝空間の長さ／時間 空間と時間の組み合わせ 伸び縮みする時間
静止している場所はこの世には存在しない。
ただ静止していると仮定しているだけ。
光速に近づくほど、距離が短く時間が遅くなる
光速が常に秒速30万キロに見えるように時空は伸び縮みする。
物質や科学だけではなく心や霊の問題も立ち位置によって理解がかわる
数学のルール ０でかけたり割ることは禁止されている
数学のルールはどんな計算をしてもいいわけではない。
０で割ることは禁止されている。
１÷０＝ａ → １＝ａ×０
１＝ａ×０＝０ → １＝０
このように気づかないうちにいろいろルールを知らないままにこの世で暮らしていたり、当然だと思って暮らしていることが私たちにはある。
次元の定義
空間、平面、直線 ユークリッド
直線、平面、空間 ポアンカレ
次元とは、「位置を決めるために必要な数値の個数」と定義したのはデカルト
cf.相似次元では1次元と2次元や2次元と3次元の間も考えることができる。しかし、これまでのポアンカレの定義を変える必要がある。
「図形をx倍に拡大すると量がｘn倍になるとき、その量をｎ次元と定義する。」
コッホ曲線 1.26次元
シェルピンスキーのガスケット1.58次元 メンガーのスポンジ 2.73次元
2次元で暮らす地球の表面の人々
3次元の地球で生きていても、地球の表面では緯度と軽度という2個の数値があれば位置が決まるので、地球の表面は2次元である、と言えないこともない。
しかし都市部の高層ビルではこのような基準は通用しない。
次元の問題 並行した直線が交わるわけ 意識とは3次元なのか、4次元なのか？
赤道にいる二次元の観察者は赤道の垂直に交わる線を北に向けて引いてみる。
次に東西のどちらかに100キロほどでも移動して、また同じように赤道と垂直に交わる線を北に向けて引いてみる。
平行線はどこまでいっても交わらないはずなのに、この２つの平行線は、ジャスト10000キロ先でなんと交差する。
cf.約ではなく正確に1万キロなのは赤道から北極までの距離の1000万分の1を1mと定義したため。
なぜ間違えたのだろうか？
それは私たちは3次元の世界で生きているのに、2次元の経験を基準にして物事を判断したからである。
物理の問題は確かに3次元で解決できるが、私たちの意識は果たして3次元のものであるのか、それとも上次元のものであるのか？
もし上次元であるならば、平行線を引いたつもりが交差したように、私たちはこの世を常に間違って捉えている可能性がある。
道元や上部座仏教の認識の仕方は現代文明人とは違いがあった。
霊やエネルギー体を基準にする思考法を俯瞰してみたい。
マックス・テグマーク博士インタビュー2014年1月
私たちの宇宙とは単純に「ビッグバン以来138億年の間に地球に到達した光によって、観測できる球状の空間のこと」である。
グーゴルとは1010の100乗のこと
インフレーション理論と超弦理論などの考え方を結びつけて考えると、2番目のパラレル宇宙があるかもしれないという考えにたどり着いた。
パラレル宇宙とは、たとえば他の宇宙ではここには6種類のクォークがあるといわれているが、10種類あるのかもしれない。
Ωという測定可能な定数によって宇宙空間がどれだけ曲がっているか、平らであるかがわかる。
科学では何かを証明することはできない。
できるのは、あることが正しくないと反証することだけである。
解釈の問題
「神が万物を無から創造した」
logosの解釈
|
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カミ |
無 |
ロゴス |
信号 |
合一 |
|
神学者 |
客観的対象 |
不可知である |
言葉 |
感覚器官 |
自己とエネルギー |
|
瞑想者 |
純粋主体 |
無が神である |
宇宙の法則 |
意識 |
宇宙と真我 |
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物質とエネルギー |
カタチと性質 |
31界 |
主体と現象 |
知識と智慧 |
感知の手段 |
|
カタチ |
形式 |
欲界 |
客観 |
知性 |
言葉 |
|
エネルギー |
機能 |
色界 |
突入 |
智性 |
体感 |
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段階的自己 |
認識経路 |
自己 |
生命体の創造 |
|
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自己 |
五取蘊 |
体に残存 |
杖を振って |
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自己の解体 |
識viññāna蘊 |
「一」の中 |
神自身から人を |
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神と人の合一は
人間は神にならず、
神を物質世界に閉じ込めることにもならず、
創造された世界の有限性や変動性を否定することにもならず、
キリスト教の信仰に反さない
新約聖書の「説教」と人口密度 山と平野
新約聖書には「山上の垂訓」と呼ばれる説教がある。
精神性を重視したマタイ伝に対し、ルカ伝は社会性、現実性を重視した表現になっており、幸福と不幸の対比の形になっている。
マタイは、ユダヤ的考えを反映して、イエスが「山」に登って教えを説かれたと書いているが、ルカは異邦人的考えを反映して、イエスが神の使節のように「平らな所」（山の中腹の台地であろう）に下って教えたように書いている。しかし、両福音書とも同一場所を指している。
マタイには「山」とあるだけであるが、ルカは「平らな所」としている。
マタイ伝の記述を「山上の説教」と呼び、ルカ伝の記述を「平地の説教」と呼んで区別することもある。
人口密度により、ヒトは多用する認識方法も変わり、それに従って話す内容も変化する。
リンク 人口密度のエッセイ
これまでに見てきたように、すべての認識はまったく同じことを体験しても、各自の無意識の内に行われている「編集」によって感知するデータは異なるので、したがって当然の結果として各自の気持ちや価値や判断に相違が生まれる。
特に心的レベルと霊的レベルの経験と実現によって、同じ動作をその奥にある意味は大きく変わることになる。
これがわかりやすく見られるのが宗教界である。
また広くにわたって知られている仏教やイスラム教やキリスト教などの教祖を違う視点から観ることで浮かび上がって明らかになることがある。
リンク先 釈尊について
宗教は現代人を救えるか 仏教とキリスト教 佐々木閑 小原克博
ここでは具体例として、キリスト教の教祖について考察してみる。
世界に知られているイエスなので多くの人に共通認識があるからだ。
新約聖書のハイライトは4人の福音書によって書かれている、イエスのエルサレム入城から判決、そして復活までの物語である。
ユダは何故、裏切ったのか？
荒野での試練の後ガリラヤで宣教を開始したイエスはユダヤ教の預言者であり、新しい時代の救世主であると信じられていた。
しかし、その後、イエスのエルサレム神殿を頂点とするユダヤ教体制を批判する言動から、それは伝統的ユダヤ教から逸脱した非ユダヤ教であることが徐々に知られるようになる。
ユダがイエスから離れた理由の一説として考えられているのが、ユダのイエスへの失望である。ユダは師であるイエスが自分やユダヤの独立を求めるユダヤ人たちが求めるメシア、つまりユダヤをローマの支配から解放し、ダビデ・ソロモンの時代の繁栄をもたらす人物ではないことを悟ったからではないか、と考察される。
つまりユダヤ人の血筋ではあるが、ユダヤ教徒ではないことに気づいたということである。
イエスが磔刑となった理由
ユダヤ教の大祭司カイアファKayafaを含む宗教家たちは民衆の人気を集めていたイエスの存在に嫉妬していた。
イエスが有罪である証拠はなかったので、カイアファは「お前は神の子キリストか」との問いに「そのとおり」と答えた。
カイアファは「瀆言を聞いた以上、不敬罪は明らかで証人は不要だ」と叫び、議員たちに同意を求めた。こうしてイエスは満場一致で死刑とされた。
しかし、サンヘドリンsanhedrîn（ローマ帝国支配下のユダヤで71人の長老たちから構成される最高裁判権を持った宗教的・政治的自治組織）には死刑を執行する権利はない。そこでイエスはローマから派遣されたユダヤ属州総督ポンテオ・ピラトに引き渡される。
過ぎ越しの祭の直前には囚人が一人恩赦され、その人物は民衆が決めることになっていたのだ。
・・・民衆が恩赦の対象にしたのはバラバだった。その声に圧倒されたピラトは、責任は自分にはなく民衆にあるとした上で、イエスにローマの政治犯の刑罰、磔刑の判決を下したのだった。
ユダヤ教徒側から見れば、イエスは異端である異教徒であるのでイエスの排除と死刑を望み、
そしてローマ側から見れば、ユダヤ民衆の暴動と革命を恐れたので、ローマ法における政治犯として十字架にかけることにした。
イエスは本当にユダヤ人だったのか？
著作「マグダラとヨセフのミステリー」を読むと、イエスは人種的にユダヤ人でも、ユダヤ教徒ではなかったと推察される。
しかし、弟子たちはイエスがユダヤ教徒であるとおもっていたらしい。
イエスはエッセネ派に属し、若い時にはエジプトのアレキサンドリアのエッセネ派で修行している。
エッセネ派はユダヤ教の一派だと信じられているが、教義や儀式を見れば分かるようにこれはユダヤ教ではなくミトラ教である。
神殿での狼藉が意味するもの
神殿の両替商を見たイエスが、正義感に憤って商人たちの机をひっくり返したというものがある。
「エルサレルム神殿の存在そのものに対する攻撃、・・・この神殿が表わすすべてに対する象徴的な拒絶」である。
このイエスの行為を正当化するのは難しい cf.神社の絵馬の売店をひっくり返す人をどう感じるか？
イエスの隠された実像「魔術師」
新約聖書にも、マリアとヨセフと幼子イエスが、ヘロデの激昂を避けてエジプトに逃避したことが書かれている。（マタイによる福音書2章 13～23）
ユダヤ人の聖なる書物「タルムード」には、エジプト出身のイエスが逮捕された理由が「魔術」の罪であり、彼がエジプト魔術の伝授者であると疑問の余地なく述べている。
ヨハネ福音書でピラトにイエスを引き渡すとき、人びとはイエスを「悪い行いをする人」と言っている。ローマ法では、これは「呪術師」に用いる言葉であった。
イエスは「魔術を実践し、イスラエルを誤った道に迷わせた」とほかのラビ文書も同様に明白に述べている。
ユダヤ教徒らの立場から見れば、イエスの犯した罪とは、ユダヤの土地に「異教の思想と異教の神々」を持ち込もうとしたことである。
ヨハネ福音書18:30
彼らはピラトに答えて言った、「もしこの人が悪事κακονをはたらかなかったなら、あなたに引き渡すようなことはしなかったでしょう」。
ユダヤ律法から見れば、エジプトの儀式を持ち込み、咒術を行ってはいけないと規定されており、イエスの言動はこれらを破っており、なおかつユダヤの王（キリスト）だと自称して、神殿の机をひっくり返しているので罪に当たる。
これはユダヤ教から見ればイエスをユダヤ教徒として排除するのは正当な理由であり、このようなユダヤ教が間違っている非難するキリスト教のほうが宗教と常識について知見がないと言わざるをえない。
宗教とは一歩引いてみないと独断と偏見におちいる。
リンク
キリスト教の無我体験 日常の瞑想 Barnadette
Roberts
間違いが訂正されない理由
自分の邪見に執着するメカニズム
以前の間違った考え方を修正して、新しい訂正を積み重ねていったものが、その人の思想である。
誤謬が消えて、正しくなる経験に裏打ちされているので、自分の思想を大切にするのは当然のことである。
自分の思想は自分の生きてきた証であり、自分の存在そのものの基準にしている場合は、財産や命よりも大切なものになるので、ヒトは執着してしまうのである。
自分の考え方が命より大切なケースなどはないだろうと思うかもしれない。しかしその考え方で生命を失った者は少なくない。
たとえば「殺されても考え方は変わりません」ということは歴史上では多く、ローマ時代や江戸時代のキリスト教徒の殉死はよく知られている。
切腹、革命、戦争などでもこのような殉死を見ることができる。
自分の考え方が命や財産よりも大切であることを体験したからである。
邪見とは各自の好みによって誘導されたある特定の体験を、その特殊なTPOの範疇でしか通用しないことを、それ以外の時空でも法則として適応してしまうことを指す。
知識と道
学習が粘土細工のようだとすれば、「道」を求めて歩くのは、彫刻に喩えられる。
新たな情報を足すのではなく、覆われている部分を少しずつ取り除いていき、奥にあるものをあらわにする。
「千里の道も一里から」の解釈が昔で現在では異なっている。
昔の賢人の解釈は、「一里」「十里」「百里」と進んでも、最後のゴールに至るまでは単なるはじめの一歩に過ぎずいまだ価値はない、ということであったのに、現在では、途中のプロセスが大事であるかのような解釈が多い。
多くの人は一里進むごとにそれまでの誤謬を発見することで自分にとって何が正しいのかがわかり、その誤りがその人にとって衝撃的なことであればあるほど、これまでに自分がしていた大きな勘違いに気づき、一里進むことで正しい体験をしたという気持ちが強くなってしまい、それをまだ気づいていない他人にその誤りについて語りたくなり、しばらくそこに安住しては自分の正しさを他者に吹聴してしまう。
ところが実情を見てみると、まだ１つ（か10か100）の概念化してしまっていた勘違い（過剰一般化）が明らかになっただけで、この先にはこれまで以上の勘違いがずっと並び続けている。
まだ900？以上はある間違い（思考パターン）をどんどんと取り除いていかないと、「あるがまま」には届かないので、これからの999里を覚悟せよ、と解釈するのが、「道」を歩き進めるには必要な心構えとなる。
間違え続ける楽しさ、意味、運動する意味、動く意味 視点と分母
この世は常に変化し続けているので、私たちはこれまでに通用したパターンを目の前の事象に適用したとしたら、それは勘違いを続けてしまうという間違えを続けることなる。
自分の心に対しても同じことで、自分の感情パターンや思考パターンを変化し続けるものに適用することはできない。
もし強引にパターン化すれば、それが間違え続ける原因となるのである。
そしてこの間違え続けることが、この世にちゃんと生きている証であり、この世の喜びである。
間違え続けることで常に活性化され、それが生きる力となる。
根源の「いのち」は変化し続け、それに対応できない五感感覚は常に刺激を求め、そのギャップによって信号を認識する。
間違え続けるのは確かに大切なことではあるが、できれば、それは身心にとって元気になるものでありたい。
その時に指標となるのが、視点と全体性である。
視点とは、あることを見る時に、霊・心・体のどの視点から見ていることなのか明確にすることである。
視点によって見えることや判断やすべきことが変わるのでこれは重要なことである。
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また何かを分類した時に、その分母は何であるのかを明らかにするクセを身につけると、分類したものに振り回されずにすむ。
分母とは全体性のことであり、大いなるもののことであり、「一」なるもののことである。
分別したのには理由がある、それは分別以前の分母を体感するためである。
そのためにはまず分別をしてそれぞれを五感覚器官と脳で知覚して理性を使って理解することである。
次に、分別する以前である分母を全体性というツールを使って波動によって体感することである。
それにはくり返し使っている感情や思考パターンに気づくこと。
過去や未来から離脱することが充実している瞬間であることを体感すること。
「いま・ここ」にスポットライトを当てて生きる練習をすること。
まずは体を緩め、次に呼吸を整え、そして心を静め、本来の私に至るために、本来の私と同じように、ただ自分の体、呼吸、心、心の内容にただ気づいているように、修行してみる。
そうすると、本来の私とは、体でないこと、思考でないこと、感情でないこと、言語化できるものでないこと、アイデンティティのあるものではないこと、共通意識ではないこと、分別するものではないこと、智慧ではないこと、エネルギー体ではないこと、と一つづつの階段を登っていくことになる。
リンク 気持ちを鍛える モノに支配されない心になるための鍛え法
そのために健やかに、楽しく、明るく、おおらかに、安らかに、徹底的に、間違え続けるのが、私たちがここにいる意味である。
この明るい間違えの旅こそが本来の楽しみである。